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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】粘着物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220527BHJP
   C09J 123/22 20060101ALI20220527BHJP
   C09J 123/20 20060101ALI20220527BHJP
   C09J 193/00 20060101ALI20220527BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J123/22
C09J123/20
C09J193/00
C09J11/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018067070
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178201
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中西 佐知男
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-122374(JP,A)
【文献】特開2019-014846(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012904(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/012905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に、合成ゴムを主成分とした粘着剤層を設けて成る、野菜の結束用または食品容器に貼付するための粘着物品であって、該粘着剤層は合成ゴム100質量部に対する粘着付与樹脂の量が、60質量部以下である粘着剤組成物からなり、前記合成ゴムが、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブチレンゴム(ポリブテンゴム)及びポリイソプレンゴムから選択される1種であることを特徴とする粘着物品(ただし、前記合成ゴムがブチルゴムの場合、前記粘着付与樹脂は、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上である)
【請求項2】
前記粘着付与樹脂が水添石油系樹脂又は水添テルペン系樹脂である請求項1に記載の粘着物品。
【請求項3】
食品衛生法(昭和34年厚生省告示第370号)に適合することを特徴とする請求項1または2に記載の粘着物品。
【請求項4】
粘着剤層の厚さが、1~50μmであることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装容器等に貼付する粘着物品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等を乾燥や異物混入から保護するため、プラスチック容器、袋、フィルム類(以下「容器類」)が用いられている。これら容器類には内容物の種類や保存日等を記入する目的で、容器表面に粘着テープや粘着ラベル等(以下「粘着物品」)を貼付することが一般的に行われている。
【0003】
また、当該粘着物品は、容器類から剥がし易くする等の利便性を考慮して、端部を折返して粘着面同士を接着させることが需要者により行われることが少なくない。
【0004】
当該粘着物品には、容器類に対する適度な粘着力が必要である。例えば、粘着物品の粘着力が高すぎる場合には、容器から剥がす際の破れ(容器類が袋等の薄膜の場合)や容器類への糊残りの問題が生じ得る。
一方、粘着物品の粘着力が低すぎる場合には、需要者が持ち運ぶ際に、粘着物品が剥がれてしまうことも予想される。粘着物品が容器類からの剥がれてしまった場合には、食品の保存日等が不明確となって、生鮮食品等の鮮度が低下したものを需要者が食する懸念も生じ得る。
【0005】
したがって、粘着物品には、これらの問題が生じないよう適度な粘着力が求められるとともに、折返し部を形成し易いよう粘着面同士の高い密着性が求められる。
【0006】
ところで、食品包装容器類は、食品類と触れることが当然に想定されるため、食品衛生法等の所定の基準に適合しなければならない。これに付随して、これに貼られる粘着物品も粘着層からの成分が保管中に容器面に付着・侵襲することを考慮すれば、同様の基準を満たす必要があるのはいうまでもない。
【0007】
特許文献1(特開2014-34400号公報)には、フィルムの先端部の視認性及び引出し性を容易にしたフィルムロールの発明が開示されている。当該フィルムロールからの視認性及び引出し性を確保する手段としては、所定の粘着強度を有する引出しラベル(粘着物品)を使用することが有効である旨記載されている。当該引き出しラベルは合成紙からなる支持体上に粘着剤層を形成しており、粘着剤としてゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤が例示され、アクリル系粘着剤が好ましいとされている(0017)。しかし、好適な粘着強度を確保する手段としては、粘着剤の種類、粘着層の塗布パターン、粘着層の厚さを調製することで制御できると記載されているが(0021)、具体的な粘着剤の組成等が不明であるばかりか、粘着剤層の厚さについても好適な範囲が明らかでない。
また、粘着層の粘着強度の強弱は、糊殺しをする面積で調整できるとも記載されているが(0017)、当業者の知見によれば、粘着剤組成固有の粘着強度自体が変わらない以上、糊殺しをしていない部分のみが糊残りの原因となることは明白である。
【0008】
特許文献2(特開2007-145430号公報)には、ガイドテープ(粘着物品)が常に容器開口部の容易に発見できる位置にあるフィルム装置の発明が開示されている。しかし、当該ガイドテープの粘着力については特に記載がされていない。
【0009】
特許文献3(特開2008-94458号公報)には、最初に収納箱から出す時の動作を容易にするために貼付帯(粘着物品)を持たせたフィルムロールの発明が開示されている。しかし、該貼付帯の粘着力等についての記載はなく、引用文献2同様に、剥離の際の容器の破れや糊残り等の問題についても言及されていない。
【0010】
特許文献4(特許2763630号公報)には、折返し端部をもつ粘着テープの装着方法及び装置の発明が開示されている。当該文献には、粘着テープの折返すための方法について記載されているが、折り返された粘着面同士の粘着力や、当該テープに使用する粘着剤の種類の好適範囲等については一切記載されていない。
【0011】
更には、特許文献1~4のいずれについても、粘着剤の具体的組成についての言及がないため、これら文献に開示されている粘着テープが、どのような手法で食品衛生法の基準に適合するに至ったのか、或いは至っていないのかが明らかでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2014-34400号公報
【文献】特開2007-145430号公報
【文献】特開2008-94458号公報
【文献】特許2763630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、容器類に対する適度な粘着力を有し、当該粘着力が経時で上昇せず、粘着面同士の密着性を確保でき、また、食品衛生法にも適合する粘着物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、基材の片面に所定の要件を満たす粘着剤組成物を含む粘着剤層を設けることにより、本発明に至った。
【0015】
すなわち本発明は、基材の片面に、合成ゴムを主成分とした粘着剤層を設けて成る、野菜の結束用または食品容器に貼付するための粘着物品であって、該粘着剤層は合成ゴム100質量部に対する粘着付与樹脂の量が、60質量部以下である粘着剤組成物からなり、前記合成ゴムが、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブチレンゴム(ポリブテンゴム)及びポリイソプレンゴムから選択される1種であることを特徴とする粘着物品(ただし、前記合成ゴムがブチルゴムの場合、前記粘着付与樹脂は、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上である)に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粘着物品は、容器類に対する適度の粘着力を有するため、容器類へ糊残りすることがなく、容器類(袋等の薄膜)が伸ばされたり破れたりすることがない。しかも、粘着物品の粘着力が低すぎて、需要者が使用する際に粘着物品が容器類から剥がれてしまう等の問題が生じることもない。また、本発明の粘着物品は、容器類に対する適度な剥離性を有する一方で粘着剤面同士が高度に接着するものであるため、例えば先端の好適な長さを折り返し端部(掴み代)とすることができる。
更には、本発明の粘着物品は、食品衛生法(昭和34年厚生省告示第370号)に適合するものであるため、粘着剤に起因した有害物質の含有が制限され、人体に悪影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着物品の粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、合成ゴムを主成分とし、合成ゴム100質量部に対して粘着付与樹脂が60質量部以下の量で含有した組成物である。
具体的に合成ゴムとしては、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム及びその変性体等が挙げられるが、なかでも食品衛生法に適合する観点から、又は粘着付与樹脂の含有量が少ない場合であってもタックを有する観点から、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブチレンゴム(ポリブテンゴム)及びポリイソプレンゴムであることが好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
合成ゴムを主成分とすることで、従来のアクリル系粘着剤と比較して容器類との接着性を抑制する効果が得られる。
【0018】
本発明における粘着剤組成物には、ゴム成分100質量部に対して少なくとも粘着付与樹脂が60質量部以下の量で含まれており、50質量部以下の量で含まれることが望ましく、40質量%以下の量で含まれることがより望ましく、特に20質量部以下の量で含まれていることが好ましい。粘着付与樹脂の添加量が60質量部を越える場合には、粘着物品を剥がす際の容器類への糊残りや破れ(袋等の場合)が懸念される。
一方、いたずらに粘着付与樹脂を多くした場合には、食品衛生法の基準に適合しなくなるおそれも生じ得る。
また、ゴム自体の粘着性及び自着性により所望する特性が得られることも多いので、粘着付与樹脂は必ずしも必須の成分ではないが、粘着付与樹脂はゴム成分100質量部に対して1質量部以上の範囲で含まれていることが好ましく、3質量部以上がより好ましい。3質量部以上であれば、比較的接着し難い容器類に対しても、粘着剤層に所望の粘着力を付与することができる。
【0019】
粘着付与樹脂の種類としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環属系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、ピュア・モノマー系樹脂等の重合系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等の縮合系樹脂等があり、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明における粘着剤組成物は、食品衛生法等の所定の基準に影響を及ぼさない限度内において、パラフィン系プロセスオイル等の鉱油、植物性油等を含む軟化剤や、芳香族第二級アミン系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系、ベンゾイミダゾール系、亜燐酸系等の老化防止剤を1種又は2種以上を併用して含有してもよい。軟化剤の使用により粘着性を向上させることができ、老化防止剤により粘着剤の酸化劣化を防止することができる。また、粘着力を調整する目的で、シリカ、アルミナ、クレー、水酸化金属などの充填剤を単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0021】
上記粘着剤組成物は、食品衛生法等の所定の基準に影響を及ぼさない限度内において、イソシアネート化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート、反応性フェノール樹脂、硫黄化合物、マレイミド系化合物等の架橋剤で架橋して用いることも可能である。架橋して用いた方が、容器類からの剥離性を向上させることができるが、これらの使用に関しては任意であり限定されるものではない。
【0022】
本発明に係る粘着物品は、基材の片面に上記粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する構成である。
【0023】
粘着剤層の厚さは、特に限定はなく糊残り等が生じない範囲内で適宜決定すれば良いが、粘着特性や経済性等を考慮すると、通常1~50μm、好ましくは3~30μm、より好ましくは5~20μmである。
【0024】
[基材]
本発明に用いる基材は特に限定されないが、一つの部材から成る単層基材であっても良いし、一の部材と他の部材を貼り合わせた積層構造を有する積層体からなる基材であっても良い。基材は柔軟性を有していても良いし、あるいは反発性を有していても良く、その性状は取扱い性等需要者の使い勝手から適宜選択され得る。
【0025】
基材を構成する部材は、樹脂フィルム、不織布又は紙であることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。基材が積層体からなる基材である場合、その部材は、樹脂フィルム、不織布及び紙からなる群より選ばれる一種以上の部材であることが好ましく、少なくとも一つの層は樹脂フィルムであることがより好ましい。
【0026】
樹脂フィルムの具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、等のフィルムが挙げられる。2種以上の樹脂フィルムを併用しても良い。中でも、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
【0027】
基材には、粘着剤層との密着性を向上させる為に、コロナ処理やプライマー処理等を施しても良い。これらの処理がなされた場合には、容器類から粘着物品を剥がす際に、容器類への糊残りを防止できるからである。
【0028】
基材の厚さは、需要者による取扱い性等を考慮して適宜選択すれば良いが、一般的には2~100μmである。好ましくは3~30μm、より好ましくは5~20μmである。
基材と粘着剤層を合わせた粘着物品の厚さは、需要者の取扱い性等を考慮して適宜選択すれば良いが、一般的には3~150μmである。好ましくは6~100μm、より好ましくは10~80μmである。
【0029】
粘着剤層は、基材の片面上に上記の粘着剤組成物を塗工して形成することができる。粘着剤組成物の塗工方法は、特に限定されるものではないが、溶剤を含む粘着剤組成物の場合には、例えば、ロールコーターやリバースコーター等で、基材面に粘着剤組成物を塗布し、加熱して溶剤を揮発させることにより本発明の粘着物品が得られる。また、固型粘着剤のような有機溶剤を用いない粘着剤組成物の場合には、Tダイ式押出機やカレンダーロール等を用いて、基材上に粘着剤組成物を押し出し成形することにより、本発明の粘着物品が得られる。
粘着物品の寸法は、需要者による取扱い性等を考慮して適宜選択すれば良いが、一般的には、一片の長さ・幅が、10~100mmであることが好ましい。また、用途によっては、背景技術に示すように、折返し端部を設けて掴みやすくすることが好ましい。折り返し端部は指で摘まむことを考慮して適宜設定され、通常5~25mm、好ましくは10~20mm程度とすればよい。
【実施例
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り、「質量部」及び「質量%」を示す。
【0031】
[粘着剤組成物の調製]
以下の各成分を表1に示す量(質量部)で混合して、実施例1~5に用いる粘着剤組成物を得た(配合1~5)を得た。なお、実施例1は参考例を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
[比較例1]
2-エチルヘキシルアクリレート97部、アクリル酸2.5部及び2-ヒドロキシエチルアクリレート0.5部を溶媒中で2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)を開始剤として重合し、固形分50%のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマーをベースポリマーとして100部、イソシアネート系硬化剤(綜研化学社製、商品名L-45)1部添加することにより、粘着剤組成物を得た。
【0034】
[比較例2]
ブチルアクリレート20部、2-エチルヘキシルアクリレート77部、アクリル酸2.5部及び2-ヒドロキシエチルアクリレート0.5部を溶媒中で2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)を開始剤として重合し、固形分50%のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマーをベースポリマーとして100部と、イソシアネート系硬化剤(綜研化学社製、商品名L-45)1部添加することにより、粘着剤組成物を得た。
【0035】
[比較例3]
スチレンイソプレンブロックポリマー(日本ゼオン(株)製、商品名クインタック3433N)100部を、トルエンに溶解することにより、粘着剤組成物を得た。
【0036】
[比較例4]
付加反応型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名SRX211)100部に対し、白金触媒(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名SRX212P)0.5部添加することにより、粘着剤組成物を得た。
【0037】
[粘着剤の基材への塗布(粘着物品の製造)]
基材には、東レフィルム加工(株)社製ポリプロピレンフィルム(トレファン(登録商標)、厚さ:60μm)を用いた。
基材のアンカー処理面に粘着剤層を形成することにより粘着物品を得た。具体的には、実施例及び比較例記載の粘着剤組成物を固形分濃度20%になるようトルエンで希釈し、基材の片面にロールコーターで塗布した後、80℃2分間の加熱によりしてトルエンを揮発させることにより粘着剤層を形成した。
[評価方法]
【0038】
(粘着力の測定)
被着体は、後述する容器類(容器1~5)を両面テープ((株)寺岡製作所製No.7641)でステンレス板に固定した。
粘着物品の幅10mmの試料とし、JIS Z 0237(2000)に準じて、剥離角180°、圧着後の養生時間20分、剥離速度300mm/分の条件で容器面に対する引き剥がし粘着力試験を実施した。結果を表2に示す。
評価は以下の基準に基づいて行った。
「○」:粘着力が0.1N/10mm以上であり、容器類からの剥がれが懸念されない。
「×」:粘着力が0.1N/10mm未満であり、容器類からの剥がれが懸念される。
【0039】
(容器類への糊残り試験)
上述の粘着力測定試験において、容器面への糊残りの有無を目視にて観察した。評価は以下の基準に基づいて行った。結果を表2に示す。
「○」:容器面への糊残りは発生しなかった。
「×」:容器面への糊残りが発生した。
【0040】
(容器類の破れの観察)
上述の粘着力測定試験において、容器類が粘着面に引っ張られて破れが生じるか否かを目視にて観察した。評価は以下の基準に基づいて行った。結果を表2に示す。
「○」:容器類の破れは生じなかった。
「×」:容器類の破れが生じた。
【0041】
(折返し試験)
粘着物品(幅10mm、長さ50mm)を準備し、長さ方向の端末を5mm折り返して粘着面同士を接着させることにより試験片を作製した。
当該試験片を雰囲気温度70℃に設定した恒温槽に2時間放置し、端部の捲れの有無を目視にて観察した。結果を表3に示す。
評価は以下の基準に基づいて行った。
「○」:端部の捲れが発生しなかった。
「×」:端部の捲れが発生した。
【0042】
(食品衛生法)
食品衛生法の適否については、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の3のDの2合成樹脂製の器具又は容器包装(区分:使用温度100℃以下)に基づき、テープ試料全体について試験を行った。
なお、一般規格(材質試験:カドミウム、鉛、溶出試験(重金属、過マンガン酸カリウム消費量)において、いずれも同規格が定める限度内にあるものを「適合」とし、限度該にあるものを「不適合」とした。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
※粘着力の数値(単位:N/10mm)
容器1:サランラップ(登録商標、旭化成製、ポリ塩化ビニリデン)
容器2:ポリラップ(登録商標、宇部フィルム製、ポリエチレン)
容器3:リケンラップ(登録商標、リケンファブロ製、ポリ塩化ビニル)
容器4:フォーラップ(登録商標、リケンテクノス製、ポリメチルペンテン)
容器5:ビューラップ(登録商標、日立化成製、ポリオレフィン積層)
容器6:Ziplocフリーザーバッグ(登録商標、旭化成ホームプロダクツ製、ポリエチレン)
容器7:タッパー(登録商標、タッパーウェアー社製、ポリプロピレン)
【0045】
【表3】
【0046】
表2から明らかな通り、本発明の粘着物品は、容器類に対する適度の粘着力を有するため、容器類への糊残りが発生することがなく、容器類(袋等の薄膜)が伸ばされたり破れたりすることがない。しかも、粘着物品の粘着力が低すぎて、需要者が取り扱う際に簡単に粘着物品が剥がれてしまう等の問題が生じることもない。
また、本発明の粘着物品は、食品衛生法(昭和34年厚生省告示第370号)に適合するものであるため、粘着剤に起因した有害物質の含有が制限され、人体に悪影響を及ぼすことがない。
【0047】
本発明の粘着物品は、容器類に対する適度な剥離性を有する一方で、表3から明らかなように、粘着剤面同士が高度に接着するものであるため、例えばテープ先端の好適な長さを折り返し端部(掴み代)とすることができる。
したがって、本発明の粘着物品は、表示等の機能を果たし終えた粘着物品を剥がし易くすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の粘着物品は、容器類に貼付する粘着テープや粘着ラベルとしての用途のほか、例えば、その自着力(粘着面同士の接着力)、好適範囲の粘着力及び食品衛生法への適合等の特性に着目すれば、野菜の結束用テープとしての用途にも有用である。