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特許7080002新規な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント
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  • 特許-新規な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント 図1A
  • 特許-新規な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント 図1B
  • 特許-新規な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント 図2A
  • 特許-新規な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】新規な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220527BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220527BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220527BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20220527BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20220527BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220527BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220527BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/08
A61K49/00
A61K49/04
A61K39/395 T
A61B5/055 383
G01T1/161 A
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2019527977
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2018025618
(87)【国際公開番号】W WO2019009388
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2017133698
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】土居原 仁
(72)【発明者】
【氏名】平山 和▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】白井 宏樹
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/086875(WO,A2)
【文献】特表2016-506370(JP,A)
【文献】特表2016-534735(JP,A)
【文献】国際公開第2014/133093(WO,A1)
【文献】特表2013-534406(JP,A)
【文献】特表2014-509200(JP,A)
【文献】Protein Eng. Des. Sel., 2004, Vol.17, No.5, pp.481-489
【文献】Int. J. Cancer, 1996, Vol.66, pp.261-267
【文献】PLOS ONE, 2014, Vol.9, Issue 9, e106921 (pp.1-8)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)及び(b)からなる群より選択される、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメント及び配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント;並びに
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域であって、配列番号2のアミノ酸番号1のグルタミン酸がピログルタミン酸に修飾された重鎖可変領域を含む重鎖フラグメント、及び、配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
【請求項2】
以下の(a)及び(b)からなる群より選択される、請求項1に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント:
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメント及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント;並びに
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントであって、配列番号2のアミノ酸番号1のグルタミン酸がピログルタミン酸に修飾された重鎖フラグメント、及び、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
【請求項3】
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメント及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、請求項2に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
【請求項4】
標識部と請求項1から3のいずれか1項に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体。
【請求項5】
標識部が(i)配位子及びリンカー、(ii)配位子、(iii)蛍光色素及びリンカー、又は(iv)蛍光色素である、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
標識部が(i)配位子及びリンカー、又は(ii)配位子である、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
配位子が下式(A)で示される配位子である、請求項6に記載の複合体:
【化1】
式中、波線は抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント又はリンカーへの結合を表す。
【請求項8】
標識部が(i)配位子及びリンカーであって、当該配位子及びリンカーが下式(A’)で示される基である、請求項6に記載の複合体:
【化2】
式中、波線は抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントへの結合を表す。
【請求項9】
抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントが、当該Fabフラグメント中のアミノ基を介して、標識部末端のC(=S)基の炭素原子と結合している、請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
下式(I)で示される、請求項6に記載の複合体:
(L-X)-Ab (I)
式中、Abは抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントであり、
Lは、配位子であり、
Xは、リンカー又は結合であり、及び
pは、1~25の自然数である。
【請求項11】
Lが下式(A)で示される配位子である、請求項10に記載の複合体:
【化3】
式中、波線はX(但し、Xが結合の場合はAb)への結合を表す。
【請求項12】
下式(II)で示される、請求項8又は11のいずれか1項に記載の複合体:
【化4】
式中、Abは抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントであり、
pは、1~25の自然数であり、
ここで、Abは当該Ab中のアミノ基を介して、標識部末端のC(=S)の炭素原子と結合している。
【請求項13】
pが、1~16の自然数である、請求項10から12のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項14】
pが、1~10の自然数である、請求項10から12のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項15】
更に金属を含む、請求項5から14のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項16】
金属が金属放射性同位元素である、請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
金属が89Zrである、請求項15に記載の複合体。
【請求項18】
PETトレーサーとして用いるための、請求項16又は17のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項19】
以下の(a)及び(b)を含む、ポリヌクレオチド:
(a)請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列;及び
(b)請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列。
【請求項20】
以下の(a)及び(b)を含む、ポリヌクレオチド:
(a)請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列;及び
(b)請求項3に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列。
【請求項21】
以下の(a)及び(b)を含む、発現ベクター:
(a)請求項1(a)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項22】
以下の(a)及び(b)を含む、発現ベクター:
(a)請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメン卜の重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項23】
以下の(a)又は(b)から選択される、宿主細胞:
)請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;又は
)請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項24】
以下の(a)又は(b)から選択される、宿主細胞:
)請求項3に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;又は
)請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項25】
以下の(a)から(c)からなる群より選択される宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程を含む、抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法:
(a)請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(c)請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むボリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、及び、請求項1(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項26】
以下の(a)から(c)からなる群より選択される宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法:
(a)請求項3に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び請求項3に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(c)請求項3に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、及び、請求項3に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の方法により抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを調製する工程、及び、当該Fabフラグメントを標識部と共有結合させる工程を含む、標識部と抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を生産する方法。
【請求項28】
請求項25又は26に記載の方法により抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを調製する工程、及び、当該Fabフラグメントを配位子と、リンカーを介して又は直接、共有結合させる工程を含む、配位子と抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を生産する方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法により配位子と抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を生産する工程、及び、当該複合体の配位子に金属放射性同位元素を配位結合させる工程を含む、金属放射性同位元素で標識された標識部と抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を生産する方法。
【請求項30】
請求項15から18のいずれか1項に記載の複合体及び薬学的に許容される担体を含む診断用組成物。
【請求項31】
病期診断薬である、請求項30に記載の診断用組成物。
【請求項32】
大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌又はこれらが転移した癌の診断に用いる、請求項30又は31に記載の診断用組成物。
【請求項33】
大腸癌又は大腸癌が転移した癌の診断に用いる、請求項32に記載の診断用組成物。
【請求項34】
大腸癌が転移した癌が転移性肝癌である、請求項33に記載の診断用組成物。
【請求項35】
大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌又はこれらが転移した癌の診断用組成物の生産のための、請求項15から18のいずれか1項に記載の複合体の使用。
【請求項36】
大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌又はこれらが転移した癌の診断において使用するための、請求項15から18のいずれか1項に記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントに関する。本発明はまた、当該抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む診断用組成物、及び、当該Fabフラグメントを用いて癌を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CEA(Carcinoembryonic antigen)又はCEACAM(Carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule)は1965年に発見された腫瘍マーカーであり(J.Exp.Med.;1965;121:439-462、PNAS;1969;64:161-167)、現在までに23個のCEA関連分子が明らかとなっている(BioMedCentral Biology;2010;8:12-33)。そのうち、CEACAM5は正常組織でほとんど発現が認められないが、胎児の消化管や大腸癌で発現している(BBA;1990;1032:177-189、Mol.Pathol.;1999;52:174-178)。また、CEACAM5は乳癌、肺癌、甲状腺癌でも発現していることが知られている(Diagn.Cytopathol.;1993;9:377-382、Cancer Res.;1990;50:6987-6994、Histopathology;2000;37:530-535)。
【0003】
大腸癌患者では健常人に比べ血中CEACAM5の濃度が高く(J.Exp.Med.;1965;121:439-462)、CEACAM5は腫瘍マーカーとして使用されている。大腸癌患者の組織学的な検討では90%以上の組織でCEACAM5が高発現している(British J.Cancer;2013;108:662-667)。
【0004】
大腸癌の早期の転移は肝臓に限局しているため、早期に肝転移を発見し治療できれば、再発率を低下させることができる(Cell Mol.Gastroenterol.Hepatol.;2017;3:163-173)。肝転移の診断にはCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像法)、FDG-PET(Fluorodeoxyglucose-positron emission tomography)が使用されている。CTやMRI、FDG-PETの検出感度はそれぞれ74.4、80.3、81.4%で、1cm以下の腫瘍では検出感度はCTで47.3%、MRIで60.2%に低下する(Radiology;2010;257:674-684)。肝特異性造影剤MRIも使用されているが、1cm以下の腫瘍ではその検出感度は29~38%である(Radiology;2005;237:89-98)。
【0005】
癌を診断、治療するために、抗癌剤や金属放射性同位元素を結合させた抗体が用いられている。抗体を用いたターゲッティングは腫瘍細胞に対する特異性が高く、副作用が少ない。現在までにいくつかの金属放射性同位元素で標識されたモノクローナル抗体が診断及び治療に臨床応用されている(Cancer Control;2012;19:196-203)。
【0006】
一方で、一般に抗体は血中半減期が長く、体内に投与後、癌を可視化するのに十分なシグナル対バックグラウンド比を与える腫瘍対血液比に達するのに4日~5日の長い期間を必要とする(Clin.Pharmacol.Ther.;2010;87:586-592)。また抗体のFc領域は、抗体依存性細胞障害(Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity:ADCC)や補体依存性細胞障害(Complement-Dependent Cytotoxicity:CDC)の薬理作用を引き起こす(Glycoconj.J.;2013;30:227-236、Curr.Opin.Biotechnol.;2002;13:609-614)。また抗体は肝臓で代謝されるため標的に関わらず肝臓に高集積するが、大腸癌の早期の転移は肝臓に限局しているため、抗体で肝転移の病巣を検出することは難しい(Clin.Pharmacol.Ther.;2010;87:586-592)。
【0007】
Fab、scFv、ダイアボディのような低分子化された組み換え抗体フラグメントは、組織浸透性が高いため病巣に届きやすく、大腸菌や酵母での発現系を用いた低コストでの生産が期待できることから治療用抗体として利用される一方、血中半減期が短く、腎排泄される特徴を有することから、診断薬としての利用も報告されている(Nat.Biotechnol.;2005;23:1126-1136)。
【0008】
診断薬として応用されている抗ヒトCEACAM5抗体としては、マウスモノクローナル抗体T84.66のヒト化抗体であるM5A(特許文献1)が知られている。64Cuで標識したM5Aは、皮下に癌細胞を移植したマウスを用いた試験で、良好なPETイメージを得るには投与後22時間以上経過する必要があること(非特許文献1)、また、肝転移のモデルマウスを用いた試験において、肝臓の正常組織と肝臓の病巣部位への取り込みは投与後3時間では同程度であり、24時間経過後には有意差があること(非特許文献2)が報告されている。
【0009】
抗ヒトCEACAM5抗体のフラグメントでは、マウスモノクローナル抗体のNP-4のFab’を99mTcで標識したCEA-Scanが大腸癌の診断に利用できることが報告されている(非特許文献3)。しかしながら、CEA-Scanの病巣部位への取り込みは正常な肝臓への取り込みを上回らず、また、肝転移の検出感度はFDG-PETより低い(非特許文献4)。CEA-Scanは、1999年にFDAに大腸癌の診断薬として認可されたが、もはや販売されていない(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2005/086875号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【文献】Bioconjug.Chem.;2008;19:89-96
【文献】PLOS ONE;2014;9(9):e106921
【文献】Ann.Surg.;1997;226:621-631
【文献】J.Nucl.Med.;2000;41:1657-1663
【文献】Kenneth T.Cheng、“99mTc-Arcitumomab”、[online]、Update:March 17,2008.、Molecular Imaging and Contrast Agent Database、[平成29年5月17日検索]、インターネット<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK23676/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一価のFabフラグメントは、分子量約50kDaであり、分子量約150kDaの抗体より小さく、腎排泄され、血中半減期も短い。そのため、肝転移を検出でき、投与後2~32時間以内に癌を可視化するのに十分なシグナル対バックグラウンド比を与える腫瘍対血液比に達する。Fc領域がないためADCCやCDCを引き起こすこともない。このような特長から、抗体と比べ、Fabフラグメントは、診断薬としてより有効であることが期待できる。
【0013】
しかしながら、Fabフラグメントでは、低分子化によりその結合活性が減弱することが多い。さらに抗体を体内診断薬として利用するためには、PETトレーサー又は蛍光色素等の検出される物質で標識しなければならないが、Fabフラグメントでは、そのような物質で標識されることにより、その結合活性が減弱するとの課題がある。
【0014】
本発明の課題は、ヒトCEACAM5を検出するのに有用であり、かつ投与後短時間(例えば、4時間)の間に癌病巣に集積することが期待される抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを提供することにある。また、本発明の課題は、投与した当日に診断が可能であることが期待される当該Fabフラグメントを含む診断用組成物及びそれを利用した診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ヒトCEACAM5を検出するのに有用な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの作製において相当の鋭意検討を重ねた結果、配列番号2のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを作製し(実施例1)、当該抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントは標識部の結合によってヒトCEACAM5に対する結合活性が減弱しないこと(実施例3)、並びに当該抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体は投与4時間後において皮下移植モデル及び肝移植モデルにおいてヒトCEACAM5陽性癌細胞に集積し、ヒトCEACAM5陽性癌細胞を検出できることを見出した(実施例5及び6)。即ち、本発明は、癌に集積する抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント及び当該抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を提供する。
【0016】
本発明は、医学上又は産業上有用な物質・方法として以下の発明を含むものである。
【0017】
すなわち、一態様において、本発明は以下のとおりであってよい。
(1)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号2のアミノ酸番号99から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む重鎖フラグメント、並びに、配列番号4のアミノ酸番号24から38までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号54から60までのアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号4のアミノ酸番号93から101までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
(2)以下の(a)及び(b)からなる群より選択される、上記(1)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメント及び配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント;並びに
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域であって、配列番号2のアミノ酸番号1のグルタミン酸がピログルタミン酸に修飾された重鎖可変領域を含む重鎖フラグメント、及び、配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
(3)以下の(a)及び(b)からなる群より選択される、上記(2)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント:
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメント及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント;並びに
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントであって、配列番号2のアミノ酸番号1のグルタミン酸がピログルタミン酸に修飾された重鎖フラグメント、及び、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
(4)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメント及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、上記(3)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
(5)標識部と上記(1)から(4)のいずれかに記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体。
(6)標識部が(i)配位子及びリンカー、(ii)配位子、(iii)蛍光色素及びリンカー、又は(iv)蛍光色素である、上記(5)に記載の複合体。
(7)標識部が(i)配位子及びリンカー、又は(ii)配位子である、上記(6)に記載の複合体。
(8)配位子が下式(A)で示される配位子である、上記(7)に記載の複合体:
【化1】
式中、波線は抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント又はリンカーへの結合を表す。
(9)標識部が(i)配位子及びリンカーであって、当該配位子及びリンカーが下式(A’)で示される基である、上記(7)に記載の複合体:
【化2】
式中、波線は抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントへの結合を表す。
(10)抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントが、当該Fabフラグメント中のアミノ基を介して、標識部末端のC(=S)基の炭素原子と結合している、上記(9)に記載の複合体。
(11)下式(I)で示される、上記(7)に記載の複合体:
(L-X)-Ab (I)
式中、Abは抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントであり、
Lは、配位子であり、
Xは、リンカー又は結合であり、及び
pは、1~25の自然数である。
(12)Lが下式(A)で示される配位子である、上記(11)に記載の複合体:
【化3】
式中、波線はX(但し、Xが結合の場合はAb)への結合を表す。
(13)下式(II)で示される、上記(9)又は(12)のいずれかに記載の複合体:
【化4】
式中、Abは抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントであり、
pは、1~25の自然数であり、
ここで、Abは当該Ab中のアミノ基を介して、標識部末端のC(=S)の炭素原子と結合している。
(14)pが、1~16の自然数である、上記(11)から(13)のいずれかに記載の複合体。
(15)pが、4~16の自然数である、上記(11)から(13)のいずれかに記載の複合体。
(16)更に金属を含む、上記(6)から(15)のいずれかに記載の複合体。
(17)金属が金属放射性同位元素である、上記(16)に記載の複合体。
(18)金属が89Zrである、上記(16)に記載の複合体。
(19)PETトレーサーとして用いるための、上記(17)又は(18)に記載の複合体。
(20)以下の(a)及び(b)からなる群より選択される、ポリヌクレオチド:
(a)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;及び
(b)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(21)以下の(a)及び(b)からなる群より選択される、ポリヌクレオチド:
(a)上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;及び
(b)上記(4)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(22)以下の(a)及び/又は(b)を含む、発現ベクター:
(a)上記(2)(a)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(23)以下の(a)及び/又は(b)を含む、発現ベクター:
(a)上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメン卜の重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(24)以下の(a)から(d)からなる群より選択される、宿主細胞:
(a)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(c)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(d)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
(25)以下の(a)から(d)からなる群より選択される、宿主細胞:
(a)上記(4)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)上記(4)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(c)上記(4)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(d)上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
(26)以下の(a)から(c)からなる群より選択される宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程を含む、抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法:
(a)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(c)上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むボリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、及び、上記(2)(a)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
(27)以下の(a)から(c)からなる群より選択される宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法:
(a)上記(4)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び上記(4)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(c)上記(4)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、及び、上記(4)に記載の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
(28)上記(26)又は(27)に記載の方法により抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを調製する工程、及び、当該Fabフラグメントを標識部と共有結合させる工程を含む、標識部と抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を生産する方法。
(29)上記(26)又は(27)に記載の方法により抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを調製する工程、及び、当該Fabフラグメントを配位子と、リンカーを介して又は直接、共有結合させる工程を含む、配位子と抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を生産する方法。
(30)上記(29)に記載の方法により配位子と抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を生産する工程、及び、当該複合体の配位子に金属放射性同位元素を配位結合させる工程を含む、金属放射性同位元素で標識された標識部と抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体を生産する方法。
(31)上記(16)から(19)のいずれかに記載の複合体及び薬学的に許容される担体を含む診断用組成物。
(32)病期診断薬である、上記(31)に記載の診断用組成物。
(33)大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌又はこれらが転移した癌の診断に用いる、上記(31)又は(32)に記載の診断用組成物。
(34)大腸癌又は大腸癌が転移した癌の診断に用いる、上記(33)に記載の診断用組成物。
(35)大腸癌が転移した癌が転移性肝癌である、上記(34)に記載の診断用組成物。
(36)大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌又はこれらが転移した癌の診断用組成物の生産のための、上記(16)から(19)のいずれかに記載の複合体の使用。
(37)大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌又はこれらが転移した癌の診断において使用するための、上記(16)から(19)のいずれかに記載の複合体。
(38)上記(16)から(19)のいずれかに記載の複合体を対象に投与することを含む、大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌又はこれらが転移した癌の診断方法。
(39)標識部を含む複合体として使用するための、上記(1)から(4)のいずれかに記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
(40)標識部を含む複合体の生産のための、上記(1)から(4)のいずれかに記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの使用。
(41)標識部を含む複合体が上記(5)から(18)のいずれかに記載の複合体である、上記(39)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
(42)標識部を含む複合体が上記(5)から(18)のいずれかに記載の複合体である、上記(40)に記載の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの使用。
【発明の効果】
【0018】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントは、ヒトCEACAM5を検出するのに有用であり、大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌又はこれらが転移した癌等の癌の診断に有用であることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、ヒト大腸癌細胞株LS174T細胞(ヒトCEACAM5陽性細胞)を右肩の皮下に、ヒト大腸癌細胞株HCT-15細胞(ヒトCEACAM5陰性細胞)を左肩の皮下に移植したマウスにPB009-03を投与し、投与4時間後にPETで撮像した代表的な画像である。うつ伏せのマウスを撮像したので、右側の丸がLS174T細胞を移植したマウスの右肩を、左側の丸がHCT-15細胞を移植したマウスの左肩を示す。右のバーは、腫瘍への放射線集積量(Maximum Standardized Uptake Value;SUV-Max)を示す。
図1B図1Bは、ヒト大腸癌細胞株LS174T細胞(ヒトCEACAM5陽性細胞)を右肩の皮下に、ヒト大腸癌細胞株HCT-15細胞(ヒトCEACAM5陰性細胞)を左肩の皮下に移植したマウスにPB009-03を投与し、投与4時間後、24時間後及び48時間後にPETで撮像し、画像解析を行った結果を示したグラフである。縦軸は腫瘍部に集積したPB009-03のSUV-Max値を示す。また、グラフ中のエラーバーは平均値±標準誤差(MEAN±SEM)を示す。
図2A図2Aは、ルシフェラーゼ発現LS174T細胞(ヒトCEACAM5陽性細胞)を肝臓に移植したマウスにPB009-03を投与し、投与4時間後にPETで撮像した代表的な画像である。矢印は細胞を移植した部分を、右のバーはSUV-Max値を示す。
図2B図2Bは、ルシフェラーゼ発現LS174T細胞(ヒトCEACAM5陽性細胞)を肝臓に移植したマウスにPB009-03を投与し、投与4時間後及び24時間後にPETで撮像し、画像解析を行った結果を示したグラフである。縦軸は肝臓と腫瘍部に集積したPB009-03のSUV-Max値の比(腫瘍/肝臓 比)を示す。また、グラフ中のエラーバーは平均値±標準誤差(MEAN±SEM)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明について詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0021】
本発明者らは、抗ヒトCEACAM5抗体又はその抗原結合フラグメントの作製において相当の創意検討を重ねた結果、ヒトCEACAM5を検出するのに有用な抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを作製することに成功した。
【0022】
抗体分子の基本構造は、各クラス共通で、分子量5万~7万の重鎖と2~3万の軽鎖から構成される。重鎖は、通常約440個のアミノ酸を含むポリペプチド鎖からなり、クラスごとに特徴的な構造をもち、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEに対応してγ、μ、α、δ、ε鎖とよばれる。さらにIgGには、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4が存在し、それぞれγ1、γ2、γ3、γ4とよばれている。軽鎖は、通常約220個のアミノ酸を含むポリペプチド鎖からなり、L型とK型の2種が知られており、それぞれλ、κ鎖とよばれる。抗体分子の基本構造のペプチド構成は、それぞれ相同な2本の重鎖及び2本の軽鎖が、ジスルフィド結合(S-S結合)及び非共有結合によって結合され、分子量15万~19万である。2種の軽鎖は、どの重鎖とも対をなすことができる。個々の抗体分子は、常に同一の軽鎖2本と同一の重鎖2本からできている。
【0023】
鎖内S-S結合は、重鎖に四つ(μ、ε鎖には五つ)、軽鎖には二つあって、アミノ酸100~110残基ごとに一つのループを成し、この立体構造は各ループ間で類似していて、構造単位あるいはドメインとよばれる。重鎖、軽鎖ともにN末端側に位置するドメインは、同種動物の同一クラス(サブクラス)からの標品であっても、そのアミノ酸配列が一定せず、可変領域とよばれており、各ドメインは、それぞれ、重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)とよばれている。これよりC末端側のアミノ酸配列は、各クラスあるいはサブクラスごとにほぼ一定で定常領域とよばれており、各ドメインは、それぞれ、CH1、CH2、CH3あるいはCと表される。
【0024】
抗体と抗原との結合の特異性は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域によって構成される部分のアミノ酸配列によっている。一方、補体や各種細胞との結合といった生物学的活性は各クラスIgの定常領域の構造の差を反映している。重鎖と軽鎖の可変領域の可変性は、どちらの鎖にも存在する3つの小さな超可変領域にほぼ限られることがわかっており、これらの領域を相補性決定領域(CDR;それぞれN末端側からCDR1、CDR2、CDR3)と呼んでいる。可変領域の残りの部分はフレームワーク領域(FR)とよばれ、比較的一定である。
【0025】
抗体の重鎖定常領域のCH1ドメインとCH2ドメインとの間にある領域はヒンジ領域とよばれ、この領域は、プロリン残基を多く含み、2本の重鎖をつなぐ複数の鎖間S-S結合を含む。例えば、ヒトのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の各ヒンジ領域には、重鎖間のS-S結合を構成している、それぞれ、2個、4個、11個、2個のシステイン残基を含む。ヒンジ領域は、パパインやペプシン等のタンパク質分解酵素に対する感受性が高い領域である。抗体をパパインで消化した場合、ヒンジ領域の重鎖間S-S結合よりもN末端側の位置で重鎖が切断され、2個のFabフラグメントと1個のFcフラグメントに分解される。Fabフラグメントは、軽鎖と、重鎖可変領域、CH1ドメインとヒンジ領域の一部とを含む重鎖フラグメントから構成される。Fabフラグメントは可変領域を含み、抗原結合活性を有する。
【0026】
<本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント>
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントには、以下の特徴を有するFabフラグメントが含まれる:
配列番号2のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメント及び配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
【0027】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖定常領域としては、Igγ1、Igγ2、Igγ3又はIgγ4等のいずれの定常領域も選択可能であり得る。1つの実施形態において、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖定常領域は、ヒトIgγ1定常領域である。
【0028】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖定常領域としては、Igλ又はIgκのいずれの定常領域も選択可能であり得る。1つの実施形態において、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖定常領域は、ヒトIgκ定常領域である。
【0029】
1つの実施形態において、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントは、以下のFabフラグメントである:
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメント及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
【0030】
Fabフラグメントを含め、抗体を細胞で発現させる場合、抗体が翻訳後に修飾を受けることが知られている。翻訳後修飾の例としては、重鎖C末端のリジンのカルボキシペプチダーゼによる切断、重鎖及び軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾、グリコシル化、酸化、脱アミド化、糖化等が挙げられ、種々の抗体において、このような翻訳後修飾が生じることが知られている(J. Pharm. Sci.,2008;97:2426-2447)。
【0031】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントには、翻訳後修飾により生じたFabフラグメントも含まれ得る。翻訳後修飾により生じ得る本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの例としては、重鎖N末端がピログルタミル化された抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントが挙げられる。このようなN末端のピログルタミル化による翻訳後修飾は、抗体の活性に顕著な影響を及ぼすものではないことは当該分野で知られている(Anal.Biochem.;2006;348:24-39)。
【0032】
1つの実施形態において、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントは、下記の特徴を有する抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントである:
配列番号2のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域であって、配列番号2のアミノ酸番号1のグルタミン酸がピログルタミン酸に修飾された重鎖可変領域を含む重鎖フラグメント、及び、配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
【0033】
別の実施形態において、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントは、下記の特徴を有する抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントである:
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントであって、配列番号2のアミノ酸番号1のグルタミン酸がピログルタミン酸に修飾された重鎖フラグメント、及び、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
【0034】
本発明には、以下の特徴を有する抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントも含まれる:
配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号2のアミノ酸番号99から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む重鎖フラグメント、並びに、配列番号4のアミノ酸番号24から38までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号54から60までのアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号4のアミノ酸番号93から101までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント。
【0035】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントは、ヒトCEACAM5に結合する。得られた抗ヒトCEACAM5抗体FabフラグメントのヒトCEACAM5に対する結合活性を測定する方法としては、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR)法による解析やELISA等の方法がある。例えば、SPR法による解析を用いる場合、Biacore T200(GEヘルスケア・ジャパン社)を用いて、センサーチップにBiotin CAPture Kit(GEヘルスケア・ジャパン社)とビオチン化したヒトCEACAM5を固相化し、段階希釈したFabフラグメントを添加することで結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、及び解離定数(K)を測定できる。
【0036】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントは、本明細書に開示される、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメント及び軽鎖の配列情報に基づいて、当該分野で公知の方法を使用して、当業者によって容易に作製され得る。本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントは、特に限定されるものではないが、例えば、後述の<本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法>に記載の方法に従い生産することができる。
【0037】
<本発明の複合体>
本発明の複合体は、標識部と本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体である。
【0038】
「標識部」とは、(i)配位子及びリンカー、(ii)配位子、(iii)蛍光色素及びリンカー、又は(iv)蛍光色素、である。ある態様としては、(i)配位子及びリンカー、又は金属を含む(ii)配位子が挙げられる。ある態様としては、(iii)蛍光色素及びリンカーが挙げられる。ある態様としては、(i)配位子及びリンカーが挙げられる。「標識部」の配位子は更に金属を含んでいてもよく、ある態様としては、金属を含む(i)配位子及びリンカー、又は(ii)配位子であり、別の態様としては、(i)金属とキレート錯体を形成した配位子及びリンカー、又は、(ii)金属とキレート錯体を形成した配位子である。
【0039】
金属、蛍光色素又は非金属放射性同位元素を含む本発明の複合体は、各種造影剤等に用いることができ、例えば、MRI造影剤、PETトレーサー、蛍光標識された分子イメージング剤等に用いられる。
【0040】
本明細書において、「金属」は、常磁性金属イオン又は金属放射性同位元素を意味する。金属としては、各配位子に配位結合する金属であれば特に制限はない。複合体の使用目的に応じて、公知の適切な配位子と金属の組合せが選択される。
【0041】
常磁性金属イオンは、MRI造影剤に好適に用いられる。常磁性金属イオンの態様としては、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Ni2+、Rh2+、Co2+、Gd3+、Eu3+、Dy3+、Tb3+、Pm3+、Nd3+、Tm3+、Ce3+、Y3+、Ho3+、Er3+、La3+、Yb3+、Mn3+、又はMn2+が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様としては、Gd3+、Mn3+、Mn2+、Fe2+、又はFe3+が挙げられる。ある態様としては、Mn3+又はMn2+が挙げられる。この場合、複合体にはカウンターアニオンとしてハロゲン等を用いることができる。また、カウンターアニオンは配位子のC(=O)Oであってもよく、さらに複合体は、Naなどのカウンターカチオンを有していてもよい。
【0042】
金属放射性同位元素は、例えば、PETトレーサー等に用いられる。金属放射性同位元素の態様としては、89Zr、51Mn、52Fe、60Cu、67Ga、68Ga、72As、99mTc、又は111Inが挙げられるが、これらに限定されない。ある態様としては、89Zr、60Cu、67Ga、68Ga、99mTc、又は111Inが挙げられる。ある態様としては、ジルコニウムの放射性同位体が挙げられる。ある態様としては89Zrが挙げられる。
【0043】
「配位子」とは、本複合体において、金属とキレート錯体を形成しうる部分であり、ある態様としては、キレート剤から構成される基を意味する。構成される基とは、キレート剤からプロトンが除かれて、結合手を有する基である。
【0044】
「キレート剤」とは、金属と配位結合できる化合物である。
【0045】
「キレート剤」としては、シデロホアと、非シデロホアが挙げられる。さらにある態様としては、MAG3(メルカプトアセチル-グリシル-グリシル-グリシン、CAS番号:66516-09-4)、及びその公知の反応性誘導体が挙げられる。シデロホアとしては、ヒドロキサム酸型、カテコール型、又は、混合配位子型が挙げられる。ヒドロキサム酸型シデロホアとしては、例えば、フェリクローム、下式:
【0046】
【化5】
で示されるデフェロキサミン(DFO)、フサリニンC、オルニバクチン、ロドトルル酸、及びこれらの公知の反応性誘導体が挙げられる。カテコール型シデロホアとしては、例えば、エンテロバクチン、バチリバクチン、ビブリオバクチン、及びこれらの公知の反応性誘導体が挙げられる。混合配位子型シデロホアとしては、例えば、アゾトバクチン、ピオベルジン、エルシニアバクチン、及びこれらの公知の反応性誘導体が挙げられる。なお、上記シデロホアの場合、DFOはその反応性官能基である-NHを介してリンカー又はFabフラグメントと反応させることができ、DFO以外のシデロホアの場合には、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等の反応性官能基を介して、当業者が通常用いる方法でリンカー又はFabフラグメントと反応させることもできる。
【0047】
非シデロホアとしては、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸、CAS番号:67-43-6)、DTPA-BMA(1,7-ビス(メチルカルバモイルメチル)-1,4,7-トリアザヘプタン-1,4,7-三酢酸、CAS番号:119895-95-3)、EOB-DTPA(エトキシベンジルDTPA、2-[[(2S)-2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]-3-(4-エトキシフェニル)プロピル]-[2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]アミノ]酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸、CAS番号:869-52-3)、DO3A(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸、CAS番号:217973-03-0)、HP-DO3A(10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸、CAS番号:120041-08-9)、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸、CAS番号:60239-18-1)、及びこれらの公知の反応性誘導体が挙げられる。
【0048】
なお、本明細書中の化合物及び複合体は、特に記載がない限りフリー体及びその塩も包含する。ここで「その塩」とは、その化合物及び複合体の置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合があり、その化合物及び複合体が形成しうる塩である。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基や、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。例えば、DFOは、デフェロキサミンメタンスルホン酸塩としても存在し、他の塩としても存在する。DTPAは、フリー体とともにナトリウム塩としても存在する。
【0049】
MRI造影剤に用いる場合の「キレート剤」のある態様としては、上記のシデロホア及び非シデロホアキレート剤である。
【0050】
PETトレーサーに用いる場合の「キレート剤」のある態様としては、上記のシデロホア及び非シデロホアキレート剤であり、更に、ある態様としては、MAG3である。ある態様としては、DFOである。
【0051】
本発明の複合体に含まれる配位子を形成する「キレート剤」のある態様としては、DFO、DTPA、DTPA-BMA、EOB-DTPA、DO3A、HP-DO3A、DOTAが挙げられる。ある態様としては、DFO、DTPA、DOTAが挙げられる。ある態様としては、DFOが挙げられる。
【0052】
「リンカー」とは、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントと配位子の間に距離をつくる基である。複合体における「リンカー」のある態様としては、
下式:
【0053】
【化6】
(以下-C(=S)-NH-(1,4-フェニレン)-NH-C(=S)-と表記する)、-CH-(1,4-フェニレン)-NH-C(=S)-、-C(=O)-(C1-20 アルキレン)-C(=O)-、が挙げられる。ここで「C1-20 アルキレン」とは、直鎖又は分岐の炭素数1~20のアルキレンである。C1-20 アルキレンのある態様としては、C1-10 アルキレン、C1-2アルキレンが挙げられる。C1-20 アルキレンのある態様としては、エチレンが挙げられる。ある態様としては、-C(=S)-NH-(1,4-フェニレン)-NH-C(=S)-が挙げられる。ある態様としては、-C(=O)-C-C(=O)-が挙げられる。リンカーを形成するために用いることができる試薬としては、HO-C(=O)-(C1-20 アルキレン)-C(=O)-OH、コハク酸、p-フェニレンジイソチオシアナート等が挙げられる。
【0054】
蛍光色素を含む本発明の複合体は蛍光標識された分子イメージング剤として用いることができる。
【0055】
本発明の複合体に用いる蛍光色素としては、光イメージングに通常用いられる近赤外波長(650~1000nm)に吸収極大及び発光極大がある色素を用いることができる。蛍光色素のある態様としては、シアニン又はインドシアニン化合物が挙げられる。ある態様としては、IRDye800CW(LI-COR社)、Cy(Molecular Probe社)、Alexa Fluor、BODIPY、及びDyLight(Thermo Fisher Scientific社)、CF790(Biotium社)、DY(DYOMICS GMBH社)、HiLyte Fluor680、及びHiLyte Fluor750(Anaspec社)、PULSAR650、及びQUASAR670(Biosearch Technologies社)等が挙げられる。ある態様としては、IRDye800CWが挙げられる。なお、蛍光色素は、そのカルボキシ基、水酸基、アミノ基等を介して、あるいは当業者が通常用いる方法で活性化基を導入し、Fabフラグメントあるいはリンカーと反応させることができる。活性化基が導入された蛍光色素のある態様としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基でエステル化された蛍光色素が挙げられる。例えば、上述のIRDye800CWのNHSエステルは市販されており、それらを利用可能である。
【0056】
非金属放射性同位元素を含む本発明の複合体は、PETトレーサーとして用いることができる。
【0057】
本発明の複合体に用いる非金属放射性同位元素としては、18F、11C、15O、13Nが挙げられる。ある態様としては、18Fが挙げられる。非金属放射性同位元素を含む化合物の結合には、例えば、N-スクシンイミジル4-[18F]フルオロ安息香酸([18F]SFB)を用いることができる。
【0058】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントと標識部との結合は、公知の手法により、当業者が適宜行うことができる。例えば、標識部を本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの1以上のアミノ基(例えば、N末端アミノ基やアミノ酸側鎖のアミノ基)、1以上のチオール基(例えば、アミノ酸側鎖のチオール基)、又は1以上のカルボキシル基(例えば、C末端やアミノ酸の側鎖のカルボキシル基)に結合させることができる。ある態様として、本発明の複合体は、標識部が本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの1以上のアミノ基に結合した、複合体である。
【0059】
本発明の複合体は、標識部が配位子及びリンカーである場合、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントとリンカーを反応させて得られた物質に配位子を形成するキレート剤を反応させて生産することもできる。配位子を形成するキレート剤にリンカーを反応させて得られた物質に本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを反応させて生産することもできる。反応例としては、キレート剤のアミノ基とリンカーとを反応させて得られた物質を、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの1以上のアミノ基(例えば、N末端アミノ基やリジン側鎖のアミノ基)と反応させることが挙げられる。標識部が配位子である場合、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントと配位子を形成するキレート剤を反応させて生産することもできる。反応例としては、キレート剤を、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの1以上のアミノ基(例えば、N末端アミノ基やリジン側鎖のアミノ基)と反応させることが挙げられる。本発明の複合体の生産には、アミンにイソチオシアネートを加えてチオウレアを合成する反応や、アミンにカルボン酸を加えてアミドを合成する反応等を用いることができる。当該反応は、当業者に公知の方法を適用することにより行うことができる。なお、原料としてあらかじめ配位子とリンカーが結合した化合物を用いることもできる。配位子とリンカーが結合した化合物の例としては、以下の式で示されるp-SCN-Bn-DFO(p-イソチオシアノフェニルアミノチオカルボニル基置換DFO、CAS番号:1222468-90-7)、
【0060】
【化7】
p-イソチオシアノベンジル基置換DTPA(p-SCN-Bn-DTPA、CAS番号:102650-30-6)、p-イソチオシアノベンジル基置換DOTA(p-SCN-Bn-DOTA、CAS番号:127985-74-4)、及び、p-SCN-Bn-CHX-A”-DTPA([(R)-2-アミノ-3-(4-イソチオシアナートフェニル)プロピル]-トランス-(S,S)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン-五酢酸、CAS番号:157380-45-5)が挙げられる。
【0061】
例えば、本発明の複合体は、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの1以上のアミノ基(例えば、N末端アミノ基やアミノ酸の側鎖のアミノ基)と、イソチオシアン酸基を有する標識部とを反応させて、アミノ基を介して1以上の標識部が結合したFabフラグメントである複合体として生産することができる。
【0062】
上記生産方法により生産した、1以上の標識部が結合した本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントに金属(常磁性金属イオン又は金属放射性同位元素)を添加し、金属を含む本発明の複合体を得ることができる。
【0063】
本発明の複合体は、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントに1以上の標識部が結合した複合体である。本発明の複合体は、ある態様としては、1~25の標識部と結合した、ある態様としては、1~23の標識部と結合した、ある態様としては1~16の標識部と結合した、ある態様としては1~11の標識部と結合した、ある態様としては1~10の標識部と結合した、ある態様としては1~9の標識部と結合した、ある態様としては4~23の標識部と結合した、ある態様としては4~16の標識部と結合した、ある態様としては4~10の標識部と結合した、ある態様としては4~9の標識部と結合した、ある態様としては3~23の標識部と結合した、ある態様としては3~16の標識部と結合した、ある態様としては、3~10の標識部と結合した、更に、ある態様としては3~9の標識部と結合した、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントである。本発明の複合体は、ある態様としては、更に金属を含む、1つ以上の標識部と結合した抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントである。本発明の複合体のある態様としては、結合した標識部の数が異なる複合体の混合物であってもよい。
【0064】
1つの実施形態として、本発明の複合体は、標識部と本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体である。
【0065】
ある実施形態として、本発明の複合体は、標識部が(i)配位子及びリンカー、又は(ii)配位子である、複合体である。
【0066】
ある実施形態として、本発明の複合体は、標識部が(i)配位子及びリンカー、又は(ii)配位子であり、当該配位子が下式(A)で示される配位子である、複合体である:
【0067】
【化8】
式中、波線は抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント又はリンカーへの結合を表す。
【0068】
ある実施形態として、本発明の複合体は、標識部が(i)配位子及びリンカーであって、当該配位子及びリンカーが下式(A’)で示される基である、複合体である:
【0069】
【化9】
式中、波線は抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントへの結合を表す。
【0070】
ある実施形態として、本発明の複合体は、標識部が式(A’)で示される基であり、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントが、当該Fabフラグメント中のアミノ基を介して、標識部末端のC(=S)基の炭素原子と結合している、複合体である。
【0071】
ある実施形態として、本発明の複合体は、下式(I)で示される、複合体である:
(L-X)-Ab (I)
式中、Abは、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントであり、
Lは配位子であり、
Xはリンカー又は結合であり、
pは1~25の自然数であり、pのある態様としては1~23の自然数であり、ある態様としては1~16の自然数であり、ある態様としては1~11の自然数であり、ある態様としては1~10の自然数であり、ある態様としては1~9の自然数であり、ある態様としては4~23の自然数であり、ある態様としては4~16の自然数であり、ある態様としては4~10の自然数であり、ある態様としては4~9の自然数であり、ある態様としては3~23の自然数であり、ある態様としては3~16の自然数であり、ある態様としては3~10の自然数であり、更に、ある態様としては3~9の自然数である。
【0072】
ある実施形態として、本発明の複合体は、
Lが下式(A)で示される配位子である、式(I)の複合体である:
【0073】
【化10】
式中、波線はX(但し、Xが結合の場合はAb)への結合を表す。
【0074】
式(I)の複合体のある実施形態としては、下式(II)で示される複合体である:
【0075】
【化11】
式中、Abは、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントであり、
pは1~25の自然数であり、pのある態様としては1~23の自然数であり、ある態様としては1~16の自然数であり、ある態様としては1~11の自然数であり、ある態様としては1~10の自然数であり、ある態様としては1~9の自然数であり、ある態様としては4~23の自然数であり、ある態様としては4~16の自然数であり、ある態様としては4~10の自然数であり、ある態様としては4~9の自然数であり、ある態様としては3~23の自然数であり、ある態様としては3~16の自然数であり、ある態様としては3~10の自然数であり、更に、ある態様としては3~9の自然数であり、
Abは当該Ab中のアミノ基を介して、標識部末端のC(=S)の炭素原子と結合している。
【0076】
ある実施形態として、本発明の複合体は、式(I)の複合体であって、更に金属を含む複合体である。金属のある態様としては、金属放射性同位元素が挙げられる。金属放射性同位元素のある態様としては、89Zrが挙げられる。
【0077】
ある実施形態として、本発明の複合体は、式(II)の複合体であって、更に金属を含む複合体である。金属のある態様としては、金属放射性同位元素が挙げられる。金属放射性同位元素のある態様としては、89Zrが挙げられる。
【0078】
本発明の複合体には、複数種の複合体の混合物である複合体も含まれる。例えば、標識部と翻訳後修飾を受けていない本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体、及び、標識部と前記抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの翻訳後修飾により生じた本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体、の混合物である複合体も、本発明の複合体に含まれる。
【0079】
複数種の本発明の複合体の混合物である本発明の複合体のある実施形態を以下に示す:
(1)標識部が式(A’)で示される配位子及びリンカーであり、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントが、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメント及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントである複合体、並びに、標識部が式(A’)で示される配位子及びリンカーであり、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントが、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントであって、配列番号2のアミノ酸番号1のグルタミンがピログルタミン酸に修飾された重鎖フラグメント、及び、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントである複合体、の混合物である複合体。
(2)更に金属を含む、(1)の複合体。
(3)更に金属を含む(1)の複合体及び金属を含まない(1)の複合体の混合物である複合体。
(4)金属が金属放射性同位元素である、(2)~(3)の複合体。
(5)金属放射性同位元素が89Zrである、(4)の複合体。
【0080】
<本発明のポリヌクレオチド>
本発明のポリヌクレオチドには、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。
【0081】
1つの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
【0082】
配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1の塩基番号1から363までの塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0083】
配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号3の塩基番号1から336までの塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
【0085】
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0086】
配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号3に示される塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0087】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメント及び軽鎖のアミノ酸配列に基づいてデザインされた塩基配列に基づき、当該技術分野で公知の遺伝子合成方法を利用して合成することが可能である。このような遺伝子合成方法としては、国際公開第90/07861号に記載の抗体遺伝子の合成方法等の当業者に公知の種々の方法が使用され得る。
【0088】
<本発明の発現ベクター>
本発明の発現ベクターには、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター、並びに本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターが含まれる。
【0089】
好ましい本発明の発現ベクターには、配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター、配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター、並びに配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターが含まれる。
【0090】
好ましい本発明の発現ベクターには、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター、並びに配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターが含まれる。
【0091】
本発明の発現ベクターは、原核細胞及び/又は真核細胞の各種の宿主細胞中で本発明のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドを産生できるものであれば特に制限されない。このような発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)等を挙げられ、好ましくは、pEE6.4やpEE12.4(Lonza社)を使用することができる。
【0092】
本発明の発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドの重鎖フラグメント及び/又は軽鎖をコードする遺伝子に機能可能に連結されたプロモーターを含み得る。宿主細胞中で本発明のFabフラグメントを発現させるためのプロモーターとしては、宿主細胞がエシェリキア属菌の場合、例えば、Trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、tacプロモーターなどが挙げられる。酵母中での発現用プロモーターとしては、例えば、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターが挙げられ、バチルス属菌での発現用プロモーターとしては、SL01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーターなどが挙げられる。また、宿主が哺乳動物細胞等の真核細胞である場合、CMV、RSV、SV40などのウイルス由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、アクチンプロモーター、EF(elongation factor)1αプロモーター、ヒートショックプロモーターなどが挙げられる。
【0093】
本発明の発現ベクターは、宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、開始コドン、終止コドン、ターミネーター領域及び複製可能単位をさらに含み得る。一方、宿主として酵母、動物細胞又は昆虫細胞を用いる場合、本発明の発現ベクターは、開始コドン、終止コドンを含み得る。また、この場合、エンハンサー配列、本発明の重鎖フラグメント及び/又は軽鎖をコードする遺伝子の5’側及び3’側の非翻訳領域、分泌シグナル配列、スプライシング接合部、ポリアデニレーション部位、又は複製可能単位などを含んでいてもよい。また、目的に応じて通常用いられる選択マーカー(例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子)を含んでいてもよい。
【0094】
<本発明の形質転換された宿主細胞>
本発明の形質転換された宿主細胞には、以下の(a)~(d)からなる群より選択される、本発明の発現ベクターで形質転換された宿主細胞が含まれる。
(a)本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(c)本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(d)本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【0095】
1つの実施形態において、本発明の形質転換された宿主細胞は、以下の(a)~(d)からなる群より選択される、本発明の発現ベクターで形質転換された宿主細胞である:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(c)配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(d)配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【0096】
1つの実施形態において、本発明の形質転換された宿主細胞は、以下の(a)~(d)からなる群より選択される、本発明の発現ベクターで形質転換された宿主細胞である:
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(d)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【0097】
好ましい本発明の形質転換された宿主細胞としては、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、並びに、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞が挙げられる。
【0098】
形質転換する宿主細胞としては、使用する発現ベクターに適合し、該発現ベクターで形質転換されて、Fabフラグメントを発現しうるものであれば特に限定されず、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞又は人工的に樹立された細胞など種々の細胞(例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)、動物細胞又は昆虫細胞(例えば、Sf9)など)、哺乳動物細胞株(例えば、CHOK1SV細胞、CHO-DG44細胞、293細胞等の培養細胞)が例示される。形質転換自体は、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法など、公知の方法により行われ得る。
【0099】
<本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法>
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程を包含する。
【0100】
1つの実施形態において、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法において培養する本発明の形質転換された宿主細胞は、以下の(a)から(c)からなる群より選択される:
(a)本発明の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(c)本発明の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、及び、本発明の抗ヒ卜CEACAM5抗体Fabフラグメン卜の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【0101】
ある態様としては、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法において培養する本発明の形質転換された宿主細胞は、以下の(a)から(c)からなる群より選択される:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(c)配列番号2のアミノ酸番号1から121に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、及び、配列番号4のアミノ酸番号1から112に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【0102】
ある態様としては、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法において培養する本発明の形質転換された宿主細胞は、以下の(a)から(c)からなる群より選択される:
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞;並びに
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、及び、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【0103】
好ましくは、使用される本発明の形質転換された宿主細胞は、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞、又は、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの重鎖フラグメントをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞である。
【0104】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法において、形質転換された宿主細胞は、栄養培地中で培養され得る。栄養培地は、形質転換された宿主細胞の生育に必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖などが、無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また所望により他の栄養素(例えば、無機塩(例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えば、テトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。
【0105】
形質転換された宿主細胞の培養自体は、公知の方法により行われる。培養条件、例えば、温度、培地のpH及び培養時間は、適宜選択される。例えば、宿主が動物細胞の場合、培地としては、約5~20%の胎児牛血清を含むMEM培地(Science;1952;122:501)、DMEM培地(Virology;1959;8:396-397)、RPMI1640培地(J.Am.Med.Assoc.;1967;199:519-524)、199培地(Proc.Soc.Exp.Biol.Med.;1950;73:1-8)等を用いることができる。培地のpHは約6~8であるのが好ましく、培養は通常約30~40℃で約15~336時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。宿主が昆虫細胞の場合、例えば、胎児牛血清を含むGrace’s培地(PNAS;1985;82:8404-8408)等が挙げられ、そのpHは約5~8であるのが好ましい。培養は通常約20~40℃で15~100時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。宿主が細菌、放線菌、酵母、糸状菌である場合、例えば、上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5~8である培地である。宿主がE.coliの場合、好ましい培地としてLB培地、M9培地(Millerら、Exp.Mol.Genet,Cold Spring Harbor Laboratory;1972:431)等が例示される。かかる場合、培養は、必要により通気、撹拌しながら、通常14~43℃、約3~24時間行うことができる。宿主がBacillus属菌の場合、必要により通気、撹拌をしながら、通常30~40℃、約16~96時間行うことができる。宿主が酵母である場合、培地として、例えば、Burkholder最小培地(PNAS;1980;77:4505-4508)が挙げられ、pHは5~8であることが望ましい。培養は通常約20~35℃で約14~144時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。
【0106】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程に加えて、発現させた抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを回収、好ましくは単離、精製する工程を含むことができる。単離、精製方法としては、例えば、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動など分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーやハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
【0107】
<本発明の複合体を生産する方法>
本発明の複合体を生産する方法は、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを標識部と共有結合させる工程を含む。本発明の複合体を生産する方法はまた、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、及び、当該Fabフラグメントと標識部とを共有結合させる工程を含んでいてもよい。本発明の複合体を生産する方法はまた、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、発現させた当該Fabフラグメントを回収する工程、及び、当該Fabフラグメントと標識部とを共有結合させる工程を含んでいてもよい。使用されるリンカー、配位子、又は蛍光色素等、及び連結の方法は、<本発明の複合体>に記載のものを使用することができる。
【0108】
1つの実施形態において、本発明の複合体を生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、及び、当該Fabフラグメントを標識部と共有結合させる工程を含む方法である。ある態様としては、本発明の複合体を生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、発現させた当該Fabフラグメントを回収する工程、及び、当該Fabフラグメントを標識部と共有結合させる工程を含む方法である。
【0109】
ある態様としては、本発明の複合体を生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、及び、当該Fabフラグメントをi)配位子とリンカーを介して結合させる又はii)配位子と直接共有結合させる工程を含む方法である。ある態様としては、本発明の複合体を生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、発現させた当該Fabフラグメントを回収する工程、及び、当該Fabフラグメントをi)配位子とリンカーを介して結合させる又はii)配位子と直接共有結合させる工程を含む方法である。
【0110】
ある態様としては、本発明の複合体を生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、当該Fabフラグメントを配位子とリンカーを介して又は直接共有結合させる工程、及び、当該複合体の配位子に金属を配位結合させる(即ち、キレート錯体を形成させる)工程を含む方法である。ある態様としては、本発明の複合体を生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、発現させた当該Fabフラグメントを回収する工程、当該Fabフラグメントを配位子とリンカーを介して又は直接共有結合させる工程、及び、当該複合体の配位子に金属を配位結合させる工程を含む方法である。
【0111】
ある態様としては、本発明の複合体を生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、当該Fabフラグメントを配位子とリンカーを介して又は直接共有結合させる工程、及び、当該複合体の配位子に金属放射性同位元素を配位結合させる工程(即ち、キレート錯体を形成させる)を含む方法である。ある態様としては、本発明の複合体を生産する方法は、本発明の形質転換された宿主細胞を培養し、抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを発現させる工程、発現させた当該Fabフラグメントを回収する工程、当該Fabフラグメントを配位子とリンカーを介して又は直接共有結合させる工程、及び、当該複合体の配位子に金属放射性同位元素を配位結合させる工程を含む方法である。
【0112】
本発明の複合体を生産する方法は、上記で特定する2つ以上の工程を一連の工程として含む方法として実施することもできるし、上記で特定する少なくとも1つの工程を含む方法として実施することもできる。例えば、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを標識部と結合させる工程を含む方法、及び、標識部を結合させた本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントに金属で標識する工程を含む方法もまた、本発明の複合体を生産する方法に含まれる。また、本発明の複合体を生産する方法には、工程の順番が異なる方法も含まれる。例えば、配位子を金属放射性同位元素で標識した後に、当該配位子を本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントと共有結合させる方法も、本発明の複合体を生産する方法に含まれる。
【0113】
<本発明の診断用組成物・診断方法>
本発明は、蛍光色素、金属又は非金属放射性同位元素を含む本発明の複合体(以下、検出可能な本発明の複合体と称する。)を含む、診断用組成物に関する。検出可能な本発明の複合体は、常法に従って製剤化され、病期診断薬(特に癌の診断)として利用することができる。病期診断薬とは、病状がどの程度進行しているかを検査することが可能な診断薬を意味する。例えば、癌については、そのステージを検査することが可能な診断薬を意味する。本発明の診断用組成物により診断できることが期待される癌は、大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌及びこれらが転移した癌からなる群より選択される。好ましくは、当該癌は大腸癌又は大腸癌が転移した癌である。より好ましくは、当該癌は大腸癌が転移した癌であり、そのような癌には転移性肝癌が含まれる。
【0114】
本発明の診断用組成物の製剤化にあたっての検出可能な本発明の複合体の添加量は、患者の症状の程度や年齢、使用する製剤の剤型、あるいはFabフラグメントの結合力価等により異なるが、例えば、患者の単位体重あたりFabフラグメントの質量ベースで0.001mg/kgないし100mg/kg程度を用いればよい。
【0115】
本発明の診断用組成物の剤型の例としては、注射剤、点滴用剤等の非経口剤を挙げることができ、静脈内注射、標的局所への筋肉内注射、皮下注射等により投与することが好ましい。また、製剤化にあたっては、薬学的に許容される範囲で、これら剤型に応じた担体や添加剤を使用することができる。薬学的に許容される担体や添加剤の種類は特に限定されず、当業者に周知の担体や添加剤を用いることができる。
【0116】
本発明はまた、癌の診断用組成物、ある態様としては、病期診断用組成物の生産のための、検出可能な本発明の複合体の使用に関する。本発明は、癌の診断において使用するための、ある態様としては、病期診断において使用するための、検出可能な本発明の複合体にも関する。
【0117】
そして、本発明は、検出可能な本発明の複合体を、手術前又は手術中に対象に投与することを含む癌の診断方法にも関する。ここにおいて、「対象」とは、その診断を受けることを必要とするヒト又はその他の哺乳動物であり、ある態様としては、その診断を受けることを必要とするヒトである。本発明の診断方法における検出可能な本発明の複合体の有効量は上記製剤化にあたっての検出可能な本発明の複合体の有効量と同様の量であってもよい。本発明の診断方法において、検出可能な本発明の複合体は、静脈内注射等により投与することが好ましい。PETトレーサーとして用いるための本発明の複合体は、投与から1.5~48時間後、ある態様としては2~48時間後、ある態様としては4~24時間後、ある態様としては4~6時間後、ある態様としては1.5~6時間後にPETで撮像することができる。本発明の診断方法において、蛍光標識された本発明の複合体を術中診断に用いる場合、当該複合体は、例えば手術の2~48時間前、好ましくは4時間前、に患者に投与される。
【0118】
別の実施形態において、本発明は、本発明の複合体の生産のための、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの使用にも関する。ある態様としては、本発明は、本発明の複合体を含む診断用組成物の生産のための、本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの使用にも関する。
【0119】
本発明について全般的に記載したが、さらに理解を得るために参照する特定の実施例をここに提供する。しかし、これらは例示目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0120】
(実施例1:抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントの作製)
マウス由来の抗ヒトCEACAM5抗体であるT84.66を文献(Protein Eng.Des.Sel.;2004;17:481-489)に記載の方法を参考にしてヒト化後、文献(Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics;2014;82:1624-1635)に準じて構築したヒト化抗体の分子モデルを用いて、標識部を結合させても親和性が減弱しないことが期待される可変領域を有する抗体を設計した。
【0121】
前記抗体の重鎖可変領域遺伝子の5’側にシグナル配列(Protein Engineering;1987;1:499-505)をコードする遺伝子を、そして3’側にヒトIgγ1のFab領域遺伝子(配列番号1の塩基番号364から678までの塩基配列からなる)をそれぞれ繋げ、この重鎖フラグメント遺伝子をGSベクターpEE6.4(Lonza社)に挿入した。また、抗体の軽鎖可変領域遺伝子の5’側にシグナル配列をコードする遺伝子を、そして3’側にヒトIgκの定常領域遺伝子(配列番号3の塩基番号337から657までの塩基配列からなる)をそれぞれ繋げ、この軽鎖遺伝子をGSベクターpEE12.4(Lonza社)に挿入した。抗体の重鎖フラグメントと軽鎖の遺伝子がそれぞれ挿入された前述のpEEベクターをNotIとPvuIで制限酵素切断し、ライゲーション用キットTAKARA Ligation Kit Ver2.1(Takara社)を用いてライゲーションを行い、重鎖フラグメントと軽鎖の両遺伝子が挿入されたGSベクターを構築した。
【0122】
前述の重鎖フラグメントと軽鎖の両遺伝子が挿入されたGSベクターを用いて、一過性発現及び恒常的発現の2種類の方法で抗体発現を行った。一過性発現については、Expi293 Expression Medium(Thermo Fisher Scintific社)で約300万個/mLに培養されたExpi293F細胞(Thermo Fisher Scientific社)に対し、前述の重鎖フラグメントと軽鎖の両遺伝子が挿入されたGSベクターをExpiFectamine 293 Transfection Kit(Thermo Fisher Scientific社)を用いてトランスフェクトし、5~7日間培養した。培養上清をKappaSelect(GEヘルスケア・ジャパン社)を用いて精製し、Fabフラグメントを得た。恒常的発現については、CHOK1SV細胞(Lonza社)にPvuIで直鎖にした前述の重鎖フラグメントと軽鎖の両遺伝子が挿入されたGSベクターをGene Pulser(Bio-Rad社)を用いたエレクトロポレーション法にてトランスフェクトした。トランスフェクト翌日にメチオニンスルホキシミンを添加し、5~7日間培養した。メチルセルロース含有半固形培地に細胞を播種し、コロニー形成後にClonePix FL(Molecular Devices社)を用いてFabフラグメントの発現量が多い細胞を取得した。当該細胞の培養上清をCapto L(GEヘルスケア・ジャパン社)、Q Sepharose Fast Flow(GEヘルスケア・ジャパン社)、及び、BioPro S75(ワイエムシィ社)を用いて精製し、Fabフラグメントを得た。
【0123】
作製した抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント(PB009-01と称する。)の重鎖フラグメントをコードする塩基配列を配列番号1に、それによりコードされるアミノ酸配列を配列番号2に、PB009-01の軽鎖をコードする塩基配列を配列番号3に、それによりコードされるアミノ酸配列を配列番号4にそれぞれ示す。PB009-01の重鎖可変領域は、配列番号2のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなり、重鎖のCDR1、CDR2、CDR3は、それぞれ配列番号2のアミノ酸番号31から35、50から66、99から110までのアミノ酸配列からなる。PB009-01の軽鎖可変領域は、配列番号4のアミノ酸番号1から112までのアミノ酸配列からなり、軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3は、それぞれ配列番号4のアミノ酸番号24から38、54から60、93から101までのアミノ酸配列からなる。
【0124】
なお、可変領域及びCDR配列はKabat番号付けに従って決定した(Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、 5th Ed.、 United States Public Health Service、 National Institute of Health、 Bethesda)。
【0125】
(実施例2:Fabフラグメント複合体の生産)
キレート剤であるDFOのFabフラグメントPB009-01への結合には、p-SCN-Bn-DFO(p-イソチオシアノフェニルアミノチオカルボニル基置換DFO)(Macrocyclics社)を使用した。リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)にて1mg/mLに調製したFabフラグメント溶液に、1/5量の0.1M炭酸ナトリウム溶液(pH9.0)を添加した。これに終濃度1mg/mLとなるようにp-SCN-Bn-DFOを添加し、37℃で1時間半反応させた。反応後、アミコンウルトラ3K-0.5mL遠心式フィルター(メルクミリポア社)を用いて、DFOがリンカー(-C(=S)-NH-(1,4-フェニレン)-NH-C(=S)-)を介して結合したFabフラグメント(PB009-02と称する。)を精製した。
【0126】
PB009-02について、質量分析でDFOから構成される配位子の結合数を確認した。PB009-02を、MassPREP Micro Desalting Column(Waters社)を用いて脱塩し、SYNAPT G2質量分析計(Waters社)を用いて測定を実施した。その結果、1個のPB009-01にDFOから構成される配位子が少なくとも3個から10個結合した分子が確認された。
【0127】
(実施例3:結合活性評価)
PB009-02の結合活性を詳細に測定するために、SPR法による解析を行った。本実施例では、比較Fabフラグメントとして、T84.66のヒト化抗体であるM5AのFabフラグメント(M5A-Fabと称する。)を用いた。DFOをリンカーを介して結合させたM5A-Fab(M5A-Fab-DFOと称する。)は、実施例2に記載の方法を用いて作製した。
【0128】
Biacore T200(GEヘルスケア・ジャパン社)を用いてSPR法による解析を行った。センサーチップの表面にBiotin CAPture Kit、Series S(GEヘルスケア・ジャパン社)とBiotin Labeling Kit-NH(同仁化学研究所)でビオチン化した10μg/mLのヒトCEACAM5(R&Dシステムズ社)を流速5μL/minにて、2分間添加して固相化した。PB009-01、PB009-02、M5A-Fab及びM5A-Fab-DFOを、HBS-EP+溶液(GEヘルスケア・ジャパン社)で400nMから2倍公比で6段階希釈し、流速50μL/minにて、100μLを流路にそれぞれ添加した。この測定系により、データ解析ソフトウェア(BIA Evaluation、GEヘルスケア・ジャパン社)を用いてPB009-01、PB009-02、M5A-Fab又はM5A-Fab-DFOとヒトCEACAM5との解離定数(K)をそれぞれ計算した。その結果、下表に示したようにM5A-FabはDFOの結合によって結合活性が減弱するのに対して、PB009-01はDFOの結合によって結合活性が減弱しないことが確認された。
【0129】
【表1】
【0130】
(実施例4:DFOが結合したFabフラグメント複合体の89Zr標識)
89ZrはZr-Oxalateとして3D Imaging LLC社より購入した。20μLのZr-Oxalate(2.6mCi)を2Mの炭酸ナトリウム10μLで中和した後5mg/mLのゲンチジン酸20μLを加えた。さらに、0.05%のポリソルベート80を含む20mMのHEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)を110μL添加した。10mg/mLのPB009-02を40μL添加し、室温で30分間反応後、さらに37℃で30分間反応させた。反応後、アミコンウルトラ10K-0.5mL遠心式フィルター(メルクミリポア社)を用いて、89Zr標識したPB009-02(PB009-03と称する。)を精製した。
【0131】
(実施例5:複合体の皮下移植モデルにおける造影評価)
免疫不全マウス(NOGマウス;Taconic Biosciences社)の右肩の皮下にヒトCEACAM5陽性細胞としてヒト大腸癌細胞株LS174T細胞(ATCC(登録商標);CL-188)を1×10細胞移植し、左肩の皮下にヒトCEACAM5陰性細胞としてヒト大腸癌細胞株HCT-15細胞(ATCC(登録商標);CCL-225)を5×10細胞移植した。本実施例はN=3で実施した。腫瘍体積が約300mmになった後、PB009-03(約20μg、約120μCi)を静脈投与した。PB009-03投与4時間後、24時間後及び48時間後にPETで撮像し、腫瘍部分のSUV-Maxを測定した。その結果、図1Aに示すようにPB009-03は、投与4時間後において、ヒトCEACAM5陰性細胞であるHCT-15細胞に比べて、ヒトCEACAM5陽性細胞であるLS174T細胞に多く集積することが示された。また、図1Bに示すようにPB009-03は投与4時間後から48時間後までヒトCEACAM5陽性の癌細胞を検出できることが明らかになった。
【0132】
(実施例6:複合体の肝移植モデルにおける造影評価)
麻酔下で免疫不全マウス(NSGマウス;The Jackson Laboratory社)の肝臓にルシフェラーゼ発現LS174T細胞を1×10細胞移植した。本実施例はN=6で実施した。IVIS imaging system(パーキンエルマー社)でルシフェラーゼの発現を指標に肝臓での細胞の生着を確認した後に、実施例4と同様の方法で作製したPB009-03(約14μg、約100μCi)を静脈投与した。PB009-03投与4時間後及び24時間後にPETで撮像した。肝臓及びLS174T腫瘍(移植したLS174T細胞が肝臓に生着した状態を指す)のSUV-Maxをそれぞれ測定し、肝臓のSUV-Maxに対する腫瘍のSUV-Maxの比を算出した。その結果、図2Aに示すようにPB009-03は、投与4時間後において、肝臓に生着したLS174T腫瘍に集積することが示された。また、投与4時間後及び24時間後における肝臓に対する腫瘍のシグナルの比は図2Bに示す値であった。これらのことから、PB009-03は投与4時間後及び24時間後において、肝臓に存在するヒトCEACAM5陽性の癌細胞を検出できることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメント及び当該抗ヒトCEACAM5抗体Fabフラグメントを含む複合体は、大腸癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌及びこれらが転移した癌からなる群より選択される癌の診断に有用であることが期待される。
【配列表フリーテキスト】
【0134】
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には配列表の配列番号1及び3で表される塩基配列は、それぞれPB009-01の重鎖フラグメント及び軽鎖の塩基配列であり、配列番号2及び4で表されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び3によりコードされる重鎖フラグメント及び軽鎖のアミノ酸配列である。
図1A
図1B
図2A
図2B
【配列表】
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