(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】車両制御システム、車両制御装置
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20220527BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20220527BHJP
B60R 25/40 20130101ALI20220527BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20220527BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20220527BHJP
E05F 15/77 20150101ALI20220527BHJP
E05F 15/655 20150101ALN20220527BHJP
【FI】
H04Q9/00 301B
B60R25/24
B60R25/40
E05B49/00 K
E05F15/73
E05F15/77
E05F15/655
(21)【出願番号】P 2017021877
(22)【出願日】2017-02-09
【審査請求日】2019-08-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】日本電産モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】徳山 雄生
(72)【発明者】
【氏名】富田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】梶間 陽介
(72)【発明者】
【氏名】大畑 宏文
(72)【発明者】
【氏名】江口 光一
【合議体】
【審判長】伊藤 隆夫
【審判官】福田 正悟
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-098687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両制御装置と、
利用者に携帯される携帯機と、から成り、
前記携帯機は、
前記車両制御装置から送信された応答要求信号を受信する第1受信部と、
前記応答要求信号の受信に応じて前記車両制御装置へ応答信号を送信する第1送信部と、を備え、
前記車両制御装置は、
前記携帯機へ前記応答要求信号を送信する第2送信部と、
前記携帯機から送信された前記応答信号を受信する第2受信部と、
前記携帯機から受信した信号に基づいて、前記車両に装備された車載機器の動作を制御する制御部と、を備えた車両制御システムにおいて、
前記携帯機は、前記車載機器の自動動作の予約を設定する予約設定部をさらに備え、
前記第1送信部は、前記予約設定部により設定された前記予約に関する情報を含んだ予約信号を前記車両制御装置へ送信し、
前記第2受信部は、前記携帯機から送信された前記予約信号を受信し、
前記車両制御装置は、
前記携帯機の前記予約設定部で予約が設定される度に、前記第2受信部により受信された前記予約信号に基づいて、
前記利用者の車両への乗車方向を前記応答要求信号の送信方向として設定する送信設定部
をさらに備え、
前記送信設定部により設定された前記送信方向へ前記第2送信部により前記応答要求信号を送信した後、前記予約が設定された前記携帯機から送信された前記応答信号を前記第2受信部により受信すると、前記制御部が前記予約信号と前記応答信号とに基づいて前記車載機器の動作を制御する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記
車両制御装置は、前記第2受信部により受信された前記予約信号に含まれる前記予約に関する情報から、自動動作の予約が設定された前記車載機器を判断し、
前記送信設定部は、該車載機器の利用方向を前記乗車方向として
、前記送信方向を設定することを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記携帯機の前記予約設定部は、前記車両への乗車方向の予約も設定することが可能であり、
前記第1送信部は、前記予約設定部により設定された前記乗車方向の情報も前記予約信号に含めて前記車両制御装置へ送信し、
前記
送信設定部は、前記第2受信部により受信された前記予約信号に含まれる前記乗車方向の情報に基づいて、前記
送信方向を設定する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両制御システムにおいて、
前記車両制御装置の前記第2送信部は、送信した前記応答要求信号が前記車両の周囲に行き渡るように複数設けられ、
前記送信設定部は、
前記乗車方向に基づいて、前記複数の第2送信部のうち前記応答要求信号を送信する第2送信部を設定する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両制御システムにおいて、
前記複数の第2送信部のうち、
前記乗車方向に前記応答要求信号の送信範囲がおよぶ第2送信部のみが、前記応答要求信号を送信する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両制御システムにおいて、
前記携帯機の前記予約設定部は、前記車両の複数の乗車位置の近傍に設置された複数の前記車載機器の自動動作の予約をそれぞれ設定することが可能であり、
前記車両制御装置の
前記制御部は、前記携帯機から受信した前記予約信号と前記応答信号とに基づいて、制御対象となる前記車載機器を判断し、該車載機器の動作を制御する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両制御システムにおいて、
前記車載機器は、前記車両のドア、または前記ドアの開動作を要求する人の動作を検出する人動作検出装置であり、
前記携帯機の前記予約設定部は、前記車両のドアの自動での解錠もしくは開動作の予約、または前記人動作検出装置の自動起動の予約を設定することが可能であり、
前記車両制御装置の
前記制御部は、前記携帯機から受信した前記予約信号と前記応答信号とに基づいて、前記ドアの解錠もしくは開動作、または前記人動作検出装置の起動を制御する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項8】
車両に搭載される制御装置であって、
利用者に携帯される携帯機へ応答要求信号を送信する送信部と、
前記携帯機が前記応答要求信号を受信したことに応じて送信した応答信号を受信する受信部と、
前記携帯機から受信した信号に基づいて、前記車両に装備された車載機器の動作を制御する制御部と、を備えた車両制御装置において、
前記受信部は、前記携帯機で前記車載機器の自動動作の予約が設定された場合に、前記携帯機から送信される予約に関する情報を含んだ予約信号を受信し、
前記携帯機で予約が設定される度に、前記受信部により受信された前記予約信号に基づいて、前記利用者の車両への乗車方向を前記応答要求信号の送信方向
として設定する送信設定部
をさらに備え、
前記送信設定部により設定された前記送信方向へ前記送信部により前記応答要求信号を送信して、前記予約が設定された前記携帯機から送信された前記応答信号を前記受信部により受信すると、前記制御部が前記予約信号と前記応答信号とに基づいて前記車載機器の動作を制御する、ことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された車両制御装置と利用者が携帯する携帯機とが行う無線通信に基づいて、車両に搭載された車載機器の動作を制御する車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された車両制御装置と、利用者が携帯する携帯機とが行う無線通信に基づいて、車両に搭載された車載機器の動作を制御する車両制御システムがある。車両制御装置は、車両に搭載されたバッテリから供給される電力により動作する。携帯機は、内蔵された電池の電力により動作する。車両制御装置と携帯機との無線通信方式としては、たとえばポーリング方式がある。
【0003】
ポーリング方式では、携帯機の位置にかかわらず、車両制御装置が一定周期で間欠的に応答要求信号を送信する。携帯機は、応答要求信号を受信すると、応答信号を車両制御装置へ返信する。そして、車両制御装置は、携帯機から応答信号を受信すると、該応答信号に含まれるIDコードに基づいて、携帯機の認証を行い、該認証が成功すると、たとえば、車両のドアの解錠または開動作を実行する。他の例として、車両のドアの施錠や閉動作、車両の電源のオン・オフ、エンジンの駆動・停止、照明の点灯、またはセンサ類の起動・停止などを実行する車両制御システムもある。なお、車両制御装置と携帯機との無線通信方式には、他にパッシブエントリ方式やキーレスエントリ方式もある。
【0004】
上記のような車両制御システムにおいて、車両側の消費電力の低減や利用者の利便性の向上などを実現する技術が種々提案されている。
【0005】
たとえば、特許文献1の
図6~
図10では、車両制御装置が、車両の左右側面に設置された送信アンテナによりID要求信号を送信して、車両の運転席側(右側面方向)に第1広域エリアを形成し、助手席側(左側面方向)に第2広域エリアを形成する。携帯機は、いずれかの広域エリアに進入して、ID要求信号を受信すると、返答IDを送信する。車両制御装置は、返答IDを受信すると、該返答IDに基づいて、携帯機の反応が運転席側、助手席側、または両側にあったかを判断する。具体的には、車両制御装置が左右の送信アンテナからID要求信号を交互に送信して、携帯機の反応方向を判断する。または、携帯機が受信したID要求信号に基づいて、該ID要求信号の送信元(送信エリア)に対応する返答IDを送信し、車両制御装置が返答IDの受信後に、該返答IDに基づいて、携帯機の反応方向を判断する。この後、車両制御装置は、携帯機の反応があった席側にあるセンサやドアなどの車載機器の動作のみを制御する。
【0006】
また、特許文献2では、携帯機により、車両のドアを自動で開動作させる予約を設定することが可能になっている。車両の左右側面と後面には、車室外発信機と車室外アンテナとが設置されている。車両制御装置は、各車室外発信機によりリクエスト信号を送信して、車両の運転席側(右側)、助手席側(左側)、および後側の各ドアの付近に車室外照合エリアを形成する。携帯機は、いずれかの車室外照合エリアに進入して、リクエスト信号を受信すると、予約に関する情報を含んだレスポンス信号を送信する。車両制御装置は、いずれかの車室外アンテナによりレスポンス信号を受信すると、該レスポンス信号に基づいて、予約が設定された携帯機と該携帯機が存在する車室外照合エリアを検出し、ドアを解錠する。
【0007】
この後、特許文献2の第1の実施形態では、車両制御装置が、再度各車室外発信機によりリクエスト信号を送信する。そして、車両制御装置は、所定時間内に再度レスポンス信号を受信すると、該レスポンス信号に基づいて、同一の携帯機が同一の車室外照合エリアに滞在していたと判断し、ドアを開動作させる。
【0008】
また、特許文献2の第2の実施形態では、上述したドアの解錠後に、車両制御装置が、レスポンス信号の受信時に携帯機が存在していた車室外照合エリアに対応する車室外発信機により自動開扉信号を送信して、当該車室外照合エリア内にドアに接近した自動開扉エリアを形成する。携帯機は、その自動開扉エリアに進入して、自動開扉信号を受信すると、自動開扉要求信号を送信する。車両制御装置は、自動開扉信号を送信してから所定時間内に自動開扉要求信号を受信すると、該自動開扉要求信号に基づいて、同一の携帯機が自動開扉エリアに進入したと判断し、ドアを開動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-73635号公報
【文献】特開2015-98687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のように、携帯機で車載機器の自動動作を予約設定した後、車両制御装置が車両の周囲の信号送信可能な全方向へ応答要求信号を送信し続けると、車両側の消費電力が大きくなってしまう。そして、車両制御装置を含む車載機器に電力を供給している車両のバッテリの消費電力も大きくなり、いわゆるバッテリ上がりが生じてしまう。
【0011】
本発明の課題は、携帯機で車載機器の自動動作を予約設定する車両制御システムにおいて、車両側で消費される電力を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による車両制御システムは、車両に搭載される車両制御装置と、利用者に携帯される携帯機とから成る。携帯機は、車両制御装置から送信された応答要求信号を受信する第1受信部と、応答要求信号の受信に応じて車両制御装置へ応答信号を送信する第1送信部とを備える。車両制御装置は、携帯機へ応答要求信号を送信する第2送信部と、携帯機から送信された応答信号を受信する第2受信部と、携帯機から受信した信号に基づいて、車両に装備された車載機器の動作を制御する制御部とを備える。携帯機は、車載機器の自動動作の予約を設定する予約設定部をさらに備え、第1送信部は、予約設定部により設定された予約に関する情報を含んだ予約信号を車両制御装置へ送信し、第2受信部は、携帯機から送信された予約信号を受信する。車両制御装置は、携帯機の予約設定部で予約が設定される度に、第2受信部により受信された予約信号に基づいて、利用者の車両への乗車方向を応答要求信号の送信方向として設定する送信設定部をさらに備える。送信設定部により設定された送信方向へ第2送信部により応答要求信号を送信した後、予約が設定された携帯機から送信された応答信号を第2受信部により受信すると、制御部が予約信号と応答信号とに基づいて車載機器の動作を制御する。
【0013】
また、本発明による車両制御装置は、車両に搭載される制御装置であって、利用者に携帯される携帯機へ応答要求信号を送信する送信部と、携帯機が応答要求信号を受信したことに応じて送信した応答信号を受信する受信部と、携帯機から受信した信号に基づいて、車両に装備された車載機器の動作を制御する制御部とを備える。受信部は、携帯機で車載機器の自動動作の予約が設定された場合に、携帯機から送信される予約に関する情報を含んだ予約信号を受信する。そして、携帯機で予約が設定される度に、受信部により受信された予約信号に基づいて、利用者の車両への乗車方向を応答要求信号の送信方向として設定する送信設定部をさらに備える。送信設定部により設定された送信方向へ送信部により応答要求信号を送信して、予約が設定された携帯機から送信された応答信号を受信部により受信すると、制御部が予約信号と応答信号とに基づいて車載機器の動作を制御する。
【0014】
上記によると、携帯機において、車載機器の自動動作の予約が設定されて、該予約に関する情報を含んだ予約信号が送信される。そして、車両制御装置は、予約信号を受信すると、該予約信号に基づいて車両への乗車方向を応答要求信号の送信方向として設定し、該送信方向へ応答要求信号を送信する。つまり、携帯機で予約が設定される度に、車両制御装置が、携帯機から送信された予約信号に基づいて、応答要求信号の送信方向を限定する。このため、従来のように、毎回の予約設定に対して、車両の周囲の信号送信可能な全方向へ応答要求信号を送信する場合と比べて、応答要求信号をその都度効率的に送信して、車両側(車両制御装置)で消費される電力を抑制することができる。
【0015】
本発明では、上記車両制御システムにおいて、車両制御装置は、第2受信部により受信された予約信号に含まれる予約に関する情報から、自動動作の予約が設定された車載機器を判断し、送信設定部は、該車載機器の利用方向を乗車方向として、送信方向を設定してもよい。
【0016】
また、本発明では、上記車両制御システムにおいて、携帯機の予約設定部は、車両への乗車方向の予約も設定することが可能であり、第1送信部は、予約設定部により設定された乗車方向の情報も予約信号に含めて車両制御装置へ送信し、送信設定部は、第2受信部により受信された予約信号に含まれる乗車方向の情報に基づいて、送信方向を設定してもよい。
【0017】
また、本発明では、上記車両制御システムにおいて、車両制御装置の第2送信部は、送信した応答要求信号が車両の周囲に行き渡るように複数設けられ、送信設定部は、利用者の乗車方向に基づいて、複数の第2送信部のうち応答要求信号を送信する第2送信部を設定してもよい。
【0018】
この場合、複数の第2送信部のうち、利用者の乗車方向に応答要求信号の送信範囲がおよぶ第2送信部のみが、応答要求信号を送信してもよい。
【0019】
また、本発明では、上記車両制御システムにおいて、携帯機の予約設定部は、車両の複数の乗車位置の近傍に設置された複数の車載機器の自動動作の予約をそれぞれ設定することが可能であり、車両制御装置の制御部は、携帯機から受信した予約信号と応答信号とに基づいて、制御対象となる車載機器を判断し、該車載機器の動作を制御してもよい。
【0020】
さらに、本発明では、上記車両制御システムにおいて、車載機器が、車両のドア、またはドアの開動作を要求する人の動作を検出する人動作検出装置である場合、携帯機の予約設定部は、車両のドアの自動での解錠もしくは開動作の予約、または人動作検出装置の自動起動の予約を設定することが可能であり、車両制御装置の制御部は、携帯機から受信した予約信号と応答信号とに基づいて、ドアの解錠もしくは開動作、または人動作検出装置の起動を制御してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、携帯機で車載機器の自動動作を予約設定する車両制御システムにおいて、車両側で消費する電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態による車両制御システムの構成図である。
【
図2】
図1の車両制御システムを搭載した車両を示した図である。
【
図3】
図1の車両制御装置と携帯機の通信範囲を示した図である。
【
図4】
図1の車両制御装置と携帯機の動作を示したフローチャートである。
【
図5】
図1の携帯機が送信する予約信号を示した図である。
【
図6】
図1の車両制御装置による応答要求信号の送信方向と車載機器の制御の一例を示した図である。
【
図7】
図1の車両制御装置による応答要求信号の送信方向と車載機器の制御の他の例を示した図である。
【
図8】
図1の車両制御装置による応答要求信号の送信方向と車載機器の制御の他の例を示した図である。
【
図9】他の実施形態による予約信号を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0024】
まず、実施形態の車両制御システム100の構成を、
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、車両制御システム100の構成図である。車両制御システム100は、車両制御装置10と携帯機20とから構成されている。車両制御システム100では、車両制御装置10と携帯機20とが行う無線通信に基づいて、車両30に搭載された車載機器の動作が制御される。
【0026】
図2は、車両制御システム100を搭載した車両30を示した図である。
図2では、車両30を上方から見た状態を示している。車両30は自動四輪車から成る。車両30には、複数の乗車位置の近傍に設置された複数のドア31~35が設けられている。
【0027】
そのうち、車両30の運転席のドア31、助手席のドア32、右後部座席のドア33、左後部座席のドア34、および車両30の後面のドア35は、自動で施解錠可能になっている。左右後部座席のドア33、34は、パワースライドドアであって、自動で側方にスライド動作することにより開閉可能になっている(詳細図示省略)。後面のドア35は、跳ね上げ式のパワーバックドアであって、自動で回転軸を中心に回転動作することにより開閉可能になっている(詳細図示省略)。以下、パワースライドドアをPSDといい、パワーバックドアをPBDという。
【0028】
図1の車両制御装置10、電源装置4、ウエルカム照明装置5、ドア施解錠装置6、キックセンサ7、PSD開閉装置8、およびPBD開閉装置9は、車両30に搭載されている。携帯機20は、車両30の利用者により携帯される。
【0029】
車両制御装置10は、制御部1、車内LF(Low Frequency;長波)送信部2I、車外LF送信部2R、2L、2B、およびUHF(Ultra High Frequency;高周波)送受信部3を備えている。制御部1は、CPUとメモリなどから構成されている。制御部1には、乗車方向検出部1aと送信設定部1bが設けられている。
【0030】
車内LF送信部2Iは、車内LFアンテナ2Iaと送信用信号処理部(図示省略)などから構成されている。車内LFアンテナ2Iaは、
図2に示すように、車両30の車室内に設置されている。車内LF送信部2Iは、送信用信号処理部で生成したLF信号(LF帯域の信号)を、車内LFアンテナ2Iaから車両30の車室内に送信する。
【0031】
図1の車外LF送信部2Rは、車外LFアンテナ2Raと送信用信号処理部(図示省略)などから構成されている。車外LF送信部2Lは、車外LFアンテナ2Laと送信用信号処理部(図示省略)などから構成されている。車外LF送信部2Bは、車外LFアンテナ2Baと送信用信号処理部(図示省略)などから構成されている。
図2に示すように、車外LFアンテナ2Raは、車両30の右側側面に設置されている。車外LFアンテナ2Laは、車両30の左側側面に設置されている。車外LFアンテナ2Baは、車両30の後面に設置されている。
【0032】
車外LF送信部2Rは、送信用信号処理部で生成したLF信号を、車外LFアンテナ2Raから車両30の右側側方、すなわち運転席側の車室外に送信する。車外LF送信部2Lは、送信用信号処理部で生成したLF信号を、車外LFアンテナ2Laから車両30の左側側方、すなわち助手席側の車室外に送信する。車外LF送信部2Bは、送信用信号処理部で生成したLF信号を、車外LFアンテナ2Baから車両30の後側の車室外に送信する。各車外LF送信部2R、2L、2Bにより送信されるLF信号には、応答要求信号が含まれる。車内LF送信部2R、2L、2Bは、本発明の「第2送信部」および「送信部」の一例である。
【0033】
図1のUHF送受信部3は、UHFアンテナ3a、受信用信号処理部(図示省略)、および送信用信号処理部(図示省略)などから構成されている。UHFアンテナ3aは、
図2に示すように、車両30の車室内に設置されている。
【0034】
UHF送受信部3は、車両30の車室内外にある携帯機20から送信されたUHF信号(UHF帯域の信号)を、UHFアンテナ3aと受信用信号処理部により受信する。UHF送受信部3により受信するUHF信号には、後述する応答信号と予約信号が含まれる。UHF送受信部3は、本発明の「第2受信部」および「受信部」の一例である。
【0035】
制御部1の乗車方向検出部1aは、後述するように、UHF送受信部3により受信された予約信号に基づいて、利用者の車両30への乗車方向を検出する。送信設定部1bは、後述するように、乗車方向検出部1aにより検出された乗車方向に基づいて、車外LF送信部2R、2L、2Bによる応答要求信号の送信方向を設定する。
【0036】
また、UHF送受信部3は、送信用信号処理部で生成したUHF信号を、UHFアンテナ3aから車両30の車室内外に送信する。UHF送受信部3により送信するUHF信号には、後述する予約受付信号が含まれる。
【0037】
制御部1は、LF送信部2I、2R、2L、2BとUHF送受信部3を介して、携帯機20と無線通信を行い、携帯機20に対してLF信号とUHF信号と各種情報の送受信を行う。
【0038】
図3は、車両制御装置10と携帯機20の通信範囲を示した図である。
図3の破線で囲った車外LF送信範囲A1~A3は、車両30の左右側面と後面にそれぞれ設けられた車外LFアンテナ2Ra、2La、2Baから車室外に送信されるLF信号の到達範囲である。なお、
図3では、便宜上、車外LF送信範囲A1~A3の破線の一部を省略している。車外LFアンテナ2Ra、2La、2Baは、送信したLF信号が車両30の周囲に行き渡るように複数設けられている。
【0039】
車外LF送信範囲A1~A3に携帯機20が入ると、車両制御装置10から送信されたLF信号が携帯機20で受信可能となる。なお、車両30の車室内に設けられた車内LFアンテナ2Iaから送信されたLF信号の到達範囲は、ほぼ車両30内に及んでいる(図示省略)。
【0040】
図3の1点鎖線で囲ったUHF送信範囲B1は、車両制御装置10のUHFアンテナ3aから送信されるUHF信号の到達範囲である。UHF送信範囲B1は、車外LF送信範囲A1~A3より、広くなっている。つまり、LF信号の到達距離より、UHF信号の到達距離の方が長くなっている。UHF通信範囲B1に携帯機20が入ると、車両制御装置10から送信されたUHF信号が携帯機20で受信可能となる。
【0041】
図1に示すように、電源装置4、ウエルカム照明装置5、ドア施解錠装置6、キックセンサ7、PSD開閉装置8、およびPBD開閉装置9は、それぞれ車両制御装置10に接続されている。
【0042】
電源装置4には、バッテリ4aなどが備わっている。電源装置4は、バッテリ4aの電力を車両30の各部へ供給する。
【0043】
ウエルカム照明装置5には、右側照明5R、左側照明5L、および後側照明5Bが設けられている。各照明5R、5L、5Bは、LEDなどから成る。
図2に示すように、右側照明5Rは、車両30の右側側部(運転席側の外面)に設置されている。左側照明5Lは、車両30の左側側部(助手席側の外面)に設置されている。後側照明5Bは、車両30の後面に設置されている。ウエルカム照明装置5は、利用者を車両30に迎えるために、各照明5R、5L、5Bを点灯させる。
【0044】
図1のドア施解錠装置6には、第1施解錠機構6D、第2施解錠機構6A、第3施解錠機構6R、第4施解錠機構6L、および第5施解錠機構6Bが設けられている。第1施解錠機構6Dは、車両30の運転席のドア31を施解錠する。第2施解錠機構6Aは、車両30の助手席のドア32を施解錠する。第3施解錠機構6Rは、車両30の右側のPSD33を施解錠する。第4施解錠機構6Lは、車両30の左側のPSD34を施解錠する。第5施解錠機構6Bは、車両30のPBD35を施解錠する。ドア施解錠装置6は、各施解錠機構6D、6A、6R、6L、6Bを作動させて、各ドア31~35を自動で施解錠する。
【0045】
キックセンサ7は、
図2に示すように、車両30の後部の下方に設置されている。キックセンサ7は、PBD35の開閉動作を要求する人のキック動作を検出する。キック動作とは、車両30と地面との間へ人の足が挿入された後、引き抜かれる動作のことである。キックセンサ7は、本発明の「人動作検出装置」の一例である。
【0046】
PSD開閉装置8には、右PSD開閉機構8Rと左PSD開閉機構8Lとが設けられている。右PSD開閉機構8Rは、車両30の右側のPSD33を開閉動作させる。左PSD開閉機構8Lは、車両30の左側のPSD34を開閉動作させる。PSD開閉装置8は、各PSD開閉機構8R、8Lを作動させて、各PSD33、34を自動で開閉動作させる。
【0047】
PBD開閉装置9には、PBD開閉機構9Bが設けられている。PBD開閉機構9Bは、車両30のPBD35を開閉動作させる。PBD開閉装置9は、PBD開閉機構9Bを作動させて、PBD35を自動で開閉動作させる。上述したキックセンサ7によるキック動作の検出は、PBD35の開閉動作の開始条件の1つである。
【0048】
携帯機20は、キーFOBから成る。携帯機20は、制御部21、LF受信部22、UHF送受信部23、および操作部24を備えている。
【0049】
携帯機20の各部21~24は、携帯機20に内蔵された電池(図示省略)の電力により動作する。制御部21は、CPUとメモリなどから構成されている。
【0050】
LF受信部22は、LFアンテナ22aと受信用信号処理部(図示省略)などから成る。LF受信部22は、車両制御装置10から送信されたLF信号を、LFアンテナ22aと受信用信号処理部により受信する。LF受信部22が受信するLF信号には、応答要求信号が含まれる。UHF送受信部23は、本発明の「第1受信部」の一例である。
【0051】
UHF送受信部23は、UHFアンテナ23aと送信用信号処理部(図示省略)と受信用信号処理部(図示省略)などから成る。UHF送受信部23は、送信用信号処理部で生成したUHF信号を、UHFアンテナ23aから車両制御装置10へ送信する。UHF送受信部23が送信するUHF信号には、後述する応答信号と予約信号が含まれる。UHF送受信部23は、本発明の「第1送信部」の一例である。
【0052】
図3の2点鎖線で囲ったUHF送信範囲B2は、携帯機20のUHFアンテナ23aから送信されたUHF信号の到達範囲である。UHF送信範囲B2は、車両制御装置10の車外LF送信範囲A1~A3より、広くなっている。UHF送信範囲B2に車両制御装置10のUHFアンテナ3aが入ると、携帯機20から送信されたUHF信号が車両制御装置10で受信可能となる。
【0053】
また、UHF送受信部23は、車両制御装置10から送信されたUHF信号を、UHFアンテナ23aと受信用信号処理部により受信する。UHF送受信部23により受信するUHF信号には、後述する予約受付信号が含まれる。
【0054】
制御部21は、LF受信部22とUHF送受信部23を介して、車両制御装置10と無線通信を行い、車両制御装置10に対してLF信号やUHF信号や各種情報の送受信を行う。
【0055】
操作部24は、操作キーやディスプレイやLEDなどから構成されている。操作部24には、予約設定部24aが設けられている。予約設定部24aを操作することにより、車両30の右側部、左側部、または後部にある車載機器の自動動作の予約を設定することができる。
【0056】
予約設定部24aにより予約設定することができる車両30の右側部の車載機器の自動動作とは、右側PSD33の開動作である。予約設定部24aにより予約設定することができる車両30の左側部の車載機器の自動動作とは、左側PSD34の開動作である。予約設定部24aにより予約設定することができる車両30の後部の車載機器の自動動作とは、キックセンサ7の起動である。
【0057】
また、予約設定部24aにより、車両30の右側部、左側部、または後部にある車載機器のうち、いずれか1つの車載機器の自動動作を予約設定したり、いずれか2つの車載機器の自動動作を予約設定したり、全部の車載機器の自動動作を予約設定したりすることができる。PSD33、34およびキックセンサ7は、本発明の「車載機器」の一例である。
【0058】
操作部24には、予約設定部24aの他にも、車両30の各ドア31~35を施解錠させるために操作される操作キーや、PSD33、34やPBD35を開閉動作させるために操作される操作キーなどが設けられている。同様の操作キーは、車両30にも設けられている。
【0059】
次に、車両制御装置10と携帯機20の動作を、
図4~
図8を参照しながら説明する。
【0060】
図4は、車両制御装置10と携帯機20の動作を示したフローチャートである。本例では、携帯機20が車両30の車室外にあって、車両30が停車中であることを前提とする。また、車両30のエンジンなどの走行駆動源も停止中である。
【0061】
たとえば、
図3に示すように、携帯機20がUHF通信範囲B1に存在し、かつ車載制御装置10のUHFアンテナ3aがUHF通信範囲B2に存在しているとする。このとき、利用者が、携帯機20の予約設定部24aにより、車両30の右側部、左側部、または後部にある車載機器の自動動作の予約を設定する(
図4のステップS1:YES)。すると、携帯機20の制御部21が、その予約に関する予約情報を内部メモリに記憶し(
図4のステップS2)、予約信号をUHF送受信部23により送信する(
図4のステップS3)。
【0062】
図5は、携帯機20が送信する予約信号40に含まれる情報を示した図である。予約信号40には、予約情報41と携帯機20のIDコード42とが含まれている。予約情報41は、携帯機20の予約設定部24aにより設定された車載機器の自動動作の予約の内容を示した情報である。予約情報41には、その自動動作の予約が設定された車載機器を示した車載機器情報41aが含まれている。具体的には、予約設定部24aにより自動動作の予約が設定された車両30の右側部の車載機器(右側PSD33)、左側部の車載機器(左側PSD34)、または後部の車載機器(キックセンサ7)を示した情報が、車載機器情報41aで示されている。携帯機20のIDコード42は、予約設定が行われた携帯機20を識別するための携帯機20の固有の情報である。
【0063】
車両制御装置10では、UHF送受信部3により予約信号40が受信されると(
図4のステップS11:YES)、制御部1が、予約信号40に含まれる予約情報41と携帯機20のIDコード42とを、内部メモリに記憶する(
図4のステップS12)。そして、乗車方向検出部1aが、その予約情報41に基づいて、車両30への乗車方向を検出する(
図4のステップS13)。具体的には、乗車方向検出部1aは、予約情報41に含まれる車載機器情報41aから自動動作の予約が設定された車載機器を判断し、該車載機器の利用方向を乗車方向として検出する。
【0064】
たとえば、車載機器情報41aで車両30の右側部にあるPSD33が示されていた場合は、PSD33が車両30の右側から利用されるので、車両30の右側(車両30の中心に対して運転席側)が乗車方向と判断される。
【0065】
また、車載機器情報41aで車両30の左側部にあるPSD34が示されていた場合は、PSD34が車両30の左側から利用されるので、車両30の左側(車両30の中心に対して助手席側)が乗車方向と判断される。
【0066】
また、車載機器情報41aで車両30の後部にあるキックセンサ7が示されていた場合は、キックセンサ7が車両30の後側から利用されるので、車両30の後側が乗車方向と判断される。
【0067】
また、車載機器情報41aで車両30の右側部、左側部、および後部のうち、いずれか2箇所の車載機器が示されていた場合は、それらの車載機器は車両30の中心に対して当該2箇所側から利用されるので、当該2箇所側が乗車方向と判断される。
【0068】
さらに、車載機器情報41aで車両30の右側部、左側部、および後部の全箇所の車載機器が示されていた場合は、それらの車載機器は車両30の中心に対して右側部、左側部、および後部から利用されるので、車両30の右側、左側、および後側が乗車方向と判断される。
【0069】
次に、送信設定部1bが、乗車方向検出部1aにより検出された乗車方向に基づいて、応答要求信号の送信方向を設定する(
図4のステップS14)。このとき、送信設定部1bは、乗車方向検出部1aにより検出された乗車方向に基づいて、複数の車外LF送信部2R、2L、2Bのうち、応答要求信号を送信する車外LF送信部を設定する。具体的には、車外LF送信部2R、2L、2Bのうち、乗車方向検出部1aにより検出された乗車方向に応答要求信号の送信範囲がおよぶ車外LF送信部のみが応答要求信号を送信するように設定する。
【0070】
図6~
図8は、車両制御装置10による応答要求信号の送信方向と車載機器の制御の例を示した図である。
【0071】
たとえば、乗車方向検出部1aにより、乗車方向として車両30の右側が検出された場合、送信設定部1bは、車両30の右側に応答要求信号の送信範囲A1がおよぶ車外LF送信部2Rの車外LFアンテナ2Raのみが応答要求信号を送信するように設定する(
図6(a))。本実施形態では車外LFアンテナ2Raが1つであるが、このアンテナは複数でもよい。つまり、応答要求信号の送信範囲A1を構築する車外LF送信部2Rは、1つであってもよいし、複数であってもよい。以下の車外LF送信部2L、2Bについても同様である。
【0072】
また、乗車方向検出部1aにより、乗車方向として車両30の左側が検出された場合、送信設定部1bは、車両30の左側に応答要求信号の送信範囲A2がおよぶ車外LF送信部2Lの車外LFアンテナ2Laのみが応答要求信号を送信するように設定する(
図7(a))。
【0073】
また、乗車方向検出部1aにより、乗車方向として車両30の後側が検出された場合、送信設定部1bは、車両30の後側に応答要求信号の送信範囲A3がおよぶ車外LF送信部2Bの車外LFアンテナ2Baのみが応答要求信号を送信するように設定する(
図8(a))。
【0074】
また、乗車方向検出部1aにより、乗車方向として車両30の右側、左側、および後側のうち、いずれか2方向が検出された場合、送信設定部1bは、当該2方向に応答要求信号の送信範囲がおよぶ2つの車外LF送信部の車外LFアンテナのみが応答要求信号を送信するように設定する(図示省略)。
【0075】
さらに、乗車方向検出部1aにより、乗車方向として車両30の右側、左側、および後側の全方向が検出された場合、送信設定部1bは、車外LF送信部2R、2L、2Bの車外LFアンテナ2Ra、2La、2Baの全てが応答要求信号を送信するように設定する(図示省略)。
【0076】
次に、制御部1が、携帯機20からの予約を受け付けたことを示す予約受付信号をUHF送受信部3により送信する(
図4のステップS15)。この予約受付信号には、今回の予約を特定するローリングコードなどから成る予約許可情報が含まれている。
【0077】
予約受付信号を送信してから、所定時間が経過するまでは(
図4のステップS16:NO)、制御部1は、応答要求信号の送信処理を実行する(
図4のステップS17)。このとき、
図4のステップS14で送信設定部1bにより設定された送信方向に、対応する車外LF送信部2R、2L、2Bによって応答要求信号が間欠的に送信される(たとえば
図6(a)、
図7(a)、または
図8(a))。応答要求信号は、車外LF送信部2R、2L、2Bによりポーリング方式で送信される。
【0078】
また、応答要求信号の送信処理中に、制御部1は、ウエルカム照明装置5を制御して、応答要求信号の送信方向側にある照明5R、5L、5Bを点灯させる(たとえば
図6(a)、
図7(a)、または
図8(a))。これにより、応答要求信号の送信方向側にある車載機器まで利用者を誘導することができる。
【0079】
応答要求信号を送信している間に、制御部1は、携帯機20から送信された応答信号をUHF送受信部3により受信したか否かを確認する(
図4のステップS18)。
【0080】
なお、応答要求信号の間欠的な送信中に、携帯機20からの応答信号をUHF送受信部3により受信した場合は、制御部1が、応答要求信号の送信を即座に停止する。このため、たとえば携帯機20が車両30の近傍にあって、車両制御装置10と携帯機20による応答要求信号と応答信号の送受信が短時間で行われるほど、応答要求信号の送信回数が少なくなるので、車両制御装置10の消費電力が低減される。
【0081】
携帯機20では、予約信号40を送信してから、所定時間が経過するまでに(
図4のステップS4:NO)、予約受付信号をUHF送受信部23により受信すると(
図4のステップS5:YES)、制御部21が、予約受付信号に含まれる予約許可情報を、内部メモリに記憶する(
図4のステップS6)。また、制御部21は、操作部24のディスプレイへの表示またはLEDの点灯などによって、設定された予約が車両制御装置10で受け付けられたことを利用者に通知する(
図4のステップS7)。
【0082】
そして、たとえば、携帯機20を携帯した利用者が車両30の方へ移動して、車外LF通信範囲A1~A3のいずれかに携帯機20が入ると(
図6(b)、
図7(b)、または
図8(b))、車両制御装置10から送信された応答要求信号が、携帯機20のLF受信部22により受信される(
図4のステップS8:YES)。そして、携帯機20の制御部21が、UHF送受信部23により応答信号を送信する(
図4のステップS9)。この応答信号には、
図4のステップS6で記憶した予約許可情報と携帯機20のIDコードとが含まれている。
【0083】
車両制御装置10では、予約受付信号を送信してから、所定時間が経過するまでに(
図4のステップS16:NO)、車外LF送信部2R、2L、2Bのいずれかにより送信した応答要求信号に対する応答信号をUHF送受信部3が受信すると(
図4のステップS18:YES)、制御部1が、その応答信号に基づいて、携帯機20の認証を行う(
図4のステップS19)。
【0084】
このとき、制御部1は、応答信号に含まれる携帯機20のIDコードと、
図4のステップS12で記憶した携帯機20のIDコード42とを照合する。また、応答信号に含まれる予約許可情報と、
図4のステップS15で予約受付信号に含めた予約許可情報とを照合する。そして、IDコードが一致し、予約許可情報が一致すると、制御部1は、携帯機20の認証が成功したと判断する(
図4のステップS20:YES)。この認証処理は、車両制御装置10において、受信した応答信号の送信元が、予約設定が行われた携帯機20であることを確認するなどのために行われる。
【0085】
上記のように携帯機20の認証が成功すると、制御部1は、
図4のステップS12で記憶した予約情報41に基づいて、該当する車載機器の自動動作の制御を実行する(
図4のステップS21)。
【0086】
このとき、たとえば、予約情報41の車載機器情報41aで車両30の右側部にあるPSD33が示されていた場合、制御部1は、ドア施解錠装置6を制御し、第3施解錠機構6Rを作動させて、PSD33を解錠する。それから、PSD開閉装置8を制御し、右PSD開閉機構8Rを作動させて、PSD33を開動作させる(
図6(b))。これにより、携帯機20を携帯した利用者が車両30の右側から車両30まで到達したときに、PSD33が自動で開いて、利用者が車両30に乗車可能となる。
【0087】
また、予約情報41の車載機器情報41aで車両30の左側部にあるPSD34が示されていた場合、制御部1は、ドア施解錠装置6を制御し、第4施解錠機構6Lを作動させて、PSD34を解錠する。それから、PSD開閉装置8を制御し、左PSD開閉機構8Lを作動させて、PSD34を開動作させる(
図7(b))。これにより、携帯機20を携帯した利用者が車両30の左側から車両30まで到達したときに、PSD34が自動で開いて、利用者が車両30に乗車可能となる。
【0088】
また、予約情報41の車載機器情報41aで車両30の後部にあるキックセンサ7が示されていた場合、制御部1は、キックセンサ7を起動し、キック動作の検出を有効化する(
図8(b))。この後、携帯機20を携帯した利用者が車両30の後側から車両30まで到達して、前述したキック動作を行うと、キックセンサ7がキック動作を検出する。そして、制御部1が、ドア施解錠装置6を制御し、第5施解錠機構6Bを作動させて、PBD35を解錠する。それから、PBD開閉装置9を制御し、PBD開閉機構9Bを作動させて、PBD35を自動で開動作させる。これにより、利用者が車両30の後側から乗車したり、荷物を搬入したりすることが可能となる。
【0089】
また、予約情報41の車載機器情報41aで車両30の右側部、左側部、および後部のうち、いずれか2箇所の車載機器(PSD33、34とキックセンサ7のうちいずれか2つ)が示されていた場合、制御部1は、それら2箇所の車載機器の自動動作を制御する。
【0090】
さらに、予約情報41の車載機器情報41aで車両30の右側部、左側部、および後部の全ての車載機器(PSD33、34とキックセンサ7)が示されていた場合、制御部1は、それら全部の車載機器の自動動作を制御する。
【0091】
その後、制御部1は、内部メモリに記憶した情報、すなわち予約情報41と予約許可情報と携帯機20のIDコード42とをクリア(消去)する(
図4のステップS22)。
【0092】
なお、携帯機20では、たとえば、応答信号を送信してから所定時間経過したとき、または、その後車両制御装置10との間で別の無線通信が行われたときに、制御部21が、内部メモリに記憶した情報、すなわち予約情報と予約許可情報とをクリア(消去)する。
【0093】
一方、車両制御装置10において、予約受付信号を送信してから、応答要求信号を送信しても、応答信号を受信することなく(
図4のステップS18:NO)、所定時間が経過した場合(
図4のステップS16:YES)、または、応答信号を受信しても、携帯機の認証が成功することなく(
図4のステップS20:NO)、所定時間が経過した場合(
図4のステップS16:YES)は、制御部1は、予約された車載機器の自動動作を実行することなく、内部メモリに記憶した情報をクリアする(
図4のステップS22)。
【0094】
上記実施形態によると、携帯機20において、車両30の車載機器の自動動作の予約が設定されて、該予約に関する情報を含んだ予約信号が送信される。そして、車両制御装置10は、予約信号を受信すると、該予約信号に基づいて、車両30への乗車方向を検出し、該乗車方向に基づいて応答要求信号の送信方向を設定して、該送信方向へ応答要求信号を送信する。つまり、携帯機20で予約が設定される度に、車両制御装置10が、携帯機20から送信された予約信号に基づいて、応答要求信号の送信方向を限定する。このため、従来のように、毎回の予約設定に対して、車両30の周囲の信号送信可能な全方向へ応答要求信号を送信する場合と比べて、応答要求信号をその都度効率的に送信して、車両30側(車両制御装置10)で消費される電力を抑制することができる。
【0095】
また、上記実施形態では、車両制御装置10の乗車方向検出部1aが、携帯機20から受信した予約信号40に含まれる予約情報41(特に車載機器情報41a)から、自動動作の予約が設定された車載機器を判断し、該車載機器の利用方向を乗車方向と判断する。このため、車両制御装置10は、携帯機20で自動動作の予約が設定された車載機器を利用するための利用者の乗車方向を確実に検出することができる。また、予約が設定された車載機器を利用するための利用者の乗車方向は、利用者により携帯される携帯機20が車両30に接近する方向でもある。このため、車両制御装置10が、上記のように乗車方向検出部1aにより検出した乗車方向にのみ応答要求信号を送信することで、該応答要求信号を携帯機20で受信させ易くすることができ、通信応答性を向上させることが可能となる。
【0096】
また、上記実施形態では、車両制御装置10の送信設定部1bが、乗車方向検出部1aにより検出された乗車方向に基づいて、応答要求信号を送信する車外LF送信部2R、2L、2Bを設定する。つまり、携帯機20から予約信号を受信する度に、該予約信号に基づいて検出した乗車方向に応じて、応答要求信号を送信する車外LF送信部2R、2L、2Bが限定される。このため、毎回の予約設定に対して全ての車外LF送信部2R、2L、2Bから応答要求信号を送信する場合と比べて、車両30側で消費される電力を抑制することができる。
【0097】
また、上記実施形態では、車外LF送信部2R、2L、2Bのうち、乗車方向検出部1aにより検出された乗車方向に応答要求信号の送信範囲がおよぶ車外LF送信部のみが、応答要求信号を送信するようになっている。このため、車両30への利用者の乗車方向、すなわち利用者に携帯される携帯機20の車両30への接近方向に、応答要求信号の送信範囲がおよぶ車外LF送信部2R、2L、2Bから応答要求信号が送信され、該方向に応答要求信号の送信範囲がおよばない車外LF送信部2R、2L、2Bから応答要求信号が送信されなくなる。このため、毎回の予約設定に対して全ての車外LF送信部2R、2L、2Bから応答要求信号を送信する場合と比べて、車両30側で消費される電力を抑制することができ、かつ携帯機20で受信され易い方向に応答要求信号を効率的に送信することができる。
【0098】
また、上記実施形態では、携帯機20の予約設定部24aにおいて、車両30の各乗車位置の近傍に設置された車載機器の自動動作の予約を設定することが可能である。そして、車両制御装置10が、携帯機20から受信した予約信号と応答信号とに基づいて、制御対象となる車載機器を判断し、該車載機器の動作を制御する。このため、利用者は、車両30への所望の乗車位置近傍に設置された車載機器の自動動作を携帯機20の予約設定部24aで予約した後、該乗車方向から携帯機20とともに車両に接近することで、該車載機器を確実に自動動作させることができる。そして、乗車に不要な車載機器の誤動作を阻止し、その分車両30側で消費される電力を抑制することができる。
【0099】
さらに、上記実施形態では、携帯機20の予約設定部24aにおいて、車両30のPSD33、34の自動開動作の予約、またはPBD35の開動作を要求するキック動作を検出するキックセンサ7の自動起動の予約を設定することが可能である。そして、車両制御装置10は、携帯機20から受信した予約信号と応答信号とに基づいて、PSD33、34の開動作を制御したり、キックセンサ7の起動を制御したりしている。このため、携帯機20を携帯した利用者が、携帯機20によりPSD33、34の開動作またはキックセンサ7の起動の予約を設定した後、当該車載機器に近づいて行くことで、PSD33、34を自動で解錠および開動作させたり、キックセンサ7を自動で起動させて有効化させたりすることができる。
【0100】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、車両制御装置の乗車方向検出部が、予約信号に含まれる予約情報から、自動動作の予約が設定された車載機器を判断し、該車載機器の利用方向を乗車方向として検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0101】
他の例として、携帯機20の予約設定部24aにより、車載機器の自動動作の予約を設定可能にするとともに、車両30への乗車方向の予約も設定可能にしてもよい。この場合、たとえば
図9に示すように、予約信号40’の予約情報41に、乗車方向の予約に関する乗車方向情報41bも含めればよい。乗車方向情報41bは、予約設定部24aにより予約された乗車方向を示している。このような予約信号40’は携帯機20の制御部21により生成されて、UHF送受信部23により送信される。車両制御装置10では、UHF送受信部3により予約信号40’を受信すると、乗車方向検出部1aが、該予約信号40’に含まれる乗車方向情報41bに基づいて、乗車方向を判断する。このようにすることで、車両制御装置10は、携帯機20から受信した予約信号40’に含まれる情報を読み込むことにより、車両30への乗車方向を確実かつ容易に検出することができる。
【0102】
また、他の例として、たとえば、携帯機20から送信された予約信号を受信する受信部を、車両30の複数箇所に設置する。そして、乗車方向検出部1aが、各受信部が受信した予約信号の受信強度の大きさを比較することにより、車両に対する携帯機の存在方向を判断し、該存在方向を乗車方向として検出してもよい。
【0103】
また、以上の実施形態では、車両30の右側、左側、または後側を乗車方向および応答要求信号の送信方向とした例を示したが、本発明はこれのみに限定されるものではない。たとえば、車両の中心に対して各ドアが設置された乗車位置側のうち、2つまたは4つ以上を乗車方向および応答要求信号の送信方向としてもよい。また、それに応じて、車外に応答要求信号を送信する車外LF送信部(第2送信部)を車両の各部に複数設置してもよい。
【0104】
また、以上の実施形態では、LF帯域で応答要求信号を送信し、UHF帯域で予約信号、予約受付信号、および応答信号を送信した例を示したが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。応答要求信号や予約信号や予約受付信号や応答信号は、その他の信号帯域で車両制御装置10または携帯機20から送信してもよい。
【0105】
また、以上の実施形態では、車両30のPSD33、34の自動解錠・開動作またはキックセンサ7の起動を携帯機20で予約設定し、該予約に基づいて車両制御装置10がPSD33、34の解錠・開動作またはキックセンサ7の起動を制御する例を示したが、本発明はこれのみに限定されるものではない。これ以外に、たとえば、車両の他のドアまたは少なくとも1つのドアの施解錠または開閉動作を携帯機で予約設定し、該予約に基づいて車両制御装置が当該ドアの施解錠または開閉動作を制御する車両制御システムにも、本発明を適用することは可能である。また、たとえば、車両の他の開閉体の開閉動作、電源のオン・オフ、照明の点灯・消灯、走行駆動源の駆動・停止、またはセンサ類の起動・停止などのような、他の車載機器の動作を携帯機で予約設定し、該予約に基づいて車両制御装置が車載機器の動作を制御する車両制御システムにも、本発明を適用することは可能である。
【0106】
さらに、以上の実施形態では、自動四輪車から成る車両30に搭載される車両制御システム100に、本発明を適用した例を挙げた。然るに、たとえば自動二輪車や大型自動車などの他の車両に搭載される車両制御システムに対しても、本発明は適用することは可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 制御部
1a 乗車方向検出部
1b 送信設定部
2B、2L、2R 車外LF送信部(第2送信部)
3 UHF送受信部(第2受信部)
7 キックセンサ(人動作検出装置、車載機器)
10 車両制御装置
20 携帯機
22 LF受信部(第1受信部)
23 UHF送受信部(第1送信部)
24a 予約設定部
30 車両
33、34 パワースライドドア(車載機器)
40、40’ 予約信号
41 予約情報
41a 車載機器情報
41b 乗車方向情報
100 車両制御システム
A1、A2、A3 車外LF送信範囲