(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】樹脂状化合物、粘着剤組成物およびエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 36/22 20060101AFI20220527BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220527BHJP
C09J 193/00 20060101ALI20220527BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220527BHJP
C08F 8/04 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C08F36/22
C09J201/00
C09J193/00
C09J11/08
C08F8/04
(21)【出願番号】P 2017115941
(22)【出願日】2017-06-13
【審査請求日】2020-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000117319
【氏名又は名称】ヤスハラケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【氏名又は名称】白井 重隆
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】本田 絵里
(72)【発明者】
【氏名】田▲さき▼ 裕介
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224195(JP,A)
【文献】特開2015-086315(JP,A)
【文献】特開昭49-028659(JP,A)
【文献】特開2007-224258(JP,A)
【文献】特開2016-117880(JP,A)
【文献】特表平09-511012(JP,A)
【文献】特開昭63-012601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0048446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロオシメンを単独で、またはビニル系モノマーと共に、フリーデルクラフト触媒のもとでカチオン重合して得られる(共)重合体を、さらに水素添加して得られる樹脂状化合物であって、
前記アロオシメンの割合は前記(共)重合体を形成する全モノマーに対して75~100重量%であ
り、前記ビニル系モノマーが、スチレンまたはα-メチルスチレンであることを特徴とする樹脂状化合物。
【請求項2】
ベースポリマー100重量部に対し、請求項
1に記載の樹脂状化合物を0.1~200重量部の割合で配合してなる粘着剤組成物。
【請求項3】
エラストマー成分100重量部に対し、請求項
1に記載の樹脂状化合物を0.1~200重量部の割合で含有するエラストマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規テルペン系樹脂状化合物に関するものであり、詳細には、非環状テルペン系モノマーを(共)重合してなる新規テルペン系樹脂状化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
松やオレンジから採取される精油であるテルペンや、松脂から得られるロジン、あるいはナフサからの蒸留留分やフェノール等の石油由来成分を重合、共重合、あるいは縮合して得られる樹脂状の化合物、および/またはその水素添加物は、エラストマーおよび/または熱可塑性樹脂等の高分子材料に配合されると可塑化作用により粘着性を出す働きがあり、接着剤・粘着剤の製造に欠かせない物質である。この作用は、配合される高分子材料の粘性・弾性・極性を変化させることにより発現しており、そのため粘着剤・接着剤のみならず、タイヤ、ポリマー改質、分散性向上剤等、様々な分野で利用されている(特許文献1~3)。
【0003】
これらの樹脂状化合物の中でも、テルペンを原料として重合あるいは共重合して得られる樹脂状化合物はテルペン系樹脂状化合物と呼ばれており、それらに用いられているテルペンは、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン、Δ-3-カレンなどに代表される、構造に炭化水素の環状構造を有する環状テルペンが用いられている。これら従来のテルペン系樹脂状化合物は、石油からの蒸留留分やロジンを用いた樹脂状化合物より、ポリエチレン等のオレフィン基材に対する接着特性が良好である一方で、更なる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-119636号公報
【文献】特開2007-31682号公報
【文献】特開2012-111855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリオレフィン系基材への接着特性や高分子材料の改質効果に優れた特性を発揮する、新規テルペン系樹脂状化合物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、非環状テルペン系モノマーの重合体、あるいはこの非環状テルペン系モノマーと芳香族ビニル系モノマー、フェノール系モノマー、環状テルペン系モノマー、酢酸ビニル系モノマーのうち、少なくとも1種以上を重合または共重合せしめることにより、新規テルペン系樹脂状化合物を得ることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明は、以下の請求項1~8から構成される。
<請求項1>
少なくとも非環状テルペン系モノマーを重合して得られる樹脂状化合物。
<請求項2>
非環状テルペン系モノマーと、環状テルペン系モノマー、ビニル系モノマー、およびフェノール系モノマーの群から選ばれた少なくとも1種の他のモノマーを共重合してなる請求項1に記載の樹脂状化合物。
<請求項3>
非環状テルペン系モノマーがジメチルオクタトリエン、アロオシメン、オシメン及びミルセンの群から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の樹脂状化合物。
<請求項4>
非環状テルペンモノマーの比率が5~100重量%である請求項1~3いずれかに記載の樹脂状化合物。
<請求項5>
無水マレイン酸を付加させてなる、請求項1~4いずれかに記載の樹脂状化合物。
<請求項6>
水素添加してなる、請求項1~5いずれかに記載の樹脂状化合物。
<請求項7>
ベースポリマー100重量部に対し、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂状化合物を0.1~200重量部の割合で配合してなる粘着剤組成物。
<請求項8>
エラストマー成分100重量部に対し、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂状化合物を0.1~200重量部の割合で含有するエラストマー組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により新たに提供する新規テルペン系樹脂状化合物は、従来のテルペン系樹脂状化合物に比べ、柔軟性の高い構造を持ち、可撓性の向上、特にポリオレフィン系基材への接着特性において優れた特性を持つ。さらに、本発明で得られた新規テルペン系樹脂状化合物に無水マレイン酸を更に付加させて、反応性を付与させることができるほか、水素添加処理を行うことにより安定性や性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】当新規テルペン系樹脂状化合物(a)の赤外スペクトルである。(実施例1)
【
図2】当新規テルペン系樹脂状化合物(a)のGPCチャートである。(実施例1)
【
図3】当新規テルペン系樹脂状化合物(b)の赤外スペクトルである。(実施例2)
【
図4】当新規テルペン系樹脂状化合物(b)のGPCチャートである。(実施例2)
【
図5】当新規テルペン系樹脂状化合物(c)の赤外スペクトルである。(実施例3)
【
図6】当新規テルペン系樹脂状化合物(c)のGPCチャートである。(実施例3)
【
図7】当新規テルペン系樹脂状化合物(d)の赤外スペクトルである。(実施例4)
【
図8】当新規テルペン系樹脂状化合物(d)のGPCチャートである。(実施例4)
【
図9】当新規テルペン系樹脂状化合物(e)の赤外スペクトルである。(実施例5)
【
図10】当新規テルペン系樹脂状化合物(e)のGPCチャートである。(実施例5)
【発明を実施するための最良の状態】
【0010】
以下、本発明を、非環状テルペン系モノマー、他のモノマーなど、構成要件別に説明する。
<非環状テルペン系モノマー>
テルペン系モノマーは、一般に植物の葉、樹、根などから得られる植物精油に含まれる化合物である。
テルペンとは、一般的に、イソプレン(C5H8)の重合体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)等に分類される。
テルペン系モノマーとは、これらを基本骨格とする化合物である。この中で、モノテルペンが、本発明では好ましく用いられる。
本発明において、非環状テルペン系モノマーとしては、ジメチルオクタトリエン、アロオシメン、ミルセン、オシメン、リナロール、コスメン等に代表される構造に炭化水素の環状構造を持たない非環状テルペン系モノマーが挙げられる。
【0011】
<(共)重合体>
本発明の樹脂状化合物は、当該非環状テルペン系モノマーを重合成分として必須成分とし、これに必要に応じて環状テルペン系モノマー、ビニル系モノマー、およびフェノール系モノマーの群から選ばれた少なくとも1種の他のモノマーを(共)重合した(共)重合体からなる樹脂状化合物である。
【0012】
他のモノマー:
他のモノマーのうち、環状テルペン系モノマーとしては、α-ピネン、β-ピネン、d-リモネン、Δ3カレン等に代表される構造に炭化水素の環状構造を有する環状テルペン系モノマーが挙げられる。
【0013】
また、他のモノマーのうち、ビニル系モノマーとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ヘキセン、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、クマロン、インデン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、2-フェニル-2-ブテン、ビニルナフタレン等が挙げられる。好ましくは、スチレン、α-メチルスチレン等が使用される。
【0014】
また、他のモノマーのうち、フェノール系モノマーとしては、具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ノリルフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどがあげられる。好ましくは、フェノール、クレゾール等が使用される。
以上の他のモノマーは、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0015】
非環状テルペン系モノマー単独、あるいは必要に応じてビニル系モノマー、フェノール系モノマー、環状テルペン系モノマーのうち、少なくとも1種以上との(共)重合を行う場合、それぞれのモノマーの配合割合は特に限定されないが、好ましくは非環状テルペン系モノマーの配合割合は5~100重量%が好ましい。5重量%未満では、非環状テルペン系モノマーの配合特徴を有しないため好ましくない。
【0016】
本発明の樹脂状化合物は、非環状テルペン系モノマー単独、あるいは、非環状テルペン系モノマーと、必要に応じた他のモノマーとを、例えば反応溶媒中で、フリーデルクラフト触媒のもとで、カチオン重合することにより得られるが、重合方法は特に限定されない。
【0017】
カチオン重合の場合、触媒の種類は、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸、ふっ化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素、固体リン酸、活性白土、ゼオライト、陽イオン交換樹脂等が好適に使用できるが特に限定されない。
【0018】
触媒の使用量は、反応がバッチ方式の場合、原料であるモノマーに対し、0.01~20重量%、好ましくは1~5重量%である。触媒量が0.01重量%未満では、反応収率が著しく低くなり、一方、20重量%を超えても触媒効果が上がらないので好ましくない。
【0019】
本発明の重合反応では、溶媒を用いて行っても良い。溶媒は、パラフィン溶媒やナフテン溶媒等の飽和炭化水素類、芳香族炭化水素類、フェノール類、エーテル類などの溶媒が使用できるが、特に限定されない。
本発明の重合反応では、溶媒量は原料であるモノマーに対し、通常、0.1~300重量%、好ましくは30~100%である。溶媒量が300重量%を超えると、コストが増大するため好ましくない。
【0020】
反応温度は、特に限定されないが、通常、-20~150℃、好ましくは、0~50℃である。-20℃未満では反応が著しく遅くなり、一方、150℃を超えると反応が安定せず好ましくない。
【0021】
このようにして得られる非環状テルペン系(共)重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、500~100,000、好ましくは650~10,000である。
【0022】
<無水マレイン酸付加体>
次に、本発明の樹脂状化合物は、以上の非環状テルペン系モノマー(共)重合体(以下「テルペン系樹脂」ともいう)に、無水マレイン酸を付加してなる付加体であってもよい。
【0023】
この付加体は、例えばテルペン系樹脂に、無触媒もしくはラジカル開始剤存在下、無溶媒もしくは溶媒中において、反応温度0~200℃で、無水マレイン酸を反応させて得られる変性テルペン系樹脂である。
本発明の付加体は、上記テルペン系樹脂と無水マレイン酸を無溶媒もしくは溶媒中において、反応温度30~200℃でディールスアルダー付加させることや、ラジカル開始剤の存在下で付加反応を行うことにより得られる。
【0024】
ディールスアルダー付加反応の場合、反応温度は、30~200℃であるが、好ましくは、60~180℃、さらに好ましくは、80~120℃である。30℃未満であると、付加反応が進行しないこともある。200℃を超えると、テルペン系樹脂の分解が進行しやすくなり、好ましくない。反応時間は、0.1~10時間、好ましくは、0.2~5時間である。反応温度が高温であると、反応時間は少なくて済む。この付加反応は、反応温度60~180℃で、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガス存在下で行うことが好ましく、必要ならばトルエン、キシレンなどの溶剤や塩化アルミニウムやゼオライト、ヨウ素などのディールスアルダー反応を促進する触媒を使用しても良い。
【0025】
ラジカル付加反応の場合、反応温度は、0~200℃であるが、好ましくは、30~180℃、さらに好ましくは、100~150℃である。0℃未満であると、触媒活性が弱く付加反応が進行しないこともある。200℃を超えると、触媒が分解し、付加反応が進行しないこともある。また、樹脂が着色しやすく、また、樹脂の分解が進行しやすくなり、好ましくない。反応時間は、0.1~10時間、好ましくは、0.2~5時間である。反応温度が高温であると、反応時間は少なくて済む。この付加反応は、反応温度30~180℃で、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガス存在下で行うことが好ましく、必要ならばトルエン、キシレンなどの溶剤を使用しても良い。
【0026】
本発明で使用されるラジカル開始剤としては、過酸化物やアゾ化合物等の一般的なラジカル開始剤でよい。例えば、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等である。また、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の油溶性触媒と還元剤とを用いたレドックス系重合触媒を使用しても良い。レドックス系重合触媒を使用すると、0~30℃のような低温での重合が可能となる。
【0027】
本発明の無水マレイン酸付加体は、収率的にもまた製造上の安全面においても優れており、また製造された変性テルペン系樹脂は、高分子材料、ポリマー原料、香料、顕色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、洗浄剤、界面活性剤、乳化剤、殺虫剤、農薬、殺菌剤、忌避剤、除草剤、染料、医薬品、ゴム用薬品、安定剤、着色剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、相溶化剤、滑剤、硬化剤、皮なめし剤、接着剤(ホットメルト接着剤、ホットメルト粘着剤、エマルジョン接着剤、エマルジョン粘着剤、溶剤系接着剤、溶剤系粘着剤等)、粘着付与樹脂、結合剤、油脂、塗料、トラフィクペイント、インキ(印刷インキ等)、糊剤、サイズ剤、紙力増強剤、脱墨剤、舗装道路組成物等の原料又は材料として、幅広い用途を有する有用な化合物である。さらに、この変性テルペン系樹脂は、自動車用バンパーとして使用されるポリプロピレン樹脂に配合され、塗装性改質剤として有用である。
【0028】
<水素添加物>
本発明の非環状テルペン系モノマーの(共)重合体、またはそれらの無水マレイン酸付加体である樹脂状化合物は、水素添加されたものであってもよい。
上記本発明の樹脂状化合物の水素添加処理(水添)は、特に限定されるものではなく、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの坦体上に担持したものを触媒として使用して行う方法が挙げられる。このとき、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式にすることも、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式にすることも可能であり、反応形式に特に制限はない。
【0029】
水添の際、触媒の使用量は、反応がバッチ方式の場合、原料(非環状テルペン系モノマーあるいは上記(共)重合体)に対し、0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%である。触媒量が0.1重量%未満では、水素化反応速度が遅くなり、一方、30重量%を超えても触媒効果が上がらないので好ましくない。
【0030】
水添の際、反応溶媒は用いなくてもよいが、通常、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類が好適に使用される。
反応溶媒の使用量は、原料に対し、通常、10~500重量%、好ましくは50~300重量%程度である。
【0031】
水添の際の反応温度は、特に限定されないが、通常、0~300℃、好ましくは、50~250℃である。反応温度が0℃未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、300℃を超えると、水添物の分解が多くなる恐れがある。
【0032】
本発明において、非環状テルペン系モノマーの重合体、あるいはこれを必須成分とし、他のモノマーとの(共)重合体の水素添加では、当該非環状テルペン系モノマーあるいは非環状テルペン系(共)重合体の二重結合、および/またはビニル系モノマーあるいはフェノール系モノマーに由来する芳香環を水素添加するものである。二重結合の水素添加率は、5~100%、好ましくは70~100%である。芳香環の水素添加率は、0.5~100%、好ましくは1~90%である。これらの水素添加率は、5~100%、好ましくは20~100%である。5%未満では、水素添加の特徴である酸化安定性が十分発現されない。
ここで、二重結合の水素添加率(水添率)は、1H-NMR(プロトンNMR)による二重結合由来ピークの各積分値から、下記式により、算出される値である。
水添率(%)={(A-B)/A}×100
A:水素添加前の二重結合のピークの積分値
B:水素添加後の二重結合のピークの積分値
また、芳香環の水添率は、IR(赤外線分光光度計)によるスチレン化合物またはフェノール化合物由来の吸光度のピーク高さから、下記式により、算出される値である。
水添率(%)={(C-D)/C}×100
C:水素添加前の芳香環由来の吸光度ピーク高さ
D:水素添加後の芳香環由来の吸光度ピーク高さ
【0033】
<粘着剤組成物>
次に、本発明は、ベースポリマー100重量部に対し、以上の樹脂状化合物を0.1~200重量部の割合で配合した粘着剤組成物であってもよい。
ベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。
本発明において、(メタ)アクリル系ポリマーはアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを重合して用いるが、その種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(アミル)(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチ(メタ)ルアクリレート、イソオクチ(メタ)ルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(ドデシル(メタ))アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。尚、ここで言う「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」もしくは「メタクリレート」を意味する。上記アルキル(メタ)アクリレートは単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0034】
また、アルキル(メタ)アクリレートの他に、任意成分として、共重合可能な極性基含有ビニルモノマーが更に含有されていてもよい。
この極性基含有ビニルモノマーは、後述する様に、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤及びアジリジン系架橋剤等、特定の官能基を有する架橋剤と効果的に架橋構造を形成して凝集力と耐反発性の両立を図ったり、更には、必要に応じて、共重合体のTgや粘接着性等を調整するために用いられる。
さらに、本発明において、上記重合性組成物には、共重合性多官能(メタ)アクリレートを微量配合することによって、アクリル系共重合体の重合と同時に架橋を行わせることもできる。
多官能(メタ)アクリレート化合物の配合量は、通常、アクリル系共重合体成分100重量部に対して0~5重量部である。これら、アクリルモノマーは、通常の重合方法、例えば、有機溶剤中でアクリルモノマーを過酸化物、アゾ系の触媒を用いて重合する方法等で重合して使用すればよい。
【0035】
本発明の粘着剤組成物の形態としては溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型、UV硬化型等のいずれでも良く、本発明の(変性)テルペン系樹脂を含むアクリル系粘着剤組成物、あるいは更に架橋剤を加えた粘着剤組成物であれば、特にその形態は限定されない。
(変性)テルペン系樹脂の(メタ)アクリル系ポリマーへの添加方法は、溶剤型では有機溶剤に溶解して混合する方法、ホットメルト型ではアクリルポリマーと(変性)テルペン系樹脂をニーダーや押出機を使用して熱溶融混合する方法、エマルジョン型では(変性)テルペン系樹脂を乳化したものを混合するか(メタ)アクリルモノマーに(変性)テルペン系樹脂を溶解した後乳化重合する方法、UV硬化型では(メタ)アクリルルモノマーやオリゴマーに(変性)テルペン系樹脂を溶解させる方法等があるが、(変性)テルペン系樹脂の(メタ)アクリルポリマーへの添加方法は特に限定されない。
【0036】
なお、本発明の粘着剤組成物に用いられる架橋剤として、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド化合物、アジリジン化合物、多価金属塩、金属キレート等が挙げられる。これら官能基系架橋剤の少なくとも1種を使用することによって、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋と(メタ)アクリル系ポリマーと(変性)テルペン系樹脂の結合により、高温時の保持力、定荷重を上昇させることが可能となる。
架橋剤の含有量は、その種類によっても変わるが、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、通常、0.005~10重量部の範囲であり、好ましくは1.0~5重量部である。
【0037】
本発明の粘着剤組成物は、高い耐熱性、特に高温雰囲気下におけるポリオレフィンや環状ポリオレフィンに対する高い固定性を有し、しかも耐候性、透明性に優れているので、エレクトロニクス分野をはじめ、各種用途に使用可能である。
【0038】
<エラストマー組成物>
次に、本発明では、エラストマー成分100重量部に対し、以上の樹脂状化合物を0.1~200重量部の割合で含有するエラストマー組成物であってもよい。
ここで、用いられるエラストマーとしては、通常、ゴムが用いられる。
ゴムとしては、特に限定されず、天然ゴム(NB)でも合成ゴムでもよい。合成ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。
【0039】
本発明の樹脂状化合物の含有量は、エラストマー成分100重量部に対し、0.1~200重量部、好ましくは1~50重量部である。0.1重量部以上であると、粘着付与効果が充分に得られる。一方、200重量部を超えても、その増分に応じた粘着付与効果が見られない上、引張り強度等、他の必要特性の物性値低下が起こるおそれがある。
【0040】
エラストマー組成物には、さらに、任意成分として、エラストマー成分および樹脂状化合物以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、従来、ゴム工業界で通常使用される添加剤が利用でき、たとえばカーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、マイカ、クレーなどの無機フィラー、補強用フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等の硬化剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、各種オイル、ワックス等が挙げられる。
【0041】
本発明のエラストマー組成物には、未加硫状態のものも、加硫状態のものも含まれる。
未加硫状態のエラストマー組成物(未加硫エラストマー組成物)は、エラストマーと、本発明の樹脂状化合物と、任意成分とを、バンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどで混練することにより製造できる。
加硫状態のエラストマー組成物(加硫エラストマー組成物)は、上記未加硫エラストマー組成物を加硫することにより製造できる。加硫は常法により実施できる。
【0042】
本発明のエラストマー組成物は、タイヤ、ベルト、ゴムクローラ、防振ゴム、靴等の用途に利用できる。なかでもタイヤ用として有用である。
本発明のエラストマー組成物を用いたタイヤは、たとえば、タイヤの各部材向けに調製されたエラストマー組成物と本発明のエラストマー組成物を、それぞれ未加硫の状態にて所定形状に加工し、それらをタイヤ成形機により貼り合わせて生タイヤ(未加硫状態)を形成し、これを加硫機中で加熱、加圧することにより製造できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明する。ただし、本発明は、実施例により限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部である。
実施例1(アロオシメン単体重合物の合成)
撹拌機、還流冷却機、温度計および窒素ガス吹き込み口を備えたフラスコに、トルエン600g、塩化アルミニウム12gを仕込み、この中に、ヤスハラケミカル製 アロオシメン(純度95%)600gを、反応温度30~35℃で、攪拌しながら、定量送液ポンプを用いて1時間かけて滴下した。反応終了後水洗し、255℃、2mmHgの減圧蒸留にて蒸留を行い、軟化点72.0℃の黄色のテルペン系樹脂状化合物(a)275gを得た。
軟化点は、JIS K2207に記載される環球法で測定した。
赤外スペクトルは、パーキンエルマー製SPECTRUM ONE、GPC(分子量)は、日本ウオーターズ製MODEL 510で測定した。
Mn(数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)、Mz(Z平均分子量)の値は、それぞれ、670,755,865であった。
当新規テルペン系樹脂状化合物の赤外スペクトル、GPCチャートを
図1、
図2に掲載する。
【0044】
実施例2(アロオシメン-スチレン共重合物の合成)
撹拌機、還流冷却機、温度計および窒素ガス吹き込み口を備えたフラスコに、トルエン600g、塩化アルミニウム12gを仕込み、この中に、ヤスハラケミカル製 アロオシメン(純度95%)450g、スチレン150g(純度98%)の混合液を、反応温度30~35℃で、攪拌しながら、定量送液ポンプを用いて1時間かけて滴下した。反応終了後水洗し、255℃、2mmHgの減圧蒸留にて蒸留を行い
、軟化点87.0℃の黄色のテルペン系樹脂状化合物(b)425gを得た。
実施例1と同じ機器で測定した、当新規テルペン系樹脂状化合物の赤外スペクトル、GPCチャートを
図3、
図4に掲載する。
Mn(数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)、Mz(Z平均分子量)の値は、それぞれ、750、960、1,305であった。
【0045】
実施例3(アロオシメン単体重合水添物の合成)
実施例1で得られたテルペン系樹脂状化合物を75g、p-メンタンを175g、および粉末状の5%パラジウム担持アルミナ触媒3.75gをオートクレーブに仕込み、次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス10kg/cm2の圧力をかけながら導入した。そして攪拌しながら加熱し230℃となったところで、水素の圧力を50kg/cm
2とし、吸収された水素を補うことで圧力を50kg/cm2に保ちながら16時間反応させた。反応後触媒をろ過し、p-メンタンを減圧蒸留にて除去して、本発明の水添テルペン系樹脂状化合物(c)289gを得た。
実施例1と同じ機器で測定した、当新規テルペン系樹脂状化合物の赤外スペクトル、GPCチャートを
図5、
図6に掲載する。
Mn(数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)、Mz(Z平均分子量)の値は、それぞれ、600、660、800であった。
【0046】
実施例4(アロオシメン-スチレン共重合水添物の合成)
実施例2で得られたテルペン系樹脂状化合物を300g、p-メンタンを1,200g、および粉末状の5%パラジウム担持アルミナ触媒15.0gをオートクレーブに仕込み、次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス10kg/cm
2の圧力をかけながら導入した。そして攪拌しながら加熱し230℃となったところで、水素の圧力を50kg/cm
2とし、吸収された水素を補うことで圧力を50kg/cm
2に保ちながら6時間反応させ、反応後触媒をろ過し、p-メンタンを減圧蒸留にて除去して、本発明の水添テルペン系樹脂状化合物(d)290gを得た。
実施例1と同じ機器で測定した、当新規テルペン系樹脂状化合物の赤外スペクトル、GPCチャートを
図7、
図8に掲載する。
Mn(数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)、Mz(Z平均分子量)の値は、それぞれ、760、965、1,425であった。
【0047】
実施例5(ピネン-ジペンテン-アロオシメン共重合物の合成)
撹拌機、還流冷却機、温度計および窒素ガス吹き込み口を備えたフラスコに、トルエン500g、塩化アルミニウム10gを仕込み、この中に、ヤスハラケミカル製 アロオシメン(純度95%)125g、α-ピネン(純度99%)50g、β-ピネン(純度99%)275g、ジペンテン(純度99%)50gの混合液を、反応温度30~35℃で、攪拌しながら、定量送液ポンプを用いて1時間かけて滴下した。反応終了後水洗し、255℃、2mmHgの減圧蒸留にて蒸留を行い、軟化点72.0℃の黄色の新規テルペン系樹脂状化合物436gを得た。
【0048】
実施例6(ピネン-ジペンテン-アロオシメン共重合物-無水マレイン酸グラフト体の合成)
実施例5で得られたテルペン系樹脂状化合物を150g、無水マレイン酸を75g仕込み、次いで、これ還流冷却機下で攪拌しながら加熱し190℃で2時間反応させ、本発明のテルペン系樹脂状化合物(e)188gを得た。
実施例1と同じ機器で測定した、当新規テルペン系樹脂状化合物の赤外スペクトル、GPCチャートを
図9、
図10に掲載する。
Mn(数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)、Mz(Z平均分子量)の値は、それぞれ、1,090、2,260、4,250であった。
【0049】
実施例7(粘着、接着性評価)
下記配合(部)からなる粘着剤組成物を38μm厚のPETフィルム上に30μm厚の粘着剤層となるように塗工後、乾燥して粘着シートを作製した。得られた粘着シートについて、以下に記載した方法によりボールタック、接着力(対SUS、PE)、保持力(対SUS、PE)を評価した。これらの結果は表1に示される通りであった。
BA系アクリル粘着剤A 100部
(注1:製造方法記載)
テルペン系樹脂状化合物(a) 20部
イソシアネート架橋剤 4.5部
(商品名;コロネートL、東ソー株式会社製)
【0050】
注1:
BA系アクリル粘着剤Aの製造方法:
n-ブチルアクリレート100部、アクリル酸5部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2部および重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.2部をトルエン/酢酸エチル=80/20(重量比)の合計200部の混合溶媒中に添加した。その後、60℃で6時間溶液重合してBA系アクリル粘着剤Aを得た。
得られた溶液中のBA系アクリル粘着剤Aはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は60万であった。
【0051】
(ボールタック)
JIS Z0237に準拠し、幅25mm、長さ約200mmに切断したシートを30°の傾斜面に留め、助走距離100mmの地点からボールを転がして糊面の100mm内で止まったときの最大のボール番号を数値とした。その際の測定温度は23℃で行った。
【0052】
(接着力)
幅25mm、長さ約200mmに切断したシートをSUS板もしくはPE板に23℃雰囲気下で2kgのローラーを2往復させて貼り合わせ、貼り合わせ30分後に23℃雰囲気下で180°ピール接着力を測定した。測定には引っ張り試験機を使用し、引っ張り速度は300mmで行った。
【0053】
(保持力)
幅25mm、長さ約200mmに切断したシートをSUS板もしくはPE板に40℃雰囲気下で2kgのローラーを2往復させて貼り合わせた。貼り合わせた面積は25mm×25mmで、貼り合わせ30分後1kgの荷重をかけて試験片が被着体からずれて落下するまでの時間を測定した。測定時間は最高4時間とした。
【0054】
実施例8
実施例7において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)をテルペン系樹脂状化合物(b)に変更した以外は、実施例7と全く同様の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0055】
実施例9
実施例7において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)を水添テルペン系樹脂状化合物(c)に変更した以外は、実施例7と全く同様の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0056】
実施例10
実施例7において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)を水添テルペン系樹脂状化合物(d)に変更した以外は、実施例7と全く同様の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0057】
実施例11
実施例7において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)をテルペン系樹脂状化合物(e)に変更した以外は、実施例7と全く同様の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0058】
比較例1
実施例7において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)をロジン系樹脂状化合物(スーパーエステルA100:荒川化学工業製)に変更した以外は、実施例7と全く同様の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0059】
【0060】
実施例12(粘弾性評価)
テルペン系樹脂状化合物(a)について、まず下記配合(部)にしたがって、硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合成分をバンバリーミキサー(東洋精機製)にて5分間混練し、混練物を得た。得られた混練物に対し、硫黄と加硫促進剤を配合してオープンロールにて混練することでゴム組成物を得た。更に、得られたゴム組成物を160℃、20分間所定の金型中でプレス加硫を行い、試験片を作成し動粘弾性試験を行った。これらの結果は表2に示される通りであった。
テルペン系樹脂状化合物(a) 10部
SBR 70部
(商品名;JSR 1502、JSR製)
BR 30部
(商品名;JSR TO700、JSR製)
カーボンブラック 5部
(商品名;ショウブラックN330-L、CABOT製)
シリカ 40部
(商品名;ULTRASIL VN3、エボニック製)
シランカップリング剤 2部
(商品名;スルフィド系 Si75、エボニック製)
酸化亜鉛 3部
(和光純薬製)
ステアリン酸 3部
(和光純薬製)
老化防止剤 2.5部
(商品名;アンテージRD、川口化学製)
オイル 5部
(商品名;プロセスオイルPW-32、出光興産製)
硫黄 1.5部
(和光純薬製)
加硫促進剤 3.5部
(商品名:ノクセラーD、大内新薬化学工業製)
【0061】
(動粘弾性試験)
JIS K6394に準拠し、粘弾性スペクトロメーター(UBM製)を用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数20Hzの条件下でtanδ(0℃)、tanδ(60℃)を測定した。結果を表2に表した。なお、tanδ(0℃)、tanδ(60℃)はそれぞれウェットグリップ性能、転がり抵抗性の値を指し示し、tanδ(0℃)の指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れ、tanδ(60℃)の指数が小さいほど転がり抵抗性(低燃費性能)に優れていることを示す。
【0062】
実施例13
実施例12において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)をテルペン系樹脂状化合物(b)に変更した以外は、実施例12と全く同様の方法で評価した。結果を表2に示した。
【0063】
実施例14
実施例12において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)を水添テルペン系樹脂状化合物(c)に変更した以外は、実施例12と全く同様の方法で評価した。結果を表2に示した。
【0064】
実施例15
実施例12において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)を水添テルペン系樹脂状化合物(d)に変更した以外は、実施例12と全く同様の方法で評価した。結果を表2に示した。
【0065】
比較例2
実施例12において使用したテルペン系樹脂状化合物(a)を環状テルペン樹脂状化合物(シルバレスSA85:アリゾナケミカル社製)に変更した以外は、実施例12と全く同様の方法で評価した。結果を表2に示した。
【0066】
【0067】
実施例16(塗料付着性評価)
まず、ポリオレフィン(スミカセンCE-4025:住友化学工業製)にテルペン系樹脂状化合物(e)を2軸押出機(東洋精機製)を用いて溶融混合してペレットとした。このペレットを、圧縮成形機を用いて厚さ1mmの試験片を作製し、塗料付着性評価を行った。
手垢及び油脂を除去する目的としてメタノールで試験片表面を払拭した後、各種塗料(有機溶剤系アクリル塗料、水性アクリル塗料)を厚さが100μmになるように塗布した。評価は48時間後、碁盤目テープテスト法(JIS-K5400)で評価した。結果を表3に示した。
【0068】
比較例3
実施例16において使用したテルペン系樹脂状化合物(e)を環状テルペンフェノール共重合樹脂状化合物(ダートフェンT115:DRT社製)に変更した以外は、実施例16と全く同様の方法で評価した。結果を表3に示した。
【0069】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の新規テルペン系樹脂状化合物は、粘着剤、接着剤、ポリマー改質剤、シーリング剤、タイヤ用ゴム添加剤、塗料改質剤に特に有用であり、自身の持つ優れた効果を発揮する。
その他にも、高分子材料、ポリマー材料、相溶化剤、結晶核剤、表面改質剤、フィラー分散改良剤、繊維分酸改良剤、可塑剤、滑剤、硬化剤、結合材、油脂、トラフィックペイント、インキ、印刷インキ、トナー、糊剤、サイズ剤、紙力増強剤、道路舗装用組成物、土木建築材料、高分子材料用原料、改質剤など様々な用途に幅広く利用できる。
更に、本発明で得られた樹脂に無水マレイン酸を付加させることにより、反応性を付与することで、従来以上の性能を持つことを可能とした。
このことから、本発明の新規樹脂状化合物は、産業上において非常に有用な効果を持つ。