(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】情報処理装置および自動ドアシステム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/73 20150101AFI20220527BHJP
E05F 15/43 20150101ALI20220527BHJP
E05F 15/74 20150101ALI20220527BHJP
G01V 8/10 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
E05F15/73
E05F15/43
E05F15/74
G01V8/10 T
(21)【出願番号】P 2019008755
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 絢一
(72)【発明者】
【氏名】清政 良有
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030337(WO,A1)
【文献】特開2018-163651(JP,A)
【文献】特開2011-179219(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073821(WO,A1)
【文献】特開2011-215122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
G01V 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺の検知エリア内の人または物体を検知して開閉するドアが設けられている開口部を前記人または物体が通過したことを示す通過情報を取得する通過情報取得部と、
前記ドアの開閉状態を取得する開閉状態取得部と、
前記開閉状態取得部で取得した前記開閉状態が開放状態から閉鎖状態になるまでの間に前記通過情報取得部で前記通過情報を取得しなかったときに前記検知エリア内で前記人または物体が検知された位置である進入位置を特定する位置特定部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記位置特定部は、前記検知エリア内で前記人または物体が検知されていない状態から前記人または物体が検知された状態になったときに当該人または物体を検知した位置を前記進入位置として特定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
所定期間内に前記進入位置のうち少なくとも2つ以上を前記検知エリア内における分布情報として取得する分布取得部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記検知エリアは、前記人または物体を検知する複数の検知セグメントからなり、
前記位置特定部は、前記進入位置として前記検知セグメントを特定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記検知エリアは、前記人または物体を検知する複数の検知セグメントからなり、
前記位置特定部は、前記進入位置として前記検知セグメントを特定し、
前記分布取得部は、前記進入位置として特定された検知セグメントごとに前記位置特定部により特定された回数を積算することを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
建物の開口部に設けられ、検知エリア内の人または物体を検知する自動ドアセンサと、
前記自動ドアセンサの検知状態に基づいて前記開口部に設けられたドアを開閉する自動ドア制御装置と、
前記人または物体が前記開口部を通過したことを示す通過情報を取得する通過情報取得部と、
前記ドアの開閉状態を取得する開閉状態取得部と、
前記開閉状態取得部で取得した前記開閉状態が開放状態から閉鎖状態になるまでの間に前記通過情報取得部で前記通過情報を取得しなかったときに前記検知エリア内で前記人または物体が検知された位置である進入位置を特定する位置特定部と
を有することを特徴とする自動ドアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および自動ドアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動ドアシステムは、建物の出入り口などの近傍を通行する人または物体を赤外線方式または電波方式等の自動ドアセンサで検知し、自動ドアを開閉する。
【0003】
特許文献1には、人または物体が通過する床面上に検知エリアを形成し、人または物体を検知すると、ドア開閉動作を行うための起動信号を駆動装置に送信する自動ドアセンサが開示されている。自動ドアセンサが形成する検知エリアは、例えばマトリクス状に配列され、それぞれにおいて人または物体を検知する複数のセグメント(以下「検知セグメント」という)で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人または物体が自動ドアを通過していないにも関わらず、自動ドアが開閉する不要開閉動作が生じる場合がある。不要開閉動作は、例えば人または物体が自動ドアの前を横切ったことや、自動ドアセンサの総検知エリアに外部からの予期せぬ外乱が印加されて自動ドアセンサが誤検知することによって発生する。特許文献1に開示された自動ドアセンサでは、不要開閉動作が生じた場合、その原因を事後的に調査するための情報を提供することができなかった。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動ドアの不要開閉動作の原因調査を支援することができる情報処理装置および自動ドアシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は情報処理装置である。情報処理装置は、周辺の検知エリア内の人または物体を検知して開閉するドアが設けられている開口部を前記人または物体が通過したことを示す通過情報を取得する通過情報取得部と、前記ドアの開閉状態を取得する開閉状態取得部と、前記開閉状態取得部で取得した前記開閉状態が開放状態から閉鎖状態になるまでの間に前記通過情報取得部で前記通過情報を取得しなかったときに前記検知エリア内で前記人または物体が検知された位置である進入位置を特定する位置特定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明のある態様は自動ドアシステムである。自動ドアシステムは、建物の開口部に設けられ、検知エリア内の人または物体を検知する自動ドアセンサと、前記自動ドアセンサの検知状態に基づいて前記開口部に設けられたドアを開閉する自動ドア制御装置と、前記人または物体が前記開口部を通過したことを示す通過情報を取得する通過情報取得部と、前記ドアの開閉状態を取得する開閉状態取得部と、前記開閉状態取得部で取得した前記開閉状態が開放状態から閉鎖状態になるまでの間に前記通過情報取得部で前記通過情報を取得しなかったときに前記検知エリア内で前記人または物体が検知された位置である進入位置を特定する位置特定部とを有することを特徴とする。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動ドアの不要開閉動作の原因調査を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る自動ドアシステムの構成を示す模式図である。
【
図2】実施形態1に係る情報処理装置を含む自動ドアシステムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】センサ部の床面における検知エリアを示す模式図である。
【
図4】情報処理装置による位置特定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】記憶部に記憶された情報の例を示す図表である。
【
図6】分布取得部による分布の例を示す模式図である。
【
図7】外的な要因で不要開閉動作が生じる一例を説明するための模式図である。
【
図8】変形例に係る情報処理装置を含む自動ドアシステムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る自動ドアシステム100の構成を示す模式図である。自動ドアシステム100は、自動ドア10、自動ドアセンサ20、補助光電センサ30および自動ドア制御装置40等を有する。
図1に示す自動ドアシステム100は、両引分け戸タイプであり、2枚の自動ドア10が左右に自動的に開閉する。自動ドア10は、左右一対であり、左右に間隔を開けて固定配置されたフィックス15に沿って往復移動可能としてあり、左右のフィックス15間の開口部11を開閉する。
【0014】
自動ドア10は、左右それぞれの戸先框10aが突き合わされるように接触して開口部11が閉ざされた全閉状態となる。自動ドア10は、戸先框10aが離間するように移動し、戸先框10aがフィックス15の方立15a付近まで移動して停止し、開口部11が開いた全開状態となる。尚、自動ドアシステム100は、両引分け戸タイプのほか、片引き戸タイプおよび回転ドアタイプ等のものであってもよい。
【0015】
自動ドアセンサ20は、例えば開口部11の上方の無目16に配置されており、無目16における配置位置から斜め下方に向けて赤外光を投受光し、自動ドア10へ進入してくる人や物体を検知し、起動信号を自動ドア制御装置40へ出力する。自動ドアセンサ20の詳細については後述する。
【0016】
補助光電センサ30は、光電方式による検知装置であり、フィックス15の方立15aに配置された投光器30aおよび受光器30bを有している。補助光電センサ30は、投光器30aと受光器30bの間に通った光線が遮られることを検知しており、自動ドア10の軌道上に人または物体が存在していることを示す検知情報を自動ドア制御装置40へ出力する。尚、補助光電センサ30は、光電方式の他、無目16に取り付けられる光線反射方式または超音波方式による検知装置等であってもよい。
【0017】
自動ドア制御装置40は、自動ドアセンサ20からの起動信号を受信するとドアモータ50を作動させて自動ドア10が全開状態となるまで駆動する。自動ドア制御装置40は、自動ドア10が全開状態になった後、一定時間、全開状態を保持し、ドアモータ50を反転方向へ作動させて自動ドア10が全閉状態となるまで駆動する。自動ドア制御装置40は、補助光電センサ30からの検知情報を自動ドア10の閉駆動中に受信すると、ドアモータ50による自動ドア10の駆動方向を反転し、自動ドア10を全開状態とする。
【0018】
図2は、実施形態1に係る情報処理装置24を含む自動ドアシステム100の機能構成を示すブロック図である。各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0019】
自動ドアセンサ20、自動ドア制御装置40および外部接続部51は、CAN(Controller Area Network)によって相互に通信接続している。自動ドアセンサ20、自動ドア制御装置40および外部接続部51の通信接続は、CANに限られず、WiFi(登録商標)等の無線通信を用いてもよい。
【0020】
自動ドアセンサ20は、検知素子としてのセンサ部21、通信部22、開閉処理部23および情報処理装置24を備える。通信部22は、自動ドア制御装置40および外部接続部51との間でデータを送受信する。センサ部21は、赤外線反射式センサであり、赤外線を後述の検知エリアに投光する投光器、人または物体等からの反射光を受光する受光器を備える。
【0021】
図3は、センサ部21の床面における検知エリア60を示す模式図である。検知エリア60は、自動ドア10の周辺に設けられ、床面から自動ドアセンサ20が配置される無目16や天井に至る立体的な範囲を有する。検知エリア60は、自動ドア10の移動方向に平行な方向に12列並び、自動ドア10の移動方向に直交する方向に6列並ぶよう配列された複数の検知セグメント61で構成される。各検知セグメント61には、配列の位置に対応するアドレス1A、1B、・・・、6K、6Lが割り当てられている。割り当てられた各アドレスは、各検知セグメント61の位置情報に相当している。尚、各検知セグメント61の形状および検知エリア60全体の形状は、円形、楕円、長方形、矩形以外の多角形であってもよい。また、センサ部21は、電波式センサや、超音波式センサ、レーザスキャン式センサ、画像式センサであってもよい。検知セグメント61は、上述のように様々な形状であってもよく、センサ方式等によっても形状が変わる。検知セグメント61は、検知エリア60を複数の部分に分割した個々の領域を意味する。逆に、複数の検知セグメント61によって全体として検知エリア60が形成されると考えても良い。
【0022】
検知エリア60の各検知セグメント61において人または物体を検知しているが、人または物体を検知したときに自動ドア10を開閉するための起動信号を生成する起動セグメント、および起動信号を生成しない無効セグメントを設定するようにしてもよい。例えば、検知エリア60の周縁部に位置する検知セグメント61(アドレス1A~5A、6A~6L、1L~5L)を無効セグメントとして設定し、それ以外の検知セグメント61は起動セグメントに設定する。検知エリア60の形状が、円形、楕円、長方形、矩形以外の多角形である場合においても、検知エリア60の周縁部に位置する検知セグメント61を無効セグメントとして設定すればよい。検知セグメント61の位置は、上述のようなアドレスを用いる例に限られない。検知セグメント61の位置は、例えば、無目16におけるセンサ部21の配置位置を原点として定義された実空間における座標系での座標であってもよい。また、検知セグメント61の位置は、床面等における任意の位置を原点として定義された実空間における座標系での座標等であってもよく、いずれの定義においても、各検知セグメント61の位置を一意的に把握することができればよい。
【0023】
図2に戻り、自動ドアセンサ20の開閉処理部23は、各検知セグメント61の検知結果に応じて自動ドア10を開放させるための起動信号を生成し、通信部22を介して、起動信号を自動ドア制御装置40へ出力する。
【0024】
開閉処理部23は、センサ部21の各検知セグメント61に対応する赤外光の検知レベルをモニタし、検知セグメント61に人または物体が存在しない場合の検知レベルより低い第1閾値、および該検知レベルより高い第2閾値と比較することで人または物体が存在するか否かを判定する。開閉処理部23は、各検知セグメント61における検知レベルをセンサ部21から順次取得し、検知レベルが第1閾値以下または第2閾値以上となった場合に、人または物体が存在していると判定して起動信号を生成する。
【0025】
また、開閉処理部23は、上述のように無効セグメントが設定されている場合には、無効セグメントとして設定された検知セグメント61において検知レベルが第1閾値以下または第2閾値以上となっても起動信号を生成しないようにする。開閉処理部23は、検知レベルが第1閾値以下または第2閾値以上となった検知セグメント61のアドレスを情報処理装置24へ出力する。
【0026】
自動ドアセンサ20の情報処理装置24は、通過情報取得部24a、開閉状態取得部24b、位置特定部24c、分布取得部24dおよび記憶部24eを有する。記憶部24eは、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD、SDカード等によって構成される記憶装置である。
【0027】
通過情報取得部24aは、補助光電センサ30から取得する検知情報によって、人または物体が自動ドア10が設けられている開口部11を通過したことを示す通過情報を取得する。上述のように補助光電センサ30は、ドア軌道上において人または物体が存在していることを示す検知情報を出力し、自動ドア制御装置40へ出力している。通過情報取得部24aは、自動ドア制御装置40を介して取得する補助光電センサ30の検知情報を、人または物体が自動ドア10が設けられている開口部11を通過したことを示す通過情報として取得し、位置特定部24cへ出力する。
【0028】
また、通過情報取得部24aは、検知エリア60における自動ドア10の近傍における検知セグメント61(例えば
図3において点線で囲まれたアドレス1B~1Kの検知セグメント)で人または物体が検知されたときに、人または物体が自動ドア10が設けられている開口部11を通過したと判断し、判断結果を通過情報として取得するようにしてもよい。また、通過情報取得部24aは、自動ドア10の反対側の検知エリアにおける自動ドア10近傍の検知セグメント61の情報に基づいて人または物体が自動ドア10が設けられている開口部11を通過したと判断し、判断結果を通過情報として取得するようにしてもよい。
【0029】
開閉状態取得部24bは、開閉処理部23から人または物体が検知された検知セグメント61のアドレスを取得しており、検知セグメント61のアドレスが入力されていない状態を自動ドア10の閉鎖状態とする。開閉状態取得部24bは、開閉処理部23から検知セグメント61のアドレスが入力されている状態を自動ドア10の開放状態とする。これにより、開閉状態取得部24bは、開閉処理部23から検知セグメント61のアドレスが入力されている状態から検知セグメント61のアドレスが入力されていない状態になったときに、自動ドア10の開閉状態が開放状態から閉鎖状態になったとすることができる。また、開閉状態取得部24bは、自動ドア制御装置40から自動ドア10の開閉状態(開放状態または閉鎖状態)を取得し、位置特定部24cへ出力する。
【0030】
位置特定部24cは、開閉状態取得部24bから入力される自動ドア10の開閉状態が開放状態から閉鎖状態になるまでの間に、通過情報取得部24aから人または物体がドア軌道上を通過したことを示す情報を取得しなかったときに、人または物体が検知された検知セグメント61のアドレスを特定する。自動ドア10が開放状態から閉鎖状態になるまでの間に、開口部11を人または物体が通過したことを示す通過情報を取得できていなかった場合、自動ドア10が不要開閉動作をした可能性がある。このような場合が発生したときに、位置特定部24cは、検知エリア60内で人または物体が検知された検知セグメント61のアドレスを進入位置として特定し、不要開閉動作の原因調査のために、特定したアドレスを記憶部24eへ記憶させる。位置特定部24cは、例えば、検知エリア60において人または物体が検知されていない状態から人または物体が検知された状態になったときに最初に人または物体を検知した検知セグメント61のアドレスを進入位置として特定し、記憶部24eに記憶させる。
【0031】
位置特定部24cは、人または物体を検知していた検知セグメント61のアドレスを特定する際に、設定次第で任意のタイミングにおいて最初に非検知状態から検知状態となった検知セグメント61を特定することができる。位置特定部24cは、一部の検知セグメント61が検知状態となっている状態から、次に非検知状態から検知状態となった検知セグメント61を最初に検知状態になった検知セグメントと認識してもよい。位置特定部24cは、例えば検知エリア60内において、周縁部に無効セグメントが設定されているような場合に、無効セグメントが検知状態となった後、次に非検知状態から検知状態となった起動セグメントに当たる検知セグメント61のアドレスを特定し、記憶部24eに記憶させる。
【0032】
位置特定部24cは、特定した検知セグメント61のアドレスに加えて、発生日時の情報を記憶部24eに記憶させる。
【0033】
分布取得部24dは、所定期間内において、位置特定部24cによって特定された進入位置である検知エリア60内における検知セグメント61のアドレスのうち少なくとも2つ以上のアドレスを検知エリア60内における分布情報として取得し、記憶部24eに記憶させる。分布取得部24dは、検知セグメント61のアドレスごとに、所定期間内に位置特定部24cによって特定された回数を積算することで分布を求める。所定期間は、任意の開始時点から、任意の期間を設定することができる。例えば、自動ドアシステム100を設置後、1ケ月の期間を定めて所定期間とすることや、定期的に数か月の期間を定めて所定期間とすることなど、不要開閉動作の原因究明のためのデータ収集期間を設定することができる。
【0034】
位置特定部24cおよび分布取得部24dは、外部接続部51を介して外部装置と通信し、特定した進入位置である検知セグメント61のアドレスや分布のデータを、該外部装置に記憶するようにしてもよい。位置特定部24cおよび分布取得部24dで特定された検知セグメント61のアドレスや分布のデータを外部装置としてのハンディーターミナルやネットワーク接続した運用PC等で表示することで、不要開閉動作の原因究明のための支援を充実させることができる。
【0035】
次に実施形態1に係る自動ドアシステム100の動作を、情報処理装置24による位置特定処理に基づいて説明する。
図4は、情報処理装置24による位置特定処理の手順を示すフローチャートである。
【0036】
情報処理装置24の開閉状態取得部24bは、全ての検知セグメント61が非検知状態であるか否かを判定する(S1)。全ての検知セグメント61が非検知状態でない場合(S1:NO)、ステップS1の判定を繰り返す。開閉状態取得部24bにおいて全ての検知セグメント61が非検知状態であると判定すると(S1:YES)、この状態を自動ドア10が閉鎖状態となっていると判断し、位置特定部24cは、開閉処理部23から入力される検知セグメント61のアドレスに基づいて、いずれかの検知セグメント61が検知状態となった否かを判定する(S2)。位置特定部24cは、開閉処理部23から検知セグメント61のアドレスが入力されない場合、検知セグメント61が検知状態となっていないと判定し(S2:NO)、ステップS2の処理を繰り返す。
【0037】
位置特定部24cは、開閉処理部23から検知セグメント61のアドレスが入力されると、検知セグメント61が検知状態となったと判定し(S2:YES)、入力された検知セグメント61のアドレスを進入位置として特定する(S3)。この状態が、自動ドア10が閉鎖状態となってから、最初に人または物体が検知エリア60で検知された状態であり、自動ドア10は開放状態に移行することになる。開閉状態取得部24bは、全ての検知セグメント61が非検知状態となったか否かを判定する(S4)。開閉状態取得部24bは、全ての検知セグメント61が非検知状態となっていない場合(S4:NO)、ステップS4の判定を繰り返す。
【0038】
開閉状態取得部24bにおいて全ての検知セグメント61が非検知状態となったと判定した場合(S4:YES)、自動ドア10が閉鎖状態になったと判断される。位置特定部24cは、通過情報取得部24aからの入力に基づき、自動ドア10が設けられた開口部11を人または物体が通過したか否かを判定する(S5)。位置特定部24cは、通過情報取得部24aからの入力に基づき開口部11を人または物体が通過したと判定した場合(S5:YES)、ステップS3で特定した検知セグメント61のアドレスを破棄して処理を終了する。位置特定部24cは、通過情報取得部24aからの入力に基づき、開口部11を人または物体が通過しなかったと判定した場合(S5:NO)、ステップS3で特定した検知セグメント61のアドレスを記憶部24eに記憶し(S6)、処理を終了する。
【0039】
情報処理装置24の位置特定部24c等が
図4に示すステップS1からS6の処理を繰り返すことによって、時々刻々に発生する不要開閉動作に対する情報が記憶部24eに記憶されていく。
図5は、記憶部24eに記憶された情報の例を示す図表である。記憶部24eに記憶する情報には、例えば検知セグメント61のアドレスおよび日時等が含まれる。
図5に示す記憶情報を、外部接続部51を介して携帯端末やPCで読み出し、いずれの検知セグメント61で人または物体が検知された後に不要開閉動作が多く発生しているかを効率的に確認することができる。
【0040】
これにより、情報処理装置24は、不要開閉動作が発生したときに検知状態となっていた検知セグメント61の位置(アドレス)を提供し、自動ドアの不要開閉動作の原因調査を支援することができる。また、位置特定部24cは、検知エリア60が人または物体が検知されていない状態から人または物体が検知された状態になったときに最初に人または物体を検知した検知セグメント61のアドレスを特定することにより、不要開閉動作が発生したときの人または物体の進入位置に関する情報を提供できる。
【0041】
分布取得部24dは、所定期間内において、位置特定部24cによって特定された進入位置である検知エリア60内における検知セグメント61のアドレスのうち少なくとも2つ以上のアドレスを検知エリア60内における分布情報として取得し、記憶部24eに記憶させる。
図6は、分布取得部24dによる分布の例を示す模式図である。
【0042】
例えば、
図6に示す分布のように、検知エリア60の周縁部であるアドレス1A~6A、6B~6K、1L~6Lの検知セグメント61で人または物体が検知されて不要開閉動作が生じた場合、人または物体が検知エリア60に入った後、自動ドア10を通過せずに自動ドア10の前を横切ったり、戻っていったものと判断できる。
【0043】
また、
図6において点線で囲まれた部分は、検知エリア60の周縁部ではなく、検知エリア60の中央部であり、かつ最初の検知セグメント61となっているケースに当たる。このようなケースは、人または物体が検知エリア60に進入し自動ドア10の前を横切ったようなケースではなく、外的な要因で誤検知が発生した可能性があると判断できる。
【0044】
図7は外的な要因で不要開閉動作が生じる一例を説明するための模式図である。
図7に示す例では、車両のヘッドライトからの光が反射物で反射して検知エリア60内に照射されて誤検知が発生している。このような外的な要因で不要開閉動作が生じることが判明した場合には、例えば反射物などを取り除いて誤検知が発生しないようにするなどの対策を講じることができる。
【0045】
(変形例)
上述の実施形態1では自動ドアセンサ20に情報処理装置24を設けたが、自動ドア制御装置40に情報処理装置24を設けるようにしてもよい。
図8は、変形例に係る情報処理装置を含む自動ドアシステムの機能構成を示すブロック図である。
【0046】
図8に示すように、情報処理装置24を自動ドア制御装置40に設け、自動ドアセンサ20から検知セグメント61の検知情報をCANなどの通信接続を介して自動ドア制御装置40へ出力するようにする。自動ドアセンサ20から出力する検知セグメント61の検知情報は、例えば時々刻々における検知状態となっている検知セグメント61のアドレス情報である。
【0047】
情報処理装置24を自動ドア制御装置40に設けた場合でも、実施形態1と同様に、不要開閉動作が発生したときに検知状態となっていた検知セグメント61の位置を提供し、不要開閉動作の原因調査を支援することができる。
【0048】
次に、実施形態1および変形例に係る情報処理装置24および自動ドアシステム100の特徴を説明する。
情報処理装置24は、通過情報取得部24aと、開閉状態取得部24bと、位置特定部24cとを備える。通過情報取得部24aは、周辺の検知エリア60内の人または物体を検知して開閉する自動ドア10が設けられている開口部11を人または物体が通過したことを示す通過情報を取得する。開閉状態取得部24bは、自動ドア10の開閉状態を取得する。位置特定部24cは、開閉状態取得部24bで取得した開閉状態が開放状態から閉鎖状態になるまでの間に通過情報取得部24aで通過情報を取得しなかったときに検知エリア60内で人または物体が検知された位置(検知セグメント61のアドレス)である進入位置を特定する。これにより、情報処理装置24は、不要開閉動作が発生したときに検知状態となっていた検知セグメント61の位置を提供し、自動ドア10の不要開閉動作の原因調査を支援することができる。
【0049】
また位置特定部24cは、検知エリア60内で人または物体が検知されていない状態から人または物体が検知された状態になったときに当該人または物体を検知した位置(検知セグメント61のアドレス)を進入位置として特定する。これにより、情報処理装置24は、不要開閉動作が発生したときの人または物体の進入位置に関する情報を提供できる。
【0050】
また情報処理装置24は、所定期間内に進入位置(検知セグメント61のアドレス)のうち少なくとも2つ以上を前記検知エリア内における分布情報として取得する分布取得部24dを備える。これにより、情報処理装置24は、不要開閉動作が生じる要因となる検知エリア60内の範囲がわかる。
【0051】
また検知エリア60は、人または物体を検知する複数の検知セグメント61からなる。位置特定部24cは、進入位置として検知セグメント61を特定する。これにより、情報処理装置24は、検知セグメント61によって位置を特定することができる。
【0052】
また分布取得部24dは、進入位置として特定された検知セグメント61ごとに位置特定部24cにより特定された回数を積算する。これにより、情報処理装置24は、検知セグメント61ごとの検出した回数によって分布を求めることができる。
【0053】
自動ドアシステム100は、自動ドアセンサ20と、自動ドア制御装置40と、通過情報取得部24aと、開閉状態取得部24bと、位置特定部24cとを備える。自動ドアセンサ20は、建物の開口部11に設けられ、検知エリア60内の人または物体を検知する。自動ドア制御装置40は、自動ドアセンサ20の検知状態に基づいて開口部11に設けられた自動ドア10を開閉する。通過情報取得部24aは、人または物体が開口部11を通過したことを示す通過情報を取得する。開閉状態取得部24bは、自動ドア10の開閉状態を取得する。位置特定部24cは、開閉状態取得部24bで取得した開閉状態が開放状態から閉鎖状態になるまでの間に通過情報取得部24aで通過情報を取得しなかったときに検知エリア60内で人または物体が検知された位置(検知セグメント61のアドレス)である進入位置を特定する。これにより、自動ドアシステム100は、不要開閉動作が発生したときに検知状態となっていた検知セグメント61の位置を提供し、自動ドア10の不要開閉動作の原因調査を支援することができる。通過情報取得部24a、開閉状態取得部24bおよび位置特定部24cは、自動ドアセンサ20に設けられていてもよく、また自動ドア制御装置40に設けられていてもよい。また、通過情報取得部24a、開閉状態取得部24bおよび位置特定部24cが、自動ドアセンサ20と自動ドア制御装置40に分散して設けられていてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0055】
10 自動ドア(ドア)、 11 開口部、 20 自動ドアセンサ、
24 情報処理装置、 24a 通過情報取得部、 24b 開閉状態取得部、
24c 位置特定部、 24d 分布取得部、 40 自動ドア制御装置、
60 検知エリア、 61 検知セグメント、 100 自動ドアシステム。