(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】固形癌を患う患者の生存期間の予後判定のための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20220527BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220527BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220527BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220527BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20220527BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
G01N33/574 D
A61K45/00
A61P35/00
C12Q1/02
C12N5/09
C07K16/30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019030346
(22)【出願日】2019-02-22
(62)【分割の表示】P 2016526541の分割
【原出願日】2014-07-11
【審査請求日】2019-03-22
(32)【優先日】2013-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ソート-フリードマン,カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ウォルフ・エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】デュー-ノジャン,マリー-カロリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゴック,ジェレミー
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/111637(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0215053(US,A1)
【文献】特表2012-513016(JP,A)
【文献】特表2011-521240(JP,A)
【文献】Marie-Caroline Dieu-Nosjean, Martine Antoine, Claire Danel, et al.,Long-Term Survival for Patients With Non-Small- Cell Lung Cancer With Intratumoral Lymphoid Structures,Journal of Clinical Oncology,米国,2008年09月20日,Vol.26, No.27,Page.4410-4417
【文献】Romain Remark, Marco Alifano, Isabelle Cremer, et al.,Characteristics and clinical impacts of the immune environments in colorectal and renal cell carcinoma lung metastases: influence of tumor origin,Clinical Cancer Research,米国,2013年06月19日,Vol.19, No.15,Paae.4079-4091
【文献】F Pages, J Galon, M-C Dieu-Nosjean, et al.,Immune infiltration in human tumors: a prognostic factor that should not be ignored,Oncogene,Vol.29,米国,2010年,Page.1093-1102
【文献】Osamu Kawai, Genichiro Ishii, Kaoru Kubota, et al.,Predominant Infiltration of Macrophages and CD8+ T Cells in Cancer Nests is a Significant Predictor of Survival in Stage IV Nonsmall Cell Lung Cancer,Cancer,米国,2008年,Vol.113,Page.1387-1395
【文献】LADANYI Andrea,Prognostic impact of B-cell density in cutaneous melanoma,Cancer Immunol Immunother,2011年12月,Vol.60 No.12,Page.1729-1738
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非小細胞肺癌を患う患者の生存期間の予後
を決定するためのデータを提供するためのインビトロ方法であって、以下の工程:
a)患者からの腫瘍組織試料における、CD8+細胞の細胞密度を定量すること、
b)患者からの腫瘍誘導型リンパ構造における、DC-LAMP+樹状細胞の細胞密度を定量すること、
c)工程a)及びb)で得られた細胞密度の値を、各位置で各細胞型について予め決定された参照値と比較すること、及び
d)
(i)患者が、TNMステージ分類によるステージIのガンを有する場合:
CD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞の細胞密度が、予め決定された参照値よりも高い場合
又は一方のマーカー細胞密度が、予め決定された参照値よりも高く、かつ、他方のマーカーの細胞密度が、予め決定された参照値よりも低い場合、患者に生存期間の予後良好を
;又は
CD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞の細胞密度が、予め決定された参照値よりも低い場合、患者に生存期間の予後不良を
(ii)患者が、TNMステージ分類によるステージIIのガンを有する場合:
CD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞の細胞密度が、予め決定された参照値よりも高い場合、患者に生存期間の予後良好を;
一方のマーカー細胞密度が、予め決定された参照値よりも高く、かつ、他方のマーカーの細胞密度が、予め決定された参照値よりも低い場合、患者に生存期間の予後中間を;又は
CD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞の細胞密度が、予め決定された参照値よりも低い場合、患者に生存期間の予後不良を
提供すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
腫瘍組織試料が、腫瘍巣試料又は全腫瘍切片の間質試料である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
腫瘍組織試料が、全腫瘍切片の間質試料である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
生存期間が、疾患特異的生存期間(DSS)、無病生存期間(DFS)又は全生存期間(OS)である、請求項1~
3のいずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、固形癌を患う患者の生存期間の予後判定のためのインビトロ方法に関する。
【0002】
発明の背景
Dieu-Nosjeanら(J Clin Oncol 26:4410-4417. 2008)に示されたように、肺癌は、世界における癌関連死の最も多い原因である。症例の約80%~90%が、腺癌及び扁平上皮癌を含む非小細胞肺癌(NSCLC)を伴う。腫瘍を完全に切除できる患者だけが、生存期間増大のかなりの機会を有する。しかし、ステージI疾患の患者の30%もの数が、術後に再発を経験する。腫瘍浸潤免疫細胞と肺癌患者の予後との間の相関関係は議論の余地がある。
【0003】
腫瘍は、不均一なネットワークを形成し、複合した相互作用を示す悪性細胞、間質細胞、内皮細胞、及び免疫細胞から構成される。免疫系による腫瘍の根絶は、多くの場合に能力不足であるものの、多くの発生途中の癌が免疫系によって無視されないという証拠がある。自己免疫の出現と同時に起こる自然腫瘍退縮及び免疫抑制患者でのより高い腫瘍の発生率は、腫瘍拒絶に免疫系が関与することを指し示すものである。免疫機能が欠損したマウスは自然に腫瘍を発生する。細胞傷害性表現型及びメモリー表現型を有する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の密度は、多くの固形腫瘍で良好な臨床転帰を高度に予測する。しかし、予後はエフェクター免疫細胞のホーミングに関係するものの、特異的免疫応答の活性化が、腫瘍、流入領域リンパ節又はその両方のどこで起こるかは、まだ不明である。
【0004】
免疫応答は二次リンパ器官から離れた三次リンパ構造(TLS)中で起こる可能性があることが、今や十分に立証されている。Dieu-Nosjeanらは、これらのリンパ節様構造が肺癌患者で発生する可能性があることを観測した。それらは、NSCLC患者の非腫瘍性組織中から全く見つからなかったので、「腫瘍誘導型気管支付属リンパ組織」(Ti-BALT)と名付けられた。そのうえ、Dieu-Nosjeanらは、Ti-BALT中から選択的に検出された集団である成熟DCの密度が、早期NSCLCを有する患者(Dieu-Nosjean et al., J. Clin. Oncol., 2008)及び転移期(Remark et al., Clin Cancer Res. 2013 Jun 19)において良好な臨床転帰と関連することを実証し、それらが腫瘍特異的T細胞の活性化部位を表すことを示唆している。
【0005】
TLSの存在が、他のヒト腫瘍、例えば結腸直腸癌(Coppola et al., Am J Pathol., 2011;179(1):37-45; McMullen et al., Clin Exp Immunol. 2010;161(1):81-8;)、乳癌(Gobert et al., Cancer Res 2009; 69(5) 2000-2009; Martinet et al., Cancer Res. 2011;71(17) 5678-87; Gu-Trantien et al., J Clin Invest. 2013; 123(7): 2873-92)及び黒色腫(Martinet et al., Cancer Res. 2011;71(17) 5678-87; Cipponi et al., Cancer Res. 2012;72(16):3997-4007)で報告されており、このことは、多くの固形腫瘍で異所性リンパ構造が現れることを示している。
【0006】
発明の概要
本発明は、固形癌を患う患者の生存期間の予後判定のためのインビトロ方法であって、患者からの腫瘍組織試料中に存在するCD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞の細胞密度の定量を含むインビトロ方法に関し、その際、高密度のCD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞は、患者が予後良好であることを示し、高密度のCD8+細胞及び低密度のDC-LAMP+樹状細胞は、患者が予後不良であることを示し、低密度のCD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞は、患者が予後最悪であることを示す。
【0007】
本方法は、生存期間に反映されるような、患者における癌の起こりそうな経過又は転帰を正確及び精密に予測するという、当技術分野における長年の継続中の必要性を満たすものである。そうできることによって、医師は、癌の処置プロトコールを特定の患者に個別に適応できるようになる。本方法により、良い治療転帰の確率が高い患者は、転帰良好を経験するために最も積極的な処置を受ける必要がない場合があり、したがって、そのような処置に関連する副作用を回避又は最小化することができ、一方で予後不良の患者は、疾患の最も早い可能なステージで、又は使用された治療法と別の治療法によって積極的に処置することができる。
【0008】
さらに、本発明の方法と、現在使用されている病期分類法であるUICC-TNM分類との組合せは、さらに高い正確度を有する生存期間の予後判定のための方法につながる。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、固形癌を患う患者の生存期間の予後判定のためのインビトロ方法であって、以下の段階:
a)患者からの腫瘍組織試料中のCD8+細胞の細胞密度を定量する段階、
b)患者からの腫瘍誘導型リンパ構造中のDC-LAMP+樹状細胞の細胞密度を定量する段階、
c)段階a)及びb)で得られた細胞密度の値を、各位置の各細胞型について予め決定された参照値と比較する段階、並びに
d)CD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞の細胞密度が、予め決定された参照値よりも高い場合、患者に生存期間の予後良好を提供し、
CD8+細胞及びDC-LAMP+樹状細胞の細胞密度が、予め決定された参照値よりも低い場合、患者に生存期間の予後不良を提供し、又は
一方のマーカーの細胞密度が予め決定された参照値よりも高く、他方のマーカーの細胞密度が、予め決定された参照値よりも低い場合、患者に生存期間の予後中間を提供する段階
を含む、インビトロ方法に関する。
【0010】
本発明による予後判定の方法は、単独で、又は非限定的にステージ、人口統計学及び人体計測的パラメーター、腫瘍のサイズ、腫瘍塞栓の存在の有無、及びリンパ節浸潤の有無を含む、日常的な臨床若しくは検査室検査の結果を含む、固形癌の予後判定のためにすでに使用されている任意の他の方法と組合せて使用してもよい。
【0011】
腫瘍誘導型リンパ構造によって、成熟樹状細胞-T細胞クラスター(T細胞領域)及びB細胞濾胞(B細胞領域)から構成される、腫瘍塊の間質中のリンパ節様構造(三次リンパ構造とも呼ばれる)への腫瘍浸潤白血球の組織体が意味される。典型的には、腫瘍切片に応じて、2つの領域の一方のみ又は両方の領域を観測することができる。この組織体は、肺癌における腫瘍誘導型気管支付属リンパ組織にちなんでTi-BALTと呼ばれた。
【0012】
成熟樹状細胞によって、プロセシング済み抗原のT細胞への提示を専門に行う樹状細胞集団が意味される。腫瘍に浸潤している成熟樹状細胞は、腫瘍誘導型リンパ構造の富T細胞領域中でT細胞と接触して選択的に局在する。
【0013】
好ましい一実施態様では、DC-LAMP+ DC、CD8+細胞及び腫瘍ステージの組合せが全生存期間のためのよりいっそう強力な予後判定方法を構成するので、本発明の方法は、腫瘍のTNM病期分類(UICC-TNM classification, 2009)と組合せて使用される。
【0014】
本発明の一実施態様では、患者は、小さなサイズの腫瘍を有する患者であり、すなわち患者の癌の病理学的TステージはpT1である。
【0015】
代替的な一実施態様では、患者は、中間サイズの腫瘍を有する患者であり、すなわち患者の癌の病理学的TステージはpT2である。
【0016】
なお別の実施態様では、患者は、より大きなサイズの腫瘍を有する患者であり、すなわち患者の癌の病理学的TステージはpT3又はpT4である。
【0017】
別の実施態様では、癌は、隣接リンパ節に拡散しなかった、すなわち患者の癌の病理学的NステージはpN0である。
【0018】
なお別の実施態様では、癌は、隣接リンパ節に拡散した、すなわち患者の癌の病理学的NステージはpN1又はpN2である。
【0019】
別の実施態様では、患者の腫瘍は転移しており、癌の病理学的MステージはpM1である。
【0020】
別の実施態様では、患者の腫瘍は転移しておらず、癌の病理学的MステージはpM0である。
【0021】
別の実施態様では、患者はステージIの癌などの早期癌を有する患者である。
【0022】
なお別の実施態様では、患者は、ステージIIの癌を有する患者である。
【0023】
なお別の実施態様では、患者はステージIIIの癌などの進行期癌を有する患者である。
【0024】
本発明の一実施態様では、患者は、化学療法及び/又は放射線療法などのネオアジュバント療法もアジュバント療法も全く受けなかった、早期癌を有する患者である。
【0025】
本発明の代替的な一実施態様では、患者は、化学療法及び/又は放射線療法などの、ネオアジュバント療法と共に又はネオアジュバント療法なしにアジュバント療法を受けている進行期癌を有する患者である。
【0026】
多種多様な癌のステージは、例えばUICC. TNM Classification of Malignant Tumours. 7th ed. Sobin LH, Gospodarowicz M, Wittekind Ch: New York, 2009に定義されている。
【0027】
典型的には、腫瘍組織試料は、(i)全体的原発性腫瘍試料(全体として)、(ii)腫瘍巣試料、(iii)全腫瘍切片の間質試料及び(iv)腫瘍誘導型リンパ構造試料からなる群より選択される。
【0028】
細胞巣は、組織中の他の細胞と異なる1種類の細胞の小さなフォーカス又は集積である。したがって、腫瘍巣は、非癌性細胞に囲まれた腫瘍細胞の集積である。
【0029】
間質は、生体細胞、組織又は器官の結合性支持フレームワークである。腫瘍において、間質細胞は非腫瘍細胞である。間質は、結合組織、脈管、白血球及び細胞外マトリックスを含む。
【0030】
より好ましい一実施態様では、CD8+細胞は全腫瘍切片の間質試料中から定量される。
【0031】
本発明の方法に定義された生存期間は、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)又は疾患特異的生存期間(DSS)の可能性がある。好ましい一実施態様では、生存は全生存期間(OS)である。
【0032】
腫瘍誘導型リンパ構造を有する固形癌の例は、肺癌、結腸直腸癌及び乳癌である。
【0033】
好ましい一実施態様では、固形癌は肺癌である。
【0034】
より好ましい一実施態様では、固形癌は非小細胞肺癌である。
【0035】
典型的には、CD8+細胞密度及びDC-LAMP+樹状細胞密度は、例えば、生検によって得られた試料の腫瘍切片(凍結又はパラフィン包埋組織切片)に行われた免疫組織化学検査によって測定され得る。
【0036】
本発明の方法の一実施態様では、CD8+細胞は、Calopixソフトウェア(Tribvn)を用いて全腫瘍切片の腫瘍巣及び間質中において数えられ、腫瘍表面積1μm2あたりの陽性細胞の絶対数として、算出されたSEMと共に表現される。
【0037】
本発明の一実施態様では、DC-LAMP+樹状細胞は、DC-LAMP(CD208)分子に対する抗体を用いた免疫組織化学検査によって検出される。成熟樹状細胞は、全腫瘍切片から計数される。細胞密度は、腫瘍切片の表面積1単位あたりで計数された細胞数として、例えば中倍率(本来の倍率×100)1視野あたり又は腫瘍表面積1μm2あたりで計数された細胞数として表現され得る。
【0038】
典型的には、CD8+細胞の細胞密度及び樹状細胞の細胞密度について予め決定された参照値は、癌患者に関する大規模研究に統計的方法を適用することによって決定され得る。
【0039】
本発明の一実施態様は、固形癌を患う患者をアジュバント療法によって処置するための方法であって、以下の段階:
a)本発明の予後判定方法で生存期間の予後不良の患者を特定する段階、及び
b)特定された患者をアジュバント療法で処置する段階
を含む方法に関する。
【0040】
本発明は、また、
a)本発明の予後判定方法を用いて生存期間の予後不良の患者を特定する段階、及び
b)特定された患者を抗癌化合物で処置する段階
を含む、固形癌を患う患者をアジュバント療法によって処置するための方法における使用のための抗癌化合物に関する。
【0041】
典型的には、抗癌化合物は、細胞傷害性薬物又は細胞傷害性放射性同位体のいずれかの細胞傷害性作用因子である。細胞傷害性薬物の例は、非限定的に、白金塩、タキサン、ビンカ誘導体及び類似体、ゲムシタビン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素などの細胞毒、gタンパク質、及びgタンパク質共役受容体阻害剤である。一般的な細胞傷害性放射性同位体は、例えば131I、90Y、77Lu、67Cu、186Re、188Re、212Bi及び213Biである。
【0042】
以下に、以下の実施例及び図面によって、本発明が例証される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】NSCLC患者の全コホート並びにDC及びCD8+細胞密度によって層別化された患者についての全生存率を示す図である。NSCLC患者342人についての全生存率のカプラン-マイヤー曲線:(A)全患者、及び(B)DC/CD8スコアに応じた患者。ログランク検定を用いて患者の群間の差を評価した。Altmanら(Altman DG, Lausen B, Sauerbrei W, Schumacher M. Dangers of using "optimal" cutpoints in the evaluation of prognostic factors. Medical Statistics Laboratory, Imperial Cancer Research Fund, London, England. J Natl Cancer Inst. 1994 Jun 1;86(11):829-35.)によって提唱された式を用いてログランクのP値を補正した。
【
図2】Tステージ及びTステージ毎のDC/CD8スコアに応じたNSCLC患者についての全生存率を示す図である。病理学的Tステージ(A)、並びにT1(B)、T2(C)、及びT3(D)ステージ中のDC/CD8スコアに応じたNSCLC患者359人についての全生存率のカプラン-マイヤー曲線。ログランク検定を用いて患者の群間の差を評価した。Altmanらによって提唱された式を用いてログランクのP値を補正した。
【
図3】Nステージ及びNステージ毎のDC/CD8スコアに応じたNSCLC患者についての全生存率を示す図である。病理学的Nステージ(A)、並びにN0(B)及びN陽性(C)ステージ中のDC/CD8スコアに応じたNSCLC患者359人についての全生存率のカプラン-マイヤー曲線。ログランク検定を用いて患者の群間の差を評価した。Altmanらによって提唱された式を用いてログランクのP値を補正した。
【
図4】塞栓及び塞栓の存在下又は不在下でのDC/CD8スコアに応じたNSCLC患者についての全生存率を示す図である。塞栓(A)、並びに塞栓の不在下(B)又は存在下(C)での患者中のDC/CD8スコアに応じたNSCLC患者338人についての全生存率のカプラン-マイヤー曲線。ログランク検定を用いて患者の群間の差を評価した。Altmanらによって提唱された式を用いてログランクのP値を補正した。
【
図5】pTNMステージ及びpTNMステージ毎のDC/CD8スコアに応じたNSCLC患者についての全生存率を示す図である。病理学的TNMステージ(A)、並びにステージI(B)、ステージII(C)、及びステージIII(D)中のDC/CD8スコアに応じたNSCLC患者372人についての全生存率のカプラン-マイヤー曲線。ログランク検定を用いて患者の群間の差を評価した。Altmanらによって提唱された式を用いてログランクのP値を補正した。
【0044】
実施例
実施例1
患者
Institut Mutualiste Montsouris又はHotel Dieu Hospital(Paris, France)で肺腫瘍の外科的完全切除を受けたNSCLC患者から、新鮮(n=54人)、凍結(n=28人)、及びパラフィン包埋(n=376人)肺腫瘍試料を得た。2001年6月15日から2004年11月26日の間に手術されたNSCLC患者376人(ステージI~IV、UICC TNM分類2009)を後ろ向き検索した。腫瘍グレードの分類は、International Union Against Cancer及びAmerican Joint Committee on Cancerによって公表された悪性腫瘍のTNM分類第7版(Sobin, Cancer, 2010)の推奨に従って行った。ネオアジュバント化学療法又は放射線療法を受けた患者は不適格であった。コホートの観察時間は、手術から最後の接触(患者の最後の経過観察又は死亡)までの間隔であった。試験の完了時に、コホートに算入された最後の患者についての最短臨床経過観察期間は90ヶ月であった。自治体の記録又は患者の家族の問い合わせによって、長期転帰に関するデータを後ろ向きに得た。前向き試験に算入する前に、患者から書面のインフォームドコンセントを得た。プロトコールは、フランス法律L.1121-1条を適用して、地域の倫理委員会によって承認された(番号:2008-133及び2012-0612)。
【0045】
フローサイトメトリー
新鮮肺腫瘍検体を機械的に解離させ、以前に記載されたように単核細胞を単離した(De Chaisemartin, L. et al.. Cancer Res 71, 6391-6399 (2011))。蛍光色素とコンジュゲートした複数パネルの抗体で単核細胞を染色した。簡潔には、2%ヒト血清で飽和後、単核細胞を一次抗体又は適切なアイソタイプ対照と共に遮光下で4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、0.5%ホルムアルデヒド中で固定し、その後LSRII又はFortessaサイトメーター(BD Biosciences)で分析した。フローサイトメトリーのデータをDiva(BD Biosciences)及びFlowJo(Tree Star, Inc)で解析した。
【0046】
免疫組織化学
各パラフィン包埋肺腫瘍について、2人の観察者(専門の病理学者1人及びNSCLCの病理学的特徴を特定する訓練を受けた検査員1人)が、隣接する肺実質と共に腫瘍の代表的な領域を含む腫瘍切片、並びにヘマトキシリン及びエオシン染色組織切片上の最高密度の免疫細胞を選択した。簡潔には、連続的な5μm組織切片を脱パラフィンし、再水和させ、抗原賦活化(antigen retrieval)のために適切な緩衝液中で前処理した。次に、切片を5%ヒト血清と共に30分間インキュベートし、その後、適切な一次抗体に続いて二次抗体を添加した。記載されたように酵素活性が明らかとなった(Dieu-Nosjean. et al. J. Clin. Oncol 26, 4410-4417 (2008))。NDPviewソフトウェアで操作されたNanozoomer(Hamamatsu)を使用して画像を取得した。
【0047】
細胞の定量方法
組織切片全体の腫瘍領域における各中倍率視野(IPF)内からDC-LAMP+ DCを半定量的に計数し(それぞれ陽性細胞なし、非常に低密度、低密度、中密度、及び高密度の陽性細胞についてスコア0、1、2、3、及び4)、IPFあたりの平均スコアとして表現し、SEMを計算した。DC-Lamp+成熟DCの数は、上記細胞数よりも少なかったので、本発明者らは、定量的計数を実現できた。それらの染色細胞を、IPFあたりの平均細胞数として、算出されたSEMと共に表現した。
【0048】
Calopixソフトウェアを用いて、全腫瘍切片の腫瘍巣及び間質中からCD8+細胞を数え上げ、対象となる領域1μm2あたりの陽性細胞の絶対数として、算出されたSEMと共に表現した。少なくとも2人の観察者が免疫染色及び定量の両方を点検した。
【0049】
統計解析
本発明者らは、異なる腫瘍に浸潤している免疫細胞の密度を比較するためにマン-ホイットニー検定を使用した。スピアマンの検定によって相関関係を評価した。OS曲線をカプラン-マイヤー法によって推定し、ログランク検定を用いて患者の群間の差を計算した。OSについての経過観察の開始は、手術時であった。成熟DC及びCD8+ T細胞の密度と一緒に、以下の入手可能な臨床パラメーターを検定した:TNMステージ2009、Tステージ、Nステージ、喫煙歴、組織型、腺癌のサブタイプ、塞栓、及び胸膜浸潤。免疫細胞密度に関して、OS転帰を引き合いに出している患者を最もうまく分離するためのカットオフを、「最小P値」アプローチを用いて判定した(転帰指向のアプローチ)。得られたP値は過大評価されたおそれがあるので、Altmanらによって提唱された式を使用して、又は10分割交差確認を用いて、OSのログランクP値を補正した。0.05未満のP値を統計的に有意と見なした。単変量解析で転帰に影響する可能性ありと特定されたパラメーター(P<0.05)を多変量コックス比例ハザード回帰モデルに導入した。全ての解析をPrism 5(GraphPad)、Statview(Abacus Systems)及びR(http://www.r-project.org/)で行った。Genesisソフトウェア(Institute for Genomics and Bioinformatics, Gratz, Austria; Sturn et al., Bioinformatics, 2002)を用いた階層的クラスタリングを用いて相関行列を求めた。
【0050】
1 - 高密度の成熟DCは、肺腫瘍における高レベルのCD8+T細胞浸潤を予測する
本発明者らは、成熟DCの密度と細胞傷害-エフェクター機能との間の密接な関連を観察したので、本発明者らは、さらに、成熟DCとCD8+T細胞浸潤との間の関係を検討した。CD8+ T細胞は、腫瘍細胞との接触を確立してそれらの細胞溶解機能を発揮すると予想されるので、本発明者らは、以下の解析で腫瘍巣及び間質中に存在するCD8+T細胞を識別した。
【0051】
後ろ向き系列のNSCLC患者376人において(ステージI~IV、UICC TNM分類2009)、本発明者らは、間質CD8+ T細胞(CD8S)、腫瘍巣CD8+ T細胞(CD8T)及び成熟DC-Lamp+DCを定量した。早期肺腫瘍で以前に観察されたように、本発明者らは、全てのステージの肺腫瘍においてPNAd+血管及びB細胞濾胞に隣接するTLSのT細胞豊富な領域中に、成熟DCが選択的にホーミングすることを確認した。
【0052】
上記結果に従って、本発明者らは、DC-LampHi腫瘍の方がDC-LampLo腫瘍よりもCD8T細胞及びCD8S細胞の両方が高密度であることを観察した(それぞれCD8Tの平均=254対138個/mm2、P=0.0003;CD8Sの平均=843対553個/mm2、P<0.0001)。結果として、CD8S及びCD8T細胞密度に応じたDC-LampHi及びDC-LampLo患者の二断層化から、DC-LampHi患者の84%が少なくとも1つの領域でCD8Hiであり、特に55%が両方の領域で高かったことが明らかとなった。これらの比率は、DC-LampLo患者で大きく減少し、CD8Hiは少なくとも1つの領域で61%、両方の領域でわずかに33%であった。興味深いことに、間質から腫瘍巣に浸潤性T細胞が輸送されたことに基づくCD8S
Lo/CD8T
Hi腫瘍を有する患者は、両方のDC-Lamp群でまれであった。DC-LampHiに対するDC-LampLo患者の主な差は、CD8S
HiCD8T
Hi及びCD8S
LoCD8T
Lo患者の率に関係し、一方で混合群(CD8S
HiCD8T
Lo及びCD8S
LoCD8T
Hi)の率は全く不変であった。
【0053】
まとめると、これらの結果は、高密度の成熟DCが強いCD8+T細胞浸潤に密接に関係することを実証している。
【0054】
2 - 成熟DC密度は、ヒト肺腫瘍における早期分化型及びエフェクター-メモリーCD8+T細胞の浸潤に関連する
本発明者らは、54個の新鮮切除されたヒトNSCLCに対して大規模フローサイトメトリー分析を行って、免疫浸潤物をDC-Lamp+成熟DCの密度に応じて特徴付けた。本発明者らは、DC-Lamp+DCが高密度の患者(DC-LampHi患者)とDC-Lamp+ DCが低密度の患者(DC-LampLo患者)の間で総単核細胞中の総CD3+、CD3+CD4+及びCD3+CD8+T細胞の有意に高い率、CD19+ B細胞について有意でない傾向、並びにCD3-CD56+ NK細胞について差がないことを観察した。TLS内のCD62L+T細胞の選択的局在に従って、DC-LampHi腫瘍は、DC-LampLo腫瘍よりも有意に大量のCD62L+CD4+T細胞及びCD62L+CD8+ T細胞を有した。本発明者らは、DC-LampHi腫瘍とDC-LampLo腫瘍との間で総単核細胞中のTILの大多数に相当する、抗原を経験したCD62L-CD4+T細胞及びCD62L-CD8+ T細胞が有意に同時に増加することも観察した。DC-LampLo腫瘍に比べてDC-LampHi腫瘍の方が、活性化CD38+又はCD69+CD8+ T細胞によって、及びエフェクター-メモリーCD8+ T細胞の4つの主要亜集団(CD45RA-CCR7-CD27+又は-CD28+又は-)によって大きく浸潤されていた。
【0055】
まとめると、これらの結果は、DC-LampHi腫瘍が、DC-LampLo腫瘍よりも多数のTLS関連ナイーブT細胞及び初期分化T細胞並びに多数の活性化エフェクター-メモリー非TLS T細胞を有することを実証している。
【0056】
3 - TLS DCの密度は、死亡リスクが高いCD8Hi患者及びCD8Lo患者の特定を可能にする
本発明者らは、高密度のCD8+T細胞がDC-LampHi患者群及びDC-LampLo患者群の両方で検出されたことを観察したので、本発明者らは、次に、各変数の単独及び組合せの予後的価値を評価した。
【0057】
カプラン-マイヤー曲線は、成熟DC(P=9.1×10-05)、CD8S細胞(P=0.0019)、及びCD8T細胞(P=0.0228)の密度が、より長い全生存(OS)と相関したことを示している。
【0058】
腫瘍における成熟DC及びCD8+細胞の存在が肺癌患者の転帰にプラスの影響を及ぼすので、本発明者らは、高又は低密度の各マーカー(DC-LampHi/CD8Hi、DC-LampHi/CD8Lo、DC-LampLo/CD8Hi、及びDC-LampLo/CD8Lo)に従って患者を4群に層別化した。DC-LampHi患者に観察されたように、本発明者らは、CD8S細胞の密度に関係なく、DC-LampHi腫瘍を有する患者群の死亡リスクが最低であったことを観察した(P=3.4×10-07、OSの中央値は、DC-LampHi/CD8S
Hi患者について92ヶ月であり、DC-LampHi/CD8S
Lo患者について100ヶ月であった)。興味深いことに、DC-LampHi患者だけが、コホート全体に比べて改善した生存期間を表した。対照的に、樹状細胞及びCD8S細胞の両方が低密度の患者は、各免疫マーカー単独(平均OS DC-LampLo=36ヶ月、平均OS CD8S
Lo=40ヶ月)に比べて死亡のリスクが最高であった(OSの中央値は22ヶ月であった)。DC-LampLo/CD8S
Hi腫瘍を有する患者は、死亡リスクが中間であった(OSの中央値=41ヶ月)。DC-LampとCD8T細胞の組合せで解析を行ったときに同じ結果が得られた(データは示さず)。2分割交差確認を100回繰り返した追加的な解析から、DC-Lamp/CD8Sスコアの高く有意な予後的価値を確認した(交差検定100回中99回、Pの中央値=4.7×10-04)。コックス多変量回帰分析を用いると、pTNMステージ及びDC-Lamp/CD8Sスコアは、OSと有意に及び独立して関連した唯一の基準であった(それぞれHR=1.70及び0.71、P=2.83×10-07及び4.50×10-07)。
【0059】
全体的に、これらのデータは、DC-Lamp単独が好都合な転帰を有する患者の特定に有効なマーカーである一方で、CD8とDC-Lampの組合せは、死亡リスクが最高の患者の特定を可能にすることを実証している。最終的に、DC-Lamp/CD8Sスコア及びpTNMステージは、2つの独立した強力な予後因子を構成する。
【0060】
実施例2
患者
Institut Mutualiste Montsouris又はHotel Dieu Hospital(Paris, France)で肺腫瘍の外科的完全切除を受けたNSCLC患者(ステージI~IV、UICC TNM分類2009)からパラフィン包埋肺腫瘍試料(n=372個)を得た。Eastern Cooperative Oncology Group活動状態(Finkelstein et al., Am J Clin Oncol, 1988)が≦1の患者が適格であった。International Union Against Cancer及びAmerican Joint Committee on Cancer(Sobin, Cancer, 2010)によって公表された悪性腫瘍のTNM分類第7版の勧告に従って腫瘍グレードの分類を行った。2001年6月15日から2004年12月31日の間に手術された患者を後ろ向き検索した。ネオアジュバント化学療法又は放射線療法を受けた患者は不適格であった。コホートの観察時間は、診断から最後の接触(患者の最後の経過観察又は死亡)までの間隔であった。試験の完了時に、コホートに算入された最後の患者についての最短臨床経過観察期間は90ヶ月であった。自治体の記録の問い合わせによって、長期転帰に関するデータを後ろ向きに得た。前向き試験に算入する前に、患者から書面のインフォームドコンセントを得た。プロトコールは、フランス法律L.1121-1条を適用して、地域の倫理委員会(番号:2008-133及び2012-0612)及びAssistance Publique-Hopitaux de Paris(AP-HP)によって承認された。
【0061】
1 - コホートの臨床病理パラメーター
NSCLC(全てのステージ)のために手術された患者合計372人を後ろ向き試験に登録した。コホート全体の全生存率を
図1Aに示す。文献に記載されているように、病理学的T(pT)ステージ、N(pN)ステージ、TNM(pTNM)ステージ(第7版、2010)及び腫瘍塞栓は、全生存率と有意に相関した。
【0062】
2 - Tステージは、成熟DC及びCD8+細胞の密度と組合せるとNSCLC患者の臨床的転帰をよりうまく予測する
病理学的Tステージは、臨床におけるゴールドスタンダードの1つである。十分に確立されている通り、pTは、NSCLC患者の生存期間がより長いことに関連した(
図2A、P<0.0001)。次に本発明者らは、腫瘍浸潤DC-Lamp+ DC及びCD8+ T細胞の密度によりTステージの予後的価値を比較することを望んだ。
【0063】
成熟DC及びCD8+ T細胞の存在が、NSCLC患者における良好な臨床転帰と関連することが前もって実証されたので(実施例1参照)、本発明者らは、DC-Lamp+成熟DC及びCD8+間質T細胞(DC CD8_Hi Hi、DC CD8_Hi Lo、DC CD8_Lo Hi、DC CD8_Lo Lo)の高/低密度に応じて患者を4つの群に層別化した。前もって観察されたように、「DC CD8_Hi Lo」腫瘍を有する患者の率は非常に小さく、そのことは、この群を用いた統計解析を非常に困難にし、解釈を非常に限定した。
図1Bに、組合せDC/CD8が、良好な全生存率と相関することを示した(P<0.0001)。次に本発明者らは、pTステージにより層別化された患者に及ぼすDC/CD8スコアの影響を研究した。
【0064】
pT1ステージにおいて、カプラン-マイヤー曲線から、免疫細胞の密度が生存と有意に相関しなかったことが示された(
図2B)。少なくとも1つの免疫細胞型が高密度の患者(DC CD8_Hi Hi、DC CD8_Hi Lo又はDC CD8_Lo Hi患者)は、pT1患者と同じ全生存期間(OS)を有した(約100ヶ月)。対照的に、DC CD8_Lo Lo腫瘍を有する患者は、pT1患者に比べて予後が最悪であった(平均OSはそれぞれ68及び99ヶ月)。この傾向は、pT2ステージでなおいっそう顕著になった(DC CD8_Lo Lo患者及びpT2患者についてそれぞれ平均OS=23及び64ヶ月)。
【0065】
pT2ステージにおいて、組合せDC/CD8は、長期生存期間の患者群(DC CD8_Hi Hi患者についての平均OSは85ヶ月であった)及び短期生存期間の患者群(DC CD8_Lo Lo患者についての平均OSは23ヶ月であった)の特定を可能にし、一方でDC CD8_Lo Hi腫瘍を有する患者は、pT2患者であることと同じ平均OSを有した(それぞれ平均OS=69及び64ヶ月)。pT3ステージにおいて、DC及びCD8+ T細胞の両方が高密度であること(平均OS=69ヶ月)は、CD8+T細胞の密度が何であろうと、低密度のDC(DC CD8_Lo Hi患者及びDC CD8_Lo Lo患者についてそれぞれ平均OS=23及び15ヶ月)又はpT3ステージの患者(平均OS=24ヶ月)であることよりも、良好な転帰を予測した。生存期間に関してpT2ステージとpT3ステージとで主に異なったのは、DC CD8_Lo Hi腫瘍を有する患者群であり、その死亡リスクは、両ステージにおいてそれぞれ中間リスクから高リスクに変わり、pT2及びpT3患者群とまさに同じ転帰を有した。
【0066】
まとめると、これらのデータは、DC及びCTLの両方の密度の組合せ並びにpTステージが、ゴールドスタンダードであるpTステージ単独よりもNSCLC患者の全生存期間をうまく予測することを示した。
【0067】
3 - Nステージと共になったDC及びCTLの両方の密度は、Nステージ単独よりもNSCLC患者の臨床転帰をうまく予測する
本発明者らは、次に、Nステージの予後的価値に及ぼすDC/CD8スコアの影響を検討した(
図3)。
図3Aに示すように、Nステージは、OSについての予後マーカーであることが公知である。リンパ節浸潤が全く検出不能の患者のうち、浸潤性DCが高密度の患者は生存期間が長く(DC CD8_Hi Hi腫瘍を有する患者及びDC CD8_Hi Lo腫瘍を有する患者について平均OSはそれぞれ99及び111ヶ月であった)、一方で、DC CD8_Lo Loを有する患者は、N0ステージを有する患者である参照(平均OS=73ヶ月)よりも転帰が非常に悪かった(平均OSは49ヶ月であった)(
図3A-B)。DC CD8_Lo Hiを有する患者は、参照N0ステージと類似の挙動を有した(それぞれ平均OS=79対73ヶ月)。リンパ節に波及した患者について(
図3A、C)、状況はいっそうさらに著しい。DC-Lamp層別化に基づきOSに大きな差があった。参照に比べて(N+患者について平均OS=25ヶ月)、DCが高密度の患者は、CD8+ T細胞の密度が何であれ、最高の生存率及び平均生存期間を有した(DC CD8_Hi Hi患者について10年OS=45%、平均OS=64ヶ月)。DC CD8_Hi Lo患者について同じ傾向が観察されたが、結論するには例数が少なすぎた。対照的に、DCが低密度の患者は、最悪の率及び平均転帰を有した(10年OS=5%、平均OS=14ヶ月)。今回も、DC CD8_Lo Hi患者及びN+患者についてのカプラン-マイヤー曲線は、まさに類似していた(
図3A-C)。
【0068】
これらの結果は、Nステージ(参照として)にDC及びCD8を加えることが、特にリンパ節浸潤を有する患者群の中から死亡リスクが高い患者と低い患者とをよりよく識別可能にすることを実証した。
【0069】
4 - DC、CD8及び塞栓の組合せは、塞栓単独よりもうまく全生存期間を予測する
血管及びリンパ管浸潤は、腫瘍細胞が体内に拡散していることの最も早い徴候である。
図4Aに示すように、この基準は生存期間不良に関連するので、臨床家によっても評価される。したがって、本発明者らは、次に、塞栓を有する又は有さないNSCLC患者の間でDC/CD8スコアの予後的価値を研究した(
図4)。DC/CD8の組合せは、塞栓単独によって層別化された患者(
図4A)よりも、転帰良好及び転帰最悪の患者をうまく特定できるようにした(
図4B-C)。塞栓が全く検出不能の患者のうち、両方の免疫細胞型が低密度の患者群は、OSが非常に不良であり(平均OS=54ヶ月)、一方で残りの3つの群は、塞栓陰性の患者群(平均OS=83ヶ月)よりもOSがわずかに長かった(DC CD8_Hi Hi、DC CD8_Lo Hi、及びDC CD8_Hi Lo患者について、平均OSは、それぞれ92、101及び111ヶ月であった)。塞栓を有する患者について、免疫的基準は生存期間をよりよく予測した(
図4C、P<0.0001)。DC CD8_Hi Hiを有する患者は死亡リスクが低く(平均OS=84ヶ月)、DC CD8_Lo Loを有する患者は、生存不良のリスクが非常に高く(平均OS=16ヶ月)、一方で免疫細胞の入り混じった密度を有する患者は、塞栓を有する患者(平均OS=40ヶ月)とほぼ同じ平均OSを有した(DC CD8_Hi Lo及びDC CD8_Lo Hi患者について、平均OSは、それぞれ46及び32ヶ月であった)。
【0070】
これらのデータは、DC、CD8及び塞栓パラメーターの組合せが、生存についてのNSCLC患者のよりよい層別化を可能にすることを示している。
【0071】
5 - TNMステージ及びDC/CD8スコアによって層別化されたNSCLC患者のより良好な生存期間
最後に、本発明者らは、DC/CD8スコアがある場合又はない場合の新しいpTNM分類(2010)の予後的価値の威力を検定した(
図5)。予想通り、TNMは、OSについての予後マーカーであった(
図5)。前述同様に、免疫スコアによって層別化された患者の予後的影響は、疾患の進行中にどんどん顕著になった。早期NSCLCの以後、低密度の樹状細胞及びCD8+細胞は、転帰が最悪の患者を特定し(DC CD8_Lo Lo患者及びステージIの患者について、平均OSは、それぞれ61ヶ月対99ヶ月であった;
図5A-B)、一方でDC/CD8患者の残りの3群は、ステージIの患者と同じ平均OSを有した。疾患が最も進行したステージの患者のうち、高密度の成熟DCを有する患者は、低DC群の患者(DC CD8_Lo Hi及びDC CD8_Lo Lo患者について、平均OSは、それぞれ10及び13ヶ月であった)又はステージIIIの患者(平均OS=18ヶ月)に比べて生存期間に関して大きな利益を有した(平均OS=64ヶ月)(
図5A、D)。今回も、疾患の段階が何であろうと、DC CD8 Lo Hi患者は、常に参照と同じ挙動を有した。
【0072】
まとめると、DC/CD8スコアは、TNMステージの予後的価値を高める。DC/CD8スコアをpTNMステージと組合せることで、NSCLCなどの腫瘍誘導型リンパ構造を有する固形癌患者の予後のより精密な見解が得られる。
【0073】
参考文献
本出願にわたり、本発明が属する技術の現状を様々な参考文献が記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照により本明細書に組み入れられる。