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  • 特許-高周波誘導加熱装置用変成器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】高周波誘導加熱装置用変成器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/36 20060101AFI20220527BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
H05B6/36 Z
H01F30/10 A
H01F30/10 C
H01F30/10 N
H01F30/10 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018120316
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020004510
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】518226581
【氏名又は名称】株式会社サンプロシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(72)【発明者】
【氏名】奥野 真市
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-340061(JP,A)
【文献】特開平11-288816(JP,A)
【文献】実開昭58-140625(JP,U)
【文献】特開2007-159297(JP,A)
【文献】米国特許第4839616(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/00-6/10、6/14-6/44
H01F 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された四つの環状のコアと、
前記コアそれぞれの孔に内挿された導電管と、
前記コアのうち第一コア及び第三コアの前記導電管それぞれの一端同士を結合する第一導電板と、
前記コアのうち第二コア及び第四コアの前記導電管それぞれの一端同士を結合する第二導電板と、
前記第一コア、前記第二コア、第三コア及び前記第四コアの前記導電管それぞれの他端同士を結合する第三導電板と、
前記導電管を通って四つの前記コアに巻かれた巻線とを備え、
前記巻線が、前記第一コア、前記第二コア、前記第三コア及び前記第四コアの順に、それぞれの孔を通る経路で巻き回されている
ことを特徴とする高周波誘導加熱装置用変成器。
【請求項2】
前記コアが二段二列に配置されており、
前記第一コア及び前記第二コアと、前記第三コア及び前記第四コアとが、それぞれ同じ段に配置されており、
前記第一コア及び前記第三コアと、前記第二コア及び前記第四コアとが、それぞれ同じ列に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱装置用変成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱装置用変成器に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産工程においてワークを加熱する手段の一つとして、高周波誘導加熱が用いられている。高周波誘導加熱装置は、加熱コイルに高周波電流を流すことにより、加熱コイル内に配置されたワークが誘導加熱されるよう構成されている。加熱コイルに高周波電流を供給する電源として、主に半導体を使用した高周波発振回路が用いられるが、高周波発振回路と加熱コイルとの間には、インピーダンスマッチング用の変成器が接続される。
【0003】
図4は、従来の高周波誘導加熱装置用変成器901を示す模式図である。図4に示す高周波誘導加熱装置用変成器901は、一対の筒状のコア921,922のそれぞれの孔に銅パイプ931,932が挿入されており、銅パイプ931,932及びこれらに結合されている銅板941,942,943を囲むように、巻線950が巻き回されている。巻線950の端部950a,950bは電源に接続され、銅板941,942に加熱コイル909が接続されている。
【0004】
このように、コアに挿入されている銅パイプ及び銅パイプに結合された銅板が二次側を構成し、これらを囲むように巻き回された巻線が一次側を構成するような高周波誘導加熱装置用変成器は特許文献に記載されている(特許文献1、図11参照)。
【0005】
ところで、上述の従来の高周波誘導加熱装置用変成器は、一対の筒状のコアを使用しており、コアの全長が長く、広い設置スペースを必要とするという問題がある。また、巻線に高周波電流が流れると、コアは鉄損により発熱するが、上述の従来の高周波誘導加熱装置用変成器は、発熱源の大きさに比べて放熱できる表面積が小さいため、高温となり絶縁破壊が起こるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-340061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題点を鑑みて、本発明は、省スペースであり放熱の効率が高い高周波誘導加熱装置用変成器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明に係る高周波誘導加熱装置用変成器は、平行に配置された四つの環状のコアと、前記コアそれぞれの孔に内挿された導電管と、前記コアのうち第一コア及び第三コアの前記導電管それぞれの一端同士を結合する第一導電板と、前記コアのうち第二コア及び第四コアの前記導電管それぞれの一端同士を結合する第二導電板と、前記第一コア、前記第二コア、第三コア及び前記第四コアの前記導電管それぞれの他端同士を結合する第三導電板と、前記導電管を通って四つの前記コアに巻かれた巻線とを備え、前記巻線が、前記第一コア、前記第二コア、前記第三コア及び前記第四コアの順に、それぞれの孔を通る経路で巻き回されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る高周波誘導加熱装置用変成器は、前記コアが二段二列に配置されており、前記第一コア及び前記第二コアと、前記第三コア及び前記第四コアとが、それぞれ同じ段に配置されており、前記第一コア及び前記第三コアと、前記第二コア及び前記第四コアとが、それぞれ同じ列に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、省スペースであり放熱の効率が高い高周波誘導加熱装置用変成器を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、省スペースであり巻線の全長を抑えつつ一次側の巻き数を増やすことが可能な高周波誘導加熱装置用変成器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器を示す斜視図であって、(a)は加熱コイル側を手前に見た斜視図であり、(b)は加熱コイル側を奥に見た斜視図である。
図2図1(a)におけるA-A断面を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器の巻線を模式的に示す模式図である。
図4】従来の高周波誘導加熱装置用変成器の巻線を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る高周波誘導加熱装置用変成器の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0014】
本発明の実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器について、図1~3に基づき説明する。図1は、本発明の実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器を示す斜視図であって、(a)は加熱コイル側を手前に見た斜視図であり、(b)は加熱コイル側を奥に見た斜視図である。図2は、図1(a)におけるA-A断面を示す断面図である。図3は、本発明の実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器の巻線を模式的に示す模式図である。
【0015】
まず、本発明の実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器の構成について、図1に基づき説明する。本実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器1は、平行に配置された四つの環状のコア21,22,23,24、コアの両端部に配置された導電性を有する矩形板状の導電板41,42,43を有する。
【0016】
図2に断面を示すように、コア21,22,23,24の孔には、導電性を有する管状の導電管31,32,33,34がそれぞれ内挿されている。図1(a)に示すように、コア21,23にそれぞれ挿入された導電管31,33は、その一方の端部において導電板41に結合されており、コア22,24にそれぞれ挿入された導電管32,34は、その一方の端部において導電板42に結合されている。導電板41と導電板42とは、離れて配置されている。導電板41,42にはそれぞれ端子41a,42aが設けられており、端子41a,42aには加熱コイル9が接続されている。
【0017】
図1(b)に示すように、コア21,22,23,24にそれぞれ挿入された導電管31,32,33,34は、その他方の端部において導電板43に結合されている。導電管31~34と導電板41~43との結合は、溶接など導電性を確保できる任意の方法を用いることができる。なお、コア21,22,23,24については、以降の説明においてそれぞれ第一コア21、第二コア22、第三コア23、第四コア24と呼び、導電板41,42,43については、以降の説明においてそれぞれ第一導電板41,第二導電板42,第三導電板43と呼ぶ場合がある。
【0018】
図2に示すように、コア21~24は二段二列に配置されている。図2において、第一コア21及び第二コア22が上段に、第三コア23及び第四コア24が下段に配置されており、第一コア21及び第三コア23が左列に、第二コア22及び第四コア24が右列に配置されている。こうしてコア21~24は矩形状に配置されている。そして巻線50が、導電管31,32,33,34を通り、コア21~24に巻き回されている。なお巻線50は、導線を絶縁材が被覆して構成されている。
【0019】
次に巻線50の経路について図3に基づき説明する。図3は、実際には二段二列に配置されているコア21~24を、模式的に一段に並べて示した模式図である。巻線50は、端子50aから出発して、第三導電板43側から第一コア21に内挿された導電管31を通って第一導電板41側から外に出る。そして第二導電板42側から第二コア22に内挿された導電管32を通って第三導電板43側から外に出る。そして第三導電板43側から第三コア23に内挿された導電管33を通って第一導電板41側から外に出る。そして第二導電板42側から第四コア24に内挿された導電管34を通って第三導電板43側から外に出る。以上が巻線50のひと巻の経路である。
【0020】
巻線50は上記の経路を三回巻き回されて、端子50bに至る。本実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器1では、巻線50が上記の経路で三回巻き回されているが、さらに多くの回数巻き回すことももちろん可能である。
【0021】
本実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器1では、巻線50が一次側を構成し、導電管31~34及び導電板41~43が二次側を構成する。端子50a,50bを高周波電源(図示省略)に接続して巻線50に高周波電流を供給すると、加熱コイル9には高周波の大電流が流れる。そして加熱コイル9の内部にワークが配置されると、ワークが誘導加熱されることになる。
【0022】
本実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器1は、コアが二段二列に分散されている。そのため、個々のコアの全長を短くすることができ、省スペースな構成することができる。また、コアが二段二列に分散されているため、鉄損により発熱する部分に対して多くの表面積が露出している。そのため、放熱による冷却の効率が高い。また、コアが二段二列に分散されているため、同じ長さの巻線50であってもコアに巻く回数を増やすことが可能となり、一次側の巻き数を増やすことで、二次側で大電流を得ることが容易となる。
【0023】
なお、本実施形態に係る高周波誘導加熱装置用変成器1は、コア21~24をそれぞれ単一のコアで構成したが、複数の環状のコアを直列に並べて構成することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 高周波誘導加熱装置用変成器
21 コア(第一コア)
22 コア(第二コア)
23 コア(第三コア)
24 コア(第四コア)
31,32,33,34 導電管
41 導電板(第一導電板)
41a 端子
42 導電板(第二導電板)
42a 端子
43 導電板(第三導電板)
50 巻線
50a,50b 端子
9 加熱コイル
図1
図2
図3
図4