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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】車両用空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20220527BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/00 102P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017054984
(22)【出願日】2017-03-21
(65)【公開番号】P2018154309
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-03-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】片山 康雄
(72)【発明者】
【氏名】中川 信也
(72)【発明者】
【氏名】羽瀬 知樹
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-203249(JP,A)
【文献】特開2000-313224(JP,A)
【文献】特開2002-174474(JP,A)
【文献】特開2010-210223(JP,A)
【文献】特開2015-155277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調システムを制御する制御装置であって、
冷媒系統における熱交換器の一つであって室外に配される室外熱交換器の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値以下となった場合に、前記冷媒系統においてデフロスト運転を行うデフロスト運転制御部と、
前記デフロスト運転が所定の時間継続した後、前記流出冷媒温度が前記デフロスト運転を解除する条件閾値以下であった場合に、デフロスト運転の性能を強化するためのデフロスト強化運転を行うデフロスト強化運転制御部と、
を備え、
前記デフロスト強化運転制御部は、
前記デフロスト強化運転として、エンジンの回転数を増加させるとともにエンジン冷却水系統を循環する冷却水を室内ユニット内に配されるヒータに循環させ、車両の室内空気を介してエバポレータに吸熱される熱量を増加させることで前記室外熱交換器に供給される熱量を増加させる、
制御装置。
【請求項2】
前記デフロスト強化運転制御部は、
前記デフロスト強化運転として、前記冷媒系統における圧縮機の回転数を増加させる
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記デフロスト強化運転制御部は、
前記デフロスト強化運転として、前記冷媒系統における熱交換器の一つであって室内ユニット内に配されるエバポレータに対する室内空気の送風量を増加させる
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の制御装置と、
前記冷媒系統と、
を備える車両用空調システム。
【請求項5】
室内ユニット内に配されるヒータによって温められた温風の少なくとも一部を、前記冷媒系統における熱交換器の一つであって当該室内ユニット内に配されるエバポレータへと
導く流路を形成する温風戻しダクトと、
前記温風戻しダクトが形成する流路を開閉可能なダンパと、を更に備え、
前記デフロスト強化運転制御部は、
前記デフロスト強化運転として、前記ダンパを開く制御を行う
請求項4に記載の車両用空調システム。
【請求項6】
車両用空調システムを制御する方法であって、
冷媒系統における熱交換器の一つであって室外に配される室外熱交換器の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値以下となった場合に、前記冷媒系統においてデフロスト運転を行うデフロスト運転制御ステップと、
前記デフロスト運転が所定の時間継続した後、前記流出冷媒温度が前記デフロスト条件閾値以下であった場合に、デフロスト運転の性能を強化するためのデフロスト強化運転を行うデフロスト強化運転制御ステップと、
を有し、
前記デフロスト強化運転制御ステップは、
前記デフロスト強化運転として、エンジンの回転数を増加させるとともにエンジン冷却水系統を循環する冷却水を室内ユニット内に配されるヒータに循環させ、車両の室内空気を介してエバポレータに吸熱される熱量を増加させることで前記室外熱交換器に供給される熱量を増加させる、
車両用空調システム制御方法。
【請求項7】
車両用空調システムを制御するコンピュータを、
冷媒系統における熱交換器の一つであって室外に配される室外熱交換器の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値以下となった場合に、前記冷媒系統においてデフロスト運転を行うデフロスト運転制御部、
前記デフロスト運転が所定の時間継続した後、前記流出冷媒温度が前記デフロスト運転を解除する条件閾値以下であった場合に、デフロスト運転の性能を強化するためのデフロスト強化運転を行うデフロスト強化運転制御部、
として機能させ、
前記デフロスト強化運転制御部は、
前記デフロスト強化運転として、エンジンの回転数を増加させるとともにエンジン冷却水系統を循環する冷却水を室内ユニット内に配されるヒータに循環させ、車両の室内空気を介してエバポレータに吸熱される熱量を増加させることで前記室外熱交換器に供給される熱量を増加させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な空調システム(ヒートポンプシステム)において暖房運転を行う際、外気温が低い場合、蒸発器(エバポレータ)として機能する室外熱交換器に着霜し、吸熱能力が低下することが知られている。空調システムは、この霜を除去する目的でデフロスト運転を実施する。このデフロスト運転においては、例えば、圧縮機から吐出される高温高圧冷媒を室外熱交換器に巡らせる。この高温高圧冷媒の熱により、室外熱交換器表面に形成された霜が融解する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-162149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用空調システムにおいては、デフロスト運転中に、車両が走行していることが想定される。デフロスト運転中において車両が走行中であると、室外熱交換器が風(走行風)にさらされることになるため、当該室外熱交換器に流入する高温高圧冷媒の熱が風に奪われてしまう。そうすると、デフロスト性能が低下してしまい、室外熱交換器に付いた霜を完全に除去できない現象が起こり得る。
【0005】
上記課題の対策として、走行風流入口にシャッター(遮風装置)を設けることが考えられる。しかしながら、シャッターの装着は、コストの増大を招くばかりでなく、冷却が必要な他の装置(ラジエータ等)に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、走行中においても十分なデフロスト性能を確保できる制御装置、車両用空調システム、車両用空調システム制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、車両用空調システムを制御する制御装置は、冷媒系統における熱交換器の一つであって室外に配される室外熱交換器の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値以下となった場合に、前記冷媒系統においてデフロスト運転を行うデフロスト運転制御部と、デフロスト運転中における前記流出冷媒温度の上昇の度合いが所定の判定閾値以下であった場合に、デフロスト運転の性能を強化するためのデフロスト強化運転を行うデフロスト強化運転制御部と、を備える。
【0008】
また、本発明の第2の態様によれば、上述の制御装置において、前記デフロスト強化運転制御部は、前記デフロスト強化運転として、前記冷媒系統における圧縮機の回転数を増加させる。
【0009】
また、本発明の第3の態様によれば、上述の制御装置において、前記デフロスト強化運転制御部は、前記デフロスト強化運転として、前記冷媒系統における熱交換器の一つであって室内ユニット内に配されるエバポレータに対する室内空気の送風量を増加させる。
【0010】
また、本発明の第4の態様によれば、上述の制御装置において、前記デフロスト強化運転制御部は、前記デフロスト強化運転として、エンジンの回転数を増加させるとともに、エンジン冷却水系統を循環する冷却水を、室内ユニット内に配されるヒータに循環させる。
【0011】
また、本発明の第5の態様によれば、車両用空調システムは、上述の制御装置と、前記冷媒系統と、を備える。
【0012】
また、本発明の第6の態様によれば、上述の車両用空調システムは、室内ユニット内に配されるヒータによって温められた温風の少なくとも一部を、前記冷媒系統における熱交換器の一つであって当該室内ユニット内に配されるエバポレータへと導く流路を形成する温風戻しダクトと、前記温風戻しダクトが形成する流路を開閉可能なダンパと、を更に備え、前記デフロスト強化運転制御部は、前記デフロスト強化運転として、前記ダンパを開く制御を行う。
【0013】
また、本発明の第7の態様によれば、車両用空調システムを制御する方法は、冷媒系統における熱交換器の一つであって室外に配される室外熱交換器の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値以下となった場合に、前記冷媒系統においてデフロスト運転を行うデフロスト運転制御ステップと、デフロスト運転中における前記流出冷媒温度の上昇の度合いが所定の判定閾値以下であった場合に、デフロスト運転の性能を強化するためのデフロスト強化運転を行うデフロスト強化運転制御ステップと、を有する。
【0014】
また、本発明の第8の態様によれば、プログラムは、車両用空調システムを制御するコンピュータを、冷媒系統における熱交換器の一つであって室外に配される室外熱交換器の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値以下となった場合に、前記冷媒系統においてデフロスト運転を行うデフロスト運転制御部、デフロスト運転中における前記流出冷媒温度の上昇の度合いが所定の判定閾値以下であった場合に、デフロスト運転の性能を強化するためのデフロスト強化運転を行うデフロスト強化運転制御部、として機能させる。
【0015】
また、本発明の第9の態様によれば、車両用空調システムは、室内ユニット内に配されるヒータによって温められた温風の少なくとも一部を、冷媒系統における熱交換器の一つであって当該室内ユニット内に配されるエバポレータへと導く流路を形成する温風戻しダクトと、前記温風戻しダクトが形成する前記流路を開閉可能なダンパと、前記冷媒系統における熱交換器の一つであって室外に配される室外熱交換器の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値以下となった場合に、前記冷媒系統においてデフロスト運転を行うデフロスト運転制御部と、を備え、前記デフロスト運転制御部は、前記デフロスト運転時に前記ダンパを開く制御を行う。
【発明の効果】
【0016】
上述の制御装置、車両用空調システム、車両用空調システム制御方法及びプログラムによれば、走行中においても十分なデフロスト性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る車両用空調システムの全体構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る制御部の機能構成を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る制御部の処理フローを示す図である。
図4】第1の実施形態に係る制御部の機能を説明するための図である。
図5】第2の実施形態に係る車両用空調システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る車両用空調システムについて、図1図4を参照しながら説明する。
【0019】
(全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る車両用空調システムの全体構成を示す図である。
図1に示す車両用空調システム1は、例えば、蓄電池とエンジンとを搭載するハイブリッド車両に搭載される空調システムである。
図1に示すように、車両用空調システム1は、冷媒が巡る冷媒系統P1と、車両室内への温風を生成するための温水が巡る温水系統P2と、エンジン18を冷却するための冷却水が巡るエンジン冷却水系統P3と、を有してなる。
【0020】
冷媒系統P1には、圧縮機10と、水/冷媒熱交換器11と、レシーバ12と、室外熱交換器13と、エバポレータ14と、膨張弁E1、E2と、が設けられている。
圧縮機10は、室外熱交換器13又はエバポレータ14を通じて得られた低温低圧冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧冷媒を吐出する。
水/冷媒熱交換器11は、冷媒系統P1における熱交換器の一つであって、冷媒系統P1と温水系統P2とに跨って配される。水/冷媒熱交換器11は、冷媒系統P1を巡る冷媒と温水系統P2を巡る温水との間で熱交換を行う。
レシーバ12は、水/冷媒熱交換器11又は室外熱交換器13によって凝縮された冷媒の気液分離を行い、液体冷媒のみを膨張弁E1又は膨張弁E2に送出する。
室外熱交換器13は、冷媒系統P1における熱交換器の一つであって、車両の室外に配される熱交換器である。
エバポレータ14は、冷媒系統P1における熱交換器の一つであって、車両の室内(室内ユニットU内)に配される熱交換器である。
膨張弁E1は、暖房運転時において、水/冷媒熱交換器11を通じて凝縮された低温高圧冷媒を減圧して室外熱交換器13に送出する。また、膨張弁E2は、デフロスト運転時において、室外熱交換器13を通じて凝縮された冷媒を減圧してエバポレータ14に送出する。
【0021】
冷媒系統P1は、更に、二方電磁弁V1、V2と、三方電磁弁V3と、逆止弁V5と、冷媒温度センサT1、T2とを備えている。
二方電磁弁V1、V2、三方電磁弁V3及び逆止弁V5は、暖房運転時における冷媒の循環経路と、デフロスト運転時における冷媒の循環経路とを切り替えるために用いられる電磁弁である。
冷媒温度センサT1は、圧縮機10の吐出側から水/冷媒熱交換器11の冷媒入口を繋ぐ配管に設けられた温度センサである。冷媒温度センサT2は、室外熱交換器13の冷媒出口から圧縮機10の吸入側を繋ぐ配管に設けられた温度センサである。
【0022】
冷媒系統P1は、一般に良く知られているヒートポンプシステムを構成する。即ち、暖房運転時には、冷媒は、冷媒系統P1を、圧縮機10、水/冷媒熱交換器11、レシーバ12、膨張弁E1、室外熱交換器13の順に巡ることで、室外熱交換器13にて吸熱した熱を水/冷媒熱交換器11にて放熱する。この場合において、室外熱交換器13は蒸発器(エバポレータ)として機能し、水/冷媒熱交換器11は凝縮器(コンデンサ)として機能する。これにより、水/冷媒熱交換器11を通じて温水系統P2を巡る温水が加熱される。
また、外気温が低い場合、上記暖房運転時において室外熱交換器13に着霜する場合がある。この場合、この霜を除去(融解)する目的でデフロスト運転が行われる。デフロスト運転時には、冷媒は、冷媒系統P1を、圧縮機10、水/冷媒熱交換器11、室外熱交換器13、レシーバ12、膨張弁E2、エバポレータ14の順に巡ることで、エバポレータ14にて吸熱した熱を室外熱交換器13にて放熱する。この場合において、室外熱交換器13は凝縮器(コンデンサ)として機能する。これにより、室外熱交換器13が加熱されて霜が融解する。
また、通常の冷房運転時における冷媒の循環経路は、上述のデフロスト運転時と同様である。冷媒がデフロスト運転時と同様に循環することで、エバポレータ14を通じて車両室内の熱が吸熱され、車両室内が冷却される。
【0023】
温水系統P2には、ウォータポンプ17と、ヒータ15と、水/冷媒熱交換器11が設けられる。
ウォータポンプ17は、温水系統P2内の温水を循環させる。ウォータポンプ17によって循環する温水は、水/冷媒熱交換器11を通じて、冷媒系統P1を巡る冷媒の熱を吸熱し、加熱される。
ヒータ15は、水/冷媒熱交換器11を通じて加熱された温水が巡ることで熱源として機能する。ヒータ15は、車両室内の空気を循環させる流路を形成する室内ユニットU内に配される。
【0024】
エンジン冷却水系統P3には、冷却対象とするエンジン18と、ラジエータ19とが設けられる。
エンジン18は、車両の動力源として必要なとき(例えば、ハイブリッド車両において、蓄電池の容量が減少した場合など)に起動される。エンジン18が駆動(回転)することで、エンジン18が熱源となりエンジン冷却水系統P3を巡る冷却水が加熱される。
ラジエータ19は、加熱された冷却水を外気にさらして放熱させ、冷却させる。
また、エンジン冷却水系統P3と温水系統P2との間には、互いの配管の接続/切り離しを切替可能な四方弁V4が設けられている。温水系統P2とエンジン冷却水系統P3とが四方弁V4によって接続されると、エンジン冷却水系統P3を循環していた冷却水は、温水系統P2に設けられた水/冷媒熱交換器11、ヒータ15を巡るようになる。
【0025】
室内ユニットUは、暖房運転(冷房運転)に応じた温風(冷風)を生成し、通風口を通じて当該温風(冷風)を車両室内に送出するユニットである。図1に示すように、室内ユニットUには、内部にエバポレータ14、ヒータ15、エアミクスダンパ16及びブロアBが配される。
ブロアBは、車両室内への送風を行う。暖房運転の場合、ブロアBにより、ヒータ15によって温められた空気(温風)が車両室内に送風される。その際、エアミクスダンパ16の開度に応じて送風温度の調整がなされる。また、冷房運転の場合、ブロアBにより、エバポレータ14によって冷却された空気(冷風)が車両室内に送風される。
【0026】
制御部2は、車両用空調システム1全体の動作を制御する制御装置である。即ち、制御部2は、車両の搭乗者の操作に従い、圧縮機10、ウォータポンプ17、膨張弁E1、E2、各種電磁弁(二方電磁弁V1、V2、三方電磁弁V3、四方電磁弁V4)、エアミクスダンパ16等を制御して、暖房運転を行ったり冷房運転を行ったりする。その際、制御部2は、冷媒温度センサT1、T2を通じて各所の冷媒温度をモニタリングする。また、制御部2は、必要に応じてエンジン18を駆動させる。
制御部2は、所定の条件を満たした場合にデフロスト運転を行う。このデフロスト運転に係る制御部2の機能の詳細については後述する。
【0027】
(制御部の機能構成)
図2は、第1の実施形態に係る制御部の機能構成を示す図である。
図2に示す制御部2は、例えば、CPU(マイコン)であって、車両用空調システム1全体の動作を制御する。制御部2は、予め用意されたプログラムに従って動作することで暖房運転制御部20、デフロスト運転制御部21及びデフロスト強化運転制御部22としての機能を発揮する。
【0028】
暖房運転制御部20は、搭乗者により暖房運転の要求操作がなされた場合に、冷媒系統P1に設けられた圧縮機10及び各種弁(膨張弁E1、E2、二方電磁弁V1、V2、三方電磁弁V3等)を制御して暖房運転を行う。
デフロスト運転制御部21は、暖房運転中に、室外熱交換器13の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値以下となった場合に、冷媒系統P1に設けられた圧縮機10及び各種弁を制御してデフロスト運転を行う。ここで、「室外熱交換器13の流出冷媒温度」とは、室外熱交換器13から流出する冷媒の温度であって、具体的には、冷媒温度センサT2を通じて検出される温度である。
デフロスト強化運転制御部22は、デフロスト運転中における流出冷媒温度の上昇の度合いが所定の判定閾値以下であった場合に、デフロスト運転の性能を強化するためのデフロスト強化運転を行う。
また、図示を省略しているが、制御部2は、更に、搭乗者により冷房運転の要求操作された場合に、冷媒系統P1に設けられた圧縮機10及び各種弁を制御して冷房運転を行う冷房運転制御部を有している。
【0029】
(制御部の処理フロー)
図3は、第1の実施形態に係る制御部の処理フローを示す図である。
また、図4は、第1の実施形態に係る制御部の機能を説明するための図である。
以下、図3図4を参照しながら、第1の実施形態に係る制御部2の処理フローについて説明する。
【0030】
本実施形態において、図3に示す処理フローは、車両の搭乗者によって暖房運転の要求操作がなされた時点から開始される。
【0031】
搭乗者によって暖房運転の要求操作がなされると、図3に示すように、制御部2の暖房運転制御部20は、暖房運転を開始する(ステップS00)。
暖房運転制御部20は、暖房運転を開始するに際し、二方電磁弁V1を開放し、二方電磁弁V2を閉塞する。また、暖房運転制御部20は、三方電磁弁V3における流路を、冷媒が水/冷媒熱交換器11からレシーバ12へと向かう流路に切り替える(図1参照)。これにより、凝縮器として機能する水/冷媒熱交換器11を介して、冷媒系統P1を巡る冷媒から温水系統P2を巡る温水に向けて放熱され、温水が加熱される。そして、加熱された温水が温水系統P2(ヒータ15)を巡ることで車両室内が温められる。
他方、暖房運転時において、室外熱交換器13はエバポレータとして機能する。即ち、室外熱交換器13を巡る冷媒は、外気から吸熱して気化する。外気温が低い環境下において暖房運転を継続すると、冷媒による吸熱により、室外熱交換器13表面が氷点下まで冷却されて着霜する。そうすると、室外熱交換器13を流れる冷媒は外気から十分に吸熱できなくなる。
【0032】
制御部2のデフロスト運転制御部21は、暖房運転中に、デフロスト条件を満たすか否か(具体的には、室外熱交換器13の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値Tth1以下となったか否か)を判定する(ステップS01)。なお、デフロスト条件閾値Tth1は、例えば、“外気温-5℃”などと規定される(車両には、外気温を検出可能な温度センサも別途搭載されているものとする)。
【0033】
暖房運転中においてデフロスト条件を満たしていない場合(ステップS01:NO)、デフロスト運転制御部21はデフロスト運転を開始せず、暖房運転制御部20が通常の暖房運転を継続する。
【0034】
暖房運転中においてデフロスト条件を満たした場合(ステップS01:YES)、デフロスト運転制御部21は、デフロスト運転を開始する(ステップS02)。即ち、デフロスト運転制御部21は、室外熱交換器13の流出冷媒温度がデフロスト条件閾値Tth1以下である(冷媒の温度が十分に上昇していない)ことをもって、室外熱交換器13に霜が発生していると判断し、デフロスト運転を開始する。
デフロスト運転制御部21は、デフロスト運転を開始するに際し、二方電磁弁V1を閉塞し、二方電磁弁V2を開放する。また、デフロスト運転制御部21は、三方電磁弁V3における流路を、冷媒が水/冷媒熱交換器11から室外熱交換器13へと向かう流路に切り替える(図1参照)。これにより、圧縮機10から吐出された冷媒(高温高圧冷媒)が室外熱交換器13に流入し、当該室外熱交換器13が加熱される。このデフロスト運転により、室外熱交換器13表面に付いた霜が融解する。
他方、デフロスト運転時においては、エバポレータ14が車両室内の熱量を吸熱する。したがって、(冷房運転と同様に)車両の室内温度が低下する。
【0035】
デフロスト運転制御部21は、デフロスト運転中に、デフロスト解除条件を満たすか否か(具体的には、室外熱交換器13の流出冷媒温度がデフロスト解除条件閾値Tth2以上となったか否か)を判定する(ステップS03)。なお、デフロスト解除条件閾値Tth2は、例えば、“10℃”、“15℃”などと規定される。
【0036】
デフロスト運転中においてデフロスト条件を満たしていない場合(ステップS03:NO)、デフロスト運転制御部21は、予め規定された時間(例えば“10分”。以下、「一定時間」とも記載する。)が経過したか否かの判定を行う(ステップS05)。一定時間が経過していない場合(ステップS05:NO)、デフロスト運転制御部21はデフロスト運転を継続しながら、一定時間が経過したか否かの判定(ステップS03)を繰り返し行う。
【0037】
デフロスト運転中において、一定時間が経過する前にデフロスト条件を満たした場合(ステップS03:YES)、デフロスト運転制御部21はデフロスト運転を解除し(ステップS04)、通常の暖房運転に復帰させる。即ち、デフロスト運転制御部21は、室外熱交換器13の流出冷媒温度がデフロスト解除条件閾値Tth2以上となった(冷媒の温度が十分に上昇した)ことをもって、室外熱交換器13に付いた霜が融解したと判断し、デフロスト運転を解除する。
【0038】
デフロスト運転中において、デフロスト条件を満たさないまま一定時間が経過した場合(ステップS05:YES)、制御部2のデフロスト強化運転制御部22は、デフロスト強化運転を開始する(ステップS06)。即ち、デフロスト運転を行ったものの、室外熱交換器13の流出冷媒温度がデフロスト解除条件閾値Tth2に到達しないまま一定時間が経過した場合には、デフロスト性能が十分に得られていないと判断し、デフロスト強化運転制御部22がデフロスト性能を強化するためのデフロスト強化運転を開始する。
【0039】
デフロスト強化運転に際し、デフロスト強化運転制御部22は、具体的には、以下の3通りの処理の何れか一つ又は2つ以上の組み合わせを実施する。
【0040】
(1)圧縮機10の回転数増加
デフロスト強化運転制御部22は、デフロスト強化運転として、冷媒系統P1における圧縮機10の回転数を増加させる。例えば、通常のデフロスト運転時において圧縮機10の回転数が“6000rpm”であった場合、デフロスト強化運転制御部22は、圧縮機10の回転数を“7000rpm”にまで上昇させる。このようにすることで、冷媒系統P1を巡る冷媒の単位時間当たりの循環量が増加する。したがって、室外熱交換器13に供給される単位時間当たりの熱量が増加するため、デフロスト性能が強化される。
【0041】
(2)ブロアBの風量増加
デフロスト強化運転制御部22は、デフロスト強化運転として、ブロアBの回転数を増加させる。これにより、室内ユニットU内に配されるエバポレータ14に対する室内空気の送風量が増加する。これにより、暖房運転時(ステップS00)にて、温風により温められた車両室内の空気からエバポレータ14に向けて送風される風量が増加する。そうすると、エバポレータ14にて吸熱される熱量が増加し、当該エバポレータ14を流れる冷媒が一層加熱される。結果として、当該加熱された冷媒を通じて、より多くの熱量が室外熱交換器13に供給されることとなり、デフロスト性能が強化される。
【0042】
(3)エンジン18の回転数増加
デフロスト強化運転制御部22は、デフロスト強化運転として、まず、エンジン18の回転数を増加させる。そして、デフロスト強化運転制御部22は、四方弁V4を制御して温水系統P2とエンジン冷却水系統P3とを連結させる。これにより、エンジン冷却水系統P3を循環する冷却水が(回転数が増加した)エンジン18によって一層加熱されるとともに、当該一層加熱された冷却水が、室内ユニットU内に配されるヒータ15を循環する。そうすると、ヒータ15を通じて車両の室内空気が一層温められることとなる。ブロアBは、当該温められた室内空気を循環させ、エバポレータ14に送風することで、エバポレータ14にて吸熱される熱量が増加する。結果として、エバポレータ14によって一層加熱された冷媒を通じて、より多くの熱量が室外熱交換器13に供給されることとなり、デフロスト性能が強化される。
【0043】
図4に示すグラフは、暖房運転(ステップS00)、デフロスト運転(ステップS02)及びデフロスト強化運転(ステップS06)の各々における流出冷媒温度Tの経時的変化の様子を示している。
図4に示すように、例えば、暖房運転制御部20は、時刻t0にて暖房運転を開始したとする(図3のステップS00)。暖房運転中において、外気温が低い条件下では、室外熱交換器13で着霜が発生し、その吸熱性能が低下する。したがって、室外熱交換器13の流出冷媒温度Tは時間とともに低下する。
デフロスト運転制御部21は、流出冷媒温度Tがデフロスト条件閾値Tth1以下となったタイミングでデフロスト運転を開始する(時刻t1、図3のステップS02)。そうすると、室外熱交換器13に高温高圧冷媒が供給されるようになるため、流出冷媒温度Tが時間とともに上昇する。ここで、デフロスト性能が十分に確保できている状況であれば、デフロスト運転開始から一定時間内(時刻t2)に、流出冷媒温度Tがデフロスト解除条件閾値Tth2に到達する(図4の破線のグラフ参照)。この場合、デフロスト運転制御部21は、時刻t2の時点でデフロスト運転を解除し、通常の暖房運転を再開する。
【0044】
しかしながら、デフロスト運転中に、車両が高速で走行中であった場合などにおいては、室外熱交換器13が走行風にさらされる。そうすると、室外熱交換器13に流入する熱量が走行風に奪われてしまい、十分なデフロスト性能を得られない現象が生じる。その結果、デフロスト運転開始から一定時間を経過した後(時刻t3)においても、流出冷媒温度Tがデフロスト解除条件閾値Tth2に到達しない(図4の実線のグラフ参照)。そこで、時刻t3の時点で、デフロスト強化運転制御部22が上述のデフロスト強化運転を開始する(図3のステップS06)。これにより、より多くの熱量が室外熱交換器13に供給され、デフロスト性能が強化される。したがって、車両が高速走行中であったとしても、比較的短い時間で流出冷媒温度Tがデフロスト解除条件閾値Tth2に到達する(時刻t4)。デフロスト運転制御部21は、時刻t4の時点でデフロスト運転を解除し、通常の暖房運転を再開する。
【0045】
(作用、効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る車両用空調システム1の制御部2は、冷媒系統P1における室外熱交換器13の流出冷媒温度Tがデフロスト条件閾値Tth1以下となった場合に、冷媒系統P1においてデフロスト運転を行う。そして、デフロスト運転中における流出冷媒温度Tの上昇の度合いが所定の判定閾値以下であった場合に、デフロスト運転の性能を強化するためのデフロスト強化運転を行う。
このようにすることで、第1の実施形態に係る車両用空調システム1は、車両の走行中においてデフロスト性能が低下した場合には、直ちにデフロスト強化運転が開始されてデフロスト性能が向上する。
以上より、第1の実施形態に係る車両用空調システム1によれば、走行中においても十分なデフロスト性能を確保することができる。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る車両用空調システムについて、図5を参照しながら説明する。
【0047】
(車両用空調システムの構成)
図5は、第2の実施形態に係る車両用空調システムの構成を示す図である。
車両用空調システム1の全体構成については、第1の実施形態(図1)と同様であるため、図示を省略する。
図5は、第2の実施形態に係る車両用空調システム1の室内ユニットUの構成を模式的に示している。
【0048】
図5に示すように、第2の実施形態に係る室内ユニットUは、第1の実施形態と同様に、エバポレータ14と、エアミクスダンパ16と、ヒータ15と、ブロアBとが配されている。また、第2の実施形態に係る室内ユニットUは、第1の実施形態の構成に加え、温風戻しダクトDと、戻しダクト用ダンパ160とを更に備えている。
【0049】
温風戻しダクトDは、室内ユニットU内に配されるヒータ15によって温められた温風の少なくとも一部を、当該室内ユニットU内に配されるエバポレータ14へと導く流路を形成する。
また、戻しダクト用ダンパ160は、温風戻しダクトDの入口に設けられ、当該温風戻しダクトDが形成する流路を開閉可能とする。
【0050】
第2の実施形態に係る制御部2のデフロスト強化運転制御部22は、デフロスト強化運転(図3のステップS06)として、戻しダクト用ダンパ160を開く制御を行う。
このようにすることで、ヒータ15によって加熱された空気の一部が、車両室内を介することなく、直接、エバポレータ14に戻される。そうすると、エバポレータ14にて吸熱される熱量が増加し、当該エバポレータ14を流れる冷媒が一層加熱される。その結果、当該加熱された冷媒を通じて、より多くの熱量が室外熱交換器13に供給されることとなり、デフロスト性能が強化される。
【0051】
<他の実施形態>
以上、第1、第2の実施形態に係る車両用空調システム1について詳細に説明したが、車両用空調システム1の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0052】
例えば、第2の実施形態において、制御部2(デフロスト強化運転制御部22)は、流出冷媒温度の上昇の度合いが所定の判定閾値以下(図3のステップS05:YES)と判定された場合に、戻しダクト用ダンパ160を開制御するものとして説明した。しかし、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係る制御部2(デフロスト運転制御部21)は、デフロスト運転開始の段階(図3のステップS02)で、戻しダクト用ダンパ160を開制御してもよい。このようにすることで、車両用空調システム1は、常に高いデフロスト性能を確保することができる。
【0053】
また、上述の各実施形態においては、上述した車両用空調システム1(制御部2)の各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0054】
上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。更に、車両用空調システム1(制御部2)は、1台のコンピュータで構成されていても良いし、通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 車両用空調システム
10 圧縮機
11 水/冷媒熱交換器
12 レシーバ
13 室外熱交換器
14 エバポレータ
15 ヒータ
16 エアミクスダンパ
160 戻しダクト用ダンパ
17 ウォータポンプ
18 エンジン
19 ラジエータ
2 制御部(制御装置)
20 暖房運転制御部
21 デフロスト運転制御部
22 デフロスト強化運転制御部
V1、V2 二方電磁弁
V3 三方電磁弁
V4 四方弁
V5 逆止弁
E1、E2 膨張弁
T1、T2 冷媒温度センサ
P1 冷媒系統
P2 温水系統
P3 エンジン冷却水系統
U 室内ユニット
B ブロア
D 温風戻しダクト
図1
図2
図3
図4
図5