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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】熱成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/26 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
B29C51/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021087612
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000156123
【氏名又は名称】株式会社脇坂エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 正治
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-094465(JP,A)
【文献】特開2014-117806(JP,A)
【文献】特開2002-225123(JP,A)
【文献】特開2013-107310(JP,A)
【文献】特開2007-160595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートを加熱軟化させる加熱部と、軟化した前記樹脂シートに成形品を成形する成形部と、前記樹脂シートに成形された前記成形品を打ち抜くトリミング部と、打ち抜いた前記成形品を集積する集積部とを備え、前記加熱部、前記成形部および前記トリミング部に、前記樹脂シートが間欠的に搬送される熱成形装置であって、
前記トリミング部に、
切断刃を有し、前記樹脂シートよりも上方で昇降可能でかつ前記集積部に向けて移動可能な切断型と、
前記樹脂シートよりも下方に配置され、前記切断型の下降移動に伴って前記成形品を打ち抜いた前記切断刃を受ける受け部材と、
前記切断刃により打ち抜かれた前記成形品を前記切断型に吸着させる吸着機構と設けられ
打ち抜き後の前記成形品が、当該成形品を吸着しつつ前記集積部に向けて移動した前記切断型を介して、前記集積部に供給されるものにおいて、
前記集積部に向けて移動した前記切断型の移動端と前記集積部との間に、前記吸着機構による吸着解除により落下した前記成形品を支持し、当該成形品を前記集積部に向けて搬送する搬送機構を設け、
前記トリミング部に搬送された樹脂シートよりも上方に前記搬送機構を配置し、前記搬送機構と前記トリミング部から排出された穴開きの前記樹脂シートとを上下方向でオーバーラップさせたことを特徴とする熱成形装置。
【請求項2】
前記集積部が前記成形品を集積する集積台と、
前記搬送機構によって搬送された前記成形品を、前記搬送機構から前記集積台上に移動させる移載装置と、を備える請求項に記載の熱成形装置。
【請求項3】
前記集積部が前記成形品を集積する集積台を備え、
前記成形品を、前記搬送機構の搬送力により前記搬送機構から前記集積台上に移動させる請求項に記載の熱成形装置。
【請求項4】
前記集積部が、前記集積台上に移動した前記成形品とその移動方向で係合するストッパを有する請求項に記載の熱成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、電子部品、日用品、医薬品等を収容する容器やトレー、あるいは当該容器の蓋材等としては、樹脂シートに熱成形された成形品を樹脂シートからトリミングする(打ち抜く)ことで得られたものが広く使用されている。ここでいう「熱成形」とは、成形適温に加熱軟化させた樹脂シートを真空引き又は圧空供給、もしくはその双方を利用して成形型に密着させることにより、樹脂シートに成形型の凹凸形状に対応した凹凸形状を有する成形品を得る技術手段であり、いわゆる真空成形、圧空成形および真空圧空成形などを含む概念である。
【0003】
本出願人は、下記の特許文献1において、樹脂シート(シートロールから繰り出された帯状の樹脂シート)をその長手方向に沿って間欠的に搬送するシート搬送部と、樹脂シートを成形適温に加熱軟化させる加熱部と、樹脂シートの軟化部に成形品を成形する成形部と、樹脂シートから成形品を打ち抜くトリミング部と、成形品を集積する集積部と、を備え、加熱部、成形部、トリミング部および集積部が樹脂シートの搬送方向上流側から下流側に向けて順に配置された熱成形装置、を提案している。
【0004】
トリミング部としてのトリミング装置には、特許文献1に記載のように、切断予定線の一部を切り残した状態で成形品を打ち抜くものが採用される場合と、例えば特許文献2に記載のように、成形品を完全に打ち抜くものが採用される場合とがある。特許文献2に記載のトリミング装置は、何れも昇降可能に支持された上型および下型と、上型と下型の間に進入した第一停止位置、および第一停止位置から退避した第二停止位置の二位置間を往復動する成形品搬送部とを備える。上型は、環状の切断刃を有する切断型とされ、下型は、上型の下降時(成形品の打ち抜き時)に切断刃と当接する受け部材をその上端部に有する。このトリミング装置は、以下のように動作する。
【0005】
まず、切断刃の刃先を受け板に当接させるようにして上型と下型を型締めすると、樹脂シートから成形品が打ち抜かれ、打ち抜かれた成形品は下型(受け板)の上面に載置される。上型と下型を型開きすると、成形品搬送部は、第二停止位置から第一停止位置に移動して下型の上面に載置された成形品を吸着し、その後、第一停止位置から第二停止位置に移動して吸着した成形品を解放する。解放された成形品は、自由落下して回収テーブル(集積台)上に集積される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-88208号公報
【文献】特開2005-297400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のトリミング装置では、上型と下型の間に進入する成形品搬送部により、樹脂シートから打ち抜かれた成形品が集積部に向けて搬送されることから、上型と下型の型開き時には、成形品搬送部が上型(に支持された切断刃)および下型(に支持された受け板)の双方に干渉しないだけのスペースを上型と下型の間に確保する必要がある。そのため、下型を大きく昇降させ得る昇降機構が必要になる。一方、特許文献2のトリミング装置では、上型と下型を型締めすることで成形品が完全に打ち抜かれることから、切断刃を装着した上型を、高いプレス能力を有する大型のプレス装置の可動部材に取り付ける必要がある。この場合、下型を昇降させる昇降機構としては、トグル機構等、昇降移動量を十分に確保できることに加えて高い荷重負荷能力を有する大掛かりなものを採用する必要が生じるため、トリミング装置、ひいては熱成形装置の大型化が不可避となる。
【0008】
そこで、本発明の主な目的は、熱成形装置を小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、樹脂シートを加熱軟化させる加熱部と、軟化した樹脂シートに成形品を成形する成形部と、樹脂シートに成形された成形品を打ち抜くトリミング部と、打ち抜いた成形品を集積する集積部とを備え、加熱部、成形部およびトリミング部に、樹脂シートが間欠的に搬送される熱成形装置であって、トリミング部に、切断刃を有し、樹脂シートよりも上方で昇降可能でかつ集積部に向けて移動可能な切断型と、樹脂シートよりも下方に配置され、切断型の下降移動に伴って成形品を打ち抜いた切断刃を受ける受け部材と、切断刃により打ち抜かれた成形品を切断型に吸着させる吸着機構とを設け、打ち抜き後の成形品が、当該成形品を吸着しつつ集積部に向けて移動した切断型を介して、集積部に供給されることを特徴とする。
【0010】
上記の構成を有する本発明に係る熱成形装置によれば、切断刃を有する切断型が下降移動するのに伴って樹脂シートに成形された成形品が打ち抜かれると、打ち抜き後の成形品は切断型に吸着された状態で集積部に向けて搬送される。この場合、切断型に設けられた切断刃とこれを受ける受け部材との間には、両者間に切断型とは別に設けられた成形品搬送部が進入する特許文献2に記載の熱成形装置(トリミング装置)で必要とされるような大きなスペースを確保する必要がない。そのため、成形品の打ち抜き時に下降した切断刃を受ける受け部材(下型)は、トグル機構のような大掛かりな機構に取り付ける必要はなく、熱成形装置の枠体に取り付ける、あるいは僅かな昇降移動を許容するような昇降機構に取り付ければ足りる。これにより、トリミング装置、ひいては熱成形装置を小型化することができる。
【0011】
また、成形部で樹脂シートに成形品を成形する際には、真空引き又は圧空供給、もしくはその双方が利用されることから、熱成形装置はエアポンプ等のエア源を具備している。このエア源は、樹脂シートから打ち抜かれた成形品を切断型に吸着させる吸着機構においても活用することができるので、打ち抜き後の成形品を集積部に向けて確実に搬送可能としつつ、熱成形装置を簡素化・小型化することが可能となる。
【0012】
上記の構成において、集積部に向けて移動した切断型の移動端と集積部との間には、吸着機構による吸着解除により落下した成形品を支持し、この成形品を集積部に向けて搬送する搬送機構を設けることができる。
【0013】
このような搬送機構を設けておけば、トリミング部から集積部に向けての切断型の前進移動量(および集積部側からトリミング部への後退移動量)を必要最小限に留めることができる。これにより、トリミング部のサイクルタイムを短縮して成形品の生産効率を高めることができる他、切断型を集積部に向けて移動させるための機構をいたずらに大型化・長寸化する必要がなくなる。
【0014】
集積部には、成形品を集積する集積台と、搬送機構によって搬送された成形品を、搬送機構から集積台上に移動させる移載装置とを設けることができる。
【0015】
搬送機構によって搬送された成形品は、上記のとおり、移載装置によって搬送機構から集積台上に移動させることができる他、搬送機構の搬送力により搬送機構から搬送台上に移動させることもできる。後者の場合、移載装置を省略することができるので、熱成形装置を全体として簡素化・小型化することができるという利点がある。但し、この場合、集積部には、集積台上に移動した成形品とその移動方向で係合するストッパを設けておくのが好ましい。これにより、集積台上に移動した成形品を集積台の所定位置で停止させることができるので、集積台による成形品の集積作業を精度良くかつ効率良く実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のことから、本発明によれば、熱成形装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る熱成形装置の概略側面図である。
図2】成形部の概略断面図である。
図3】トリミング部の概略断面図である。
図4図1の熱成形装置で実施されるトリミング工程を示す図である。
図5図1の熱成形装置で実施されるトリミング工程~集積工程を示す図である。
図6図1の熱成形装置で実施されるトリミング工程~集積工程を示す図である。
図7図1の熱成形装置で実施されるトリミング工程~集積工程を示す図である。
図8図1の熱成形装置で実施されるトリミング工程~集積工程を示す図である。
図9図1の熱成形装置で実施されるトリミング工程~集積工程を示す図である。
図10図1の熱成形装置で実施されるトリミング工程~集積工程を示す図である。
図11】(a)図および(b)図は、図1の熱成形装置の集積部で実施される成形品の払い出し作業を示す図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る熱成形装置の概略側面図である。
図13図12に示す熱成形装置で実施される集積工程の途中段階を示す図である。
図14図13を上側から見た時の部分概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱成形装置1の概略側面図である。この熱成形装置1は、食品、電子部品、日用品、医薬品等を収容する容器やトレー、あるいは容器の蓋材等として使用される成形品を量産するために使用されるものであり、帯状をなした長尺の樹脂シートSをその長手方向に沿って搬送するシート搬送部2と、樹脂シートS(の長手方向一部領域)を成形適温に加熱軟化させる加熱工程を実施する加熱部3と、軟化した樹脂シートS(樹脂シートSの軟化部)に所定の立体形状を有する成形品Saを成形(熱成形)する成形工程を実施する成形部4と、樹脂シートSから成形品Saを完全に打ち抜くトリミング工程を実施するトリミング部5と、打ち抜き後の成形品Saを集積する集積工程を実施する集積部6とを備える。加熱部3、成形部4、トリミング部5および集積部6は、図1中に矢印Aで示す樹脂シートSの搬送方向(以下「シート搬送方向A」ともいう)の上流側から下流側に向けて順に配置されている。
【0020】
図1に示すように、シート搬送部2は、シートロールSRを回転可能に支持した架台21と、シートロールSRから繰り出された帯状の樹脂シートSを水平姿勢(略水平姿勢)で搬送する水平搬送部22と、トリミング部5で成形品Saが打ち抜かれた穴開きの樹脂シートS(スクラップシートS’)をロール状に巻き取るスクラップワインダ23とを備える。水平搬送部22は、加熱部3からトリミング部5に至るまで連続して配置される。スクラップワインダ23は、水平搬送部22によって搬送される樹脂シートSの下方で、かつトリミング部5と集積部6の間に配置される。
【0021】
詳細な図示は省略しているが、水平搬送部22としては、例えば、複数のクランプが所定間隔で取り付けられた無端チェーンと、外周に掛け回された上記無端チェーンを水平面内で周回移動させるように垂直軸回りに回転駆動する回転駆動部22aとを樹脂シートSの幅方向(図1の紙面と直交する方向)両側にそれぞれ配置したものが採用される。このような構成を有する水平搬送部22では、各無端チェーンに取り付けられた複数のクランプで樹脂シートSの幅方向一方側および他方側の端部を掴みつつ、両回転駆動部22aを同期して互いに反対方向に回転駆動させると、両無端チェーンが互いに反対方向に同速度で周回移動することで樹脂シートSが水平方向に沿って搬送される。この水平搬送部22とスクラップワインダ23は同期して間欠駆動される。これにより、シート搬送部2は、樹脂シートSを間欠的に搬送する。シート搬送部2により間欠搬送される樹脂シートSの送りピッチは、成形部4の1回の成形動作で成形される成形品Saのシート搬送方向Aの長さ分とする。水平搬送部22で搬送される樹脂シートSは、その長手方向(シート搬送方向A)および幅方向の双方で緊張した状態にある。つまり、加熱部3と成形部4の間や、成形部4とトリミング部5の間に、樹脂シートSを弛ませた領域は存在しない。
【0022】
図1に示すように、加熱部3は、樹脂シートS(水平搬送部22で搬送される樹脂シートS)の上方および下方にそれぞれ配置された上側ヒータ31および下側ヒータ32を備え、上側ヒータ31および下側ヒータ32は、それぞれ、昇降可能な上側保持部材33および下側保持部材34に取り付けられている。熱成形装置1の通常運転中、上側保持部材33および下側保持部材34は、それぞれ下死点および上死点に位置して相手側の保持部材と当接し、樹脂シートSの長手方向一部領域(両ヒータ31,32と対向する被加熱領域)を密封している。これにより、樹脂シートSの被加熱領域を効率良く加熱軟化させることができる。
【0023】
図示は省略するが、上側保持部材33および下側保持部材34を昇降移動させる駆動機構としてはエア圧を利用するもの、例えば、保持部材33,34に駆動力を付与するエアシリンダと、エアコンプレッサと、エアコンプレッサにより圧縮された圧縮エアを貯留するエアタンクと、エアタンクとエアシリンダの圧力室(詳細には、エアシリンダの直動部材を後退させる側、すなわち保持部材33,34を相対的に離反移動させる側の圧力室)を接続するエア流路上に配置されたソレノイドバルブとを備えるものが使用される。上記ソレノイドバルブには、通電時には上記エア流路を閉塞してエアタンクからエアシリンダの上記圧力室への圧縮エアの供給を遮断する一方、非通電時には上記エア流路を開放してエアタンクから上記圧力室への圧縮エアの供給を許容するもの(シングルソレノイドバルブ)が使用される。そして、熱成形装置1の運転中には上記ソレノイドバルブに常時通電されている。
【0024】
上記構成を有する駆動機構であれば、仮に、熱成形装置1の運転中(両保持部材33,34が互いに当接して樹脂シートSを加熱している最中)に停電が発生した場合には、上記ソレノイドバルブが閉状態から開状態に移行してエアタンクに貯留された圧縮エアがエアシリンダの上記圧力室に供給されるため、両保持部材33,34に、両保持部材33,34を相対的に離反移動させる方向の駆動力を作用させることができる。これにより、余熱による樹脂シートSの過加熱、ひいては過加熱されて溶け落ちた樹脂シートSに由来する火災の発生を未然に防止することができる。
【0025】
図1に示すように、成形部4は、樹脂シートSの上方および下方にそれぞれ配置された上型41および下型42を有する成形型と、上型41および下型42を昇降させる昇降機構とを備える。本実施形態の上型41は、図2に概念的に示すように、樹脂シートSに成形される成形品Saの形状に対応した凹部41aが設けられた雌型とされ、下型42は、型締め時に凹部41a内に樹脂シートSを押し込むための凸部42aが設けられた雄型とされる。上型41には一端が凹部41aに開口した無数の通気孔41bが設けられ、この通気孔41bの他端はエアホース等を介してエアポンプ等のエア源(図示省略)に接続される。
【0026】
以上の構成により、上型41を下降移動させると共に下型42を上昇移動させることにより成形型を型締めした後、上型41に設けた通気孔41bを介して両型41,42間に介在する樹脂シートSに対して吸引力が付与されると、樹脂シートSが凹部41aに沿って変形し、所定形状の成形品Saが樹脂シートSに成形される(真空成形)。なお、成形品Saは、真空引きを利用した上記の真空成形の他、圧空供給を利用した圧空成形、真空引きおよび圧空供給を併用した真空圧空成形によって成形される場合もある。また、成形品Saの形状等によっては、図示例とは逆に、上型41が雄型、下型42が雌型となる場合もある。
【0027】
図1に示すように、トリミング部5は、樹脂シートSの上方に配置された切断型51と、樹脂シートSの下方に配置された受け部材52と、プレス装置53と、吸着機構56(図3参照)と、切断型搬送機構58とを備える。
【0028】
図3に拡大して示すように、切断型51は、支持部材55と、支持部材55に取り付けられた切断刃54とを備える。切断刃54は、トムソン刃と称される薄い帯状の刃を成形品Saの輪郭形状に対応する環状形態に形成したものであり、成形品Saのサイズ・形状等に応じて交換される。
【0029】
受け部材52は、切断型51の下降移動に伴って切断刃54が樹脂シートSを貫通することにより樹脂シートSから成形品Saが打ち抜かれた時に切断刃54の刃先54aを受けるものであり、例えばポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)等の樹脂材料で作製された板材が使用される。これにより、成形品Saの打ち抜きに伴って切断刃54の刃先54aが早期に欠損等するのを可及的に防止することができる。
【0030】
切断型51は、プレス装置53(の可動部材)に昇降可能に支持される。切断型51、プレス装置53、受け部材52および切断型搬送機構58は、水平方向に一体にスライド移動可能に設けられる。樹脂シートSに成形される成形品Saのサイズ(特にシート搬送方向Aの長さ)が変更されると、それに応じてシート搬送部2で樹脂シートSを間欠搬送する際の送りピッチが変更される。この際、切断型51、プレス装置53、受け部材52および切断型搬送機構58も一体に水平方向にスライドさせ、これら(トリミング部5)と成形部4との間の水平方向の離間距離が樹脂シートSの送りピッチの整数倍(2倍以上)となるように調整される。これにより、樹脂シートSに成形された成形品Saを精度良く打ち抜くことができる。
【0031】
吸着機構56は、切断型51の下降移動に伴って切断刃54が打ち抜いた成形品Saを切断型51に対して吸着および分離させる。吸着機構56として、ここでは、切断型51に、一端が切断型51の内部空間51aに開口した複数の吸気孔51bが設けられる。各吸気孔51bの他端には、エアホース等を介してエアポンプ等のエア源57が接続される。エア源57には、成形部4で成形品Saを真空成形する際に使用するエア源を活用することができる。この吸着機構56により、切断刃54により打ち抜かれた成形品Saが切断型51に吸着され、内部空間51aに収容される。
【0032】
切断型搬送機構58は、打ち抜き後の成形品Saを吸着した切断型51を集積部6に向けて移動させる。本実施形態の切断型搬送機構58は、切断型51を水平方向に往復動させるものであり、より詳細には、トリミング部5で実施される成形品Saの打ち抜き加工の実施位置(打ち抜き位置P1:図1参照)、および後述する「搬送機構」としての成形品搬送コンベア63に対して成形品Saを受け渡す受け渡し位置P2(図1参照)の二位置間で切断型51を水平方向に往復動させる。この切断型搬送機構58は、例えば、回転駆動源(例えば、サーボモータ)と、回転駆動源の回転運動を水平方向の直線運動に変換する運動変換機構とを組み合わせた電動アクチュエータ(電動シリンダ)で構成することができる。なお、切断型搬送機構58は、切断型51とともに昇降移動する。つまり、プレス装置53は、切断型51および切断型搬送機構58を昇降可能に支持している。
【0033】
トリミング部5と集積部6との間、具体的には切断型搬送機構58により集積部6に向けて移動した切断型51の移動端と集積部6との間には、「搬送機構」としての成形品搬送コンベア63が配置される。トリミング部5で打ち抜かれ、切断型51に吸着保持された成形品Saは、切断型搬送機構58により切断型51が受け渡し位置P2まで搬送された後、吸着機構56による吸着の解除に伴って切断型51から離脱し、成形品搬送コンベア63の搬送面上に自由落下する。成形品搬送コンベア63(の搬送面)の上流側部分は、切断型搬送機構58の直下に配置されている。また、この成形品搬送コンベア63は、搬送面を鉛直下方に投影したときの投影面の少なくとも一部(ここでは、上流側部分)が水平搬送部22に沿って搬送される樹脂シートS(スクラップシートS’)と重なるように、当該樹脂シートSよりも高位に配置される。これにより、受け渡し位置P2で成形品搬送コンベア63の搬送面上に落下した成形品Saは、成形品搬送コンベア63によって集積部6に向けて搬送される。
【0034】
図1等に示すように、集積部6は、集積台61および排出コンベア62を備える。
【0035】
集積台61は、成形品Saを集積する集積作業の実施位置(集積作業位置)P4に配置されており、上端面が成形品搬送コンベア63の搬送面と略同一平面上に位置する上昇位置(図1中に実線で示す)、および上端面が排出コンベア62の搬送面と略同一平面上に位置する下降位置(図1中に二点鎖線で示す)の二位置間を昇降可能に設けられ、高さ方向の任意の位置で停止可能となっている。本実施形態の集積作業は、複数の成形品Saを鉛直方向に積み重ねる作業であり、集積台61は、その上面に成形品Saが載置されていない集積作業の開始段階では上昇位置に位置し、集積作業が進展する(成形品Saの積み重ね個数が増加する)のに伴って徐々に下降移動する。
【0036】
成形品搬送コンベア63と集積部6との間には、成形品搬送コンベア63で搬送された成形品Saを集積台61上に移動させる(集積台61に移載する)移載装置64が設けられる。移載装置64は、成形品搬送コンベア63から集積台61に移載される成形品Saを保持する保持部材65と、保持部材65を水平方向に往復動させる直動アクチュエータ66とを備える。本実施形態では、成形品Saをその上方から吸着することにより成形品Saを保持する保持部材65が使用される。そのため、詳細な図示は省略しているが、保持部材65には、一端が成形品Saとの対向面(下面)に開口した吸気孔が設けられ、この吸気孔の他端は、エアホース等を介してエアポンプ等のエア源に接続されている。このエア源には、トリミング部5の吸着機構58に接続されるエア源57と同様に、成形部4で成形品Saを真空成形する際に使用するエア源を活用することができる。
【0037】
図1(および図4等)に示すように、直動アクチュエータ66には、電動モータ等の回転駆動源およびボールねじ等の運動変換機構等を組み合わせた電動シリンダが採用され、この電動シリンダは直動部材66aが水平方向に進退移動するように横姿勢で配置される。保持部材65は、ブラケットを介して直動部材66aの先端に取り付けられている。保持部材65は、直動部材66aの先端が前進限に位置した時に、成形品搬送コンベア63の下流側部分の上方(待機位置P3)に位置し、直動部材66aの先端が後退限に位置した時に集積台61の上方(集積作業位置P4)に位置する。なお、直動アクチュエータ66としては、電動シリンダに替えて、エアシリンダや油圧シリンダ等の流体圧シリンダを用いても良い。
【0038】
以下、図1および図4図11を参照しながら、熱成形装置1のトリミング部5および集積部6でそれぞれ実施されるトリミング工程および集積工程の実施態様を詳細に説明する。
【0039】
まず、図1および図4に示すように、樹脂シートSに成形された成形品Saがトリミング部5に搬入されて打ち抜き位置P1に配置されると、プレス装置53が切断型51(および切断型搬送機構58)を下降移動させる。これに伴って切断型51に取り付けられた切断刃54(図3参照)が樹脂シートSを貫通することにより、樹脂シートSから成形品Saが完全に打ち抜かれる。切断刃54によって成形品Saが打ち抜かれると、吸着機構56が作動し、打ち抜かれた成形品Saが切断型51に吸着保持される。成形品Saを吸着保持した切断型51が上昇移動すると、図5に示すように、切断型搬送機構58が駆動し、成形品Saを吸着保持した切断型51が集積部6に向けて移動(打ち抜き位置P1から受け渡し位置P2に移動)する。なお、成形品Saを吸着した切断型51が上昇移動すると、シート搬送部2が駆動して後続の成形品Saを打ち抜き位置P1に配置する。
【0040】
図6に示すように、成形品Saを吸着保持した切断型51が受け渡し位置P2に到達すると、吸着機構56による成形品Saの吸着状態が解除される。これにより、成形品Saは、切断型51から分離して自由落下し、成形品搬送コンベア63に受け渡される(成形品搬送コンベア63により下方側から支持される)。成形品搬送コンベア63への成形品Saの受け渡しが完了すると、図7に示すように、成形品搬送コンベア63が成形品Saを受け渡し位置P2から待機位置P3に搬送し、また、切断型搬送機構58が切断型51を受け渡し位置P2から打ち抜き位置P1に後退移動させる。
【0041】
図8に示すように、待機位置P3に搬送された成形品Saは、移載装置64を構成する保持部材65により上方から吸着保持される。またこのとき、打ち抜き位置P1に移動した切断型51(および切断型搬送機構58)が下降移動することにより、樹脂シートSに成形されている後続の成形品Saが打ち抜かれる。
【0042】
図9に示すように、保持部材65に吸着保持された成形品Saは、直動アクチュエータ66の直動部材66aが短縮動作することにより、待機位置P3から集積作業位置P4に搬送される。成形品Saが集積作業位置P4に搬送されると、保持部材65から成形品Saが解放され、解放された成形品Saが集積台61上に載置される。これにより、成形品搬送コンベア63から集積台61への成形品Saの移載が完了する。また、樹脂シートSから打ち抜かれた後続の成形品Saが製品搬送コンベア63に搬送される。図10に示すように、集積台61上に成形品Saが載置されると、この載置された成形品Saと、次に待機位置P3から集積作業位置P4に搬送される後続の成形品Saとが干渉しないように、集積台61が所定量下降移動する。
【0043】
そして、図11(a)に示すように、集積台61上に成形品Saが所定個数積み重ねられると、集積台61は、その上面が排出コンベア62の搬送面と略同一平面上に位置する下降位置まで下降移動する。その後、図11(b)に示すように、ノックアウト具70が前進移動し、集積台61上に載置された成形品Saの積層体を排出コンベア62に払い出す。排出コンベア62は、成形品Saの積層体を受け取り、これを熱成形装置1の外側に排出する。
【0044】
熱成形装置1においては、以上で説明した、切断型51による成形品Saの打ち抜きおよび成形品搬送コンベア63への搬送(図4図6等)、成形品搬送コンベア63による集積部6側への成形品Saの搬送(図7)、並びに移載装置64および集積台61による成形品Saの移載・集積(図8図10)の他、図1に示す加熱部3による樹脂シートSの加熱軟化、および成形部4による樹脂シートSへの成形品Saの成形などが並行して実施される。
【0045】
以上で説明した本発明の実施形態に係る熱成形装置1によれば、切断刃54を有する切断型31が打ち抜き位置P1で下降移動するのに伴って樹脂シートSから成形品Saが打ち抜かれると、打ち抜かれた成形品Saは切断型51に吸着された状態で集積部6に向けて搬送される。この場合、切断型51に取り付けられた切断刃54と切断刃54を受ける受け部材52との間には、両者間に切断型とは別に設けられた成形品搬送部が進入する特許文献2に記載の熱成形装置(トリミング装置)で必要とされるような大きなスペースを確保する必要がなくなる。そのため、成形品Saの打ち抜き加工時に切断刃54を受ける受け部材52は、トグル機構のような大掛かりな機構に取り付ける必要はなく、熱成形装置1の枠体に取り付ける、あるいは僅かな昇降移動を許容するような昇降機構に取り付ければ足りる。これにより、トリミング部5、ひいては熱成形装置1を高さ方向で小型化することができる。
【0046】
また、熱成形装置1の成形部4で樹脂シートSに成形品Saを成形する際には、真空引き又は圧空供給、もしくはその双方が利用されることから、熱成形装置1はエアポンプ等のエア源を具備する。このエア源は、樹脂シートSから打ち抜かれた成形品Saを切断型51に吸着させる吸着機構56においても活用することができるので、トリミング部5で打ち抜かれた成形品Saを集積部6に対して確実に供給可能としつつ、熱成形装置1を簡素化・小型化することが可能となる。
【0047】
ところで、熱成形装置1では大小様々なサイズの成形品が成形されることから、前述したとおり、シート搬送部2による樹脂シートSの間欠送り量、さらに言えば成形部4(成形品Saの成形位置)とトリミング部5(成形品Saの打ち抜き位置P1)のシート搬送方向Aにおける離間距離は、樹脂シートSに成形すべき成形品Saのシート搬送方向Aのサイズに応じて調整される。具体例を挙げると、成形品Saのサイズが小さくなるほど成形部4とトリミング部5のシート搬送方向Aの離間距離は小さく設定されることになる。その一方、集積台61(集積部6)は、トリミング部5のように成形品Saのサイズに応じてシート搬送方向Aにおける設置位置を変更する必要がない(水平搬送部22に沿って搬送される樹脂シートSに対して何らかの作業を施す部位ではない)ことから、トリミング部5(水平搬送部22)よりもシート搬送方向Aの下流側の所定位置に固定的に設置されるのが一般的である。
【0048】
従って、図1等に示す本実施形態の熱成形装置1とは異なり、仮に、樹脂シートSから打ち抜かれた成形品Saを切断型51によって直接集積台61(集積作業位置P4)まで搬送するようにした場合、成形品Saのサイズによっては、切断型51の往復移動距離、ひいてはトリミング部5のサイクルタイムが大幅に増加する。また、この場合には、切断型51を往復動させる切断型搬送機構58を、図1等に示す本実施形態の熱成形装置1よりもシート搬送方向Aの下流側に大きく延長させる必要が生じる。そのため、切断型51および切断型搬送機構58を支持するプレス装置53を大型化する必要が生じる他、熱成形装置1(特にトリミング部5)の枠体等を高強度化・高剛性化しなければ、切断型搬送機構58が大型化するのに伴って増大する荷重(モーメント荷重)を確実に支持することが難しくなる。
【0049】
これに対し、本実施形態の熱成形装置1には、集積部6に向けて移動する切断型51の移動端(下流側端部)と集積部6との間に、吸着機構58による吸着解除により落下した成形品Saを下方側から支持し、これを集積部6に向けて搬送する搬送機構としての成形品搬送コンベア63を設けている。これにより、切断型51の往復移動量(切断型搬送機構58による成形品Saの搬送量)を、集積装置61の設置位置に関係なく必要最小限に留めることができるので、トリミング部5(切断型51)のサイクルタイムを短縮して成形品Saの生産効率を高めることができる。また、切断型搬送機構58をシート搬送方向Aでむやみに大型化する必要がなくなるので、切断型51および切断型搬送機構58を昇降可能に支持したプレス装置53を大型化したり、トリミング部5を支持する枠体を高強度化・高剛性化したりする必要がなくなる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態に係る熱成形装置1について説明を行ったが、本発明の実施の形態はこれに限られない。図12に、本発明の他の実施形態に係る熱成形装置1の概略側面図を示す。
【0051】
図12に示す熱成形装置1は、受け渡し位置P2で切断型51に対する吸着状態が解消されることにより成形品搬送コンベア63に受け渡された(成形品搬送コンベア63の搬送面で支持される)成形品Saが、図13に拡大して示すように、成形品搬送コンベア63の搬送力(駆動力)Tを利用して成形品搬送コンベア63から集積台61上に移動する点において、図1等に示す熱成形装置1と大きく異なる。
【0052】
この場合、図1等に示す熱成形装置1に設けられていた移載装置64を省略することができるので、熱成形装置1を全体として簡素化・小型化することができるというメリットがある反面、以下のようなデメリットがある。
・集積台61上に移動した成形品Sa(特に、集積台61上に直接載置される成形品Sa)の停止位置が安定しない。
・集積台61上に移動した成形品Saが慣性力によって必要以上に前進移動してしまい、成形品Saが集積台61から落下する可能性がある。
上記のデメリットは、成形品Saの集積作業を精度良くかつ効率良く実施することを困難にする。
【0053】
そのため、移載装置64を省略し、成形品搬送コンベア63の搬送力Tを利用して成形品Saを成形品搬送コンベア63から集積台61上に移動させる場合には、図14に概念的に示すように、集積台61上に移動した成形品Saとその移動方向(ここでは、成形品搬送コンベア63による成形品Saの搬送方向と同じ方向)で係合可能なストッパ71を設けておく。これにより、集積台61上に移動した成形品Saを集積台61の所定位置で停止させることができるので、成形品Saの集積作業を効率良くかつ精度良く実施することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態に係る熱成形装置1について説明を行ったが、熱成形装置1には本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を施すことが可能である。
【0055】
例えば、樹脂シートSを成形適温に加熱軟化させる加熱部3は、上側ヒータ31および下側ヒータ32を備えるものに替えて、上側ヒータ31又は下側ヒータ32の何れか一方を備えるものとしても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 熱成形装置
2 シート搬送部
3 加熱部
4 成形部
5 トリミング部
6 集積部
22 水平搬送部
51 成形型
52 受け部材
54 切断刃
56 吸着機構
58 切断型搬送機構
61 集積台
63 成形品搬送コンベア(搬送機構)
64 移載装置
S 樹脂シート
Sa 成形品
【要約】
【課題】熱成形装置を小型化する。
【解決手段】樹脂シートSに成形された成形品Saを打ち抜くトリミング部5に、切断刃54を有し、樹脂シートSよりも上方で昇降可能でかつ集積部6に向けて移動可能な切断型51と、樹脂シートSよりも下方に配置され、切断型51の下降移動に伴って成形品Saを打ち抜いた切断刃54を受ける受け部材52と、打ち抜かれた成形品Saを切断型51に吸着させる吸着機構56とを設ける。打ち抜き後の成形品Saは、この成形品Saを吸着しつつ集積部6に向けて移動した切断型51を介して集積部6に供給される。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14