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特許7080072電子機器冷却装置およびコジェネレーション型空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】電子機器冷却装置およびコジェネレーション型空調システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20220527BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20220527BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20220527BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220527BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
G06F1/20 B
G06F1/20 A
G06F1/20 C
F24F3/044
F24F3/14
H05K7/20 U
B01D53/26 220
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018040045
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2019153241
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509226783
【氏名又は名称】株式会社IDCフロンティア
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 巌
(72)【発明者】
【氏名】中西 重能
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-511216(JP,A)
【文献】特開2005-127544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
F24F 3/00 - 3/167
B01D 53/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子機器を冷却する電子機器冷却装置であって、
前記複数の電子機器を密閉した状態で収容する電子機器収容部と、
前記電子機器収容部内に、前記電子機器を冷却する冷却気体を供給する冷却気体供給部と、
前記電子機器収容部内に供給された冷却気体の湿度制御を行うデシカント空調機と、
前記電子機器に対して、前記電子機器を冷却する冷却液体を供給する冷却液体吹付部と、
前記冷却液体吹付部により、前記電子機器に吹き付けられた冷却後の冷却液体を回収する液回収槽と、
前記液回収槽内の冷却液体と熱交換を行うことにより、前記冷却液体を冷却する熱交換器と、
前記冷却気体の循環流路中に設けられ、前記熱交換器により冷却された冷却液体を、前記循環流路中で熱交換させて前記冷却気体を冷却する冷却気体冷却部と、
を備えることを特徴とする電子機器冷却装置。
【請求項2】
請求項に記載の電子機器冷却装置において、
前記冷却気体冷却部は、
前記冷却気体の循環流路中で前記冷却気体と熱交換を行う熱交換板と、
前記熱交換板に冷却された冷却液体を流下する冷却液体流下部と、
を備えることを特徴とする電子機器冷却装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の電子機器冷却装置と、
前記電子機器冷却装置に接続されるコジェネレーション装置と、
を備え、
前記コジェネレーション装置は、蒸気および温水の少なくともいずれかの熱を利用して発電する発電装置を備え
前記電子機器冷却装置を構成するデシカント空調機は、前記発電装置に使用された蒸気および温水の少なくともいずれかを利用して、湿度制御を行うことを特徴とするコジェネレーション型空調システム。
【請求項4】
請求項に記載のコジェネレーション型空調システムにおいて、
前記発電装置により発電された電気エネルギは、前記デシカント空調機に供給されることを特徴とするコジェネレーション型空調システム。
【請求項5】
請求項または請求項に記載のコジェネレーション型空調システムにおいて、
前記発電装置により発電された電気エネルギは、前記電子機器に供給されることを特徴とするコジェネレーション型空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器冷却装置およびコジェネレーション型空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のサーバ装置が設置されたデータセンター等において、サーバ装置をフロリナート(3M社の登録商標)等の冷却液で冷却する油冷式の冷却装置が知られている。
たとえば、特許文献1に記載の冷却装置は,冷却液を貯留する液浸槽を備え、液浸槽内の冷却液中に情報処理装置(サーバ装置)を浸漬している。サーバ装置の熱が冷却液と熱交換することにより、サーバ装置が冷却される。
これに対して、複数のサーバ装置が設置されたデータセンターにおいて、それぞれのサーバ装置に冷却気体を吹き付けることにより、サーバ装置を冷却する冷却装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-191431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、冷却液に対してサーバ装置等の電子機器を浸漬させることで、電子機器の冷却効率は高い。しかしながら、データセンターには、非常に多くのサーバ装置が設置されており、これらのサーバ装置の全てを冷却液に含浸させるためには、大量の冷却液が必要になり、コスト高となる。また、冷却槽の冷却液を安全に維持するための専用の装置が必要となり、冷却液のメンテナンス(例えば冷却等)に係る費用も高くなる。
【0005】
一方、冷却気体をサーバ装置に吹き付けて冷却する冷却装置では、このような専用品を必要としないので、冷却装置の製造コストを安くすることができる。
しかしながら、このような冷却装置では、外部から供給しても、循環させる場合であっても、冷却空気中に水分を含むことがある。
冷却中に電子機器に結露が生じた場合、電子機器に錆等が発生したり、電子部品の回路がショートしたりする可能性があり、電子機器が正常に機能しなくなる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、サーバ等の電子機器に、結露等により異常を生じさせることがない電子機器冷却装置、およびコジェネレーション型空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子機器冷却装置は、電子機器を冷却する電子機器冷却装置であって、前記電子機器を密閉した状態で収容する電子機器収容部と、前記電子機器収容部内に、前記電子機器を冷却する冷却気体を供給する冷却気体供給部と、前記電子機器収容部内に供給された冷却気体の湿度制御を行うデシカント空調機と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、デシカント空調機により、電子機器収容部内を循環する冷却気体の湿度制御を行っている。したがって、電子機器収容部内部の湿度を制御することにより、電子機器収容部の内部に収容された電子機器に結露が発生することを防止でき、電子機器に異常が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る電子機器冷却装置を備えたデータセンターの概略構成を示す平面図。
図2】本実施の形態の電子機器冷却装置を説明するためのデータセンターの模式断面図。
図3】本実施の形態のデシカント空調機の構造を示す模式図。
図4】本実施の形態のデシカント空調機における除湿の原理を示す模式図。
図5】本実施の形態のコジェネレーション型空調システムの構造を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[1]データセンター1の全体構成
[1-1]データセンター1の概略構成
図1は、本実施形態の電子機器冷却装置10を備えたデータセンター1の概略構成を示す平面図である。また、図2は、本実施形態の電子機器冷却装置10の概略を説明するためのデータセンター1の概略断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のデータセンター1は、サーバ室20と、回収室11とを備える。また、回収室11は、サーバ装置27を冷却する電子機器冷却装置10の一部を構成する液回収槽としての貯油槽14を備える。なお、本実施形態の電子機器冷却装置10は、冷却油供給部12、エア供給部13、貯油槽14、エア回収部15、エア冷却部16(図2参照)、液輸送部17、エア輸送部18、および冷却制御部19(図2参照)により構成されている。
【0012】
サーバ室20は、床部21、床部21に対向する天井部22(図2参照)、および床部21および天井部22の間に設けられ、サーバ室20の四方を囲み、サーバ室20の内部空間(サーバ室空間A1)を形成する壁部23A、23B、23Cを有する。つまり、床部21、天井部22、および壁部23A、23B、23Cは、本発明にいう複数のサーバ装置27を密閉した状態で収容する電子機器収容部を構成する。
【0013】
[1-2]床部21の構造
床部21は、図2に示すように、床面部24と、床面部24の下方(鉛直下側)に配置された循環室25とを備える。
床面部24は、壁部23B、23Cに連続する水平な第一床241と、第一床241に連続する機器配置部242を有する。
【0014】
機器配置部242は、サーバ室空間A1と循環室25とを連通する床材(例えばグレーチング等の連通床242A)を含んで構成されている。また、機器配置部242の外周には、第一床241と機器配置部242との段差を埋めるジョイステップ部材242B等が配置されてもよい。
【0015】
機器配置部242には、複数のラック26が配置されている。ラック26は、たとえば、内部に複数の電子機器(例えばサーバ装置27)を収納する収容体である。ラック26に収容されるサーバ装置27は、図2に示すように、高さ(Z方向の寸法)が幅(X方向の寸法)および奥行き(Y方向の寸法)に対して小さい薄型箱状に構成されており、ラック26において、Z方向に複数並べられて収容される。
【0016】
なお、このラック26は、たとえば±Y側が開口し、当該開口から複数のサーバ装置27が露出する状態で、サーバ装置27を保持する。これにより、冷却油(冷却液)やエア(冷却気体)を、ラック26の例えば+Y側の開口から-Y側の開口に流す(或いは、-Y側の開口から+Y側の開口に流す)ことができ、ラック26内のサーバ装置27を効率的に冷却することが可能となる。
【0017】
機器配置部242におけるラック26の配置位置に関しては特に限定されないが、本実施の形態では、ラック26の配置位置に対応して、後述する冷却油供給部12やエア供給部13が配置される。つまり、ラック26は、データセンター1に設けられた冷却油供給部12やエア供給部13の位置に応じて適宜配置される。
本実施の形態では、ラック26は、図1に示すように、一方向(例えばX方向)に沿って複数のラック26が配置されることで1つのラック列26Aが構成され、当該ラック列26AがX方向に交差する方向(X方向)に沿って複数配置される。
【0018】
また、本実施の形態では、サーバ室20の+X側に回収室11が配置され、冷却油およびエアが回収される。この場合、回収室11が設けられる+X側の壁部23Aと、ラック列26Aの+X側端部に配置されたラック26との間には、所定の間隔X1(例えば2m程度)の排気空間A2が形成されることが好ましい。つまり、ラック列26Aの+X側端部に配置されるラック26は、壁部23AからX1の距離だけ離れて配置されている。
【0019】
さらに、X方向に隣り合うラック列26Aの間、+X側端部に配置されるラック列26Aと+X側の壁部23Bとの間、および、-X側端部に配置されるラック列26Aと-X側の壁部23Cとの間には、熱仕切243が設けられる。熱仕切243は、例えば簡易カーテン等により構成することができ、ラック列26Aの+X側端部(回収室11側)に設けられている。これにより、サーバ室20の+X側の空間(排気空間A2)に流れたエア(熱せられたエア)がサーバ装置27側に戻る不都合が抑制される。
【0020】
さらには、サーバ室20の回収室11に隣接する壁部23Aには、回収室11と連通する排熱孔231が設けられる。サーバ装置27で熱せられたエアは、排熱孔231から回収室11側に排気させることが可能となる。
そして、本実施の形態では、サーバ室20の排熱孔231に隣接してデシカント空調機30が設けられている。詳しくは後述するが、デシカント空調機30は、サーバ室20から回収室11側に抜け、冷却気体となるエアを除湿する装置である。
【0021】
本実施の形態のように、サーバ装置27に対して冷却油を直接かけ流す場合、冷却油やエアに水分が含まれることは好ましくない。デシカント空調機30を設けることで、循環するエアの水分を除去することができ、水分の結露によるサーバ装置27に錆が発生したり、ショート等による故障を抑制することができる。冷却油に水分が含まれる場合でも、冷却油の水分が水蒸気となり、エアに含まれた際にデシカント空調機30により除去することができる。
【0022】
[1-3]循環室25の構成
循環室25は、床面部24の下方に配置されて、機器配置部242の連通床242Aから流れ落ちる冷却油(冷却液)を回収室11の貯油槽14に流す。
具体的には、循環室25は、貯油槽14に向かって斜め下方向に傾斜し、貯油槽14に接続される傾斜面111を有する。床面部24から流れ落ちた冷却油は、循環室25の傾斜面111に沿って流されることで、貯油槽14に送られる。
貯油槽14には、熱交換器141が設けられ、熱交換器141の配管内に冷水を流すことにより、貯油槽14内の冷却油が冷却される。
【0023】
また、本実施の形態では、サーバ室20の天井部22側から、サーバ装置27を冷却する冷却気体(エア)が送風される。そして、サーバ装置27により加熱されたエアも、床面部24から循環室25に送られ、循環室25を通過して回収室11へと流される。この際、サーバ装置27で熱せられた冷却油からエアに放熱が行われることで、冷却油の温度が有る程度低減させられる。また、冷却油に水分が含まれる場合、冷却油の放熱時に水蒸気としてエアに放出される。エアに放出された水蒸気は、上述のようにデシカント空調機30により除湿される。
なお、サーバ室20の熱仕切243より+X側では、循環室25から熱せられたエアの一部が、排気空間A2側に移動し、排気空間A2から排熱孔231を通って回収室11に流れる。
【0024】
[1-4]天井部22の構成
天井部22には、機器配置部242の上方で、各ラック26のサーバ装置27が露出する開口に向かって、冷却油供給部12およびエア供給部13が設けられている。また、天井部22には、冷却油供給部12に冷却油を送る液輸送部17、およびエア供給部13にエアを送るエア輸送部18が設けられている。
【0025】
(1)冷却油供給部12および液輸送部17の構成
冷却油供給部12は、電子機器冷却装置10を構成する本発明の冷却液体供給部であり、冷却液である冷却油をサーバ装置27に流下する。この冷却油供給部12は、冷却油を流下させるノズル121と、当該ノズル121の角度や冷却油の供給を制御するノズル制御機構122と、を備える。冷却油供給部12は、液輸送部17によって貯油槽14に接続され、貯油槽14に貯留される冷却油が供給される。
【0026】
冷却液体吹付部としてのノズル121は、たとえば、冷却油を霧状にして噴霧する開口径としてもよいが、この場合、サーバ装置27で熱せられた冷却油が他のサーバ装置27(例えば、X方向やY方向の隣り合うラック26内のサーバ装置27)に飛散する場合がある。このため、ノズル121は開口寸法が、所定寸法以下に形成されており、ノズル121から供給された冷却油は、冷却対象とするサーバ装置27に直接流しかけるように、流下される。
【0027】
また、ノズル制御機構122は、たとえば、ノズル121または液輸送部17に設けられた弁(図示略)を開閉することで、ノズル121から冷却油を流下させる。さらに、ノズル制御機構122は、ステッピングモータ等によってノズル121の角度を変更する回転機構(図示略)を備える。これにより、ノズル121から、ラック26内の所望のサーバ装置27に冷却油が直接流下されるように、冷却油の流下方向を制御する。
【0028】
また、ラック26内の各サーバ装置27に対応して、それぞれ個別にノズル121が設けられていてもよい。この場合、ノズル制御機構122は、ターゲットのサーバ装置27に対応するノズル121を選択して冷却油を流すことが可能となる。
【0029】
液輸送部17は、貯油槽14と冷却油供給部12とを接続する冷却油配管171と、貯油槽14の冷却油を送り出すポンプ172と、を備える。ポンプ172は、所定の駆動量(送り出し量)で冷却油を送り出してもよく、例えば冷却制御部19の制御により、送り出し量が可変となる構成としてもよい。
【0030】
(2)冷却油について
次に、冷却油供給部12から供給される冷却油について説明する。
冷却油は、サーバ装置27等の電子機器を冷却する冷却液であり、冷却対象としての電子機器(サーバ装置27等)に直接触れることで、サーバ装置27の熱を奪って冷却する。このため、電子機器のショートを防止する必要から、冷却油として、絶縁性を有し、かつ熱交換率が高い液体が選択される。具体的には、JISC2101の電気絶縁油試験方法にクリアし、JISC2320、IEC60296、およびIEEE基準を満たし、かつ、引火点および発火点が90℃より高い電気絶縁油を用いる。このような電気絶縁油として、たとえば、フロリナート(3M社の登録商標)等を挙げることができる。
【0031】
(3)エア供給部13およびエア輸送部18の構成
エア供給部13およびエア輸送部18は、電子機器冷却装置10を構成する本発明の冷却気体供給部であり、冷却気体であるエア(空気)を、サーバ装置27が収容されたサーバ室空間A1内に供給する。
エア供給部13は、ラック26に向かってエアを吹き付ける冷却ファン131と、冷却ファン131の駆動を制御するファン制御部132と、を備える。
また、エア輸送部18は、エア供給部13とエア回収部15とを接続し、エア回収部15のエアをエア供給部13に送り出すダクトである。このエア輸送部18は、たとえばエアフィルター等を備え、エアに含まれる粉塵等の異物を除去可能な構成とすることがより好ましい。
冷却ファン131は、エアの導入方向(吹き付け方向)を制御可能な角度変更機構を有していてもよい。この場合、ターゲットとなるサーバ装置27に対してエアを直接吹き付けることが可能となる。
【0032】
(4)エア回収部15の構成
回収室11のうち、貯油槽14の上方に形成される空間であるエア回収部15は、サーバ室20から送られるエアを滞留させる空間となる。このエア回収部15には、熱せられたエアを冷却するエア冷却部16が設けられている。
具体的には、本発明の冷却気体冷却部となるエア冷却部16は、図2に示すように、回収室11内に配置された複数の冷却油充填板161と、冷却油充填板161の上方に設けられた第二冷却油供給部162と、を備える。
【0033】
本発明の熱交換板となる冷却油充填板161は、たとえば、天井部22から吊り下げることで配置されていてもよく、回収室11の壁面から室内側に突出して配置されていてもよい。この冷却油充填板161は、第二冷却油供給部162からかけ流される冷却油を保持し、冷却油とエアと間で熱交換させることで、熱せられたエアを冷却する。
冷却油充填板161としては、たとえば、冷却油を保持する吸収材により構成されていてもよく、表面に複数のフィン部材等が突出して、表面形状が凹凸となり、凹部に冷却油が保持される構成としてもよい。フィン部材を形成する場合、冷却油とエアとの接触面積が増大し、より効果的にエアを冷却することができる。
【0034】
本発明の冷却液体流下部となる第二冷却油供給部162は、たとえばポンプ172に接続され、貯油槽14から送られてきた冷却液を吐出して、冷却油充填板161に向かって流下または噴霧させる。
なお、ここでは、ポンプ172により汲み出された冷却液を第二冷却油供給部162から流下させる例を示すが、冷却油供給部12とは別の循環経路にて、貯油槽14の冷却液が第二冷却油供給部162に送られる構成としてもよい。
【0035】
本実施の形態では、貯油槽14の上方にエア回収部15およびエア冷却部16が設けられることで、第二冷却油供給部162から流下され、冷却油充填板161に充填されなかった冷却油や、冷却油充填板161で熱交換された冷却油が、そのまま貯油槽14に流れ落ちる。この際、エアに含まれる粉塵等の異物は冷却油によって洗い流される。
また、回収室11の天井には、回収室11と連通するエア輸送部18が設けられる。また、回収室11のエア輸送部18との接続位置に、エアを送り出すファン181が設けられてもよい。
そして、エア供給部13、エア輸送部18、およびエア回収部15によって、冷却気体の循環流路が構成される。
【0036】
[2]デシカント空調機30の構成
デシカント空調機30は、前述したようにサーバ室20の排熱孔231に接続され、排熱孔231からの冷却後の空気中の湿度制御を行う。デシカント空調機30は、図3に示すように、ケーシング内に収容されるデシカントロータ31および再生用加熱器32を備える。
【0037】
デシカントロータ31は、円柱状体から構成され、円柱の中心を軸として回転可能に保持されている。デシカントロータ31は、図示を略したモータ等の駆動源によって回転しながら湿分Mを含む空気との間で湿分Mを交換し、空気中の水分を除去する。デシカントロータ31の円柱状体を構成する材料としては、シリカゲル、ゼオライト、活性炭等種々のものを採用することができるが、とりわけ好ましいのが、高分子吸着剤である。
【0038】
高分子吸着剤を用いたデシカントロータ31は、図4(A)、(B)に示すように、不織布等の通気性素材から構成される収容部中に高分子吸着剤Paを封入して構成される。
デシカントロータ31に湿分Mを含む空気Ainが通過すると、図4(A)に示すように、高分子吸着剤Paが水分HOを吸着して、膨潤する。一方、デシカントロータ31に熱が加えられると、デシカントロータ31は、水分HOを脱離して元の水分吸着可能な状態に復元される。
再生用加熱器32は、デシカントロータ31を加熱して、デシカントロータ31の水分吸着能力を再生する。本実施の形態における再生用加熱器32は、外部から供給される温水、蒸気等と熱交換を行うことにより、デシカントロータ31の再生加熱を行っている。
【0039】
[3]コジェネレーション装置4の構成
図5には、本発明の実施の形態に係るコジェネレーション型空調システムが示されている。コジェネレーション型空調システムは、デシカント空調機30に、余剰蒸気および余剰温水により発電を行うコジェネレーション装置4が接続されて構成される。なお、図5において、▽の記号は電力系統の流れ、C、CRは冷水系統の流れ、CD、CDRは冷却水系統の流れ、Sは蒸気系統の流れ、Hは温水系統の流れを表している。
【0040】
コジェネレーション装置4は、コジェネレーション制御装置5、蒸気発電装置6、温水発電装置7、電力供給装置8を備え、冷却装置9に電力を供給する。
コジェネレーション制御装置5は、コジェネレーション装置4の全体を制御する制御手段として機能する。また、コジェネレーション制御装置5は、コジェネレーション装置4の発電状況、電力使用状況に応じて、製鉄所、工場等で発生した余剰蒸気、余剰温水のコジェネレーション装置4への取り込みを制御する。
【0041】
蒸気発電装置6は、コジェネレーション制御装置5により取り込まれた余剰蒸気を利用して発電する。蒸気発電装置6は、蒸気発電管理装置61、蒸気発電蓄電装置62、および減圧弁制御装置63を備える。
蒸気発電管理装置61は、蒸気発電装置6を駆動制御するコントローラとして機能する。蒸気発電蓄電装置62は、蒸気タービンおよび蓄電器を備え、余剰蒸気によりタービンを回転させて発電を行い、発電された電力は蓄電器に蓄電される。
減圧弁制御装置63は、蒸気発電蓄電装置62に供給される余剰蒸気の圧力を制御する。蒸気発電装置6により発電された電力は、電力供給装置8に供給される。
【0042】
温水発電装置7は、コジェネレーション制御装置5により取り込まれた余剰温水を利用して発電する。温水発電装置7は、温水発電管理装置71および温水発電蓄電装置72を備える。
温水発電管理装置71は、温水発電装置7を駆動制御するコントローラとして機能する。温水発電蓄電装置72は、ペルチェ素子等の熱電変換モジュールおよび蓄電器を備え、余剰温水の熱を熱電変換モジュールの一方の面に与え、他方を常温に維持、または冷却することにより、熱電変換モジュールに温度勾配が生じて発電を行い、発電された電力は蓄電器に蓄電される。温水発電装置7により発電された電力は、電力供給装置8に供給される。
【0043】
電力供給装置8は、蒸気発電装置6および温水発電装置7から供給された電気エネルギとしての電力を、冷却装置9、データセンター1、およびデシカント空調機30に分配する。電力供給装置8は、分電盤81、空調機器電力系統供給手段82、および情報処理装置電力系統供給手段83を備える。
分電盤81は、蒸気発電装置6および温水発電装置7から供給された電力を、空調機器電力系統供給手段82および情報処理装置電力系統供給手段83に分配する。また、分電盤81には、常用電力供給手段8Aおよび非常用電力供給手段8Bが接続されている。
常用電力供給手段8Aは、電力会社等から供給される外部商用電源から分電盤81に電力を供給する。非常用電力供給手段8Bは、発電装置またはUPS(Uninterruptible Power Supply)等から構成され、外部商用電源からの電力供給が遮断された場合に、非常用電源として、分電盤81に電力を供給する。
【0044】
空調機器電力系統供給手段82は、分電盤81で分配された二相交流の電力を、三相交流の電力に変換し、三相交流のポンプ、ファン等の駆動装置に供給する。本実施の形態では、空調機器電力系統供給手段82は、三相交流に変換した電力を、冷却装置9およびデシカント空調機30に供給する。
蒸気発電装置6および温水発電装置7で使用された蒸気、温水は、蒸気減圧/高温水装置90に供給される。蒸気減圧/高温水装置90は、供給された蒸気、温水を冷凍機91に供給する。
【0045】
冷却装置9は、冷凍機91および冷却塔92を備える。冷凍機91は、空調機器電力系統供給手段82から供給される電力により、コンプレッサー等の流体圧縮機を駆動して、ヒートポンプの原理などにより、冷却媒体となる冷却水を冷却する。
冷凍機91によって冷却された冷水の一部は、貯油槽14に設けられた熱交換器141に供給され、冷却油との間で熱交換を行うことにより、冷却油が冷却される。
【0046】
冷水の他の一部は、蒸気減圧装置90Aおよび高温水装置90Bを介して、デシカント空調機30に供給される。さらに冷水の他の一部は、熱エネルギ蓄積部としての蓄熱手段93に供給される。
蓄熱手段93に供給された冷水は、デシカント空調機30に供給され、熱交換に用いられてデシカント空調機30の再生用加熱器32の熱源として用いられる。
冷却塔92は、冷凍機91の熱交換により暖められた冷却水を大気に接触させて冷却する。
【0047】
情報処理装置電力系統供給手段83は、分電盤81で分配された電力を、データセンター1に供給する。データセンター1は、情報処理装置電力系統供給手段83により供給された電力を動力源として、サーバ装置27等のハードウェア機器を駆動する。また、データセンター1は、この電力をデータセンター1内に設置された冷却制御部19およびデシカント空調機30のコントローラに供給し、データセンター1内の冷却空気の温度制御、除湿制御、冷却油の温度制御、冷却油の流量制御等を行う。
【0048】
[4]実施の形態の作用および効果
[4-1]電力系統の流れ
蒸気発電装置6および温水発電装置7により発電された電力は、電力供給装置8に供給される。電力供給装置8の分電盤81は、電力を空調機器電力系統供給手段82および情報処理装置電力系統供給手段83に分配する。
情報処理装置電力系統供給手段83は、分配されたさらに電力を、データセンター1のサーバ装置27、デシカント空調機30のコントローラに供給する。
空調機器電力系統供給手段82は、分配された電力を、冷却装置9に供給する。
【0049】
[4-2]排出蒸気・排出温水の流れ
冷却装置9の冷凍機91は、供給された電力を動力源とするだけでなく、蒸気発電装置6から排出された蒸気、および温水発電装置7から排出された温水を動力源として利用することができる。
【0050】
蒸気減圧装置90Aは、蒸気発電装置6から排出された蒸気を、デシカント空調機30の再生用加熱器32に供給する。同様に、高温水装置90Bは、温水発電装置7から排出された高温水を、デシカント空調機30の再生用加熱器32に供給する。再生用加熱器32は、デシカントロータ31を加熱し、デシカントロータ31中の湿分を分離して、データセンター1の外部に排出し、デシカントロータ31を再生する。
【0051】
[4-3]実施の形態の効果
このような本実施の形態によれば、以下のような効果がある。
デシカント空調機30が、データセンター1のサーバ室空間A1に設置されることにより、データセンター1内を循環する冷却空気の湿度を制御することができる。したがって、サーバ室20内のサーバ装置27に結露等が生じ、サーバ装置27に錆やカビなどが発生したり、ショートなどによるサーバ装置27の故障が生じたりすることを防止できる。
【0052】
電子機器冷却装置10が、サーバ装置27に冷却油を流下して冷却するとともに、冷却空気を循環させてサーバ装置27を冷却している。したがって、浸漬型の冷却装置に比較して、冷却油の材料コストを大幅に削減することができる。
冷却油充填板161が、第二冷却油供給部162からかけ流される冷却油によって冷却される。したがって、エアの冷却機構を別途設ける必要がない。また、エアを循環させて冷却するので、エアに異物、水分が混入することを防止できる
【0053】
データセンター1内の電子機器冷却装置10を構成するデシカント空調機30には、コジェネレーション装置4が接続されている。そして、コジェネレーション装置4で発電された電力が、デシカント空調機30に供給されるようになっている。したがって、デシカント空調機30をコジェネレーション装置4で駆動することができるため、製鉄所、工場等で発生した余剰蒸気、余剰温水を利用して、デシカント空調機30を駆動して、データセンター1の省エネルギ化を図ることができる。
【0054】
コジェネレーション装置4で発電された電力を、データセンター1内のサーバ装置27に供給している。したがって、データセンター1の電力として、コジェネレーション装置4で発電された電力を利用できるため、一層の省エネルギ化を図ることができる。
また、コジェネレーション装置4により発電を行っているため、データセンター1、コジェネレーション型空調システムを、外部商用電源を利用することなく、稼働することができるため、データセンター1の稼働コストを低減することができる。
【0055】
蒸気発電装置6で使用された蒸気、温水発電装置7で使用された温水を、デシカント空調機30の再生用加熱器32の熱源として用いている。したがって、余剰蒸気、余剰温水を再生用加熱器32の熱源として用いることができるため、余剰エネルギを利用した一層効率的なコジェネレーション型空調システムとすることができる。
冷却装置9で冷却された冷水は、貯油槽14の熱交換器141に供給される。したがって、熱交換器141により貯油槽14内の冷却油と冷水が熱交換を行って、冷却油を効率的に冷却することができる。
【0056】
電力供給装置8は、常用電力供給手段8Aからの電力供給、非常用電力供給手段8Bからの電力供給が可能となっている。したがって、製鉄所、工場等で余剰蒸気、余剰温水の排出が少ない場合でも、常用電力供給手段8Aからの外部商用電源を利用してデータセンター1、コジェネレーション型空調システムを稼働させることができる。
一方、常用電力供給手段8Aからの電力供給が滞った場合は、蒸気発電蓄電装置62、温水発電蓄電装置72で発電された電力を利用して、データセンター1を稼働させ、デシカント空調機30を稼働させることができる。したがって、コジェネレーション型空調システムのエネルギ源によらずに、データセンター1を稼働させることができるため、長期に亘り24時間休みなくデータセンター1を稼働させることができる。
【0057】
[5]実施の形態の変形
本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含むものである。
前述した実施の形態では、サーバ装置27に冷却油を流下するとともに、冷却空気を循環させる冷却装置であったが、本発明はこれに限られない。たとえば、サーバ室のサーバを冷却空気のみで冷却する冷却装置に本発明を適用してもよい。
前述した実施の形態では、冷却気体をサーバ室20内で循環させる構成であったが、本発明はこれに限られない。すなわち、冷却空気をサーバ室20の外部から供給し、冷却後の冷却空気を外部に排出する構成であってもよい。
【0058】
前述した実施の形態では、コジェネレーション装置4は、蒸気発電装置6および温水発電装置7を備え、それぞれの発電装置の電力を使用していたが、本発明はこれに限られない。たとえば、蒸気発電装置6および温水発電装置7のいずれか一方の発電装置を使用するコジェネレーション装置としてもよく、他の余剰エネルギを利用して電力を発電するコジェネレーション装置としてもよい。
【0059】
前述した実施の形態では、コジェネレーション装置4は、外部の余剰の蒸気、余剰の温水を利用して発電していたが、本発明は、これに限られるものではない。コジェネレーション装置としては、家庭用燃料電池を利用したコジェネレーション装置や、家庭用ガスを利用したコジェネレーション装置を採用して、本発明のコジェネレーション型空調システムとして採用してもよい。
【0060】
前述した実施の形態では、蒸気発電装置6および温水発電装置7で発電した電力を冷却装置9の電力として使用していたが、本発明はこれに限られない。発電装置6,7で発電された電力を直接デシカント空調機30に供給する構成であってもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および形状等については、本発明の目的を達成出来る範囲で他の構造等としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…データセンター、4…コジェネレーション装置、5…コジェネレーション制御装置、6…蒸気発電装置、7…温水発電装置、8…電力供給装置、8A…常用電力供給手段、8B…非常用電力供給手段、9…冷却装置、10…電子機器冷却装置、11…回収室、12…冷却油供給部、13…エア供給部、14…貯油槽、15…エア回収部、16…エア冷却部、17…液輸送部、18…エア輸送部、19…冷却制御部、20…サーバ室、21…床部、22…天井部、23A…壁部、23B…壁部、23C…壁部、24…床面部、25…循環室、26…ラック、26A…ラック列、27…サーバ装置、27…サーバ、30…デシカント空調機、31…デシカントロータ、32…再生用加熱器、61…蒸気発電管理装置、62…蒸気発電蓄電装置、63…減圧弁制御装置、71…温水発電管理装置、72…温水発電蓄電装置、81…分電盤、82…空調機器電力系統供給手段、83…情報処理装置電力系統供給手段、90A…蒸気減圧装置、90B…高温水装置、91…冷凍機、92…冷却塔、93…蓄熱手段、111…傾斜面、121…ノズル、122…ノズル制御機構、131…冷却ファン、132…ファン制御部、141…熱交換器、161…冷却油充填板、162…第二冷却油供給部、171…冷却油配管、172…ポンプ、231…排熱孔、241…第一床、242…機器配置部、242A…連通床、242B…ジョイステップ部材、243…熱仕切、A1…サーバ室空間、A2…排気空間、Ain…空気、HO…水分、M…湿分、Pa…高分子吸着剤。
図1
図2
図3
図4
図5