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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】低温液化ガス発生装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 7/04 20060101AFI20220527BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20220527BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20220527BHJP
   F25J 1/02 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
F17C7/04
B01J4/00 103
F25J1/00 D
F25J1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018023852
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019138414
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591176306
【氏名又は名称】アルバック・クライオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】日高 康祐
(72)【発明者】
【氏名】小田 仁
(72)【発明者】
【氏名】松藤 和樹
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-071085(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152238(WO,A1)
【文献】特開昭53-115920(JP,A)
【文献】特開2016-069063(JP,A)
【文献】特開2012-163129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
B01J 4/00
F25J 1/00
F25J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクへ液化すべきガスを導入するガス導入器と、
前記貯留タンクに導入されたガスを冷却して液化する冷凍機を含む冷凍回路と、
前記貯留タンクに連絡し、液化ガスの取出口を先端部に有する送出配管と、
前記送出配管の先端部を着脱可能に保持可能な操作部を有し、前記貯留タンク、前記冷凍回路、前記ガス導入器及び前記送出配管を収容する筐体と
を具備し、
前記送出配管の先端部は、前記取出口の近傍に固定されたハンドルを含み、
前記送出配管は、前記ハンドルを介して前記操作部から前記筐体の外側へ引き出すことが可能に構成され、
前記筐体は、前記操作部を有する正面と、前記正面に対向する背面とを有する縦長の直方体で構成され、
前記送出配管は、前記正面と前記背面との間において前記貯留タンクの上部に架け渡されるアーチ領域と、前記貯留タンクよりも前記背面側に位置し重力方向に垂下する垂下領域とを有する
低温液化ガス発生装置。
【請求項2】
請求項に記載の低温液化ガス発生装置であって、
前記筐体の内部に設けられた張力発生機構をさらに具備し、
前記張力発生機構は、前記アーチ領域に設けられ前記ハンドルの引き出し方向とは逆の方向へ一定荷重を付与する第1の定荷重バネを有する
低温液化ガス発生装置。
【請求項3】
請求項に記載の低温液化ガス発生装置であって、
前記張力発生機構は、前記垂下領域に設けられ前記ハンドルの引き出し方向へ一定の荷重を付与する第2の定荷重バネをさらに有する
低温液化ガス発生装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の低温液化ガス発生装置であって、
前記操作部は、前記ハンドルを磁気的に吸着する保持部を有する
低温液化ガス発生装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載の低温液化ガス発生装置であって、
前記送出配管は、真空断熱層を有する二重構造のフレキシブルホースで構成される
低温液化ガス発生装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載の低温液化ガス発生装置であって、
前記操作部は、前記取出口から送出される低温液化ガスを受容する容器を支持することが可能に構成された支持台を有する
低温液化ガス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体窒素等の低温液化ガスを製造することが可能な低温液化ガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、理科学機器等の冷熱源としての液体窒素を簡易に製造する液体窒素発生装置が知られている。例えば特許文献1には、上部に開口部を有する断熱容器である貯蔵槽と、貯蔵槽に窒素ガスを導入する空気分離装置と、貯蔵槽の開口部に配置され、貯蔵槽に導入された窒素ガスを液化させるコールドヘッドとを備えた簡易液体窒素製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2816959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の液体窒素発生装置は、貯蔵槽と、空気分離装置と、コールドヘッドへ冷媒を循環させる圧縮機ユニット等がそれぞれ別個の装置として床上に設置されるため、装置の設置占有面積が大きいという問題がある。
さらに従来の液体窒素発生装置においては、貯蔵槽内の液体窒素を外部へ取り出すための取出口の位置が固定されているため、供給された液体窒素を受容する容器の種類や大きさに応じて取出口の位置を変更することができない、あるいは、別途用意された接続用ホースを取出口へ接続して液体窒素を取り出す必要があった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、装置の設置占有面積を低減することができるとともに、取出口の位置の変更が可能な低温液化ガス発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る低温液化ガス発生装置は、貯留タンクと、ガス導入器と、冷凍回路と、送出配管と、筐体とを具備する。
前記貯留タンクは、液化ガスを貯留する。
前記ガス導入器は、前記貯留タンクへ液化すべきガスを導入する。
前記冷凍回路は、前記貯留タンクに導入されたガスを冷却して液化する冷凍機を含む。
前記送出配管は、前記貯留タンクに連絡し、液化ガスの流出口を先端部に有する。
前記筐体は、前記液化ガス送出管の先端部を着脱可能に保持可能な操作部を有し、前記貯留タンク、前記冷凍回路、前記ガス導入器及び前記送出配管を収容する。
【0007】
上記低温液化ガス発生装置においては、貯留タンク、冷凍回路、ガス導入器及び送出配管がそれぞれ共通の筐体に収容されているため、装置全体のコンパクト化と設置面積の低減を図ることができる。また、筐体の操作部に送出配管の先端部が着脱可能に構成されているため、取出口の位置の変更が可能となる。
【0008】
前記送出配管の先端部は、前記流出口の近傍に固定されたハンドルをさらに含み、前記送出配管は、前記ハンドルを介して前記操作部から前記筐体の外側へ引き出すことが可能に構成されてもよい。
送出配管が引き出し可能に構成されるため、ハンドルを操作して取出口を任意の位置に移動させることができる。
【0009】
前記筐体は、前記操作部を有する正面と、前記正面に対向する背面とを有する縦長の直方体で構成され、前記送出配管は、前記正面と前記背面との間において前記貯留タンクの上部に架け渡されるアーチ領域と、前記貯留タンクよりも前記背面側に位置し重力方向に垂下する垂下領域とを有してもよい。
筐体を縦長の直方体形状にすることで、内部の各ユニットを三次元的に配置して設置占有面積の低減を図ることができるとともに、送出配管が比較的長尺の場合でも筐体内に効率よく収納することができる。
【0010】
前記液化ガス発生装置は、前記筐体の内部に設けられた張力発生機構をさらに具備してもよい。前記張力発生機構は、前記アーチ領域に設けられ前記ハンドルの引き出し方向とは逆の方向へ一定荷重を付与する第1の定荷重バネを有する。
これにより、引き出された送出配管の筐体内への収納が容易となる。
【0011】
前記張力発生機構は、前記垂下領域に設けられ前記ハンドルの引き出し方向へ一定の荷重を付与する第2の定荷重バネをさらに有してもよい。
これにより、送出配管の垂下領域の引き上げ力がアシストされるため、ハンドルの引き出し操作が容易となる。
【0012】
前記操作部は、前記ハンドルを磁気的に吸着する保持部を有してもよい。
これにより、操作部に対するハンドルの着脱を容易に行うことができる。
【0013】
前記送出配管は、真空断熱層を有する二重管フレキシブルホースで構成されてもよい。
これにより、送出配管内の液化ガスの気化を防止でき、送出配管の長尺化にも対応することが可能となる。
【0014】
前記操作部は、前記取出口から送出される低温液化ガスを受容する容器を支持することが可能に構成された支持台を有してもよい。
これにより、簡便に低温液化ガスを取り出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、装置の設置占有面積を低減することができるとともに、取出口の位置の変更も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る低温液化ガス発生装置を示す全体斜視図である。
図2】上記低温液化ガス発生装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図3】上記低温液化ガス発生装置の要部の側断面図である。
図4図3におけるA-A断面図である。
図5図4におけるB-B断面図である。
図6】上記低温液化ガス発生装置の機能ブロック図である。
図7】上記低温液化ガス発生装置における送出配管の要部側面図である。
図8】上記送出配管が引き出された状態を示す低温液化ガス発生装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る低温液化ガス発生装置を示す全体斜視図である。図においてX軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する3軸方向を示しており、Z軸は鉛直方向に相当する。
本実施形態では、低温液化ガス発生装置として、液体窒素発生装置を例に挙げて説明する。
【0019】
[低温液化ガス発生装置の全体構成]
本実施形態の液体窒素発生装置100は、液体窒素を発生させ、貯留し、取り出すのに必要なすべての機器を収納する筐体10を備える。
本実施形態において、筐体10は、正面11と、背面12と、2つの側面13と、天面14とを有する縦長の直方体で構成される。筐体10の正面11には、液体窒素を外部へ取り出すための操作部20が設けられる。
【0020】
以下、液体窒素発生装置100の全体構成について説明する。図2は、液体窒素発生装置100の構成を概略的に示すブロック図である。
【0021】
図2に示すように、液体窒素発生装置100は、液体窒素を貯留する貯留タンク31と、貯留タンク31へ液化すべきガス(本実施形態では窒素ガス)を導入するガス導入器32と、貯留タンク31へ導入された窒素ガスを冷却して液化させる冷凍機33を含む冷凍回路と、液体窒素の取出口51を先端部に有する送出配管50等を備える。筐体10は、これら貯留タンク31、冷凍回路、ガス導入器32、送出配管50等を内部に収容する。
【0022】
貯留タンク31は、上部に開口部310を有する断熱容器で構成される。開口部310には蓋311が気密に取り付けられている。貯留タンク31は、液体窒素の貯留量を所定範囲に維持するための液面センサ312を有する。液面センサ312の構成は特に限定されず、液面の位置を図示するように2つのセンサを用いて検出する場合のほか、単一の棒状のセンサを用いて検出するようにしてもよい。
【0023】
ガス導入器32は、蓋311を貫通して開口部310に連絡する導入配管41を介して、窒素ガスを貯留タンク31内に導入する。ガス導入器32は、例えば、PSA(Pressure Swing Adsorption)方式により、吸着剤に酸素ガスを吸着して加圧と減圧の操作を交互に繰り返しながら、空気から窒素ガスを取り出す空気分離装置で構成される。筐体10の正面11には、ガス導入器32に取り込まれる空気が通過する通気部11a(図1参照)が設けられる。
【0024】
冷凍機33は、貯留タンク31の蓋311に設置されるとともに、開口部310を介して貯留タンク31内に突出するコールドヘッド33aを有する。冷凍機33は、冷凍機33とともに冷凍回路を構成する圧縮機ユニット34から冷媒ガス(例えばヘリウム)の供給を受け、コールドヘッド33aを極低温(本例では液体窒素の沸点(77K)以下の温度)に維持する。コールドヘッド33aは、導入配管41を介して開口部310に導入された窒素ガスを冷却、液化させる。これにより液体窒素が発生し、貯留タンク31に貯えられる。
【0025】
貯留タンク31の蓋311には、貯留された液体窒素を取り出すための取出用配管42と、貯留タンク31内の上部ガスを排出するための排気用配管43とが接続されている。
取出用配管42は、液体窒素が取り出されるときに開放される開閉弁42vを有する。取出用配管42の一端は、貯留タンク31の底部近傍(液体窒素の液面Lsよりも低い位置)に配置され、他端は後述する送出配管50に接続される。
排気用配管43は、貯留タンク31内の上部ガスを排出するときに開放される開閉弁43vを有する。排気用配管43の一端は、貯留タンク31の開口部310の近傍(液体窒素の液面Lsよりも高い位置)に配置され、他端は筐体10の内部、あるいは筐体10の外部に配置される。
【0026】
図3は、筐体10の内部構造を示す液体窒素発生装置100の要部の側断面図、図4は、図3におけるA-A断面図、図5は、図4におけるB-B断面図である。各図においては、各機器を接続する配管等の図示は省略している。
【0027】
筐体10の内部は、仕切壁17によって上下に区画された2つの室(第1の室15及び第2の室16)を有する。下側の第1の室15には、ガス導入器32、圧縮機ユニット34等が配置され、上側の第2の室16には貯留タンク31、冷凍機33等が配置されている。本実施形態において圧縮機ユニット34は、第1の室15に配置されるが、第2の室16に配置されてもよい。
【0028】
図6は、液体窒素発生装置100の機能ブロック図である。
【0029】
液体窒素発生装置100は、ガス導入器32、圧縮機ユニット34、開閉弁42v,43v等を制御するコントローラ35をさらに備える。コントローラ35は、典型的にはコンピュータで構成される。コントローラ35は、後述する操作部20、液面センサ312等の出力に基づいて、ガス導入器32、圧縮機ユニット34、開閉弁42v,43v等を制御する。
コントローラ35は、本実施形態では第2の室16に設置されるが、これに限られず、第1の室15に設置されてもよい。
【0030】
液体窒素発生装置100は、液体窒素を外部へ取り出すための送出配管50をさらに備える。送出配管50は、筐体10の正面11に設けられた通孔11w(図3参照)を介して筐体10の外側と内側との間にわたって引き回された長尺のフレキシブルホースで構成される。
【0031】
送出配管50は、貯留タンク31に連絡する基端部50a(図4参照)と、液体窒素の取出口51を有する先端部50b(図3参照)とを有する。送出配管50の基端部50aは、筐体10の内部に固定された支持金具18を介して取出用配管42(図2参照)に接続される。送出配管50の先端部50bは、筐体10の外部に設けられた操作部20に着脱可能に保持される。送出配管50は、典型的には、真空断熱層を有する二重構造のフレキシブルホースで構成される。
【0032】
[操作部]
操作部20は、図1及び図3に示すように、正面11の概略中央部に設置される。操作部20は、ケース部21と、保持部22と、支持台23とを有する。
【0033】
ケース部21は、下端が開放された縦長の箱体であり、送出配管50の先端部50bをケース部21の直下から垂れ落とすガイド壁としての機能を有する。ケース部21の前面には、液体窒素の取り出し及びその停止、取り出し量等を設定する複数の操作キーを備えた操作盤24が設置される。
【0034】
保持部22は、ケース部21の下端から突出する送出配管50の先端部50bを着脱可能に保持する。本実施形態において送出配管50の先端部50bは、取出口51の近傍位置に固定されたハンドル52を有し、このハンドル52を介して先端部50bが保持部22に保持される。そして、保持部22は、上下方向に離間して配置された一対のマグネット部Mを有し、これらマグネット部Mを介してハンドル52を磁気的に吸着し、取出口51が下方に向いた姿勢でハンドル52(送出配管50)を保持する。
【0035】
図7は、ハンドル52の構成を示す側面図である。ハンドル52は、ユーザが把持可能な合成樹脂製のグリップ部521と、保持部22の一対のマグネットMに対応するようにグリップ部521の上下に配置された一対の磁性板522とを有する。グリップ部521の上下方向の両端には、金属製の補強板523が取り付けられている。グリップ部521の下端に取り付けられた補強板523は、取出口51から流出する液体窒素の蒸気(冷気)からグリップ部521を保護する保護板としての機能をも有する。
【0036】
グリップ部521は、ユーザが素手であるいはグローブ越しに把持可能な適宜の大きさ及び形状に形成される。グリップ部521の内部には、送出配管50の真空断熱層50cを真空に維持する閉止弁50vが内蔵されている。グリップ部521から取出口51までの送出配管50の長さは特に限定されず、典型的には、100mm前後である。本実施形態では送出配管50として、内径9mm、外径30mmの二重管が用いられるが、径の大きさは勿論これに限られない。
【0037】
支持台23は、保持部22に保持された送出配管50の取出口51から送出される液体窒素を受容する容器1を支持することが可能に構成される。支持台23は、筐体10の正面の適宜の高さ位置に設けられる。支持台23の床面からの高さは特に限定されず、典型的には、ユーザの腰の高さ(約600mm~800mm)に設定される。これにより、ユーザが立位姿勢で液体窒素を取り出すことができる。支持台23は、金属製あるいは合成樹脂製であり、固定式であってもよいし、折り畳み式であってもよいし、液化ガスの飛散を防止するカバーを有していてもよい。
【0038】
操作部20は、非常ボタン25をさらに有する。非常ボタン25は、液体窒素発生装置100を緊急で停止させたいとき等に押圧操作される。非常ボタン25は、本実施形態では、筐体10の正面11の適宜の位置に保持部22と同等の高さで設置されるが、これに限られず、正面11の上部付近に設置されてもよい。
【0039】
[引出し機構]
本実施形態において、送出配管50は、ハンドル52を介して操作部20から筐体10の外側へ引き出すことが可能に構成される。図8は、送出配管50の先端部50b(ハンドル52)を筐体10の外部へ引き出した状態を示す側断面図である。以下、この送出配管50の引出し機構について説明する。
【0040】
送出配管50は、図3及び図4に示すような形態で引き回された状態で筐体10の内部に収容される。より具体的に、送出配管50は、筐体10の正面11と背面12との間において貯留タンク31の上部に架け渡されるアーチ領域501と、貯留タンク31よりも背面12側に位置し重力方向に垂下する垂下領域502とを有する。
【0041】
送出配管50のアーチ領域501は、筐体10の通孔11wと配管ガイド61との間に架け渡された配管部位である。配管ガイド61は、筐体10内部の背面12側において通孔11wよりも高い位置に設置される。配管ガイド61は、例えば、筐体10の第2の室16に立設された支持壁部19(図4,5参照)に設置されたガイド受け62により支持される。
【0042】
一方、送出配管50の垂下領域502は、配管ガイド61から支持金具18(図4参照)との間で垂直方向に折り返された配管部位である。垂下領域502の配管長は、操作部20から引き出されるハンドル52の長さによって変化する(図8参照)。
【0043】
垂下領域502の所定位置には、ハンドル52の引き出し長さを所定以下に制限するストッパ63が取り付けられている。ストッパ63は、ハンドル52の引き出し操作に連動して上昇し、ガイド受け62の下端部62aに当接する距離まで上昇した時点で、ハンドル52の引き出し操作が制限される。ストッパ63がガイド受け62に当接するまでの上昇距離は、ハンドル52の最大引き出し長さに相当する。
【0044】
本実施形態において、ストッパ63の上記上昇距離は、例えば600~700mmであり、この場合の送出配管50の取出口51の床面からの高さ(H)は、例えば、250mm~350mmとなるように保持部22の位置が設定される。
【0045】
本実施形態の液体窒素発生装置100は、筐体10の内部に設けられた張力発生機構70をさらに備える。張力発生機構70は、ハンドル52の引き出し方向とは逆の方向へ一定荷重を付与する第1の定荷重バネ71を有する。第1の定荷重バネ71は、送出配管50のアーチ領域501に設けられる。より具体的に、第1の定荷重バネ71は、筐体10の天面14の内壁面に固定され、送出配管50のアーチ領域501の所定位置に取り付けられた固定具712に一端が固定されたワイヤ711を有する。ワイヤ711は、配管ガイド61の上部に設置された滑車713に支持される。
【0046】
第1の定荷重バネ71は、典型的には、巻取式のゼンマイバネで構成される。第1の定荷重バネ71により、送出配管50の引出し長に依存することなく一定の引出し力で送出配管50を引き出すことができる。また、引き出された送出配管50を、筐体10の内部に向けて自動的に引き戻すことができる。
【0047】
第1の定荷重バネ71は、一方向回転機構部714(図5参照)をさらに有してもよい。一方向回転機構部714は、典型的には、ワイヤ711の繰り出し操作に連動して回転するラッチ歯を有し、所定の繰り出し単位長さでワイヤ711をその位置に保持することが可能に構成される。これにより、送出配管50を任意の長さで引き出すことができる。一方向回転機構部714によるラッチ解除の機構は特に限定されず、送出配管50に引き出し操作に連動して解除される機構、適宜のキー操作によって解除される機構等が採用可能である。
【0048】
張力発生機構70はさらに、ハンドル52の引き出し方向へ一定の荷重を付与する第2の定荷重バネ72を有する。第2の定荷重バネ72は、送出配管50の垂下領域502に設けられる。より具体的に、第2の定荷重バネ72は、筐体10の天面14の内壁面に固定され、送出配管50の垂下領域502の所定位置に取り付けられた固定具(本実施形態ではストッパ63)に一端が固定されたワイヤ721を有する。
【0049】
第1の定荷重バネ72は、第1の定荷重バネ71と同様に、巻取式のゼンマイバネで構成される。第2の定荷重バネ72により、送出配管50の垂下領域502の引き上げ力がアシストされるため、ハンドル52の引き出し操作が容易となる。
【0050】
第1の定荷重バネ71及び第2の定荷重バネ72のバネ力は特に限定されず、これらの間の大小関係も問われない。例えば、垂下領域502の長さが大きいほど、ハンドル52を操作部20側へ引き戻す力が強くなる。この場合は、第1の定荷重バネ71は、第2の定荷重バネ72よりもバネ力を小さくすることができる。
【0051】
[低温液化ガス発生装置の動作]
次に、本実施形態の液体窒素発生装置100の典型的な動作について説明する。
【0052】
液体窒素発生装置100においては、ガス導入器32によって貯留タンク31へ窒素ガスが導入される。このとき、取出用配管42の開閉弁42vは閉じられ、排気用配管43の開閉弁43vは開放される。貯留タンク31へ導入された窒素ガスは、コールドヘッド33aによって冷却、液化し、貯留タンク31内へ貯留される。液化されずに残留するガスは、排気用配管43を介して貯留タンク31の外部へ排気される。液体窒素の貯留量が所定以上になったことを液面センサ312によって検出されると、冷凍機33は停止する。このとき、圧縮機ユニット34及びガス導入器32は停止してもよい。
【0053】
操作盤24上の液体窒素取出し用の操作キーが入力されると、取出用配管42の開閉弁42vは開放され、排気用配管43の開閉弁43vが閉じられる。これにより、ガス導入器32から供給される窒素ガスで貯留タンク31の内圧が上昇し、液体窒素が取出用配管42及び送出配管50を介して取出口51に向けて送出される。液体窒素取出し停止用の操作キーが入力されると、取出用配管42の開閉弁42vは閉じられ、排気用配管43の開閉弁43vが開放されることで、液体窒素の取出しが停止する。
【0054】
ここで、図1及び図3に示すように、送出配管50のハンドル52が保持部22に保持されている場合、取出口51から流出した液体窒素は、支持台23に載置された容器1に受容される。この場合、容器1の容量が既知の場合、液体窒素の送出量が容器1を充填する程度の所定値に達した時点で液体窒素の取出し操作が自動的に終了するように構成されてもよい。
【0055】
一方、図7に示すようにハンドル52を介して送出配管50を操作部20から引き出して、取出口51の位置や高さを変更することができる。例えば、液体窒素を受容する容器が支持台23に設置できないほど大型である場合などは、送出配管50の取出口51を床面に向けて引き出すことで、床面上に載置した容器に向けて液体窒素が供給される。
【0056】
本実施形態の液体窒素発生装置100によれば、貯留タンク31、冷凍機33及び圧縮機ユニット34を含む冷凍回路、ガス導入器32及び送出配管50がそれぞれ共通の筐体10に収容されているため、装置全体のコンパクト化と設置面積の低減を図ることができる。特に、これらが筐体10の上下に区画された第1及び第2の室15,16に3次元的に配置されているため、筐体10内への収納効率が高まり、設置スペースの低減に貢献することができる。
【0057】
また、筐体10の正面に設けられた操作部20に送出配管50の先端部50bが着脱可能に構成されているため、液体窒素の取出口51の位置の変更が可能となる。特に、送出配管50が筐体10から引き出し可能に構成されているため、別途の接続用ホースを必要とすることなく、容器の種類や大きさに応じて液体窒素の取出口51の高さ位置を容易に調整することができる。
【0058】
さらに本実施形態によれば、送出配管50がアーチ領域501と垂下領域502とを有するため、送出配管50が比較的長尺の場合であっても、筐体10内の限られたスペースに効率よく送出配管50を収納することができる。
【0059】
そして、張力発生機構70(第1の定荷重バネ71、第2の定荷重バネ72)により、送出配管50の各部に所定方向へ適宜の張力が付与されているため、送出配管50が比較的長尺の場合であっても、送出配管50の自重(及びその内部の液体窒素の重量)による取り扱い性の低下を抑えて、送出配管50の引き出し操作及び引き戻し操作を容易に行うことができる。
【0060】
しかも、送出配管50が真空断熱層50cを有する二重配管のフレキシブルホースで構成されているため、送出配管50が比較的長尺の場合であっても、貯留タンク31から取出口51までの間での送出配管50内における液体窒素の気化を抑えて、液体窒素を安定に供給することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0062】
例えば以上の実施形態では、低温液化ガス発生装置として、液体窒素発生装置100を例に挙げて説明したが、これに限られず、液体酸素、液体空気等の他の低温液化ガス発生装置にも本発明は適用可能である。
【0063】
また、送出配管50の引き出し長を検出可能なセンサ、あるいは、ハンドル52が保持部22に保持された収納位置にあるかどうかを検出可能なセンサが備えられてもよい。この場合、ハンドル52が上記収納位置にあるときとないときとで、液体窒素の取出し量を自動的に調整することが可能である。また、支持台23上の容器1の有無を検出するセンサがさらに備えられてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…筐体
20…操作部
22…保持部
23…支持台
31…貯留タンク
32…ガス導入器
33…冷凍機
34…圧縮機ユニット
50…送出配管
501…アーチ領域
502…垂下領域
50b…先端部
51…取出口
52…ハンドル
70…張力発生機構
71…第1の定荷重バネ
72…第2の定荷重バネ
100…液体窒素発生装置(低温液化ガス発生装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8