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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】低電圧配電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/20 20060101AFI20220527BHJP
   H02B 1/015 20060101ALI20220527BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
H02B1/20 B
H02B1/015
H02B1/20 C
H02B3/00 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018163453
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2019050722
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】17190427.9
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508161584
【氏名又は名称】エービービー・エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】ABB S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Vittor Pisani, 16, I-20124, MILANO, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルセッキ ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】プロゼルピオ シモーネ アンジェロ
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2164144(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/315401(US,A1)
【文献】国際公開第2014/064617(WO,A2)
【文献】特開昭61-154410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/20
H02B 1/015
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直支柱と水平横桟を有する支持構造を備え、さらに、1つ以上のバスバーを収容するバスバーコンパートメントと1つ以上の電気装置を収容する装置コンパートメントとを備え、前記バスバーコンパートメントと装置コンパートメントとが仕切り兼絶縁壁によって分離された低電圧配電盤であって、前記仕切り兼絶縁壁が、前記バスバーコンパートメントに対面し前記バスバー用の複数の保持兼支持を備える第1表面と、装置コンパートメントに対面し前記仕切り兼絶縁壁を介して前記バスバーと前記1つ以上の電気装置の間の第1接続手段の挿入/引き抜きをするための複数の開口を備えた第2表面とを有し、前記第1接続手段が、前記仕切り兼絶縁壁と協同して前記第1接続手段の挿入/引き抜き時に位相間の空隙を増大する第1絶縁手段を備えることを特徴とし、所定の条件下で、前記1つ以上の電気装置をロックして、前記バスバーと接触する動作位置への/前記バスバーと接触する動作位置からの、前記第1接続手段の挿入/引き抜きを防止する機械的ロック手段をさらに備える低電圧配電盤。
【請求項2】
前記第1接続手段の挿入/引き抜きをするための前記複数の開口の少なくともいくつかは、前記仕切り兼絶縁壁の前記第2表面から突出する隆起エッジを備えることを特徴とする請求項1に記載の低電圧配電盤。
【請求項3】
前記仕切り兼絶縁壁が、各々の上に垂直方向に積み重ねられた複数の絶縁モジュールから作られ、連続する壁を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の低電圧配電盤。
【請求項4】
前記バスバーコンパートメントが垂直方向に間隔を有する前記複数の絶縁モジュールから作られた裏壁を有することを特徴とする請求項3に記載の低電圧配電盤。
【請求項5】
前記第1接続手段は、絶縁材料から作られ1つ以上のクランプ手段を収容する中空体を備え、前記中空体は一端に前記バスバーの1つに接続するように構成された接続クランプを、他端に前記電気装置の1つの端子に接続される導電性の組みひもを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の低電圧配電盤。
【請求項6】
前記中空体は、第1の側面において、前記仕切り兼絶縁壁の前記第2表面から突出する前記隆起エッジの1つと協同し、第2の側面において、前記電気装置の1つに結合する固定手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の低電圧配電盤。
【請求項7】
前記中空体は、一体につながる第1の片側半分と第2の片側半分とを備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の低電圧配電盤。
【請求項8】
前記電気装置は、1つ以上の電気機器を収容する引き出しであることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の低電圧配電盤。
【請求項9】
前記引き出しは、前方プレートと後方プレートとを備え、前記後方プレートは前記低電圧配電盤の前記支持構造の上に固定され、前記前方プレートは前記後方プレートに対して挿入および引き抜き可能であり、前記前方プレートと前記後方プレートは前記前方プレートを前記後方プレートに摺動結合するための溝と対応隆起エッジとを備え、前記前方プレートは1つ以上の電気機器を支持するように構成され、前記後方プレートは少なくとも前記第1接続手段を通すための1つ以上の窓を備えることを特徴とする請求項8に記載の低電圧配電盤。
【請求項10】
1つ以上の前記第1接続手段を支持するように構成された第1ブラケットを有する第1接続キットを備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の低電圧配電盤。
【請求項11】
前記第1ブラケットは前記引き出しの前記前方プレートの後方部分に固定されることを特徴とする請求項10に記載の低電圧配電盤。
【請求項12】
前記電気機器の出力接続用の第2接続手段を支持するように構成された第2ブラケットを有する第2接続キットを備えることを特徴とする請求項8~11のいずれか1つに記載の低電圧配電盤。
【請求項13】
前記電気機器は前記第2接続手段と結合するためのプラグイン接続手段を備えることを特徴とする請求項12に記載の低電圧配電盤。
【請求項14】
前記引き出しの前記前方プレートに固定されるように構成された1つ以上の支持ブラケットと、1つ以上の計器及び/又は補助機器を支持するために前記引き出しの前記後方プレートに固定されるように構成された1つ以上の支持ブラケットとを備えることを特徴とする請求項8~12のいずれか1つに記載の低電圧配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配電盤、特に、改良された機能と特性を有する低電圧配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、低電圧配電盤用のキャビネットは、配電盤を構成する部品の機能的な要求及び設置上の要求に合うように特に設計され、製作される。実際に知られていることであるが、配電盤は互いに平行な金属バー、いわゆるバスバーのシステムを使用し、そのバーの各々は電源システムの対応する位相に接続される。キャビネットの内部では、それらのバーは、配電盤に用いられる装置、例えば、サーキットブレーカー、スイッチ、押しボタン、制御装置、及び類似の装置に電気的に接続されると共に、適当な絶縁体および支持装置に幾何学的に結合される。バスバーと装置との間の接続部は、例えば、プレートのような、装置のタイプ応じて適切に成形された適当な導電体によって形成される。
【0003】
バスバー支持装置は、バーを互いに電気的に絶縁することに加えて、バーをキャビネットの構造体に接続させる。この方法においては、バーにおいて電流の流れによって生じる動電気力のストレスはすべて、キャビネットの構造体に放出されるので、その構造体は十分な構造的強度特性を備えなければならない。さらに、電気機器は1つ以上の固定ガイド上に配置され、その固定ガイドはキャビネットのフレームに、直接又は追加の接続部品を用いて接続される。
【0004】
配電盤のキャビネットの内部では、バーが、意図的に設計された機器に幾何学的に結合されるが、それらの機器はバーを支持し、バーを互いに絶縁し、バーをキャビネットのより耐久性のあるフレームに接続することができる。この方法では、通常の構造的な支持体に加えて前記の機器も、バーの電流の流れによって生じるかなりの動電気力のストレスがフレーム上に放出されるようにできる。安全上の理由で、バスバーを前記装置が収容される配電盤の前側の容積から分離しておくために、絶縁性の仕切りが通常、配電盤内に設けられる。
【0005】
配電盤の前側に、1つ以上の電気装置、例えば、サーキットブレーカー、スイッチ、押しボタン、制御装置、および類似の装置が収容される装置コンパートメントを、通常、備える。いくつかの場合では、1つ以上の前記電気装置は、配電盤内でバスバーとの接続位置から引き抜くこと及びその接続位置へ挿入することができる引出しの中に収容される。
【0006】
装置とバスバーとを接続するために、バスバーコンパートメントと装置コンパートメントとの間の絶縁仕切りは、通常、装置とバスバー間の接続手段を通させるように設計される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
技術の現状では、既存の低電圧配電盤は、克服すべき多くの欠点を持っている。
【0008】
例えば、既知のタイプの支持装置の使用は、なかんずく、バスバーを支持するために、およびバスバーコンパートメントと装置コンパートメントとの間の絶縁仕切りを造るために、必要な部品の数と種類に関して、いくつかの欠点をもたらす。
【0009】
実際、図1を参照すると、従来の配電盤100は通常、垂直支柱103によって構造的に接続される基部101と頂上部102を有する支持構造を備える。多数のプレート104が、配電盤100の前側に設置されたバスバーコンパートメントと装置コンパートメント105間の仕切りを造るために配電盤100内に設けられている。装置コンパートメント105の中に、多数の電気装置120が収容され、それらのいくつかは、配電盤100内でバスバー106との接続位置から引き抜かれること及びその接続位置へ挿入されることが可能な1つ以上の引出し121に設置されている。
【0010】
図2を参照すると、種々のバスバー106が、前方搭載ブラケット108に固定された多数の前方支持体107と、後方搭載ブラケット110に固定された多数の後方支持体109とによって、種々の高さに支持されている。後方支持体109が通常、前方支持体107に対して異なる形状と寸法を有することは、注目に値する。
【0011】
プレート104、前方搭載ブラケット108、及び後方搭載ブラケット110は、多数のねじ111によって配電盤100の支持構造に固定されている。
現状の対応策は、それが固定用のねじ手段を必要とする非常に多数の構造的構成部品(例えば、プレート104、前方支持体107、対応する前方搭載ブラケット108、後方支持体109、及び対応する後方搭載ブラケット110)の使用を含む限りでは、製造コストや製造時間、さらに組み立ての時間と困難性が結果的に増大することによって、明らかに不利益であるということは、上記から明白である。
【0012】
その上、バスバー106の先端と底端を固定して絶縁するために、さらなる装置が必要とされ、それによって構造的な構成部品の数をさらに増大させ、その結果として、構造的な複雑性と、製造および組み立てコストと時間による欠点を、さらに増大させる。
【0013】
バスバー106が垂直方向に沿った不連続点においてのみ(つまり、連続的でなく)前方支持体107と後方支持体109によって支持され、それによって、バスバー106が動電気力のストレス、特に短絡状態におけるストレスに耐えることが難しくなるという事実によって、さらなる問題が生じる。そのような問題は、バスバー106の垂直方向に沿って互いに狭い間隔を有する多数の前方支持体107と後方支持体109を用いることによって部分的にのみ解決できるが、そのような解決策はさらに構成部品の数を増大させ、配電盤100へのバスバー106の組み込み作業を複雑にする。
【0014】
既存の配電盤のさらなる問題点は、装置とバスバー間の重要な接続によって与えられる。実際、例えばクランプや類似の接続手段のような電気装置(それらが搭載される引出しを含む)とバスバーとを接続する手段の挿入および引き抜き時に、位相間において予期しない電弧(アーク)が生じる危険性は、常に存在している。そのような危険性を避けるか、少なくとも減らすために、そして、配電盤の電気的に生きている部品間のIP保護の所望のレベルを達成するために、従来の低電圧配電盤では、位相間に複雑な絶縁システムを設けるのが通常である。
【0015】
規制の変更により最近明らかになった他の問題は、装置の接点、例えばサーキットブレーカーの接点が閉じられたときに、その装置の、および結果的にはサーキットブレーカーが予め組み込まれている引出しの挿入を防止し、また、その装置の接点が閉じられたときに、前記装置(及び関連する引出し)の引き抜きを防止する機械的ロックシステムを有することの必要性である。一般的に、既存の引出しは、比較的重く、比較的多数の部品によって形成されるので、それらの組み立てや、引出し内での電気装置の設置や、配電盤内の作動位置への挿入および作動位置からの引き抜き作業を難しくする。
【0016】
従って、この発明は、上記欠点の少なくともいくつかを克服できる低電圧配電盤を提供することを目的とする。特に、この発明は、バスバーアセンブリを固定し、バスバーコンパートメントを装置アセンブリから分離し、配電盤内の1つ以上の電気装置の挿入/引き抜きをするために必要な部品の数が、著しく減少する低電圧配電盤を提供することを目的とする。
【0017】
さらに、この発明は、配電盤内での1つ以上の電気装置の挿入/引き抜き時の位相間の予期しない電弧(アーク)発生の危険性が、従来の配電盤に対して、回避されるか、少なくとも著しく減少する低電圧配電盤を提供することを目的とする。
【0018】
それに加えて、この発明は、電気装置がONの状態にあるときに、その電気装置の挿入/引き抜きを防止する、電気装置および引出しの機械的安全ロックに関する現在の要求に合う低電圧配電盤を提供することを目的とする。
【0019】
また、この発明は、信頼性があり、競争力のあるコストで比較的容易に生産できる低電圧配電盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、この発明は、垂直支柱と水平横桟を有する支持構造を備え、さらに、1つ以上のバスバーを収容するバスバーコンパートメントと1つ以上の電気装置を収容する装置コンパートメントとを備え、前記バスバーコンパートメントと装置コンパートメントとが仕切り兼絶縁壁によって分離された低電圧配電盤に関する。この発明の低電圧配電盤は、前記仕切り兼絶縁壁が、前記バスバーコンパートメントに対面し前記バスバー用の複数の保持兼支持手段を備える第1表面と、前記装置コンパートメントと対面し前記仕切り兼絶縁壁を介して前記バスバーと前記1つ以上の電気装置の間の第1接続手段の挿入/引き抜きをするための複数の開口を備えた第2表面とを有し、前記第1接続手段が、前記仕切り兼絶縁壁と協同して前記第1接続手段の挿入/引き抜き時に位相間の空隙を増大する第1絶縁手段を備え、前記低電圧配電盤はさらに、所定の条件下で、前記1つ以上の電気装置をロックして、前記バスバーと接触する動作位置への/前記バスバーと接触する動作位置からの、前記第1接続手段の挿入/引き抜きを防止する機械的ロック手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
次の記述でさらによく説明するように、この発明の配電盤の特別な構造的によって、上記問題点は回避されるか、少なくとも大きく減少する。
【0022】
実際、電気装置をロックして、所定の条件下、例えば、前記電気装置がON位置にあるときに、バスバーに接触する作動位置への/作動位置からの電気装置の挿入/引き抜きを防止するための機械的ロック手段は、現行の規制の要求に合うことができる。
【0023】
次の記述でよりよく説明するように、第1接続手段の第1絶縁手段は、バスバーと電気装置間の接続点における絶縁性能を向上させ、それによって、配電盤における電気装置の挿入/引き抜き動作時に発生する予期しない電弧(アーク)の危険性を回避するか、少なくとも大きく減少させる。
【0024】
さらに、仕切り兼絶縁壁は、低電圧配電盤の内部で、バスバーを支持し、バスバーコンパートメントと装置コンパートメントとの間に効果的な仕切り兼絶縁壁を造るという二つの機能を有し、それによって、その二つの機能目的を達成するために通常必要とされる構成部品の数を大きく減少させる。
【0025】
この発明による、低電圧配電盤の好ましい実施形態において、第1接続手段の挿入/引き抜き用の前記複数の少なくともいくつか、好ましくは、全ては、仕切り兼絶縁壁の第2表面から突出する隆起エッジを備える。実際、次の記述でよりよく説明するように、その隆起エッジは、開口を実質的に取り囲み第1接続手段と協同して、接続点に対応するより良い絶縁性を保証する。
【0026】
この発明の低電圧配電盤の非常に好ましい実施形態によれば、前記仕切り兼絶縁壁は、各々の上に垂直方向に積み重ねられた複数の絶縁モジュールから作られる。前記絶縁モジュールは、「低電圧配電盤用キャビネット内の、コンパートメントを仕切ってバスバーを支持する装置」という名称の、本願と同じ出願人による同時係属の欧州特許出願に詳述され、その記述は引用によってここに完全に組み込まれるので、さらに詳述されない。
【0027】
ここに開示される低電圧配電盤の通常の代表的な実施形態において、バスバーコンパートメントは、その前側で、仕切り兼絶縁壁によって閉鎖され、反対側で、垂直方向に間隔を有する複数の前記絶縁モジュールから好ましく作られた裏壁によって都合よくその範囲が定められる。
【0028】
好ましくは、前記第1接続手段は、絶縁材料から作られた中空体を都合よく備える。その中空体は1つ以上のバスバー固定手段、通常はクランプ手段を収容するが、そのクランプ手段は、一端に、バスバーの1つと接続するように構成された接続クランプ有し、他端に、電気装置の1つの端子と接続するための導電性の組みひもを有する。
【0029】
従って、この発明の低電圧配電盤の非常に好ましい実施形態において、前記中空体は、第1側面において、仕切り兼絶縁壁の第2表面から突出する隆起エッジの1つと協同し、前記第1側面に対向する第2側面において、電気装置の1つと結合するための固定手段を備える。前記固定手段は、瞬時固定手段(例えば、クランプ手段、スナップ嵌合手段、摺動手段など)又は、ねじ手段、あるいは、その2つの組合せであることが可能である。
【0030】
接続手段の組み立てを容易にするために、特に、接続手段が例えば2つ以上の接続クランプを備えるときに、前記中空体は、前記接続クランプやクランプためのハウジングを形成するために一体につながれる第1の片側半分と第2の片側半分とを結合することによって、都合よく形成される。
【0031】
この発明による低電圧配電盤の一般的な実施形態において、1つ以上の前記電気装置は、1つ以上の電気機器を支持して収容する引出しである。従って、この発明の目的にかなうために、「電気装置」という用語は、特定の電気機器(例えば、サーキットブレーカー、スイッチ、押しボタン、制御機器、又は類似の装置)のみならず、電気機器を支持し、支持した電気機器を、低電圧配電盤の中に挿入したり、低電圧配電盤から引き抜くために用いられる「引出し」を示すために用いられる。
【0032】
従って、この発明による低電圧配電盤の好ましい実施形態において、前記引出しは、前方プレート(前方容器)と後方プレート(後方容器)とを備える。前記後方プレートは通常、低電圧配電盤の支柱構造に、例えば前記低電圧配電盤の少なくとも2つの垂直支柱に固定され、一方、前記前方プレートは、後方プレートへの挿入と、後方プレートからの引き抜きとが可能である。
【0033】
前記前方プレートと後方プレート間の機械的な摺動結合は、前記前方プレートと後方プレートの上に設けられた溝と、対応する隆起エッジとを、いずれかの順序で(つまり、前方プレート上に隆起エッジを、そして後方プレート上に溝を、又は前方プレート上に溝を、そして後方プレート上に隆起エッジを)備えることができる。摺動結合の他の形式は、必要に応じて選択可能である。
【0034】
通常、前方プレートは1つ以上の電気機器を支持するように有利に構成され、一方、後方プレートは少なくとも第1接続手段を通すための1つ以上の窓を備えることができる。実際、使用者による電気機器へのアクセスは前方プレートを介して行われ、一方、バスバーへの電気機器の接続は後方プレートを介して行われる。
【0035】
この発明の好ましい実施形態において、電気機器の引出しへの組み込みと、電気機器の使用者による挿入/引き抜き動作とを、容易に、かつ、迅速にするために、前記低電圧配電盤は、第1接続手段の1つ以上を支持するように構成された第1ブラケットを有する第1接続キットを都合よく備えることができる。
【0036】
実際、この実施形態によれば、第1ブラケットは前記引出しの前方プレートの後方部分に固定することができる。第1ブラケットは、第1接続手段が挿入されて固定される多数の開口を都合よく備えることができる。
【0037】
例えば、第1接続手段の中空体は、第1ブラケットの開口に挿入され、そこに固定されることができる。中空体に収容されたクランプ手段は、電気機器の端子に、例えば導電性の組みひもで接続され、一方、接続クランプは、バスバーの1つに接続するために第1ブラケットの後方部分から突出する。
【0038】
この方法では、電気機器と、バスバーとの電気機器の接続部は、引出しの前方プレートの中に予め容易に、かつ、迅速に組み込むことができ、それによって、低電圧配電盤の装着箇所において実行するのに要する作業を最小にする。
【0039】
さらに、つぎの詳細な説明においてよりよく説明するように、この発明による低電圧配電盤は、前記電気機器の出力接続用の第2接続手段を支持するように構成された第2ブラケットを有する第2接続キットを都合よく備えることができる。第2ブラケットは低電圧配電盤の支持構造に、例えば、低電圧配電盤の垂直支柱に都合よく固定され、前記第2接続手段は、前記電気機器に備えられた対応する接続手段にプラグイン接続ができるように有利に構成される。
最後に、この発明による低電圧配電盤は、前方プレート上に固定されるように構成された1つ以上の支持ブラケットと、1つ以上の装置及び/又は補助機器を支持するために前方プレート上に固定されるように構成された1つ以上の支持ブラケットとを、必要に応じて備えることができる。
【0040】
この発明のさらなる特徴と利点は、添付図で実例により示される、低電圧配電盤の好ましいが排他的でない実施形態の説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】先行技術による低電圧配電盤の斜視図である。
図2】先行技術による低電圧配電盤における、バスバーと仕切り壁用の支持装置を形成する部品の分解斜視図である。
図3】この発明による低電圧配電盤の前から見た第1斜視図である。
図4】この発明による低電圧配電盤の裏から見た第2斜視図である。
図5】この発明による低電圧配電盤で用いられる引出しの実施形態の斜視図である。
図6】この発明による低電圧配電盤で用いられる引出しの実施形態の分解斜視図である。
図7】この発明による低電圧配電盤で用いられる第1接続手段用の第1支持ブラケットの第1実施形態の第1斜視図である。
図8】この発明による低電圧配電盤で用いられる第1接続手段用の第1支持ブラケットの第1実施形態の第2斜視図である。
図9】この発明による低電圧配電盤で用いられる第1接続手段の第1実施形態の斜視図である。
図10】この発明による低電圧配電盤で用いられる第1接続手段の第1実施形態の分解斜視図である。
図11】この発明による低電圧配電盤で用いられる第2接続手段の第2支持ブラケットの第1実施形態の第1斜視図である。
図12】この発明による低電圧配電盤で用いられる第2接続手段用の第2支持ブラケットの第1実施形態の第2斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
添付図3~12を参照すると、この発明の低電圧配電盤1は、互いに強固に接続された多数の垂直支柱3と水平横桟4とによって構成された支柱構造2を備える。低電圧配電盤1の内部空間は、少なくとも、1つ以上のバスバー5を収容するバスバーコンパートメント10と、1つ以上の電気装置6が設置された装置コンパートメント20に分割されている。バスバーコンパートメント10と装置コンパートメント20とは、その2つのコンパートメントの全垂直長さに沿って延びる仕切り兼絶縁壁30によって分離されている。
【0043】
この発明の低電圧配電盤1の特徴の1つは、仕切り兼絶縁壁30が、バスバー5用の保持して支持する手段を複数備えるバスバーコンパートメント10に対面する第1表面を有するという事実によって与えられる。換言すれば、コンパートメントとバスバー用の専用の支持装置との間に専用の仕切り版を必要とする先行技術の配電盤と異なり、この発明の低電圧配電盤1においては、仕切り兼絶縁壁30が、絶縁/仕切り機能とバスバーの支持機能との両方を実行する。
【0044】
そこで、仕切り兼絶縁壁30は、複数の貫通開口33を備える装置コンパートメント20に対面する第2表面32を有し、その複数の貫通開口33によって、仕切り兼絶縁壁30を介しての、バスバー5と1つ以上の電気装置6間における第1接続手段40の挿入/引き抜きが可能になる。
【0045】
この発明の低電圧配電盤1のさらに異なる特徴は、第1接続手段40が、仕切り兼絶縁壁30と協同する第1絶縁手段41を備えて第1接続手段40の挿入/引き抜き時の位相間の空隙を増大させ、それによって、低電圧配電盤における電気機器の挿入/引き抜き動作時の不用意な電弧(アーク)の発生の危険性を回避するという事実によって与えられる。
【0046】
この発明の低電圧配電盤1のさらに異なる特徴は、所定の条件下で、1つ以上の電気装置6をロックし、バスバー5に接触する動作位置への挿入と、その動作位置からの引き抜きとを防止する機械的ロック手段を備えるという事実によって与えられる。例えば、サーキットブレーカーの場合には、その機械的ロック手段は、接点が接触位置にある時、サーキットブレーカーの挿入/引き抜きを防止する。
【0047】
図3を参照すると、低電圧配電盤1の代表的な実施形態において、仕切り兼絶縁壁30の第2表面32は、第1接続手段40の挿入/引き抜き用の複数の貫通開口33に対応して、第2表面32から突出して貫通開口33を囲む隆起エッジ331を備える。この方法において、電気装置とバスバーを接続する手段、例えばクランプ、の引き抜き時に位相間の空隙を増大し、低電圧配電盤1の電気的に生きている部品間のIP20保護を達成することが可能である。
【0048】
この発明の低電圧配電盤1の特に好ましい実施形態によれば、仕切り兼絶縁壁30は、各々垂直方向に積み重ねられた複数の絶縁モジュール35から作られ、連続する壁を形成する。そのような絶縁モジュール35は、上記で引用した同時係属中の欧州特許出願に開示されているので、詳細には説明しない。
【0049】
図4に示すように、低電圧配電盤1の通常の実施形態において、バスバーコンパートメント10は、仕切り兼絶縁壁30に対向する裏壁15を有するが、その仕切り兼絶縁壁30は垂直方向に間隔を有する複数の絶縁モジュール35から好ましく作られる。そのような裏壁15に用いられる絶縁モジュール35の数とそれらの相対距離は、配電盤の定格Icwに依存し、必要性に応じて選択される。
【0050】
図9と10を特に参照すると、この発明の低電圧配電盤の代表的な実施形態において、第1接続手段40は絶縁材料から作られた絶縁中空体41を備える。絶縁中空体41の内部には、1つ以上のクランプ手段420、430が収容される。クランプ手段420、430の数は、一般的に1つ以上であり、必要性、つまり、定格電流に応じて選択可能である。
【0051】
クランプ手段420,430は、一端にバスバー5の1つに接続するように構成された接続クランプ421,431を、他端に電気装置6の1つの対応する端子に接続するための導電性の組みひも(図示しない)を、有する。その組みひもは、短絡の場合に動電気力による垂直と水平のストレスに耐えるように、絶縁中空体41に少なくとも部分的に包含されて支持される。
【0052】
好ましくは、絶縁中空体41は、第1側面において、仕切り兼絶縁壁30の第2表面32から突出する隆起エッジ331の1つと協同し、電気装置6の挿入/引き抜き時に位相間の空隙を増大させて、接続クランプ421,431を完全に絶縁する。そこで、絶縁中空体41は、前記第1側面に対向する第2側面において、次に詳述するように、電気装置6の1つに結合するための固定手段42,43を都合よく備える。
【0053】
図10に詳しく示すように、絶縁中空体41は、クランプ手段420,430用のハウジングを形成するために、互いに接続される第1の片側半分401と第2の片側半分402とを用いて都合よく実現される。そのようなデザインは、第1接続手段40の組み立てを容易にする。第1の片側半分401と第2の片側半分402は、瞬時接続手段、例えば第2の片側半分402の対応スロット又は等価保持手段に係合する第1の片側半分401の歯405を用いて、互いに容易に接続できる。
【0054】
この発明による、低電圧配電盤1の特に好ましい実施形態において、電気装置6は1つ以上の電気機器300を収容する引出し60である。以前に指摘したように、この明細書の目的のために、「電気装置」という用語は、特定の電気機器(例えば、サーキットブレーカー、スイッチ、制御装置、又は類似の装置)のみならず、電気機器を支持したり、電気機器を低電圧配電盤に挿入したり、電気機器を低電圧配電盤から引き抜いたりするために用いられる引出しを指すために用いることができる。
【0055】
図5と6を特に参照すると、引出し60は通常、前方プレート61と後方プレート62とを備える。後方プレート62は、低電圧配電盤1の支柱構造2に(例えば、図3と4に示す垂直支柱3に)、固定手段(例えば、ねじ手段)を用いて、例えば後方プレート62の横側面625を低電圧配電盤1の支柱構造2に接続することによって、都合よく固定される。
【0056】
前方プレート61は、後方プレート62の中へそれらの間の摺動結合手段を用いて挿入可能であると共に、後方プレート62からそれらの間の摺動結合手段を用いて引き抜き可能である。特に、前方プレート61は隆起エッジ610を備え、隆起エッジ610は後方プレート62上に設けられた対応溝620に摺動可能に挿入できる。前方プレート61に溝を、後方プレート62上に隆起エッジを有することも、また、前方プレート61と後方プレート62との間に異なる結合摺動手段を用いることも可能である。前方プレート61と後方プレート62は、互いに直接に、及び/又は中間固定ブラケット88を介して固定可能である。
【0057】
引出し60の前方プレート61は、1つ以上の電気機器300を支持し、使用者がその前方からアクセスできるように構成されている。さらに、前方プレート61の前側には、その操作と挿入/引き抜き動作を容易にするために一対のハンドル615を都合よく設けることができる。
【0058】
引出し60の前方プレート61は、電気機器300の電気的接続のために、1つ以上の窓621,622,623を都合よく備える。特に、窓621の少なくとも1つは、第1接続手段40を通すように構成されている。
【0059】
図7と8を参照すると、この発明の低電圧配電盤1の好ましい実施形態において、第1接続手段40は、第1接続手段40を支持するように構成された第1ブラケット71を備える第1接続キット70によって都合よく支持されている。特に第1ブラケット71は、第1接続手段40が挿入される多数の開口72を有するプレートを備える。
【0060】
実際、図7と9に示すように、絶縁中空体41の一端は、開口72の1つに挿入され、図7に示すように第1ブラケット71のプレートの表面に係合する固定手段42、例えば弾性のある歯によって適所に保持される。図8を参照すると、第1ブラケット71のプレートの他の側面において、絶縁中空体41が固定手段43、例えば、絶縁中空体41上の台座と第1ブラケット71の対応する台座とに入り込むねじ手段を用いて適所に保持される。
【0061】
以前に述べたように、クランプ手段420の端部422は、導電性の組みひもを用いて電気機器300の対応端子に都合よく接続される。図12に示すように、第1ブラケット71は、引出し60の前方プレート61の後方部分に固定される。
【0062】
図11と12を参照すると、この発明の低電圧配電盤1のさらに好ましい実施形態において、低電圧配電盤1は、電気機器300の出力接続用の第2接続キット80を有利に備える。
【0063】
この実施形態によれば、第2接続キット80は、電気機器300の引出し接続用の第2接続手段82を支持するように構成された第2ブラケット81を備える。上述の図に示すように、第2ブラケット81は、第2接続手段82が低電圧配電盤1の前に向かって対面するように、低電圧配電盤1の支柱構造2に都合よく固定される。引出し60が低電圧配電盤1に挿入された時、第2接続手段82は、引出し60の後方プレート62の窓622を介して電気機器300の出力接続端子301に接続できる。
【0064】
有利なことに、第2接続手段82と電気機器300の出力接続端子301との間の接続手段は、プラグインタイプのものであり、例えば、第2接続手段82の各々は、電気機器300の対応接続端子301を挿入クランプするための接続クランプを備えることができる。また、電気機器300の下流装置への出力接続は、引出し60の後方プレート62の横側に設けられた窓623を介して下流装置を出力接続端子301へ直接接続することによって実行可能である。
【0065】
この発明による、低電圧配電盤1の特定の実施形態において、1つ以上の装置又は類似の機器を支持するために、引出し60の前方プレート61に固定されるように構成された1つ以上の支持ブラケット91(図5)を有することが可能である。例えば、補助機器の接続プラグを支持するために、引出し60の後方プレート62に固定されるように構成された1つ以上の支持ブラケット92(図6)を有することも可能である。そのような場合には、前方プレート61は、引出し60の前方プレート61から前記プラグへ雄/雌接続させる開口616を都合よく備えることができる。補助機器、例えば測定変圧器650もまた、引出し60の内部空間に収容可能である。
【0066】
この発明の低電圧配電盤が、意図した目的を十分に達成し、上述した既存の配電盤の問題点を解決することは、上記から明白である。
【0067】
いくつかの変形を、低電圧配電盤に対して作ることができるが、考案されるすべてのものは、添付の特許請求の範囲内に収まる。実際、使用する材料や、確定されていない寸法や形状は、必要な条件と技術の状況により、どのようにでもできる。
【符号の説明】
【0068】
1 低電圧配電盤
2 支柱構造
3 垂直支柱
4 水平横桟
5 バスバー
6 電気装置
10 バスバーコンパートメント
15 裏壁
20 装置コンパートメント
30 仕切り兼絶縁壁
31 第1表面
32 第2表面
33 貫通開口
35 絶縁モジュール
40 第1接続手段
41 絶縁中空体
42,43 固定手段
60 引出し
61 前方プレート
62 後方プレート
70 第1接続キット
71 第1ブラケット
72 開口
80 第2接続キット
81 第2ブラケット
82 第2接続手段
88 中間固定ブラケット
91,92 支持ブラケット
300 電気機器
301 出力接続端子
331 隆起エッジ
401 第1の片側半分
402 第2の片側半分
405 歯
420 クランプ手段
421,431 接続クランプ
422,432 他端
430 クランプ手段
610 隆起エッジ
615 ハンドル
620 対応溝
621,622,623 窓
625 横側面
650 測定変圧器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12