(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】穴あけ方法及び穴あけ機
(51)【国際特許分類】
B23B 39/24 20060101AFI20220526BHJP
B23B 39/18 20060101ALI20220526BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20220526BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
B23B39/24
B23B39/18
G05B19/4093 J
B23Q15/00 301F
(21)【出願番号】P 2020089173
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2020-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川森 巧曜
(72)【発明者】
【氏名】木村 一夫
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-128092(JP,A)
【文献】特開2007-245331(JP,A)
【文献】実開昭62-121008(JP,U)
【文献】特開平06-198506(JP,A)
【文献】特開平05-285756(JP,A)
【文献】特開2003-245843(JP,A)
【文献】特許第6709869(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 39/16ー39/18、39/24、41/00
G05B 19/4093、19/4155
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工テーブルに設置された複数の加工対象穴を有する対象物に対して、Z方向及びX方向に移動可能な第1主軸で加工する第1穴と、前記第1主軸と前記X方向に並んで配置され、前記Z方向及び前記X方向に移動可能な第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成し、
前記第1穴と前記第2穴を結ぶ第1の直線と、前記第1主軸の中心と前記第2主軸の中心とを結ぶ第2の直線が平行に、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、回転テーブルを前記加工テーブルに対して前記Z方向の周りに回転し、
前記第1の直線と前記第2の直線が一致するように、前記回転テーブルを前記加工テーブルに対して相対的に
Y方向に移動させ、
前記第1穴と前記第1主軸の中心、および、前記第2穴と前記第2主軸の中心がそれぞれ一致するように、前記第1主軸及び前記第2主軸を前記回転テーブルに対して相対的に前記X方向に移動させ、
前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する、
穴あけ方法。
【請求項2】
更に、
前記回転テーブルの前記加工テーブルに対する回転と同時に、前記第1主軸及び前記第2主軸が前記X方向に移動する、
請求項1に記載の穴あけ方法。
【請求項3】
更に、
前記回転テーブルの前記加工テーブルに対する回転中心を基準とする前記加工対象穴の穴座標を記憶する、
請求項1又は2に記載の穴あけ方法。
【請求項4】
更に、
全体の加工時間が小さくなるように、前記第1穴と前記第2穴の組合せと加工順を作成する、
請求項1~3のいずれかに記載の穴あけ方法。
【請求項5】
更に、
全体の加工時間が小さくなるように、遺伝的アルゴリズムを用いて、前記第1穴と前記第2穴の組合せと加工順を作成する、
請求項1~4のいずれかに記載の穴あけ方法。
【請求項6】
更に、
前記第1穴と前記第2穴の組合せと加工順を表す個体であって、初期世代の一群の個体をランダムに生成し、
前記一群の個体から選択された2つの個体を交叉し、
前記個体について、前記穴座標に基づいて、第1主軸移動量、第2主軸移動量、および加工テーブル移動量および回転テーブル回転量を引数とする目的関数の値を適合度として評価し、
前記適合度の小さい一群の個体を新しい世代の個体として再生し、
終了条件が満たされるまで繰り返し、前記交叉し、前記適合度を評価し、前記新しい世代の個体を再生し、
前記終了条件を満たしたときに得られた最終世代の個体から、前記適合度が最も小さい個体を前記加工順として決定する、
請求項5に記載の穴あけ方法。
【請求項7】
前記穴座標を穴番号と対応して記憶し、
前記第1穴の前記穴番号と前記第2穴の前記穴番号の組合せを予め加工順に並べたパス表現でコード化された
個体を生成する、
請求項
3に記載の穴あけ方法。
【請求項8】
更に、
前記第1穴と前記第2穴の組合せと加工順を表す個体の組合せを単位として、部分一致交叉、順序交叉、周期交叉又は辺組換え交差により、交叉する、
請求項7に記載の穴あけ方法。
【請求項9】
前記目的関数の値は、
前記第1主軸のX方向の移動量、
前記第2主軸のX方向の移動量、
前記回転テーブルの前記加工テーブルに対する移動量のY方向移動量、および、
前記回転テーブルの回転移動量、
のうちの最大の値の総和である、
請求項
6に記載の穴あけ方法。
【請求項10】
更に、
前記第1穴と前記第2穴の距離が、前記第1主軸と前記第2主軸とが干渉しない最小距離未満の組合せを含む前記個体を取り除く、
請求項
6又は8に記載の穴あけ方法。
【請求項11】
Y方向に延びるY直線ガイドと、
前記Y直線ガイドに設置され、前記Y方向に移動可能な加工テーブルと、
前記加工テーブルを跨いで固定された門型コラムと、
前記門型コラムの上部に配置され、Z方向の周りに回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルに設置され、X方向に延びるX直線ガイドと、
Z方向に移動可能な第1主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第1主軸と、
Z方向に移動可能な第2主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第2主軸と、
制御装置であって、
前記回転テーブルの回転中心に対する、複数の対象穴の穴座標を記憶する記憶装置と、
前記穴座標に基づいて、前記第1主軸で加工する第1穴と、前記第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成する加工順作成部と、
前記加工順に、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する加工プログラムを作成するプログラム作成部と、
前記加工プログラムに従って、前記第1穴と前記第2穴が前記X方向に並び、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、前記回転テーブルを回転し、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工するように、前記加工テーブル、前記回転テーブル、前記第1主軸、及び前記第2主軸を数値制御する数値制御部と、
を有する制御装置、を有する、
穴あけ機。
【請求項12】
加工テーブルと、
前記加工テーブルの両側に配置され、Y方向に延びる一組のY直線ガイドと、
前記一組のY直線ガイドに設置され、前記Y方向に移動可能な門型コラムと、
前記門型コラムの上部に配置され、Z方向の周りに回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルに設置され、X方向に延びるX直線ガイドと、
Z方向に移動可能な第1主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第1主軸と、
Z方向に移動可能な第2主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第2主軸と、
制御装置であって、
前記回転テーブルの回転中心に対する、複数の対象穴の穴座標を記憶する記憶装置と、
前記穴座標に基づいて、前記第1主軸で加工する第1穴と、前記第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成する加工順作成部と、
前記加工順に、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する加工プログラムを作成するプログラム作成部と、
前記加工プログラムに従って、前記第1穴と前記第2穴が前記X方向に並び、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、前記回転テーブルを回転し、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工するように、前記門型コラム、前記回転テーブル、前記第1主軸、及び前記第2主軸を数値制御する数値制御部と、
を有する制御装置、を有する、
穴あけ機。
【請求項13】
前記加工順作成部は、全体の加工時間が小さくなるように、遺伝的アルゴリズムを用いて前記加工順を決定する、請求項11又は請求項12に記載の穴あけ機。
【請求項14】
前記加工順作成部は、
前記第1穴と前記第2穴の組合せと加工順を表す個体であって、初期世代の一群の個体をランダムに生成する初期世代生成部と、
前記個体について、前記組合せの前記穴座標及び前記加工順に基づいて、前記第1主軸、前記第2主軸、前記加工テーブルの移動量、及び、前記回転テーブルの回転量を引数とする目的関数の値である適合度を演算する評価部と、
前記適合度が小さい一群の前記個体を新しい世代の前記個体として再生する再生部と、
前記一群の個体から選択された2つの個体を交叉し、新しい前記個体を生成する交叉部と、
前記第1穴と前記第2穴の距離が、前記第1主軸と前記第2主軸とが干渉しない最小距離未満の組合せを含む前記個体を取り除く制限部と、
終了条件を満たしたときに得られた最終世代の個体から、前記適合度が最も小さい個体を前記加工順とする決定部と、を有する、
請求項13に記載の穴あけ機。
【請求項15】
前記加工順作成部は、組合せの穴座標に基づいて、前記第1主軸のX座標、前記第2主軸のX座標、前記加工テーブルのY座標およびC座標を演算する座標変換部を有する、
請求項14に記載の穴あけ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴あけ方法及び穴あけ機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の対象穴を穴あけ加工できる工作機械として、マシニングセンターや多軸穴明け機(例えば特開平05-111813号公報、以下、特許文献1)が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マシニングセンターで穴をあける場合、1穴ずつ加工する。特許文献1のような穴あけ機を用いた場合にも、同一ピッチに配列していない穴は1穴ずつ加工する。
本発明は、一方向に規則的に配置されない穴を短い加工時間で加工する穴あけ方法及び穴あけ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面は、穴あけ方法であって、
加工テーブルに設置された複数の加工対象穴を有する対象物に対して、第1主軸で加工する第1穴と、前記第1主軸とX方向に並んで配置される第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成し、
前記第1穴と前記第2穴を結ぶ第1の直線と、前記第1主軸の中心と前記第2主軸の中心とを結ぶ第2の直線が平行に、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、回転テーブルを前記加工テーブルに対して回転し、
前記第1の直線と前記第2の直線が一致するように、前記回転テーブルを前記加工テーブルに対して相対的に移動させ、
前記第1穴と前記第1主軸の中心、および、前記第2穴と前記第2主軸の中心がそれぞれ一致するように、前記第1主軸及び前記第2主軸を前記回転テーブルに対して相対的に移動させ、
前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する。
【0005】
本発明の第2の側面は、穴あけ機であって、
Y方向に延びるY直線ガイドと、
前記Y直線ガイドに設置され、前記Y方向に移動可能な加工テーブルと、
前記加工テーブルを跨いで固定された門型コラムと、
前記門型コラムの上部に配置され、Z方向の周りに回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルに設置され、X方向に延びるX直線ガイドと、
Z方向に移動可能な第1主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第1主軸と、
Z方向に移動可能な第2主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第2主軸と、
制御装置であって、
前記回転テーブルの回転中心に対する、複数の対象穴の穴座標を記憶する記憶装置と、
前記穴座標に基づいて、前記第1主軸で加工する第1穴と、前記第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成する加工順作成部と、
前記加工順に、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する加工プログラムを作成するプログラム作成部と、
前記加工プログラムに従って、前記第1穴と前記第2穴が前記X方向に並び、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、前記回転テーブルを回転し、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工するように、前記加工テーブル、前記回転テーブル、前記第1主軸、及び前記第2主軸を数値制御する数値制御部と、
を有する制御装置、を有する。
【0006】
本発明の第3の側面は、穴あけ機であって、
加工テーブルと、
前記加工テーブルの両側に配置され、Y方向に延びる一組のY直線ガイドと、
前記一組のY直線ガイドに設置され、前記Y方向に移動可能な門型コラムと、
前記門型コラムの上部に配置され、Z方向の周りに回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルに設置され、X方向に延びるX直線ガイドと、
Z方向に移動可能な第1主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第1主軸と、
Z方向に移動可能な第2主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第2主軸と、
制御装置であって、
前記回転テーブルの回転中心に対する、複数の対象穴の穴座標を記憶する記憶装置と、
前記穴座標に基づいて、前記第1主軸で加工する第1穴と、前記第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成する加工順作成部と、
前記加工順に、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する加工プログラムを作成するプログラム作成部と、
前記加工プログラムに従って、前記第1穴と前記第2穴が前記X方向に並び、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、前記回転テーブルを回転し、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工するように、前記門型コラム、前記回転テーブル、前記第1主軸、及び前記第2主軸を数値制御する数値制御部と、
を有する制御装置、を有する。
【0007】
好ましくは、前記第1主軸および前記第2主軸は、それぞれZ方向に延びる。回転テーブルは、前記第1主軸および前記第2主軸に平行な回転軸の回りに回転する。回転テーブルの回転軸を回転中心という。
【0008】
機械の座標系は直交座標系であり、次のとおりとする。
回転テーブルの回転軸を座標原点として、左右方向にX軸(正面から向かって右方向を正)を、加工テーブルの前後方向にY軸(前方向を正)を、上下方向にZ軸(上方向を正)を、回転テーブルの回転軸の回りの回転方向にC軸(上方から見て時計回りを正)をとる。第1主軸のX座標、Y座標、Z座標をそれぞれx1、y1、z1という。第2主軸のX座標、Y座標、Z座標をそれぞれx2、y2、z2という。一組の穴を同時に穴あけ加工する時は常にy1=y2であり、単にyと表記する場合もある。
穴座標については、回転中心が原点にあるようにワーク38を設置したときに、ワーク38上の各穴のX座標をU座標、Y座標をV座標とする。特に、第1穴のX座標値、Y座標値をそれぞれu1、v1、第2穴のX座標値、Y座標値をそれぞれu2、v2と表記する。
座標の単位は直線軸についてはmm、回転軸についてはradとする。
なお、軸名称および単位は自由に変更しても良い。
【0009】
穴あけ機は、加工テーブル、床フレーム、門型コラム、回転テーブル、第1X駆動装置、第2X駆動装置、Y駆動装置及び回転テーブル駆動装置(C駆動装置)を有する。門型コラムは、加工テーブルの両側に配置された一組の支柱と、支柱の上部に配置されたビームを有して良い。回転テーブルは、門型コラムに固定される。X直線ガイドは、回転テーブルに配置される。第1Zユニットおよび第2Zユニットは、X直線ガイドに配置される。Y直線ガイド(Yガイド)は、床フレームに配置される。第1X駆動装置は、X方向に延びてビームに配置され、第1ZユニットをX方向に移動する。第2X駆動装置は、X方向に延びて回転テーブルに配置され、第2ZユニットをX方向に移動する。Y駆動装置は、Y方向に延びて床フレームに配置され、前後サドル(Yサドル)を移動する。C駆動装置は、コラムに配置され、回転テーブルをZ方向を中心として回転させる。数値制御部は、第1X駆動装置、第2X駆動装置、Y駆動装置及び回転テーブル駆動装置(C駆動装置)を数値制御して、第1Zユニット、第2Zユニット、Yサドル、加工テーブルを移動する。
なお、床フレームに固定された加工テーブルと、加工テーブルの両側に配置されたYガイドと、Yガイドに配置された門型の移動コラムを有しても良い。Y駆動装置は、それぞれのYガイドに配置してもよい。Y駆動装置は同期して一つの移動コラムを駆動して良い。
【0010】
第1Zユニットは、第1ボディ、第1Zガイド、第1Zサドル、第1Z駆動装置及び第1主軸ユニットを有する。Zガイド及びZ駆動装置は、Z方向に延びてボディに配置される。Zサドルは、Zガイド上にZ方向に移動可能に配置される。Zサドルは、Zガイド上に上下に移動可能に配置され、主軸ユニットを固定する。第2Zユニットは、第1Zユニットと実質的に同じである。
なお、Zガイドに代えてボールスプライン、又は、スライドガイドとスライドシャフトの組合せを利用しても良い。
【0011】
好ましくは、第1X駆動装置、第2X駆動装置、Y駆動装置、第1Z駆動装置および第2Z駆動装置は、サーボモータ及びボールねじをそれぞれ有する。なお、サーボモータ及びボールねじに代えて、リニアモータを利用しても良い。
なお、Z駆動装置は、エアシリンダとしても良い。
【0012】
好ましくは、回転テーブルの回転と同時に、前記加工テーブルを前記回転テーブルに対して相対的に移動する。より好ましくは、第1穴と第2穴を加工しない範囲における、前記第1主軸および前記第2主軸のZ方向への移動は、回転テーブルの回転と第1主軸及び第2主軸のX方向へ移動と同時に実行される。好ましくは、非加工部分における左右、前後及び回転方向の各軸移動の終了後、第1主軸及び第2主軸を同時に下降してワークを加工する。
【0013】
好ましくは、プログラム作成部が、加工プログラムを作成する。加工プログラムは、記憶装置に記憶される。なお、ユーザーが加工プログラムを作成しても良い。
【0014】
加工順は、好ましくは演算装置によって最適化される。加工順は、好ましくは遺伝的アルゴリズムを用いて決定される。
【0015】
穴座標は、穴番号と共に記憶される。穴座標及び穴番号は、穴座標表に記憶されてよい。加工対象の穴は、それぞれ近接する穴(近接穴)の穴番号(近接穴番号)を共に記憶されてよい。
なお、穴座標は、例えばワーク座標原点からの座標で記憶されても良い。この場合、回転中心からのワーク座標原点の座標を別途記憶する。
【0016】
穴座標は、座標変換部によって、機械座標に変換されてよい。
第1主軸で穴あけする第1穴と、第1穴と同時に第2主軸で穴あけする第2穴の穴座標を、座標変換して、機械座標を得る。まず、第1穴と第2穴を結ぶ直線がU軸となす回転角c1を求める。次に、第1穴と第2穴を結ぶ直線のv軸との切片をY座標とする。第1穴と第2穴を結ぶ直線とv軸との交点と、第1穴との距離を第1穴のX座標の絶対値とする。第1穴と第2穴を結ぶ直線とv軸との交点と、第2穴との距離を第2穴のX座標の絶対値とする。第1穴及び第2穴のX座標の符号は、回転角c1が0以上π/2未満又は3/2π以上2π以下のときは、第1穴及び第2穴のそれぞれのu座標の符号とし、それ以外のときは第1穴及び第2穴のそれぞれのu座標の符号と異なる符号とする。
【0017】
プログラム作成部は、第1穴と第2穴の穴座標を変換して得られた機械座標に基づいて、加工プログラムを作成する。
【0018】
なお、加工プログラムや穴座標をユーザーが入力部又は入出力ポートから入力してもよい。穴座標は、表形式で一括して入力されてよい。穴座標は、座標記憶部に記憶される。
【0019】
好ましくは、目的関数は、個体を加工順で加工するときの、第1主軸と第2主軸のXY平面における位置決め時間の総和に対応する値を示す。言い換えると、目的関数は、非加工時間に対応する値を示す。特に好ましくは、目的関数は、各軸のエアカット時間の総和に対応する値を示す。
主軸のX方向移動量、加工テーブルに対する回転テーブルのY方向移動量、回転テーブルの回転移動量は、各軸の移動時間に対応する。主軸の位置を穴位置に一致させるときに、各軸を同時に最大速度で移動させる場合が多い。望ましくは、評価部は、X方向移動時間に対するテーブルY方向およびテーブル回転方向の移動時間の最大値に対応する移動距離を移動量として演算する。X方向移動時間と各軸の移動量の最大値の総和を適合度とする。
好ましくは、C座標の移動量が2πを超えるとき、座標変換部は、C座標を2πずつ加減して2π以下にする。
第1係数は、第1主軸または第2主軸のサーボパラメータに対するテーブル(Y)移動方向のサーボパラメータの比較値として良い。例えば、第1主軸の加減速の値に対するテーブル(Y)移動方向の加減速の値の倍率として良い。
第2係数は、第1主軸または第2主軸のサーボパラメータに対するテーブル回転軸のサーボパラメータの比較値として良い。例えば、第1主軸の加減速の値に対するテーブル回転軸の加減速の値の倍率として良い。
目的関数は、各軸の移動速度に応じて変更して良い。例えば、直線軸の移動時間が非常に短い場合には、目的関数の値は、テーブル回転方向の移動量の総和として良い。
【0020】
再生においては、エリート選択、ルーレット選択、ランキング選択、トーナメント選択、GENITORアルゴリズム等の代表的な選択方法を利用できる。これらの選択方法を組み合わせて利用しても良い。エリート選択は、例えば、2世代エリート選択である。
再生によって、適合度の小さい個体は増殖し、適合度の大きい個体は死滅する。
【0021】
制限付き選択を好適に利用できる。制限部は、最小距離未満の加工穴の組合せを含む個体を除外する。ここで、最小距離は、第1主軸と第2主軸とが干渉しない最小距離として決定される。制限付き選択は、いずれの選択方法と組み合わせても良い。
好ましくは、制限部は、第1穴と第2穴の組合せ毎に、座標変換された機械座標のX座標の差が最小距離未満の組合せを含む個体を除外する。
【0022】
個体群の中から、一定の割合で交叉させる個体を選択して、交叉する。交叉によって一部が変更された個体群の更に一部を突然変異させて良い。
交叉は、1点交叉又は2点交叉が望ましい。一組の親をランダムに選ぶ。交叉点を1点又は2点ランダムに選ぶ。2点交叉の場合、2つの交叉点の間の穴の順を一組の親の間で交換する。交叉点は、パス表現(path representation)のうちの、ある第1穴および第
2穴の組合せと、次の第1穴および第2穴の組合せとの境とする。
【0023】
遺伝操作部は、個体を突然変異させて新しい個体を生成する突然変異部を含んで良い。
遺伝操作部は、個体群の中から一定の割合でランダムに突然変異させる個体を選択する。突然変異は、例えば次の3つを利用できる。これらを組み合わせて利用しても良い。突然変異は、いずれの交叉方法と組み合わせても良い。
(1)ランダムに選択した2つの加工穴を交換する。
(2)ランダムに選択した2組の穴の組合せを入れ替える。
(3)個体のうちの穴の組合せを一組取り出してその後ろを詰め、ランダムに選んだ穴の組合せの位置に挿入する。
再生、交叉、突然変異によって、次世代の個体群へと進化する。
【0024】
遺伝的アルゴリズムの終了条件は、例えば、あらかじめ設定された世代交代の回数(終了回数)である。決定部は、世代交代数が終了回数に達したときに、適合度が最も小さい個体を加工順として選択する。
【0025】
対象穴の個数は奇数であっても良い。このとき組にしない穴(単独穴)を選択する。単独穴は、第1主軸または第2主軸のいずれか一方で加工される。好ましくは、単独穴は最後に加工される。
好ましくは、個体は第1穴と第2穴の穴番号の組合せと、単独穴の穴番号を加工順に並べて表現される。
単独穴を加工する時の機械座標(x,y)は、X座標及びY座標をそれぞれC座標の関数として、単独穴の穴座標(u,v)に基づいて表される。単独穴の直前の加工順の組合せの機械座標から単独穴の穴座標への移動時間が最小になるように、単独穴のC座標を決定する。望ましくは単独穴を加工する主軸(選択主軸)を、加工時間が最小になるように決定する。例えば、第1主軸で加工する場合の加工時間と、第2主軸で加工する場合の時間の加工時間をそれぞれ演算し、加工時間が最小になるように、単独穴の機械座標及び加工する主軸を決定する。
選択主軸が単独穴を加工するときに、他方の主軸(非選択主軸)のX座標は、選択主軸と非選択主軸の距離が最小距離以上であり、かつ、直前の加工におけるX座標からの非選択主軸の移動量が最小となるように定められる。
奇数の個体表現は、上述のいずれの評価方法、再生方法、交叉方法や突然変異方法と組み合わせても良い。
【0026】
プログラム作成部は、作成された加工順に従って、加工プログラムを作成する。プログラム作成部は、評価部が変換した各軸座標に基づいて数値制御プログラムを作成する。穴座標がZ座標を含む場合、プログラム作成部はZ座標を穴座標記憶部から読み取り、加工プログラムを作成する。Z座標は穴座標と別に記憶されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図5】実施形態1の加工順の決定方法のフローチャート
【
図7】実施形態1の加工順を表す染色体表現(個体)
【
図10】実施形態1の2つの穴の交換による突然変異
【
図11】実施形態1の2組の組合せの交換による突然変異
【
図12】実施形態1の1組の組合せの挿入による突然変異
【
図13】実施形態2の加工順を表す染色体表現(個体)
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態1)
実施形態1では、対象穴の個数が偶数の場合を扱う。
図1に示すように、穴あけ機10は、フレーム13と、門型コラム11と、Yガイド(Y直線ガイド)32と、Y駆動装置35と、加工テーブル36と、回転テーブル37と、Xガイド(X直線ガイド)15と、第1X駆動装置16と、第2X駆動装置17と、第1Zユニット18と、第2Zユニット31と、第1主軸28と、第2主軸39とを有する。
【0029】
門型コラム11は、一組の支柱11bと、ビーム11cとを有する。各支柱11bは、床フレーム13に固定される。ビーム11cは、左右方向に延びる。ビーム11cは、一組の支柱11bの間に固定される。
【0030】
一組のYガイド32は、Y方向に延びる。一組のYガイド32は、床フレーム13に固定される。加工テーブル36は、Y方向に移動可能に、Yガイド32上に配置される。Y駆動装置35は、Yボールねじ(不図示)及びYモータ(不図示)を有する。
【0031】
回転テーブル37は、円テーブル37aと、壁面37bと、貫通穴37cとを有する。壁面37bは、XZ面に沿って円テーブル37aの上方に広がる。壁面37bは、円テーブル37aに固定される。貫通穴37cは、円テーブル37aを垂直方向に貫通し、X方向に延びる。貫通穴37cは壁面37bの前方に、X方向に延びて、円テーブル37aを貫通して配置される。回転テーブル37は、回転中心65を中心として回転可能に、ビーム11c上に配置される。回転テーブル37は、軸受によって支持される。回転テーブル37は、テーブル回転装置(Cモータ、不図示)と接続され、Cモータによって回転する。
【0032】
一組のXガイド15は、X方向に延びる。一組のXガイド15は、壁面37bに上下方向に並べて配置される。第1Zユニット18及び第2Zユニット31は、X方向に移動可能に、Xガイド15に配置される。第1Zユニット18及び第2Zユニット31は、貫通穴37cを貫通する。第1Zユニット18は、正面視で第2Zユニット31の左側に配置される。
第1X駆動装置16は、第1Xモータ16aと、第1Xボールねじ16bとを有する。第1X駆動装置16は、X方向に延びる。第1X駆動装置16は、壁面37bに配置され、第1Zユニット18を駆動する。好ましくは、第1X駆動装置16は、壁面37bの正面視で左側に配置され、Xガイドの50~70%の範囲に延びる。
第2X駆動装置17は、壁面37bの正面視で右側に配置され、第2Zユニット31を駆動する。その他の点については、第1X駆動装置16と実質的に同じである。
【0033】
なお、貫通穴37cを設けずに、壁面37bを円テーブル37aの下方に設置しても良い。この場合、第1Zユニット18及び第2Zユニット31は、円テーブル37aの下方に配置される。
【0034】
図2に示すように、第1Zユニット18は、Xサドル19と、ボディ33と、Zガイド24と、Zサドル23と、Z駆動装置22と、主軸ユニット30と、ブッシュ25とを有する。Z駆動装置22は、Zモータ22aと、Zボールねじ22bと、ベアリング22cとを有する。Zボールねじ22bは、ベアリング22cに支持され、Zモータ22aに直結する。Zボールねじ22bのナットは、Zサドル23に固定される。主軸ユニット30は、ブッシュ25に摺動してガイドされる。主軸ユニット30は、ラム26と、主軸28と、主軸モータ27とを有する。主軸28は、ラム26内に回転可能に支持され、主軸モータ27のロータと直結する。主軸28は、例えば、ドリル、リーマやタップである工具29を固定する。第1Zユニット18は、特許3792456号公報、実用新案登録第3130456号公報に開示された工作機械を使用できる。
第2Zユニット31は、第2Z駆動装置(不図示)を有する。第2Z駆動装置は、第2主軸39をZ方向に駆動する。
【0035】
図3を参照して、加工方法を説明する。まず、複数の対象穴を、2つずつの組合せに分ける。2穴の組合せを順番に並べて加工順を作成する(S1)。次いで加工順に従って、加工プログラムを作成する(S2)。第1主軸28と第2主軸39が、主軸モータによって回転する(S3)。Y駆動装置35が、加工テーブル36のY方向を割り出す。Cモータが、回転テーブル37の回転方向(C軸)を割り出す(S4)。第1X駆動装置16が、第1Zユニット18のX方向(X1軸)を割り出す。第2X駆動装置17が、第2Zユニット31のX方向(X2軸)を割り出す(S5)。第1主軸28および第2主軸39が下降し、ワーク38が穴あけ加工される(S6)。第1主軸28および第2主軸39が上昇し、第1主軸28、第2主軸39が退避する(S7)。加工プログラムが終了するまで、ステップS4~S7を繰り返す(S8)。
【0036】
図4に示すように、制御装置41は、演算装置42と、記憶装置47と、入出力ポート49と、入力部50と、出力部51と、バス46とを有する。バス46は、演算装置42と、記憶装置47と、入出力ポート49と、入力部50と、出力部51とを接続し、通信する。
【0037】
演算装置42は、数値制御部44を有する。数値制御部44は、第1X駆動装置16と、第2X駆動装置17と、Y駆動装置35と、第1Z駆動装置22と、第2Z駆動装置と、テーブル回転装置と、第1主軸28と、第2主軸39とを制御する。好ましくは、演算装置42は、加工順作成部43及びプログラム作成部45を有する。加工順作成部43は、初期世代生成部43aと、評価部43bと、座標変換部43cと、再生部43dと、遺伝操作部43eと、決定部43iとを有する。望ましくは、加工順作成部43は、制限部43hを有する。遺伝操作部43eは、交叉部43fおよび突然変異部43gを有する。プログラム作成部45は、決定された加工順および、機械座標に変換された穴座標に基づいて加工プログラムを作成する。
【0038】
記憶装置47は、主記憶装置や外部記憶装置を有する。記憶装置47は、座標記憶部47aやプログラム記憶部47bを有しても良い。座標記憶部47aおよびプログラム記憶部47bは、穴座標および加工プログラムをそれぞれ記憶する。
【0039】
入力部は、例えば、キーボード、ポインティングデバイスである。出力部は、例えば、モニターである。入出力ポートは、例えば、USBポート、無線通信ポートなどの通信ポートである。入出力ポートは、第1X駆動装置16と、第2X駆動装置17と、Y駆動装置35と、第1Z駆動装置22と、第2Z駆動装置と、テーブル回転装置と、第1主軸28と、第2主軸39と通信する。
【0040】
図5を参照して、遺伝的アルゴリズムによる加工順の決定方法を説明する。まず、記憶装置47が、穴位置を記憶する(S11)。初期世代生成部43aが、初期世代の個体群を生成する(S12)。座標変換部43cが、第1穴と第2穴の穴座標を変換し、機械座標を演算する(S13、S19)。制限部43hが、生成された各個体のうち、加工できない個体を除外する(S14、S20)。評価部43bが、各個体の適合度を評価する(S15、S21)。再生部43dが、適合度の小さい個体を再生する(S16)。交叉部43fが2つの親を交叉し、子を生成する(S17)。突然変異部43gによって、個体が突然変異する(S18)。決定部43iが、終了条件に達したか否かを判断し、終了条件に達するまでステップS16~S21を繰り返す(S22)。終了条件に達した場合、決定部43iが加工順を決定する(S23)。
【0041】
穴座標は、穴座標表54に入力される(S11)。
図6に示すように、穴座標表54は、穴番号54a、u座標およびv座標54bを有する。穴座標表54は、z1座標およびz2座標54cを有しても良い。z1座標は穴の上方端、z2座標は穴の下方端のZ座標である。
【0042】
初期世代生成部43aは、穴番号をランダムに配列して、予め定められた数(初期世代数)だけ初期世代を作成する(S12)。
【0043】
図7に示すように、個体は、第1穴の穴番号と第2穴の穴番号の組合せを順番に並べたパス表現としてコード化される。つまり、個体は、加工順に沿って、第1番目の第1穴、第1番目の第2穴、第2番目の第1穴、第2番目の第2穴、・・・第n番目の第1穴、第n番目の第2穴・・・の順に穴番号を並べて表現される。
【0044】
ステップS13、S19における座標変換について以下に説明する。
図8Aは、C軸が原点にあるときの上方から見たワーク38を示す。ワーク38は、多数の加工対象穴66を有する。加工対象穴66は、加工順に定められた第1穴661と第2穴662を有する。第1穴661と第2穴662を結ぶ直線663とU軸がなす角を回転角c1とする。
図8Bは、回転角c1だけ回転テーブル37を回転させたときの上方から見たワーク38を示す。
図8Bに示すように、第1穴661及び第2穴662を加工する際には、直線663がX軸に平行であり、第1穴661が第2穴662よりも左側に位置する。
第1穴と第2穴の組合せを加工するときの機械座標は次式で演算される。
【数1】
・・・(式1)
ここで、
(u1,v1):第1穴の穴座標
(u2,v2):第2穴の穴座標
x1:第1主軸のX座標(機械座標)
x2:第2主軸のX座標(機械座標)
y:第1主軸及び第2主軸のY座標(機械座標)
c1:C座標(機械座標)
である。
ここで、x1座標の符号は、回転角c1が0以上π/2未満又は3/2π以上2π以下のときは、u1座標の符号とし、それ以外のときはu1座標の符号と異なる符号とする。x2座標の符号は、回転角c1が0以上π/2未満又は3/2π以上2π以下のときは、u2座標の符号とし、それ以外のときはu2座標の符号と異なる符号とする。
【0045】
制限部43hは、各個体に含まれる全ての組合せの中から、次式を満たす組合せを含む個体を除去する(S14、S20)。
x2-x1<L74 ・・・(式2)
ここで、
L74=L75+L76+L77
L74:最小距離
L75:第1主軸28の中心軸から第1Zユニット18の右端までの距離(
図1参照)
L76:第2主軸39の中心軸から第2Zユニット31の左端までの距離(
図1参照)
L77:衝突安全距離
なお、制限部43hは、次式を満たす組合せを含む個体を除去しても良い。
【数2】
・・・(式3)
【0046】
ステップS14、S20において、制限部43hによって個体が除去された結果、個体群の数が予め定められた個体数を下回る場合、初期世代生成部43aは新しい個体を生成して良い。
【0047】
評価部43bによって、適合度は目的関数f(s)の値として演算される(S15、S21)。
ここで、
x1
n:第1穴と第2穴の組合せのn番目に係る第1主軸のX座標(X1座標、機械座標)
x2
n:第1穴と第2穴の組合せのn番目に係る第2主軸のX座標(X2座標、機械座標)
y
n:第1穴と第2穴の組合せのn番目に係るY座標(機械座標)
c
n:第1穴と第2穴の組合せのn番目に係るC座標
とすると、目的関数f(s)は、例えば次式であらわされる。
【数3】
・・・(式4)
ここで、
E:第1係数
F:第2係数
第1係数Eおよび第2係数FはX軸と同じ量を移動しようとするときに、Y軸及びC軸がX軸に比較して所要する時間をそれぞれ表す定数である。例えば、E,Fは次式を満たす。
E=AX/AY
F=AX/AC
・・・(式5)
ここで、
AX:X軸の加速度
AY:Y軸の加速度
AC:C軸の加速度
【0048】
再生部43dは、各個体の中から、目的関数f(s)の値が小さいものを優先的に再生させる(S16)。選択は、例えば、エリート選択、ルーレット選択、ランキング選択、トーナメント選択、GENITORアルゴリズムを利用できる。例えば、再生部43dは親世代
と子世代の中から評価値の小さい個体を個体数だけ再生させる。
【0049】
交叉部43fは、2つの親をランダムに選択して、交叉させて子を生成する(S17)。交叉部43fは、第1穴と第2穴の組合せを単位として、部分一致交叉(partially matched crossover; PMX)、順序交叉(ordered crossover; OX)、周期交叉(cycle crossover; CX)又は辺組換え交差(edge recombination; ER)により、交叉を行う。
例えば、PMXによる2点交叉を
図9に示す。交叉部43fは、交叉点をランダムに選択する。
【0050】
突然変異部43gは個体群の中から、個体をランダムに選んで、突然変異させる(S18)。以下に突然変異の手法を3点例示する。
【0051】
図10に示すように、ランダムに2つの穴を選択し、入れ替える。
【0052】
図11に示すように、第1穴と第2穴の組合せを2組ランダムに選択し、入れ替える。このとき、第1穴と第2穴の組合せは変更しない。
【0053】
図12に示すように、ランダムに選択した第1穴と第2穴の1組の組合せを抜き取り、その後ろを詰める。抜き取った組合せを、ランダムに選択した組合せの位置に挿入し、その後ろを順にずらす。
【0054】
ステップS22において、終了条件は、世代交代数があらかじめ定められた最終世代交代数に達することとして良い。ステップS16~S21のサイクルを繰り返した回数が最終世代交代数に達したときに、決定部43iは終了条件を満たしたものと判断する。
【0055】
決定部43iは、その時の個体群を最終世代とする。決定部43iは、最終世代のうち、最も適合度が小さい個体を選定する。決定部43iは、選定した個体に表された第1穴の穴番号と第2穴の穴番号の組合せの順番を加工順として決定する(S23)。
【0056】
本実施形態の穴あけ方法によれば、2穴ずつ同時に加工できるため、加工時間を大幅に短縮できる。穴あけ機10は、回転テーブル37を回転させて、任意の2穴に平行にX軸を位置決めできる。そのため、X軸に沿って規則的に配列していない複数の加工穴に対しても、2穴ずつ同時加工できる。穴あけ機10は、立形であり、回転テーブル37を門型コラム11上に設置し、Z方向に主軸28、39を移動可能なZユニット18、31が回転テーブル37上をX方向に移動可能に設置し、加工テーブル前後軸を床フレーム13に設置した。そのため、スラスト方向にのみ注目したZユニットを製作すればよい。このため、穴あけ機10全体を安価に製作できる。
穴あけ機10は、加工テーブル36がY方向にのみ駆動するため、加工テーブル36を大きくしやすい。穴あけ機10は大型のワーク38の加工に適する。
【0057】
また、本実施形態の穴あけ方法は、遺伝的アルゴリズムを利用して、第1穴と第2穴の組合せ、及びその加工順を決定する。そのため、多数の穴あけ対象穴を含むワーク38についても、容易に加工プログラムを作成できる。制限部43hは、2つのZユニット18,31が干渉する穴の組合せを含む個体を取り除く。そのため、2つのZユニットが干渉することのない第1穴と第2穴の組合せの中から、適切な組み合わせからなる加工順を選定できる。
なお、本実施形態では対象穴の個数が偶数の場合を説明したが、対象穴の個数が奇数の場合も、後述する実施形態2との相違点を除き、本実施形態を適用できる。
【0058】
(実施形態2)
実施形態2は、対象穴の個数が奇数の場合を扱う。本実施形態は、個体表現と、座標変換部43cによる単独穴の座標決定方法が実施形態1と異なる。2つの対象穴の組合せずつ加工した後に単独穴を加工する。その他の点については、実施形態1と実質的に同じである。
【0059】
好ましくは、
図13に示すように、個体は、第1穴と第2穴の組合せと、単独穴の穴番号を加工順に並べて、パス表現される。つまり、第1番目の第1穴、第1番目の第2穴、第2番目の第1穴、第2番目の第2穴・・・単独穴の順に穴番号が並べられる。単独穴の直前を組合せの境として扱う。
【0060】
単独穴の機械座標は、次のように決定される。まず、X座標及びY座標をC座標の関数として表す。
【数4】
・・・(式6)
ここで、
(u
a,v
a):単独穴の穴座標
x
a:単独穴のX座標(機械座標)
y
a:単独穴のY座標(機械座標)
c
a:単独穴のC座標(機械座標)
次に、直前の機械座標から単独穴の機械座標への移動距離を表す関数g(c)が最小値となるように、C座標を決定する。関数g(c)は次式で表される。
【数5】
・・・(式7)
ここで、
x1
a-1:単独穴の直前の第1穴と第2穴の組合せに係る第1主軸のX座標(X1座標、機械座標)
x2
a-1:単独穴の直前の第1穴と第2穴の組合せに係る第2主軸のX座標(X2座標、機械座標)
y
a-1:単独穴の直前の第1穴と第2穴の組合せに係るY座標(機械座標)
c
a-1:単独穴の直前の第1穴と第2穴の組合せに係るC座標(機械座標)
次いで、決定したC座標を式6へ代入して、単独穴の機械座標(x
a,y
a,c
a)を決定する。
最後に、単独穴のX座標(x
a)から直前の加工穴に係るX1座標(x1
a-1)及び直前の加工穴に係るX2座標(x2
a-1)の距離をそれぞれ算出する。距離が近い方の主軸(選択主軸)で単独穴を加工するものと定める。つまり、単独穴の直前の組合せを加工したときに、単独穴のX座標に近い方の主軸を選択主軸として選ぶ。第1主軸が単独穴に近い場合、単独穴を第1穴とし、単独穴のX座標をX1座標とする。逆に、第2主軸が単独穴に近い場合、単独穴を第2穴とし、単独穴のX座標をX2座標とする。
【0061】
個体表現において単独穴を加工順の最後に記載すれば、対象穴数が奇数か偶数かによらず、組合せの区切りは個体表現の冒頭から2つ毎の位置として取り扱える。そのため演算が容易である。単独穴を加工順の最後に加工することにより、個体表現に表れたとおりに加工される。
【0062】
なお、単独穴は冒頭に加工しても良い。この場合、座標決定は直後に加工する第1穴と第2穴の組合せに係る機械座標と単独穴の穴座標により定められる。
【0063】
(実施形態3)
図14に示すように、本実施形態の穴あけ機100は、床フレーム113と、門型コラム111と、Yガイド132と、一組のY駆動装置135とを有する。穴あけ機100のその他の構成は、穴あけ機10と実質的に同一である。
【0064】
加工テーブル36は、床フレーム113の中央部に配置される。Yガイド132は、床フレーム113の左右方向の両端部に設置される。門型コラム111は、一組の支柱111bと、ビーム11cとを有する。一組の支柱111bは、前後方向に移動可能に、Yガイド132に配置される。ビーム11cは、一組の支柱111bの上端部に渡って設置される。回転テーブル37は、ビーム11cに回転可能に支持される。
【0065】
Y駆動装置135は、床フレーム113の左右方向の両端部に配置され、支柱111bをそれぞれY方向に駆動する。一組のY駆動装置135は、同期して、支柱111bをY軸に垂直方向に保つように制御する。Y駆動装置135は、例えば、サーボモータ・ボールねじ機構である。
【0066】
本実施形態の穴あけ機100によれば、Y軸ストロークを長くしても、Y方向の装置寸法を抑制できる。そのため、穴あけ機100は、一方向に長いワーク38の加工に適する。
【0067】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
例えば、個体表現は、第1穴の穴番号を加工順に並べた後、第2穴の穴番号を加工順に並べても良い。この場合、交叉において、親の加工順の第1穴と第2穴の組合せを崩さないように、第2穴の交叉点と第1穴の交叉点を一致させる。
【符号の説明】
【0068】
10 穴あけ機
11b 支柱
11c ビーム
15 Xガイド
18 Zユニット(第1主軸ユニット)
28 第1主軸
31 Zユニット(第2主軸ユニット)
32 Yガイド
36 加工テーブル
37 回転テーブル
39 第2主軸
41 制御装置
43 加工順作成部
44 数値制御部
45 プログラム作成部
47 記憶装置