(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】不揮発性記憶装置、及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
G11C 13/00 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
G11C13/00 480B
G11C13/00 215
G11C13/00 480K
G11C13/00 480C
(21)【出願番号】P 2018545512
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2018024077
(87)【国際公開番号】W WO2019054001
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2017174642
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「長期保管ReRAMの設計とデバイス実証」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】安原 隆太郎
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-40090(JP,A)
【文献】特開2009-76143(JP,A)
【文献】特開2017-58913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える抵抗変化素子と、
前記第1電極及び前記第2電極間に電圧パルスを印加する電圧パルス印加回路と、
前記電圧パルス印加回路を制御する制御回路とを備え、
前記電圧パルス印加回路は、
前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、
前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、を実行し、
前記制御回路は、外部からの指令を受けて、
前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出し、読み出した抵抗状態が前記高抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加するよう、前記電圧パルス印加回路を制御し、読み出した抵抗状態が前記低抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加するよう、前記電圧パルス印加回路を制御する
不揮発性記憶装置。
【請求項2】
前記制御回路は、プロセッサとメモリとを含み、前記プロセッサが、前記メモリに記憶されるプログラムを実行することで、前記電圧パルス印加回路の制御を行う
請求項1に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項3】
前記外部からの指令は、前記抵抗変化層の抵抗状態を、現時点よりも長期間に渡って安定化させる旨の、ユーザによる指令である
請求項1又は2に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項4】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える抵抗変化素子の駆動方法であって、
前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、
前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、
外部からの指令を受けて、前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出す読み出し過程と、
前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記高抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加し、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記低抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加する追加過程と、を含む
駆動方法。
【請求項5】
前記第1追加電圧パルスは、前記抵抗変化層に流れる電流が、前記第1電圧パルスよりも大きくなる電圧パルスである
請求項4に記載の駆動方法。
【請求項6】
前記第2追加電圧パルスは、前記抵抗変化層に流れる電流が、前記第2電圧パルスよりも大きくなる電圧パルスである
請求項4又は5に記載の駆動方法。
【請求項7】
前記第1追加電圧パルスは、前記抵抗変化層に印加される電圧の絶対値が、前記第1電圧パルスよりも大きくなる電圧パルスである
請求項4に記載の駆動方法。
【請求項8】
前記第2追加電圧パルスは、前記抵抗変化層に印加される電圧の絶対値が、前記第2電圧パルスよりも大きくなる電圧パルスである
請求項4又は7に記載の駆動方法。
【請求項9】
前記第1追加電圧パルスは、前記第1電圧パルスよりも、パルス幅が大きな電圧パルスである
請求項4に記載の駆動方法。
【請求項10】
前記第2追加電圧パルスは、前記第2電圧パルスよりも、パルス幅が大きな電圧パルスである
請求項4又は9に記載の駆動方法。
【請求項11】
前記追加過程では、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記高抵抗状態である場合には、前記第1追加電圧パルスを印加する前に、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2極性の第3追加電圧パルスを印加する
請求項4~10のいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項12】
前記第3追加電圧パルスと前記第2電圧パルスとは、同一の電圧パルスである
請求項11に記載の駆動方法。
【請求項13】
前記追加過程では、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記低抵抗状態である場合には、前記第2追加電圧パルスを印加する前に、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性の第4追加電圧パルスを印加する
請求項4~12のいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項14】
前記第4追加電圧パルスと前記第1電圧パルスとは、同一の電圧パルスである
請求項13に記載の駆動方法。
【請求項15】
前記追加過程を2回以上繰り返す
請求項4~14のいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項16】
前記抵抗変化層は、金属酸化物層を有し、
前記金属酸化物層は、周囲よりも酸素含有量の低い局所領域を有し、
前記追加過程において、
前記第1電極及び前記第2電極間に前記第1追加電圧パルスが印加されることで、前記局所領域における酸素含有量が上昇し、
前記第1電極及び前記第2電極間に前記第2追加電圧パルスが印加されることで、前記局所領域における酸素含有量が低下する
請求項4~15のいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項17】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える複数の抵抗変化素子の駆動方法であって、
前記複数の抵抗変化素子の内の少なくとも1つに対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、
前記複数の抵抗変化素子の内の少なくとも1つに対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、
外部からの指令を受けて、前記複数の抵抗変化素子の全てに対して、前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出す読み出し過程と、
前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記高抵抗状態である抵抗変化素子に対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加し、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記低抵抗状態である抵抗変化素子に対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加する追加過程と、を含む
駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶装置、及びそれに含まれる抵抗変化素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気的信号によって抵抗値が可逆的に変化する性質を有し、さらにはこの抵抗値に対応した論理情報を不揮発的に記憶することが可能な抵抗変化素子を用いた、抵抗変化型の不揮発性記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6204139号明細書
【文献】特開2004-363604号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】科学技術未来戦略ワークショップ「超長期保存メモリ・システムの開発」報告書、2012年11月16日、CRDS-FY2012-WR-07、独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター刊行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不揮発性記憶装置に対して、論理情報を不揮発的に記憶する期間を、従来よりも長くすることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、論理情報を不揮発的に記憶する期間を、従来よりも長くし得る不揮発性記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る不揮発性記憶装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える抵抗変化素子と、前記第1電極及び前記第2電極間に電圧パルスを印加する電圧パルス印加回路と、前記電圧パルス印加回路を制御する制御回路とを備え、前記電圧パルス印加回路は、前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、を実行し、前記制御回路は、外部からの指令を受けて、前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出し、読み出した抵抗状態が前記高抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加するよう、前記電圧パルス印加回路を制御し、読み出した抵抗状態が前記低抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加するよう、前記電圧パルス印加回路を制御する。
【0008】
本発明の一態様に係る駆動方法は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える抵抗変化素子の駆動方法であって、前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、外部からの指令を受けて、前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出す読み出し過程と、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記高抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加し、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記低抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加する追加過程と、を含む。
【0009】
また、本発明の一態様に係る駆動方法は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える複数の抵抗変化素子の駆動方法であって、前記複数の抵抗変化素子の内の少なくとも1つに対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、前記複数の抵抗変化素子の内の少なくとも1つに対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、外部からの指令を受けて、前記複数の抵抗変化素子の全てに対して、前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出す読み出し過程と、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記高抵抗状態である抵抗変化素子に対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加するよう、前記電圧パルス印加回路を制御し、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記低抵抗状態である抵抗変化素子に対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加する追加過程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
上記不揮発性記憶装置、及び駆動方法によると、論理情報を不揮発的に記憶する期間を、従来よりも長くし得る不揮発性記憶装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る抵抗変化素子の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る抵抗変化素子の駆動方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る抵抗変化素子を動作させる回路の構成の一例を示す模式図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態1に係る抵抗変化層の抵抗値の変化を示す模式図である。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態1に係る抵抗変化層の抵抗値の変化を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る抵抗変化素子を動作させる回路の構成の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る、通常動作時における電圧パルスと、追加過程における追加電圧パルスとの関係を示す模式図である。
【
図7A】
図7Aは、低抵抗状態における抵抗変化素子の断面模式図である。
【
図7B】
図7Bは、高抵抗状態における抵抗変化素子の断面模式図である。
【
図8】
図8は、変形例1に係る、通常動作時における電圧パルスと、追加過程における追加電圧パルスとの関係を示す模式図である。
【
図9】
図9は、変形例2に係る、通常動作時における電圧パルスと、追加過程における追加電圧パルスとの関係を示す模式図である。
【
図10】
図10は、変形例3に係る、通常動作時における電圧パルスと、追加過程における追加電圧パルスとの関係を示す模式図である。
【
図11】
図11は、データ保持特性評価の結果を示す模式図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2に係る不揮発性記憶装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、実施の形態3に係る不揮発性記憶装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、その他の実施の形態に係る不揮発性記憶システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の一態様を得るに至った経緯)
近年、デジタル技術の進展に伴って携帯情報機器や情報家電等の電子機器が、より一層高機能化している。これらの電子機器の高機能化に伴い、使用される半導体素子の微細化及び高速化が急速に進んでいる。その中でも、フラッシュメモリに代表されるような大容量の不揮発性メモリの用途が急速に拡大している。
【0013】
更に、このフラッシュメモリに置き換わる次世代の新型不揮発性メモリとして、いわゆる抵抗変化素子を用いた抵抗変化型の不揮発性記憶装置の研究開発が進んでいる。抵抗変化素子とは、電気的信号によって抵抗値が可逆的に変化する性質を有し、さらにはこの抵抗値に対応した情報を、不揮発的に記憶することが可能な素子のことをいう。
【0014】
このような抵抗変化素子として動作する従来技術として、ペロブスカイト材料(例えば、Pr(1-x)CaxMnO3[PCMO]、LaSrMnO3[LSMO]、GdBaCoxOy[GBCO]など)や遷移金属酸化物(NiO、V2O、ZnO、Nb2O5、TiO2、WO3、またはCoO)を用いた不揮発性抵抗変化素子が提案されている。この技術は、酸化物材料に電圧パルス(継続時間の短い波状の電圧)を印加してその抵抗値を増大または減少させ、変化する抵抗値にデータを対応させることによってデータを記憶させるというものである。
【0015】
一方、今後ますますデジタル情報の普及が広がっていく中、社会、産業、個々人のアイデンティティ、文化、歴史などを後世に継承する情報の保管技術が重要視されつつあり、そこでは100年以上の情報記憶寿命が求められている。旧来の記録媒体である紙は保証期間が250年、マイクロフィルムは保証期間が500年といわれる。
【0016】
しかしながら、通常の抵抗変化型不揮発性記憶装置を含めて既存の不揮発性メモリの保証期間は10年程度と短い。そこで、現在のデジタル情報の長期保管用ストレージ・システムでは一定期間ごとにデータをまるごと旧記憶装置から新記憶装置に移し替える「マイグレーション」という手法が用いられている(非特許文献1)。
【0017】
しかしながら、マイグレーションには膨大なデータ移行コストがかかることから、マイグレーションを必要としないデジタル情報長期保管システムの構築が望まれている。そのため、100年以上の寿命を有する不揮発性記憶装置が求められている。
【0018】
本発明者は、抵抗変化素子の保管寿命を向上すべく鋭意検討を行った結果、抵抗変化素子を保管する前の最終的な高抵抗化過程もしくは低抵抗化過程を行った後に、抵抗状態が低の素子に対して通常の低抵抗化電圧パルス印加時よりも高いエネルギーで追加電圧パルス印加を行う、もしくは抵抗状態が高の素子に対して通常の高抵抗化電圧パルス印加時よりも高いエネルギーで追加電圧パルス印加を行う、の少なくともいずれか一方の追加電圧パルス印加を行うことにより、抵抗変化素子の保管寿命が長期化されることを見出した。当該知見の詳細は、以下において、実施の形態とともに適宜説明される。
【0019】
実施の形態に係る不揮発性記憶装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える抵抗変化素子と、前記第1電極及び前記第2電極間に電圧パルスを印加する電圧パルス印加回路と、前記電圧パルス印加回路を制御する制御回路とを備え、前記電圧パルス印加回路は、前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、を実行し、前記制御回路は、外部からの指令を受けて、前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出し、読み出した抵抗状態が前記高抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加するよう、前記電圧パルス印加回路を制御し、読み出した抵抗状態が前記低抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加するよう、前記電圧パルス印加回路を制御する。
【0020】
上記不揮発性記憶装置において、前記制御回路は、プロセッサとメモリとを含み、前記プロセッサが、前記メモリに記憶されるプログラムを実行することで、前記電圧パルス印加回路の制御を行うとしてもよい。
【0021】
上記不揮発性記憶装置において、前記外部からの指令は、前記抵抗変化層の抵抗状態を、現時点よりも長期間に渡って安定化させる旨の、ユーザによる指令であるとしてもよい。
【0022】
実施の形態に係る駆動方法は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える抵抗変化素子の駆動方法であって、前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、外部からの指令を受けて、前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出す読み出し過程と、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記高抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加し、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記低抵抗状態である場合には、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加する追加過程と、を含む。
【0023】
上記駆動方法において、前記第1追加電圧パルスは、前記抵抗変化層に流れる電流が、前記第1電圧パルスよりも大きくなる電圧パルスであるとしてもよい。
【0024】
上記駆動方法において、前記第2追加電圧パルスは、前記抵抗変化層に流れる電流が、前記第2電圧パルスよりも大きくなる電圧パルスであるとしてもよい。
【0025】
上記駆動方法において、前記第1追加電圧パルスは、前記抵抗変化層に印加される電圧の絶対値が、前記第1電圧パルスよりも大きくなる電圧パルスであるとしてもよい。
【0026】
上記駆動方法において、前記第2追加電圧パルスは、前記抵抗変化層に印加される電圧の絶対値が、前記第2電圧パルスよりも大きくなる電圧パルスであるとしてもよい。
【0027】
上記駆動方法において、前記第1追加電圧パルスは、前記第1電圧パルスよりも、パルス幅が大きな電圧パルスであるとしてもよい。
【0028】
上記駆動方法において、前記第2追加電圧パルスは、前記第2電圧パルスよりも、パルス幅が大きな電圧パルスであるとしてもよい。
【0029】
上記駆動方法において、前記追加過程では、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記高抵抗状態である場合には、前記第1追加電圧パルスを印加する前に、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2極性の第3追加電圧パルスを印加するとしてもよい。
【0030】
上記駆動方法において、前記第3追加電圧パルスと前記第2電圧パルスとは、同一の電圧パルスであるとしてもよい。
【0031】
上記駆動方法において、前記追加過程では、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記低抵抗状態である場合には、前記第2追加電圧パルスを印加する前に、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性の第4追加電圧パルスを印加するとしてもよい。
【0032】
上記駆動方法において、前記第4追加電圧パルスと前記第1電圧パルスとは、同一の電圧パルスであるとしてもよい。
【0033】
上記駆動方法において、前記追加過程を2回以上繰り返すとしてもよい。
【0034】
上記駆動方法において、前記抵抗変化層は、金属酸化物層を有し、前記金属酸化物層は、周囲よりも酸素含有量の低い局所領域を有し、前記追加過程において、前記第1電極及び前記2電極間に前記第1追加電圧パルスが印加されることで、前記局所領域における酸素含有量が上昇し、前記第1電極及び前記2電極間に前記第2追加電圧パルスが印加されることで、前記局所領域における酸素含有量が低下するとしてもよい。
【0035】
実施の形態に係る駆動方法は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在し、前記第1電極及び前記第2電極間に印加される電圧パルスに応じて抵抗値が変化する抵抗変化層とを備える複数の抵抗変化素子の駆動方法であって、前記複数の抵抗変化素子の内の少なくとも1つに対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、第1極性の第1電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、前記低抵抗状態よりも抵抗値が高い、前記第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程と、前記複数の抵抗変化素子の内の少なくとも1つに対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルスを印加することによって、前記抵抗変化層を、前記高抵抗状態から前記低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程と、外部からの指令を受けて、前記複数の抵抗変化素子の全てに対して、前記抵抗変化素子の抵抗状態を読み出す読み出し過程と、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記高抵抗状態である抵抗変化素子に対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第1極性の第1追加電圧パルスを印加するよう、前記電圧パルス印加回路を制御し、前記読み出し過程により読み出された抵抗状態が前記低抵抗状態である抵抗変化素子に対して、前記第1電極及び前記第2電極間に、前記第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、前記第2極性の第2追加電圧パルスを印加する追加過程と、を含む。
【0036】
以下、実施の形態の具体例について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、採用し得る形態を構成するものとして説明される。
【0037】
(実施の形態1)
[抵抗変化素子の構成]
まず、実施の形態1に係る抵抗変化素子の構成の一例について説明する。
【0038】
図1は、実施の形態1に係る抵抗変化素子の一例である抵抗変化素子10の構成示す模式図である。
【0039】
図1に示すように、抵抗変化素子10は、基板1と、基板1の上に形成された第1電極2と、第1電極2の上に金属酸化物層として形成された抵抗変化層3と、抵抗変化層3の上に形成された第2電極4とを備えている。第1電極2及び第2電極4は、抵抗変化層3と電気的に接続されている。すなわち、抵抗変化素子10は、第1電極2と、第2電極4と、第1電極2と第2電極4との間に介在する抵抗変化層3とを備える。
【0040】
なお、第1電極2は第2電極4と同等のサイズでもよく、また各電極2,4及び抵抗変化層3の配置は、上下逆に配置してもよいし、横向けに配置してもよい。
【0041】
基板1は、例えばトランジスタ等の回路素子が形成されたシリコン基板により構成される。また、第1電極2及び第2電極4は、例えば、Au(金)、Pt(白金)、Ir(イリジウム)、Cu(銅)、W(タングステン)、及びTaN(窒化タンタル)のうちの1つまたは複数の材料を用いて構成される。
【0042】
抵抗変化層3は、第1電極2及び第2電極4間に印加される電圧パルスに応じて抵抗が変化する。抵抗変化層3は、金属酸化物で構成されており、第1タンタル酸化物層3aと第2タンタル酸化物層3bとが積層されて構成されている。ここで、第2タンタル酸化物層3bの酸素含有率は、第1タンタル酸化物層3aの酸素含有率よりも高くなっている。
【0043】
第1タンタル酸化物層3aの組成をTaOxとした場合に、0<x<2.5であり、且つ、第2タンタル酸化物層3bの組成をTaOyとした場合に、x<yであればよい。また、0.8≦x≦1.9であり、且つ、2.1≦y≦2.5とした場合には、抵抗変化層3の抵抗値を安定して高速に変化させることができた。従って、x及びyは上記の範囲内にあってもよい。
【0044】
抵抗変化層3の厚みは、1μm以下であれば抵抗値の変化が認められるが、40nm以下であってもよい。係る構成では、パターニングプロセスとしてフォトリソグラフィ及びエッチングを使用する場合に、加工し易く、しかも抵抗変化層3の抵抗値を変化させるために必要となる電圧パルスの電圧値を低くすることができる。他方、電圧パルス印加時のブレイクダウン(絶縁破壊)をより確実に回避するという観点からは、抵抗変化層3の厚みは少なくとも5nm以上であってもよい。
【0045】
また、第2タンタル酸化物層3bの厚みについては、初期抵抗値が高くなりすぎる可能性を低減し、安定した抵抗変化を得るという観点から、1nm以上8nm以下程度であってもよい。
【0046】
上述したように構成される抵抗変化素子10を動作させる場合、第1電極2及び第2電極4が、電源5の異なる端子(ここでは、第1端子7及び第2端子8)に電気的に接続される。なお、抵抗変化素子10は、保護抵抗6を介して電源5と電気的に接続されていてもよい。この電源5は、抵抗変化素子10を駆動するための電気的パルス印加装置として、所定の極性、電圧及び時間幅の電気的パルス(電圧パルス)を、抵抗変化素子10に印加することができるように構成されている。なお、保護抵抗6は、過電流による抵抗変化素子10の破壊を防止するためのものである。本実施の形態1では、その抵抗値は例えば4.5kΩとする。そして電圧パルスは第1端子7及び第2端子8間に印加される。
【0047】
なお、以下では、端子間に印加される電圧パルスの電圧は、第1端子7を基準にした第2端子8の電位で特定されるものとする。この時、第2端子8に正の電圧を印加したときの電流の極性を正とする。
【0048】
[抵抗変化素子の製造方法]
次に、抵抗変化素子10の製造方法の一例について説明する。
【0049】
まず、基板1上に、スパッタリング法により、厚さ20nmの第1電極2を形成する。その後、Taターゲットをアルゴンガス及び酸素ガス中でスパッタリングする所謂反応性スパッタリング法によって、第1電極2の上にタンタル酸化物層を形成する。ここで、タンタル酸化物層における酸素含有率は、アルゴンガスに対する酸素ガスの流量比を変えることにより容易に調整することができる。なお、基板温度は特に加熱することなく室温とすることができる。
【0050】
次に、上記のようにして形成されたタンタル酸化物層の最表面を酸化することによりその表面を改質する。あるいは、高濃度の酸素含有率を有するタンタル酸化物(例えばTa2O5)ターゲットを用いて、より酸素含有率の高い層をスパッタ法で形成する。これにより、先に形成されたタンタル酸化物層の表面に、当該タンタル酸化物層の酸化されなかった領域(第1領域)よりも酸素含有率の高い領域(第2領域)が形成される。
【0051】
これらの第1領域及び第2領域が第1タンタル酸化物層3a及び第2タンタル酸化物層3bにそれぞれ相当し、このようにして形成された第1タンタル酸化物層3a及び第2タンタル酸化物層3bによって抵抗変化層3が構成されることになる。
【0052】
次に、上記のようにして形成された抵抗変化層3の上に、スパッタリング法により、厚さ40nmの第2電極4を形成することにより、抵抗変化素子10が得られる。
【0053】
なお、第1電極2及び第2電極4並びに抵抗変化層3の大きさ及び形状は、フォトマスク及びフォトリソグラフィによって調整することができる。本実施の形態では、第2電極4及び抵抗変化層3の大きさを0.1μm×0.1μm(面積0.01μm2)とし、第1電極2と抵抗変化層3とが接する部分の大きさも0.1μm×0.1μm(面積0.01μm2)とした。
【0054】
また、本実施の形態では、第1タンタル酸化物層3aの組成をTaOx(x=1.54)とし、第2タンタル酸化物層3bの組成をTaOy(y=2.47)としている。さらに、抵抗変化層3の厚みを25nmとし、第1タンタル酸化物層3aの厚みを20nm、第2タンタル酸化物層3bの厚みを5nmとしている。
【0055】
なお、このように、本実施の形態においてはx=1.54、y=2.47であるが、x及びyの値はこれに限られるわけではない。0.8≦x≦1.9であり、2.1≦y≦2.5としてもよい。係る構成でも、本実施の形態での抵抗変化特性と同様に、安定した抵抗変化を実現できる。
【0056】
[抵抗変化素子10の動作]
次に、上述した製造方法により得られた抵抗変化素子10の動作について説明する。
【0057】
以下では、抵抗変化層3の抵抗値が、第1の論理情報(ここでは、例えば、論理値1)を示す所定の高い値(例えば、200kΩ以上、典型的には300kΩ。)にある状態を高抵抗状態といい、抵抗変化層3の抵抗値が、第1の論理情報とは異なる第2の論理情報(ここでは、例えば、論理値0)を示す所定の低い値(例えば、20kΩ以下、典型的には12kΩ。)にある状態を低抵抗状態という。
【0058】
電源5を用いて、負極性の電圧パルスである低抵抗化電圧パルスを第1端子7及び第2端子8間に印加することにより、抵抗変化層3の抵抗値が減少し、抵抗変化層3が高抵抗状態から低抵抗状態へ変化する。以下では、これを低抵抗化過程という。
【0059】
他方、電源5を用いて、正極性の電圧パルスである高抵抗化電圧パルスを第1端子7及び第2端子8間に印加することにより、抵抗変化層3の抵抗値が増加し、抵抗変化層3が低抵抗状態から高抵抗状態へ変化する。以下では、これを高抵抗化過程という。
【0060】
上記の低抵抗化過程及び高抵抗化過程を繰り返すことにより、抵抗変化素子10が動作する。
【0061】
本実施の形態では、第1回目の上記の低抵抗化過程の前に初期過程が実行される。ここで、初期過程とは、その後の低抵抗化過程及び高抵抗化過程において安定した抵抗変化動作を実現するための過程である。製造直後の抵抗変化素子10は通常動作時における高抵抗状態より高い初期抵抗値を示し、その状態で通常動作時における低抵抗化電圧パルスまたは高抵抗化電圧パルスを印加しても抵抗変化は起こらない。この初期過程においては、正極性の電圧パルスである第1の初期電圧パルス(高抵抗化ブレイク)及び負極性の電圧パルスである第2の初期電圧パルス(低抵抗化ブレイク)の2種類の初期電圧パルスがこの順に第1端子7及び第2端子8間に印加される。ここで、第1の初期電圧パルスが印加された場合は抵抗変化層3の抵抗値が初期抵抗値から第1の抵抗値へ減少し、次に第2の初期電圧パルスが印加された場合は第1の抵抗値から第2の抵抗値へさらに減少し、以降、通常動作時の低抵抗化電圧パルスまたは高抵抗化電圧パルスを印加することにより抵抗変化素子10は抵抗変化を起こす。一般的に、初期過程は、抵抗変化素子10を製造した後に、まだ電圧が印加されたことのない初期状態の抵抗変化素子10に対して行なわれる。
【0062】
なお、初期過程において、第1の初期電圧パルスもしくは第2の初期電圧パルスのうちのどちらか一方の極性のみを用いて抵抗変化層3の抵抗値を初期抵抗値から下げてもよい。
【0063】
上述した初期過程を経ることにより、フィラメントと呼ばれる周囲の酸素含有率よりも低い酸素含有率を持つ局所領域が抵抗変化層3内に形成される。初期過程後の通常の抵抗変化動作時においては、負極性の電圧パルスである低抵抗化電圧パルスが第1端子7及び第2端子8間に印加されることにより抵抗状態が高の状態から低の状態に変化し、正極性の電圧パルスである高抵抗化電圧パルスが第1端子7及び第2端子8間に印加されることにより抵抗状態が低の状態から高の状態に変化する。この際の抵抗変化動作のメカニズムとしては、フィラメント内の酸素含有率が、低抵抗化電圧パルスによって低下し、また高抵抗化電圧パルスによって上昇することによると考えられる。ここで、通常の抵抗変化動作時における高抵抗状態及び低抵抗状態のフィラメント内の酸素含有率をそれぞれNHOx、NLOxとすると、NHOx>NLOxを満たす。なお、本実施の形態では初期過程を経ることによりフィラメントを形成したが、必ずしも初期過程を経てフィラメントを形成する必要は無く、抵抗変化素子10形成時にストイキオメトリのタンタル酸化物よりも酸素含有率の低いTa酸化物層を設けることで代用してもよい。
【0064】
[追加電圧パルス印加過程]
本実施の形態では、上記の通常の抵抗変化動作によって抵抗変化素子10を高抵抗状態及び低抵抗状態に設定後、抵抗変化素子10を含む不揮発性記憶装置使用者は、不揮発性記憶装置のユーザーインターフェース等を通じて、不揮発性記憶装置に対し記憶させた情報の今後の取り扱いについて指令を与えることができる。この指令は、今後は書き換えを行わずに記憶させた情報の読み出し動作のみを行うという指令であってもよいし、今後は抵抗変化層3の抵抗状態を、現時点よりも長期間に渡って安定化させるという指令(以下、「長期記憶の指令」とも呼ぶ。)でもよい。上記指令を受けると、不揮発性記憶装置は、抵抗変化素子10の抵抗状態が高か低かを読み出す。そして低抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、追加で通常の低抵抗化電圧パルスよりも高いエネルギーで低抵抗化電圧パルスと同極性の電圧パルスを印加する。一方、高抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、追加で通常の高抵抗化電圧パルスよりも高いエネルギーで高抵抗化電圧パルスと同極性の電圧パルスを印加する。
【0065】
図2は、実施の形態1に係る抵抗変化素子10の駆動方法の一例を示すフローチャートである。
【0066】
図2に示すように、不揮発性記憶装置は、通常動作時には、第1電極2及び第2電極4間に、第1極性の第1電圧パルス(高抵抗化電圧パルス)を印加することによって、抵抗変化層3を、第1の論理情報を示す低抵抗状態から、第1の論理情報とは異なる第2の論理情報を示す高抵抗状態へと変化させる高抵抗化過程(ステップS10)と、第1電極2及び第2電極4間に、第1極性とは極性が異なる第2極性の第2電圧パルス(低抵抗化電圧パルス)を印加することによって、抵抗変化層3を、高抵抗状態から低抵抗状態へと変化させる低抵抗化過程(ステップS20)とを繰り返す。
【0067】
一方、不揮発性記憶装置は、外部からの指令(例えば、長期記憶の指令)を受けると(ステップS30)、抵抗変化素子10の抵抗状態を読み出す読み出し過程を行う(ステップS40)。そして、読み出し過程によって読み出された抵抗状態が高抵抗状態である場合(ステップS50の処理において高抵抗状態と判定した場合)には、第1電極2及び第2電極4間に、第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、第1極性の第1追加電圧パルスを印加し(ステップS60)、読み出し過程によって読み出された抵抗状態が低抵抗化状態である場合(ステップS50の処理において低抵抗状態と判定した場合)には、第1電極2及び第2電極4間に、第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、第2極性の第2追加電圧パルスを印加する(ステップS70)。
【0068】
不揮発性記憶装置は、ステップS50処理、ステップS60の処理、ステップS70の処理からなる追加過程を行うことで、後述の通り、抵抗変化層3の抵抗状態を、現時点よりも長期間に渡って安定化させることが可能となる。
【0069】
なお、以下では、第1追加電圧パルスによって印加されるエネルギーは、追加過程終了後に第2電圧パルス(低抵抗化電圧パルス)を印加することによって、抵抗変化層3を、高抵抗状態から低抵抗状態へと変化させることが可能となる程度のエネルギーであるとして説明するが、第1追加電圧パルスによって印加されるエネルギーによっては、追加過程終了後に第2電圧パルス(低抵抗化電圧パルス)が印加されても、抵抗変化層3を、高抵抗状態から低抵抗状態へと変化させることができなくすることも可能である。すなわち、不揮発性記憶装置の記憶する論理情報を固定化(書き換え不可化)することも可能である。同様に、以下では、第2追加電圧パルスによって印加されるエネルギーは、追加過程終了後に第1電圧パルス(高抵抗化電圧パルス)を印加することによって、抵抗変化層3を、低抵抗状態から高抵抗状態へと変化させることが可能となる程度のエネルギーであるとして説明するが、第2追加電圧パルスによって印加されるエネルギーによっては、追加過程終了後に第1電圧パルス(高抵抗化電圧パルス)が印加されても、抵抗変化層3を、低抵抗状態から高抵抗状態へと変化させることができなくすることも可能である。すなわち、不揮発性記憶装置の記憶する論理情報を固定化(書き換え不可化)することも可能である。
【0070】
図3は、実施の形態1に係る抵抗変化素子10を動作させる回路の構成の一例及び当該抵抗変化素子10にデータを書き込む場合における動作例を示す図である。
図3に示すように、この回路は、抵抗変化素子10と、第2端子8及び第1端子7とを備えている。抵抗変化素子10の第2電極4は第2端子8に電気的に接続されており、第1電極2は第1端子7に電気的に接続されている。また、抵抗変化素子10の第1電極2と第1端子7との間にはトランジスタ13が設けられている。このトランジスタは抵抗変化素子10を選択するスイッチング素子及び保護抵抗の役割を担っている。このトランジスタ13にゲート電圧Vgが印加されることにより、抵抗変化素子10にトランジスタ13を介して所定の電圧パルスが供給される。
【0071】
図4A及び
図4Bは、実施の形態1の抵抗変化素子10に、データを書き込む、すなわち、論理値0を書き込む低抵抗化過程、データを消去する、すなわち、論理値1を書き込む高抵抗化過程、及び追加過程における抵抗変化層3の抵抗値の変化を示す模式図である。なお、これらの低抵抗化過程、高抵抗化過程、及び追加過程においては、
図3に示すように、正極性の電圧パルス印加時は、第1端子7を基準にして、第2端子8に所定の正電圧パルスが供給され、負極性の電圧パルス印加時は、第2端子8を基準にして、第1端子7に所定の正電圧パルスが供給される。
【0072】
抵抗変化素子10の抵抗変化層3が、ある時点で高抵抗状態にある場合、負極性の低抵抗化電圧パルス(第2電圧パルス:電圧値VRL)が第2端子8に供給されると、抵抗変化層3の抵抗値が高抵抗値RHから低抵抗値RLへと変化する。他方、抵抗変化層3の抵抗値が低抵抗値RLである場合、正極性の高抵抗化電圧パルス(第1電圧パルス:電圧値VRH)が第2端子8に供給されると、抵抗変化層3の抵抗値は低抵抗値RLから高抵抗値RHへ変化する。
【0073】
図5は、実施の形態1の抵抗変化素子10を動作させる回路の構成の一例及び当該抵抗変化素子10に書き込まれたデータを読み出す場合における動作例を示す図である。
図5に示すように、データの読み出しを行う場合には、第1端子7を基準に、第2端子8に読み出し電圧が供給される。この読み出し電圧は、抵抗変化素子10に供給されてもその抵抗を変化させない程度の値であり、第1電極2及び接地点を基準に特定される。
【0074】
上述したとおり、不揮発性記憶装置は、ユーザによる長期記憶の指令を受けると、その時点での抵抗変化素子10の抵抗状態を読み出す。
【0075】
図4Aにおける追加過程の部分は、読み出した抵抗状態が低抵抗であった場合を示している。この場合は、抵抗変化素子10に対し、通常の低抵抗化電圧パルスよりも高いエネルギーで、低抵抗化電圧パルスと同じ極性の第2追加電圧パルスを印加する。それにより、抵抗変化素子10は通常の低抵抗化過程後よりも低い抵抗値RLaとなる。
【0076】
図4Bにおける追加過程の部分は、読み出した抵抗状態が高抵抗であった場合を示している。この場合は、抵抗変化素子10に対し、通常の高抵抗化電圧パルスよりも高いエネルギーで高抵抗化電圧パルスと同じ極性の第1追加電圧パルスを印加する。それにより、抵抗変化素子10は通常の高抵抗化過程後よりも高い抵抗値RHaとなる。
【0077】
図6は、実施の形態1に係る抵抗変化素子10の通常動作時の高抵抗化過程及び低抵抗化過程における電圧パルス(高抵抗化電圧パルス(第1電圧パルス)及び低抵抗化電圧パルス(第2電圧パルス))と、追加過程における追加電圧パルス(第1追加電圧パルス及び第2追加電圧パルス)の関係を表した模式図である。第1追加電圧パルスは通常動作時の高抵抗化電圧パルスよりも高いエネルギーを有する。この高いエネルギーは、第1追加電圧パルスを、抵抗変化層3に印加される電圧の絶対値が、高抵抗化電圧パルス(第1電圧パルス)よりも大きくなる電圧パルスとすることで実現してもよいし、第1追加電圧パルスを、電圧パルスの印加時に抵抗変化層3に流れる電流が、高抵抗化電圧パルス(第1電圧パルス)よりも大きくなる電圧パルスとすることで実現してもよいし、第1追加電圧パルスを、高抵抗化電圧パルス(第1電圧パルス)よりもパルス幅が大きな電圧パルスとすることで実現してもよい。また、第2追加電圧パルスと通常動作時の低抵抗化電圧パルスの関係も同様である。すなわち、第2追加電圧パルスを、抵抗変化層3に印加される電圧の絶対値が、低抵抗化電圧パルス(第2電圧パルス)よりも大きくなる電圧パルスとすることで実現してもよいし、第2追加電圧パルスを、電圧パルスの印加時に抵抗変化層3に流れる電流が、低抵抗化電圧パルス(第2電圧パルス)よりも大きくなる電圧パルスとすることで実現してもよいし、第2追加電圧パルスを、低抵抗化電圧パルス(第2電圧パルス)よりもパルス幅が大きな電圧パルスとすることで実現してもよい。
【0078】
[追加電圧パルス印加によるデータ保持特性改善のメカニズム]
ここで、通常動作時よりも高エネルギーの追加電圧パルス印加を行うことでデータの保持特性がなぜ改善するかについて推定されるメカニズムを述べる。ただし、上述の保持特性の改善メカニズムについては確定的な結論を導出するまでには至っていないため、可能性を述べるにとどめる。
【0079】
はじめに、本実施の形態で説明した抵抗変化素子10の高抵抗状態と低抵抗状態の違いについて説明する。
図7Aは低抵抗状態、
図7Bは高抵抗状態における、実施の形態1に係る抵抗変化素子10の断面模式図を示している。
【0080】
本実施の形態においては、低抵抗状態、高抵抗状態とも初期状態の抵抗値よりも低いことから、いずれの抵抗状態においても、タンタル酸化物層3b中に、第2電極4とタンタル酸化物層3aをつなぐ、フィラメントと呼ばれる周囲の酸素含有率よりも低い酸素含有率を持つ局所領域3cが存在している状態であると考えられる。そして抵抗変化素子の抵抗値は、このフィラメントに存在する酸素欠陥9の量によって決まり、低抵抗状態の抵抗変化素子10のフィラメント内の酸素含有率NLOxと高抵抗状態の抵抗変化素子10のフィラメント内の酸素含有率NHOxは、NLOx<NHOxを満たしていると考えられる。
【0081】
より微視的にフィラメント内の酸素欠陥と抵抗変化素子10の抵抗値の関係について記述する。フィラメント内においては、酸素欠陥が連なった微小導通パスが存在し、低抵抗状態においては、酸素欠陥が十分に多いため、この微小導通パスが第2電極4からタンタル酸化物層3aまでつながった状態であると考えられる。一方、高抵抗状態においては、酸素欠陥の量が少ないため、この微小導通パスが途中で切れている状態であると考えられる。
【0082】
以上のような抵抗変化のメカニズムに基づくと、抵抗変化後の保管状態における低抵抗状態から高抵抗状態への変化は、フィラメント内の微小導通パスのつながりが脆弱であるため、周囲の酸素が微小導通パスにまで拡散し、ある酸素欠陥と結びつくことにより微小導通パスが途中で切れてしまうことに相当すると考えられる。そこで、低抵抗状態の抵抗変化素子10に最後に通常動作時よりも高エネルギーの第2追加電圧パルスを追加で印加することにより、低抵抗状態の抵抗変化素子におけるフィラメント内の酸素欠陥の数を増やし、微小導電パスのつながりを強化することにより通常よりも長期の保管を実現することができる。
【0083】
同様に、抵抗変化後の保管状態における高抵抗状態から低抵抗状態への変化は、フィラメント内の微小導通パスは途中で切れているものの酸素欠陥の数は多い場合に、酸素の拡散により新たな酸素欠陥が生成し、既にある酸素欠陥と結びつくことにより切れていた微小導通パスがつながってしまうことに相当すると考えられる。そこで、高抵抗状態の抵抗変化素子10に最後に通常動作時よりも高エネルギーの第1追加電圧パルスを追加で印加することにより、高抵抗状態の抵抗変化素子におけるフィラメント内の酸素欠陥の数を減らし、微小導電パスのつながりを抑制することにより通常よりも長期の保管を実現することができる。
【0084】
本実施の形態で説明した抵抗変化素子10は、タンタル酸化物を抵抗変化層に用いた例を説明しているが、上述した追加電圧パルス印加のメカニズムは、タンタル以外の酸化物を抵抗変化層に用いる抵抗変化素子にも適用可能であると考えられる。
【0085】
つまり、タンタル以外の金属酸化物を抵抗変化層に用いた抵抗変化素子で、かつ、異なる極性の電気パルスを電極に印加して抵抗変化を起こすような抵抗変化素子でも、上記で説明したようなメカニズムで説明される追加電圧パルス印加の効果があると考えられる。
【0086】
また、金属酸化物を抵抗変化層に用いた抵抗変化素子以外にも、印加する電圧パルスのエネルギーを高くすることにより高抵抗状態の素子の抵抗値をより高く、あるいは低抵抗状態の素子の抵抗をより低く設定できる抵抗変化素子であれば、同様に追加電圧パルス印加の効果が有ると考えられる。
【0087】
上記のようなメカニズムによれば、本発明のようにユーザによる長期保存の指令を受けた時のみ追加電圧パルス印加を行うのではなく、通常動作時に印加する低抵抗化電圧パルス、及び高抵抗化電圧パルスのエネルギーを高くすることによっても高抵抗状態の素子の抵抗値をより高く、あるいは低抵抗状態の素子の抵抗をより低く設定できると考えられる。しかしながら、一般的に、抵抗変化素子においては、高いエネルギーでの低抵抗化電圧パルスを過去に繰り返し印加された高抵抗状態の抵抗変化素子は保管時に低抵抗状態への遷移を起こしやすく、高いエネルギーでの高抵抗化電圧パルスを過去に繰り返し印加された低抵抗状態の抵抗変化素子は保管時に高抵抗状態への遷移を起こしやすいという課題がある。そのため、長期保存を実施する、あるいは最終書き込み後のタイミングにおいて、低抵抗状態の抵抗変化素子10のみに低抵抗化電圧パルスと同じ極性の高エネルギーのパルスを印加する、あるいは高抵抗状態の抵抗変化素子10のみに高抵抗化電圧パルスと同じ極性の高エネルギーのパルスを印加することが重要である。
【0088】
[追加電圧パルスの変形例1]
本実施の形態1では、ユーザによる長期保存の指令を受けて抵抗変化素子10の読み出しを行った後の追加過程において、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、低抵抗化電圧パルスと同じ極性の第2追加電圧パルスを印加する例を示した。本変形例では、追加過程において、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、低抵抗化電圧パルスと異なる極性の電圧パルスを印加した後に、低抵抗化電圧パルスと同じ極性の第2追加電圧パルスを印加する。すなわち、不揮発性記憶装置は、読み出し過程により読み出された抵抗状態が低抵抗状態である場合には、第2追加電圧パルスを印加する前に、第1電極2及び第2電極4間に、第1極性の第4追加電圧パルスを印加する。
【0089】
この第4追加電圧パルスは、高抵抗化電圧パルス(第1電圧パルス)と同一の電圧パルスであってもよい。こうすることにより、低抵抗状態の抵抗変化素子10を一旦高抵抗状態に書き換え、その後に改めて高いエネルギーで低抵抗状態にすることにより、抵抗変化素子10のフィラメント内の酸素含有率NLOxを通常の低抵抗化過程後よりも低下させることができる。
図8は、本変形例1に係る、通常動作時における電圧パルスと、追加過程における追加電圧パルスとの関係を示す模式図である。
【0090】
また、本変形例1では、追加過程において、高抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、高抵抗化電圧パルスと異なる極性の電圧パルスを印加した後に、高抵抗化電圧パルスと同じ極性の第1追加電圧パルスを印加する。すなわち、不揮発性記憶装置は、読み出し過程により読み出された抵抗状態が高抵抗状態である場合には、第1追加電圧パルスを印加する前に、第1電極2及び第2電極4間に、第2極性の第3追加電圧パルスを印加する。
【0091】
この第3追加電圧パルスは、低抵抗化電圧パルス(第2電圧パルス)と同一の電圧パルスであってもよい。こうすることにより、高抵抗状態の抵抗変化素子10を一旦低抵抗状態に書き換え、その後に改めて高いエネルギーで高抵抗状態にすることにより、抵抗変化素子10のフィラメント内の酸素含有率NHOxを通常の高抵抗化過程後よりも上昇させることができる。
【0092】
[追加電圧パルスの変形例2]
本実施の形態1では、ユーザによる長期保存の指令を受けて抵抗変化素子10の読み出しを行った後の追加過程において、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、低抵抗化電圧パルスと同じ極性の第2追加電圧パルスを印加する例を示した。本変形例では、追加過程において、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、低抵抗化電圧パルスより高いエネルギーで低抵抗化電圧パルスと同じ極性の追加電圧パルスを2回以上印加する。こうすることにより、抵抗変化素子10のフィラメント内の酸素含有率NLOxを通常の低抵抗化過程後よりも確実に低下させることができる。
図9は、本変形例2に係る、通常動作時における電圧パルスと、追加過程における追加電圧パルスとの関係を示す模式図である。
【0093】
また、本変形例2では、追加過程において、高抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、高抵抗化電圧パルスより高いエネルギーで高抵抗化電圧パルスと同じ極性の追加電圧パルスを2回以上印加する。こうすることにより、抵抗変化素子10のフィラメント内の酸素含有率NHOxを通常の高抵抗化過程後よりも確実に上昇させることができる。
【0094】
[追加電圧パルスの変形例3]
本実施の形態1における追加電圧パルスの変形例1では、追加過程において、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、低抵抗化電圧パルスと異なる極性の第4追加電圧パルスを印加した後に、低抵抗化電圧パルスと同じ極性の第2追加電圧パルスを印加する例を示した。また、本実施の形態1における追加電圧パルスの変形例2では、追加過程において、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、低抵抗化電圧パルスより高いエネルギーで低抵抗化電圧パルスと同じ極性の追加電圧パルスを2回以上印加する例を示した。本変形例では、上記変形例1及び変形例2を組み合わせることにより、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、低抵抗化電圧パルスと異なる極性の追加電圧パルスを印加した後に、低抵抗化電圧パルスよりも高いエネルギーで低抵抗化電圧パルスと同じ極性の第2追加電圧パルスを印加するという過程を2回以上繰り返す。こうすることにより、抵抗変化素子10のフィラメント内の酸素含有率NLOxを通常の低抵抗化過程後よりもさらに確実に低下させることができる。
図10は、本変形例3に係る、通常動作時における電圧パルスと、追加過程における追加電圧パルスとの関係を示す模式図である。
【0095】
また、本変形例3では、追加過程において、高抵抗状態の抵抗変化素子10に対しては、高抵抗化電圧パルスと異なる極性の追加電圧パルスを印加した後に、高抵抗化電圧パルスよりも高いエネルギーで高抵抗化電圧パルスと同じ極性の第1追加電圧パルスを印加するという過程を2回以上繰り返す。こうすることにより、抵抗変化素子10のフィラメント内の酸素含有率NHOxを通常の高抵抗化過程後よりもさらに確実に上昇させることができる。
【0096】
[評価例]
実施の形態1における追加電圧パルスの変形例3の駆動方法を実施し、抵抗を設定した抵抗変化素子群に対してデータ保持特性の評価を行った。
【0097】
ここで、本実施例で行った通常動作時の動作条件(
図2中のステップS10の処理及びステップS20の処理における動作条件)及び本実施の形態1における追加電圧パルスの変形例3に相当する追加過程の動作条件(
図2中のステップS60の処理及びステップS70の処理における動作条件)を具体的に示す。
【0098】
通常動作時の動作では、低抵抗化電圧パルスは、パルス印加時に抵抗変化層3に流れる電流が200μAとなるように負極性のパルス電圧を設定し、パルス印加時間を100nsとした。また、高抵抗化電圧パルスは、抵抗変化層3に印加されるパルス電圧を+2.0Vに設定し、パルス印加時間を100nsとした。本実施例においては、初期過程を実施後、通常動作時の抵抗変化動作(
図2中のステップS10の処理及びステップS20の処理)を1000回繰り返した。
【0099】
一方、追加電圧パルス印加を実施した抵抗変化素子群については、通常動作時の抵抗変化動作を実施した素子群と同一の動作を実施した後、以下に記載の通りの追加電圧パルス印加を実施した。
【0100】
追加過程における第2追加電圧パルスは、パルス印加時に抵抗変化層3に流れる電流が238μAとなるようにパルス電圧を設定し、パルス印加時間を100nsとした。第1追加電圧パルスは、抵抗変化層3に印加されるパルス電圧を+2.1Vに設定し、パルス印加時間を100nsとした。ここでは、第2追加電圧パルスは、パルス印加時に抵抗変化層3に流れる電流が、238μAであるとしたが、必ずしも、238μAに限定される必要はない。第2追加電圧パルスは、低抵抗化電圧パルスと同一のパルス幅とする場合には、典型的には、パルス印加時に抵抗変化層3に流れる電流が、低抵抗化電圧パルスの105%~150%の範囲であることが望ましい。また、ここでは、第1追加電圧パルスは、抵抗変化層3に印加されるパルス電圧が+2.1Vであるとしたが、必ずしも、+2.1Vに限定される必要はない。第1追加電圧パルスは、高抵抗化電圧パルスと同一のパルス幅とする場合には、典型的には、抵抗変化層3に印加される電圧が、高抵抗化電圧パルスの105%~150%の範囲であることが望ましい。
【0101】
なお、第2追加電圧パルスは、パルス印加時に抵抗変化層3に流れる電流が、低抵抗化電圧パルスと同様(すなわち、200μA)である一方で、そのパルス幅が、低抵抗化パルスよりも長くなる例も考えられる。この場合には、そのパルス幅は、典型的には、低抵抗化パルスの150%~1000%の範囲であることが望ましい。同様に、第1追加電圧パルスは、パルス印加時に抵抗変化層3に印加されるパルス電圧が、高抵抗化電圧パルスと同様(すなわち、+2.0V)である一方で、そのパルス幅が、高抵抗化パルスよりも長くなる例も考えられる。この場合には、そのパルス幅は、典型的には、高抵抗化パルスの150%~1000%の範囲であることが望ましい。
【0102】
また、追加過程において、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対する低抵抗化電圧パルスと異なる極性の第4追加電圧パルスは、通常動作時の高抵抗化電圧パルスと同じ電圧パルスを印加した。高抵抗状態の抵抗変化素子10に対する高抵抗化電圧と異なる極性の第3追加電圧パルスは、通常動作時の低抵抗化電圧パルスと同じ電圧パルスを印加した。
【0103】
さらに、追加過程において、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対して、低抵抗化電圧パルスと異なる極性の第4追加電圧パルスの印加と、続けて行う低抵抗化電圧パルスと同じ極性の第2追加電圧パルス印加の2パルスからなる繰り返し単位を100回繰り返した。そして、高抵抗状態の抵抗変化素子10に対して、高抵抗化電圧パルスと異なる極性の第3追加電圧パルスの印加と、続けて行う高抵抗化電圧パルスと同じ極性の第1追加電圧パルス印加の2パルスからなる繰り返し単位を100回繰り返した。
【0104】
以上のようにして用意した抵抗変化素子群の抵抗値の保持特性の評価を行った。なお、本評価例で用いた抵抗変化素子10の抵抗値は室温程度の温度では、10年以上もほとんど劣化が見られないような特性を有している。そこで、不揮発性記憶素子を210℃の恒温槽中に保持し、劣化を加速させて、保持特性の評価を行った。なお、抵抗値の測定は恒温槽から不揮発性記憶素子を取り出して室温で行った。
【0105】
つまり、恒温槽での保持と、室温での測定を繰り返し行う事により、保持特性の評価を行った。また、保持特性の評価では、抵抗変化素子10に対して更なる書き込みは行わず(すなわち、上記にて設定された抵抗値状態を維持)、抵抗変化が起こらないような低い電圧を用いた読み出しのみを行った。
【0106】
図11は、通常の抵抗変化動作素子群及び本実施の形態1の変形例3に相当する追加過程を実施した抵抗変化素子群における、高抵抗状態及び低抵抗状態の抵抗変化素子10各4kbitのデータ保持特性評価結果である。
図11において、低抵抗状態の抵抗変化素子10からなる素子群のことを、低抵抗素子群と記し、高抵抗状態の抵抗変化素子10からなる素子群のことを、高抵抗素子群と記している。なお、
図11においては、各測定時における各抵抗変化素子群で最も悪い抵抗値の素子(低抵抗状態の素子においては最も低い読み出し電流の素子、高抵抗状態の素子においては最も高い読み出し電流の素子を指す)、すなわちテイルビットのみを記してある。
【0107】
図11では、横軸は恒温槽での保持時間(累計)、縦軸は読み出し電流値である。横軸は対数で、縦軸は線形でプロットしてある。
【0108】
低抵抗状態(すなわち読み出し電流値が高い)の抵抗変化素子10に着目すると、通常動作後の素子群と比較して、追加過程を実施した素子群では恒温槽での保持による読み出し電流の低下が抑制されており、低抵抗状態の抵抗変化素子10に対し追加過程を実施することにより保持特性が向上したと言える。
【0109】
また、高抵抗状態(すなわち読み出し電流値が低い)の抵抗変化素子10に着目すると、通常動作後の素子群と比較して、追加過程を実施した素子群では恒温槽での保持による一部の素子の読み出し電流の高電流化が抑制されており、高抵抗状態の抵抗変化素子10に対し追加過程を実施することにより保持特性が向上したと言える。
【0110】
以上のことから、評価例の駆動方法においては、低抵抗状態の抵抗変化素子10、高抵抗状態の抵抗変化素子10の少なくともいずれか一方に対し追加過程を実施することで抵抗変化素子10の保持特性が向上し、両方の抵抗状態の抵抗変化素子に対して追加過程を実施することで、抵抗変化素子10の保持特性がさらに向上し、また、データ保持後の読み出し時における読み出しエラー抑制効果がさらに高くなる。
【0111】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1において説明した抵抗変化素子10を用いて構成される、1トランジスタ/1不揮発性記憶部型(1T1R型)の不揮発性記憶装置について説明する。
【0112】
[不揮発性記憶装置の構成]
図12は、実施の形態2に係る不揮発性記憶装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図12に示すように、1T1R型の不揮発性記憶装置100は、半導体基板上にメモリ本体部101を備えており、このメモリ本体部101は、アレイ状に配置される抵抗変化素子10及びアクセストランジスタ(電流制御素子)を具備するメモリアレイ102と、電圧パルス印加回路300とを備える。
【0113】
電圧パルス印加回路300は、各抵抗変化素子10の第1電極2及び第2電極4間に電圧パルスを印加する機能を有し、例えば、行選択回路/ドライバ103と、列選択回路104と、情報の書き込みを行うための書込み回路105と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、選択された抵抗変化素子10に2値のデータのうちの何れのデータが記憶されているかの判定を行うセンスアンプ106と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路107と、を具備している。
【0114】
また、不揮発性記憶装置100は、セルプレート電源(VCP電源)108と、外部から入力されるアドレス信号を受け取るアドレス入力回路109と、制御回路110とをさらに備えている。
【0115】
制御回路110は、電圧パルス印加回路300及びメモリ本体部101を制御する回路であって、受け付け部310と、判定部320と、パルス条件切り替え部330とを備える。
【0116】
受け付け部310は、外部からの指令(例えば、ユーザによる長期保存の指令)を受け付けると、電圧パルス印加回路300を制御して、各抵抗変化素子10の抵抗状態を読み出す。
【0117】
判定部320は、受け付け部310によって読み出された各抵抗状態が、高抵抗状態であるか低抵抗状態であるかを判定する。
【0118】
パルス条件切り替え部330は、判定部320による判定の結果に基づいて、電圧パルス印加回路300を制御する。より具体的には、パルス条件切り替え部330は、抵抗状態が高抵抗状態であると判定された抵抗変化素子10には、その抵抗変化素子10の第1電極2及び第2電極4間に、第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、第1極性の第1追加電圧パルスを印加するよう、電圧パルス印加回路300を制御する。そして、抵抗状態が低抵抗状態であると判定された抵抗変化素子10には、その抵抗変化素子10の第1電極2及び第2電極4間に、第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、第2極性の第2追加電圧パルスを印加するよう、電圧パルス印加回路300を制御する。
【0119】
これら、受け付け部310、判定部320、パルス条件切り替え部330は、例えば、論理回路として実現されてもよいし、例えば、制御回路110がプロセッサとメモリとを含み、そのプロセッサがそのメモリに記憶されるプログラムを実行することで機能的に実現されてもよい。
【0120】
メモリアレイ102は、半導体基板の上に形成された、互いに交差するように配列された複数のワード線WL0,WL1,WL2,…及びビット線BL0,BL1,BL2,…と、これらのワード線WL0,WL1,WL2,…及びビット線BL0,BL1,BL2,…の交点に対応してそれぞれ設けられた複数のアクセストランジスタT11,T12,T13,T21,T22,T23,T31,T32,T33,…(以下、「アクセストランジスタT11,T12,…」と表す)と、アクセストランジスタT11,T12,…と1対1に設けられた複数のメモリセルM111,M112,M113,M121,M122,M123,M131,M132,M133(以下、「メモリセルM111,M112,…」と表す)とを備えている。ここで、メモリセルM111,M112,…は、実施の形態1の抵抗変化素子10に相当する。
【0121】
また、メモリアレイ102は、ワード線WL0,WL1,WL2,…に平行して配列されている複数のプレート線PL0,PL1,PL2,…を備えている。
【0122】
アクセストランジスタT11,T12,T13,…のドレインはビット線BL0に、アクセストランジスタT21,T22,T23,…のドレインはビット線BL1に、アクセストランジスタT31,T32,T33,…のドレインはビット線BL2に、それぞれ接続されている。
【0123】
また、アクセストランジスタT11,T21,T31,…のゲートはワード線WL0に、アクセストランジスタT12,T22,T32,…のゲートはワード線WL1に、アクセストランジスタT13,T23,T33,…のゲートはワード線WL2に、それぞれ接続されている。
【0124】
さらに、アクセストランジスタT11,T12,…のソースはそれぞれ、メモリセルM111,M112,…と接続されている。
【0125】
また、メモリセルM111,M121,M131,…はプレート線PL0に、メモリセルM112,M122,M132,…はプレート線PL1に、メモリセルM113,M123,M133,…はプレート線PL2に、それぞれ接続されている。
【0126】
アドレス入力回路109は、外部回路(図示せず)からアドレス信号を受け取り、このアドレス信号に基づいて行アドレス信号を行選択回路/ドライバ103へ出力するとともに、列アドレス信号を列選択回路104へ出力する。ここで、アドレス信号は、複数のメモリセルM111,M112,…のうちの選択される特定のメモリセルのアドレスを示す信号である。また、行アドレス信号は、アドレス信号に示されたアドレスのうちの行のアドレスを示す信号であり、列アドレス信号は、アドレス信号に示されたアドレスのうちの列のアドレスを示す信号である。
【0127】
行選択回路/ドライバ103は、アドレス入力回路109から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、複数のワード線WL0,WL1,WL2,…のうちの何れかを選択し、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
【0128】
列選択回路104は、アドレス入力回路109から出力された列アドレス信号を受け取り、この列アドレス信号に応じて、複数のビット線BL0,BL1,BL2,…のうちの何れかを選択し、その選択されたビット線に対して、各種電圧パルスを印加する。
【0129】
書込み回路105は、制御回路110から出力された書き込み信号を受け取った場合、列選択回路104に対して、その書き込み信号に応じた電圧パルスを、選択されたビット線に対して印加することを指示する信号を出力する。
【0130】
センスアンプ106は、情報の読み出し工程において、読み出し対象となる選択ビット線に流れる電流量を検出し、記憶されているデータを判別する。本実施の形態の場合、各メモリセルM111,M112,…の抵抗状態を高低の2つの状態とし、それらの各状態と各データとを対応させる。そのため、センスアンプ106は、選択されたメモリセルの抵抗変化層の抵抗状態が何れの状態にあるのかを判別し、それに応じて2値のデータのうち何れのデータが記憶されているのかを判定する。その結果得られた出力データDOは、データ入出力回路107を介して、外部回路へ出力される。
【0131】
[初期過程における動作]
制御回路110は、初期過程において、第1の初期電圧パルス及び第2の初期電圧パルスを各メモリセルM111,M112,…に対してこの順に印加することを指示する書き込み信号を書込み回路105に対して出力する。書込み回路105は、この書き込み信号を受け取った場合、すべてのビット線BL0,BL1,BL2,…に対して第1の初期電圧パルス及び第2の初期電圧パルスを印加することを指示する信号を列選択回路104に対して出力する。
【0132】
列選択回路104は、この信号を受け取った場合、すべてのビット線BL0,BL1,BL2,…に対して第1の初期電圧パルス及び第2の初期電圧パルスを印加する。このとき、行選択回路/ドライバ103は、すべてのワード線WL0,WL1,WL2,…に対して、所定の電圧を印加する。
【0133】
[通常動作時における動作]
制御回路110は、通常動作時のデータの書き込み過程においては、データ入出力回路107に入力された入力データDinに応じて、低抵抗化電圧パルス又は高抵抗化電圧パルスの印加を指示する書き込み信号を書込み回路105へ出力する。他方、データの読み出し過程において、制御回路110は、読み出し用電圧パルスの印加を指示する読み出し信号を列選択回路104へ出力する。
【0134】
[追加過程における動作]
受け付け部310は、外部から所定の指令(例えば、ユーザによる長期保存の指令)を受け付けると、メモリアレイ102に含まれる全てのメモリセルの抵抗状態を読み出すことを指示する信号を電圧パルス印加回路300へ出力して、全てのメモリセルの抵抗状態を読み出す。
【0135】
判定部320は、全てのメモリセルについて、受け付け部310によって読み出された抵抗状態が、高抵抗状態であるか低抵抗状態であるかを判定する。
【0136】
パルス条件切り替え部330は、抵抗状態が低抵抗状態であると判定された各メモリセルに対して第1追加電圧パルスを印加することを指示し、抵抗状態が高抵抗状態であると判定された各メモリセルに対して第2追加電圧パルスを印加することを指示する信号を電圧パルス印加回路300へ出力する。
【0137】
電圧パルス印加回路300は、この信号を受け取ると、抵抗状態が高抵抗状態であると判定された各メモリセルに対して第1追加電圧パルスを印加し、抵抗状態が低抵抗状態であると判定された各メモリセルに対して第2追加電圧パルスを印加する。
【0138】
上記のように動作することにより、不揮発性記憶装置100は、論理情報を記憶する期間を従来よりも長くし得る。
【0139】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1において説明した抵抗変化素子10を用いて構成される、クロスポイント型の不揮発性記憶装置について説明する。
【0140】
[不揮発性記憶装置の構成]
図13は、実施の形態3に係る不揮発性記憶装置200の構成の一例を示すブロック図である。
図13に示すように、クロスポイント型の不揮発性記憶装置200は、半導体基板上にメモリ本体部201を備えており、このメモリ本体部201は、アレイ状に配置される抵抗変化素子10及び電流制御素子を具備するメモリアレイ202と、電圧パルス印加回路400とを備える。
【0141】
電圧パルス印加回路400は、各抵抗変化素子10の第1電極2及び第2電極4間に電圧パルスを印加する機能を有し、例えば、行選択回路/ドライバ203と、列選択回路/ドライバ204と、情報の書き込みを行うための書込み回路205と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、選択された抵抗変化素子10に2値のデータのうちの何れのデータが記憶されているかの判別を行うセンスアンプ206と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路207と、を具備している。
【0142】
また、不揮発性記憶装置200は、外部から入力されるアドレス信号を受け取るアドレス入力回路208と、制御回路210とをさらに備えている。
【0143】
制御回路210は、電圧パルス印加回路400及びメモリ本体部201を制御する回路であって、受け付け部410と、判定部420と、パルス条件切り替え部430とを備える。
【0144】
受け付け部410は、外部からの指令(例えば、ユーザによる長期保存の指令)を受け付けると、電圧パルス印加回路400を制御して、各抵抗変化素子10の抵抗状態を読み出す。
【0145】
判定部420は、受け付け部410によって読み出された各抵抗状態が、高抵抗状態であるか低抵抗状態であるかを判定する。
【0146】
パルス条件切り替え部430は、判定部420による判定の結果に基づいて、電圧パルス印加回路400を制御する。より具体的には、パルス条件切り替え部430は、抵抗状態が高抵抗状態であると判定された抵抗変化素子10には、その抵抗変化素子10の第1電極2及び第2電極4間に、第1電圧パルスよりもエネルギーの大きい、第1極性の第1追加電圧パルスを印加するよう、電圧パルス印加回路400を制御する。そして、抵抗状態が低抵抗状態であると判定された抵抗変化素子10には、その抵抗変化素子10の第1電極2及び第2電極4間に、第2電圧パルスよりもエネルギーの大きい、第2極性の第2追加電圧パルスを印加するよう、電圧パルス印加回路400を制御する。
【0147】
これら、受け付け部410、判定部420、パルス条件切り替え部430は、例えば、論理回路として実現されてもよいし、例えば、制御回路210がプロセッサとメモリとを含み、そのプロセッサがそのメモリに記憶されるプログラムを実行することで機能的に実現されてもよい。
【0148】
メモリアレイ202は、半導体基板上に互い平行に形成された複数のワード線WL0,WL1,WL2,…と、これらのワード線WL0,WL1,WL2,…の上方にその半導体基板の主面に平行な面内において互いに平行に、しかも複数のワード線WL0,WL1,WL2,…に立体交差するように形成された複数のビット線BL0,BL1,BL2,…とを備えている。
【0149】
また、これらのワード線WL0,WL1,WL2,…及びビット線BL0,BL1,BL2,…の交点に対応してマトリクス状に設けられた複数のメモリセルM211,M212,M213,M221,M222,M223,M231,M232,M123,…(以下、「メモリセルM211,M212,…」と表す)が設けられている。ここで、メモリセルM211,M212,…は、実施の形態1の抵抗変化素子10に相当する素子と、MIM(Metal-Insulator-Metal)ダイオード又はMSM(Metal-Semiconductor-Metal)ダイオード等で構成される電流制御素子とが接続されて構成されている。
【0150】
アドレス入力回路208は、外部回路(図示せず)からアドレス信号を受け取り、このアドレス信号に基づいて行アドレス信号を行選択回路/ドライバ203へ出力するとともに、列アドレス信号を列選択回路/ドライバ204へ出力する。ここで、アドレス信号は、複数のメモリセルM211,M212,…のうちの選択される特定のメモリセルのアドレスを示す信号である。また、行アドレス信号はアドレス信号に示されたアドレスのうちの行のアドレスを示す信号であり、列アドレス信号は同じく列のアドレスを示す信号である。
【0151】
行選択回路/ドライバ203は、アドレス入力回路208から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、複数のワード線WL0,WL1,WL2,…のうちの何れかを選択し、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
【0152】
列選択回路/ドライバ204は、アドレス入力回路208から出力された列アドレス信号を受け取り、この列アドレス信号に応じて、複数のビット線BL0,BL1,BL2,…のうちの何れかを選択し、その選択されたビット線に対して、各種電圧パルスを印加する。
【0153】
書込み回路205は、制御回路210から出力された書き込み信号を受け取った場合、行選択回路/ドライバ203に対して選択されたワード線に対する電圧の印加を指示する信号を出力するとともに、列選択回路/ドライバ204に対して、その書き込み信号に応じた電圧パルスを、選択されたビット線に対して印加することを指示する信号を出力する。
【0154】
センスアンプ206は、データの読み出し工程において、読み出し対象となる選択ビット線に流れる電流量を検出し、記憶されているデータを判別する。本実施の形態の場合、各メモリセルM211,M212,…の抵抗状態を高低の2つの状態とし、それらの各状態と各データとを対応させる。そのため、センスアンプ206は、選択されたメモリセルの抵抗変化層の抵抗状態が何れの状態にあるのかを判別し、それに応じて2値のデータのうち何れのデータが記憶されているのかを判定する。その結果得られた出力データDOは、データ入出力回路207を介して、外部回路へ出力される。
【0155】
[初期過程における動作]
制御回路210は、初期過程において、第1の初期電圧パルス及び第2の初期電圧パルスを各メモリセルM211,M212,…に対してこの順に印加することを指示する書き込み信号を書込み回路205に対して出力する。書込み回路105は、この書き込み信号を受け取った場合、すべてのワード線WL0,WL1,WL2,…に対して所定の電圧を印加することを指示する信号を行選択回路/ドライバ203に対して出力するとともに、すべてのビット線BL0,BL1,BL2,…に対して第1の初期電圧パルス及び第2の初期電圧パルスを印加することを指示する信号を列選択回路/ドライバ204に対して出力する。
【0156】
[通常動作時における動作]
制御回路210は、通常動作時のデータの書き込み過程において、データ入出力回路207に入力された入力データDinに応じて、低抵抗化電圧パルス又は高抵抗化電圧パルスの印加を指示する書き込み信号を書込み回路205へ出力する。他方、データの読み出し工程において、制御回路210は、読み出し用電圧パルスの印加を指示する読み出し信号を列選択回路/ドライバ204へ出力する。
【0157】
[追加過程における動作]
受け付け部410は、外部から所定の指令(例えば、ユーザによる長期保存の指令)を受け付けると、メモリアレイ202に含まれる全てのメモリセルの抵抗状態を読み出すことを指示する信号を電圧パルス印加回路400へ出力して、全てのメモリセルの抵抗状態を読み出す。
【0158】
判定部420は、全てのメモリセルについて、受け付け部410によって読み出された抵抗状態が、高抵抗状態であるか低抵抗状態であるかを判定する。
【0159】
パルス条件切り替え部430は、抵抗状態が高抵抗状態であると判定された各メモリセルに対して第1追加電圧パルスを印加することを指示し、抵抗状態が低抵抗状態であると判定された各メモリセルに対して第2追加電圧パルスを印加することを指示する信号を電圧パルス印加回路400へ出力する。
【0160】
電圧パルス印加回路400は、この信号を受け取ると、抵抗状態が高抵抗状態であると判定された各メモリセルに対して第1追加電圧パルスを印加し、抵抗状態が低抵抗状態であると判定された各メモリセルに対して第2追加電圧パルスを印加する。
【0161】
上記のように動作することにより、不揮発性記憶装置200は、論理情報を記憶する期間を従来よりも長くし得る。
【0162】
なお、
図13に示す本実施の形態に係る不揮発性記憶装置200におけるメモリアレイ202を、3次元に積み重ねることによって、多層化構造の不揮発性記憶装置を実現することも可能である。このように構成された多層化メモリアレイを設けることによって、超大容量不揮発性記憶装置を実現することが可能となる。
【0163】
(その他の実施の形態)
実施の形態2では、実施の形態2に係る不揮発性記憶装置100が単独で、追加過程における動作を実施する構成の例について例示した。これに対して他の例として、複数の装置又は回路が共同で、追加過程における動作を実施する構成の例も考えられる。
【0164】
図14は、その他の実施の形態に係る不揮発性記憶システム1000の構成の一例を示すブロック図である。
図14に示すように、不揮発性記憶システム1000は、不揮発性記憶装置100aとコントローラ500とを備えて構成される。そして、不揮発性記憶装置100aとコントローラ500とが共同で、追加過程における動作を実行する。
【0165】
不揮発性記憶装置100aは、実施の形態2に係る不揮発性記憶装置100から、実施の形態2に係る制御回路110が制御回路110aに変更されて構成される。
【0166】
制御回路110aは、実施の形態2に係る制御回路110から、実施の形態2に係る受け付け部310と、実施の形態2に係る判定部320とが削除されるよう変更されて構成される。
【0167】
コントローラ500は、プロセッサとメモリとを含んで構成される。そして、そのプロセッサがそのメモリに記憶されるプログラムを実行することで、実施の形態2に係る受け付け部310と、実施の形態2に係る判定部320とを機能的に実現する。
【0168】
コントローラ500の他の構成例としては、例えば、受け付け部310と、判定部320とを、論理回路として実現する構成例等が考えられる。
【0169】
また、コントローラ500は、例えば、複数の集積回路で実現されてもよいし、1つの集積回路で実現されてもよい。
【0170】
上記構成の不揮発性記憶システム1000において、コントローラ500に含まれる受け付け部310及び判定部320と、不揮発性記憶装置100aに含まれるパルス条件切り替え部330とは、共同で、実施の形態2に係る追加過程における動作と同様の動作を行う。
【0171】
このように、不揮発性記憶システム1000は、実施の形態2に係る追加過程における動作と同様の動作を実現することができる。
【0172】
なお、不揮発性記憶システム1000のことを、不揮発性記憶装置100aとコントローラ500とからなる1つの装置であると考えることもできる。このため、不揮発性記憶システム1000のことを、不揮発性記憶装置という名称で呼んでも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、抵抗変化型の不揮発性記憶装置に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0174】
2 第1電極
3 抵抗変化層
4 第2電極
10 抵抗変化素子
110、110a、210 制御回路
300、400 電圧パルス印加回路