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  • 特許-静電容量測定によるモータの位置決め 図1A
  • 特許-静電容量測定によるモータの位置決め 図1B
  • 特許-静電容量測定によるモータの位置決め 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】静電容量測定によるモータの位置決め
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20220527BHJP
   H02K 11/21 20160101ALI20220527BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20220527BHJP
   G01P 13/00 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
G01D5/245 C
H02K11/21
G01D5/244 C
G01D5/245 110K
G01P13/00 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020519395
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2018080792
(87)【国際公開番号】W WO2019092192
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-04-28
(31)【優先権主張番号】102017126271.7
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ エーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーニ ホーファン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-271092(JP,A)
【文献】特開2001-27547(JP,A)
【文献】特開平10-122809(JP,A)
【文献】特表2001-517314(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005046099(DE,A1)
【文献】特開平7-59369(JP,A)
【文献】特開2014-115251(JP,A)
【文献】特開2016-118559(JP,A)
【文献】特表2013-516616(JP,A)
【文献】米国特許第5497084(US,A)
【文献】特開2016-114559(JP,A)
【文献】特開2017-96861(JP,A)
【文献】特開2017-72468(JP,A)
【文献】特開2010-164553(JP,A)
【文献】米国特許第5598153(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0271050(US,A1)
【文献】特開2014-126455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01B 7/00-7/34
G01P 3/00-3/80、
13/00-13/04
H02K 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電動で調整可能な装置の電気モータのシャフト(10)の回転位置、速度及び/または回転方向を決定するための測定装置(100)であって、
- それぞれがコンデンサ要素を形成する少なくとも1つの第1電極(20)と少なくとも1つの第2電極(30)であって、前記電極(20、30)が電場(EF)を生成するように電圧が印加され得る電極(20、30)と、
- 回転シャフト(10)であって、真円からのずれを有する測定部(11)を持ち、前記測定部(11)が、前記シャフト(10)の回転が前記電場(EF)を変化させるように前記電極(20、30)に対して配置されるシャフト(10)と、
- 前記電極(20、30)に導電接続され、前記電場(EF)の変化を容量的に捕捉するように設計されている評価ユニット(40)と、
- それぞれが前記第1電極(20)及び前記第2電極(30)を含む少なくとも2つの電極対(91、92)であって、第1の電極対(91)は前記シャフト(10)の回転位置及び/または速度を決定するように設計され、第2の電極対(92)は前記シャフト(10)の回転方向を決定するように設計される、電極対(91、92)と、
- 前記電極(20、30)が配置されるプリント回路基板(50)と、
を備え
前記プリント回路基板(50)は、測定凹部(51)を有し、前記シャフト(10)の前記測定部(11)は、前記測定凹部(51)内に延びていることを特徴とする、
測定装置。
【請求項2】
前記シャフト(10)の前記測定部(11)は、前記シャフト(10)のシャフト軸(12)に関して点対称であるシャフト形状(13)を有することを特徴とする請求項1に記載の測定装置(100)。
【請求項3】
前記シャフト形状(13)は、円周上に分布された、半径方向の測定高度(14)を有することを特徴とする請求項2に記載の測定装置(100)。
【請求項4】
少なくとも2つの測定高度(14)が半径方向に異なる度合いで伸びていることを特徴とする請求項3に記載の測定装置(100)。
【請求項5】
前記シャフト形状(13)は、歯付き形状または多角形形状であり、前記シャフト形状(13)は、2~16の測定高度(14)を有する、請求項3または4に記載の測定装置(100)。
【請求項6】
前記シャフト(10)のシャフト軸(12)は、前記電極(20、30)の中心平面(PM)に平行に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の測定装置(100)。
【請求項7】
前記測定装置(100)は、前記電極(20、30)にDC電圧を供給するように設計されたマイクロコントローラ(70)を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の測定装置(100)。
【請求項8】
前記評価ユニット(40)は、捕捉された測定信号の周波数帯域を通過させるように設計されたフィルタユニット(80)を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の測定装置(100)。
【請求項9】
前記測定部(11)は導電性であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の測定装置(100)。
【請求項10】
前記シャフト(10)は、車両の電動で調整可能な装置のモータ出力シャフトであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の測定装置(100)。
【請求項11】
前記車両の電動で調整可能な装置は、スライディングルーフ、ウィンドウリフター、外部ミラー、シート、コンバーチブルルーフ、またはロック機構であることを特徴とする請求項10に記載の測定装置(100)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の測定装置を用いて、車両の電動で調整可能な装置の電気モータのシャフト(10)の回転位置、速度及び/または回転方向を決定する方法であって、
a)それぞれがコンデンサ要素を形成する少なくとも1つの第1電極(20)と少なくとも1つの第2電極(30)を用意することと、
b)電場(EF)を生成するために前記電極(20、30)に電圧を印加することと、
c)真円からのずれを有する測定部(11)を持つシャフト(10)であって、前記測定部(11)は前記シャフト(10)の回転が前記電場(EF)を変化させるように前記電極(20、30)に対して配置される、シャフト(10)を回転させることと、
d)前記電極(20、30)に導電的に接続された評価ユニット(40)を使用して、前記電極(20、30)に印加される電圧の変化を捕捉することによる静電容量測定により、前記電場(EF)の変化を捕捉することと、
e)前記評価ユニット(40)により、前記電場(EF)の前記捕捉された変化に基づいて、前記シャフト(10)の回転位置、速度及び/または回転方向を決定することと、
を備える方法。
【請求項13】
車両の電動で調整可能な装置の、電気モータのシャフトの回転位置、速度及び/または回転方向を決定するための、請求項1から11のいずれかに記載の測定装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にスライディングルーフ、ウィンドウリフター、エクステリアミラー、シート、コンバーチブルルーフまたはロック機構などの、車両の電動で調整可能な装置の電気モータのシャフトの回転位置、速度及び/または回転方向を決定する測定装置と方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両には、例えばポンプやファンを駆動したり、車両の電動で調整可能な装置、例えばウィンドウリフター、外部ミラー、シートを作動させたりするために、多数の電気モータが取り付けられている。その車両装置を制御するために、今日では、それぞれの駆動モータの回転運動の位置及び速度を自動的に捕捉するための多数のセンサが車両に設置されている。電気モータの駆動シャフトまたは出力シャフトの回転位置及び回転速度を捕捉するための非接触センサは、従来技術から知られている。
【0003】
ホールセンサは、電流が流れ磁場を有するセンサと物理的なホール効果に基づいて相互作用することで、シャフトの回転運動を非接触で捕捉する。磁場は通常、永久磁石、例えばシャフトに取り付けられた磁気ホイールによって生成され、その回転運動が捕捉されることが意図されている。(漸増的な)回転位置と回転速度あるいは速度に加えて、シャフトの回転方向もキャプチャできるようにするために、2つのホールセンサがよく使用される。そのようなセンサ配置は、それらが比較的複雑で高価であるという欠点を有する。モータのホールセンサと磁気ホイールに加えて、別の回路基板に追加の電子部品が必要である。
【0004】
DCモータの回転位置及び回転速度を決定するための非接触の方法もまた、先行技術から知られており、DCモータの電機子を通るリップル電流を捕捉することに基づいている。この場合、モータの回転によって発生する電機子電流の電流リップルは、センサを有しない評価用電子機器によってカウントされる(「リップルカウント」)。この測定方法の欠点は、この方法は特に、必要な測定信号の必要な処理及び評価用電子機器の計算能力に関して、比較的複雑だということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来技術に基づいて、本発明の目的は、シャフトの回転位置、速度及び/または回転方向を決定するための、より簡単な方法で実装することができ、インストールされたコンポーネントに関する費用が少なくて済む測定装置、及びこれに対応する方法を提供することである。特に、本発明の意図は、シャフトの回転位置、回転速度、及び/または回転の方向を、可能な限り費用効果が高く、しかしそれと同時にできるだけ確実かつ正確に決定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、請求項1に記載の測定装置、請求項14に記載の方法、及び請求項15に記載の使用によって達成される。
【0007】
特に、この目的は、シャフト、特に車両の電動で調整可能な装置の電気モータのシャフトの回転位置、速度、及び/または回転方向を決定するための測定装置によって達成され、その測定装置は以下を備える:
- コンデンサ素子をそれぞれ形成する少なくとも1つの第1電極及び少なくとも1つの第2電極であって、電極が電場を生成するように電極に電圧を印加することができ、
- 回転可能シャフト、特にモータシャフトであって、真円からずれている測定部を有し、測定部は、シャフトの回転が電場を変化させるように電極に対して配置され、
- 電極に導電接続され、特に電極に印加される電圧の変化の形で、電界の変化を容量的に捕捉するように設計された評価ユニット。
【0008】
本発明の最も一般的な意味では、真円からのずれとは、測定装置が特定の構成の場合に、真円からのずれの程度が電界に測定可能な変化を引き起こすのに十分な大きさであるとした場合に、シャフトの測定部の外周の、シャフトの軸に垂直な部分の理想的な円形の外周からの偏差として理解されうる。特に、測定部が電極の近くに配置されている状況では、測定部が電極からより遠くに配置されている状況よりも、測定可能な電界の変化には小さな真円からのずれで十分である場合がある。本発明のより狭い意味では、製造のためにほぼ丸いだけである測定部の純粋な製造公差は、本発明による真円からのずれを意味するものとして理解され得ない。真円からのずれは、特に、シャフト軸に対する偏心によって、または回転対称ではない断面を有するシャフト形状によって生成され得る。
【0009】
第1電極及び第2電極は、好ましくは共に、それぞれが電極対、特に、特定の電気容量を有するコンデンサを形成する2つのコンデンサ要素を形成する電極対を形成する。複数の電極対が提供されてもよい。特に、第1電極と第2電極との間には容量結合がある。本発明による電界の変化は、特に、電界で生じた変化がコンデンサの静電容量に測定可能な変化を引き起こすのに十分な大きさである限り、容量的に捕捉することができる。電場は、特に、好ましくは電極の周囲で生成される静電界である。特に、シャフトの回転の結果として、電場の周期的変化、特に変化しない電場を意味すると理解できる基準状態に関しての変化を測定することが可能である。評価ユニットは、特に、捕捉された電場の変化に基づいてシャフトの回転位置、速度、及び/または回転方向を決定するように設計されている。特に、評価ユニットは、シャフトの不均一性によって生じる電場の変化の数、または好ましくは経時的に引き起こされる静電容量の変化を、そこから回転位置または速度または回転速度を計算するためにキャプチャする。評価ユニットは、装置及び/またはプロセス技術を使用して、好ましくは電子及び/または電気部品またはアセンブリを好ましくは備える適切な評価回路を用いて異なる容量性捕捉または測定方法を実施するように設計され得る。
【0010】
特に、電界の変化は、電極に印加される電圧または電圧変化を例えばタッチスクリーンに通常使用される投影型静電容量測定法と同様の方法で捕捉することにより、容量的に捕捉することができる。この場合、例えば電圧パルスの形態の電圧が、特に送信電極またはドライバ電極の形態である第1の電極に印加され得、電圧は、特に受信電極の形態である第2の電極で取り出され得る。この場合、電極によって形成されたコンデンサの静電容量変化は、電場の変化の結果として、好ましくは受信電極で(測定可能な)電圧変化を引き起こす可能性がある。あるいは、電極によって形成されたコンデンサの変化した共振挙動を捕捉することにより、電界の変化を容量的に捕捉することができる。この目的のために、コンデンサをインダクタンスに接続して、共振回路を形成することができる。例えば、好ましくは電極に印加される電圧の周波数シフトまたは位相シフトを捕捉することができる。
【0011】
回転位置は、角度の変化(増分値)と絶対角度(絶対値)の両方を意味すると理解できる。速度に加えて、または速度の代わりに、回転速度を決定することも可能である。シャフトと測定部は、それぞれ1つまたは複数のパーツで実装でき、この場合測定部は、シャフトと1つのパーツで実装するか、回転固定方式で別のコンポーネントとしてシャフトに接続できる。電極は、回転可能なシャフトに対して静止して配置されることが好ましい。電極またはコンデンサ要素は、シャフトまたは測定部の形状に適合させることができる。例えば、電極のコンデンサ要素は、円形セグメントの形態であり好ましくは測定部の円周の半径をほぼ有する断面を有することができる。測定部は、好ましくは導電性であるが、シャフトの回転が電場に(測定可能な)変化を引き起こすことを条件として、原則的に誘電体材料から作製されてもよい。測定装置は、好ましくは、特に少なくとも1つの電極及び/または評価ユニットに導電的に、好ましくは電気的に接続されたマイクロコントローラを備えることが好ましい。評価ユニット及びマイクロコントローラはユニットを形成することができ、その場合、マイクロコントローラを評価ユニットに統合することができ、またはその逆も可能である。評価ユニットは、特に実装されたコンピュータプログラムに基づいて、回転位置、回転速度及び/または回転方向を計算するためのアルゴリズムを実行するように設計することができる。
【0012】
本発明は、シャフトの回転位置、回転速度、及び/またはそれらから回転方向を決定するために、シャフトの回転によって引き起こされる電界の変化を容量的に捕捉するという考えに基づいている。シャフトに真円からのずれを有する測定部があるという事実により、電場内でのシャフトの回転により、このフィールドに変化が生じる。この変化は、特に、磁力線または電界強度の変化を意味すると理解することができる。特に、真円からのずれが大きくなり真円からのずれが移動する磁力線密度が大きくなるほど、電界の変化が大きくなる。たとえば、シャフトの速度が一定で、シャフトの円周上に真円からのずれが1箇所である場合、たとえば単一の半径方向の測定高度の場合、1回転ごとに電界の1つの変化が発生する。変化は、評価ユニットによって容量的にキャプチャされ、好ましくはカウントされる。シャフトの回転は、好ましくは、電場の周期的変化をもたらす。シャフトの回転速度が増加すると、電場の変化の周波数が増加する。本発明による測定装置は、シャフトの回転位置、速度及び/または回転の方向を、容易に実施できる方法で、非接触で決定することを可能にする。従来技術と比較して、磁気ホイール及びホールセンサを省くことが可能である。回路にほとんど費用をかけずに、電界の変化を容量的に捕捉することも可能である。その結果、測定装置は費用対効果が高く、多数の部品を使用するアプリケーション、特にスライディングルーフ、ウィンドウリフター、外部ミラー、シート、コンバーチブルの屋根またはロック機構など、車両のさまざまな電動式デバイスに使用するのに適している。
【0013】
本発明の1つの有利な発展形態では、それぞれが第1及び第2電極を含む少なくとも2つの電極対が提供され、第1電極対は、特にシャフトの回転位置及び/または速度を決定するように設計され、第2電極対は、特にシャフトの回転方向を決定するように設計されている。測定部の周囲に分散して配置されることが好ましい複数の電極対は、回転位置及び/または速度をより正確に決定できるという利点を有する。第2電極対は、特に、シャフトの回転方向を決定できるという利点を有する。例えば、回転方向は、電場の変化のシーケンスを捕捉することによって決定することができ、その変化は、好ましくは、測定部の同じ不均一性によって引き起こされ、時間的にオフセットされた方法で、2つの異なる電極対によって捕捉される。
【0014】
本発明の1つの有利な発展形態では、シャフトの測定部は、回転対称ではないシャフト形状、特に、シャフト軸に対して点対称であり好ましくは少なくとも1つの、半径方向の測定高度を有するシャフト形状を有する。シャフト形状は、特に、シャフトの断面形状であり、好ましくはシャフト軸に垂直である。シャフトの回転中、シャフト形状は、特に、円周クラウンサークル(大きい半径)と円周ルートサークル(小さい半径)を表す。シャフト軸の周りの任意の所望の回転の間、回転対称ではないシャフト形状は互いに一致することができず、その結果、本発明の意味における不均一性が回転対称性の欠如の結果として存在する。測定部のこのような真円からのずれは、個々の半径方向の測定高さによって、たとえば、半径方向の窪み、半径方向の突起、ノッチ、軸方向の溝、またはねじ、オーバーレイ溶接、フェザーキー、シャフト上にまたはシャフトを介して差し込まれた要素などの偏心的に固定された要素の形で形成できる。複数の半径方向の測定高度も提供され得る。シャフト形状は、例えば、歯付き形状または多角形形状であり得る。シャフト軸に対して点対称のシャフト形状には、シャフトまたは測定部に不均衡がないという利点がある。
【0015】
本発明の1つの有利な発展形態では、シャフト形状は、円周にわたって分布した、好ましくは均一に分布した半径方向の測定高度を有する。そのようなシャフト形状は、シャフトの各回転に対して電界の複数の変化が引き起こされるので、シャフトの回転運動のより高いサンプリング周波数を可能にする。特に、キャプチャされた変更の数は、測定高度の数に対応する。その結果、回転速度及び/または速度が決定される精度は、特に速度が変化するフェーズの間、増加する。
【0016】
本発明の1つの有利な発展形態では、少なくとも2つの測定高度が、半径方向に異なる程度まで延びる。測定高度の終点とシャフト軸の間の距離は、それぞれの場合に異なることが好ましい。特に、異なる測定高度に異なる円周クラウンサークルを割り当てることができる。特に、ただ1つの測定高度が他の測定高度よりも半径方向にさらに伸び得る。これにより、特に、例えば測定エラーまたは外乱変数のために測定高度の1つが捕捉されないか、または数えられない場合に、測定エラーを修正することが可能になる。たとえば、個々の高い測定高度の結果として、キャプチャされた測定信号をシャフトの回転に割り当てることは可能である。それにより、特に回転方向を決定する際に、測定高度について捕捉された変化を電極対に割り当てることのあいまいさも解決することができる。結果として、測定装置の信頼性が向上する。
【0017】
本発明の1つの有利な発展形態では、シャフト形状は歯付き形状または多角形形状であり、シャフト形状は、例えば、好ましくは2~16、より好ましくは2~12、より好ましくは2~8、より好ましくは2~6、例えば2、3、または4の放射状の測定高度を有する。歯付き形状の場合、個々の歯はそれぞれ半径方向の測定高度を形成する。多角形形状の場合、多角形断面のエッジはそれぞれ測定高度を形成する。測定高度の数が多いほど、測定配置のサンプリングまたはキャプチャ周波数(測定周波数)が高くなる。
【0018】
本発明の1つの有利な発展形態では、シャフト軸は、電極の中央平面に平行に、好ましくは電極が配置される電極平面に垂直に配置される。電極平面は、特に電極のコンデンサ要素が延在する平面によって規定され、その平面は例えばプレートの形態または電極パッドの形態で平坦であることが好ましい。シャフトは、電極間に配置するか、電極に対して横方向にオフセットすることができる。
【0019】
本発明の1つの有利な発展形態では、測定装置は、電極と、好ましくは評価ユニットとが配置されるプリント回路基板を含む。プリント基板は、特に電極面を定義する。プリント回路基板は、好ましくは、電極及び好ましくは評価ユニットが固定される電子回路基板の形態であり、好ましくは、導体路によって導電的に互いに接続される。プリント回路基板の結果として、本発明による測定装置を組み立てるために、測定装置を(部分的に)事前に組み立てることができ、シャフトに対して容易に位置決めすることができる。
【0020】
本発明の1つの有利な発展形態では、プリント回路基板は、測定凹部、好ましくは円形の測定凹部を有し、シャフトの測定部は、特に、測定凹部内に延び、好ましくは測定凹部を通って突出する。シャフトの軸は、特に電極面に垂直である。これにより、測定装置の平坦な設計を達成することが可能になる。さらに、電極に対するシャフトの意図された位置決めは、組み立て中に容易に遵守することができる。電極は、測定凹部を超えて、好ましくは測定部に向かって内側に突出することができる。
【0021】
本発明の1つの有利な発展形態では、測定装置は、特に、電極にDC電圧、好ましくはパルスDC電圧を供給するように設計されたマイクロコントローラを備える。一定の脈動DC電圧が、電極の1つ(送信機または駆動電極)に印加されることが好ましい。例えば、別の電極をアースに接続することができる。例えば、電圧振幅が0Vと5Vの矩形波電圧を用いる。使用される容量測定方法に応じて、AC電圧が電極または電極対に印加される実施形態も可能である。
【0022】
本発明の1つの有利な発展形態では、評価ユニットは、特に、捕捉された測定信号の周波数帯域を通過させるように設計されたフィルタユニット、好ましくはバンドパスフィルタを備える。周波数帯域は、特にシャフトの現在の速度に基づいて、調整可能であることが好ましい。フィルタユニットには、例えば高調波の形での干渉を、捕捉された測定信号から除去できるという利点がある。その結果、測定装置の信頼性が向上する。
【0023】
本発明の1つの有利な発展形態では、測定部、特にシャフトは導電性であり、特に金属材料から作られる。導電性測定部は、真円からのずれの結果としての電場の変化が比較的大きく、結果として良好に測定できるという利点を有する。
【0024】
本発明の1つの有利な発展形態では、シャフトは、特に電気モータの、好ましくはスライディングルーフ、ウィンドウリフター、外部ミラー、シート、コンバーチブルルーフまたはロック機構などの、車両の電動で調整可能な装置のモータ出力シャフトである。
【0025】
この目的はまた、特に車両の電動調整可能な装置、特に本発明による測定装置を備えた装置の電気モータの、シャフトの回転位置、速度及び/または回転方向を決定するための方法により達成され、その方法は以下のステップを含む:
a)それぞれがコンデンサ素子を形成する少なくとも1つの第1の電極及び少なくとも1つの第2の電極を提供する;
b)電場を生成するために電極に電圧を印加する;
c)真円からのずれを有するシャフト、特にモータシャフトを回転させる、
ここで、測定部は、シャフトの回転が電場を変化させるように電極に対して配置される;
d)電極に導電的に接続された評価ユニットを使用する容量測定により、特に電極に印加される電圧の変化を捕捉することにより、電界の変化を捕捉する;
e)捕捉された電場の変化に基づいて、評価ユニットによってシャフトの回転位置、速度、及び/または回転方向を決定する。
【0026】
この方法は、本発明による測定装置に関連して既に説明したものと同様の利点を有し、測定装置に関連して説明したいくつかまたは全てのプロセス技術の特徴を実装することができる。
【0027】
シャフト、好ましくはモータ出力シャフトは、特に、電気モータ、特に車両の電動で調整可能な装置の電気モータを作動させることにより回転する。特に、シャフトの不均一性によって引き起こされる電場の変化の数、または引き起こされる静電容量の変化が、そこから回転位置または速度を計算するために、好ましくは時間の経過とともに捕捉される。評価ユニットは、好ましくは適切な評価回路によって、装置及び/またはプロセス技術を使用して、異なる容量性捕捉または測定方法を実施するように設計することができる。
【0028】
この目的は、特に、車両の電動で調整可能な装置、例えばスライディングルーフ、ウィンドウリフター、エクステリアミラー、シート、コンバーチブルルーフまたはロック機構の電気モータのシャフトの回転位置、速度及び/または回転方向を決定するための本発明による測定装置の使用によっても達成される。本発明による測定装置は、簡単な方法で、特に費用対効果の高い方法で実装することができ、特に、車両の電動調整可能デバイスなどの多数の部品を有する用途に使用するのに適している。
【0029】
本発明の例示的な実施形態は、図面に基づいて以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】シャフトが第1の回転位置にある、本発明による測定装置の第1の実施形態の概略図を示す。
図1B】シャフトが第2の回転位置にある、図1Aによる実施形態の概略図を示す。
図2】2つの電極対を有する本発明による測定装置の第2の実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の以下の説明において、同一の参照符号は、同一の、及び同一に作用する要素に使用される。
【0032】
図1A及び1Bは、第1及び第2の回転位置における回転シャフト10の回転位置、速度及び/または回転方向を決定するための、本発明による測定装置100を示す。それぞれがコンデンサ要素を形成する第1の電極20及び第2の電極30は、電極平面PEにおいて、中心平面PM(電極平面PEまたは図中の図面の平面に垂直)に対して対称的に配置される。電極20、30は、端部が平坦なコンデンサ要素を形成し、またここでは導電性、特に金属の材料、例えば銅から形成される長方形の基本形状を有するプレートの形態で形成される。シャフト10のシャフト軸12は電極平面PEに垂直であり、中心平面PMを走る。電圧が電極20、30に印加され、電極20、30の環境において、電界EFを生成し、その力線は破線として示される。図1Aは、基準状態、すなわち実質的に干渉がない状態の電界EFを示し、図1Bは、特に変形した磁力線によって示される、変化または乱された状態の電界EFを示す。
【0033】
シャフト10は、回転対称ではなく点対称であるシャフト形状13の形態の、真円からのずれを有する測定部11を有する。測定部11の丸くないシャフト形状13は、ここでは、断面で示されているシャフト10の円形断面を超えて半径方向に突出しているが、シャフト10の断面に対して半径方向に反動するか、またはシャフト10と半径方向の同一面上に形成することもできる。シャフト10及び測定部11は、ここでは金属から作られており、すなわち、特に導電性である。シャフト形状13は、円周上に均一に分布する4つの測定高度14を有する歯付き形状の形態である。測定部11は、特に本発明による真円からのずれとしての測定高度14が、図1Bに示すようにシャフト10の回転運動により測定高さ14が電極20、30を通過する場合に、電界EFと相互作用するように配置される。電界EFの変化は、非円形の測定部11の回転によって引き起こされる。
【0034】
電極20、30は、例えばプラスチックのような電気絶縁材料から作られたプリント回路基板50上に配置され、測定部11がその中に延びる円形の測定凹部51を有する。電極20、30は、導体トラック21及び31を介してマイクロコントローラ70に導電接続され、マイクロコントローラ70は、評価ユニット40に導電接続され、電圧源60によって電力が供給される。マイクロコントローラ70、及び好ましくはバンドパスフィルタであるフィルタユニット80を含む評価ユニット40は、同様にプリント回路基板50上に配置される。
【0035】
回転的に固定された方法で、または一部で測定部11に接続されたシャフト10の回転の場合、測定部11のそれぞれの真円からのずれが、電極20、30の周囲に生成される電気的、好ましくは静電的な場EFの変化を引き起こす。電場EFのこの変化は、電極20,30によって形成されるコンデンサの静電容量変化として、評価ユニット70によって容量的に捕捉され得る。例えば、電圧、好ましくは、例えば0V及び5Vの電圧振幅を有する矩形波パルスの形態の均一にパルス化されたDC電圧が、マイクロコントローラ70の出力を介して第1の電極20に印加される。これに対応する電界EFが発生する。測定高度14が電場EFを通って移動する場合、すなわち電場を通って回転する場合、結果は、電極20、30のコンデンサ要素によって形成されるコンデンサの静電容量の変化である。この静電容量の変化は、例えば、第2の電極30での電圧変化によって測定され、この変化は、マイクロコントローラ70の入力で取り出すことができる。評価ユニット40はマイクロコントローラ70に統合することもでき、電場EFの変化を、カウント可能な信号の変化または変動として、特に電圧信号の上昇または下降の形で捕捉する。シャフト10の回転位置及び/または速度は、変化の数を取り込むことによって決定することができ、その場合、測定部11の利用可能な測定高度14の数は、評価ユニット40に格納されることが好ましい。
【0036】
図2は、それぞれが第1電極20及び第2電極30を有する2つの電極対91、92を有する、本発明による測定装置100の実施形態を示す。電極対91、92は、シャフト10の外周に対して互いにオフセットして配置される。一方で、これにより、回転位置及び/または速度が決定される精度を高めることが可能になる。一方、シャフト10の回転方向は、特に第1の電極対91及び第2の電極対92によって時間的にオフセットされた電場EFの変化のシーケンスを捕捉することによって、さらに決定することができる。回転方向において、特定の測定高度14は、まず第1電極対91に関して、そして時間的にオフセットして第二電極対92に関して電場EFの変化を引き起こし、そこから、シャフト10の回転方向を決定することができる。
【0037】
本発明による測定装置100は容易に実施することができ、特に、車両の電動で調整可能な装置、例えばスライディングルーフ、ウィンドウリフター、エクステリアミラー、シート、コンバーチブルルーフ、ロック機構などの電気モータのシャフトの回転位置、速度及び/または回転方向を決定するための使用に適している。
【0038】
この時点で、上記で説明した本発明のすべての態様は、単独で、及び任意の組み合わせで、本発明、特に図面に示された詳細に不可欠であるものとして特許請求されることを指摘しておくべきである。対応する状況は、説明した方法のステップに適用される。その改変は、当業者によく知られている。
【符号の説明】
【0039】
10 シャフト
11 測定部
12 シャフト軸
13 シャフト形状
14 半径方向の測定高度
20 第1電極
21 導体トラック
30 第2電極
31 導体トラック
40 評価ユニット
50 プリント基板
51 測定凹み
60 電圧源
70 マイクロコントローラ
80 フィルタユニット
91 第1電極対
92 第2電極対
100 測定装置
EF 電場
PM 中心平面
PE 電極面
図1A
図1B
図2