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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】プレス装置およびプレス装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/14 20060101AFI20220527BHJP
   H02P 29/02 20160101ALI20220527BHJP
【FI】
B30B15/14 N
B30B15/14 B
B30B15/14 C
H02P29/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017176974
(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公開番号】P2019051538
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】正藤 勇介
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260094(JP,A)
【文献】特開2008-289271(JP,A)
【文献】特開2009-148130(JP,A)
【文献】特開2003-230997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14
H02P 29/02
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型と下金型を用いて材料に対してプレス成形を行うプレス装置であって、
下面に前記上金型が取り付けられるスライドと、
前記スライドの下方に配置され前記下金型が載置されるボルスタと、
前記スライドを駆動するサーボモータと、
複数の電気二重層キャパシタを有し、蓄電した電力を前記サーボモータに供給可能な複数のキャパシタユニットと、
少なくとも一部のキャパシタユニットが使用されないような設定が前記複数のキャパシタユニットについて行われた場合、前記使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットを用いてプレス成形を行う運転モードを実行する制御部と、を備え、
前記運転モードでは、前記使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットの数に基づいて、前記プレス成形の能力に制限がかけられ
前記プレス成形の能力は、SPMおよび前記サーボモータのトルクの少なくとも一方を含む、
プレス装置。
【請求項2】
前記一部のキャパシタユニットが選択されることにより、前記設定が行われ、
前記運転モードでは、前記選択されたキャパシタユニット以外のキャパシタユニットを用いてプレス成形が行われる、請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記一部のキャパシタユニット以外のキャパシタユニットが選択されることにより、前記設定が行われ、
前記運転モードでは、前記選択されたキャパシタユニットを用いてプレス成形が行われる、請求項1に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記運転モードでは、前記使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットおよび外部電源から電力の供給を受けてプレス成形が行われる、
請求項1に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットが存在しないときには前記キャパシタユニットを用いず前記外部電源を用いて前記運転モードを実行する、
請求項に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記複数のキャパシタユニットの各々に対して前記選択が行われる選択部を更に備えた、
請求項2または3に記載のプレス装置。
【請求項7】
前記プレス成形の能力は、SPMを含み、
前記制御部は、
全ての前記キャパシタユニットおよび前記外部電源を用いた場合の前記サーボモータに供給可能な定格電流値に対する、前記使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットおよび前記外部電源を用いた場合の前記サーボモータに供給可能な許容電流値の割合を算出する算出部と、
前記割合に基づいて制限をかけられたSPMでプレス成形を行うように前記サーボモータのモーションを制御するプレスモーション制御部と、を有する、
請求項に記載のプレス装置。
【請求項8】
前記プレス成形の能力は、前記サーボモータのトルクを含み、
前記制御部は、
全ての前記キャパシタユニットおよび前記外部電源を用いた場合の前記サーボモータに供給される最大電流に対する、前記使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットおよび前記外部電源を用いたときの前記サーボモータに供給可能な許容最大電流の割合を算出し、前記割合に基づいて前記サーボモータのトルクに制限をかける、
請求項に記載のプレス装置。
【請求項9】
上金型と下金型を用いて材料に対してプレス成形を行うプレス装置であって、
下面に前記上金型が取り付けられるスライドと、
前記スライドの下方に配置され前記下金型が載置されるボルスタと、
前記スライドを駆動するサーボモータと、
複数の電気二重層キャパシタを有し、蓄電した電力を前記サーボモータに供給可能な複数のキャパシタユニットと、
少なくとも一部のキャパシタユニットが使用されないような設定が前記複数のキャパシタユニットについて行われた場合、前記使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットを用いてプレス成形を行う運転モードを実行する制御部と、
前記複数のキャパシタユニットの各々から供給される電流を計測する電流計測部と、
前記電流計測部の計測に基づいて、前記使用されないキャパシタユニットから電流が供給されていることを検出した場合に、表示部にアラームを表示させる検出部と、備えた、
レス装置。
【請求項10】
上金型が取り付けられるスライドと、下金型が載置されるボルスタとを備えたプレス装置の制御方法であって、
複数の電気二重層キャパシタを有し、前記スライドを駆動するサーボモータに蓄電した電力を供給可能な複数のキャパシタユニットについて、少なくとも一部のキャパシタユニットが使用されないような設定が行われた場合、使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットを用いてプレス成形を行う運転モードを実行する実行ステップ、を有し、
前記運転モードでは、前記使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットの数に基づいて、前記プレス成形の能力に制限がかけられ
前記プレス成形の能力は、SPMおよび前記サーボモータのトルクの少なくとも一方を含む、
プレス装置の制御方法。
【請求項11】
上金型が取り付けられるスライドと、下金型が載置されるボルスタとを備えたプレス装置の制御方法であって、
複数の電気二重層キャパシタを有し、前記スライドを駆動するサーボモータに蓄電した電力を供給可能な複数のキャパシタユニットについて、少なくとも一部のキャパシタユニットが使用されないような設定が行われた場合、使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットを用いてプレス成形を行う運転モードを実行する実行ステップと、
前記複数のキャパシタユニットの各々から供給される電流を計測する電流計測ステップと、
前記電流計測ステップの計測に基づいて、前記使用されないキャパシタユニットから電流が供給されていることを検出した場合に、表示部にアラームを表示させる検出ステップと、有する、
プレス装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置およびプレス装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の生産メーカでは、金型を用いたプレス装置によってボデー等が生産されている。近年、プレス装置としては、サーボモータ駆動方式のプレス機械が用いられている。
このようなサーボモータ駆動方式のプレス機械では、プレス成形時に大きなピーク電力が発生し、工場電圧又は工場外電圧が降下しフリッカ等の問題が発生する場合がある。
【0003】
一方、電力のピークを抑制するため、プレス装置に蓄電デバイスとしてアルミ電解コンデンサを搭載する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-230997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓄電量を増加するために複数の蓄電デバイスを用いた場合、一部の蓄電デバイスが故障または劣化したときには、プレス全体を停止しなければならず生産も停止することになる。
本発明は、複数の蓄電デバイスのうち一部が使用不可となった場合でもプレス成形を行うことが可能なプレス装置およびプレス装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目定を達成するために発明は、上金型と下金型を用いて材料に対してプレス成形を行うプレス装置であって、スライドと、ボルスタと、サーボモータと、複数のキャパシタユニットと、制御部と、を備える。スライドには、下面に上金型が取り付けられる。ボルスタは、スライドの下方に配置され下金型が載置される。サーボモータは、スライドを駆動する。複数のキャパシタユニットは、複数の電気二重層キャパシタを有し、蓄電した電力をサーボモータに供給可能である。制御部は、少なくとも一部のキャパシタユニットが使用されないような設定が複数のキャパシタユニットについて行われた場合、使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットを用いてプレス成形を行う運転モードを実行する。
【0007】
他の発明にかかるプレス装置の制御方法は、上金型が取り付けられるスライドと、下金型が載置されるボルスタとを備えたプレス装置の制御方法であって、実行ステップを有する。実行ステップでは、複数の電気二重層キャパシタを有し、スライドを駆動するサーボモータに蓄電した電力を供給可能な複数のキャパシタユニットについて、少なくとも一部のキャパシタユニットが使用されないような設定が行われた場合、使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットを用いてプレス成形を行う運転モードを実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の蓄電デバイスのうち一部が使用不可となった場合でもプレス成形を行うことが可能なプレス装置およびプレス装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかる実施の形態におけるプレス装置を示す模式図。
図2図1のプレス装置のキャパシタユニットを示す斜視図。
図3図1のプレス装置のコントローラの構成を示すブロック図。
図4図1のプレス装置の操作表示部の一例を示す図。
図5図1のプレス装置の操作表示部において(2)番のキャパシタユニット60が無効(使用不可)に設定にされた状態を示す図。
図6図1のプレス装置の通常運転モードにおける制御動作を示すフロー図。
図7図1のプレス装置を用いた場合における工場電源からの供給電力を示す図。
図8図1のプレス装置においてキャパシタユニットに異常が検出された場合の動作フローを示す図。
図9A図1のプレス装置の応急運転モードにおける制御動作を示すフロー図。
図9B図1のプレス装置の応急運転モードにおける制御動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のプレス装置について図面を参照しながら以下に説明する。
<1.構成>
(1-1.プレス装置の概要)
図1は、本発明にかかる実施の形態1のプレス装置1の構成を示す模式図である。
本実施の形態のプレス装置1は、上金型7と下金型8を用いて材料にプレス加工を行う。プレス装置1は、スライド2と、ボルスタ3と、スライド駆動部4と、サーボ電源部5と、蓄電システム部6と、メインブレーカ9と、コントローラ10と、操作表示部11と、を主に備える。
【0011】
スライド2の下面には、上金型7が取りつけられる。ボルスタ3の上面には、下金型8が載置される。スライド駆動部4は、スライド2を昇降移動させる。サーボ電源部5は、工場電源100から供給された交流を直流に変換して蓄電システム部6に出力する。蓄電システム部6は、工場電源100若しくはスライド駆動部4において生じる回生電力を蓄電する。メインブレーカ9は、工場電源100からプレス装置1に供給する電力をオン・オフする。コントローラ10は、スライド駆動部4、サーボ電源部5、および蓄電システム部6の制御を行う。操作表示部11には、操作画面が表示され、使用者による操作が入力される。
【0012】
(1-2.スライド駆動部)
スライド駆動部4は、サーボモータ21と、サーボアンプ22と、ピニオンギヤ23と、メインギヤ24と、クランクシャフト25と、コンロッド26とを有する。サーボモータ21は、スライド2の駆動源である。サーボアンプ22は、サーボモータ21に駆動電流を供給する。ピニオンギヤ23は、サーボモータ21と連結されており、サーボモータ21の回転によって回転する。メインギヤ24は、ピニオンギヤ23と噛み合っており、ピニオンギヤ23の回転に伴って回転する。クランクシャフト25は、メインギヤ24と連結されており、メインギヤ24の回転によって回転する。コンロッド26は、クランクシャフト25とスライド2を連結する。本実施の形態では、コンロッド26は2つ設けられている。
【0013】
サーボアンプ22からの駆動電流によってサーボモータ21が回転すると、ピニオンギヤ23が回転し、ピニオンギヤ23の回転と共にメインギヤ24も回転する。メインギヤ24の回転によりクランクシャフト25が回転し、コンロッド26が上下動する。これによってコンロッド26が接続されているスライド2が昇降移動する。
【0014】
(1-3.サーボ電源部)
サーボ電源部5は、高調波フィルタモジュール31と、リアクトル32と、PWMコンバータ33とを有する。高調波フィルタモジュール31は、PWMコンバータ33において発生する高調波が工場電源100側に戻ることを防ぐ。
リアクトル32とPWMコンバータ33はチョッパー回路を構成し、交流を直流に変換し昇圧する。工場電源100からは所定電圧の交流が供給されており、PWMコンバータ33からは所定電圧よりも高い電圧の直流が出力される。PWMコンバータ33とサーボアンプ22は、DCバスライン14によって接続されている。また、PWMコンバータ33は、DCバスライン14における電圧を監視する。
【0015】
(1-4.蓄電システム部)
蓄電システム部6は、複数の電気二重層キャパシタ601(後述する図2参照)が設けられた蓄電盤42と、動作前に電気二重層キャパシタ601を充電する初期充電回路41と、初期充電回路41をバイパスするための短絡コンタクタ43と、を有する。
(1-4-1.初期充電回路)
初期充電回路41は、DCバスライン14上に設けられており、蓄電盤42に設けられた複数の電気二重層キャパシタ601(後述する)を充電するための回路である。すなわち、プレス装置1を動作する前には、蓄電盤42の電気二重層キャパシタ601は充電されていないため、工場電源100から供給される電力を充電する。初期充電回路41は、DC/DCコンバータ51と、リアクトル52とを有している。初期充電回路41は、充電の際に電気二重層キャパシタ601に急激に電流が流れ込まないように電流を絞る。
【0016】
(1-4-2.短絡コンタクタ)
短絡コンタクタ43は、初期充電回路41をバイパスするようにDCバスライン14に接続されたバイパスライン15上に設けられている。すなわち、バイパスライン15は、初期充電回路41のPWMコンバータ33側においてDCバスライン14と接続され、初期充電回路41のサーボアンプ22側においてDCバスライン14と接続されている。短絡コンタクタ43をON状態にすることにより、PWMコンバータ33から出力された電流は、初期充電回路41をバイパスしてサーボアンプ22へと供給される。
【0017】
(1-4-3.蓄電盤)
蓄電盤42は、24個の電気二重層キャパシタ601(図2参照)が設けられた4つのキャパシタユニット60と、4つの電流センサ61と、4つの温度センサ62とを有する。
図2は、蓄電盤42に設けられたキャパシタユニット60を示す図である。本実施の形態では、キャパシタユニット60は、2枚のヒートシンク602と、24個の直列接続された電気二重層キャパシタ601(蓄電デバイスの一例)と、を有する。
【0018】
2枚のヒートシンク602は上下に配置されている。キャパシタユニット60では、一枚のヒートシンク602と、ヒートシンク602上に載置された12個の電気二重層キャパシタ601が、2段設けられている。2枚のヒートシンク602および24個の電気二重層キャパシタ601は、枠部材等によって固定されている。ヒートシンク602は、アルミによって形成された板形状の部材であり、ヒートシンク602には、冷却水が流通する流路が形成されている。ヒートシンク602の流路には、チラー12から冷却水が供給される。冷却水は、チラー12によって循環する。
【0019】
本実施の形態のプレス装置1では、図1に示すように、キャパシタユニット60は4つ設けられており、4つのキャパシタユニット60は、工場電源100からサーボモータ21に電力を供給するライン(具体的にはDCバスライン14)に対して並列接続されている。詳細には、DCバスライン14のバイパスライン15の接続部とサーボアンプ22との間に、4つのキャパシタユニット60が繋がっている。また、本明細書において電気二重層キャパシタ601の電圧との記載は、キャパシタユニット60(24個直列に接続された電気二重層キャパシタ601)の電圧を示す。
【0020】
電流センサ61は、各々のキャパシタユニット60とDCバスライン14との接続ライン上に設けられている。電流センサ61は、各々のキャパシタユニット60からDCバスライン14に流れる電流を計測する。電流センサ61によって、キャパシタユニット60の容量劣化、断線、または短絡等を検出することができる。1つのキャパシタユニット60からの電流が他の3つのキャパシタユニット60からの電流より低いことなどを検出することによって、キャパシタユニット60の異常を検知することができる。
【0021】
温度センサ62は、各々のキャパシタユニット60に設けられている。温度センサ62によって、電気二重層キャパシタ601の温度を検出でき、例えば冷却水配管の詰まりや、キャパシタ内部抵抗の上昇などを検出することができる。
電流センサ61や温度センサ62からの検出値に基づいて、状態検出部71(後述する)がいずれかのキャパシタユニット60の異常を検出した場合には、後述する操作表示部11に、その旨が表示される。
【0022】
(1-5.コントローラ)
図3は、コントローラ10の構成を示すブロック図である。コントローラ10は、状態検出部71と、プレスモーション制御部72と、SPM率算出部73と、トルクリミット算出部74と、記憶部75と、アラーム検出部76と、を有する。
本実施の形態では、状態検出部71によって少なくとも1つのキャパシタユニット60の異常が検出された場合、異常が検出されたキャパシタユニット60以外のキャパシタユニット60で動作可能なようにプレス装置1の能力に制限が設けられる。そして、制限が設けられた応急運転モードでプレス成形が実行される。制限は、本実施の形態では、SPM(Shots Per Minute)率とトルクリミットである。SPM率は、SPM率算出部73によって算出され、トルクリミットは、トルクリミット算出部74によって算出される。
【0023】
(1-5-1.状態検出部)
状態検出部71は、4つのキャパシタユニット60の各々に設けられた電流センサ61と温度センサ62からの検出値に基づいて、各々のキャパシタユニット60の状態を検出する。具体的には、電流センサ61の検出値に基づいて、状態検出部71は、各々のキャパシタユニット60の断線、短絡および容量劣化等の異常を検出する。状態検出部71は、検出値が予め設定した所定閾値以下になった場合に、短絡、断線等が発生したことを検出する。また、容量劣化については、例えば初期充電の際に所定電圧範囲を通過する際の充電電流と時間を計測してキャパシタの静電容量を算出し、その静電容量が所定閾値以下になった場合に容量が劣化したと判断することができる。
【0024】
また、状態検出部71は、温度センサ62の検出値に基づいて、各々のキャパシタユニット60の冷却水配管の詰まりや、キャパシタ内部抵抗の上昇などを検出する。状態検出部71は、検出値が予め設定された所定閾値以上の温度になった場合に、冷却水配管の詰まりや、キャパシタ内部抵抗の上昇が発生したことを検出する。これらの閾値の値は、後述する記憶部75に記憶されていてもよい。
【0025】
状態検出部71は、4つのキャパシタユニット60のうちいずれかのキャパシタユニット60において異常が発生したことを検出した場合には、操作表示部11の表示画面81に表示させる。この表示に基づいて作業者は、操作表示部11の設定部82(後述する)を操作して、異常が検出されたキャパシタユニット60を使用不可に設定するとともに、異常が検出されたキャパシタユニット60のDCバスライン14への電気的接続を遮断する。電気的接続を遮断するとは、例えば、電気コード等の動力線を取り外すことである。
【0026】
(1-5-2.プレスモーション制御部)
プレスモーション制御部72は、所定のプレスモーションに基づいてサーボアンプ22に位置指令を送信し、サーボモータ21を制御する。ここで、所定のプレスモーションとは、例えば、図示しない記憶部に記憶された基本プレスモーションから作業者が作成したモーションであってもよいし、記憶された複数のプレスモーションから作業者が選択したプレスモーションであってもよい。基本プレスモーションや、複数のプレスモーションは、後述する記憶部75に記憶されていてもよい。
【0027】
(1-5-3.SPM率算出部)
SPM率算出部73は、設定部82によって使用不可(無効ともいえる)に設定されたキャパシタユニット60以外の使用可能なキャパシタユニット60の数に基づいて、SPM率を算出する。SPMを小さくすることによって、電流の実効値を小さくすることができる。SPM率算出部73は、使用可能なキャパシタユニット60の数が少ないほど、SPM率を低く設定することによって、電流の実効値を、使用可能なキャパシタユニット60の数と工場電源100(PWMコンバータ33からの出力)で賄うことができる値に設定する。
【0028】
具体的には、SPM率算出部73は、プレス装置1が搭載しているキャパシタユニットの数をNa(本実施の形態では4個)とし、使用可能なキャパシタユニット60の数をNb(0~3個)とし、1つのキャパシタユニット60の定格電流をCr(A)とし、PWMコンバータ33からの定格出力をPr(A)とし、PWMコンバータに設定されたリミットをL(%)とすると、以下の算出式(1)~(3)を用いてSPM率を算出する。
【0029】
(1)定格電流値=Cr×Na+Pr×L(%)
(2)許容電流値=Cr×Nb+Pr×100(%)
(3)SPM率(%)=許容電流値/定格電流値×100(%)
【0030】
定格電流値は、プレス装置1が搭載している全てのキャパシタユニット60(4つ)から供給される電力と工場電源100からPWMコンバータ33を介して供給される電力とを用いた場合にサーボアンプ22に供給される電流値を示す。
許容電流値は、使用可能なキャパシタユニット60(例えば、3つ等)から供給される電力と工場電源100からPWMコンバータ33を介して供給される電力を用いた場合に、サーボアンプ22に供給可能な電流値を示す。
SPM率は、定格電流値に対する許容電流値の割合に設定される。
このように定格電流値でプレス成形を行う際のSPMより小さくすることにより、許容電流値でプレス成形を行うことができる。
【0031】
SPM率算出部73は、算出したSPM率をプレスモーション制御部72に送信する。プレスモーション制御部72は、4個のキャパシタユニット60の全てを用いた際に設定したプレスモーションのSPMに対して、算出されたSPM率を乗じたSPMで駆動するように、サーボアンプ22に位置指令を送信する。なお、全てのキャパシタユニット60が使用可能な場合にはPWMコンバータ33のリミットは例えば80%等に設定されており、リミット以上の値が出力されないように設定されている。一方、キャパシタユニット60の一部が使用不可に設定された場合には、リミットが100%、すなわち、リミットが設定されていない状態となっており、工場電源100から供給される電流値も増加される。
【0032】
(1-5-4.トルクリミット算出部)
トルクリミット算出部74は、サーボモータ21のトルクに制限をかける値を算出する。トルクに制限を掛けることによって、ピーク電流を減少させることができる。そのため、トルクリミット算出部74は、使用可能なキャパシタユニット60の数と工場電源100(PWMコンバータ33からの出力)で賄うことができるピーク電流になるようにトルクリミット値を算出する。
【0033】
具体的には、トルクリミット算出部74は、サーボモータ21の最大出力をMw(W)とし、PWMコンバータ33の下限電圧をPmi(V)とし、1つのキャパシタユニット60の最大電流をCma(A)とし、使用可能なキャパシタユニット60の数をNb(0~3個)とし、PWMコンバータ33からの定格出力をPr(A)とすると、以下の算出式(4)~(6)を用いてトルクリミットを算出する。
【0034】
(4)モータ最大電流=Mw/Pmi
(5)許容最大電流=Cma×Nb+Pr×100(%)
(6)トルクリミット(%)=許容最大電流/モータ最大電流×100×マージン90%
【0035】
モータ最大電流値は、サーボモータ21に供給される最大の電流値を示す。プレス成形のピーク時に発生する電流値である。
許容最大電流値は、使用可能なキャパシタユニット60(例えば、3つ等)から供給される電力と工場電源100からPWMコンバータ33を介して供給される電力を用いた場合に、サーボアンプ22に供給可能な最大の電流値を示す。
トルクリミット率は、モータ最大電流値に対する許容最大電流値の割合に設定される。なお、式(6)では、10%の余力を持たせるために、トルクリミットは、上記割合の更に90%に設定されている。
【0036】
このようにサーボモータ21のトルクを制限することにより、ピーク時に発生する電流を抑制することができ、許容最大電流値でプレス成形の際にトルクのピーク時に生じる電流を賄うことができる。
トルクリミット算出部74は、算出されたトルクリミットをサーボアンプ22に送信する。サーボアンプ22は、受信したトルクリミット以上のトルクを発生させないように設定される。
【0037】
(1-5-5.記憶部)
記憶部75には、プレス装置1が搭載しているキャパシタユニットの数(Na)と、1つのキャパシタユニット60の定格電流(Cr(A))と、PWMコンバータ33からの定格出力(Pr(A))と、PWMコンバータに設定されたリミット(L(%))と、サーボモータ21の最大出力(Mw(W))、PWMコンバータ33の下限電圧(Pmi(V))と、1つのキャパシタユニット60の最大電流(Cma(A))と、マージン(%)が記憶されている。これらの値が、SPM率算出部73およびトルクリミット算出部74によって記憶部75から引き出される。
【0038】
(1-5-6.アラーム検出部)
アラーム検出部76は、4つの電流センサ61からの検出値を受信する。アラーム検出部76には、使用不可に設定されたキャパシタユニット60に関する情報が設定部82から送信される。アラーム検出部76は、使用不可に設定されたキャパシタユニット60から電流が供給されていることを検出した場合には、表示画面81にアラーム表示をさせる。使用不可に設定されたキャパシタユニット60のDCバスライン14への電気的な接続は、作業者によって物理的に遮断されている必要があるが、電流の供給が検出された場合には物理的な遮断が行われていないことを意味するため、アラームが作業者に報知される。
【0039】
(1-6.操作表示部)
操作表示部11は、表示画面81と、設定部82とを備える。操作表示部11は、タッチパネルなどによって構成されており、表示画面81と設定部82を兼ねている。図4は、キャパシタユニット60を使用不可に設定する表示画面の例を示す図である。
図4に示す表示画面81には、設定部82が設けられている。設定部82は、5つのボタン部分83を有している。
【0040】
図4に示す画面では一例として(1)~(5)の番号が割り振られた5つのボタン部分83が設けられているが、本実施の形態では、プレス装置1に搭載されているキャパシタユニット60は4個であるため、(1)~(4)番の4つボタン部分83のみが使用され、残り1つの(5)番のボタン部分83は使用されない。4個のキャパシタユニット60は、(1)~(4)の番号のボタン部分83に対応して区別される。なお、プレス装置1に搭載されているキャパシタユニット60の数(すなわち、4個)は、記憶部75に記憶されている。
【0041】
また、表示画面81上の設定部82の右側には、定格電流値を表示する表示部分84a、許容電流値を表示する表示部分84b、SPM率を表示する表示部分84c、モータ最大電流を表示する表示部分84d、許容最大電流を表示する表示部分84e、トルクリミット(割合)を表示する表示部分84f、トルクリミットを表示する表示部分84gが上から順に配置されている。
【0042】
例えば、状態検出部71によって、(2)の番号に対応するキャパシタユニット60に異常が検出され表示画面81に、その旨が表示された場合には、使用者は、図4に示す画面に移動し、(2)番のボタン部分83をタッチする。それによって、図5に示すように、(2)番のボタン部分83が使用可能の状態から使用不可の状態に設定される(図4および図5においてドットの有無参照)。
【0043】
このように、設定部82では、(1)番~(4)番のボタン部分83の各々について、使用不可または使用可能が設定される。各々のボタン部分83について使用可能または使用不可を設定することによって、4つのキャパシタユニット60から使用しないキャパシタユニット60を選択していることになる。また、4つのキャパシタユニット60から使用するキャパシタユニット60を選択しているともいえる。すなわち、設定部82において、一部のキャパシタユニット60が使用されないような設定が、複数のキャパシタユニット60について行われる。
【0044】
設定部82は、使用可能なキャパシタユニット60が3個であるという情報をSPM率算出部73およびトルクリミット算出部74に送信する。
すると、上述したように、SPM率算出部73によって、定格電流値、許容電流値、およびSPM率が算出され、トルクリミット算出部74によってモータ最大電流、許容最大電流、トルクリミット(割合)、およびトルクリミットが算出され、算出された値が図5の表示部分84a~84gに表示される。
【0045】
<2.動作>
次に、本発明にかかる実施の形態のプレス装置1の動作について説明するとともに、本発明のプレス装置の制御方法の一例についても述べる。
はじめに、プレス装置1による通常運転モードでのプレス動作について説明し、その後にキャパシタユニット60の一部が使用不可となった場合の応急運転モードに関する動作について説明する。
【0046】
(2-1.通常運転モードにおけるプレス動作)
図6は、プレス装置の通常運転モードにおける制御動作を示すフロー図である。
はじめに、ステップS10において、コントローラ10からプレス運転準備信号が出力されているか否かが検出される。プレス運転準備信号は、プレス装置1を運転する際にユーザによってボタンが押されて出力される信号であり、プレス装置1を正常に動作させる準備が出来たことを示す信号である。
【0047】
次に、ステップS11において、電気二重層キャパシタ601に充電が行われる。短絡コンタクタ43はオフされている状態のため、バイパスライン15には電流が流れず、PWMコンバータ33からの出力された電力は初期充電回路41へ流れる。初期充電回路41のDC/DCコンバータ51によって電流制御が行われながら、DCバスライン14に接続されている電気二重層キャパシタ601に電荷が蓄積される。DC/DCコンバータ51が、DCバスライン14の電圧を監視しており、ステップS12において、電気二重層キャパシタ601の電圧が所定電圧まで昇圧されるまで充電が行われる。なお、DC/DCコンバータ51は、入力側電圧と出力側電圧が一致すると充電が完了したと判断し、動作を停止する。
【0048】
ステップS12においてDC/DCコンバータ51によって電気二重層キャパシタ601の電圧が所定電圧まで昇圧されたことが検出されると、ステップS13において、コントローラ10は、短絡コンタクタ43を接続する。これによって、PWMコンバータ33からの出力は、初期充電回路41をバイパスしてサーボアンプ22へと供給され、ステップS18において電気二重層キャパシタ601からの充放電が開始される。
【0049】
ステップS13において短絡コンタクタ43が接続されると、ステップS14において、コントローラ10は、サーボモータ21を通電する。
次に、ステップS15において、設定されたモーションに従いサーボモータ21を動作してスライド2を上下動作させる。なお、スライド2の下方への移動の際、サーボモータ21は所定速度に達するまで加速し、その後一定速度で駆動する。サーボモータ21の駆動によるクランクシャフト25の回転に伴って、スライド2は下死点に達してから上昇する。そして、上死点でスライド2を停止させるために所定位置からサーボモータ21が減速される。
【0050】
そして、ステップS16において、サーボモータ21の停止信号が出力されている場合には、ステップS17において、サーボモータ21は停止する。これによって、スライド2が上死点で停止する。
プレス加工の際の消費電力の変化について図7を用いて説明する。図7は、プレス加工の際の電力の変化を示す図である。図7には、点線L1と実線L2が示されている。点線L1は、プレス成形時におけるプレス装置1の消費電力の時間変化を示す。実線L2は、工場電源100から供給された電力の時間変化を示す。
【0051】
図7における時刻t1からスライド2の下方への移動が開始され、時刻t1~t2において、サーボモータ21が所定速度に達するまで加速されており、サーボモータ21によって電力が消費される。サーボモータ21によって電力が消費され、DCバスライン14の電圧が低下すると、サーボ電源部5からは予め設定された一定電力が供給される。実線L2に示すように、サーボ電源部5からは一定電力しか供給されないため、不足分が電気二重層キャパシタ601から供給される。すなわち、点線L1のうち実線L2よりも超えた分が電気二重層キャパシタ601から供給される。
【0052】
そして、時刻t2においてサーボモータ21の速度が所定速度に達すると、時刻t2からサーボモータ21は、一定速度で駆動する。時刻t2から、上金型7が材料(ワーク)に接触する時刻t3までサーボモータ21にかかる負荷が少ないため、点線L1に示す消費電力が少なくなっている。このとき、実線L2のうち点線L1よりも超えた分の電力が電気二重層キャパシタ601に充電される。
【0053】
次に、時刻t3から更にスライド2が下降しワークに対して時刻t4までプレス加工が行われる。このときに消費電力がピークとなるが、上述したようにサーボ電源部5からは予め設定された一定電力が供給され不足分の電力は電気二重層キャパシタ601から供給される。
そして、スライド2が所定位置に達すると、コントローラ10は、スライド2を上死点で停止するためにサーボモータ21を減速させる。図7における、時刻t5がサーボモータ21の減速開始時刻を示し、時刻t6が減速終了を示す。図7に示すように、時刻t5からt6では、出力がマイナス側になっており、サーボモータ21において回生電力が発生している。この回生電力は、電気二重層キャパシタ601に充電される。
【0054】
一方、上記ステップS14~ステップS17のプレス加工の間に、並行してステップS18~ステップS22の制御が行われている。上述したように、ステップS13における短絡コンタクタ43の接続によって、ステップS18において電気二重層キャパシタ601による充放電が開始される。
そして、次のステップS19では、PWMコンバータ33が、DCバスライン14の電圧が所定電圧以上になるか否かを判定している。そして、DCバスライン14の電圧が所定電圧以上になった場合、制御はステップS20へと進み、電力は、PWMコンバータ33の電源回生機能により工場電源100に回生される。DCバスライン14の電圧は電気二重層キャパシタ601の電圧と等しいため、PWMコンバータ33は、電気二重層キャパシタ601の電圧を検出していることになる。すなわち、電気二重層キャパシタ601の充電量が所定量以上になると、サーボモータ21で発生した回生電力は工場電源100へと回生される。また、ステップS19において、DCバスライン14の電圧が、所定電圧よりも小さい場合には、ステップS21において電気二重層キャパシタ601が充電される。
【0055】
なお、次のステップS22において、コントローラ10からプレス運転準備信号が出力されているか否かが検出される。プレス運転準備信号が検出されている間は、ステップS18~ステップS21が繰り返される。また、ステップS22において、コントローラ10からプレス運転準備信号が出力されていないことが検出されると、制御は終了する。
なお、初めに電気二重層キャパシタ601に充電を行った後は、サーボモータ21の減速時の回生電力等によって電気二重層キャパシタ601に充電が行われる。このため、工場電源100から入力を行わなくてもよい。
【0056】
以上のように、充電可能な電気二重層キャパシタ601を備えることによって、不足分は電気二重層キャパシタ601から供給されるため、図7に示すように工場電源100から供給される電力を一定に出来できる。
上記ステップS10~S22の制御と並行して、ステップS51~S53の制御が行われる。ステップS51では、状態検出部71が、電流センサ61および温度センサ62の検出値に基づいて、キャパシタユニット60の異常検出を行う。
【0057】
ステップS51において、異常が検出された場合には、ステップS52において、状態検出部71は、表示画面81にキャパシタユニット60の異常を検出した旨の表示を行わせる。このとき、どのキャパシタユニット60に異常が検出されたかの情報(図4に示すような(1)~(4)番の番号)も表示される。次に、状態検出部71は、プレス装置1を一旦停止する。
このように、DCバスライン14に並列接続された(1)~(4)のキャパシタユニット60のいずれかに故障または劣化等の異常が検出されると、後述する応急運転モードでプレス成形を実施することができる。
【0058】
(2-2.応急運転モードにおけるSPM率およびトルクリミットの算出)
上記のようにキャパシタユニット60に異常が検出された場合、そのキャパシタユニット60を作業者が使用不可に設定したとき、コントローラ10は、応急運転モードを実行するために、応急運転モードにおけるSPM率およびトルクリミットを算出する。図8は、SPM率およびトルクリミットを算出する際の動作を示すフロー図である。
【0059】
ステップS101において、状態検出部71が電流センサ61の検出値および温度センサ62の検出値に基づいて4つのうちいずれかのキャパシタユニット60に異常を検出すると、ステップS102において、状態検出部71は、表示画面81に異常検出についての表示を行わせる。表示画面81には、例えば、(2)番のキャパシタユニット60に異常が発生したことが表示される。
【0060】
次に、ステップS103において、(2)番のキャパシタユニット60のボタン部分83が押されると、ボタン部分83の表示が変化し、(2)番のキャパシタユニット60が使用不可(無効)に設定される。設定部82は、使用可能なキャパシタユニット60の数をSPM率算出部73およびトルクリミット算出部74に送信する。ここで、作業者によって、(2)のキャパシタユニット60のDCバスライン14への物理的な接続(動力線等)が取り外される。
【0061】
次に、ステップS104において、SPM率算出部73は、使用可能なキャパシタユニット60と工場電源100(より詳細にはPWMコンバータ33からの出力)で供給可能な実効電流を算出し、算出した実効電流のキャパシタフル状態(搭載されているキャパシタユニット60の全てが使用可能な状態)の実効電流に対する割合をSPM率(%)として設定する。具体的には、SPM率算出部73は、設定部82より受信した使用可能なキャパシタユニット60の数(Nb)と、記憶部75に記憶されているキャパシタユニットの数(Na)と、1つのキャパシタユニット60の定格電流(Cr(A))と、PWMコンバータ33からの定格出力(Pr(A))と、PWMコンバータに設定されたリミット(L(%))を上記式(1)~(3)に当て嵌めてSPM率を算出する。
【0062】
次に、ステップS105において、トルクリミット算出部74は、使用可能なキャパシタユニット60と工場電源100(より詳細にはPWMコンバータ33からの出力)で供給可能なピーク電流を算出し、算出したピーク電流のキャパシタフル状態(搭載されているキャパシタユニット60の全てが使用可能な状態)のピーク電流に対する割合をトルクリミット率(%)として設定する。
【0063】
トルクリミット算出部74は、具体的には、設定部82より受信した使用可能なキャパシタユニット60の数(Nb)と、記憶部75に記憶されているキャパシタユニットの数(Na)と、PWMコンバータ33からの定格出力(Pr(A))と、サーボモータ21の最大出力(Mw(W))、PWMコンバータ33の下限電圧(Pmi(V))と、1つのキャパシタユニット60の最大電流(Cma(A))と、マージン(%)を上記式(4)~(6)に当て嵌めてトルクリミットを算出する。
【0064】
次に、ステップS106において、表示部分84a~84gに、記憶部75から抽出した値および算出した値が表示される。
以上のように、SPM率およびトルクリミットが算出される。なお、全てのキャパシタユニット60が使用不可になった場合には、Nb=0としてSPM率とトルクリミットが算出される。すなわち、工場電源100からPWMコンバータ33を介して供給される電力のみで動作可能な電流の実効値およびピーク電流となるようなSPM率およびトルクリミットに設定される。
【0065】
(2-3.応急運転モードにおけるプレス動作)
上記ステップS103において、少なくとも1つのキャパシタユニット60に使用不可が設定された場合に、プレス動作を行うときには、コントローラ10は、応急運転モードを実行する。
図9Aおよび図9Bは、プレス装置1の応急運転モードにおける動作を示すフロー図である。図6に示す通常モードと図9Aおよび図9Bに示す応急運転モードは、例えば設定部82における使用不可の設定によって切り換えられる。プレス装置1に搭載されているキャパシタユニット60のうち少なくとも1つのキャパシタユニット60が使用不可に設定された場合、応急運転モードでプレス動作が実行される。また、プレス装置1に搭載されているキャパシタユニット60のうち全てのキャパシタユニット60が使用可能の場合には、通常運転モードでプレス動作が実行される。
【0066】
図9Aおよび図9Bに示す応急運転モードは、図6に示す通常運転モードのステップS15の代わりにステップS15´を有し、ステップS51の代わりにステップS51´を有している。また、応急運転モードは、通常運転モードと比較して、ステップS201、S202およびS203を有している。応急運転モードにおける他のステップは、通常運転モードのステップと同じであるため説明を省略する。
【0067】
応急運転モードにおけるステップS15´においてプレス成形が行われる場合には、コントローラ10は、算出されたSPM率およびトルクリミットを用いた応急運転モードでプレス成形を実行する。
詳細には、SPM率算出部73は、算出したSPM率をプレスモーション制御部72へと送信する。プレスモーション制御部72は、全てのキャパシタユニット60を用いた場合のSPMに対して、送信されたSPM率を乗じたSPMでプレスモーションを行うようにサーボアンプ22に位置指令を送信する。
【0068】
また、トルクリミット算出部74は、算出したトルクリミットでトルクの制限を掛けるようにサーボアンプ22を設定する。
このように、算出されたSPM率およびトルクリミットに基づいてプレス成形が行われる。
ここで、応急運転モードでは、SPMを下げているため使用不可に設定されたキャパシタユニット60を除いた使用可能なキャパシタユニット60および工場電源100から供給される一定電力で実効電流を確保できる。また、応急運転モードでは、トルクリミットを設定しているため、使用不可に設定されたキャパシタユニット60を除いた使用可能なキャパシタユニット60および工場電源100から供給される一定電力でピーク時の電流を確保できる。
【0069】
また、応急運転モードにおけるステップS51´では、使用可能に設定されたキャパシタユニット60について状態検出部71が異常の検出を行う。ここで、使用不可に設定されたキャパシタユニット60では、状態検出部71による異常検出は無効に設定されている。
さらに、応急運転モードでは、上記ステップS10~S14、S15´およびS16~S22並びにステップS51´、S52およびS53と並行して、ステップS201~ステップS203が行われる。ステップS201において、アラーム検出部76が電流センサ61による検出値に基づいて、使用不可に設定されたキャパシタユニット60からDCバスライン14に電流が供給されていることを検出すると、使用不可に設定したキャパシタユニット60の動力線がDCバスライン14から外されていないと判断し、制御はステップS202へすすむ。ステップS202において、アラーム検出部76は、表示画面81にアラームを表示させて、作業者にアラーム検出を報知する。
次に、アラーム検出部76は、制御を停止する。これにより、異常の発生したキャパシタユニット60がDCバスラインから物理的に取り外されていないことを検出でき、その旨を作業者に報知することができる。
【0070】
<3.特徴等>
(3-1)
本実施の形態のプレス装置1は、上金型7と下金型8を用いて材料に対してプレス成形を行うプレス装置であって、スライド2と、ボルスタ3と、サーボモータ21と、複数のキャパシタユニット60と、コントローラ10(制御部の一例)と、を備える。スライド2には、下面に上金型7が取り付けられる。ボルスタ3は、スライド2の下方に配置され下金型8が載置される。サーボモータ21は、スライド2を駆動する。複数のキャパシタユニット60は、複数の電気二重層キャパシタ601を有し、蓄電した電力をサーボモータ21に供給可能である。コントローラ10は、少なくとも一部のキャパシタユニット60が使用されないような設定が複数のキャパシタユニット60について行われた場合、使用されないキャパシタユニット60以外のキャパシタユニット60を用いてプレス成形を行う応急運転モード(運転モードの一例)を実行する。
【0071】
これにより、一部のキャパシタユニット60が使用不可となった場合であっても、使用不可となった以外のキャパシタユニット60を用いて応急運転モードでプレス成形を実行することができる。プレス装置1が自動車の工場生産ラインに用いられている場合、使用者にとって工場生産ラインの完全な停止は望ましくなく、生産能力などを抑制してでも稼動させることを望む場合が多い。本実施の形態のプレス装置1によれば、このような要望に応えることができる。
【0072】
(3-2)
本実施の形態のプレス装置1では、一部のキャパシタユニット60(使用されない一部のキャパシタユニットの一例)が使用不可と設定(選択の一例)されることにより、少なくとも一部のキャパシタユニット60が使用されないような設定が行われる。応急運転モードでは、使用不可と設定されたキャパシタユニット60(選択されたキャパシタユニットの一例)以外のキャパシタユニット60を用いてプレス成形が行われる
これにより、一部のキャパシタユニット60が使用不可となった場合に、そのキャパシタユニット60を使用不可と設定することにより、使用不可となった以外のキャパシタユニット60を用いて応急運転モードでプレス成形を実行することができる。
【0073】
(3-3)
本実施の形態のプレス装置1では、一部のキャパシタユニット60以外のキャパシタユニット60が使用可能と設定(選択の一例)されることにより、少なくとも一部のキャパシタユニット60が使用されないような設定が行われる。応急運転モードでは、使用可能と設定されたキャパシタユニット60(選択されたキャパシタユニットの一例)を用いてプレス成形が行われる、
これにより、一部のキャパシタユニット60が使用不可となった場合に、そのキャパシタユニット60以外のキャパシタユニット60を使用可能と設定することにより、使用不可となった以外のキャパシタユニット60を用いて応急運転モードでプレス成形を実行することができる。
【0074】
(3-4)
本実施の形態のプレス装置1において、応急運転モード(運転モードの一例)では、使用不可に設定されたキャパシタユニット60(使用されないキャパシタユニットの一例)以外のキャパシタユニット60および工場電源100(外部電源の一例)から電力の供給を受けてプレス成形が行われる。
これにより、一部のキャパシタユニット60が使用不可となった場合であっても、使用不可となった以外のキャパシタユニット60および工場電源100からの電力の供給を受けて応急運転モードでプレス成形を実行することができる。
【0075】
(3-5)
本実施の形態のプレス装置1において、応急運転モードでは、使用不可と設定されたキャパシタユニット60(使用されないキャパシタユニットの一例)以外のキャパシタユニット60の数に基づいて、プレス成形の能力に制限がかけられる。
使用可能なキャパシタユニット60の数が少なくなるほど、供給できる電流が小さくなるため、プレス成形の能力にかける制限を大きくすることによって運転モードを実行することができる。
【0076】
(3-6)
本実施の形態のプレス装置1では、コントローラ10(制御部の一例)は、使用不可と設定されたキャパシタユニット60(使用されないキャパシタユニットの一例)以外のキャパシタユニット60が存在しないときにはキャパシタユニット60を用いず工場電源100(外部電源の一例)を用いて応急運転モードを実行する。
例えば、全てのキャパシタユニット60が使用不可になった場合であっても、応急運転モードでプレス成形を実行することができる。
【0077】
(3-7)
本実施の形態のプレス装置1は、プレス成形の能力は、SPMおよびサーボモータ21のトルクの少なくとも一方を含む。
SPM(Shots Per Minute)は、キャパシタユニット60の実効電流に影響を与え、サーボモータ21のトルクは、プレス成形におけるピーク電流に影響を与える。
【0078】
このため、SPMに制限をかけることによって電流の実効値を減らすことができるので、減少した数のキャパシタユニット60から供給される電流およびPWMコンバータ33から出力される電流によって動作に必要な電流をまかなうことができる。また、モータトルクに制限をかけることにより、ピーク電流を減らすことができるため、減少した数のキャパシタユニット60から供給される電流およびPWMコンバータ33から出力される電流によって動作に必要な電流をまかなうことができる。
【0079】
(3-8)
本実施の形態のプレス装置1は、複数のキャパシタユニットの各々に対して使用不可の設定(選択の一例)が行われる設定部82(選択部の一例)を更に備える。
これにより、使用者が設定部82を操作することによって、所定のキャパシタユニット60に対して使用不可の設定を行うことができる。
【0080】
(3-9)
本実施の形態のプレス装置1では、プレス成形の能力は、SPMを含む。コントローラ10は、SPM率算出部73(算出部の一例)と、プレスモーション制御部72とを有する。SPM率算出部73は、全てのキャパシタユニット60および工場電源100(外部電源の一例)を用いた場合のサーボモータ21に供給可能な定格電流値に対する、使用可能なキャパシタユニット60(使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットの一例)および工場電源100を用いた場合のサーボモータ21に供給可能な許容電流値の割合を算出する。プレスモーション制御部72は、割合に基づいて制限をかけられたSPMでプレス成形を行うようにサーボモータ21のモーションを制御する。
これにより、減少した数のキャパシタユニット60でまかなうことができる実効電流値に基づいたSPMを求めることができる。
このため、能力に制限がかけられた状態であるが、減少した数のキャパシタユニット60を用いてプレス成形を行うことができる。
【0081】
(3-10)
本実施の形態のプレス装置1では、プレス成形の能力は、サーボモータ21のトルクを含む。コントローラ10(制御部の一例)は、全てのキャパシタユニット60および工場電源100(外部電源の一例)を用いた場合のサーボモータ21に供給される最大電流に対する、使用可能なキャパシタユニット60(使用されないキャパシタユニット以外のキャパシタユニットの一例)および工場電源100(外部電源の一例)を用いたときのサーボモータ21に供給可能な許容最大電流の割合を算出し、割合に基づいてサーボモータ21のトルクに制限をかける。
これにより、減少した数のキャパシタユニット60でまかなうことができるピーク電流に基づいたトルクリミットを求めることができる。
このため、能力に制限がかけられた状態であるが、減少した数のキャパシタユニット60を用いてプレス成形を行うことができる。
【0082】
(3-11)
本実施の形態のプレス装置1は、電流センサ61(電流計測部の一例)と、アラーム検出部76(検出部の一例)とを更に備える。電流センサ61は、複数のキャパシタユニット60の各々から供給される電流を計測する。アラーム検出部76は、電流センサ61の計測結果に基づいて、設定部82(選択部の一例)において使用不可と設定されたキャパシタユニット60(使用されないキャパシタユニットの一例)から電流が供給されていることを検知した場合に、表示画面81(表示部の一例)にアラームを表示させる。
【0083】
設定部82によって所定のキャパシタユニット60を使用不可に設定するときには、使用不可に設定するキャパシタユニット60のサーボモータ21への電気的接続を物理的に取り外す必要があるが、使用者が接続を取り外し忘れることが考えられる。ここで、使用不可に設定したキャパシタユニット60から電流を検知した場合には、接続を取りはずし忘れていると判断してアラームを報知し、使用者に知らせることができる。
【0084】
(3-12)
本実施の形態のプレス装置1の制御方法は、上金型7が取り付けられるスライド2と、下金型8が載置されるボルスタ3とを備えたプレス装置1を制御するプレス装置の制御方法であって、ステップS15´(実行ステップの一例)を備える。ステップS15´(実行ステップの一例)では、複数の電気二重層キャパシタ601を有し、スライド2を駆動するサーボモータ21に蓄電した電力を供給可能な複数のキャパシタユニット60について、少なくとも一部のキャパシタユニット60が使用されないような設定がされた場合、使用されないキャパシタユニット60以外のキャパシタユニット60を用いてプレス成形を行う応急運転モード(運転モードの一例)を実行する。
【0085】
これにより、一部のキャパシタユニット60が使用不可となった場合であっても、使用不可となった以外のキャパシタユニット60を用いて応急運転モードでプレス成形を実行することができる。プレス装置1が自動車の工場生産ラインに用いられている場合、使用者にとって工場生産ラインの完全な停止は望ましくなく、生産能力などを抑制してでも稼動させることを望む場合が多い。本実施の形態のプレス装置の制御方法によれば、このような要望に応えることができる。
【0086】
<4.他の実施の形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施の形態では、プレスの能力の制限として、SPMとトルクに制限をかけているが、どちらか一方でもよいし、これらに限らず他の制限を設けてもよい。
【0087】
(B)
上記実施の形態では、ステップS51~S53において、電流センサ61および温度センサ62によってキャパシタユニット60の異常を検出しているが、電流センサ61や温度センサ62等が設けられていなくてもよく、センサによる自動検出に限らなくても良い。例えば、定期的な保守点検の際に作業者が異常を検出したキャパシタユニット60に対して使用不可を設定してもよい。
【0088】
(C)
上記実施の形態では、SPM率の算出の際、許容電流値ではPWMコンバータ33からの出力にリミット(L)が設けられていないが、設けられていてもよい。また、トルクリミットの算出の際マージンが設定されているが、マージンが設定されていなくてもよい。
(D)
上記実施の形態では、24個の電気二重層キャパシタ601が直列接続されたキャパシタユニット60が4つ設けられ、4つのキャパシタユニット60が並列に接続されているが、これらの数および接続構成に限定されるものではない。
【0089】
(E)
上記実施の形態では、操作表示部11はタッチパネルであって表示画面81に設定部82が設けられていたが、タッチパネルに限らなくてもよく、設定部82が、例えばキーボードやマウスとして表示画面81と別に設けられていてもよい。
(F)
上記実施の形態では、4つのキャパシタユニット60の定格電流および最大電流が同じであるが、異なっていてもよい。キャパシタユニット60の番号とその定格電流および最大電流が対応付けられていれば、使用可能なキャパシタユニット60の合計における定格電流(式(2)のCr×Nbに対応)および使用可能なキャパシタユニット60の合計における最大電流(式(5)のCma×Nbに対応)を求めることができるため、SPM率およびトルクリミットを算出することができる。
【0090】
(G)
上記実施の形態では、異常が検出されたキャパシタユニット60を使用不可と設定しているが、異常が検出されたものに限らなくてもよい。異常が検出されてないキャパシタユニット60(使用可能なキャパシタユニット60ともいえる)であっても使用しないように設定してもよく、要するに、プレス成形において使用しない(不使用とする)キャパシタユニット60または使用するキャパシタユニット60が選択されればよい。
【0091】
すなわち、上記実施の形態では、各々のキャパシタユニット60について「使用不可」または「使用可能」を設定しているが、これに限らず、「使用する」または「使用しない」を設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のプレス装置およびプレス装置の制御方法は、複数の蓄電デバイスうち一部が使用不可となった場合でもプレス成形を行うことが可能な効果を有し、例えば、工場の生産ラインなどにおいて有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 :プレス装置
2 :スライド
3 :ボルスタ
4 :スライド駆動部
5 :サーボ電源部
6 :蓄電システム部
7 :上金型
8 :下金型
10 :コントローラ
60 :キャパシタユニット
100 :工場電源
601 :電気二重層キャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B