(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】粒子を処理するための自動化システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20220526BHJP
C12M 1/10 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020049837
(22)【出願日】2020-03-19
(62)【分割の表示】P 2017504665の分割
【原出願日】2015-07-29
【審査請求日】2020-03-19
(32)【優先日】2014-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケルビーニ、クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】コップ、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ミルセヴィッチ、ネナド
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】サロフィム、エマド
(72)【発明者】
【氏名】サバティック、ゴラン
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0054506(US,A1)
【文献】特表2005-525816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0040446(US,A1)
【文献】国際公開第2006/010584(WO,A1)
【文献】米国特許第04639242(US,A)
【文献】特開平11-148932(JP,A)
【文献】国際公開第2014/015177(WO,A1)
【文献】特開昭60-122066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)を光学的に分析するための自動化システム(1)であって、該自動化システム(1)は、
液体の生物学的試料(920)を含む環状周囲チャンバ(710)を備える回転可能な容器(700)であって、該回転可能な容器(700)は、
前記容器(700)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
透明な外壁(712)と、
前記粒子(930)を含む前記液体の生物学的試料(920)を受け取るための上部開口(210)を備える上部と、
前記液体を保持するための環状周囲チャンバ(710)を備え、前記上部の下に位置する中間部であって、前記環状周囲チャンバ(710)は、前記外壁の内面上に、前記液体の生物学的試料(920)に含まれる前記粒子(930)のための沈殿領域を備え、前記環状周囲チャンバ(710)は、前記上部開口(210)に流体接続されている、中間部と
を備え
、
前記回転可能な容器(700)は、前記回転可能な容器(700)が回転および停止している間に前記環状周囲チャンバ(710)が前記液体を保持するように、前記環状周囲チャンバ(710)の下に、前記環状周囲チャンバ(710)と流体接続するチャンバを備えていない、回転可能な容器(700)と、
前記回転可能な容器(700)をその長手軸(201)周りで制御された方法で回転させるための回転アクチュエータ(101)と、
前記液体の生物学的試料(920)を前記回転可能な容器(700)内に導入するため、および/または、そこから取り出すためのピペッタ(910)と、
前記自動化システム(1)を制御するための制御ユニット(110)と、
前記液体の生物学的試料(920)中に含まれる前記粒子(930)を光学的に分析するための結像光学系(640)を備えるスキャナ(600)と
を備える、自動化システム(1)。
【請求項2】
液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)を光学的に分析するための回転可能な容器(700)であって、該回転可能な容器(700)は、
前記容器(700)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
透明な外壁(712)と、
前記粒子(930)を含む前記液体の生物学的試料(920)を受け取るための上部開口(210)を備える上部と、
前記回転可能な容器(700)が回転している間に前記液体を保持するための環状周囲チャンバ(710)を備え、前記上部の下に位置する中間部であって、前記環状周囲チャンバ(710)は、前記外壁の内面上に、前記液体の生物学的試料(920)に含まれる前記粒子(930)のための沈殿領域を備え、前記環状周囲チャンバ(710)は、前記上部開口(210)に流体接続されている、中間部と
を備え
、
前記回転可能な容器(700)は、前記回転可能な容器(700)が回転および停止している間に前記環状周囲チャンバ(710)が前記液体を保持するように、前記環状周囲チャンバ(710)の下に、前記環状周囲チャンバ(710)と流体接続するチャンバを備えていない、回転可能な容器(700)。
【請求項3】
液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)を光学的に分析するための方法であって、該方法は、
a)前記粒子(930)を含む前記液体の生物学的試料(920)を、環状周囲チャンバ(710)を備える回転可能な容器(700)内に、前記環状周囲チャンバ(710)内への、回転可能な容器(700)の上部開口(210)を通して、導入するステップであって、前記回転可能な容器(700)は、
前記容器(700)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
透明な外壁(712)と、
前記粒子(930)を含む前記液体の生物学的試料(920)を受け取るための上部開口(210)を備える上部と、
液体を保持するための環状周囲チャンバ(710)を備え、前記上部の下に位置する中間部であって、前記環状周囲チャンバ(710)は、前記外壁の内面上に、前記液体の生物学的試料(920)に含まれる前記粒子(930)のための沈殿領域を備え、前記環状周囲チャンバ(710)は、前記上部開口(210)に流体接続されている、中間部と
を備え
、
前記回転可能な容器(700)は、前記回転可能な容器(700)が回転および停止している間に前記環状周囲チャンバ(710)が前記液体を保持するように、前記環状周囲チャンバ(710)の下に、前記環状周囲チャンバ(710)と流体接続するチャンバを備えていない、ステップと、
b)前記回転可能な容器(700)を、所定の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力は、前記環状周囲チャンバ(710)の前記沈殿領域に前記粒子(930)を沈殿させるのに充分である、ステップと、
c)結像光学系(640)を備えるスキャナ(600)により前記粒子(930)を光学的に分析するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析目的で液体の生物学的試料中の粒子を処理する分野に属する。この分野の中で、本発明は、側方収集チャンバを備える回転可能な容器によってこのような粒子を処理するための自動化システムに関する。本発明は、液体の生物学的試料中の粒子を処理するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ臨床診断の分野において、細胞または人工粒子などの粒子に対する分析応用は、フローサイトメトリー、顕微鏡法、細胞計数、細胞培養のためまたは細胞培養からの細胞の採取などを含む。結合粒子を利用して単離される標的分子に対する分析方法は、たとえば、(PCRまたは他の増幅技術による)RNA、DNA、mRNAなどの核酸の増幅および検出、ELISA、またはタンパク質に対する電界発光もしくは化学発光法などである。
【0003】
このような粒子の処理を容易にするために、異なる様々なアプローチが取られてきた。たとえば、粒子が典型的に管の底に沈殿させられる従来の遠心分離は、臨床検査室または他の検査室において相当量の空間を占める大きな遠心分離機を要する。さらに、遠心分離後の上澄みの取り出しは、ピペットまたはその先端が管の底の粒子ペレットに接触して、粒子ペレットを乱すべきではないという事実によって阻まれるおそれがある。ゆえに、ピペットまたは先端は、管の底までは挿入されない場合があり、これは、後続の化学反応の不純物または阻害物質の潜在的な源である、残留する「デッド」ボリュームを生じさせる。またこの状況は、粒子処理の効率的な自動化を妨げる。また、通常はバッチ処理が用いられ、大きな遠心分離機は、沈殿のための比較的長い距離を課し、事実上処理を低速化させる。粒子を処理するための自動化装置の1つの変形例は特許文献1によって教示され、特許文献1においては、血球を含む試験管は、回転可能なスピンドルに取り付けられ、後者は、試験管内への洗浄液および空気の導入のための中心通路と、スピンドルの底の径方向の出口通路とを含む。出口通路に真空が印加され、細胞の上澄みが出口通路を通って外に吸引される。この配置は、流体および気体の接続部の入り組んだ配置と、正圧または負圧を印加する手段とを要するので、アセンブリを複雑にするだけでなくこのようなシステムの有用性も複雑にする。
【0004】
粒子を保持するためのフィルタに依存する同様に広く用いられているアプローチも、とりわけ粒子の再懸濁は大抵手動のステップを要するという観点から、自動化にはあまり適していない。
【0005】
この分野の他のシステムでは、処理される粒子が磁性ビーズに結合されるか、粒子自体が磁性特性を有する。この技術は、当該技術において自動化されているが、デッドボリュームを生じる磁性ビーズの凝固や、磁性ビーズの存在による下流のアプリケーションの外乱など、様々な問題に直面している。さらに、それぞれの自動化システムは全て、空間をとる上に磁性ビーズまたは粒子を保持する容器またはピペットの近傍に至る必要のある磁石を要し、これは、粒子を処理するためのそれぞれの自動化システムを設計するときに、複雑な幾何学的解決策に対する要求を生じさせ、柔軟性を減少させる。
【0006】
当該技術において用いられる代替的な技術であるマイクロ流体装置は、粒子の流体力学的性質を利用することによる粒子の処理を可能にする。このような装置は通常、約5~100μmのマイクロ構造を含む。しかしながら、臨床診断環境においてますます要求される高スループットを媒体に対して可能にするために、充分な量のこのようなシステムに達することは、とりわけ時間あたりの処理量の観点から困難である。
【0007】
概して、粒子の自動化処理は比較的複雑かつ相当数の異なる処理ステップを要し、各ステップはそれぞれの機器構造を要する。このようなステップは、懸濁液中での粒子の保持、粒子の分離、分離された粒子からの上澄みの取り出し、粒子の再懸濁、粒子の光学的分析などを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
上述の欠点は、本明細書に記載される方法、回転可能な容器および自動化システムによって対処される。システムは、液体の生物学的試料中に含まれる可能性のある粒子を処理するための回転可能な容器を含み、それによって粒子は可変な性質であってもよい。たとえば、システムによって処理される粒子は、血球などのヒト由来の生細胞または死細胞、または単細胞の病原体もしくはウイルス細胞であってもよい。粒子は、人工的な性質のものであってもよく、たとえば、液体の生物学的試料中の標的分析物に結合するために用いられてもよい。回転可能な容器は長手軸周りで回転でき、その構造は、少なくとも上部および下部と、その間の中間部とを有する。上部は、ピペッタまたは人間のオペレータにアクセスを提供する開口を有する。これは、その上部開口を通して液体の生物学的試料を受け取ることができる一方で、底部を有する下部は、回転可能な容器が停止している間は液体を保持する。回転可能な容器を回転させると、粒子を含む液体は、中間部の側方収集チャンバに向かって上方へ移動する。制御された回転停止時には、液体は再び下部の底部に沈むが、粒子は中間部の側方収集チャンバに留まるので、少なくとも部分的に液相から分離される。液体はその後、側方収集チャンバ内に保持される粒子を乱したり、さらには取り出したりすることなく、底部から好都合に取り出されてもよい。
【0010】
分離された粒子はその後、再懸濁、洗浄、溶解、分析されてもよく、あるいは回転可能な容器の内部または外部でさらに処理されてもよい。回転可能な容器をその長手軸周りで加速、回転および減速させるために、自動化システムは、回転アクチュエータも含み、粒子を含む液体の生物学的試料もしくは粒子を含まない液体の生物学的試料、または含まれる可能性のある他の液体を操作するためのピペッタをさらに含む。自動化システムである場合、本明細書に記載されるシステムは、制御ユニットによって制御される。
【0011】
自動化に関連して、手動のステップの回避または少なくとも軽減を可能にするのにいくつかの利点が貢献する。とりわけ、沈殿した粒子は側方収集チャンバに存在することから、ピペッタは、回転可能な容器の底部まで容易に導入され得る。本明細書に記載の自動化システムは、本明細書に記載されるような、任意の方向変更を含む所定の加速および減速プロファイルにより適切な回転動作をもたらすことによって、元々の液体または回転可能な容器内に導入されてもよい他の液体への粒子の好都合な再懸濁を可能にする。回転可能な容器の大きさおよび容量は高度に柔軟であり、自動化システムには複数の回転可能な容器が存在してもよく、これらは異なる試料を受け取りまたは含んでもよく、互いに別々に作動されてもよい。このような配置は、多様な試料またはその定分量を同時に処理しながら、システムの全体のスループットを増加させる傾向がある。さらに、分画遠心法などの「従来の」遠心分離技術が用いられてもよく、さらには実施例に記載するような、フィルタなどの他の装置との組み合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本明細書に記載の自動化システムの実施形態の概観図である。
【
図1B】本明細書に記載の自動化システムの実施形態の概観図である。
【
図1C】本明細書に記載の自動化システムの実施形態の概観図である。
【
図2A】本明細書に記載の回転可能な容器の概観図である。
【
図2B】本明細書に記載の回転可能な容器の概観図である。
【
図2C】本明細書に記載の回転可能な容器の概観図である。
【
図2D】本明細書に記載の回転可能な容器の概観図である。
【
図2E】本明細書に記載の回転可能な容器の概観図である。
【
図2F】本明細書に記載の回転可能な容器の概観図である。
【
図3A】回転可能な容器の特定の実施形態の断面図である。
【
図3B】回転可能な容器の特定の実施形態の断面図である。
【
図3C】回転可能な容器の特定の実施形態の断面図である。
【
図3D】回転可能な容器の特定の実施形態の断面図である。
【
図4】開裂弁を有する回転可能な容器の断面図である。
【
図5】外周フィルタを有する回転可能な容器の断面図である。
【
図6A】結像用の環状周囲チャンバを有する回転可能な容器の斜視図である。
【
図6B】結像用の環状周囲チャンバを有する回転可能な容器の斜視図である。
【
図6C】結像用の環状周囲チャンバを有する回転可能な容器の斜視図である。
【
図6D】結像用の環状周囲チャンバを有する回転可能な容器の斜視図である。
【
図6E】結像用の環状周囲チャンバを有する回転可能な容器の斜視図である。
【
図6F】結像用の環状周囲チャンバを有する回転可能な容器の斜視図である。
【
図6G】結像用の環状周囲チャンバを有する回転可能な容器の斜視図である。
【
図7】本明細書に記載の回転可能な容器を用いるワークフローの概観図である。
【
図8】撮像用の狭い周囲チャンバを有する回転可能な容器を用いるワークフローの概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載される第1の態様は、液体の生物学的試料中に含まれる粒子を処理するための自動化システムであって、自動化システムは、
液体の生物学的試料中に含まれる粒子を処理するための回転可能な容器であって、
容器が周りを回転可能な長手軸と、
粒子を含む液体を受け取るための上部開口を備える上部と、
回転可能な容器が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部と、
上部と下部との間に位置し、回転可能な容器が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバを備える中間部と
を備える回転可能な容器と、
回転可能な容器をその長手軸周りで制御された方法で回転させるための回転アクチュエータと、
液体の生物学的試料を回転可能な容器内に導入するため、および/または、回転可能な容器から取り出すためのピペッタと、
自動化システムを制御するための制御ユニットと
を備える。
【0014】
本明細書に記載の自動化システムは、当該技術における多数の問題に対処する。上述のように、システムは、液体の生物学的試料中に含まれる粒子の効率的な自動化処理を可能にする。当該技術における他の技術により要求される多数の構成要素が省略されてもよい。たとえば、遠心分離機のカルーセルは必要なく、特許文献1に教示されるような複雑な流体および気体の接続部を伴う真空印加、磁石または磁性ビーズ、およびマイクロ流体毛管システムもない。自動化システムはさらに、同一容器内での再懸濁、洗浄、染色または他の処理方法を可能にする。これらの特徴は組み合わせられて本明細書に記載の自動化システムの複雑性を減少させ、手動の介在の必要性を最小限にするか、さらには消失させるので、システムのコスト効率、有用性およびスループットの増加に貢献する。
【0015】
同時に、本明細書に記載の自動化システムは、フィルタ装置や磁石などの当該技術における他の技術と容易に組み合わされてもよく、これは、本明細書に記載の潜在的な特定の用途に対する自動化システムの柔軟性を高める。
【0016】
用語
本明細書で用いられる場合、「液体の生物学的試料」という語は、対象の分析物を潜在的に含む可能性のある液体物質のことをいう。試料は、血液、唾液、接眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、便、精液、母乳、腹水、粘液、滑液、腹膜液、羊水、組織、培養細胞などを含む生理液など、任意の生物学的供給源から生じてもよい。検査試料は、血液からの血漿の精製、粘液の希釈、一般的な希釈、溶解など、使用前に前処理されてもよい。処理方法は、濾過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活性化、および試薬の付加を伴ってもよい。生物学的試料は、供給源から取得されたまま直接用いられてもよいし、試料の性質を変更するための前処理の後に用いられてもよい。いくつかの実施形態において、最初は固体または半固体の生物学的物質は、これを適切な液体媒体により溶解または懸濁することによって液体の状態にされる。いくつかの実施形態において、生物学的試料は、特定の抗原または核酸を含むと考えられる。
【0017】
液体の生物学的試料中に含まれる「粒子」は、生きた組織もしくは死んだ組織または非生物物質であってもよい。いくつかの実施形態において、粒子は、バクテリアやウイルスなどの病原体、またはバクテリオファージである。このような病原体の中には、HIV、HBV、HCV、CMV、WNV、SLEV、JEV、HSV、インフルエンザなどのウイルス、または他のウイルスが存在してもよい。対象となる他の病原体は、ナイセリア属、クラミジア属、マイコバクテリウム属、エルシニア属、ボレリア属、プロテウス属、腸球菌、メチシリン耐性または感受性黄色ブドウ球菌などのブドウ球菌、髄膜炎菌、エシェリキア属、クロストリジウム属などのバクテリア、または他のバクテリアであってもよい。また、たとえば、カンジダ属、アスペルギルス属、サッカロミセス属などの菌類、または他の菌類が対象の病原粒子であってもよい。また、いくつかの実施形態において、粒子は、生きた、または死んだ真核性細胞である。これらの実施形態のいくつかにおいて、粒子は、単球などの白血球(WBC)、顆粒球(好塩基性、好酸性または好中性のもの)、マクロファージ、Tリンパ球もしくはBリンパ球、形質細胞、またはリンパ液もしくは骨髄球性の幹細胞、血小板、赤血球、循環腫瘍細胞、異なる血液細胞および/または腫瘍細胞の混合物、または他の健康なおよび/もしくは悪性の血液細胞を含む、血液細胞などのヒトの細胞である。他の実施形態において、粒子は、組織由来の、または組織培養物もしくはバクテリア培養物由来の細胞である。さらなる実施形態において、粒子は、細胞小器官などの細胞内構造であってもよく、ミトコンドリア、細胞核、リソソーム、プロテアソーム、シャペロシンなどを含む。
【0018】
粒子が非生物物質である実施形態において、これらは、ビーズ、粒子、フリース、粉または破砕固形物などの粒子状物質であってもよい。いくつかの実施形態において、これらはたとえば、分子、細胞またはウイルスであってもよい特定の生物学的標的に結合する分析物結合粒子である。これらの実施形態において、粒子は、核酸捕捉プローブ、mRNAに結合するためのオリゴもしくはポリ(dT)鎖、免疫グロブリンのFc部分に結合するためのタンパク質A、特異的なタンパク質に結合するための抗体のFab断片、ヒスチジンタグに結合するためのニッケル、ストレプトアビジンもしくはビオチン、インテグリン、付着因子、または他の細胞表面分子などの、特定または不特定の結合分子が被覆された表面を有してもよい。いくつかの実施形態において、生物学的な標的分子は、特定の分析物が分析物結合粒子によって捕捉され得るような細胞表面分子である。たとえば、血液試料に関しては、白血球、赤血球、単球の細胞表面の抗原に特異的に結合する適切な抗体が当業者に公知であり、たとえば、T細胞にはCD2/CD3、単球にはCD14、顆粒球および単球にはCD15、マクロファージにはCD16、血小板、単球およびマクロファージにはCD36、白血球にはCD45である。さらなる実施形態において、分析物結合粒子は、金属酸化物またはシリカ表面を有する。ガラス表面などの二酸化ケイ素表面は、カオトロピック剤の存在下で核酸を結合するために用いられてもよい。
【0019】
「カオトロピック剤」は、一般に、溶液中の水分子の規則構造ならびに分子内および分子間の非共有結合力を乱す。これらは、試料の調製にいくつかの貢献をもたらし得る。また、カオトロピック剤は、原形質膜や、存在する場合には細胞小器官の膜など、生物学的膜の断裂に貢献する。カオトロピック剤の非限定的な例は、チオシアン酸グアニジン、グアニジン酸塩、塩化グアニジンまたはイソチオシアン酸グアニジンなどのグアニジン塩、尿、過塩素酸カリウムなどの過塩素酸、他のチオシアン酸またはヨウ化カリウムもしくはヨウ化ナトリウムである。
【0020】
「側方収集チャンバ」という語は、本明細書に記載の回転可能な容器の中間部の空洞を示す。「側方」とは、収集チャンバが略水平方向に延在し、容器が周りを回転可能な長手軸に対して傾斜して、いくつかの実施形態においては略垂直であるということを意味する。側方収集チャンバは、流体の生物学的試料中に含まれる粒子を、単独または周りの液体と一緒に保持するように構成および配置される。側方収集チャンバの例示的な実施形態を本明細書に記載する。
【0021】
「ピペッタ」は、流体移送、またはすすって注ぐ混合(sip and spit mixing)などのために、所定量の流体の自動的な取り出しおよび/または分注を可能にする装置である。本明細書に記載の文脈において、これらの流体は、液体の生物学的試料、液体の生物学的試料を処理するために用いられる試薬、洗浄溶液、希釈緩衝液、処理液、処理済みの分析物を含む液体などを含む。液体は、試料管、中間の処理管、試薬コンテナ、廃棄コンテナまたは位置、チップ洗浄ステーション、出力容器、反応管などの位置/容器のいずれからも取り出され、分注されてもよい。とりわけ、ピペッタは、本明細書に記載の回転可能な容器内へ流体の生物学的試料を分注するため、またはそこから流体の生物学的試料を取り出すために用いられてもよい。ピペッタは、いくつかの実施形態においては、空気圧系または水圧系によって駆動される。水圧液体として、ピペッタはいくつかの実施形態においては、水または一般に用いられる試薬を用いる。
【0022】
ピペッタは、スチール針などの1つまたは複数の再利用できる洗浄可能な針を備えてもよいし、使い捨て可能なピペットチップを用いてもよい。ピペッタは、たとえば、ガイドレールを用いて平面の1つまたは2つの移動方向に移動でき、スピンドル駆動部などを用いて平面に対して直角な第3の移動方向に移動できる移送ヘッドに取り付けられてもよい。たとえば、ピペッタは、第1の試料管と回転可能な容器または別の標的位置との間で水平方向に移動させられ、液体の生物学的試料または他の液体を取り出すため、または分注するために垂直方向に移動させられてもよい。ピペッタは、一体型、すなわち、ワークセル内に作り付けられてもよいし、ワークセルに動作可能に接続されるシステムのモジュールであってもよい。ピペッタの位置および動作(容量、流速、流れの方向などのパラメータを含む)は、本明細書に記載されるような制御ユニットによって制御される。
【0023】
「制御ユニット」は、処理プロトコルに必要なステップが自動化システムによって行われるような方法で自動化システムを制御する。これは、制御ユニットが、たとえば、液体の生物学的試料に試薬を混合するためにピペッタを用いて特定のピペット処理ステップを行うように自動化システムに命令してもよいこと、または、制御ユニットが、生物学的試料もしくは試薬またはその両方の混合物を特定の温度で特定の時間培養するために自動化システムを制御すること、または、制御ユニットが、本明細書に記載の回転可能な容器の加速、回転速度、回転時間および減速、または他の関連するパラメータを制御することを意味する。制御ユニットは、特定の試料に対してどのステップが実施される必要があるかについての情報をデータ管理ユニット(DMU)から受け取ってもよい。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、データ管理ユニットと一体である場合もあるし、共通のハードウェアによって具現化されてもよい。制御ユニットは、たとえば、処理動作計画にしたがって動作を実施するために、命令を備えるコンピュータ可読プログラムを実行するプログラム可能な論理制御装置として具現化されてもよい。制御ユニットは、たとえば、本明細書に記載の回転可能な容器またはピペットチップの装着、廃棄または洗浄、試料管および試薬カセットの移動または開放、試料または試薬のピペット処理、試料または試薬の混合、ピペット針またはチップの洗浄、たとえば波長の選択による、光源などの検出ユニットの制御などの動作の1つまたは複数を制御するために設定されてもよい。詳細には、制御ユニットは、所定のサイクル時間内に一連のステップを実行するためのスケジューラを含んでもよい。制御ユニットはさらに、アッセイの種類、緊急性などにしたがって試料が処理される順番を決定してもよい。また制御ユニットは、試料のパラメータの測定に関連付けられるデータを検出ユニットから受け取ってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の自動化システムは、データ管理ユニットをさらに備える。
【0025】
「データ管理ユニット」は、データを記憶および管理するための演算器である。これは、自動化システムによって処理される液体の生物学的試料に関連するデータ、または回転可能な容器内で実行されるステップに関するデータを含んでいてもよい。データ管理ユニットは、LIS(検査室情報システム)および/またはHIS(病院情報システム)に接続されてもよい。データ管理ユニット(DMU)は、自動化システム内のユニットであってもよいし、自動化システムと同じ場所に位置するユニットであってもよい。これは、制御ユニットの一部であってもよい。代替的に、DMUは、分析器から遠隔に位置するユニットであってもよい。たとえば、これは、自動化システムにネットワークを介して接続されるコンピュータ内で具現化されてもよい。
【0026】
「分析ワークセル」は、診断目的での試料の分析を可能にする。分析ワークセルは、試料および/または試薬の自動化された操作、ピペット処理、投与および混合を補助するユニットを備えてもよい。分析ワークセルは、アッセイを行うために試薬を保持する試薬保持ユニットを備えてもよい。試薬は、たとえば、個別の試薬または試薬群を含むコンテナまたはカセットの形態で配置され、保管区画またはコンベヤ内の適切な受容部または位置に置かれてもよい。これは、消耗品の供給ユニットを備えてもよい。分析ワークセルは、ワークフローが特定の種類の分析に対して最適化されている処理ユニットおよび/または検出ユニットを備えてもよい。このようなワークセルの例は、化学的もしくは生物学的反応の結果を検出するため、または化学的もしくは生物学的反応の進行を監視するために用いられる、臨床化学分析器、凝固化学分析器、免疫化学分析器、尿分析器、核酸分析器である。
【0027】
「検出ユニット」は、定性的(はい、または、いいえ)、半定量的および/または定量的な方法で、液体の生物学的試料またはその一部のパラメータまたは特性の検出を可能にする。とりわけ、このようなパラメータまたは特性は、疾病または健康状態に関連付けられる特定のインジケータの有無、物質の濃度、細胞、ウイルス、ビーズまたは細胞小器官などの指定された種類の粒子の濃度、抗体の濃度、核酸配列または他の生物学的な標的分子の存在または濃度を含んでもよい。検出を実行するために、検出ユニットは、たとえば、反応を行うための第2の管または容器、試薬、コンテナ、ピペッタなどの液体操作構造、加熱または冷却器、混合器、光度計などの検出器、蛍光計、発光計、顕微鏡、蛍光顕微鏡、熱サイクル装置、フローサイトメータ、質量分析器、核酸シーケンサ、光学スキャナなどを含んでもよい。
【0028】
「ロボットマニピュレータ」は、本明細書に記載の自動化システムの構成要素を操作するように構成される自動化されたマニピュレータである。いくつかの実施形態において、これは、(x軸および/またはy軸に沿って)横方向に、および(z軸に沿って)垂直方向に移動させられ得る。いくつかの実施形態において、ロボットマニピュレータは、自動化システムの一部または全ての中で移動させられ得る。移動可能であるために、ロボットマニピュレータは、柔軟に垂設されてもよいし、および/または、柔軟なロボットアームを含んでもよい。たとえば、本明細書に記載の自動化システムの底部または天井に固定される回転可能なロボットアームによって移動は容易にされてもよい。代替的または付加的に、伸縮アームによって移動が達成されてもよい。また、ロボットマニピュレータは、自動化システムの底部で、その基部で回転可能な2つの部分からなるロボットアームを含んでもよく、アームの2つの部分は、ヒンジまたは別の種類の接合を介して互いに取り付けられる。ヒンジの移動およびアームのその基部での回転を組み合わされることによって、ロボットマニピュレータは、全ての方向に移動可能であってもよい。これはたとえば、本明細書に記載の回転可能な容器や、自動化システムの他の構成部品を把持および操作するために機能し得るグリッパアームを含み得る。このような実施形態において、ロボットマニピュレータはグリッパである。代替的または付加的に、ロボットマニピュレータは、真空または少なくとも負圧を印加するための手段を含み得る。このような構造は、たとえば、真空カップであってもよいし真空カップを含んでもよい。
【0029】
「最大半径」という語は、本明細書に記載の回転可能な容器に関しては、回転可能な容器の長手方向の(概して略垂直な)回転軸からその内側の側壁表面までの最大直交距離のことをいう。特定の高さでの、回転可能な容器の特定の水平方向の断面での半径は、回転可能な容器の異なる高さのものとは異なっている場合がある。同様に、上部、中間部または下部など、回転可能な容器の特定の部分内でも、半径は互いに異なる場合があり、それぞれの部分のどの高さで半径が考慮されるかに応じて異なる場合がある。
【0030】
たとえば、中間部の中で、回転可能な容器の底部から5cmの高さで測定された半径は、7cmの高さで測定された半径よりも小さい場合もあるし大きい場合もある。このような実施形態において、部分は、それぞれの部分の他の高さの半径と同じかそれより大きい半径である高さを有する。この半径を、その特定の部分の「最大半径」と称する。
【0031】
ゆえに、「部分の最大半径」という語は、別々の部分に見られる最も大きい最大半径を意味する。全体の回転可能な容器の最大半径にも同様の論理が適用される。
【0032】
本明細書に記載の自動化システムのいくつかの実施形態において、上部は第1の最大半径を有し、下部は第2の最大半径を有し、中間部は、第1の最大半径および第2の最大半径のいずれよりも大きい第3の最大半径を有する。
【0033】
このような実施形態において、中間部のより大きな最大半径は、上部および下部両方の壁よりも遠くに延びる側方収集チャンバの存在によるものである。遠心力の影響下で、回転可能な容器のその長手軸周りでの回転時に、回転可能な容器の下部に最初に存在していた液体の生物学的試料は、中間部の側方収集チャンバへと移動する。上部の最大半径は中間部の最大半径よりも小さいので、また側方収集チャンバの容量は液体の生物学的試料の体積よりも大きいので、試料は容器を出ることなく側方収集チャンバに留まる。懸濁液の密度よりも高い密度で生物学的試料中に存在する粒子は、側方収集チャンバの内壁に向かって移動し、沈殿を生じる。回転可能な容器の制御された減速時に、液体は、重力にしたがって、回転可能な容器の底部、ひいては下部へと戻るように流れる。
【0034】
制御された加速/減速プロトコルを用いて、側方収集チャンバ中に沈殿した粒子は、本明細書に記載の回転可能な容器に加えられた液体中に再懸濁される。再懸濁された粒子は、印加されたあらゆる遠心力に重力が取って代わるとすぐに、回転可能な容器の下部へと下方に流れる。
【0035】
例示的な実施形態
液体の生物学的試料中に含まれる粒子を処理するための自動化システム
図1Aは、本明細書に記載の自動化システム(1)の例示的な実施形態の概略図を示す。この図に示される実施形態において、自動化システム(1)は、回転可能な容器(200)を含む粒子処理ステーション(100)を有する。粒子処理ステーション(100)内で、回転可能な容器(200)は、アダプタ(120)を介してロータ(102)によって保持される。アダプタ(120)は、ロータ(102)と回転可能な容器(200)との間の力の連結を確立するための機械的インターフェースとして作用する。ロータ(102)は、ロータ(102)により保持される回転可能な容器(200)の制御された環状動作を可能にするために、回転アクチュエータ(101)によって駆動される。回転可能な容器(200)はそれにより、その回転軸(201)周りで回転させられる。
【0036】
ここに示す実施形態の自動化システム(1)はさらに、いくつかの構成要素を備える制御ユニット(110)を含む。特定のプロトコルにしたがって、自動化システム(1)は、回転アクチュエータ(101)の速度、回転方向、加速、減速、回転可能な容器(200)の相対位置などを含む回転アクチュエータ(101)の動作を制御してもよい。この実施形態において、制御ユニット(110)は、データ管理ユニット(112)に記憶されたデータに基づき上述の動作を実行する制御プログラム(111)を含む。示される実施形態において、ユーザは、制御ユニット(110)の通信インターフェース(114)を介して自動化システム(1)を監視してもよく、または操作すらしてもよい。通信インターフェース(114)は、たとえば、タッチスクリーンなどのディスプレイを含んでもよい。
【0037】
自動化システム(1)、特に回転アクチュエータ(101)に充分な動力を供給するために、
図1Aには制御ユニット(110)の一部として電力変換器(115)も示されている。
【0038】
本明細書に記載の自動化システム(1)は、
図1Bに示されるような、好都合な基礎構造を確立するための他の構成要素をさらに含んでもよい。これらの他の構成要素の中には、粒子処理ステーション(100)が取り付けられるベースプレート(900)が存在してもよい。いくつかの実施形態においては、ベースプレート(900)によって2つ以上の粒子処理ステーション(100)が担持されてもよいので、自動化システム(1)のスループットおよび柔軟性を向上させる。
【0039】
さらに、自動化システム(1)は、いくつかの実施形態においては、処理を環境から、または環境を処理から遮断する筐体(900.1)を含んでもよい。
【0040】
自動化システム(1)は、未使用の回転可能な容器(200)用の保管ユニットを含んでもよい。
【0041】
また、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の自動化システム(1)は、所定数の回転可能な容器(200)を運ぶラック(902)を含む。ラック(902)は、1つまたは複数の回転可能な容器(200)を、粒子処理ステーション(100)または自動化システム(1)の別の構成要素へ取り付け、および/またはそれらから取り外すために機能してもよい。
【0042】
他の実施形態において、自動化システム(1)は、自動化システム(1)内で構成要素を移送するためのロボットマニピュレータ(903)を含んでもよい。ロボットマニピュレータ(903)の一例として、回転可能な容器(200)または他の構成要素を搬送するため、およびこれらを自動化システム(1)内の様々な位置で取り付け/取り外しまたはロック/解除するために、グリッパが用いられてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の自動化システム(1)は、廃棄コンテナ(905)も含む。このようなコンテナ(905)は、液体廃棄物、もしくは固体廃棄物、またはその両方用に指定されてもよい。液体廃棄コンテナおよび/または固体廃棄コンテナは、廃棄ステーションに含まれていてもよい。
【0044】
本明細書に記載の自動化システム(1)の他の構成要素は、いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の温度制御要素(190)を含んでもよい。たとえば、化学反応を生じさせるための培養を実行するために、回転可能な容器(200)内に特定の温度が必要とされる場合がある。このような反応は、細胞または組織の染色、核酸または抗体の結合などを含んでもよい。処理方法の異なるステップには異なる温度が要求される場合もあるので、単一または複数の温度制御要素は、特定の時点で特定の温度に調節し、維持するためのサーモスタットを含んでもよい。適切な温度制御要素は、たとえば、ペルチェ素子、空気冷却または加熱などを含む。
【0045】
さらに、液体レベルを検出する(液体レベル検出(Liquid Level Detection)=LLD)ためのシステム、温度センサ、試料(920)または回転可能な容器(200)の存在を検出するためのセンサ、ロータ(102)の速度、加速および位置を検出するための回転エンコーダ、自動化システム(1)内の空気湿度を制御するためのセンサおよび適応要素などの、監視要素が自動化システム(1)に存在してもよい。
【0046】
ゆえに、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の自動化システム(1)は、自動化システム内の空気湿度を測定するための湿度センサと、空気湿度を調整するためのノズルとを有する空気湿度制御ユニットをさらに備える。
【0047】
自動化システム(1)は、ピペッタ(910)に加えて、流体操作装置またはシステムをさらに含んでもよい。ピペッタ(910)または他の構成要素は、あらゆる液体を回転可能な容器(200)の中および外に駆動するためのポンプによって駆動されてもよい。
【0048】
自動化システム(1)は、たとえば、存在する場合には、再利用可能なスチール針や、ピペットチップ(912)の場合に、ピペッタ(910)を清浄化するための洗浄ステーションをさらに含んでもよい。ピペッタ(910)は、ポンプを含むピペット処理システムにわたって圧力差を伝えるシステム液の助けを借りて動作されてもよい。このようなシステム液は、たとえば、水を含んでもよい。
【0049】
液体の生物学的試料(920)の操作に関連して、自動化システム(1)は、試料を自動化システム(1)へと運ぶために、フィーダーまたは別の適切な構成などの試料供給ユニット(921)をさらに含んでもよい。
【0050】
特定の液体の生物学的試料(920)の識別のために、これらは、一次元または二次元のバーコード、RFIDタグなどの識別タグを含んでもよい。
【0051】
さらに、いくつかの実施形態において自動化システム(1)は、第1の試料管から液体の生物学的試料(920)の定分量を取り出すための試料採取器を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、回転可能な容器(200)は使い捨て可能な構成要素であり、これは一度しか使用されないことを意味する。他の実施形態において、回転可能な容器(200)は、粒子(930)を含む後続の液体の生物学的試料(920)を処理するため、またはいくつかの反復的なステップを処理するために再使用されてもよく、その間で回転可能な容器(200)は、1つの試料、分析またはステップから他のものへのキャリーオーバーコンタミネーションを回避するために清浄化される。このような実施形態において、回転可能な容器(200)は、粒子処理ステーション(100)に取り付けられてもよい。清浄化ステップは、たとえば、洗浄緩衝液を追加すること、または回転可能な容器(200)を専用の洗浄ステーションへ移送することによってもたらされてもよい。言及した洗浄緩衝液などの洗浄試薬は、ピペッタ(910)によって、またはシリンジポンプなどの別の専用の移送システム(914)によって運ばれてもよい。
【0053】
回転可能な容器(200)を洗浄することを含むものなど、いくつかの実施形態において、清浄化された回転可能な容器(200)は、洗浄後、使用可能となる前に乾燥されなければならない場合がある。残っている洗浄緩衝液は、いくつかの場合においては、さらなる処理または分析ステップに有害である場合がある。結果として、自動化システム(1)は、乾燥装置(915)を含んでもよい。たとえば、乾燥装置(915)は、圧縮空気、いくつかの実施形態においては加熱空気を、回転可能な容器(200)内に吹き込むためのファンもしくは同様の装置、または回転可能な容器(200)から残っている液体を蒸発させるための加熱器であってもよい。
図1Bは、ピペッタ(910)、洗浄緩衝液運搬システム(914)および乾燥装置(915)を含む一体型のユニットを示す。
【0054】
自動化システム(1)は、いくつかの実施形態においては、液体の生物学的試料(920)に含まれる粒子(930)の処理のために有用な試薬(950)または他の液体をさらに含む。このような他の液体は、洗浄緩衝液、溶解緩衝液、染色緩衝液、細胞固定のための緩衝液、細胞穿孔のための緩衝液、分析物結合粒子の懸濁液などを含んでもよい。このような実施形態において、試薬(950)は、バーコードまたはRFIDタグなどの識別タグを含んでもよい試薬コンテナ(951)に保持されてもよい。
【0055】
これらの試薬(950)の中には、いくつかの実施形態においては、回転可能な容器(200)の側方収集チャンバ(220)の内壁に対する所望の粒子(930)の付着を促すための結合緩衝液が存在してもよい。
【0056】
同様に、試薬(950)は、回転可能な容器(200)の側方収集チャンバ(220)の内壁に対する粒子(930)の付着を抑える溶出緩衝液を含んでもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の自動化システム(1)は、液体の生物学的試料(920)および/またはそこに含まれる粒子(930)を分析するための分析モジュール(960)を含む。これに関連して、「分析する」という語は、粒子(930)が細胞である実施形態などでは粒子(930)から分析結果を生じさせ、粒子(930)が分析物結合粒子などである実施形態においては粒子(930)を用いて分析結果を生じさせることを意味する。
【0058】
分析モジュール(960)は、フローサイトメータ、コールターカウンターなどの細胞計数器、デジタル顕微鏡、蛍光活性化細胞選別器(FACS)または細胞計数器などの粒子分析器(961)を含んでもよい。このような実施形態において、粒子処理ステーション(100)および粒子分析器(961)は、粒子の処理および処理済みの粒子(930)の分析を網羅する一体型システムの一部であってもよい。このような一体型システムは、自動化インターフェース(961.1)を含んでもよい。このような実施形態において、粒子分析器(961)は、中間のコンテナに移送されることなく、回転可能な容器(200)から直接的に処理済みの粒子(930)を受け取るように構成されてもよい。分析中、誤った結果を導くおそれがあることから粒子(930)の沈殿を回避するために、回転可能な容器(200)はその長手軸(201)周りで回転させられてもよい。
【0059】
図1Cは、本明細書に記載の自動化システム(1)のいくつかの実施形態に存在するさらなる構成要素を示す。回転可能な容器(200)内の粒子(930)を光学的に分析するために、自動化システム(1)にスキャナ(600)を含むことが有利である場合がある。このような光学分析は、たとえば、異なる粒子(930)の有無を検出すること、これらの表面上の濃度または密度を測定すること、複数の異なる粒子(930)の比率を判定すること、特定の粒子(930)の状態を分析すること、粒子の形態を結像すること、粒子を分類することなどを含んでもよい。
【0060】
この図に示されるスキャナ(600)は、回転可能な容器(200)を正確に保持するための精密なホルダ(601)と、回転可能な容器(200)をその長手軸(201)周りで回転させることができる精密な回転駆動部(601)と、所定の位置への回転可能な容器(200)の精密および正確な位置決めを可能にする精密なエンコーダ(603)と、照明器(630)および結像光学系(640)を含む光検出器アレイ(620)を有する検出ユニット(610)とを有する。
【0061】
光検出器アレイ(620)は、たとえば、線形フォトダイオードアレイまたはCMOS線形結像アレイなど、単線の線形光検出器であり得る。マルチスペクトルの結像を可能にする、それぞれが自らのフィルタを有するいくつかの並行する検出器アレイを有してもよい。また、光検出器アレイは、自らの(マイクロ)光学系を携行でき、感度を向上させることができる。センサは、いわゆるTDI線形センサアレイ(TDI=時間遅延積分)であってもよい。精密な回転駆動部(601)と共に、光検出器アレイは、回転可能な容器(200)の側方収集チャンバ(220)の内壁の表面上に存在する粒子(930)の像(680)を作り出すことができる。
【0062】
照明器(630)は、光検出器アレイ(620)によって観察される側方収集チャンバ(220)の所定の照射をもたらす。照明器(630)は、前方ライト(630a)または後方ライト(630b)を用いてもよい。
【0063】
照明器(630)の一次光源(631)は、たとえば、ハロゲンランプ、LED、白色LED、有色LED、タングステンまたは水銀蒸気ランプ、閃光ランプ、レーザーなどであってもよい。また、多色LEDであってもよく、LEDの色は調整され得る。一次光源(631)は、いくつかの実施形態においては、その照射標的と幾何学的に合致するために細長い形状を有してもよい。
【0064】
照明器(630)は、レンズ、拡散器、光学ファイバー、テーパー、ホログラフィック素子、平面および凹面ミラーなど、発せられた光を成形、誘導、コリメートまたは均衡化させることを要求される任意の光学素子(633)を有してもよい。
【0065】
照明器(630)は、一次光源(631)の基礎のスペクトルを所定の範囲に制限するためにフィルタ(634)を有してもよい。このようなフィルタ(634)は、干渉フィルタまたは吸収フィルタ、調整可能なフィルタなどを含んでもよい。照明器(630)は、さらなる実施形態においては、ダイクロイックミラーまたは半透明ウィンドウ(635)を有してもよい。またいくつかの実施形態において、照明器(630)は、ダイクロイックフィルタホイール(636)および対応する駆動部(637)など、フィルタ(634)を切り替えるための機械的手段を有してもよい。
【0066】
上述したように、スキャナ(600)は、要求された光を誘導するように構成および配置される結像光学系(640)を含んでもよく、結像光学系(640)は、いくつかの実施形態においては、レンズまたはファイバー、平面または凹面ミラー、オートフォーカス装置(641)、平凹シリンダレンズなど湾曲した結像面を補うためのレンズなどを含む。いくつかの実施形態において、結像光学系(640)は、観察される光の帯域幅を制限するために光学フィルタ(642)をさらに含む。
【0067】
図示される実施形態において、スキャナ(600)は、たとえば、精密な回転駆動部(602)の位置、照明器(630)の状態、いくつかの異なるフィルタが存在する場合の異なるフィルタ(642)の選択、オートフォーカス装置(641)の焦点などを含む、スキャナ(600)の要素を制御するための制御ユニット(690)をさらに含む。制御ユニット(690)は、光検出器アレイ(620)から、監視された粒子(930)に関するデータを受け取り、いくつかの実施形態においては、そのデータから分析結果を導き出してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、照明器(630)は、一次光源(631)としてレーザーを備えてもよい。このような実施形態における適切な検出器は、たとえば、光電子倍増管などの単一の光センサであってもよい。このような実施形態において、照明器(630)は、側方収集チャンバ(220)の内壁に存在する粒子(930)に関する光データを受け取るために、(回転可能な容器(200)が周りを回転させられる長手軸(201)に対してほとんど平行な)垂直方向に主に動かされてもよい。精密な回転駆動部(601)と共に、この配置は、表面およびその上の粒子(930)の展開図を生じさせることができる。(オートフォーカスの方向における)水平移動と共に、粒子(930)の三次元の像をも取得することができ、これは潜在的な機械公差を克服するのに貢献する。
【0069】
さらなる実施形態において、回転可能な容器(200)は、その内側に配向マークを含んでもよく、これは絶対位置または相対位置の識別を可能にする。
【0070】
またいくつかの実施形態において、検出が、一次光による励起に依存しない発光に基づく場合、照明器(630)は必要とされない。
【0071】
自動化システム(1)は、いくつかの実施形態においては、対象の粒子(930)を結像するために、環状周囲チャンバを備える回転可能な容器(700)を含む。
【0072】
ゆえに、本明細書に記載の別の態様は、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)を光学的に分析するための自動化システム(1)であって、自動化システム(1)は、
a)液体の生物学的試料(920)を含む環状周囲チャンバ(710)を備える回転可能な容器(700)であって、
容器(700)が周りを回転可能な長手軸(201)、
透明の外壁(712)、
粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)、
上部(205)の下に位置し、液体を保持するための環状周囲チャンバ(710)を備える中間部(206)であって、環状周囲チャンバ(710)は、その内壁の表面上に、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)用の沈殿領域(301)を備え、環状周囲チャンバ(710)は、上部開口(210)に流体接続されている、中間部(206)
を備える回転可能な容器(700)と、
-回転可能な容器(700)をその長手軸(201)周りで制御された方法で回転させるための回転アクチュエータ(101)と、
-液体の生物学的試料(920)を回転可能な容器(700)内に導入するため、および/または、そこから取り出すためのピペッタ(910)と、
-自動化システム(1)を制御するための制御ユニット(110)と、
-液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)を光学的に分析するための結像光学系(640)を備えるスキャナ(600)と
を備える。
【0073】
回転可能な容器
本明細書に記載の別の態様は、液体の生物学的試料(920)に含まれる粒子(930)を処理するための回転可能な容器(200)であって、回転可能な容器(200)は、
容器(200)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
回転可能な容器(200)が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部(207)と、
上部(205)と下部(207)との間に位置し、回転可能な容器(200)が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバ(220)を備える中間部(206)であって、収集チャンバ(220)は、その内壁の表面上に、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)用の沈殿領域(301)を備える、中間部(206)と
を備える。
【0074】
図2Aは、回転可能な容器(200)の例示的な実施形態の概略図を、垂直方向の断面図(上の図)および上面図(下の図)として示す。上に記したように、このような回転可能な容器(200)は、液体からの粒子の分離、直径および/または密度などの異なる特性に基づく異なる粒子の互いからの分離、液体中の粒子(930)の(再)懸濁または混合、粒子の清浄化/洗浄、粒子(930)との化学反応または粒子(930)の化学反応のための培養、ならびに他の用途など、様々な方法に適切であってもよい。
図2Aは、容器(200)が周りを回転可能な長手軸(201)を垂直方向の破線で示す。いくつかの実施形態において、軸(201)は、重力方向と略平行、この場合は略鉛直であってもよい。
【0075】
この図は、回転可能な容器(200)の上部(205)、中間部(206)および下部(207)も示す。
【0076】
自動化システム(1)に関連して記したように、本明細書に記載の回転可能な容器(200)のいくつかの実施形態において、上部(205)は第1の最大半径を有し、下部(207)は第2の最大半径を有し、中間部(206)は第1の最大半径および第2の最大半径のいずれよりも大きい第3の最大半径を有する。
【0077】
上部(205)は、回転可能な容器(200)内への液体の導入、または回転可能な容器(200)からの液体の取り出しを可能にする上部開口(210)を含む。いくつかの実施形態において、開口(210)は、クロージャ(211)を含んでもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、クロージャ(211)は、容易に再び開放でき、状況が要すれば再び閉鎖され得る。概して、クロージャ(211)は、液体の生物学的試料(920)を汚染から保護する一方で、特に臨床試料が病原体や毒性物質を含む可能性があることから、環境を試料(920)による汚染から保護するという効果を奏する。さらに、クロージャ(211)は、液体の生物学的試料(920)など、回転可能な容器(200)内部のあらゆる液体の蒸発を回避するのに貢献する。適切なクロージャ(211)は、異なる材料のものでもよく、異なる形状および色を想定してもよい。いくつかの実施形態において、クロージャ(211)は、ねじ込みキャップであるので、回転可能な容器(200)上に螺合でき、また回転可能な容器(200)から螺合を解除され得る。他の実施形態において、クロージャ(211)は、回転可能な容器(200)とスナップフィット機構を形成する。いくつかの実施形態において、クロージャ(211)は、エラストマー、目詰まりしたフォイル(silted foil)、または別の貫通可能な材料で作製された隔壁など、貫通可能なキャップである。このような実施形態において、回転可能な容器(200)の内部は、特にクロージャ(211)が弾性材料の貫通可能な隔壁である実施形態においては、ピペッタ(910)との相互作用の前後および間は、その周囲から遮断されてもよい。このような実施形態において、ピペット処理針は、隔壁を貫通し、液体の生物学的試料(920)を分注し、再び取り出されてもよく、隔壁に結果として生じる孔は、隔壁の弾性特性により実質的に再び閉鎖し得る。
【0078】
この図において、側方収集チャンバ(220)は、回転可能な容器(200)の中間部(206)を形成し、容器(200)の周囲の周りで環状に延在する。上述のように、側方収集チャンバ(220)は、回転可能な容器(200)がその長手軸(201)周りで回転している間、液体の生物学的試料(920)が主に位置する場所である。現在の図は、側方収集チャンバ(220)内の液体が、どのように、遠心力によってその内壁へと押され、特定の回転加速度を超えたときに略垂直な表面を形成するのかを概略的に示している。この特定の実施形態の側方収集チャンバ(220)は、図に示されるように約1.3mlの容量を有する。他の実施形態において、側方収集チャンバ(220)は、長手軸(201)に対して回転対称であるいくつかの区画へと分割されてもよい。
【0079】
下部(207)も、その内側空間(202)内に液体を含むように概略的に示されている。液体は、回転可能な容器(200)が停止している間は均一な水平面を形成する。この実施形態において下部(207)の壁は、テーパー状で丸みを帯びているので、液体が蓄積するおそれがあり、ピペッタ(910)がほとんどアクセスできないおそれのある潜在的な「死角」を回避する。同様に、部分内の壁の間の交点および/または(たとえば、下部(207)と中間部(206)との間、または上部(205)と中間部(206)との間など)部分間の角は、いくつかの実施形態においては、角で液体や粒子(930)を捉えたり液体バリアを形成したりすることを回避するために丸みを帯びている。
【0080】
ゆえに、本明細書に記載の回転可能な容器(200)のいくつかの実施形態において、下部(207)の壁はテーパー状である。
【0081】
さらなる実施形態において、下部(207)の壁は丸みを帯びている。
【0082】
さらに他の実施形態において、部分内の壁の間の交点および/または部分間の角は丸みを帯びている。
【0083】
また、図示される実施形態において、下部(207)はバッフル(203)を備える。バッフル(203)は、回転可能な容器(200)の内壁からその中に含まれる液体への回転加速度の適用を調節する。この実施形態において、これは、下部(207)で、回転可能な容器(200)の内壁から突出し、回転可能な容器(200)がその長手軸(201)周りで回転させられると、その中の液体を回転させるように導く。
【0084】
ゆえに、本明細書に記載の回転可能な容器(200)のいくつかの実施形態において、下部(207)はバッフル(203)を備える。
【0085】
本明細書に記載の回転可能な容器(200)は、熱的に制御されるための熱インターフェースや、一次元もしくは二次元のバーコードまたはRFIDタグなどの識別タグなどをさらに含んでもよい。回転可能な容器(200)は、さらなる実施形態においては、たとえば、感光性の試料成分、粒子(930)または試薬の劣化のリスクを減少させるために、光学的に遮断されてもよい。このような遮断は、回転可能な容器(200)の不透明な壁などの手段によって与えられてもよい。このような実施形態において、回転可能な容器(200)は、回転可能な容器(200)の内部を観察し、または監視するため、たとえば、粒子(930)を観察するため、または、周りの流体から分離され、側方フィレット(220)に沈殿した粒子(930)を光学的に定量化するため、ウィンドウまたは他の適切な光学インターフェースを含んでもよい。またいくつかの実施形態において、回転可能な容器(200)は、液体レベル検出(LLD)を容易にするための構造を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、このような構造は、容量LLDを容易にするためにカーボンを含んでもよい。本明細書に記載するように、回転可能な容器(200)は、特定の物質で被覆されてもよい。たとえば、側方収集チャンバ(220)の内壁の表面上の沈殿領域(301)は、特定の粒子(930)の結合を容易にする表面構造を有してもよい。
【0086】
図2Bの概略図は、
図2Aのものと比較可能な回転可能な容器(200)の断面図を示す。
【0087】
この図においては、回転可能な容器(200)の特定の実施形態の寸法および形状が表示されている。粒子(930)の種類、試料(920)の種類、所望のスループット速度、平衡化の必要性などの様々な条件に応じて、回転可能な容器(200)の形状および寸法は適合されてもよい。重要な寸法は、たとえば、h1(側方収集チャンバ(220)またはその中に保持される液体それぞれの高さ)、h2(側方収集チャンバ(220)の水平方向の突出部)、h3(回転可能な容器(200)の下部(207)の高さ)、R(中間部(206)の最大半径)、および側方収集チャンバ(220)の容量Vmax(収集チャンバ)またはVmax(下)で示される下部(207)の容量である。同様に、それぞれの用途に応じていくつかの角度が変更されてもよい。とりわけ角度はα(下部(207)の対向するテーパー状の壁の断面接線の交点での間)、β(この実施形態の側方収集チャンバ(220)は、上壁、下壁および中間壁を有し、βは、下壁と、長手軸(210)に垂直な仮想線との間の角度である)およびγ(側方収集チャンバ(220)の下壁と、回転可能な容器(200)の下部(207)の壁との間の外角)である。表1は、適切な値の選択肢を表示するが、他の値も可能である。
【0088】
【0089】
0.5ml~3mlを保持する回転可能な容器(200)の4つの特定の変形例を
図2Cに示す。
図2Aのように、回転可能な容器(200)は、垂直方向の断面図(上の図)および上面図(下の図)で示される。図は、0.5ml(A)~3ml(D)の様々な対象の処理体積を扱う例示的な実施形態を示す。
【0090】
回転可能な容器(200)をその長手軸(201)周りで移動させるロータ(102)の専用の受容部(105)で保持される回転可能な容器(200)の断面図は、
図2Dで提供される。本明細書に記載の回転可能な容器(200)は、上部開口(210)を通した蒸発を減少させるためにチムニ(212)を含む。回転可能な容器(200)が自動化システム(1)内で容易に移動させられ得るように、チムニ(212)が、ロボットグリッパに適したハンドル(230)も備える。ロータ(102)および回転可能な容器(200)は、回転可能な容器(200)をロータ(102)に確実に維持するために互いに対して相互作用するロック機構を有してもよい。ロータ(102)は、回転可能な容器(200)に含まれるその対応部分(240)に適合するロック(109)を有する。それぞれのロックは、たとえば、圧力嵌めもしくは圧入または他の適切な機構を介してもたらされてもよい。これに関連して、ロックは、可逆的なものであってもよいし、不可逆的なものであってもよい。ロックが可逆的である実施形態において、回転可能な容器(200)は、必要であれば損傷を受けることなくロータ(102)から容易に取り出され得る。ロータ(102)自体はコンソール(103)によって保持される一方で、軸受け(104)-図示される実施形態においては玉軸受け-が、コンソール(103)に対するロータ(102)の回転のために、誘導を提供し、摩擦を減少させる。
【0091】
図2Eは、本明細書に記載の回転可能な容器(200)の実施形態の斜視図を示し、容器(200)は、下部(290)および上部(291)の2つの部品を一緒に接合することによって組み立てられている。このような部品は、射出成形によって別々に製造され、その後、圧力嵌め、レーザー接合、超音波接合、UV硬化性接着剤による接着などの技術によって接合される。回転可能な容器(200)の単一射出成形された部品の組み立ては、密封リム(292)を作ることによって完了されてもよい。組み立てられた回転可能な容器(200)の気密性の品質管理を理由に、これは圧縮空気または別の気体の印加によって制御されてもよい。代替的に、回転可能な容器(200)は、延伸ブロー成形などを用いて製造されてもよい。
【0092】
図2Fは、
図2Eの回転可能な容器(200)のそれぞれの断面図を示す。
【0093】
回転可能な容器(200)は、問題となる粒子の処理と両立可能な任意の材料で作製されてもよい。たとえば、細胞を処理する場合、適切な材料はポリプロピレンであってもよい。延伸ブロー成型による製造の場合、PETが用いられてもよい。
【0094】
図3Aは、本明細書に記載の回転可能な容器(300)の特定の実施形態の垂直断面図を表示する。この実施形態において、回転可能な容器(300)の機械的ロック(240)は、その底部の下の凹部である。凹部(240)は、ロータ(102)に含まれるその対応部分と相互作用してもよい。回転可能な容器(300)の下部(207)の内部空間(202)に向かって延びるバッフル(203)は、上述のように液体を移動させるのに貢献する。回転可能な容器(300)は、側方収集チャンバ(220)の内壁に位置する沈殿領域(301)を有し、回転可能な容器(300)をその長手軸(201)周りで回転させたときの遠心力により粒子(930)が沈殿する。沈殿領域(301)は、いくつかの実施形態においては、液体がこぼれないように液密である。
【0095】
本明細書に記載の回転可能な容器(300)のいくつかの実施形態において、側方収集チャンバ(220)の内面の沈殿領域(301)は、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子を保持するための保持構造を有する。
【0096】
「保持構造」は、いくつかの実施形態においては、所定の条件下で粒子(930)を保持および解放するために、沈殿領域(301)の内面が研磨され、マイクロ構造化され、所定の粗さを有し、または、塗膜を有するか、もしくはプラズマ処理、砂の吹付(sand-blown)、スパッタなど他の方法で処理されていることを意味してもよい。いくつかの実施形態において、表面粗さは、0.25~100μmの範囲であり、これは、粒子(930)が白血球などの血球である実施形態において特に適切である。いくつかの実施形態において、沈殿領域(301)の表面は、0.5~50μmまたは1~25μmの粗さを有する。沈殿領域(301)の材料は、所定の条件下で細胞を保持および解放するように選択される。適切な材料は、とりわけ、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、316Lなどのステンレス鋼、または他の材料を含む。これらの材料は、粒子(930)が白血球などの血球である実施形態において特に有利である。
【0097】
いくつかの実施形態において、保持構造は、金属酸化物またはシリカ表面を含む。ガラス表面などの二酸化ケイ素の表面は、カオトロピック剤の存在下で核酸を結合するために用いられてもよい。それゆえ、本明細書に記載の回転可能な容器(300)のいくつかの実施形態において、保持構造は二酸化ケイ素の表面を備え、これはいくつかの実施形態においてはガラス表面である。このような実施形態において、回転可能な容器(300)の側方収集チャンバ(220)の外側の内壁は、カオトロピック条件の下で側方収集チャンバ(220)の保持表面に対する粒子(930)の選択的な結合を達成するために、別の材料で作製されてもよい。この実施形態は、底部での沈殿を用いる従来の遠心分離の必要性、シリカ濾過器の必要性、またはガラス表面を備える磁性ビーズの必要性なしに、Boomら(欧州特許第389063号明細書)に基づく技術の適用を可能にする。
【0098】
また、いくつかの実施形態において、保持構造は、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)を結合するための表面分子を備える。
【0099】
いくつかの実施形態において、このような表面分子は、核酸捕捉プローブ、mRNAを結合するためのオリゴまたはポリ(dT)鎖、免疫グロブリンのFc部分を結合するためのタンパク質A、特異的なタンパク質を結合するための抗体のFab断片、ヒスチジンタグを結合するためのニッケル、ストレプトアビジンもしくはビオチン、インテグリン、付着因子、または他の細胞表面分子などであってもよい。保持構造は、たとえば、それぞれの生物学的標的に特異なビオチン化プローブへの暴露などにより、「要求に応じて」官能化され得るスプレプトアビジン被膜を含んでもよい。いくつかの実施形態において、粒子(930)は、細胞表面分子をその膜の外層上で暴露する細胞であるので、特定の細胞は、側方収集チャンバ(220)の保持構造の表面分子によって捉えられ得る。たとえば、血液試料に関しては、白血球、赤血球、単級の細胞表面の抗原に特異的に結合する適切な抗体が、当業者に既知である(たとえば、T細胞にはCD2/CD3、単球にはCD14、顆粒球および単球にはCD15、マクロファージにはCD16、血小板、単球およびマクロファージにはCD36、白血球にはCD45など)。このような目的で、これらの抗体または他の結合分子は、当業者に既知の方法によって、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)の表面上に固定されてもよい。固定方法は、リンカー分子を含んでもよいし、共有結合および/または非共有結合を含んでもよい。同様に、粒子(930)がバクテリアである場合には、表面はバクテリアまたはその特定の属もしくは種に特異な抗体を被膜されてもよい。
【0100】
他の保持構造も可能であり、そのいくつかを本明細書に記載する。
【0101】
図3Bは、
図3Aに示したものと同様の回転可能な容器(300)の実施形態を示す。
【0102】
この図に示される実施形態において、側方収集チャンバ(220)内の沈殿領域(301)には垂直溝(302)が存在し、回転が減速または停止されたときの望ましくない再懸濁から粒子を機械的に保護することによって、沈殿中または沈殿後の沈殿した粒子を保持することに貢献する。
【0103】
ゆえに、本明細書に記載の回転可能な容器(300)のいくつかの実施形態において、保持構造は垂直溝(302)を備える。
【0104】
垂直溝(302)は、いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの粒子(930)を保持するのに充分な大きさである。いくつかの実施形態において、寸法は、深さが2~2,000μm、5~1,000μmまたは20~300μm、幅が50~1,000μm、ピッチが0~500μmである。
【0105】
回転可能な容器(300)のその長手軸(201)周りでの回転中または回転後に溝(302)内に粒子(930)がある実施形態において、粒子(930)は、周りの液体の流れから少なくとも部分的に遮断されるので、粒子(930)を保持構造から引き離す力を減少させる。この遮断は、この実施形態における溝(302)が垂直であるため、回転可能な容器(300)を加速または減速させるときに液体を回転させる回転流の方向に対してほとんど直角であるという事実によって促進される。付加的に、垂直溝(302)は、本明細書に記載されるように、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子を結合するための表面分子を含んでもよい。一方で、溝(302)は、充分な回転加速または減速のときには依然として粒子を解放するように配置される。
【0106】
図3Cに示す実施形態は、保持構造として環状の水平溝(303)を有する回転可能な容器(300)を特徴付ける。これらの溝(303)は、側方収集チャンバ(220)の下部の内壁の周りに延在する。いくつかの実施形態において、環状の水平溝(303)は、回転可能な容器(300)の中間部(206)と下部(207)との間の接続部分にある。いくつかの実施形態においては、1つの溝(303)のみが存在するが、他の実施形態においては、複数の溝(303)が存在する。概して、この構造は、粒子(930)に対しては機械的な障害をもたらすが、周りの液体に対してはそれほど機械的な障害をもたらさないことから、粒子(930)を中間部(206)の側方収集チャンバ(220)に保持することに貢献する。ゆえに、回転可能な容器(300)のその長手軸(201)周りでの回転動作が停止すると、液体は重力にしたがって下部(207)へと戻るように流れるが、粒子(930)は、環状の水平溝(303)、およびいくつかの実施形態においてはさらなる保持構造の助けを借りて、側方収集チャンバ(220)に保持される。
【0107】
図3Dは、
図3Cに示す特徴部を有する回転可能な容器(300)の一実施形態を示し、中間部(206)の側方収集チャンバ(220)から回転可能な容器の下部(207)へと延びる垂直方向の毛管溝(304)を付加的に表示する。垂直方向の毛管溝(304)は、ゆえに回転可能な容器(300)が停止しているときの重力駆動の流れの方向にほぼ平行に向けられる。この付加的な手段は、粒子(930)が中に保持された状態での、側方収集チャンバ(220)からの液体の完全な取り出しを容易にする。
【0108】
開裂弁を有する回転可能な容器
図4は、開裂弁(450)を伴う、本明細書に記載の回転可能な容器(400)の別の実施形態を示す。前のものと同様、ここで表示される図は、回転可能な容器(400)の垂直断面図である。
【0109】
図3A~3Dに関して記載したように、この実施形態も、側方収集チャンバ(220)の内壁にある沈殿領域(401)と、長手軸(201)と、上部開口(210)と、バッフル(203)と、ロータ(102)との相互作用のためのロック(240)と、容器(400)が周りを回転可能な長手軸(201)とを含む。
【0110】
回転可能な容器(400)も、側方収集チャンバ(220)と下部(207)との間の垂直もしくは水平溝または毛管溝など、上述の付加的な特徴部のいずれをも含んでもよい。
【0111】
この図に示す回転可能な容器(400)の中間部(206)の別の特徴部は、一方の側が側方収集チャンバ(220)と流体連通している開裂弁(450)、および周縁域(460)であって、周縁とは、長手軸(201)に対してと理解されるべきである。開裂弁(450)は、遠心力または回転速度が臨界値を超えたときに側方収集チャンバ(220)から液体を排出するように構成および配置されるが、その値未満では液密である。
【0112】
このような実施形態においては、ピペッタ(910)を用いて回転可能な容器(400)からあらゆる上澄みを取り出す必要がなくてもよい。ピペッタ(910)は、液体の生物学的試料(920)または他の液体を回転可能な容器(400)または自動化システム(1)の他の構成要素内へ導入するために依然として用いられてもよいが、粒子(930)を中に保持した状態で回転可能な容器(450)から液体を取り出すためには開裂弁(450)が用いられてもよい。たとえば、回転可能な容器(400)は、その長手軸(201)周りで第1の回転速度で回転させられてもよく、遠心力は、粒子(930)を側方収集チャンバ(220)の沈殿領域(401)に沈殿させるのに充分である一方で、周りの液体も収集チャンバ(220)内に押し込まれる。第1の回転速度よりも速い第2の回転速度で、液体は、液体が保持能力を超えた開裂弁(450)を通して押され、弁(450)が「開裂する」ように、臨界値を超える遠心力に曝されてもよい。これに関連して、「開裂する」とは、必ずしも弁(450)の不可逆的な破壊を意味するものではない。いくつかの実施形態において、弁(450)は、むしろ、液体が臨界圧力を加える場合に液体が通過することを可能にし、これは可能性のある後続の実験における、臨界圧力未満で液体を引き留める能力には影響を及ぼさない。この実施形態は、本明細書に記載の回転可能な容器(400)を用いる場合の自動化の容易さに貢献する。粒子(930)を沈殿させるために用いられる方法と同一の方法により、全ての上澄みは回転可能な容器(400)から取り除かれてもよい。またこの実施形態は、自動化された粒子処理に必要な時間を減少させるので、潜在的に試料のスループットを向上させる。いくつかの実施形態において、-側方収集チャンバ(220)に残る-粒子ではなく液体のみが、第2の回転速度で開裂弁(450)に対して押圧される。このような実施形態において、開裂弁(450)は、粒子(930)が開裂弁(450)やその開口に対して押圧されることによる潜在的な目詰まりのリスクに曝されない。
【0113】
本明細書に記載の回転可能な容器(400)のいくつかの実施形態において、開裂弁(450)は、上述のように、遠心力および静水圧によって引き起こされる所定の圧力の印加時に「開裂する」疎水性の弁である。開裂弁(450)は、いくつかの実施形態においては、疎水性の多孔性プラスチック、疎水性の多孔性膜、直径が5~50μmの範囲のレーザー形成された孔を備える膜を備えてもよく、疎水性の開裂弁(450)は、互いに接合された2つのプラスチック片の間に形成される。
【0114】
またいくつかの実施形態において、開裂弁(450)は、弁(450)のバネまたは封止材に対する遠心力により引き起こされる臨界圧力の印加時に開放する、バネ荷重の弁である。
【0115】
さらなる実施形態において、開裂弁(450)は、遠心力により引き起こされる臨界圧力の印加時に伸び、開口を解放するエラストマー構造である。
【0116】
図4に示す実施形態において、回転可能な容器(400)は、回転可能な容器(400)の内部空間の外側に位置する周縁域(460)を含む。この実施形態において、開裂弁(450)は、回転可能な容器(400)の上部開口(210)を通って上側に液体を通過させてもよいので、液体は周縁域(460)内に流入する。液体はここから、収集され、さらに処理されたり廃棄されたりしてもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、回転可能な容器(400)は、たとえば、周縁域(460)と流体連通してもよい廃棄チャンバまたはコンテナ(470)を備えてもよい。いくつかの実施形態において、このような廃棄チャンバまたはコンテナ(470)は、回転可能な容器(400)から空間的に分離されてもよい。廃棄チャンバまたはコンテナ(470)を含むいくつかの実施形態において、問題となる粒子(930)から分離されたいかなる液体も、自動化システム(1)内で好都合に取り除かれ、廃棄されてもよい。このようなコンテナ(470)は、自動化システム(1)から取り出されて、定期的または必要に応じて空にされたり交換されたりしてもよい。
【0118】
周囲フィルタを備える回転可能な容器
図5は、側方収集チャンバ(220)の壁で周囲フィルタ(550)を使用する回転可能な容器(500)の実施形態を示す。この実施形態のフィルタ(550)は、液体を収集チャンバ(220)の壁を通過させつつ、側方収集チャンバ(220)に沈殿する粒子(930)を引き留める。いくつかの実施形態において、周囲フィルタ(550)は疎水性である。また、いくつかの実施形態において、周囲フィルタ(550)は、上述の開裂弁(450)と同様の原理にしたがう開裂圧を有する。この文脈において、開裂圧は、印加される圧力が臨界値を超える場合に周囲フィルタを通過する液体に対して適用可能な値である。粒子は一方で、この臨界または「開裂」圧を上回っても周囲フィルタ(550)によって保持される。
図4に示す実施形態のように、この実施形態の回転可能な容器(500)は、周囲フィルタ(550)を通して回転可能な容器(500)の内部から排出された液体を収集するための周縁域(560)を含んでもよい。
【0119】
また、
図5に示す実施形態は、回転可能な容器(500)の内部から液体を取り出すための、ピペッタ(910)などの専用のシステムの必要性を取り除いてもよい。
【0120】
粒子を光学的に分析するための環状周囲チャンバを備える回転可能な容器
図6Aは、回転可能な容器(700)が環状周囲チャンバ(710)を備える実施形態を示しており、環状周囲チャンバ(710)は、スリット状の開口(720)を介して充填されてもよく、たとえば、本明細書に記載のスキャナ(600)および結像光学系(640)の助けを借りて、粒子(930)の結像のためのチャンバとして機能する。記載される実施形態の周囲チャンバ(710)は、環状形状を有し、容器(700)の側壁の比較的すぐ近傍に位置する。チャンバ(720)の水平方向の深さは、需要に適合される。これは、概して分析される粒子(930)の直径よりも大きくなる。概して、チャンバの深さは、粒子懸濁液の標的体積を抱えるように構成される。いくつかの場合においては、分析される粒子(930)が、環状周囲チャンバ(710)の外壁に沈殿すると、重ならないか、または極めてわずかに重なるように、互いから充分に分離されることが有利である。粒子密度は、粒子濃度とチャンバ(710)の高さの結果である。
【0121】
代替的または付加的に、回転可能な容器(700)は、遠心分離されることもでき、ゆえに粒子(930)は、チャンバ(710)の周囲壁に沈殿し得る。この実施形態において、液体は、取り出される必要はないので、粒子(930)から分離される必要がない。実際には、回転可能な容器(700)は、容器(700)が停止しているときに液体を保持するための下部を欠いていてもよい。遠心分離の後に液体を周囲チャンバ(710)内に保持することは、粒子(930)を結像するのに有利であり得る。このような実施形態において、遠心分離された粒子(930)をすぐに取り囲む媒体は、光学的に均質であり、明確に定義されたものである。これは、回転の停止後に液体が下部に収集される、本明細書に記載の他の容器で粒子(930)が遠心分離される実施形態と比べて有利であり得る。後者の場合、その周囲の空気との接続部分と共に粒子に依然として取り付けられている液体フィルムは、光学的に分析するための要求がより厳しい。さらに、この実施形態の回転可能な容器(700)のチャンバ(710)の液体中に細胞などの粒子(930)を残すことは、粒子(930)の完全性を保つのに貢献し、染色の可能性を酸化、光変性または乾燥から保護する。
【0122】
ゆえに、本明細書に記載の別の態様は、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)を光学的に分析するための回転可能な容器(700)であって、回転可能な容器(700)は、
容器(700)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
透明の外壁(712)と、
粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
上部(205)の下に位置し、回転可能な容器(700)が回転している間に液体を保持するための環状周囲チャンバ(710)を備える中間部(206)であって、環状周囲チャンバ(710)は、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)のための沈殿領域(301)をその内壁の表面上に備え、環状周囲チャンバ(710)は、上部開口(210)に流体接続される、中間部(206)と
を備える。
【0123】
透明の外壁(712)は、蛍光励起のための光、蛍光発光に起因する光など、粒子(930)の分析に必要なあらゆる波長の光の透過、または反射された光の透過を可能にする。透過モードの吸収によりDNAを検出した場合、いくつかの実施形態において物質は、UVの透過を許容する。内壁(713)は、特に透過に基づく検出に関連して透明であってもよいし、または不透明および/またはあらゆる色であってもよく、いくつかの実施形態においては黒であってもよい。
【0124】
回転可能な容器(700)は、装置内での位置を判定するために、配向マークを含んでもよい。このような配向マークは、たとえば、内面(711)または内面(711)の一部に適用された垂直溝であってもよい。狭い機械公差は、オートフォーカスの方法を容易にする場合がある。
【0125】
さらに、この実施形態の回転可能な容器(700)の、明視野照明または透過および/もしくは蛍光の検出との互換性を向上させるために、容器(700)の中心は、たとえば、開口を含んでもよい。容器(700)はさらに、記載される実施形態のように、グリッパなどのロボットマニピュレータのためのインターフェース(730)を含んでもよい。環状周囲チャンバ(710)は、1つまたは複数のバッフルも含んでもよい。
【0126】
図6Bは、環状周囲チャンバ(710)を備える回転可能な容器(700)の斜視図を示す一方で、
図6Cは、その水平方向の断面図を示す。液体試料を環状周囲チャンバ(710)内に導入するための上部開口(210)は、これらの図において、容器(700)が製造される下部(750)および上部(760)と共に見ることができる。
【0127】
回転可能な容器(700)の垂直断面の斜視図を提供する
図6Dは、環状周囲チャンバ(710)と、上部開口(210)との流体接続をより詳細に示す。充填軸(701)にしたがって、たとえば、ピペット処理針が、いくつかの実施形態においては開口(210)内に導入されてもよい。いくつかの実施形態において、針は、開口(210)の相当な深さまで挿入されてもよいし、または開口(210)の底まで完全に挿入されてもよいので、環状周囲チャンバ(710)の下から上への充填中に流体試料中に空気泡が形成されることを実質的に回避する。開口(210)は、回転可能な容器(700)から再び液体を取り出すためのインターフェースとして機能してもよい。
【0128】
図6Eの斜視垂直断面図に示すように、回転可能な容器(700)は、2つの射出成形された部分、下部(750)および上部(760)のアセンブリから作製されてもよい。これら単一の部分の製造後、これらは、嵌合、レーザー封止、超音波接合、熱融着処理、接着、光硬化性接着剤の使用などの適切な手段によってセクション(752)で接合されてもよい。明瞭さのために、下部(750)は、上部(760)との組み立て前の状態で
図6Fに単独で示されている。環状周囲チャンバ(710)の軸に近い表面または内壁(713)は、この図において見ることができる。上部開口(210)は、この実施形態においては、内側のチャンバ壁(713)の陥入によって形成されることが分かる。
【0129】
回転可能な容器(700)の側面断面図である
図6Gは、以下の値と併せて容器構造の例示的な寸法を示す。
【0130】
【0131】
環状周囲チャンバを有さない回転可能な容器に関して本明細書に記載される実施形態も、環状周囲チャンバを有する回転可能な容器(700)に対して適用可能である。
【0132】
液体の生物学的試料中に含まれる粒子を処理するための方法
以下に、液体の生物学的試料中に含まれる粒子を処理するための方法を記載する。「処理する」とは、潜在的に異なる目的での様々な異なる操作を意味してもよい。
【0133】
このような処理方法の1つは、液体の生物学的試料(920)から粒子(930)を分離するための方法であって、方法は、
a)回転可能な容器(200)の下部(207)によって液体が保持されるように、粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を、本明細書に記載の回転可能な容器(200)中に、回転可能な容器(200)の上部開口(210)を通して導入するステップと、
b)回転可能な容器(200)を所定の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、粒子(930)を含む液体は遠心力によって側方収集チャンバ(220)へと移動させられ、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分である、ステップと、
c)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップであって、液体は、回転可能な容器(200)の下部(207)へと戻るように流れる一方で、粒子(930)の少なくとも一部は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に付着したままであり、それによって粒子(930)のその少なくとも一部を液体から分離する、ステップと
を含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、上述の方法はさらに、ステップc)の後に以下の、
d)粒子(930)を側方収集チャンバ(220)に残した状態で、回転可能な容器(200)から上澄みを抜き出すステップ
をさらに含む。
【0135】
図1Cに示すようなスキャナ(600)を利用することにより、偵察および監視を含む方法が有利に実行されてもよい。
【0136】
たとえば、本明細書に記載の一態様は、液体の生物学的試料(930)中に含まれる粒子(930)を分析するための方法であり、この方法は、以下の、
a)回転可能な容器(200)の下部(207)によって液体が保持されるように、粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を、本明細書に記載の回転可能な容器(200)中に、回転可能な容器(200)の上部開口(210)を通して導入するステップと、
b)回転可能な容器(200)を所定の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、粒子(930)を含む液体は遠心力によって側方収集チャンバ(220)へと移動させられ、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分である、回転させるステップと、
c)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップであって、液体は、回転可能な容器(200)の下部(207)へと戻るように流れる一方で、粒子(930)の少なくとも一部は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に付着したままであり、それによって粒子(930)のその少なくとも一部を液体から分離する、ステップと、
d)任意で、粒子(930)を側方収集チャンバ(220)に残した状態で、回転可能な容器(200)から上澄みを抜き出すステップと、
e)少なくとも1つの波長の光を用いるスキャナ(600)により、側方収集チャンバ(220)の粒子(930)をスキャンするステップと、
f)ステップf)のスキャンデータに基づき分析結果を生成するステップと
を含む。
【0137】
また、本明細書に記載の一態様は、液体中で粒子(930)を懸濁する方法であって、この方法は、
a)液体中の粒子(930)を含む前述の回転可能な容器(200)を、所定の回転速度で第1の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分ではない、ステップと、
b)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと
を含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、上述の方法は、ステップb)の後に、
c)液体中に粒子(930)を含む回転可能な容器(200)を、所定の回転速度で第1の方向と反対の第2の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分ではない、ステップと、
d)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと
をさらに含む。
【0139】
液体中で粒子(930)を懸濁するための方法のいくつかの実施形態において、ステップa)は、本明細書に記載の回転可能な容器(200)へ、その上部開口(210)を通して液体を付加するステップの後に続く。このような液体は、問題の粒子(930)を再懸濁させるのに適切なあらゆる液体であってもよい。
【0140】
ステップa)およびb)、c)およびd)、またはa)~d)の順序は、(再)懸濁の効果を向上させるために、必要であれば1回または複数回繰り返されてもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、粒子(930)を処理するための方法は、液体の生物学的試料(920)から粒子(930)を分離させ、これらを第2の液体中に再懸濁する方法であり、この方法は、
a)回転可能な容器(200)の下部(207)によって液体が保持されるように、粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を、回転可能な容器(200)中に、回転可能な容器(200)の上部開口(210)を通して導入するステップであって、回転可能な容器(200)は、
容器(200)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
粒子(930)を含む液体を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
回転可能な容器(200)が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部(207)と、
上部(205)と下部(207)との間に位置し、回転可能な容器(200)が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバ(220)を備える中間部(206)と
を備える、ステップと、
b)回転可能な容器(200)を所定の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、粒子(930)を含む液体は遠心力によって側方収集チャンバ(200)へと移動させられ、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分である、ステップと、
c)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップであって、液体は、回転可能な容器(200)の下部(207)へと戻るように流れ、角減速度は、粒子(930)の少なくとも一部が側方収集チャンバ(220)の内壁に付着したままであるように、壁と液体との間にせん断力を生じさせることによって、側方収集チャンバ(220)の内壁から粒子(930)を引き離すのに充分でなく、それにより粒子(930)のその少なくとも一部を液体から分離する、ステップと、
d)粒子(930)を側方収集チャンバ(220)に残した状態で、回転可能な容器(200)の底部から液体を抜き出すステップと、
e)回転可能な容器(200)にその上部開口(210)を通して第2の液体を付加するステップと、
f)回転可能な容器(200)を、所定の回転速度で第1の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップと、
g)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと
を含み、
ステップf)における角加速度、および/または、ステップg)における角減速度は、壁と液体との間にせん断力を生じさせることによって、側方収集チャンバ(220)の内壁から粒子(930)の少なくとも一部を引き離すのに充分である。
【0142】
ステップf)およびg)は、再懸濁の効率を向上させるために、1回または複数回繰り返されてもよい。
【0143】
上述の方法は、いくつかの実施形態においては、ステップg)の後に、以下の、
h)回転可能な容器(200)を、所定の回転速度で第1の方向とは反対の第2の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分ではない、ステップと、
i)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと
をさらに含み、
ステップh)における角加速度、および/または、ステップi)における角減速度は、壁と液体との間にせん断力を生じさせることによって、側方収集チャンバ(220)の内壁から粒子(930)の少なくとも一部を引き離すのに充分である。
【0144】
上述のように、ステップf)およびg)、ステップh)およびi)、ならびに/またはステップf)~i)は、1回または複数回繰り返されてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、ステップf)および/またはステップh)において、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分ではない。
【0146】
例示的な加速度および減速度は、以下の通りであってもよい。
【0147】
ステップc)における減速度は、50rpm/s~400rpm/sまたは50rpm/s~1,000rpm/sであってもよい。
【0148】
ステップf)および/またはh)における加速度は、少なくとも500rpm/sであってもよい一方で、ステップg)および/またはi)における減速度は、少なくとも500rpm/sであってもよい。
【0149】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、ステップc)の最後で側方収集チャンバ(220)の内壁に付着したままの粒子(930)の相対量は、少なくとも50%、少なくとも80%、または少なくとも95%である。
【0150】
また、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、再懸濁ステップの最後で側方収集チャンバ(220)の内壁から引き離される粒子(930)の相対量は、少なくとも50%、少なくとも80%、または少なくとも95%である。
【0151】
また、本明細書に記載の一態様は、回転動作により液体を混合するための方法であり、この方法は、
a)回転可能な容器(200)の下部(207)によって液体が保持されるように、本明細書に記載の回転可能な容器(200)中に、回転可能な容器(200)の上部開口(210)を通して液体を導入するステップと、
b)回転可能な容器(200)の下部(207)によって液体が保持されるように、回転可能な容器(200)の上部開口(210)を通して第2の液体を導入するステップと、
c)回転可能な容器(200)を、第1の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップと、
d)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと、
e)回転可能な容器(200)を、第1の方向とは反対の第2の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップと、
f)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと
を含む。
【0152】
上述のように、ステップc)およびd)、ステップe)およびf)、ならびに/または、ステップc)~f)は、混合効果を向上させるために、必要であれば1回または複数回繰り返されてもよい。
【0153】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載の回転可能な容器(200)は、分析物結合粒子を伴う生物学的標的分子の単離のための方法において用いられてもよい。たとえば、液体の生物学的試料(920)中の核酸、タンパク質などは、分析物結合粒子(930)に結合されて、本明細書に記載の回転可能な容器(200)中の周りの液体から単離されてもよい。
【0154】
ゆえに、本明細書に記載の一態様は、液体の生物学的試料(920)中に存在する可能性のある分析物を単離するための方法であって、この方法は、
a)回転可能な容器(200)の下部(207)によって液体が保持されるように、液体の生物学的試料(920)を、回転可能な容器(200)中に、回転可能な容器(200)の上部開口(210)を通して導入するステップであって、回転可能な容器(200)は、
容器(200)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
粒子(930)を含む液体を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
回転可能な容器(200)が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部(207)と、
上部(205)と下部(207)との間に位置し、回転可能な容器(200)が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバ(220)を備える中間部(206)と
を備える、ステップと、
b)回転可能な容器(200)の上部開口(210)を通して、回転可能な容器(200)内に分析物結合粒子(930)を導入するステップと、
c)液体の生物学的試料(920)を、導入された分析物結合粒子(930)と混合するステップと、
d)液体の生物学的試料(920)を分析物結合粒子(930)と共に培養し、分析物を分析物結合粒子(930)に結合させるステップと、
e)回転可能な容器(200)を、所定の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、分析物結合粒子(930)を含む液体は、遠心力によって側方収集チャンバ(220)に移動させられ、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に分析物結合粒子(930)を沈殿させるのに充分である、ステップと、
f)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップであって、液体は、回転可能な容器(200)の下部(207)へと戻るように流れ、角減速度は、分析物結合粒子(930)の少なくとも一部が側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に付着したままであるように、壁と液体との間にせん断力を生じさせることによって、側方収集チャンバ(220)の内壁から粒子(930)を引き離すのに充分ではなく、それにより分析物結合粒子(930)のその少なくとも一部を液体から分離する、ステップと、
g)側方収集チャンバ(220)に粒子(930)を残した状態で、回転可能な容器(200)の底部から液体を抜き出すステップと、
h)回転可能な容器(200)にその上部開口(210)を通して第2の液体を付加するステップと、
i)回転可能な容器(200)を、所定の回転速度で第1の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップと、
j)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと
を含み、
ステップi)における角加速度、および/または、ステップj)における角減速度は、壁と液体との間にせん断力を生じさせることによって、側方収集チャンバ(220)の内壁から粒子(930)の少なくとも一部を引き離すのに充分である。
【0155】
いくつかの実施形態において、上述の方法は、ステップj)の後に、以下の、
k)回転可能な容器(200)を、第1の方向とは反対の第2の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップと、
l)回転可能な容器(200)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと
をさらに含み、
ステップk)における角加速度、および/または、ステップl)における角減速度は、壁と液体との間にせん断力を生じさせることによって、側方収集チャンバ(220)の内壁から粒子(930)の少なくとも一部を引き離すのに充分である。
【0156】
いくつかの実施形態では、ステップi)および/またはステップk)の間、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の内壁の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分ではない。
【0157】
図7は、粒子(930)を分離および懸濁させるためのワークフローを概略的に示し、粒子(930)を分離するための方法の一部は、ステップA~Eによって表され、粒子(930)を懸濁させるための方法は
図6のステップF~Hによって表される。
【0158】
本明細書に記載の空の回転可能な容器(200)は、Aの下に示されている。上述のように、回転可能な容器(200)は、上部(205)と、側方収集チャンバ(220)を有する中間部(206)と、液体の生物学的試料(920)を保持するための内部空間(202)を備える下部(207)とを有する。
【0159】
粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)は、ステップBとして示されるように、上部(205)の上部開口(210)を通して回転可能な容器(200)内に導入される。液体の生物学的試料(920)の分注を実行するピペッタ(910)は、矢印によって表されている。
【0160】
ステップCにおいて、溶解緩衝液、結合緩衝液、染色緩衝液などの試薬が付加される。成分を混合するために、回転可能な容器(200)は、比較的小さい回転速度でその長手軸(201)周りで回転させられる。回転可能な容器(200)の回転は、粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)の回転流を誘起する。この誘起は、回転可能な容器(200)の下部(207)の内壁から突出するバッフル(203)により容易にされる。回転動作は、いくつかの実施形態においては、一方の方向または両方の方向に周期的に加えられる。いくつかの実施形態において、加速および/または減速は、徐々に実施されるので、上部開口(210)を通した液体の生物学的試料(920)の流出や泡の発生など、望ましくない影響を回避する。
【0161】
次のステップ(D)の分離ステップにおいて、回転可能な容器(200)は、前よりも速い回転速度で、一方の方向のみに所定の期間回転させられる。いくつかの実施形態においては、分離ステップを実行する間、側方収集チャンバ(220)に存在する液体は、10~10,000gの範囲の相対遠心力(rcf)に曝され、WBCなどの血球の分離の場合、rcfはいくつかの実施形態においては50~2,000gの範囲であり、さらなる実施形態においては200~1,000gの範囲であり、分離時間は、いくつかの実施形態においては5~500sの範囲であり、さらなる実施形態においては20~120sの範囲である。当業者は、沈殿の法則に基づき分離ステップを実行するためのパラメータを選択することができる。
【0162】
より高い速度は、粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)が側方収集チャンバ(220)内に押し込まれるのに充分である。粒子(930)は、側方収集チャンバ(220)の内壁の表面上の沈殿領域(301)に沈殿し、回転動作が停止した後もそこに留まるが、液体は重力の下で回転可能な容器(200)の下部(207)の内部空間(202)へ戻るように流れる。停止している間、粒子を液体へと戻すように解放しないために、減速は、制御された条件下で行われる。減速の臨界値は、概してそれぞれの場合に適合され、しばしば実験的に評価され、粒子(930)の種類、粒子(930)の側方収集チャンバ(220)の壁に対する付着力、停止により誘起される流れに対する粒子(930)の曝露、垂直溝(302)の存在および形状など回転可能な装置(200)の幾何学的態様、液体の粘度、装置内に存在する液体の量、初期回転速度などのパラメータ、または他のパラメータに依存する。いくつかの実施形態において、処理済みの血球に関する減速度は、50~1,000rpm/sの範囲であり、さらなる実施形態においては50~400rpm/sの範囲である。また、減速は、2つ以上の段階で行われてもよい。制御された方法で減速を行うための適切な構成は、いくつかの実施形態においては、対応する動作制御装置を備える電気モータを含む。
【0163】
粒子(930)の少なくとも一部を奪われた液体の生物学的試料(920)はその後、ステップEにおいて、沈殿した粒子(930)を乱すことなくピペッタ(910)によって抜き取られる。
【0164】
洗浄緩衝液、再懸濁緩衝液または他の試薬などの異なる液体は、ステップFにおいて、ピペッタ(910)によって回転可能な容器(200)内にその上部開口(210)を通して分注される。
【0165】
ステップFおよびGは、最初は粒子を含んでいない第2の液体中での、分離された粒子(930)の再懸濁を特徴付ける。再懸濁のために、回転の加速および/または減速の段階の交互実施および/または繰り返しを伴って、対応するプロファイルが用いられる。再懸濁は、繊細な粒子(930)の破壊を引き起こすおそれのある不必要な高いせん断力を生じさせたり、または長く続く高い遠心力を生じさせたりすることのない、側方収集チャンバ(220)の壁と側方収集チャンバ(220)中の液体との間の充分な速度差によって達成される。この速度差は、粒子(930)と側方収集チャンバ(220)の壁との間の付着力に打ち勝つことに貢献する。いくつかの実施形態において、処理済みの血球に対する加速および減速の速度は、500rpm/sよりも大きい。
【0166】
より一般には、いくつかの実施形態において、ステップc)における減速度は、ステップf)またはg)における加速度または減速度のいずれよりも小さい。
【0167】
再懸濁された粒子は、ステップHにおいてピペッタ(910)によって抜き取られ、たとえば、分析方法など、下流の処理のために用いられてもよい。
【0168】
上述の方法は、遠心分離された液体の慣性を巧みに利用する。分離ステップ中に回転可能な容器(200)を減速させると、回転する液体により生じる疑似的な力は、側方収集チャンバ(220)の内壁に沈殿した粒子(930)を乱さないように比較的低いレベルに減速度を維持することによって減少させられる。
【0169】
再懸濁ステップにおいては、一方で、液体の慣性は、上述のように、充分に高い角加速度および/または角減速度を介して、沈殿された粒子(930)を引き離すことを容易にすることによって、反対の目的で用いられる。
【0170】
本明細書に記載の方法は、広く適用可能であり、特に、これだけではないが、診断分野、特に臨床試料物質の分析において適用可能である。
【0171】
いくつかの実施形態において、液体の生物学的試料(920)は、全血を含む血液、血漿または血清、唾液、接眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、便、精液、母乳、腹水、粘液、滑液、腹膜液、羊水、組織、培養細胞などのヒトの試料である。
【0172】
いくつかの実施形態において、組織は、処理される細胞を含む懸濁液を生じるために調製される。組織試料を調製するための適切なプロトコルは、当業者に既知である。
【0173】
他の実施形態において、液体の生物学的試料(920)は、全血、血漿、または血清など、ヒトの血液であるか、またはそこから導かれる。当業者に既知のように、被検者から得られた全血は、様々な方法で調製されてもよい。全血の場合、たとえば、試料は、ヘパリンなどの抗凝血剤、クエン酸塩、EDTA、EGTAなどのキレート剤、または他の抗凝血剤により希釈されてもよい。血液試料中の対象粒子は、いくつかの実施形態においては、HIV、HBV、HCV、CMV、WNV、SLEV、JEV、HSV、インフルエンザなどのウイルス、または他のウイルスなどの病原体である。ヒトの血液中に潜在的に存在する他の病原体は、ナイセリア属、クラミジア属、マイコバクテリウム属、エルシニア属、ボレリア属、プロテウス属、腸球菌、メチシリン耐性または感受性黄色ブドウ球菌などのブドウ球菌、髄膜炎菌、エシェリキア属、クロストリジウム属などのバクテリア、または他のバクテリアであってもよい。また、菌類は、たとえば、カンジダ属、アスペルギルス属、サッカロミセス属、または他の菌類など、ヒトの血液中に存在する対象の病原粒子であってもよい。
【0174】
他の実施形態において、ヒトの細胞は、単球などの白血球(WBC)、顆粒球(好塩基性、好酸性または好中性のもの)、マクロファージ、Tリンパ球もしくはBリンパ球、形質細胞、またはリンパ液もしくは骨髄球性の幹細胞、血小板、赤血球、循環腫瘍細胞、異なる血液細胞および/もしくは腫瘍細胞の混合物を含む血液細胞、または他の血液細胞などのヒトの血液中の対象の粒子である。
【0175】
いくつかの実施形態において、ヒトの細胞は、3分類差分分析または5分類差分分析など、血液分析のために処理される。またいくつかの実施形態において、ヒトの細胞は、続いてフローサイトメトリーの分析を受けるように処理される。
【0176】
このような実施形態において、処理は、たとえば、特定の細胞表面の抗原を対象とする抗体を用いた細胞のラベリングを含んでもよい。いくつかの実施形態において、粒子は、ヒトの白血球(WBC)である。処理はその後、たとえば、T細胞にはCD2/CD3、単球にはCD14、顆粒球および単球にはCD15、マクロファージにはCD16、血小板、単球およびマクロファージにはCD36、白血球にはCD45といった表面抗原に特異なラベリングされた抗体を用いた、WBCのラベリングを含んでもよい。上述のように、このような抗体または他の結合分子もまた、本明細書に記載の回転可能な容器(200)の側方収集チャンバ(220)の内壁の表面上の沈殿領域(301)における保持構造として存在してもよい。
【0177】
蛍光ラベルまたは電界発光ラベルなどのラベルを含んでもよい抗体を用いて対象の血球をラベリングした後、細胞は、たとえば、フローサイトメータのフローセルにおいて容易に識別され得る。回転可能な容器(200)からフローサイトメータまたは他の分析モジュールへ処理済みの細胞を運ぶために、様々な実施形態が適切であり得る。たとえば、再懸濁された処理済みの粒子は、ピペッタ(910)を用いて回転可能な容器(200)から抜き出され、その後フローサイトメータの入口内に分注されてもよい。処理ステーション(100)およびフローサイトメータまたは他の分析モジュールは、いくつかの実施形態においては、共通の筐体によって取り囲まれていてもよい。
【0178】
回転可能な容器の特定の実施形態を用いて粒子を処理するための方法
様々な沈殿速度の粒子を分離するための方法
この実施形態の方法は、より速い沈殿速度の粒子(930)を主として沈殿させる一方で、より遅い沈殿速度の粒子(930)は主として懸濁液中に残るように構成されている、様々な沈殿速度の粒子(930)の区別を可能にする速度プログラムを適用することを含む。沈殿速度における差異は、いくつかの実施形態においては、(たとえば、Csl、CsCl、スクロース、またはHistodenz(登録商標)、Nycodenz(登録商標)、Optiprep(登録商標)などの他の密度勾配物質を用いることにより)懸濁化媒体の密度の影響を受ける可能性がある。沈殿速度は、そうでない場合には、主として、粒子(930)の密度、周りの液体の密度および粘度ならびに粒子(930)の直径によって画定され、ならびに印加される遠心力によって画定される。
【0179】
いくつかの実施形態において、このような実施形態の方法のステップは、以下の通りである。
a)2種類の粒子(930)の懸濁液を、
図3A~3Dに示す実施形態の回転可能な容器(300)に付加するステップ。第1の種類の粒子(930)は、第2の種類の粒子(930)よりも速い沈殿速度を有する。
b)
図6に示す方法のステップA~Dを実行するステップ。
c)より遅い沈殿速度の粒子(930)を主として含む上澄みを取り除く一方で、より速い沈殿速度の粒子(930)は主として沈殿領域(301)に保持されているステップ。
d)いくつかの実施形態においては、回転可能な容器(300)に再懸濁緩衝液または試薬などの第2の液体を付加し、
図6のステップF~Hに示す再懸濁方法を適用することによって回転可能な容器(300)に残っている粒子(930)を再懸濁させるステップ。
【0180】
いくつかの実施形態において、ステップd)はさらに、粒子(930)を解放するために、分離された粒子(930)よりも高い密度を有する緩衝液を付加することを含む。
【0181】
回転可能な容器中で反応を実行するための方法
この実施形態においては、粒子(930)を懸濁液中に維持するため、いくつかの実施形態においては時々のまたは継続的な(
図6のステップCまたはGに関連して記載したような)制御された双方向への回転を含む反応を充分に完了させるために、培養の温度および/または時間は、血球および本明細書に記載の抗体など、反応の遊離体を含む回転可能な容器(200)内で制御される。
【0182】
開裂弁を有する回転可能な容器を用いて粒子を処理するための方法
いくつかの実施形態において、
図6に示される方法は、開裂弁(450)を有する回転可能な容器(400)を用いて実施される。このような実施形態において、液体の生物学的試料(920)から粒子(930)を分離するための方法は、
a)回転可能な容器(400)の下部(207)によって液体が保持されるように、粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を、回転可能な容器(400)中に、回転可能な容器(400)の上部開口(210)を通して導入するステップであって、回転可能な容器(400)は、
容器(400)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
粒子(930)を含む液体を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
回転可能な容器(400)が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部(207)と、
上部(205)と下部(207)との間に位置し、回転可能な容器(400)が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバ(220)を備える中間部(206)と
を備える、ステップと、
b)回転可能な容器(400)を第1の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の沈殿領域(401)に粒子(930)を沈殿させるのに充分である一方で、周りの液体も収集チャンバ(220)内に押し込まれ、遠心力により生じられる静水圧は、開裂弁(450)が液密のままであるように開裂弁(450)の臨界値を超えない、ステップと、
c)回転可能な容器(400)を第1の回転速度よりも高い第2の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、液体が回転可能な容器(400)から外に開裂弁(450)を通って押される一方で、粒子(930)の少なくとも一部は側方収集チャンバ(220)に留まるように、遠心力により生じる静水圧が開裂弁(450)の臨界値を超える、回転させるステップと
を含む。
【0183】
開裂弁(450)を有する回転可能な容器(400)を含む実施形態において、粒子(930)を液体中に懸濁させるための方法は、
a)液体中に粒子(930)を含む本明細書に記載の回転可能な容器(400)を、所定の回転速度で第1の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力により生じる静水圧は、開裂弁(450)が液密なままであるように開裂弁(450)の臨界値を超えず、回転可能な容器(400)は、
容器(400)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
粒子(930)を含む液体を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
回転可能な容器(400)が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部(207)と、
上部(205)と下部(207)との間に位置し、回転可能な容器(400)が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバ(220)を備える中間部(206)と
を備える、ステップと、
b)回転可能な容器(400)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと、
c)液体中に粒子(930)を含む回転可能な容器(400)を、所定の回転速度で第1の方向とは反対の第2の方向に回転させるステップであって、遠心力により生じる静水圧は、開裂弁(450)が液密なままであるように開裂弁(450)の臨界値を超えない、ステップと
を含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、上述の方法は、ステップc)の後に、
d)回転可能な容器(400)を、前のものよりも高い第2の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、液体が回転可能な容器(400)の外に開裂弁(450)を通って押される一方で粒子(930)の少なくとも一部は側方収集チャンバ(220)に留まるように、遠心力により生じる静水圧が開裂弁(450)の臨界値を超える、ステップ
をさらに含む。
【0185】
周囲フィルタを有する回転可能な容器を用いて粒子を処理するための方法
いくつかの実施形態において、
図6に示す方法は、周囲フィルタ(550)を有する回転可能な容器(500)を用いて実施される。このような実施形態において、液体の生物学的試料(920)から粒子(930)を分離するための方法は、
a)回転可能な容器(500)の下部(207)によって液体が保持されるように、粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を、本明細書に記載の回転可能な容器(500)中に、回転可能な容器(500)の上部開口(210)を通して導入するステップであって、回転可能な容器(500)の中間部(206)の側方収集チャンバ(220)は周囲フィルタ(550)を備え、回転可能な容器(500)は、
容器(500)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
粒子(930)を含む液体を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
回転可能な容器(500)が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部(207)と、
上部(205)と下部(207)との間に位置し、回転可能な容器(500)が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバ(220)を備える中間部(206)と
を備える、ステップと、
b)回転可能な容器(500)を所定の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力は、側方収集チャンバ(220)の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分である一方で、液体は、周囲フィルタ(550)を通って回転可能な容器(500)の外部へ押される、ステップと
を含む。
【0186】
このような実施形態において、ガラスまたは硬質プラスチック製の人工ビーズなどの非圧縮性または圧縮性の乏しい物質の分離は、このような粒子(930)が顕著に変形可能な粒子(930)よりも周囲フィルタ(550)の孔に目詰まりしにくいことから、有利に実行され得る。変形可能な粒子(930)に対しては、以下の実施形態がより有利である場合がある。
【0187】
この実施形態において、液体の生物学的試料(920)から粒子(930)を分離するための方法は、
a)回転可能な容器(500)の下部(207)によって液体が保持されるように、粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を、回転可能な容器(500)中に、回転可能な容器(500)の上部開口(210)を通して導入するステップであって、回転可能な容器(500)の中間部(206)の側方収集チャンバ(220)は周囲フィルタ(550)を備え、回転可能な容器(500)は、
容器(500)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
粒子(930)を含む液体を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
回転可能な容器(500)が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部(207)と、
上部(205)と下部(207)との間に位置し、回転可能な容器(500)が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバ(220)を備える中間部(206)と
を備える、ステップと、
b)回転可能な容器(500)を、専用の加速および/または減速段階を有する回転速度、ひいては遠心性速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、側方収集チャンバ(220)における液体の流れは、結果として生じる、粒子(930)に作用する径方向力および接線方向力の組み合わせが、側方収集チャンバ(220)の沈殿領域(301)に粒子(930)が沈殿することを防ぐ一方で、周囲フィルタ(550)を通して回転可能な容器(500)の外部に液体が押されるように、径方向の速度成分および接線方向の速度成分を有し、クロスフロー濾過を生じさせる、ステップと
を含む。
【0188】
クロスフロー濾過を用いるこの実施形態において、接線ベクトル成分は、収集チャンバ(220)の内壁上への粒子(930)の沈殿に対抗する。手短にいうと、専用の加速および/または減速段階は、移動中の粒子(930)の慣性に基づき、側方収集チャンバ(220)の内壁の表面に対して接線方向/平行な粒子(930)の移動を導く。たとえば、回転可能な容器(500)が減速されると、液体、ひいてはその中の粒子(930)は、移動中の質量の慣性により、一時的に、減速力が直接的に印加される回転可能な容器(500)よりも素早く回転軸(201)周りを回転する。同様に、加速中、容器(500)は、一時的に、液体、ひいては粒子(930)よりも素早く回転する。
【0189】
いくつかの実施形態において、回転可能な容器(500)の周囲フィルタ(550)は、開裂弁(450)を有する回転可能な容器(400)の実施形態に関して記載したような開裂機能を有する。
【0190】
開裂弁(550)を有する回転可能な容器(500)を含む実施形態において、液体中に粒子(930)を懸濁させるための方法は、
1.液体中に粒子(930)を含む本明細書に記載の回転可能な容器(500)を、所定の回転速度で第1の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力により生じる静水圧は、周囲フィルタ(550)を通して液体を回転可能な容器(550)の外部へ押すのに充分ではなく、回転可能な容器(500)は、
a)容器(500)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
b)粒子(930)を含む液体を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
c)回転可能な容器(500)が停止している間に液体を保持するための、底部を備える下部(207)と、
d)上部(205)と下部(207)との間に位置し、回転可能な容器(500)が回転している間に液体を保持するための側方収集チャンバ(220)を備える中間部(206)と
を備える、ステップと、
2.回転可能な容器(500)の回転を減速させて、最終的には停止させるステップと、
3.液体中に粒子(930)を含む回転可能な容器(500)を、所定の回転速度で第1の方向とは反対の第2の方向にその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力により生じる静水圧は、周囲フィルタ(550)を通して液体を回転可能な容器(550)の外部へ押すのに充分ではない、ステップと
を含む。
【0191】
図8は、環状の周囲壁を有する回転可能な容器(700)を用いる、粒子(930)に関する結像方法を表示する。ステップA、B、CおよびDのそれぞれは、図の上側においては垂直断面の側面図で示され、図の下側においては水平断面の上面図で示されている。
【0192】
ステップAには空の回転可能な容器(700)が示されているが、ステップBの描写は、生物学的細胞またはウイルスなどの粒子(930)の懸濁液が充填された容器(700)を示し、粒子(930)は、容器(700)を湾曲した矢印の方向にその長手軸(201)周りで回転させることによりステップCにおいて遠心分離される。直線の矢印は、粒子(930)に加えられる遠心力の方向を示す。ステップDにおいて、容器(700)は再び停止しており、遠心分離された粒子(930)は、環状周囲チャンバ(710)の軸から遠い壁(712)に付着している。容器は、ここで、たとえば
図1Cに示す配置において光学的に分析されてもよい。
【0193】
それゆえ、本明細書に記載の態様は、液体の生物学的試料(920)中に含まれる粒子(930)を光学的に分析するための方法であって、方法は、
a)粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を、環状周囲チャンバ(710)を備える回転可能な容器(700)内に、環状周囲チャンバ(710)内への、回転可能な容器(700)の上部開口(210)を通して、導入するステップであって、回転可能な容器(700)は、
容器(700)が周りを回転可能な長手軸(201)と、
透明な外壁(712)と、
粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を受け取るための上部開口(210)を備える上部(205)と、
液体を保持するための環状周囲チャンバ(710)を備え、上部(205)の下に位置する中間部(206)であって、環状周囲チャンバ(710)は、その内壁の表面上に、液体の生物学的試料(920)に含まれる粒子(930)のための沈殿領域(301)を備え、環状周囲チャンバ(710)は、上部開口(210)に流体接続されている、中間部(206)と
を備える、ステップと、
b)回転可能な容器(700)を、所定の回転速度でその長手軸(201)周りで回転させるステップであって、遠心力は、環状周囲チャンバ(710)の沈殿領域(301)に粒子(930)を沈殿させるのに充分である、ステップと、
c)結像光学系(640)を備えるスキャナ(600)により粒子(930)を光学的に分析するステップと
を含む。
【0194】
環状周囲チャンバを有さない回転可能な容器を用いる方法に関して本明細書に記載される実施形態も、環状周囲チャンバを有する回転可能な容器(700)を用いる方法に適用可能である。
【0195】
光学分析の結果を処理することに関連して、-充分に多い数の細胞の分析を通して取得可能な-統計学的データと、とりわけ、粒子(930)が生物学的細胞である場合の形態学的データとの両方を利用することが有利である場合がある。
【0196】
統計学的データと形態学的データとの間の相関は、通常、データ解析を担当する人間の相当量の経験を要する。形態学は、しばしば、全く免疫染色せずに、および/または、絶対的または相対的な存在などの統計学的データを生じることなく、通常は顕微鏡によって調べられる。希少な(すなわちほとんど存在しない)細胞の形態は、しばしば全く識別されない。
【0197】
(指定される細胞の絶対的または相対的な存在など)細胞分布についての統計学的データはしばしば、形態についての情報をほとんど生じることなく蛍光活性化細胞選別(FACS)によって得られる。頻繁に用いられる前方および側方の散乱分析は、制限された、むしろ概略的な形態学的データのみを提供する。
【0198】
フローサイトメータを用いる場合、細胞分析からの統計学的データは、表として配置でき、各細胞は列に示され、しばしば前方散乱、側方散乱および多数の蛍光値を表示する。各蛍光シグナルは、たとえば、CDマーカーの発現など、分析された細胞の特異な特性を表してもよい。このようなデータはほとんど数値であるので、細胞についての詳細な形態情報は含まない。
【0199】
これらのデータに基づき、細胞のグループ分けは、上述の異なる値に対して条件を設定することによって行われ得る。分析された全ての細胞数内で細胞の異なるグループを選択するために、様々な範囲が組み合わされてもよい。たとえば、T4ヘルパー細胞は、CD4マーカー用の細胞の正値性に基づき選択されてもよい。このようなグループ分けの結果は、統計値であり、典型的には、特定の特徴を有する特定の種の細胞の絶対的または相対的濃度を列挙する。他の統計値は、特定のマーカーの発現範囲に焦点を当ててもよい。
【0200】
典型的な分析は、分析あたり100,000個の細胞の値を列挙してもよく、これは、ほとんど存在しない細胞に関しても良好な精度を可能にする。たとえば、1k/100k細胞の亜集団は、依然として3.2%VKの精度で分析でき、100細胞/100k細胞の集団は、10%VKの精度で分析できる。
【0201】
MRD(微小残存病変)など特定の用途では、より多い合計数の細胞、たとえば、1×10E6細胞/分析が分析されてもよく、(「残りの」細胞の)調べられる細胞の数は、10~100個の細胞である。このような多数の細胞の場合、データ取得努力および生成されるデータ、ならびにデータ処理時間は大きい。
【0202】
単独で取得される統計学的データは、多数の制限を呈する。第1に、細胞の正確な分類を要するデータを解析するためには、分類は数値に基づくのみであるから、多数の経験および/または対照もしくは参照分析が必要とされる。第2に、予測されない細胞からのデータを潜在的に含む複雑なデータは、解析するのが困難である。このような予測されない細胞は、しばしば、特定の疾病を患う患者から取得された試料に現れる可能性がある。第3に、統計学的データのみでは、たとえば細胞が互いに付着している場合などに誤解を招くおそれがある。このような細胞は、1つの二重陽性単一細胞と見なされ得る。さらに、形態学的データが存在しない場合、測定されたシグナルの(細胞小器官、原形質膜などの)細胞内起源の情報が全く提供されない。形態学的データの不在は、二重構造、細胞集団および破片などのアーチファクトを排除することを困難にする。
【0203】
形態学的データは、一方で、しばしば顕微鏡(いくつかの場合においてはデジタルカメラを伴う、明視野または蛍光顕微鏡)によって取得される。形態学的データは、特に特定の染色剤と組み合わされる場合に、特定の疾病の検出および/または決定を可能にする。
【0204】
また、単独で取得される形態学的データは、多数の制限を受ける。概して、この方法で一人の患者から調べることのできる細胞の数は、自動化されていない場合には、データを取得し、そのデータを調べる時間のために少ない。また、多数の細胞の中で異なる種類の異なる細胞を見つけるための時間は、特にそれぞれの細胞が珍しい場合には非常に時間がかかり得る。さらに、統計学的データとの相関は与えられていない。特定の細胞を調べるときに、その試料中の相対的または絶対的濃度は明らかでない場合がある。最後に、異なるCDマーカーなどの発現レベルの解析は、対照または参照試料に対する比較を要する。
【0205】
本明細書に記載の方法、装置およびシステムに関しては、一人の患者から、
a)細胞の種類の絶対的もしくは相対的存在、または発現レベルなど、少なくとも1つの細胞集合体に関連付けられる統計学的データのセットと、
b)明視野、反射、吸収および/または蛍光像のセットなど、形態学的データのセットと
を生成、測定および/または報告することが一態様である。
【0206】
このような実施形態において、自動的に生成され、組み合わされるデータは、より良好なデータ解析、より良好な患者間の比較、より良好な一人の患者の経時的な監視、およびより良好な場所間の比較を可能にする。要約すれば、計数/報告された細胞がそれぞれの標的分類に属するという確証が向上され得る。
【0207】
データ取得時間および/またはデータ量を減少させるために、統計学的データは、より低い幾何学的分解能で取得されてもよく、これは、一度に分析される細胞のより速い速度を可能にする。形態データはその一方で、より高い幾何学的分解能で生成されてもよく、限られた数の細胞からのみ生成されてもよい。
【0208】
用いられる分析システムは、どの種類の細胞が(形態学的質で)結像されるか、および結像する細胞の数に応じて調節されてもよい。基準は、システムがデータを自動で取得するように定められてもよい。
【0209】
形態学的データおよび統計学的データの両方を用いる上述のアプローチの利点は、以下の通りである。
統計学的データおよび形態学的データの間での照合検査により、計数される細胞が実際に分析される標的細胞であるかどうかを確認できるので、改良されたデータ適合性およびより確実な結果を生じる。
通常でないデータはより詳細に確実な方法で解析され得るので、疾病の診断を容易にする。
アーチファクトは識別され、結果から排除され得る。
対照群の数が減少させられ得る。
ユーザに要求される経験および専門性のレベルは相当に軽減され得る。
【0210】
実施例
以下の実験は、本明細書に記載する自動化システム、回転可能な容器および方法の非限定的な実施形態を例示することが意図されている。
【0211】
実施例1:装置における2つの液体の混合
目的:
粒子(930)を含む液体の生物学的試料(920)を、洗浄緩衝液、希釈液、試薬、溶解緩衝液、試薬用の安定剤、細胞用の固定剤、染色剤、抗体溶液などの第2の液体と混合する。このような方法は、たとえば、細胞の洗浄、溶解、固定または染色を含むフローサイトメトリー分析のための細胞処理に用いられてもよい。
【0212】
材料:
1.中間部(206)の最大内径が28mmの、
図3Bによる回転可能な容器(300)。垂直溝(302)内の容量は約100μlであった。側方収集チャンバ(220)および下部(207)の内部空間(202)の容量は、それぞれ約1.2mlであり、約1mlの最大処理容量が可能であった。回転可能な容器(300)はPMMAで作製された。この実験で用いられる回転可能な容器(300)の製造のために、2つの分離した部品が、ドリル穿孔されて、互いに接合された。
2.500パルス/回転のエンコーダを有する、Maxon社製のホールセンサを備える50W‐DCモータを有する試料処理ステーション(100)。モータは、専用の制御装置(Maxon EPOS2)により制御された。制御装置自体は、加速に関する値、最大速度、最大速度の時間、時間に対する減速プロファイルおよび/または回転プロファイルなどの動作要素を制御するソフトウェアからその命令を受け取った。回転アクチュエータ(101)は、コンソール(103)に取り付けられた。回転可能な容器(300)は、回転アクチュエータ(101)の軸に取り付けられ、固定された。
【0213】
処理パラメータ:
1.混合プロトコル
M1:1,800RPM/秒で3,600RPMの最終速度まで時計方向に加速し、その後1,800RPM/秒で0RPMの最終速度まで減速する。この動作は、時計方向への120回転に等しい。
M2:1,800RPM/秒で3,600RPMの最終速度まで反時計方向に加速し、その後1,800RPM/秒で0RPMの最終速度まで減速する。これは、反時計方向への3960°=120回転に等しい。
5回繰り返す(M1 M2)
【0214】
行われた実験:
1.回転可能な容器(300)は処理ステーション(100)に取り付けられた
2.回転可能な容器(300)の下部(207)の内部空間(202)の底に沈むように、150μlの全血が、回転可能な容器(300)内へ、その上部開口(210)を通してピペットで導入された。
3.800μlのPBS緩衝液(GIBCO、Life technologies、No 10010-15)が、回転可能な容器(300)中の全血に加えられた。
4.血液およびPBSは、
図6に示す方法のステップC~Gにしたがって、前後に振動する回転を用いて混合プロトコルを適用することによって混合された。
【0215】
観察:
混合プロトコル(上述の処理パラメータにしたがって回転可能な容器(300)に加えられる動作)の実行により、液体は、回転アクチュエータ(101)を介して与えられる、加えられた回転加速により移動させられ、バッフル(203)が液体を移動させるのに貢献し、結果的に2つの液体を側方収集チャンバ(220)内へ移動させた。減速時、組み合わせられた液体は、下部(207)の内部空間(202)に下るように部分的に移動した。この動作の繰り返しにより、2つの液体は、周期的な前後の回転動作によって全体的に混合される。
【0216】
血液分析器により測定が、混合の均一性および細胞の完全性を確認した。
【0217】
実施例2:血球の単離
目的:
フローサイトメトリーのための特定の血液試料調製プロトコルにおいては、血球を周りの血漿から取り出すことが要される。
【0218】
材料:
1.回転可能な容器(300):実施例1のものと同じ
2.処理ステーション(100):実施例1のものと同じ
【0219】
処理パラメータ
分離プロトコル
S1:0RPM(1分あたりの回転数)から8,000RPMの最終速度まで2,000RPM/秒で加速する
S2:速度を8,000RPMで30秒間保つ
S3:8,000RPMから1,000RPMまで250RPM/秒で減速する
S4:1,000RPMから0RPMまで50RPM/秒で減速する
【0220】
行われた実験:
1.回転可能な容器(300)は処理ステーション(100)に取り付けられた
2.実施例1にしたがって150μlの血液は800μlのPBS緩衝液と混合された
3.分離プロトコルが上述のように適用された(実施例2)
4.細胞(930)が側方収集チャンバ(220)に残った状態で、回転可能な容器(300)の内部から細胞を含まない液体が除去された。細胞を含まない液体の除去のために、使い捨て可能なチップを備えるピペットが使用された。
【0221】
観察:
プロトコルの分離段階(8,000RPMでの30秒の間)、流体の生物学的試料(920)は、側方収集チャンバ(220)へと移動し、長手方向の回転軸(201)の周りに環状の体積を形成する。(8,000RPMでの)遠心力の影響下および14mmの半径で、相対的な径方向の加速は約1,000g(=1000×地球の重力)であり、より高い相対密度の細胞(930)(赤血球および白血球)は、沈殿領域(301)に移動した。この実施形態においては透明の回転可能な容器(300)を通した、視覚的検査は、細胞(930)がおよそ5秒以内に外壁へと移動したことを示した。
【0222】
標的粒子(赤血球、930)の分離が完了した後(30秒)、停止段階が開始された。この段階の間、回転可能な容器(300)の回転速度は、制御された方法で次第に0RPMまで減少された。減速は2つのステップで行われ、250RPM/秒で8,000から1,000RPMまで、また50RPM/秒で1,000RPMから0RPMまで行われた。
【0223】
すでに確立された減速プログラムは、分離された粒子を再懸濁しないのに充分に緩やかであった。減速中、相対的な径方向の加速が(300RPMで)約1g未満まで減少すると、細胞を含まない液体が側方収集チャンバ(220)から下部(207)の内部空間(202)まで下るように移動した一方で、血球(930)は側方収集チャンバ(220)に留まった。
【0224】
回転可能な容器(300)の回転が停止すると、粒子を含まない液体(PBSと血液由来の血清または血漿との混合物)は、使い捨て可能なチップを備えるピペットを用いて下部(207)の底から液体を吸引することによって、回転可能な容器(300)から除去された一方で、血球は側方収集チャンバ(220)の垂直溝(302)に留まり、再懸濁などのさらなる処理に利用可能であった。
【0225】
血液分析器による測定は、除去された上澄みが実質的に細胞を含まないことを確認した。
【0226】
実施例3:分離された細胞の側方収集チャンバからの解放および再懸濁
目的:
側方収集チャンバ(220)の内面に付着するか、または側方収集チャンバ(220)の垂直溝(302)に保持される細胞(930)の解放および再懸濁
【0227】
このような細胞の解放および細胞の再懸濁の目的は、さらなる処理、たとえば、細胞(930)または細胞(930)の一部の固定、溶解、染色および/または洗浄のために、細胞(930)を準備することである。別の目的は、培養などの他の望ましい目的のために細胞(930)を収集することである。再懸濁された細胞(930)は、ピペッタ(920)を用いることによって装置から取り出されてもよい。
【0228】
材料:
1.回転可能な容器(300):実施例1のものと同じ
2.処理ステーション(100):実施例1のものと同じ
【0229】
処理パラメータ
再懸濁プロトコル
R1:4,800RPM/秒で4,800RPMの最終速度まで時計方向に加速させ、最終速度で0.5秒保持し、その後9,600RPM/秒で0RPMの最終速度まで減速させる。これは時計方向への100回転に等しく、1秒待機する。
R2:1980°(=5.5周)の間、反時計方向に、4,800RPM/秒で4,800RPMの最終速度まで加速させ、最終速度で0.5秒保持し、その後9,600RPM/秒で0RPMの最終速度まで減速させる。これは反時計方向への100回転に等しく、1秒待機する。
5回繰り返す(R1 R2)
【0230】
行われた実験
1.150μlの血液から細胞(930)が分離され、実施例2にしたがって側方収集チャンバ(220)の垂直溝(302)により保持された。
2.(「細胞解放緩衝液」CRBとして)400μlの体積のPBS緩衝液が、回転可能な容器(300)の内部に、その上部開口(210)を通して付加された。
3.上述の再懸濁プロトコルが適用された。
【0231】
観察:
再懸濁プロトコルを適用することにより、400μlのCRBが側方収集チャンバ(220)に移動させられた。回転可能な容器(300)の前後への加速および減速により、細胞解放緩衝液は、側方収集チャンバ(220)内で前後に移動させられた。この移動により、側方収集チャンバ(220)の壁の内面の沈殿領域(301)に付着するか、または垂直溝(302)に保持される細胞は、CRB中に解放および再懸濁された。
【0232】
血液分析器による測定は、再懸濁された細胞の90%を超える収率(赤血球およびWBC)を示し、細胞(930)の完全性は影響を受けなかった。装置内に残っている液体の質量は、約100mgと測定された。
【0233】
実施例4:WBCの調製
目的:
全血からの洗浄された白血球(WBC)の生産。赤血球(RBC)の選択的な溶解のために全血を溶解緩衝液と混合することによる、未溶解のWBCからの溶解されたRBCの取り出し、およびそれに続くWBCの洗浄。このように処理された細胞は、たとえば、抗体による染色および/またはフローサイトメトリー分析によく適している。
【0234】
材料:
1:中間部(206)の最大内径が28mmである
図3Aの回転可能な容器(300)。側方収集チャンバ(220)および下部(207)の内部空間(202)の容量はそれぞれ約1.2mlであり、約1mlの最大処理体積を可能にした。回転可能な容器(300)はPMMA製であった。この実験で用いられる回転可能な容器(300)の製造のために、2つの分離した部品がドリル穿孔されて、互いに接合された。
2:処理ステーション(100):実施例1のものと同じ
【0235】
処理パラメータ:
混合プロトコル:実施例1と同じ
細胞分離プロトコル:実施例2と同じ
再懸濁プロトコル:実施例3と同じ
【0236】
行われた実験:
1.回転可能な容器(300)は処理ステーション(100)に取り付けられた
2.100μlの全血が、回転可能な容器(300)内に加えられた
3.800μlのRBC溶解緩衝材(Biolegend(登録商標)、No420301、塩化アンモニウム、1×)が全血に加えられた
4.混合プロトコルが行われた
5.RBCの溶解を完了させるため、混合物は20分間培養された
6.溶解されたRBCからWBCを分離するため、細胞分離プロトコルが行われた
7.下部(207)の内部空間(202)中の液体および大部分の溶解されたRBCが(廃棄するために)取り出された
8.WBCを洗浄するため、800μlのPBS(リン酸緩衝生理食塩水、1×)が、回転可能な容器(300)内に加えられた
9.再懸濁プロトコルが行われた
10.分離プロトコルが適用された
11.細胞を含まない液体が(廃棄するために)取り出された
12.細胞解放緩衝液として400μlのPBSが、回転可能な容器(300)に加えられた
13.再懸濁プロトコルが適用された
14.細胞解放緩衝液中に再懸濁されたWBCを含む液体が、回転可能な容器(300)から取り出され、続いて分析された。
【0237】
観察:
WBCの回収率は90%を超え、残りのRBCは2%未満の範囲であり、液体は残りが4%未満となるように取り出された。回転可能な容器(300)中の残っている質量は約50mgであった。
【0238】
実施例5:WBCの染色
目的:
フローサイトメータにおける後続の分析、計数および分類を伴うWBCの染色
【0239】
材料:
1.回転可能な容器(300):実施例4のものと同じ
2.処理ステーション(100):実施例4のものと同じ
【0240】
処理パラメータ
混合プロトコル:実施例4と同じ
細胞分離プロトコル:実施例4と同じ
再懸濁プロトコル:実施例4と同じ
【0241】
行われた実験:
1.WBCは、細胞が200μlのPBS緩衝液で再懸濁されたこと以外は、実施例4と同じように処理された。
2.蛍光染料であるアロフィコシアニン(供給者:Biolegend)によりラベリングされた6.4μlの抗ヒトCD45‐抗体が、細胞懸濁液にピペットで移されるか、または代替的に2μlのチアゾールオレンジ(供給者:Sigma Aldrich、DMSO中に2mg/ml)が加えられた。
3.混合プロトコルが適用された。
4.細胞は、暗所において、周囲温度で15分培養された。5分後毎に、混合プロトコルが適用された。周囲の相対湿度は、蒸発を回避するために100%近くに維持された。
5.800μlのPBS緩衝液が、回転可能な容器(300)に加えられた。
6.混合プロトコルが適用された。
7.分離プロトコルが適用された。
8.液相が(廃棄するために)除去された。
9.500μlのPBS緩衝液が、細胞解放緩衝液として回転可能な容器(300)に加えられた。
10.再懸濁プロトコルが行われた。
11.回転可能な容器(300)から細胞懸濁液を直接的に吸引することにより、懸濁された細胞(930)がフローサイトメータにより分析された。
【0242】
観察:
WBCの回収率は85%よりも大きく、スキャッタグラムおよびフルオログラムは、既知のプロトコルを用いる手動の試料調製と同一であった。
【0243】
実施例6:開裂弁を有する回転可能な容器による粒子の処理
目的:
全血の細胞懸濁液を用いた基本的な動作、すなわち、血液と第2の液体との混合、細胞からの液相の除去、および細胞再懸濁緩衝液内での細胞の再懸濁
【0244】
材料:
1.公称孔径が18~40μmの疎水性の焼結多孔ポリエチレン(Porex、Material XM-0294)製の開裂弁(450)を有する回転可能な容器(400)。回転可能な容器(400)の他の要素はPMMA製である。回転可能な容器(400)は、約1mlという最大処理容量を可能にした。周縁の廃棄チャンバの外径は34mmであり、合計で約6mlの廃棄量を受け取ることができた。
2.処理ステーション(100):実施例1のものと同じ
【0245】
処理パラメータ:
粒子(930)の分離および上澄みの除去のためのプログラム:
S1:回転可能な容器(400)は、1,000RPM/秒で3,500RPMの最終回転速度まで加速され、3,500RPMの一定の速度で60秒間回転させられた。
S2:回転可能な容器(400)は、200RPM/秒の加速度で、3,500RPMから8,000RPMまで加速され、8,000RPMの一定の速度で30秒間回転させられた。最後に、回転可能な容器(400)は、1,000RPM/秒で0RPMまで減速された。
【0246】
粒子の再懸濁のためのプログラム
R1:1980°(=5.5周)の間に、約4,000RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の加速を時計方向に適用し、その後、1980°(5.5周)の間に、0RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の減速を適用する。これは、3960°=合計で11回の時計方向への回転に等しい。
R2:1980°(=5.5周)の間に、約4,000RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の加速を反時計方向に適用し、その後、1980°(5.5周)の間に、0RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の減速を適用する。これは、3960°=合計で11回の反時計方向への回転に等しい。
20回繰り返す(R1 R2)。
【0247】
混合のためのプログラム
M1:1980°(=5.5周)の間に、約4,000RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の加速を時計方向に適用し、その後、1980°(5.5周)の間に、0RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の減速を適用する。これは、3960°=合計で11回の時計方向への回転に等しい。
M2:1980°(=5.5周)の間に、約4,000RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の加速を反時計方向に適用し、その後、1980°(5.5周)の間に、0RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の減速を適用する。これは、3960°=合計で11回の反時計方向への回転に等しい。
5回繰り返す(M1、M2)。
【0248】
行われた実験
1.回転可能な容器(400)は、処理ステーション(100)に取り付けられた。
2.100μlの全血が、回転可能な容器(400)内に加えられた。
3.900μlのPBS緩衝液が加えられた。
4.混合プロトコルが行われた。
5.粒子の分離および上澄みの除去のためのプロトコルが行われた。
6.S1を3,500RPMで60秒
7.S2を8,000RPMで30秒
8.200μlのPBSが、回転可能な容器(400)内に加えられた。
9.再懸濁プロトコルが行われた。
【0249】
観察:
4において:混合が達成されたが、開裂弁(450)を貫通した液体はなかった。
5および6において:より低い速度での回転中、粒子(930)は、遠心力の影響下で側方収集チャンバ(220)の壁へと分離された。5の間、液体は、開裂弁(450)を越えては移動しなかった。より高い回転速度に達するように次第に加速すると、開裂弁(450)は開裂し、開裂弁(450)に液体を貫通させることがわかった。
8において:良好な程度の再懸濁が達成されたが、開裂弁(450)を越えて移動した液体はなかった。測定された細胞の回収率は80%よりも高かった。90%を超える上澄みが、周縁の廃棄チャンバに受け取られた。
【0250】
実施例7:周囲フィルタ(550)を有する回転可能な容器(500)による粒子の処理
目的:
粒子の懸濁液を用いた基本的な動作、すなわち、粒子(930)の懸濁液と第2の液体との混合、粒子(930)からの液相の除去、および粒子の再懸濁
【0251】
材料:
1.周囲フィルタ(550)を有する回転可能な容器(500)が用いられた。中間部の最大内径は22mmであった。周囲フィルタ(550)は、公称孔径が18~40μmの疎水性の焼結多孔ポリプロピレン(Porex、Material XM-0294)製であるが、他の要素はPMMA製であった。回転可能な容器(500)は、約1mlという最大処理容量を可能にした。周縁の廃棄チャンバ(560)の外径は34mmであり、合計で約6mlの廃棄量を受け取ることができた。
2.処理ステーション(100):実施例1のものと同じ
【0252】
処理パラメータ
粒子(930)の分離および上澄みの除去のためのプログラム
S1:1,000RPM/秒で8,000RPMの最終回転速度まで加速させ、速度を2秒間維持する
S2:3,000RPM/秒で5,000RPMの最終回転速度まで減速させる
S1 S2を120秒間繰り返す
【0253】
粒子の再懸濁のためのプログラム
R1:1980°(=5.5周)の間に、約4,000RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の加速を時計方向に適用し、その後、1980°(5.5周)の間に、0RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の減速を適用する。これは、3960°=合計で11回の時計方向への回転に等しい。
R2:1980°(=5.5周)の間に、約4,000RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の加速を反時計方向に適用し、その後、1980°(5.5周)の間に、0RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の減速を適用する。これは、3960°=合計で11回の反時計方向への回転に等しい。
20回繰り返す(R1 R2)
【0254】
混合のためのプログラム
M1:1980°(=5.5周)の間に、約4,000RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の加速を時計方向に適用し、その後、1980°(5.5周)の間に、0RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の減速を適用する。これは、3960°=合計で11回の時計方向への回転に等しい。
M2:1980°(=5.5周)の間に、約4,000RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の加速を反時計方向に適用し、その後、1980°(5.5周)の間に、0RPMの最終速度まで25,000RPM/秒の減速を適用する。これは、3960°=合計で11回の反時計方向への回転に等しい。
5回繰り返す(M1 M2)
【0255】
行われた実験
1.回転可能な容器(500)は、処理ステーション(100)に取り付けられた
2.50μlのビーズ懸濁液(Fluorospheres(登録商標)、1×106ビーズ/ml)が、回転可能な容器(500)内にピペットで導入された
3.900μlのPBS緩衝液が加えられた。
4.混合プロトコルが行われた。
5.粒子(930)の分離および/または上澄みの除去のためのプロトコルが行われた。
6.200μlのPBSが、回転可能な容器(500)に加えられた。
7.再懸濁プロトコルが行われた。
【0256】
観察:
4において:混合が達成されたが、周囲フィルタ(550)を越えて移動した液体はなかった。
5において:上澄みは周囲フィルタ(550)を越えたが、粒子は側方収集チャンバ(220)に残った。
7において:粒子(930)は良好に懸濁されたが、周囲フィルタ(550)を越えた液体はなかった。粒子の回収は90%よりも高かった。90%を超える上澄みが、周縁の廃棄チャンバ(560)に受け取られた。
【0257】
実施例8:シリカビーズ(930)およびカオトロピック剤を用いた試料マトリクスからの核酸の単離
血清、血液、血漿、均質化された組織、培養液などの生物学的供給源から、DNAおよびRNAなどの核酸(NA)を単離して分析するために、対象となるNAは、しばしば、潜在的に分析反応の抑制を引き起こす試料中の妨害物質から単離および精製される必要がある。NAは、たとえば、患者由来のゲノムDNAまたはmRNA、試料中に見られるウイルスDNAまたはRNAなどであってもよい。
【0258】
この実施例の目的は、(たとえば、WBC中のウイルス量を判定するために)下流のPCRのためにWBCから核酸を抽出することであった。
【0259】
使用された試薬:
ビーズ懸濁液:
10.00g シリカ粒子(930)(直径範囲:1~10μm)
1.000l 無水エタノールに懸濁されて得られた1lのビーズ懸濁液
溶解緩衝液:
5.50M チオシアン酸グアニジン
0.04M トリス pH7.5
9.00g トリトン ×100
0.02M 1,4-ジメルカプト-2,3-ブタジノール(DTT)
10mg ポリA(GE Healthcare)
1.000l 水を用いて完成された1lの溶解緩衝液
【0260】
洗浄緩衝液:
0.66mM トリス pH7.5
0.16g トリトン ×100
10mg ポリA(GE Healthcare)
185g 水
650g エタノール96%
~1.0l 水を付加して得られた1lの洗浄緩衝液
【0261】
溶出緩衝液:
50mg ドデシルマルトシド
3.30mM トリス pH7.5
5mg ポリA(GE Healthcare)
1.000L 水を用いて完成された1lの溶出緩衝液
【0262】
材料:
1.幅500μm、深さ250μmの側方収集チャンバ(220)を備える
図3Bの回転可能な容器(300)が用いられた。中間部(206)の最大内径は28mmであった。垂直溝(302)内の容量は、約100μlであった。側方収集チャンバ(220)および下部(207)の内部空間(202)の容量はそれぞれ約1.2mlであり、約1mlの最大処理体積を生じた。回転可能な容器(300)は、ポリプロピレン製であり、それぞれ射出成形により製造され、その後、水漏れしない回転可能な容器(300)を形成するためにレーザー封止された、透明の下部および不透明な上部から組み立てられた。
2.処理ステーション(100):実施例1のものと同じ
【0263】
処理パラメータ:
M1:混合プロトコル:実施例1と同じ
S1:分離プロトコル:実施例2と同じ
R1:再懸濁プロトコル:実施例3と同じ
【0264】
行われた実験:
細胞溶解およびシリカビーズ(930)に対するNA結合:
1.100μlの全血から上述のように約5×105のWBCを取得。
2.WBCに150μlの脱イオン水を付加。M1を実施。
3.350μlの溶解緩衝液を付加。M1を実施。
4.25℃で2分培養。
5.100μlのビーズ懸濁液を付加。M1を実施。
6.25℃で10分培養、60秒毎にM1によりビーズ(930)を再懸濁。
【0265】
洗浄:
7.S1により分離プロトコルを実行。
8.廃棄するために、上澄みを除去し、排出。
9.500μlの洗浄緩衝液を付加。
10.R1によりビーズ(930)を洗浄緩衝液中で再懸濁。
11.S1により分離プロトコルを実行。
12.廃棄するために、上澄みを除去し、排出。
13.ステップ9~11をあと2回繰り返す。
【0266】
溶出:
1.温度が80℃の250μlの溶出緩衝液を付加。
2.再懸濁ステップおよび混合ステップ、すなわちR1の後にM1を実施。
3.S1により分離ステップを実施。
4.さらなる処理のために上澄みを除去。
【0267】
観察:
回転可能な容器(300)から収集された最終的な液体は、PCRなどによるさらなる分析に対する準備ができた、単離および精製されたNAを含んでいる一方で、ビーズ(930)は、回転可能な容器(300)内に残っていた。
【0268】
実施例9:液体からの希少細胞(930)の富化
目的:
液体の生物学的試料(920)中の希少細胞(930)を分析するためには、対象となる希少細胞(930)を濃縮させることがしばしば要される。これはしばしば、自動化システム(1)内の相当量の空間を占める大きく嵩高いコンテナを要する。本明細書に記載の回転可能な容器(300)は、以下のように希少細胞を濃縮させるために用いられ得る。
【0269】
材料:
1.実施例8のものと同じ回転可能な容器(300)
2.実施例8のものと同じ処理ステーション(100)
【0270】
行った実験:
実施例8と同じ分離および再懸濁プロトコル。
1.希少細胞(930)を含む5mlの細胞懸濁液を用いて処理を開始。
2.1mlの細胞懸濁液を回転可能な容器(300)内に付加。
3.分離プロトコルを実施。
4.細胞を含まない上澄みを回転可能な容器(300)から除去。
5.ステップ2~4を4回繰り返す。
6.250μlのPBS緩衝液を付加。
7.再懸濁プロトコルを実施。
8.さらなる処理または分析のために、回転可能な容器(300)からあらかじめ凝縮された細胞懸濁液の取り出し。
【0271】
観察:
細胞(930)は、10倍を超えて凝縮することができた。
【0272】
実施例10:
第1のステップにおいて、患者からの大量の細胞を含む試料は、統計学的データに関して分析される。たとえば、50,000個の細胞は4つの蛍光チャネルで測定され、細胞あたり4つの整数の蛍光値を提供する。また、細胞直径は適切なマーカーを用いて測定される。さらに、反射モードを用いて整数の細胞散乱値が測定される。x/yの幾何学的解像度は15×3μmであり、各細胞は特定の座標を割り当てられる。
【0273】
集められたデータは、第2のステップにおいて、所定の基準を用いて処理され、たとえば6つの細胞分類で、相対的な存在を判定する。各細胞分類に関して、相対濃度が計算される。
【0274】
第3のステップにおいて、高い(3×2μm)解像度の像は、6つの細胞分類のそれぞれに対して取得される。10個の代表的な細胞など、限られた数の細胞が、第1のステップで取得された座標を用いて、全てまたは限られた数の蛍光チャネルにおいて分析される。
【0275】
第4のステップとして、先行する全てのステップからのデータは、ユーザに提示および報告される。とりわけ、各細胞分類から、限られた数の細胞が、それぞれの分類の絶対的または相対的存在と一緒に報告される。さらに、マーカーの発現レベルが報告されてもよい。
【0276】
実施例11:
第1および第2のステップは実施例10と同じである。
【0277】
第3のステップにおいて、通常でない(発現)パターンを有する細胞から、または疾病に関連付けられる発現パターンを有する細胞から、限られた数の細胞が、これら予期されない細胞または疾病に関連付けられる細胞についての形態学的データを提供するために、任意に第5の波長を用いることによって、より高い解像度で結像される。
【0278】
実施例12:
第1のステップは、少ない限られた数の細胞(たとえば、約200個の細胞)の高解像度のスキャンを行って形態学的データを取得するために用いられる。
【0279】
第2のステップは、(ユーザによって、または自動化システムによって)形態学的データを分析し、対象となる細胞または細胞の分類を識別するために用いられる。
【0280】
第3のステップは、高いスループットおよび低い解像度で試料を分析するために機能する。
【0281】
この例においては、スキャナは、少なくとも2つの解像度をサポートしていずれかで用いられる。解像度の切り替えは、データ取得の頻度、回転速度、スキャナのステップサイズを変更することによって、またはスリットもしくは開口を変更することによって行われ得る。より低い解像度モードは、統計学的目的でデータを測定するために用いられる一方で、より高い解像度モードは、形態学的データを取得するために用いられる。
【0282】
代替的に、2つの測定手段が用いられてもよく、一方の測定手段が低解像度で(より高い速度で)測定し、他方の測定手段が高解像度で(より低い速度で)測定し、第1の測定手段は、統計学的データのために使用されるデータを取得し、第2の測定手段は、形態学的データのために使用されるデータを取得する。第1および第2の手段は、レーザースキャンに基づいてもよいし、第1の測定手段のみがレーザースキャンに基づく一方で、第2の測定手段はカメラに基づいてもよい。適切な測定手段の他の任意の組み合わせも、当業者に既知のものとして用いられてもよい。