(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】三次元成形用導電性シート
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
H05B3/20 344
(21)【出願番号】P 2018553022
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2017042677
(87)【国際公開番号】W WO2018097322
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2016230552
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515125517
【氏名又は名称】リンテック オブ アメリカ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Lintec of America, Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】井上 閑山
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143538(JP,A)
【文献】特開2016-022857(JP,A)
【文献】特公昭47-005591(JP,B1)
【文献】実公平05-032954(JP,Y2)
【文献】特開2004-238509(JP,A)
【文献】特開平05-013157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びた複数の導電性線状体が、0.3mm~12.0mmの間隔をもって、隣り合う導電性線状体の距離を一定に保ち配列された疑似シート構造体と、
前記疑似シート構造体の一方の表面上に設けられた樹脂保護層と、
前記疑似シート構造体と前記樹脂保護層との間に設けられた接着剤層と、
を有
し、
前記導電性線状体が、金属ワイヤーを含む線状体、又は導電性糸を含む線状体であり、
前記疑似シート構造体、前記接着剤層及び前記樹脂保護層の積層体により形成される被覆層を表面導電体として有する成形品に使用される
三次元成形用導電性シート。
【請求項2】
前記導電性線状体の直径が、5μm~75μmである請求項1に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項3】
前記樹脂保護層の厚さと前記接着剤層との厚さの比率(樹脂保護層の厚さ/接着剤層との厚さ)が、1/1~100/1である請求項1又は請求項2に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項4】
前記導電性線状体が、波形状の線状体である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項5】
前記導電性線状体が、炭素材料で被覆された金属ワイヤーを含む線状体である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項6】
前記導電性線状体が、炭素材料で被覆された金属ワイヤーを含む線状体であり、
かつ前記接着剤層の剥離力であって、ステンレス板に前記接着剤層を貼付けして30分後の剥離力が12N/25mm以上である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項7】
前記導電性線状体が、導電性糸を含む線状体であり、
かつ前記接着剤層の剥離力であって、ステンレス板に前記接着剤層を貼付けして30分後の剥離力が11N/25mm以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項8】
前記樹脂保護層を有する側の前記疑似シート構造体の表面上に設けられた層を構成する少なくともいずれか一層が、着色剤を含む請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項9】
前記樹脂保護層を有する側の前記疑似シート構造体の表面上に設けられた層を構成する少なくともいずれか一層が、熱伝導性無機充填材を含む請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項10】
前記樹脂保護層を有する側とは反対側の前記疑似シート構造体の表面上に設けられた樹脂層を有する請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【請求項11】
三次元成形用発熱シートである請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元成形用導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性シートは、氷雪融解用発熱シート、暖房用発熱シート等の発熱シートなどとして種々使用されている。
例えば、特許文献1には、「透明基材、前記透明基材の少なくとも一面に備えられた導電性発熱線、前記導電性発熱線と電気的に連結されたバスバー、および前記バスバーと連結された電源部を含む発熱体」が開示されている。
また、特許文献2には、「接着剤上にワイヤを配置した加熱素子」が開示されている。
また、特許文献3には、「金属細線部の線幅が0.4μm以上、50μm以下であって、かつ光透過性部/全フィルム面積の比率が70~99.9%である透明フレキシブルフィルムヒーター」が開示されている。
【0003】
一方で、家電筐体、車両内装部品、建材内装材等に使用される成形品の表面に、意匠性、耐傷性等の機能を付与することを目的として、TOM(Three dimension Overlay Method)成形、フィルムインサート成形、真空成形(バキューム・フォーミング)等の三次元成形法を利用して、三次元成形用シートを三次元成形しつつ被覆する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
特許文献1:日本国特開2012-134163号公報
特許文献2:日本国特許4776129号公報
特許文献3:日本国特開2008-077879号公報
特許文献4:日本国特開2015-182438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、導電性線状体が配列された疑似シート構造体を有する導電性シートにおいて、疑似シート構造体と、隣接する層又は部材との接着性が悪いことがある。その場合、疑似シート構造体と隣接する層又は部材との界面で剥離が生じ易い。
【0006】
一方で、疑似シート構造体の抵抗が増加したり、例えば、導電性シートを発熱シートとして利用する場合に温度上昇の分布が不均一となったりする等、導電性シートの機能低下が生じる。
【0007】
そのため、疑似シート構造体を有する導電性シートを三次元成形用シートとして適用した場合でも、シートの全部又は一部が疑似シート構造体を境に剥れたり、機能低下が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本開示の課題は、疑似シート構造体を境としたシートの剥がれを抑制しつつ、高い機能を発揮する三次元成形用導電性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
<1>
一方向に延びた複数の導電性線状体が、0.3mm~12.0mmの間隔をもって、隣り合う導電性線状体の距離を一定に保ち配列された疑似シート構造体と、
前記疑似シート構造体の一方の表面上に設けられた樹脂保護層と、
前記疑似シート構造体と前記樹脂保護層との間に設けられた接着剤層と、
を有する三次元成形用導電性シート。
<2>
前記導電性線状体の直径が、5μm~75μmである<1>に記載の三次元成形用導電性シート。
<3>
前記樹脂保護層の厚さと前記接着剤層との厚さの比率(樹脂保護層の厚さ/接着剤層との厚さ)が、1/1~100/1である<1>又は<2>に記載の三次元成形用発熱シート。
<4>
前記導電性線状体が、波形状の線状体である<1>~<3>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
<5>
前記導電性線状体が、金属ワイヤーを含む線状体、又は導電性糸を含む線状体である<1>~<4>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
<6>
前記導電性線状体が、炭素材料で被覆された金属ワイヤーを含む線状体である<1~<4>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
<7>
前記導電性線状体が、炭素材料で被覆された金属ワイヤーを含む線状体であり、
かつ前記接着剤層の剥離力であって、ステンレス板に前記接着剤層を貼付けして30分後の剥離力が12N/25mm以上である<1>~<4>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
<8>
前記導電性線状体が、導電性糸を含む線状体であり、
かつ前記接着剤層の剥離力であって、ステンレス板に前記接着剤層を貼付けして30分後の剥離力が11N/25mm以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
<9>
前記樹脂保護層を有する側の前記疑似シート構造体の表面上に設けられた層を構成する少なくともいずれか一層が、着色剤を含む<1>~<8>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
<10>
前記樹脂保護層を有する側の前記疑似シート構造体の表面上に設けられた層を構成する少なくともいずれか一層が、熱伝導性無機充填材を含む<1>~<9>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
<11>
前記樹脂保護層を有する側とは反対側の前記疑似シート構造体の表面上に設けられた樹脂層を有する<1>~<10>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
<12>
三次元成形用発熱シートである<1>~<11>のいずれか1項に記載の三次元成形用導電性シート。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、疑似シート構造体を境としたシートの剥がれを抑制しつつ、高い機能を発揮する三次元成形用導電性シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る三次元成形用導電性シートを示す概略平面図である。
【
図2】本実施形態に係る三次元成形用導電性シートを示す概略断面図である。
【
図3】本実施形態に係る三次元成形用導電性シートの第1の変形例を示す概略断面図である。
【
図4】本実施形態に係る三次元成形用導電性シートの第2の変形例を示す概略平面図である。
【
図5】本実施形態に係る三次元成形用導電性シートの第3の変形例を示す概略平面図である。
【
図6】本実施形態に係る三次元成形用導電性シートの第3の変形例の他の例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一例である実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いた数値範囲は、「~」の前後で示された数値が各々最小値及び最大値として含まれる数値範囲を意味する。
【0014】
<三次元成形用導電性シート>
本実施形態に係る三次元成形用導電性シート(以下、「導電性シート」とも称する)は、一方向に延びた複数の導電性線状体が、0.3mm~12.0mmの間隔をもって、隣り合う導電性線状体の距離を一定に保ち配列された疑似シート構造体と、疑似シート構造体の一方の表面上に設けられた樹脂保護層と、疑似シート構造体と樹脂保護層との間に設けられた接着剤層と、を有する。なお、ここでいう「表面」とは、複数の導電性線状体によって形成される、二次元状の構造をシートとみなした場合に表面に相当する面のことをいう。
【0015】
本実施形態に係る導電性シートは、疑似シート構造体と接着剤層とを積層した構造を有し、疑似シート構造体の導電性線状体同士の間から接着剤層が露出している。そして、露出した接着剤層は、疑似シート構造体に隣接する層(例えば樹脂保護層を有する側とは反対側の疑似シート構造体の表面上に設けられた樹脂層等)又は部材(例えば導電性シートの被覆対象である成形品等)を接着する機能を有している。
【0016】
本実施形態に係るシートは、疑似シート構造体を境としたシートの剥がれを抑制しつつ、高い機能を発揮できる。
【0017】
また、本実施形態に係るシートでは、疑似シート構造体と樹脂保護層との間に接着剤層が設けられた構成となるため、疑似シート構造体(つまり導電性線状体)の樹脂保護層の固定を容易に行うことができる。また、シートを製造するときも、繰り出した導電性線状体を接着剤層の表面上で直ちに固定しつつ、疑似シート構造体を形成できるため、製造工程も簡易化される。
【0018】
以下、本実施形態に係る三次元成形用導電性シートの構成の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本実施形態に係る三次元成形用導電性シート10(以下、単に「シート10」とも称する)は、
図1及び
図2に示すように、例えば、疑似シート構造体20と、疑似シート構造体20の一方の表面上に設けられた樹脂保護層30と、疑似シート構造体20と樹脂保護層30との間に設けられた接着剤層32と、接着剤層32を有する側とは反対側の疑似シート構造体20の表面上に設けられた剥離層34と、を有している、つまり、例えば、シート10は、剥離層34、疑似シート構造体20、接着剤層32、及び樹脂保護層30がこの順で積層されている。
【0020】
ここで、この層構成のシート10は、剥離層34を剥離した後、成形品(被着体)に対して疑似シート構造体20を有する側の面を対面させつつ、三次元成形される。この際、シート10は、疑似シート構造体20における「複数の線状体」の間から露出する接着剤層32の接着力によって成形品の表面に接着した状態で、成形品の表面を被覆する。そして、この層構成のシート10は、三次元成形法のうち、TOM成形、真空成形(バキューム・フォーミング)に適している。
【0021】
(疑似シート構造体)
疑似シート構造体20は、一方向に延びた複数の導電性線状体22が、互いに間隔をもって、隣り合う導電性線状体22の距離を一定に保ち配列された疑似シート構造体で構成されている。具体的には、疑似シート構造体20は、例えば、直線状に伸びた導電性線状体22が、導電性線状体22の長さ方向(又は延びる方向)と直交する方向に、互いに平行に等間隔で複数配列された構造体で構成されている。つまり、疑似シート構造体20は、例えば、導電性線状体22がストライプ状に配列された構造体で構成されている。なお、複数の導電性線状体22の各間隔は、等間隔が好ましいが、不等間隔であってもよい。
【0022】
ここで、疑似シート構造体20において、導電性線状体22の間隔Lは、0.3mm~12.0mmである。この構成の導電性シート10において、複数の導電性線状体22同士の間隔を0.3mm~12.0mmの範囲にすると、導電性線状体22同士の間から露出する接着剤層32の露出面積を確保し、疑似シート構造体20から露出する接着剤層32による接着が導電性線状体22により妨げられることを防止できる。また、複数の導電性線状体22同士の間隔が上記範囲であれば、導電性線状体22がある程度密集しているため、疑似シート構造体20の抵抗が増加したり、導電性シート10を発熱シートとして利用する場合に、発熱しない領域が増加して温度上昇の分布が不均一となったりする(昇温ムラ)等の、導電性シート10の機能低下が抑制できる。これらの観点から、導電性線状体22の間隔Lは、0.5mm~10.0mmが好ましく、0.8mm~7.0mmがより好ましい。
【0023】
導電性線状体22の間隔Lは、デジタル顕微鏡を用いて、その疑似シート構造体20の導電性線状体22を観察し、隣り合う2つの導電性線状体22の間隔を測定する。
なお、隣り合う2つの導電性線状体22の間隔Lとは、導電性線状体22を配列させていった方向に沿った長さであって、2つの導電性線状体22の対向する部分間の長さである(
図2参照)。間隔Lは、導電性線状体22の配列が不等間隔である場合には、すべての隣り合う導電性線状体22同士の間隔の平均値であるが、間隔Lの値を制御しやすくする観点、光線透過性、発熱性等の機能均一性の確保の観点から、導電性線状体22は疑似シート構造体20において、略等間隔に配列されていることが好ましい。
【0024】
導電性線状体22の直径Dは、5μm~75μmが好ましく、8μm~60μmがより好ましく、12μm~40μmが更に好ましい。導電性線状体22の直径Dを5μm~75μmにすると、疑似シート構造体20のシート抵抗の上昇を抑制することができる。また、樹脂保護層30の厚さを過度に厚くすることなく、シート10を三次元成形して成形品の表面に被覆した後、導電性線状体22が樹脂保護層30側に隣接する層(接着剤層32、樹脂保護層等)に埋め込まれても、導電性線状体22の存在する部分で樹脂保護層30の表面が盛り上がることを回避することができる。さらに、後述するように、導電性線状体22が波形状の線状体の場合、シート10が三次元成形されたときの波形状の導電性線状体22の直線化が隣接する層(接着剤層32等)によって妨げられ難くなる。特に導電性線状体22の直径Dが12μm以上の場合には、疑似シート構造体20のシート抵抗を低下させやすくなる。一方で、シート10として三次元成形用発熱シートを適用した成形品の表面に触れた際に、導電性線状体22に起因した樹脂保護層30の盛り上がりが感得されやすい傾向があるが、この三次元成形用発熱シートによれば、このような樹脂保護層30の盛り上がりを発生させないようにすることが容易である。
【0025】
導電性線状体22の直径Dは、デジタル顕微鏡を用いて、疑似シート構造体20の導電性線状体22を観察し、無作為に選んだ5箇所で、導電性線状体22の直径を測定し、その平均値とする。
【0026】
導電性線状体22の体積抵抗率Rは、1.0×10-9Ω・m~1.0×10-3Ω・mが好ましく、1.0×10-8Ω・m~1.0×10-4Ω・mがより好ましい。導電性線状体22の体積抵抗率Rを上記範囲にすると、疑似シート構造体20の面抵抗が低下しやすくなる。
【0027】
導電性線状体22の体積抵抗率Rの測定は、次の通りである。まず、上述した方法に従って、導電性線状体22の直径Dを求める。次に、導電性線状体22の両端に銀ペーストを塗布し、長さ40mmの部分の抵抗を測定し、導電性線状体22の抵抗値を求める。そして、直径Dの柱状の導電性線状体22と仮定して、導電性線状体22の断面積を算出し、これに上記の測定した長さを乗じて体積とする。得られた抵抗値を、この体積で除して、導電性線状体22の体積抵抗率Rを算出する。
【0028】
導電性線状体22は、導電性を有するものであれば、特に制限はないが、金属ワイヤーを含む線状体、導電性糸を含む線状体等が挙げられる。導電性線状体22は、金属ワイヤー及び導電性糸を含む線状体(金属ワイヤーと導電性糸を撚った線状体等)であってもよい。
【0029】
ここで、後述するように、導電性線状体22を波形状の線状体とし、シート10が三次元成形され伸張したときに、導電性線状体22が直線化し、シート10の伸長に追従して導電性線状体22も伸長する場合、導電性線状体22と接着剤層32とが強固に接着していると、導電性線状体22の伸長が妨げられる。
一方で、導電性線状体22として、金属ワイヤーを含む線状体、又は導電性糸を含む線状体を適用すると、導電性線状体22と接着剤層32とが適度に接着している状態となる。そのため、三次元成形によるシート10の伸長に追従して、波形状の導電性線状体22が直線化して伸長する場合でも、導電性線状体22が容易に接着剤層32から剥離し、導電性線状体22の伸長を生じやすくすることができる。
【0030】
金属ワイヤーを含む線状体、及び導電性糸を含む線状体は、共に、高い熱伝導性及び高い電気伝導性を有するため、導電性線状体22として適用すると、疑似シート構造体20の面抵抗を低減しつつ、光線透過性が向上しやすくなる。また、速やかな発熱が実現されやすくなる。さらに、上述したように直径が細い線状体を得られやすい。
【0031】
金属ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステン等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、はんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料やポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。
【0032】
金属ワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属ワイヤーも挙げられる。金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、接着剤層32との接着性が低下する。そのため、導電性線状体22として、炭素材料で被覆された金属ワイヤーを含む線状体を適用すると、三次元成形によるシート10の伸長に追従して、波形状の導電性線状体22が直線化して伸長する場合でも、導電性線状体22が容易に接着剤層32から剥離し、導電性線状体22の伸長を生じやすくすることができる。また、金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると金属腐食も抑制される。
【0033】
金属ワイヤーを被覆する炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンファイバー等の非晶質炭素;グラファイト;フラーレン;グラフェン;カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0034】
一方、導電性糸を含む線状体は、1本の導電性糸からなる線状体であってもよいし、複数本の導電性糸を撚った線状体であってもよい。
導電性糸としては、導電性繊維(金属繊維、炭素繊維、イオン導電性ポリマーの繊維等)を含む糸、表面に金属(銅、銀、ニッケル等)をめっき又は蒸着した糸、金属酸化物を含浸させた糸等が挙げられる。
【0035】
導電性糸を含む線状体としては、特に、カーボンナノチューブを利用した糸を含む線状体(以下「カーボンナノチューブ線状体」とも称する)が好適に挙げられる。
カーボンナノチューブ線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。このような製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブが捻られた構造を有しない線状体である。このほか、カーボンナノチューブの分散液から、紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、例えば、米国公開公報US 2013/0251619(日本国特開2011-253140号公報)に開示されている方法により行うことができる。カーボンナノチューブ線状体の直径の均一さが得られる観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが望ましく、純度の高いカーボンナノチューブ線状体が得られる観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が編まれた線状体であってもよい。
【0036】
カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと金属とを含む線状体(以下「複合線状体」とも称する)であってもよい。複合線状体は、カーボンナノチューブ線状体の上述した特徴を維持しつつ、線状体の導電性が向上しやすくなる。つまり、疑似シート構造体20の抵抗を、低下させることが容易となる。
【0037】
複合線状体としては、例えば、(1)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シート若しくは束、又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、湿式めっき等により担持させた複合線状体、(2)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と共に、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体、(3)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを編んだ複合線状体等が挙げられる。なお、(2)の複合線状体においては、カーボンナノチューブの束を撚る際に、(1)の複合線状体と同様にカーボンナノチューブに対して金属を担持させてもよい。また、(3)の複合線状体は、2本の線状体を編んだ場合の複合線状体であるが、少なくとも1本の金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体が含まれていれば、カーボンナノチューブ線状体又は金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体若しくは複合線状体の3本以上を編み合わせてあってもよい。
複合線状体の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛等の金属単体、これら金属単体の少なくとも一種を含む合金(銅-ニッケル-リン合金、銅-鉄-リン-亜鉛合金等)が挙げられる。
【0038】
(樹脂保護層)
樹脂保護層30は、シート10を三次元成形して成形品に被覆した後に、シート10の表面を構成する層である。つまり、樹脂保護層30は、疑似シート構造体20、樹脂保護層30と疑似シート構造体20との間に設けられる機能層(熱伝導層、着色層、装飾層等)を保護し、シート10の表面の強度を高め、機能等を維持するための層である。
【0039】
樹脂保護層30は、三次元成形性の観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の周知の樹脂、又はこれらを2種以上含む混合樹脂が挙げられる。
【0040】
樹脂保護層30は、表面保護の観点から、熱硬化性樹脂を含むことも好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂組成物、ウレタン反応により硬化する樹脂組成物、ラジカル重合反応により硬化する樹脂組成物等の周知な組成物が挙げられる。
【0041】
エポキシ樹脂組成物としては、多官能系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、アミン化合物、フェノール系硬化剤等の硬化剤とを組み合わせたものが挙げられる。
ウレタン反応により硬化する樹脂組成物としては、例えば、(メタ)アクリルポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを含む樹脂組成物が挙げられる。
ラジカル重合反応により硬化する樹脂組成物としては、(メタ)アクリロイル基や不飽和ポリエステル等のラジカル重合反応可能な樹脂組成物が挙げられ、例えば、側鎖にラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル樹脂(反応性基を有するビニル単量体(ヒドロキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)の重合体に、当該共重合体の反応性基と反応し得る基を有し且つラジカル重合性基を有する単量体((メタ)アクリル酸、イソシアナート基含有(メタ)アクリレート等)を反応させた(メタ)アクリル樹脂等)、エポキシ樹脂の末端に(メタ)アクリル酸等を反応させた(メタ)アクリル基を有するエポキシアクリレート、不飽和基を有するカルボン酸(フマル酸等)をジオールと縮合した不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0042】
樹脂保護層30は、熱伝導性無機充填材を含有してもよい。樹脂保護層30に熱伝導性無機充填材を含む場合、シート10を三次元成形用発熱シートとして適用したとき、表面の昇温ムラ(温度上昇の分布の不均一)の発生をより効果的に防止できる。
【0043】
熱伝導性無機充填材としては、熱伝導率が10W/mK以上を有する無機充填材であれば、特に制限はなく、金属粒子、金属酸化物粒子、金属水酸化物粒子、金属窒化物系粒子等が挙げられる。熱伝導性無機充填材としては、具体的には、銀粒子、銅粒子、アルミニウム粒子、ニッケル粒子、酸化亜鉛粒子、酸化アルミニウム粒子、窒化アルミニウム粒子、酸化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子、窒化アルミニウム粒子、チタン粒子、窒化ホウ素粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、ダイヤモンド粒子、グラファイト粒子、カーボンナノチューブ粒子、金属ケイ素粒子、カーボンファイバー粒子、フラーレン粒子、ガラス粒子等の周知の無機粒子が挙げられる。
熱伝導性無機充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0044】
熱伝導性無機充填材の含有量は、樹脂保護層全体に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、2質量%~70質量%であることがより好ましく、5質量%~50質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
樹脂保護層30は、着色剤を含有してもよい。樹脂保護層30に着色剤を含ませ、樹脂保護層30を着色層とした場合、導電性線状体22の隠蔽性が高まる。
着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて、無機顔料、有機顔料、染料等の周知の着色剤が適用できる。
【0046】
樹脂保護層30は、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、可塑剤等が挙げられる。
【0047】
樹脂保護層30における疑似シート構造体20側の表面には、画像形成材料(インク、トナー等)により画像(例えば、図、文字、模様、絵柄等の画像)が形成されてもよい。画像の形成方法は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などの周知の印刷法が適用される。この場合、樹脂保護層30が装飾層として機能すると共に、画像による装飾を保護する機能を持つ。そして、この場合、シート10を三次元加飾用シートとして適用できる。
【0048】
樹脂保護層30の厚さは、三次元成形性、及び樹脂保護層30の保護機能確保の観点から、例えば、8μm~2500μmが好ましく、10μm~2300μmがより好ましく、15μm~2000μmが更に好ましい。
【0049】
(接着剤層)
接着剤層32は、接着剤を含む層である。樹脂保護層30と疑似シート構造体20との間に、かつ疑似シート構造体20と接触して接着剤層32を介在させたシート10とすることで、接着剤層32により、シート10の成形品の表面への被覆が容易となる。具体的には、上述したように、シート10において、疑似シート構造体20(その複数の導電性線状体22)から露出する接着剤層32により、シート10と成形品の表面との接着が容易となる。
【0050】
接着剤層32は、硬化性であってもよい。接着剤層が硬化することにより、疑似シート構造体20を保護するのに十分な硬度が接着剤層32に付与される。また、硬化後の接着剤層32の耐衝撃性が向上し、衝撃による硬化後の接着剤層32の変形も抑制できる。
【0051】
接着剤層32は、短時間で簡便に硬化することができる点で、紫外線、可視エネルギー線、赤外線、電子線等のエネルギー線硬化性であることが好ましい。なお、「エネルギー線硬化」には、エネルギー線を用いた加熱による熱硬化も含まれる。
エネルギー線による硬化の条件は、用いるエネルギー線によって異なるが、例えば、紫外線照射により硬化させる場合、紫外線の照射量は、10mJ/cm2~3,000mJ/cm2、照射時間は1秒~180秒であることが好ましい。
【0052】
接着剤層32の接着剤は、熱により接着するいわゆるヒートシールタイプのもの、湿潤させて貼付性を発現させる接着剤なども挙げられるが、適用の簡便さからは、接着剤層32が、粘着剤(感圧性接着剤)から形成される粘着剤層であることが好ましい。粘着剤層の粘着剤は、特に限定されない。例えば、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、およびゴム系粘着剤からなる群から選択される少なくともいずれかであることが好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0053】
アクリル系粘着剤としては、例えば、直鎖のアルキル基または分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体(つまり、アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(つまり、環状構造を有する(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0054】
アクリル系重合体が共重合体である場合、共重合の形態としては、特に限定されない。アクリル系共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、またはグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0055】
これらの中でも、アクリル系粘着剤としては、炭素数1~20の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「単量体成分(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)、および官能基含有モノマー(a2’)(以下、「単量体成分(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を含むアクリル系共重合体が好ましい。
なお、当該アクリル系共重合体は、単量体成分(a1’)および単量体成分(a2’)以外のその他の単量体成分(a3’)に由来する構成単位(a3)をさらに含んでいてもよい。
【0056】
単量体成分(a1’)が有する鎖状アルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、好ましくは1~12、より好ましくは4~8、さらに好ましくは4~6である。単量体成分(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体成分(a1’)の中でも、ブチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0057】
構成単位(a1)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50質量%~99.5質量%、より好ましくは55質量%~99質量%、さらに好ましくは60質量%~97質量%、よりさらに好ましくは65質量%~95質量%である。
【0058】
単量体成分(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分(a2’)の中でも、ヒドロキシ基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えばジアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
シアノ基含有モノマーとしては、例えばアクリロニトリル等が挙げられる。
【0059】
構成単位(a2)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%~50質量%、より好ましくは0.5質量%~40質量%、さらに好ましくは1.0質量%~30質量%、よりさらに好ましくは1.5質量%~20質量%である。
【0060】
単量体成分(a3’)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0061】
構成単位(a3)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0質量%~40質量%、より好ましくは0質量%~30質量%、さらに好ましくは0質量%~25質量%、よりさらに好ましくは0質量%~20質量%である。
【0062】
なお、上述の単量体成分(a1’)は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよく、上述の単量体成分(a2’)は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよく、上述の単量体成分(a3’)は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
アクリル系共重合体は架橋剤により架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、公知のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。アクリル系共重合体を架橋する場合には、単量体成分(a2’)に由来する官能基を、架橋剤と反応する架橋点として利用することができる。
【0064】
粘着剤層は、上記粘着剤の他に、エネルギー線硬化性の成分を含有していてもよい。
エネルギー線硬化性の成分としては、例えばエネルギー線が紫外線である場合には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の化合物であって、一分子中に紫外線重合性の官能基を2つ以上有する化合物等が挙げられる。
エネルギー線硬化性の成分は、単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
また、粘着剤としてアクリル系粘着剤を適用する場合、エネルギー線硬化性の成分として、アクリル系共重合体における単量体成分(a2’)に由来する官能基に反応する官能基と、エネルギー線重合性の官能基とを一分子中に有する化合物を用いてもよい。当該化合物の官能基と、アクリル系共重合体における単量体成分(a2’)に由来する官能基との反応により、アクリル系共重合体の側鎖がエネルギー線照射により重合可能となる。粘着剤がアクリル系粘着剤以外でも、粘着剤となる共重合体以外の共重合体成分として、同様に側鎖がエネルギー線重合性である成分を用いてもよい。
【0066】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合には、粘着剤層は光重合開始剤を含有することがよい。光重合開始剤により、粘着剤層がエネルギー線照射により硬化する速度を高めることができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、2-クロロアンスラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}等が挙げられる。
【0067】
接着剤層32は、無機充填材を含有していてもよい。無機充填材を含有することで、硬化後の接着剤層32の硬度をより向上させることができる。また、接着剤層32の熱伝導性が向上する。さらに、被着体がガラスを主成分とする場合に、シート10と被着体の線膨張係数を近づけることができ、これによって、シート10を被着体に貼付および必要に応じて硬化して得た装置の信頼性が向上する。
【0068】
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末;これらを球形化したビーズ;単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材としては、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが好ましい。また、接着剤層32は、無機充填材として、上述した樹脂保護層30が含有しうる熱伝導性無機充填材を含有してもよい。この場合には、後述する、熱伝導層である中間樹脂層36を設けた場合と同様の効果を得ることができる。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
無機充填材は、硬化性官能基を有する化合物により表面修飾(カップリング)されていることが好ましい。
硬化性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、エポキシ基、エーテル基、エステル基、エチレン性不飽和結合を有する基等が挙げられる。これら硬化性官能基を有する化合物としては、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0070】
無機充填材は、硬化後の接着剤層32の耐破壊性(硬化後の接着剤層32の強度)が維持されやすい点から、エチレン性不飽和結合を有する基等のエネルギー線硬化性官能基を有する化合物により表面修飾されていることがより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられるが、反応性の高さや汎用性の点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
エネルギー線硬化性官能基を有する化合物により表面修飾された無機充填材であると、例えば、シート10を三次元成形して成形品の表面に被覆した後に硬化した接着剤層32が強靭となる。
なお、接着剤層32が表面修飾された無機充填材を含有する場合には、接着剤層32は、別途エネルギー線硬化性の成分を含んでいることが好ましい。
【0071】
無機充填材の平均粒径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。無機充填材の平均粒径がこのような範囲にあれば、接着剤層32の光線透過性が向上しやすくなり、また、シート10(つまり接着剤層32)のヘイズを小さくしやすくすることができる。無機充填材の平均粒径の下限は特に限定されないが、5nm以上であることが好ましい。
なお、無機充填材の平均粒径は、デジタル顕微鏡により無機充填材を20個観察し、無機充填材の最大径と最小径の平均径を直径として測定し、その平均値とする。
【0072】
無機充填材の含有量は、接着剤層32全体に対して、0質量%~95質量%であることが好ましく、5質量%~90質量%であることがより好ましく、10質量%~80質量%であることがさらに好ましい。
【0073】
硬化後の接着剤層32の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがさらに好ましい。これにより、硬化後の接着剤層32が疑似シート構造体20を保護する機能がさらに向上し、より十分に疑似シート構造体20を保護することができる。なお、鉛筆硬度は、JISK5600-5-4に準じて測定された値である。
【0074】
接着剤層32は着色剤を含んでいてもよい。これにより、後述する着色層である中間樹脂層36を設けた場合と同様の効果を得ることができる。
【0075】
接着剤層32には、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶媒、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、濡れ性調整剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0076】
接着剤層32の厚さは、例えば、接着性の観点から、3μm~150μmであることが好ましく、5μm~100μmであることがより好ましい。
【0077】
(剥離層)
剥離層34は、シート10の三次元成形前に、疑似シート構造体20と疑似シート構造体20(その複数の導電性線状体22)から露出する接着剤層32とを保護する機能を有する。剥離層34を設けることで、取扱いによる疑似シート構造体20の破損、及び接着剤層32の接着能の低下を抑制できる。そして、シート10を三次元成形するときに、剥離層34はシート10から剥離される。
【0078】
剥離層34としては、特に限定されない。例えば、取り扱い易さの観点から、剥離層34は、剥離基材と、剥離基材の上に剥離剤が塗布されて形成された剥離剤層とを備えることが好ましい。また、剥離層34は、剥離基材の片面のみに剥離剤層を備えていてもよいし、剥離基材の両面に剥離剤層を備えていてもよい。
剥離基材としては、例えば、紙基材、紙基材等に熱可塑性樹脂(ポリエチレン等)をラミネートしたラミネート紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。紙基材としては、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー(例えば、ブタジエン系樹脂、イソプレン系樹脂等)、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0079】
剥離層34の厚さは、特に限定されない。通常、剥離層34の厚さは、20μm~200μmが好ましく、25μm~150μmがより好ましい。
剥離層34の剥離剤層の厚さは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層34の厚さは、0.01μm~2.0μmが好ましく、0.03μm~1.0μmがより好ましい。
剥離基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、プラスチックフィルムの厚さは、3μm~150μmであることが好ましく、5μm~100μmであることがより好ましい。
【0080】
(シートの特性等)
本実施形態に係るシート10において、樹脂保護層30を有する側の疑似シート構造体20の表面上に設けられた層(以下、「疑似シート構造体20の表面層」とも称する)の合計の厚さは、導電性線状体22の直径の1.5倍~80倍であることが好ましく、3倍~40倍がより好ましく、5倍~20倍が更に好ましい。
【0081】
疑似シート構造体20の表面層の合計厚さが導電性線状体22の直径の1.5倍以上であることにより、シート10を三次元成形して成形品に被覆した後、導電性線状体22が樹脂保護層30側に隣接する層(接着剤層32、樹脂保護層30等)に埋め込まれても、導電性線状体22の存在する部分で樹脂保護層30の表面(つまりシートの表面)が盛り上がることを回避することができる。また、シート10を発熱シートとして適用した場合、疑似シート構造体20表面の発熱効率が向上する。
【0082】
疑似シート構造体20の表面層の合計厚さは導電性線状体22の直径の80倍以下とすることが好ましい。これにより、シート10を発熱シートとして適用した場合、発熱シートは、発熱効率に優れ、シート表面の盛り上がりが抑制されたヒータ-となる。
【0083】
ここで、疑似シート構造体20の表面層は、樹脂保護層30及び樹脂保護層30及び疑似シート構造体20の間に設けられる他の層(接着剤層32、他の樹脂層等)が該当し、樹脂保護層30を有する側とは反対側の疑似シート構造体20の表面上に設けられる層(剥離層等)は該当しない。
【0084】
なお、疑似シート20の表面層の厚さは、疑似シート構造体20(その導電性線状体22)が一部又は全部が樹脂保護層を有する側に隣接する層(本実施形態では接着剤層32等)に埋め込まれている場合、疑似シート構造体20(その導電性線状体22)が埋め込まれていない領域での厚さを意味する。また、疑似シート20の表面層を構成する各層の厚さも同様とする。
【0085】
シート10において、樹脂保護層30の厚さと接着剤層32との厚さの比率(樹脂保護層30の厚さ/接着剤層32との厚さ)は、1/1~100/1であることが好ましく、2/1~50/1がより好ましく、3/1~20/1が更に好ましい。
【0086】
シート10を三次元成形して成形品に被覆したとき、導電性線状体22は、接着剤層32だけではなく接着剤層32以外の表面層を構成する層(樹脂保護層30等)にも埋め込まれ得る。したがって、表面層が厚いことが好ましいが、表面層の厚さを厚くする手段は、接着剤層の厚さを大きくすることのみによらない。よって、導電性線状体22の埋め込みを考慮して接着剤層32を厚くする必要はなく、三次元成形後のシート10の耐久性等を考慮すると接着剤層32は過度に厚くないことが好ましい。そのため、樹脂保護層30の厚さと接着剤層32との厚さの比率は上記範囲にすることが好ましい。
【0087】
シート10において、導電性線状体22が炭素材料で被覆された金属ワイヤーを含む線状体である場合、接着剤層32の剥離力であって、ステンレス板に接着剤層32を貼付けして30分後の剥離力は、12N/25mm以上が好ましい。
金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、接着剤層32との接着性が低下する。そのため、シート10の製造時に、金属ワイヤーを含む線状体を接着剤層32の表面上に繰り出して固定するとき、金属ワイヤーを含む線状体が接着剤層32から剥れやすい。そのため、剥離力を12N/25mm以上とし、強い接着性を有する接着剤層32を適用することが好ましい。
なお、この場合の接着剤層32の剥離力は、13N/25mm以上がより好ましい。ただし、接着剤層32の剥離力の上限は、35N/25mm以下が好ましい。
【0088】
一方、シート10において、導電性線状体22が導電性糸を含む線状体である場合、接着剤層32の剥離力であって、ステンレス板に接着剤層32を貼付けして30分後の剥離力は、11N/25mm以下が好ましい。そのため、剥離力を11N/25mm以下とし、弱い接着性を有する接着剤層32を適用することで、三次元成形によるシート10の伸長に追従して、波形状の導電性線状体22が直線化して伸長する場合でも、導電性線状体22が容易に接着剤層32から剥離し、導電性線状体22の伸長を生じやすくすることができる。
なお、この場合の接着剤層32の剥離力は、10N/25mm以下がより好ましい。ただし、接着剤層32の剥離力の下限は、2N/25mm以下が好ましい。
【0089】
ここで、上記各接着剤層32の剥離力は、次のように測定される値である。
接着剤層32を有する表面層(幅25mm)を準備し、接着剤層32を対面させて、表面層をステンレス板の表面に貼り付ける。その状態で、荷重を掛けて、30分経過後に、JIS-Z0237(2000年)に規定された180°剥離試験を実施する。具体的には、引張試験機を用いて、表面層を300mm/分の速度で180°方向に引っ張り、表面層がステンレス板から剥離するのに要する力を、上記各接着剤層32の剥離力として測定する。なお、荷重を掛ける条件も上記JISに記載のとおりである。
【0090】
本実施形態に係るシート10において、シート(その疑似シート構造体20)の面抵抗(Ω/□=Ω/sq.)は、800Ω/□以下が好ましく、0.01Ω/□~500Ω/□がより好ましく、0.05Ω/□~300Ω/□がさらに好ましい。印加する電圧を低減する観点から、面抵抗の低いシート10が要求される。シートの面抵抗が800Ω/□以下であれば、印加する電圧の低減が容易に実現される。
【0091】
なお、シートの面抵抗は、次の方法により測定する。まず、電気的接続を向上させるために、銀ペーストを疑似シート構造体20の両端に塗布する。その後、銅テープを両端に貼付けたガラス基板に、シート10を銀ペーストと銅テープが接触するように貼付けた後、電気テスターを用いて抵抗を測定し、シートの面抵抗を算出する。
【0092】
(シートの製造方法)
本実施形態に係るシート10の製造方法は、特に限定されない。シート10は、例えば、次の工程を経て製造される。
まず、樹脂保護層30の上に、接着剤層32の形成用組成物を塗布し、塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて、接着剤層32を作製する。次に、樹脂保護層30と接着剤層32との積層体(その接着剤層32)上に、導電性線状体22を配列しながら配置して、疑似シート構造体20を形成する。例えば、ドラム部材の外周面に、樹脂保護層30と接着剤層32との積層体を配置した状態で、ドラム部材を回転させながら、接着剤層32の表面に導電性線状体22を螺旋状に巻き付ける。その後、螺旋状に巻き付けた導電性線状体22の束をドラム部材の軸方向に沿って切断する。これにより、疑似シート構造体20を形成すると共に、接着剤層32の表面に配置する。そして、樹脂保護層30と接着剤層32と疑似シート構造体20の積層体を、ドラム部材から取り出す。そして、取り出した積層体における、接着剤層32を有する側とは反対側の疑似シート構造体の表面に剥離層34を貼り合せる。なお、剥離層34は、ドラム部材上に配置された状態において、積層体の疑似シート構造体の表面に貼り合せてもよい。この方法によれば、例えば、ドラム部材を回転させながら、導電性線状体22の繰り出し部をドラム部材の軸と平行な方向に沿って移動させることで、疑似シート構造体20における隣り合う導電性線状体22の間隔Lを調整することが容易となる。
【0093】
なお、ドラム部材の外周面に、樹脂保護層30と接着剤層32との積層体を配置せずに、導電性線状体22を配列して疑似シート構造体20を形成した後、得られた疑似シート構造体20の一方の表面と樹脂保護層30と接着剤層32との積層体(その接着剤層32)とを貼り合せ、疑似シート構造体20の他方の表面と、剥離層34とを貼り合せて、シート10を作製してもよい。
【0094】
(シートの用途)
本実施形態に係るシート10は、家電筐体、車両内装部品、建材内装材等に使用される成形品の表面に、TOM成形、フィルムインサート成形、真空成形等の三次元成形法を利用して、成形品を被覆することに用いられる。
シート10により形成される被覆層を表面導電体として形成された成形品は、例えば、曲面タッチパネル等の表面導電物品、氷雪融解用発熱物品(信号機点灯部等)、暖房用発熱物品(自動車の発熱する内装品等)等の表面発熱物品として用いることができる。
【0095】
本実施形態に係るシート10は、上述のように、疑似シート構造体20から露出する接着剤層32による接着が導電性線状体により妨げられることを防止しつつ、導電性線状体をある程度密集させることができる。そのため、表面導電体が形成された成形品を表面発熱物品として用いる場合、表面の昇温ムラの発生を防止できる。
例えば、氷雪融解用発熱物品が屋外設置表示体である場合に、導電性線状体22が存在しない領域に対応する表面において、氷雪が解け残るといった不具合の発生を抑制できる。また、例えば、成形品の最表面に設置可能な暖房用発熱シートとして用いた場合に、人の身体が線状体の間の部分の相対的に温度の低い部分を感知する可能性が低減され、不快感なく使用することができる。
【0096】
なお、本実施形態に係るシート10は、三次元成形用発熱シートとして適用する場合、例えば、図示しないが、疑似シート構造体20に給電する給電部(電極)を設けて使用される。給電部は、例えば、金属材料で構成され、疑似シート構造体20の端部に電気的に接続する。給電部と疑似シート構造体20との接合は、疑似シート構造体20の各導電性線状体22に給電可能に、半田等の周知な方法により行われる。
【0097】
(変形例)
本実施形態に係るシート10は、上記形態に限定されず、変形、又は改良してもよい。以下、本実施形態に係るシート10の変形例について説明する。以下の説明では、本実施形態に係るシート10で説明した部材と同一であれば、図中に、同一符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0098】
-第1の変形例-
本実施形態に係るシート10は、例えば、上記層構成に限定されず、他の層構成であってもよい。
例えば、シート10は、
図3に示すように、
図2に例示した層構成を基本としつつ、1)樹脂保護層30と接着剤層32との間に設けられた樹脂層36(以下「中間樹脂層36」とも称する)、2)樹脂保護層30を有する側とは反対側の疑似シート構造体20の表面上に設けられた樹脂層38(以下「下樹脂層38」とも称する)、及び3)疑似シート構造体20を有する側とは反対側の樹脂保護層30の表面上に設けられた剥離層40(以下「上剥離層40」とも称する)の少なくとも一層を有するシート11であってもよい。
【0099】
なお、
図3には、シート10において、中間樹脂層36、下樹脂層38、及び上剥離層40を更に有する示すシート11が示されている。
【0100】
中間樹脂層36について説明する。
中間樹脂層36は、例えば、熱伝導層、着色層、装飾層、プライマー層、成分移行防止層等の機能層として設ける層である。中間樹脂層36は、これら機能が異なる複数の層を設けてもよい。また、中間樹脂層36は、単層で、複数の機能を有してもよい。
【0101】
例えば、中間樹脂層36が熱伝導層である場合、中間樹脂層36は、例えば、熱伝導性無機充填材および熱可塑性樹脂を含む層で構成される。中間樹脂層36が熱伝導層であると、シート10を三次元成形用発熱シートとして適用したとき、表面の昇温ムラの発生をより効果的に防止できる。
また、中間樹脂層36が着色層である場合、中間樹脂層36は、例えば、着色剤および熱可塑性樹脂を含む層で構成される。中間樹脂層36が着色層であると、導電性線状体22の隠蔽性が高まる。この場合、樹脂保護層30として光透過性を有する層が適用されてもよい。
また、中間樹脂層が装飾層である場合、表面に、画像形成材料(インク、トナー等)により画像(例えば、図、文字、模様、絵柄等の画像)が形成された樹脂層(例えば熱可塑性樹脂を含む層)で構成される。画像の形成方法は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などの周知の印刷法が適用される。中間樹脂層が装飾層である場合、シート11は三次元加飾用シートとして適用できる。なお、この場合、樹脂保護層30は光透過性を有する層が適用される。
【0102】
なお、中間樹脂層36を構成する上記各成分、及びその他成分は、樹脂保護層30と同じ成分が例示される。
【0103】
中間樹脂層36の厚さは、三次元成形性、及び樹脂保護層30の各機能確保の観点から、例えば、5~1300μmが好ましく、10~1000μmがより好ましく、15~900μmが更に好ましい。
【0104】
ここで、着色剤を含む層(着色層)は、中間樹脂層36に限られず、樹脂保護層30を有する側の疑似シート構造体20の表面上に設けられた層を構成する少なくともいずれか一層に適用することができる。
また、熱伝導性無機充填材を含む層(熱伝導層)は、中間樹脂層36に限られず、樹脂保護層30を有する側の疑似シート構造体20の表面上に設けられた層を構成する少なくともいずれか一層に適用することができる。
また、装飾層は、中間樹脂層36に限られず、樹脂保護層30を有する側の疑似シート構造体20の表面上に設けられた層を構成する少なくともいずれか一層に適用することができる。
【0105】
下樹脂層38について説明する。
下樹脂層38は、シート11を三次元成形して成形品の表面に被覆するときき、シート11を成形品の表面に熱溶着するための樹脂層である。特に、下樹脂層38を有するシート11は、三次元成形法のうち、フィルムインサート法に適している。
【0106】
下樹脂層38としては、例えば、熱可塑性樹脂を含む層が適用される。そして、中間樹脂層36を構成する上記各成分、及びその他成分は、樹脂保護層30と同じ成分が例示される。特に、下樹脂層38としては、成形品に対する熱融着性向上の観点から、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなる層、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体からなる層等が好ましい。
【0107】
下樹脂層38の厚さは、成形品に対する熱融着性向上の観点から、例えば、5~1300μmが好ましく、10~1000μmがより好ましく、15~900μmが更に好ましい。
【0108】
上剥離層40について説明する。
上剥離層40は、三次元成形前、三次元成形時において、樹脂保護層30を保護する機能を有する。上剥離層40は、三次元成形後にシート11から剥離される。特に、上剥離層40を有するシート11は、三次元成形法のうち、フィルムインサート法に適している。なお、必要に応じて、上剥離層40は、三次元成形前にシート11から剥離してもよい。
上剥離層40としては、三次元成形時の加熱に対する耐性を有すれば、特に限定されず、剥離層34と同様な構成が例示される。特に、上剥離層40としては、樹脂保護層30の保護機能、三次元成形時の加熱に対する耐性の観点から、耐熱性の樹脂フィルムからなる層等が好ましい。
【0109】
なお、その他、本実施形態に係るシート10は、例えば、接着剤層32を有する側とは反対側の疑似シート構造体20の表面上に他の接着剤層を設けた態様、更に疑似シート構造体20を有する側とは反対側の他の接着剤層の表面上に他の剥離層を設けた態様等であってもよい。
【0110】
-第2の変形例-
本実施形態に係るシート10は、例えば、
図4に示すように、疑似シート構造体20の導電性線状体22が周期的又は不規則に湾曲又は屈曲したシート12であってよい。具体的には、導電性線状体22は、例えば、正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波等の波形状であってもよい。つまり、疑似シート構造体20は、例えば、一方に延びた波形状の導電性線状体22が、導電性線状体22の延びる方向と直交する方向に、等間隔で複数配列された構造としてもよい。
【0111】
なお、
図4には、一方に延びた波形状の導電性線状体22が、導電性線状体22の延びる方向と直交する方向に、等間隔で複数配列された疑似シート構造体20を有するシート12が示されている。
【0112】
導電性線状体22として、波形状の線状体を適用することより、シート12を三次元成形して成形品の表面に被覆するとき、シート12の伸長に追随して、導電性線状体22の延びる方向では、波形状の導電性線状体22が直線化して、容易に伸長することができる。そのため、導電性線状体22の延びる方向では、導電性線状体22に制限されることなく、シート12は容易に伸長することができる。
【0113】
一方、導電性線状体22の配列方向では、導電性線状体22同士が接続されていないため、導電性線状体22に制限されることなく、シート12を容易に伸長することができる。
【0114】
つまり、導電性線状体22として、波形状の線状体を適用することより、シート12を三次元成形して成形品の表面に被覆するとき、シート12の伸長不良、又は導電性線状体22の破損が抑制される。
【0115】
ここで、シート12の伸長不良、又は導電性線状体22の破損を抑制する観点から、波形状の導電性線状体22の波長λ(波形のピッチ:
図4参照)は、0.3mm~100mmが好ましく、0.5mm~80mmがより好ましい。
また、同観点から、波形状の導電性線状体22の振幅A(
図4参照)は、0.3mm~200mmが好ましく、0.5mm~160mmがより好ましい。なお、振幅Aは、全振幅(peak to peak)を意味している。
【0116】
-第3の変形例-
本実施形態に係るシート10は、例えば、
図5及び
図6に示すように、波長λ1及び振幅A1を有する波形状の第一部位と、第一部位の波長λ1及び振幅A1の少なくとも一方と異なる波長λ2及び振幅A2を有する波形状の第二部位と、を持つ導電性線状体が配列された疑似シート構造体20を有するシート13であってもよい。
【0117】
ここで、三次元成形において、シート10の大きな伸長が伴う場合、導電性線状体22として、波長が小さい、又は振幅が大きい波形状の線状体を適用すると、波形状の導電性線状体22が直線化したときの長さを大きくでき、シート10の大きな伸長に導電性線状体22が容易に追随可能となる。
【0118】
しかし、被覆対象である成形品が複雑な立体形状である場合、シート10の三次元成形においては、シート10の伸長度合が大きく異なる領域が出てくる。そのため、波形状の導電性線状体22の直線化度合も大きく異なる部位が出てくる。つまり、三次元成形後において、導電性線状体22は、直線化して直線又は直線状に近い部位と、あまり直線化されず波形状を維持した部位とを有することとなる。
【0119】
このような、直線状に近い部位と、直線化されず波形状を維持した部位とを有する導電性線状体22が配列された疑似シート構造体20を有するシート10は、主に導電性線状体22の直線化されず波形状を維持した部位に起因して、疑似シート構造体20の抵抗が増加して消費電力が上昇したり、導電性線状体22の面積当たりの存在比が大きい部分があることにより、例えば発熱シートとして利用する場合に、発熱量がその部分だけ大きくなってしまったりする等、シートの機能低下が生じる。
【0120】
そこで、シート10として、波長λ1及び振幅A1を有する波形状の第一部位と、第一部位の波長λ1及び振幅A1の少なくとも一方と異なる波長λ2及び振幅A2を有する波形状の第二部位と、を持つように導電性線状体22を構成したシート13を適用する。
【0121】
具体的には、三次元成形の被覆対象である成形品の形状に合わせ、例えば、三次元成形時のシート13の伸長が大きい領域における導電性線状体22の部位を波長が小さい若しくは振幅が大きい又はその双方の波形状の第一部位とし、三次元成形時のシート13の伸長が小さい領域における導電性線状体22の部位を波長が大きい若しくは振幅が小さい又はその双方の波形状の第二部位とする。
【0122】
このような波長及び振幅の少なくとも一方が異なる第一部位及び第二部位を有する導電性線状体22を適用すると、三次元成形において、シート13の伸長が大きい部位では導電性線状体22の第一部位が大きく直線化し、シート13の伸長が小さい部位では導電性線状体22の第二部位が小さく直線化することになるため、各部位の直線化の度合いは結果的に均一になる。
【0123】
そのため、シート13は、疑似シート構造体20の抵抗が増加して消費電力が上昇したり、導電性線状体22の面積当たりの存在比が大きい部分があることにより、例えば発熱シートとして利用する場合に、発熱量が部分的に大きくなってしまったりする等のシートの機能低下が抑制できる。
【0124】
以下、第3の変形例のシート13について、更に詳細に説明する。
【0125】
図5に示すように、シート13において、導電性線状体22は、波形状の第一部位22Aと、波形状の第二部位22Bと、波形状の第三部位22Cと、を有している。
第一部位22Aは、波長λ1と、振幅A1と、を有している。
第二部位22Bは、波長λ1よりも小さい波長λ2と、振幅A1と同じ振幅A2を有している。
第三部位22Cは、波長λ1と同じ波長λ3と、振幅A1及び振幅A2と同じ振幅A3と、を有している。
【0126】
つまり、第二部位22Bは、導電性線状体22の延びる方向において、第一部位22A及び第三部位22Cに比べ、導電性線状体22の直線化する長さが長い。
一方、第三部位22Cは、導電性線状体22の延びる方向において、第一部位22Aと同程度に導電性線状体22が直線化する。
【0127】
そして、第二部位22Bを有するシート13の領域は、三次元成形において、シート13の伸長が、第一部位22A及び第三部位22Cを有するシート13の領域に比べ、大きい領域とする。
【0128】
このような、波形状の第一部位22A~第三部位22Cを持つ導電性線状体22が配列された疑似シート構造体20を有するシート13を三次元成形して、成形品の表面に被覆したとき、シート13の伸長度合に応じて、導電性線状体22の各部位が異なる度合で直線化し、三次元成形後の導電性線状体22をいずれの部位においても直線状に近い形状に調整することができる。
【0129】
そのため、波形状の第一部位22A~第三部位22Cを持つシート13は、シートの機能低下が抑制できる。
【0130】
ここで、
図5中、13Aは第一部位22Aを有するシート13の領域、13Bは第二部位22Bを有するシート13の領域、13Cは第三部位22Cを有するシート13の領域を示している。
【0131】
なお、シート13において、導電性線状体22は、上記態様に限られない。例えば、
図6に示すように、導電性線状体22は、振幅が異なる第一部位22AA、第二部位22BB~第三部位22CCを有する態様であってもよい。
【0132】
この態様(
図6参照)において、第一部位22AAは、波長λ1と振幅A2とを有している。
第二部位22BBは、波長λ1と同じ波長λ2と、振幅A1よりも小さい振幅A2を有している。
第三部位22CCは、波長λ1及び波長λ2と同じ波長λ3と、振幅A1と同じ振幅A3と、を有している。
【0133】
つまり、第二部位22BBは、導電性線状体22の延びる方向において、第一部位22AA及びは第三部位22CCに比べ、導電性線状体22の直線化する長さが短い。
一方、第三部位22CCは、導電性線状体22の延びる方向において、第一部位22AAと同程度に導電性線状体22が直線化する。
【0134】
そして、第二部位22BBを有するシート13の領域は、三次元成形において、シート13の伸長が、第一部位22AA及び第三部位22CCを有するシート13の領域に比べ、小さい領域とする。
【0135】
このような、波形状の第一部位22AA~第三部位22CCを持つ導電性線状体22が配列された疑似シート構造体20を有するシート13を三次元成形して、成形品の表面に被覆したとき、シート13の伸長度合に応じて、導電性線状体22の各部位が異なる度合で直線化し、三次元成形後の導電性線状体22をいずれの部位においても直線状に近い形状に調整することができる。
【0136】
そのため、波形状の第一部位22AA~第三部位22CCを持つシート13も、シートの機能低下が抑制できる。
【0137】
ここで、
図6中、13AAは第一部位22AAを有するシート13の領域、13BBは第二部位22BBを有するシート13の領域、13CCは第三部位22CCを有するシート13の領域を示している。
【0138】
なお、図示しないが、シート13において、導電性線状体22は、波長及び振幅の双方が異なる第一部位、第二部位、及び第三部位を有する態様であってもよい。
【0139】
導電性線状体22は、上記態様に限られず、波長λ1及び振幅A1を有する波形状の第一部位と、前記第一部位の波長λ1及び振幅A1の少なくとも一方と異なる波長λ2及び振幅A2を有する波形状の第二部位と、を持つ線状体である態様であればよい。
導電性線状体22は、各部位の波長及び振幅の異なる程度は、成形品の形状に合わせて調整される。また、導電性線状体は、直線状の部位を有していてもよい。また、各部位の波長及び振幅は、段階的に異なってもよいし、漸次的に異なっていてもよい。
【0140】
ここで、第1~第3の変形例は、一例であり、本実施形態に係るシート10は目的に応じて種々の構成とすることができる。
例えば、図示しないが、本実施形態に係るシート10は、疑似シート構造体20をシート面方向(シート表面に沿った方向)に複数配列したシートであってもよい。複数の疑似シート構造体は、互いの導電性線状体22の延びる方向を平行に配列してもよいし、交差させて配列させてもよい。
【実施例】
【0141】
以下、本開示を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本開示を制限するものではない。
【0142】
[実施例1]
樹脂保護層として厚さ100μmのポリプロピレンフィルム上に、接着剤層として厚さ20μmのアクリル系粘着剤層(感圧接着剤層)を設けた粘着シートを準備した。既述の方法に従って測定した接着剤層の剥離力は、15N/25mmであった。
導電性線状体として、カーボンで被覆されたタングステンワイヤー(直径14μm、(メーカー名:株式会社トクサイ製、(製品名:TGW-B))を準備した。
次に、外周面がゴム製のドラム部材に上記粘着シートを、感圧接着剤層の表面が外側を向き、しわのないように巻きつけ、円周方向における上記粘着シートの両端部を両面テープで固定した。ボビンに巻き付けた上記ワイヤーを、ドラム部材の端部付近に位置する粘着シートの感圧接着剤層の表面に付着させた上で、ワイヤーを繰り出しながらドラム部材で巻き取り、少しずつドラム部材をドラム軸と平行な方向に移動させていき、ワイヤーが等間隔でらせんを描きながらドラム部材に巻きつくようにした。このようにして、粘着シートの感圧接着剤層の表面上に、隣り合うワイヤーの距離を一定に保ちつつ、ワイヤーを複数設けて、ワイヤーからなる疑似シート構造体を形成した。この際、ドラム部材は、振動しながら移動するようにして、巻き付けられたワイヤーが波形状を描くようにした。ワイヤーは等間隔に設けられ、間隔は1.7mmであった。また、波形状のワイヤーの波長λ(波形のピッチ)は30mmであり、振幅Aは30mmであった。
次に、疑似シート構造体を設けた粘着シートの疑似シート構造体の表面(ワイヤー同士の間から接着剤層が露出した表面)に、剥離層として剥離フィルム(商品名:SP-381130(リンテック社製))を貼り合わせた。その後、ドラム軸と平行に、疑似シート構造体及び剥離フィルムごと粘着シートを切断し、三次元成形用導電性シートを得た。
【0143】
[実施例2]
カーボン被覆されたタングステンワイヤーに代えて、カーボンナノチューブフォレストからシートを引き出し、捻りを加えることにより得たカーボンナノチューブ糸(直径14μm)を用い、実施例1の粘着シートに代えて、樹脂保護層として厚さ100μmのポリプロピレンフィルム上に、接着剤層として厚さ20μmのアクリル系粘着剤層(感圧接着剤層)を設けた粘着シート(既述の方法に従って測定した接着剤層の剥離力=10N/25mm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、三次元成形用導電性シートを得た。
【0144】
[実施例3]
ポリプロピレンフィルムの厚さを800μmとし、粘着剤層の厚さを70μmとし、カーボン被覆されたタングステンワイヤーに代えて、銅ワイヤー(直径70μm、メーカー名:Arcor Electronics社 製品名:Bare Copper Wire)を用い、ワイヤーの間隔を8mmとした以外は、実施例1と同様にして、三次元成形用導電性シートを得た。
【0145】
[比較例1]
ワイヤーの間隔を15mmとした以外は、実施例1と同様にして、三次元成形用導電性シートを得た。
【0146】
[比較例2]
ワイヤーの間隔を0.1mmとした以外は、実施例1と同様にして、三次元成形用導電性シートを得た。
【0147】
[シート剥れの評価]
各例で得られた三次元成形用導電性シートから、幅25mmの試験片を作製した。試験片の接着剤層32を対面させて、プロピレン板の表面に試験片を貼り付ける。その状態で、試験片全体に荷重を掛けて、30分経過後に、JIS-Z0237(2000年)に規定された180°剥離試験を実施した。具体的には、引張試験機を用いて、試験片を300mm/分の速度で180°方向に引っ張り、試験片がプロピレン板から剥離するのに要する力(粘着力)を測定した。荷重を掛ける条件も上記JISに記載のとおりとした。測定した粘着力が1N/25mm以上であれば、良好と評価し、1N/25mm未満であれば、不良と評価した。
【0148】
[温感評価]
真空成形(バキューム・フォーミング)の手法を利用して、各例で得られた三次元成形用導電性シートを三次元成形しつつ半円球状成形品に被覆し、サンプルを得た。得られたサンプルを25℃の環境に5分間置いた後、導電性シートの疑似シート構造体に12Vの電圧を印加した。そして、導電性シートの表面温度が50℃まで上昇するときに、手をあて温度分布が感じられない場合を良好と評価し、感じられる場合を不良と評価した。
【0149】
【0150】
上記結果から、本実施例の三次元成形用導電性シートは、シート剥れ評価、温間評価が共に優れていることがわかる。これにより、本実施例の三次元成形用導電性シートは、疑似シート構造体を境としたシートの剥がれを抑制しつつ、高い機能を発揮することがわかる。
【0151】
なお、日本国特許出願2016-230552の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。