IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社山本金属製作所の特許一覧

特許7079904冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム
<>
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図1
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図2
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図3
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図4
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図5
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図6
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図7
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図8
  • 特許-冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】冷却液良否検出システム、及び冷却液管理システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20220527BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20220527BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20220527BHJP
   B24B 55/03 20060101ALI20220527BHJP
   G01K 1/024 20210101ALI20220527BHJP
【FI】
B23Q11/10 E ZJC
B23K20/12 340
B23Q17/00 A
B24B55/03
G01K1/024
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018542804
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2017035050
(87)【国際公開番号】W WO2018062317
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2016188928
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509311643
【氏名又は名称】株式会社山本金属製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰三
(72)【発明者】
【氏名】山内 貴行
(72)【発明者】
【氏名】榮 淳
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-500190(JP,A)
【文献】特開2011-136373(JP,A)
【文献】特開平11-276818(JP,A)
【文献】特開2004-066425(JP,A)
【文献】特開2012-218095(JP,A)
【文献】特許第5988066(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10
B23Q 17/00
B24B 55/03
B23K 20/12
G01K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属加工装置の動作中に加工ツールを冷却する冷却液の供給流路において少なくとも所定時間ごとに温度計測し、その変化を検出可能な温度計測手段を備え、
少なくとも前記温度計測手段から計測された温度情報を含む前記冷却液の計測情報の変化を含め、追跡・評価することで冷却油に予め指定された管理条件以外のその金属加工装置及び加工ツールに対する最適条件を検出する冷却液良否検出システムであって、
前記温度計測手段は、前記冷却液をその貯留容器内若しくは金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内の温度、又は該貯留容器から金属加工装置内に供給するポンプの出力側までの流路内の温度を計測し、
前記冷却液の計測情報の変化は、前記温度計測手段で計測された温度の経時変化を検出する冷却液良否検出システム。
【請求項2】
前記温度計測手段は、加工ツールを把持する主軸側から該加工ツールまでの冷却液を供給する流路の冷却液の温度を計測し、
前記冷却液の計測情報の変化は、前記温度計測手段で計測された温度の経時変化を検出する、請求項1に記載の冷却液良否検出システム。
【請求項3】
請求項1に記載の温度計測手段で計測された温度又は温度の差分が予め設定された閾値を超えた場合を異常として検出する、冷却液良否検出システム。
【請求項4】
請求項1に記載の温度計測手段から計測された温度情報を含む諸計測情報の変化を検出し、外部に無線送信する送信手段を備える、冷却液良否検出システム。
【請求項5】
請求項1に記載の温度計測手段による温度計測は、常時リアルタイムに行われ、その温度情報をモニタリングする請求項4に記載の冷却液良否検出システム。
【請求項6】
金属加工装置の動作中に加工ツールを冷却する冷却液の供給流路において所定日時又は所定期間ごとに該流路の冷却液を分取して濃度計測し、その変化を含め、追跡・評価可能な濃度計測手段を備え、
少なくとも前記濃度計測手段から計測された前記冷却液の濃度情報の変化を検出することで冷却油に予め指定された管理条件以外のその金属加工装置及び加工ツールに対する最適条件を検出する冷却液良否検出システムであって、
前記濃度計測手段は、前記冷却液の貯留容器内、金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内、該貯留容器から金属加工装置内に供給するポンプの出力側までの流路内、加工ツールを把持する主軸側から該加工ツールまでの冷却液を供給する流路内、又は加工ツールに向かって外部から冷却液を噴射する噴射手段へ冷却液を供給する流路内、の1つ以上の位置における冷却液を分取して、その濃度を計測する冷却液良否システム。
【請求項7】
請求項6に記載の濃度計測手段から計測された濃度情報を含む諸計測情報の変化を検出し、外部に無線送信する送信手段を備える、冷却液良否検出システム。
【請求項8】
請求項6に記載の濃度計測手段で計測された濃度又は各計測位置における濃度の経時的変化が予め設定された閾値を超えた場合を異常として検出する、冷却液良否検出システム。
【請求項9】
金属加工装置の動作中又は停止中に加工ツールを冷却する冷却液の供給流路において所定期間ごと又は所望の時に該冷却液に含まれる不純物量を検出可能な不純物抽出手段を備え、
該不純物抽出手段は少なくとも、前記冷却液の貯留容器内、金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内、又は該貯留容器から金属加工装置内に供給するポンプの出力側までの流路内の不純物量を検出することで冷却油に予め指定された管理条件以外のその金属加工装置及び加工ツールに対する最適条件を検出する冷却液良否検出システムであって、
前記不純物検出手段は、前記冷却液の貯留容器から前記金属加工装置が備える前記供給流路の濾過装置が有する濾過フィルターに蓄積した単位面積あたりの不純物量を分析する、冷却液良否検出システム。
【請求項10】
前記不純物検出手段は、前記供給流路中の冷却液のpHを計測する、請求項9に記載の冷却液良否検出システム。
【請求項11】
前記不純物検出手段は、前記冷却液をその貯留容器から金属加工装置の前記供給流路内に供給するポンプの吐出圧を計測する、請求項9に記載の冷却液良否検出システム。
【請求項12】
金属加工装置内の前記供給流路中の1つ以上の位置で前記冷却液の圧力を所定時間又は所定期間ごとに検出可能な圧力計測手段を備え、該圧力計測手段から計測された圧力情報の変化を検出する、請求項9~11のいずれか1項に記載の冷却液良否検出システム。
【請求項13】
請求項12に記載の圧力計測手段から得られた圧力情報の変化を検出し、検出された圧力又は各検出位置における圧力の差分が予め設定された閾値を超えた場合を異常として検出する、冷却液良否検出システム。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか1項に記載の温度計測手段からの温度情報及び/又は各温度情報の差分と、
請求項6~8のいずれか1項に記載の濃度計測手段、及び/又は請求項9~11のいずれか1項に記載の不純物検出手段、及び/又は請求項12又は13に記載の圧力計測手段、からの情報と、
を組み合わせてモニタリングする冷却液良否検出システム。
【請求項15】
金属加工装置の加工ツールの内部に設けられた加工ツールの温度、振動、及び/又はひずみの加工状態のリアルタイム測定部を有し、前記リアルタイム測定部の測定結果を加工ツール又は加工ツールを把持するツールホルダの内部に設けられた電子基板で受信し、外部送信する、加工ツール測定装置を備える、請求項1~14のいずれか1項に記載の冷却液良否検出システム。
【請求項16】
金属加工装置の動作中に加工ツールを冷却する冷却液の供給流路内の冷却液を分取して、該冷却液の動粘度、色調、透明度、濁り、電導度を計測可能な計測手段を備え、
該計測手段からの情報を
請求項1~5のいずれか1項に記載の温度計測手段と、
請求項6~8のいずれか1項に記載の濃度計測手段、及び/又は請求項9~11のいずれか1項に記載の不純物検出手段、及び/又は請求項12又は13に記載の圧力計測手段と
、からの計測情報とともに外部サーバに送信する計測情報送信手段を備える冷却液良否検出システム。
【請求項17】
請求項16に記載の冷却液良否検出システムの前記計測情報送信手段からの計測情報を受信して各金属加工装置ごとに予め設定された1つ以上の情報端末に送信する端末送信手段と、
前記計測情報送信手段から受信した計測情報のうちいずれか1つ又は複数の計測情報が、予め設定された閾値又は数値範囲を超えるか否か判定する判定手段とを備え
該判定手段により閾値又は数値範囲を超えたと判断されたときに、警告情報を前記情報端末に送信する警告送信手段と、を備える冷却液良否管理システム。
【請求項18】
前記計測情報送信手段から受信した計測情報のうちいずれか1つ又は複数の計測情報が、前記判定手段により閾値を超えた又は数値範囲外になったと判定されたときには、自動的に溶剤を前記貯留容器内に供給し、前記判定手段により閾値を超えていない又は数値範囲内になったと判定されたときには、自動的に溶剤の供給を停止する、請求項17に記載の冷却液良否管理システム。
【請求項19】
前記計測情報送信手段から受信した計測情報のうちいずれか1つ又は複数の計測情報が、前記情報端末から供給指令情報を受信すると溶剤を前記貯留容器内に供給する、請求項17に記載の冷却液管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工装置における加工ツールの冷却液を供給する流路の温度や濃度、不純物量、圧力等を計測し、外部に無線送信する冷却液良否検出システムを提供することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削装置等において加工時の工具冷却は、製品の加工精度、歩留まり、工具寿命等に大きく影響するものでありながら、個々の装置、工具、 加工ごとに冷却油の温度を測定しておらず、現場の作業員の経験則に任せている状況であった。
【0003】
これに対して、高精度な加工現場においては冷却油を冷却するクーラント冷却装置が切削工具等の追加付属品として提供されている。しかしながら、大型で高価なため、広く現場には普及できておらず、導入した際は加工品のコストアップにもつながっていた。また、従来のクーラント冷却装置の場合、冷却油メーカに指定された標準的な閾値・使用条件での管理(濃度、pH、交換頻度、推奨交換時期等)しかできず、個々の現場での加工部品や工具の寿命に対して最適性能を発揮させることはできていなかった。
【0004】
したがって、加工条件ごと、各加工装置それぞれにおいて、種々の仕様のクーラントを使った実加工に際して、その良否が定量的に評価できるシステムに対する社会的・潜在的なニーズが高まっていた。また、このニーズは切削装置、研削装置,旋盤装置のみならずクーラントを活用する鍛造装置や鋳造装置など、広く金属を加工する装置全般で、今後求められてくる技術課題である。このことは来たるIOT社会において、各工場内設備・周辺原料の横断的・集中管理が求められてくることが予想される状況から鑑みても、解決すべき技術課題となる。
【0005】
出願人は、近年、加工装置における各加工ツールの加工中の計測評価技術(特許文献1、2参照)を提唱しており、当該分野のフロントランナーとして,当業者に位置づけられ、これらの技術と密接に関係し、組み合わせ発展させ得るものとして本発明を創作するに至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開公報WO2015-022967
【文献】国際公開公報WO2016-111336
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて創作されたものであり、金属加工装置における加工ツールの冷却液を供給する流路の温度や濃度、不純物量等を計測し、外部に無線送信する冷却液良否検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、
金属加工装置の動作中に加工ツールを冷却する冷却液の供給流路において少なくとも所定時間ごとに温度計測し、その変化を検出可能な温度計測手段を備え、
少なくとも前記温度計測手段から計測された温度情報を含む前記冷却液の計測情報の変化を含め、追跡・評価することで冷却油に予め指定された管理条件以外のその金属加工装置及び加工ツールに対する最適条件を検出する冷却液良否検出システムが提供される。
【0009】
また、本発明の冷却液良否判定システムは、金属加工装置の動作中に加工ツールを冷却する冷却液の供給流路において所定日時又は所定期間ごとに該流路の冷却液を分取して濃度計測し、その変化を含め、追跡・評価可能な濃度計測手段を備え、
少なくとも前記濃度計測手段から計測された前記冷却液の濃度情報の変化を検出することで冷却油に予め指定された管理条件以外のその金属加工装置及び加工ツールに対する最適条件を検出する、ことが好ましい。
【0010】
本冷却液良否検出システムでは、金属加工装置の動作中に所定時間ごと(例えば、毎日午前と午後の所定時の定期モニタリング)に冷却液の温度を計測し、同時にその濃度も定期的に計測することができる。出願人は、冷却液の性能が維持されているか否かを定期的に計測し、その経時変化により性能劣化を数値データとして客観的に検出することで、これまでは、冷却液メーカの規格化された基準やオペレータの経験則に頼るしかなかった曖昧な判定ではなく、定量的に判定できる方法を提案している。また、冷却液の良否判定の必須要素として冷却液の濃度変化にも注目し、この濃度変化と上記温度変化を勘案して判定要素にすることができる点も有利である。つまり、従来は、冷却液メーカが原液を提供するだけで、ユーザに希釈させる態様が一般的であり、各加工装置や環境要因により継時的な濃度変化や、オペレータが個々に行う希釈方法には注目してこなかったため、実際には濃度がメーカ指定の状態を必ずしも維持できていないという現場事情があり、これを出願人が知得し、金属加工装置の冷却性能維持の必須要件として提案したものである。したがって、本システムによれば、これまで注目されていなかった冷却液の継時的劣化に起因する工具の疲労、破損等の回避、ひいては被加工物の加工精度の低下、製品の歩留まり低下を回避することができる。さらに、これをデータ化することで定常的な評価・管理を行うこともできる。
【0011】
なお、金属加工装置には、切削装置、旋盤装置、研削装置、摩擦攪拌接合装置等の工作機械や、鍛造装置、圧延装置、鋳造装置等があり、広くこれらの冷却液の良否検出にも活用可能である。
【0012】
また、前記温度計測手段から計測された温度情報や濃度計測手段から計測された濃度情報を含む諸計測情報を、外部に無線送信する送信手段を備えることも有効である。
【0013】
また、温度計測手段による温度計測は、常時リアルタイムに行われ、その温度情報をモニタリングすることが好ましい。なお、濃度計測手段による濃度計測は、温度計測と同様に常時リアルタームにモニタリングしても良く、所定時間ごと(日時ごとや所定期間ごと)に行ってもよい。
【0014】
このように温度情報等の計測情報を金属加工装置の動作中に外部に無線送信することで、外部の表示・分析装置で、その変化も併せてリアルタイムに検出・評価することができ、加工装置の動作中の異常にも迅速に対応可能となる。これとともに、複数の金属加工装置ごとの冷却液良否検出システムによる計測情報を集積することができ、昨今のIOT社会の発展にともなって加工装置を定量的に評価し得るシステムの構築を進めることもできる。このとき個々の加工装置から無線で計測情報が外部送信され集中的にモニタリングされるため、複数の加工装置を計測する場合であっても計測現場での配線数を減じることができる。また、鍛造装置や圧延装置等では、安全上、装置近傍でのモニタリングは困難であるため、その意味でも計測情報を無線送信し、遠隔位置でモニタリングし得る本システムは有利である。とりわけ、一つの企業体でありながら、複数の工場をまたいだ金属加工機械の冷却液の一元管理や、複数の企業をまたいだ金属加工機械の冷却液の管理に関しても、昨今のCloud型データベースを活用し、種々の使用条件で、ある時は過酷に、またある時はマイルド条件に暴露される冷却液の逐次情報を収集し、使用条件と金属加工の良否、後に述べる腐敗の発生といった事象と収集データとを俯瞰し、関連付けをビックデータの処理の形で広く実施させることで、冷却液の交換時期のミス防止や、加工製品の歩留まり向上にも寄与できるものと確信する。
【0015】
具体例1として、前記温度計測手段は、前記冷却液をその貯留容器内若しくは金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内の温度、又は該貯留容器から金属加工装置内に供給するポンプの出力側までの流路内の温度を計測し、前記冷却液の計測情報の変化は、前記温度計測手段で計測された温度の経時変化を検出することができる。
【0016】
温度計測手段が、前記冷却液をその貯留容器から金属加工装置内に供給するポンプの出力側の流路の温度を計測する場合、冷却液を加工装置に供給するためのポンプから出力された直後の冷却液の温度を計測する場合、実際に加工現場に提供される冷却液の温度を計測できることになり、また、ポンプ性能と相まって、冷却液の余剰分をリリーフ弁へ迂回させる流路を利用する場合との相性が良好となる。
【0017】
また、前記温度計測手段が、前記冷却液の貯留容器内若しくは金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内の冷却液の温度を計測する場合、冷却液の貯留容器(いわゆるクーラントタンク等)は元来、冷却液を追加等する場所であるためアクセスしやすく、さらに、既存の外付け冷却装置もクーラントタンク貯留液の吸引を行うものであるため、外付け冷却装置と本システムは併用し易く、
既存の加工装置に本システムを後付けする際、特に導入し易くなり市場拡大につながる。こうして、既存システムへの導入が進めば、より多くのデータをフィードバックしやすくなるため、温度変化による冷却液の評価基準となるビッグデータの採取につながることが期待でき、その点でも有利である。
【0018】
具体例2として、前記温度計測手段は、加工ツールを把持する主軸側から該加工ツールまでの冷却液を供給する流路の冷却液の温度を計測し、前記冷却液の計測情報の変化は、前記温度計測手段で計測された温度の経時変化を検出することができる。
なお、主軸側から該加工ツールまでの冷却液を供給する流路には、例えば、加工装置の主軸の下端から直接加工ツールに冷却液を放出する流路や、主軸内の流路と連通する加工ツール内の貫通孔又は半分貫通孔を通って加工ツール先端まで冷却液を到達させる流路が考えられる。
【0019】
具体例3として、前記温度計測手段は、加工ツールに向かって外部から冷却液を噴射する噴射手段へ冷却液を供給する流路の冷却液の温度を計測し、前記冷却液の計測情報の変化は、前記温度計測手段で計測された温度の経時変化を検出することもできる。
【0020】
具体例2、3では、冷却対象となる金属加工装置の加工ツールへ流れる冷却液を直接計測することで、加工精度等に直接的に影響を与える加工点における温度を評価することができる。
【0021】
前記記載の温度計測手段のうち、複数の温度計測手段で計測された温度情報を組み合わせてその温度変化の差異を検出する、こともできる。例えば、上記具体例1のように前記温度計測手段が、前記冷却液をその貯留容器内若しくは金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内の温度と、該貯留容器から金属加工装置内に供給するポンプの出力側までの流路内の温度と、を計測する場合、前記冷却液の計測情報の変化を、前記温度計測手段で計測された温度の差分又はその経時変化で検出する。
【0022】
また、上記具体例2のように前記温度計測手段が、加工ツールを把持する主軸側から該加工ツールの内部を通過して先端まで冷却液を供給する流路の冷却液の温度と、該主軸側から該加工ツール先端に冷却液を放出する流路の冷却液の温度と、を計測する場合や、
上記具体例3のように前記温度計測手段は、前記加工ツールを把持する主軸側から該加工ツールに冷却液を供給する流路の冷却液の温度若しくは前記加工ツールに向かって外部から冷却液を噴射する噴射手段へ冷却液を供給する流路の冷却液の温度と、前記冷却液をその貯留容器内若しくは金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内の温度と、を計測する場合に、それぞれ、
前記冷却液の計測情報の変化を、前記温度計測手段で計測された温度の差分又はその経時変化を検出することができる。
【0023】
加えて、複数場所での温度情報を組み合わせることで、場所ごとの温度勾配の差等を検出することが可能となり、より精緻に冷却液の劣化を検証することができる。
【0024】
また、上述するように温度計測手段で計測された温度や温度の差分が予め設定された閾値を超えた場合を冷却液や加工装置の異常として検出することができる。
【0025】
また、上述した濃度計測手段は、例えば、前記冷却液の貯留容器内、金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内、該貯留容器から金属加工装置内に供給するポンプの出力側までの流路内、加工ツールを把持する主軸側から該加工ツールまでの冷却液を供給する流路内、又は加工ツールに向かって外部から冷却液を噴射する噴射手段へ冷却液を供給する流路内、の1つ以上の位置における冷却液を分取して、その濃度を計測している。この時、濃度計測手段個々で計測された濃度又は各計測位置における濃度の経時的変化が予め設定された閾値を超えた場合を異常として検出することができる。
【0026】
また、他の本冷却液良否検出システムでは、金属加工装置の動作中又は停止中に加工ツールを冷却する冷却液の供給流路において所定期間ごと又は所望の時に該冷却液に含まれる不純物量を検出可能な不純物抽出手段を備え、
該不純物抽出手段は少なくとも、前記冷却液の貯留容器内、金属加工装置から該貯留容器内に排出する流路内、又は該貯留容器から金属加工装置内に供給するポンプの出力側までの流路内の不純物量を検出することで冷却油に予め指定された管理条件以外のその金属加工装置及び加工ツールに対する最適条件を検出する。
【0027】
冷却液は加工装置の加工にともなって継時的に研磨くず等の不純物が混入したり、腐敗したりし、これが冷却液の劣化の原因の1つともなっている。したがって、本システムではこの不純物量を検出することで直接的に冷却液の劣化を感知することができる。不純物量を検出するシステムが採用されることで、冷却液劣化により加工精度や効率の低下を防止することができるだけでなく、休日中も含め冷却液劣化防止のために確認作業や加工装置の短時間作動を行っている現場管理者の負担軽減をすることが可能となる。
【0028】
不純物量の計測は、少なくとも冷却液の貯留容器(タンク)や、貯留容器近傍の流路の冷却液を分析する必要がある。貯留容器内や近傍流路は外部からのアクセスがしやすいため不純物混入や腐敗しやすく、従来より現場管理者は貯留容器内の冷却液を視認してその劣化具合を確認していたため、本システムへの移行がしやすいからである。
【0029】
また、前記不純物検出手段は、前記冷却液の貯留容器から前記金属加工装置が備える前記流路上の濾過装置が有する濾過フィルタに蓄積した、単位面積あたりの不純物量を分析する例がある。
【0030】
この例では、金属加工装置が元来備える又は外付け冷却装置に備えるべき濾過フィルタを活用し、そのフィルタにおける所謂スラッジ密度を計測し、フィルタの定期交換ごとに不純物量を計測し、冷却液の良否判定に活用することができる。
【0031】
また、前記不純物検出手段は、前記供給流路中の冷却液のpHを計測する例がある。
冷却液には冷却液メーカ推奨のpH値範囲があり、この数値範囲内か否かで冷却液の劣化度を評価することができるため、本システムではこのpH値を計測することで、冷却液の劣化の指標とすることができる。すなわち、冷却液のpHは濃度(例えば、水溶性クーラントの場合、原液に対する水希釈の割合)にも大きく依存するものであるため、定期的に冷却液メーカの推奨のpHと比較して、例えば闕値を設定しておけば劣化状況を検知し、交換時期を判定することができる。
【0032】
なお、pH測定の意義としては、次のような効用がある。一般的に、クーラントを夏場の高温下で使用していると、pH低下が発生する。この時、クーラントの腐敗が通常は生じている。この時、同時に、クーラント液に含まれる洗浄剤・防錆剤・pH調整剤といった冷却液としての性能を維持するうえで必要な成分(添加物)の生分解が起こっていることが多い。加えて、pHの低下は、その化学的な作用により、金属腐食を引き起こす原因にもなるため、冷却液の劣化と同義にとらえられるのが一般的である。また、上述の腐敗したクーラントはかなり不快な臭気を伴うため、pH値で管理し、腐敗の兆候が感知されると、冷却液の入れ替えや腐敗防止剤の追加、冷却液の原液投入といった腐敗回避の対策も容易に実施できることになるので、極めて有用な測定と考える。
【0033】
また、前記不純物検出手段は、前記冷却液をその貯留容器から金属加工装置の前記供給流路内に供給するポンプの吐出圧を計測しても良い。
【0034】
冷却液のポンプ圧は、上記スラッジが溜まってくると低下することが知得されている。したがって、元来、検出されているポンプ圧のデータを不純物量の評価として活用し、劣化状況の評価、交換時期の判定等に用いることができる。
【0035】
さらに、本冷却液良否検出システムでは、金属加工装置内の前記供給流路中の1つ以上の位置で前記冷却液の圧力を所定時間又は所定期間ごとに検出可能な圧力計測手段を備え、該圧力計測手段から計測された圧力情報の変化を検出しても良い。
【0036】
例えば、冷却液の貯留容器(クーラントタンク)からのポンプ吐出圧や、その他の流路における冷却液の流路内に圧力測定手段(圧力センサ等)を配設し、計測して、その圧力情報の変化を検出することも考えられる。なお、圧力計測手段から得られた圧力情報の変化を検出し、検出された圧力又は各検出位置における圧力の差分が予め設定された閾値を超えた場合を異常として検出することができる。
【0037】
また、本冷却液良否検出システムでは、上記度計測手段からの温度情報及び/又は各温度情報の差分に対して、前記濃度計測手段や、前記不純物検出手段、前記圧力計測手段からの情報を、組み合わせてモニタリングすることができる。
【0038】
また、金属加工装置の加工中の加工ツール内部に設けた温度計測手段で計測した温度情報を、組み合わせて、それぞれの情報から加工ツールの加工点近傍の温度を推測する、こともできる。具体的に金属加工装置の加工中の加工ツール内部に設けた温度計測手段とは、金属加工装置の加工ツールの内部に設けられた加工ツールの温度、振動、及び/又はひずみの加工状態のリアルタイム測定部を有し、前記リアルタイム測定部の測定結果を加工ツール又は加工ツールを把持するツールホルダの内部に設けられた電子基板で受信し、外部送信する、加工ツール測定装置である。
【0039】
その他、本冷却液良否検出システムでは、温度、濃度、不純物、圧力、pHの検出以外にも冷却液の性能低下の原因となる要因として、冷却液の動粘度、色調、透明度、濁り、電導度などが挙げられる。現状、いずれの要因も個々の金属加工装置、加工条件ごとの評価はされておらず、冷却液メーカから提供される標準的な情報や現場オペレータの経験則に頼っているところである。このような他の要因の計測も本冷却液良否検出システムには組み合わせて、無線で外部送信し、集中的にモニタリングすることができる。
【0040】
この場合、従来の出願人が提供してきた加工ツールそのものの加工中の所定時間ごとの温度変化の計測データと、本システムの冷却液の温度・濃度等変化のデータとの相関を分祈することで、加工ツールの加工精度に影響する情報を総合的に解析することができ、加工能率の向上を図ることができる。
【0041】
また、冷却液良否検出システムは、金属加工装置の加工ツールの内部に設けられた加工ツールの温度、振動、及び/又はひずみの加工状態のリアルタイム測定部を有し、前記リアルタイム測定部の測定結果を加工ツール又は加工ツールを把持するツールホルダの内部に設けられた電子基板で受信し、外部送信する、加工ツール測定装置(情報端末)を備えることができる。
【0042】
上記本冷却液良否検出システムに、金属加工装置の動作中の加工ツールの温度を直接計測し常時モニタリングする装置と組み合わせると、さらに有効である。加工中の加工ツールの温度変化と、これを冷却する冷却液の性能との関係をリアルタイムで分析・管理することができ、加工精度の向上、加工ツールの破損の事前防止などに役立つこととなる。
【0043】
また、本冷却液良否検出システムは、金属加工装置の動作中に加工ツールを冷却する冷却液の供給流路内の冷却液を分取して、該冷却液の動粘度、色調、透明度、濁り、電導度を計測可能な計測手段を備え、該計測手段からの情報を上記温度計測手段と、上記濃度計測手段、及び/又は上記不純物量検出手段、及び/又は上記圧力計測手段と、からの計測情報とともに情報端末から外部サーバに送信する計測情報送信手段を備えることができる。
【0044】
この冷却液良否検出システムを用いた冷却液管理システムとして、計測情報送信手段からの計測情報を受信して各金属加工装置ごとに予め設定された1つ以上の情報端末に送信する端末送信手段と、前記計測情報送信手段から受信した計測情報のうちいずれか1つ又は複数の計測情報が、予め設定された閾値又は数値範囲を超えるか否か判定する判定手段とを備え、該判定手段により閾値又は数値範囲を超えたと判断されたときに、警告情報を外部サーバから前記情報端末に送信する警告送信手段と、を備える例が提供される。
【0045】
一例として前記計測情報送信手段から受信した計測情報のうちいずれか1つ又は複数の計測情報が、前記判定手段により閾値を超えた又は数値範囲外になったと判定されたときには、自動的に溶剤を前記貯留容器内に供給し、前記判定手段により閾値を超えていない又は数値範囲内になったと判定されたときには、自動的に溶剤の供給を停止する場合がある。
【0046】
他の例として、表示された計測情報をユーザが見ながら、前記計測情報送信手段から受信した計測情報のうちいずれか1つ又は複数の計測情報が、前記情報端末から供給指令情報を受信すると溶剤を前記貯留容器内に供給することもできる。
【0047】
上述するように冷却液管理システムは、冷却液(水溶性切削油(クーラントあるいは冷却液))の液寿命を延長し、かつ好適な状態に保つためのものである。上述してきた冷却液良否検出システムでは、冷却液の濃度、pH、温度履歴、循環系内の循環ポンプでの吐出圧の変化、不純物量の計測のほか、冷却液の動粘度、色調、透明度、濁り、電導度を常時計測することができる。この冷却液良否検出システムを用いた冷却液管理システムでは、管理者が所持または使用契約(レンタル)する情報端末(Cloud型サーバ)へ計測結果を常時送信しながら、測定結果のうち、少なくとも一つが所定の範囲(閾値)を逸脱した場合に警告を発するソフトウェアと、冷却液の定常状態を調整するための溶剤(薬剤の場合も含む)を貯留容器(クーラントの貯留槽)へ自動供給し、計測結果に応じて、冷却液の諸計測値が所定範囲内におさまるように、外部サーバで集中管理して自動供給動作を遠隔制御することができる。なお、pHの変化を追跡するにあたり、冷却液の使用環境の計測値に、外気温の情報を計測・外部送信するシステムの追加も考えられる。
【発明の効果】
【0048】
以上、本発明の冷却液良否検出システムによれば、個々の金属加工装置における加工ツールの冷却液を供給する流路での冷却液の温度や濃度、不純物量等を計測し、外部に無線送信し、モニタリングすることができ、複数の金属加工装置ごとに計測しても外部で集中的にモニタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の冷却液良否検出システムを用いる金属加工装置の一例としての切削装置の斜視図を示している。
図2】切削装置の加工ツールに対する冷却液の供給経路を示す流路図である。
図3】測定された温度、濃度、不純物量について外部ユニット16に送信されるまでの電気信号のフローを例示説明する。
図4図1図3の切削装置での冷却液の温度と濃度の計測による異常検出を示すフロー図例が示されている。
図5図4同様、切削装置での冷却液の温度と濃度とpHの計測による異常検出を示すフロー図例が示されている。
図6】実際に加工時の所定時間ごとに温度計測、濃度計測を行い、無線送信デバイスで送信された温度・濃度データを記憶・演算装置19のディスプレイ(出力装置)で表示したグラフ図の例が示されている。
図7】複数の加工装置それぞれ(左端列のI Pアドレス機械No. 、及び機械名参照)に対する温度閾値(℃)の入力テーブルが示されている。
図8】本冷却液良否検出システムと組み合わせる加工ツール測定装置におけるツールホルダユニットの縦断面図を示している。
図9】異なる複数工場内の切削装置を外部サーバ(Cloud型サーバを含む)を介して集中管理する冷却液良否管理システムの構成図例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0050】
《切削装置例の概説》
図1は、本発明の冷却液良否検出システムを用いる金属加工装置の一例としての切削装置100の斜視図を示している。切削装置100は、概ねツールホルダ把持部105と、被加工部材設置面102aと、ワークステージ102と、ヘッド支台108と、ヘッド107と、操作盤106と、を備えて構成される。なお、図1に示していない参照番号の部材は後述する図2等を参照する。
【0051】
まず、ツールホルダ把持部105に加工対象となる被加工部材109(図2参照)に回転当接(当接方向=矢印Z方向、回転方向=矢印Zの軸周り方向)させるドリル等の加工ツール110(図2参照)を把持させたツールホルダ104を装着する。これによりツールホルダ把持部105とツールホルダ104及び加工ツール110は一体に回転することとなる。また、被加工部材109は、基台103上をX方向に移動するワークステージ102の上面の被加工部材設置面102aに載置され、固定用クランプ(図示せず)や固定用ポルト(図示せず〉等を用いて固定される。
【0052】
オペレータは、操作盤106を操作し、ワークステージ102をX方向へ移動させ、被加工部材が所望の接合位置直上に加工ツール110が位置するところで停止・位置決めする。次に、被加工部材上に停止・位置決めされた状態で操作盤106を操作して、加えてツール110を下降させ被加工部材に当接させ、切削部に当接しながら回転させ、加工方向に繰り返し移動させる。オペレータは操作盤106で予め加工ツール110に付与する荷重や、加工ツール110の加工速度や1回あたりの切削距離、加工ツール110の回転速度等の各パラメータを入力し、切削条件を設定する。
【0053】
操作盤106での設定が終了すると、被加工部材上で加工ツール110を回転させて設定した各パラメータに従って、ヘッド107をZ方向下方へ移動させ、被加工部材109の切削開始点で加工ツール110を当接する。また、図1の例ではY方向の移動についてはヘッド支台108を設定した移動速度でY方向に移動させることで行う。なお、図1の例では、X方向の移動をワークステージ、Y方向の移動をヘッド支台108、Z方向の移動を主軸101で行う切削装置100が示されているが、X方向の移動やY方向の移動をワークステージ102で行う装置の場合もある。所望の切削が達成された後、加工ツール110の回転を維持させながらヘッド107をZ方向上方へ移動させ、切削終了点から加工ツール110を引き抜いた後にその回転を停止させる。この工程により切削加工が終了する,
【0054】
≪加工装置でのクーラントの流路例について》
続いて、図1の切削装置100の加工ツール110に対する冷却液(以下、「クーラント」とも称する)の供給経路について図2を参照して説明する。なお、ここでクーラントとは、切削箇所に対する潤滑機能や冷却機能等を有する切削液(水溶性切削油)である。図2に示すように、切削装置100は、クーラントが貯留されるタンク112と、タンク112内に設置されるポンプ114とを有している。また、切削装置100は、複数の電磁弁116,118,120等によって構成されるバルブユニット(クーラント供給部)122を有している。バルブユニッ卜122は、ポンプ114の吐出ポート(出力ポート)に接続される入力流路124を有している。入力流路112は、ポンプ114の吐出ポート直後の吐出流路124aにはリリーフ弁126が接続され、リリーフ弁126にはバルブユニット122に入力される余剰流量(これは、ポンプ114からの流量から、パルプユニッ卜122に必要な流量を差し引いた流量に等しい)をタンク112内に戻すドレン流路129に接続されることで、バルブユニット122に入力される流量を制御している。
【0055】
また、リリーフ弁126を通過した入力流路112には、第1供給経路130、第2供給経路132および第3供給経路134が接続されている。それぞれの供給経路130、132、134は、チェック弁136、138、140、電磁切替弁116、118、120および絞り弁142、144、146によって構成されている。第1供給経路130に接続される出力流路148は、クーラントを噴射する噴射ノズル(噴射手段)154に接続されている。同様に、第2供給経路132、に接続される出力流路150は、ヘッド107 (やヘッド支台108)およびツールホルダ把持部105、ツールホルダ104内に形成される接続流路150を介して、回転工具等の加工ツール110に接続されている。加工ツール110は上端から下端までの貫通孔(オイルホール:図示せず)が設けられており、接続流路150と連通している。また、第3供給経路134に接続される出力流路152は、同様にヘッド107等およびツールホルダ把持部105内(又はツールホルダ104内)に形成される接続流路152を介してツールホルダ把持部105(又はツールホルダ104)の下端のポート(図示せず)まで接続している。
【0056】
バルブユニッ卜122の電磁弁116,118,120の作動状態を制御するため、切削装置100にはCPU、メモリおよび駆動回路等からなる制御ユニット160が設けられている。制御ユニッ卜160は、所定の制御プログラムに沿って電磁弁116,118、120を連通状態または遮断状態に制御する。第2供給経路132、第3供給経路134の電磁弁118、120が連通状態に切り替えられると、ポンプ114から吐出されるクーラントは、第2供給経路132、第3供給経路134から接続流路150、152を経て、加工ツール110の内部又は外部から加工ツール110に供給される。一方、第2供給経路132、第3供給経路134の電磁弁118、120が遮断状態に切り替えられると、第2供給経路132、第3供給経路134においてクーラントが遮断される。
【0057】
このように、第2供給経路132を連通する状態(第1状態)にバルブユニッ卜122が制御されると、クーラントが加工ツール110内を通過して下端のクーラント穴から放出される。また、第3供給経路134を連通する状態(第2状態)にバルブユニッ卜122が制御されると、ツールホルダ把持部105内(又はツールホルダ104内)をクーラントが通過して下端のクーラント穴から加工ツール110に噴射される。一方、第2供給経路132、第3供給経路134を遮断する状態にバルブユニット122が制御されると、前記それぞれのクーラント穴からのクーラントの放出・噴射が停止される。
【0058】
また、第1供給経路130の電磁弁116が連通状態に切り替えられると、ポンプ114から吐出されるクーラントは、第1供給経路130および出力流路148を経て噴射ノズル154に供給される。そして、噴射ノズル154に供給されたクーラントは、被加工部材109や加工ツール110に向けて外部から噴射される。
【0059】
《複数位置でのクーラントの温度、濃度、不純物検出方法》
次に金属加工装置内のクーラントの温度、濃度、不純物量の計測方法について図2の切削装置100の流路図を参照して説明する。図2において、矢印で流路を指している丸囲みA、B、E、Fは、各計測位置(近傍の位置を含む〉を例示している。実際には流路中又は流路を分流(冷却液を分取)して計測するが、ここでは簡略化して示している。丸囲みA、B、E、Fの位置はそれぞれ、クーラントが切削装置100(金属加工装置)内を循環してタンク112に放出される直前の流路の位置、タンク112内の位置、ポンプ114への入力直後の流路124aの位置、ポンプ114への入力後のリリーフ弁126を通過してタンク112にドレンされるドレン流路128の位置、を示している(以下、タンク112内の冷却液計測について丸囲みAの位置での計測で説明する)。このタンク112は既存のクーラントタンクを活用する。温度計測は、代表的には熱電対を用いて行い、熱電対から出力される温度信号をデジタル化して外部送信する。また、濃度計測には、超音波式、フィルタータイプ、分光タイプ、電気伝導率タイプなどがあり、出力信号を外部送信する。
【0060】
また、不純物量の計測は、(1)pH計測、(2)スラッジ密度計測、(3)ポンプ圧計測などにより行っている。
(1)pH計測には、クーラントのpH値の変化量を計測することで不純物の混入量やクーラントの分解量、酸化等による劣化を推定するものであり、メーカ推奨のpH値との差を閾値として良否判定を行う。pH測定法は、概ね指示薬法、金属電極法、ガラス電極法、半導体センサに大別されるが、指示薬法の場合、一例としてはpH試験液を浸す方法であり、劣化限度の想定緩衝液の色を標準色とし実際のクーラントに浸したときの色と比較する視認的な簡易方法である。金属電極法の場合、例えばアンチモン電極法ではアンチモンの棒の先端を磨いて比較電極とともにサンプルのクーラントに浸し、双方の間の電位差からpHを求める方法である。ガラス電極法とは、ガラス電極と比較電極の2本の電極を用いて、この2つの電極の間に生じた電圧(電位差〉を知ることで、クーラントのpHを測定する方法である。さらに、半導体センサの場合、ガラス電極の機能を半導体チップで実現したものである。本システムでは、初期的には不純物の検出頻度を定期期間ごとの不純物の検出を想定しているため指示薬法でも可能であるが、温度データ等と相まってのクーラント良否判定を行う便宜上、データ集積のしやすさを考慮すると、他の方法、特に半溥体センサが好適に採用される。
【0061】
(2)スラッジ密度計測は、クーラントを濾過フィルタに通過させて、所定時間ごとにフイルタに溜まった切削くず等のスラッジ量を単位面積当たりで計測する方法である。この方法は実際の不純物量を検出する簡便な方法であるが、元来、濾過目的のフィルタ119(図示せず)を活用できる点で丸囲みAのタンク112の直前位置での検出に適している。
【0062】
(3)ポンプ圧計測で、丸囲みAの位置での計測では、クーラント内の不純物量が増加すると冷却液中のスラッジ成分が増加し比重が高まるため、冷却液の吸上げと送液効率が低下し、ポンプ圧が減じてくるという現象が発現するので、この変化を活用し、所定の閾値のポンプ圧を設定しておき、計測されたポンプ圧からクーラントの良否を検出する。その意味で、ポンプ圧を計測するためには、丸囲みAの位置での計測が最適である。
【0063】
丸囲みB、C、D、G、Hの位置での計測については温度、濃度、不純物量計測のうち、特に温度計測位置として選択可能な位置であり(上述するように別途、丸囲みA,B、E,Fの位置のいずれか1つはタンク112周りの計測位置として必須である)、ここでは温度計測を中心に言及する。上述するように丸囲みFの位置は、ポンプ114の出力直後の流路124(124a)であり、丸囲みBの位置は、リリーフ弁126により切削装置100内に所望されるクーラントの余剰流量がタンク112内にドレンされる流路128である。また、不純物量の計測をポンプ圧の減圧量(差圧)で検出する方法を採用する場合には、B位置での計測との相性が良い。
【0064】
また、上述するように丸囲みCの位置は、加工ツール110や被加工物109の近傍にクーラントを噴射するノズル154への直前流路148である。この位置での温度は、実際に加工ツール110等に噴射されるクーラントの温度を計測したものである点で、後述する加工ツール測定装置(図8参照)における加工ツール110内の温度計測技術と組み合わせて加工精度担保の評価として活用する場合に相性が良好である。また、丸囲みHの位置は、流路148、150、152からクーラントが加工ツール110に放出・噴射されて冷却された後にタンク112までクーラントを回収する流路153の途中位置である。すなわち、位置Cでの測定温度は加工ツール110等を冷却する前の温度であり、位置Hでの温度は冷却処理後の温度であるため、両位置C、Hの温度差の変動はクーラントの冷却性能を表しているものと言える。このため位置Cと位置Hとの2ケ所で計測すれば、その差をクーラントの良否判定に活用することができる(図5のフロー図で後述)。
【0065】
丸囲みD、Gは切削装置100の主軸側から加工ツール110にクーラントを供給する流路に設けられ、具体的に丸囲みDの位置は、上述するように加工ツール110内部の貫通孔と連通して加工ツール110を直接内部にクーラントを供給する流路150の途中位置であり、丸囲みGの位置は、ツールホルダ把持部105(又はツールホルダ104)の下端のポート(図示せず)までの流路152の途中位置である。主軸側から加工ツール110にクーラントを供給する装置の場合にはこの流路も位置Cでの計測と同様に、後述する加工ツール測定装置(図8参照)における加工ツール110内の温度計測技術との組み合わせや、位置D、Gと位置Hとでの温度差をクーラントの良否判定に活用できる点で有利である。
【0066】
≪加工ツール測定装置からの測定情報との組み合わせについて≫
ここで上述した加工ツール測定装置(図8参照)における加工ツール110内の温度計測技術と組み合わせることも可能である。図8(a)には加工ツール110の温度、振動、歪等を測定する加工ツール測定装置としてのツールホルダユニット104の縦断面図を示している。図8では紙面上方を金属加工装置(切削装置)100の主軸101側とし、下方が加工ツール(切削工具)110側とする。ツールホルダユニット104は、ツバ部104hより上方で主軸101に入れ子状に挿入・把持されて協動回転する。また、ツールホルダユニット104の内部は中空であり下部で図8(b)に示すような切削工具110を把持するチャック104cが固定されている。
【0067】
チャック104cの上方には部品配置用の空隙104iが設けられ、この空隙104iに電池104bが配設されている。この電池104bは充電式でもよい。温度を計測する熱電対やサーミスタ、振動を計測する加速度センサ、歪を計測するひずみゲージ等の各種センサからのデータは空隙104iに配設された制御基板104gでA/D変換されて、貫通孔を介して接続しているツールホルダ本体104aの外周囲の無線送信デバイス104eから送信される。なお、各種センサからのデータはツールホルダ本体104aの外周部の制御基板でA/D変換されても良い。
【0068】
切削工具110は図8(b)のO-O線でチャック104cの下端(図8(a)のO-O線)で固定される。切削工具110には、回転軸線方向に上端から下端に穴あけ加工が施され、半貫通孔110aが形成される。この半貫通孔110aは、空隙104iと連通する同軸状の孔である。半貫通孔110aの下端には、温度センサとして例えば熱電対111が装着され、熱電対111に接続した電導線113が空隙110iまで繋がり、制御基板104gに接続する。また、切削工具110の振動検出には例えば空隙110iに設けた加速度センサを用いて計測する。
【0069】
《外部送信について》
次に図2の丸囲み位置A~Hのいずれか又は複数個所で計測された温度情報、濃度情報、不純物量情報の加工装置100外部への送信について説明する。図3では計測された温度、濃度、不純物量について外部ユニッ卜16に送信されるまでの電気信号のフローを例示説明する。この例では、概ね温度計測手段10、濃度計測手段11、不純物量計測手段12、から電気信号の流れを示している。なお、温度計測手段10、濃度計測手段11、不純物量計測手段12からの信号は、デジタル信号化して出力される例で示している。例えば、クーラント内の不純物量を上記スラッジ密度で計測した場合や、濃度を指示薬法で計測する場合のように視認的な検出をしたり、付属の冷却装置でデータを抽出したような場合やクーラントをタンク112から別途汲み上げてオペレータによるデータ入力をしたような場合には、図3のブロック図における濃度計測手段11、不純物量計測手段12が削除されて、別途データを外部ユニット16に入力されることもある。
【0070】
なお、図3での温度計測手段10は、代表的には熱電対を用いて電位差増幅器やA/D変換器を介してデバイス内の制御回路によりデジタル信号を出力する温度受信部である。また、温度計測手段10、濃度計測手段11、不純物量計測手段12からの出力信号は、切削装置100が備え付けた又は有線接続された送信部13のコントローラ14が受信し、無線送信デバイス15で外部に無線送信される。
【0071】
また、無線送信された温度情報及び濃度情報、不純物量情報の出力信号は、外部ユニッ卜16の無線受信デバイス17で受信される。図3中の破線で示す無線送信デバイス15・無線受信デバイス17間の無線通信規格は、Wi-Fi (Wireless Fidelity)、Bluetooth (ブルートゥース)、無線LAN (Local Area Network)、及び、ZigBee (ジグビー)等を使用することが可能である。外部ユニット16は無線受信デバイス17を含むノー卜パソコン等の記憶・演算装置19の例も考えられるが、図3の例では別途専用の無線受信デバイス17を設置し、これとUSBポートで有線接続し、記憶・演算装置19で信号受信される。そして、ディスプレイやプリンタ等の出力装置20で画像表示、印刷等される。
【0072】
また、図示しないが上述する図8の加工ツール測定装置を組み合わせる場合、ツールホルダ本体104aの外周囲の無線送信デバイス104eから送信される加工ツール(切削工具)110の温度、振動、歪の計測データの出力信号を、図3の外部ユニット16の無線受信デバイス17で受信し、記録・演算装置19に送信し、これらのデータを出力装置19で同時に画像表示等するすることもできる。
【0073】
図3のように計測データを無線通信機器を使用して送信すると、複数の切削装置100のクーラント情報を1つの外部ユニット16で集中的に管理・分析することも容易にしている。なお、図3では複数の切削装置100のクーラント情報をWi-Fi等で外部ユニット16に直接送信する例が示されているが、異なる環複数工場内の切削装置100を外部サーバ(Cloud型サーバを含む)を介して集中管理する例が図9に示されている。詳細には後述する。
【0074】
《温度・濃度による異常検出フロー》
図4は、図1図3の切削装置100でのクーラン卜の温度と濃度の検出による異常検出を示すフロー図例が示している。異常検出は図3の記憶・演算装置19で行う。まず、本システムでの検出が開始されると(STEP10)、各切削装置100においてクーラン卜の冷却性能低下の限界点と判断される最高温度(閾値)tmax (上死点)を設定する(STEP11)。最高温度tmax (上死点)は、各計測位置A~Hやメーカ推奨温度、加工条件によって設定される固定の温度であっても良く、初期温度t0からの限界上昇温度Tを加算した温度(=t0
+ T)を閾値tmaxとしても良い。
次に、クーラントの濃度闕値cmin (下死点)、cmax (上死点)を設定する(STEP12)。その後、加工中のクーラント温度tを所定時間ごとに計測する(STEP13)。また、濃度cも計測する(STEP14) 。STEP14の濃度計測は温度計測よりも時間を空けた計測であっても良い(この点は図5のフロー図で説明する)。
【0075】
次に、STEP13で計測した温度tが閾値温度t maxより高いか否かの判定を行う(STEP15)。その結果、高い場合はクーラント冷却性能が低下したとして異常検出の警告等を行う(STEP16)。温度閾値で異常検出しない場合にはSTEP14で濃度計測したcがcmin~cmaxの範囲内か判定を行う(STEP17) 。範囲外の場合には異常検出の警告等を行う(STEP16)。そして、異常を検出しない場合には再びSTEP13に戻って加工中に継続的に繰り返しSTEP13~STEP17を行う。図4では図示しないが、異常検出した場合には自動的にタンク112へ溶剤の供給を行いSTEP13~STEP17を継続して異常検出されないとろこまで溶剤供給を行い、異常検出されなくなった場合には溶剤の供給を停止する制御を追加することも可能である。なお、図4の例を位置A~Hの複数位置でそれぞれ実行すると、より精度の高いクーラント評価を行うことができる。この場合、位置A~Hそれぞれの温度が所定の閾値を超えるか否かの異常検出の他に、各位置個々の温度が切削装置100の作動時間の経過とともに所定時間ごとに変化する温度(同位置における経時的な温度の差分)を検出し、この変化量により異常検出を行うことも考えられる。切削装置100を長時間動作させるときに動作が進行するにつれてクーラントの冷却性能が低下する場合を検出し、長時間連続動作中に切削工具110が破断等するリスクを事前に回避することができる。
【0076】
《複数計測位置での温度・濃度・不純物量の差分による異常検出フロー》
図5は、図4同様、切削装置100でのクーラントの温度と濃度と不純物量の検出による異常検出を示すフロー図例が示している。この図例では図4と異なり、2か所の計測位置(例えば図2の位置A、C)での温度情報に基づく判定と、不純物量の計測からの判定とが含まれている。まず、本システムでの検出を開始すると(STEP20)、ノズル154から噴射される位置 (位置C)のクーラントの温度tCとタンク112への排出口近傍の位置A(又は回収流路153の位置H(図5では位置Aで説明))のクーラントの温度tAとの温度差Δtの限界点Δt min(下死点〉、Δtmax (上死点)を設定する(STEP 21)。温度差Δtは、ノズル154から加工ツール110近傍に噴射され、加工ツール110や被加工物109が冷却されたことによりクーラント液温が上昇したことを示す値(温度差)であり、この値が所定範囲内であれば冷却性能が高いクーラントであると言える(温度差により加工ツール等の熱膨張度がわかり、連続加工精度を検知できる),したがって、クーラントの性能低下の限界点を限界温度差Δtmin~Δtmaxとして予め設定できる。
【0077】
次に、クーラントの濃度閾値cmin (下死点)、cmax (上死点)を設定し(STEP22)、不純物量の検出としてpH値の闕値αmin (下死点)、αmax (上死点)を設定する(STEP23)。その後、加工中の位置Aと位置Cでのクーラント温度tA、tCを所定時間ごとに計測する(STEP 23)。また、濃度c、pH値αも計測する(STEP24)。前述するようにSTEP23、STEP24での濃度計測、pH値の計測は温度計測より時間を空けて計測しても良く、定期的に計測すれば足りるため所定の更新時期が来るまでは新たに計測する必要がなく(STEP25)、更新時期が来ると新たに計測し直して更新する(STEP26、STEP27)。
【0078】
その後、STEP24で計測した温度差Δtが閥値温度Δtmin~Δtmaxの範囲内か否かの判定を行う(STEP28)。その結果、範囲外の場合はクーラント冷却性能が低下したとして異常検出の警告等を行う(STEP31)。温度閾値で異常検出しない場合には、STEP26で濃度計測・更新したcが、cmin~cmaxの範囲内か判定(STEP29)や、STEP27でpH値計測・更新したαが、αmin~αmaxの範囲内か判定(STEP30)を行い、範囲外の場合には異常検出の警告等を行う(STEP31)。そして、異常を検出しない場合には再びSTEP24に戻って加工中にわたって繰り返しSTEP24~STEP30を行う。
【0079】
なお、図5の例では、最も図2の位置A(又はH),Cの温度及び濃度計測データの差分からクーラントの異常検出しているが、他の位置での差分からの異常検出と組み合わせても良い(位置的な差分)。例えば、(1)タンク112への入力側として位置A(タンク112への排出口近傍)や位置E(タンク112内)や位置H(回収流路152)と、タンク112からの出力側としての位置B(ポンプ114からの出力直後の流路124a)や位置F(リリーフ弁からのドレン側の流路128)と、の温度差の変化、(2)位置D(主軸からと切削工具110内への流路150)と位置G(主軸から切削工具110の外部への流路152)との差分、等から異常検出を実行することもできる。
【0080】
なお、上記図4図5では、温度、濃度データ、pH値から異常検出フローの例が示されているが、その他、各位置A~Hにおける循環系内の循環ポンプでの吐出圧データ、不純物量データの計測のほか、冷却液の動粘度、色調、透明度、濁り、電導度、等から異常検出することも考えられる。
【0081】
さらに図9では、異なる環複数工場内の切削装置100を外部サーバ(Cloud型サーバを含む)を介して集中管理する冷却液良否管理システムの構成図例が示されている。図9中の切削装置100の無線送信デバイス15は、図3における無線送信デバイス15と同じである。この冷却液良否管理システムは概ね、切削装置100と、管理装置1(外部サーバ)と、ユーザ所有の情報通信端末5(モバイル型を含む)との3つで構成される。管理装置1と切削装置100とは、無線送信デバイス15から基地局6を中継し、インターネット2を介して接続されている。管理装置1と情報通信端末5とは、基地局7を中継し、更にインターネット又は携帯電話通信網4を介して情報通信を可能とする。ただし、管理装置1と切削装置100及び情報通信端末5との情報通信は、例えば、日本における携帯電話の通信方式である3Gや4G方式での接続を想定したものであり、基地局6、7をいわゆるアクセスポイント又は無線ルータに置き替えて無線接続としてもよいし、情報通信端末5がパーソナルコンピュータ等である場合は有線又は無線のLAN等による接続としてもよい。
【0082】
管理装置1は、クーラントの温度情報等、種々の計測データ管理や計算、そして分析を行うためのアプリケーションソフトウエア部と、種々の計測データの保管を行うデータベース部と、通信部14と、から構成される。アプリケーションソフトウエア部には、切削装置管理アプリケーションソフトウエア1a、異常分析アプリケーションソフトウエア1b、配信アプリケーションソフトウエア1c、溶剤供給アプリケーションソフトウエア1hを備えており、データベース部には、切削装置データベース1d、ユーザデータベース1e(図示せず)、閾値データベース1f、位置データベース1g、溶剤データベース1iを備えている。但し、しかしながら、構成は必ずしも物理的に独立した機器構成を限定するものではなく、一つの機器が上記のうち複数の機能を兼ね備えるものであってもよい。
【0083】
切削装置100から送信された計測データは管理装置1の通信部1jから管理アプリケーション1aに送信される。管理アプリケーションソフトウエア1aでは切削装置データベース1dから計測データに応じた切削装置1dを読み込んで該当する切削装置データと計測データとを配信アプリソフトウエア1cにより通信部1jを介して計測データ信号をインターネット等4に送信する。また、管理アプリケーションソフトウエア1aは常時、計測データを異常分析アプリケーションソフトウエア1bに計測データを送信し、異常分析アプリケーションソフトウエア1bは閾値データベース1fから切削装置に応じた閾値又は数値範囲を読み込んで計測データが異常値か否かを分析し、異常検出された場合には、配信アプリケーションソフトウエア1cによって通信部1jから異常検出信号をインターネット等4に送信する。
【0084】
異常検出された場合には、異常分析アプリケーションソフトウエア1bが管理アプリケーションソフトウエア1aを介して溶剤アプリケーションソフトウエア1hを起動して、溶剤アプリケーションソフトウエア1hが切削装置に応じた溶剤(量や濃度)を溶剤データベースから読み込んで管理アプリケーションソフトウエア1a、通信部1jを介してインターネット2に溶剤放出信号を送信する。溶剤放出信号がインターネット2に送信されると基地局6を中継して各切削装置100の無線受信デバイス100aに送信され、各切削装置100のタンク112に必要量の溶剤が供給される。このとき溶剤供給アプリケーションソフトウエア1hは同時に配信アプリケーション1c、通信部1jにより溶剤供給信号をインターネット等4に送信して携帯通信端末5にも情報送信する。
【0085】
なお、溶剤の供給は溶剤供給アプリケーションソフトウエア1hで対応する本切削装置100に必要な溶剤量を決定する場合や、異常分析アプリケーションソフトウエア1bによる異常検出が終了するまで溶剤を供給するリアルタイム制御の場合が考えられる。異常検出が終了した場合には、溶剤供給アプリケーションソフトウエア1h、管理アプリケーションソフトウエア1aを介してインターネット2に溶剤供給停止信号を送信し、切削装置100の溶剤供給を停止する。このとき同時に溶剤供給アプリケーションソフトウエア1hが配信アプリケーション1e、通信部1jを介して溶剤供給停止信号をインターネット等4に送信して携帯通信端末5にも情報送信する。
【0086】
情報通信端末5は多機能モバイル端末(多機能携帯電話(スマートフォン)も含む)を想定しており、通信部5a、制御部5b、記憶部5e、ディスプレイ5dを備えている。管理装置1から送信された信号(計測データ信号、異常検出信号、溶剤供給信号等)は、通信部5aで受信される。また記憶部5eは、オペレーションシステム(以下、「OS」とも称する)5fを記憶して、プロセッサとして機能する制御部5bにより情報通信端末5を制御している。
【0087】
記憶部5eは、OS5fのほか、管理装置1との情報通信管理や計測データの画像表示を行うアプリケーションソフトウエア5hと、画像データセット5gを記憶することが可能である。しかし、記憶部5eは一般的なフラッシュメモリ等に限定されるものではなく、OS5fにおいても制御部5bに載置されたメモリに記憶されてもよい。画像データセット5gは、複数のグラフ画像データや異常検出表示データ、溶剤供給画像等から成り、管理装置1から送信された信号から制御部5bが記憶部5eのアプリケーションソフト5hを起動して画像データセット5gから読み込まれたデータを合成してディスプレイ5dに計測データを表示する。
【0088】
なお、管理装置1との情報通信管理や計測データの画像表示を行うためのアプリケーションソフトウエア5hは、ユーザが予め情報通信端末5にインストールしていることが前提となる。また、上記管理装置1ではクーラントの異常が検出されたときに溶剤を自動的にタンク112に供給する例を示しているが、計測データを確認しながらユーザが携帯通信端末上に指示することにより溶剤供給を実行する例も考えられる。
【0089】
このような冷却液管理システムを採用すると、図3のように複数の切削装置100のクーラント情報をWi-Fi等で外部ユニット16に直接送信する例よりも発展し、遠隔地等異なる複数工場内の切削装置100を外部サーバ(Cloud型サーバを含む)を介して集中的に管理・分析することができる。
【0090】
《実施例》
図6図7には実際に加工時の所定時間ごとに温度計測、濃度計測を行い無線送信デバイス15で送信された温度・濃度データを記憶・演算装置19のディスプレイ(出力装置)20で表示したグラフ図の例が示されている。図6の上段にはクーラントの濃度計測値(重量%)を縦軸、計測時間を横軸に示している。また、図6の下段にはクーラントの温度計測値(℃)を縦軸、計測時間を横軸に示している。上下段ともにタンク112内(図2の位置A)での計測結果を示している。なお、図6のグラフ図は複数の加工装置のうち1つの加工装置における所定時間ごとに計測したデータを示している(ここでは各加工装置ごとの無線装置デバイス15に割り当てられたIPアドレス192.168.11.136を参照している状態を示した)。
【0091】
また,図7には複数の加工装置それぞれ(左端列のI Pアドレス機械No. 、及び機械名参照)に対する温度閾値(℃)の入力テーブルが示されている。このテーブルに各加工装置ごとの温度計測情報が逐次、更新されていくことが理解されよう。したがって、1つの記憶・演算装置19で複数の加工装置のクーラント良否の温度情報が集中管理されることがわかる(濃度テープルも同様であるが、ここでは図示を省略する)。
【符号の説明】
【0092】
10 温度計測手段
11 濃度計測手段
12 不純物量計測手段
13 送信部
14 コントローラ
15 無線送信デバイス
16 外部ユニッ卜
17 無線受信デパイス
18 シリアルUSB変換器
19 記録・演算装置
20 出力装置
100 切削装置
101 主軸
102 ワークステージ
102a 被加工部材接地面
103 基台
104 ツールホルダ
105 ツールホルダ把持部
106 操作盤
107 ヘッド
108 ヘッド支台
109 被加工部材(ワーク)
110 加工ツール
112 貯留容器(タンク)
114 ポンプ
116、118、120 電磁弁
122 バルブユニット(クーラント供給部)
124 入力流路
124a 吐出流路
126 リリーフ弁
128 ドレン流路
129 フィルタ(濾過手段)
130 第1供給経路
132 第2供給経路
134 第3供給経路
136, 138,140 チェック弁
142,144,144 絞り弁
148,150,152 出力流路(接続流路)
154 噴射ノズル(噴射手段)
160 制御ユニット


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9