(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】スプレッダー及び小便器
(51)【国際特許分類】
E03D 13/00 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
E03D13/00
(21)【出願番号】P 2018069334
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 善博
(72)【発明者】
【氏名】小島 励
(72)【発明者】
【氏名】富田 幸路
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102366(JP,A)
【文献】特開2015-071901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0026874(US,A1)
【文献】特開2016-069874(JP,A)
【文献】特開2000-303541(JP,A)
【文献】特開2016-069872(JP,A)
【文献】特開平08-239889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用状態で正面視したときの前面に位置する便鉢の正面に取り付けられ、洗浄水を前記便鉢に噴出するスプレッダーであって、
洗浄水を噴出する吐水部と、前記吐水部の後側に設けられ、外部から前記吐水部に向けて洗浄水を供給する給水路と、を有し、
前記吐水部には、
前記便鉢の左右方向に延在する吐水壁が設けられ、
前記吐水壁の左右中央には、前記給水路に連通する給水開口が形成され、
前記吐水壁の前面において、前記給水開口から供給された洗浄水は、正面視で左右中央に設けられる内側吐水路、及び該内側吐水路の左右外側に設けられる外側吐水路に分配され、
前記外側吐水路の面積は、前記内側吐水路の面積よりも大きく設定されていることを特徴とするスプレッダー。
【請求項2】
前記外側吐水路は、外入口の外側入口面積が外出口を構成する外側吐水口の外側出口面積よりも大きく、
かつ、前記内側吐水路は、内入口の内側入口面積が内出口を構成する内側吐水口の内側出口面積よりも小さい請求項1に記載のスプレッダー。
【請求項3】
前記外側吐水路の外出口を構成する外側吐水口における前後方向の長さ寸法は、前記内側吐水路の内出口を構成する内側吐水口における前後方向の長さ寸法よりも大きい請求項1に記載のスプレッダー。
【請求項4】
前記吐水壁の前面には、前記内側吐水路と前記外側吐水路とを仕切る
左右一対の内側ガイドが設けられ、
前記左右一対の内側ガイド
同士の間に前記給水開口に連通する流入口が形成され、
前記内側ガイドは、前記内側吐水路における内入口側から内出口側に向けて斜め下方に延びるとともに、前記内入口側の第1ガイド部と前記内出口側の第2ガイド部とが異なる方向に向けて延在している請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスプレッダー。
【請求項5】
前記吐水壁の前面には、前記内側ガイドの上方に間隔をあけて外側ガイドが設けられ、
前記外側吐水路は、前記内側ガイドと前記外側ガイドとの間に形成される流路である請求項
4に記載のスプレッダー。
【請求項6】
前記吐水壁の前面には、前記内側吐水路の左右中央に滴下防止ガイドが設けられている請求項
4又は5に記載のスプレッダー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のスプレッダーを前記便鉢の正面に取り付けられた小便器であって、
前記スプレッダーの前記吐水部から噴出される洗浄水は、前記内側吐水路から前記便鉢の下方に向けて噴出され、前記外側吐水路から前記便鉢の左右方向に広がるように噴出されることを特徴とする小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレッダー及び小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小便器として、例えば特許文献1に示すような、便鉢の幅方向の中心部を洗浄する洗浄水を噴出する内側吐水口と、左右両側の領域に広げて洗浄水を洗浄する外側吐水口と、を有する吐水装置を備えた小便器が知られている。
特許文献1には、スプレッダー内に2系統の給水管が設けられ、それぞれの給水管が内側吐水口と外側吐水口に接続され、給水管毎に吐水する洗浄水の噴出流量が調整された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示すような従来の小便器では、洗浄流量が低い場合には、外側吐水口の洗浄流量も低くなることから、便鉢の左右方向に向けて十分な距離をもって噴出させることができないという問題があった。そのため、左右方向の領域まで十分に洗浄できないおそれがあり、その点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、左右方向の洗浄流量を増大させることで便鉢の洗浄領域を拡大することができるスプレッダー及び小便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るスプレッダーは、使用状態で正面視したときの前面に位置する便鉢の正面に取り付けられ、洗浄水を前記便鉢に噴出するスプレッダーであって、洗浄水を噴出する吐水部と、前記吐水部の後側に設けられ、外部から前記吐水部に向けて洗浄水を供給する給水路と、を有し、前記吐水部には、前記便鉢の左右方向に延在する吐水壁が設けられ、前記吐水壁の左右中央には、前記給水路に連通する給水開口が形成され、前記吐水壁の前面において、前記給水開口から供給された洗浄水は、正面視で左右中央に設けられる内側吐水路、及び該内側吐水路の左右外側に設けられる外側吐水路に分配され、前記外側吐水路の面積は、前記内側吐水路の面積よりも大きく設定されていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る小便器は、上述したスプレッダーを前記便鉢の正面に取り付けられた小便器であって、前記スプレッダーの前記吐水部から噴出される洗浄水は、前記内側吐水路から前記便鉢の下方に向けて噴出され、前記外側吐水路から前記便鉢の左右方向に広がるように噴出されることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、吐水部における外側吐水路と内側吐水路のそれぞれに対応する箇所の少なくとも一部の面積において、外側吐水路の面積を内側吐水路の面積よりも大きくすることで、外側吐水路の外出口から噴出される洗浄水(外側洗浄水)による横方向の洗浄流量を増加させることができる。そのため、スプレッダーを小便器の便鉢の正面に配置した状態において、外側洗浄水はその勢いが増大されて下に落ちにくくなり、左右方向への噴出距離が大きくなるので、便鉢の側面部の洗浄を良好に行うことができ、便鉢を広範囲にわたって洗浄することができる。
【0009】
また、本発明に係る小便器は、前記外側吐水路は、外入口の外側入口面積が外出口を構成する外側吐水口の外側出口面積よりも大きく、かつ、前記内側吐水路は、内入口の内側入口面積が内出口を構成する内側吐水口の内側出口面積よりも小さいことが好ましい。
【0010】
この場合には、外側吐水路における外入口の外側入口面積を外側吐水口の外側出口面積よりも大きくすることで、外側洗浄水の流速を大きくして噴出距離を伸ばして、より遠い位置まで吐水することができる。さらに、内側吐水路における内入口の内側入口面積を内側吐水口の内側出口面積よりも小さくすることで、内側洗浄水の流速を小さくして噴出範囲を広くして吐水することができる。
【0011】
また、本発明に係るスプレッダーは、前記外側吐水路の外出口を構成する外側吐水口における前後方向の長さ寸法は、前記内側吐水路の内出口を構成する内側吐水口における前後方向の長さ寸法よりも大きいことが好ましい。
【0012】
この場合には、外出口(外側吐水口)の前後方向の長さ、すなわち奥行長さを大きくすることで、洗浄水を左右方向に広げ過ぎずに開口面積を大きくすることができ、これにより便鉢外に飛び出すことなく洗浄流量を増加することができる。このように洗浄流量を多くすることで水の勢いが増すため、便鉢の前方壁まで水が流しやすくなる。
つまり、本発明では、外側吐水口の開口面積を大きくするために、左右方向の開口寸法を長くした場合のような課題、すなわち、洗浄水の噴出範囲が拡がり過ぎて、便鉢の側面から洗浄水が飛び出すといった課題が生じることを抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係るスプレッダーは、前記吐水壁の前面には、前記内側吐水路と前記外側吐水路とを仕切る左右一対の内側ガイドが設けられ、前記左右一対の内側ガイド同士の間に前記給水開口に連通する流入口が形成され、前記内側ガイドは、前記内側吐水路における内入口側から内出口側に向けて斜め下方に延びるとともに、前記内入口側の第1ガイド部と前記内出口側の第2ガイド部とが異なる方向に向けて延在していることを特徴としてもよい。
【0014】
この場合には、給水開口から吐水部に給水された洗浄水の一部は、内側ガイドによって形成される内入口から内側吐水路に流入され、内出口の内側吐水口から便鉢に向けて噴出される。このとき、内側ガイドの内入口側に第1ガイド部が設けられているので、内側吐水路の内入口の開口幅を小さく抑え、給水開口から吐水部に給水された洗浄水が流入口から下方、すなわち内側吐水路への流入を抑制することができる。そのため、外側吐水路側へ誘導することができ、外側吐水路への流入量を増大させることができる。
また、内側ガイドの第2ガイド部の位置を調整することで、内側吐水口から噴出される洗浄水の広がりの上縁を規制することができる。
【0015】
また、本発明に係るスプレッダーは、前記吐水壁の前面には、前記内側ガイドの上方に間隔をあけて外側ガイドが設けられ、前記外側吐水路は、前記内側ガイドと前記外側ガイドとの間に形成される流路であることが好ましい。
【0016】
この場合には、外側吐水路を通る洗浄水の上側を外側ガイドに沿って案内することができる。つまり、外側ガイドを設けることで、外側吐水路の外出口である外側吐水口よりも外側に水が広がることを抑制でき、外側吐水口から噴出される洗浄水の広がりの上縁を規制することができる。
このように、本発明では、外側ガイドが設けられない場合のように、給水開口から吐水部に給水された洗浄水が給水開口から吐水口まで直接流通し、すなわち給水開口から吐水口までの間で他の部分に洗浄水が流れ込まない通水経路となるため、噴出される洗浄水の勢いの低下を防ぐことができる。
そのため、給水開口から外側吐水路に流入した洗浄水における外側吐水口までの流れを安定させることができ、外側吐水口から噴出する洗浄水の洗浄流量の低下を抑えることができる。
【0017】
また、本発明に係るスプレッダーは、前記吐水壁の前面には、前記内側吐水路の左右中央に滴下防止ガイドが設けられていることが好ましい。
【0018】
この場合には、滴下防止ガイドが便鉢の陶器面に接触させて設けることができ、便鉢に流れやすくなる。そのため、給水終了後にスプレッダー内の残留水が滴下防止ガイドを伝って便鉢の正面部分に流れるため、鉢底面に直接滴下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスプレッダー及び小便器によれば、左右方向の洗浄流量を増大させることで便鉢の洗浄領域を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態による小便器を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す小便器を前方から見た正面図である。
【
図3】
図2に示す小便器を右方向から見た側面図である。
【
図5】
図2に示す小便器において便鉢の下方の一部を破断した正面図である。
【
図6】小便器の水平断面図であって、(a)は
図5に示すII-II線断面図、(b)は
図5に示すIII-III線断面図、(c)は
図5に示すIV-IV線断面図である。
【
図8】
図2に示す小便器を上方から見た平面図である。
【
図9】
図2に示す小便器を下方から見た平面図であって前方を紙面左側にした図である。
【
図10】
図3に示す小便器の下部の構成を示す要部拡大図である。
【
図12】
図4に示す小便器において、開口部の形状を示した図である。
【
図13】(a)は
図3に示すVI-VI線断面図、(b)はVII-VII線断面図である。
【
図14】スプレッダーを左右方向から見た側面図である。
【
図15】スプレッダーを前方から見た正面図である。
【
図17】スプレッダーの吐水部を前方から見た正面図である。
【
図18】スプレッダーを下方から見た平面図であって、前面を紙面上側にした図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態によるスプレッダー及び小便器について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1~
図4に示すように、本実施形態による小便器1は、自身の最下部が床面から浮かされた状態となるように背後の壁面Kに沿って取り付けられる壁掛け式の小便器を対象としている。小便器1は、便鉢11を有する陶器製の小便器本体10と、便鉢11を洗浄するためのスプレッダー2(
図4参照)と、便鉢11の鉢底面11Cに設けられる排水口11cに接続される排水トラップ3(
図4参照)と、を備えている。
【0023】
ここで、本実施形態においては、使用者が小便器1を正面視するように位置した際に使用者に近い側を前側とし、反対側の遠い側を後側とする。また、小便器1の前側と後側との間に連なる部分を側方とする。また、小便器1を前側から見たときの左右方向を左右方向X1といい、前側と後側の方向を前後方向X2という。
【0024】
小便器本体10は、前面に位置する便鉢11と、便鉢11の開口部13から後方に向けて延びる周壁部12と、を有している。小便器本体10の後端縁10aは、側方から見て鉛直方向に延び、壁面Kに対して当接させた状態で設置される。
【0025】
周壁部12は、上面部12Aと、上面部12Aに連設される左右一対の側面部(左側面部12B、右側面部12C)と、左側面部12B及び右側面部12Cに連結され便鉢11の下方前面に位置する前面部12Dと、前面部12D及び一対の側面部12B、12Cに連設される底面部12Eと、を有している。周壁部12の前端に形成される開口部13は、便鉢11の外周縁に対して連続的に接続されている。すなわち、便鉢11と周壁部12とは一体構造となっている。
【0026】
上面部12Aは、前後方向X2に幅を有して左右方向X1に延在し、全体が左右方向X1の中央部から左右両側の側面部12B、12Cに向けて下向きに湾曲している。さらに、上面部12Aは、左右方向X1の全体にわたって前後方向X2で前側から後側へ向かうに従い漸次、下方になるように傾斜している。すなわち、少なくとも小便器本体10の最上部(上面部12Aの頂部)において、手前側部分12aが奥側部分12bよりも高い位置となっている。
【0027】
左右に位置する左側面部12B及び右側面部12Cに前端は、上方から下方に向かうに従って漸次、前方となるように直線状に傾斜する前端傾斜部12cが形成されている。さらに、左側面部12B及び右側面部12Cは、
図5~
図8に示すように、上下方向X3の全体にわたって前後方向X2で前側から後側へ向かうに従い漸次、左右方向X1の内側から外側に向けて傾斜している。すなわち、左側面部12B及び右側面部12Cは、正面視で手前より奥側で左右方向X1の外側に張り出して見えるように形成されている。
【0028】
また、左側面部12B及び右側面部12Cの下方領域は、
図7に示すように、前方に向かって狭まるように湾曲しながら前面部12Dにかけて傾斜している。このときの湾曲部の曲率半径Rは、例えばR110mmと比較的で大きな曲率に設定されている。そのため、側面部12B、12Cに付着した小便は、前面部12Dの凸頂部に集まる。
【0029】
前面部12Dは、
図3及び
図4に示すように、底面部12Eから上方に向けて前方に傾く前傾斜に形成されている。
【0030】
底面部12Eは、前面部12D及び両側面部12B、12Cのそれぞれの下端縁に連続的に接続されている。底面部12Eには、
図5、
図9~
図13に示すように、下方から見た平面視で中央部において上方に向けて窪んだ底凹部12Fが形成されている。
【0031】
排水トラップ3は、
図4及び
図5に示すように、管状の流路を形成し、一端の流入口3aが便鉢11の鉢底面11Cの排水口11cに接続され、他端の流出口3bが小便器本体10の後面側に設けられている。
図11に示すように、排水トラップ3は、略下半部分が底凹部12Fの凹部に配置されている。
【0032】
具体的に排水トラップ3は、排水口11cから下方に延びる排水筒31と、排水筒31の下端開口から排水筒31の後方に向けて略180度折り返す湾曲壁32と、湾曲壁32から上方に向けて延びる上向き壁33と、を有している。
排水筒31は、排水筒31内と外周側の後述する便器空間部14とが連通しないように遮断する遮断壁を構成している。上向き壁33の上部後面側には、上述した流出口3bが設けられている。この流出口3bには、壁面Kの内側に設けられる図示しない排水管の端部が接続される。排水トラップ3の湾曲壁32の下端32aは、排水トラップ3全体の最も下端3cに位置し、底面部12Eよりも上方に位置している。
【0033】
図10及び
図11に示すように、底凹部12Fの下端縁に位置する底面部12Eは、便鉢11の排水口11cに接続される排水トラップ3の下端3cよりも下方に位置している。
また、
図11に示すように、底凹部12Fの後壁は、鉛直方向に延びる垂直壁143を形成している。この垂直壁143の上端から前方に向けて排水トラップ3の外周壁が接続されている。排水トラップ3における垂直壁143の前側に対向する部分(上向き壁33)は、前方に向かうに従って漸次、水平面に対する傾斜角度が小さくなるように下向きに傾斜している。
【0034】
なお、底凹部12Fの陶器製の内面は、釉薬で被覆されている。このように底凹部12Fの内面に被覆された釉薬によって滑らかに仕上げられているので、この内面に汚れが付着しにくくなる。そのうえ、釉薬が被覆された内面の清掃性が高まり、付着した汚れを簡単に落とすことが可能となるので、汚れが目立ちにくくなる。
【0035】
小便器本体10には、便鉢11と周壁部12との間で囲まれた中空状に形成され、排水トラップ3の周囲を囲む便器空間部14が形成されている。
【0036】
底面部12Eに形成される底凹部12Fは、部分的に排水トラップ3に沿った形状に形成されている。
底凹部12Fの前方下端は、
図2に示すように、左右方向X1の中央部で下側に凸となる左右凸曲面12eが形成されている。
【0037】
図11に示すように、便器空間部14を構成する底凹部12Fの周壁には、底面部12Eから上方に向けて延びる立上り壁141と、立上り壁141の上端から排水筒31の外周面に向けて延びて、排水筒31の上下方向の途中の位置で接続される連結壁142と、が設けられている。
【0038】
連結壁142は、底凹部12Fの天面に相当し、排水筒31における後端寄りの位置から前方の範囲に配置されている。すなわち、連結壁142と、排水筒31における連結壁142との接続部より上側の部分と、の間に便器空間部14の一部(排水側空間14A)が形成されている(
図13(a)、(b)参照)。
【0039】
連結壁142は、
図11及び
図13(b)に示す前方連結壁142Aと、
図13(a)に示す後方連結壁142Bとからなり、前方連結壁142Aが後方連結壁142Bよりも下方となる高さに位置し、それぞれの前後方向X2の境界部分に上下の段差が形成されている。双方の連結壁142A、142B同士の前後方向X2の境界部分は、
図9に示すように、排水トラップ3の排水筒31(後述する)の前後方向X2の略中央部分に位置している。
【0040】
底面部12Eの前部には、
図10及び
図11に示すように、底凹部12Fよりも前方の位置において、側面視で下に凸となる前後凸曲面12dが形成されている。前後凸曲面12dは、前面部12Dから底面部12Eに向けて連続する曲面で湾曲し、その湾曲部の後方側で上向きに延びて底凹部12Fに接続するように形成されている。前後凸曲面12dは、
図9に示すように、下方から見た平面視で左右方向X1の全体にわたって前側に凸となるように湾曲している。このような湾曲部を設けることで、清掃性が良好となる。なお、前後凸曲面12dにおける前側に凸となる湾曲部の曲面範囲は、左右方向X1の全体であることに限定されず、左右両側の角部のみに曲面を形成させた形状であってもよいが、清掃性を高めるためにはこの角部の曲面の曲率半径は大きい方が好ましい。
【0041】
便鉢11は、
図12に示すように、上部から下部まで使用者に対向するように開いた開口部13を有している。開口部13は、左側面部12B及び右側面部12Cのそれぞれの前端傾斜部13a、13aと、一対の前端傾斜部13a、13aの上端に連設する上面部12Aの上前端円弧部13bと、一対の前端傾斜部13a、13aの下端に連設する前面部12Dの下前端円弧部13cと、が形成されている。
一対の前端傾斜部13a、13a、上前端円弧部13b、及び下前端円弧部13cは、それぞれ同一平面上に位置している。一対の前端傾斜部13a、13aは、互いに平行となっている。上前端円弧部13b、及び下前端円弧部13cは、それぞれ略同一の曲率半径からなる単一の円弧を形成している。開口部13は、この開口部13を含む平面に直交する方向から見て上下対称の形状をなしている。
【0042】
便鉢11は、
図13(a)、(b)に示すように、上下方向X3の全領域において、正面部11Aと、正面部11Aの左右両側から前方に向けて突出するように延びる側面部11Bと、鉢底面11Cと、を有し、それぞれが滑らかに湾曲し、かつ連続的に接続している(
図4参照)。
【0043】
正面部11Aは、上方から鉢底面11Cまで略鉛直方向に沿って延びている。正面部11Aにおける上端寄りの上部領域11aで左右方向X1の中央部には、前後方向X2に貫通する貫通穴11bが形成されている。この貫通穴11bには、スプレッダー2が嵌合されている。
【0044】
正面部11Aと側面部11B、11Bとは、スプレッダー2から吐出される洗浄水Wを鉢底面11Cまで導くことができるように、水平断面視で全体にわたって連続する凹曲面が形成されている。側面部11Bは、
図6(a)~(c)、及び
図7に示すように、上方から下方に向かうに従い漸次、正面部11Aからの前方に向けて延びる突出量が増大している。つまり水平断面視において便鉢11の凹部の深さは、下方に向かうほど上部よりも深くなっている。
【0045】
また、正面部11Aの左右方向X1の幅寸法は、水平断面視において上下方向X3の全体にわたって開口部13の開口幅よりも小さくなっている。
さらに、
図7に示すように、便鉢11と周壁部12との接続部をなすリム11Dは縁無し形状をなし、便鉢11内の下方領域には、水平断面視でリム11Dの開口幅D1よりも大きい幅D2を有する部分が形成されている。このような形状にすることにより、便鉢11の外方に小便が跳ね返ることを抑制することができる。
【0046】
左右一対の側面部11B、11Bの下側領域P1は、
図13(a)、(b)に示すように、上方から鉢底面11Cに向かうに従い漸次、左右方向X1の幅寸法が小さくなるとともに、手前から正面部11A側(後方側)に向かうに従い左右方向X1の幅が狭くなっている。
ここで、
図3に示す側面視で、前後凸曲面12dから上方に伸ばした延長線P0と前端傾斜部12c(開口部13)との交点を通る水平方向の線を境界線Pとし、開口部13において、境界線Pより下側を下側領域P1とし、上側を上側領域P2とする。
【0047】
そして、本実施形態では、高さが低い小便器1であるので、下側領域P1の第1開口面積S1が一般の小便器よりも大きくなっている。ここで、下側領域P1の第1開口面積S1と上側領域P2の第2開口面積S2との比率は、例えば、S1:S2=1:2に設定され、好ましくは1:1である。
このように構成することで、延長線P0より手前が曲面になることから、小便が前面部12Dを介して前後凸曲面12dに集まりやすい形状となり、
図1及び
図3の矢印Sで示すように、前後凸曲面12dに小便が伝わり易くなる利点がある。
【0048】
左右一対の側面部11B、11Bには、
図4に示すように、便鉢11の高さ方向でそれぞれ左右対称となるそれぞれの位置に洗浄棚15が後方から前方に向けて下方向に延びて設けられている。この場合、小便器1は、スプレッダー2から吐水され左右一対の洗浄棚15に乗った洗浄水Wが便鉢11の下部前方の鉢底面11Cに案内されるため、便鉢11の下部前方を洗浄することができる。
また、洗浄棚15は、前面部12Dの先端よりも下の位置にあるので、意匠性がよい。
【0049】
鉢底面11Cの後方側には、
図4及び
図11に示すように、上方に広がる椀形状をなす排水口11cが設けられている。排水口11cには、目皿4(
図4参照)が配置されている。また、排水口11cには、鉢底面11Cの下方の便器空間部14(後述する)に配置される排水トラップ3の上端が接続されている。
【0050】
鉢底面11Cは、排水口11cに排水が集まるように、排水口11cに向かって緩やかに傾斜している。さらに、鉢底面11Cは、上面視で前後方向X2に延びる一対の略直線部とそれら直線部の前端同士、後端同士をそれぞれ曲線で繋いだトラック形状をなしている。なお、鉢底面11Cは、手前側が広がっていない形状であればよいので、上述した直線部は前後方向X2に延びる直線でなくてもよい。
このように鉢底面11Cに傾斜面が形成され、中心周辺(小便が良くあたる位置)における平面の断面積が小さくなっているので、この傾斜面に当たった小便が外方に跳ねにくくなっている。
一方で、例えば鉢底面の形状を手前側で広くすると、手前側の平面部分が広くなり、側面部と前面部を繋ぐ曲面が小さくなり、曲面部で先浄水の流速が低下して先に鉢底面に落ちやすくなるため、前面部12D側まで洗浄し難くなる。本実施形態では、上述したように鉢底面11Cが手前側に広がらない形状としたことで、洗浄水の流速の低下を抑制することができる。
【0051】
目皿4は、
図4に示すように、円盤状をなし、円盤状の中心軸を上下方向X3に向けた状態で配置され、外径が排水口11cの内径より僅かに小さく形成されている。目皿4は、円盤状の外周面が排水口11cの内周面に当接することがなく、円盤状の外周面と排水口11cの内周面との間に所定の間隔を設けた状態で配置されている。
【0052】
次に、スプレッダー2の構成について図面に基づいて詳細に説明する。
図13(a)、(b)に示すように、スプレッダー2は、便鉢11における正面部11Aの上部領域11aのほぼ左右中央に設けられ、洗浄水Wを便鉢11の中央領域U1から左右端側まで広がるように吐水する。スプレッダー2は、
図14及び
図15に示すように、洗浄水Wを噴出すると共に、小便器1の前に使用者が立ったことと遠ざかることを検出する超音波センサ21が内蔵されている。超音波センサ21は、送波器により超音波を対象物である使用者に向けて発信し、その反射波を受波器で受信することにより使用者を検出する機器である。本実施形態では、超音波センサ21のセンサヘッド内に送波器と受波器が一体に設置されているものとする。
【0053】
図16に示すように、スプレッダー2は、外筒部20と、外筒部20内で上下方向X3の略中央部で上下に液密に仕切る区画壁22と、を有し、
図13(a)、(b)に示すように、中心軸を前後方向X2に向けて便鉢11の正面部11Aに設けられている。スプレッダー2は、区画壁22の上側に上述した超音波センサ21に電気信号を送受信するための配線を収納する電装経路23と、区画壁22の下側に洗浄水Wを噴出するための給水路24と、外筒部20の先端を外側から嵌合して電装経路23及び給水路24の先端を覆う有頂筒状のカバー体25と、を有している。
【0054】
電装経路23は、給水路24に対して区画壁22によって液密に仕切られているので、給水路24内を通水する洗浄水Wが電装経路23の内部の超音波センサ21等の電装機器にかからない構成となっている。
超音波センサ21は、円筒形状をなし、電装経路23の先端にシリコンゴム等の弾性体2aを介して配置されている。超音波センサ21は、超音波照射角度や角度範囲は対象物からの距離や高さ等に応じて任意に設定可能に設けられている。カバー体25には、超音波センサ21が露出するように開口部が形成されている。
【0055】
給水路24の前端には、小便器1の便鉢11に洗浄水Wを噴出するための吐水部26が設けられている。給水路24は、外部から吐水部26に向けて洗浄水Wを供給する流路である。
吐水部26は、
図17に示すように、区画壁22の平面に対して略直交するように壁面を前面に向けて設けられるとともに、給水路24に連通する給水開口261bが形成された吐水壁261を有している。給水開口261bは、吐水壁261における左右方向X1の中央部で区画壁22寄りの上部に配置されている。吐水壁261は、下方に向かうに従い漸次、前方から後方に向かうように約10°の傾斜角をもって便鉢11の鉢面側に向けて傾斜し、洗浄水Wが鉢面に沿って流れやすくなっている。
【0056】
吐水部26には、洗浄水Wを便鉢11のほぼ中央領域U1(
図13(a)、(b)参照)に向けて吐水する内側吐水路26Aと、内側吐水路26Aの左右両側に配置され、洗浄水Wを便鉢11のほぼ中央領域U1より広範囲の左右領域U2に広がるように吐水する外側吐水路26Bと、が設けられている(
図18参照)。これにより給水開口261bから吐水部26に供給される洗浄水Wは、内側ガイド262によって内側吐水路26Aと外側吐水路26Bとに分配される。
【0057】
内側ガイド262は、内側吐水路26Aと外側吐水路26Bとを仕切る部材であり、給水開口261bの下方において、左右方向X1で双方の間に間隔をあけた左右両側の位置で吐水壁261の前面に設けられている。つまり、左右両側の内側ガイド262、262の左右中央に給水開口261bに連通する流入口が形成されている。
【0058】
一対の内側ガイド262、262は、それぞれ内側吐水路26Aにおける内入口(内側流入口262b)側から内出口(内側吐水口262a)側に向けて斜め下方に延びた形状をなしている。具体的に内側ガイド262は、内側流入口262b側の水平ガイド部262A(第1ガイド部)と、内側吐水口262a側の傾斜ガイド部262B(第2ガイド部)と、が異なる方向に向けて延在している。水平ガイド部262Aは、上述した流入口26aを確保した位置から水平方向に延びている。傾斜ガイド部262Bは、水平ガイド部262Aの流入口26aと反対側の端部から斜め下方に向けて延びている。水平ガイド部262A、262A同士の間には、それぞれ後述する滴下防止ガイド263との間に一対の内側流入口262b、262bが形成されている。一対の傾斜ガイド部262Bの下端同士の間には、それぞれ後述する滴下防止ガイド263との間に一対の内側吐水口262a、262aが形成されている。内側吐水路26Aは、内側ガイド262より下方の領域となる。内側ガイド262は、内側吐水路26Aを通過して噴出される内側洗浄水W1の広がりの上縁を規制している。
【0059】
内側吐水路26Aには、一対の傾斜ガイド部262B、262B間の左右中央に配置され、左右に分断するように滴下防止ガイド263が設けられている。
【0060】
また、吐水部26には、一対の内側ガイド262、262の上方に間隔をあけて外側ガイド264が設けられている。外側ガイド264は、吐水壁261の前面に設けられ、給水開口261bの上端部分を中心にして左右対称に形成され、その片側が斜め下方に向けて吐水壁261の外周縁261aまで延ばされている。つまり、吐水壁261における外側ガイド264の下方の領域は、略扇形になっている。
【0061】
外側吐水路26Bは、内側ガイド262と外側ガイド264との間に形成される流路である。給水開口261bを挟んだ左右片側における内側ガイド262の傾斜ガイド部262Bの外端部262cと外側ガイド264の外端部264cとの間には、外側吐水口264aが形成されている。外側ガイド264は、外側吐水路26Bを通過して噴出される外側洗浄水W2の広がりの上縁を規制している。
【0062】
外側吐水路26Bは、内側吐水路26Aの左右両外側に位置している。つまり、外側吐水口264aから外側吐水路26Bを通過して噴出される外側洗浄水W2の第2噴出角度は、内側吐水口262aから内側吐水路26Aを通過して噴出される内側洗浄水W1の第1噴出角度よりも広角になっている。
【0063】
また、本実施形態のスプレッダー2では、外側吐水路に形成される外入口(外側流入口264b)の外側入口面積N2は、内側流入口262bの内側入口面積M2よりも大きく設定されている。
さらに、外側吐水路26Bは、外側入口面積N2が外出口を構成する外側吐水口264aの外側出口面積N1よりも大きく設定されている。かつ、内側吐水路26Aは、内側入口面積M2が内側吐水口262aの内側出口面積M1よりも小さく設定されている。
【0064】
本実施形態のスプレッダー2では、
図18に示すように、外側吐水路26Bの外側吐水口264aにおける前後方向X2の長さ寸法V2は、内側吐水口262aにおける前後方向X2の長さ寸法V1よりも大きくなるように設定されている。
なお、外側吐水口264aと内側吐水口262aのそれぞれの前後方向X2の長さ寸法は、本実施形態に限定されることはなく、それぞれが前後方向X2に同じ長さ寸法に設定される構成であってもかまわない。
【0065】
このように構成されるスプレッダー2では、
図13(a)、(b)に示すように、小便器1の前に使用者が立つと、超音波センサ21(
図14及び
図15)で人体を検出してその検出信号により吐水部26から小便器1の便鉢11に洗浄水Wが噴出される。そして、使用者が小便を終了して小便器1から遠ざかると、超音波センサ21でこれを検出した検出信号が出力され、吐水部26から便鉢11に洗浄水Wが噴出されて便鉢11を洗浄する。
また、超音波センサ21を有するスプレッダー2は便鉢11の正面部11Aに設置しているため、超音波センサ21の超音波が物理的に干渉することがなく、相互干渉による誤検知を生じない。
そして、スプレッダー2では、左右両端近傍まで広がる水幕を形成することができる。
【0066】
図16に示すように、具体的にスプレッダー2において洗浄水Wを噴出する際には、図示しない給水管から供給された洗浄水Wがスプレッダー2の給水路24を通り、給水開口261bから吐水部26に供給される。そして、
図17に示すように、給水開口261bから吐水部26に供給された洗浄水Wは、内側ガイド262によって内側吐水路26Aと外側吐水路26Bに分配される。それぞれ内側吐水口262a及びその左右両側の外側吐水口264a、264aから洗浄水Wが便鉢11に噴出される。ここで、
図13(a)、(b)において、吐水部26から吐水され、左右側端部近傍まで広がった洗浄水W1、W2の流れを示している。
【0067】
内側吐水口262aから下方に噴出される内側洗浄水W1は、便鉢11の中央領域U1に向けて吐水される。
外側吐水口264aから左右方向に噴出される外側洗浄水W2は、中央領域U1よりも広範囲に広がるように左右領域U2に拡散されて吐水され、その一部が洗浄棚15(
図4参照)に乗って下部前方に案内されて鉢底面11Cへ流下する。
そして、噴出された洗浄水W1、W2は、便鉢11の鉢底面11Cに向かって流れ、便鉢11の中央領域U1及び左右領域U2にわたって広範囲にわたって洗浄することができる。
【0068】
このように、スプレッダー2の吐水部26から吐水される洗浄水Wは、スプレッダー2から放射状方向に、便鉢11の面上を洗浄できない部分を生じさせないように広く広がるように流れ、便鉢11を流下しながら便鉢11全体を良好に洗浄することができる。
鉢底面11Cまで流れた洗浄水Wは、排水口11cから排水トラップ3を通過して排水される。
【0069】
次に、本実施形態によるスプレッダー2及び小便器1の作用について説明する。
本実施形態のスプレッダー2及び小便器1では、
図17及び
図18に示すように、吐水部26における外側吐水路26Bの外側吐水口264aの外側入口面積N2を内側吐水路26Aに形成される内側流入口262bの内側入口面積M2よりも大きくすることで、外側吐水路26Bの外側吐水口264aから噴出される外側洗浄水W2による横方向の洗浄流量を増加させることができる。
そのため、
図13(a)、(b)に示すように、スプレッダー2を小便器1の便鉢11の正面部11Aに配置した状態において、外側洗浄水W2はその勢いが増大されて下に落ちにくくなり、左右方向X1への噴出距離が大きくなるので、便鉢11の側面部11B、11Bの洗浄を良好に行うことができ、便鉢11を広範囲にわたって洗浄することができる。
【0070】
また、本実施形態では、
図17に示すように、外側吐水口264aの外側入口面積N2を外側出口面積N1よりも大きくすることで、外側洗浄水W2の流速を大きくして噴出距離を伸ばして、より遠い位置まで吐水することができる。さらに、内側吐水口262aの内側入口面積M2を内側出口面積M1よりも小さくすることで、内側洗浄水W1の流速を小さくして噴出範囲を広くして吐水することができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、
図18に示すように、外側吐水口264aの前後方向X2の長さ、すなわち奥行長さを大きくすることで、外側洗浄水W2を左右方向X1に広げ過ぎずに開口面積を大きくすることができ、これにより便鉢外に飛び出すことなく洗浄流量を増加することができる。このように洗浄流量を多くすることで水の勢いが増すため、
便鉢11の前方壁まで水が流しやすくなる。
つまり、本実施形態では、外側吐水口264aの開口面積を大きくするために、左右方向X1の開口寸法を長くした場合のような課題、すなわち、洗浄水Wの噴出範囲が拡がり過ぎて、便鉢11の側面から洗浄水Wが飛び出すといった課題が生じることを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、
図17に示すように、給水開口261bから吐水部26に給水された洗浄水Wの一部は、内側ガイド262によって形成される内側流入口262bから内側吐水路26Aに流入され、内側吐水口262aから便鉢11に向けて噴出される。このとき、内側ガイド262の内側流入口262b側に水平ガイド部262Aが設けられているので、内側流入口262bの開口幅を小さく抑え、給水開口261bから吐水部26に給水された洗浄水Wが流入口から下方、すなわち内側吐水路26Aへの流入を抑制することができる。そのため、外側吐水路26B側へ誘導することができ、外側吐水路26Bへの流入量を増大させることができる。
また、内側ガイド262の第2ガイド部262Bの位置を調整することで、内側吐水口262aから噴出される内側洗浄水W1の広がりの上縁を規制することができる。
【0073】
また、本実施形態の場合には、外側吐水路26Bを通る洗浄水Wの上側を外側ガイド264に沿って案内することができる。つまり、外側ガイド264を設けることで、外側吐水路26Bの外側吐水口264aよりも外側に水が広がることを抑制でき、外側吐水口264aから噴出される外側洗浄水W2の広がりの上縁を規制することができる。
このように、本実施形態では、外側ガイド264が設けられない場合のように、給水開口261bから吐水部26に給水された洗浄水Wが給水開口261bから外側吐水口264aまで直接流通し、すなわち給水開口261bから外側吐水口264aまでの間で他の部分(吐水部26における左右方向X1の部分(
図17の吐水壁261の前面における外側ガイド264の上側部分))に洗浄水Wが流れ込まない通水経路となるため、噴出される洗浄水Wの勢いの低下を防ぐことができる。
そのため、給水開口261bから外側吐水路26Bに流入した洗浄水Wにおける外側吐水口264aまでの流れを安定させることができ、外側吐水口264aから噴出する外側洗浄水W2の洗浄流量の低下を抑えることができる。
【0074】
また、本実施形態では、吐水壁261の前面における内側吐水路26Aの左右中央に滴下防止ガイド263が設けられているので、その滴下防止ガイド263が便鉢11の陶器面に接触させて設けることができ、便鉢11に流れやすくなる。そのため、給水終了後にスプレッダー2内の残留水が滴下防止ガイド263を伝って便鉢11の正面部分に流れるため、鉢底面11Cに直接滴下するのを抑制することができる。
【0075】
このように本実施形態の小便器1によれば、左右方向の洗浄流量を増大させることで便鉢11の洗浄領域を拡大することができる。
【0076】
以上、本発明によるスプレッダー及び小便器の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0077】
例えば、本実施形態では、スプレッダー2の適用対象として、壁掛け式の小便器を対象としているが、床置き式の小便器に適用することも可能である。そして、小便器1の便鉢11や周壁部12における各部位の形状、大きさ、寸法、排水トラップ3の形状等の構成は、上述した実施形態に限定されることはなく、適宜、設定することが可能である。
【0078】
また、スプレッダー2の吐水部26の形状として、上述した実施形態のように各吐水路の面積を設定しているが、吐水部26における外側吐水路26Bと内側吐水路26Aのそれぞれに対応する箇所の少なくとも一部の面積において、外側吐水路26Bの面積を内側吐水路26Aの面積よりも大きく設定されていればよい。
【0079】
また、スプレッダー2の位置は、上述した実施形態で示した位置であることに限定されることがなく、便鉢11の正面部11Aであればその高さ方向の位置は適宜設定することができ、左右方向X1の位置も中央であることが好ましいが、多少左右方向X1にずれた位置であってもかまわない。
【0080】
さらに、本実施形態では、内側ガイド262、外側ガイド264、及び滴下防止ガイド263を設けた構成としているが、このようなガイド262、263、264を省略することも可能である。例えば、内側吐水路26Aと外側吐水路26Bは、内側ガイド262や外側ガイド264によって形成される流路であることに制限されることはなく、他の構成であってもよい。
【0081】
そして、内側ガイド262、外側ガイド264、及び滴下防止ガイド263の形状、位置などの構成も適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態では、内側ガイド262の構成として、水平ガイド部262Aと傾斜ガイド部262Bとを有しているが、これに限定されることはなく、水平ガイド部262Aの延在方向が水平方向ではなく内側流入口262bから外側へ離れる方向に向けて緩やかに下向き傾斜が形成されていてもよい。
また、内側ガイド262の形状として、内側吐水路26Aにおける内側流入口262b側から内側吐水口262a側に向けて斜め下方に延び、内側流入口262b側の第1ガイド部と内側吐水口262a側の第2ガイド部とが異なる方向に向けて延在していればよいのであって、例えばガイド全体が湾曲した形状であってもよい。
【0082】
さらにまた、内側ガイド262及び外側ガイド264は、スプレッダー2の前面に設けられるカバー体25側に配置してもよい。この場合、小便器本体10の陶器のサイズを変えてもスプレッダー2自体は共有することができる。しかも、スプレッダー2のカバー体25を、内側ガイド262及び外側ガイド264が異なる位置、形状とされたものに変更するだけで、吐水の量や流速の割合を変化させることができる。
【0083】
さらに、本実施形態では、便鉢11の側面部11B、11Bに洗浄棚15を設けた構成としているが、洗浄棚15が設けられていない小便器であってもよい。
【0084】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 小便器
2 スプレッダー
3 排水トラップ
4 目皿
11 便鉢
11c 排水口
11A 正面部
11B 側面部
11C 鉢底面
12 周壁部
13 開口部
26 吐水部
26A 内側吐水路
26B 外側吐水路
261b 給水開口
262 内側ガイド
262A 水平ガイド部(第1ガイド部)
262B 傾斜ガイド部(第2ガイド部)
262a 内側吐水口(内出口)
262b 内側流入口(内入口)
263 滴下防止ガイド
264 外側ガイド
264a 外側吐水口(外出口)
264b 外側流入口(外入口)
K 壁面
M1 内側出口面積
M2 内側入口面積
N1 外側出口面積
N2 外側入口面積
W 洗浄水
W1 内側洗浄水
W2 外側洗浄水
X1 左右方向
X2 前後方向
X3 上下方向