(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】シャッター装置の電動と手動の切替装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/74 20060101AFI20220527BHJP
E06B 9/72 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
E06B9/74 Z
E06B9/72
(21)【出願番号】P 2018181666
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】馬場 寿一
(72)【発明者】
【氏名】重村 正和
(72)【発明者】
【氏名】船石 睦雅
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-208585(JP,A)
【文献】特開2015-031022(JP,A)
【文献】特開2011-214282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/56- 9/92
9/24- 9/388
F16D 43/02-43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッターカーテンを開閉移動させるためにこのシャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸と、この巻取軸を回転させるための電動モータを備えている開閉機と、前記巻取軸と前記電動モータとの間に介設され、オンとなることにより前記電動モータの駆動力を前記巻取軸に伝達して前記シャッターカーテンを電動によって開閉移動可能とさせるとともに、オフとなることにより前記巻取軸と前記電動モータとの間を遮断して前記シャッターカーテンを手動によって開閉移動可能とさせるためのクラッチと、を含んで構成されているシャッター装置の電動と手動の切替装置において、
前記クラッチのオン、オフの切り替えを検出するための電気スイッチを備えて
おり、
前記クラッチは、前記電動モータ側の駆動回転部材と、前記巻取軸側の被動回転部材とを含んで構成され、前記駆動回転部材と前記被動回転部材とのうち、一方の回転部材が他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することによりこれらの回転部材の接続、遮断が生じて前記クラッチのオン、オフが切り替えられ、前記電気スイッチは、前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することを検出して前記クラッチのオン、オフの切り替えを検出するものとなっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記シャッターカーテンの開閉移動と停止を行わせるための操作装置と、この操作装置からの信号と前記電気スイッチからの信号とが入力するとともに、前記開閉機を制御するための制御装置とを有し、この制御装置は、前記電気スイッチが前記クラッチのオフを検出したときに、前記操作装置からの前記シャッターカーテンに前記開閉移動と前記停止を行わせるための信号を無効にして、前記開閉機を制御しないものとなっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記シャッターカーテンの開閉移動と停止を行わせるための操作装置と、この操作装置からの信号と前記電気スイッチからの信号とが入力するとともに、前記開閉機を制御するための制御装置と、この制御装置により作動する報知手段とを有し、前記制御装置は、前記電気スイッチが前記クラッチのオフを検出したときに、前記操作装置からの前記シャッターカーテンに前記開閉移動を行わせるための信号を無効とせずに、前記開閉機の前記電動モータを所定時間空転させ、前記報知手段に前記クラッチがオフになったことを報知させるための作動を行わせるものとなっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記クラッチは、前記一方の回転部材を
前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるために作動する作動部材を有し、前記クラッチのオン、オフの切り替えを検出するための前記電気スイッチは、この作動部材の作動を検出するものとなっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記一方の回転部材を前記他方の回転部材側へ弾性付勢するための弾性部材を有し、前記作動部材が前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させる方向は、前記弾性部材による弾性付勢方向とは逆方向となっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記作動部材は軸を中心に回動するものとなっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項7】
請求項6に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記作動部材には、前記一方の回転部材の外面に形成された突部に当接する当接部が設けられ、前記軸を中心とする前記作動部材の回動により、前記当接部が前記突部を押圧することで前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項8】
請求項7に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記当接部は、前記突部側へ湾曲して突出した湾曲突出部となっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記突部は前記一方の回転部材の外面の全周に渡って形成されたリング状突部となっており、前記当接部は、前記一方の回転部材の直径方向の両側に設けられていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項10】
請求項9に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記作動部材は、ベース部材と、2個のアーム部を有するU字状の補助部材とを含んで構成され、前記一方の回転部材の直径方向の両側に配置されている前記2個のアーム部のうち、1個のアーム部が前記ベース部材に結合され、前記2個のアーム部のそれぞれに前記当接部が設けられていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項11】
請求項6~10のいずれかに記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記電気スイッチを動作させるための動作部材を有し、前記作動部材はこの動作部材を備えたものとなっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項12】
請求項11に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記動作部材は、前記作動部材の一部に動作部としてこの作動部材に一体に形成されたものとなっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記作動部材には前記軸を挿入するための孔が形成され、前記作動部材は、前記孔の周辺部において前記動作部材を備えたものとなっていることを特徴とするシャッター装置の電動と手動の切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置の開閉移動するシャッターカーテンを電動式から手動式に、また手動式から電動式に切り替えるための切替装置に係り、例えば、車庫用シャッター装置や窓用シャッター装置等の各種用途のためのシャッター装置に適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1及び2には、シャッター装置の開閉移動するシャッターカーテンを電動式から手動式に、また手動式から電動式に切り替えることができる切替装置が示されている。この切替装置を備えたシャッター装置は、シャッターカーテンを開閉移動させるためにこのシャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸と、この巻取軸を回転させるための電動モータを備えた駆動装置となっている開閉機と、巻取軸と電動モータとの間に介設され、オンとなることにより電動モータの駆動力を巻取軸に伝達してシャッターカーテンを電動で開閉移動可能とさせるとともに、オフとなることにより巻取軸と電動モータとの間を遮断してシャッターカーテンを手動によって開閉移動可能とさせるためのクラッチと、を含んで構成されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-317471号公報
【文献】特開2015-31022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようにシャッターカーテンを電動式から手動式に、また手動式から電動式に切り替えるためのクラッチを備えたシャッター装置では、クラッチがオン又はオフに切り替えられたときに、この切り替えを検出することができれば、そのときのシャッター装置が電動式か手動式かを確認できる等の機能を付与できるため、そのようなシャッター装置が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、クラッチのオン、オフの切り替えを検出できるようになるシャッター装置の電動と手動の切替装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシャッター装置の電動と手動の切替装置は、シャッターカーテンを開閉移動させるためにこのシャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸と、この巻取軸を回転させるための電動モータを備えている開閉機と、前記巻取軸と前記電動モータとの間に介設され、オンとなることにより前記電動モータの駆動力を前記巻取軸に伝達して前記シャッターカーテンを電動によって開閉移動可能とさせるとともに、オフとなることにより前記巻取軸と前記電動モータとの間を遮断して前記シャッターカーテンを手動によって開閉移動可能とさせるためのクラッチと、を含んで構成されているシャッター装置の電動と手動の切替装置において、前記クラッチのオン、オフの切り替えを検出するための電気スイッチを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
このため、本発明に係るシャッター装置の電動と手動の切替装置では、クラッチのオン、オフの切り替えを電気スイッチにより検出することができ、これにより、電動式から手動式に、また手動式から電動式に切り替え可能となっているシャッター装置に、例えば、そのときのシャッター装置が電動式か手動式かを確認できる等の各種機能を付与することができる。なお、電気スイッチは接触式のものでもよく、非接触式のものでもよい。また、電気スイッチは、クラッチに関する機械的運動を電気信号に変換できるものであれば、例えば、マイクロスイッチやテープスイッチ等の任意のものでよい。
【0008】
そして、シャッター装置に付与することができる各種機能の一例は、シャッター装置に設けられる表示装置に、そのときのクラッチが、オンとオフのうち、どちらの状態になっているかを、言い換えると、電動と手動のうち、どちらでシャッターカーテンを開閉移動させることができる状態になっているかを表示することである。
【0009】
また、他の例の機能は、シャッターカーテンの電動による開閉移動や停止を行わせるために、「開」「閉」「停」の操作ボタンが設けられている操作装置からの操作信号を制御装置に送り、この制御装置が電動モータを有している開閉機を制御するようになっているシャッター装置において、電気スイッチによりクラッチのオフが検出されているときに、前記操作装置から制御装置に送られる「開」信号や、「閉」信号、「停」信号を、制御装置において無効とすることである。
【0010】
また、他の例の機能は、「開」「閉」「停」信号を制御装置において無効とするのではなく、「開」信号及び「閉」信号が送られた制御装置が開閉機の電動モータを所定時間、例えば、1秒間だけ空転させるとともに、この制御装置が、警報装置や表示装置等の報知手段を作動させて音声及び/又は表示によりクラッチがオフとなっていることを上記操作装置を操作している者に警告できるようにすることである。なお、このようにする場合において、「停」信号が制御装置に送られたときに、この制御装置が、警報装置や表示装置等の報知手段を作動させて音声及び/又は表示によりクラッチがオフとなっていることを上述の操作装置を操作している者に警告できるようにしてもよい。
【0011】
さらに、他の例の機能は、オフとなっていたクラッチがオンとなったときに、これを検出した電気スイッチの電気信号を前記制御装置に送り、制御装置は、シャッター装置に設けられている表示装置に、前記操作装置の「開」ボタンを操作してシャッターカーテンを全開位置まで開き移動させることを促すための表示を行わせるようにすることである。これによると、クラッチがオフとなっているときに手動で開閉移動させたシャッターカーテンがどの位置で停止していても、前記操作装置の操作者が前記表示装置の表示に従ってシャッターカーテンを全開位置まで開き移動させることにより、シャッターカーテンがそのときどきでどの位置にあるかを開閉機の電動モータの回転数や巻取軸の回転数で検出するための検出手段についてのカウントをリセットさせることが可能となり、これにより、カウントの原点をシャッターカーテンの全開位置で設定することができるようになる。
【0012】
以上の本発明に係るシャッター装置の電動と手動の切替装置において、クラッチのオン、オフの切り替え原理は任意のものでよく、その一例は、クラッチを、前記電動モータ側の駆動回転部材と、前記巻取軸側の被動回転部材とを含んで構成されたものとし、駆動回転部材と被動回転部材とのうち、一方の回転部材が他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することにより、これらの回転部材の接続、遮断が生じてクラッチのオン、オフが切り替えられるものである。クラッチをこのように構成する場合には、前記電気スイッチを、前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することを検出してクラッチのオン、オフの切り替えを検出するものとしてもよい。
【0013】
このように電気スイッチを、前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することを検出してクラッチのオン、オフの切り替えを検出するものとする場合には、電気スイッチは、前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することを直接検出することにより、クラッチのオン、オフの切り替えを検出するものでもよく、あるいは、クラッチが、前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるために作動する作動部材を有するものとなっている場合には、電気スイッチを、この作動部材の作動を検出するものとし、作動部材の作動が電気スイッチで検出されることにより、前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することが検出されて、クラッチのオン、オフの切り替えが検出されるようにしてもよい。
【0014】
なお、後者のように電気スイッチを、前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるための作動部材の作動を検出するものとする場合には、この作動部材は、前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向の一方の側へのみスライド移動させるものとなっていて、前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向の他方の側へスライド移動することは、例えば、ばね等の弾性部材の弾性力により行われ、この弾性部材の弾性力によって前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向の前記他方の側へスライド移動することにより、作業部材も前記他方の側へ作動するようになっていてもよく、あるいは、作動部材が、前記一方の回転部材を他方の回転部材に対して軸方向の両方の側へスライド移動させるものとなっていてもよい。
【0015】
また、前述したようにクラッチを、駆動回転部材と被動回転部材とのうち、一方の回転部材が他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することによりオン、オフの切り替えがなされるものとする場合におけるオン、オフの切り替え原理は、任意のものでよい。
【0016】
その一例のクラッチは、駆動回転部材と被動回転部材との間にボールが介設されたボール式のクラッチであって、前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することにより、駆動回転部材と被動回転部材におけるボールの位置が、駆動回転部材と被動回転部材とを回転方向に接続する接続位置と、駆動回転部材と被動回転部材とを回転方向に接続しない非接続位置とに切り替えられるものである。
【0017】
また、他の一例のクラッチは、駆動回転部材と被動回転部材のうち、一方の回転部材に軸方向に突設された複数本のピンと、他方の回転部材に軸方向の長さをもって形成され、駆動回転部材のそれぞれのピンが挿抜可能となっている複数個の穴とからなるものであり、前記一方の回転部材が前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動することにより、ピンが穴に挿抜されてクラッチのオン、オフが切り替わるものである。
【0018】
さらに、前述したように前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるための作動部材が用いられるクラッチでは、この作動部材は、駆動回転部材と被動回転部材の軸方向に移動することにより、前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるものでもよく、あるいは、この作動部材は、軸を中心に回動可能となった回動部材となっていて、この回動により、一方の回転部材を他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるものでもよい。
【0019】
後者のように作動部材を、軸を中心に回動可能となっている回動部材とし、この回動により、一方の回転部材を他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるためには、作動部材に、例えば、前記一方の回転部材の外面に形成された突部に当接する当接部を設け、前記軸を中心とする作動部材の回動により、当接部が突部を押圧することで一方の回転部材を他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるようにすればよい。
【0020】
そして、このように作動部材に、前記一方の回転部材の外面に形成された突部に当接する当接部を設け、前記軸を中心とする作動部材の回動により、当接部が突部を押圧することで一方の回転部材を他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるようにする場合には、当接部を突部側へ湾曲して突出した湾曲突出部とすることが好ましい。
【0021】
これによると、前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるために作動部材が前記軸を中心に回動しているときにおいて、当接部が突部側へ湾曲して突出した湾曲突出部となっていることにより、この当接部を突部に点接触状態で円滑に当接し続けさせることができ、これにより、前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向に円滑にスライド移動させることができる。
【0022】
また、上述したように作動部材に、前記一方の回転部材の外面に形成された突部に当接する当接部を設け、前記軸を中心とする作動部材の回動により、当接部が突部を押圧することで前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるようにする場合には、突部を前記一方の回転部材の外面の全周に渡って形成されたリング状突部とし、当接部を、前記一方の回転部材の直径方向の両側に設けることが好ましい。
【0023】
これによると、当接部が突部を押圧することで前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させることは、前記一方の回転部材の直径方向の両側において2個設けられている当接部により行われるため、前記一方の回転部材の直径方向の両側でのこれらの当接部からの押圧力により、前記一方の回転部材を前記他方の回転部材に対して一層円滑に軸方向にスライド移動させることができる。
【0024】
また、本発明に係るシャッター装置の電動と手動の切替装置に電気スイッチを動作させるための動作部材を設けるためには、作動部材をこの動作部材を備えたものとしてもよい。
【0025】
これによると、電気スイッチを動作させるための動作部材は、駆動回転部材と被動回転部材とのうち、一方の回転部材を他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させるための作動部材に設けられるため、一方の回転部材を他方の回転部材に対して軸方向にスライド移動させてクラッチのオン、オフを切り替えるための作動部材の作動を電気スイッチによって一層確実に検出することができるようになる。
【0026】
また、このように電気スイッチを動作させるための動作部材を作動部材に設ける場合であって、前述したように作動部材を軸を中心に回動する回動部材とする場合には、作動部材に前記軸を挿入するために形成されている孔の周辺部において、作動部材に動作部材を設けてもよい。
【0027】
これによると、孔に挿入された軸を中心とする作動部材の回動を電気スイッチにより一層確実に検出することができる。
【0028】
さらに、上述したように電気スイッチを動作させるための動作部材を作動部材に設ける場合には、作動部材と動作部材とを別部品として製造し、これらの作動部材と動作部材とを溶接やビス等で結合一体化してもよく、あるいは、動作部材を、作動部材の一部である動作部として、作動部材と一体に形成してもよい。
【0029】
後者のように動作部材を、作動部材の一部である動作部として、作動部材と一体に形成すると、動作部材を作動部材とは別に製造しなくてもよいため、部品の削減や構造の簡単化を達成できる。
【0030】
以上説明した本発明に係るシャッター装置の電動と手動の切替装置は、各種用途のためのシャッター装置に適用でき、例えば、車庫用シャッター装置にも適用でき、窓用シャッター装置にも適用でき、出入口用シャッター装置等にも適用できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、シャッターカーテンを電動式から手動式に、また手動式から電動式に切り替えるためのクラッチを備えているシャッター装置において、クラッチのオン、オフの切り替えを検出できるようになるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動と手動の切替装置が適用されているシャッター装置の全体を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1で示されている左右一対のブラケットに設けられた軸受部材で支持されている巻取軸を、ブラケットと軸受部材とを二点鎖線で示した正面図である。
【
図3】
図3は、
図2で示されている開閉機と制御装置を含んで構成されたユニット構造体を示す正面図である。
【
図5】
図5は、
図3で示されているリングギヤ周辺の縦断面図である。
【
図6】
図6は、リングギヤと、被動回転部材に設けられているピニオンギヤ部と、ガイドローラとの位置関係を、ガイドローラを二点鎖線で示した側断面図である。
【
図7】
図7は、クラッチの構造を示す平面図であって、クラッチがオンとなっているときの図である。
【
図8】
図8は、クラッチがオフとなっているときを示す
図7と同様の図である。
【
図9】
図9は、クラッチの構造を示す一部断面の正面図であって、クラッチがオンとなっているときの図である。
【
図10】
図10は、クラッチがオフとなっているときにおける
図9と同様の図である。
【
図11】
図11は、駆動回転部材を示し、(A)は正断面図、(B)は左側面図である。
【
図12】
図12は、被動回転部材を示し、(A)は正断面図、(B)は右側面図である。
【
図13】
図13は、作動部材を示し、(A)は平面図、(B)は右側面図、(C)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態に係る電動と手動の切替装置が用いられているシャッター装置の全体正面図が示されており、このシャッター装置は、車庫用シャッター装置である。開閉移動方向が上下方向となっているシャッターカーテン1により、室内と室外との間に設けられた開口部となっている出入口11が開閉されるため、シャッターカーテン1によって室内と室外が仕切られる。出入口11の左右両側には、内部にシャッターカーテン1の左右両端部である幅方向両端部が上下にスライド自在に挿入された一対のガイドレール2が配設され、これらのガイドレール2は柱等の躯体3に取り付けられている。出入口11の上方において、左右一対のブラケット4が壁等の躯体5に取り付けられ、これらのブラケット4に、シャッターカーテン1の上端が吊元部材を介して連結された巻取軸6が水平に架け渡されている。この巻取軸6は正逆回転自在であり、巻取軸6の正回転により、出入口11を開放するためにシャッターカーテン1は巻取軸6に巻き取られ、また、巻取軸6の逆回転により、出入口11を閉鎖するためにシャッターカーテン1は巻取軸6から繰り出される。左右一対のブラケット4と巻取軸6は、ブラケット4や躯体5に取り付けられたシャッターケース7の内部に収納されている。
【0034】
シャッターカーテン1の略全部は、上下方向に連設された多数のスラット8により形成され、上下両端部に設けられたカール部同士の係合によりシャッターカーテン1の厚さ方向に互いに回動自在となって連結されているこれらのスラット8のなかには、施錠装置9が取り付けられている施錠装置9付きスラット8Aがある。また、このシャッターカーテン1の巻取軸6による巻き取りと繰り出しは、後述するように電動により行われるとともに、手動によっても行われるため、スラット8のなかには、手を掛けることにより手動でシャッターカーテン1を上下に開閉移動させることができて、巻取軸6も回転させることができる手掛け部材10が取り付けられた手掛けスラット8Bも設けられている。
【0035】
なお、施錠装置9は、シャッターカーテン1が手動で開閉移動可能となっているときに、シャッターカーテン1を全閉位置で開閉移動不能とするために、スラット8Aに進退自在に配置されているラッチ部材をガイドレール2の内部に固定されているラッチ受け部材に係止させるものである。
【0036】
図2には、シャッターカーテン1の上端が結合されていないときの巻取軸6が示されている。この巻取軸6は、巻取軸6の中心部に配置されていて、長さ方向の両端部が左右一対のブラケット4に設けられた軸受部材12に結合具15で回転不能に結合されて支持されている中心軸13と、この中心軸13の外周に中心軸13を中心に回転自在に配置されている回転体14とを含んで構成されている。回転体14は、中心軸13の軸方向に複数個が並設され、それぞれが中心軸13に対して軸受部材20で回転自在となっているホイール部材21と、これらのホイール部材21同士を連結している連結棒状部材22とを有するものとなっており、ホイール部材21の円周方向に複数本設けられている連結棒状部材22は、それぞれのホイール部材21の外周部に溶接で結合されることにより、あるいは、それぞれのホイール部材21の外周部に形成された凹部に圧入嵌合等されることにより、これらのホイール部材21を連結している。これらのホイール部材21にシャッターカーテン1の上端部の吊元部材がビス等の結合具により結合されることにより、中心軸13に対する回転体14の正回転により、シャッターカーテン1は回転体14に巻き取られて上方への開き移動を行い、また、中心軸13に対する回転体14の逆回転により、シャッターカーテン1は回転体14から繰り出されて下方への閉じ移動を行う。
【0037】
また、巻取軸6には、回転体14の逆回転時に戻しばね力が蓄圧され、この戻しばね力が補助力となって回転体14を正回転させるための戻しばね23が配置されており、この戻しばね23は、中心軸13の外周に巻回装備されたコイルばねであり、このコイルばねの一方の端部は結合具24で中心軸13に結合されているとともに、他方の端部は結合具25でホイール部材21に結合されている。
【0038】
また、
図2に示されているように、巻取軸6の中心軸13には、開閉機26と、この開閉機26を電気的に制御するための制御装置27とを含んで構成されたユニット構造体28が取り付けられており、このユニット構造体28は
図3にも示されている。開閉機26は、電動モータと、この電動モータの正逆の回転駆動力を減速させて出力させるための減速装置と、電動モータを停止させるためのブレーキとの組み合せからなり、電動モータの正逆の回転駆動力が減速装置を介して後述するように巻取軸6の回転体14に伝達されることにより、シャッターカーテン1は電動により上下方向の開閉移動を行い、電動モータがブレーキで停止することにより、シャッターカーテン1は全閉位置や、全開位置、半開位置等で停止する。このようなシャッターカーテン1の開閉移動や停止を行わせるために、「開」「閉」「停」の操作ボタンが設けられた図示外の操作装置が操作され、この操作装置からの信号が無線又は有線によって制御装置27に入力することにより、この制御装置27によって開閉機26は電気的に制御される。
【0039】
図3に示されているように、制御装置27は開閉機26に連結部材29,30により連結されており、
図2から分かるように、これらの開閉機26と制御装置27との間に、巻取軸6のうちの中心軸13が挿通されるようになっている。連結部材29,30のうち、連結部材29は、開閉機26の先部の部分を形成しているベース部材31に取り付けられており、このベース部材31には、
図2のS4-S4線断面図である
図4でも示されている軸32Aにより挟着部材32の一端部が取り付けられ、この挟着部材32は、ベース部材31に対して軸32Aを中心に回動自在である。中心軸13をベース部材31と挟着部材32との間に挿通させるとともに、開閉機26と制御装置27との間にも挿通させた後に、ボルト等の結合具33で挟着部材32の他端部をベース部材31に結合することにより、中心軸13がベース部材31と挟着部材32により挟着され、これにより、ユニット構造体28は、巻取軸6のうちの中心軸13に固定されるようになっている。
【0040】
なお、
図4に示されているように、挟着部材32にはピン等による凸部32Bが設けられ、この凸部32Bが中心軸13に形成された孔等による凹部に挿入されることにより、ユニット構造体28は、中心軸13の円周方向に位置決めされてこの中心軸13に取り付けられるようになっている。
【0041】
図3に示されているように、ユニット構造体28の先端側にはリングギヤ35とキャップ部材36が配置されており、
図5は、これらのリングギヤ35とキャップ部材36における縦断面図である。金属製の厚板で形成されているリングギヤ35と、金属板のプレス品であるキャップ部材36は、リングギヤ35が、キャップ部材36よりもユニット構造体28側となって中心軸13の軸方向に並設され、キャップ部材36の外周フランジ部36Aがリングギヤ35に
図3と
図4に示されているビス等の結合具37で結合されることにより、リングギヤ35とキャップ部材36は結合一体化されている。
【0042】
また、
図5に示されているように、ベース部材31には、中心軸13の軸方向に延びることによりリングギヤ35とキャップ部材36の内部に侵入した延出部31Aが設けられ、この延出部31Aの先端部は、中心軸13の直径方向に立上った立上り部31Bとなっている。この立上り部31Bには、キャップ部材36に形成されている開口部36Bに遊嵌状態で挿入されたボス部材38が、
図4でも示されているボルト等の結合具39により結合され、また、
図5に示されているように、ボス部材38のうち、中心軸13の外周に嵌合されている軸部38Aは、中心軸13にボルト等の結合具40により結合されている。
【0043】
すなわち、
図5に示されているように、結合具40の雄ねじ軸部40Aを、ボス部材38の軸部38Aに形成した雌ねじ孔38Cに螺入するとともに、この雌ねじ孔38Cから突出した雄ねじ軸部40Aの先端部を、
図4に示されているように、中心軸13にこの中心軸13の円周方向の長さをもって形成されている凹部51の内部に突出させて、雄ねじ軸部40Aの先端部を凹部51の底部に当接させることにより、ボス部材38は結合具40で中心軸13に結合されている。
【0044】
このようにして結合具40で中心軸13に結合されたボス部材38には、
図5に示されているように、ボス部材38に取り付けられた軸41を中心に回転自在となっているガイドローラ42が設けられ、このガイドローラ42は、
図6に示されているように、中心軸13の円周方向に等角度間隔で複数個、図示例では3個設けられ、それぞれのガイドローラ42は、
図5に示されているように、キャップ部材36の円周内面36Cに当接している。このため、これらのガイドローラ42のガイド作用により、キャップ部材36と、このキャップ部材36に結合具37で結合されているリングギヤ35は、中心軸13と、この中心軸13に結合具40に結合されたボス部材38とに対して回転自在となっている。
【0045】
また、
図6に示されているように、リングギヤ35の外周部には複数の凹部35Aが形成され、
図4に示されているように、キャップ部材36の外周フランジ部36Aにも複数の凹部36Dが形成され、これらの凹部35A,36Dに前述した巻取軸6を構成している回転体14の連結棒状部材22が嵌合されることにより、リングギヤ35と、キャップ部材36と、回転体14とが、中心軸13を中心に一体となって回転するようになっている。
【0046】
図3で説明した開閉機26には出力軸45が設けられ、この出力軸45は、開閉機26の電動モータの駆動力により減速装置で減速されて回転する。出力軸45の前部の外周には駆動回転部材46が配置され、この駆動回転部材46は、出力軸45の外周に巻回装備されたコイルばねによる弾性部材47の弾性力により電動モータ側とは反対側である前進方向へ常時弾性的に付勢されており、この前進側には、被動回転部材48が駆動回転部材46と同軸的に配置されている。駆動回転部材46と、被動回転部材48と、これらの駆動回転部材46と被動回転部材48の間に配置されている後述のボールは、電動モータの駆動力を巻取軸6に伝達するためのクラッチ49を構成する構成要素となっており、このクラッチ49がオンとなることにより、電動モータの駆動力を巻取軸6に伝達するために、駆動回転部材46と被動回転部材48とがボールを介して回転方向に接続され、また、クラッチ49がオフとなることにより、駆動回転部材46と被動回転部材48との回転方向の接続が遮断されるようになる。
【0047】
図3に示されているように、被動回転部材48の前部は、多数の歯が円周方向に形成されたピンオンギヤ部48Aとなっており、このピニオンギヤ部48Aは、
図5に示されているように、リングギヤ35の内周面に多数形成されている歯部50に噛合している。後述するように、駆動回転部材46には、電動モータの駆動力で回転する出力軸45から回転力が伝達されるため、クラッチ49がオンとなることで駆動回転部材46の回転が被動回転部材48に伝達されると、回転する被動回転部材48のピンオンギヤ部48Aにより、リングギヤ35と、このリングギヤ35に結合具37で結合されているキャップ部材36は、ガイドローラ42によるガイド作用により中心軸13を中心に回転し、巻取軸6の回転体14も回転する。この回転が前述した正回転であるときには、前述したようにシャッターカーテン1は上方への開き移動を行い、また、この回転が前述した逆回転であるときには、シャッターカーテン1は下方への閉じ移動を行う。
【0048】
図9には、出力軸45と駆動回転部材46と被動回転部材48の関係が示されている。出力軸45は、駆動回転部材46と被動回転部材48の内部に挿通されており、このため、同軸的に配置されているこれらの駆動回転部材46と被動回転部材48は、出力軸45を中心に正確に回転するものとなっている。また、出力軸45の先端部45Aは、前述したベース部材31の立上り部31Bに挿通されており、このため、この立上り部31Bにより、出力軸45の先端部45Aは回転自在に支持されている。なお、本実施形態では、
図4及び
図5に示されているように、前述したボス部材38の外周部には、出力軸45の先端部45Aを挿入することができる切欠部38Bが設けられている。
【0049】
本実施形態ずでは、ボス部材38とベース部材31の立上り部31Bとを結合するための前述した結合具39は、
図5に示されているように、中心軸13の軸方向が長さ方向となっているボルト等によるものであるため、結合具39によりボス部材38とベース部材31の立上り部31Bとを結合するための作業を、中心軸13の軸方向から容易に行え、また、被動回転部材48のピニオンギヤ部48Aをリングギヤ35の歯部50に噛合させるための作業も容易に行える。
【0050】
また、本実施形態のリングギヤ35は、前述したように金属製の厚板で形成されているため、このリングギヤを、例えば、鋳造品とした場合よりも、リングギヤ35を安価かつ容易に製造することができる。また、リングギヤ35を前述したガイドローラ42のガイド作用により中心軸13を中心に回転自在とさせるためのキャップ部材36は、金属板のプレス品であるため、リングギヤ35を中心軸13を中心に回転自在とさせるための部材も、安価かつ容易に製造することができる。
【0051】
次に、前述したクラッチ49について説明する。
図9で説明したように、クラッチ49は、開閉機26の電動モータの駆動力で回転する出力軸45がそれぞれの内部に挿通された駆動回転部材46と被動回転部材48とを含んで構成され、これらの駆動回転部材46と被動回転部材48のうち、駆動回転部材46の前部は、被動回転部材48の内部に嵌合された内径嵌合部46Aとなっており、被動回転部材48の後部は、この内径嵌合部46Aの外部に嵌合した外径嵌合部48Bとなっている。このため、駆動回転部材46の前部と被動回転部材48の後部は、内外径方向に嵌合した内径嵌合部46Aと外径嵌合部48Bの関係になっており、これらの内径嵌合部46Aと外径嵌合部48Bの間に、クラッチ49の構成要素であるボール52が転動自在に配置されている。
【0052】
図11には駆動回転部材46が示され、
図11(A)は、この駆動回転部材46の正断面図であり、
図11(B)は、駆動回転部材46の左側面図である。駆動回転部材46の内径嵌合部46Aの外周面46Bには、ボール52の一部が挿入可能となっている窪み部53が内径方向に窪んで形成され、この窪み部53は、駆動回転部材46の円周方向に等間隔で複数個、本実施形態では、
図11(B)に示されているように3個形成されている。それぞれの窪み部53の前側には、これらの窪み部53の前端を開口させ、かつ駆動回転部材46の軸方向に窪み部53と連続しているリング状面部54が設けられ、駆動回転部材46の中心部から窪み部53の底部と同じ半径距離に設けられているこのリング状面部54は、駆動回転部材46の全周に渡って連続した円形の面部となっている。このため、駆動回転部材46の内径嵌合部46Aの前部は、窪み部53から前方へ突出した筒状部55となっており、この筒状部55は、窪み部53が設けられている外周面46Bよりも駆動回転部材46の中心部からの半径距離が短くて、外周面がリング状面部54となったものである。
【0053】
また、駆動回転部材46における前述の出力軸45が挿通される中心孔46Cには、この駆動回転部材46の軸方向の途中部から駆動回転部材46の後端まで延びる長溝56が形成され、この長溝56も駆動回転部材46の円周方向に等間隔で複数個、本実施形態では
図11(B)に示されているように、3個形成されている。
【0054】
図12には被動回転部材48が示され、
図12(A)は、この被動回転部材48の正断面図であり、
図12(B)は、被動回転部材48の右側面図である。被動回転部材48の外径嵌合部48Bの内周面48Cには、ボール52の一部が挿入可能となっている窪み部57が外径方向に窪んで形成され、この窪み部57は、駆動回転部材46の窪み部53と同じく、被動回転部材48の円周方向に等間隔で3個形成されている。
【0055】
また、
図9に示されているように、駆動回転部材46と被動回転部材48の内部に挿通される出力軸45の外周面には、軸方向に長い寸法を有する長溝58が形成され、この長溝58も出力軸45の円周方向に等間隔で3個形成されている。
【0056】
出力軸45を駆動回転部材46の内径嵌合部46Aの内部と被動回転部材48の外径嵌合部48Bの内部とに挿通する際には、
図9に示されているように、駆動回転部材46の長溝56と出力軸45の長溝58とに、これらの長溝56,58と共にボールスプライン60を構成する2個のボール61がセパレート部材62で分離されて挿入される。これにより、出力軸45と駆動回転部材46とがボールスプライン60により回転方向に接続されて、出力軸45の回転が駆動回転部材46に伝達されるようになるとともに、ボールスプライン60により、駆動回転部材46は出力軸45に対して軸方向にスライド移動自在となっている。そして、駆動回転部材46の後端には、塞ぎ部材63がビス等の止着具で止着され、この塞ぎ部材63により長溝56の開口端が塞がれる。
【0057】
また、駆動回転部材46の内径嵌合部46Aを被動回転部材48の外径嵌合部48Bの内部に嵌合する際には、駆動回転部材46の窪み部53と被動回転部材48の窪み部57とにボール52が挿入され、被動回転部材48の後端には、塞ぎ部材64がビス等の止着具65で止着され、この塞ぎ部材64により窪み部57の開口端が塞がれる。
【0058】
以上において、
図9に示されているように、駆動回転部材46が、出力軸45の外周に巻回装備されたコイルばねによる弾性部材47により被動回転部材48側へ前進付勢されているときには、ボール52は、駆動回転部材46に窪み部53と被動回転部材48の窪み部57との位置にある。これらの窪み部53,57における駆動回転部材46及び被動回転部材48の回転方向の幅寸法は、ボール52の一部だけを挿入することができる短いものとなっているため、窪み部53,57は、ボール52を駆動回転部材46及び被動回転部材48の回転方向に拘束する拘束部となっており、このため、このときのクラッチ49は、出力軸45からボールスプライン60を介して駆動回転部材46に伝達される回転が被動回転部材48にも伝達されるオンの状態となっている。
【0059】
したがって、このときの駆動回転部材46と被動回転部材48におけるボール52の配置位置は、駆動回転部材46と被動回転部材48とをボール52を介して回転方向に接続することによりクラッチ49をオンとする接続位置となっている。
【0060】
これに対して
図10に示されているように、駆動回転部材46が、弾性部材47の弾性力に抗して被動回転部材48側とは反対側である開閉機26の電動モータ側へ後退したときには、ボール52は、被動回転部材48の窪み部57に一部が挿入された状態を維持して、駆動回転部材46の窪み部53から脱出し、駆動回転部材46のリング状面部54に達するため、このときのボール52の位置は、被動回転部材48に設けられているリング状面部54の位置となっている。このリング状面部54は、被動回転部材48の全周に渡って形成されているため、ボール52を駆動回転部材46及び被動回転部材48の回転方向に拘束しない非拘束部となっている。このため、このときのクラッチ49は、出力軸45から駆動回転部材46に伝達される回転が被動回転部材48には伝達されないオフの状態となっている。
【0061】
したがって、このときの駆動回転部材46と被動回転部材48におけるボール52の配置位置は、駆動回転部材46と被動回転部材48とをボール52を介して回転方向に接続しないことによりクラッチ49をオフとする非接続位置となっている。
【0062】
このように本実施形態では、クラッチ49のオン、オフが切り替わるためにボール52の配置位置が接続位置と非接続位置に変更されるときには、ボール52が駆動回転部材46と被動回転部材48とに対して転動するため、このクラッチ49のオン、オフの切り替えが、ボール52の転動により摩擦がない又は摩擦が殆どない状態で行われることになり、これにより、クラッチ49のオン、オフの円滑な切り替えを実現できる
【0063】
図7には、駆動回転部材46を前述した弾性部材47の弾性力に抗して被動回転部材48側とは反対側である開閉機26の電動モータ側へ後退させるために作動する作動部材70が示されている。駆動回転部材46や、被動回転部材48、さらにはボール52と共にクラッチ49を構成する要素となっているこの作動部材70は、ベース部材31の前述した延出部31Aに軸71を中心に回動自在に配置されており、本実施形態では、この軸71は、作動部材70を延出部31Aに回動自在に止着するためのビス等の止着具となっている。
【0064】
図13には作動部材70が示され、
図13(A)は、この作動部材70の平面図であり、
図13(B)は、作動部材70右側面図であり、
図13(C)は、作動部材70の斜視図である。作動部材70は、細長板状のベース部材72と、このベース部材72の上面に結合された補助部材73とからなり、この補助部材73は、板材をU字状に折り曲げることにより形成されているため、補助部材73は、上下2個のアーム部73A,73Bと、これらのアーム部73A,73Bの基端部同士を連結している連結部73Cとからなり、アーム部73A,73Bのうち、下側のアーム部73Bは、ベース部材72の長さ方向の途中箇所に溶接等で結合されている。ベース部材72の先端部には、作動部材70の回動中心軸となっている軸71を挿入させるための孔74が設けられている。
【0065】
図7に示されているように、駆動回転部材46の外面には、この駆動回転部材46の後端部において、駆動回転部材46の外径方向に突出した突部46Dが設けられており、この突部46Dは、駆動回転部材46の全周に渡って連続して形成されたリング状突部となっている。作動部材70は、補助部材73の上下2個のアーム部73A,73Bの位置が駆動回転部材46の直径方向の両側の位置となって、ベース部材31の延出部31Aに軸71を中心に回動自在に配置される。これを言い換えると、作動部材70は、補助部材73の上下2個のアーム部73A,73Bが駆動回転部材46をこの駆動回転部材46の直径方向に挟むようにして、ベース部材31の延出部31Aに軸71を中心に回動自在に配置される。それぞれのアーム部73A,73Bには、リング状突部46Dと対向する先端箇所において、このリング状突部46Dに当接する当接部75が設けられており、これらの当接部75は、リング状突部46D側へ湾曲して突出した湾曲突出部となっている。
【0066】
また、
図13に示されているように、作動部材70のベース部材72における孔74が設けられた端部とは反対側の端部には、
図7で示されている紐状部材であるワイヤー76の一方の端部を接続部材77で接続するための接続部78が設けられている。
図7に示されているように、ワイヤー76は、端部がベース部材31に結合部材79で結合されたアウターケーブル80の内部に挿通されて、
図2に示されているように、開閉機26や制御装置27で構成される前述のユニット構造体28に沿って延び、ワイヤー76の他方の端部は、クラッチ49のオン、オフの切り替えを行うために操作される図示外の切替操作器まで延びており、この切替操作器は、例えば、シャッターカーテン1の開閉移動を案内する左右一対のガイドレール2のうちの一方に配置されている。
【0067】
切替操作器に設けられている操作レバーの操作を行うと、
図8に示されているように、ワイヤー76に作用する引っ張り力により、作動部材70は軸71を中心に回動する。
【0068】
ワイヤー76に引っ張り力が作用していない
図7では、駆動回転部材46は弾性部材47の弾性付勢力により出力軸45上を被動回転部材48側へ移動しているため、クラッチ49は、
図9に示されているように、オンとなっている。このようにクラッチ49がオンとなっているときに、前述した「開」「閉」「停」の操作ボタンが設けられている操作装置の「開」操作ボタン又は「閉」操作ボタンを操作すると、操作装置からの信号が入力する制御装置27で制御される開閉機26の電動モータの駆動力により出力軸45が回転し、この回転は駆動回転部材46と被動回転部材48を介してリングギヤ35に伝達されるため、巻取軸6の回転体14は、シャッターカーテン1を開き移動させるための正回転又は閉じ移動させるための逆回転を電動によって行う。
【0069】
また、上述した切替操作器の操作レバーの操作を行うと、ワイヤー76に作用する引っ張り力で作動部材70は、
図8に示されているように軸71を中心に回動するため、作動部材70に設けられている当接部75が駆動回転部材46の外面に設けられている突部46Dを押圧し、この押圧により、駆動回転部材46は、弾性部材47による弾性付勢方向とは逆方向に弾性部材47を圧縮させながら被動回転部材48に対してスライド移動する。これにより、クラッチ49は、
図10に示されているように、オンからオフに切り替わる。クラッチ49がオフになると、駆動回転部材46と被動回転部材48の接続は遮断されるため、シャッターカーテン1を、
図1で示した手掛け部材10に掛けた手より手動によって開閉移動させて、巻取軸6の回転体14を回転させることができる。
【0070】
また、切替操作器の操作レバーを上記操作とは逆の操作を行うと、ワイヤー76に作用していた引っ張り力は消滅し、これにより、駆動回転部材46は、
図7に示されているように、弾性部材47の弾性付勢力により被動回転部材48側へスライド移動して、クラッチ49はオフからオンに切り替わるため、シャッターカーテン1を開閉移動させるための巻取軸6の回転体14の回転を電動によって行うことができるようになる。また、駆動回転部材46が弾性部材47の弾性付勢力により被動回転部材48側へスライド移動したときには、作動部材70は、駆動回転部材46に突部46Dからの押圧力が当接部75に作用することにより、軸71を中心に戻り回動する。
【0071】
なお、クラッチ49をオフからオンに切り替える際に、それまでにシャッターカーテン1を手動で開閉移動させていたために駆動回転部材46の窪み部53と被動回転部材48の窪み部57との位置が回転方向にずれている場合には、シャッターカーテン1を電動で開閉移動させるために電動モータの駆動力により出力軸45を介して駆動回転部材46が回転することにより、これらの窪み部53,57の位置が自ずと回転方向に一致するときが生ずるため、このときにボール52が窪み部53,57に挿入され、これにより、クラッチ49はオフからオンに切り替わる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る作動部材70は、ワイヤー76に作用する引っ張り力により軸71を中心に回動する回動部材となっており、この作動部材70には、駆動回転部材46の外面に設けられている突部46Dに当接する当接部75が設けられていて、作動部材70が軸71を中心に回動することにより、クラッチ49をオフとするためにこの当接部75が突部46Dを押圧して、駆動回転部材46が被動回転部材48側とは反対側へスライド移動するようになっており、また、当接部75は、突部46D側へ湾曲して突出した湾曲突出部となっている。このため、作動部材70が軸71を中心に回動しているときに、この当接部75は、突部46Dに点接触状態で円滑に当接し続けることになり、これにより、駆動回転部材46を被動回転部材48に対して出力軸45の軸方向に円滑にスライド移動させることができる。
【0073】
また、駆動回転部材46の外面に設けられている突部46Dは、この駆動回転部材46の全周に渡って形成されたリング状突部となっているとともに、作動部材70にこの突部46D側へ湾曲して突出した湾曲突出部となって設けられている当接部75は、駆動回転部材46の直径方向の両側において、2個設けられているため、当接部75が突部46Dを押圧することで駆動回転部材46を被動回転部材48に対して軸方向にスライド移動させることを、駆動回転部材46直径方向の両側からの押圧力により行わせることができ、これにより、駆動回転部材46の被動回転部材48に対する軸方向へのスライド移動を一層円滑に行わせることができる。
【0074】
さらに、本実施形態に係るシャッター装置には、
図7及び
図8に示されているように、前述した開閉機26のベース部材31の延出部31Aにおいて、電気スイッチ81が配置されている。この電気スイッチ81は、クラッチ49のオン、オフの切り替えを検出するためのものであり、さらに詳しくは、電気スイッチ81は、駆動回転部材46が被動回転部材48に対して軸方向へのスライド移動することを検出することにより、クラッチ49のオン、オフの切り替えを検出するためのものとなっている。そして、この電気スイッチ81は、ベース部材31の延出部31Aに配置されている動作部材82に接触し、この動作部材82によって動作するものとなっていて、本実施形態に係る作動部材70は、後述するように電気スイッチ81を動作させるための動作部材82を備えたものとなっているため、電気スイッチ81は、駆動回転部材46を被動回転部材48に対して軸方向へスライド移動させるための作動部材70の作動により動作するものとなっている。
【0075】
これを一層具体的に説明すると、
図13に示されているように、作動部材70は、前述のベース部材72に形成されている軸71を挿入するための孔74の周辺部において、動作部材82を備えたものとなっており、この動作部材82は、作動部材70の一部となっている動作部として作動部材70に一体に形成されている。このため、作動部材70が、駆動回転部材46を被動回転部材48に対して軸方向へのスライド移動させるために軸71を中心に回動すると、電気スイッチ81は、作動部材70の一部に動作部としてこの作動部材70に一体に形成されている動作部材82により動作することになる。
【0076】
なお、動作部材82は、作動部材70とは別部品として製造して作動部材70に結合一体化してもよいが、以上のように動作部材82を、作動部材70の一部に動作部として、作動部材70と一体に設けることにより、部品の削減や構造の簡単化を達成できる。
【0077】
本実施形態では、
図8に示されているように、ワイヤー76の引っ張り力により作動部材70が軸71を中心に回動し、また、
図7に示されているように、ワイヤー76の引っ張り力の消滅により、弾性部材47の弾性力によって駆動回転部材46を介して作動部材70が軸71を中心に戻り回動して、クラッチ49のオン、オフの切り替えが行われるときに、作動部材70と一体となって動作部材82も軸71を中心に回動することになり、これにより電気スイッチ81が動作して、クラッチ49のオン、オフの切り替えが電気スイッチ81により検出される。
【0078】
クラッチ49のオン、オフの切り替えを検出した電気スイッチ81からの電気信号は、開閉機26を電気的に制御するための制御装置27に送られる。これにより、電気スイッチ81でクラッチ49のオフが検出されているときには、前述した「開」「閉」「停」の操作ボタンが設けられている操作装置から制御装置27に送られる「開」信号や、「閉」信号、「停」信号は、制御装置27において無効とされ、この制御装置27は開閉機26を制御しない。
【0079】
また、「開」「閉」「停」信号を制御装置27において無効とするのではなく、「開」信号及び「閉」信号が送られた制御装置27が開閉機26の電動モータを所定時間、例えば、1秒間だけ空転させるとともに、この制御装置27が、警報装置や表示装置等の報知手段を作動させて音声及び/又は表示によりクラッチ49がオフとなっていることを上記操作装置を操作している者に警告できるようにしてもよい。なお、このようにする場合において、「停」信号が制御装置27に送られたときに、この制御装置27が、警報装置や表示装置等の報知手段を作動させて音声及び/又は表示によりクラッチ49がオフとなっていることを上述の操作装置を操作している者に警告できるようにしてもよい。
【0080】
また、オフとなっていたクラッチ49がオンとなったときには、これを検出した電気スイッチ81の電気信号は制御装置27に送られ、これにより、制御装置は、「開」「閉」「停」の操作ボタンが設けられている操作装置に配置された表示装置、又はこの操作装置とは別にシャッター装置に設けられている表示装置に、上記操作装置の「開」ボタンを操作してシャッターカーテン1を全開位置まで開き移動させることを促すための表示を行わせる。これにより、クラッチ49がオフとなっているときに手動で開閉移動させたシャッターカーテンがどの位置で停止していても、上記操作装置の操作者が上記表示装置の表示に従ってシャッターカーテン1を全開位置まで開き移動させることにより、シャッターカーテン1がそのときどきでどの位置にあるかを開閉機26の電動モータの回転数や巻取軸6の回転体14の回転数で検出するための検出手段についてのカウントをリセットし、カウントの原点をシャッターカーテン1の全開位置で設定できるようにする。なお、この場合において、上記操作装置の「閉」ボタンが操作されたときには、制御装置27は「閉」信号を無効とし、開閉機26の電動モータを駆動させない。
【0081】
また、クラッチ49のオン、オフを検出した電気スイッチ81からの電気信号により、「開」「閉」「停」の操作ボタンが設けられている操作装置に配置された表示装置、又はこの操作装置とは別にシャッター装置に設けられている表示装置において、クラッチ49が、オンとオフのうち、現在どちらの状態になっているかを、すなわち、電動と手動のうち、現在どちらでシャッターカーテン1を開閉移動させることができる状態になっているかを表示するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、例えば、車庫用シャッター装置や窓用シャッター装置等の各種用途のためのシャッター装置の開閉移動するシャッターカーテンを電動式から手動式に、また手動式から電動式に切り替えるために利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 シャッターカーテン
6 巻取軸
14 巻取軸の回転体
26 開閉機
45 出力軸
46 駆動回転部材
46D 突部
48 被動回転部材
49 クラッチ
70 作動部材
71 軸
74 孔
75 当接部
81 電気スイッチ
82 動作部である動作部材