IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 五洋建設株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人日本大学の特許一覧 ▶ 株式会社計測リサーチコンサルタントの特許一覧

<>
  • 特許-三次元画像生成システム 図1
  • 特許-三次元画像生成システム 図2
  • 特許-三次元画像生成システム 図3
  • 特許-三次元画像生成システム 図4
  • 特許-三次元画像生成システム 図5
  • 特許-三次元画像生成システム 図6
  • 特許-三次元画像生成システム 図7
  • 特許-三次元画像生成システム 図8
  • 特許-三次元画像生成システム 図9
  • 特許-三次元画像生成システム 図10
  • 特許-三次元画像生成システム 図11
  • 特許-三次元画像生成システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】三次元画像生成システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/20 20060101AFI20220527BHJP
   G06T 7/521 20170101ALI20220527BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20220527BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
G06T17/20
G06T7/521
G06T7/62
G01N21/88 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018040800
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019159379
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591248223
【氏名又は名称】株式会社計測リサーチコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 剣一
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】溝口 知広
(72)【発明者】
【氏名】藏重 裕俊
【審査官】板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/119154(WO,A1)
【文献】特開2004-272459(JP,A)
【文献】特開2008-33522(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111195(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0170398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/00 - 17/30
G06T 7/00 - 7/90
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の三次元形状を複数の点の位置で表すノードデータと、前記構造物の画像を表すテクスチャデータと、前記ノードデータが位置を示す複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする多角形平面であるメッシュの各々に関し前記テクスチャデータが表す画像のうち当該メッシュに対応する部分である部分画像と当該メッシュとの対応関係を示す第1のマッピングデータとを取得する取得手段と、
前記ノードデータが表す三次元形状を近似する複数の幾何学的な曲面であって、前記複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする多角形平面の数より少ない数の曲面を特定し、当該複数の幾何学的な曲面を表すメッシュデータを生成する単純化手段と、
前記メッシュデータが示す複数の幾何学的な曲面の各々に関し、前記第1のマッピングデータに基づき前記テクスチャデータが表す複数の部分画像のうち当該曲面に対応する複数の部分画像を特定し、当該複数の部分画像を繋ぎ合わせて当該曲面に対応する新たな部分画像を生成し、当該新たな部分画像と当該曲面との対応関係を示す第2のマッピングデータを生成する対応付手段と、
前記テクスチャデータが表す画像から前記構造物の劣化部分を特定し、前記テクスチャデータと前記第2のマッピングデータを用いて当該劣化部分の領域を示す劣化領域データを生成する特定手段と、
前記メッシュデータが表す三次元形状の画像に、前記劣化領域データが示す領域を表す画像を重畳した画像を生成する生成手段と
を備える三次元画像生成システム。
【請求項2】
前記単純化手段により生成されたメッシュデータが表す三次元形状が有する規則性に基づき当該三次元形状の欠落部分を補完し、補完後の三次元形状を表すメッシュデータを生成する補完手段を備え、
前記生成手段は、前記単純化手段が生成したメッシュデータに代えて、前記補完手段が生成したメッシュデータを用いる
請求項1に記載の三次元画像生成システム。
【請求項3】
前記特定手段により特定された劣化部分の劣化状態を判定する判定手段を備え、
前記生成手段は、前記メッシュデータが表す三次元形状の画像に、前記劣化状態を示す画像を重畳した画像を生成する
請求項1又は2に記載の三次元画像生成システム。
【請求項4】
コンピュータに、
構造物の三次元形状を複数の点の位置で表すノードデータと、前記構造物の画像を表すテクスチャデータと、前記ノードデータが位置を示す複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする多角形平面であるメッシュの各々に関し前記テクスチャデータが表す画像のうち当該メッシュに対応する部分である部分画像と当該メッシュとの対応関係を示す第1のマッピングデータとを取得する処理と、
前記ノードデータが表す三次元形状を近似する複数の幾何学的な曲面であって、前記複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする多角形平面の数より少ない数の曲面を特定し、当該複数の幾何学的な曲面を表すメッシュデータを生成する処理と、
前記メッシュデータが示す複数の幾何学的な曲面の各々に関し、前記第1のマッピングデータに基づき前記テクスチャデータが表す複数の部分画像のうち当該曲面に対応する複数の部分画像を特定し、当該複数の部分画像を繋ぎ合わせて当該曲面に対応する新たな部分画像を生成し、当該新たな部分画像と当該曲面との対応関係を示す第2のマッピングデータを生成する処理と、
前記テクスチャデータが表す画像から前記構造物の劣化部分を特定し、前記テクスチャデータと前記第2のマッピングデータを用いて当該劣化部分の領域を示す劣化領域データを生成する処理と、
前記メッシュデータが表す三次元形状の画像に、前記劣化領域データが示す領域を表す画像を重畳した画像を生成する処理と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の三次元画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物等の構造物には、時間の経過とともに、ひび割れや剥落等の劣化が生じる。構造物を撮影した画像に基づき当該構造物の劣化の状態を把握する技術がある。例えば、特許文献1には、作業者が撮影した橋梁等のコンクリート構造物の画像に基づき、当該コンクリート構造物から離れた場所にいる専門家が当該コンクリート構造物の劣化状態を診断するためのシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-225889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムによる場合、専門家は分断された複数の二次元画像に基づき構造物の劣化状態を診断せねばならず、各画像が構造物のどの部分の画像であるかを特定するために時間を要し、構造物全体における劣化状態を把握しづらい。
【0005】
これに対し、三次元レーザースキャナ等により構造物全体の三次元形状を複数の点で表すノードデータを生成すると共に、光学カメラにより当該構造物を撮影した画像を表すテクスチャデータを生成し、ノードデータが表す三次元形状に、テクスチャデータが表す画像を重畳した画像を表示するシステムがある。このシステムによれば、専門家は構造物全体の三次元形状を把握すると共に、構造物の劣化部分の特定や構造物の劣化状態の特定を容易に行うことができる。
【0006】
しかしながら、ノードデータは、例えば数万から数億といった膨大な数の点の位置により三次元形状を表すサイズの大きなデータであるため、処理に多くの時間やリソースを要する。
【0007】
上記の背景に鑑み、本発明は、多大な時間やリソースを要することなく、構造物の劣化部分をユーザに認知させる手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、構造物の三次元形状を複数の点の位置で表すノードデータと、前記構造物の画像を表すテクスチャデータと、前記ノードデータが位置を示す複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする多角形平面であるメッシュの各々に関し前記テクスチャデータが表す画像のうち当該メッシュに対応する部分である部分画像と当該メッシュとの対応関係を示す第1のマッピングデータとを取得する取得手段と、前記ノードデータが表す三次元形状を近似する複数の幾何学的な曲面であって、前記複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする多角形平面の数より少ない数の曲面を特定し、当該複数の幾何学的な曲面を表すメッシュデータを生成する単純化手段と、前記メッシュデータが示す複数の幾何学的な曲面の各々に関し、前記第1のマッピングデータに基づき前記テクスチャデータが表す複数の部分画像のうち当該曲面に対応する複数の部分画像を特定し、当該複数の部分画像を繋ぎ合わせて当該曲面に対応する新たな部分画像を生成し、当該新たな部分画像と当該曲面との対応関係を示す第2のマッピングデータを生成する対応付手段と、前記テクスチャデータが表す画像から前記構造物の劣化部分を特定し、前記テクスチャデータと前記第2のマッピングデータを用いて当該劣化部分の領域を示す劣化領域データを生成する特定手段と、前記メッシュデータが表す三次元形状の画像に、前記劣化領域データが示す領域を表す画像を重畳した画像を生成する生成手段とを備える三次元画像生成システムを第1の態様として提供する。
【0009】
第1の態様の三次元画像生成システムによれば、多大な時間やリソースを要することなく、構造物の劣化部分をユーザに認知させることができる。
【0010】
第1の態様の三次元画像生成システムにおいて、前記単純化手段により生成されたメッシュデータが表す三次元形状が有する規則性に基づき当該三次元形状の欠落部分を補完し、補完後の三次元形状を表すメッシュデータを生成する補完手段を備え、前記生成手段は、前記単純化手段が生成したメッシュデータに代えて、前記補完手段が生成したメッシュデータを用いる、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0011】
第2の態様の三次元画像生成システムによれば、欠落部分の少ない構造物の三次元形状をユーザに認知させることができる。
【0012】
第1又は第2の態様の三次元画像生成システムにおいて、前記特定手段により特定された劣化部分の劣化状態を判定する判定手段を備え、前記生成手段は、前記メッシュデータが表す三次元形状の画像に、前記劣化状態を示す画像を重畳した画像を生成する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様の三次元画像生成システムによれば、構造物の劣化状態をユーザに認知させることができる。
【0014】
また、本発明は、コンピュータに、構造物の三次元形状を複数の点の位置で表すノードデータと、前記構造物の画像を表すテクスチャデータと、前記ノードデータが位置を示す複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする多角形平面であるメッシュの各々に関し前記テクスチャデータが表す画像のうち当該メッシュに対応する部分である部分画像と当該メッシュとの対応関係を示す第1のマッピングデータとを取得する処理と、前記ノードデータが表す三次元形状を近似する複数の幾何学的な曲面であって、前記複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする多角形平面の数より少ない数の曲面を特定し、当該複数の幾何学的な曲面を表すメッシュデータを生成する処理と、前記メッシュデータが示す複数の幾何学的な曲面の各々に関し、前記第1のマッピングデータに基づき前記テクスチャデータが表す複数の部分画像のうち当該曲面に対応する複数の部分画像を特定し、当該複数の部分画像を繋ぎ合わせて当該曲面に対応する新たな部分画像を生成し、前記テクスチャデータと前記第2のマッピングデータを用いて当該劣化部分の領域を示す劣化領域データを生成する処理と、前記テクスチャデータが表す画像から前記構造物の劣化部分を特定し、前記第2のマッピングデータに基づき当該劣化部分の領域を示す劣化領域データを生成する処理と、前記メッシュデータが表す三次元形状の画像に、前記劣化領域データが示す領域を表す画像を重畳した画像を生成する処理とを実行させるためのプログラムを第4の態様として提供する。
【0015】
第4の態様のプログラムによれば、コンピュータを用いて、多大な時間やリソースを要することなく、構造物の劣化部分をユーザに認知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る三次元画像生成システムのハードウェア構成を示した図。
図2】一実施形態に係るデータ処理装置の機能構成を示した図。
図3】一実施形態に係る三次元画像生成システムの測定対象の構造物の外観を示した図。
図4】一実施形態に係るデータ処理装置の処理のフローを示した図。
図5】一実施形態に係る三次元画像生成システムが備える三次元レーザースキャナが生成するノードデータが表す構造物の三次元形状の一部を示した図。
図6】一実施形態に係るデータ処理装置が特定する図5の三次元形状を近似する平面を示した図。
図7】一実施形態に係るデータ処理装置が生成する補完前メッシュデータが表す三次元形状の一部を示した図。
図8】一実施形態に係るデータ処理装置が生成する補完後メッシュデータが表す三次元形状の一部を示した図。
図9】一実施形態に係るデータ処理装置が用いるテクスチャデータが表す構造物の一部の画像を示した図。
図10】一実施形態に係るデータ処理装置が図9の画像から特定した劣化部分を示した図。
図11】一実施形態に係るデータ処理装置が図9の画像から判定した劣化状態を示した図。
図12】一実施形態に係る三次元画像生成システムが表示する画像を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係る三次元画像生成システム1を説明する。図1は、三次元画像生成システム1のハードウェア構成を模式的に示した図である。三次元画像生成システム1は、コンピュータ10と、コンピュータ10に接続された表示装置12、操作装置13、三次元レーザースキャナ14を備える。
【0018】
コンピュータ10は、プロセッサ101、メモリ102、インタフェース103を備える。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されているプログラムに従い各種データ処理を行う。メモリ102は、プロセッサ101により実行されるプログラム等の各種データを記憶する。インタフェース103は、表示装置12、操作装置13、三次元レーザースキャナ14に対するデータの受け渡しを行う。なお、インタフェース103によるデータの受け渡しは、有線接続及び無線接続のいずれによって行われてもよい。
【0019】
表示装置12は画像を表示する。操作装置13はユーザのコンピュータ10に対する操作を受け付ける。
【0020】
三次元レーザースキャナ14は、対象物の表面上の多数の点にレーザー光を照射し、その反射光によりそれらの多数の点の各々までの距離を測定し、測定した距離に基づき対象物の三次元形状を複数の点の位置で表すノードデータを生成する。以下、ノードデータが位置を示す複数の点のうち互いに隣接する複数の点を頂点とする三角形平面又は四角形平面を「単純化前メッシュ」と呼ぶ。
【0021】
また、三次元レーザースキャナ14は、デジタルカメラを有し、対象物をデジタルカメラで撮影した画像を表すテクスチャデータを生成する。さらに、三次元レーザースキャナ14は、テクスチャデータが表す画像のうち、複数の単純化前メッシュの各々に対応する部分(以下、「部分画像」という)を特定する処理(マッピング処理)を行い、特定した部分画像と単純化前メッシュの対応関係を示すマッピングデータを生成する。
【0022】
以下、三次元レーザースキャナ14が生成するノードデータ、テクスチャデータ及びマッピングデータを含むデータを「テクスチャ付き高密度三次元形状データ」という。テクスチャ付き高密度三次元形状データは、対象物の三次元形状とその外観を表す。
【0023】
コンピュータ10は、本実施形態に係るプログラムに従う処理を行うことにより、図2に示す構成を備えるデータ処理装置11として機能する。すなわち、本実施形態に係るプログラムは、コンピュータ10に、以下に説明する記憶手段110、取得手段111、単純化手段112、補完手段113、対応付手段114、特定手段115、判定手段116、生成手段117が行う処理を実行させる。
【0024】
記憶手段110は、データ処理装置11が三次元レーザースキャナ14から取得するテクスチャ付き高密度三次元形状データ及びデータ処理装置11が生成する各種データを記憶する。記憶手段110はプロセッサ101の制御下で動作するメモリ102により実現される。
【0025】
取得手段111は、三次元レーザースキャナ14からテクスチャ付き高密度三次元形状データを取得する。取得手段111はプロセッサ101の制御下で動作するインタフェース103により実現される。取得手段111はテクスチャ付き高密度三次元形状データを記憶手段110に記憶させる。
【0026】
単純化手段112は、記憶手段110に記憶されているテクスチャ付き高密度三次元形状データに含まれるノードデータが表す三次元形状を近似する複数の幾何学的な曲面であって、ノードデータが表す三次元形状を構成する単純化前メッシュの数よりも少ない数の曲面(以下、「単純化後メッシュ」という)を特定する。本願において、幾何学的な曲面とは、平面又は所定の規則に従い変化する曲率を有する形状の曲面を意味する。幾何学的な曲面の例としては、平面の他、円柱の側面、球の外面、円錐の側面等が挙げられる。
【0027】
単純化手段112が単純化後メッシュを特定する方法としては、例えば、溝口知広、伊達宏昭、金井理、共著「Region Growing/Mergingを用いた効率的なメッシュセグメンテーション」(精密工学会誌、74巻7号752-759ページ、2008年7月)に記載されている以下の工程を備える方法が採用可能であるが、それに限られない。
【0028】
(工程1)局所2次多項式曲面フィッティングの反復に基づき、メッシュ頂点の主曲率を計算する。
(工程2)工程1で算出した主曲率を基に初期セグメンテーションを行う。より具体的には、まず各頂点の主曲率を解析し、本来の曲面間の境界ではなく曲面上に乗っていると推定される小さな数の連結頂点集合からなるシード領域を生成する。次に、2次多項式曲面と2次曲面を併用したリージョングローイングを用いて、領域への曲面フィッティングとシード領域への近傍頂点追加を反復的に行い、メッシュ上の部分領域とそれを近似する解析曲面を抽出する。
(工程3)リージョンマージングを用いて、ユーザが指定した閾値内で、領域数をできるだけ減少するように効率的に初期領域を統合する。
【0029】
単純化手段112は、複数の単純化後メッシュの形状、大きさ、位置、方向により対象物の三次元形状を表すメッシュデータを生成し、記憶手段110に記憶させる。
【0030】
補完手段113は、単純化手段112により生成されたメッシュデータが表す三次元形状が有する規則性に基づき当該三次元形状の欠落部分を補完し、補完後の三次元形状を表すメッシュデータを生成する。以下、単純化手段112が生成するメッシュデータを「補完前メッシュデータ」、補完手段113が生成するメッシュデータを「補完後メッシュデータ」という。
【0031】
対応付手段114は、補完後メッシュデータが示す複数の単純化後メッシュの各々に関し、テクスチャ付き高密度三次元形状データに含まれるマッピングデータに基づき、テクスチャ付き高密度三次元形状データに含まれるテクスチャデータが表す複数の部分画像のうち当該単純化後メッシュに対応する複数の部分画像を特定し、それらの部分画像を繋ぎ合わせて、当該単純化後メッシュに対応する新たな部分画像を生成する。
【0032】
対応付手段114は、複数の単純化後メッシュの各々に対応する部分画像を表すテクスチャデータと、部分画像と単純化後メッシュとの対応関係を示すマッピングデータを生成し、記憶手段110に記憶させる。
【0033】
以下、補完後メッシュデータと、対応付手段114が生成するテクスチャデータ及びマッピングデータを含むデータを「テクスチャ付き低密度三次元形状データ」という。テクスチャ付き低密度三次元形状データは、テクスチャ付き高密度三次元形状データと同様に対象物の三次元形状とその外観を表すが、テクスチャ付き高密度三次元形状データと比較しデータサイズが小さい。従って、テクスチャ付き低密度三次元形状データを用いた処理(例えば、対象物の三次元形状及び外観の表示処理)の負荷は小さく、そのために膨大な時間やリソースを要することはない。
【0034】
特定手段115は、テクスチャ付き低密度三次元形状データに含まれるテクスチャデータが表す画像から、対象物の劣化部分(ひび、剥落等)を特定し、特定した劣化部分の領域を示す劣化領域データを記憶手段110に記憶させる。特定手段115が対象物の劣化部分を特定する方法としては、例えば、単純なパターンマッチングを用いた画像解析方法が採用され得るが、これに限られない。
【0035】
判定手段116は、特定手段115により特定された劣化部分、すなわち対象物のうち劣化領域データが示す領域の劣化状態を判定し、判定の結果を示す判定結果データを記憶手段110に記憶させる。判定手段116が劣化状態を判定する方法としては、例えば、劣化部分の長さ(ひびの場合)や面積(剥落の場合)を算出し、算出したそれらの数値を閾値と比較することにより、劣化の程度を特定する方法が採用され得るが、これに限られない。
【0036】
単純化手段112、補完手段113、対応付手段114、特定手段115、判定手段116は、プロセッサ101により実現される。
【0037】
生成手段117は、補完後メッシュデータ、劣化領域データ、判定結果データを用いて、補完後メッシュデータが表す三次元形状の画像に、特定手段115が特定した劣化部分及び判定手段116が判定した劣化状態を示す画像を重畳した画像を生成し、生成した画像を表す画像データを表示装置12に出力する。生成手段117はプロセッサ101と、プロセッサ101の制御下で動作するインタフェース103により実現される。
【0038】
以下に、データ処理装置11が行う処理のフローを説明する。なお、以下の説明において、例として、データ処理装置11は、図3に示すような外観の構造物9の三次元形状及び劣化部分、劣化状態を表す画像を表示装置12に表示させるものとする。
【0039】
構造物9は桟橋の上部工であり、図3は構造物9を下方から見た図である。構造物9には、格子状に配置された複数の梁91と、隣り合う3本又は4本の梁91の連結部に配置された複数のハンチ92と、四方を梁91に囲まれた複数の床版93が含まれる。構造物9は、例えば鉄筋コンクリート製であり、ひびや剥落を生じている部分(劣化部分)を有する場合がある。
【0040】
図3における領域Aは、障害物の影響等により三次元レーザースキャナ14によって距離の計測及び画像の撮影が行われなかった領域(欠落部分)である。
【0041】
図4は、データ処理装置11の処理のフローを示した図である。まず、取得手段111は、三次元レーザースキャナ14から構造物9のテクスチャ付き高密度三次元形状データを取得する(ステップS01)。
【0042】
図5は、テクスチャ付き高密度三次元形状データに含まれるノードデータが表す構造物9の床版93の一部分の三次元形状を模式的に示した図である。図5において、多数の三角形の頂点は、ノードデータにより示される点である。図5に示すように、床版93の底面を三次元レーザースキャナ14が計測して生成したノードデータが示す三次元形状は、もともと床版93の表面にある細かい凹凸や計測誤差等の影響を受け、平坦ではない。
【0043】
続いて、単純化手段112は、ステップS01において取得されたテクスチャ付き高密度三次元形状データに含まれるノードデータを用いて、構造物9の補完前メッシュデータを生成する(図4、ステップS02)。
【0044】
図6は、図5に示した三次元形状を近似する、単純化手段112により特定される曲面を示した図である。この場合、単純化手段112は、図5に示されるノードデータが表す三次元形状を近似する曲面として1つの平面を特定する。単純化手段112は、ノードデータが表す構造物9の三次元形状の全ての領域において同様の処理を行い、構造物9の全体の三次元形状を表す補完前メッシュデータを生成する。
【0045】
図7は、単純化手段112が生成する補完前メッシュデータが表す構造物9の三次元形状の一部を示した図である。図7に示される三次元形状は、図3に示した三次元形状に含まれる細かい凹凸等が除かれ、単純化された形状である。
【0046】
続いて、補完手段113は、ステップS02において生成された補完前メッシュデータが表す三次元形状における規則性に基づき欠落部分を補完した構造物9の全体の三次元形状を表す補完後メッシュデータを生成する(図4、ステップS03)。
【0047】
図8は、補完手段113が生成する補完後メッシュデータが表す構造物9の三次元形状の一部を示した図である。
【0048】
続いて、対応付手段114は、テクスチャ付き高密度三次元形状データに含まれるテクスチャデータとマッピングデータを用いて、ステップS03において生成された補完後メッシュデータが示す複数のメッシュの各々に対応する部分画像を表す新たなテクスチャデータと、それらのメッシュと部分画像の対応関係を示す新たなマッピングデータを生成する(図4、ステップS04)。ステップS04において生成される新たなテクスチャデータとマッピングデータは、補完後メッシュデータと共に、テクスチャ付き低密度三次元形状データを構成する。
【0049】
続いて、特定手段115は、ステップS04において生成されたテクスチャデータとマッピングデータを用いて、構造物9の劣化部分を特定し、特定した劣化部分の領域を示す劣化領域データを生成する(ステップS05)。
【0050】
図9は、ステップS04において生成されたテクスチャデータが表す、構造物9の一部の画像を模式的に示した図である。図9に示される画像には、ひびが生じた部分の画像(左側)と、コンクリートの一部が剥落した部分の画像(右側)が含まれている。
【0051】
図10は、図9の画像から特定手段115が特定した劣化部分を示した図である。図10の領域Bはひびを生じている劣化部分を示し、領域Cは剥落を生じている劣化部分を示している。
【0052】
続いて、判定手段116は、ステップS04において生成されたテクスチャデータとステップS05において生成された劣化領域データを用いて、構造物9の劣化部分における劣化状態を判定し、判定の結果を示す判定結果データを生成する(図4、ステップS06)。
【0053】
図11は、図9の画像から判定手段116が判定した劣化状態を、劣化部分の表示態様により示した図である。
【0054】
続いて、生成手段117は、補完後メッシュデータが表す三次元形状の画像に、劣化領域データが示す領域を判定結果データが示す劣化状態に応じた表示態様で表す画像を重畳した画像を生成し、当該画像を表示装置12に表示させる(図4、ステップS07)。
【0055】
図12は、ステップS07の処理に応じて、表示装置12が表示する画像を模式的に示した図である。ユーザは、表示装置12に表示される画像を見て、構造物9の劣化の状態を容易に知ることができる。
【0056】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の技術的思想の下で様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。
【0057】
(1)上述した実施形態においては、テクスチャ付き高密度三次元形状データが表す構造物9の三次元形状に欠落部分があり、その欠落部分を補完手段113が補完する構成が採用されている。テクスチャ付き高密度三次元形状データが表す構造物9の三次元形状に欠落部分がない場合や、欠落部分があっても不都合が生じない場合は、三次元画像生成システム1が補完手段113を備えなくてもよい。この場合、生成手段117は補完後メッシュデータに代えて、補完前メッシュデータを用いて構造物9の三次元形状を表す画像を生成する。
【0058】
(2)上述した実施形態においては、テクスチャ付き高密度三次元形状データに含まれるノードデータは三次元レーザースキャナ14により生成されるものとしたが、ノードデータの生成方法はこれに限られない。例えば、三次元画像生成システム1が三次元レーザースキャナ14に代えて、対象物を複数の方向から撮影した画像を取得し、それらの画像を用いて対象物の三次元形状を特定するSfM(Shape from Motion, Structure from Motion)と呼ばれる手法によりノードデータを生成するデータ処理装置を備えてもよい。
【0059】
(3)上述した実施形態においては、データ処理装置11が、特定手段115と判定手段116を備える。これに代えて、データ処理装置11が、対象物の劣化部分と当該劣化部分における劣化状態を同時に特定する特定手段を備えてもよい。例えば、データ処理装置11が、劣化状態に応じて区分された対象物の画像を教師データとして用い、機械学習を行わせた人工知能を有し、当該人工知能によってテクスチャデータが表す画像に含まれる劣化部分の特定と特定した劣化部分における劣化状態の判定を同時に行う特定手段を備えてもよい。
【0060】
(4)上述した実施形態においては、データ処理装置11は1つの装置として構成される。これに代えて、互いにデータの送受信を行う複数の装置によりデータ処理装置11が構成されてもよい。この場合、データ処理装置11が備える記憶手段110、取得手段111、単純化手段112、補完手段113、対応付手段114、特定手段115、判定手段116、生成手段117は、データ処理装置11を構成する複数の装置のいずれに配置されてもよい。
【0061】
(5)上述した実施形態においては、劣化状態は劣化部分の表示態様により区別される。三次元画像生成システム1が構造物9の劣化状態を示す方法はこれに限られず、例えば劣化部分を示す画像の近傍に「劣化度:高」等の文字を表示することによって劣化状態を示す構成が採用されてもよい。
【0062】
(6)上述した実施形態においては、データ処理装置11のハードウェアはコンピュータであり、プロセッサ101がプログラムに従う処理を実行することにより、図2に示される構成を備える装置が実現される。これに代えて、データ処理装置11が、図2に示される構成を備える専用装置として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…三次元画像生成システム、9…構造物、10…コンピュータ、11…データ処理装置、12…表示装置、13…操作装置、14…三次元レーザースキャナ、91…梁、92…ハンチ、93…床版、101…プロセッサ、102…メモリ、103…インタフェース、110…記憶手段、111…取得手段、112…単純化手段、113…補完手段、114…対応付手段、115…特定手段、116…判定手段、117…生成手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12