(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】RFIDタグ用のコイル
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/04 20060101AFI20220527BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20220527BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
H01Q9/04
H01Q1/50
G06K19/077 296
G06K19/077 232
(21)【出願番号】P 2020138489
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2022-01-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(73)【特許権者】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
(72)【発明者】
【氏名】石橋 孝裕
【審査官】齊藤 貴孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-167190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0245851(US,A1)
【文献】国際公開第2017/022511(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/082017(WO,A1)
【文献】特開2020-079042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/04
H01Q 1/50
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFチップと、前記RFチップに接続されたパターンコイルを搭載した基板と、を有
し、タイヤのゴムに埋め込まれるRFIDタグにおいて用いられるコイルであって、
前記コイルは、前記基板が収納されるハウジングに保持されて、前記基板を周回し、
前記ハウジングは第1の溝と第2の溝とを備え、
前記コイルの第1の端部は
前記ハウジングの前記第1の溝から延設してアンテナの第1エレメントを構成し、
前記コイルの第2の端部は
前記ハウジングの前記第2の溝から延設して前記アンテナの第2エレメントを構成し、
前記第1エレメントと前記第2エレメントとは平行に配置され、かつ、前記第1エレメントは前記第2エレメントよりも延設長さが長く、
前記コイルと前記パターンコイルとは結合トランスを構成し、前記コイルの巻き線数は前記パターンコイルの巻き線数より小さい、RFIDタグ用のコイル。
【請求項2】
前記第1の溝は前記第2の溝よりも溝の深さが深い、請求項1に記載のRFIDタグ用のコイル。
【請求項3】
前記ハウジングはさらに前記コイルを保持するためのガイド部を備え、前記コイルは前記ガイド部のリング状溝を1回以上巻回する、請求項1または2に記載のRFIDタグ用のコイル。
【請求項4】
前記コイルと前記コイルの端部の前記第1エレメントと前記第2エレメントとは1本の導線を曲げて形成されている、請求項1
から3のいずれか1項に記載のRFIDタグ用のコイル。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記コイルの形状を保持
するガイド部と、前記基板を収納する収納部と、を有し、
前記パターンコイルの軸心、および前記コイルの軸心が一致する、請求項1
から4のいずれか1項に記載のRFIDタグ用のコイル。
【請求項6】
前記RFIDタグの通信周波数における電波の波長をλとしたとき、前記第1エレメントの電気長がλ/4、λ/2、(3/4)λまたは(5/8)λである、請求項1から
5のいずれか1項に記載のRFIDタグ用のコイル。
【請求項7】
前記コイルおよび前記基板が樹脂で前記ハウジングにモールドされた、請求項1から
6のいずれか1項に記載のRFIDタグ用のコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ用のコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(再表2007-083574号公報)には、無線ICチップと、無線ICチップと接続され、所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路を設けた給電回路基板と、給電回路基板が貼着又は近接配置されており、給電回路から供給された送信信号を放射する、及び/又は、受信信号を受けて給電回路に供給する放射板と、を備え、送信信号及び/又は受信信号の周波数は、共振回路の共振周波数に実質的に相当すること、を特徴とする無線ICデバイスが開示されている。
【0003】
特許文献2(特開2011-097586号公報)には、物品本体と電子タグの組立体であって、電子タグは、物品の固有のデータを記憶する電子デバイスと、電子デバイスに連結され、記憶されたデータをリモートリーダデバイスに送信するためのアンテナと、を有する種類のタグであり、物品のある部分が、少なくとも部分的に、ゴムを含む材料組成からなり、電子デバイスとアンテナが、物品のある部分に取り付けられるとともに、外部接触手段を有し、アンテナは可撓性であり、少なくとも部分的に可撓性導電材からなり、可撓性導電材は少なくとも部分的に導電ゴムを含む組立体が記載されている。
【0004】
特許文献3(特開2017-132291号公報)には、RFIDチップとアンテナとを備えたRFIDタグ内蔵タイヤにおいて、アンテナを、RFIDチップに接続される第1のアンテナと、第1のアンテナの外部に設けられて第1のアンテナに電磁界結合される第2のアンテナとから構成するとともに、RFIDチップと第1のアンテナとを第1の固定部材に固定し、RFIDタグをタイヤのカーカスプライ端のタイヤ径方向外側に配置し、第2のアンテナをカーカスプライを構成する導電性のカーカスプライコードと電磁界結合させるようにしたRFIDタグ内蔵タイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再表2007-083574号公報
【文献】特開2011-097586号公報
【文献】特開2017-132291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電波を用いて情報の書き込みまたは読み出しを行うことができる非接触型の情報記録再生装置として、受動式無線周波数識別トランスポンダ(以下、RFIDタグともいう)がある。トランスポンダをタイヤに取り付け、トランスポンダにタイヤに関する情報を書き込み、または読み出しを行うことによって、タイヤを管理することができる。
例えば、自動車等の車両用のタイヤでは、製造管理、流通管理、タイヤ使用中のメンテナンス管理、さらには1次ライフ終了後、摩耗したトレッド部を更生したリトレッドタイヤの製造管理、およびそのメンテナンス管理等において、その仕様、製造履歴、使用履歴等の各タイヤの固有情報を把握する必要がある。
【0007】
ところで、車両走行時に発生するタイヤ内の歪みがRFIDタグなどの電子部品を被覆する被覆ゴムと隣接部材との境界面に集中し、その結果、電子部品と隣接部材との間に亀裂が発生するおそれがあり、問題が生じる。
一方、耐久性向上の観点から、電子部品を被覆する被覆ゴムにカーボンブラックが多量に配合されると、タイヤに取付けられたRFIDタグの通信性能に影響が生じてうまく通信できない場合がある。
【0008】
従来、自動車タイヤなどのゴム製品に埋め込んで使用するRFIDタグの殆どが半波長ダイポールアンテナ方式を用いたRFIDタグを使用している。しかし、カーボンブラックを含むゴム製品の中にダイポールアンテナ方式を用いたRFIDタグを埋め込んだ場合、RFIDタグの2つの給電点の間に数10KΩから数100KΩの抵抗が接続されることになり、これが半波長ダイポールアンテナの2つのアンテナエレメント間に存在することでアンテナのインピーダンスおよび実効電気長に大きく影響する。
【0009】
また、通常のダイポールアンテナでは、RFチップがダイポールアンテナの中央に配置されるため、タイヤが大きく伸縮した時には、RFチップとRFチップの両端に接続される2つのアンテナ線との接合部が破損して通信ができなくなるとの課題もある。
【0010】
また、ダイポールアンテナを備えたRFIDタグを直接タイヤに埋め込んだ場合、加硫時などタイヤの製造過程において、ダイポールアンテナの形状および電気長が変化し、RFIDタグの通信周波数における通信可能距離などの特性が劣化するとの課題もある。
【0011】
特許文献1に記載の発明の無線ICデバイスは、無線ICチップと放射板との間に所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路を配置し、送信信号および/または受信信号の周波数を共振回路の共振周波数に実質的に相当するように構成したものである。
しかし、放射板が給電回路と電磁界結合および/または容量結合しているため(第1実施例、
図1から
図7参照)、放射板の信号源インピーダンスが高く、無線ICデバイスを、カーボンブラックを含むゴム製品に埋め込んだ場合には無線ICデバイスの通信可能距離などの特性がカーボンブラックのインピーダンスおよびゴム製品の比誘電率の影響を受けやすいとの課題があった。
【0012】
特許文献2に記載の発明のタイヤゴムなどの物品本体と電子タグとの組立体は、アンテナに少なくとも部分的に導電ゴムを含む可撓性導電材を用いることにより、機械的に物品内に組み込むのに適したものである。
しかし、電子タグを、カーボンブラックを含むゴム製品に埋め込んだ場合には無線ICデバイスの通信可能距離などの特性がカーボンブラックのインピーダンスおよびゴム製品の比誘電率の影響を受けやすい、また、導電性ゴムでアンテナを構成した場合、金属のアンテナに比べて抵抗成分が大きい、との課題があった。
【0013】
特許文献3に記載の発明のRFIDタグ内蔵タイヤは、RFIDチップに接続される第1のアンテナと、第1のアンテナの外部に設けられた第2のアンテナとを電磁界結合するとともに、第2のアンテナを導電性のカーカスプライコードと電磁界結合させたRFIDタグ内蔵タイヤである。
しかし、第1のアンテナと第2のアンテナとが電磁界結合しており、第2のアンテナの信号源インピーダンスが高いため、やはり、RFIDタグを、カーボンブラックを含むゴム製品に埋め込んだ場合にはRFIDタグの通信可能距離などの特性がカーボンブラックのインピーダンスおよびゴム製品の比誘電率の影響を受けやすいとの課題があった。
【0014】
本発明の主な目的は、タイヤに貼着または埋め込んで使用した場合でも、タイヤに含まれるカーボンブラックおよび、タイヤの比誘電率の影響を受けることが少なく、通信特性に優れたRFIDタグを構成することのできるRFタグ用のコイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)
一局面に従うRFタグ用のコイルは、RFチップと、RFチップに接続されたパターンコイルを搭載した基板と、を有するRFIDタグにおいて用いられる。RFチップとパターンコイルとは、基板の表面に配置するように搭載されていても良いし、基板の内部に埋め込まれるように搭載されていても良い。
基板とコイルとは、ハウジングの中に収納されており、コイルは前記基板を周回し、コイルの第1の端部は基板から延設してアンテナの第1エレメントを構成し、コイルの第2の端部は基板から延設してアンテナの第2エレメントを構成し、第1エレメントと前記第2エレメントとは平行で、かつ、第1エレメントは第2エレメントよりも延設長さが長く、コイルとパターンコイルとは結合トランスを構成し、コイルの巻き線数はパターンコイルの巻き線数より小さい。
【0016】
この場合、結合トランスの1次側に相当するコイルの巻き線数を2次側に相当するパターンコイルの巻き線数より小さくすることにより、第1エレメントと第2エレメントとが接続されるコイルの入力インピーダンスを低インピーダンスとし、2次側を高インピーダンスに変換して、RFチップの入力インピーダンスに適合させることができる。
また、ハウジングに設けられたガイド部により、基板と、コイルとの位置関係を安定させることができる。
本発明のRFIDタグを構成するコイルは、タイヤ等のゴム製品に取り付けた場合に、第2エレメントが抵抗性のインピーダンスを有するタイヤ等のゴム製品と電気的に接続されることによって、タイヤ等のゴム製品がRFIDタグのグランドとして機能するため、高感度で通信を行うことができる。したがって、タイヤ等のゴム製品に取り付けた場合に、通信特性に優れたRFIDタグとすることができる。
また、本発明のコイルで構成したRFIDタグは、基板の上面に結合トランスの1次側を配置する必要がないため、基板のサイズを効果的に小さくすることができる。これにより、変形を伴うタイヤ等のゴム製品に取り付けた場合でも破損または剥離しにくくかつ耐久性に優れたRFIDタグとすることができる。
本発明のコイルは空芯コイルであってよい。
【0017】
(2)
第2の発明にかかるコイルは、一局面に従うコイルにおいて、コイルとコイルの端部の第1エレメントと第2エレメントとは1本の導線を折り曲げて形成されていてもよい。
【0018】
この場合、コイルと第1エレメントおよび第2エレメントとの接続をはんだ付け等で行う必要がないため、製造工程が簡単でかつ電気的接続の信頼性が高い。
【0019】
(3)
第3の発明にかかるコイルは、一局面または第2の発明にかかるコイルにおいて、ハウジングは、コイルの形状を保持するするガイド部と、基板を収納する収納部と、を有し、パターンコイルの軸心、およびコイルの軸心が一致してもよい。
【0020】
この場合、コイルおよび基板がハウジングに固定されるので、パターンコイルの中心軸とコイルの中心軸とを正確に一致させることができる。したがって、結合トランスの効率を高くすることができる。
【0021】
(4)
第4の発明にかかるコイルは、一局面から第3の発明にかかるコイルにおいて、RFIDタグの通信周波数における電波の波長をλとしたとき、第1エレメントの電気長がλ/4、λ/2、(3/4)λ、(5/8)λであってもよい。
【0022】
この場合、第1エレメントの電気長をλ/4、λ/2、(3/4)λ、(5/8)λとすることにより、第1エレメントの共振周波数をRFIDタグの通信周波数と一致させることができ、RFIDタグの通信距離を伸ばすことができる。
【0023】
(5)
第5の発明にかかるコイルは、一局面から第4の発明にかかるコイルにおいて、コイルおよび基板が樹脂でハウジングにモールドされてもよい。
【0024】
この場合、埋め込み時の結合トランスの1次側と基板との位置ずれ等を防止できる。また、RFチップを樹脂でモールドすることができるため、RFチップをパッケージされていないベアチップの状態でパターンコイルの上に搭載することができる。
【0025】
(A)
第Aの発明にかかるコイルは、第2の発明にかかるコイルにおいて、1本の導線は導体の編線であってもよい。
【0026】
この場合、第1エレメントおよび第2エレメントが導体の編線(編銅線、編導線)で形成されることにより、仮にタイヤが大きく変形しても一度に全ての編線が破断することがないため通信を維持することができ、耐久性に優れる。
【0027】
(B)
第Bの発明にかかるコイルは、一局面から第5の発明にかかるコイルにおいて、コイルがタイヤの内側に貼着され、またはタイヤのゴムに埋め込まれてもよい。
【0028】
この場合、タイヤを維持管理するための各種データを、タイヤの内側に貼着され、またはタイヤのゴムに埋め込まれたRFIDタグで管理することができる。
【0029】
(C)
第Cの発明にかかるRFIDタグ内蔵タイヤは、一局面から第5の発明にかかるコイルを備えたRFIDタグがタイヤの内側に貼着され、またはタイヤのゴムに埋め込まれていてもよい。
【0030】
この場合、タイヤの内側に貼着され、またはタイヤのゴムに埋め込まれたRFIDタグと通信することにより、タイヤを維持管理するための仕様、製造履歴、使用履歴等の各タイヤの固有情報を書き込み、あるいは読み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】RFIDタグの、基板の第1面側から見た模式的正面図である。
【
図2】基板の第1面側から見た模式的拡大正面図である。
【
図3】基板の第2面側から見た模式的拡大背面図である。
【
図4】
図3のa-a’線で基板を切断した場合の模式的断面図である。
【
図6】RFチップを第1の角度に配置したときの、RFチップと結合トランスの2次側との接続を示す模式的図面である。
【
図7】RFチップを第1の角度と直交する第2の角度に配置したときの、RFチップと結合トランスの2次側との接続を示す模式的図面である。
【
図8】ブチルゴムシートに粘着配置した状態のRFIDタグを基板の第2面側から見た模式的平面図である。
【
図9】RFIDタグをブチルゴムシートと第2のゴムシートで挟み込んだ状態の、ゴム被覆RFIDタグを側面から見た模式的断面図である。
【
図10】ゴム被覆RFIDタグをタイヤの内側に貼り付けて測定した、RFIDタグの通信可能距離の周波数特性の一例を示す図である。
【
図11】ゴム被覆RFIDタグをタイヤの内側に貼り付けた状態を示す模式的断面図である。
【
図12】ゴム被覆RFIDタグの製造ラインの一例を示す模式図である。
【
図13】テーピング状態のRFIDタグを用いてゴム被覆RFIDタグを製造する場合の製造ラインの一部を示す模式的図面である。
【
図15】ゴム被覆RFIDタグの製造ラインの他の例を示す模式図である。
【
図16】RFIDタグをタイヤに取り付けた場合の周波数と通信距離との模式図である。
【
図17】第3の実施形態のコイルを備えたRFIDタグの模式的斜視図である。
【
図18】
図18(a)は第3の実施形態の、端部に第1エレメントと第2エレメントとを備えたコイル、および基板の模式的斜視図であり、
図18(b)は第3の実施形態のコイルを備えたRFIDタグの、基板に搭載されたパターンコイルとRFチップとの模式的斜視図である。
【
図19】第3の実施形態のコイルを備えたRFIDタグの、ハウジングに収納されたコイルおよび基板の模式的斜視図である。
【
図20】第3の実施形態のコイルを備えたRFIDタグの、ハウジングの収納部およびガイド部を示す模式的斜視図である。
【
図21】
図21(a)は、第1の変形例のコイルを備えたRFIDタグの模式的斜視図であり、
図21(b)は第1の変形例のコイルを備えたRFIDタグの模式的上面図である。
【
図22】
図22(a)は、第2の変形例のコイルを備えたRFIDタグの模式的斜視図であり、
図21(b)は第2の変形例のコイルを備えたRFIDタグの模式的上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
なお、特許請求の範囲に記載の請求項に係る発明は、下記の第3の実施形態のコイルに相当する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1は、RFIDタグ100の、基板90の第1面91側から見た模式的正面図であり、アンテナを構成する第1エレメント50、第2エレメント60、および基板90を備えたRFIDタグ100を示す。
図2は基板90の第1面91側から見た模式的拡大正面図であり、
図3は基板90の第2面92側から見た模式的拡大背面図であり、
図4は
図3のa-a’線で基板90を切断した場合の模式的断面図である。また、
図5はRFIDタグ100の等価回路図である。
【0034】
図1から
図4に示すように、直方体状に形成される基板90の第1面91にレール状の溝65(
図4参照)が形成され、また基板90の第1面91に長方形状の導体で形成された第2エレメント60が設けられている。溝65の底部には複数のスルーホール70が設けられている。複数のスルーホール70は適宜間隔で設けることができる。この実施の形態では5つのスルーホール70が設けられているが、2以上が好ましく、4以上がさらに好ましい。溝65内に導体の編線で形成された第1エレメント50が配設されている。
【0035】
ここで、溝65に第1エレメント50が配設されているとは、第1エレメント50とスルーホール70とが電気接続されていればその形態は問わない。例えば、溝65内に変形性を有する第1エレメント50が圧入されていてもよく、溝65内に第1エレメント50が配置されブチルゴムシート120の一部が溝65内に入り込むことで第1エレメント50とスルーホール70とが電気接続されるようにしてもよく、容量結合される状態でもよい。
溝65に第1エレメント50が配設され、第1エレメント50の一方側端部と他方側端部とは基板90から外側に延設された状態となる。本実施形態の場合、一方側端部の延設長さは第1エレメント50の全長の約1/10、他方側端部の延設長さは第1エレメント50の全長の約4/5である。第1エレメント50の他方側端部の延出方向は、基板90の長手方向に実質的に沿っている。
【0036】
(第1エレメント50)
第1エレメント50に使用される編線としては、銅線、鉄線、真鍮線など任意の金属線を編んで構成される線(網線を含めるものとする。)を使用することができる。また、可撓性および導電性を有する他の金属素材(例えば、テープ状、リボン状など)を使用することもできる。
編線は複数の金属線の集合で構成されているため、ブチルゴムシート120(
図9参照)の成分が編線の内部にまで浸透し、編線はブチルゴムシート120と一体化し、RFIDタグ100がブチルゴムシート120およびタイヤ160(
図11参照)から剥離することを確実に防止することができる。
【0037】
さらに、第1エレメント50を編線により形成することで、第1エレメント50の曲げ、ひねり、変形等が可能になる。それゆえ、タイヤ160が変形あるいは振動した場合に、第1エレメント50がタイヤ160の変形、振動に追従するため、第1エレメント50は破線することを抑止し、また基板90との接続部分が剥がれることも抑止される。
【0038】
第2エレメント60は金属パターン、金属箔、金属板などで形成することができる。第2エレメント60表面はタイヤ160とのインピーダンスを低くするために基板90の表面に露出している。第2エレメント60の大きさは限定するものではないが、本実施形態の場合、約5.5mm×2.5mmの矩形状である。第2エレメント60の形状は必ずしも長方形である必要はなく、例えば円形等でもよい。ただし、第2エレメント60とタイヤ160との接続インピーダンスを低くするため、第2エレメント60の面積は3mm2以上が好ましく、5mm2以上であることがより好ましい。
【0039】
次に、基板90の第2面92に、RFチップ10と結合トランス20とが設けられている。結合トランス20の1次側30の2つの端子は、溝65の底部に設けられたスルーホール70、および基板90に設けられたスルーホール80を介して、それぞれ第1エレメント50および第2エレメント60に接続されている。また、結合トランス20の2次側40の2つの端子は、それぞれ、RFチップ10の端子にワイヤボンドにより接続されている。
なお、本実施の形態においては、結合トランス20の1次側30と2次側40とは、基板90の第2面92にいずれも設ける場合について説明するが、これに限らず、1次側30と2次側40とを基板90の別の面にそれぞれ設けて結合トランス20を構成してもよく、基板90を複数積層にして、異なる層に設けても良い。
【0040】
RFチップ10はエポキシ系ダイボンド材等の接着剤により、結合トランス20の2次側40の表面に、あるいは基板90に接着されている。また、結合トランス20の2次側40とRFチップ10とは樹脂層で封止されている。
樹脂層としては、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂(アクリル樹脂及び誘導体を主成分とした樹脂)、ウレタン樹脂等の絶縁性樹脂を使用することができる。
RFチップ10は、一般に使用される市販品を使用することができ、特に120℃程度の加硫温度に耐性を有するものを用いることが好ましい。
なお、本実施形態のRFIDタグ100は、
図9に示すように、通常、ブチルゴムシートからなる第1のゴムシート120と第2のゴムシート130との間に挟まれた状態でタイヤ160に貼り付けて、または、埋め込んで使用される。
【0041】
具体的な構成は以下のとおりである。
第1のゴムシート120と第2のゴムシート130との間にRFIDタグ100を配設し、第1のゴムシート120、RFIDタグ100および第2のゴムシート130がこの順で積層された積層体を圧着してゴムに被覆されたRFIDタグ(以下、ゴム被覆RFIDタグ150ともいう。)が構成される。ここで、第1エレメント50と基板90の第1面91とが第1のゴムシート120側に配置され、第1エレメント50と基板90の第2面92とが第2のゴムシート130側に配置されるように、RFIDタグ100を第1のゴムシート120と第2のゴムシート130との間に挟み込む。得られたゴム被覆RFIDタグ150においては、基板90の第1面91は第1のゴムシート120で被覆され、第2面92は第2のゴムシート130で被覆された形態となる。
【0042】
(第1のゴムシート120)
本発明に使用される第1のゴムシート120は、ブチルゴムを含有するゴム組成物をシート状にして形成されている。例えば、所定寸法を有する第1のゴムシート120は、ゴム組成物をロールなどにより圧延して長尺なシートとし、このシートを所定の形状、寸法に裁断することで容易に得ることができる。
第1のゴムシート120におけるブチルゴムの含有率は、粘着性およびガス透過性等を向上させるために、50重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上95重量%以下の範囲内であるのがさらに好ましい。ゴム組成物は、ハロゲン化ブチルゴム、ジエン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム等を含有することができる。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。これらジエン系ゴムは一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記第1のゴムシート120には、さらにゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、補強性充填材、軟化剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤は市販品を好適に使用することができる。第1のゴムシート120の厚さは任意であるが、5μm以上500μm以下の範囲とすることができ、特に10μm以上200μm以下が好ましい。
第1のゴムシート120は通常、未加硫ゴムシートであり粘着性に優れているため、例えば空気入りのタイヤ160のインナーライナー用部材として用いることができる。
【0044】
(第2のゴムシート130)
第2のゴムシート130は、ゴムを含有する第2のゴム組成物をシート状にして形成されている。例えば、所定寸法を有する第2のゴムシート130は、第2のゴム組成物をロールなどにより圧延して長尺なシートとし、このシートを所定の形状、寸法に裁断することで容易に得ることができる。
ゴムの種類としては、従来汎用されている天然ゴムおよび/または各種合成ゴムのうちから1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
合成ゴムとしては、具体的には例えば、ニトリルゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化IIR、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0045】
第2のゴム組成物は、上記第1のゴム組成物を使用することができるが、架橋剤を含有することが好ましい。そのような架橋剤としては、通常ゴム組成物の架橋に使用される架橋剤であればどのような種類のものでも使用することができる。例えば、硫黄、有機過酸化物、有機硫黄化合物などが挙げられる。架橋剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対し、通常0.1重量部以上10重量部以下、好適には1重量部以上5重量部以下とすることができる。
【0046】
また、ゴム組成物中には、ゴム業界で通常使用される加硫促進剤、充填剤、オイル、老化防止剤等の各種ゴム用添加剤を適宜配合することができる。
加硫促進剤としては、例えば、ステアリン酸、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対し、通常0.1重量部以上10重量部以下、好適には1重量部以上3重量部以下とすることができる。
【0047】
充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、亜鉛華、硫酸バリウム、酸化チタン等を挙げることができ、これらは1種を単独で、または2種以上を併用することができる。充填剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対し、通常10重量部以上200重量部以下、好適には30重量部以上150重量部以下とすることができる。
【0048】
オイルとしては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系プロセスオイル、エチレン-α-オレフィンのコオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン等の鉱物油、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油等の植物油などのオイルを用いることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用することができる。オイルの配合量は、ゴム成分100重量部に対し、通常0.1重量部以上100重量部以下、好適には1重量部以上50重量部以下とすることができる。
【0049】
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系;オクチルジフェニルアミン等のジフェニルアミン系;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対し、通常0.1重量部以上20重量部以下、好適には0.5重量部以上10重量部以下とすることができる。
これらの添加剤は、第1のゴムシート120のゴム組成物に配合してもよい。
第2のゴムシート130の厚さは任意であるが、5μm以上500μm以下の範囲とすることができ、特に10μm以上200μm以下が好ましい。
【0050】
第2のゴムシート130が加硫剤を含有し、加熱によって硬化する未加硫のゴムシートである場合、加熱により加硫シートを製造するには、第2のゴムシート130を、通常120℃以上、好ましくは125℃以上200℃以下、より好ましくは130℃以上180℃以下の温度で加熱・加硫処理するのが好ましい。この加熱によって加硫シートが得られる。この加熱・加硫処理は、通常タイヤの加硫時に行われる。
このように、タイヤの加硫時に第2のゴムシート130を加熱・加硫処理する場合には、ゴム被覆RFIDタグ150の第1のゴムシート120側をタイヤ160内面に接着させた状態で加熱・加硫処理を行うことができる。
【0051】
(RFIDタグ内蔵タイヤ500)
図11は、ゴム被覆RFIDタグ150をタイヤ160の内側に貼り付けられた状態を示す模式的断面図であり、タイヤ160に後述のゴム被覆RFIDタグ150が取り付けられたRFIDタグ内蔵タイヤ500を示す。ゴム被覆RFIDタグ150は、タイヤ160の内側に貼着されてもよいし、タイヤ160のゴムに埋め込まれてもよい。
本実施の形態においては、タイヤ160にゴム被覆RFIDタグ150を取り付けているが、タイヤ160にRFIDタグ100を取付けても良い。タイヤ160は典型的にはカーボンブラックを含むタイヤであり、カーボンブラックはタイヤのインピーダンスに影響を与える。
RFIDタグ100またはゴム被覆RFIDタグ150は、タイヤ160に取り付けられることによって、第2エレメント60がタイヤ160と電気的に接続され、その結果、タイヤ160がRFIDタグ100のグランドとして機能する。したがって、本発明のRFIDタグ100またはゴム被覆RFIDタグ150は、タイヤ160に取り付けられた場合も高感度に通信を行うことができる。なお、第2エレメント60とタイヤ160と接続は、容量接続であってもよいし、直接接続していてもよい。
【0052】
(タイヤ160)
本発明で使用し得るタイヤ160としては、特に限定されるものではないが、通常、ゴム製の空気タイヤであり、典型的にはカーボンブラックを含有したタイヤ160である。そのタイヤ160の内周面側に、RFIDタグ100が埋設または貼着される。タイヤ160が取り付けられる車両等も特に限定されるものではなく、例えば、自動車、オートバイ、自転車、建設機械、飛行機などが挙げられる。
図11において、タイヤ160は、ホイールリム161、サイドウォール166およびトレッド165を含み、ビードワイヤ162、カーカス163、ブレーカーコード164が埋設されている。
タイヤ160は、ゴム成分(天然ゴム、合成ゴム)、カーボンブラック、加硫剤、充填剤などを含有する。一般的には、カーボンブラックは、ゴム100重量部に対して、40重量部以上60重量部以下、特に、45重量部以上55重量部以下配合されている。
RFIDタグ100は、タイヤ160の内周面に第1のゴムシート120を用いて貼着される。第1のゴムシート120は粘着性を有しており、また第1のゴムシート120は、タイヤ160の内側からブリードするブリード成分(油脂成分など)に接触した場合でも、ブリード成分と混和することができる。その結果、長期においてタイヤ160内面にRFIDタグ100を貼着させることができる。
RFIDタグ100は、タイヤ160のトレッドパターンが配置された部分の内周面に貼着してもよいが、タイヤ160のビード部の内周面に貼着しても良い。
【0053】
次いで、
図5のRFIDタグ100の等価回路図を参照する。例えば受信時には、第1エレメント50と第2エレメント60とで受信した電波が、結合トランス20を介して、RFチップ10に伝達される。この場合、RFチップ10のインピーダンスは数kΩから10kΩ程度であるのに対して、第1エレメント50と第2エレメント60との間のインピーダンスは100Ω程度と小さい。
【0054】
第1エレメント50と第2エレメント60との間のインピーダンスが小さいのは、アンテナ自体のインピーダンスに加えて、第2のゴムシート130およびその周囲のタイヤ160に含まれるカーボンブラックの抵抗成分による影響が大きい。加硫ゴムタイヤ160はタイヤの種類によっては数10kΩ・cm程度の抵抗率がある。一方、RFチップ10はインピーダンス数kΩから10kΩ程度である。
したがって、本実施形態のRFIDタグ100を加硫ゴムタイヤ160に埋め込んだ場合、RFチップ10の端子を直接第1エレメント50と第2エレメント60とに接続すると、受信した電波を効率よくRFチップ10に導くことができない。
【0055】
入力インピーダンスZのRFチップ10と、第1エレメント50および第2エレメント60との間に、2次側40の巻き線数を1次側30の巻き線数で除した巻き線数比nの結合トランス20を介して接続した場合、結合トランス20の1次側30のインピーダンスはZ/n2となる。
そこで、第1の実施形態のRFIDタグ100では、結合トランス20の2次側40の巻き線数と1次側30の巻き線数との比を調整することによって、結合トランス20の1次側30は低インピーダンスで入力し、2次側40を高インピーダンスに変換させてRFチップ10の入力インピーダンスに適合させている。
ただし、2次側40の巻き線数を大きくすることには、結合トランス20の面積などの制約があり、2次側40と1次側30との巻き線数の比は、ICチップの仕様、またはタイヤの材質、カーボンブラックの含有量等によって調整されることが好ましい。
【0056】
本実施形態の場合、第1エレメント50が基板90から一方向に伸びており、RFIDタグ100のアンテナは、第2エレメント60をグランドプレーン、第1エレメント50をアンテナ線としたモノポールアンテナと類似の動作となる。
したがって、RFIDタグ100の通信周波数における波長をλとして、第1エレメント50の電気長をλ/4、またはλ/2とすることにより、第1エレメント50の共振周波数をRFIDタグ100の通信周波数と一致させることができるので好ましい。
また、RFIDタグ100を加硫ゴムタイヤ160に貼り付けた場合、または埋め込んだ場合には、第2エレメント60が加硫ゴムタイヤ160と電気的に接続することにより、グランドプレーンがさらに強化される。
【0057】
また、本実施形態では、導体の編線で形成された第1エレメント50の一方の端部の近傍が基板90に形成した溝65内に配設(例えば、嵌合)され、他方の端部は基板90から延在している。
従来のダイポールアンテナ形式のRFIDタグではRFチップを搭載した基板の両端にそれぞれ電気長λ/4のアンテナエレメントを接続している。しかし、この構成では、タイヤが伸縮し、2つのアンテナエレメントにそれぞれ逆方向の応力が加わった場合、アンテナエレメントと基板との間の接続が破損する可能性がある。
これに対して、本実施形態のように、第1エレメント50の一方の端部近傍を基板90に配設し、他方の端部を開放した場合、第1エレメント50の端部と基板90との接続が破損しにくいとの利点がある。
【0058】
さらに本実施形態では、編線で形成された第1エレメント50を基板90に形成した溝65に挟み込んで配設し、スルーホール70に押し付けて導電接続することで、はんだ付けを用いた場合に比べて、第1エレメント50と基板90との接続がタイヤ160の伸縮に強く、第1エレメント50と基板90との位置関係も安定する。
【0059】
(ゴム被覆RFIDタグ150の製造)
次に、本発明にかかるゴム被覆RFIDタグ150の製造装置およびその製造方法を説明する。
図12は、ゴム被覆RFIDタグ150の製造ラインの一例を示す模式図である。
図12において、編線ロール200は第1エレメント50となる編線205を供給するロールであり、ブチルゴムロール210は第1のゴムシート120を供給するロールであり、帯状の第1のゴムシート120が巻かれている。ブチルゴムロール210から送出された第1のゴムシート120上に編線205が配置される。第1のゴムシート120上に配置された編線205は第1のゴムシート120に粘着する。
【0060】
ブチルゴムロール210の供給側にアイドラー220およびタグスタッカー230が配設されている。タグスタッカー230は、複数の基板90が上下に配置されており、1つの基板90を順次第1のゴムシート120上に貼り付けできるように構成されている。基板90の下面側に形成された凹の溝65が供給方向に沿って配置され、その凹の溝65内に編線205が挿入されるよう基板90と編線205とが位置決めされている。
【0061】
本実施の形態においては、タグスタッカー230に配置される基板90には、基板90の第1面91に第2エレメント60が設けられ、基板90の第2面92はRFチップ10と結合トランス20とが設けられたものを使用する。
すなわち、タグスタッカー230に充填される基板90は、上述のRFIDタグ100のうち第1エレメント50を含まないものであり、ここで説明するゴム被覆RFIDタグ150の製造方法を用いることによって、第1エレメント50も備えたゴム被覆RFIDタグ150が製造されることになる。
なお、基板90に第2エレメント60および結合トランス20などを設ける方法は、エッチングなど既知の方法を用いることができる。また、基板90にRFチップ10を設ける方法は、ワイヤボンディングなど既知の方法を用いることができる。
【0062】
図12中の第2のゴムロール240は第1のゴムシート120上に配置された基板90上に加硫ゴムシート130を供給するためのロールであり、アイドラー250およびアイドラー260は第1のゴムシート120、基板90および加硫ゴムシート130が積層された積層体を圧着するアイドラーである。
第1のゴムシート120、基板90および加硫ゴムシート130がこの順で積層された積層体を、アイドラー250およびアイドラー260で圧着することにより、第1のゴムシート120であるブチルゴムシート120の一部が凹の溝65内に入り込み、凹の溝65内に配置された編線は凹の溝65内に確実に保持される。
【0063】
ブチルゴムシート120および第2のゴムシート130の一部は、基板90の周囲から外側に延在しているため、ブチルゴムシート120および第2のゴムシート130の周囲は互いに接触して加圧により接着する。
よって、基板90、および基板90の第1面91および第2面92に設けられた各素子(RFチップ10、結合トランス20、第2エレメント60)、および第1エレメント50(編線205)はブチルゴムシート120および第2のゴムシート130によって保護された状態となる。
図12中、カッター270、カッター280は、第1のゴムシート120、編線205、および加硫ゴムシート130からなる積層体を設定位置で切断し、設定寸法とするものである。
【0064】
上記製造装置を用い、本発明にかかるゴム被覆RFIDタグ150は、次のようにして製造することができる。
ブチルゴムロール210から送出された第1のゴムシート120の上に編線ロール200から送出された編線205を重ね、タグスタッカー230で、第1のゴムシート120と編線205との定められた位置に基板90を配置し、基板90の溝65内に編線205を配置させる。その際、基板90をアイドラー220側に加圧することで、編線は溝65内に圧入される。
【0065】
次に、第1のゴムシート120上に付着した基板90に、第2のゴムロール240から送出された第2のゴムシート130を配置する。
次に、第1のゴムシート120と、基板90と、第2のゴムシート130とが積層された積層体を、アイドラー250、アイドラー260の間を通過させることで積層体を圧着する。
次に、圧着された積層体を所定寸法に切断する。
【0066】
(他のゴム被覆RFIDタグ150の製造方法)
図12に示した製造方法では、タグスタッカー230から供給された基板90をブチルゴムシート120上に供給する構成としたが、次の方法で基板90をブチルゴムシート120上に供給するようにしてもよい。
図13に示す製造装置は、伸縮しないテープ状の基材上に複数の基板90を一定間隔に設置して基材に付着させ、この基材を巻いたタグ供給ロール290と、第1アイドラー220および第1アイドラー220と対向して配置された第2アイドラー310と、巻き取りロール300と、を備えている。
【0067】
タグ供給ロール290から基板90が一定間隔に設置された基材を送り出し、第1アイドラー220および第2アイドラー310の間を通すことで、ブチルゴムシート120上に基板90を転着するように構成されている。
この製造装置においても、第1のゴムシート120上の編線205が基板90の溝65内に嵌り込み、編線205は溝65内に配置される。
【0068】
次いで、
図8は、上記の製造方法によって製造されたゴム被覆RFIDタグ150において、RFIDタグ100を第1のゴムシート120に粘着配置した状態を示す平面図である。また、
図9は、
図8に示す第1のゴムシート120の上に粘着配置したRFIDタグ100に、さらに第2のゴムシート130を被覆して圧着し、RFIDタグ100を第1のゴムシート120と第2のゴムシート130とで挟み込んだ状態のゴム被覆RFIDタグ150を示す断面図である。
【0069】
なお、
図8には、製造時に第1のゴムシート120、編線205(第1エレメント50)、第2のゴムシート130(
図9参照)を切断する切断面110も示した。
切断面110は、基板90の端部から少し離れており、その結果、第1エレメント50の端部が基板90の端部から少し突出している。そのため、切断後でも基板90の全体が第1のゴムシート120と第2のゴムシート130とで確実に被覆され、露出することを防止することができる。なお、本実施形態の場合、基板90の端面と切断面110との距離は約5mmである。基板90の端面と切断面110との距離は5mm以上であることが好ましい。
【0070】
RFIDタグ100を第1のゴムシート120と第2のゴムシート130とで挟み込むことによって、自動車の走行時などタイヤ160が伸縮した場合にも、第1エレメント50の溝65への配設、およびスルーホール70との導電接続を確実にするとともに、第1エレメント50と基板90との位置関係を安定化させることができる。
【0071】
図11は、ゴム被覆RFIDタグ150をタイヤ160の内側に貼り付けた状態を示す模式的断面図である。
図11において、タイヤ160は、ホイールリム161、サイドウォール166およびトレッド165を含み、ビードワイヤ162、カーカス163、ブレーカーコード164が埋設されている。
ゴム被覆RFIDタグ150は、第1エレメント50がタイヤの回転軸を中心として放射方向に沿うようタイヤ160の内側の面に貼り付けられている。ゴム被覆RFIDタグ150の第1のゴムシート120側がタイヤの内面に接するようにゴム被覆RFIDタグ150はタイヤ160の内側の面に貼り付けられている。
【0072】
よって、RFIDタグ100は、ブチルゴムシート120の粘着性によってタイヤ内面に貼着される。また、ブチルゴムシート120がタイヤの内側からブリードするブリード成分に接触した場合でも、ブチルゴムシート120はブリード成分と混和することができるため、長期においてタイヤ内周面にRFIDタグ100を貼着させることができる。
なお、ゴム被覆RFIDタグ150のタイヤ160への固定方法は上記に限定されず、タイヤ160の任意の箇所に貼り付け、または埋め込むことができる。例えば、ゴム被覆RFIDタグ150は、タイヤのトレッドパターンが配置された部分の内周面に貼着してもよく、タイヤのビード部の内周面に貼着しても良い。
【0073】
図10は、ゴム被覆RFIDタグ150をタイヤ160の内側に貼り付けて測定した、RFIDタグ100の通信可能距離の周波数特性を示す図である。
タイヤ160に埋め込まれるRFIDタグでは、タイヤ160に含まれるカーボンブラックによるアンテナの周波数特性の変動を避けるために、RFチップからアンテナに至る経路に急峻な共振特性を持たせることがある。しかし、一般にRFIDタグではEU(通信周波数860MHz)と日本(通信周波数920MHz)とで通信周波数が異なる。このため、RFチップからアンテナに至る経路に急峻な共振特性を持たせたRFIDタグでは、EU向けと日本向けとで異なるRFIDタグを準備することが必要となる。
【0074】
これに対して、本発明のゴム被覆RFIDタグ150では、RFチップ10と第1エレメント50および第2エレメント60との間に巻き線数の異なる結合トランス20を設け、1次側30のインピーダンスを低くして、タイヤゴムに含まれるカーボンブラックの影響を除外した。そして、このことにより、
図10に示すような、EUおよび日本を含む広い範囲の周波数での通信が可能なRFIDタグ100を実現した。
【0075】
また、本発明のゴム被覆RFIDタグ150では、RFIDタグ100を第1のゴムシート120と第2のゴムシート130とで挟み込んだ状態で測定することによって、RFIDタグ100をタイヤ160に貼り付けた場合、あるいはタイヤ160に埋め込んだ場合のRFIDタグ100の通信特性を確認することができるとの利点もある。
【0076】
(第2の実施形態)
次いで、
図6および
図7に第2の実施形態における結合トランス20の2次側40とRFチップ10との接続の2つの例を示す。
第2の実施形態のRFIDタグ100は、RFチップ10の基板90への搭載方法、および、RFチップ10と結合トランス20の2次側40との接続方法のみ第1の実施形態と異なっており、その他は第1の実施形態と同一である。
【0077】
第2の実施形態のRFチップ10はいわゆるBGAパッケージが用いられており、電気接続用端子として、2つのバンプ87を備えている。(通常、さらに、パッケージの固定用として電気接続の無い追加のバンプ87を有する。)結合トランス20の2次側40の一端は直接RFチップ10の第1のバンプ87に、他端は2つのスルーホール85および第1面91側の配線86を介してRFチップ10の第2のバンプ87に接続されている。
図6と
図7とでは結合トランス20の2次側40の形状は同一である。しかし、RFチップ10は、
図6では2つのバンプ87が図の横方向に、
図7では図の縦方向に配置され、その結果、
図7の2次側40の巻き線数が
図6の2次側40の巻き線数より1/4大きくなっている。
【0078】
すなわち、RFチップ10をBGAパッケージとし、結合トランス20の2次側40の形状を
図6または
図7に示す形状とすることにより、同一の基板90を用いて、同一のRFチップ10の配置角度を変更するだけで、結合トランス20の巻き線数比を変更することができる。したがって、第2の実施形態のRFIDタグ100では、例えば、貼り付けられる、または、埋め込まれるタイヤ160のゴムの材質等により、結合トランス20の1次側30のインピーダンスを変更したい場合、RFチップ10の配置角度を変更することにより、同じ入力インピーダンスのRFチップ10に対して、結合トランス20の1次側30のインピーダンスを変更することができる。
なお、上記の例では、結合トランス20の2次側40の巻き線数の差は1/4であるが、結合トランス20の2次側40の形状を工夫することにより巻き線数の差をより大きくできることは、当業者であれば容易に理解されよう。
【0079】
次に、
図14は、
図4の他の例を示す模式的断面図である。
図14のRFIDタグ100では、
図4の溝65の代わりに、スルーホール70の周囲でかつ第1面91上に凸部(ガイド部)65を形成している。その結果、第1エレメント50を所定の位置に配置することができる。
なお、凸部65は、部分的であってもよく、直線的に形成されていてもよい。
【0080】
次いで、
図15は、ゴム被覆RFIDタグ150の製造ラインの他の例を示す模式図である。
図15に示した製造ラインが、
図12で示した製造ラインと異なる点は、
図12の製造ラインにおいて、初めに第1のゴムシート120およびブチルゴムシート120の上に、第1エレメント50を載置することとしていたが、
図15の製造ラインにおいては、基板90を
図12とは逆の面で、いわゆる溝65が上面を向くように配置され、その後、第1エレメント50を当該溝65に配置する手法である。
【0081】
最後に、
図16は、RFIDタグ100をタイヤ160に取り付けた場合の周波数と通信距離との模式図である。
図16に示すように、タイヤ160の種類を2種類(A、B)用意した。また、RFIDタグ100のスルーホール70および第1エレメント50が直接結合された場合(A1、B1)、容量結合された場合(A2、B2)との2種類で周波数と通信距離とを計測した。
【0082】
ここで、容量結合とは、第1エレメント50の編線と、スルーホール70とが直接的に接合されることが主であるが、製造現場において、仮に第1エレメント50の編線と、スルーホール70とが、わずかの距離離間した場合、第1エレメント50とスルーホール70との間に容量を介して結合する状態となる。本例においては、当該状態を容量結合としている。
【0083】
図16に示すように、タイヤ160の種類が異なることで、グラフA1およびグラフB1を比較した結果、差がわずかに生じることがわかった。同様に、グラフA2およびグラフB2を比較した結果、差がわずかに生じることがわかった。
また、
図16に示すグラフA1およびグラフA2を比較した場合、直接結合の方が通信距離は長いものの、容量結合されたグラフA2が、860Hz,920Hzのいずれにおいても、通信距離5m以上を示しているため、実用に充分であることがわかった。
同様に、
図16に示すグラフB1およびグラフB2を比較した場合、直接結合の方が通信距離は長いものの、容量結合されたグラフB2が、860Hz,920Hzのいずれにおいても、通信距離5m以上を示しているため、実用に充分であることがわかった。
【0084】
(第3の実施形態)
本実施の形態は、特願2019-222421に記載のRFIDタグにおいて、結合トランスの一部であるコイルを改良した変形例の一つである。
図17は第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100の模式的斜視図であり、
図18(a)は第3の実施形態の、端部に第1エレメント50と第2エレメント60とを備えたコイル30、および基板90の模式的斜視図であり、
図18(b)は第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100の、基板90に搭載されたパターンコイル40とRFチップ10との模式的斜視図である。また、
図19は第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100の、ハウジング75に収納されたコイル30および基板90の模式的斜視図であり、
図20は第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100の、ハウジング75の収納部76およびガイド部77を示す模式的拡大斜視図である。
【0085】
第1の実施形態のRFIDタグ100では、結合トランス20の1次側30と第2エレメント60がそれぞれ基板90の表面に形成されていた。これに対して、第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100では、結合トランスの1次側を、導線を上面視で基板90を周回するようにハウジング75のガイド部77に保持されたコイル30で形成している。第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100では、さらに、コイル30の一端を延設して第1エレメント50とし、コイル30の他端を第1エレメント50と同方向に延設して第2エレメント60とし、第1エレメント50の延設長を第2エレメント60の延設長より長くしている。第1エレメント50と第2エレメント60とはほぼ平行に配置される。
【0086】
すなわち、第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100は、RFチップ10およびRFチップ10に接続されたパターンコイル40を搭載した基板90と、パターンコイル40と結合トランスを構成するコイル30と、基板90およびコイル30を収納するハウジング75と、を有するRFIDタグ100である。そして、コイル30の第1の端部31はハウジング75の第1の溝から延設してアンテナの第1エレメント50が構成され、コイル30の第2の端部32はハウジング75の第2の溝から第1エレメント50と同方向に延設してアンテナの第2エレメント60が構成され、第1エレメント50は第2エレメント60よりも延設長さが長く、コイル30の巻き線数はパターンコイル40の巻き線数より小さい。
【0087】
第1エレメント50および第2エレメント60の延設長さ、コイル30の巻き線数およびパターンコイル40の巻き線数は、ICチップの仕様、タイヤの材質、カーボンブラックの含有量等によって調整されることが好ましい。
なお、第1エレメント50および第2エレメント60の延設長さは、それぞれ直線部分の第1エレメント50および第2エレメント60の長さとする。
【0088】
そして、ハウジング75には、コイル30を保持するように固定するガイド部77と、基板90を収納する収納部76とが形成され、ハウジング75によってパターンコイル40の軸心およびコイル30の軸心が一致するように、基板90およびコイル30が固定される。すなわち、ハウジング75内には、ガイド部77として、コイル30をガイドするリング状溝が形成され、基板90を保持するための壁片が設けられている。なお、パターンコイル40の軸の中心点およびコイル30の軸の中心点は軸方向でも一致している方がより好ましい。
また、本実施の形態における基板90は、プリント基板のようにRFチップ10およびパターンコイル40を基板90の表面に配置するように搭載してもよいし、
図18(b)に示すように、RFチップ10およびパターンコイル40を基板90の内部に埋め込まれるように搭載していてもよい。この場合には、基板90は複数の樹脂層を積層して構成され、隣接する樹脂層の間にRFチップ10およびパターンコイル40が埋設される。
また、本実施の形態におけるパターンコイル40は、結合トランスを構成するコイルとして動作すればよく、蒸着等で形成される平面状のコイルに限られず、導線のコイルであってもよい。
【0089】
第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100の第1エレメント50、結合トランス20の1次側30、および第2エレメント60は、
図18(a)に示すように、1本の導線を曲げるようにして形成されており、コイル30が、
図18(b)の基板90の外周部に巻き付けられている。
図18(b)に示すように、基板90には、パターンコイル40の上部にRFチップ10が搭載され、RFチップ10の2つの出力端子は、一方がパターンコイル40の一端に、他方がパターンコイル40の他端に接続されている。
図19に示すように、ハウジング75には、RFチップ10およびパターンコイル40を搭載した基板90と、コイル30とが固定される。そして、ハウジング75内に基板90およびコイル30が収納され、基板90およびコイル30が樹脂などのモールド(ポッティング)によってハウジング75に封止される(図示しない)。封止されたハウジング75からは、コイル30から延設された第1エレメント50および第2エレメント60が平行に突出する。
図20に示すように、ハウジング75には、ガイド部77が形成され、このガイド部77がコイル30の導線の形状を保持する役割を果たしている。
【0090】
第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100でも第1の実施形態のRFIDタグ100同様、コイル30の巻き線数をパターンコイル40の巻き線数より小さくすることにより、第1エレメント50と第2エレメント60とが接続されるコイル30の入力を低インピーダンスとし、パターンコイル40の出力を高インピーダンスに変換して、RFチップ10の入力インピーダンスに適合させることができる。
また、第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100では、タイヤ等のゴム製品に取り付けた場合に、第1エレメント50だけではなく第2エレメント60も抵抗性のインピーダンスを有するタイヤ等のゴム製品に埋め込まれるか又は貼着され、電気的に接続されることによって、第2エレメント60に接続されたタイヤ等のゴム製品がRFIDタグ100のグランドとして機能するため、高感度で通信を行うことができる。したがって、タイヤ等のゴム製品に取り付けた場合に、通信特性に優れたRFIDタグ100とすることができる。
さらに、第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100では、コイル30と第1エレメント50と第2エレメント60とが1本の導線を折り曲げて形成されており、はんだ付け等の接続が不要であるため、製造工程が簡単でかつ電気的接続の信頼性が高い。
【0091】
第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100は、タイヤ等のゴム製品に取り付ける場合、そのままゴム製品の中に埋め込むことも可能ではある。しかし、ハウジング75を樹脂93でモールドした樹脂モールドRFIDタグ155として、樹脂モールドRFIDタグ155をゴム製品の中に埋め込む方が、埋め込み時のコイル30と基板90との位置ずれ等を防止できる点で好ましい。また、RFチップ10を樹脂93でモールドすることができるため、RFチップ10をパッケージされていないベアチップの状態でパターンコイル40の上に搭載することができる。
モールド樹脂としては、通常の熱硬化性のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、これにシリカ(SiO2、二酸化ケイ素)の微粒子を混ぜることで、放熱性や熱膨張率などの機能性を付与することが好ましい。
【0092】
図21に第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100の第1の変形例を、また、
図22には第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100の第2の変形例を示した。
図21(a)は、第1の変形例のコイル30を備えたRFIDタグ100の模式的斜視図であり、
図21(b)は第1の変形例のコイル30を備えたRFIDタグ100の模式的上面図である。また、
図22(a)は、第2の変形例のコイル30を備えたRFIDタグ100の模式的斜視図であり、
図22(b)は第2の変形例のコイル30を備えたRFIDタグ100の模式的上面図である。
図17乃至
図20に示す第3の実施形態のコイル30を備えたRFIDタグ100では、リング形に巻回されたコイル30が、方形の基板90の外周部に巻き付けられているのに対して、
図21の第1の変形例のコイル30を備えたRFIDタグ100では、リング形に巻回されたコイル30が、円柱形の基板90の外周部に巻き付けられている。また、
図22の第2の変形例のコイル30を備えたRFIDタグ100では、リング形に巻回されたコイル30が、方形の基板90の角部に当接するように基板90の周囲に巻きつけられている。
【0093】
本発明において、RFチップ10が『RFチップ』に相当し、結合トランス20が『結合トランス』に相当し、第1エレメント50が『第1エレメント』に相当し、第2エレメント60が『第2エレメント』に相当し、基板90が『基板』に相当し、コイル30・1次側30が『コイル』に相当し、パターンコイル40・2次側40が『パターンコイル』に相当し、ハウジング75が『ハウジング』に相当し、収納部76が『収納部』に相当し、溝65とガイド部77が『ガイド部』に相当し、RFIDタグ100、および樹脂モールドRFIDタグ155が『RFIDタグ』に相当する。
【0094】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0095】
10 RFチップ
20 結合トランス
30 コイル
40 パターンコイル
50 第1エレメント
60 第2エレメント
75 ハウジング
76 収納部
77 ガイド部
90 基板
100 RFIDタグ
160 タイヤ
500 RFIDタグ内蔵タイヤ