(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25B 25/00 20060101AFI20220526BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
B25B25/00 D
B25F5/00 C
B25F5/00 H
(21)【出願番号】P 2021095033
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2021-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519157727
【氏名又は名称】マクセルイズミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 正樹
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第02872293(EP,B1)
【文献】中国特許出願公開第105618836(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0331488(US,A1)
【文献】特表2008-538537(JP,A)
【文献】米国特許第05653140(US,A)
【文献】米国特許第10150153(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0289394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B25/00-33/00
B23D15/00-19/08
B23D23/00-31/04
B25F1/00-5/02
B26B13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと前記電動モータによって作動する送りねじと前記送りねじによって移動するスライド部と制御部を有する本体と、前記本体に連結されているとともに互いに回動可能に連結された第1顎部および第2顎部を有する工具ヘッドを備え、
前記工具ヘッドは、前記第1顎部の先端側と前記第2顎部の先端側とを互いに近づける方向に付勢するばねが配されており、前記第1顎部の先端側の第1形状部と前記第2顎部の先端側の第2形状部とによって被加工物を加工する構成であり、
前記スライド部は、前記第1顎部の後端側に摺動可能な位置に第1ローラが配されているとともに前記第2顎部の後端側に摺動可能な位置に第2ローラが配されており、
前記スライド部が中間位置にいるとき
に、前記第1顎部の後端側と前記第1ローラが離れた状態になるとともに、前記第2顎部の後端側と前記第2ローラとが離れた状態となり、前記ばねに付勢されて前記第1顎部の先端側と前記第2顎部の先端側とが閉じている構成であり、かつ、
前記スライド部を後退移動させることにより、前記第1ローラが前記第1顎部の後端側を摺動するとともに、前記第2ローラが前記第2顎部の後端側を摺動して、前記第1形状部と前記第2形状部とを互いに近づけさせて前記被加工物を加工する構成であること
を特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記第2顎部は、前記スライド部が前記中間位置にいるときに作業者の操作で前記第1形状部と前記第2形状部を互いに離して前記被加工物を取り外せる状態にする操作部が配されている構成であること
を特徴とする請求項1
に記載の電動工具。
【請求項3】
前記本体は、前記制御部が前記電動モータを駆動するために前記作業者が操作するトリガーレバーに連動して作動するトリガースイッチと、前記制御部が前記トリガースイッチの作動を有効にするために前記作業者の操作で作動する制御スイッチが配されている構成であること
を特徴とする請求項
2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記本体は、前記制御部が前記電動モータを停止するために前記スライド部の上限位置への移動によって作動する上限スイッチと、前記制御部が前記電動モータを停止するために前記スライド部の前記中間位置への移動によって作動する中間スイッチと、前記制御部が前記電動モータを停止するために前記スライド部の下限位置への移動によって作動する下限スイッチが配されている構成であること
を特徴とする請求項1~
3のいずれか一項
に記載の電動工具。
【請求項5】
前記送りねじは、軸受によって軸支され、減速機を介して前記電動モータに連結される構成であること
を特徴とする請求項1~
4のいずれか一項
に記載の電動工具。
【請求項6】
前記本体は、前記電動モータに電力を供給するバッテリを有し、前記バッテリからの電力によって前記電動モータを駆動し前記被加工物を圧縮または圧着若しくは切断する構成であること
を特徴とする請求項1~
5のいずれか一項
に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クランク式の把持レバーと電動モータとを組み合わせた構成の電動工具が知られている(特許文献1:欧州特許第2872293号明細書)。特許文献1の電動工具は、初期状態では工具ヘッドの先端側が開いており、作業者が把持レバーを把持する把持力によって工具ヘッドの先端側を閉じさせて被加工物を挟持する構成である。そして、前記把持力が規定値を超えると電動モータが作動し工具ヘッドの先端側が閉じて被加工物を加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業現場にて圧着端子と電線とを圧着する際には、圧着端子と電線との位置合わせが必要になる。また、作業現場にて圧着スリーブを圧縮して電線と電線とを接合する際には、圧縮スリーブと各電線との位置合わせが必要になる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の電動工具は、規定値を超えない範囲の把持力で把持レバーを握った状態を維持しつつ、圧着端子と電線との位置合わせや圧縮スリーブと電線との位置合わせを行わなければならないため、作業者の負担が大きかった。つまり、作業者による把持レバーの把持力が規定値を下回ると工具ヘッドの先端側が開くので、圧縮端子や圧着スリーブなどの被加工物が脱落する、という問題がある。他方、作業者による把持レバーの把持力が規定値を超えると電動モータが作動し被加工物の加工が進んでしまうので、被加工物の位置合わせをする前段階の状態で工具ヘッドの先端側が閉じてしまうので、圧縮端子や圧着スリーブが加工不良になる、という問題がある。尚且つ、特許文献1の電動工具は、初期状態では工具ヘッドの先端側が開いているので、作業開始の際に、誤って手を怪我しないように注意しながら工具を取り扱わなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、一定の力で被加工物を挟持することで被加工物の位置合わせが容易にできて、位置合わせした状態の被加工物を加工することができる構成であり、かつ、初期状態では工具ヘッドの先端側が閉じている構成にすることで、従来品よりも作業者の負担が軽減できて安全性に優れた構造の電動工具を提供することを目的とする。
【0007】
一実施形態として、以下に開示する解決策により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る電動工具は、電動モータと前記電動モータによって作動する送りねじと前記送りねじによって移動するスライド部と制御部を有する本体と、前記本体に連結されているとともに互いに回動可能に連結された第1顎部および第2顎部を有する工具ヘッドを備え、前記第1顎部の先端側の第1形状部と前記第2顎部の先端側の第2形状部とによって被加工物を加工する構成であり、前記スライド部は、前記第1顎部の後端側に摺動可能な位置に第1ローラが配されているとともに前記第2顎部の後端側に摺動可能な位置に第2ローラが配されており、前記スライド部が中間位置にいるときに前記第1顎部の先端側と前記第2顎部の先端側とが閉じている構成であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る電動工具は、電動モータと前記電動モータによって作動する送りねじと前記送りねじによって移動するスライド部と制御部を有する本体と、前記本体に連結されているとともに互いに回動可能に連結された第1顎部および第2顎部を有する工具ヘッドを備え、前記工具ヘッドは、前記第1顎部の先端側と前記第2顎部の先端側とを互いに近づける方向に付勢するばねが配されており、前記第1顎部の先端側の第1形状部と前記第2顎部の先端側の第2形状部とによって被加工物を加工する構成であり、前記スライド部は、前記第1顎部の後端側に摺動可能な位置に第1ローラが配されているとともに前記第2顎部の後端側に摺動可能な位置に第2ローラが配されており、前記スライド部が中間位置にいるときに、前記第1顎部の後端側と前記第1ローラが離れた状態になるとともに、前記第2顎部の後端側と前記第2ローラとが離れた状態となり、前記ばねに付勢されて前記第1顎部の先端側と前記第2顎部の先端側とが閉じている構成であり、かつ、前記スライド部を後退移動させることにより、前記第1ローラが前記第1顎部の後端側を摺動するとともに、前記第2ローラが前記第2顎部の後端側を摺動して、前記第1形状部と前記第2形状部とを互いに近づけさせて前記被加工物を加工する構成であることを特徴とする。
【0010】
前記工具ヘッドは、前記第1顎部の先端側と前記第2顎部の先端側とを互いに近づける方向に付勢するばねが配されている構成である。この構成によれば、クランクやリンクなどよりも単純な構成にしつつ、一定の力で確実に被加工物を挟持することができる。
【0011】
前記第2顎部は、前記スライド部が前記中間位置にいるときに作業者の操作で前記第1形状部と前記第2形状部を互いに離して前記被加工物を取り外せる状態にする操作部が配されている構成であることが好ましい。この構成によれば、スライド部が中間位置にいるときに作業者が第2顎部における操作部を押すことで第2顎部の先端側が第1顎部の先端側から離れるので、被加工物の取付けや被加工物の位置合わせが容易にできる。よって、使い勝手が良い構成にできる。一例として本体はカバー部を有し、第2顎部における操作部は、作業者が押す位置に当該作業者の指に対応した形状のガイド板が取り付けられている。カバー部は、樹脂成型品、または内壁に絶縁処理が施された金属プレス加工品などが適用できる。
【0012】
前記本体は、前記制御部が前記電動モータを駆動するために前記作業者が操作するトリガーレバーに連動して作動するトリガースイッチと、前記制御部が前記トリガースイッチの作動を有効にするために前記作業者の操作で作動する制御スイッチが配されている構成であることが好ましい。この構成によれば、制御スイッチとトリガースイッチとを組み合わせた単純な構成でありながら、安全面に配慮しつつ、作業者は片手で必要な一連の操作が容易にできる。よって、使い勝手が良い構成にできる。
【0013】
前記本体は、前記制御部が前記電動モータを停止するために前記スライド部の上限位置への移動によって作動する上限スイッチと、前記制御部が前記電動モータを停止するために前記スライド部の前記中間位置への移動によって作動する中間スイッチと、前記制御部が前記電動モータを停止するために前記スライド部の下限位置への移動によって作動する下限スイッチが配されている構成であることが好ましい。この構成によれば、複数のスイッチを配した単純な構成でありながら、工具ヘッドに必要以上の負荷が加わることが防止できて、正確かつ確実に所望の制御をすることが容易にできる。
【0014】
一例として、前記送りねじは、軸受によって軸支され、減速機を介して前記電動モータに連結される構成である。この構成によれば、送りねじがスライド部を移動させる際に受けるスラスト方向の荷重で発生する回転摩擦が軽減できる。一例として、送りねじの回転運動が直線運動に変換されるナットに連結されたスライド部、または前記ナットと一体構造のスライド部である。送りねじは、ボールねじを用いてもよい。軸受はスラスト軸受であり、一例として、スラスト玉軸受やスラストころ軸受を用いてもよい。尚且つ、送りねじが減速機を介して電動モータに連結されることで小型の電動モータで高トルクを発生させることが容易にできる。一例として減速機は複数のギアによって構成されるギヤボックスである。電動モータは減速機を組み合わせた一体構造のギヤードモータを用いてもよい。
【0015】
一例として、前記本体は、前記電動モータに電力を供給するバッテリを有し、前記バッテリからの電力によって前記電動モータを駆動し前記被加工物を圧縮または圧着若しくは切断する構成である。この構成によれば、電源コードが不要になって作業範囲が拡大できる。よって、コンパクトで使い勝手の良い構造にできる。一例として本体におけるカバー部は工具ヘッドから離れる方向に作業者が把持可能なハンドル形状になっている。そして、カバー部のハンドル形状の下側にアダプタが設けられている。一例としてバッテリは、電池パックの状態で本体におけるアダプタに接続されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一定の力で被加工物を挟持することで被加工物の位置合わせが容易にできて、位置合わせした状態の被加工物を加工することが簡易にできる。尚且つ、スライド部が中間位置にいる初期状態は工具ヘッドの先端側が閉じているので、従来品よりも作業者の負担が軽減できて安全性に優れた構造の電動工具が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る電動工具の例を示す概略の斜視図である。
【
図3】
図3Aは
図1の電動工具におけるカバー部を取り外した状態を示す概略の構造図であり、
図3Bは
図1の電動工具におけるトリガーレバーとスイッチ基板との関係を示す構造図である。
【
図4】
図4Aは
図1に示す電動工具における工具ヘッドの正面図であり、
図4Bは
図1に示す電動工具における工具ヘッドの左側面図である。
【
図5】
図5は本実施形態の電動工具における概略の回路図の例である。
【
図6】
図6Aは
図1に示す電動工具の使用態様において初期状態を示す概略の構造図であり、
図6Bは
図1に示す電動工具の使用態様において被加工物を取付けた状態を示す概略の構造図であり、
図6Cは
図1に示す電動工具の使用態様において被加工物を圧縮または圧着した状態を示す概略の構造図であり、
図6Dは
図1に示す電動工具の使用態様において被加工物を取り外した状態を示す概略の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態の電動工具1は、バッテリ5からの電力によって電動モータ7aを駆動することで被加工物90を圧縮または圧着若しくは切断する構成である。一例として、電動工具1は、作業現場にて圧着端子と電線とを圧着する場合や、作業現場にて圧着スリーブを圧縮して電線と電線とを接合する場合などに用いられる。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0019】
図1、
図2A、
図2B、
図2Cおよび
図2Dは、本実施形態に係る電動工具1の例を示す概略の図である。電動工具1は、電動モータ7aと送りねじ8aとスライド部9と制御部19と制御スイッチ21を有する本体2と、本体2に連結されているとともに互いに回動可能に連結された第1顎部11および第2顎部12を有する工具ヘッド3と、バッテリ5を備えており、現場で作業者が手に持って使用するコードレスタイプの工具である。スライド部9は、送りねじ8aの軸線P1に沿って往復動する。スライド部9は、図中のZ方向矢印の向きに上限位置まで前進し、図中のZ方向矢印の反対向きに下限位置まで後退する。スライド部9が中間位置にいる初期状態は工具ヘッド3の先端側が閉じている。
図1の例は、工具ヘッド3を交換可能な多機能式の電動工具1である。ここで、電動工具1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。なお、電動工具1は、いずれの向きにおいても正常に作動する。
【0020】
図4Aと
図4Bは、圧縮用の工具ヘッド3の例である。第1顎部11と第2顎部12とは各々第1軸部材17aに挿通されて軸支されるとともに連結板17によって互いに回動可能に連結されている。第1顎部11の先端側における第1形状部11aは内向きで凸部が所定間隔で形成されており、第2顎部12の先端側における第2形状部12aは内向きで前記凸部に一対一で対応した凹部が形成されている。そして、第1顎部11の先端側の第1形状部11aと第2顎部12の先端側の第2形状部12aとが互いに接近して被加工物90としての圧縮端子や圧着スリーブを圧縮または圧着する。ばね18は、金属製の、ねじりコイルばねである。ばね18のコイル部は、第1顎部11に設けた支持部11eに回動可能に取り付けられている。ばね18の端部は、連結板17に当接している。そして、ばね18の復元力によって第1顎部11の先端側の第1形状部11aと第2顎部12の先端側の第2形状部12aとが互いに近づく方向に付勢される。
【0021】
図3Aは電動工具1における本体2のカバー部2aを取り外した状態を示す概略の構造図であり、
図3Bは電動工具1におけるトリガーレバー27とスイッチ基板20aとの関係を示す構造図である。一例として、制御スイッチ21はプッシュスイッチである。トリガーレバー27は本体2に設けた第2軸部材に回動可能に軸支されており、トリガースイッチ22はトリガーレバー27に連動して作動する。トリガースイッチ22はマイクロスイッチである。スイッチ基板20aは、スライド部9の位置を検知可能な複数のマイクロスイッチが実装されている。一例として、スライド部9に配されたピンがマイクロスイッチに接することでスライド部9の位置を検知する。
【0022】
工具ヘッド3は、梃子の原理を応用して被加工物90を加工する。第1顎部11は、第1ローラ9aが摺動する第1摺動面11dが第1顎部11の後端側に形成されており、第1顎部11における突出部11bから第1摺動面11dに至る第1湾曲部11cは第1ローラ9aと離れた状態になるように抉れた形状になっている。また、第2顎部12は、第2ローラ9bが摺動する第2摺動面12dが第2顎部12の後端側に形成されており、第1軸部材が配された箇所に近い内縁部から第2摺動面12dに至る第2湾曲部12cは第2ローラ9bと離れた状態になるように抉れた形状になっている。
【0023】
送りねじ8aは、軸受8bによって軸支されるとともに、減速機6を介して電動モータ7aに連結される。本体2は電動モータ7aに電力を供給するバッテリ5を有し、バッテリ5からの電力によって電動モータ7aを駆動することで被加工物90を圧縮または圧着若しくは切断する構成である。本体2におけるカバー部2aは工具ヘッド3から離れる方向に作業者が把持可能なハンドル形状になっている。そして、カバー部2aの下端側にアダプタ4が設けられており、バッテリ5は電池パックの状態で本体2のアダプタ4に接続されている。
【0024】
図5は電動工具1の回路図の構成を示す例である。制御部19は、一例として、ワンチップマイコンからなるCPU19aを有する。引き続き、制御部19と、周辺回路を構成するスイッチ基板20aおよび表示基板20bについて、以下に説明する。
【0025】
一例として、バッテリ5はリチウムイオン電池からなり、電源電圧は7~42[V]であり、電池容量は1~10[Ah]である。バッテリ5の電圧は、レギュレータ19cを経由し降圧されてCPU19aに電力供給される。CPU19aは、バッテリ5の残量を確認し監視する構成になっており、また、タイマーとしての機能する構成になっている。一例として、CPU19aは、ドライバ19bにPWM信号を送出し、パワーMOSFETなどの駆動素子を介して電動モータ7aに電力供給し、電動モータ7aを駆動制御する。
【0026】
一例として、制御部19とスイッチ基板20aと表示基板20bとが配線によって信号接続されている。スイッチ基板20aは、トリガーレバー27の操作によって作動するトリガースイッチ22と、スライド部9が上限位置に移動することで作動する上限スイッチ23と、スライド部9が中間位置に移動することで作動する中間スイッチ24と、スライド部9が下限位置に移動することで作動する下限スイッチ25が実装されている。各スイッチの作動信号がCPU19aに入力されることで、CPU19aが電動モータ7aを駆動制御する。
【0027】
表示基板20bは、作業者が操作する制御スイッチ21と、電動工具1が自動モードであることを表示するLED26aと、電動工具1が異常状態であることを表示するLED26bと、電動工具1が手動モードであることを表示するLED26cが実装されている。制御スイッチ21の作動信号がCPU19aに入力されることで、CPU19aがトリガースイッチ22の作動信号を有効信号と判断し、また、電動モータ7aを駆動制御する際の条件を設定する。一例として、制御スイッチ21はプッシュスイッチであり、中間スイッチ24がONの場合に、制御スイッチ21を所定時間押したとき、例えば3秒間以上押したときに、モードが都度切り替わる構成である。自動モードは、連続して作業する場合に用いられ、CPU19aの表示制御によってLED26aが点灯し、例えば緑色表示になる。手動モードは、一回作業する場合に用いられ、CPU19aの表示制御によってLED26cが点灯し、例えば緑色表示になる。
【0028】
電動工具1が異常状態の場合は、外部のセンサからCPU19aに異常信号が入力され、CPU19aの表示制御によってLED26bが点灯または点滅し、例えば赤色表示になる。一例としてバッテリ5の電流値が20[A]を超えたときに、LED26bが周期5Hzで10回点滅する。一例として制御部19の基板温度が80[℃]に達したときに、LED26bが3秒間点灯する。一例としてバッテリ5の温度が90[℃]以上のときに、LED26bが周期1Hzで3回点滅する。一例としてバッテリ5の電圧が7.8[V]以下のときに、LED26bが周期5Hzで10回点滅する。なお、上記数値は一例であり、上記数値に限定されない。
【0029】
一例として、作業者の操作並びに電動工具1の動作と、制御スイッチ21、トリガースイッチ22、上限スイッチ23、中間スイッチ24および下限スイッチ25の各スイッチの動作の関係を次の表1に示す。
【0030】
【0031】
表1に示すように、制御スイッチ21とトリガーレバー27に連動するトリガースイッチ22を組み合わせた単純な構成にしつつ、作業者は片手で必要な一連の操作が容易にできるので使い勝手が良い。また、制御スイッチ21が作動することで電源ONになって、トリガーレバー27を離した時点から所定時間後に電源OFFになるので、合理的である。一例として、トリガーレバー27を離した時点から60秒後に電源OFFになる。
【0032】
図6A~
図6Dは、電動工具1の動作を説明する概略の構造図である。電動工具1の動作について、
図6A~
図6D並びに表1に基づいて、以下に説明する。
【0033】
図6Aはスライド部9が中間位置にいる初期状態を示している。中間位置は、第1ローラ9aが突出部11bに接する位置または近接する位置である。電源OFFの状態では、中間スイッチ24のみがONになっている。スライド部9が中間位置にいるときは、ばね18の復元力によって第1顎部11の先端側と第2顎部12の先端側とが閉じている。第1回目の圧着作業は、スライド部9が
図6Aに示す初期状態からの作業開始になる。
【0034】
ステップS1にて、作業者が制御スイッチ21を押して離すと、制御スイッチ21がOFFからONになってOFFになり、制御部19の制御によって電源ONになり、トリガースイッチ22の作動が有効になる。
【0035】
ステップS1に続いて、ステップS2にて、第2顎部12の操作部12bを作業者が第1顎部11の方向に押すことで、第1形状部11aが第2形状部12aから離れて、作業者は被加工物90を取付ける。
図6Bは、第1形状部11aと第2形状部12aとによって被加工物90を挟持した状態を示している。
【0036】
ステップS2に続いて、ステップS3にて、作業者がトリガーレバー27を握ると、スライド部9が後退し下方に移動して、第1ローラ9aが第1摺動面11dを摺動するとともに第2ローラ9bが第2摺動面12dを摺動するので、第1形状部11aと第2形状部12aとが互いに近づいて被加工物90を圧着加工する。スライド部9が下限位置になると下限スイッチ25が作動しスライド部9が一旦停止する。
図6Cは被加工物90を圧着加工した状態を示している。
【0037】
ステップS3に続いて、ステップS4にて、作業者がトリガーレバー27を離すと、スライド部9が前進し上方に移動して、第1ローラ9aが突出部11bを押すことで第1形状部11aと第2形状部12aが互いに離れた状態になる。スライド部9が上限位置になると上限スイッチ23が作動しスライド部9が一旦停止する。
【0038】
ステップS4に続いて、ステップS5にて、作業者は被加工物90を取り外す。
図6Dは被加工物90を取り外した状態を示している。作業者がトリガーレバー27を離した時点から所定時間後に、第1顎部11の先端側と第2顎部12の先端側とが閉じた状態で電源OFFになる。
【0039】
自動モードのときは、
図6Dに示す状態から、圧着作業を繰り返し行う。手動モードのときは、
図6Aに示す状態から、圧着作業を1回ずつ行う。
【0040】
本実施形態によれば、一定の力で被加工物90を挟持することで被加工物90の位置合わせが容易にできて、位置合わせした状態の被加工物90を加工することが簡易にできる。尚且つ、スライド部9が中間位置にいる初期状態は工具ヘッド3の先端側が閉じているので、従来品よりも作業者の負担が軽減できて安全性に優れた構造の電動工具1になる。
【0041】
上述の例では、被加工物90として圧縮端子や圧着スリーブを圧縮または圧着する場合について説明したが、この例に限定されない。本実施形態は、電線の切断や電線同士の圧着など電設工具全般に適用できる。また、上述の例では、本体2に着脱可能にバッテリ5が電池パックの状態で取り付けられている構成を説明したが、この例に限定されない。本実施形態は、バッテリ5が本体2に内蔵されている構成や、内蔵バッテリと電池パックを両方備えた構成にする場合がある。
【0042】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 電動工具
2 本体、2a カバー部
3 工具ヘッド
4 アダプタ
5 バッテリ
6 減速機
7a 電動モータ、7b 駆動軸
8a 送りねじ、8b 軸受
9 スライド部、9a 第1ローラ、9b 第2ローラ
11 第1顎部、11a 第1形状部、11b 突出部、11c 第1湾曲部、11d 第1摺動面、11e 支持部
12 第2顎部、12a 第2形状部、12b 操作部、12c 第2湾曲部、12d 第2摺動面
17 連結板、17a 第1軸部材
18 ばね
19 制御部、19a CPU(マイコン)、19b ドライバ
20a スイッチ基板、20b 表示基板
21 制御スイッチ
22 トリガースイッチ
23 上限スイッチ
24 中間スイッチ
25 下限スイッチ
26a、26b、26c LED
27 トリガーレバー、27a 第2軸部材
90 被加工物
P1 軸線
【要約】
【課題】一定の力で被加工物を挟持することで被加工物の位置合わせが容易にできて、位置合わせした状態の被加工物を加工することができる構成であり、かつ、中間位置にいるときに第1顎部の先端側と前記第2顎部の先端側とが閉じている構成にすることで、従来品よりも作業者の負担が軽減できて安全性に優れた構造の電動工具を提供する。
【解決手段】電動工具1は、電動モータ7aと送りねじ8aとスライド部9と制御部19を有する本体2と、本体2に連結されているとともに互いに回動可能に連結された第1顎部11および第2顎部12を有する工具ヘッド3を備え、スライド部9は第1ローラ9aおよび第2ローラ9bが配されており、スライド部9が中間位置にいるときに第1顎部11の先端側と第2顎部12の先端側とが閉じている構成である。
【選択図】
図1