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特許7079983キャリブレーションシステム及び描画装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】キャリブレーションシステム及び描画装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220527BHJP
   G03F 7/24 20060101ALI20220527BHJP
   H05K 1/03 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
G03F7/20 505
G03F7/24 Z
H05K1/03 670
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020556675
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037994
(87)【国際公開番号】W WO2020100446
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2018215104
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594076533
【氏名又は名称】インスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【弁理士】
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雅史
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-065034(JP,A)
【文献】特開2008-233638(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159295(WO,A1)
【文献】特開2006-098727(JP,A)
【文献】特開2017-067888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のシート状をなし、長手方向に沿って搬送される基板に露光用のビームを照射する少なくとも1つの露光ヘッドをキャリブレーションするキャリブレーションシステムであって、
前記少なくとも1つの露光ヘッドを支持する露光ヘッド支持部であって、露光時に、前記少なくとも1つの露光ヘッドからそれぞれ出射した前記ビームを前記基板上の所定の少なくとも1つの露光領域にそれぞれ入射させる位置に配置されるように構成された露光ヘッド支持部と、
前記ビームを受光する受光面を有し、該受光面に入射した前記ビームの少なくとも照射位置及び照射強度を検出する光センサを含む少なくとも1つのセンサユニットと、
前記少なくとも1つのセンサユニットを支持するセンサユニット支持部であって、露光時に、前記少なくとも1つのセンサユニットに含まれる光センサの受光面が、前記少なくとも1つの露光領域における露光面とそれぞれ平行となるように、前記少なくとも1つのセンサユニットを支持すると共に、前記露光ヘッド支持部に対してスライド移動が可能となるように取り付けられたセンサユニット支持部と、
前記露光ヘッド支持部と前記センサユニット支持部とのうち少なくとも露光ヘッド支持部を移動させるように構成された移動機構と、
前記移動機構の動作を制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、キャリブレーション時に、前記露光ヘッド支持部を移動させることにより、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射する前記ビームの光路上に、前記少なくとも1つのセンサユニットを配置可能な空間を形成すると共に、前記露光ヘッド支持部に対して前記センサユニット支持部を相対的にスライド移動させることにより、前記受光面を、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射する前記ビームが露光時に入射する前記露光面に対応する位置に配置するように構成されている、キャリブレーションシステム。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記露光ヘッド支持部の一端側を回転軸として他端側を持ち上げることにより前記空間を形成するように構成された露光ヘッド移動部と、
前記露光ヘッド支持部に対して前記センサユニット支持部をスライド移動させるように構成されたスライド移動部と、
を含む、請求項1に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項3】
長尺のシート状をなし、長手方向に沿って搬送される基板に露光用のビームを照射する少なくとも1つの露光ヘッドをキャリブレーションするキャリブレーションシステムであって、
前記少なくとも1つの露光ヘッドを支持する露光ヘッド支持部であって、露光時に、前記少なくとも1つの露光ヘッドからそれぞれ出射した前記ビームを前記基板上の所定の少なくとも1つの露光領域にそれぞれ入射させる位置に配置されるように構成された露光ヘッド支持部と、
前記露光ヘッド支持部を移動させるように構成された移動機構であって、スライドレールが設けられた梁を含む移動機構と、
前記ビームを受光する受光面を有し、該受光面に入射した前記ビームの少なくとも照射位置及び照射強度を検出する光センサを含む少なくとも1つのセンサユニットと、
前記梁に対して固定された位置に設けられ、前記少なくとも1つのセンサユニットを支持するセンサユニット支持部であって、露光時に、前記少なくとも1つのセンサユニットに含まれる光センサの受光面が、前記少なくとも1つの露光領域における露光面とそれぞれ平行となるように、前記少なくとも1つのセンサユニットを支持するセンサユニット支持部と
記移動機構の動作を制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記移動機構は、前記露光ヘッド支持部を、前記スライドレールに沿ってスライド移動が可能な方向に平行移動させるように構成され、
前記制御部は、キャリブレーション時に、前記露光ヘッド支持部を前記センサユニット支持部に対して相対的にスライド移動させることにより、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射する前記ビームの光路上に、前記少なくとも1つのセンサユニットを配置可能な空間を形成すると共に、前記受光面を、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射する前記ビームが露光時に入射する前記露光面に対応する位置に配置するように構成されている、キャリブレーションシステム。
【請求項4】
前記移動機構は、
前記露光ヘッド支持部を鉛直方向に平行移動させることにより前記空間を形成する露光ヘッド移動部と、
前記露光ヘッド支持部に対して前記センサユニット支持部をスライド移動させるスライド移動部と、
を含む、請求項1に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記少なくとも1つの露光ヘッドから前記受光面に向けて前記ビームを出射させ、前記センサユニットから出力された検出信号に基づき、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射した前記ビームの前記受光面における照射位置及び照射強度を表すデータを生成するように構成され、
前記照射位置及び照射強度を表すデータをキャリブレーションデータとして記憶するように構成された記憶部をさらに備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項6】
前記記憶部は、前記少なくとも1つの露光領域に対する前記ビームの基準照射位置及び基準照射強度を表す基準データをさらに記憶するように構成され、
前記制御部は、前記キャリブレーションデータ及び前記基準データに基づき、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射したビームの照射位置及び照射強度が所定の基準値の範囲に収まるか否かを判定するように構成された判定部を有する、
請求項5に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記判定部による判定結果に基づき、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射したビームの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかが前記基準値の範囲に収まらない場合、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射したビームの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかを補正するための補正値データを生成するように構成され、
前記記憶部は、前記補正値データをさらに記憶するように構成されている、
請求項6に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの露光ヘッドの各々は、
ーザ光を出力する光源と、
前記レーザ光をビーム状に成形する光学系と、
ビーム状に成形された前記レーザ光を走査するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーを回転させる駆動部と、
を有し、
前記制御部は、前記補正値データに基づいて、前記光源の出力と、前記駆動部の動作との少なくともいずれかを制御することにより、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射する前記ビームの照射強度と照射位置との少なくともいずれかを補正するように構成されている、
請求項7に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載されたキャリブレーションシステムと、
前記露光ヘッド支持部に支持された少なくとも1つの露光ヘッドと、
円筒状をなし、外周面において前記基板を支持すると共に、円筒の中心軸回りに回転することにより前記基板を搬送する搬送ドラムと、
を備える描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にパターンを描画する露光用の光ビームを出射する露光ヘッドをキャリブレーションするキャリブレーションシステム及び描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や航空機等の輸送機において使用される電子機器の数は増加の一途を辿っている。これに伴い、電子機器への電源供給や信号の送受信に用いられるワイヤーハーネスの数も増加している。その一方で、輸送機においては軽量化や内部の省スペース化が要請されており、ワイヤーハーネスの増加に伴う重量増やスペース増が問題になっている。
【0003】
このような問題から、輸送機で用いられるワイヤーハーネスを、長尺のシート状をなすフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)により代替することも検討されている。
【0004】
長尺のシート状の基板に対するパターン形成技術として、例えば特許文献1には、所定のパターンに対応するエネルギビームを長尺のシート材に照射しつつ該シート材を長尺方向に平行な第1軸に沿って走査移動させる走査露光により、上記シート材の表面の複数の領域にパターンを形成するパターン形成装置が開示されている。このパターン形成装置においては、マスクに形成されたパターンの像をシート材に投影することにより露光を行っている。
【0005】
また、特許文献2には、基板を長尺方向に搬送させつつ、基板の長尺方向と直交する幅方向に分割された複数の領域ごとに所定のパターンを描画する描画装置が開示されている。この特許文献2においては、マスクを用いない直描方式(ラスタースキャン方式)で露光を行っている。
【0006】
非特許文献1には、ロールトゥロール(Roll To Roll)方式でフィルム搬送を停止することなく連続的に搬送しながら処理を行うために、アライメント計測、重ね合わせ露光、ワーク交換を並列に行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-22583号公報
【文献】特開2017-102385号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】鬼頭義昭、他、「ロールトゥロール方式高精度ダイレクトウェブ露光装置の開発」、映像情報メディア学会誌、第71巻、第10号、第J230~J235頁(2017)、一般社団法人映像情報メディア学会、2017年9月8日採録
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば自動車において使用されるワイヤーハーネスをFPCで代替するためには、数m(例えば6m以上)の連続した配線パターンを基板に形成する必要がある。しかしながら、特許文献1、2には、フレキシブル・ディスプレイやフレキシブル・センサーといった比較的小型の電子デバイス用のパターンの形成技術しか開示されていない。そのため、特許文献1、2に開示された技術を利用して連続した長尺の配線パターンを形成するためには、1つのパターンを露光するごとに、露光済みのパターンとの位置合わせを行い繋ぎ合わせる必要があり、手間と時間がかかり非効率である。これに対し、非特許文献1には、搬送装置で停止を行うことなく連続的に露光を行うことが可能で、且つマスクによるパターンサイズの制限がないため、長い連続パターンの作製が可能である旨記載されている。
【0010】
ところで、自動車や航空機など高度な安全性が要求される機器においては、輸送機を構成する1つひとつの部品について高い信頼性を担保するため、トレーサビリティが必要とされている。そのため、パターン形成された基板に関しては、当該基板へのパターン形成工程において、露光用のビームを出射する露光ヘッドのキャリブレーションを定期的に行い、キャリブレーションデータを保存しておかなくてはならない。
【0011】
この点に関し、特許文献1、2のように、基板上の複数の領域にパターンを間欠的に形成する場合、パターン形成の合間に、同じ基板上のスペースを利用してキャリブレーションを行うことも考えられる。しかしながら、非特許文献1のように、基板上に連続的にパターン形成を行う場合、露光装置に基板をセットした状態では、途中でキャリブレーションを行うことができない。
【0012】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、長尺のシート状の基板に対して連続的にパターンを形成する場合に、パターンを描画する露光用のビームを出射する露光ヘッドのキャリブレーションを随時行うことができるキャリブレーションシステム及び描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一態様であるキャリブレーションシステムは、長尺のシート状をなし、長手方向に沿って搬送される基板に露光用のビームを照射する少なくとも1つの露光ヘッドをキャリブレーションするキャリブレーションシステムであって、前記少なくとも1つの露光ヘッドを支持する露光ヘッド支持部であって、露光時に、前記少なくとも1つの露光ヘッドからそれぞれ出射した前記ビームを前記基板上の所定の少なくとも1つの露光領域にそれぞれ入射させる位置に配置されるように構成された露光ヘッド支持部と、前記ビームを受光する受光面を有し、該受光面に入射した前記ビームの少なくとも照射位置及び照射強度を検出する光センサを含む少なくとも1つのセンサユニットと、前記少なくとも1つのセンサユニットを支持するセンサユニット支持部であって、露光時に、前記少なくとも1つのセンサユニットに含まれる光センサの受光面が、前記少なくとも1つの露光領域における露光面とそれぞれ平行となるように、前記少なくとも1つのセンサユニットを支持すると共に、前記露光ヘッド支持部に対してスライド移動が可能となるように取り付けられたセンサユニット支持部と、前記露光ヘッド支持部と前記センサユニット支持部とのうち少なくとも露光ヘッド支持部を移動させるように構成された移動機構と、前記移動機構の動作を制御するように構成された制御部と、を備え、前記制御部は、キャリブレーション時に、前記露光ヘッド支持部を移動させることにより、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射する前記ビームの光路上に、前記少なくとも1つのセンサユニットを配置可能な空間を形成すると共に、前記露光ヘッド移動部に対して前記センサユニット支持部を相対的にスライド移動させることにより、前記受光面を、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射する前記ビームが露光時に入射する前記露光面に対応する位置に配置するように構成されているものである。
【0014】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記移動機構は、前記露光ヘッド支持部の一端側を回転軸として他端側を持ち上げることにより前記空間を形成するように構成された露光ヘッド移動部と、前記露光ヘッド支持部に対して前記センサユニット支持部をスライド移動させるように構成されたスライド移動部と、を含んでも良い。
【0015】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記センサユニット支持部は、前記基板を搬送する搬送機構に対して固定された位置に設けられ、前記移動機構は、前記露光ヘッド支持部を、前記スライド移動が可能な方向に平行移動させるように構成されていても良い。
【0016】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記移動機構は、前記露光ヘッド支持部を鉛直方向に平行移動させることにより前記空間を形成する露光ヘッド移動部と、前記露光ヘッド支持部に対して前記センサユニット支持部をスライド移動させるスライド移動部と、を含んでも良い。
【0017】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記制御部は、前記少なくとも1つの露光ヘッドから前記受光面に向けて前記ビームを出射させ、前記センサユニットから出力された検出信号に基づき、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射した前記ビームの前記受光面における照射位置及び照射強度を表すデータを生成するように構成され、前記照射位置及び照射強度を表すデータをキャリブレーションデータとして記憶するように構成された記憶部をさらに備えても良い。
【0018】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記記憶部は、前記少なくとも1つの露光領域に対する前記ビームの基準照射位置及び基準照射強度を表す基準データをさらに記憶するように構成され、前記制御部は、前記キャリブレーションデータ及び前記基準データに基づき、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射したビームの照射位置及び照射強度が所定の基準値の範囲に収まるか否かを判定するように構成された判定部を有するものであっても良い。
【0019】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記制御部は、前記判定部による判定結果に基づき、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射したビームの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかが前記基準値の範囲に収まらない場合、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射したビームの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかを補正するための補正値データを生成するように構成され、前記記憶部は、前記補正値データをさらに記憶するように構成されていても良い。
【0020】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記少なくとも1つの露光ヘッドの各々は、前記レーザ光を出力する光源と、前記レーザ光をビーム状に成形する光学系と、ビーム状に成形された前記レーザ光を走査するポリゴンミラーと、前記ポリゴンミラーを回転させる駆動部と、を有し、前記制御部は、前記補正値データに基づいて、前記光源の出力と、前記駆動部の動作との少なくともいずれかを制御することにより、前記少なくとも1つの露光ヘッドから出射する前記ビームの照射強度と照射位置との少なくともいずれかを補正するように構成されていても良い。
【0021】
本発明の別の態様である描画装置は、上記キャリブレーションシステムと、前記露光ヘッド支持部に支持された少なくとも1つの露光ヘッドと、円筒状をなし、外周面において前記基板を支持すると共に、円筒の中心軸回りに回転することにより前記基板を搬送する搬送ドラムと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、キャリブレーション時に、露光ヘッド支持部を移動させることにより、露光ヘッドから出射するビームの光路上にセンサユニットを配置可能な空間を形成すると共に、露光ヘッド移動部に対してセンサユニット支持部を相対的にスライド移動させることにより、露光ヘッドから出射するビームが露光時に入射する露光面に対応する位置に光センサの受光面を配置するので、この受光面におけるビームの照射位置及び照射強度を検出することで、基板上の露光領域に入射するビームの照射位置及び照射強度に関する情報を取得することができる。従って、長尺のシート状の基板に対して連続的にパターンを形成する場合であっても、搬送ドラムに基板をセットしたままの状態で、随時キャリブレーションを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画装置の概略構成を示す模式図である。
図2図1に示す描画装置の平面図である。
図3図1に示す描画ユニットを拡大して示す模式図である。
図4A】露光ヘッドの内部の概略構成を示す模式図である。
図4B】露光ヘッドの内部の概略構成を示す模式図である。
図4C】露光ヘッドの内部の概略構成を示す模式図である。
図5図3に示す露光ヘッドを基板側から見た模式図である。
図6】パターンが形成された基板を示す模式図である。
図7図3に示す描画ユニットにおいて、露光ヘッド支持部を移動させた状態を示す模式図である。
図8図7に示す描画ユニットに対して、センサユニットを移動させた状態を示す模式図である。
図9図8に示す露光ヘッドを基板側から見た模式図である。
図10図1に示す制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図11】キャリブレーション時における描画装置の動作を示すフローチャートである。
図12】本発明の第2の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画ユニットの概略構成を示す模式図である。
図13】本発明の第3の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画ユニットの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係るキャリブレーションシステム及び描画装置について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0025】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画装置の概略構成を示す模式図である。図2は、同描画装置の平面図である。図1及び図2に示すように、描画装置1は、長尺のシート状をなす基板2を搬送する搬送システム3と、基板2に露光用のビームLを照射することによりパターンを形成する描画ユニット4と、搬送システム3及び描画ユニット4の動作を制御する制御装置5とを備える。
【0027】
本実施形態においては、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)を処理対象の基板2としている。FPCは、ポリイミド等の絶縁性を有する樹脂製のベースフィルムに銅等の金属箔を貼り合わせた、可撓性を有する回路基板である。基板2は、例えば数m~数十mの帯状に成形されたFPCであり、巻出しリール31にロール状に巻かれた状態から巻き出され、搬送システム3により搬送されて描画ユニット4によりパターンが形成された後、巻取りリール32に巻き取られる。このように、帯状のワークをロールから巻き出し、所定の処理を施した後でロールに巻き取る搬送方式のことを、ロールトゥロール(Roll to Roll)方式という。
【0028】
搬送システム3には、巻出しリール31を回転可能に支持する回転軸31aと、巻き取りリール32を回転可能に支持する回転軸32aと、搬送ドラム33と、搬送ドラム33の上流側(図の左側)及び下流側(図の右側)にそれぞれ設けられたテンションプーリ34、35と、複数の案内ローラ36、37とが設けられている。
【0029】
搬送ドラム33は、全体として円筒形状を有し、駆動源から供給される回転駆動力により回転する回転軸33aに支持されている。搬送ドラム33は、外周面33bの略上半分の領域において基板2を支持すると共に、自身が回転することにより基板2を搬送する。また、搬送ドラム33には、搬送ドラム33の回転量を測定するエンコーダ33cが設けられている。
【0030】
以下においては、搬送ドラム33の上端部における基板2の搬送方向をx方向、搬送ドラム33の上端部に接する平面(水平面)においてx方向と直交する方向をy方向(即ち、基板2の幅方向)、xy平面と直交する方向(鉛直方向)をz方向(下向きが正)とする。
【0031】
2つのテンションプーリ34、35は、搬送ドラム33よりも下方に、上下方向に移動可能に設置されている。詳細には、各テンションプーリ34、35は、上下方向に移動可能な回転軸34a、35aに回転可能に支持されている。各回転軸34a、35aには、当該回転軸34a、35aを下方に向けて付勢するテンション調整機構が連結されている。このテンション調整機構によって回転軸34a、35aを介してテンションプーリ34、35を下方に付勢することにより、搬送ドラム33に巻き掛けられた基板2を、所定のテンションがかかった状態で搬送することができる。
【0032】
各案内ローラ36は、回転軸36aに回転可能に支持されており、巻出しリール31から巻き出された基板2を上流側のテンションプーリ34に案内する。各案内ローラ37は、回転軸37aに回転可能に支持されており、パターン形成処理がなされた基板2を下流側のテンションプーリ35から巻き取りリール32に案内する。
【0033】
なお、搬送システム3の構成としては、ロールトゥロール方式で基板2を搬送し、且つ、搬送ドラム33の外周面33bに支持された基板2に対してパターン形成処理を施すことができれば、図1及び図2に示す構成に限定されない。また、巻出しリール31から基板2が巻き出された後、搬送ドラム33に至るまでの間、又は、搬送ドラム33から基板2が搬出された後、巻取りリール32に巻き取られるまでの間に、さらに別の処理を行うユニット(前処理ユニット、後処理ユニット等)を設けても良い。なお、搬送システム3には、通常、基板搬送時の蛇行を防ぐため、基板2の端部位置を検出し、巻出し装置又は巻取り装置を微動させるエッジ・ポジション・コントロール(Edge Position Control:EPC)装置が設けられる。
【0034】
図3は、図1に示す描画ユニット4を拡大して示す模式図である。図3に示すように、描画ユニット4は、露光用のビームLを出射する露光ヘッド41と、調整ステージ42と、露光ヘッド支持部43と、露光ヘッド移動部44と、センサユニット45と、センサユニット支持部46と、センサユニット移動部47とを備える。露光ヘッド支持部43の内側には露光ヘッド41が取り付けられる支持ステージ48が固定されている。このうち、露光ヘッド支持部43、露光ヘッド移動部44、センサユニット45、センサユニット支持部46、及びセンサユニット移動部47、並びに、後述する制御装置5が、本実施形態に係るキャリブレーションシステムを構成する。
【0035】
露光ヘッド41は、搬送ドラム33に支持された基板2に向けてビームLを照射することにより、回路や配線等のパターンを基板2に直接描画する。図4A図4Cは、露光ヘッドの内部の概略構成を示す模式図である。
【0036】
図4A図4Cに示すように、露光ヘッド41の内部には、レーザ光を出力するレーザ光源411と、ビーム成形光学系412と、反射ミラー413、415と、ポリゴンミラー414と、fθレンズ416とが設けられている。また、ポリゴンミラー414には、該ポリゴンミラー414を回転軸414a回りに回転させる駆動装置が設けられている。
【0037】
ビーム成形光学系412は、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズ、光量調整用のフィルタ、偏光フィルタ等の光学素子を含み、レーザ光源411から出力されたレーザ光をスポット状のビーム形状を有するビームLに成形する。反射ミラー413は、ビーム成形光学系412により成形されたビームLを、ポリゴンミラー414の方向に反射する。ポリゴンミラー414は、回転軸414a回りに回転し、反射ミラー413の方向から入射したビームLを、xy平面内において複数の方向に反射する。反射ミラー415は、ポリゴンミラー414により反射されたビームLを、入射方向と直交する方向(図3のビーム出射口41a参照)に反射し、fθレンズ416に入射させる。fθレンズ416は、入射したビームLを、搬送ドラム33の外周面に支持された基板2の露光面P1、P2(図3参照)において結像させる。このような露光ヘッド41においては、ポリゴンミラー414の回転を制御することにより、露光ヘッド41から出射するビームLを、所定の走査範囲SRにおいて一次元的に走査することができる(図4B及び図4C参照)。
【0038】
再び図3を参照すると、調整ステージ42は、露光ヘッド41のx方向及びy方向における位置と、鉛直方向に対する角度を手動で微調整するために設けられている。
露光ヘッド支持部43は、露光ヘッド41から出射したビームLが、基板2の所定の露光領域に入射するように、露光ヘッド41及び調整ステージ42を支持する。
【0039】
図5は、露光ヘッド41を基板2側から見た平面図である。図5に示すように、4つの露光ヘッド41は、露光ヘッド支持部43の内側に設けられた支持ステージ48に、調整ステージ42を介して取り付けられている。4つの露光ヘッド41は、基板2の幅方向(y方向)において、隣り合うビームLの走査範囲SR(図4C参照)が端部において僅かに重なり合うか、或いは、隙間なく隣接するように配置されている。これにより、基板2の幅方向において、4つのビームLにより隙間なく走査することが可能となる。
【0040】
なお、図2及び図5においては、描画ユニット4に4つの露光ヘッド41を設けているが、露光ヘッド41の数はこれに限定されない。露光ヘッド41の数は、1つ以上であれば良く、基板2の幅や、露光ヘッド41の走査範囲SR及び出力等に応じて適宜決定することができる。
【0041】
図6は、描画ユニット4によりパターンが形成された基板2を示す模式図である。図5に示すように、各露光ヘッド41から出射したビームLを基板2の幅方向に走査しつつ、搬送ドラム33により基板2を搬送することで、基板2に2次元的な露光パターン21が形成される。このように、ビームLを基板2に照射し、直接描画を行いながら基板2を搬送することで、長尺の基板2に対して切れ目なく連続的な露光パターン21を形成することができる。
【0042】
また、基板2においては、各露光ヘッド41による露光領域を予め設定することができる。そこで、各露光ヘッド41の露光領域内に、個々の製品(パターン)を識別する識別記号(ID)22を描画しても良い。識別記号22を、ロット番号、描画装置番号、露光ヘッド番号、露光日付及び時刻等のデータと紐付けて管理することにより、高度なトレーサビリティを確保することができる。
【0043】
再び図3を参照すると、露光ヘッド移動部44及びセンサユニット移動部47は、キャリブレーション時に露光ヘッド支持部43及びセンサユニット支持部46を移動させる移動機構である。露光ヘッド支持部43は、端部に形成された軸孔に配置された回転軸44aを介して、露光ヘッド移動部44に回転可能に取り付けられている。
【0044】
図7は、露光ヘッド支持部43を移動させた状態を示す模式図である。図7に示すように、露光ヘッド支持部43を、一端側に設けられた回転軸44aを軸として他端側を回転させるように持ち上げることにより、露光ヘッド支持部43を移動させることができる。このように露光ヘッド支持部43を移動させると、露光ヘッド41から出射したビームLの光路上に、後述するセンサユニット支持部46を配置可能な空間が生じる。
【0045】
センサユニット45は、露光ヘッド41から出射するビームLのキャリブレーションに用いられる。センサユニット45は、ビームLを受光する2次元の受光面を有し、該受光面に対するビームLの少なくとも照射位置及び照射強度を検出する位置検出素子(PSD)等の光センサと、該光センサに電源を供給すると共に、該光センサから出力された信号を送信するための回路が形成されたセンサ基板とを有する。本実施形態においては、4つの露光ヘッド41から出射するビームLをそれぞれ検出するために、4つのセンサユニット45が設けられている。
【0046】
センサユニット支持部46は、センサユニット45を支持すると共に、後述するセンサユニット移動部47を介して、露光ヘッド支持部43にスライド移動可能に支持されている。詳細には、センサユニット支持部46は、露光時には、各センサユニット45に設けられた光センサの受光面(平面P1’、P2’参照)が、対応する露光ヘッド41の露光領域における露光面P1、P2と平行になるように、センサユニット45を支持している。ここで、本明細書において、露光面P1、P2とは、搬送ドラム33の外周面33bに支持された基板2の表面に入射するビームLの入射点(照射位置)に接する面のことである。
【0047】
センサユニット移動部47は、センサユニット支持部46を露光ヘッド支持部43に対してスライド移動させる。図8は、図7に示す描画ユニット4に対して、センサユニット支持部46を移動させた状態を示す模式図である。センサユニット移動部47は、露光ヘッド支持部43に固定されたスライドレール47aに取り付けられている。センサユニット移動部47をスライドレール47aに沿って移動させることにより、センサユニット移動部47に支持されたセンサユニット支持部46も平行移動する。図8に示すように、センサユニット支持部46を移動させると、センサユニット45に設けられた光センサの受光面が、対応する露光ヘッド41から出射するビームLが露光時に入射する露光面P1、P2に対応する位置に配置される。
【0048】
図9は、図8に示す露光ヘッド41を基板側から見た模式図である。図9に示すように、各センサユニット45のセンサ基板452には、2つの光センサ451が配置されている。これらの光センサ451の位置は、各光センサ451の中心線が走査範囲SRの端部のラインと重なるように設定されている。このように、1つの露光ヘッド41をキャリブレーションを行うセンサユニット45に対し、2つの光センサ451を設けることにより、ビームLの照射位置のx方向における僅かなズレを検出することが可能となる。
【0049】
図10は、制御装置5の概略構成を示すブロック図である。制御装置5は、描画装置1の各部の動作を統括的に制御する装置であり、外部インタフェース51と、記憶部52と、制御部53とを備える。
【0050】
外部インタフェース51は、各種外部機器を当該制御装置5に接続するためのインタフェースである。制御装置5に接続される外部機器としては、例えば、露光ヘッド41、エンコーダ33c、搬送システム3を駆動する基板搬送駆動装置61、露光ヘッド移動部44を駆動する露光ヘッド用駆動装置62、センサユニット移動部47を駆動するセンサユニット用駆動装置63、キーボードやマウスなどの入力デバイス64、液晶モニタ等の表示デバイス65、パターンデータ等を当該制御装置5に読み込むためのデータ読込装置66等が挙げられる。
【0051】
記憶部52は、ディスクドライブ又はROM、RAMなどの半導体メモリ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体を用いて構成される。記憶部52は、オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラムの他、当該制御装置5に所定の動作を実行させるためのプログラムや、該プログラムの実行中に使用される各種データ及び設定情報等を記憶する。詳細には、記憶部52は、上述した各種プログラムを記憶するプログラム記憶部521と、描画ユニット4に描画させるパターンのデータを記憶するパターンデータ記憶部522と、ビームLの照射位置及び照射強度の基準データを記憶する基準データ記憶部523と、露光ヘッド41のキャリブレーションデータを記憶するキャリブレーションデータ記憶部524と、キャリブレーションデータに基づいて露光ヘッド41を調整するための補正データを記憶する補正データ記憶部525とを含む。
【0052】
基準データ記憶部523は、搬送ドラム33の外周面33bに支持された基板2の露光領域に対して適正な露光が行われるように設定されたビームLの照射位置及び照射強度(即ち、基準照射位置及び基準照射強度)を、基準データとして記憶する。また、基準データ記憶部523は、基準照射位置及び基準照射強度に基づいて設定される所定の基準値を記憶しても良い。ここで、基準値とは、基準照射位置及び基準照射強度に対し、実際に照射されるビームLに許容される誤差を含んだ照射位置及び照射強度のことである。補正データ記憶部525に記憶される補正データは、ビームLの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかが基準値の範囲に収まらない場合に生成されるデータであり、当該ビームLの照射位置及び照射強度の少なくともいずれかを補正するためのデータである。
【0053】
制御部53は、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアを用いて構成され、プログラム記憶部521に記憶されているプログラムを読み込んで実行することにより、制御装置5及び描画装置1の各部へのデータ転送や指示を行い、描画装置1の動作を統括的に制御して、基板2へのパターン形成処理を実行させる。また、制御部53は、プログラム記憶部521に記憶されたキャリブレーションプログラムを実行することにより、露光ヘッド41のキャリブレーションを定期的に行い、キャリブレーションデータを記憶すると共に、キャリブレーションデータに基づいて露光ヘッド41の調整を行う。
【0054】
詳細には、制御部53がキャリブレーションプログラムを実行することにより実現される機能部には、描画制御部531と、キャリブレーション制御部532と、判定部533と、補正部534とが含まれる。
【0055】
描画制御部531は、描画データ記憶部522からパターンデータを読み出し、各露光ヘッド41におけるビームLの走査及び搬送システム3による基板2の搬送速度等の制御データを生成し、露光ヘッド41及び基板搬送駆動装置61に出力する。これにより、搬送システム3によって基板2が所定の速度で搬送されつつ、各露光ヘッド41から出射したビームLが基板2の所定の露光領域に照射され、幅方向に走査される。このようにして、基板2に2次元的なパターンが連続的に形成される。
【0056】
キャリブレーション制御部532は、所定のタイミングで露光ヘッド41をキャリブレーションするための制御を行うと共に、光センサ451の受光面におけるビームLの照射位置及び照射強度の測定値(キャリブレーション値)を表すデータ(キャリブレーションデータ)を生成する。
【0057】
判定部533は、キャリブレーションデータ及び基準データ記憶部523に記憶された基準データに基づき、キャリブレーション値が基準値内に収まっているか否かを判定する。
【0058】
補正部534は、キャリブレーション値が基準値内に収まっていない場合に、ビームLの照射位置及び照射強度を補正するための補正データを生成し、該補正データに基づいて各部を制御する。
なお、このような制御装置5は、1つのハードウェアにより構成しても良いし、複数のハードウェアを組み合わせて構成しても良い。
【0059】
次に、本発明の第1の実施形態に係るキャリブレーション方法について説明する。図11は、描画装置1のキャリブレーション動作を示すフローチャートである。
【0060】
まず、ステップS10において、制御装置5は各露光ヘッド41に対し、基板2へのビームLの照射を停止させる。
続くステップS11において、制御装置5は搬送システム3に対し、基板2の搬送を停止させる。
【0061】
続くステップS12において、制御装置5は露光ヘッド用駆動装置62を駆動し、露光ヘッド移動部44により露光ヘッド支持部43を移動させる(図7参照)。これにより、露光ヘッド41の下方に、センサユニット45を配置可能な空間が生じる。
【0062】
続くステップS13において、制御装置5はセンサユニット用駆動装置63を駆動し、センサユニット移動部47によりセンサユニット支持部46をスライド移動させる(図8参照)。これにより、各露光ヘッド41から出射するビームLが露光時に入射する露光面P1、P2に対応する位置(平面P1’、P2’参照)に、当該露光ヘッド41に対応するセンサユニット45に設けられた光センサ451の受光面が配置される。
【0063】
続くステップS14において、制御装置5は、各露光ヘッド41に対し、光センサ451の受光面にビームLを照射させる。これにより、各光センサ451は、受光面に入射したビームLの照射位置及び照射強度を検出し、検出信号を出力する。
【0064】
続くステップS15において、制御装置5のキャリブレーション制御部532は、各光センサ451から出力された検出信号に基づき、各光センサ451に照射されたビームLの照射位置及び照射強度の測定値を表すデータ(キャリブレーションデータ)を生成し、キャリブレーションデータ記憶部524に保存する。
【0065】
続くステップS16において、判定部533は、ステップS15において生成されたキャリブレーションデータを、基準データ記憶部523に記憶された基準データと対比し、各露光ヘッド41から出射されたビームLの照射位置及び照射強度が基準値以内であるか否かを判定する。詳細には、判定部533は、ビームLの基準照射位置に対する照射位置の測定値の差分(Δx,Δy)を算出すると共に、基準照射強度に対する照射強度の測定値の差分を算出する。そして、照射位置の差分(Δx,Δy)及び照射強度の差分が所定の閾値以下であるか否かを判定する。
【0066】
ビームLの照射位置及び照射強度が基準値以内である場合(ステップS16:Yes)、即ち、差分が閾値以下である場合、動作はステップS18に移行する。
他方、ビームLの照射位置及び照射強度が基準値を超える場合(ステップS16:No)、即ち、差分が閾値を超える場合、補正部534は、各露光ヘッド41の位置及び出力を補正するための補正データを生成し、補正データ記憶部525に保存する(ステップS17)。この際、補正部534は、補正データを表示デバイス66に表示させても良い。詳細には、補正部534は、差分Δxに関して、搬送ドラム33に設けられたエンコーダ33cの信号(図3のΔθ参照)を用いて設定される描画開始ポイントに対し、出力開始位置のパラメータ(ビームLの出力を開始する際のθの値)を補正する。また、補正部534は、差分Δyに関して、ポリゴンミラー414(図4A参照)を介して出射するビームLの基準となる描画開始ポイントに対し、出力開始位置のパラメータ(ビームLの出力を開始する際のポリゴンミラーの初期位置)を補正する。さらに、補正部534は、照射強度に関して、描画制御部531において各露光ヘッド41に対する出力パラメータを補正する。
【0067】
続くステップS18において、制御装置5はセンサユニット用駆動装置63を駆動し、センサユニット移動部47によりセンサユニット支持部46を露光ヘッド41から離れる方向にスライド移動させる。
【0068】
続くステップS19において、制御装置5は露光ヘッド用駆動装置62を駆動し、露光ヘッド移動部44により露光ヘッド支持部43を移動させ、元の露光時における位置に戻す。その後、描画装置1におけるキャリブレーション動作は終了する。キャリブレーションの終了後、描画動作を再開すると、ステップS17において補正されたパラメータに基づいて各部が動作し、補正された状態のビームの照射位置及び照射強度で描画を行うことができる。
【0069】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、搬送ドラム33により基板2を搬送しつつ、各露光ヘッド41から出射したビームLを基板2に直接照射しながらビームLを幅方向に走査するので、基板2に2次元的な露光パターンを切れ目なく連続的に形成することができる。従って、数m~数十mに及ぶ長尺の基板に対しても、効率良く連続パターンを形成することができ、スループットを向上させることが可能となる。
【0070】
また、本発明の第1の実施形態によれば、各露光ヘッド41の露光領域に、当該露光ヘッド41で識別記号を描画しておくことにより、パターン又は配線レベルで高度なトレーサビリティを確保することができる。
【0071】
また、本発明の第1の実施形態によれば、各露光ヘッド41に光源が設けられているので、十分な照射強度でパターン形成を行うことが可能となる。
【0072】
また、本発明の第1の実施形態によれば、キャリブレーション時に露光ヘッド支持部45に対してセンサユニット支持部46をスライド移動させることにより、露光ヘッドから出射するビームLが露光時に入射する露光面P1、P2に対応する位置に、光センサ451の受光面を精度良く配置することができる。従って、搬送ドラム33に支持された基板2の代わりに、光センサ451にビームLを照射することで、高精度なキャリブレーションを行うことができる。従って、長尺の基板2に対して連続的なパターンを形成する場合であっても、搬送ドラム33に基板2を支持させたまま、随時キャリブレーションを行うことが可能となる。
【0073】
また、本発明の第1の実施形態によれば、露光ヘッド支持部43を、回転軸44aを軸として、端部を回転させるように持ち上げることにより移動させるので、省スペース且つ低コストで、キャリブレーションシステムを構成することが可能となる。
【0074】
上記第1の実施形態においては、ビームLのキャリブレーション値が基準値の範囲に収まるか否かを判定し、キャリブレーション値が基準値の範囲に収まらない場合には、補正を行うための各種処理を実行した。しかしながら、キャリブレーションを行い、単にキャリブレーションデータを保存しておくだけでも良い。また、キャリブレーション値の判定結果や判定結果に基づく補正データを保存しておくだけでも良い。
【0075】
また、上記第1の実施形態においては、露光ヘッド41の位置及び傾きを調整ステージ42により手動で微調整することとしたが、調整ステージ42の代わりに電気的に制御可能な調整ステージを設け、キャリブレーションの結果に基づいて露光ヘッド41の位置及び傾きを自動調整することとしても良い。
【0076】
また、上記第1の実施形態においては、光センサ451の受光面におけるビームLの照射位置及び照射強度を検出することとしたが、これらに加えて、ビームLの照射範囲(ビーム径及びビーム形状)を検出し、キャリブレーションデータとして保存しても良い。この場合、光センサ451により検出されたビーム径に基づいて、露光ヘッド41の位置(露光面P1、P2との距離)を補正することにより、ピント調整を行っても良い。また、光センサ451により検出されたビーム形状に基づいて、露光ヘッド41の傾き(露光面P1、P2とビームLとのなす角度)を補正しても良い。
【0077】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画ユニットを示す模式図である。本実施形態に係るキャリブレーションシステムにおいては、センサユニット45の位置を固定し、キャリブレーション時に、露光ヘッド41を支持する露光ヘッド支持部43を水平面内で平行に移動させることにより、露光ヘッド41から出射したビームLを光センサに入射させる。
【0078】
詳細には、本実施形態に係るキャリブレーションシステムは、露光ヘッド支持部43Aと、センサユニット45と、センサユニット支持部46と、センサユニット固定部70と、露光ヘッド支持部43Aを移動させる移動機構として、スライドレール72が設けられた梁71と、露光ヘッド支持部43Aをスライドレース72に沿って移動させる駆動部73とを含む。なお、露光ヘッド支持部43Aに支持された露光ヘッド41とセンサユニット45との相対的な位置関係については、第1の実施形態と同様である。
【0079】
キャリブレーションを行う際には、露光ヘッド支持部43Aをスライド移動させ、露光ヘッド41を、ビームLがセンサユニット45に設けられた光センサの受光面に入射する位置に移動させる。これにより、露光ヘッド41から出射するビームの光路上に空間を形成する工程と、該空間にセンサユニット45を配置する工程とが同時に行われる。
【0080】
本発明の第2の実施形態によれば、露光ヘッド支持部43Aをスライド移動させるだけでキャリブレーション可能な状態となるので、キャリブレーションを高速且つ高精度に行うことが可能となる。
【0081】
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態に係るキャリブレーションシステムを含む描画ユニットを示す模式図である。本実施形態に係るキャリブレーションシステムにおいては、露光ヘッド41を支持する露光ヘッド支持部43を、鉛直面内において平行に移動させる。
【0082】
詳細には、本実施形態に係るキャリブレーションシステムは、露光ヘッド支持部43Bと、センサユニット45と、センサユニット支持部46と、センサユニット移動部47と、露光ヘッド支持部43Bを移動させる移動機構80とを含む。この移動機構80は、ラック82が設けられた支柱81と、ラック82と歯合するピニオンを回転させることにより露光ヘッド支持部43Bを上下方向に移動させる駆動部83とを含む。なお、露光ヘッド支持部43Bに支持された露光ヘッド41とセンサユニット45との相対的な位置関係については、第1の実施形態と同様である。
【0083】
キャリブレーションを行う際には、露光ヘッド支持部43Bを鉛直上向きに平行移動させることにより、露光ヘッド41と基板2との間にセンサユニット45を配置可能な空間を形成する。そして、センサユニット移動部47によりセンサユニット支持部46をスライド移動させることにより、露光ヘッド41から出射するビームLが光センサの受光面に入射する位置にセンサユニット46を配置する。
【0084】
以上説明した本発明は、上記第1~第3の実施形態に限定されるものではなく、上記第1~第3の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、上記第1~第3の実施形態に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、上記第1~第3の実施形態及に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0085】
1…描画装置、2…基板、3…搬送システム、4…描画ユニット、5…制御装置、21…露光パターン、33…搬送ドラム、41…露光ヘッド、41a…ビーム出射口、42…調整ステージ、43、43A、43B…露光ヘッド支持部、44…露光ヘッド移動部、45…センサユニット、46…センサユニット支持部、47…センサユニット移動部、47a、72…スライドレール、48…支持ステージ、51…外部インタフェース、52…記憶部、53…制御部、61…基板搬送駆動装置、62…露光ヘッド用駆動装置、63…センサユニット用駆動装置、64…入力デバイス、65…表示デバイス、66…データ読込装置、66…表示デバイス、70…センサユニット固定部、71…梁、73、83…駆動部、80…移動機構、81…支持柱、82…ラック、411…レーザ光源、412…ビーム成形光学系、413、415…反射ミラー、414a…回転軸、414…ポリゴンミラー、416…fθレンズ、451…光センサ、452…センサ基板、521…プログラム記憶部、522…描画データ記憶部、523…基準データ記憶部、524…キャリブレーションデータ記憶部、525…補正データ記憶部、531…描画制御部、532…キャリブレーション制御部、533…判定部、534…補正部、535…判定部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13