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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】老眼用コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20220527BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018560053
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 KR2017006814
(87)【国際公開番号】W WO2018030635
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】10-2016-0103029
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518399771
【氏名又は名称】リー,ソン ジュン
【氏名又は名称原語表記】LEE, Seong Jun
(73)【特許権者】
【識別番号】518399782
【氏名又は名称】リー,ヒュン スン
【氏名又は名称原語表記】LEE, Hyun Seung
(73)【特許権者】
【識別番号】518399793
【氏名又は名称】リー,ヒュン ジョン
【氏名又は名称原語表記】LEE, Hyun Jeong
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】リー,ソン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヒュン スン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヒュン ジョン
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-024012(JP,A)
【文献】特表2007-510960(JP,A)
【文献】国際公開第2005/050291(WO,A1)
【文献】特開昭63-095415(JP,A)
【文献】特表2014-530638(JP,A)
【文献】特表2002-522803(JP,A)
【文献】米国特許第05002382(US,A)
【文献】特開昭51-142344(JP,A)
【文献】特表2011-530098(JP,A)
【文献】特表2009-543136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
G02C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠距離屈折力を有する遠距離部と、近距離屈折力を有する近距離部とが領域を区画していずれも形成された老眼用コンタクトレンズであって、
遠距離屈折力で形成されて主視野を提供する中心領域と;
縁部に沿って環状に形成された仕上げ領域と;
前記中心領域と仕上げ領域との間に形成され、屈折力が形成されて視野領域を提供する光学領域と;に区画して構成され、
前記光学領域は、一定の角度の扇形状に上部領域である遠距離部と下部領域である近距離部とを区画し、遠距離部と近距離部との境界地域には、一定の幅で前記遠距離部と前記近距離部との厚さの差を緩やかに連結させる移行部が形成され、
前記光学領域において、優位眼用コンタクトレンズは、遠距離部90~210°と近距離部90~150°の範囲の扇形中心角度で左右対称に特定屈折力になるように形成し、非優位眼用コンタクトレンズは、遠距離部90~150°と近距離部90~210°の範囲の扇形中心角度で左右対称に特定屈折力になるように形成し、移行部は前記遠距離部と前記近距離部が形成された部分の中の3~7°の範囲の扇形中心角度で厚さを緩やかに連結し、
前記光学領域において、レンズ着用時の屈折力は、優位眼用コンタクトレンズは、遠距離部位の屈折力は正視(Emmetropia)であり、近距離部位の屈折力は-0.75ジオプター(D)で形成し;非優位眼用コンタクトレンズは、遠距離部位の屈折力は-0.5ジオプター(D)であり、近距離部位の屈折力は-2.25ジオプター(D)で形成し、
前記非優位眼用コンタクトレンズの遠距離部の扇形中心角度は90~150°であって、当該扇形中心角度は、前記優位眼用コンタクトレンズの遠距離部の扇形中心角度よりも小さい
ことを特徴とする、老眼用コンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老眼用コンタクトレンズに関し、より詳細には、一つのコンタクトレンズに遠距離視野領域と近距離視野領域の両方を提供し、優位眼及び非優位眼に応じて両眼の遠距離視野領域と近距離視野領域の大きさを異ならせると共に、優位眼及び非優位眼の遠距離視野領域と近距離視野領域のレンズ倍率を連続的に形成して中間距離領域が一部重なるようにすることによって、両眼のうちよく見える像を選択する神経加重現象によって遠距離から近距離の視野領域を連続的に提供することができる老眼用コンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人間の眼は、カメラとほぼ類似の構造からなっており、例えば、眼の最前部に位置する角膜と鞏膜の内側には、光の量を調節するように絞りの機能を果たす紅彩、光を屈折させて網膜に像が結ばれるようにレンズの機能を果たす水晶体、角膜と水晶体を介して入ってきた光が像を結ぶようにフィルムの機能を果たす網膜、水晶体の厚さを変化させて対象物の像が網膜に正確に結ばれるように距離調節の機能を果たす毛様体などがある。
【0003】
ところで、カメラが、ガラスレンズを前後方に移動しながらレンズとフィルムとの間の距離を調節して対象物の像を正確に結ぶようにすることができるものとは異なり、人間の眼においてこれと類似の機能を果たす水晶体は、毛様体によって定位置に固定された状態で厚さを変化させて網膜にはっきりと像を結ぶようにしている。
【0004】
すなわち、水晶体は、厚さが約4mm程度の弾力があり、膨らんだレンズ形状からなり、瞳孔を通して入ってくる光が屈折する程度を調節し、文字や事物などの対象物が近距離にあるときは、毛様体が収縮して水晶体が厚くなりながら光の屈折が大きくなり、対象物が遠距離にあるときは、毛様体の筋肉が弛緩して水晶体の厚さが薄くなりながら光の屈折が小さくなるなど、対象物に対する距離が変わる度に、水晶体は収縮と弛緩を繰り返しながら焦点を合わせることで、対象物を明確に見ることができるようになる。
【0005】
このように、人体の眼が提供する視機能は複合的な機能であって、4つの要素として、可視力(minimum visible)、分離力(minimum resolvable)、可読力(minimium legible)、判別力(minimum discrimination)などに大別して考えられる。
【0006】
前記可視力は、網膜の鋭敏度と関連があるとも言えるが、物体の大きさよりは、光量と背景が重要な役割を果たす。すなわち、対比(contrast)が大きな役割を果たす。
【0007】
前記分離力は、離れている2つの点や線を2つとして認識できる能力のことをいうが、解像力といい、一般的な視力である。これは、最小分離視角(minimum angle of resolution)、最小分離閾(minimum separatibility)と呼ぶことができ、正常人の場合、閾値(threshold)は30秒~1分である。網膜の視細胞を対象として計算すると、黄斑の錐体の大きさは1.0~4.0μmであって、2つの対象が分離されたことを認識しようとすれば、2つの像が網膜に結像する距離が、少なくとも1.5μm以上離れていなければならず、この距離は約20秒の視角を有する。しかし、光の回折などによって光線の模様が発生するので、臨床的に測定した正常人の最小視角は30秒~1分である。これを測定する代表的な方法がランドルト環(Landolt’s rings)である。これは、1909年に開催された欧州国際学会で初めて国際視力表として認められた。直径が7.5mmであり、幅が1.5mmの環(ring)を描き、その環に1.5mmの切れ目を入れたとき、5mの距離でその切れ目の方向はわかるが、それより小さい視標を識別できない視力を1.0とする。5mの距離で1.5mmの切れ目は、1分の視角(visual angle)となる。視力は、最小視角の逆数で表す。5mの距離で最小視角が2分となる視力は0.5、10分であると0.1、30秒の最小視角を有していると2.0となる式である。
【0008】
前記可読力は、文字、数字、あるいは形態を認識できる能力をいい、眼の生理的機能以外に、心理的要因(知能、注意力、経験など)が多く関与する。
【0009】
前記判別力は、人が対象や外界を見るとき、それが何なのかを認識したりもするが、どこにあるか、動いているか、配列が正常に置かれているか、真っすぐに置かれているか、傾斜しているか、なども見る。配列視力、傾き視力、動き視力、立体視力などを例に挙げることができる。認識自体が一つの細胞内の距離(約20~30秒)で行われるので、分離力、可読力などとは異なるメカニズムによって認識されると考えられている。
【0010】
また、瞳孔が小さくなるほど水晶体が厚くなることによって、焦点深度(depth of focus)が増加して、屈折異常を完全に矯正しなくても視力が増加する。近視の人が目をしかめて見るのも同じ理由である。しかし、瞳孔が過度に小さくなると(0.1~1mm以下)、光の回折が生じ、網膜の照明も減少するため、むしろ視力が減少する。瞳孔の直径が2.5mm~6mmの間のときは、あまり差がないが、それ以上に大きくなると、球面収差が発生して視力が低下する。
【0011】
なお、目が健康で水晶体が正常に作動する場合には、近距離や遠距離にある対象物を見るとき、焦点がよく合うように自動で調節される反面、年をとるにつれ、水晶体の老化によって弾力が低下して、水晶体の厚さ調節力が低下し、これによって、近距離にある対象物を見るとき、焦点がよく合わないため、ぼやけて、かつよく見えなくなる。
【0012】
そこで、メガネやコンタクトレンズ又は手術を通じて老眼の矯正が行われるが、メガネの場合、一枚のレンズに複数の度数が入っている多重焦点レンズ(累進レンズ)を用いて、近距離、中間距離及び遠距離にある対象物をいずれも見られるように矯正が比較的容易に行われる反面、コンタクトレンズは、矯正に多少難があるほうである。
【0013】
また、老眼用コンタクトレンズである多重焦点コンタクトレンズは、凹レンズと凸レンズを同心円で多数の円を連続配列する形態があるが、これは、瞳孔の大きさの変化に多少敏感な影響が発生することがあり、光の明るさが相対的に低下し、レンズの中心部と視軸が一致しない場合、ハローやグレアが発生することがある。また、光学的性質により、単焦点に比べて対比感度の減少、夜間視力障害及び神経適応などの副作用が作用することがある。
【0014】
また、老眼用コンタクトレンズの屈折は、両眼ともに、遠距離は0D(diopter)、近距離は2.0~3.0Dとするため、よく見えない中間距離視野領域が存在し、それぞれの眼に遠距離と近距離の複数のイメージが入ってきて複視、混乱視を誘発するという問題がある。
【0015】
韓国公開特許第10-2011-0118236号(2011.10.31.公開;以下、「先行文献1」という)の老眼用累進多焦点ハードコンタクトレンズを提示した。前記先行文献1は、遠距離を見ることになるレンズ中心遠用部が中央部に形成され、前記レンズ中心遠用部の周辺に位置して近距離を見ることになるレンズ周辺近用部が形成されて備えられる老眼用累進多焦点ハードコンタクトレンズに関する。前記先行文献1は、両眼が遠距離と近距離の度数範囲が同一であるため、遠距離と近距離との間でよく見えない中間領域が位置して、遠距離から近距離までの連続的な像認識が難しいという欠点がある。
【0016】
韓国登録特許第10-1578327号(2015.12.10.登録;以下、「先行文献2」という)の老眼用コンタクトレンズを提示した。前記先行文献2は、遠距離用屈折力を有する遠距離部、及び近距離用屈折力を有する近距離部で構成され、角膜に接するレンズ本体からなり、前記レンズ本体が角膜の中心から離脱時、遠距離及び近距離の焦点を同時に合わせることができるように同心円状に区画されると共に、上下左右に区画され、互いに隣接する区画毎に遠距離部と近距離部が交互に繰り返して形成され、前記レンズ本体の遠距離部の度数範囲は-10.0~4.0Dであり、前記近距離部の度数範囲は1.0~4.0Dであり、前記レンズ本体の表面には、全体的に空気の透過及び栄養分の供給のための多数の気孔が形成され、前記気孔は、大きさが8~12μmであると共に、15,000~16,000個形成されている、コンタクトレンズに関する。前記先行文献2も、両眼が遠距離と近距離の度数を同一又は類似の範囲として形成されるため、遠距離と近距離との間ではよく見えない中間領域が位置して、遠距離から近距離までの連続的な像認識が難しいという欠点がある。
【0017】
したがって、遠距離と近距離との間の中間領域での視力を改善させることができる新しい方式のコンタクトレンズに対する研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明の老眼用コンタクトレンズは、両眼を優位眼と非優位眼とに区分して、両眼に使用されるコンタクトレンズの屈折の範囲を異ならせて形成し、一定の範囲のみが重なるように形成して、遠距離と近距離との間である中間領域での視認性を向上させる、焦点深度を増加させて、老眼によってよく見えない区域を最小化し、両眼視でよく見えない区域を最小化することができる老眼用コンタクトレンズの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を達成するための本発明の老眼用コンタクトレンズは、遠距離屈折を有する遠距離部と、近距離屈折を有する近距離部とが領域を区画していずれも形成された老眼用コンタクトレンズであって、遠距離屈折で形成されて主視野を提供する中心領域と;縁部に沿って環状に形成された仕上げ領域と;前記中心領域と仕上げ領域との間に形成され、屈折力が形成されて視野領域を提供する光学領域と;に区画して構成され;前記光学領域は、一定の角度の扇形状に上部領域である遠距離部と下部領域である近距離部とを区画し、遠距離部と近距離部との境界地域には、一定の幅で遠距離部と近距離部との厚さの差を緩やかに連結させる移行部が形成されることを特徴とする。
【0020】
前記光学領域において、優位眼(dominant eye)用コンタクトレンズは、遠距離部90~210°と近距離部90~150°の範囲の扇形中心角度で左右対称に特定屈折力になるように形成し、非優位眼(non-dominant eye)用コンタクトレンズは、遠距離部90~150°と近距離部90~210°の範囲の扇形中心角度で左右対称に特定屈折力になるように形成し、移行部は、3~7°の範囲の扇形中心角度で厚さを緩やかに連結させることができる。
【0021】
前記光学領域において、レンズ着用時の屈折は、優位眼は、遠距離部位の屈は正視(Emmetropia)であり、近距離部位の屈は-0.75ジオプター(D)で形成し;非優位眼は、遠距離部位の屈は-0.5ジオプター(D)であり、近距離部位の屈は-2.25ジオプター(D)で形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
前記解決手段による本発明の老眼用コンタクトレンズは、両眼を優位眼と非優位眼とに区分し、区分された両眼に使用されるコンタクトレンズの度数範囲を異ならせて形成し、焦点深度の増加により中間領域を一部重なるようにして中間領域での視力を向上させることができ、中間領域である混合ゾーンによって遠距離領域と近距離領域との間の屈折差が低下するので、患者に使用時に適応力を高めることができる。
【0023】
また、コンタクトレンズでの遠距離領域と近距離領域の範囲の設定時に、優位眼と非優位眼に応じてその比率を異ならせて形成することによって、両眼に着用時に、両眼から入力された像のうちよく見える像を選択して認識する神経加重現象によって、よく見える視力範囲が拡張し、着用による患者の適応力を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例に係る老眼用コンタクトレンズを示した平面図である。
図2】本発明の実施例に係る老眼用コンタクトレンズにおいて遠距離部と近距離部との境界面の変形可能領域を示した平面図である。
図3A】一般の単焦点レンズを示した断面図である。
図3B】一般の単焦点レンズを示した断面図である。
図3C】単焦点レンズ、二重焦点レンズ、あるいは多焦点レンズのような既存の老眼用コンタクトレンズの方式で適用した例に対する視力範囲を示した概略図である。
図4A】本発明の老眼用コンタクトレンズの断面図及び視力範囲を示した概略図である。
図4B】本発明の老眼用コンタクトレンズの断面図及び視力範囲を示した概略図である。
図5A】本発明の老眼用コンタクトレンズの様々な角度の変形例を示した平面図である。
図5B】本発明の老眼用コンタクトレンズの様々な角度の変形例を示した平面図である。
図5C】本発明の老眼用コンタクトレンズの様々な角度の変形例を示した平面図である。
図5D】本発明の老眼用コンタクトレンズの様々な角度の変形例を示した平面図である。
図6A】本発明の好ましい実施例に係る全ての距離で向上した視力性能を示す両眼の焦点離脱グラフである。
図6B】既存の多焦点レンズと単焦点レンズを着用時の両眼の焦点離脱グラフである。
図6C】既存の多焦点レンズと単焦点レンズを着用時の両眼の焦点離脱グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかし、添付の図面は、本発明の技術的思想の内容及び範囲を容易に説明するための例示に過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定又は変更されるものではない。また、このような例示に基づいて本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形及び変更が可能であるということは、当業者にとっては当然である。
【0026】
図1は、本発明の好ましい実施例に係る老眼用コンタクトレンズを示した平面図である。
【0027】
参照したように、本発明に係る老眼用コンタクトレンズ10は、使用者の角膜に接するように着用するもので、内面は、使用者の角膜の表面と一致するように形成される。
【0028】
このようなコンタクトレンズは、総直径が12.6mm前後を有する円形からなり、内面は曲面で形成される。
【0029】
前記コンタクトレンズ10は、瞳孔が位置する中央部分である中心領域20と、コンタクトレンズの縁部に形成された仕上げ領域30と、前記中心領域と仕上げ領域との間に位置し、屈折が形成される光学領域40とに区分される。
【0030】
前記中心領域20は、直径を1.5~1.7mmに形成して、主な視野範囲である遠距離屈折を有するように形成し、好ましくは、中心領域の大きさを1.6mmと一定にして、レンズの交換時に容易に適応できるようにする。
【0031】
また、前記仕上げ領域30は、コンタクトレンズの縁部に環状に形成されるもので、1.3mm前後の幅で形成し、非球面処理を施して着用感を向上させるようにする。
【0032】
なお、前記光学領域40は、直径が10.0mm前後で、中心領域を除いた部分に該当する。このような光学領域40は、互いに異なる屈折力になるように形成して、遠方が見られる遠距離部41と、近方が見られる近距離部42とがいずれも形成されるようにする。このとき、前記遠距離部41は、中心領域20と連結され、光学領域での上部領域に形成されるようにし、近距離部42は、光学領域での下部領域に形成されるようにすることが好ましい。
【0033】
また、前記光学領域40での遠距離部41と近距離部42との間には移行部43をさらに形成することで、遠距離部41と近距離部42との厚さの差を緩やかに連結させるようにする。
【0034】
前記光学領域内で遠距離部41、近距離部42及び移行部43の区分は、水平ラインを中心に上下に区分するか、または垂直ラインを中心に左右に区分するなどの様々な方法で領域を区画することができるが、好ましくは、円の中心を基準として一定の角度によって扇形状に領域の区画が行われるようにするものである。
【0035】
例えば、図1を参照したように、上部領域である遠距離部41と下部領域である近距離部42を水平線で上下に区画して、互いに同一に180°と類似の角度で形成し、遠距離部と近距離部との間には、5°前後の扇形中心角度で移行部43を形成して、2つの屈折の差が緩やかに連結されるようにする。
【0036】
また、図2を参照したように、遠距離部41の扇形中心角度を増加又は減少させ、近距離部42の扇形中心角度を減少又は増加させることによって、左右対称であり、かつ上下非対称に遠距離部と近距離部の領域を形成することができる。すなわち、一般的に遠距離視力を主に使用する場合には、遠距離部の扇形の面積を増加させ、遠距離視力を提供する範囲を広げるようにし、近距離視力を主に使用する場合には、近距離部の扇形の面積を増加させ、近距離視力を提供する範囲を広げるようにすることができる。
【0037】
このように、光学領域40では、遠距離部41及び近距離部42を扇形中心角で90~270°の間の範囲で遠距離屈折又は近距離屈折を提供し、前記遠距離部と近距離部との間の移行部43は、扇形中心角を3~7°の間の範囲に形成されるようにして、複視やハロー、グレアのような副作用の発生頻度を最小化することができる。
【0038】
前記遠距離部41を拡大させることは、遠距離の事物を見るときは、見る視力範囲が拡張されるため、これに合わせてレンズの遠距離部を拡大させると、より広い範囲に対する視力の質を向上させることができる。反面、近距離部42は、見る視力範囲が狭いため、レンズの近距離部の角度を減少させても、あまり視覚的な不便さがない。すなわち、事物を見る範囲に応じて、コンタクトレンズの遠距離部と近距離部の扇形中心角を様々な角度で形成することができる。
【0039】
一方、本発明のコンタクトレンズ10は、両眼間の遠距離部の屈折と近距離部の屈折を互いに異ならせて形成することができる。すなわち、両眼のうち主に使用される眼(事物を見たときにさらにはっきりと見える眼)を優位眼とし、残りの眼を非優位眼として区分し、優位眼と非優位眼に対する遠距離部と近距離部の屈折を互いに異ならせて形成することである。優位眼の検査方法としては、両眼を開けたままで顔の正面に両手を持ってきて、手のひらで三角形を作り、少しずつ遠方の目標物をその中に入れる。そして、眼を片方ずつ隠した場合、その三角形に目標物がある側が優位眼(主視眼)である。
【0040】
例えば、着用時の光学領域での屈折として、優位眼は、遠距離部を正視である0D(diopter)とし、近距離部を-0.75Dで形成し;非優位眼は、遠距離部を-0.50Dとし、近距離部を-2.25Dで形成して、両眼で-0.50D~-0.75Dの間の共通した屈折を有する混合ゾーン(blend zone)が形成されるようにすることができる。
【0041】
図3Aは、一般の遠距離用単焦点レンズ50を示した図であって、遠距離に対する焦点距離が短く形成されることが分かり、図3Bは、一般の近距離用単焦点レンズ60を示した図であって、近距離に対する焦点距離が短く形成されることが分かる。このような単焦点レンズを用いて両眼に互いに異なる屈折を有するモノビジョン方式を適用する場合、図3Cに示されたように、遠距離と近距離の焦点深度が短いため、遠距離と近距離の焦点深度の間の中間距離(70)は、焦点が合わないため、眼に結像する像がぼやけて現れるぼやけゾーン(blur zone)が形成されるため、両眼視の視力が低下するという欠点がある。
【0042】
勿論、一つのレンズに遠距離と近距離の両方を形成し、中間に移行部を形成して急激な屈折の変化を防止する形態で提供することができるが、これもまた、移行部で円滑な視力を提供しにくく、中間距離の部分で両眼に同時に移行部区間が形成されるため、中間距離での複視(二重像)またはハロー、グレアが発生してしまい、焦点による連続した視力の提供が難しいという問題点が内在している。
【0043】
そこで、本発明の老眼用コンタクトレンズ10は、図4Aを参照したように、遠距離部41と近距離部42を上下に配置し、かつ遠距離部と近距離部の屈折を一定の範囲内に形成されるようにすることで、統合された焦点深度を増加させて中間距離での視力を向上させることができる。
【0044】
前記焦点深度を増加させると、両眼を互いに異なる屈折で提供する際に、遠距離から近距離まで連続した視力を提供することができる。
【0045】
すなわち、図4Bを参照したように、レンズ着用時に優位眼用コンタクトレンズと非優位眼用コンタクトレンズの屈折を互いに異なる範囲に形成する場合、増加した焦点深度によって、優位眼と非優位眼の中間距離(70)の部分で焦点深度又は屈折が同一になる混合ゾーン(blend zone)が形成されるので、中間距離視力を向上させることができる。
【0046】
このように、焦点深度を増加させた老眼用コンタクトレンズを使用して、両眼に着用されるコンタクトレンズを遠距離用と近距離用に互いに異なる屈折の範囲に形成し、かつ遠距離と近距離の度数の差を小さく形成するので、両眼にイメージの大きさが同一になる中間距離(70)部分である混合ゾーンが存在するようになり、混合ゾーンを通じて眼に結像したイメージが同一であるので、中間距離視力を向上させることができる。
【0047】
また、中間距離を除いた遠距離と近距離の部分には、眼に結像した像の鮮明度に差があるが、多重像の大きさは異なって見えないため、出生時から有している両眼神経適応システム(innate binocular neural adaption system)によって鮮明な像のみを選択して認知するので、鮮明な視力を確保することができる。すなわち、両眼神経適応システムである2つの眼を通じて2つの像が現れたとき、神経系の関門(neural gate)が、最も効果的な単一の知覚を得るために、瞬間的にさらによく見える像を選択するようになるので、混合ゾーン以外の遠距離と近距離でも鮮明な像を得ることができ、視力を向上させることができるので、遠距離から近距離まで全ての領域での鮮明な視力を提供することができる。
【0048】
したがって、前記両眼の遠距離部と近距離部を互いに異なる屈折で形成する場合には、図5Aに示されたように、両眼の遠距離部41及び近距離部42を、それぞれ扇形中心角が180°に近接するように形成して、上下を同じ比率で形成することができる。
【0049】
また、図5Bに示されたように、主に遠距離視力を提供する左側の優位眼の場合には、上部の遠距離部41の扇形中心角を増加させ、下部の近距離部42は縮小させ、主に近距離視力を提供する右側の非優位眼の場合には、上部の遠距離部41を縮小させ、下部の近距離部42を拡大させることができ、好ましくは、優位眼の遠距離部は210°、近距離部は150°に形成し、非優位眼の遠距離部は150°、近距離部は210°に形成する。
【0050】
また、図5Cを参照したように、左側の優位眼の場合に遠距離部41を、右側の非優位眼の場合に近距離部42を最大に拡大させることができる。好ましくは、優位眼の遠距離部は270°、近距離部は90°に形成し、非優位眼の遠距離部は90°、近距離部は270°に形成する。
【0051】
また、図5Dに示されたように、角度を180°から270°の間で多様に提供することで、向上した視力を提供することができる。好ましくは、優位眼の遠距離部は240°、近距離部は120°に形成し、非優位眼の遠距離部は120°、近距離部は240°に形成する。
【0052】
このような比率のうち、最も好ましくは、図5Bでのように、優位眼用コンタクトレンズは、遠距離部90~210°及び近距離部90~150°の範囲で左右対称に屈折力になるように形成し、非優位眼用コンタクトレンズは、遠距離部90~150°と近距離部90~210°の範囲で左右対称に屈折力になるように形成し、移行部は、3~7°の範囲で厚さを緩やかに連結させた実施例を使用することである。
【0053】
本発明は、両眼に着用される2つのコンタクトレンズの遠距離部41と近距離部42が互いに非対称に形成されるので、一部の区間では、両眼が互いに異なる屈折を有するようになる。しかし、本発明は、各コンタクトレンズ内での遠距離部と近距離部の度数の差を狭く形成して、各コンタクトレンズ内での遠距離部の焦点深度と近距離部の焦点深度が連続的に配列されるようにして統合焦点深度を増加させることによって、中間距離で両眼の焦点深度が同一になる区間が形成されるので、両眼視の機能が回復して中間距離での視力が向上する。また、両眼のいずれか一方での焦点深度がずれてぼやけた像が提供される場合、両眼神経適応システムによって、両眼に入ってきた2つの像のうち鮮明な像を選択して認知することによって、遠距離、中間距離及び近距離での鮮明な視力を提供することができる。
【0054】
図6Aは、図5Bのような範囲で製造された本発明のコンタクトレンズを着用した両眼視の焦点離脱グラフである。図示のように、遠距離で強い視力性能を示すと共に、中間距離及び近距離でもバランスの取れた視力結果を示しているので、ほとんどの距離で焦点が良好に形成されて、バランスが取れ、自然な視力が形成されることがわかる。
【0055】
図6B及び図6Cは、既存の多焦点老眼レンズと単焦点老眼レンズを着用した両眼視の焦点離脱グラフである。図示のように、中間距離領域で視力が急激に低下することがわかる。
【0056】
したがって、本発明は、既存の方式よりも中間距離の視力を向上させて、全体的な領域での視力の幅を狭くすることで、着用者が容易に適応するようにすることができる。
【0057】
実験例1)屈折に対する視力の対比
【0058】
コンタクトレンズの屈折を多様に形成して視力度を測定した。
【0059】
実施例1は、優位眼と非優位眼とに区分し、コンタクトレンズの光学領域を180°の範囲に上下に上部遠距離と下部近距離を区分し、下記の表1の屈折を有するようにした。
【0060】
比較例1は、右眼と左眼の両方が同じ屈折を有するようにし、中心の遠距離、縁部の近距離、及び中心と縁部との間の中間距離を有する多焦点コンタクトレンズであって、下記の表1の屈折を有するようにした。
【0061】
比較例2は、右眼と左眼の両方が同じ屈折を有するようにし、中心の遠距離及び縁部の近距離を有する多焦点コンタクトレンズであって、下記の表1の屈折を有するようにした。
【0062】
比較例3は、優位眼と非優位眼とに区分し、両眼の屈折のみを異ならせて形成した不同視コンタクトレンズであって、下記の表1の屈折を有するようにした。
【0063】
【表1】
【0064】
前記表1の屈折を有するコンタクトレンズを用い、50代の老眼患者20名を対象として、レンズを着用した後、近距離視力(Jaeger方式)、中間距離視力(Decimal方式)、遠距離視力(Decimal方式)を測定し、立体感及び適応度を最下と最上を5段階に区分して表示し、ぼやけ領域があるか否かを確認し、平均値によって表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
前記表2に示されたように、実施例1は、中間距離視力も向上したことがわかり、立体感及び適応度において高い点数を受け、ぼやけ領域が存在しないので、全視野領域で鮮明な像が提供されるものと示された。
【0067】
反面、比較例1は、中間距離視力は向上したものと示されたが、比較例1~3はいずれも、両眼に提供される屈折空白領域があるため、ぼやけ領域が現れることがわかり、空白領域が発生し、立体感及び適応度も低いものと示された。
【0068】
実験例2)遠距離と近距離の範囲に対する視力の対比
【0069】
コンタクトレンズの光学領域において優位眼及び非優位眼に対する遠距離と近距離の形成角度を表3のように設定した。このとき、角度は、中心を通過する垂直線を基準として左右対称となるようにし、優位眼及び非優位眼の屈折は、実施例1の屈折に設定した。実施例2は図5B、比較例4は図5A、比較例5は図5C、比較例6は図5Dの形態に加工した。
【0070】
【表3】
【0071】
前記表3の角度で形成されたコンタクトレンズを用い、50代の老眼患者20名を対象として、レンズを着用した後、近距離視力(Jaeger方式)、中間距離視力(Decimal方式)、遠距離視力(Decimal方式)を測定し、立体感及び適応度を最下と最上を5段階に区分して表示し、平均値によって表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
表4を参照したように、遠距離と近距離を同じ角度に両分した比較例4の場合、実施例2よりも近距離視力及び遠距離視力が低下することがわかった。
【0074】
また、実施例2よりも優位眼の遠距離角度及び非優位眼の近距離角度を増加させた比較例5及び6は、中間距離視力が低下し、立体感及び適応度が低く示された。
【0075】
したがって、実施例2の角度範囲に遠距離及び近距離の屈折を形成するとき、最も良い視力の質が示されることがわかった。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C