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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】伝熱組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/54 20060101AFI20220526BHJP
   C10M 107/38 20060101ALI20220526BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20220526BHJP
   C08G 65/22 20060101ALI20220526BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220526BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20220526BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20220526BHJP
   C10N 10/10 20060101ALN20220526BHJP
   C10N 10/06 20060101ALN20220526BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20220526BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220526BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
C10M105/54
C10M107/38
C09K5/04 F
C09K5/04 E
C09K5/04 C
C09K5/04 B
C08G65/22
F25B1/00 396A
F25B1/00 396E
F25B1/00 396D
F25B1/00 396H
F25B1/00 396G
F25B1/00 396J
F25B1/00 396Z
C10N20:02
C10N20:00 A
C10N10:10
C10N10:06
C10N40:30
C10N30:00 Z
C10N30:02
【請求項の数】 65
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020107374
(22)【出願日】2020-06-23
(62)【分割の表示】P 2018548293の分割
【原出願日】2016-12-07
(65)【公開番号】P2020169331
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】1521507.2
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エリオット・ロウ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ポール・シャラット
(72)【発明者】
【氏名】エマ・ジェーン・ホジソン
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/172272(WO,A1)
【文献】米国特許第05100569(US,A)
【文献】国際公開第96/011246(WO,A1)
【文献】特表2007-511644(JP,A)
【文献】特表2013-503230(JP,A)
【文献】特表2012-524137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M、C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱部分及び潤滑部分を含む組成物であって、前記潤滑部分が、式(I)の1つ以上の化合物を含み、
【化1】
式中、
Wが、Hであり
Yが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択され、
Zが独立して、H、OH、(CWCW、CY、OCW、O(CWCW、OCW((CYCY)CWCW、ポリアルキレングリコール、及びポリオールエステルからなる群から選択され、
nが、2~250の整数であり、
mが、0~3の整数であり、
pが、0~9の整数であり、
前記伝熱部分が、(ヒドロ)フルオロオレフィン(HFO)を含む、組成物。
【請求項2】
Yが、FまたはClである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Yが、Fである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
nが、2~100の整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
nが、5~20の整数である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
nが、10~20の整数である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
mが、0である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
pが、1~6である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
pが、2~6である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
pが、3~5である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
Zが、OHである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
Zが、ポリアルキレングリコールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも一方のZがHまたはOHではない、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
両方のZがHまたはOHではない、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、式(I)の少なくとも2つの異なる化合物を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記潤滑部分が、40℃で50cStの動粘度を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記潤滑部分が、40℃で0~100cStの動粘度を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記潤滑部分が、40℃で30~70cStの動粘度を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記潤滑部分が、40℃で30~60cStの動粘度を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物中の前記潤滑部分の重量パーセントが、1~30%である、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物中の前記潤滑部分の重量パーセントが、1~10%である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物中の前記潤滑部分の重量パーセントが、1~5%である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記伝熱部分が、(ヒドロ)フルオロオレフィン(HFO)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、及び炭化水素からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記伝熱部分が、R-1234ze、R-1234yf、R-1243zf、R-134a、R-152a、R-32、R-161、R-125、R-134、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、R-245fa、R-236fa、R-227ea、R-143a、n-ブタン、イソ-ブタン、R-365mfc、R-1123、R-1132a、及びR1336mzzの群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記伝熱部分が、R-1234ze、R-1234yf、R-1243zf、R-134a、R-152a、及びR-32の群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記伝熱部分が、R-1234zeを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記伝熱部分が、R-1234yfを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記伝熱部分単独よりも可燃性が低い、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
00℃以上の発火温度を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
600℃以上の発火温度を有する、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
非可燃性である、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
安定剤をさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記安定剤が、ジエン系化合物、ホスフェート、フェノール化合物、及びエポキシド、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
追加の難燃剤をさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記難燃剤が、トリ-(2-クロロエチル)-ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ-(2,3-ジブロモプロピル)-ホスフェート、トリ-(1,3-ジクロロプロピル)-ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン、ブロモ-フルオロアルキルアミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
潤滑剤組成物であって、前記潤滑剤組成物の総重量の少なくとも10重量%の割合で請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物を含む、潤滑剤組成物。
【請求項38】
潤滑剤組成物であって、前記潤滑剤組成物の総重量の少なくとも30重量%の割合で請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物を含む、潤滑剤組成物。
【請求項39】
潤滑剤組成物であって、前記潤滑剤組成物の総重量の少なくとも50重量%の割合で請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物を含む、潤滑剤組成物。
【請求項40】
請求項1~39のいずれかに記載される組成物を含む、伝熱デバイス。
【請求項41】
伝熱デバイスにおける、請求項1~39のいずれかに記載される組成物の使用。
【請求項42】
冷蔵デバイスである、請求項40に記載の伝熱デバイス。
【請求項43】
前記伝熱デバイスが、冷蔵デバイスである、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
自動車空調システム、住宅空調システム、業務用空調システム、住宅冷蔵庫システム、住宅冷凍機システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍機システム、冷却器空調システム、冷却器冷蔵システム、及び業務用または住宅熱ポンプシステムからなる群から選択される、請求項42に記載の伝熱デバイス。
【請求項45】
前記伝熱デバイスが、自動車空調システム、住宅空調システム、業務用空調システム、住宅冷蔵庫システム、住宅冷凍機システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍機システム、冷却器空調システム、冷却器冷蔵システム、及び業務用または住宅熱ポンプシステムからなる群から選択される、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
圧縮機を含む、請求項40、42又は44に記載の伝熱デバイス。
【請求項47】
前記伝熱デバイスが、圧縮機を含む、請求項41、43又は45に記載の使用。
【請求項48】
物品を冷却する方法であって、請求項1~39に記載される組成物を凝縮し、その後、冷却される前記物品の付近で前記組成物を蒸発させることを含む、方法。
【請求項49】
物品を加熱するための方法であって、加熱される前記物品の付近で請求項1~39のいずれか一項に記載される組成物を凝縮し、その後、前記組成物を蒸発させることを含む、方法。
【請求項50】
請求項1~39のいずれか一項に記載される組成物を含む、機械力発生デバイス。
【請求項51】
ランキンサイクルまたはその修正形態を使用して、熱から仕事を発生させるように適合されている、請求項50に記載の機械力発生デバイス。
【請求項52】
伝熱デバイスを改良する方法であって、既存の伝熱流体を除去し、請求項1~39に記載される組成物を導入するステップを含む、方法。
【請求項53】
前記伝熱デバイスが、冷蔵デバイスである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記伝熱デバイスが、空調システムである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
式(I)の化合物を伝熱流体と混合することを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法。
【請求項56】
前記伝熱流体が、(ヒドロ)フルオロオレフィン(HFO)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、及び炭化水素の群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記伝熱流体が、R-1234ze、R-1234yf、R-1243zf、R-134a、R-152a、R-32、R-161、R-125、R-134、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、R-245fa、R-236fa、R-227ea、R-143a、n-ブタン、イソ-ブタン、R-365mfc、R-1123、R-1132a、及びR1336mzzの群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記伝熱流体が、R-1234ze、R-1234yf、R-1243zf、R-134a、R-152a、及びR-32の群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記伝熱流体が、R-1234zeを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記伝熱流体が、R-1234yfを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
伝熱剤としての、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項62】
前記伝熱剤が、式(I)の少なくとも2つの化合物を含む、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
滑剤としての、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項64】
伝熱用途における、請求項63に記載の組成物の使用。
【請求項65】
前記潤滑剤が、式(I)の少なくとも2つの化合物を含む、請求項63又は64に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
組成物
本発明は、組成物、その使用、及びその調整方法に関し、組成物は、伝熱部分及び潤滑部分を含み、潤滑部分は、ハロゲン化されたポリエーテルを含む。
【0002】
本明細書内の情報または以前に公開された資料の列挙または考察は、必ずしもその情報または資料が、先端技術の一部であるか、または一般共通の知識であるという認識として取られるべきではない。
【背景技術】
【0003】
フルオロカーボン系化合物は、現在、噴霧剤、発泡剤、及び伝熱流体などの多数の商業及び工業用途において使用されている。新たな冷媒が求められているため、伝熱流体としてのフッ素系化合物、特に(ヒドロ)フルオロオレフィンへの関心及びその使用が増加している。
【0004】
ジクロロジフルオロメタン(冷媒R-12)は、冷媒特性の好適な組み合わせを持ち、長年最も広く使用される冷媒であった。ジクロロジフルオロメタン及びクロロジフルオロメタンなどの完全及び部分的にハロゲン化されたクロロフルオロカーボンが、地球の保護オゾン層を損傷させているという国際的な懸念のため、それらの製造及び使用は、厳しく制限され、最終的に完全に廃止されるべきであるというのが一般的な合意であった。ジクロロジフルオロメタンの使用は、1990年代に廃止された。
【0005】
クロロジフルオロメタン(R-22)が、そのより低いオゾン層破壊係数のために、R-12の代わりとして導入された。R-22が強力な温室効果ガスであるという懸念に伴い、その使用もまた廃止されている。R-410A及びR-407(R-407A、R-407B、及びR-407Cを含む)が、R-22の代わりの冷媒として導入された。しかしながら、R-22、R-410A、及びR-407冷媒はすべて、高い地球温暖化係数(GWP、また温室温暖化係数としても既知である)を有する。
【0006】
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(冷媒R-134a)が、R-12の代わりの冷媒として導入された。しかしながら、低いオゾン層破壊係数を有するにも関わらず、R-134aは、1430のGWPを有する。より低いGWPを有する、R-134aの代わりのものを見出すことが望ましいであろう。
【0007】
R-152a(1,1-ジフルオロエタン)が、R-134aの代替物として特定された。それはR-134aよりいくらか効率的であり、120の温室温暖化係数を有する。しかしながら、R-152aの可燃性は、例えば可動空調システムにおけるその安全使用を可能にするには高すぎると判断される。具体的には、空気中のその可燃性下限値は低すぎ、その火炎速度は高すぎ、かつその発火エネルギーは低すぎる。
【0008】
(ヒドロ)フルオロオレフィン、特にテトラフルオロプロペンが、様々な伝熱デバイスにおける使用のための可能な冷媒として提唱された。
【0009】
伝熱流体はしばしば、加熱及び冷蔵システムなどにおいて、潤滑剤と組み合わせて使用される。かかる潤滑剤は、伝熱システムの継続的かつ円滑な運用を確保するために、伝熱組成物中に含まれる。
【0010】
伝熱組成物中で使用される潤滑剤は、組成物中の冷媒と適合性がある必要がある。潤滑剤及び冷媒の適合性は、運用温度範囲の一部での少なくとも部分的混和性への要求、使用において分解または反応する低い傾向、及び適用のための適切な粘度などの多数の要素に基づく。
【0011】
したがって、伝熱流体と組み合わせて使用され得る潤滑剤の必要性があり、それらは両方、現在、代わりの組成物として使用され、提唱されている。具体的には、潤滑剤は、潤滑剤としてうまく機能することに加えて、様々な伝熱流体との混和性があり、適切な粘度を持ち、伝熱流体の能力を減少させず、低い可燃性を有することすべてが所望される。
【0012】
低い可燃性を有する潤滑剤は、かかる組成物が、エンジンの熱い金属表面と接触することになる危険があるため、自動車用空調に使用される伝熱流体にとって特に重要である。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、伝熱部分及び潤滑部分を含む組成物であって、潤滑部分が式(I)の化合物を含む、組成物の提供によって、上述及び他の不足に対処する。
【化1】
式中、
Wが独立して、H、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択され、
Yが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択され、
Zは独立して、H、OH、(CWCW、CY、OCW、O(CWCW、OCW((CYCY)CWCW、ポリアルキレングリコール、及びポリオールエステルからなる群から選択され、
nは、2~250の整数であり、
mは、0~3の整数であり、
pは、0~9の整数である。
【0014】
かかる潤滑剤は、熱い表面に曝露されたときを含め、発火に対する優れた耐性を示す。
【0015】
本発明によって、例えば伝熱用途における潤滑剤としての、上述のかかる組成物の使用も提供される。
【0016】
本発明によって、上述のかかる組成物を調製する方法がさらに提供される。
【0017】
本発明の組成物
一態様では、本発明は、伝熱部分及び潤滑部分を含む組成物を提供し、潤滑部分は、式(I)の化合物を含み、
【化2】
式中、
Wは独立して、H、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択され、
Yは独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択され、
Zは独立して、H、OH、(CWCW、CY、OCW、O(CWCW、OCW((CYCY)CWCW、ポリアルキレングリコール、及びポリオールエステルからなる群から選択され、
nは、2~250の整数であり、
mは、0~3の整数であり、
pは、0~9の整数である。
【0018】
ある実施形態では、Yは、FまたはCl、好ましくはFである。Wは、H、F、またはClであり得る。好ましくは、Wは、Hである。有利に、mは、0~3の整数、好ましくは0であり、nは、2~100、例えば5~20の整数であり、好ましくはnは、10~20の整数、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である。
【0019】
かかる潤滑剤/伝熱成分組成物は、熱い表面上に噴霧されたときまたは火炎を通って噴霧されたときなどに、低い可燃性を示す。
【0020】
ある実施形態では、Z誘導体のうちの少なくとも1つは、OHである。好ましくは、両方のZ誘導体は、OHである。
【0021】
別の実施形態では、少なくとも1つのZ誘導体は、ポリアルキレングリコールを含み得る。代替的には、両方のZ誘導体は、ポリアルキレングリコール(PAG)を含み得る。どちらの場合にも、ポリアルキレングリコールは、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され得る。かかる実施形態では、PAG基は、式(I)のヒドロキシル末端キャップ基(すなわち、Z=OH)とカルボン酸末端キャップPAGとの間のエステル結合の形成を介して、式(I)の化合物と共役され得る。
【0022】
さらなる実施形態では、Z誘導体は独立して、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基またはアルコキシ基であり得る。
【0023】
ある実施形態では、両方のZ誘導体は同じであってもよい。代替的には、両方のZ誘導体は異なってもよい。
【0024】
ある実施形態では、本発明の総組成物中の潤滑部分の重量パーセントは、1~30%、好ましくは1~10%、より好ましくは1~5%である。
【0025】
本発明のある実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【化3】
【0026】
本発明の代替的な実施形態では、式(I)の化合物は、式(III)の化合物である。
【化4】
【0027】
本発明のある実施形態では、式(III)のPAG基は、エステル結合を介して重合体骨格と接続している。本発明の別の実施形態では、式(III)のPAG基は、エーテル結合を介して重合体骨格と接続している。
【0028】
本発明のある実施形態では、組成物は、式(I)の少なくとも2つの異なる化合物を含み得る。かかる場合において、式(I)の少なくとも2つの化合物におけるnの値は同じであってもよい。代替的には、式(I)の少なくとも2つの化合物におけるnの値は異なってもよい。
【0029】
本発明のある実施形態では、組成物の潤滑部分は、40℃で約5~約250cStの動粘度を有し得る。有利に、潤滑部分は、40℃で約20~約100cSt、例えば約30~約70cSt、例えば約30~約60cStの動粘度を有する。
【0030】
好ましくは、伝熱部分は、(ヒドロ)フルオロオレフィン(HFO)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、及び炭化水素の群から選択される1つ以上の化合物を含む。
【0031】
有利に、伝熱部分は、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)、3,3,3-トリフルオロプロペン(R-1243zf)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、ジフルオロメタン(R-32)、フルオロエタン(R-161)、ペンタフルオロエタン(R-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R-134)、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R-245fa)、1,1,1,3,3,3-ヘキソフルオロプロパン(R-236fa)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)、1,1,1-トリフルオロエタン(R-143a)、n-ブタン、イソ-ブタン、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(R-365mfc)、1,1,2-トリフルオロエチレン(R-1123)、1,1-ジフルオロエチレン(R-1132a)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン(R1336mzz)、例えばR-1234ze、R-1234yf、R-1243zf、R-134a、R-152a、及びR-32の群から選択される1つ以上の化合物を含み得る。
【0032】
誤解を避けるために、化合物が、2つの立体配置の異性体、例えば、二重結合周囲のシスまた及びトランス異性体のうちの1つとして存在し得る場合、異性体の指定を伴わない用語の使用(例えば、R-1234ze)が、どちらかの異性体を指すためであることを理解されたい。
【0033】
好都合に、伝熱部分は、テトラフルオロプロペンを含む。好ましくは、伝熱部分は、R-1234zeを含み、さらにより好ましくは、伝熱部分は、R-1234ze(E)を含む。有利に、伝熱組成物は、R-1234yfを含む。
【0034】
有利に、本発明の組成物は、ポリアルキレングリコール(PAG)及び/またはポリオールエステル(POE)系潤滑剤と組み合わされた同じ伝熱部分を含む組成物よりも可燃性が低い。
【0035】
ある実施形態では、本発明の組成物は、既存のポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、及びポリオールエステル潤滑油と混和性がある。
【0036】
ある実施形態では、潤滑部分を含む化合物は、総重量の約1~30重量%、好ましくは1~10重量%、及びさらにより好ましくは1~5重量%の割合で潤滑部分が伝熱部分に添加されたときに、混合物が1つの液相を有するような、伝熱部分とのある程度の混和性を提供するのに十分な酸素対炭素比で炭素、水素、及び酸素を含む。好ましくは、混合物は、組成物中に1~20重量%の潤滑部分が存在するときに、1つの液相を有する。さらにより好ましくは、組成物は、伝熱部分対潤滑部分の割合にかかわらず、1つの液相である。この可溶性または混和性は、好ましくは、全ての通常運用温度で存在する。例えば、可溶性または混和性は、-100℃~+100℃の間の少なくとも1つの温度、好ましくは-75℃~+75℃の間の少なくとも1つの温度、さらにより好ましくは-50℃~+50℃の間の少なくとも1つの温度で存在する。有利に、可溶性または混和性は、全ての温度範囲にわたって存在し、組成物は、液相である。
【0037】
好都合に、本発明の組成物は、伝熱部分単独よりも可燃性が低い。
【0038】
好ましくは、本発明の組成物は、約500℃以上、例えば510℃、520℃、530℃、540℃、550℃、560℃、570℃、580℃、590℃、好ましくは約600℃以上、例えば610℃、620℃、630℃、または640℃の発火の最も低い温度を有する。
【0039】
ある実施形態では、本発明の組成物は、非可燃性であり得る。
【0040】
可燃性は、2004年付けのAddendum 34pの通り、試験方法と共にASTM Standard E-681を組み込むASHRAE Standard 34に従って決定され得、参考によりその全体の内容が本明細書に組み込まれる。
【0041】
好都合に、本発明の組成物の地球温暖化係数(GWP)は、約3500、3000、2500、または2000未満であり得る。例えば、GWPは、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700、1600、または1500未満であり得る。本発明の組成物のGWPは、好ましくは1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、または500未満である。
【0042】
好ましくは、本発明の組成物は、オゾン層破壊を全くまたはほとんど有しない。
【0043】
ある実施形態では、本発明の組成物は、伝熱流体単独よりも伝熱特性を改善した。
【0044】
理論によって縛られるのを望む訳ではないが、式(I)の化合物が、伝熱剤としてさらに作用し、したがって、本発明の組成物の伝熱特性を増し得ると考えられている。
【0045】
有利に、組成物は、安定剤をさらに含む。
【0046】
好ましくは、安定剤は、ジエン系化合物、ホスフェート、フェノール化合物、及びエポキシド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
好都合に、組成物は、追加の難燃剤をさらに含む。
【0048】
好ましくは、難燃剤は、トリ-(2-クロロエチル)-ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ-(2,3-ジブロモプロピル)-ホスフェート、トリ-(1,3-ジクロロプロピル)-ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン、ブロモ-フルオロアルキルアミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
ある実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも10~90重量%の割合で、好ましくは10~75重量%、例えば10、20、30、40、または50重量%の割合で潤滑組成物内に含まれ得る。
【0050】
本発明はまた、本発明の組成物を含む伝熱デバイス、及び/または伝熱デバイスにおける本発明の組成物の使用を提供する。
【0051】
ある実施形態では、伝熱デバイスは、冷蔵デバイスである。
【0052】
好都合に、伝熱デバイスは、自動車空調システム、住宅空調システム、業務用空調システム、住宅冷蔵庫システム、住宅冷凍機システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍機システム、冷却器空調システム、冷却器冷蔵システム、及び業務用または住宅熱ポンプシステムからなる群から選択される。
【0053】
好ましくは、伝熱デバイスは、圧縮機を含む。
【0054】
本発明のさらなる態様に従って、物品を冷却する方法が提供され、その方法は、本発明の組成物を凝縮し、その後冷却される物品の付近で組成物を蒸発させることを含む。
【0055】
本発明の別の態様に従って、物品を加熱するための方法が提供され、その方法は、加熱される物品の付近で本発明の組成物を凝縮し、その後組成物を蒸発させることを含む。
【0056】
本発明のさらなる態様に従って、本発明の組成物を含む機械力発生デバイスが提供される。
【0057】
好ましくは、機械力発生デバイスは、ランキンサイクルまたはその修正形を使用して、熱から仕事を発生させるように適合される。
【0058】
本発明の別の態様に従って、既存の伝熱流体を除去し、本発明の組成物を導入するステップを含む、伝熱デバイスを改良する方法が提供される。好ましくは、伝熱デバイスは、冷蔵デバイスである。有利に、伝熱デバイスは、空調システムである。
【0059】
本発明のさらなる態様に従って、本発明の組成物の追加によって、組成物の可燃性を減少させる方法が提供される。
【0060】
本発明の組成物の調製方法
本発明の組成物は、式(I)の1つ以上の化合物を伝熱流体と混合することによって調製され得る。
【0061】
好ましくは、伝熱流体は、(ヒドロ)フルオロオレフィン(HFO)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、及び炭化水素の群から選択される1つ以上の化合物を含む。
【0062】
有利に、伝熱流体は、R-1234ze、R-1234yf、R-1243zf、R-134a、R-152a、R-32、R-161、R-125、R-134、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、R-245fa、R-236fa、R-227ea、R-143a、R-1123、R-1132a、R1336mzz、n-ブタン、イソ-ブタン、及びR-365mfcの群から選択される1つ以上の化合物を含む。
【0063】
好都合に、伝熱流体は、R-1234ze、R-1234yf、R-1243zf、R-134a、R-152a、及びR-32の群から選択される1つ以上の化合物を含む。
【0064】
好ましくは、伝熱流体は、R-1234zeを含む。
【0065】
好ましくは、伝熱流体は、R-1234yfを含む。
【0066】
本発明の組成物の使用
ある態様では、本発明の組成物は、伝熱剤として使用され得る。ある実施形態では、伝熱剤として使用されるとき、本発明の組成物は、式(I)の少なくとも2つの化合物を含み得る。
【0067】
別の態様では、本発明の組成物は、潤滑剤として使用され得る。ある実施形態では、潤滑剤組成物は、式(I)の少なくとも2つの化合物を含み得る。
【0068】
潤滑剤組成物または伝熱組成物中の有効量の式(I)の化合物の使用は、それらの熱的及び機械的安定性、潤滑性、粘性、流動点、酸化防止及び腐食防止特性により有利である。
【実施例
【0069】
本発明による化合物を以下の方法によって合成した。450mLのParr反応器をグローブボックス内で不活性雰囲気下に置き、150mLの1,2-ジメトキシエタンを添加した。次いで、50g(0.45mol)の3,3,3-トリフルオロプロピレンオキシドを、1.3g(0.012mol)のカリウムtert-ブトキシドと共に添加した。次いで、反応器を密封し、グローブボックスから取り外し、撹拌器に接続した。次いで、反応器の内容物を撹拌し、90℃に5日間撹拌した。次いで、内容物を冷却し、200mLの水でクエンチした。得られたポリトリフルオロプロピレンオキシド(PTFO)をジエチルエーテルで抽出し、ロータリーエバポレーター上で乾燥させた。
【0070】
PTFOを試験して、単独での、及びフルオロカーボン冷媒組成物と混合した場合の、その可燃性及び/または燃焼性を評価した。フッ素化種が、市販のポリアルキレングリコール(PAG)及びポリオールエステル(POE)潤滑剤材料と比較して、燃焼温度上昇を示したことを見出した。
【0071】
ホットマニホルド試験
ISO Standard ISO 20823:2003に記載される試験装置及び試験方法を使用して、熱い金属表面との接触時の流体の発火のしやすさの評価を行った。この試験において、流体の液滴が、水平方向に対して浅い角度で傾いた、内部加熱された円柱状の熱い表面上に、垂直に下向きに落ちることを可能にし、その表面は、水平な溝を追加で備え、円柱状の本体の1つの側面で液体を捕捉した。(以下より表面を「マニホルド」として記載する)。
【0072】
マニホルドの温度を、発火が観察されるまで段階的に増加した。発火の特徴及び勢いにおける観察をまた、各試験中に記録した。本発明の5つの流体、2つのPAG型潤滑剤(Nippon Denso ND12及びDaphne FD46XG、それぞれ比較例1及び2)、及び1つのPOE潤滑剤(Emkarate RL68H、比較例3)を試験した。全フッ素置換潤滑剤材料(DuPont Krytox(商標)GPL150)をまた、比較例として試験した。以下に、結果を表にする。
【表1】
【0073】
この結果は、本発明の化合物によってもたらされる発火耐性の、冷媒技術において使用される従来の潤滑剤に対する著しい改善を明らかに示す。
【0074】
本発明の所与の態様、特徴またはパラメータについての選好及び選択肢は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、本発明のすべての他の態様、特徴及びパラメータについてのありとあらゆる選好及び選択肢と組み合わせて開示されたものとしてみなされるべきである。
【0075】
分子、例えばHFO-1234zeが、E異性体及びZ異性体の形態をとり得る場合、その分子の一般的な開示は、E異性体及びZ異性体の両方を等しく指すことを意図する。
【0076】
本発明は、次の特許請求の範囲により定義される。