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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】燃料電池案内バッフル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20220527BHJP
   H01M 8/0265 20160101ALI20220527BHJP
   H01M 8/026 20160101ALI20220527BHJP
   H01M 8/0245 20160101ALI20220527BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0265
H01M8/026
H01M8/0245
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021517980
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2019082997
(87)【国際公開番号】W WO2020098217
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】201811372401.4
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521104089
【氏名又は名称】上海恒勁動力科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高 勇
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-226838(JP,A)
【文献】特開平11-283639(JP,A)
【文献】特開2012-138253(JP,A)
【文献】特表2004-526283(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035585(WO,A1)
【文献】特開2006-120587(JP,A)
【文献】特開2006-004702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体通路(3)が設けられた燃料電池案内バッフル(1)であって、
前記流体通路(3)の中央には、少なくとも1つの流線型の分流アイランド(7)が設けられ、
前記分流アイランド(7)には少なくとも1つの補助マイクロチャンネル(8)が設けられ、
前記補助マイクロチャンネル(8)は、深さと幅とが前記流体通路の合流セクション通路の深さと幅より小さく、且つ分流通路の深さと幅よりも小さくなるように前記流体通路内の各箇所における流速及び圧力を改変することにより、流体を流体拡散層に強制的に進入させて流れるようにする圧力差が形成されることを特徴とする燃料電池案内バッフル。
【請求項2】
前記分流アイランド(7)の底部には、前記流体拡散層(9)が設けられ、
流体が前記流体通路(3)に沿って前記合流セクション通路と前記分流通路とを通過する際の流速の変化が流体圧力の変化を起こして圧力差を生じさせ、
前記圧力差は、流体を案内バッフル(1)に貼合せた前記流体拡散層(9)に強制的に進入させることにより、触媒層(10)における生成水を取り除き、流体のxyzの3方向における三次元の流れを形成することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項3】
前記分流アイランド(7)の上流を向いている面には、流体案内斜面または流体案内溝(14)が設けられ、
流体が前記合流セクション通路から流出して真正面から前記分流アイランド(7)に衝突する際に、流体が前記流体案内斜面または前記流体案内溝(14)によって、前記分流アイランド下の前記流体拡散層に案内されることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項4】
前記分流アイランド(7)の先端の流線型曲面の曲率半径Rと、後端の流線型曲面の曲率半径rとの関係をR≧rとすることにより、
前記分流アイランド(7)は、前記流体通路(3)を、拡張セクションと収束セクションとを具備する少なくとも2つの前記分流通路に分割し、
前記少なくとも2つの前記分流通路は、前記分流アイランド(7)の後端で前記合流セクション通路に合流する場合、前記分流アイランド(7)の後端に、前記流体通路の側壁に生成水が付着することを防ぐための渦が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項5】
前記流体通路(3)の前記合流セクション通路と前記分流通路の深さ及び/または幅が異なる場合、
流体の合流セクション通路断面(L、P)における流速S 及び流速S と、分流通路断面(N)における流速S との関係は、S 及びS がS 以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項6】
前記流体通路(3)は、その深さが波状に変化するよう流体の流速を調整し、
前記分流アイランドの先端の合流セクション断面(L)における深さHから前記分流通路断面(N)における深さhまで徐々に減少するとともに、前記分流通路断面(N)における深さから前記分流アイランドの後端の合流セクション断面(P)における深さまで徐々に増加することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項7】
隣接する前記流体通路(3)内の前記分流アイランド(7)が交差して設けられ、前記各流体通路の前記分流通路が位置する領域は拡散領域(A)であるとともに、前記合流セクション通路が位置する領域は収束領域(B)であり、1つの前記流体通路(3)の拡散領域(A)は、隣り合う流通通路の収束領域(B)と隣接し、拡散領域(A)の流体の圧力は、収束領域(B)の流体の圧力と異なり、
隣接する拡散領域と収束領域の側壁(12)の両側に圧力差が形成された場合には、この圧力差によって流体を側壁(12)の下端の前記流体拡散層(9)に拡散して流動させ、隣接する前記流体通路に進入するように、反応媒体を前記側壁の底部領域に伝達させて拡散させると共に、前記側壁の底部の前記流体拡散層(9)における生成水を取り除くことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項8】
前記分流アイランド(7)内の前記補助マイクロチャンネル(8)の直径dと、前記流体通路の前記合流セクション通路の直径Dとの関係は、d=1/5~1/10Dであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項9】
前記流体通路(3)の前記合流セクション通路の直径または幅Dは、複数の前記分流通路の直径または幅の合計以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項10】
前記分流アイランド(7)は、前記流体通路(3)の中央にて隆起した凸塊であり、
前記分流アイランド(7)内の前記補助マイクロチャンネル(8)から構成された前記流体通路は、少なくともアーク状、工字型、Y型とT型を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の燃料電池案内バッフル。
【請求項11】
案内バッフル(1)には、複数の流体通路(3)が設けられ、
前記流体通路(3)の中央には少なくとも1つの流線型の分流アイランド(7)が設けられ、
前記分流アイランド(7)の底部には、流体拡散層(9)が設けられ、
流体が前記流体通路(3)に沿って合流セクション通路と分流通路とを通過する際に、流速の変化が流体圧力の変化を起こして圧力差を形成し、前記圧力差により、流体を案内バッフル(1)に貼合せた前記流体拡散層(9)に強制的に進入させて触媒層(10)における生成水を取り除き、流体のxyzの3方向における三次元の流れを形成することを、含むことを特徴とする燃料電池の流体案内方法。
【請求項12】
前記分流アイランド(7)の先端の流線型曲面の曲率半径Rと、後端の流線型曲面の曲率半径rとの関係を、R≧rとすることにより、前記分流アイランド(7)は、前記流体通路(3)を、拡張セクションと収束セクションを備えた少なくとも2つの前記分流通路に分割し、前記少なくとも2つの分流通路は、前記分流アイランド(7)の後端で前記合流セクション通路に合流した場合には、前記分流アイランド(7)の後端に、生成水が前記流体通路の側壁に付着するのを避けるための渦を形成することを特徴とする請求項11に記載の燃料電池の流体案内方法。
【請求項13】
前記分流アイランド(7)の上流を向いている面には、流体案内斜面または流体案内溝(14)が設けられ、
流体が前記合流セクション通路から流出して前記分流アイランド(7)に真正面から衝突する際に、流体が前記流体案内斜面または前記流体案内溝(14)によって前記分流アイランドの下の前記流体拡散層に案内されることを特徴とする請求項11または12に記載の燃料電池の流体案内方法。
【請求項14】
流体通路(3)の中央に少なくとも1つの流線型の分流アイランド(7)が設けられ、
前記分流アイランド(7)の上流を向いている面が接触する流体拡散層の上端面には、流体案内斜面または流体案内溝(14)が設けられ、流体が合流セクション通路から流出して前記分流アイランド(7)に真正面から衝突する際に、流体が前記流体案内斜面または前記流体案内溝(14)によって前記分流アイランドの下の前記流体拡散層に案内されることを特徴とする燃料電池の案内バッフル。
【請求項15】
前記分流アイランド(7)の底部にはMEA膜電極が設けられ、前記流体拡散層(9)と、膜電極(11)と、その両側に塗布した触媒層(10)とを備え、その中で、前記流体拡散層(9)が案内バッフル(1)上に貼合せられ、
前記流体通路(3)に沿って前記合流セクション通路と前記分流通路とを通過する際に、流速の変化によって流体圧力の変化を起こして圧力差を形成することにより、流体を案内バッフル(1)に貼合せた前記流体拡散層(9)に強制的に進入させ、この流体が前記触媒層(10)における生成水を取り除くことを特徴とする請求項14に記載の燃料電池の案内バッフル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特に燃料電池案内バッフルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電極反応により水素と酸素の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する装置である。燃料電池は、通常複数の電池セルで構成され、各電池セルは、電解質要素によって分離され、互いに直列に組み立てられて燃料電池スタックを形成した2つの電極(アノードおよびカソード)を備える。各電極に適切な反応物を供給することにより、すなわち、一方の電極に燃料を供給し、他方の電極に酸化剤を供給することにより、電気化学反応がひき起こされ、これによって電極間に電位差が形成されるため、電気エネルギーが発生する。
【0003】
各電極に反応物を供給するために、一般に「バイポーラプレート(双極板)」と呼ばれもので、各単一電池の両側に設けられる特定のインターフェース要素が使用される。これらのバイポーラプレートは通常、アノードまたはカソードサポートに隣接して配置された単一の形状をしている。そしてバイポーラプレートは、燃料電池スタックの動作中に、(1)カソードとアノードが電池の導電体及びプレートの両側に形成され、電池セルを接続して燃料電池スタックを構成する機能;(2)流路を介して電極に反応ガス(プロトンの転送)を提供する機能;(3)冷却媒体及び反応ガスの漏れを防ぐために、水と熱の管理を調整する機能;(4)膜電極アセンブリ(MEA)に構造強度サポートを提供する機能、を実行することにより、燃料電池スタックの最良の動作状態及び耐用年数を維持している。
【0004】
「バイポーラプレート」の構造は通常、プレートの両端に配置された流体出入口、及びこの流体出入口を連結する流路で構成され、各種の流体が流体入口から流入して、通常は1以上の案内溝に沿って流れ案内場(迂回フィールド)の全体を曲がり迂回し、各案内溝が合流した後流体出口から流出する。1以上の案内溝の曲がり角度が非常に大きく、案内溝の長さが長いため、燃料電池から生成される副産物である水が容易に電極カソード側に現れて空気案内溝を塞ぐことがあり、さらに、燃料電池から生成される副産物である水が逆浸透によって電極のアノード側にも現れやすく、水素分流タンクを塞ぐ場合がある。特に、燃料電池を車両や船舶の動力システムまたは移動式発電装置に応用した際に、動力システムの動作状況の変化が非常に大きいとともに、燃料電池の出力パワーの変化も非常に大きく、燃料電池から生成された水が、さらに空気及び水素の案内溝を容易に塞いでしまう。中国特許文献CN200610027547.6は水によって容易に塞がれない燃料電池案内プレートを開示しており、当該案内プレートは、フローガイドバイポーラプレートであり、このフローガイドバイポーラプレートは、フロントエアガイドトラフプレートと、リバース水素フロートラフプレートと、ミドルガイド冷却液中間層とで構成され、前記空気の出入りまたは水素の出入りを行う流体孔は、単孔から侵入するとともに双孔または多孔から流出し、当該空気または水素が出入りを行う流体孔間には、案内溝及び案内溝を連結した連結溝が設けられ、この案内溝と連結溝とは、いずれも直流溝または近似直流溝として設計され;前記冷却流体が出入りを行う流体孔は、単孔または双孔または多孔から進入するとともに双孔または多孔から流出し、当該冷却流体が出入りを行う流体孔間には、案内溝と案内溝とを連結した連結溝が設けられ、案内溝と連結溝は、いずれも直流溝または近似の直流溝として設計される。
【0005】
この設計は、複数の流体の入口と出口とを設けることにより、可能な限り案内溝を直流溝または近似の直流溝としたものであり、従来の曲がりくねった流路と比較して、水によって閉塞される状況が実際に低減されたが、案内プレートのサイズに制限されるため、このような直流路の設計は水素と空気が反応し切る前にスタックから排出されてしまい、大量の無駄な空気の輸送や過剰量の水素の輸送などによって、必然的に空気の輸送または水素の循環などの機械的な作業及び電力消費が増加し、燃料電池システムの効率が低下するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許文献CN200610027547.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記先行技術に存在する課題を解決するためになされたものであり、流体通路内の各箇所における流体の流速と圧力を制御することによって、流体を流体通路に沿って流動させると共に、拡散層(流体拡散層)に三次元の流れを形成することによって、生成水を取り除いて水の閉塞を防ぎ、反応効率を向上させる燃料電池案内バッフルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の技術を通じて達成することができる。
【0009】
燃料電池案内バッフルであって、当該案内バッフル(1)には複数の流体通路(3)が設けられ、単一の流体通路は、複数回の分岐と合流とを交互に繰り返すことで、波状の拡散と収束の流路構造を形成し、同一の流体通路の各断面の幅と深さとを変更することにより、流体の流速、流向及び圧力を調整し、流体を流体通路に沿って強制的に流すと共に、拡散層に進入させて、三次元の多段階の流れを形成する。
【0010】
各流体通路(3)の中央に複数の分流アイランド(7)が設けられ、各分流アイランド間の間隔は設計に応じて異なるが、同様または異なるものにすることは任意であり、流体通路が各分流アイランド(7)を通過する度に少なくとも2つの流路に分割し、分流アイランド(7)を通過した後に1つの通路に合流して、波状の拡張と収束の流体通路を形成するものである。
【0011】
同一の流体通路(3)は、複数が連結した拡張収束ユニットから構成され、各拡張収束ユニットは、拡張セクション(A)と収束セクション(B)とを備え、各拡張収束ユニットの前後における流体通路(3)は合流セクション通路であり、拡張収束ユニットにおける流体通路は、合流セクションが少なくとも2つの流路に分流した分流通路であり、流体の合流セクション通路断面(L、P)における流速SL及び流速SPと、分流通路断面(N)における流速SNとの関係は、SLとSPがSN以下である。
流体通路(3)の合流セクション通路と分流通路における深さまたは幅を制御することにより、流体の流体通路(3)の各箇所における流速と向きとを調整している。
【0012】
例えば、方法一:図3に示す如く、流体通路(3)の合流セクション通路の直径または幅Dが複数の分流通路の直径または幅の合計以上であり、各分流通路の直径または幅は、必要に応じて同様または異なるものに設計することができる。
方法二:図11に示す如く、流体通路(3)の合流セクション通路の深さは、複数の分流通路の深さと異なる。
【0013】
図4に示す如く、前記分流アイランド(7)は、流体通路(3)の中央に突起した凸塊であり、分流アイランド(7)の側面は、流線型曲面であり、その先端の流線型曲面の曲率半径Rと後端の流線型曲面の曲率半径rは具体的な流体流量に応じて、同等または異なるように設計することができる。好ましくは、R≧rである。
【0014】
図2図5に示す如く、前記分流アイランド(7)には、さらに複数の補助マイクロチャンネル(8)が設けられ、複数の補助マイクロチャンネル(8)から構成された異なる形状と流れ方向の通路は、アーク状、工字型、Y型、T型である。
【0015】
前記補助マイクロチャンネル(8)の深さと幅dは、流体通路の合流セクションにおける通路の深さと幅Dより小さいとともに、分流通路の深さと幅よりも小さく、好ましくはd=(1/5~1/10)Dである。
図6に示す如く、前記補助マイクロチャンネル(8)の深さは、流体通路の合流セクションにおける通路の深さより小さいとともに、分流通路の深さよりも小さい。
【0016】
また流体が合流流路(合流セクション通路)から流出して真正面から分流アイランド(7)に衝突することにより、アイランドの前端に停滞ゾーンを形成し、流体が分流アイランドの下の流体拡散層(拡散層)に案内されて、多段階の三次元の流れを形成し、拡散層中の反応媒体の伝達を改善すると共に、拡散層における生成水を効果的に排出することができる。
【0017】
好ましい方法:前記分流アイランド(7)の風向き面(上流を向いている面)の1つの側が接触する流体拡散層の上端面には、流体案内斜面または流体案内溝(14)が設けられ、流体が合流流路から流出して真正面から分流アイランド(7)に衝突する際に、流体案内斜面または流体案内溝(14)により分流アイランドの下の流体拡散層に案内される。当該流体案内溝または流体案内斜面の構造は必要に応じて様々な形状に設計することが可能であり、真正面から衝突する流体を円滑に流体拡散層に案内することを主要目的とし、流体案内溝は複数の表面が少し斜めの溝であっても良く、さらに断面が三角形の斜面等であってもよいが、当該断面は、この三角形の斜面等に限らない。
【0018】
各流体通路の分流通路が配置されている領域は拡散領域(A)であるとともに、合流セクション通路が配置されている領域は収束領域(B)であり、1つの流体通路(3)の拡散領域(A)は、隣り合う流通通路の収束領域(B)と隣接し、拡散領域(A)の流体圧力が収束領域(B)の流体圧力と異なることで圧力差を形成し、図7の双方向矢印で示すように、当該圧力差は、流体が高圧力の一端から側壁の底部の拡散層を通過して隣接する低圧力の流体通路へ流れ、隣接する流体通路に入ることにより、拡散層における反応媒体の伝達を改善すると共に、流路側壁の底部の拡散層における生成水を排出し、多孔質の拡散層の閉塞を防ぐことにも役立つ。図7の双方向矢印は、フローチャネルのレイアウトの違いによって、隣接するフローチャネル間の主流体間の全体の圧力差が、拡散ゾーンと収束ゾーンとの圧力差とは異なる可能性があることを明確に示すため、側壁の両側の圧力差が相殺、反転、または拡大され、流体の流れ方向は、上記の2つの圧力差の大きさによって決められ、完全に相殺される可能性は非常に低く、異なる設計に応じて、容認または完全に回避することが可能であり、他の2つのうちのいずれかが、流体を側壁の下端の拡散層に拡散させて流すことを促し、高圧の端部から側壁の底部の拡散層を通過して隣接する低圧流体通路に流れ、隣接する流体通路に入り、いずれも拡散層における反応媒体の伝達を改善することが可能であり、そして側壁の底部の拡散層における生成水を排出して、多孔拡散層での閉塞を回避することに役立つ。
【発明の効果】
【0019】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する:
【0020】
1.従来の案内バッフルの流体通路上に複数の分流アイランドを設け、さらに従来の流体通路を複数の拡張及び収束ユニットで構成される流体通路に変更し、流体通路内の各箇所における幅と深さを調整することにより流体の流速を変更し、以前の均一流速を可変流速に変更し、圧力差を形成して流体を水平xy方向に強制的に流すと共に、案内バッフル方向に押し付けられている流体拡散層において流れを形成し、z方向への流れを実現することにより、三次元多段階の流れが形成され、膜電極における反応水を適時に取り除くことができるとともに、水による閉塞現象を防ぐことができる。
【0021】
2.分流アイランドは流線型であり、分流アイランドの流線型の曲率半径を変更することにより、流体通路内に渦を形成し、生成水が流体通路側壁に付着することを防ぐことができる。
【0022】
3.分流アイランドには、複数の補助マイクロチャンネルが設けられ、補助マイクロチャンネルの直径が小さく深さが浅いため、流体通路内の各箇所における流速と圧力とをさらに変更して圧力差を形成し、流体が流体拡散層に円滑に進入して流れる。
【0023】
4.隣接する流体通路の分流アイランドは交差して設けられ、隣接する流体通路内に流体が圧力差を生じさせ、流体が流体通路間の側壁底部の拡散層から流通し、案内バッフル方向に取り付けられた拡散層の各領域において流体が均一に流されることによって、従来の流体通路の側壁底部において流体の流れが全くない死角領域を徹底的に改善し、流体が拡散層の任意の領域に入って反応に加わると共に、一旦生成した水をすぐに取り除き、閉塞を完全に回避することができる。
【0024】
5.本発明の案内バッフルは、直流路や蛇型案内バッフルなどの様々なバッフルを含む、任意の形状および構造の燃料セルバッフルに適用することが可能であり、同時に、燃料案内バッフル、酸化剤案内バッフル、あるいは冷却流体案内バッフルとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来の案内バッフルの構造の概略図。
図2】案内バッフル内の第一種の拡張収束ユニットの構造の概略図。
図3】案内バッフル内の第二種の拡張収束ユニットの構造の概略図。
図4】案内バッフル内の第三種の拡張収束ユニットの構造の概略図。
図5】案内バッフル内の第四種の拡張収束ユニットの構造の概略図。
図6】流体が拡張収束ユニットを通過する流れの断面概略図。
図7】複数の隣接する流体通路の構造の概略図。
図8】流体が隣接する流体通路を通過する断面の概略図。
図9】流体が分流アイランドを通過する断面概略図。
図10】案内バッフル内の第五種の拡張収束ユニットの構造の概略図。
図11図10のI-I断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例及び図面に基づいて、本発明について詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、従来の直流案内バッフルの構造の概略図であり、案内バッフル1には、線形流体通路3が設けられ、案内バッフル1の両端には、燃料出入口4と、冷却流体出入口5と酸化剤出入口6とが設けられ、さらに密封溝2も設けられている。
【0028】
本実施例は、流体通路3を図2に示すごとき構造に変更し、各流体通路3の中央には複数の分流アイランド7、流体通路が分流アイランド7を通過する度に2つに分割し(図2-5に示す如く、流体通路3がL断面にあるときは、分流通路3aと分流通路3bの2つの通路に分割する)、分流アイランド7を通過した後、P断面で1つに合流し、波状の連結した拡張収束の流体通路を形成している。同じ流体通路3は複数の連結の拡張収束ユニットを構成し、各拡張収束ユニットは、拡張セクションAと収束セクションBとを具備し、各拡張収束ユニット前後の流体通路3は、合流セクション通路であり、拡張収束ユニットの流体通路は、合流セクションを2つに分割する分流通路であり、流体の合流セクション通路の流速SLは、分流通路の流速SNとの関係においてSL<SNである。
【0029】
流体通路3の合流セクション通路と分流通路における幅及び/または深さを制御することによって、流体通路3の各箇所における流体の流速を調整する。流体通路3の各箇所で流路の深さが同じである場合、流体通路3の合流セクション通路の直径Dが二本の分流通路の直径d1、d2との関係を変更し、D≧d1+d2となり、二本の分流通路の直径d1がd2と同等または異なる。このように、流体が合流セクション通路から分流通路に入った後、流路面積の縮小により必然的に流速が上昇し、SL<SNとなり、後の分流アイランド7の後方のPの二本の分流通路が合流し、流速が回復してSLになる。
【0030】
合流セクション通路における流体通路3の深さHと二本の分流通路の深さhとを調整することにより流体流速を調整することが可能となり、図10-11に示す如く流体通路3の深さが波状を呈し、合流セクションの断面Lにおける深さH、境界面Nにおける深さhは徐々に減少し、その後、境界面Nから境界面Pにおける深さが徐々に増加している。
【0031】
前記分流アイランド7は流体通路3の中央で隆起しており、分流アイランド7の側面は流線型曲面であり、前端の流線型曲面の曲率半径Rと後端流線型曲面の曲率半径rとの関係はR≧rであり、図4に示す如く、分流アイランド7の後端に渦が形成される。
【0032】
前記分流アイランド7には、複数の補助マイクロチャンネル8が設けられ、この複数の補助マイクロチャンネル8から構成された流体通路はアーク状(図2に示す),工字型(図3に示す),Y型(図4に示す),T型(図5に示す)であって、また、必要に応じてその他の形状に設計することができる。前記補助マイクロチャンネル8の直径dは流体通路の合流セクション通路の直径Dとの関係がd=1/5~1/10Dである。補助マイクロチャンネル8の設計はまた、流体が流体拡散層に円滑に流入して流れるように、流体通路内の各点の流速と圧力とをさらに変更して圧力差を形成する。図6に示す如く、補助マイクロチャンネル8の深さは、流体通路の合流セクション通路の深さより浅いとともに、分流通路の深さよりも浅い。
【0033】
図6に示す如く、案内バッフル1の底部には、MEA膜電極が設けられ、拡散層(流体拡散層)9と、膜電極11と、両側が塗布された触媒層10とを具備し、拡散層9は案内バッフル1に押圧され、流体が流体入口から案内バッフル1の流体通路3に進入し、流体通路3に沿って合流セクション通路と分流通路とを流通する際に、流速の変更によって流体圧力が変更し、生じた圧力差によって流体が案内バッフル1に押圧された拡散層9に入り、触媒層10上に生成された水を取り除きxyzの3方向上の三次元流通を実現する。流体が円滑に拡散層9に入ることができるため、分流アイランド7の風向き面(上流を向いている面)上の一側が接触する流体拡散層の上端表面には流体案内溝または流体案内斜面14が設けられ、図9に示す如く、流体が合流流路から流出して、分流アイランド7に真正面から衝突することにより、流体が流体案内溝または流体案内斜面14から分流アイランドの下の流体拡散層9に案内される。
【0034】
図7に示す如く、隣接する流体通路3内に分流アイランド7が交差して設置され、同時に、1つの流体通路3の分流通路は、隣接する流通通路の合流セクション通路に隣接し、各流体通路の分流通路が位置する領域は拡散領域Aであるとともに合流セクション通路が位置する領域は収束領域Bであり、1つの流体通路3の拡散領域Aは、隣り合う流通通路の収束領域Bと隣接し、拡散領域Aの流体圧力は上昇する傾向がある一方収束領域Bの流体圧力が減少する傾向があるため、このような圧力の変化によって隣接する拡散領域と収束領域の側壁12の両側に圧力差が形成され、当該圧力差が側壁12の下端の拡散層9に流体が拡散(図8に示す)することを促進し、高圧力の一端の側壁12の底部の拡散層から隣接する低圧力の流体通路へ流通して隣接する流体通路に入り、図7の両方向矢印13が示す如く、拡散層中の反応媒体の伝達を改善すると共に、側壁の底部の拡散層における生成水を排出して、多孔拡散層での閉塞を避けることにも役立つ。図7中の両方向矢印は、フローチャネルのレイアウトの違いにより、隣接するフローチャネル間の主流体間の全体の圧力差が拡散ゾーンと収束ゾーンの圧力差とは異なる可能性があることを明確に示すため、側壁12の両側の圧力差を相殺、反転、または拡大し、流体の流れ方向は、上記の2つの圧力差の大きさに応じて決定され、完全に相殺される可能性は非常に低く、異なる設計によってその存在を許容しまたは完全に回避することができ、他の2つのうちのいずれも、流体を側壁12の下端の拡散層に拡散させて流動させることを促進し、高圧の端から側壁の底部の拡散層を通過して隣接する低圧流体通路に流れ、隣接する流体通路に入り、どちらも拡散層における反応媒体の伝達を改善することが可能となり、そして側壁の底部の拡散層における生成水を排出して、多孔拡散層での閉塞を避けることに役立つ。
【実施例2】
【0035】
各流体通路3の中央には複数の分流アイランド7が設けられ、流体通路は、各分流アイランド7を通過する度に3つの流路に分割され、分流アイランド7を通過した後、それらを1つに合流し、波状の拡張と収束の流体通路を形成している。その他のセクションについては実施例1と同様である。
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