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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】新規ベンゾオキサジン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 265/16 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
C07D265/16 CSP
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021002210
(22)【出願日】2021-01-08
(62)【分割の表示】P 2016218479の分割
【原出願日】2016-11-09
(65)【公開番号】P2021059597
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】P 2015241890
(32)【優先日】2015-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000243272
【氏名又は名称】本州化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】芦田 一仁
(72)【発明者】
【氏名】入野 浩典
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503669(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103304558(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105130975(CN,A)
【文献】特開2012-107196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 265/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物。
【化1】
(式中、Xはスルホニル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾオキサジン化合物に関する。詳しくは、中央にビス(オキシフェニル)骨格を有し、その両末端にm-フェニレン基を介して無置換のベンゾオキサジン環が結合する化合物であるベンゾオキサジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾオキサジン化合物は、加熱することにより揮発性の副生物を生ずることなく、ベンゾオキサジン環が開環重合して硬化することから、耐熱性や、難燃性に優れた熱硬化性樹脂原料として知られている。
従来、このようなベンゾオキサジン化合物としては、いくつかの化合物が知られており、特に耐熱性、難燃性に優れた化合物として、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ジイル基の両端にベンゾオキサジン環を有するベンゾオキサジン化合物(特許文献1)、ジ(フェノキシフェニル)スルホンの両端にヒドロキシアルキル基により置換されているベンゾオキサジン環を有する化合物(特許文献2)、ジ(フェノキシフェニル)スルホンの両端にアルキル基等により置換されているベンゾオキサジン環を有する化合物(特許文献3)など、中心骨格に芳香族環を有するベンゾオキサジン化合物もいくつか知られている。
しかしながら、これらのベンゾオキサジン化合物から得られる樹脂は、耐熱性等の物性が未だ十分でなく、ベンゾオキサジン化合物のさらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-352670号公報
【文献】特開2011-111415号公報
【文献】特表2014-503669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹脂原料等とした場合に耐熱性等の性能が改良された、ベンゾオキサジン化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上述の課題解決のために鋭意検討した結果、ベンゾオキサジン化合物の化学構造を、中央にビス(オキシフェニル)骨格を有し、その両末端にm-フェニレン基を介して無置換のベンゾオキサジン環が結合する化合物とすることにより、耐熱性に優れた樹脂を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は以下の通りである。
1.一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物。
【化1】
(式中、Xはスルホニル基を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明により、中央にビス(オキシフェニル)骨格を有し、その両末端にm-フェニレン基を介して無置換のベンゾオキサジン環が結合する新規ベンゾオキサジン化合物が提供される。この新規ベンゾオキサジン化合物は、従来知られているベンゾオキサジン化合物に比べて、樹脂原料とした場合、得られる樹脂は耐熱性、難燃性等に優れている。従って各種基材に塗布可能なワニス、ワニスを含浸させたプリプレグ、プリント回路基板、電子部品の封止剤、電気・電子成型部品、自動車部品、積層材、塗料、レジストインク等の樹脂原料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の、ベンゾオキサジン化合物は下記一般式(1)で表される。
【化2】
(式中、Xはスルホニル基を示す。)
前記一般式(1)において、式中Xがスルホニル基である化合物(以下、「化合物1」という。)の化学構造を下記に示す。
【化3】
【0009】
本発明の前記一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物の製造方法については、その製造における出発原料、製造方法については特に制限はなく、例えば、特開2006-335671号公報に記載のように、溶媒の存在下に一級アミン化合物とフェノール化合物及びホルマリン類を撹拌混合し、加温下に脱水縮合反応させる等のベンゾオキサジン化合物を製造するための公知の方法を任意に採用することができる。しかしながら、好ましくは、後述する一般式(2)で表されるジアミン化合物を出発原料とし、これと2-ヒドロキシベンズアルデヒドとを脱水縮合反応させてジイミン化合物とする工程(1)、
該ジイミン化合物を水素化反応させて第二級ジアミン化合物とする工程(2)、
該第二級ジアミン化合物をホルムアルデヒドと脱水縮合反応させて環化し、ベンゾオキサジン化合物とする工程(3)
を順次含む製造方法が好ましい。
前記3つの反応工程においては、各々の反応工程は別々に行ってもよく、また、連続して行っても良い。例えば、反応において得られた該工程の目的物を含む反応終了混合物から目的物を単離または精製した後、これを次工程の原料とし次工程の反応を順次行ってもよく、また得られた該工程の目的物を含む反応終了混合物をそのまま次工程の原料として次工程の反応を順次行ってもよい。
【0010】
以下に、工程(1)~工程(3)の製造方法について、各工程を反応式で例示する。
工程(1)
【化4】
工程(2)
【化5】
工程(3)
【化6】
【0011】
本発明の上記一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物の好ましい製造方法である、工程(1)~(3)を順次含む製造方法について、さらに詳細に述べる。
<工程(1)について>
工程(1)は、第一級ジアミン化合物を2-ヒドロキシベンズアルデヒドと脱水縮合反応させてジイミン化合物とする工程である。原料第一級ジアミン化合物は、本発明のベンゾオキサジン化合物に対応した、下記一般式(2)で表されるジアミン化合物である。
【化7】
(式中、Xはスルホニル基を示す。)
一般式(2)中の「X」がスルホニル基である化合物(以下、「化合物1A」という。)の化学構造を下記に示す。
【化8】
第一級ジアミンと2-ヒドロキシベンズアルデヒドとの脱水縮合反応において、原料の第一級ジアミンと2-ヒドロキシベンズアルデヒドとの添加モル比(2-ヒドロキシベンズアルデヒド/第一級ジアミン)は、少なくとも化学量論比以上であり、好ましくは、2/1~3/1の範囲である。
【0012】
反応は通常、溶媒の存在下に行われる。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、酢酸エステル等の脂肪族エステル溶媒、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル溶媒、2-メトキシエタノール等のアルコール溶媒等が好ましく挙げられる。これらの溶媒は単独又は組み合わせて用いることができる。また、溶媒の使用量は反応に支障なければ特に制限はないが、通常、原料第一級ジアミンに対し5~10重量倍の範囲で用いられる。
反応温度は通常、室温~120℃の範囲である。反応圧力は常圧条件下で行ってもよく、また、加圧下でも、あるいは減圧下で行ってもよい。
反応を促進するための触媒は特に必要はない。
反応に際し、その態様については、原料、溶媒等の投入方法、反応方法等に制限はなく適宜選択することができる。例えば、第一級ジアミンと溶媒との混合溶液に、撹拌下、所定の温度で2-ヒドロキシベンズアルデヒド(サリチルアルデヒド)を滴下し、その後、その温度のままで反応を行う方法、あるいは、滴下終了後、さらに温度を上げて副生する水を溶媒により共沸させて系外に留出させながら反応する方法等が挙げられる。
このようにして得られた工程(1)の目的物を含む反応終了混合物は、反応終了後、目的物の結晶や固体が析出や沈殿していれば、そのまま、又は、冷却して反応液をろ過し、得られた結晶を乾燥して、該工程の目的物を得ることができる。また、反応終了時に目的物の結晶や固体が析出、沈殿していなければ、公知の方法に従い、反応終了混合物から目的物を取り出すことができる。例えば、反応終了混合物を多量の貧溶媒中に滴下するか、もしくは、貧溶媒を反応終了混合物に加えることにより目的物を析出、沈殿させることができる。得られた工程(1)の目的物は必要に応じて、再結晶を行い、純度を上げることができる。さらに、得られた工程(1)の目的物の単離物又は目的物を含む反応終了混合物は、工程(2)の原料として用いられる。ここで、工程(2)の原料としては、工程(1)の単離物を使用することが好ましい。
【0013】
工程(1)において、「化合物1A」から得られる化合物(以下、「化合物1B」という。)の化学構造を下記に示す。
【化9】
【0014】
<工程(2)について>
工程(2)は、工程(1)で得られたジイミン化合物を水素化反応させて第二級ジアミン化合物とする工程である。
ジイミン化合物の水素化反応は、還元剤による還元反応が好ましく、還元剤としては、例えば特開2002-255908号公報等に記載のイミンを水素添加して第二級アミンにする公知のアルミニウムハイドライド系、ホウ素ハイドライド系、ケイ素ハイドライド系等の還元剤を用いることができる。好ましくは、ホウ素ハイドライド系であり、特に好ましくは水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムである。還元剤の使用量は、通常、原料ジイミン1モルに対し、2~4モル倍の量が好ましい。
還元反応は通常、アルコール溶媒の存在下に行われる。好ましいアルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールである。これらの溶媒は単独又は組み合わせて用いることができる。さらに、溶媒の使用量は、特に制限はないが、通常、原料ジイミンに対し、5~20重量倍の範囲が好ましい。
反応温度は、好ましくは室温~50℃の範囲である。
反応に際し、その態様については、原料、還元剤、溶媒等の投入方法、反応方法等に制限はなく適宜選択することができる。例えば、原料ジイミン、還元剤及び溶媒を一括して反応容器に入れた後、撹拌する、又は、原料ジイミン及び溶媒を反応容器に入れた後、撹拌下に還元剤を分割して添加する方法等が挙げられる。
【0015】
このようにして得られた工程(2)の目的物を含む反応終了混合物は、反応終了後、目的物の結晶や固体が析出や沈殿していれば、そのまま、又は、冷却して反応液をろ過し、得られた結晶を乾燥して、該工程の目的物を得ることができる。また、反応終了時に目的物の結晶や固体が析出、沈殿していなければ、公知の方法に従い、反応終了混合物から目的物を取り出すことができる。例えば、反応終了混合物を多量の貧溶媒中に滴下するか、もしくは、貧溶媒を反応終了混合物に加えることにより目的物を析出、沈殿させることができる。
得られた工程(2)の目的物は必要に応じて、再結晶または水洗を行い、純度を上げることができる。得られた工程(2)の目的物の単離物又は目的物を含む反応終了混合物は、工程(3)の原料として用いられる。ここで、工程(3)の原料としては、工程(2)の単離物を使用することが好ましい。
【0016】
工程(2)において、「化合物1B」から得られる化合物(以下、「化合物1C」という。)の化学構造を下記に示す。
【化10】
【0017】
<工程(3)について>
工程(3)は、工程(2)で得られた 第二級ジアミン化合物をホルムアルデヒドと脱水縮合反応させて環化し、ベンゾオキサジン化合物とする工程である。
反応に用いられる原料ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン(ホルムアルデヒド水溶液)またはパラホルムアルデヒドが挙げられる。原料第二級ジアミンとホルムアルデヒドとの添加モル比(ホルムアルデヒド/第二級ジアミン)は、少なくとも化学量論比以上であり、好ましくは2/1~3/1の範囲である。
反応は通常、溶媒の存在下に行われる。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、好ましくはエタノール、n-プロパノール、2-メトキシエタノール等のアルコール溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン等の脂肪族エーテル溶媒が挙げられる。
反応温度は好ましくは40~120℃の範囲である。
反応を促進するための触媒は特に必要はない。
反応に際し、その態様については、原料、溶媒等の投入方法、反応方法等に制限はなく適宜選択することができる。例えば、原料の第二級ジアミンと溶媒との混合溶液に、撹拌下、所定の温度でホルムアルデヒド水溶液を滴下し、その後、その温度のままで反応を行う方法、あるいは、ホルムアルデヒド水溶液滴下終了後、さらに昇温して副生する水を溶媒により共沸させて系外に留出させながら還流条件下において反応を行う方法等が挙げられる。
【0018】
このようにして得られた工程(3)の本発明のベンゾオキサジン化合物を含む反応終了混合物は、反応終了後、目的物の結晶や固体が析出や沈殿していれば、そのまま、又は、冷却して反応液をろ過し、得られた結晶を乾燥して、該工程の目的物を得ることができる。また、反応終了時に目的物の結晶や固体が析出、沈殿していなければ、公知の方法に従い、反応終了混合物から目的物を取り出すことができる。例えば、反応終了混合物を多量の貧溶媒中に滴下するか、もしくは、貧溶媒を反応終了混合物に加えることにより目的物を析出、沈殿させることができる。
得られた該工程の目的物は必要に応じて、公知の方法に従い、再結晶または水洗を行い高純度品とすることができる。
このように工程(3)において、「化合物1C」から「化合物1」が得られる。
【0019】
得られたベンゾオキサジン化合物は、加熱することにより開環重合してベンゾキサジン樹脂を生成する。ベンゾオキサジン化合物を硬化させるにあたっては、基本的に硬化剤を必要としないものの、硬化には通常180℃~200℃程度の高い温度が必要である。硬化温度の低温化のために有機酸類、フェノール類等の公知の硬化促進剤を用いることもできる。
【実施例
【0020】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
<実施例1>(ベンゾオキサジン化合物「化合物1」の合成及び該化合物の重合)
工程(1):ジイミン化合物「化合物1B」の合成
第一級ジアミン化合物 「化合物1A」180g、酢酸エチル900gを2リッター四つ口フラスコに仕込み、室温でサリチルアルデヒド112gを滴下した。滴下後、酢酸エチル還流下で21時間撹拌した結果、撹拌中に結晶が析出した。反応終了液を4℃まで冷却後、ろ過して、分離した結晶を乾燥して、純度99.7%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のジイミン化合物「化合物1B」の結晶234gを得た。
収率 87.0%(「化合物1A」に対する収率)
融点 164℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCL3):6.93-7.14(m, 7H×2:b,c,e,f,g,i), 7.37-7.41(m, 3H×2:d,h,j), 7.91(d, 2H×2:a), 8.60(s, 1H×2:l), 12.94(s, 1H×2:k).
【化11】
工程(2):第二級ジアミン化合物「化合物1C」の合成
3リッター四つ口フラスコに工程(1)で得られたジイミン化合物「化合物1B」147g、エタノール1487gを仕込み、水素化ホウ素ナトリウム26.2gの粉末を2時間毎に3回に分けて室温で添加した。添加後、室温で22時間撹拌すると僅かに濁りのある黄色透明の溶液となった。この溶液を水1769gとエタノール282gとの混合液に滴下し生成した沈殿をろ別した。この沈殿を2463gの水に分散させ室温で3時間撹拌して、ろ別し、さらに1531gの水に分散し室温で3時間撹拌した後ろ別し、漏斗の上からろ液のpHが7になるまで水を掛けて洗浄した。
得られた粉体を乾燥して、純度93.7%(高速液体クロマトグラフィー分析法)の第二級ジアミン化合物「化合物1C」の粉末128gを得た。
収率 86.1%(ジイミン化合物「化合物1B」に対する収率)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO-d6):4.15(s, 2H×2:a), 6.21(ddd, 1H×2:b), 6.26(dd, 1H×2:c), 6.30(s, 1H×2:d), 6.48(ddd, 1H×2:e), 6.71(ddd, 1H×2:f), 6.78(dd, 1H×2:g), 7.02-7.13(m, 5H×2:h,i,j,k), 7.86(ddd, 2H×2:l).
【化12】
工程(3):ベンゾオキサジン化合物「化合物1」の合成
1リッター四つ口フラスコに工程(2)で合成した第二級ジアミン化合物「化合物1C」36g、酢酸エチル480gを仕込み、35%ホルマリン水溶液12gを40℃で滴下した。滴下終了後40℃で16.5時間撹拌すると、撹拌中に結晶が析出した。反応終了液を室温まで冷却した後、結晶をろ別し乾燥することにより、純度100%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のベンゾオキサジン化合物「化合物1」の結晶31.5gを得た。
収率 84.4%(第二級ジアミン化合物「化合物1C」に対する収率)
融点 139℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):4.61(s, 2H×2:a), 5.32(s, 2H×2:b), 6.55(ddd, 1H×2:c), 6.77(dd, 1H×2:d), 6.80(dd, 1H×2:e), 6.87(ddd, 1H×2:f), 6.94(ddd, 1H×2:g), 6.98-7.01(m, 3H×2:h,i), 7.12(ddd, 1H×2:j), 7.26(t, 1H×2:k), 7.84(ddd, 2H×2:l).
【化13】
重合:ベンゾオキサジン化合物「化合物1」の重合
得られたベンゾオキサジン化合物「化合物1」を170℃で融解させ、オーブン中180℃で2時間、200℃で2時間硬化させた硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定のtanδ値で235℃であった。
【0021】
<比較例1>下記化学式で表されるベンゾオキサジン化合物「比較化合物1」の合成及び重合
【化14】
工程(1):ジイミン化合物<ビス{4-{4-[2-(2-ヒドロキシフェニル)-1-アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホン>の合成
ビス{4-(4-アミノフェニルオキシ)フェニル}スルホン400g、1,4-ジオキサン2000gを5リッター四つ口フラスコに仕込み、60℃でサリチルアルデヒド249gを滴下した。滴下後60℃で22時間撹拌したが、撹拌中に結晶が析出した。反応終了液を15℃まで冷却後、ろ過、乾燥して、純度100%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のビス{4-{4-[2-(2-ヒドロキシフェニル)-1-アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホンの結晶575gを得た。
収率 97.0%(原料第一級ジアミン対する収率)
融点 209℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):6.96(t, 1H×2:g), 7.03-7.07(m, 3H×2:b,e), 7.10(d, 2H×2:d), 7.30(d, 2H×2:c), 7.38-7.42(m, 2H×2: h,f), 7.90(d, 2H×2:a), 8.63(s, 1H×2:i), 13.10(s, 1H×2:j).
【化15】
工程(2):第二級ジアミン化合物<ビス{4-(4-{[(2-ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホン>の合成
5リッター四つ口フラスコに工程(1)で得られたビス{4-{4-[2-(2-ヒドロキシフェニル)-1-アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホン300g、エタノール3000gを仕込み、水素化ホウ素ナトリウム53.3gの粉末を2時間毎に3回に分けて室温で添加した。添加後室温で27時間撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウムの粉末を17.8g追加した。追加後、室温で23時間撹拌するとクリーム色のスラリー液となった。この液を5℃まで冷却し、析出物をろ別した後、この析出物を2186gの水に分散させ室温で3時間撹拌し、ろ別した。さらに1440gの水に分散し室温で1.5時間撹拌した後、ろ別し、漏斗の上からろ液のpHが8になるまで水を掛けて洗浄した。得られた析出物を乾燥して、純度91.4%(高速液体クロマトグラフィー分析法)のビス{4-(4-{[(2-ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホンの粉末242gを得た。
収率 80.1%(ビス{4-{4-[2-(2-ヒドロキシフェニル)-1-アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホンに対する収率)
融点 143℃(示差走査熱量測定法)
工程(3):ベンゾオキサジン化合物「比較化合物」の合成
5リッター四つ口フラスコに工程(2)で合成したビス{4-(4-{[(2-ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホン244g、1,4-ジオキサン1222gを仕込み、35%ホルマリン水溶液81gを40℃で滴下した。滴下終了後40℃で3.5時間撹拌した。
この液を68℃まで加熱し反応で析出した結晶を溶解した後、トルエン1221gを加え再度加熱した。この溶液を66.5℃から5℃まで冷却後、析出した結晶をろ別、乾燥することにより、純度100%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のベンゾオキサジン化合物「比較化合物」の結晶184gを得た。
収率 72.6%:ビス{4-(4-{[(2-ヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホンに対する収率
融点 188℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):4.62(s, 2H×2:a), 5.34(s, 2H×2:b), 6.82(dd, 1H×2:c), 6.91-6.94(m, 5H×2:d,e,f), 7.02(dd, 1H×2:g), 7.12-7.14(m, 3H×2:h,i), 7.80(ddd, 2H×2:j).
【化16】
重合:ベンゾオキサジン化合物「比較化合物1」の重合
得られたベンゾオキサジン化合物「比較化合物1」を200℃で融解させ、オーブン中200℃で2時間硬化させた硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定のtanδ値で199℃であった。
【0022】
<比較例2>下記化学式で表されるベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」の合成及び重合
なお、「比較化合物2」は、特許文献3の化合物(II-c)に相当する化合物である。
【化17】
工程(1):ジイミン化合物<ビス{4-{3-[2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-1-アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホン>の合成
ビス{4-(3-アミノフェニルオキシ)フェニル}スルホン36.2g、酢酸エチル204.4gおよび5-メチルサリチルアルデヒド25.1gを500ミリリッター四つ口フラスコに仕込んだ。酢酸エチル還流下で33.5時間撹拌した。途中、常圧下80℃で蒸留を行い、酢酸エチルを78.4g留出させた。結晶は反応中に析出した。反応終了液を4℃まで冷却後、ろ別して分離した結晶を乾燥して、純度99.7%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のビス{4-{3-[2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-1-アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホンの結晶54.0gを得た。
収率 96.4%(ビス{4-(3-アミノフェニルオキシ)フェニル}スルホンに対する収率)
融点 167.0℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):2.34(s,3H×2:a), 6.94-6.99(m,3H×2:b,c,d), 7.09-7.24(m,5H×2:e,f,g,h), 7.45(t, 1H×2:i), 7.92(d, 2H×2:j), 8.57(s, 1H×2:k), 12.72(s, 1H×2:l).
【化18】
工程(2):第二級ジアミン化合物<ビス{4-(3-{[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホン>酢酸ブチル溶液の合成
1リッター四つ口フラスコに工程(1)で得られたビス{4-{3-[2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-1-アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホン54.0g、エタノール540.0gを仕込み、30~32℃で水素化ホウ素ナトリウム6.11gの粉末を2時間毎に2回に分けて室温で添加した。添加後、30℃で23時間撹拌すると僅かに濁りのある黄色透明の溶液となった。この溶液を、2リッター四つ口フラスコに仕込んだ水648.0gとエタノール108.0gの混合液に滴下し、生成した沈殿をろ別、乾燥し、粉末62.8gを得た。この粉末62.8g、水125.6g、酢酸ブチル502.4gを1リッター四つ口フラスコに仕込み、室温~30℃で溶解後、撹拌しながら酢酸5.3gで中和した。その後静置し中和分液水を分液し、水洗分液を2回繰り返し、ビス{4-(3-{[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホンの酢酸ブチル溶液554.3gを取得した。
純度 97.0%(酢酸ブチル除去値:高速液体クロマトグラフィー分析法)
溶液中の第二ジアミン化合物分子量 M+1:674 M-1:672(高速液体クロマトグラフィー質量分析)
工程(3):ベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」の合成
1リッター四つ口フラスコに工程(2)で合成したビス{4-(3-{[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]アミノ}フェノキシ)フェニル}スルホンの酢酸ブチル溶液554.3gを仕込み、35%ホルマリン水溶液19.7gを40℃で滴下した。滴下終了後40℃で23.5時間撹拌して反応を完結させたが、撹拌中に結晶が析出した。反応終了液を5℃まで冷却した後、結晶をろ別し乾燥することにより、純度99.7%(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法)のベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」の結晶46.8gを得た。
収率 82.9%(ビス{4-{3-[2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-1-アザビニル]フェノキシ}フェニル}スルホンに対する収率)
融点 157℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):2.27(s,3H×2a), 4.59(s, 2H×2:b), 5.32(s, 2H×2:c), 6.59(ddd, 1H×2:d), 6.77(d, 1H×2:e), 6.80(t, 1H×2:f), 6.83(d, 1H×2:g), 6.94-6.97(m, 2H×2:h,i), 7.01(ddd, 2H×2:j), 7.27(t, 1H×2:k), 7.85(ddd, 2H×2:l).
【化19】
重合:ベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」の重合
得られたベンゾオキサジン化合物「比較化合物2」を180℃で融解させ、オーブン中180℃で2時間、200℃で2時間硬化させた硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定のtanδ値で203℃であった。