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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20220527BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220527BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
B60R16/02 650J
H02J7/00 P
H02J1/00 309U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021000711
(22)【出願日】2021-01-06
(62)【分割の表示】P 2019194991の分割
【原出願日】2011-01-20
(65)【公開番号】P2021059333
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391001848
【氏名又は名称】株式会社ユピテル
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】上村 浩司
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0023198(US,A1)
【文献】特開平11-222084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 7/00
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
源制御装置であって、
車内通信ネットワークからの所定の信号を検出する機能と、
車両側から所定の電子回路に供給される電源電圧からノイズを検出する機能と、
前記ノイズを検出した場合に前記車両側のコンピュータに応答要求信号を送出する機能と
前記車内通信ネットワークからの前記所定の信号が検出された場合に、車両側から供給される電力のカーアクセサリ側への供給を開始する制御を行う機能と、
を有し、
前記ノイズは、エンジンを有する車両のエンジンを始動した場合に発生するノイズ、又は電気自動車の車両への電源供給をオンにした場合に発生するノイズである
電源制御装置。
【請求項2】
前記開始する制御を行う機能は、前記所定の信号として、前記応答要求信号に対する応答出力信号、又は自発出力信号が検出された場合に、前記開始する制御を行う
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
車内通信ネットワークからの所定の信号が検出されたときに、車両側から供給される電力のカーアクセサリ側への供給を開始する制御を行う電源制御装置であって、
車両側から所定の電子回路に供給される電源電圧からノイズを検出する機能と、
前記車内通信ネットワークからの自発出力信号を検出する機能と、
前記自発出力信号を検出しない場合において前記ノイズを検出したときに前記車両側のコンピュータに応答要求信号を送出する機能と
を有し、
前記ノイズは、エンジンを有する車両のエンジンを始動した場合に発生するノイズ、又は電気自動車の車両への電源供給をオンにした場合に発生するノイズであ
源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後付カーアクセサリ等のように、使用者により、工場出荷後の自動車の車内に追加されるカーアクセサリ等の電源制御装置に関し、特に、自動車が走行状態又は走行準備状態である時にのみにカーアクセサリ等に電源を供給する電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車の運転席周辺又は後席周辺には、車内で使用するマップランプ等の後付カーアクセサリに、自動車のバッテリーから電源を供給するための電源接続ソケット(シガーソケット又はアクセサリソケット:以後、アクセサリソケットと記載する)が設けられている。アクセサリソケットには、自動車のメーカーや種類により、自動車のキー(イグニッションスイッチ)がACC(アクセサリ)位置で電源供給をONできるものと、イグニッションスイッチの位置に関わらず電源供給のONされた状態が維持されるものがある。
【0003】
例えば、電源供給のONが維持されるアクセサリソケットを有する自動車に、継続的に電力を使用するカーアクセサリ等を設置(アクセサリソケットから電源供給)すると、長期間の駐車によりバッテリ上がりを起こすことがある。このようなカーアクセサリによるバッテリー上がりを防止するために、エンジンと連動する発電装置(オルターネータ)が動作していない時にはアクセサリソケットからカーアクセサリ等に電源電力を供給しない電源制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、発電装置(又はエンジン)が動作状態であることを、バッテリーの出力電圧に重畳される発電装置のオルターネータノイズにより検出している。
【0004】
また近年では、走行用モーターとエンジンの両方を備えるハイブリッドカー(HV)が複数のメーカーから発売されており、それらの一部は、エンジンを始動させないで、バッテリーのみで所定距離の走行が可能である。また、交差点の信号待ち等では一時的にエンジンを止め、信号が青になってアクセルが踏まれるとエンジンを素早く始動させるアイドリングストップ機能付自動車も販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-222084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
標準的な一般自動車に設置されるアクセサリソケットは基本的に1個であり、高級車又は乗車定員が多い大型車であってもアクセサリソケットは2個~3個である。一方、カーアクセサリは、基本的に1個のカーアクセサリに対して1個のアクセサリソケットが必要であり、乗員が複数のカーアクセサリを同時に使用したい場合等には、アクセサリソケットの数が不足することがある。
【0007】
また、バッテリーのみで走行可能な自動車や、アイドリングストップ機能付自動車の場合、バッテリー走行中又はアイドリングストップ中には発電装置が動作しないので、オルターネータノイズが発生しない。そのような自動車では、特許文献1の電源制御装置によりカーアクセサリの電源を制御すると、バッテリー走行中やアイドリングストップ機能によるエンジンストップ中はカーアクセサリ等を使用できなくなる。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を解決するために、アクセサリソケット以外から電源供給が可能であり、バッテリー走行中や、アイドリングストップ中も多種多様な自動車のカーアクセサリ等に電源電力を供給可能な電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、電源制御装置においては、車内通信ネットワークを介して車両側コンピュータと通信する通信手段と、電源電圧からノイズを検出するノイズ検出手段と、電源から所定の電子回路へ供給する電源電圧をON/OFFするスイッチと、通信手段で受信した車両側コンピュータからの信号と、ノイズ検出手段で検出したノイズを用いて、スイッチのON/OFFを制御する制御手段とを備える。
【0010】
電源制御装置では、所定の電子回路へ供給する電源電圧のON/OFF制御に、車両側コンピュータから車内通信ネットワークに出力される信号を用いるので、ノイズのみによる場合に比べて誤判定を抑制でき、ノイズが検出できない時に、車両側コンピュータから受信した信号を用いて所定の電子回路に電源電力を供給できる。
所定の電子回路としては、例えば、カーアクセサリ等の内部に設けた電子回路とするとよい。また、本電源制御装置は、例えば、電源のコネクタ内に内蔵すると特によい。
あるいはまた、所定の電子回路と本電源制御装置とをカーアクセサリ等の中に組み込んでもよい。
【0011】
(2)好ましくは、電源制御装置のノイズ検出手段は、車両始動時に発生するノイズを検出するようにするとよい。
【0012】
車両始動時に発生するノイズとしては、例えば、エンジンを備える自動車であれば、従来のような発電装置のオルターネータノイズではなく、エンジンスターターによる電圧降下に起因する車両始動時に発生するノイズを用いるとよい。オルターネータノイズは交流発電装置の動作に起因して整流後も残るノイズであるので、比較的高周波でノイズレベルが比較的小さいのに対して、車両始動時に発生するノイズは、他の電装品を全て停止させても電圧降下するような大きな電力を使用するスターターによる、比較的長い時間で比較的大きなレベルのノイズであるので、ノイズの検出エラーが減少する。また、車両始動時に発生するノイズとしては、例えば、電気自動車やハイブリッド車などの自動車であれば、車両の各部への電源供給が開始されることによって発生するノイズなどが挙げられる。例えば、運転者が所有する発信機との通信が確立したときに電源供給が開始される電気自動車やハイブリッド車などの自動車であれば、このときに発生するノイズと同一パターンのノイズが発生したかを判定するとよい。このノイズとしては電圧降下によるノイズを検出するとよい。このような検出エラーが少ない車両始動時に発生するノイズと車両側コンピュータから受信する信号を用いることで、車両始動後の所定の電子回路に確実に電源電力を供給できる。
【0013】
(3)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、ノイズ検出手段によって車両始動時に発生するノイズが検出されない場合であっても、車両側コンピュータからの信号を受信できるときには、スイッチをOFFとしないようにするとよい。
【0014】
このようにすることで電源制御装置では、バッテリー走行中や、アイドリングストップ中も所定の電子回路に電源電力を供給できる。ハイブリッドカー(HV)やアイドリングストップ機能を有する自動車は、バッテリー走行中やアイドリングストップ中であっても、車両側コンピュータはウェイクアップしており速度情報や走行関連情報等を出力しているからである。
【0015】
(4)好ましくは、電源制御装置では、車両始動時に発生するノイズは、エンジンを有する車両のエンジン始動時に発生する電圧降下を含むノイズであるようにするとよい。
このようにすることでノイズ検出手段は、エンジンを有する車両の始動を的確に検出できる。
【0016】
(5)好ましくは、電源制御装置のノイズ検出手段では、車両始動時に発生するノイズは、電気自動車の車両への電源供給をオンにした際に発生する電圧降下を含むノイズであるようにするとよい。
このようにすることでノイズ検出手段は、電気自動車の車両の始動を的確に検出できる。
【0017】
(6)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、通信手段によって車両側コンピュータからの信号を受信できた後に、ノイズ検出手段によって車両始動時に発生するノイズが検出された場合に、スイッチをONにするようにするとよい。
【0018】
このようにすることで電源制御装置では、通信手段が車両側コンピュータからの信号を受信してからノイズが検出された場合にスイッチをONすることで、確実に誤判定を防止することができる。例えば、イモビライザー等のセキュリティ機能を有する車両の車両側コンピュータは、車両ノイズが発生する車両始動よりも前にセキュリティ機能を解除する信号を送信するので、この信号を受信してから、ノイズが検出された場合にスイッチをONとすることで、セキュリティ機能を有する車両について確実に誤判定を防止することができる。車両側コンピュータからの信号を受信できた後としては、車両側コンピュータからの信号が受信できない状態から、車両側コンピュータからの信号を受信できる状態になった後とするとよい。車両側コンピュータから受信する信号としては、車両が走行開始不可能状態にあるときには出力されない信号とすると特によい。
【0019】
(7)好ましくは、電源制御装置の通信手段は、車両側コンピュータから自発出力信号を出力する車内通信ネットワークと、車両側コンピュータから応答出力信号を出力する車内通信ネットワークとの双方を用いるようにするとよい。
【0020】
このようにすることで電源制御装置では、利用されているネットワークが、自発出力信号を用いる車内通信ネットワークの車種に対しても、応答出力信号を用いる車内通信ネットワークの車種に対しても、1つの電源制御装置のみで所定の電子回路に電源電力の供給を的確に制御できる。なお、自発出力信号とは、車両側コンピュータから能動的に出力される信号であり、応答出力信号とは、応答要求を受信した場合のみに車両側コンピュータから受動的に出力される信号である。
【0021】
(8)好ましくは、電源制御装置の通信手段は、異なる複数の車内通信ネットワークと接続して通信可能な構成であり、制御手段は、前記通信手段に接続された異なる複数の車内通信ネットワークを監視し、異なる複数の車内通信ネットワークの前記通信手段が通信可能な車内通信ネットワークからの情報を用いてスイッチのON/OFFの判定を行うようにするとよい。
【0022】
このようにすることで電源制御装置では、異なる複数の車内通信ネットワークのうち通信可能な車内通信ネットワークを用いるので、多種多様な車内通信ネットワークを有する車種に対して、1つの電源制御装置のみで所定の電子回路に電源電力を供給できる。
【0023】
(9)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、車両側コンピュータからの信号を受信した時にスイッチをONし、車両側コンピュータからの信号が受信できなくなった時にスイッチをOFFするようにするとよい。
【0024】
このようにすることで電源制御装置の制御手段は、電源電圧からノイズを検出した時ではなく、車両側コンピュータからの信号を受信した時に所定の電子回路へ供給する電源電圧をONし、車両側コンピュータからの信号を受信できなくなった時に所定の電子回路へ供給する電源電圧をOFFに制御する。つまり車両側コンピュータがウェイクアップしている時には所定の電子回路へ供給する電源電圧をONすることで、ハイブリッドカー(HV)やアイドリングストップ機能を有する自動車でも、走行中に所定の電子回路を使用することができる。
【0025】
(10)好ましくは、電源制御装置においては、車内通信ネットワーク用の接続端子と電源用の供給端子を含む自己故障診断用の車内コネクタと接続する接続手段を備えるようにするとよい。
【0026】
例えば、車内に露出するOBD等の車内コネクタと接続できる接続手段(例えば、OBD等の車内コネクタに対応するコネクタ)を備えるとよい。OBDの車内コネクタには、車内通信ネットワークとの接続端子の他に電源供給用の端子が設けられているので、使用者に自動車の車内配線の知識が無くても、使用者自身で電源の接続と取り外しを行うことができ、整備工場等に行く必要が無く取り付けができる。
【0027】
車両側コンピュータから車内通信ネットワークに出力される信号には、自動車が採用している車内通信ネットワークの種類により、車両側コンピュータの起動後、他からの応答要求信号を受信しなくても出力される自発的な出力信号(自発出力信号:例えばCAN(Controller Area Network)用信号)と、他からの応答要求信号を受信した場合のみに出力される応答的な出力信号(応答出力信号:例えばK-Line用信号)がある。
【0028】
車両側コンピュータには、排ガス規制等により必須である自己故障診断((オンボードダイアグノーシス:OBD)I又はII)のシステム(ソフトウェア)が導入されているものがある。例えば、自動車のエンジンを診断する場合には、車室内に露出しているOBDの車内コネクタに、データ読み取り用のスキャンツールを接続し、スキャンツールで車両側コンピュータから車内通信ネットワークに出力される信号を読み取り故障を診断する。その際に、車両側コンピュータに接続する車内通信ネットワークが上記したCANであるなら、信号が自発出力されてくるので、信号を待ち受けて信号が車両側コンピュータから出力されたものであることを解析するだけでよい。しかし、車内通信ネットワークが上記したK-Lineであるなら、待ち受けるだけでは信号を受信できないので、先に応答要求信号を送出し、車両側コンピュータから応答出力されてくる信号を待ち受けることになる。
【0029】
汎用のカーアクセサリは、多種多様な自動車の何れにも取り付けられる可能性がある。現在の国内の自動車は、上記CAN、上記K-Lineの他に、自社独自の車内通信ネットワーク、車載マルチメディア用ネットワーク、ドアやシート用ネットワーク、セキュリティ用ネットワーク等の多種多様なネットワークから選択された任意のネットワークを使用している。しかし、自己故障診断のシステムには、車両用コンピュータから出力される上記CAN又は上記K-Lineの何れかの信号が使用され、コネクタにはOBDの車内コネクタ(後述する図3のコネクタ)が使用されている。従って、OBDの車内コネクタからCANの信号を受信して車両側コンピュータからの信号であることを判読するか、又は、OBDの車内コネクタにK-Lineの応答要求信号を送出して応答出力信号を受信することで、車両側コンピュータがウェイクアップしていることを知ることができる。このように電源制御装置の接続手段で自己故障診断用の車内コネクタと接続することで、アクセサリソケット以外から電源供給が可能になり、しかも、多様な車種に対して取り付け可能な電源制御装置を提供できる。
【0030】
(11)好ましくは、電源制御装置の接続手段を有する筐体内には、通信手段と、ノイズ検出手段と、制御手段とを備えるようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、接続手段を有する筐体内に通信手段とノイズ検出手段と制御手段とを備えるので、本電源制御装置から電源の供給を受ける所定の電子回路にノイズ検出手段と制御手段を設ける必要がなくなり、例えばカーアクセサリ等を小型化できる。また、カーアクセサリ等にノイズ検出手段を設ける場合に発生する可能性のあるカーアクセサリ等との間の電源供給線に外来ノイズが混入すること等による誤動作をなくすことができる。
【0031】
(12)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、通信手段により車両側コンピュータからの自発出力信号を車内通信ネットワークを介して検出し、ノイズ検出手段により電源供給端子の電圧から車両始動時に発生するノイズを検出し、通信手段により車両側コンピュータに対して応答要求信号を車内通信ネットワークに送出し、通信手段により車両側コンピュータからの応答要求信号に対する応答出力信号を車内通信ネットワークを介して検出し、車内通信ネットワークから自発出力信号又は応答出力信号が検出された時に、所定の電子回路へ電源電圧の供給を開始するようにするとよい。
【0032】
例えば、電源制御装置の制御手段は、まず、通信手段により車両側コンピュータからの自己故障診断の信号がCANの信号である場合の自発出力信号を受信する動作を行い、自発出力信号が受信できない場合に、ノイズ検出手段により車両始動時に発生するノイズを検出して、車両始動時に発生するノイズが検出されたら通信手段により車両側コンピュータに対してK-Lineの応答要求信号を送出し、K-Lineの応答出力信号を検出する。このようにして車両側コンピュータのウェイクアップを検出することで、車両側コンピュータが非動作中にK-Lineの応答要求信号を送出して無駄な電力を消費しないようにできる。
【0033】
(13)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、通信手段が車内通信ネットワークから自発出力信号又は応答出力信号が検出できなくなった時に、所定の電子回路へ電源電圧の供給を終了するようにするとよい。
【0034】
電源制御装置の制御手段は、自発出力信号又は応答出力信号が検出できなくなった時に所定の電子回路への電源電圧の供給を停止させ、車両側コンピュータが動作しなくなった場合に、無駄な電力を消費しないようにできる。
【0035】
(14)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、通信手段が自発出力信号を検出した場合と、ノイズ検出手段がノイズを検出した後に、通信手段が応答要求信号を送出し、その応答要求信号に対する応答出力信号を検出した場合に、スイッチをONするようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、車両側の車内通信ネットワークが車両側コンピュータから自発出力信号を出力するタイプでも、応答出力信号を出力するタイプでも、1つの電源制御装置のみで所定の電子回路に電源電力を供給できる。
【0036】
(15)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、ノイズ検出手段が車両始動時に発生するノイズを検出したことをトリガーとして、通信手段から応答要求信号を送出するようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、車両始動時に発生するノイズをトリガーとして応答要求信号を送出するので、車両側の車内通信ネットワークが応答出力信号を出力するタイプの場合に、確実に前記通信手段から応答要求信号を送出することができる。
【0037】
(16)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、所定時間を計測するタイマー手段を備え、通信手段から応答要求信号を送出してから所定時間以内に、通信手段から応答要求信号に対する応答出力信号を検出した場合にスイッチをONするようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、通信手段から応答要求信号に対する応答出力信号を所定時間以内のタイミングで検出できた場合にスイッチをONするので、ノイズ検出手段によりノイズが検出できない時でも所定の電子回路へ電源を供給できる。
【0038】
(17)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、所定時間を計測するタイマー手段を備え、通信手段が前の自発出力信号を検出してから所定時間以内に次の自発出力信号を検出できる場合には、スイッチをOFFにしないようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、通信手段から自発出力信号が所定時間以内に継続的に検出できる場合にはスイッチをOFFにしないので、バッテリー走行中やアイドリングストップ中も所定の電子回路への電源供給を継続することができる。
【0039】
(18)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、所定時間を計測するタイマー手段を備え、ノイズ検出手段が前のノイズを検出してから所定時間以内に次のノイズを検出できる場合には、スイッチをOFFにしないようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、ノイズ検出手段がオルターネータノイズ等の継続的なノイズを検出できる場合にはスイッチをOFFにしないので、エンジンを備える自動車のエンジンが起動している間は所定の電子回路への電源供給を継続することができる。
【発明の効果】
【0040】
上記のように本発明に係る電源制御装置では、アクセサリソケット以外からカーアクセサリ等の所定の電子回路へ電源を供給でき、バッテリー走行中や、アイドリングストップ中も、多種多様な自動車のカーアクセサリ等の所定の電子回路に電源電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の電源制御装置と接続される車内通信ネットワークの一例を示すブロック図である。
図2】本発明の電源制御装置の一例の概略構成を示すブロック図である。
図3】OBDコネクタの端子ピンの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<第1実施形態>
図1の車両1は、エンジン2により駆動する。エンジン2の回転軸はベルト等によりオルタネータ3に接続される。オルタネータ3は電機子を回転させることで交流電力を発生する。発生した交流電力は整流されて直流になり、直流の出力端子がバッテリー4の正極と接続される。バッテリー4の正極は、OBD車内コネクタ6の電源出力ピン(例えば後述する図3のPin16)と接続される。OBD車内コネクタ6には、電源制御装置30が接続され、さらにカーアクセサリ20が電源制御装置30に接続される。
【0043】
エンジン2にはエンジンセンサ12とエンジンセンサ13が接続される。エンジンセンサ12はエンジン2の回転数を計測するセンサであり、エンジンセンサ13はエンジン2の温度を計測するセンサである。タイヤ8は前のタイヤであり、回転センサ10はタイヤ8の回転を検出するセンサである。タイヤ9は後ろのタイヤであり、回転センサ11はタイヤ9の回転を検出するセンサである。
【0044】
車内通信ネットワーク7は、回転センサ10、回転センサ11、エンジンセンサ12、エンジンセンサ13および図示しない各種のセンサ等に接続されると共に、車両側コンピュータ5にも接続される。回転センサ10、回転センサ11、エンジンセンサ12、エンジンセンサ13等と車両側コンピュータ5は、車両1のイグニッションキーがONされると通電して動作を開始する。車内通信ネットワーク7は、回転センサ10、回転センサ11、エンジンセンサ12、エンジンセンサ13等の検出結果を車両側コンピュータ5に伝送する。車両側コンピュータ5は、各種センサからの検出結果に基づきエンジンの状態及び車両の状態を判断する。車両の状態としては、バッテリー走行中やアイドリングストップ中であることを含む。
【0045】
車内通信ネットワーク7は、上記したCAN、K-Lineの場合を含み、その他に、車両メーカーの独自規格のネットワークである場合を含む。例えば、ボデー系の車両メーカー独自規格LIN(Local Interconnect Network)、BEAN(Body Electronics Area Network)、高速制御系のFlexRay、情報系のMOST(Media Oriented System Transport)等がある。
【0046】
車内通信ネットワーク7が例えばCANである場合、上記した車両の状態を示す信号が、他からの応答要求信号を受信しなくても車両側コンピュータ5から自発的に出力される。この信号を本明細書では自発出力信号としている。それに対して車内通信ネットワーク7が例えばK-Lineである場合、上記した車両の状態を示す信号は、他からの応答要求信号を受信した場合のみに車両側コンピュータ5から応答として出力される。この信号を本明細書では応答出力信号としている。車両側コンピュータ5から自発出力信号が出力されるか、応答出力信号が出力されるかは、接続されたネットワークにより異なる。車両メーカー独自規格のネットワークも、自発出力信号が出力されるか、応答出力信号が出力される。
【0047】
図2の電源入力側接続コネクタ31は、OBD車内コネクタと接続するための電源制御装置30側のコネクタである。電源制御装置30は、電源入力側接続コネクタ31を介して、電源であるバッテリー4から電源電力の供給を受けると共に、車両側コンピュータ5と信号を送受信する。電源出力側接続コネクタ32は、カーアクセサリ20の電源接続コネクタ21と接続するための電源制御装置30側のコネクタである。電源制御装置30は、電源出力側接続コネクタ32を介してカーアクセサリ20に電源電力を供給する。
【0048】
電源制御装置30の内部では、電源から供給された電源電力は、ノイズ検出部33とリレースイッチ36に供給される。
車両側コンピュータ5から送信された信号は、車内通信ネットワーク7を経由して通信部34に入力する。逆に通信部34は車内通信ネットワーク7を介して車両側コンピュータ5と通信する。リレースイッチ36から出力される電源電力がカーアクセサリ20に供給される。制御部35は、ノイズ検出部33、通信部34、およびリレースイッチ36と接続し、ノイズ検出部33の検出結果、通信部34による通信結果および制御部35内のタイマー部37の時間計測した結果により、リレースイッチ36をON/OFFの何れかにするかを判断し、ON/OFF何れかの信号を出力する。リレースイッチ36は、この信号に従って電源からカーアクセサリ20へ供給する電源電圧をON/OFFする。
【0049】
ノイズ検出部33は、AC成分通過回路41、フィルタ42、増幅回路43、整流回路44、DC変換回路45を有し、電源電圧からノイズを検出する。ノイズは、例えば車両1始動時に発生して電源電圧に重畳されるノイズである。エンジン2を有する車両1の場合、車両1の始動時に発生してノイズ検出部33で検出されるノイズは、エンジン2の始動時に発生する電圧降下を含むノイズである。なお、車両1が、エンジン2ではなく、モーターで駆動されるハイブリッド自動車のバッテリー走行時または電気自動車であれば、車両1の始動時に発生してノイズ検出部33で検出されるノイズは、車両1への電源供給をオンにした際に発生する電圧降下を含むノイズとすればよい。
【0050】
AC成分通過回路41は、バッテリー4の出力電圧から直流電圧成分を除去してAC成分のみを通過させる。フィルタ42は、AC成分通過回路41から出力されたAC成分から、さらに検出する目的の周波数帯域の信号のみを抽出するフィルタである。AC成分通過回路41は、検出する目的の周波数に応じて、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタから選択して使用される。例えば、エンジンの回転数に比例して変化するオルタネータノイズの成分は概ね800Hz~8KHzであり、エアーコンディショナ、ヘッドライトおよびクラクション等の電装品の電源ON/OFF時のノイズ成分はオルターネータノイズよりも高い周波数帯域であり、電源電圧の揺れ成分は数百Hz以下の低い帯域であり、イグニッションキーをONした時の電圧降下はさらに低い帯域の周波数である。車両1がエンジン2を有する場合も、電気自動車の場合も、電圧降下を含むノイズは低い帯域の周波数であるので、一つのフィルタで検出することができる。以下、検出する目的の周波数がイグニッションキーをONした時(車両1が、エンジン2ではなく、モーターで駆動される場合(ハイブリッド自動車のバッテリー走行時または電気自動車)であれば、モーター始動時)の電圧降下の周波数である場合について説明する。
【0051】
フィルタ42から出力された検出目的の周波数帯域の信号は、増幅回路43で増幅され、整流回路44で整流され、DC変換回路45でDC電圧に変換されて制御部35に制御信号として出力される。ノイズ検出部33は、フィルタ42に電圧降下を含む低い帯域の周波数のノイズを検出できるフィルタを用いることで、エンジン2を有する車両1の始動を的確に検出でき、また、電気自動車の車両1の始動も的確に検出できる。制御部35から出力される制御信号は、リレースイッチ36をON/OFFさせるしきい値に対して、ハイレベル側の電圧信号と、ローレベル側の電圧信号の何れかである。例えば、ハイレベル側の電圧信号が入力する場合は、イグニッションキーをONしてエンジンを始動させた時(車両1が、エンジン2ではなく、モーターで駆動される場合(ハイブリッド自動車のバッテリー走行時または電気自動車)であれば、モーター始動時)であるので、制御部35は、リレースイッチ36をONさせる信号を出力する。一方、ローレベル側の電圧信号が入力する場合は、イグニッションキーがOFFの時(但し車両側コンピュータ5のみON時を含む)か、ONが継続されている時(アイドリングストップ中を含む)(車両1が、エンジン2ではなく、モーターで駆動される場合(ハイブリッド自動車のバッテリー走行時または電気自動車)であれば、モーターが停止している時)の何れかであるので、制御部35は通信部34からの入力およびタイマー部37の計測結果により次の判断を行う。
【0052】
制御部35は、車内通信ネットワーク7を介して車両側コンピュータ5と接続されると、予め車内通信ネットワーク7が車両側コンピュータ5から自発出力信号を出力するネットワークであるか、応答要求信号に対して応答出力信号を出力するネットワークであるかをチェックし、車内通信ネットワーク7が例えばK-Line等で応答要求信号を出力する必要がある場合には、タイマー部37で計測した所定時間毎に、通信部34から車内通信ネットワーク7へ応答要求信号を出力する。所定時間は車内通信ネットワーク7の種類毎に規格/規定により決まる。
【0053】
また、制御部35は、車内通信ネットワーク7を介して通信部34で車両側コンピュータ5から受信した信号から、車両1が運転中の状態であるか否かを判断する。制御部35は、受信した車両側コンピュータ5からの信号と、ノイズ検出部33で検出したノイズを用いて、リレースイッチ36のON/OFFを制御する。例えば制御部35は、ノイズ検出部33によって車両1の始動時に発生するノイズが検出されない場合であっても、車両側コンピュータ5からの信号を受信できるときには、車両1が運転中の状態と判断できるので、リレースイッチ36をOFFとする信号を出力しない。従って、本実施形態の電源制御装置は、バッテリー走行中やアイドリングストップ中であってもカーアクセサリに電源電圧を供給することが可能となる。
【0054】
上記した制御部35は、少なくとも以下のように動作する。
(a)通信部34により車両側コンピュータ5から、例えば自己故障診断の信号がCANの信号である場合の自発出力信号を車内通信ネットワーク7を介して受信(検出)する動作を行い、自発出力信号が受信できない場合には次の(b)の動作を実施する。
(b)ノイズ検出部33により電源供給端子の電圧から車両1始動時に発生するノイズを検出して、車両1始動時に発生するノイズが検出されたら次の(c)の動作を実施する。
(c)通信部34により車両側コンピュータ5に対して、例えばK-Lineの応答要求信号を車内通信ネットワーク7に送出する。すなわち制御部35は、ノイズ検出部33が車両1始動時に発生するノイズを検出したことをトリガーとして、通信部34から車両側コンピュータ5に対して車内通信ネットワーク7経由で応答要求信号を送出する。
(d)通信部34により車両側コンピュータ5からの応答出力信号(応答要求信号に対する)を、車内通信ネットワーク7を介して検出することで車両側コンピュータ5のウェイクアップを検出する。
(e)車内通信ネットワーク7から自発出力信号又は応答出力信号が検出された時に、カーアクセサリ20へ電源電圧の供給を開始する。
【0055】
以上のように制御部35は、ノイズ検出部33が車両1始動時に発生するノイズを検出した後に、そのノイズをトリガーとして通信部34から応答要求信号を送出することで、車両1側の車内通信ネットワーク7が応答出力信号を出力するタイプの場合に、確実に通信部34から応答要求信号を送出することができる。
【0056】
また、制御部35は、通信部34が自発出力信号を検出した場合と、ノイズ検出部33が車両1始動時に発生するノイズを検出したときの応答要求信号に対する応答出力信号を検出した場合に、リレースイッチ36をONすることで、車内通信ネットワーク7がCANの場合と、車両1が始動していない車両側コンピュータ5の非動作中にK-Lineの応答要求信号を送出して無駄な電力を消費しないようにでき、車両1側の車内通信ネットワーク7が車両側コンピュータ5から自発出力信号を出力するタイプでも、応答出力信号を出力するタイプでも、1つの電源制御装置30のみでカーアクセサリ20に電源電力を供給できる。
【0057】
さらに制御部35は、所定時間を計測するタイマー部37を備えており、ノイズ検出部33が検出したノイズをトリガーとして通信部34から応答要求信号を送出してから、タイマー部37で時間を計測し、通信部34で応答要求信号に対する応答出力信号を検出するタイミングが、タイマー部37に規定された所定時間以内である場合にリレースイッチ36をONする。これにより、バッテリー走行中やアイドリングストップ中等のノイズ検出部33によりノイズが検出できない時でもカーアクセサリ20へ電源を供給できる。
【0058】
タイマー部37は、通信部34が自発出力信号を検出した場合、通信部34が自発出力信号を検出してからの時間を計測する。制御部35は、所定時間以内に通信部34で次の自発出力信号を検出した場合、リレースイッチ36のONを継続し、OFFにはしない。車内通信ネットワーク7がCAN等の場合、車両側コンピュータ5からの自発出力信号は所定時間以内に出力されるので、前回の自発出力信号から次の自発出力信号までの時間間隔が車内通信ネットワーク7の規格に規定された所定時間以内の場合には、リレースイッチ36をOFFにしないようにすることで、バッテリー4走行中やアイドリングストップ中もカーアクセサリ20への電源供給を継続することができる。
【0059】
また、制御部35は、通信部34が車内通信ネットワーク7から自発出力信号又は応答出力信号が検出できなくなった時には、リレースイッチ36を制御してカーアクセサリ20へ電源電圧の供給を終了することで、カーアクセサリ20への電源電圧の供給は停止するので、車両1が運転中等ではなくなり車両側コンピュータ5が動作しなくなった場合に、無駄な電力を消費しないようにできる。
【0060】
OBD車内コネクタ6のコネクタは、例えば図3に示したようなSAE J1962規格のリンクコネクタ(DLCs)である。DLCのコネクタには、タイプAとタイプBがあり、タイプAは運転席からアクセスできる範囲で、車のインパネから1フィート(約30cm)以内の範囲(ステアリング・コラム付近)に設置される。タイプBは、運転席または助手席からアクセスできる範囲で、車のインパネから2.5フィート(約75cm)以内の範囲(センターコンソール付近など)に設置される。図3に示したDLCコネクタのピン配置(各位置のピンの有無)により、車内通信ネットワーク7の種類を知ることができる。OBD車内コネクタ6のPin7の端子ピンが有れば、K Lineに接続されていると判断できる。OBD車内コネクタ6のPin6と14の端子ピンが有れば、CANに接続されていると判断できる。
【0061】
車両側コンピュータ5から受信した信号の判断方法は、まず図3のOBD車内コネクタ6のどの端子ピンの信号であるかで判断する。例えば車内通信ネットワーク7がCANの場合は、OBD車内コネクタ6のPin6の端子ピン(CAN High(J-2284)(3.5~2.5V))とPin14の端子ピン(CAN Low(J-2284)(2.5~1.5V))に信号が入力される。通信部34にこの信号が入力されると制御部35は、例えばPin6とPin14の入力であることからCANの信号であることを判断し、そのPin6とPin14の各CAN信号のレベル(Pin4のシャーシーグランドレベルを基準)を比較して確認し、さらに受信した各CAN信号のヘッダに含まれる送信元のアドレス等を解析して車両側コンピュータ5から出力された信号であることを判断する。車両側コンピュータ5がウエイクアップしていることが確認できると制御部35は、リレースイッチ36をONする信号を出力して、Pin16の端子ピン(Battery Power)の電源電圧をカーアクセサリ20に供給する。
【0062】
例えば車内通信ネットワーク7がK-Lineの場合は、制御部35は、OBD車内コネクタ6のPin7の端子ピン(ISO9141-2 K Line)に、通信部34から車両側コンピュータ5向けの応答要求信号を送出し、タイマー部37を起動させて車両側コンピュータ5からの応答出力信号を待つ。車両側コンピュータ5からの信号が入力すると制御部35は、通信部34に例えばPin7の入力であることからK Lineの信号であることを判断し、そのK Line信号のレベルを、Pin4のシャーシーグランドレベルと比較して確認し、タイマー部37で計測された応答要求信号の送信から信号が入力するまでの時間から、K-Lineの規格に規定された所定時間内に信号を受信した場合に、応答出力信号と判断する。受信した信号が車両側コンピュータ5からの応答出力信号であることをより確実に確認するには、受信した各K Line信号のヘッダに含まれる送信元のアドレス等を解析してもよい。車両側コンピュータ5がウエイクアップしていることが確認できると制御部35は、リレースイッチ36をONする信号を出力して、Pin16の端子ピン(Battery Power)の電源電圧をカーアクセサリ20に供給する。
【0063】
図3に示したようなOBD車内コネクタ6は、ほとんどの車両1に設けられている。通常、車内通信ネットワーク7との接続と、シガーライター(アクセサリソケット)以外からの電源接続は容易ではないが、本実施形態の電源入力側接続コネクタ31のように、車内通信ネットワーク7用の接続端子と電源用の供給端子を含む自己故障診断用のOBD車内コネクタ6と接続する接続手段を備えることで、使用者に自動車の車内配線の知識が無くても、使用者自身で電源の接続と取り外しを行うことができ、整備工場等に行く必要が無く取り付けができる。
【0064】
また、一般的なカーアクセサリは、シガーライター(アクセサリソケット)または車両1の電源ラインに接続される。カーアクセサリによる駐車中の車両のバッテリー上がりを防止するためには、例えばカーアクセサリの内部にノイズ検出部33およびリレースイッチ36等を設ける必要がある。それに対して本実施形態では、電源制御装置30の接続手段電源入力側接続コネクタ31および電源出力側接続コネクタ32を有する筐体内には、図2に示したように通信部34と、ノイズ検出部33と、制御部35と、リレースイッチ36と、タイマー部37を備える。これにより本電源制御装置30から電源の供給を受けるカーアクセサリ20内にノイズ検出部33等を設ける必要がなくなり、カーアクセサリ20を小型化でき、カーアクセサリ20との間の電源供給線に外来ノイズが混入すること等による誤動作をなくすことができる。
【0065】
このようにカーアクセサリ20へ供給する電源電圧のON/OFF制御を、従来のようにノイズのみで判断しないで、ノイズが検出できない時に車両側コンピュータ5から車内通信ネットワーク7に出力される信号も用いることで、従来はできなかった車両1のバッテリー4走行中や、アイドリングストップ中であることを判断できる。従って、ハイブリッドカー(HV)やアイドリングストップ機能を有するエンジン2付き車両1で、運転中にエンジンを停止させる機能を使用してもカーアクセサリ20に確実に電源電力を供給することができ、エンジン2の再始動だけでなく、車両1のバッテリー走行による始動もノイズ検出部33で的確に検出できる。
【0066】
<第2実施形態>
例えば車両1がイモビライザー等のセキュリティ機能を有する場合、車両1から始動時の電圧降下を含むノイズを発生させるためには、車両1のセキュリティ機能を解除して始動させる必要がある。そうしないと、車両1のセキュリティ機能が、始動させようとする処理を盗難等が発生していると誤判定してしまうためである。
【0067】
第2実施形態の制御部35は、例えば車両1のセキュリティ機能がONして走行開始不可能状態にあるときには車両側コンピュータ5から出力されず、セキュリティ機能がOFFして走行開始が可能状態にあるときのみに車両側コンピュータ5から出力される所定の信号を、通信部34を介して検出する。制御部35は、その所定の信号を車両側コンピュータ5から通信部34が受信したことを確認し、すなわち、通信部34でその所定の信号が受信できない状態から受信できる状態になり、その後に、ノイズ検出部33で車両1の始動時に発生するノイズを検出した場合に、リレースイッチ36をONにする信号を出力する。これにより、確実にセキュリティ機能の誤判定を防止することができる。
【0068】
<第3実施形態>
車両1には通常複数の車内通信ネットワーク7が搭載されている。複数の車内通信ネットワーク7とは、例えば上記したCAN、K Line、各メーカーの独自規格(LIN、BEAN等)等である。各メーカーの独自規格の車内通信ネットワーク7も、自発出力信号を出力するタイプのものと、応答出力信号を出力するタイプのものの何れかである。第3実施形態の通信部34は、車両側コンピュータ5から自発出力信号を出力する車内通信ネットワーク7と、上記とは異なり車両側コンピュータ5から応答出力信号を出力する車内通信ネットワーク7との双方と接続されている。通信部34は、上記した双方のいずれかの車内通信ネットワーク7を介して車両側コンピュータ5と通信する。車両側コンピュータ5が両車内通信ネットワーク7のいずれと接続されるかは、メーカーおよび車種により異なる。
【0069】
カーアクセサリに電源を供給する電源制御装置30は、設置する車種が限られていないので、汎用性をもたせる必要がある。汎用性を持たせるとは、自発出力信号の車内通信ネットワーク7にも、応答出力信号の車内通信ネットワーク7にも対応できるようにすることである。より具体的には、少なくとも通信部34を自発出力信号の車内通信ネットワーク7にも、応答出力信号の車内通信ネットワーク7にも接続できるようにすることである。このようにして本実施形態の場合は、1つの電源制御装置30でも、車内通信ネットワーク7が自発出力信号を用いるタイプの車種に対しても、応答出力信号を用いるタイプの車種に対しても、カーアクセサリ20に電源電力を供給できる。
【0070】
<第4実施形態>
第4実施形態では、通信部34が上記した第3実施形態のように異なる複数の車内通信ネットワーク7と接続して通信可能な構成であることに加えて、制御部35が、通信部34に接続された異なる複数の車内通信ネットワーク7を監視する。そして制御部35で、通信部34が通信可能な車内通信ネットワーク7が、接続されている異なる複数の車内通信ネットワーク7の何れであるかを検出し、その通信部34が通信可能な車内通信ネットワーク7からの情報を用いてリレースイッチ36のON/OFFの判定を行う。
【0071】
本実施形態の制御部35は、通信部34に接続された異なる複数の車内通信ネットワーク7のうち通信可能な車内通信ネットワーク7を検出して用いることができるので、多種多様な車内通信ネットワーク7を有する車種に対して、1つの電源制御装置30のみでカーアクセサリ20に電源電力を供給できる。
【0072】
<第5実施形態>
電気自動車EVや、ハイブリッドカー(HV)のバッテリー走行時、エンジン付き車両のアイドリングストップ時には、エンジンからのノイズは発生しないので、ノイズ検出部33でノイズは検出されない。そこで第5実施形態の制御部35では、ノイズ検出部33の出力信号は利用せず、車両側コンピュータ5からの信号を受信した時にリレースイッチ36をONし、車両側コンピュータ5からの信号が受信できなくなった時にリレースイッチ36をOFFする。すなわち本実施形態の制御部35は、電源電圧からノイズを検出した時ではなく、車両側コンピュータ5からの信号を受信した時にカーアクセサリ20へ供給する電源電圧をONし、車両側コンピュータ5からの信号を受信できなくなった時にカーアクセサリ20へ供給する電源電圧をOFFに制御する。
【0073】
車両側コンピュータ5からの信号を受信できる時には、当然ながら車両側コンピュータ5は電源電力が供給されてウェイクアップしている。車両側コンピュータ5がウェイクアップしているときは、走行中または車両1内に乗員がいてイグニッションキーがONされている場合で、カーアクセサリに対する需要が発生している場合と考えられる。車両側コンピュータ5からの信号は、第1実施形態に記載した方法を用いて判断することができる。上記したように車両側コンピュータ5がウェイクアップしている時にカーアクセサリ20へ供給する電源電圧をONすることで、ハイブリッドカー(HV)やアイドリングストップ機能を有する自動車であっても、走行中や車両1内に乗員がいる場合には、カーアクセサリ20を使用することができる。
【0074】
<第6実施形態>
例えば、車両1がエンジン2を搭載し、タイマー部37は、エンジン回転数により変動するオルターネータの電機子により発生するノイズの最大発生間隔の期間を所定時間として計測し、ノイズ検出部33のフィルタ42は、オルターネータのノイズ周波数に合わせたフィルタに変更する。そして制御部35では、ノイズ検出部33で前のノイズが検出されてから、タイマー部37で所定時間以内にノイズ検出部33で次のノイズが検出できる場合には、リレースイッチ36をOFFにしないようにする。
【0075】
本実施形態の場合には、ノイズ検出部33がオルターネータノイズ等の継続的なノイズを検出している間はリレースイッチ36がOFFにならない。従って、エンジン2を備える車両1において、エンジン2が起動している間はカーアクセサリ20へ継続的に電源を供給できる。
<別実施形態>
(1)電源制御装置30は、カーアクセサリ内部に設けるようにしてもよい。例えばレーダー探知機や燃費計等のカーアクセサリの本体内部に電源制御装置30を設けるようにしてもよい。
(2)電源制御装置30は、OBD車内コネクタ6と一体となる筐体内に設けるようしてもよい。
(3)電源は、OBD車内コネクタ6から取得するものに限らず、例えばバッテリから直接取得する構成など各種の構成を採りうる。
【符号の説明】
【0076】
1 車両、
2 エンジン、
3 オルタネータ、
4 バッテリー、
5 車両側コンピュータ、
6 OBD(On-Board diagnostics)車内コネクタ、
7 車内通信ネットワーク、
8、9 タイヤ、
10、11 回転センサ、
12、13 エンジンセンサ(振動、熱、回転)、
20 カーアクセサリ、
21 電源接続コネクタ、
30 電源制御装置、
31 電源入力側接続コネクタ、
32 電源出力側接続コネクタ、
33 ノイズ検出部(ノイズ検出手段)、
34 通信部(通信手段)、
35 制御部(制御手段)、
36 リレースイッチ(スイッチ)、
37 タイマー部(タイマー手段)、
41 AC成分通過回路、
42 フィルタ、
43 増幅回路、
44 整流回路、
45 DC変換回路。

図1
図2
図3