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▶ マブスペース バイオサイエンシズ (スーチョウ) カンパニー,リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】新規抗PD-L1抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220527BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220527BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220527BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220527BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220527BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220527BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220527BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220527BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220527BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220527BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/28
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
G01N33/53 Y
G01N33/543 581A
G01N33/543 581J
G01N33/543 585
G01N33/543 595
G01N33/574 A
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019500712
(86)(22)【出願日】2017-02-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2017073242
(87)【国際公開番号】W WO2017161976
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/077082
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518338529
【氏名又は名称】スーチョウ トランセンタ セラピューティクス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】キアン,スミン
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,テン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ゼン
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-511329(JP,A)
【文献】特表2013-511959(JP,A)
【文献】特表2008-544755(JP,A)
【文献】特表2015-519375(JP,A)
【文献】特表2015-500207(JP,A)
【文献】特表2015-535691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
C07K
A61K
A61P
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3ならびに軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3配列を含む単離されたPD-L1抗体またはその抗原結合断片であって、
HCDR1配列は、TYWXH(配列番号1)であり、
HCDR2配列は、MIQPNSGGTKYNXFKX(配列番号2)であり、
HCDR3配列は、GAGTVDYFDY(配列番号3)であり、
LCDR1配列は、RASESVDIYGNSFMH(配列番号4)であり、
LCDR2配列は、RASNLES(配列番号5)であり、
LCDR3配列は、XQSXDPYT(配列番号6)であり、
はIであり、XはDであり、XはQであり、XはNであり、XはQであり、XはNであり、XはDである、または、
はMであり、XはEであり、XはKであり、XはKであり、XはQであり、XはTであり、XはEである、
単離されたPD-L1抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
抗体が、HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4の重鎖フレームワーク配列ならびにLFR1、LFR2、LFR3およびLFR4の軽鎖フレームワーク配列を含み、重鎖可変領域の配列が、式:HFR1-HCDR1-HFR2-HCDR2-HFR3-HCDR3-HFR4に従い、軽鎖可変領域の配列が、式LFR1-LCDR1-LFR2-LCDR2-LFR3-LCDR3-LFR4に従い、ここで、
HFR1配列が、XaVQLXaQXaGAEXaXaKPGASVKXaSCKASGYXaFT(配列番号13)であり、
HFR2配列が、WVXaQXaPGQGLEWIG(配列番号14)であり、
HFR3配列が、Xa10Xa11TLTVDXa12SXa13Xa14TAXa15MXa16LSXa17LXa18SXa19DXa20AVXa33YCAR(配列番号15)であり、
HFR4配列が、WGXa34GXa21TXa35Xa22Xa23SS(配列番号16)であり、
LFR1配列が、Xa36IVXa37TXa24Xa38PXa25Xa39LXa26VSXa27GXa40RXa41TIXa28C(配列番号17)であり、
LFR2配列が、WYQQKPGQXa29PKLLIY(配列番号18)であり、
LFR3配列が、GXa42PXa43RFXa44GSGXa45Xa46RTDFTXa47TIXa48Xa49VXa50AXa30DXa31AXa51YXa52C(配列番号19)であり、
LFR4配列が、FGXa53GTKLEXa32K(配列番号20)であり、
Xaが、QまたはLであり、Xaが、QまたはVであり、Xaが、SまたはPであり、Xaが、LまたはVであり、Xaが、VまたはKであり、Xaが、LまたはVであり、Xaが、T、SまたはIであり、Xaが、W、KまたはRであり、Xaが、RまたはAであり、Xa10が、R、KまたはTであり、Xa11が、VまたはAであり、Xa12が、KまたはTであり、Xa13が、SまたはIであり、Xa14が、SまたはTであり、Xa15が、YまたはSであり、Xa16が、QまたはEであり、Xa17が、S、GまたはRであり、Xa18が、TまたはRであり、Xa19が、EまたはDであり、Xa20が、SまたはTであり、Xa21が、TまたはSであり、Xa22が、SまたはTであり、Xa23が、VまたはIであり、Xa24が、QまたはHであり、Xa25が、A、KまたはVであり、Xa26が、A、SまたはTであり、Xa27が、L、AまたはVであり、Xa28が、SまたはTであり、Xa29が、S、PまたはAであり、Xa30が、D、E、NまたはQであり、Xa31が、V、LまたはTであり、Xa32が、L、TまたはIであり、Xa33が、FまたはYであり、Xa34が、TまたはQであり、Xa35が、VまたはLであり、Xa36が、DまたはSであり、Xa37が、MまたはLであり、Xa38が、TまたはSであり、Xa39が、FまたはSであり、Xa40が、DまたはQであり、Xa41が、VまたはAであり、Xa42が、VまたはIであり、Xa43が、DまたはAであり、Xa44が、TまたはSであり、Xa45が、YまたはSであり、Xa46が、GまたはRであり、Xa47が、FまたはLであり、Xa48が、SまたはNであり、Xa49が、TまたはPであり、Xa50が、QまたはEであり、Xa51が、VまたはTであり、Xa52が、FまたはYであり、Xa53が、AまたはGである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
Xaが、Qであり、Xaが、Vであり、Xaが、Sであり、Xaが、Vであり、Xaが、Kであり、Xaが、Lであり、Xaが、Iであり、Xaが、Kであり、Xaが、Rであり、Xa10が、RまたはKであり、Xa11が、Aであり、Xa12が、Kであり、Xa13が、Iであり、Xa14が、Sであり、Xa15が、Yであり、Xa16が、Eであり、Xa17が、Rであり、Xa18が、Tであり、Xa19が、Dであり、Xa20が、Tであり、Xa21が、TまたはSであり、Xa22が、TまたはSであり、Xa23が、IまたはVであり、Xa24が、Qであり、Xa25が、Aであり、Xa26が、Aであり、Xa27が、Vであり、Xa28が、Tであり、Xa29が、AまたはPであり、Xa30が、Qであり、Xa31が、Tであり、Xa32が、TまたはIであり、Xa33が、Yであり、Xa34が、Qであり、Xa35が、Lであり、Xa36が、Dであり、Xa37が、Lであり、Xa38が、Sであり、Xa39が、Sであり、Xa40が、Qであり、Xa41が、Aであり、Xa42が、Iであり、Xa43が、Aであり、Xa44が、Sであり、Xa45が、Sであり、Xa46が、Rであり、Xa47が、Lであり、Xa48が、Nであり、Xa49が、Pであり、Xa50が、Eであり、Xa51が、Tであり、Xa52が、Yであり、Xa53が、Gである、または、
Xaが、Qであり、Xaが、Vであり、Xaが、Sであり、Xaが、Vであり、Xaが、Kであり、Xaが、Lであり、Xaが、Iであり、Xaが、Kであり、Xaが、Rであり、Xa10が、Rであり、Xa11が、Aであり、Xa12が、Kであり、Xa13が、Iであり、Xa14が、Sであり、Xa15が、Yであり、Xa16が、Eであり、Xa17が、Rであり、Xa18が、Tであり、Xa19が、Dであり、Xa20が、Tであり、Xa21が、Tであり、Xa22が、Sであり、Xa23が、Iであり、Xa24が、Qであり、Xa25が、Aであり、Xa26が、Aであり、Xa27が、Vであり、Xa28が、Tであり、Xa29が、Aであり、Xa30が、Qであり、Xa31が、Tであり、Xa32が、Tであり、Xa33が、Yであり、Xa34が、Qであり、Xa35が、Lであり、Xa36が、Dであり、Xa37が、Lであり、Xa38が、Sであり、Xa39が、Sであり、Xa40が、Qであり、Xa41が、Aであり、Xa42が、Iであり、Xa43が、Aであり、Xa44が、Sであり、Xa45が、Sであり、Xa46が、Rであり、Xa47が、Lであり、Xa48が、Nであり、Xa49が、Pであり、Xa50が、Eであり、Xa51が、Tであり、Xa52が、Yであり、Xa53が、Gである、または、
Xaが、Qであり、Xaが、Vであり、Xaが、Sであり、Xaが、Vであり、Xaが、Kであり、Xaが、Lであり、Xaが、Iであり、Xaが、Kであり、Xaが、Rであり、Xa10が、Kであり、Xa11が、Aであり、Xa12が、Kであり、Xa13が、Iであり、Xa14が、Sであり、Xa15が、Yであり、Xa16が、Eであり、Xa17が、Rであり、Xa18が、Tであり、Xa19が、Dであり、Xa20が、Tであり、Xa21が、Sであり、Xa22が、Tであり、Xa23が、Vであり、Xa24が、Qであり、Xa25が、Aであり、Xa26が、Aであり、Xa27が、Vであり、Xa28が、Tであり、Xa29が、Pであり、Xa30が、Qであり、Xa31が、Tであり、Xa32が、Iであり、Xa33が、Yであり、Xa34が、Qであり、Xa35が、Lであり、Xa36が、Dであり、Xa37が、Lであり、Xa38が、Sであり、Xa39が、Sであり、Xa40が、Qであり、Xa41が、Aであり、Xa42が、Iであり、Xa43が、Aであり、Xa44が、Sであり、Xa45が、Sであり、Xa46が、Rであり、Xa47が、Lであり、Xa48が、Nであり、Xa49が、Pであり、Xa50が、Eであり、Xa51が、Tであり、Xa52が、Yであり、Xa53が、Gである、請求項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
抗体が、配列番号61に示される重鎖可変領域および配列番号62に示される軽鎖可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
抗体が、配列番号63に示される重鎖可変領域および配列番号64に示される軽鎖可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
抗体が、二重特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、標識化抗体または二価抗体である、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
抗原結合断片が、ダイアボディ、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)、dsダイアボディ、および単離されたCDRからなる群から選択される抗原結合断片である、請求項1からのいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物。
【請求項9】
対象においてPD-L1関連状態を処置するために用いられる、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗体が、参照投与量の50%以下である投与量で投与され、参照投与量が、同等のin vivo治療効果を達成するようにYW243.55.S70によって決定され、YW243.55.S70が、酸性pHおよび中性pHの両方でPD-L1との同様の結合を示し、YW243.55.S70および抗体が、中性pHでPD-L1との同様の結合を有する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
抗体が、参照投与頻度のものより少ない投与頻度で投与され、参照投与頻度が、同等のin vivo治療効果を達成するようにYW243.55.S70よって決定され、YW243.55.S70が、酸性pHおよび中性pHの両方でPD-L1との同様の結合を示し、YW243.55.S70および抗体が、中性pHでPD-L1との同様の結合を有する、請求項または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
抗体が、参照in vivo半減期よりも長い、標的臓器におけるin vivo半減期を有し、参照in vivo半減期が、YW243.55.S70によって決定され、YW243.55.S70が、酸性pHおよび中性pHの両方でPD-L1との同様の結合を示し、YW243.55.S70および抗体が、中性pHでPD-L1との同様の結合を有する、請求項から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
さらに第2の治療剤を含む、請求項から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
第2の治療剤が、放射線療法、化学療法、標的化療法、遺伝子療法、免疫療法、ホルモン療法、血管新生阻害、緩和ケア、手術またはそれらの組合せにおいて使用される薬剤である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
第2の治療剤が、VEGFR2抗体である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項16に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターを含む単離された宿主細胞。
【請求項19】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片あるいは請求項から15のいずれか一項に記載の医薬組成物を含むキット。
【請求項20】
PD-L1抗体またはその抗原結合断片を産生する方法であって、ポリヌクレオチドが発現される条件下で、請求項18に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ヒトPD-L1と特異的に結合する新規抗PD-L1抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
PD-1、CD28ファミリーのメンバーは、T細胞の活性化および増殖を生理学的に制限するように機能する、T細胞の表面で発現される阻害性受容体である。そのリガンド、PD-L1(B7-H1/CD274)は、抗原提示細胞および腫瘍細胞上で発現される。PD-L1のその受容体との結合は、T細胞の活性化を阻害し、B7のCD28との結合などのT細胞刺激性シグナルを均衡する。
【0003】
PD-L1は、正常な上皮組織によって発現されないが、幅広いヒト癌で異常に発現される。これに関連して、PD-L1は、宿主抗腫瘍反応を無効にすることによって癌の進行を促進し得る。腫瘍細胞でのその発現は、腎細胞癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、尿路上皮癌、胃癌、食道癌および肝細胞癌腫における予後不良と関連してきた。
【0004】
PD-1を標的とする多重抗体が作製されており、腫瘍成長において有効であり、無作為化比較対照試験において全生存を延長すると示された。いくつかのPD-L1を標的とする抗体が発見されており、腫瘍成長の阻害において活性が示された。これらの抗体は、PD-L1発現細胞によって内部移行され、エンドソームおよびリソソームコンパートメントにおいて迅速に分解されるので、これらの抗体は、PD-L1発現細胞によって迅速に排除され、従って、これらの抗体の腫瘍成長を阻害する能力は、送達される抗体の量によって制限される。腫瘍成長の持続的阻害は、PD-L1の活性を遮断するのに十分に高い腫瘍部位での抗体の濃度を維持するために、多量の抗体の連続的な注入を必要とする。したがって、これらの物質を提供する費用は、患者への多量の抗体の注射を必要とするので極めて高いと予測される。より重要なことに、完全な応答を達成する能力も制限される。したがって、現在の抗PD-L1抗体よりも大幅に良好な有効性を有する抗体の作製が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、新規モノクローナル抗PD-L1抗体(特に、キメラおよびヒト化抗体)、それをコードするポリヌクレオチド、それを使用する方法およびヒトPD-L1タンパク質上のその結合エピトープを提供する。
【0006】
特定の実施形態では、重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3ならびに軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3配列を含む単離されたPD-L1抗体が本明細書において提供され、
HCDR1配列は、TYWXH(配列番号1)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列であり、
HCDR2配列は、MIQPNSGGTKYNXFKX(配列番号2)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列であり、
HCDR3配列は、GAGTVDYFDY(配列番号3)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列であり、
LCDR1配列は、RASESVDIYGNSFMH(配列番号4)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列であり、
LCDR2配列は、RASNLES(配列番号5)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列であり、
LCDR3配列は、XQSXDPYT(配列番号6)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列であり、
は、IまたはMであり、Xは、DまたはEであり、Xは、QまたはKであり、Xは、NまたはKであり、Xは、QまたはHであり、Xは、NまたはTであり、Xは、DまたはEである。
【0007】
特定の実施形態では、Xは、IまたはMであり、Xは、DまたはEであり、Xは、QまたはKであり、Xは、NまたはKであり、Xは、Qであり、Xは、NまたはTであり、Xは、DまたはEである。特定の実施形態では、Xは、Iであり、Xは、Dであり、Xは、Qであり、Xは、Nであり、Xは、Qであり、Xは、Nであり、Xは、Dである。特定の実施形態では、Xは、Mであり、Xは、Eであり、Xは、Kであり、Xは、Kであり、Xは、Qであり、Xは、Tであり、Xは、Eである。特定の実施形態では、Xは、Iであり、Xは、DでありXは、Qであり、Xは、Nであり、Xは、Hであり、Xは、Nであり、Xは、Dである。特定の実施形態では、Xは、Mであり、Xは、Eであり、Xは、Kであり、Xは、Kであり、Xは、Hであり、Xは、Tであり、Xは、Eである。
【0008】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号7~12またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体から選択される1、2、3、4、5または6種のCDRを含む。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号7~9から選択される3種の重鎖CDRを含む。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号10~12から選択される3種の軽鎖CDRを含む。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号7~12から選択される6種のCDRを含む。
【0009】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4の重鎖フレームワーク配列ならびにLFR1、LFR2、LFR3およびLFR4の軽鎖フレームワーク配列を含み、重鎖可変領域の配列は、次式:HFR1-HCDR1-HFR2-HCDR2-HFR3-HCDR3-HFR4に従い、軽鎖可変領域の配列は、次式LFR1-LCDR1-LFR2-LCDR2-LFR3-LCDR3-LFR4に従う。
【0010】
特定の実施形態では、HFR1配列は、XaVQLXaQXaGAEXaXaKPGASVKXaSCKASGYXaFT(配列番号13)であり、
HFR2配列は、WVXaQXaPGQGLEWIG(配列番号14)であり、
HFR3配列は、Xa10Xa11TLTVDXa12SXa13Xa14TAXa15MXa16LSXa17LXa18SXa19DXa20AVYYCAR(配列番号15)であり、
HFR4配列は、WGQGXa21TLXa22Xa23SS(配列番号16)であり、
LFR1配列は、DIVLTXa24SPXa25SLXa26VSXa27GQRATIXa28C(配列番号17)であり、
LFR2配列は、WYQQKPGQXa29PKLLIY(配列番号18)であり、
LFR3配列は、GIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEAXa30DXa31ATYYC(配列番号19)であり、
LFR4配列は、FGGGTKLEXa32K(配列番号20)であり、
Xaは、QまたはLであり、Xaは、QまたはVであり、Xaは、SまたはPであり、Xaは、LまたはVであり、Xaは、VまたはKであり、Xaは、LまたはVであり、Xaは、T、SまたはIであり、Xaは、W、KまたはRであり、Xaは、RまたはAであり、Xa10は、RまたはKであり、Xa11は、VまたはAであり、Xa12は、KまたはTであり、Xa13は、SまたはIであり、Xa14は、SまたはTであり、Xa15は、YまたはSであり、Xa16は、QまたはEであり、Xa17は、S、GまたはRであり、Xa18は、TまたはRであり、Xa19は、EまたはDであり、Xa20は、SまたはTであり、Xa21は、TまたはSであり、Xa22は、SまたはTであり、Xa23は、VまたはIであり、Xa24は、QまたはHであり、Xa25は、AまたはVであり、Xa26は、AまたはTであり、Xa27は、L、AまたはVであり、Xa28は、SまたはTであり、Xa29は、S、PまたはAであり、Xa30は、D、NまたはQであり、Xa31は、VまたはTであり、Xa32は、L、TまたはIであり、Xa33は、FまたはYであり、Xa34は、TまたはQであり、Xa35は、VまたはLであり、Xa36は、DまたはSであり、Xa37は、MまたはLであり、Xa38は、TまたはSであり、Xa39は、FまたはSであり、Xa40は、DまたはQであり、Xa41は、VまたはAであり、Xa42は、VまたはIであり、Xa43は、DまたはAであり、Xa44は、TまたはSであり、Xa45は、YまたはSであり、Xa46は、GまたはRであり、Xa47は、FまたはLであり、Xa48は、SまたはNであり、Xa49は、TまたはPであり、Xa50は、QまたはEであり、Xa51は、VまたはTであり、Xa52は、FまたはYであり、Xa53は、AまたはGである。
【0011】
特定の実施形態では、Xaは、Qであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Lであり、Xaは、Iであり、Xaは、Kであり、Xaは、Rであり、Xa10は、RまたはKであり、Xa11は、Aであり、Xa12は、Kであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Tであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、TまたはSであり、Xa22は、TまたはSであり、Xa23は、IまたはVであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、AまたはPであり、Xa30は、Qであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、TまたはIであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0012】
特定の実施形態では、Xaは、Qであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Lであり、Xaは、Iであり、Xaは、Kであり、Xaは、Rであり、Xa10は、Rであり、Xa11は、Aであり、Xa12は、Kであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Tであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、Tであり、Xa22は、Sであり、Xa23は、Iであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、Aであり、Xa30は、Qであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、Tであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0013】
特定の実施形態では、Xaは、Qであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Lであり、Xaは、Iであり、Xaは、Kであり、Xaは、Rであり、Xa10は、Kであり、Xa11は、Aであり、Xa12は、Kであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Tであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、Sであり、Xa22は、Tであり、Xa23は、Vであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、Pであり、Xa30は、Qであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、Iであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0014】
特定の実施形態では、Xaは、LまたはQであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Lであり、Xaは、Iであり、Xaは、Kであり、Xaは、Rであり、Xa10は、Rであり、Xa11は、Aであり、Xa12は、Kであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Tであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、Tであり、Xa22は、Sであり、Xa23は、Iであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、Sであり、Xa30は、Nであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、Tであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0015】
特定の実施形態では、Xaは、Lであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Vであり、Xaは、Iであり、Xaは、Rであり、Xaは、Aであり、Xa10は、Rであり、Xa11は、Vであり、Xa12は、Tであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Rであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、Tであり、Xa22は、Sであり、Xa23は、Iであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、Sであり、Xa30は、Nであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、Tであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0016】
特定の実施形態では、Xaは、Lであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Vであり、Xaは、Iであり、Xaは、Rであり、Xaは、Aであり、Xa10は、Rであり、Xa11は、Vであり、Xa12は、Tであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Rであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、Tであり、Xa22は、Sであり、Xa23は、Iであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、Aであり、Xa30は、QまたはNであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、Tであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0017】
特定の実施形態では、Xaは、Qであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Vであり、Xaは、Iであり、Xaは、Rであり、Xaは、Aであり、Xa10は、Kであり、Xa11は、Aであり、Xa12は、Tであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Rであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、Sであり、Xa22は、Tであり、Xa23は、Vであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、Pであり、Xa30は、Nであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、Iであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0018】
特定の実施形態では、Xaは、Qであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Vであり、Xaは、Iであり、Xaは、Rであり、Xaは、Aであり、Xa10は、Kであり、Xa11は、Aであり、Xa12は、Tであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Rであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、Sであり、Xa22は、Tであり、Xa23は、Vであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、Pであり、Xa30は、NまたはQであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、Iであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0019】
特定の実施形態では、Xaは、Qであり、Xaは、Vであり、Xaは、Sであり、Xaは、Vであり、Xaは、Kであり、Xaは、Lであり、Xaは、Iであり、Xaは、Kであり、Xaは、Rであり、Xa10は、Kであり、Xa11は、Aであり、Xa12は、Kであり、Xa13は、Iであり、Xa14は、Sであり、Xa15は、Yであり、Xa16は、Eであり、Xa17は、Rであり、Xa18は、Tであり、Xa19は、Dであり、Xa20は、Tであり、Xa21は、Sであり、Xa22は、Tであり、Xa23は、Vであり、Xa24は、Qであり、Xa25は、Aであり、Xa26は、Aであり、Xa27は、Vであり、Xa28は、Tであり、Xa29は、Pであり、Xa30は、Nであり、Xa31は、Tであり、Xa32は、Iであり、Xa33は、Yであり、Xa34は、Qであり、Xa35は、Lであり、Xa36は、Dであり、Xa37は、Lであり、Xa38は、Sであり、Xa39は、Sであり、Xa40は、Qであり、Xa41は、Aであり、Xa42は、Iであり、Xa43は、Aであり、Xa44は、Sであり、Xa45は、Sであり、Xa46は、Rであり、Xa47は、Lであり、Xa48は、Nであり、Xa49は、Pであり、Xa50は、Eであり、Xa51は、Tであり、Xa52は、Yであり、Xa53は、Gである。
【0020】
特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号61に示される重鎖可変領域および配列番号62に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号71に示される重鎖可変領域および配列番号72に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号71に示される重鎖可変領域および配列番号70に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号69に示される重鎖可変領域および配列番号72に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号69に示される重鎖可変領域および配列番号70に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号73に示される重鎖可変領域および配列番号74に示される軽鎖可変領域を含む。
【0021】
特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号63に示される重鎖可変領域および配列番号64に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号75に示される重鎖可変領域および配列番号76に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号77に示される重鎖可変領域および配列番号78に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号75に示される重鎖可変領域および配列番号78に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号77に示される重鎖可変領域および配列番号76に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号79に示される重鎖可変領域および配列番号80に示される軽鎖可変領域を含む。
【0022】
本開示はまた、配列番号7~12から選択される1、2、3、4、5または6種のCDRを含むPD-L1抗体を提供する。特定の実施形態では、抗体は、配列番号7~9から選択される3種の重鎖CDRを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号10~12から選択される3種の軽鎖CDRを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号21に示される重鎖可変領域またはそのヒト化バージョンを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号22に示される軽鎖可変領域またはそのヒト化バージョンを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号21に示される重鎖可変領域および配列番号22に示される軽鎖可変領域またはそのヒト化バージョンを含む。
【0023】
アッセイ試験によって測定される酸性pHでのPD-L1との結合およびアッセイ試験によって測定される中性pHでのPD-L1との結合を有し、酸性pHでのPD-L1との結合が中性pHでのPD-L1との結合よりも実質的に低い、単離されたPD-L1抗体。特定の実施形態では、酸性pHでのPD-L1抗体のPD-L1との結合は、同一アッセイ設定で中性pHでのPD-L1との結合の80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%以下である。特定の実施形態では、中性pHは、7.4であり、酸性pHは、6.0、5.5、5.0、4.5または4.0である。特定の実施形態では、酸性のpH6.0、pH5.5またはpH5.0での本明細書において提供されるPD-L1抗体のPD-L1との結合は、同一アッセイ設定でのpH7.4でのPD-L1との結合よりも実質的に低い。
【0024】
特定の実施形態では、アッセイ設定は、ELISA、FACS、表面プラズモン共鳴、GSTプルダウン、エピトープ-タグ、免疫沈降、ファーウエスタン、蛍光共鳴エネルギー移動、時間分解蛍光イムノアッセイ(TR-FIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、エンザイムイムノアッセイ、ラテックス凝集、ウエスタンブロットおよび免疫組織化学およびそれらの組合せのいずれかによる、in vitroでの結合または遮断活性によって測定される。
【0025】
特定の実施形態では、本開示はまた、PD-L1抗体と同一のエピトープと結合する、またはPD-L1抗体との競合結合を有する、単離されたPD-L1抗体を提供する。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基E58、K62、N63、I64、S80およびY81のうち少なくとも1個(例えば、少なくとも2個、3個、4個または5個)を含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基:R113、M115、Y123、K124およびR125のうち少なくとも1個(例えば、少なくとも2個または3個)をさらに含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基の組合せ:1)E58、R113、M115、Y123およびK124;2)E58、S80、R113およびR125のうち1種を含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基:K62、N63、I64、Y81およびD122のうち少なくとも1種(例えば、少なくとも2種または3種)をさらに含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基の組合せ:1)E58、N63、I64、S80、Y81、R113およびR125;2)E58、S80、R113、M115、D122、Y123、K124およびR125;3)E58、K62、N63、S80、Y81、R113およびR125;4)E58、N63、I64、S80、Y81、R113、K124およびR125のうち1種を含む。
【0026】
酸性pHでのPD-L1との結合が同一アッセイ設定での中性pHでのPD-L1との結合よりも実質的に低い単離されたPD-L1抗体を対象に投与すること、およびそれによりPD-L1関連状態を処置することを含む、それを必要とする対象においてPD-L1関連状態を処置する方法が本明細書において提供される。
【0027】
特定の実施形態では、抗体は、参照投与量の80%、70%、60%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%または10%以下である投与量で投与され、参照投与量は、同等のin vivo治療効果を達成するように参照抗体によって決定され、参照抗体は、酸性pHおよび中性pHの両方でPD-L1との同様の結合を示し、参照抗体および抗体は、中性pHでPD-L1との同様の結合を有する。
【0028】
特定の実施形態では、抗体は、参照投与頻度のものより少ない投与頻度で投与され、参照投与頻度は、同等のin vivo治療効果を達成するように参照抗体によって決定され、参照抗体は、酸性pHおよび中性pHの両方でPD-L1との同様の結合を示し、参照抗体および抗体は、中性pHでPD-L1との同様の結合を有する。
【0029】
特定の実施形態では、抗体は、参照in vivo半減期よりも長い、標的臓器におけるin vivo半減期を有し、参照in vivo半減期は、参照抗体によって決定され、参照抗体は、酸性pHおよび中性pHの両方でPD-L1との同様の結合を示し、参照抗体および抗体は、中性pHでPD-L1との同様の結合を有する。特定の実施形態では、標的臓器は、血清、腎臓、肺、膵臓、肝臓、胆嚢、膀胱、皮膚、食道、卵巣、乳房、結腸、直腸、胃、脾臓または脳のうち1種または複数を含む。
【0030】
本開示は、重鎖HCDR1’、HCDR2’およびHCDR3’ならびに軽鎖LCDR1’、LCDR2’およびLCDR3’配列を含む単離されたPD-L1抗体を本明細書においてさらに提供し、
HCDR1’配列は、DYYMN(配列番号23)、配列番号29、35、41およびその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列からなる群から選択され、
HCDR2’配列は、DINPNNGGTSYNX’KFX’G(配列番号24)、配列番号30、36、42またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列からなる群から選択され、
HCDR3’配列は、VKWGDGPFAY(配列番号25)、配列番号31、37、43およびその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列からなる群から選択され、
LCDR1’配列は、X’ASQNVGAAVA(配列番号26)、配列番号32、38、44およびその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列からなる群から選択され、
LCDR2’配列は、SASNX’X’T(配列番号27)、配列番号33、39、45およびその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列からなる群から選択され、
LCDR3’配列は、QQYSNYPT(配列番号28)、配列番号34、40、46およびその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性のある相同体配列からなる群から選択され、
X’は、HまたはQであり、X’は、KまたはQであり、X’は、KまたはQであり、X’は、RまたはLであり、X’は、YまたはEである。
【0031】
特定の実施形態では、X’は、Qであり、X’は、Qであり、X’は、Qであり、X’は、Rであり、X’は、Yである。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、HFR1’、HFR2’、HFR3’およびHFR4’の重鎖フレームワークならびにLFR1’、LFR2’、LFR3’およびLFR4’の軽鎖フレームワーク配列を含み、重鎖可変領域の配列は、式:HFR1’-HCDR1’-HFR2’-HCDR1’-HFR3’-HCDR1’-HFR4’に従い、軽鎖可変領域の配列は、式LFR1’-LCDR1’-LFR2’-LCDR1’-LFR3’-LCDR1’-LFR4’に従う。
【0033】
特定の実施形態では、HFR1’配列は、X’aVQLX’aQSGX’aEX’aX’aKPGASVKX’aSCKASGYVFT(配列番号47)であり、
HFR2’配列は、WVX’aQX’aX’aGX’a10X’a11LEWIG(配列番号48)であり、
HFR3’配列は、X’a12X’a13TVTVDX’a14SX’a15X’a16TAYMELX’a17X’a18LX’a19SX’a20DX’a21AVYYC(配列番号49)であり、
HFR4’配列は、WGQGTLVTVSX’a22(配列番号50)であり、
LFR1’配列は、DIX’a23MTQSX’a24X’a25X’a26X’a27SX’a28SVGDRVX’a29ITC(配列番号51)であり、
LFR2’配列は、WYQQKPGX’a30X’a31PKLLIY(配列番号52)であり、
LFR3’配列は、GVPX’a32RFX’a33GSGSGTDFTLTISX’a34X’a35QX’a36EDX’a37AX’a38YFC(配列番号53)であり、
LFR4’配列は、FGSGTKLGIK(配列番号54)であり、
ここで、X’aは、QまたはEであり、X’aは、QまたはVであり、X’aは、AまたはPであり、X’aは、LまたはVであり、X’aは、VまたはKであり、X’aは、IまたはVであり、X’aは、KまたはRであり、X’aは、SまたはAであり、X’aは、HまたはPであり、X’a10は、QまたはKであり、X’a11は、SまたはGであり、X’a12は、KまたはRであり、X’a13は、AまたはVであり、X’a14は、KまたはTであり、X’a15は、S、TまたはIであり、X’a16は、SまたはRであり、X’a17は、LまたはSであり、X’a18は、SまたはRであり、X’a19は、RまたはTであり、X’a20は、EまたはDであり、X’a21は、SまたはTであり、X’a22は、AまたはSであり、X’a23は、QまたはVであり、X’a24は、QまたはPであり、X’a25は、KまたはSであり、X’a26は、FまたはSであり、X’a27は、MまたはLであり、X’a28は、TまたはAであり、X’a29は、SまたはTであり、X’a30は、QまたはKであり、X’a31は、SまたはAであり、X’a32は、SまたはDであり、X’a33は、SまたはTであり、X’a34は、SまたはNであり、X’a35は、MまたはLであり、X’a36は、SまたはPであり、X’a37は、LまたはIであり、X’a38は、DまたはTである。
【0034】
特定の実施形態では、X’aは、Qであり、X’aは、Vであり、X’aは、Aであり、X’aは、Vであり、X’aは、Vであり、X’aは、Iであり、X’aは、Kであり、X’aは、Aであり、X’aは、Pであり、X’a10は、Qであり、X’a11は、Gであり、X’a12は、Rであり、X’a13は、Aであり、X’a14は、Kであり、X’a15は、Tであり、X’a16は、Rであり、X’a17は、Sであり、X’a18は、Rであり、X’a19は、Rであり、X’a20は、Dであり、X’a21は、Tであり、X’a22は、Sであり、X’a23は、Qであり、X’a24は、Qであり、X’a25は、Sであり、X’a26は、Sであり、X’a27は、Lであり、X’a28は、Aであり、X’a29は、Tであり、X’a30は、Kであり、X’a31は、Aであり、X’a32は、Sであり、X’a33は、Sであり、X’a34は、Sであり、X’a35は、Mであり、X’a36は、Pであり、X’a37は、Iであり、X’a38は、Tである。
【0035】
特定の実施形態では、X’aは、Qであり、X’aは、Vであり、X’aは、Aであり、X’aは、Vであり、X’aは、Kであり、X’aは、Vであり、X’aは、Rであり、X’aは、Aであり、X’aは、Pであり、X’a10は、Qであり、X’a11は、Gであり、X’a12は、Rであり、X’a13は、Vであり、X’a14は、Tであり、X’a15は、Iであり、X’a16は、Rであり、X’a17は、Sであり、X’a18は、Rであり、X’a19は、Rであり、X’a20は、Dであり、X’a21は、Tであり、X’a22は、Sであり、X’a23は、Qであり、X’a24は、Qであり、X’a25は、Sであり、X’a26は、Sであり、X’a27は、Lであり、X’a28は、Aであり、X’a29は、Tであり、X’a30は、Kであり、X’a31は、Aであり、X’a32は、Sであり、X’a33は、Sであり、X’a34は、Sであり、X’a35は、Mであり、X’a36は、Pであり、X’a37は、Iであり、X’a38は、Tである。
【0036】
特定の実施形態では、X’aは、Qであり、X’aは、Vであり、X’aは、Aであり、X’aは、Vであり、X’aは、Vであり、X’aは、Iであり、X’aは、Kであり、X’aは、Aであり、X’aは、Pであり、X’a10は、Qであり、X’a11は、Gであり、X’a12は、Rであり、X’a13は、Aであり、X’a14は、Kであり、X’a15は、Tであり、X’a16は、Rであり、X’a17は、Sであり、X’a18は、Rであり、X’a19は、Rであり、X’a20は、Dであり、X’a21は、Tであり、X’a22は、Sであり、X’a23は、Qであり、X’a24は、Pであり、X’a25は、Sであり、X’a26は、Sであり、X’a27は、Lであり、X’a28は、Aであり、X’a29は、Tであり、X’a30は、Kであり、X’a31は、Aであり、X’a32は、Sであり、X’a33は、Sであり、X’a34は、Sであり、X’a35は、Lであり、X’a36は、Pであり、X’a37は、Iであり、X’a38は、Tである。
【0037】
特定の実施形態では、X’aは、Qであり、X’aは、Vであり、X’aは、Aであり、X’aは、Vであり、X’aは、Kであり、X’aは、Vであり、X’aは、Rであり、X’aは、Aであり、X’aは、Pであり、X’a10は、Qであり、X’a11は、Gであり、X’a12は、Rであり、X’a13は、Vであり、X’a14は、Tであり、X’a15は、Iであり、X’a16は、Rであり、X’a17は、Sであり、X’a18は、Rであり、X’a19は、Rであり、X’a20は、Dであり、X’a21は、Tであり、X’a22は、Sであり、X’a23は、Qであり、X’a24は、Pであり、X’a25は、Sであり、X’a26は、Sであり、X’a27は、Lであり、X’a28は、Aであり、X’a29は、Tであり、X’a30は、Kであり、X’a31は、Aであり、X’a32は、Aであり、X’a33は、Sであり、X’a34は、Sであり、X’a35は、Lであり、X’a36は、Pであり、X’a37は、Iであり、X’a38は、Tである。
【0038】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号65に示される重鎖可変領域および配列番号66に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号67に示される重鎖可変領域および配列番号68に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号65に示される重鎖可変領域および配列番号68に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号67に示される重鎖可変領域および配列番号66に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体は、配列番号85に示される重鎖可変領域および配列番号86に示される軽鎖可変領域を含む。
【0039】
本開示は、配列番号29~46から選択される少なくとも1、2、3、4、5または6つのCDRを含む別の単離されたPD-L1抗体を本明細書においてさらに提供した。特定の実施形態では、1)配列番号29である重鎖HCDR1’、配列番号30であるHCDR2’および配列番号31であるHCDR3’;2)配列番号35である重鎖HCDR1’、配列番号36であるHCDR2’および配列番号37であるHCDR3’;または3)配列番号41である重鎖HCDR1’、配列番号42であるHCDR2’、および配列番号43であるHCDR3’を含む、単離されたPD-L1抗体。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、1)配列番号32である軽鎖LCDR1’、配列番号33であるLCDR2’および配列番号34であるLCDR3’;2)配列番号38である軽鎖LCDR1’、配列番号39であるLCDR2’および配列番号40であるLCDR3’;または3)配列番号44である軽鎖LCDR1’、配列番号45であるLCDR2’および配列番号46であるLCDR3’を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、1)配列番号29である重鎖HCDR1’、配列番号30であるHCDR2’および配列番号31であるHCDR3’、配列番号32である軽鎖LCDR1’、配列番号33であるLCDR2’および配列番号34であるLCDR3’;2)配列番号35である重鎖HCDR1’、配列番号36であるHCDR2’および配列番号37であるHCDR3’、配列番号38である軽鎖LCDR1’、配列番号39であるLCDR2’および配列番号40であるLCDR3’;または3)配列番号41である重鎖HCDR1’、配列番号42であるHCDR2’および配列番号43であるHCDR3’、配列番号44である軽鎖LCDR1’、配列番号45であるLCDR2’および配列番号46であるLCDR3’を含む。
【0040】
特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号55、57および59から選択される重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号56、58および60から選択される軽鎖可変領域を含む。
【0041】
特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号55の重鎖可変領域またはそのヒト化バージョンおよび配列番号56の軽鎖可変領域またはそのヒト化バージョンを含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号57の重鎖可変領域またはそのヒト化バージョンおよび配列番号58の軽鎖可変領域またはそのヒト化バージョンを含む。特定の実施形態では、PD-L1抗体は、配列番号59の重鎖可変領域またはそのヒト化バージョンおよび配列番号60の軽鎖可変領域またはそのヒト化バージョンを含む。
【0042】
本開示はまた、本明細書において提供されるPD-L1抗体と同一のエピトープと結合する、または本明細書において提供されるPD-L1抗体との競合結合を有する別の単離されたPD-L1抗体を提供する。特定の実施形態では、エピトープは、少なくともE58およびS80のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基:Y56、R113、D122、Y123およびR125のうち少なくとも1個(例えば、少なくとも2個、3個または4個)をさらに含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基の組合せ:1)E58、R113、D122、Y123およびR125;2)Y56、E58およびR113;3)E58、R113およびR125のうち1種を含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基:S80およびD122のうち少なくとも1種(または少なくとも2種)をさらに含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基の組合せ:1)E58、S80、R113、D122、Y123およびR125;2)E58、S80、R113およびR125のうち1種を含む。
【0043】
本開示はまた、示差走査熱量測定によって測定される、摂氏76℃超(例えば、80℃超、85℃超または90℃超)の熱転移中点(Tm)を有する、単離されたPD-L1抗体を本明細書において提供した。特定の実施形態では、本明細書における抗体は、二重特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、標識化抗体、二価抗体または抗イディオタイプ抗体である。特定の実施形態では、抗体は、ラクダ化単一ドメイン抗体、ダイアボディ、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)、dsダイアボディ、ナノボディ、ドメイン抗体、単離されたCDRおよび二価ドメイン抗体からなる群から選択される抗原結合断片である。
【0044】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体(4B6、26F5、21F11、23A11、23F11および22C9など)は、ヒトおよび非ヒト霊長類PD-L1と結合するが、マウスPD-L1と結合しない。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体(18G4など)は、ヒトおよびマウスPD-L1の両方と結合する。
【0045】
本開示はまた、本明細書において提供される抗体を含む医薬組成物に関する。
【0046】
本開示はまた、本明細書において提供される抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。ポリヌクレオチドを含むベクターが本明細書において提供される。ベクターを含む単離された宿主細胞も、本明細書において提供される。特定の実施形態では、宿主細胞は、ポリヌクレオチドによってコードされる抗体を産生する。
【0047】
本開示はまた、本明細書において提供される抗体を含むキットに関する。
【0048】
本開示はまた、本明細書において提供される抗体を産生する方法であって、宿主細胞をポリヌクレオチドが発現する条件下で培養することを含む方法に関する。
【0049】
本開示はまた、それを必要とする対象においてPD-L1関連状態を処置する方法であって、対象に、本明細書において提供される抗体の治療有効量を投与することを含む方法に関する。特定の実施形態では、第2の治療剤は、放射線療法、化学療法、標的化療法、遺伝子療法、免疫療法、ホルモン療法、血管新生阻害、緩和ケア、手術またはそれらの組合せにおいて使用される薬剤である。特定の実施形態では、第2の治療剤は、VEGFR2抗体である。
【0050】
本明細書において提供されるPD-L1抗体および第2の治療剤を含む医薬組成物も、本開示において提供される。
【0051】
それを必要とする対象においてPD-L1関連状態を処置する方法であって、対象へ、医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法が、本開示においてさらに提供される。
【0052】
本開示はまた、ヒトPD-L1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む単離された非ヒト腫瘍細胞を提供した。特定の実施形態では、非ヒト腫瘍細胞は、げっ歯類(例えば、マウス、ラットまたはハムスターなど)腫瘍細胞である。
【0053】
本明細書においてまた、ヒトPD-L1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む非ヒト腫瘍細胞を産生する方法であって、ヒトPD-L1をコードするポリヌクレオチドを導入することを含む方法も提供される。特定の実施形態では、方法は、内因性非ヒトPD-L1遺伝子を不活性化することをさらに含む。特定の実施形態では、不活性化は、タンパク質コーディング領域の遺伝子破壊、変異、付加、遺伝子サイレンシングまたは遺伝子欠失を含み、それによって、標的遺伝子の発現を排除または最小化するか、または機能的に不活性な/末端切断型タンパク質を生成する。特定の実施形態では、ヒトPD-L1遺伝子セグメントは、内因性非ヒトPD-L1遺伝子座中に作動可能に挿入される。特定の実施形態では、ヒトPD-L1遺伝子セグメントは、内因性非ヒトPD-L1遺伝子座以外の部位に挿入される。特定の実施形態では、ヒトPD-L1遺伝子セグメントは、エピソームDNAセグメントの形態である。
【0054】
ヒトPD-L1に対する抗体のin vivo有効性をスクリーニングまたは評価する方法であって、ヒトPD-L1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む非ヒト腫瘍細胞を非ヒト動物に接種することと、非ヒト動物において抗体を非ヒト腫瘍細胞と接触させることと、非ヒト腫瘍細胞の腫瘍量を決定することとを含む方法。腫瘍細胞は、固形腫瘍細胞または非固形腫瘍細胞であり得る。特定の実施形態では、非ヒト細胞は、同質遺伝子的腫瘍モデルを作製するために同質遺伝子的非ヒト動物に接種される。特定の実施形態では、非ヒト動物は、げっ歯類(例えば、マウス、ラットまたはハムスターなど)である。
【0055】
一態様では、本開示は、以下のPD-L1のアミノ酸残基の組合せ:1)E58およびS80;2)E58およびR113;3)E58およびD122;4)E58およびR125のうち1種を含むエピトープと結合する、またはそれとの競合結合を有する、単離されたPD-L1抗体を本明細書において提供する。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基:Y56およびY123のうち少なくとも1種をさらに含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基の組合せ:1)E58、R113、M115、Y123およびK124;2)E58、S80、R113およびR125;3)E58、R113、D122、Y123およびR125;4)Y56、E58およびR113、5)E58、R113およびR125のうち1種を含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基:K62、N63、I64およびY81のうち少なくとも1種をさらに含む。特定の実施形態では、エピトープは、以下のPD-L1のアミノ酸残基の組合せ:1)E58、N63、I64、S80、Y81、R113およびR125;2)E58、S80、R113、M115、D122、Y123、K124およびR125;3)E58、K62、N63、S80、Y81、R113およびR125;4)E58、N63、I64、S80、Y81、R113、K124およびR125;5)E58、S80、R113、D122、Y123およびR125のうち1種を含む。
【0056】
一態様では、PD-L1のアミノ酸残基S80からなるエピトープと結合する、またはそれとの競合結合を有する、単離されたPD-L1抗体も本明細書において提供される。
【0057】
一態様では、本開示は、少なくとも7日(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35または40日)の持続したPD-L1受容体占有期間を有する、単離されたPD-L1抗体を提供する。
【0058】
ELISAによって測定される約0.03μg/mlの(例えば、ELISAによって測定される0.001μg/ml~1μg/ml(例えば、0.001μg/ml~0.5μg/ml、0.001μg/ml~0.2μg/ml、0.001μg/ml~0.1μg/ml、0.01μg/ml~0.2μg/ml、0.01μg/ml~0.1μg/ml、0.01μg/ml~0.05μg/ml、0.01μg/ml~0.03μg/mlまたは0.001μg/ml~0.01μg/mlの)EC50値、またはFACSによって測定される0.01μg/ml~1μg/ml(例えば、0.01μg/ml~0.5μg/ml、0.01μg/ml~0.2μg/ml、0.02μg/ml~1μg/ml、0.02μg/ml~0.5μg/ml、0.02μg/ml~0.2μg/mlまたは0.02μg/ml~0.1μg/ml)のEC50を有する、活性化されたヒトT細胞と結合する、単離されたPD-L1抗体。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1Aは、ELISA解析によって測定される、hPD-L1-Fcの、プレート上にコーティングされたhPD-1-hisとの結合を遮断する、ハイブリドーマ上清中のマウス抗PD-L1抗体の能力を提示する棒グラフである。図1Bは、hPD-L1-Fcの、プレート上にコーティングされたhPD-1-hisとの結合を遮断する、ハイブリドーマ上清中のマウス抗PD-L1抗体の能力を提示する棒グラフである。図1Cはまた、hPD-L1-Fcの、プレート上にコーティングされたhPD-1-hisとの結合を遮断する、ハイブリドーマ上清中のマウス抗PD-L1抗体の能力を提示する棒グラフである。
図2図2Aは、ハイブリドーマ上清中のマウス抗PD-L1抗体23A11の、hPD-L1-hisとのpH依存性結合を示す図示であり、ELISA解析によって測定されるようにpH7.4でより高い結合を有し(三角)、pH6.0でより低い結合を有する(菱形)。図2Bは、ハイブリドーマ上清中のマウス抗体クローン23F11の、hPD-L1とのpH依存性結合を示し、ELISA解析によって測定されるようにpH7.4でより高い結合を有し(三角)、pH6.0でより低い結合を有する(菱形)。
図3図3は、ELISA解析によって測定される、段階希釈した精製マウスモノクローナルPD-L1抗体(21F11(×)、23F11(菱形)、26F5(中白丸)、22C9(中白三角)、4B6(中黒四角)、23A11(中黒三角))の種々のクローンの、hPD-L1との結合を示す図である。
図4図4Aは、ELISAによって測定される、hPD-1-FcのhPD-1-N297A-ビオチンとの結合の遮断における、段階希釈した精製マウスモノクローナルPD-L1抗体(23A11(淡い灰色の中黒四角)、23F11(中黒三角)、4B6(中黒丸)、22C9(中黒菱形)、26F5(濃い中黒四角)、21F11(逆三角)およびBM-GT(中白丸))の活性を示す図である。図4Bは、FACS解析によって測定される、hPD-1-Fc N297Aの、HCC827上で発現されたhPD-L1との結合の遮断における、10μg/mlのPD-L1抗体の活性を示す図である。
図5図5Aは、マウス精製PD-L1抗体の、HCC827上で発現されたhPD-L1との用量依存性結合を示す図である。図5Bは、hPD-1-N297Aの、HCC827上で発現されたhPD-L1との結合の遮断における、マウス精製PD-L1抗体の用量依存性結合を示す図である。21F11(丸)、23A11(三角)、23F11(逆三角)、22C9(菱形)および4B6(大きな丸)。
図6-1】[図6Aおよび図6B図6A(4B6-C)、図6B(23A11)、図6C(23F11)、図6D(22C9)および図6E(21F11)は、ELISAによって測定されるように、マウスおよび/またはキメラPD-L1抗体は、ヒトおよびカニクイザルPD-L1-hisと同様に結合する一方、ヒトおよびカニクイザルPD-L1と特異的に結合するものは、18G4がヒトおよびマウスPD-L1と結合することを除いて(図6F)、マウスPD-L1-hisと結合しないことを示す図である。
図6-2】[図6Cおよび図6D]同上。
図6-3】図6Gは、ELISAによって測定されるように、すべての抗体が、hPD-L1と結合できるが、hPD-L2と結合できないことを示す図である。
図7図7は、FACSによって測定される、キメラおよび/またはヒト化PD-L1抗体の、HCC827上で発現されたhPD-L1との結合を例示する図である。
図8図8は、FACSによって測定される、PD-1の、HCC827上で発現されたhPD-L1との結合の遮断における、キメラおよび/またはヒト化PD-L1抗体の活性を示す図である。
図9図9A(18G4)、図9B(4B6)および図9C(23A11)は、それぞれ、競合ELISAによって測定される、競合抗体4B6、23A11、23F11、22C9および21F11の存在下での、PD-L1抗体のhPD-L1-Fcとのエピトープ結合の結果を示す棒グラフである。
図10図10A(23F11-C)、図10B(23A11-C)、図10C(22C9-C)、図10D(21F11-C)、図10E(4B6-C)および図10F(26F5-C)は、それぞれ、ELISA解析によって測定される、pH7.4およびpH5.5での、キメラPD-L1抗体のhPD-L1-hisとのpH依存性結合を示すグラフである。
図11図11Aは、腫瘍の成長の阻害における、精製マウス抗PD-L1抗体(4B6(中黒菱形)、23A11(中白逆三角)、23F11(中黒縞模様の菱形)および26F5(中白菱形))および媒体(中黒丸)のin vivo抗腫瘍活性を示す、MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおいて経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示す。図11Bは、同一抗体の29日目での平均化された腫瘍体積を示す。図11Cは、同一抗体の経時的に測定された平均化された体重を示す。マウス(各群についてn=8)に、10mg/kg(すなわち、mpk)の抗体を3回/週で3週間IP注射し、その結果が、平均±S.E.M.として表されている。
図12-1】図12Aは、腫瘍の成長の阻害における、精製マウス/キメラPD-L1抗体(4B6-C(淡い灰色の中黒三角)、23F11(濃い中黒の逆三角))およびBM-GTのベンチマーク抗体(中白丸)およびBM-ME(中白四角)または対照PBS(中黒丸)を注射された、MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおいて、経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示す図であり、これは、抗体のin vivo抗腫瘍活性を示す。図12Bは、それぞれ、1mpk(mg/kg)の前記抗体を3回/週で3週間IP注射されたマウス(各群についてn=8)の、20日目の平均化された腫瘍体積を示す。
図12-2】図12Cは、経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示す。図12Dは、1mpk(淡い灰色の中黒逆三角)または3mpk(中黒菱形)マウス抗体18G4をIV注射されたマウス(各群についてn=8)の、25日目の平均化された腫瘍体積を示す。
図12-3】図12Eは、経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示す。図12Fは、それぞれ、1mpk(中白丸)または3mpk(中白四角)マウス22C9をIV注射されたマウス(各群についてn=8)の、25日目の平均化された腫瘍体積を示す。結果は、平均±S.E.M.として表されている。
図13図13Aは、MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおいて経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示し、これは、腫瘍の成長の阻害における、精製pH依存性キメラPD-L1抗体(中白丸での23A11-C、中白三角での23F11-C)のin vivo抗腫瘍活性を示す。図13Bは、29日目での平均化された腫瘍体積を示す。マウス(各群についてn=8)は、1mpk抗体を3回/週で3週間 IP注射され、結果は、平均±S.E.Mとして表され、Pは、<0.05である。媒体は、中黒丸で表されており、ベンチマークGTは、中黒逆三角である。
図14図14Aは、4B6の生殖系列およびヒト化重鎖可変領域のアミノ酸配列(4B6-生殖系列、4B6-Hzd-HC-V3および4B6-HC-V4)を示す。図14Bは、4B6の生殖系列およびヒト化軽鎖可変領域のアミノ酸配列(4B6LC生殖系列、4B6-Hzd-LC-V3および4B6-LC-V4)を示す。
図15図15Aは、23A11抗体の生殖系列およびヒト化重鎖可変領域のアミノ酸配列(23A11-HC-生殖系列、23A11-HC-V3および23A11-HC-V5)を示す。図15Bは、23A11抗体の生殖系列およびヒト化軽鎖可変領域のアミノ酸配列(23A11-LC-生殖系列、23A11-LC-V3および23A11-LC-V5)を示す。
図16図16Aは、23F11抗体の生殖系列およびヒト化重鎖可変領域のアミノ酸配列(23F11生殖系列HC、23F11-HC-V4および23F11-HC-V6)を示す。図16Bは、23F11抗体の生殖系列およびヒト化軽鎖可変領域のアミノ酸配列(23F11生殖系列LC、23F11-LC-V4および23F11-LC-V6)を示す。
図17図17Aは、23F11抗体(H4L4、H4L6、H6L4、H6L6およびキメラ)の結合を示す棒グラフである。図17Bは、ELISAによって測定される、ヒト化23A11抗体(H3L3、H3L5、H5L3およびH5L5)の、hPD-L1-hisとの結合を示す図である。
図18-1】[図18Aおよび図18B図18A図18Dは、ELISAによって測定される、hPD-L1-FcのhPD-1-N297Aとの結合の遮断における、ヒト化PD-L1抗体の活性を示す棒グラフである。ヒト化4B6(H3L3、H3L4、H4L3およびH4L4、図18A)、23F11(H4L4、H4L6、H6L4、H6L6およびキメラ(C)、図18B)、ヒト化23A11(H3L3、H3L5、H5L3およびH5L5、図18C)およびヒト化23A11(H3L3およびH3L5)およびヒト化23F11(H4L4)ならびにベンチマーク抗体(BM-GTおよびBM-ME、図18Dを参照のこと)の結果が、それぞれ示された。
図18-2】[図18Cおよび図18D]同上。
図19図19は、FACSによって測定される、ヒト化PD-L1抗体(BM-GT、BM-ME、4B6-H3L4、4B6-H4L3、23F11-H4L4、23F11-H4L6、23F11-H6L4、23F11-H6L6、23A11-H3L3、23A11-H3L5、23A11-H5L3および23A11-H5L5)の、HCC827上で発現されたhPD-L1との結合を示す図である。
図20図20Aは、FACSによって測定される、hPD-1-N297Aの、HCC827上で発現されたhPD-L1との結合の遮断における、ヒト化4B6(H3L4およびH4L3)ならびにベンチマーク抗体(BM-GTおよびBM-ME)の活性を示す棒グラフである。図20Bは、FACSによって測定される、hPD-1-N297Aの、HCC827上で発現されたhPD-L1の結合に対する、ヒト化23A11 H3L5(それぞれ、CHOおよび293において産生された)、ヒト化23F11 H4L4(それぞれ、CHOおよび293において産生された)ならびにベンチマーク抗体(BM-GTおよびBM-ME)の遮断活性を示す図である。
図21-1】図21Aは、混合リンパ球反応物(MLR)中においてヒト化4B6-H3L3抗体、hIgG1、BM-GTおよびBM-MEによって刺激された、活性化されたドナー5のCD4T細胞において産生されたIL-2を例示する棒グラフである。図21Bは、同一の試験における、ヒト化4B6-H3L3抗体、hIgG1、BM-GTおよびBM-MEによって刺激された、活性化されたドナー5のCD4T細胞において産生されたIFN-γを示す。
図21-2】図21Cは、同一の試験におけるヒト化 23A11-H3L3、23A11-H3L5、23F11-H4L4および23F11-H6L4、hIgG1、BM-GTおよびBM-MEによって刺激された、活性化されたドナー6のCD4T細胞において産生されたIL-2を示す。図21Dは、同一の試験における、23A11-H3L3、23A11-H3L5、23F11-H4L4および23F11-H6L4のヒト化抗体、hIgG1、BM-GTおよびBM-MEによって刺激された活性化されたドナー6のCD4T細胞において産生されたIFN-γを示す。
図22図22Aおよび22Cは、ELISA解析によって測定された、pH7.4(三角)およびpH5.5(菱形)それぞれでの、CHO細胞および293細胞において産生されたヒト化23A11-H3L5の、ELISA解析によって測定された、hPD-L1-hisとのpH依存性結合を示す図である。図22Bおよび22Dは、pH7.4(三角)およびpH5.5(菱形)それぞれでの、ヒト化23F11-H4L4の、hPD-L1-hisとの同一物を示す図である。図22Eは、ELISA解析によって測定された、pH7.4(三角)およびpH5.5(菱形)それぞれでの、ベンチマーク抗体BM-GTの、hPD-L1-hisとの同一試験を示す図である。
図23-1】図23Aは、ELISA解析によって測定された、中性pH(すなわち、7.4)および酸性pH(すなわち、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0)での、23A11-H3L5の、hPD-L1-hisとのpH依存性結合を示す。図23Bは、pH7.4のものに対して正規化されたシグナルのパーセンテージによって表された同一結果を示す。
図23-2】図23Cは、ELISA解析によって測定された、中性pH(すなわち、7.4)および酸性pH(すなわち、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0)での、23F11-H4L4の、hPD-L1-hisとのpH依存性結合を示す。図23Dは、pH7.4のものに対して正規化されたシグナルのパーセンテージによって表された同一結果を示す。図23Eは、ELISA解析によって測定された、中性pH(すなわち、7.4)および酸性pH(すなわち、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0)での、22C9-Cの、hPD-L1-hisとのpH依存性結合を示す。
図23-3】図23Fは、pH7.4のものに対して正規化されたシグナルのパーセンテージによって表された同一結果を示す。図23のすべての図において、pH7.4(灰色丸)、pH6.0(濃い丸)、pH5.5(濃い四角)、pH5.0(灰色逆三角形)、pH4.5(灰色菱形)、pH4.0(灰色三角)。
図24-1】[図24A図24Bおよび図24C図24A図24Iは、ELISAによって測定される、PD-L1抗体(23F11(図24A)、23A11(図24B)、26F5(図24C)、18G4(図24D)、4B6(図24E)、21F11(図24F)、22C9(図24G)、23F11-H4L4(図24H)および23A11-H3L5(図24I))の、アラニン変異体hPD-L1-Fcs(実施例18において作製した)との結合を示す棒グラフである。
図24-2】[図24D図24Eおよび図24F]同上。
図24-3】[図24G図24Hおよび図24I]同上。
図25図25は、経時的な平均化された腫瘍体積によって示される、MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおける腫瘍の成長の阻害における、ヒト化PD-L1抗体(中黒丸で媒体、中白四角でBT-GMおよび中白丸で4B6-H3L3-N297A)のin vivo抗腫瘍活性を示す図である。マウス(各群についてn=8)に、3mpk抗体を3回/週で3週間IP注射し、その結果が、平均±S.E.Mとして表されている。
図26-1】図26Aは、媒体(中黒丸)、BM-ME(中白四角)、BM-GT(中白菱形)、23A11-H3L5(中白三角)および23F11-H4L4(中白逆三角形)を投与された、MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおいて経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示し、これは、腫瘍の成長の阻害におけるヒト化PD-L1抗体のin vivo抗腫瘍活性を示している。図26Bは、1mpkの抗体を注射されたマウスを用いる28日目の平均化された腫瘍体積を示す。
図26-2】図26Cは、図26Aと同一の試験を示すが、それぞれ、10mpkの抗体を用いた試験を示す。図26Dは、図26Bと同一の試験を示すが、それぞれ、10mpk抗体を用いた試験を示す。
図26-3】図26Eは、種々の抗体および投与量を用いて注射されたマウスにおける腫瘍体積(中黒丸で媒体、中黒菱形で1mpkを用いるBM-GT、中黒逆三角形で3mpkを用いるBM-GT、中黒四角で10mpkを用いるBM-GTおよび中白丸で1mpkを用いる23F11-H4L4)を比較する。マウス(各群についてn=8)に3回/週で3週間IP注射し、その結果が、平均±S.E.M.として表されている。
図27図27Aは、MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおいて経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示し、腫瘍の成長の阻害における抗体(中白丸で媒体、中白三角でBM-GT、中白丸で23A11-H3L5および点付き中白丸で23F11-H4L4)のin vivo抗腫瘍活性を示す。図27Bは、抗体(中黒丸で媒体、中黒三角でBM-GT、中黒逆三角形で23A11-H3L5および中白丸で23F11-H4L4)を用いて投薬されたマウスを用いた、26日目の平均化された腫瘍体積を示す。マウス(各群についてn=12)に、1mpk抗体を0日目および15日目にをIV注射し、その結果が、平均±S.E.M.として表されている。
図28図28A図28Dは、1mg/kgのPD-L1抗体(媒体(図28A)、BM-GT(図28B)、23A11-H3L5(図28C)および23F11-H4L4(図28D)のIV注射を用いて処置された出発点に対して正規化されたマウスにおける、腫瘍の大きさの変化を示す滝グラフである。
図29図29Aは、PD-L1抗体(中黒丸で媒体、中白四角でBM-GT 1mpk、中黒四角でBM-GT 10mpk、中黒菱形で23F11-H4L4 1mpk、中黒逆三角形で23F11-H4L4 10mpk、中白丸で23A11-H3L5 1mpk、中黒三角で23A11-H3L5 10mpk)の種々の投与量を用いて投薬するMC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルIVにおける、腫瘍の成長の阻害における、経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示す図であり、in vivo 抗腫瘍活性を示している。図29Bは、種々の抗体(中黒丸で媒体、濃い中白四角でBM-GT 1mpk、淡い中白四角でBM-GT 10mpk、淡い中白円で23A11-H3L5 1mpk、濃い中白三角で23A11-H3L5 10mpk、濃い中白丸で23F11-H4L4 1mpkおよび濃い中白逆三角で23F11-H4L4 10mpk)を用いて投薬されたマウスを用いる、15日目の平均化された腫瘍体積を示す。マウス(各群についてn=12)に、0日目に抗体をIV注射し、結果が、平均±S.E.M.として表されている。
図30図30は、35日目に腫瘍細胞で再負荷されたMC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおける、ヒト化 PD-L1抗体23A11-H3L5(三角で)および23F11-H4L4(丸で)のin vivo抗腫瘍活性を示す図である。
図31-1】図31Aは、静脈内の1mg/kgでの投薬後の種々の時点での、MC38/hPD-L1腫瘍細胞中に浸透する、標識されたpH依存性PD-L1抗体23F11-H4L4およびBM-GTの放射シグナルの例示的画像を示す。図31Bは、各マウスにおいて(BM-GTについて、2-1(灰色逆三角)、2-2(中黒灰色菱形)、2-3(中白灰色丸)および23F11-H4L4について、4-1(中白濃い菱形)、4-2(中黒濃い菱形)、4-3(濃い星))数時間にわたって測定された放射/腫瘍体積の比を示す。
図31-2】図31Cは、BM-GT(四角で)または23F11-H4L4(逆三角で)を用いて投薬された各マウスにおいて数日にわたって測定された腫瘍体積を示し、線は、平均化された値を表す。
図32-1】図32Aは、それぞれ、媒体(中黒丸)、DC101単独(中白四角で抗VEGFR2抗体)、23A11-C単独(中白逆三角)ならびに23A11-CおよびDC101の組合せ(中白丸)を用いて投薬されたhPD-L1/MC38腫瘍モデルのマウスにおいて、経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示し、組合せのin vivo抗腫瘍活性を示している。図32Bは、それぞれ、媒体(中黒丸)、DC101単独(中黒四角で抗VEGFR2抗体)、23A11-C単独(中黒逆三角)ならびに23A11-CおよびDC101の組合せ(中黒菱形)を用いて注射したマウスを用いる、29日目での平均化された腫瘍体積を示す。図32Cは、それぞれ、媒体(中黒丸)、DC101単独(中黒四角で抗VEGFR2抗体)、23A11-C単独(中黒逆三角)ならびに23A11-CおよびDC101の組合せ(中黒菱形)を用いて投薬した、同一試験において経時的に測定された平均化されたマウス体重を示し、マウス(各群についてn=8)に、23A11-Cの0.3mpkおよび/またはDC101の20mpkを週に3回、3週間IV注射した。
図32-2】図32Dは、それぞれ、10mpkの対照IgG(中黒丸)、1mpk DC101単独(中黒四角)、1mpk 23A11-H3L5単独(中黒菱形)ならびに1mpk 23A11-H3L5および1mpkのDC101(中黒三角)の組合せを用いて投薬されたマウスを用いて、経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示す。図32Eは、それぞれ、10mpk対照IgG(中黒丸)、3mpk DC101単独(中黒三角)、3mpk 23A11-H3L5単独(中白丸)ならびに3mpk 23A11- H3L5および3mpk DC101の組合せ(中白逆三角)を用いて投薬されたマウスを用いて、経時的に測定された平均化された腫瘍体積を示す。マウス(各群についてn=8)に、抗体を、週に1回、2~3週間IV注射した。結果は、平均±S.E.M.として表されている。
図33図33Aおよび図33Bは、それぞれ示差走査熱量測定(DSC)によって測定された、23F11-H4L4の熱転移中点(Tm)を例示するグラフおよび23A11-H3L5の熱転移中点(Tm)を示す。
図34-1】図34は、本開示において記載された配列のリストを示す。
図34-2】[リストのつづき]同上。
図34-3】[リストのつづき]同上。
図34-4】[リストのつづき]同上。
図34-5】[リストのつづき]同上。
図35図35は、23F11-H4L4のMC38/hPD-L1細胞への内部移行のグラフを示す。Y軸は、Varioskan Flashによって測定される、種々の抗体濃度での細胞における23F11-H4L4の蛍光シグナルを示す。小さい灰色の丸は、24時間後に試験された23F11-H4L4を表し、大きな黒丸は、6時間後に試験された23F11-H4L4を表す。
図36図36Aおよび36Bは、23F11-H4L4の、活性化されたヒトT細胞との結合を例示する。図36Aは、23F11-H4L4の、CD3およびCD28陽性単球との結合を示すが、CD3およびCD28陰性単球では、極めてわずかな結合しか検出されなかった。
図37図37A~37Cは、MC38/hPD-L1細胞を有するhPD-1ノックインマウスモデルにおけるPD-L1抗体のin vivo有効性研究を例示する。図37Aは、それぞれ、PBSおよび23F11-H4L4を用いて投与された、ヒトPD-1ノックインC57BL/6マウスにおける経時的な腫瘍体積を示す。図37Bは、それぞれ、PBSまたは3mg/kg PD-L1抗体のIV注射を用いて処置された出発点に対して正規化された個々のマウスにおける腫瘍の大きさの変化を示す。図37Cは、それぞれ、PBS(中黒丸)および23F11-H4L4(中黒四角)を用いて投薬された同一試験において測定された、経時的な平均化されたマウス体重を示す。
図38-1】図38A~38Cは、MC38/hPD-L1細胞を有するhPD-1ノックインマウスモデルにおける PD-L1 抗体のin vivo有効性研究を例示する。図38Aおよび38Bは、それぞれ、23F11-H4L4(1mg/kg、3mg/kgおよび10mg/kg)、対照hIgG(AB160160、10mg/kg)およびBM-GT(10mg/kg)を用いて投与されたヒトPD-1ノックインC57BL/6マウスにおける経時的な腫瘍体積を示す。
図38-2】図37Cは、それぞれ、PD-L1抗体、対照hIgGまたはBM-GTのIP注射を用いて処置された出発点に対して正規化された個々のマウスにおける腫瘍の大きさの変化を示す。
図39図39は、MC38/hPD-L1腫瘍を有するマウスにおけるIV投与の2、7および14日後に測定された23F11-H4L4およびBM-GTのPD-L1受容体占有を示す。
図40図40は、10mpkでの投薬後7日目での凍結MC38/hPD-L1 CDx腫瘍切片での23F11-H4L4浸透およびTILの代表的な像を示す。図A:Alexa Fluor 488ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(緑色)で染色された23F11-H4L4;図B:Alexa Fluor(登録商標)594抗マウスCD8b.2(赤色)を用いて染色されたTIL;図C:Alexa Fluor(登録商標)594抗マウスCD31(赤色)を用いて染色された血管;図D:陰性対照。DAPI(青色)を用いて染色された核。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本開示の以下の説明は、単に、本開示の種々の実施形態を例示するよう意図されるものである。そのようなものとして、論じられる特定の改変は、本開示の範囲に対する制限と解釈されてはならない。当業者には明らかであろうが、種々の等価物、変更および改変は、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができ、また、このような等価な実施形態は、本明細書に含まれるべきであるということは理解される。刊行物、特許および特許出願を含む本明細書に引用されるすべての参考文献は、参照によりその全文で本明細書に組み込まれる。
【0061】
定義
本明細書において、「PD-L1」(B7-H1/CD274としても知られる)とは、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、例えば、Freeman et al. (2000) J. Exp. Med. 192:1027を参照のこと)を指す。胎盤、脾臓、リンパ節、胸腺、心臓、胎児肝臓において発現され、多数の腫瘍または癌細胞においてもみられる。「PD-L2」とは、プログラム細胞死リガンド2(PD-L2、例えば、Latchman et al. (2001) Nat. Immunol. 2:261を参照のこと)を指す。「PD-1」(CD279としても知られる)とは、プログラム細胞死1、CD28ファミリーのメンバーを指し、PDCD1遺伝子によってコードされ、T細胞の表面で発現され、T細胞の活性化および増殖を生理学的に制限するように機能する阻害性受容体である。ヒトPD-1の代表的なアミノ酸配列は、NCBI受託番号:NP_005009.2の下で開示されており、ヒトPD-1をコードする代表的な核酸配列は、NCBI受託番号:NM_005018.2の下で示されている。「PD-1リガンド」は、PD-L1およびPD-L2のいずれかまたは両方ならびに細胞によって天然に発現される任意のバリアントまたはアイソフォームおよび/または全長ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を有するその断片を含む。ヒトPD-L1の配列は、NCBI受託番号:NP_054862.1(代表的なアミノ酸配列)およびNCBI受託番号:NM_014143.3(代表的な核酸配列)の下で開示されている。
【0062】
本明細書において、用語「抗体」は、特異的抗原と結合する、任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体または二重特異性(二価)抗体、またはそれらの機能的部分を含む。天然の無傷の抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含む。各重鎖は、可変領域(VH)ならびに第1、第2および第3の定常領域(それぞれ、CH1、CH2およびCH3)からなり、各軽鎖は、可変領域(VL)および定常領域(CL)からなる。哺乳動物重鎖は、α、δ、ε、γおよびμとして分類され、哺乳動物軽鎖は、λまたはκとして分類される。軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合に関与している。両鎖中の可変領域は、一般に、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の3つの領域にさらに分割される(LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖(L)CDR、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重鎖(H)CDR)。本明細書において開示される抗体および抗原結合断片のCDR境界は、Kabat、ChothiaまたはAl-Lazikaniの慣習によって定義または同定され得る(Al-Lazikani, B., Chothia, C., Lesk, A. M., J. Mol. Biol., 273(4), 927 (1997); Chothia, C. et al., J Mol Biol. Dec 5;186(3):651-63 (1985);Chothia, C. and Lesk, A.M., J.Mol.Biol., 196,901 (1987); Chothia, C. et al., Nature. Dec 21-28;342(6252):877-83 (1989);Kabat E.A. et al., National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。3つのCDRが、CDRよりも高度に保存されており、スキャフォールドを形成して超可変ループを支持するフレームワーク領域(FR)として知られるそれぞれの両端に位置するストレッチの間に挿入される。したがって、各VHおよびVLは、以下の順序(アミノ酸残基N末端からC末端):FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、3つのCDRおよび4つのFRからなる。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与していないが、種々のエフェクター機能を示す。抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいて5つの主要なクラスに割り当てられる:それぞれ、α、δ、ε、γおよびμ重鎖の存在によって特徴付けられる、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM。主要な抗体クラスのいくつかのサブクラスとして、IgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖)またはIgA2(α2重鎖)などがある。
【0063】
本明細書において、用語「抗原結合断片」とは、1つまたは複数のCDRを含む抗体の断片から形成される抗体断片、または抗原と結合するが、無傷の天然抗体構造を含まない任意のその他の抗体部分を指す。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、抗原結合断片である。抗原結合断片の例として、限定するものではないが、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、単離されたCDRおよび二価ドメイン抗体が挙げられる。抗原結合断片は、親抗体が結合する同一抗原と結合可能である。特定の実施形態では、抗原結合断片は、特定のヒト抗体に由来する1つまたは複数のCDRを含み得る。
【0064】
抗体に関して「Fab」とは、ジスルフィド結合によって単一重鎖の可変領域および第1の定常領域に結合された、単一軽鎖(可変および定常領域の両方)からなる抗体の一価の抗原結合断片を指す。Fabは、ヒンジ領域の重鎖の間のジスルフィド結合のN末端の近位の残基での、抗体のパパイン消化によって得ることができる。
【0065】
「Fab’」とは、ヒンジ領域の重鎖の間のジスルフィド結合のC末端の近位の残基での、抗体のペプシン消化によって得ることができ、したがって、Fabとは、ヒンジ領域中の少数の残基(1つまたは複数のシステインを含む)で異なっている、ヒンジ領域の一部を含むFab断片を指す。
【0066】
「F(ab’)」とは、2つの軽鎖および2つの重鎖の部分を含むFab’の二量体を指す。
【0067】
抗体に関して「Fc」とは、ジスルフィド結合によって、第2の重鎖の第2および第3の定常領域と結合している、第1の重鎖の第2および第3の定常領域からなる抗体の一部を指す。IgGおよびIgM Fc領域は、3つの重鎖定常領域(各鎖中の第2、第3および第4の重鎖定常領域)を含有する。抗体のパパイン消化によって得ることができる。抗体のFc部分は、ADCCおよびCDCなどの種々のエフェクター機能に関与しているが、抗原結合においては機能しない。
【0068】
抗体に関して「Fv」とは、完全抗原結合部位を保持するための抗体の最も小さい断片を指す。Fv断片は、単一重鎖の可変領域と結合している単一軽鎖の可変領域からなる。「dsFv」とは、単一軽鎖の可変領域および単一重鎖の可変領域の間の連結がジスルフィド結合である、ジスルフィドによって安定化されたFv断片を指す。
【0069】
「一本鎖Fv抗体」または「scFv」とは、直接的にまたはペプチドリンカー配列を介して互いに接続された軽鎖可変領域および重鎖可変領域からなる工学的に操作された抗体を指す(Huston JS et al. Proc Natl Acad Sci USA, 85:5879(1988))。「scFv二量体」とは、2つの重鎖可変領域および2つの軽鎖可変領域をリンカーとともに含む一本鎖を指す。特定の実施形態では、「scFv二量体」は、一方の部分のVが、もう一方の部分のVと協調して、同一抗原(またはエピトープ)または異なる抗原(またはエピトープ)を標的とし得る2つの結合部位を形成するように、別のV-V部分と二量体化されたV-Vを含む(ペプチドリンカーによって連結された)二価ダイアボディまたは二価ScFv(BsFv)である。その他の実施形態では、「scFv二量体」は、VH1およびVL1が協調し、VH2およびVL2と協調して、各協調された対が、異なる抗原特異性を有するような、VL1-VH2(同様に、ペプチドリンカーによって連結された)と会合しているVH1-VL2(ペプチドリンカーによって連結された)を含む二重特異性ダイアボディである。
【0070】
「一本鎖Fv-Fc抗体」または「scFv-Fc」とは、抗体のFc領域に接続されたscFvからなる工学的に操作された抗体を指す。
【0071】
「ラクダ化単一ドメイン抗体」、「重鎖抗体」、「ナノボディ」または「HCAb」とは、2つのVドメインを含有し、軽鎖を含有しない抗体を指す(Riechmann L. and Muyldermans S., J Immunol Methods. Dec 10;231(1-2):25-38 (1999); Muyldermans S., J Biotechnol. Jun;74(4):277-302 (2001);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。重鎖抗体は、元々、ラクダ科〔Camelidae〕(ラクダ、ヒトコブラクダおよびラマ)から得られた。軽鎖を欠いていても、ラクダ化抗体は、信頼のおける抗原結合レパートリーを有する(Hamers-Casterman C. et al., Nature. Jun 3;363(6428):446-8 (1993); Nguyen VK. et al. “Heavy-chain antibodies in Camelidae; a case of evolutionary innovation,” Immunogenetics. Apr;54(1):39-47 (2002); Nguyen VK. et al. Immunology. May;109(1):93-101 (2003))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応免疫応答によって生じた最小の既知抗原結合ユニットに相当する(Koch-Nolte F. et al., FASEB J. Nov;21(13):3490-8. Epub 2007 Jun 15 (2007))。「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を含み、断片は、単一ポリペプチド鎖中にVドメインに接続されたVドメインを含む(V-VまたはV-V)。(例えば、Holliger P. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. Jul 15;90(14):6444-8 (1993);EP404097;WO93/11161を参照のこと)。リンカーが短すぎるので同一鎖上の2つのドメインは、対形成できず、したがって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対形成し、それによって2つの抗原結合部位を生成せざるを得ない。抗原結合部位は、同一の抗原(またはエピトープ)を標的とする場合も、異なる抗原(またはエピトープ)を標的とする場合もある。
【0072】
「ドメイン抗体」とは、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する抗体断片を指す。特定の実施形態では、2以上のVドメインが、ペプチドリンカーとともに共有結合によって接合して、二価または多価ドメイン抗体を形成する。二価ドメイン抗体の2つのVドメインは、同一の抗原を標的とする場合も、異なる抗原を標的とする場合もある。
【0073】
特定の実施形態では、「(dsFv)」は、3つのペプチド鎖:ペプチドリンカーによって連結され、ジスルフィド橋によって2つのV部分と結合された2つのV部分を含む。
【0074】
特定の実施形態では、「二重特異性dsダイアボディ」は、VH1およびVL1の間でジスルフィド橋によってVL1-VH2(同様にペプチドリンカーによって連結された)に結合された、VH1-VL2(ペプチドリンカーによって連結された)を含む。
【0075】
特定の実施形態では、「二重特異性dsFv」または「dsFv-dsFv’」は、3つのペプチド鎖:重鎖が、ペプチドリンカー(例えば、長い可動性リンカー)によって結合され、ジスルフィド橋を介して、それぞれ、VL1およびVL2部分と対形成されているVH1-VH2部分を含む。ジスルフィドによって対形成された重鎖および軽鎖は各々、異なる抗原特異性を有する。
【0076】
本明細書において、用語「ヒト化」または「ヒト化型」とは、抗体または抗原結合断片に関連して、非ヒト動物(例えば、げっ歯類、ウサギ、イヌ、ヤギ、ウマまたはニワトリ)由来のCDR、ヒト由来のFR領域および適用できる場合には、ヒト由来の定常領域を含む、抗体または抗原結合断片を指す。特定の実施形態では、ヒト抗体由来の定常領域は、非ヒト可変領域に融合されている。ヒト化抗体または抗原結合断片は、ヒト処置薬として有用である。特定の実施形態では、非ヒト種抗体と比較されるように、免疫原性が低減されている、またはヒトにおいて免疫応答を誘導する可能性が低いからである。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ハムスターまたは非ヒト霊長類(例えば、サル(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル)または類人猿(例えば、チンパンジー、ゴリラ、サル〔simian〕またはサル〔affen〕)である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体または抗原結合断片は、非ヒトであるCDR配列を除く、実質的にすべてのヒト配列から構成される。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体または抗原結合断片は、結合または結合親和性などの抗体性能を改善するように修飾される。例えば、1つまたは複数の非ヒトCDR中の1個または複数のアミノ酸残基が、ヒトにおける潜在的免疫原性を低減するように変更され、そこでは、変更されるアミノ酸残基が、免疫特異的結合にとって重大なものではないか、または変更が保存的変更であり、その結果、ヒト化抗体の抗原との結合は大幅に影響を受けない。いくつかの実施形態では、ヒトに由来するFR領域は、それが由来するヒト抗体と同一アミノ酸配列を含み得る、またはいくつかのアミノ酸変更、例えば、アミノ酸の10、9、8、7、6、5、4、3、2または1つ以下の変更を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸におけるこのような変更は、重鎖FR領域中にのみ、軽鎖FR領域中にのみ、または両鎖中に存在し得る。いくつかの好ましい実施形態では、ヒト化抗体は、ヒトFR1~3およびヒトJHおよびJκを含む。
【0077】
用語「キメラ」とは、本明細書において、ある種に由来する重鎖および/または軽鎖の一部ならびに異なる種に由来する重鎖および/または軽鎖の残部を有する抗体または抗原結合断片を指す。例示的実施例では、キメラ抗体は、ヒトに由来する定常領域およびマウスに由来するなどの非ヒト種に由来する可変領域を含み得る。
【0078】
「抗PD-L1抗体」とは、本明細書において、診断的使用および/または処置的使用を提供するのに十分である親和性でPD-L1(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類PD-1)と特異的に結合可能である抗体を指す。
【0079】
「実質的に」、「実質的に同一」とは、本明細書において、2つの数値間の高度の類似性を指し、当業者ならば、値によって示される統計学および/または生物活性に関して、2つの値間の有意差を認識しないもしくは考えない、またはほとんど差がないと認識するもしくは考えるであろう。対照的に、「実質的に低い」とは、数値が、参照値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満であることを意味する。
【0080】
用語「特異的結合」または「特異的に結合する」とは、本明細書において、2つの分子間の、例えば、抗体および抗原間などの非ランダム結合反応を指す。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片は、ヒトおよび/または非ヒト霊長類PD-1と、pH7.4で、約0.01nM~約100nM、約0.1nM~約100nM、0.01nM~約10nM、約0.1nM~約10nM、0.01nM~約1nM、約0.1nM~約1nMまたは約0.01nM~約0.1nM)の結合親和性(K)で特異的に結合する。Kとは、本明細書において、会合速度に対する解離速度の割合(koff/kon)を指し、例えば、Biacoreなどの機器を使用する表面プラズモン共鳴法を使用して決定できる。
【0081】
「結合を遮断する」または「同一エピトープについて競合する」能力とは、本明細書において、抗体または抗原結合断片の、2つの分子(例えば、ヒトPD-L1および抗PD-L1抗体)間の結合相互作用を、任意の検出可能な程度に阻害する能力を指す。特定の実施形態では、2つの分子間の結合を遮断する抗体または抗原結合断片は、2つの分子間の結合相互作用を、少なくとも50%阻害する。特定の実施形態では、この阻害は、60%超、70%超、80%超または90%超であり得る。
【0082】
用語「エピトープ」とは、本明細書において、抗体などの抗原結合タンパク質によって結合される抗原上の、原子の特定の群(例えば、糖側鎖、ホスホリル基、スルホニル基)またはアミノ酸を指す。エピトープは、立体構造的である場合も線形である場合もある。立体構造エピトープは、非連続であるが、タンパク質の三次元的三次フォールディングのために空間的に並置されたアミノ酸残基を含み得、そこでは、それらの残基は、相互作用の親和性に直接的に寄与し、変性溶媒に曝露された場合には相互作用の能力を失う。対照的に、線形エピトープのすべての相互作用点は、タンパク質上の一次アミノ酸残基に沿って直線的に配置されており、連続アミノ酸の小さいセグメントは、主要組織適合複合体(MHC)分子との抗原結合から消化され得る、または変性溶媒に対する曝露の際に保持され得る(Salmeron A et al., J Immunol. 1991 Nov 1;147(9):3047-52; Goldsby et al., Immunology(Fifth ed.). New York: W. H. Freeman and Company. pp. 57-75.ISBN0-7167-4947-5)。本開示の一実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体によって結合されるエピトープは、立体配置的である。本開示の別の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体によって結合されるエピトープは、線形である。2種の抗体が、それらが抗原との競合結合を示す場合には、抗原内の同一エピトープと結合し得る。例えば、抗体または抗原結合断片が、21F11、18G4、4B6、26F5、23A11、23F11、22C9、それらのキメラ抗体、ヒト化4B6、ヒト化23A11およびヒト化23F11などの本開示の例示的抗体の、ヒトPD-1との結合を遮断する場合には、抗体または抗原結合断片は、それらの例示的抗体と同一のエピトープと結合すると考えられ得る。
【0083】
エピトープ内の特定のアミノ酸残基を、例えば、アラニンスキャニング変異誘発によって変異させることができ、タンパク質結合を低減するまたは妨げる変異が同定される。「アラニンスキャニング変異誘発」は、エピトープの、それと結合する別の化合物またはタンパク質との相互作用に影響を及ぼすタンパク質の特定の残基または領域を同定するために実施できる方法である。タンパク質内の残基または標的残基の群が、中性または負電荷を有するアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニンまたは保存的アミノ酸置換)によって置換される。タンパク質の結合を閾値よりも低減する、またはタンパク質の結合をその他の変異よりも最大の程度に低減するものをコードするアミノ酸残基またはコドンの任意の変異は、タンパク質によって結合されるエピトープ内である可能性が高い。本開示の特定の実施形態では、pH依存性PD-L1抗体にとって重大であるエピトープは、E58、N63、S80、Y81およびI64のアミノ酸残基のうち少なくとも1つを含む。
【0084】
以下に記載される配列は、図34に見ることができる。
【0085】
「18G4」とは、本明細書において、配列番号55の重鎖可変領域(配列番号93のコーディングDNA配列に対応する)、配列番号56の軽鎖可変領域(配列番号94のコーディングDNA配列に対応する)を有するマウスモノクローナル抗体を指す。そのキメラ抗体(すなわち、18G4-C/18G4-キメラ)は、マウス可変領域と融合しているIgG1アイソタイプのヒト定常領域を含む。
【0086】
「4B6」とは、本明細書において、配列番号85の重鎖可変領域、配列番号86の軽鎖可変領域を有するマウスモノクローナル抗体を指す。そのキメラ抗体(すなわち、4B6-C/4B6-キメラ)は、マウス可変領域と融合しているIgG1アイソタイプのヒト定常領域を含む。抗体の重鎖および軽鎖は、ヒト化重鎖(H1は、配列番号81の配列に対応し、H2は、配列番号83の配列に対応し、H3は、配列番号65である配列(配列番号99のコーディングDNA配列を有する)に対応し、H4は、配列番号67の配列に対応する)および軽鎖(L1は、配列番号82の配列に対応し、L2は、配列番号84である配列に対応し、L3は、配列番号66(配列番号100のコーディングDNA配列を有する)の配列に対応し、L4は、配列番号68の配列に対応する)を生成するようにヒト化され、それによって、4B6-H3L3、4B6-H3L4、4B6-H4L3および4B6-H4L4などのヒト化抗体が生じる。ヒト化抗体はまた、Fc領域中の位置297でのNからAへの変異を用いて、小/大規模産生のためにCHO細胞において産生することができる。
【0087】
「26F5」とは、本明細書において、配列番号59の重鎖可変領域(配列番号97のコーディングDNA配列を有する)、配列番号60の軽鎖可変領域(配列番号98のコーディングDNA配列を有する)を有するマウスモノクローナル抗体を指す。そのキメラ抗体(すなわち、26F5-C/26F5-キメラ)は、マウス可変領域と融合しているIgG1アイソタイプのヒト定常領域を含む。
【0088】
「21F11」とは、本明細書において、配列番号57の重鎖可変領域(配列番号95のコーディングDNA配列を有する)、配列番号58の軽鎖可変領域(配列番号96のコーディングDNA配列を有する)を有するマウスモノクローナル抗体を指す。そのキメラ抗体((すなわち、21F11-C/21F11-キメラ)は、マウス可変領域と融合しているIgG1アイソタイプのヒト定常領域を含む。
【0089】
「23A11」とは、本明細書において、配列番号73の重鎖可変領域、配列番号74の軽鎖可変領域を有するマウスモノクローナル抗体を指す。そのキメラ抗体(すなわち、23A11-C/23A11-キメラ)は、マウス可変領域と融合しているIgG1アイソタイプのヒト定常領域を含む。抗体の重鎖および軽鎖は、ヒト化重鎖(H3は、配列番号71の配列(配列番号103のコーディングDNA配列を有する)に対応し、H5は、配列番号69の配列に対応する)および軽鎖(L3は、配列番号72の配列に対応し、L5は、配列番号70の配列(配列番号104のコーディングDNA配列を有する)に対応する)を生成するようにヒト化され、それによって、293細胞において、23A11-H3L5、23A11-H5L3、23A11-H3L3および23A11-H5L5などのヒト化抗体が生じる。23A11-H3L5(H3およびL5の対応する配列は、それぞれ、配列番号61および配列番号62である)などの抗体はまた、Fc領域中の位置297でのNからAへの変異を用いて、小/大規模産生のためにCHO細胞において産生することができる。
【0090】
「23F11」とは、本明細書において、配列番号79の重鎖可変領域、配列番号80の軽鎖可変領域を有するマウスモノクローナル抗体を指す。そのキメラ抗体(すなわち、23F11-C/23F11-キメラ)は、マウス可変領域と融合しているIgG1アイソタイプのヒト定常領域を含む。抗体の重鎖および軽鎖は、ヒト化重鎖(H4は、配列番号75の配列(配列番号105のコーディングDNA配列を有する)に対応し、H6は、配列番号77の配列に対応する)および軽鎖(L4は、配列番号76の配列(配列番号106のコーディングDNA配列を有する)に対応し、L6は、配列番号78に配列に対応する)を生成するようにヒト化され、それによって、293細胞において、23F11-H4L4、23F11-H6L4、23F11-H4L6、23F11-H6L6などのヒト化抗体が生じる。23F11-H4L4(H4およびL4の対応する配列は、それぞれ、配列番号63および配列番号64である)などの抗体はまた、Fc領域中の位置297でのNからAへの変異を用いて、小/大規模産生のためにCHO細胞において産生することができる。
【0091】
「22C9」とは、本明細書において、配列番号21の重鎖可変領域(コーディングDNA配列配列番号101を有する)、配列番号22の軽鎖可変領域(コーディングDNA配列配列番号102を有する)を有するマウスモノクローナル抗体を指す。そのキメラ抗体(すなわち、22C9-C/22C9-キメラ)は、マウス可変領域と融合しているIgG1アイソタイプのヒト定常領域を含む。
【0092】
アミノ酸配列に関連して「保存的置換」とは、アミノ酸残基を、同様の生理化学的特性を有する側鎖を有する異なるアミノ酸残基と置き換えることまたはポリペプチドの活性にとって重大ではないアミノ酸の置換を指す。例えば、保存的置換は、非極性側鎖を有するアミノ酸残基の中(例えば、Met、Ala、Val、LeuおよびIle、Pro、Phe、Trp)、非荷電極性側鎖を有する残基の中(例えば、Cys、Ser、Thr、Asn、GlyおよびGln)、酸性側鎖を有する残基の中(例えば、Asp、Glu)、塩基性側鎖を有するアミノ酸の中(例えば、His、LysおよびArg)、β分枝側鎖を有するアミノ酸の中(例えば、Thr、ValおよびIle)、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の中(例えば、CysおよびMet)または芳香族側鎖を有する残基の中(例えば、Trp、Tyr、HisおよびPhe)で行うことができる。特定の実施形態では、置換、欠失または付加も「保存的置換」として考えることができる。挿入または欠失されるアミノ酸の数は、約1~5の範囲であり得る。当技術分野では公知であるように、保存的置換は、通常、タンパク質コンホメーション構造において大幅な変化を引き起こさず、従って、タンパク質の生物活性を保持し得る。
【0093】
アミノ酸配列(または核酸配列)に関して「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、最大対応を達成するように、必要に応じて、ギャップを導入した後の、参照配列中のアミノ酸(または核酸)残基と同一である、候補配列中のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸残基の保存的置換は、同一残基と考えられる場合も、考えられない場合もある。アミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントを決定することを目的とするアラインメントは、例えば、BLASTN、BLASTp(米国国立生物工学情報センター〔U.S. National Center for Biotechnology Information〕(NCBI)のウェブサイトで入手可能、Altschul S.F. et al, J. Mol. Biol., 215:403-410 (1990); Stephen F. et al, Nucleic Acids Res., 25:3389-3402 (1997)も参照のこと)、ClustalW2(欧州バイオインフォマティクス研究所〔European Bioinformatics Institute〕のウェブサイトで入手可能、Higgins D.G. et al, Methods in Enzymology, 266:383-402 (1996); Larkin M.A. et al, Bioinformatics (Oxford, England), 23(21): 2947-8 (2007)も参照のこと)およびALIGNまたはMegalign (DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なツールを使用して達成できる。当業者はツールによって提供されるデフォルトパラメータを使用してもよいし、または例えば、適したアルゴリズムを選択することなどによって、アラインメントにとって適当であるようにカスタマイズしてもよい。
【0094】
本明細書において、「相同体配列」および「相同配列」は、互換可能に使用され、任意選択で、アラインされる場合に別の配列に対して少なくとも80%(例えば少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列(またはその相補性鎖)またはアミノ酸配列を指す。
【0095】
「T細胞」は、本明細書において、ヘルパーT細胞(例えば、CD4T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、Tヘルパー3型T細胞、Tヘルパー17型T細胞)、細胞傷害性T細胞(例えば、CD8T細胞)、記憶T細胞(例えば、セントラル記憶T細胞(TCM細胞)、エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞およびTEMRA細胞)およびCD8+またはCD4+のいずれかであるレジデントメモリーT細胞(TRM))、ナチュラルキラーT(NKT)細胞および阻害性T細胞を含む、細胞性免疫において重大な役割を果たすリンパ球を指す。
【0096】
「エフェクター機能」または「抗体エフェクター機能」とは、本明細書において、C1複合体およびFc受容体などの、抗体のFc領域の、そのエフェクターとの結合に起因する生物活性を指す。例示的エフェクター機能として、抗体およびC1複合体上のC1qの相互作用によって誘導される補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体のFc領域の、エフェクター細胞上のFc受容体との結合によって誘導される抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)および食作用が挙げられる。「エフェクター機能を低減または枯渇させる」とは、抗体エフェクター機能が、親抗体から少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)低減されることを指す。特定の実施形態では、エフェクター機能は、グリコシル化を排除するためのFc領域における変異、例えば、N297AまたはD265A(Shields et al., J. Biol. Chem. 276 (9): 6591-6604 (2001)を参照のこと)、K322A、L234A/L235Aによって排除される。「Fc領域」とは、本明細書において、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。
【0097】
「癌」または「癌性状態」とは、本明細書において、悪性細胞成長または新生物、異常な増殖、浸潤または転移によって特徴付けられる任意の医学的状態を指し、固形腫瘍癌および白血病などの非固形癌(血液悪性腫瘍)の両方を含む。固形腫瘍は、肉腫および癌腫を含む。肉腫は、血管、骨、脂肪組織、靭帯、リンパ管、筋肉または腱における非上皮腫瘍であり、癌腫は、皮膚、腺および臓器の裏層における上皮腫瘍である。「腫瘍」とは、本明細書において、新生物および/または悪性細胞の固体塊を指す。
【0098】
本明細書において、状態を「処置すること」、「処置」または「療法」は、互換可能に使用され得、状態を予防することまたは低減すること、状態の発症または発生の速度を減速すること、状態の発生のリスクを低減すること、状態と関連する症状の発生を予防することまたは遅延すること、状態と関連する症状を低減することまたは終了させること、状態の完全または部分退縮を生成すること、状態を治癒することまたはそれらのいくつかの組合せなどの、治療的処置、防止的または予防的手段を含む。癌に関して、「処置すること」、「処置」または「療法」は、新生物もしくは悪性細胞成長(対照と比較して、腫瘍体積を低減することなど)、増殖、他の臓器への浸潤もしくは転移を阻害することもしくは減速すること、新生物もしくは悪性細胞成長、増殖もしくは転移の発生を予防すること、遅延することもしくは停止すること、またはそれらのいくつかの組合せを指し得る。腫瘍に関しては、「処置すること」または「処置」は、腫瘍のすべてはもしくは一部を根絶すること、腫瘍成長および転移を阻害することもしくは減速すること、腫瘍の発生を予防することもしくは遅延することまたはそれらのいくつかの組合せを含む。「単離された」物質は、天然状態から人の手によって変更されている。「単離された」組成物または物質が自然界に存在する場合には、それは、その元の環境から変更されているか、または取り出されているまたはその両方である。例えば、「単離された」ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それぞれ、その他のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含まない、天然状態ではポリヌクレオチドまたはポリペプチドに伴う天然の構成成分と会合していないポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。特定の実施形態では、「単離された」抗体は、少なくとも1つのステップによって、電気泳動的方法(クーマシーブルーまたは銀染色を使用するSDS-PAGE、等電点電気泳動、毛細血管 電気泳動など)、クロマトグラフィー法(イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相HPLCなど)またはローリー法によって決定されるような少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の純度に精製される。
【0099】
用語「ベクター」とは、本明細書において、宿主細胞においてそのタンパク質を発現するように、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが作動可能に挿入され、輸送される媒体を指す。ベクターは、宿主細胞内でそれが保持する遺伝要素の発現を引き起こすように、宿主細胞を形質転換、形質導入またはトランスフェクトするために使用され得る。ベクターの例示的種類として、それだけには限らないが、プラスミド(例えば、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC))、ウイルスベクター(λファージもしくはM13ファージなどのバクテリオファージまたは動物ウイルス)、細菌ベクターまたは非エピソーム哺乳動物ベクターが挙げられる。ベクターとして使用される動物ウイルスのカテゴリーとして、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルスおよびパポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能要素およびリポーター遺伝子を含む、発現を制御するための種々の要素を含有し得る。さらに、ベクター(例えば、細菌ベクターまたはエピソーム哺乳動物ベクター)は、複製起点を含有し得る。ベクターはまた、それだけには限らないが、ウイルス粒子、リポソームまたはタンパク質コーティングを含む、細胞へのその侵入を補助する材料を含み得る。
【0100】
「宿主細胞」とは、本明細書において、1種または複数の外因性タンパク質を発現するように、外因性ポリヌクレオチドおよび/またはベクターが導入されている細胞を指す。特定の対象細胞およびその後代の両方を指すものとする。宿主細胞は、原核生物、真核生物、植物細胞、動物細胞またはハイブリドーマであり得る。調節作用物質が細胞中に導入されない限り、または調節配列が、核酸と作動可能に連結されるように宿主細胞中に導入されない限り、所望のレベルでタンパク質を発現しないが、核酸を含む細胞であり得る。
【0101】
「PD-L1関連状態」とは、本明細書において、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)の発現または活性の増大または減少によって引き起こされる、それによって増悪される、またはその他の形でそれと関連している任意の状態を指す。
【0102】
用語「治療有効量」または「有効投与量」とは、本明細書において、ヒトPD-L1と関連する疾患または状態を処置するのに有効な薬物の投与量または濃度を指す。例えば、癌を処置するための本明細書において開示される抗体または抗原結合断片の使用に関して、治療有効量とは、腫瘍体積を低減可能な、腫瘍のすべてもしくは一部を根絶可能な、腫瘍成長もしくは他の臓器への癌細胞浸潤を阻害または減速可能な、癌性状態を媒介する細胞の成長もしくは増殖を阻害可能な、腫瘍細胞転移を阻害もしくは減速可能な、腫瘍もしくは癌性状態と関連する任意の症状もしくはマーカーを回復可能な、腫瘍もしくは癌性状態の発生を予防または遅延可能な、またはそれらのいくつかの組合せの抗体または抗原結合断片の投与量または濃度である。
【0103】
用語「医薬上許容される」は、担体、媒体、希釈剤、賦形剤および/または塩が、製剤を含むその他の成分と一般に化学的および/または物理的に適合し、そのレシピエントと生理学的に適合することを示す。
【0104】
用語「受容体占有」とは、平衡状態でリガンドによって占有された受容体および利用可能な受容体の総数の割合を指し、通常、受容体の総数のパーセンテージとして表される。受容体占有期間は、種々の時点での受容体占有を測定し、比較することによって評価され得る。FACS、ポジトロン放出コンピューター断層撮影法(PET)、オートラジオグラフィーなどといった受容体占有の測定は、当技術分野で公知である。
【0105】
抗PD-L1抗体
本開示は、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態では、本開示は、例示的モノクローナル抗体21F11、18G4、4B6、26F5、23A11、23F11、22C9、そのキメラ抗体、ヒト化4B6、ヒト化23A11およびヒト化23F11を提供する。
【0106】
特定の実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、抗原(例えば、ヒトPD-L1)との結合においてpH依存性である。生理学的に中性のpH(すなわちpH7.4)でpH依存性抗体によって示される抗原結合は、酸性のpH5.5または6.0(例えば、エンドソームのpHの)よりも大きい。このようなpH依存性抗体は、エンドソームにおいて抗原から優先的に解離する。pH依存性抗体は、エンドソームにおいて抗原から解離し、細胞から再利用されることによって、リソソーム〔lysozome〕における抗原媒介性分解を逃れ得るので、これは、抗原が抗原媒介性クリアランスを受ける場合に、抗体半減期を増大し得る。pH依存性抗体の利点として、治療用pH依存性抗体のより低い投与量(同等のin vivo治療効果を達成するために参照PD-L1抗体について、普通なら必要とされる投与量の80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%または10%以下)または改善された再利用性および増強された血清半減期のために、参照PD-L1抗体と比較してより少ない投与頻度が挙げられ、その両方が同等のin vivo治療効果を達成する。参照抗体は、非pH依存性であり、その結果、PD-L1と、酸性および中性pHの両方で同様に結合し、pH依存性抗体と比較して中性pHで同様の結合を有する。特定の実施形態では、pH依存性抗体は、PD-L1に対して同じ結合を有するその非pH依存性型と比較した場合に、上記の利点を有する。
【0107】
特定の実施形態では、pH依存性抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片の、ヒトPD-L1との特異的結合は、その酸性pH(例えば、pH6.0、5.5、5.0、4.5または4.0)でよりも、中性pH(例えば、pH7.4)でより多い。特定の実施形態では、酸性のpH5.5での、抗体の、PD-L1との結合は、同一アッセイ設定でpH7.4でのPD-L1とのその結合よりも実質的に低い。特定の実施形態では、酸性pHでの本明細書において提供されるPD-L1抗体およびその抗原結合断片の結合は、ELISAによって測定されるように、その中性pH(すなわち、7.4)での最大2%、5%、10%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%である。特定の実施形態では、酸性pH/中性pHでのpH依存性抗PD-L1抗体のヒトPD-L1に対するK比および/またはKoff比は、2、3、4、5、8、10、15、20、30、40または100またはそれ以上である。特定の実施形態では、pH依存性抗PD-L1抗体のヒトPD-L1に対する解離性半減期(t1/2)は、25℃または37℃で酸性pHで5、4、3、2、1、0.5、0.2または0.1分未満である。特定の実施形態では、本明細書において記載されたpH依存性抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、ヒトPD-L1に対して、中性pHで参照PD-L1抗体のものと比較して、酸性pHで、少なくとも約2、3、5、8、10、15、20、30、50または100倍の解離性半減期(t1/2)の低減を有する。特定の実施形態では、PD-1タンパク質のin vivo量の低減は、中性pHでPD-L1との同様の結合を有する参照PD-L1抗体と比較して、pH依存性抗PD-L1抗体に曝露された場合に延長される。特定の実施形態では、ヒトPD-L1と結合する、pH依存性抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、特定の用量の投与の際に、同一用量の参照PD-L1抗体のものと比較して、増大した標的臓器半減期を有する。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、酸性pHおよび中性pHの両方でPD-L1との同様の結合を示した場合に、抗体に対して普通ならより短いであろう、標的臓器におけるin vivo半減期を有する。特定の実施形態では、標的臓器として、それだけには限らないが、血液または血清、腎臓、肺、膵臓、肝臓、胆嚢、膀胱、皮膚、食道、卵巣、乳房、結腸、直腸、胃、脾臓または脳が挙げられる。
【0108】
当業者ならば理解するであろうが、本明細書において提供されるCDR配列は、得られた抗体が、1つまたは複数の特性(改善された結合または結合親和性、増大された薬物動態半減期、pH感受性、コンジュゲーションに対する適合性によって低減されたCDR残基でのグリコシル化および/または脱アミノ化のリスクおよび低減された免疫原性など)において改善され、その他の点では親抗体(すなわち、上記の修飾または変更を除いてその他の点では同一セットのCDR配列を有する抗体)と同等であり、または親抗体の抗原結合特性を少なくとも実質的に保持するように、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換(または挿入または欠失)を含有するように修飾され得る。例えば、抗体バリアント(FabまたはscFvバリアントなど)のライブラリーを作製し、ファージディスプレイ技術を用いて発現させ、次いで、ヒトPD-L1に対する結合または結合親和性についてスクリーニングることができる。別の例のために、コンピュータソフトウェアを使用して、抗体のヒトPD-L1との結合を実質的にシミュレートし、結合界面を形成する抗体上のアミノ酸残基を同定できる。このような残基は、結合または結合親和性の低減を防ぐために置換において避けられるか、またはより強力な結合を提供するために置換の標的とされ得る。特定の実施形態では、CDR配列中の置換の少なくとも1つの(またはすべて)は、保存的置換である。
【0109】
特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、本明細書において提供されるもの(単数または複数)に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する、1つまたは複数のCDR配列を含み、一方で、ヒトPD-L1に対する結合活性または結合親和性を、本明細書において提供されるもの(単数または複数)に対して100%配列同一性にある対応するCDR配列を除いて、実質的に同一の配列を有するその親抗体と同様のレベルで、またはさらに高く保持する。
【0110】
特定の実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、キメラである。キメラ抗体は、抗体由来の1つまたは複数の領域ならびにその他の抗体または種に由来する1つまたは複数の領域を含有する。特定の実施形態では、キメラ抗PD-L1抗体の少なくとも1つのCDRは、1つの種に由来する。特定の実施形態では、CDRのすべては、別の種に由来する。特定の実施形態では、キメラ抗PD-L1抗体の可変領域は、1つの種に由来し、別の種の抗体の定常領域に連結されている。キメラ抗体は、親抗体の結合活性または結合親和性を保持する。
【0111】
特定の実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、ヒト化される。特定の実施形態では、ヒト化抗体は非ヒト種を起源とし、フレームワーク中のいくつかのアミノ酸残基ならびに重鎖および軽鎖の定常領域が、ヒトにおける免疫原性を低減または避けるために変異されている。特定の実施形態では、非ヒト種の可変領域は、ヒト抗体の定常領域と融合される。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、CDRグラフティング、すなわち、ヒト抗体のCDRを、非ヒト抗体の対応するCDRと置き換えることによって作製される。したがって、ヒトにおけるヒト化抗体の免疫原性は、低い。特定の実施形態では、ヒトフレームワーク領域は、例えば、結合活性または結合親和性を改善または保持するために、CDR配列が由来する非ヒト抗体(例えば、マウスフレームワーク領域)由来の1個または複数のアミノ酸残基で置換される。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、親抗体の結合活性または結合親和性を保持または増大する。
【0112】
いくつかの実施形態では、キメラまたはヒト化抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、配列番号21、47、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83および85からなる群から選択される重鎖可変領域ならびに少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその相同配列;および/または配列番号22、48、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84および86からなる群から選択される軽鎖可変領域ならびに少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその相同配列を含む。これらのヒト化抗体は、ヒトPD-L1に対する結合活性または結合親和性を、好ましくは、例示的抗体:4B6、18G4、26F5、21F11、23A11、23F11、22C9ならびにそのキメラ抗体、ヒト化4B6、ヒト化23F11およびヒト化23A11のうちの1種と同様のレベルで保持する。
【0113】
特定の実施形態では、4B6、26F5、21F11、23A11、23F11、22C9のPD-L1抗体ならびにそのキメラ抗体、ヒト化4B6、ヒト化23F11およびヒト化23A11は、ヒトおよび非ヒト霊長類PD-L1と結合するが、マウスPD-L1とは結合しない。特定の実施形態では、PD-L1抗体(例えば、18G4)、そのキメラ抗体およびその抗原結合断片は、ヒトおよびマウスPD-L1の両方と結合できる。結合活性または結合親和性は、ELISAアッセイ、放射リガンド競合結合アッセイなどの競合アッセイおよびFACS解析に基づいて決定される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、ヒトPD-L1と、プラズモン共鳴結合アッセイによって測定される約10-7M以下(例えば、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M)の結合親和性(Kd)で特異的に結合可能である。結合親和性は、K値によって表され得、これは、抗原および抗原結合分子間の結合が平衡に達する場合に、会合速度に対する解離速度の比(koff/kon)として算出される。抗原結合親和性(例えば、K)は、Biacoreなどの機器を使用するプラズモン共鳴結合アッセイを含む、当技術分野で公知の適した方法を使用して適宜決定され得る(例えば、Murphy, M. et al, Current protocols in protein science, Chapter 19, unit 19.14, 2006)。
【0115】
特定の実施形態では、PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、hPD-L1と、ELISAによって測定される0.001μg/ml~1μg/ml(例えば、0.001μg/ml~0.5μg/ml、0.001μg/ml~0.2μg/ml、0.001μg/ml~0.1μg/ml、0.01μg/ml~0.2μg/ml、0.01μg/ml~0.1μg/ml、0.01μg/ml~0.05μg/ml、0.01μg/ml~0.03μg/mlまたは0.001μg/ml~0.01μg/ml)のEC50(すなわち50%結合濃度)で、またはFACSによって測定される0.01μg/ml~1μg/ml(例えば、0.01μg/ml~0.5μg/ml、0.01μg/ml~0.2μg/ml、0.05μg/ml~1μg/ml、0.05μg/ml~0.5μg/mlまたは0.05μg/ml~0.2μg/ml)のEC50で結合可能である。抗体のヒトPD-L1との結合は、当技術分野で公知の方法、例えば、ELISA、FACS、表面プラズモン共鳴、GSTプルダウン、エピトープ-タグ、免疫沈降、ファーウエスタン、蛍光共鳴エネルギー移動、時間分解蛍光イムノアッセイ(TR-FIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、エンザイムイムノアッセイ、ラテックス凝集、ウエスタンブロットおよび免疫組織化学またはその他の結合アッセイによって測定することができる。例示的例では、試験抗体(すなわち、第1の抗体)は、固定化されたヒトPD-L1またはヒトPD-L1を発現する細胞と結合させられ、 結合していない抗体を洗浄除去した後、結合することができ、結合された第1の抗体の検出を可能にする標識された二次抗体が導入される。検出は、固定化されたPD-L1が使用される場合には、マイクロプレートリーダーを用いて、ヒトPD-L1を発現する細胞が使用される場合にはFACS解析を使用することによって実施され得る。
【0116】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその断片は、ヒトPD-1のヒトPD-L1との結合を、FACSにおいて測定される0.05μg/ml~1μg/ml(例えば、0.05μg/ml~0.8μg/ml、0.05μg/ml~0.5μg/mlまたは0.05μg/ml~0.3μg/ml)のIC50で、またはELISAにおいて測定される0.001μg/ml~0.5μg/ml(例えば、0.001μg/ml~0.2μg/ml、0.001μg/ml~0.1μg/ml、0.001μg/ml~0.05μg/ml、0.001μg/ml~0.02μg/ml、0.005μg/ml~0.05μg/ml、0.005μg/ml~0.02μg/mlまたは0.005μg/ml~0.01μg/ml)のIC50で阻害する。
【0117】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその断片は、ヒトPD-L1のその受容体(すなわち、ヒトPD-1)との結合を遮断し、それによって、例えば、活性化されたT細胞(CD4T細胞およびCD8T細胞など)からのサイトカイン産生を誘導すること、活性化されたT細胞(CD4T細胞およびCD8T細胞など)の増殖を誘導することおよびT regの抑制機能を逆転させることを含む生物活性を提供する。例示的サイトカインとして、IL-2およびIFNγが挙げられる。用語「IL-2」とは、インターロイキン2、白血球〔white blood cells〕(例えば、白血球〔leukocytes〕)の活性を調節する免疫系におけるサイトカインシグナル伝達分子の1種を指す。用語「インターフェロンγ(IFNγ)」とは、ナチュラルキラー(NK)、NKT細胞、CD4およびCD8T細胞によって産生されるサイトカインであり、マクロファージの重大なアクチベーターであり、主要組織適合複合体(MHC)分子発現のインデューサーである。サイトカイン産生は、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、ELISAによって決定できる。[H]チミジン取り込みアッセイおよび発光細胞生存アッセイを含む方法はまた、T細胞の増殖を検出するためにも使用できる。
【0118】
抗PD-L抗体およびその抗原結合断片は、ヒトPD-L1および/または非ヒト霊長類に対して特異的である。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、PD-L2(例えば、ヒトPD-L2)と結合しない。例えば、PD-L2との結合親和性は、ヒトPD-L1とのものの15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。
【0119】
特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、非ヒト霊長類PD-L1と、ELISAにおいて測定される0.001μg/ml~0.5μg/ml(例えば、0.001μg/ml~0.2μg/ml、0.001μg/ml~0.1μg/ml、0.001μg/ml~0.05μg/ml、0.001μg/ml~0.02μg/ml、0.005μg/ml~0.05μg/ml、0.005μg/ml~0.02μg/mlまたは0.005μg/ml~0.01μg/ml)のEC50で結合する。
【0120】
抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、ヒトPD-L1および/または非ヒト霊長類PD-L1に対して特異的である。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、マウスPD-L1と結合しない。例えば、マウス PD-L1との結合親和性は、ヒトPD-L1とのものの15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。
【0121】
特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、マウスPD-L1と結合しないが、非ヒト霊長類PD-L1と、ヒトPD-L1のものと同様の結合活性または結合親和性で結合する。例えば、例示的抗体4B6、26F5、21F11、23A11、23F11、22C9およびそのキメラ抗体、ヒト化4B6、ヒト化23F11およびヒト化23A11の、マウスPD-L1との結合は、ELISAまたはFACS解析などの従来の結合アッセイでは極めて低いが、これらの抗体の、非ヒト霊長類PD-L1との結合は、ELISAまたはFACSによって測定されるように、ヒトPD-L1のものと同様である。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片(18G4など)は、マウスPD-L1と、ならびに非ヒト霊長類PD-L1と、ヒトPD-L1のものと同様の結合活性または結合親和性で結合する。
【0122】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、腫瘍細胞、精製腫瘍抗原および免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞、腫瘍ワクチンなどの免疫原性剤と組み合わせて使用できる。さらに、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、標準化学および放射線療法(例えば、放射線療法、X線療法)、標的ベースの小分子療法(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブ、ゲフィチニブ;モノクローナル抗体、光線力学的療法)、免疫療法(例えば、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、タグ-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155、DLL4、Notch1、Notch2/3、Fzd7またはWnt、r-スポンジン(RSPO)1、RSPO2、RSPO3またはRSPO4などの腫瘍マーカーに対する抗体)、新興のその他の免疫チェックポイントモジュレーター療法(例えば、ワクチン)、ホルモン療法、血管新生阻害(血管新生阻害剤)、遺伝子療法(細胞増殖のインデューサー、細胞増殖の阻害剤またはプログラム細胞死の制御因子)、緩和ケア(すなわち、疼痛(例えば、モルヒネおよびオキシコドン)、悪心、嘔吐(例えば、オンダンセトロンおよびアプレピタント)、下痢および出血を低減するためのケアの質を改善することに向けられた処置)および手術を含む、組合せ療法に含めることができる。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片を、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性または多価抗体のベースとして使用できる。
【0123】
本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、標識化抗体、二価抗体または抗イディオタイプ抗体であり得る。組換え抗体は、動物においてよりもむしろ、組換え技術を使用してin vitroで調製された抗体である。二重特異性または二価抗体は、2種の異なるモノクローナル抗体の断片を有する人工抗体であり、2種の異なる抗原と結合できる。「二価」である抗体またはその抗原結合断片は、2つの抗原結合部位を含む。抗体または抗原結合断片が、「二重特異性」として特徴付けられる場合には、2つの抗原結合部位は、同一抗原と結合し得る、またはそれらは各々異なる抗原と結合し得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、ヒト化またはキメラ抗体である。特定の実施形態では、ヒト化またはキメラ抗体は、組換え法を使用して調製される。例えば、非ヒト動物は、ヒトPD-L1タンパク質などの適切な抗原を用いて免疫処置され得る。抗原と結合する抗体可変領域をコードする遺伝子断片が、マウスのモノクローナル抗体の遺伝子から切り出され、この部分が、ヒトIgG1に由来する抗体の定常領域の遺伝子に作動可能に連結される。キメラ抗体の産生のために、組換え遺伝子断片は、発現ベクター中に組み込まれ、次いで、宿主細胞中に導入される(米国特許第4,816,397号、同4,816,567号、同5,807,715号を参照のこと)。
【0125】
「ヒト化抗体」とは、可変領域フレームワークおよび定常領域が、存在する場合には、完全にまたは実質的にヒト抗体配列に由来するよう、非ヒト由来抗体CDR遺伝子の、ヒト抗体遺伝子へのグラフティングによって得られた抗体である。ヒト化抗体を調製するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,225,539号、同5,530,101号、同6,407,213号、同5,859,205号、同6,881,557号、EP239400、EP125023、WO90/07861およびWO96/02576を参照のこと)。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖およびヒト化軽鎖を含む。特定の実施形態では、ヒト化PD-L1抗体中のグラフトされたCDRの配列は、対応するCDRに対して少なくとも60%、70%、80%、82%、85%、88%、90%、95%または100%同一である。特定の実施形態では、ヒト化PD-L1抗体のCDRにおいて、3以下の保存的アミノ酸置換が起こる。特定の実施形態では、配列最適化のために、ヒト化PD-L1抗体の可変領域フレームワークのアミノ酸残基が置換される。特定の実施形態では、ヒト化PD-L1抗体鎖の可変領域フレームワーク配列は、対応するヒト可変領域フレームワーク配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%同一である。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、ラクダ化単一ドメイン抗体、ダイアボディ、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)、dsダイアボディ、ナノボディ、ドメイン抗体、単離されたCDRまたは二価ドメイン抗体である。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、免疫グロブリン定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、重鎖および/または軽鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH1-CH2またはCH1-CH3領域を含む。いくつかの実施形態では、定常領域は、望ましい特性を付与するように1つまたは複数の修飾をさらに含み得る。例えば、定常領域は、1つもしくは複数のエフェクター機能を低減もしくは枯渇するように、FcRn受容体結合を改善するように、または1つもしくは複数のシステイン残基を導入するように修飾され得る。
【0128】
特定の実施形態では、抗PD-L抗体およびその抗原結合断片は、熱安定的に改善される。用語「熱安定性」または「熱耐性」は、本明細書において、熱力学的特性の代わりに抗PD-L1抗体の機能的安定性を指し、それだけには限らないが、加熱、冷却、凍結、凍結-解凍サイクル、振動、ボルテックス、超音波処置、化学的変性剤、pH、界面活性剤、塩、添加物、プロテアーゼまたは温度を含む、熱的および/または物理的/化学的操作によって引き起こされる不可逆的変性に対する抗体の抵抗性を指す。不可逆的変性は、抗体の機能的コンホメーションの不可逆的アンフォールディング、生物活性の喪失および変性されたタンパク質の凝集につながる。熱に対する安定性の増大は、リガンド結合を測定することによって、または漸増温度でアンフォールディングに対して感受性である、蛍光、円偏光二色性(CD)もしくは光散乱などの分光学的方法を使用することによって決定することができる。本明細書において提供されるPD-L1抗体は、少なくとも2℃、少なくとも5℃、少なくとも8℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃または少なくとも30℃を用いる、機能的コンホメーション状態における熱安定性の増大によって測定される安定性を増大可能である。本明細書において提供される抗体の熱安定性は、例えば、示差走査蛍光定量(DSF)または示差走査熱量測定(DSC)によって測定でき(He F et al., J Pharm Sci.2011 Apr;100(4):1330-40を参照のこと)、そこでは熱転移中点(Tm)が測定され、液体中でのタンパク質の相対的安定性を示す。特定の実施形態では、PD-L1抗体のTmは、74℃超、76℃超、78℃超、80℃超、82℃超、84℃超、86℃超、88℃超、90℃超または92℃超、94℃超、96℃超または98℃超である。特定の実施形態では、熱安定性が改善されたPD-L1抗体は、23F11(例えば、23F11-H4L4、23A11-H6L4、23A11-H4L6または23A11-H6L6)であり、90℃超の熱転移中点(Tm)を有する。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)をさらに形成する。種々のペイロードが、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片に連結され得るということが考慮される(例えば、“Conjugate Vaccines”, Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr. (eds.), Carger Press, New York, (1989)を参照のこと)。「ペイロード(単数または複数)」の用語は、「薬物(単数または複数)」と互換可能に使用され、これらのペイロードは、抗体または抗原結合断片に、中でも、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、錯体形成、会合、ブレンディングまたは付加によって連結され得る。特定の実施形態では、本明細書において開示される抗体および抗原結合断片は、エピトープ結合部分の外側に、1つまたは複数のペイロード、例えば、ペプチド、核酸分子、薬物、細胞毒、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、ハプテン、小分子、模倣物質、合成薬物、無機分子、有機分子、放射性同位元素およびリポーター基との結合に利用され得る特定の部位を含有するように工学的に操作され得る。例えば、このような部位は、ペイロードとの共有結合連結を促進するために1個または複数の反応性アミノ酸残基、例えば、システインまたはヒスチジン残基などを含み得る。特定の実施形態では、抗体は、リンカーを介して、または別のペイロードによって、ペイロードと間接的に連結され得る。例えば、抗体または抗原結合断片は、ビオチンにコンジュゲートされ、次いで、アビジンにコンジュゲートされている第2のペイロードに間接的にコンジュベートされ得る。ペイロードは、リポーター基または検出可能な標識、薬物動態修飾部分、精製部分または細胞傷害性部分であり得る。検出可能な標識の例として、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリンまたはテキサスレッド)、酵素基質標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、
ルシフェラーゼ〔luceriferases〕、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼまたはβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位元素(例えば、123I、124I、125I、131I、35S、3H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Biおよび32P、その他のランタニド、発光標識)、発色団部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、DNA分子または検出用の金が挙げられる。特定の実施形態では、ペイロードは、抗体の半減期を増大するのに役立つPEGなどの薬物動態修飾部分であり得る。その他の適したポリマーとして、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマーなどが挙げられる。特定の実施形態では、ペイロードは、磁性ビーズなどの精製部分であり得る。「細胞傷害性」部分のペイロードは、細胞にとって有害であるか、または細胞に損傷を与え得るもしくは死滅させ得る任意の薬剤であり得る。細胞傷害性部分の例として、制限するものではないが、化学療法剤、抗腫瘍剤、成長阻害剤、薬物、毒素、例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン〔dihydroxy anthracin dione〕、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびその類似体、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカププリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ〔thioepa〕クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド〔cyclothosphamide〕、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、白金(例えば、シスプラチンおよびオキサリプラチン)、植物アルカロイド(例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド、タキサンおよびエピポドフィロトキシン)およびアントラマイシン(AMC))および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。用語「負荷」または「薬物負荷」または「ペイロード負荷」とは、本明細書において、抗体あたりの薬物/ペイロードの平均数を指す。薬物負荷は、質量分析、UV/可視分光法、ELISAアッセイおよびHPLCなどの当技術分野における適した方法によって決定されるように、抗体あたり1~20(例えば、1~15、1~10、2~10、1~8、2~8、2~6、2~5または2~4)薬物(薬物対抗体比としても)の範囲内であり得る。特定の実施形態では、薬物負荷は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0130】
ポリヌクレオチドおよび組換え方法
本開示は、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、本開示において提供されるCDR配列をコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。
【0131】
モノクローナル抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片を産生する方法は、ヒトPD-L1タンパク質またはhPD-L1産生細胞を用いて、適した動物を免疫処置することを含む。動物は、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウサギまたはモルモットであり得る。脾臓またはリンパ節を使用して、または免疫処置された動物のB細胞を集め、PD-L1抗体力価を測定してハイブリドーマを作製する。免疫処置された動物から得たハイブリドーマまたはB細胞クローンから適した力価を有する、PD-L1抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドをクローニングする。クローニングされた、または修飾された(例えば、キメラ、ヒト化)ポリヌクレオチドが適したベクター中に組み込まれ、次いで、本開示の抗体を産生するために、これが、宿主細胞中に導入される。本明細書において提供される抗体およびその抗原結合断片は、宿主細胞を培養し、続いて、宿主細胞または培養液体(例えば、上清)を分離および精製することによって、実質的に純粋なおよび均一な形態で得ることができる。抗体またはその抗原結合断片の分離および精製のために、ポリペプチド精製のために使用される通常の方法が使用され得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、重鎖可変領域をコードし、配列番号93、95、97、99、101、103および105からなる群から選択される配列ならびに少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその相同配列を含む。いくつかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、軽鎖可変領域をコードし、配列番号94、96、98、100、102、104および106からなる群から選択される配列ならびに少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその相同配列を含む。特定の実施形態では、同一性パーセンテージは、遺伝暗号縮重によるものであり、コードされるタンパク質配列は、変更されないままである。
【0133】
抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを、さらなるクローニング(DNAの増幅)のために、または発現のために、当技術分野で公知の組換え技術を使用してベクター中に挿入できる。別の実施形態では、抗体は、当技術分野で公知の相同組換えによって産生され得る。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定される。多数のベクターが利用可能である。ベクター構成成分は、それだけには限らないが、以下のうち1つまたは複数を一般に含む:シグナル配列(例えば、翻訳シグナルまたはリーダー配列)、複製起点、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)および転写終結配列。
【0134】
いくつかの実施形態では、ベクター系として、哺乳動物、細菌、酵母系などが挙げられ、それだけには限らないが、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pCMV、pEGFP、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS420、pLexA、pACT2.2、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、pEF-1、pCMV-SCRIPT.RTM.、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bosなどといったプラスミドならびにその他の実験室および市販の発現ベクターを含む。適したベクターとして、プラスミドまたはウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を挙げることができる。ベクターは、単一コピーまたは複数コピーで維持され得る、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれ得る。抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを、複製または遺伝子発現のために、宿主細胞に導入できる。本明細書におけるベクターにおいてDNAをクローニングし、発現させるための適した宿主細胞は、上記の原核生物、酵母、昆虫細胞または高等真核生物細胞である。この目的のための適した原核生物として、グラム陰性またはグラム陽性生物などの真正細菌、例えば、エシェリキア属〔Escherichia〕、例えば、大腸菌〔E.coli〕、エンテロバクター属〔Enterobacter〕、エルウィニア属〔Erwinia〕)、クレブシエラ属〔Klebsiella〕、プロテウス属〔Proteus〕、サルモネラ属〔Salmonella〕、例えば、サルモネラ・チフィリウム〔Salmonella typhimurium〕)、セラチア属〔Serratia〕、例えば、セラチア・マルセカンス〔Serratia marcescans〕および赤痢菌属〔Shigella〕ならびに枯草菌〔B.subtilis〕およびB.リケニフォルミス〔licheniformis〕などのバチルス属〔Bacilli〕、緑膿菌〔P.aeruginosa〕などのシュードモナス属〔Pseudomonas〕およびストレプトマイセス属〔Streptomyces〕、バチルス属〔Bacillus〕、ストレプトコッカス属〔Streptococcus〕、ストレプトマイセス属〔Streptomyces〕)、スタフィロコッカス属〔Staphylococcus〕、エンテロコッカス属〔Enterococcus〕、ラクトバチルス属〔Lactobacillus〕、ラクトコッカス属〔Lactococcus〕、クロストリジウム属〔Clostridium〕、ゲオバチルス属〔Geobacillus〕、オーシャンバチルス属〔Oceanobacillus〕、シュードモナス属〔Pseudomonas〕、サルモネラ属〔Salmonella〕、カンピロバクター属〔Campylobacter〕、ヘリコバクター属〔Helicobacter〕、フラボバクテリウム属〔Flavobacterium〕、フソバクテリウム属〔Fusobacterium〕、イリオバクター属〔Ilyobacter〕、ナイセリア属〔Neisseria〕およびウレアプラズマ属〔Ureaplasma〕などの腸内細菌科が挙げられる。適した昆虫細胞として、ショウジョウバエシュナイダーS2細胞およびSf9が挙げられる。適した酵母として、P.メタノリカ〔methanolica〕、P.パストリス〔pastoris〕、S.セレビシエ〔cerevisiae〕または一般的なパン酵母が挙げられる。好ましい哺乳動物細胞として、CHO細胞、HEK293細胞、リンパ球および骨髄腫が挙げられる。特定の実施形態では、抗体のグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要ではない場合には、抗体は細菌において産生されてもよい。
【0135】
上記の例に加えて、分裂酵母〔Schizosaccharomyces pombe〕、例えば、K.ラクチス〔lactis〕、K.フラギリス〔fragilis〕(ATCC12,424)、K.ブルガリカス〔bulgaricus〕(ATCC16,045)、K.ウィケラミー〔wickeramii〕(ATCC24,178)、K.ワルチー〔waltii〕(ATCC56,500)、K.ドロソフィラルム〔drosophilarum〕(ATCC36,906)、K.サーモトレランス〔thermotolerans〕およびK.マルキシアヌス〔marxianus〕などのクリベロミセス属〔Kluyveromyces〕宿主、ヤロウイア属〔yarrowia〕(EP402,226)、ピキア・パストリス〔Pichia pastoris〕(EP183,070)、カンジダ〔Candida〕、トリコデルマ・リーゼア〔Trichoderma reesia〕(EP244,234)、アカパンカビ〔Neurospora crassa〕、シュワンニオマイセス・オクシデンタリス〔Schwanniomyces occidentalis〕などのシュワンニオマイセス属〔Schwanniomyces〕および例えば、アカパンカビ属〔Neurospora〕などの糸状菌、ペニシリウム属〔Penicillium〕、トリポクラジウム属〔Tolypocladium〕ならびにA.ニジュランス〔nidulans〕およびA.ニガー〔niger]などのアスペルギルス属〔Aspergillus〕宿主などのいくつかのその他の属、種および株が、本明細書において一般的に利用可能である。
【0136】
本明細書において提供されるグリコシル化された抗体または抗原断片の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。脊椎動物細胞における例として、植物および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株およびバリアントならびにヨトウガ〔Spodoptera frugiperda〕(イモムシ)、ネッタイシマカ〔Aedes aegypti〕(カ)、ヒトスジシマカ〔Aedes albopictus〕(カ)、キイロショウジョウバエ〔Drosophila melanogaster〕(ショウジョウバエ〔fruiffly〕)およびカイコ〔Bombyx mori]などの対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ〔Autographa californica〕NPVのL-1バリアントおよびカイコ〔Bombyx mori〕NPVのBm-5株は、公的に入手可能であり、このようなウイルスは、本発明に従って本明細書においてウイルスとして、特に、ヨトウガ〔Spodoptera frugiperda〕細胞のトランスフェクションのために使用され得る。ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマトおよびタバコの植物細胞培養物も宿主として利用され得る。
【0137】
しかし、脊椎動物細胞は、大いに興味を引いてきており、培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は、ルーチンの手順となった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例として、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚性腎臓株(293または懸濁培養において成長のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980))、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞癌腫細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982))、MRC 5細胞、FS4細胞、PC12、マウス胚線維芽細胞細胞株(3T3)、NSO骨髄腫細胞(任意の機能的免疫グロブリン鎖を内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞系統)がある。種々の宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾のための種々の特徴および機序を有する。したがって、適した細胞株は、発現された抗体の正しい修飾およびプロセシング(一次転写物、グリコシル化およびリン酸化など)を確実にするように、宿主細胞として選択され得る。いくつかの好ましい実施形態では、宿主細胞は、HEK293T細胞である。いくつかの好ましい実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0138】
宿主細胞は、抗PD-L1抗体産生のために上記の発現またはクローニングベクターを用いて形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて修飾された従来の栄養培地において培養される。特定の実施形態では、ベクターは、形質転換、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処置、リポフェクションなどの当技術分野で公知の方法によって宿主細胞中に移すことができる。特定の実施形態では、真核生物へのベクターのトランスフェクションは、リン酸カルシウム共沈殿、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポフェクションおよびウイルス感染を含む。真核細胞の宿主細胞を、抗体をコードする第2のポリヌクレオチドを用いて同時形質転換してもよい。特定の実施形態では、移されたベクターを含有する宿主細胞は、抗PD-L1抗体を一時的に発現し得る。
【0139】
本明細書において提供された抗体または抗原結合断片を産生するために使用される宿主細胞は、種々の培地で培養してもよい。HamのF10(Sigma)、最小必須培地(MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)および「ダルベッコ改変イーグル培地」(DMEM)、Sigma)、ルリアブロス(LB)およびテリフィックブロス(TB)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979)、Barnes et al., Anal. Biochem. 102:255 (1980)、米国特許第4,767,704号、同4,657,866号、同4,927,762号、同4,560,655号または同5,122,469号、WO90/03430、WO87/00195または米国再発行特許Re.30,985号に記載される培地のいずれも、宿主細胞のための培養培地として使用してよい。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモンおよび/またはその他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬物など)、微量元素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)およびグルコースまたは同等のエネルギー供給源が補給され得る。任意のその他の必要な栄養補助食品も、当業者に公知であろう適当な濃度で含まれ得る。温度、pHなどといった培養条件は、発現のために選択された宿主細胞とともにこれまでに使用されたものであり、当業者には明らかとなろう。
【0140】
組換え技術を使用する場合には、抗体およびその抗原結合断片は、細胞膜周辺腔において細胞内で産生され得る、または培地中に直接的に分泌され得る。第1のステップとして抗体が細胞内に産生される場合には、粒状細片、宿主細胞または溶解した断片のいずれかは、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992)には、大腸菌〔E.coli〕の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順が記載されている。手短に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分にわたって解凍する。細胞細片は、遠心分離によって除去することができる。抗体およびその抗原結合断片が、培地中に分泌される場合には、このような発現系から得られる上清を、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用してまず濃縮する。タンパク質分解を阻害するために前述のステップのいずれかにおいてPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を含めてもよく、外来汚染物質の成長を妨げるために抗生物質を含めてもよい。
【0141】
細胞から調製された抗体を、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸収クロマトグラフィー、濾過、限外濾過、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、透析、DEAE-セルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、塩析、免疫沈降、等電点電気泳動、再結晶化およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが、好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの安定性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに応じて変わる。プロテインAを使用して、ヒト.γ.1、.γ.2または.γ.4重鎖に基づいている抗体を精製できる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインAカラムの例として、Hyper D、POROSおよびSepharose FF(GE Healthcare Biosciences)が挙げられる。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプに対して、およびヒト.γ.3に対して推奨される(Guss et al., EMBO J. 5:1567 1575 (1986))。親和性リガンドが結合されるマトリックスは、最も多くはアガロースであるが、その他のマトリックスも利用可能である。コントロールドポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースを用いて達成され得るものよりも迅速な流速およびより短い処理時間を可能にする。抗体が、CH3ドメインを含む場合には、精製のためにBakerbond ABX.TM.樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が有用である。イオン交換カラム、エタノール沈殿法、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのヘパリンセファロース(商標)クロマトグラフィーでのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS-PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿での分画などのタンパク質精製のためのその他の技術も、回収されるべき抗体に応じて利用可能である。
【0142】
任意の予備的精製ステップ(単数または複数)後に、対象の抗体および汚染物質を含む混合物は、約2.5~4.5の間のpHで溶出バッファーを使用する、好ましくは、低塩濃度(例えば、約0~0.25M塩)で実施される、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに付され得る。
【0143】
キット
本開示は、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片または本明細書において提供される抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、生物学的サンプルにおいてPD-L1の存在またはレベルを検出するため有用である。生物学的サンプルは、細胞または組織を含み得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、キット中に含まれる抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片は、検出可能な標識(例えば、蛍光、放射活性または酵素標識)とコンジュゲートされる。特定のその他の実施形態では、キットは、非標識抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片または非標識抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片を含有する医薬組成物を含み、非標識抗PD-L1抗体と結合可能である二次標識された抗体をさらに含む。キットは、標識を検出する手段(例えば、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、酵素的標識のための酵素基質など)をさらに含み得る。キットは、特定の方法の実施のために使用されるさらなる試薬およびバッファーを含み得る。キットは、使用の説明書およびキット中の構成成分の各々を分離するパッケージをさらに含み得る。特定の実施形態では、キットは、PD-L1抗体を検出するためのイムノアッセイを含む。
【0145】
特定の実施形態では、キット中に含まれる抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片は、ELISAなどのサンドイッチアッセイにおいて、またはイムノグラフィーアッセイにおいて有用な基質またはデバイスと関連している。有用な基質またはデバイスは、例えば、マイクロタイタープレートおよびテストストリップであり得る。
【0146】
特定の実施形態では、PD-L1タンパク質レベルを検出するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、PD-L1関連状態を予測する、診断する、予防するまたは処置するために使用される。
【0147】
医薬組成物および処置の方法
本開示は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片および1種または複数の医薬上許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0148】
本明細書において開示される医薬組成物において使用するための医薬上許容される担体として、例えば、医薬上許容される液体、ゲルまたは固体担体、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、等張性物質、バッファー、抗酸化物質、麻酔薬、懸濁剤/分注剤〔dispending agents〕、封鎖剤またはキレート化剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤または非毒性補助物質、当技術分野で公知のその他の構成成分またはそれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0149】
適した構成成分として、例えば、抗酸化物質、保水剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、バッファー、保存料、滑沢剤、矯味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤または糖およびシクロデキストリンなどの安定化剤を挙げることができる。適した抗酸化物質として、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキシアニソール〔hydroxanisol〕、ブチル化ヒドロキシトルエンおよび/または没食子酸プロピルを挙げることができる。本明細書において開示されるように、抗体または抗原結合断片および本明細書において提供されるようなコンジュゲートを含む組成物中に、メチオニンなどの1種または複数の抗酸化物質を含めることは、抗体または抗原結合断片の酸化を低減する。この酸化の低減が、結合活性または結合親和性の喪失を予防または低減し、それによって、抗体安定性を改善し、有効期間を最大化する。したがって、特定の実施形態では、1種または複数の、本明細書において開示される抗体または抗原結合断片および1種または複数の、メチオニンなどの抗酸化物質を含む組成物が、提供される。抗体または抗原結合断片を、メチオニンなどの1種または複数の抗酸化物質と混合することによって、本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片の酸化を予防する、有効期間を延長する、および/または有効性を改善するための方法が、さらに提供される。適した保水剤として、エチレングリコール、グリセリンまたはソルビトールが挙げられる。適した滑沢剤として、例えば、セチルエステルワックス、硬化植物油、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸メチル、鉱油、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたは白蝋またはそれらの2種以上の混合物が挙げられる。適した乳化剤として、カルボマー、ポリオキシエチレン-20-ステアリルエーテル、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ステアリン酸ジグリコール、ステアリン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラノリン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、メチルセルロース、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリソルベート、モノステアリン酸プロピレングリコール、ソルビタンエステルまたはステアリン酸が挙げられる。
【0150】
さらに例示するために、医薬上許容される担体として、例えば、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、等張性デキストロース注射剤、滅菌水注射剤またはデキストロースおよび乳酸リンゲル注射剤などの水性媒体、植物起源の硬化油、綿実油、コーンオイル、ゴマ油またはピーナッツオイルなどの非水性媒体、静菌性または静真菌性濃度の抗菌剤、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性物質、リン酸またはクエン酸バッファーなどのバッファー、重硫酸ナトリウムなどの抗酸化物質、塩酸プロカインなどの局所麻酔、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンなどの懸濁剤および分散剤、ポリソルベート80(TWEEN-80)などの乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)などの封鎖剤またはキレート化剤、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を挙げることができる。担体として利用される抗菌剤は、フェノールまたはクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンズアルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含有する複数回用量容器中で医薬組成物に添加してもよい。適した賦形剤として、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールを挙げることができる。適した非毒性補助物質として、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解度増強剤または酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンまたはシクロデキストリンなどの薬剤を挙げることができる。
【0151】
医薬組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルジョン、ローション、泡沫、丸剤、カプセル剤、錠剤、徐放性製剤、軟膏、クリーム、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたは散剤であり得る。経口製剤は、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ピロリドンポリビニル、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどといった標準担体を含み得る。
【0152】
特定の実施形態では、医薬組成物は、注射可能物質組成物に製剤化される。注射用物質医薬組成物は、例えば、液体溶液、懸濁液、エマルジョンまたは液体溶液、懸濁液もしくはエマルジョンを作製するのに適した固体形態などの任意の従来の形態で調製され得る。注射用調製物として、注射のための準備の整った滅菌および/または非発熱性溶液、皮下錠剤を含む使用の直前に溶媒と混合される準備の整った凍結乾燥した散剤などの滅菌無水可溶性製剤、注射の準備の整った滅菌懸濁液、使用の直前に媒体と混合される準備の整った滅菌無水不溶性製剤ならびに滅菌および/または非発熱性エマルジョンをあげることができる。溶液は、水性または非水性のいずれかであり得る。
【0153】
特定の実施形態では、単位用量非経口調製物が、アンプル、バイアルまたはニードルを有するシリンジ中にパッケージングされる。非経口投与用のすべての調製物は、当技術分野で公知であり、実施されるように、滅菌されており、非発熱性でなければならない。
【0154】
特定の実施形態では、本明細書において開示される抗体または抗原結合断片を適した溶媒に溶解することによって、滅菌凍結乾燥散剤が調製される。溶媒は、散剤または散剤から調製される再構成された溶液の安定性またはその他の薬理学的構成成分を改善する賦形剤を含有し得る。使用され得る賦形剤として、それだけには限らないが、水、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースまたはその他の適した薬剤が挙げられる。溶媒は、一実施形態では、およそ中性pHの、当業者に公知のクエン酸、リン酸ナトリウムまたはカリウムまたはその他のこのようなバッファーなどのバッファーを含有し得る。当業者に公知の標準条件下での溶液のその後の滅菌濾過と、それに続く凍結乾燥は、望ましい製剤を提供する。一実施形態では、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアル中に配分される。各バイアルは、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片またはその組成物の単一投与量または複数回投与量を含有し得る。用量または用量のセットに必要なものを少量(例えば、約10%)上回る過剰充填バイアルは、正確なサンプル引き出しおよび正確な投薬を容易にするために許容される。凍結乾燥散剤は、約4℃~室温でなどの適当な条件下で保存され得る。
【0155】
注射水を用いる凍結乾燥散剤の再構成は、非経口投与において使用するための製剤を提供する。一実施形態では、再構成のために、滅菌および/または非発熱性水またはその他の液体の適した担体が、凍結乾燥散剤に添加される。正確な量は、与えられている選択された療法に応じて変わり、経験的に決定され得る。
【0156】
対象に、本明細書において提供されるようなPD-L1抗体またはその抗原結合断片の治療有効量を投与し、それによって、PD-L1と関連する付随する状態または障害を処置または予防することを含む、PD-L1関連状態を処置するための治療法も提供される。別の実施形態では、それを必要とする対象に本明細書において提供されるようなPD-L1抗体の治療有効量を投与することを含む、免疫応答の上方制御から恩恵を受けるであろう対象において状態を処置するための方法が提供される。
【0157】
本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片の治療有効量(単独でまたは化学療法剤などのその他の薬剤と組み合わせて使用される場合)は、当技術分野で公知の種々の因子、例えば、処置されるべき疾患の種類、抗体の種類、体重、年齢、過去の病歴、現在の薬物適用、対象の健康状態、免疫状態および交差反応の可能性、アレルギー、感受性および有害な副作用ならびに投与経路および種類、疾患の重症度および発生ならびに主治医または獣医師の思慮などに応じて変わる。特定の実施形態では、本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片は、約0.01mg/kg~約100mg/kg、1日あたり1回または複数回(例えば、約0.01mg/kg、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kgまたは約100mg/kg、1日あたり1回または複数回)の治療有効投与量で投与され得る。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、約50mg/kg以下の投与量で投与され、特定では、投与量は、20mg/kg以下、10mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、0.3mg/kg以下または0.1mg/kg以下である。特定の実施形態では、投与の投与量は、処置の経過にわたって変わり得る。例えば、特定の実施形態では、初期投与の投与量は、その後の投与の投与量よりも高いものであり得る。特定の実施形態では、投与の投与量は、対象の反応に応じて処置の経過にわたって変わり得る。
【0158】
投与計画は、最適の所望の応答(例えば、処置応答)を提供するよう調整され得る。特定の実施形態では、本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片は、1回または一連の処置にわたって対象に投与される。特定の実施形態では、本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片は、疾患の種類および重症度に応じて、1回または複数回の別個の投与によって、または連続注入によって対象に投与される。ガイダンスは、例えば、米国特許第4,657,760号、同5,206,344号、同5,225,212号に見出すことができる。
【0159】
本明細書において開示される抗体および抗原結合断片は、当技術分野で公知の任意の経路、例えば、非経口(例えば、皮下、腹腔内、静脈内注入を含む静脈内、筋肉内または皮内注射)または非経口でない(例えば、経口、鼻腔内、眼球内、舌下、直腸または局所)経路などによって投与され得る。
【0160】
特定の実施形態では、本明細書において開示される抗体および抗原結合断片は、徐放性に投与され得る。徐放非経口調製物は、インプラント、油性注射剤または粒状系(例えば、ミクロスフェア、微粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノ球体およびナノ粒子)として製造され得る(Banga, A. J., Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, Pa., (1995);Kreuter, J., Colloidal Drug Delivery Systems, J. Kreuter, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., pp. 219-342 (1994);Tice & Tabibi、Treatise on Controlled Drug 送達、A. Kydonieus、ed.、Marcel Dekker、Inc. New York、N.Y.、pp. 315-339、(1992))。特定の実施形態では、本明細書において開示されるPD-L1抗体および抗原結合断片は、分解性または非分解性ポリマーマトリックス中で投与され得る(Langer, Accounts Chem. Res. 26:537-542, 1993を参照のこと)。
【0161】
PD-L1と関連する状態は、免疫関連疾患または障害であり得る。特定の実施形態では、状態は、固形腫瘍、血液学的障害、感染性疾患、自己免疫疾患または線維性疾患であり得る。特定の実施形態では、固形腫瘍として、例えば、非小細胞肺癌(扁平上皮/非扁平上皮)、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌(基底乳癌、乳管癌腫および小葉性乳癌を含む)、膵臓癌、胃癌腫、膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌腫、黒色腫、骨髄腫、菌状息肉症〔mycoses fungoids〕、メルケル細胞癌、肝細胞癌腫(HCC)、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫およびその他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、リンパ系腫瘍、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌腫、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、セミノーマが挙げられる。血液障害は、古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、縦隔原発B細胞性大細胞型リンパ腫、T-細胞/組織球リッチB細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、肥満細胞由来腫瘍、EBV陽性および陰性PTLDならびにびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽細胞性リンパ腫、節外性NK/T-細胞リンパ腫、上咽頭癌およびHHV8関連原発性体液性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病および脊髄形成異常症、原発性CNSリンパ腫などの中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄の軸の腫瘍、脳幹神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫〔craniopharyogioma〕、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫〔menangioma〕、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫などを含む。特定の実施形態では、腫瘍および癌は、転移性、特に、PD-L1を発現する転移性腫瘍である。特定の実施形態では、腫瘍は、黒色腫または結腸癌である。
【0162】
特定の実施形態では、PD-L1関連状態および障害として、全身性エリテマトーデス(SLE)、腸管粘膜性炎症、大腸炎を伴う消耗性疾患、多発性硬化症、ウイルス感染症、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病〔Cohn's disease〕および炎症性腸疾患、乾癬、全身性強皮症、自己免疫性糖尿病などといった自己免疫または炎症性疾患が挙げられる。特定の実施形態では、PD-L1関連状態および障害として、真菌感染などの感染性疾患、寄生生物/原生生物感染または慢性ウイルス感染、例えば、コクシジオイデマイコシス・イミティス〔coccidioiodmycosis immitis〕、ヒストプラスマ症、爪真菌症、アスペルギルス症〔aspergilosis〕、ブラストミセス症、カンジジアシス・アルビカンス〔candidiasis albicans〕、パラコクシジオイデス症〔paracoccidioiomycosis〕、微胞子虫症、アカントアメーバ角膜炎、アメーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、アライグマ回虫症〔Baylisascariasis〕、シャーガス病、肝吸虫症、コクリオミイア属〔Cochliomyia〕、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、象皮症、腸蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポーラ症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、マラリア、横川吸虫症、ハエ幼虫症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、疥癬、住血吸虫症、睡眠病、糞線中症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、鞭虫症、トリパノソーマ症、蠕虫感染、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、HIV、サイトメガロウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、I型単純ヘルペスウイルスI、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI、ヒト免疫不全ウイルスII、カポジウエスト肉腫関連ヘルペスウイルス伝染病、シンリングウイルス〔thin ring virus〕(トルクテノウイルス〔Torquetenovirus〕)、ヒトTリンパ増殖性ウイルスI、ヒトTリンパ増殖性ウイルスII、水痘帯状疱疹、JCウイルスまたはBKウイルスのウイルス感染が挙げられる。特定の実施形態では、PD-L1関連状態として、糸球体腎炎、神経瘢痕〔neural scarring〕、皮膚瘢痕、肺線維症〔pulmonary fibrosis〕、肺線維症〔lung fibrosis〕、照射誘導性線維症、肝線維症、骨髄線維症などの線維性疾患が挙げられる。
【0163】
使用の方法
本開示は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片を使用する方法をさらに提供する。
【0164】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象においてPD-L1関連状態を処置する方法であって、対象に、抗体またはその抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、対象は、PD-L1アンタゴニストに応答する可能性が高い障害または状態を有すると同定されている。特定の実施形態では、本開示は、PD-L1関連状態を予防する、検出する、または診断する方法であって、本明細書において提供されるPD-L1抗体またはその抗原結合断片を、PD-L1関連状態を有すると疑われる、または有している、または有するリスクにある対象から得られた生物学的サンプルと接触させることと、生物学的サンプルにおいてPD-L1と結合するPD-L1抗体またはその抗原結合断片のレベルを決定することとを含む方法を提供する。
【0165】
PD-L1関連状態の処置のために、対象は、PD-L1発現について陽性として試験され、またはPD-L1発現の上昇したレベルを有すると試験される。種々の方法を使用して、個体から得た試験生物学的サンプル中のPD-L1の存在またはレベルを決定できる。例えば、試験生物学的サンプルを、発現されたPD-L1タンパク質と結合し、これを検出する抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片に対して曝露することができる。あるいは、PD-L1はまた、qPCR、逆転写酵素PCR、マイクロアレイ、SAGE、FISHなどといった方法を使用して核酸発現レベルで検出できる。いくつかの実施形態では、試験サンプルは、癌細胞または組織(例えば、臓器から得た生検組織)、腫瘍浸潤免疫細胞または体液(例えば、血液または血清)に由来する。特定の実施形態では、試験生物学的サンプル中のPD-L1の存在または上方制御されたレベルは、応答性の尤度を示す。用語「上方制御された」とは、本明細書において、同一抗体を使用して検出されるような参照サンプルにおけるPD-L1タンパク質レベルと比較した、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片を使用して検出されるような、試験サンプル中のPD-L1のタンパク質レベルにおける10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%以上またはそれを超える全体的な増大を指す。参照サンプルは、健常もしくは非罹患個体から得た対照サンプルまたは試験サンプルが得られた同一個体から得られた健常もしくは非罹患サンプル、または状態の処置の間のより早期の時間で同一個体から得たサンプルであり得る。例えば、参照サンプルは、試験サンプル(例えば、腫瘍)に隣接する、または試験サンプルの近隣にある非罹患サンプルであり得る。
【0166】
本明細書において開示される抗体または抗原結合断片は、単独で、または1種または複数のさらなる治療手段または薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本明細書において開示される抗体または抗原結合断片は、放射線療法、化学療法、標的化療法、遺伝子療法、免疫療法、ホルモン療法、血管新生阻害、緩和ケア、癌の処置のための手術(例えば、腫瘍摘出)などの第2の療法、化学療法に起因する合併症のための1種もしくは複数の制吐剤もしくはその他の処置または癌もしくはPD-L1によって媒介される任意の医学的障害の処置において使用するための第2の治療剤、例えば、別の抗体、治療用ポリヌクレオチド、化学療法剤(単数または複数)、血管新生抑制剤、サイトカイン、その他の細胞傷害性薬剤(単数または複数)、成長阻害剤(単数または複数)と組み合わせて投与され得る。特定のこれらの実施形態では、1種または複数のさらなる治療剤と組み合わせて投与される本明細書において開示される抗体または抗原結合断片は、1種または複数のさらなる治療剤と同時に投与され得、特定のこれらの実施形態では、抗体または抗原結合断片およびさらなる治療剤(単数または複数)は、同一医薬組成物の一部として投与され得る。しかし、別の治療剤と「組み合わせて」投与される抗体または抗原結合断片は、その薬剤と同時に、または同一組成物中で投与されなくてもよい。別の薬剤の前にまたは後に投与される抗体または抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片および第2の薬剤が異なる経路によって投与される場合であっても、その語句が本明細書において使用されるように、その薬剤と「組み合わせて」投与されると考えられる。可能であれば、本明細書において開示される抗体または抗原結合断片と組み合わせて投与されるさらなる治療剤は、さらなる治療剤の製剤情報シートに列挙されるスケジュールに従って、またはPhysicians’ Desk Reference 2003 (Physicians’ Desk Reference, 57th Ed; Medical Economics Company; ISBN: 1563634457; 57th edition (November 2002))もしくは当技術分野で周知のプロトコールに従って投与される。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体と組み合わせて投与される血管新生抑制剤は、ベバシズマブ(VEGF抗体)、IMC-1C11またはDC101(VEGFR-2抗体)、mF4-31C1(VEGFR-3 抗体)およびビタキシン(インテグリンαβ抗体)などの抗血管性療法のためのモノクローナル抗体である。
【0167】
特定の実施形態では、治療剤は、癌に対する免疫応答を誘導またはブーストし得る。例えば、腫瘍ワクチンを使用して、特定の腫瘍または癌に対する免疫応答を誘導できる。また、サイトカイン療法を使用して、免疫系に対する腫瘍抗原提示を増強できる。サイトカイン療法の例として、制限するものではないが、インターフェロン-α、-βおよび-γなどのインターフェロン、マクロファージ-CSF、顆粒球マクロファージCSFおよび顆粒球-CSFなどのコロニー刺激因子、インスリン増殖因子(IGF-1)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11およびIL-12のようなインターロイキン、TNF-αおよびTNF-βなどの腫瘍壊死因子またはそれらの任意の組合せが挙げられる。免疫抑制標的を不活性化する薬剤、例えば、IL-1-アンタゴニスト(IL-1A)、VEGFR2アンタゴニスト(例えば、バタラニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ)、TGF-β阻害剤、FGFRアンタゴニスト、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)アンタゴニスト(例えば、イマチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ)、上皮成長因子受容体(EGFR、ErbB)アンタゴニスト(例えば、ゲフィチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ)、IL-10阻害剤およびFasリガンド阻害剤またはそれらの任意の組合せも使用され得る。別の群の薬剤として、腫瘍または癌細胞に対する免疫応答性を活性化するもの、例えば、T細胞活性化を増強するもの(例えば、CTLA-4、ICOSおよびOX-40などのT細胞共刺激分子のアゴニスト)および樹状細胞機能および抗原提示を増強するものが挙げられる。
【0168】
抗PD-L1抗体のin vivo有効性のスクリーニングおよび評価
PD-L1抗体またはその抗原結合断片のin vivo有効性(例えば、結合活性または結合親和性)をスクリーニングおよび/または評価するために、非ヒト動物に接種されるヒトPD-L1タンパク質を発現する非ヒト腫瘍細胞を作製する。特定の実施形態では、非ヒト腫瘍細胞は、げっ歯類(例えば、マウス、ラットまたはハムスターなど)細胞である。特定の実施形態では、非ヒト腫瘍細胞は、黒色腫細胞株(B16)またはマウス結腸癌細胞株(MC38)である。非ヒト腫瘍細胞は、内因性非ヒトPD-L1遺伝子セグメントが不活性化されたヒトPD-L1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み得る。標的遺伝子の不活性化は、タンパク質コード配列の遺伝子破壊、変異、付加、遺伝子サイレンシング(例えば、RNAi遺伝子アンチセンス)または内因性遺伝子座での遺伝子欠失(例えば、コード配列またはそれぞれの両端に位置する領域を含むコード配列の部分的もしくは完全欠失)によって引き起こされ得、それによって、非ヒト標的遺伝子の発現を排除もしくは最小化するか、またはそのリガンドによって結合されない機能的に不活性の/末端切断ポリペプチドを作製する。コーディング配列のそれぞれの両端に位置する領域は、5’および3’末端の両方で約1bp~約500bpの範囲内であり得る、またはそれぞれの両端に位置する領域は、500bpより長いものであり得るが、本開示に従うその他の遺伝子の不活性化を含まない。「遺伝子破壊」とは、本明細書において、天然に存在する配列への1つまたは複数のヌクレオチドまたはアミノ酸の付加を指す。遺伝子破壊は、マーカー/リポーター遺伝子の、タンパク質コード配列への付加または挿入であり得る。特定の実施形態では、不活性化は、不可逆的である。特定の実施形態では、不活性化は、標的遺伝子または遺伝子産物について検出可能な活性を有さない細胞をもたらす。標的遺伝子の不活性化は、当技術分野における適した手段、例えば、相同組換え、RNA干渉(RNAi)またはCRISPR/Cas9システムを使用して実施される。特定の実施形態では、ヒトPD-L1タンパク質をコードするヒトPD-L1遺伝子セグメントは、内因性非ヒトPD-L1遺伝子座中に作動可能に挿入される(遺伝子置き換え)。特定の実施形態では、ヒトPD-L1をコードする挿入されたポリヌクレオチドは、無作為に非特異的位置に組み込まれる(遺伝子増大)。なおさらなる実施形態では、ヒトPD-L1をコードするポリヌクレオチドは、エピソームとして、例えば、DNAの別個のエピソームセグメントの形態で細胞中で安定に維持され、エピソームDNAの複製は、宿主細胞周期と独立している、またはそれと同期している。
【0169】
標的遺伝子の完全不活性化を有する非ヒト腫瘍細胞は、細胞表面発現のFACS解析によって、または標的遺伝子転写を検出することによって同定され得る。ヒトPD-L1タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本開示に記載の任意の適した発現ベクター(レンチウイルスベクターなど)を介して、相同組換えおよびトランスジェニック法などの当技術分野で公知の任意の適した方法によって、腫瘍細胞中に導入され得る。標的遺伝子の完全な不活性化および/または導入された対象の遺伝子の発現を有する腫瘍細胞は、細胞表面発現のFACS解析によって、または当技術分野における任意の適した方法によって標的遺伝子転写を検出することによって同定され得る。
【0170】
ヒトPD-L1に対する抗体またはその抗原結合断片のin vivo有効性をスクリーニングまたは評価する方法であって、ヒトPD-L1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む腫瘍細胞を、非ヒト動物中に接種することと、非ヒト動物において抗体を腫瘍細胞と接触させることと、腫瘍細胞の腫瘍量を決定することとを含む方法。本明細書において、「腫瘍量」は、腫瘍体積、数または重量によって測定され得る個体中の腫瘍細胞の量である。腫瘍細胞は、固形腫瘍細胞または非固形腫瘍細胞(血液学的細胞など)であり得る。腫瘍細胞は、ヒト腫瘍細胞または非ヒト腫瘍細胞であり得る。特定の実施形態では、腫瘍細胞は、同質遺伝子的腫瘍モデルを作製するために同質遺伝子的非ヒト動物に接種される。特定の実施形態では、腫瘍細胞は、数回継代培養され、その後、非ヒト動物中に接種される。特定の実施形態では、非ヒト動物は、ヒト免疫系を有する。特定の実施形態では、PD-L1抗体またはその抗原結合断片のin vivo有効性は、対照と比較して、PD-L1抗体を投薬された非ヒト動物における腫瘍体積の成長阻害によって決定される。
【0171】
以下の実施例は、特許請求される本発明をより良好に例示するために提供されるものであって、本発明の範囲を制限すると解釈されてはならない。以下に記載されるすべての特定の組成物、材料および方法は、全体でまたは一部で、本発明の範囲内に入る。これらの特定の組成物、材料および方法は、本発明を制限するよう意図されるのではなく、単に、本発明の範囲内に入る特定の実施形態を例示するよう意図される。当業者は、本発明能力の演習を行うことなく、本発明の趣旨から逸脱することなく、同等の組成物、材料および方法を開発し得る。本発明の範囲内に依然としてありながら、記載される本明細書における手順において多数の変更を行うことができるということは理解されるであろう。このような変更が本発明の範囲内に含まれることは、本発明者の意図するところである。
【実施例
【0172】
[実施例1]PD-L1タンパク質の調製および特徴付け
ヒトPD-L1/CD274タンパク質:組換えヒトPD-L1/CD274タンパク質(受託番号NP_054862.1)(hPD-L1-his)を、ヒト293細胞(HEK293)において発現させた。手短に述べると、C末端に6×hisタグを有する、Phe19-Arg238に由来するヒトPD-L1遺伝子のコーディング領域をトランスフェクションに使用した。His-タグ親和性カラムを使用して上清を精製した。得られた精製タンパク質をSDS pageゲルを使用して特徴付けた。このタンパク質を、ACRO Biosystemから購入した(PD1-H5229)。
【0173】
C-Fcタグを有するヒトPD-L1/CD274:C-Fcタグを有する組換えヒトPD-L1/CD274(受託番号NP_054862.1)(hPD-L1-Fc)を、ヒト293細胞(HEK293)において発現させた。手短に述べると、C末端でヒトIgG1のFc断片と融合しているPhe19-Arg238に由来するヒトPD-L1遺伝子のコーディング領域をトランスフェクションに使用した。Fc-タグ親和性カラムを使用して上清を精製した。得られた精製タンパク質をSDS pageゲルを使用して特徴付けた。このタンパク質をACRO Biosystemから購入した(PD1-H5258)。
【0174】
マウスPD-L1/CD274タンパク質:組換えマウスPD-L1/CD274タンパク質(mPD-L1-his)Phe19-Arg238(受託番号NP_068693)を、C末端で6×hisタグと融合し、ヒト293細胞(HEK293)において産生させた。HEK293細胞から得たトランスフェクション上清を、His-タグ親和性カラムを使用して精製した。得られた精製タンパク質をSDS pageゲルを使用して特徴付けた。このタンパク質をACRO Biosystemから購入した(PD1-M5220)。
【0175】
C-Fcタグを有するマウスPD-L1/CD274:C-Fcタグを有する組換えマウスPD-L1/CD274タンパク質(mPD-L1-Fc)Phe19-Arg238(受託番号NP_068693)を、C末端でヒトIgG1のFc断片と融合し、ヒト293細胞(HEK293)において産生させた。HEK293細胞から得たトランスフェクション上清を、Fc-タグ親和性カラムを使用して精製した。得られた精製タンパク質をSDS pageゲルを使用して特徴付けた。このタンパク質をACRO Biosystemから購入した(PD1-M5251)。
【0176】
Hisタグを有するカニクイザルPD-L1/CD274:組換えカニクイザルPD-L1/CD274タンパク質(cPD-L1-His)Phe19-Arg238(受託番号F6VEW6)を、C末端でポリヒスチジンタグと融合し、ヒト293細胞(HEK293)において産生させた。HEK293細胞から得たトランスフェクション上清を、His-タグ親和性カラムを使用して精製した。得られた精製タンパク質をSDS pageゲルを使用して特徴付けた。このタンパク質をACRO Biosystemから購入した(PD1-C52H4)。
【0177】
C-Fcタグを有するカニクイザルPD-L1/CD274: C-Fcタグを有する組換えカニクイザルPD-L1/CD274タンパク質(cyno PD-L1-Fc)Phe19-Arg238(受託番号F6VEW6)を、C末端でヒトIgG1のFc断片と融合し、ヒト293細胞(HEK293)において産生させた。HEK293細胞から得たトランスフェクション上清をFc-タグ親和性カラムを使用して精製した。得られた精製タンパク質をSDS pageゲルを使用して特徴付けた。このタンパク質をACRO Biosystemから購入した(PD1-C5253)。
【0178】
上記のPD-L1タンパク質を、以下の実験において使用した。
【0179】
[実施例2]抗体作製
1.抗原コンジュゲーションおよび免疫処置
免疫処置のために、組換えhPD-L1-Fc(またはmPD-L1-Fc)タンパク質を、種々のMabSpace免疫増強ペプチドとコンジュゲートした。手短に述べると、2~8倍モル過剰のペプチドをスルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート、Peirce番号22322)活性化hPD-L1-Fcタンパク質と混合し、室温で1時間インキュベートした。反応を停止させ、コンジュゲートされたタンパク質を、SDS-PAGEゲルを使用して解析し、品質管理した。
【0180】
上記のコンジュゲートされたhPD-L1-FcおよびmPD-L1-Fcタンパク質を、それぞれ、フロイントの完全アジュバント(Pierce)を使用して、1:1比で乳化し、次いで、C57B/L6マウスに皮下および腹膜内に免疫処置した。タンパク質の天然コンホメーションを保つために、CpGおよびAlumを使用してさらなる免疫処置を実施した。免疫処置は、少なくとも2週間毎に行い、ELISAアッセイによる抗PD-L1力価解析のために第1の免疫処置後にマウスから抗血清を採取した。血清力価を決定するために、各免疫処置マウスから20μlのマウス血清を調製した。高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、高pHコーティングバッファー(0.16% Na2CO3、0.3% NaHCO3、pH9.8)中のマウスまたはヒトPD-L1-hisからなる、100μl/ウェルの1μg/ml溶液を用いてコーティングした。プレートを4°Cで一晩インキュベートし、次いで、洗浄バッファーPBS+0.1% Tween 20(Sigma)を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。各ウェルに200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%ヤギ血清+0.05% Tween 20)を添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、ブロッキングバッファーを吸引し、100μlの、希釈バッファー(PBS+1% BSA+1%ヤギ血清+0.01% Tween 20)中の段階希釈した血清を、ELISAプレートの各ウェルに移し、室温で60分間インキュベートさせた。次いで、プレートを上記の方法を使用して3回洗浄した。次いで、100μl/ウェルの希釈バッファーで希釈された、HRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスFc抗体(Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを室温で60分間インキュベートさせ、プレートを250μl/ウェル洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを、450nMでThermo Multiscan FCで読み取った。
【0181】
2.融合
融合の4日前、各マウスに、PBS中のコンジュゲートされていないhPD-L1-FcおよびmPD-L1-Fcタンパク質を用いて腹膜内に追加免疫した。融合日に、脾臓を無菌的に採取し、臓器を単細胞懸濁液に加工した。赤血球が溶解し、脾臓細胞をDMEM(Gibco)で洗浄した。生存可能な、対数期成長骨髄腫細胞(SP2/0)を、マウス脾臓細胞と、1:4比で混合した。次いで、細胞を2回洗浄し、その後、PEGで融合した。融合後細胞をDMEMで洗浄し、10%FBS+HFCS+OPI+1X HATを補給した細胞成長培地に懸濁した。ウェルあたり200μlのこの細胞懸濁液を、96ウェル細胞培養プレートにプレーティングし、37℃の加湿10% COインキュベーター中で一晩インキュベートした。培養物を7日間インキュベートし、次いで、成長培地をウェルから吸引除去し、新鮮な成長培地と交換した。ハイブリドーマ上清のスクリーニングは、培地交換の2~3日後に開始した。
【0182】
[実施例2]抗体スクリーニング
1.ELISAアッセイによるPD-L1結合剤についてのスクリーニング
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー中の0.5μg/ml hPD-L1-hisまたはmPD-L1-hisを用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。各ウェルに200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を添加し、室温で2時間インキュベートした。100μlのハイブリドーマ上清を、ELISAプレートの各ウェルに移し、室温で60分間インキュベートさせた。次いで、上記の方法を使用してプレートを3回洗浄した。100μl/ウェルの、ブロッキング溶液で希釈した、HRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスFc抗体(Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを250μl/ウェルの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を停止させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った。ELISA陽性ハイブリドーマウェルから得た細胞を、続いて、さらなる特徴付け研究のために細胞培養において拡大した。
【0183】
2.ELISAにおいてPD-1のPD-L1との結合を阻害するハイブリドーマ上清の遮断活性の評価
高結合透明ポリスチレン96-ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー中の2μg/ml hPD-L1-Fc(Acrobiosystems、カタログ番号PD1-H5258)を用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を、各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。100μlのハイブリドーマ上清をELISAプレートの各ウェルに移し、室温で60分間インキュベートさせた。次いで、プレートを上記の方法を使用して3回洗浄した。80μlの1μg/ml hPD-1-his(ACRO Biosystems、カタログ番号PD1-H5221)を、希釈バッファーとともに各ウェルに添加した。次いで、100μl/ウェルの、ブロッキング溶液で希釈した抗his-HRP(1:4000希釈、CWBIO、カタログ番号CW0285)抗体の溶液をプレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを250μl/ウェルの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った。ELISA陽性ハイブリドーマウェルから得た細胞を、続いて、さらなる特徴付け研究のために細胞培養において拡大した(図1A~Cを参照のこと)。
【0184】
3.FACSによる、PD-1の、腫瘍細胞上のPD-L1との結合を阻害するハイブリドーマ上清の遮断活性の評価
対数期IFN-r刺激された(500U/ml、2日間)HCC827細胞を集め、ブロッキングバッファー(5%BSA+PBS)に再懸濁した。2×10^5個細胞を、各チューブに添加し、次いで、PBS(1500rpm、5分、室温)を用いて1回洗浄した。100μl/チューブのハイブリドーマ上清およびブロッキングバッファーを、対応するチューブ中に添加し、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、1ml PBSを用いて2回洗浄し、続いて、100μl/チューブの3μg/mlのビオチン化hPD-1-Fc-N297A(ACRObiosystems)を添加し、4℃で1時間インキュベートした。PBSを用いて3回洗浄した後、100μl/チューブのストレプトアビジン-PE(EBiosciences)、ブロッキングバッファー中1:200を、各チューブに添加した。細胞を4℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSを用いて2回洗浄し、続いて、細胞を、各サンプルについて150μlのPBSに再懸濁した。次いで、細胞をFACSチューブに移し、フローサイトメトリー(ACEA Bioscience Novocyte)を使用して、抗体の細胞との結合を検出した。
【0185】
4.ELISAによるpH依存性 PD-L1結合についてのスクリーニング
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、0.5μg/mlの高pHコーティングバッファー中のhPD-L1-hisを用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファーPBS+0.1% Tween 20(Sigma)を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。100μlのハイブリドーマ上清を、ELISAプレートの各ウェルに移し、pH7.4またはpH6.0のいずれかで、室温で60分間インキュベートさせた。次いで、pH7.4またはpH6.0のいずれかのバッファーを用い、上記の方法を使用してプレートを3回洗浄した。その後、100μl/ウェルの溶液の、pH7.4のブロッキング溶液で希釈された、HRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスFc抗体(Abcam)を、次いで、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを、200μl/ウェルpH7.4またはpH6.0洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った。ELISA陽性ハイブリドーマウェルから得た細胞を、続いて、さらなる特徴付け研究のために細胞培養において拡大した。クローン23A11(図2A)およびクローン23F11(図2B)の結果が示されている。
【0186】
[実施例3]陽性ハイブリドーマクローンのサブクローニングおよび小規模抗体産生
1.陽性ハイブリドーマクローンのサブクローニング
所望の結合プロフィールおよび遮断活性を有するELISA陽性ハイブリドーマウェルから得た細胞を、選択し、96ウェルプレートにおいて制限希釈を使用して各々プレーティングした。これらの細胞を7日間成長させた。適切な細胞量に到達したら、各ウェルから上清を集め、抗原結合能について再スクリーニングした(実施例2におけるスクリーニングを参照のこと)。
【0187】
各96ウェルプレートから、最高の抗原結合活性を有するクローンを同定し、制限希釈を用いて、さらに、ウェルあたり200μlのハイブリドーマ成長培地を有する96-ウェルプレートで拡大した。7日後、96ウェルプレートから得た細胞を、抗原結合について試験した。サブクローニングを2回超行った。ウェルのうち90超が、陽性結合シグナルを示した場合には、最高の抗原結合活性を有する2つのクローンを同定し、培地を有する24ウェルプレートに移し、さらに2日間成長させた。24ウェルプレートがコンフルエントになると、細胞を6ウェルプレートに移した。5日インキュベートした後、細胞の一部を凍結した。細胞の残部をフラスコに移し、拡大させた。フラスコがコンフルエントになると、さらなるバックアップのために細胞の半量を凍結した(クローンあたり3バイアル)。その他の半量は、抗体産生のための培地を有するフラスコ中でさらに拡大させた。標準方法論を使用してアイソタイプを決定した。
【0188】
2.小規模抗体産生
ハイブリドーマ細胞をローラーボトルに接種し、200~300mlのハイブリドーマ培養培地(Invitrogen)とともに14日間培養した。ハイブリドーマ細胞培養物から以下のとおりにPD-L1モノクローナル抗体(mAb)を精製した。すべての精製プロセスを、室温で実施した。1つの精製スキームを使用して、種々のmAbを精製し、アフィニティークロマトグラフィーを使用した。
【0189】
宿主細胞培養液(CCF)を遠心分離して細胞細片を除去した。次いで、CCF上清を濾過し、希釈し、次いで、プロテインG High Performance(Bio-Rad)というカラムの形態のプロテインGクロマトグラフィー培地上にロードし平衡化した。
【0190】
ローディング後、プロテインGカラムを、フロースルーの280nmでの吸光度がベースラインに戻るまで洗浄した。次いで、グリシン、pH2.5を使用して、PD-L1 mAbをカラムから溶出し、1mLの溶出体積あたり50μLの、1M Tris塩基の保存溶液を添加することによって直ちに中和した。溶出液の280nmでの吸光度をモニタリングし、タンパク質を含有する画分を集めて、プロテインAプールを作製した。
【0191】
精製後、10,000 MWCOメンブラン(Pierce Slide-A-Lyzerまたは透析チューブ)を使用する透析によって、PD-L1 mAbをPBS中で製剤化した。製剤化後、PD-L1 mAbを濾過した。
【0192】
[実施例4]精製PD-L1結合抗体の解析
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー 中の0.5μg/ml hPD-L1-hisを用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。洗浄した。200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を、各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、希釈バッファー(PBS+1%BSA+1%正常ヤギ血清+0.01% Tween-20)を用いて段階希釈した精製抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを上記の方法を使用して3回洗浄した。100μl/ウェルの、希釈バッファー中のHRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスFc抗体(Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを250μl/ウェルの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して終結させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図3を参照のこと)。
【0193】
[実施例5]PD-1の、PD-L1との結合を阻害する精製抗体の遮断活性の評価
1.ELISAにおける評価
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、0.5μg/ml hPD-L1-Fcからなるコーティング溶液を用いて4℃で一晩コーティングした。次いで、洗浄バッファーPBS+0.1% Tween 20(Sigma)を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。各ウェルに、200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、希釈バッファー(PBS+1%BSA+1%正常ヤギ血清+0.01% Tween-20)を用いて段階希釈した抗体(10μg/ml~0.0006μg/ml)を添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを上記の方法を使用して3回洗浄した。1μg/mlのビオチン化hPD-1-Fc-N297A(Acrobiosystem)を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した後、次いで、100μl/ウェルの、希釈バッファーで希釈した、HRPがコンジュゲートされたニュートラアビジン抗体(Pierce)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを250μl/ウェルの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図4Aを参照のこと)。BM-GTは、米国特許第8217849号に開示されるベンチマーク抗体(MPDL-3280A)である。
【0194】
2.FACSによる腫瘍細胞での評価
対数期IFN-r刺激された(500U/ml、2日間)HCC827細胞を集め、ブロッキングバッファー(5%BSA+PBS)に再懸濁した。2×10^5個細胞を、各チューブに添加し、次いで、PBS(1500rpm、5分、室温)を用いて1回洗浄した。100μl/チューブの、ブロッキングバッファーで希釈された抗体を、10μg/mlの最終濃度を含有するように対応するチューブ中に添加し、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、1ml PBSを用いて2回洗浄し、続いて、100μl/チューブの3μg/mlのビオチン化hPD-1-Fc-N297A(Acrobiosystem)を添加し、4℃で1時間インキュベートした。PBSを用いて3回洗浄した後、100μl/チューブの、ブロッキングバッファーで1:200希釈したストレプトアビジン-PE(EBiosciences)を各チューブに添加した。細胞を4℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSを用いて2回洗浄し、続いて、細胞を、各サンプルに対して150μlのPBSに再懸濁した。次いで、細胞をFACSチューブに移し、フローサイトメトリー(ACEA Bioscience Novocyte)を使用して抗体の細胞との結合を検出した(図4Bを参照のこと)。
【0195】
[実施例6]精製PD-L1抗体の用量依存性応答
1.FACSによって測定される、精製PD-L1抗体のHCC827との結合の用量依存性応答
対数期IFN-γ刺激された(500U/ml、2日間)HCC827細胞を集め、ブロッキングバッファー(5%BSA+PBS)に再懸濁した。2×10^5個細胞を、各チューブに添加し、次いで、PBS(1500rpm、5分、室温)を用いて1回洗浄した。100μl/チューブの、ブロッキングバッファーで段階希釈した、ハイブリドーマ上清から精製したPD-L1抗体を、対応するチューブ中に添加し、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を1ml PBSを用いて2回洗浄し、続いて、100μl/チューブのブロッキングバッファー中の二次抗体(1:400抗mIgG (H+L)-PE、Cell signaling)を添加した。細胞を4℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSを用いて2回洗浄し、続いて、細胞を、各サンプルに対して150μlのPBS中に再懸濁した。次いで、細胞をFACSチューブに移し、抗体の細胞との結合を、フローサイトメトリー(BD Accuri C6)を使用して検出した(図5Aを参照のこと)。
【0196】
2.FACSによって測定される、HCC827上のhPD-L1とのhPD-1結合を遮断する、精製PD-L1抗体の用量依存性活性
対数期IFN-γ刺激された(500U/ml、2日間)HCC827細胞を集め、ブロッキングバッファー(5%BSA+PBS)に再懸濁した。2×10^5個細胞を、各チューブに添加し、次いで、PBS(1500rpm、5分、室温)を用いて1回洗浄した。100μl/チューブの、ブロッキングバッファーを用いて段階希釈した、ハイブリドーマ上清から精製したPD-L1抗体を、対応するチューブ中に添加し、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を1ml PBSを用いて2回洗浄し、続いて、100μl/チューブの3μg/mlのビオチン化hPD-1-N297Aを添加し、4℃で1時間インキュベートした。PBSを用いて3回洗浄した後、100μl/チューブの、ブロッキングバッファーで1:200希釈した(ウサギ抗hIgG-PE、Santa Cruz)を各チューブに添加した。細胞を4℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSを用いて2回洗浄し、続いて、細胞を、各サンプルに対して150μlのPBSに再懸濁した。次いで、細胞をFACSチューブ中に移し、フローサイトメトリー(BD Accuri C6)を使用して、抗体の細胞との結合を検出した(図5Bを参照のこと)。
【0197】
[実施例7]ハイブリドーマ抗体のクローニングおよび配列
マウス抗ヒトPD-L1抗体軽鎖および重鎖可変領域の配列は、5’RACE(cDNA末端の迅速増幅)としても知られるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅技術によって得た。4B6/23A11/23F11/22C9/26F5/21F11/18G4抗体産生ハイブリドーマ細胞からTrizol(Invitrogen)を使用して全RNAを単離し、Superscript第一鎖合成システム(Invitrogen)およびオリゴ(DT)12~18プライマー(Invitrogen)を使用してcDNAを合成した。マウスIgG遺伝子の可変領域を、重鎖可変領域のためにMuIgG VH3’-2およびMuIg-5’リーダープライマーを、軽鎖可変領域のためにMuIgK VL3’-1およびMuIg-5”リーダープライマーを用いて(NOVAGEN)、PCRによってクローニングした。各抗体の得られたバンドを、TOPO TAクローニングベクターにクローニングし、10種超のクローンから得たDNAを、配列決定に付し、ABI DNA塩基配列決定法機器(Perkin Elmer)を使用して決定した。Vector NTI Advance 10ソフトウェア(Invitrogen)を使用してコンセンサス配列を決定した。
【0198】
キメラ抗体の作製:配列決定解析および確認後、抗体産生および精製のために、上記の遺伝子各々の可変領域を、組換え発現ベクターにクローニングした、例えば、それぞれ、軽鎖可変領域(VL)の配列をpCP-hIgG1にクローニングし、重鎖可変領域(VH)の配列をpCP-hIgG1にクローニングした。
【0199】
[実施例8]組換えキメラ抗体発現および精製
上記で産生された組換えキメラ抗体タンパク質の発現および精製を、以下の方法によって実施した:1x10個細胞/mlで、10%のPluronic F-68を有するFreestyle 293発現培地で培養したHEK293E細胞を、0.5μg/mlの最終濃度を有する、等量の、重鎖ベクターおよび軽鎖ベクターDNAおよび1.0μg/mlのPEI(ポリエチレンイミン-線形、Polyscience)を用いてトランスフェクトした。DNA対PEI比は、1:2であった。最適MEMを用いて、DNAおよびPEI複合体が形成される期間は、室温で15分でなくてはならない。トランスフェクトされた細胞を、5% COを用い、37℃および125rpmの振盪速度でフラスコ中で培養した。トランスフェクションの22~26時間後に1%ペプトン培地を添加した。6日目にコンディショニング培地を回収し、上清を3000rpmで30分間遠心分離した。次いで、清澄化されたコンディショニング培地を、プロテインAカラム(G.E. Healthcare)上にロードし、PBSおよび0.1% triton-X100を用いて洗浄し、最後に結合しているIgGを、pH3.5の0.1Mグリシンを含有する溶液を用いて溶出した。溶出された抗体タンパク質を、PBSに対して透析し、-80℃で保存した。内毒素を除去するために、精製したタンパク質を、Hitrap DEAEセファロースF.F.カラムを通すことによってさらに処理し、得られた抗体を、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200 5/150 GL、G.E. Healthcare)を使用して解析して、純度のレベルを決定した。
【0200】
[実施例9]精製PD-L1抗体の、カニクイザルおよびげっ歯類PD-L1タンパク質に対する交差反応性およびhPD-L1のhPD-L2に対する結合選択性
1.カニクイザルPD-L1タンパク質との異種間結合
高結合透明ポリスチレン96-ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー中、5μg/mlヒトまたはカニクイザル(cyno)PD-L1-hisを用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を、各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、希釈バッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.01% Tween-20)を用いて段階希釈した抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、上記の方法を使用して3回洗浄した。次いで、100μl/ウェルの、希釈バッファー中の、マウスハイブリドーマ抗体のための、HRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスFc抗体(Abcam)または4B6キメラ抗体のためのヤギ抗ヒトIgG Fc-HRP吸着処理済み(Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを、250μl/ウェル洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルの、TMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを、450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図6A~6Eを参照のこと)。
【0201】
キメラ抗体4B6-Cは、その親抗体4B6と同様の結合親和性を有する。4B6の、ヒトおよびサル抗原に対する結合親和性は、図6Aにおけるように、4B6-Cのものと同様であり、マウスにおける4B6-Cの結合親和性は、図6Eにおけるように、4B6のものと同様である。
【0202】
2.マウスPD-L1タンパク質との異種間結合
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー中の1μg/mlのマウスPD-L1-hisを用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を、各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、希釈バッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.01% Tween-20)中、20μg/mlの精製ハイブリドーママウス抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、250μl/ウェルの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。次いで、100μl/ウェルの、希釈バッファー中の、HRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスFc抗体(Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを250μl/ウェルの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを、450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図6Fを参照のこと)。
【0203】
3.hPD-L2タンパク質との異科間結合
精製抗体(4B6、23A11、26F5、23F11および22C9)のヒトPD-L2タンパク質との結合を、異種間結合について上記で記載されたものと同様にELISAによって評価した。手短に述べると、高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、それぞれ、高pHコーティングバッファー(0.16% Na2CO3+0.3% NaHCO3、pH 9.8)中の、100μl/ウェルの、0.5μg/mlのヒトPD-L1-Fc(Acrobiosystems、カタログ番号PD1-H5258)または100μl/ウェルの1μg/ml hPD-L2-Fc(Acrobiosystems、カタログ番号PD2-H5251)を用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を、各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。100μlの、希釈バッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.01% Tween-20)を有する2μg/mlの精製PD-L1抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。次いで、100μl/ウェルの、希釈バッファー中のHRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG抗体(1:20000、Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを、250μl/ウェルの洗浄バッファーで3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを、各ウェルに15分間添加し、50μl/ウェルの0.16M/L硫酸を使用して反応を終結させた。プレートを、450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図6Gを参照のこと)。
【0204】
図6Gに示されるように、試験した抗体のすべてが、hPD-L1と結合できるが、hPD-L2とは結合できない。
【0205】
[実施例10]精製抗PD-L1抗体の、腫瘍細胞上のPD-L1との結合の特徴付け:FACS結合アッセイ(HCC827細胞)
対数期IFN-γ刺激された(500U/ml、2日間)HCC827細胞を集め、ブロッキングバッファー(5%BSA+PBS)に再懸濁した。2×10^5個細胞を、各チューブに添加し、次いで、PBS(1500rpm、5分、室温)を用いて1回洗浄した。100μl/チューブの、ブロッキングバッファーを用いて段階希釈したビオチン化PD-L1抗体を、対応するチューブ中に添加し、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、1ml PBSを用いて2回洗浄し、続いて、100μl/チューブの、ブロッキングバッファー中の二次抗体(または1:200ウサギ抗ヒトIgG-PE(Santa Cruz)を添加した。細胞を、4℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSを用いて2回洗浄し、続いて、細胞を、各サンプルについて150μlのPBSに再懸濁した。次いで、細胞をFACSチューブに移し、フローサイトメトリー(ACEA Bioscience Novocyte)を使用して、抗体の細胞との結合を検出した(図7を参照のこと)。「C」が付された抗体は、キメラ抗体を表し、抗体「4B6-H3L3」とは、実施例15において産生されたような、重鎖H3および軽鎖L3の組合せを有するヒト化4B6を指す。
【0206】
[実施例11]PD-1の、腫瘍細胞上のPD-L1との結合を阻害する、精製抗PD-L1抗体の遮断活性の評価
対数期IFN-γ刺激された(500U/ml、2日間)HCC827細胞を集め、ブロッキングバッファー(5%BSA+PBS)に再懸濁した。2×10^5個細胞を、各チューブに添加し、次いで、PBS(1500rpm、5分、室温)を用いて1回洗浄した。100μl/チューブの、ブロッキングバッファーを用いて段階希釈したPD-L1抗体(図8を参照のこと)を、対応するチューブに添加し、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、1ml PBSを用いて2回洗浄し、続いて、100μl/チューブの3μg/mlのビオチン化hPD-1-Fc-N297Aを添加し、4℃で1時間インキュベートした。PBSを用いて3回洗浄した後、100μl/チューブの、ブロッキングバッファー中のストレプトアビジン-PE 1:200(EBiosciences)を各チューブに添加した。細胞を4℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSを用いて2回洗浄し、続いて、細胞を、各サンプルについて150μlのPBSに再懸濁した。次いで、細胞をFACSチューブに移し、フローサイトメトリー(ACEA Bioscience Novocyte)を用いて、抗体の細胞との結合を検出した。
【0207】
図8に示されるように、FACS結果は、抗PD-L1抗体は、hPD-1の、腫瘍細胞HCC827上のhPD-L1との結合を阻害する濃度依存性活性を示すということを示した。
【0208】
[実施例12]競合ELISAによる選択された抗PD-L1のエピトープビニング
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、0.5μg/ml hPD-L1-Fcからなるコーティング溶液を用いて、4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄し、続いて、200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を各ウェルに添加した。プレートを室温で2時間インキュベートした。次いで、希釈バッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.01% Tween-20)中、20μg/mlの、段階希釈した競合抗体4B6、23A11、23F11、22C9および21F11を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファーを使用して3回洗浄した。最大結合シグナルの80%をもたらす種々の濃度のビオチン化抗PD-L1抗体(例えば、18G4、23A11、4B6)を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、次いで、100μl/ウェルの、希釈バッファーで希釈したHRPがコンジュゲートされたニュートラアビジン抗体(Pierce)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを室温で60分間インキュベートし、次いで、250μl/ウェルの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを、各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図9A図9Cを参照のこと)。
【0209】
[実施例13]組換えキメラ抗体のpH依存性結合の特徴付け
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレートを、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー中の0.5μg/mlのhPD-L1-his(Acrobiosystems)を用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、コーティングされたプレートを、PBS+0.1% Tween 20(Sigma)を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。次いで、200μlのブロッキングバッファーを、各ウェルに添加し、次いで、プレートを室温で2時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを吸引した後、pH7.4の希釈バッファーで段階希釈したキメラ抗体を添加し、プレートを室温で40分間インキュベートした。次いで、プレートを、250μl/ウェルの、7.4または5.5のpHを有する洗浄バッファーを用いて1回洗浄し、次いで、100μlの、pH7.4またはpH5.5の抗体希釈バッファーを添加し、インキュベーションを室温で2時間継続した。その後、プレートを、250μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄し(洗浄毎に10秒の振盪)、次いで、100μl/ウェルの、pH7.4希釈バッファー中の1:20000希釈されたHRPがコンジュゲートされたヤギ抗ヒトFc抗体(Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、250μlの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した(洗浄毎に10秒の振盪)。最後に、100μl/ウェルのTMBを、各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図10A~Fを参照のこと)。
【0210】
図10A~10Fに示されるように、キメラ抗体23F11、23A11および22C9(図10A~10C)は、hPD-L1とのpH依存性結合を示し(例えば、pH5.5でよりも、pH7.4でより高い結合)、一方、キメラ抗体21F11、4B6、26F5(図10D~10F)は、hPD-L1とのpH依存性結合を示さなかった(pH5.5/pH7.4で同様の結合親和性)。
【0211】
[実施例14]抗PD-L1抗体のin vivo評価
上記で得られた抗PD-L1抗体のin vivo活性を、修飾された同系マウス異種移植片腫瘍モデルを使用して評価した。マウスに、マウス結腸癌細胞株MC38および黒色腫細胞株B16を含む、マウスPD-L1遺伝子がヒトPD-L1と置き換えられているマウス腫瘍細胞を用いて皮下に接種した。抗ヒトPD-L1抗体を、3mg/kg、10mg/kgおよび/もしくは30mg/kgを、週に3回、腹腔内に(IP)、または1、3もしくは10mg/kgの用量で、週に1回静脈内に注射した。参照PD-L1抗体BM-GT(すなわち、米国特許第8217149号(Genentech)において開示されたYW243.55.S70またはMPDL3280A)およびBM-ME(すなわち、米国特許第8779108号の2.14H9OP)を、陽性対照として使用した。媒体群の腫瘍が、1000mmの体積に達した時点で、腫瘍成長に対する抗体の効果を評価した。腫瘍体積および体重を、以下に記載されるように週に2回測定し、腫瘍成長に対する抗体の効果を、媒体群に対する腫瘍成長阻害(TGI)として算出した。
【0212】
1.ヒトPD-L1を発現するマウス腫瘍細胞株の作製
本発明者らが最近開発した高効率CRISPR/Cas9系を使用して、マウス腫瘍細胞株(B16およびMC38は、それぞれATCCから購入した)において内因性CD274/PD-L1をノックアウトした。手短に述べると、マウスCD274/PD-L1遺伝子の第1のコーディングエキソンを標的とするsgRNAを設計し、ヒットエンドラン型CRISPR/Cas9+sgRNA構築物によって細胞をトランスフェクトし、ノックアウト細胞について選択した。内因性CD274/PD-L1が完全ノックアウトされた細胞を、定常状態におけるCD274/PD-L1の細胞表面発現についてのFACS解析によって同定するか、またはインターフェロンγによって刺激し、続いて、標的とされるゲノム領域のTAクローニングおよび配列決定によって確認した。ヒトCD274/PD-L1置き換え細胞株を作製するために、ヒトCD274/PD-L1 cDNAのコード配列を、FG12由来のレンチウイルスベクターにクローニングした。次いで、マウスCD274/PD-L1ノックアウト細胞に、ヒトCD274/PD-L1を発現するレンチウイルスを感染させ、確立された細胞株におけるヒトCD274/PD-L1の高レベルの安定な発現を、FACS解析によって確認した。B16およびMC38の工学的に操作された細胞は、それぞれ、B16-hPD-L1 KI、MC38-hPD-L1 KIと名付けた。
【0213】
2.B16/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおけるPD-L1抗体の抗腫瘍活性
B16細胞を、マウスPD-L1遺伝子を、ヒトPD-L1と置き換えるように工学的に操作し、B16-hPD-L1 KIと名付けた。研究に先立って、B16-hPD-L1 KI細胞を継代5回以内で継代培養し、その後、マウスに接種した。2×10^6個細胞/0.2mLを、10匹の雌のSPF等級C57BL/6マウスの各々にS.C.によって注射した。抗体(例えば、BM-GT、4B6-Cおよび23A11)の第1の用量(3mpkまたは10mpk)を、腫瘍細胞が注射された1日後に注射した。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して二次元で週に2回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)%を、29日目に測定した値に基づいて算出した。結果をPrism GraphPadを使用して解析し、平均±S.E.M.として表した。T検定によって2群間の比較を行い、Pが<0.05である場合に、差違は、有意であると考えられる(表1を参照のこと)。
【0214】

【表1】
【0215】
3.MC38/ヒト-PD-L1ノックイン(KI)腫瘍モデルにおけるPD-L1抗体の抗腫瘍活性
マウスPD-L1遺伝子を、ヒトPD-L1と置き換えるように工学的に操作されたMC-38細胞は、MC38-hPD-L1 KIと名付けられる。MC38/hPDL1-KI腫瘍細胞を、大気中、5% COを有する雰囲気下、37℃で、10%加熱不活性化ウシ胎児血清(ExCell Biology)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Hyclone)を補給したRPMI1640培地(Thermo Fisher)で単層培養としてin vitroで維持した。腫瘍細胞を、トリプシン-EDTA処置(Hyclone)によって週に2回ルーチンで継代培養した。対数増殖相で成長している細胞を回収し、腫瘍接種についてカウントした。雌のSPF等級C57BL/6マウス各々に、2×10^6個細胞を右側腹部でS.C.注射によって接種した。接種のおよそ10日後、およそ100mm^3の腫瘍体積を有する40匹のマウスを選択し、5群に無作為化した(表2中のスキームを参照のこと)。次いで、マウスを、PBS、1mg/mlでPBSで製剤化された、精製抗体ハイブリドーマ由来のマウス抗体4B6、23A11、23F11、26F5各々のIP注射による10mg/体重1kgを用いて処置した。処置は、第1の注射から、週に3回、4週間継続した。動物を、CO吸入を用いて研究の最後に犠死させた。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週に2回測定し、体積を、式:V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで表した。結果を、Prism GraphPadを使用して解析し、平均±S.E.M.として表した。T検定によって2群間の比較を行い、Pが*<0.05および**<0.01である場合に差違は有意であると考えられる。(表3を参照のこと)。
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
表3および図11A~11Cに示されるように、研究の最後に、対照群における平均腫瘍体積は、出発点での体積よりも6.7倍大きい。それぞれ、抗体4B6、23A11、25F5および23F11で処置されたマウスの4/8、6/8、7/8および7/8が、検出可能な腫瘍を有しておらず、したがって、完全奏功と考えられ得る。4B6処置群中のマウスの2/8は、>70%腫瘍低減を有していた(図11Bを参照のこと)。これらのデータは、これらの抗体が、定着腫瘍の成長の極めて強力な阻害剤であり、マウスの大部分において腫瘍を排除する能力を有することを示した。
【0219】
4.MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおけるPH依存性PD-L1抗体の抗腫瘍活性
pH依存性抗体が、腫瘍阻害においてin vivoで任意の利点を有するか否かを評価するために、本発明者らは、pH依存性抗体23F11の1種および非pH依存性結合抗体4B6-Cの1種の活性を比較した(図12Aおよび12Bを参照のこと)。これらの抗体は、強力な中和活性を有し、また、高用量で腫瘍を阻害し得る。pH依存性抗体の潜在的利点を明らかにするために、本発明者らは、抗体を低用量:IP注射による1mg/kgで試験する。手短に述べると、雌のSPF等級C57BL/6マウス各々に、2×10^6個細胞(すなわち、MC38-hPD-L1 KI)を右側腹部でS.C.注射によって接種した。接種のおよそ10日後、およそ200mm^3の腫瘍体積を有する40匹のマウスを選択し、5群に無作為化した。次いで、マウスを1mg/mlでPBSで製剤化された精製抗体各々の1mg/体重1kgでのIP注射によって、PBS、4B6-キメラ(4B6-C)、23F11、ベンチマーク抗体BM-GT(米国特許第8217149号においてYW243.55.S70またはMPDL3280Aとも名付けられた)およびBM-ME(米国特許第8779108号において2.14H9OPTとも名付けられた)を用いて処置した。処置は、各週3回施し、第1の注射後3週間継続した。動物を、CO吸入によって研究の最後に犠死させた。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週に2回測定し、体積を、式:V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで表した。結果を、Prism GraphPadを使用して解析し、平均±S.E.M.として表した。T検定によって2群間の比較を行い、Pが<0.05である場合に差違は有意であると考えられる。
【0220】
図12Aおよび12Bにおけるデータは、pH依存性結合特性を有する抗体は、pH依存性結合特性を有さない抗体よりも腫瘍成長をかなりより強力に阻害することを示した。1mg/kg用量の抗体23F11を用いる処置は、8匹のマウスのうち3匹において腫瘍の完全消失をもたらし、8匹のうち1匹は、PBS処置群と比較して腫瘍体積の70%超の低減を有していた。非pH依存性結合抗体4B6-Cを用いる処置は、腫瘍体積の有意ではない低減をもたらし、どのマウスも、出発点でのその体積よりも大きい腫瘍を有していた。したがって、pH依存性結合を有する抗体は、腫瘍成長の阻害において非pH依存性結合抗体よりも低い用量で働き得る。
【0221】
MC38/ヒト-PD-L1 KI腫瘍モデルにおける抗体18G4(図12Cおよび12Dを参照のこと)および22C9(図12Eおよび12Fを参照のこと)の腫瘍成長の阻害も、静脈から送達した場合に試験した。手短に述べると、MC38/hPD-L1腫瘍細胞を、C57/BL6マウスにこれまでのように接種し、6日間成長させた。その時点で、およそ120mmの平均腫瘍体積を有するマウスを選択し、各8匹のマウスの群に無作為化した。各試験抗体を、1または3mg/kgの、等体積中のハイブリドーマ培養物から精製された精製抗体18G4および22C9で、0日目および続いて最大25日目に個々のマウスにIV投薬した。動物を、CO吸入を用いて研究の最後に犠死させた。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週に2回測定し、体積を、式:V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで表した(表4および図12C~12Fを参照のこと)。腫瘍体積が、測定可能な大きさ未満に低下することなく、処置の開始時の腫瘍体積の<50%に低減した場合には、部分(PR)として、腫瘍量が、触知できなくなった場合には完全(CR)として腫瘍退縮を記録する(表5を参照のこと)。図12C~12Fにおける結果を、Prism GraphPadを使用して解析し、平均±S.E.M.として表した。T検定によって2群間の比較を行い、Pが<0.05である場合に差違は有意であると考えられる。データは、1または3mg/kg用量で、18G4(表4および5ならびに図12Cおよび12Dを参照のこと)および22C9(表4および5ならびに図12Eおよび12Fを参照のこと)は、同一条件下で腫瘍成長の阻害において極めて活性であることを示した。
【0222】
【表4】
【0223】
【表5】
【0224】
5. MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおけるキメラpH依存性PD-L1抗体の抗腫瘍活性
pH依存性抗原結合特性を有する抗体が、in vivoでpH依存性結合を有さないものよりも良好に腫瘍成長を阻害し、Fcドメインの潜在的影響を排除し得ることをさらに検証するために、本発明者らは、HEK293細胞(すなわち、BM-GT)においてベンチマーク抗体と同一のIgGアイソタイプ(すなわち、ヒトIgG1)を用いて産生したキメラ抗体(すなわち、23A11-Cおよび23F11-C)を再試験した。
【0225】
手短に述べると、MC38/hPD-L1 KI細胞を接種し、腫瘍体積が100mmであった時点で、1mg/kgでのIP注射による抗体の処置を開始し、抗体を週に3回のIP注射で投与した。結果をPrism GraphPadを使用して解析し、平均±S.E.M.として表した。T検定によって2群間の比較(試験対媒体)を行い、Pが<0.05である場合に差違は有意であると考えられる。
【0226】
図13Aおよび13Bに示されるように、1mpkのキメラpH依存性抗体(すなわち、23A11-Cおよび23F11-C)を注射されたMC38/ヒト-PD-L1マウス腫瘍モデルにおける腫瘍体積は、1mpkのベンチマーク抗体(すなわち、BM-GT)のものよりも小さかった。
【0227】
[実施例15]ヒト化抗体の作製および特徴付け
1.ヒト化抗体の作製、発現および精製
マウス抗体4B6、23A11および23F11の可変ドメインの配列を使用して、マウスフレームワークに対して最高の相同性を有する生殖系列配列を同定した。コンピュータモデリングを使用して、CDRグラフティングおよび逆変異を用いてヒト化バリアントを設計した。
【0228】
4B6
CDRグラフティングのために、それぞれ、軽鎖についてヒト生殖系列フレームワーク配列VK/1D-13および重鎖についてVH/1-2を使用した。
【0229】
3つのCDRを生殖系列配列(配列番号87)に直接グラフトすることならびにそれぞれ、HCバリアント3(配列番号65)のK12V、T28V、V68A、R72V、T74K、S77RおよびHCバリアント4(配列番号67)のT28V、R72V、S77Rの逆変異によって、重鎖(HC)バリアント3および4を得た(図14Aを参照のこと)。
【0230】
4B6 HCの生殖系列配列:
VH/1-2(4B6-生殖系列、配列番号87):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCAR
【0231】
VH/1-2バリアント3(4B6-Hzd-HC-V3、配列番号65):
QVQLVQSGAEVVKPGASVKISCKASGYVFTDYYMNWVKQAPGQGLEWIGDINPNNGGTSYNQKFQGRATVTVDKSTRTAYMELSRLRSDDTAVYYCVKWGDGPFAYWGQGTLVTVSS
【0232】
VH/1-2バリアント4(4B6-HC-V4、配列番号67):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYVFTDYYMNWVRQAPGQGLEWIGDINPNNGGTSYNQKFQGRVTVTVDTSIRTAYMELSRLRSDDTAVYYCVKWGDGPFAYWGQGTLVTVSS
【0233】
3つのCDRを生殖系列配列(配列番号88)に直接グラフトすることならびにそれぞれ、LCバリアント3(配列番号66)のL4M、P8Q、L78M、Y87FおよびLCバリアント4(配列番号68)のL4M、Y87Fの逆変異によって、軽鎖(LC)バリアント3および4を得た(図14Bを参照のこと)。
【0234】
4B6 LCの生殖系列配列:
VK/1D-13(4B6 LC生殖系列、配列番号88)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNNYP
【0235】
VK/1D-13バリアント3(4B6-Hzd-LC-V3、配列番号66)
DIQMTQSQSSLSASVGDRVTITCQASQNVGAAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASNRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSMQPEDIATYFCQQYSNYPTFGSGTKLGIK
【0236】
VK/1D-13バリアント4(4B6-LC-V4、配列番号68)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQNVGAAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASNLYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDIATYFCQQYSNYPTFGSGTKLGIK
【0237】
23A11
CDRグラフティングのために、それぞれ、重鎖についてヒト生殖系列フレームワーク配列VH/1-2および軽鎖についてVK/7-3を使用した。
【0238】
3つのCDRを生殖系列配列(配列番号89)に直接グラフトすることならびにそれぞれ、HCバリアント3(配列番号71)のV20L、M48I、V68A、M70L、R72V、T75K、R87TおよびHCバリアント5(配列番号189、配列番号69中の第1のアミノ酸LがQに変換されている)のM48I、M70L、R72Vの逆変異によって、重鎖(HC)バリアント3および5を得た(図15Aを参照のこと)。
【0239】
23A11 HCの生殖系列配列:
VH/1-2(23A11-HC-生殖系列、配列番号89):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCAR
【0240】
VH/1-2バリアント3(23A11-HC-V3、配列番号61):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKLSCKASGYIFTTYWIHWVKQRPGQGLEWIGMIQPNSGGTKYNDQFKNRATLTVDKSISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARGAGTVDYFDYWGQGTTLSISS
【0241】
VH/1-2バリアント5(23A11-HC-V5、配列番号189):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYIFTTYWIHWVRQAPGQGLEWIGMIQPNSGGTKYNDQFKNRVTLTVDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARGAGTVDYFDYWGQGTTLSISS
【0242】
3つのCDRを生殖系列配列(配列番号90)に直接グラフトすることならびにそれぞれ、HCバリアント3(配列番号72)のP15V、P47S、Q54R、V62I、G72R、N89T、L93HおよびHCバリアント5(配列番号70)のP15V、P47A、Q54R、V62I、G72R、N89T、L93Qの逆変異によって、軽鎖バリアント3および5を得た(図15B)。
【0243】
23A11 LCの生殖系列配列
VK/7-3(23A11-LC-生殖系列、配列番号90):
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSELGINLIHWYQQKPGQPPKLLIYQASNKDTGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEANDTANYYCLQSKNFP
【0244】
VK/7-3バリアント3(23A11-LC-V3、配列番号72):
DIVLTQSPASLAVSVGQRATITCRASESVDIYGNSFMHWYQQKPGQSPKLLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEANDTATYYCHQSNDDPYTFGGGTKLETK
【0245】
VK/7-3バリアント5(23A11-LC-V5、配列番号70):
DIVLTQSPASLAVSVGQRATITCRASESVDIYGNSFMHWYQQKPGQAPKLLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEANDTATYYCQQSNDDPYTFGGGTKLETK
【0246】
23F11
CDRグラフティングのために、それぞれ、重鎖についてヒト生殖系列フレームワーク配列VH/1-2および軽鎖についてVK/7-3を使用した。
【0247】
3つのCDRを生殖系列配列(配列番号91)に直接グラフトすることならびにそれぞれ、HCバリアント4(配列番号75)のV20L、M48I、R67K、V68A、M70L、R72V、T74K、R87TおよびHCバリアント6(配列番号77)のM48I、R67K、V68A、M70L、R72Vの逆変異によって、重鎖(HC)バリアント4および6を得た(図16Aを参照のこと)。
【0248】
23F11 HCの生殖系列配列:
VH/1-2(23F11生殖系列HC、配列番号91):
VQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCAR
【0249】
VH/1-2バリアント4(23F11-HC-V4、配列番号75):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKLSCKASGYIFTTYWMHWVKQRPGQGLEWIGMIQPNSGGTKYNEKFKKKATLTVDKSISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARGAGTVDYFDYWGQGSTLTVSS
【0250】
VH/1-2バリアント6(23F11-HC-V6、配列番号77):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYIFTTYWMHWVRQAPGQGLEWIGMIQPNSGGTKYNEKFKKKATLTVDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARGAGTVDYFDYWGQGSTLTVSS
【0251】
3つのCDRを生殖系列配列(配列番号92)に直接グラフトすることならびにそれぞれ、LCバリアント4(配列番号76)のP15V、Q54R、V62I、N89T、L93QおよびLCバリアント6(配列番号78)のP15V、Q54R、V62I、N89T、L93Hの逆変異によって、軽鎖バリアント4および6を得た(図16Bを参照のこと)。
【0252】
23F11 LCの生殖系列配列
VK/7-3(23F11生殖系列LC、配列番号92):
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSELGINLIHWYQQKPGQPPKLLIYQASNKDTGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEANDTANYYCLQSKNFP
【0253】
VK/7-3バリアント4(23F11-LC-V4、配列番号76):
DIVLTQSPASLAVSVGQRATITCRASESVDIYGNSFMHWYQQKPGQPPKLLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEANDTATYYCQQSTEDPYTFGGGTKLEIK
【0254】
VK/7-3バリアント6(23F11-LC-V6、配列番号78):
DIVLTQSPASLAVSVGQRATITCRASESVDIYGNSFMHWYQQKPGQPPKLLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVEANDTATYYCHQSTEDPYTFGGGTKLEIK
【0255】
上記の重鎖および軽鎖cDNAを合成し、当技術分野で周知のようにFc領域のエフェクター機能を低減または最小化するために、Fc領域中にN297A変異を有するヒトIgG1の定常領域と融合した(本明細書において記載される重鎖残基の番号付けは、カバットのEUインデックスに従う(Kabat et al., ”Proteins of Immunological Interest”, US Dept. of Health & Human Services (1983)を参照のこと))。選択した抗体遺伝子の重鎖および軽鎖の可変領域を合成し、発現ベクター中にクローニングし、Promega製のPureYield(商標)Plasmid Maxiprep系を使用して大規模DNAを調製した。Invitrogen製のExpiFectamine(商標)293試薬を、製造業者のプロトコールに従って使用してトランスフェクションを実施した。細胞生存がおよそ50%であった時点で上清を回収した。プロテインAビーズおよびクリーンな上清を、振盪しながら4℃で2時間インキュベートし、その後、カラムを通した。カラムの内側のプロテインAビーズをPBSを用いて洗浄し、100mMグリシンバッファー(pH3.0)を使用して、抗体を溶出し、これをPBSバッファー(137mM NaCl、2.7mM KCl 10mM NaHPO、2mM KHPO、pH7.4)に対して4℃で一晩透析した。最後に、Pierce High Capacity Endotoxin Removal Resin(Invitrogen、カタログ番号88271)を使用して内毒素を除去した。SDS-PAGEおよびSEC-HPLCによって精製抗体を特徴付けた。
【0256】
2.ELISAにおけるヒト化抗体の、hPD-L1との結合
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー中の0.5μg/mlのヒトPD-L1-his(Acrobiosystems、カタログ番号PD1-H5229)を用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を、各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。希釈バッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.01% Tween-20)を用いて段階希釈したヒト化抗体(293細胞において産生された)を添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。100μl/ウェルの、希釈バッファー中のHRPがコンジュゲートされたヤギ抗ヒトFc抗体(Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを、200μl/ウェルのpH7.4洗浄バッファーを使用して3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを、各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを、450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図17Aおよび17Bを参照のこと)。
【0257】
3. ELISAにおけるhPD-L1とのhPD-1結合の遮断
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、1μg/ml hPD-L1-Fcからなるコーティング溶液を用いて、4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄した。200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、希釈バッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.01% Tween-20)を用いて段階希釈した抗体(すなわち、293細胞において産生されたヒト化4B6、23F11、23A11ならびに同様に293細胞において産生されたベンチマーク抗体BM-GTおよびBM-ME)を添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを上記の方法を使用して3回洗浄した。1μg/mlのビオチン化hPD-1-N297A(Acrobiosystem)を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した後、100μl/ウェルの、希釈バッファー中の1:5000希釈したHRPがコンジュゲートされたニュートラアビジン抗体(Pierce)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートさせ、次いで、プレートを、250μl/ウェルの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図18A~18D参照のこと)。
【0258】
図16中のデータは、ヒト化抗体の一部は、ヒトPD-1とのヒトPD-L1結合の阻害において、他のものよりも有意により強力であることを示した。
【0259】
4.FACSによって測定されるHCC827上のhPD-L1とのhPD-L1抗体の結合
対数期IFN-γ刺激された(500U/ml、2日間)HCC827細胞を集め、ブロッキングバッファー(5%BSA+PBS)に再懸濁した。2×10^5個細胞を、各チューブに添加し、次いで、PBS(1500rpm、5分、室温)を用いて1回洗浄した。100μl/チューブの、ブロッキングバッファーで段階希釈したヒト化PD-L1抗体(293細胞において産生された)を、対応するチューブに添加し4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、1ml PBSを用いて2回洗浄し、続いて、100μl/チューブの、ブロッキングバッファー中の二次抗体(1:200ウサギ抗ヒトIgG-PE)を添加した。細胞を4℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSを用いて2回洗浄し、続いて、細胞を、各サンプルに対して150μlのPBSに再懸濁した。次いで、細胞をFACSチューブに移し、フローサイトメトリー(ACEA Bioscience Novocyte)を用いて抗体の細胞との結合を検出した(図19を参照のこと)。
【0260】
5. FACSによって測定されるHCC827上のhPD-L1との、hPD-1結合の遮断
対数期IFN-γ刺激された(500U/ml、2日間)HCC827細胞を集め、ブロッキングバッファー(5%BSA+PBS)に再懸濁した。2×10^5個細胞を、各チューブに添加し、次いで、PBS(1500rpm、5分、室温)を用いて1回洗浄した。以下の実験における小規模産生のための、100μl/チューブの、ブロッキングバッファーで段階希釈されたヒト化PD-L1抗体(293細胞において発現された抗体は、「旧」と名付け、CHO細胞において産生されたものは、「新」と名付けた。すなわち、4B6-H3L4、4B6-H4L3、23A11-H3L5 293および23F11 H4L4 293は、293細胞において産生され、23A11-H3L5 CHOおよび23F11 H4L4 CHOは、CHO細胞において産生された)を、対応するチューブに添加し、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、1mlのPBSを用いて2回洗浄し、続いて、100μl/チューブの、3μg/mlのビオチン化hPD-1-N297Aを添加し、4℃で1時間インキュベートした。PBSを用いて3回洗浄した後、100μl/チューブの、ブロッキングバッファー中のストレプトアビジン-PE 1:200を各チューブに添加した。次いで、細胞を4℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSを用いて2回洗浄し、続いて、細胞を、各サンプルに対して150μlのPBSに再懸濁した。次いで、細胞を、FACSチューブに移し、フローサイトメトリー(ACEA Bioscience Novocyte)を用いて抗体の細胞との結合を検出した(図20Aおよび20Bを参照のこと)。
【0261】
[実施例16]混合リンパ球反応(MLR)においてT細胞活性化を刺激する精製ヒト化抗体の能力の評価
PD-1/PD-L1媒介性T細胞活性化の阻害の軽減における、抗PD-L1抗体の能力を評価するために、本発明者らは、混合リンパ球反応(MLR)アッセイを実施した。第1の実験では、DCは、新鮮ヒト血液から単離された接着末梢血単核細胞(PBMC)に由来した。PBMCを、血清不含培地を用いて2×10^6個/mlの密度で6ウェルプレート中にプレーティングした。2時間後、懸濁液細胞を廃棄し、接着細胞を、10ng/mlのGM-CSFおよび30ng/ml IL-4を用いて処置した。培地を3日毎に交換し、6日目に20ng/mlのTNFαを添加して、DC細胞を成熟させた。7日目に、抗CD11c-PE(Biolegend)および抗HLA-DR-APC(Biolegend)を使用するFACSによって、DCの表現型を検出した。CD4T細胞濃縮キット(Stem Cell Inc.)を使用して、別のドナーの新鮮な血液からCD4T細胞を分離した。DCがマイトマイシンC(10μg/mlで2時間)によって処置された後、DCおよびCD4T細胞およびPD-L1抗体を、DC 1:CD4 T 10の比で200μl/ウェルに添加し、37℃、5% COインキュベーターで5日間インキュベートした。次いで、上清のIL-2およびIFN-γを、IL-2デュオセット〔duo-set〕(R&D)およびIFN-γ検出キット(Peprotech)を使用して検出した(図21Aおよび21Bを参照のこと)。T細胞の増殖を、CellTiter-Glo発光細胞生存アッセイキット(Promega)によって測定した。
【0262】
第2の実験では、1:1体積のフィコール溶液を添加し、続いて、30分間遠心分離した後に、末梢血を回収し、PBMCを単離した。PBMCを使用し、CD14コーティングした磁性ビーズおよびCD4陰性磁性ビーズを使用して、単球およびT細胞を単離した。上記で得た単球を、500U/ml IL-4(R&D)および250U/mlのGM-CSF(R&D)の存在下で7日間培養し、続いて、100ng/mlのTNFα(R&D)を添加し、培養をさらに3日間継続することによって分化させた。上記で得られたDC細胞をカウントし、ウェルあたり100μlの体積中の10,000個のDC細胞を、50μl体積中の100,000個のT細胞と混合し、次いで、50μl体積の得られた抗体または対照IgGを添加し、ヒトPD-L1(1μg/mlの最終濃度)をさらに添加して、または添加せずに2連で5日間培養した。上清を回収し、ELISA(R&D)を使用してIL-2およびIFNγの濃度を定量した(図21Cおよび21Dを参照のこと)。
【0263】
[実施例17]Biacoreによる選択ヒト化抗PD-L1抗体の結合親和性の評価
CM5センサーチップを、新たに調製した1:1 50mM N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS):200mM 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)の7分注射(10μl/分)によって各フローセル中で活性化した。次いで、10mM 酢酸ナトリウムバッファーPH5.0中、10μg/mlの濃度の抗ヒトFc抗体(GE Healthcare)を、10μl/分で活性化されたチップ上に注入した(HBS-EPランニングバッファー:10mM HEPES、150mM NaCl、3.4mM EDTA、0.005%界面活性剤P20、pH7.4)。残存する活性カップリング部位を、10μl/分で1Mエタノールアミンの7分注射によってブロックした。各フローセルの固定化レベルは、約9000RUである。FC2において、抗ヒトFc IgG(GE Healthcare)によって抗体を200~300RUに捕獲した。FC1を参照細胞として使用した。抗体の捕獲後、抗原を種々の濃度で注入した。抗体結合抗原の会合時間は、180秒である。表面再生条件は、Gly pH1.5において10μl/分で120秒である。捕獲された抗体を有さないものから差し引かれた捕獲された抗体のシグナルを、Biacore X100評価ソフトウェアバージョン2.0(Biacore)を用いて算出した。
【0264】
【表6】
【0265】
ヒトPD-1/hPD-L1間の相互作用は弱く、約7500+/-2200nMのKを有することが知られている(N=6、Cheng X et al., Structure and interactions of the human programmed cell death 1 receptor, J Biol Chem. 2013;288(17):11771-85)。したがって、表6に示される本発明者らの抗体は、hPD-L1と結合する先行技術のPD-1よりも約100倍高い親和性を有する。
【0266】
[実施例18]選択PD-L1中和ヒト化抗体のpH依存性結合の評価
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレートを、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー中、0.5μg/mlのPD-L1-his を用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、コーティングしたプレートを、PBS+0.1% Tween 20(Sigma)を用いて自動プレート洗浄機で1回洗浄した。次いで、200μlのブロッキングバッファーを、各ウェルに添加し、次いで、プレートを室温で2時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを吸引した後、pH7.4の希釈バッファーで段階希釈した抗体(すなわち、CHOまたは293細胞によって産生された23A11 H3L5、23F11 H4L4)を添加し、プレートを室温で40分間インキュベートした。次いで、プレートを250μl/ウェルの、pH7.4の洗浄バッファーを用いて1回洗浄し、次いで、100μl/ウェルの、pH7.4またはpH5.5洗浄バッファーを添加し、インキュベーションを、振盪しながら室温で2時間継続した。その後、プレートを、pH7.4の洗浄バッファーを使用して3回洗浄し、100μl/ウェルの、pH7.4希釈バッファー中の HRPがコンジュゲートされたヤギ抗ヒトFc抗体(Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、プレートを室温で60分間インキュベートさせ、続いて、200μl/ウェルのpH7.4洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図22A図22Eを参照のこと)。
【0267】
広範囲のpHにわたるpH依存性hPD-L1結合の特徴付け
pH依存性結合親和性を、pH4、pH4.5、pH5.0、pH5.5、pH6.0、pH7.4などの種々のpHでさらに測定した。ELISAによる測定を、上記の方法と同様に実施した。高結合透明ポリスチレン96ウェルプレートを、100μl/ウェルの、高pHコーティングバッファー中0.5μg/mlのhPD-L1-hisを用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、コーティングしたプレートを、PBS +0.1% Tween 20(Amresco)を用いて自動プレート洗浄機で10秒間振盪しながら3回洗浄した。次いで、200μlのブロッキングバッファー(1% BSA(Solarbio)+1%正常ヤギ血清(Solarbio)+0.05% Tween 20(Amresco))を、各ウェルに添加し、次いで、プレートを室温で2時間インキュベートし、上記のように3回洗浄した。ブロッキングバッファーを吸引した後、100μlの、pH7.4の希釈バッファー(1% BSA (Solarbio)+1%正常ヤギ血清(Solarbio)+0.01% Tween 20 (Amresco))で段階希釈した抗体(すなわち、293細胞によって産生された23A11 H3L5、23F11 H4L4および22C9-C)を添加し、プレートを室温で40分間インキュベートした。次いで、プレートを250μl/ウェルの、pH7.4、pH6.0、pH5.5、pH5.0、pH4.5またはpH4.0の洗浄バッファーを用いて1回洗浄し、次いで、100μl/ウェルpH7.4またはpH5.5の洗浄バッファーを添加し、インキュベーションを振盪しながら室温で2時間継続した。その後、プレートをpH7.4の洗浄バッファーで3回洗浄し、100μl/ウェルの、pH7.4希釈バッファー中のHRPコンジュゲートされたヤギ抗hIgG HRP抗体(1:20000、Abcam)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、プレートを、室温で60分間インキュベートさせ、続いて、250μl/ウェルの、pH7.4洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを各ウェルに15分間添加し、50μl/ウェルの0.16M/L硫酸を使用して反応を終結させた。プレートを、450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図23A~23Fを参照のこと)。測定は3連で実施した。
【0268】
各抗体について、低pHでの結合シグナルは、pH7.4でのものに対して低かった。pHが低いほど、結合シグナルは、特定の濃度の抗体でより低い。pH5で、高濃度、例えば、0.1、0.3または1μg/mlで試験した3種の抗体の結合シグナルは、pH7.4でのそのシグナルの50%よりも低く、pH5.5では、3種の試験した抗体のシグナルは、pH7.4のものの75%未満である。
【0269】
[実施例18]アラニンスキャンによる選択抗PD-L1のエピトープビニング
1. 変異体ヒトPD-L1組換えタンパク質の作製
細胞外ヒトPD-L1(アミノ酸19~238)およびヒトIgG1のFc断片のcDNAコーディングを、in vitroで合成した(配列番号107は、アミノ酸配列であり、配列番号108は、対応するDNA配列である)。以下に列挙される、指定された位置での単一アミノ酸変更を有するヒトPD-L1のバリアントを、以下に記載されるようなオーバーラップPCRによって、(表7)に示されるプライマー(Dr.Oligo BLP-192、Biolytic)を使用して増幅した。得られた断片を、それぞれ、5’および3’末端でHind IIIおよびBamH Iについて制限酵素を用いて消化した。次いで、PCR産物を、Synoアセンブリーミックス試薬(Synbio)を、製造業者の説明書に従って使用する相同組換えの方法によってpcDNA3.1(+)ベクターにクローニングした。プラスミドは、精製したQIAGEN Plasmid Megaキット(QIAGEN)であった。
【0270】
アミノ酸配列(配列番号107):
METDTLLLWVLLLWVPGSTGFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERENLYFQGAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0271】
DNA配列(配列番号108):
AAGCTTgccgccaccATGGAAACCGACACTCTGCTGCTGTGGGTGCTGCTGCTGTGGGTGCCAGGGTCAACCGGGTTCACCGTGACAGTGCCCAAGGACCTGTACGTGGTGGAGTACGGCAGCAACATGACCATCGAGTGCAAGTTCCCCGTGGAGAAGCAGCTGGATCTGGCCGCCCTGATCGTGTATTGGGAGATGGAGGACAAGAACATCATCCAGTTCGTGCACGGCGAAGAGGACCTGAAGGTGCAGCACAGCAGCTACAGGCAGAGGGCCAGACTGCTGAAGGACCAGCTGTCTCTGGGAAACGCAGCTCTGCAGATCACCGACGTGAAGCTGCAGGACGCAGGAGTCTACCGCTGCATGATCAGCTACGGCGGAGCCGACTACAAGAGGATCACCGTGAAGGTCAACGCCCCCTACAACAAGATCAACCAGAGAATCCTGGTGGTGGACCCCGTGACCAGCGAGCACGAGCTGACTTGTCAGGCAGAGGGCTACCCCAAGGCCGAAGTGATTTGGACCAGCAGCGACCATCAGGTGCTGAGCGGAAAGACCACCACCACCAACAGCAAGCGGGAGGAGAAGCTGTTCAACGTGACCAGCACCCTGCGGATCAACACCACCACCAACGAGATCTTCTACTGCACCTTCCGGAGACTGGACCCAGAGGAGAACCACACAGCCGAGCTGGTCATCCCAGAACTGCCTCTGGCTCACCCTCCTAACGAGAGAGAGAATCTGTATTTTCAGGGAGCACCAGAACTGCTGGGAGGACCATCCGTGTTCCTGTTTCCACCCAAACCTAAGGACACCCTGATGATTAGCAGAACACCAGAAGTCACTTGCGTGGTCGTGGACGTGTCCCACGAGGACCCCGAAGTCAAATTCAACTGGTACGTGGATGGCGTCGAGGTGCATAATGCTAAGACCAAACCAAGAGAGGAACAGTACAACAGCACCTATAGGGTCGTGTCCGTCCTGACAGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGAAAGGAGTATAAATGCAAGGTGTCTAACAAGGCCCTGCCAGCTCCCATCGAGAAGACTATTAGTAAAGCTAAGGGCCAGCCCCGCGAACCTCAGGTGTACACCCTGCCTCCATCCCGAGACGAGCTGACCAAGAACCAGGTCTCTCTGACTTGTCTGGTGAAGGGATTCTATCCATCAGATATCGCAGTGGAGTGGGAAAGCAATGGCCAGCCCGAGAACAATTACAAGACTACCCCCCCTGTGCTGGACTCCGATGGCTCTTTCTTTCTGTATTCTAAACTGACCGTGGATAAGAGTCGGTGGCAGCAGGGGAATGTCTTTTCATGCAGCGTGATGCACGAGGCACTGCACAATCATTACACTCAGAAGTCCCTGTCACTGTCACCTGGAAAGtagGGATCC
【0272】
上記で作製した野生型PD-L1プラスミド(配列番号107および108)を鋳型として使用して、メガプライマー(表7)を用いて組み込まれた配列の2つのセグメントを作製し、相同組換えによって連結を達成した。次いで、バリアントを同定するための配列決定によって個々の陽性コロニーをスクリーニングした後、産物をpcDNA3.1(+)ベクターにクローニングし、PD-L1変異体は、成功裏に作製されているとわかった。PCR手順および条件は、以下のとおりとした:
【0273】
ステップ1:バリアントの2つのメガ断片を作製するために
μl
ddH2O 35
5×S15 PCRバッファー 10
10mM dNTP 1
Fプライマー 1
Rプライマー 1
PCR産物 1
S15ポリメラーゼ 1
---------------------------------
50
最初の変性: 98℃ 1分
変性: 98℃ 15秒
アニーリング: 58℃ 30秒
伸長: 72℃ Kbあたり30秒
最終的な伸長: 72℃ 3分 30サイクル
ステップ2:2つの小片を一緒に接合するために
以下の反応を氷上で設定する(相同組換え):
Synoアセンブリーミックス 10μl
配列産物1 2μl
配列産物2 2μl
脱イオンH2O 6μl
--------------------------------
総体積 20μl
【0274】
【表7-1】
【表7-2】
【0275】
その他の20種のバリアントが別の企業、Genewiz (Suzhou、China)によって構築されている。PD-L1バリアントを合成するために、Synbio Techを用いる同様の方法が実施される。また、変異体部位に使用されるメガプライマーが、表8に記載されている。
【0276】
【表8-1】
【表8-2】
【0277】
その後、変異体および野生型PD-L1のこれらのプラスミドを、293T(ATCC(登録商標)CRL3216)細胞株にトランスフェクトした。第1に、5×10個の293T細胞を、60mmディッシュに播種することで、一次比が、トランスフェクションのために60%~80%であることを確実にする。次いで、10μg DNAを400μlの1×HBSで希釈し、約5分インキュベートする。上記の混合物に10μlの25kDaの線形PEIトランスフェクション試薬(1×HBSに溶解した、1mg/mlの保存溶液)を添加し、DNA/PEI比が1:2.5であることを確実にする。次いで、混合物を、293Tディッシュに1滴ずつ添加した。約6~8時間後に培地を変更し、完全DMEMと置き換える。72時間後、それぞれ、0.22μmフィルターを用いて細胞培養上清を集め、次いで、使用のために-80℃で保存した。
【0278】
2.ELISAによるPD-L1抗体の結合
上清を使用して、以下に記載されるようにELISAによってPD-L1抗体の結合を検出した。
【0279】
2.1マウスAbについて:
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、高pHバッファー中の0.5μg/mlの抗ヒトFc抗体(Abcam)からなるコーティング溶液を用いて、室温で1時間コーティングした。次いで、プレートを、洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄し、続いて、200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を、各ウェルに添加した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを洗浄バッファーを用いて1回洗浄し、160μlの、種々の変異体ヒトPD-L1-Fcタンパク質またはDMEM中の500ng/mlの野生型ヒトPD-L1-Fcタンパク質を含有するDMEM上清を、各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを上記の方法を使用して3回洗浄した。0.5μg/mlのマウス抗PD-L1抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを、200μl/ウェルのpH7.4の洗浄バッファーを使用して3回洗浄した後、100μl/ウェルの、希釈バッファーで希釈したHRPがコンジュゲートされたマウスIgG抗体(1:20000、Pierce)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートし、次いで、200μl/ウェルのpH7.4の洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBを、各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを、450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図24を参照のこと)。
【0280】
2.2ヒトFcを有するAb(キメラまたはヒト化抗体)について:
高結合透明ポリスチレン96ウェルプレート(Nunc)を、100μl/ウェルの、高pHバッファー中の0.5μg/mlの、その他のPD-L1抗体と対を形成し得る抗ヒトFc(マウス抗体について)または抗hPD-L1抗体からなるコーティング溶液を用いて、室温で1時間コーティングした。次いで、プレートを洗浄バッファー(PBS+0.1% Tween 20(Sigma))を使用して自動プレート洗浄機で1回洗浄し、続いて、200μlのブロッキングバッファー(PBS+1% BSA+1%正常ヤギ血清+0.05% Tween-20)を各ウェルに添加した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを洗浄バッファーを用いて1回洗浄し、160μlの、種々の変異体ヒトPD-L1-Fcタンパク質またはDMEM中の500ng/mlの野生型ヒトPD-L1-Fcタンパク質を含有するDMEM上清を、各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを上記の方法を使用して3回洗浄した。0.5μg/mlの、上記で作製したビオチン化ヒト化抗PD-L1抗体(23F11-H4L4-bioおよび23A11-H3L5-bio)またはPD-1タンパク質を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを、200μl/ウェルのpH7.4の洗浄バッファーを使用して3回洗浄した後、次いで、100μl/ウェルの、希釈バッファーで希釈したHRPがコンジュゲートされた抗マウスFc抗体(Abcam)またはHRPがコンジュゲートされたニュートラアビジン(1:5000、Pierce)の溶液を、プレートの各ウェルに添加した。その後、ELISAプレートを、室温で60分間インキュベートし、次いで、200μl/ウェルのpH7.4の洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。最後に、100μl/ウェルの、TMBを、各ウェルに添加し、0.64M HSOを使用して反応を終結させた。プレートを、450nMでThermo Multiscan FCで読み取った(図24を参照のこと)。
【0281】
表9には、ELISAアッセイにおいてヒトPD-L1に対して試験された個々の抗体各々に必要である、hPD-L1上の重要な残基が要約されている。野生型タンパク質のものに対して有意に低減された結合シグナルにつながるヒトPD-L1タンパク質上のアミノ酸残基変異が記されている。
【0282】
【表9】
【0283】
表9中のデータは、pH依存性結合特性を有する抗体は、ヒトPD-L1とのその結合について、以下のアミノ酸のうち多くを利用することを示した。
【0284】
R125およびS80は、PD-L1抗体の両方の種類(例えば、pH依存性および非pH依存性)とのPD-1結合にとって重要であり、本明細書において提供される本PD-L1抗体の結合にとってのS80の重要性は、以前に報告されなかった。
【0285】
E58およびR113は、22C9、23A11、23F11およびそれらのヒト化バージョンにとって、非pH依存性結合ab(BM-MEなどのベンチマーク抗体を含む)に対してより重要であり、E58は、抗体22C9、23A11、23F11についての本発明者らの解析によって見出された新規部位であり、PD-L1とのPD-1結合にとって重要ではないので、先行技術によって示されない)。
【0286】
M115およびK124は、22C9に特有であるが、これら2つの残基は、PD-L1とのPD-1結合にとって重要であると知られている。
【0287】
N63およびY81は、23F11およびそのヒト化23F11およびヒト化23A11に特有であり(しかし、23A11ではない)、一方、それらはPD-L1とのPD-1結合にとって重要ではなく、また、hPD-L1と結合するベンチマーク抗体にとって重要ではなく、したがって、新規部位である。
【0288】
I64は、23F11およびそのヒト化バージョンに特有であり、先行技術においてはPD-L1とのPD-1結合にとって重要であると知られていない。
【0289】
K62は、23A11ヒト化バージョンに特有であり、先行技術においては、PD-L1とのPD-1結合にとって重要であると知られていない。
【0290】
Y123は、4B6およびベンチマーク抗体にとって最も重大であるが、pH依存性抗体を含むその他の抗体にはあまり重大ではない(22C9、別のpH依存性結合抗体にとっても重要である)。
【0291】
Y56は、21F11に特有であり、先行技術においてPD-L1とのPD-1結合にとって重要であると知られていない。
【0292】
抗PD-L1抗体における、R113およびR125のいずれかのAへの変異は、ヒトPD-L1とのその結合能の喪失につながると報告されているが(米国特許第8779108号を参照のこと)、Lin DY et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Feb. 26;105(8):3011-6に記載されるように、それらは、PD-L1とのPD-1結合にとって重要であると知られている。
【0293】
[実施例19]in vivo研究のための抗PD-L1抗体の大規模産生
CHO-K1細胞における一過性の発現を使用して抗体を産生した。プロテインA親和性カラムを使用して産生された抗体を精製し、脱塩すると、抗体が、PBS中に5mg/mlで、<3ユニット/mgの内毒素レベルを有して製剤化された。得られた抗体を、SDS-PAGEゲルおよびSEC-HPLCを使用して純度について特徴付けた。
【0294】
CHO-K1細胞を使用する組換え抗体の一過性の発現および精製
選択された抗体遺伝子の重鎖および軽鎖の可変領域を合成し、発現ベクター中にクローニングした。得られた発現構築物を使用して、血清不含培地において成長するように適応しているCHO-K1細胞をトランスフェクトした。10LのApplikonバイオリアクター中で10日成長させた後、培養培地を回収し、限外濾過膜を使用して細胞および細胞細片を除去し。清澄化した上清を限外濾過によって濃縮し、調製されたプロテインA(ヒトIgG)またはG-セファロース(マウスIgG)カラム上にアップロードした。UVモニターによるモニタリング下で、平衡バッファーを用いてベースラインまで洗浄した後、0.1Mのクエン酸、pH3.5を用いてカラムを次いで溶出し、溶出した抗体を1.0MのTris-HClバッファー、pH8.0を用いて直ちに中和し、PBS、pH7.2(Invitrogen)に対して2~8℃で一晩、2回のバッファー交換を用いて透析した。精製抗体を、0.22μm滅菌シリンジフィルターを通して濾過し、-80℃以下でアリコートにして保存した。
【0295】
[実施例20]抗PD-L1ヒト化抗体のin vivo評価
ヒト化抗PD-L1抗体のin vivo活性を、実施例14に記載されたように評価した。
【0296】
1. MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおけるヒト化PD-L1抗体の抗腫瘍活性
MC38/ヒト-PD-L1ノックイン腫瘍モデルにおけるヒト化PD-L1抗体4B6-H3L3-N297Aの抗腫瘍活性の試験を、実施例14に記載されたように実施し、結果は表10および図25に示された(PBS、BM-GTおよび4B6-H3L3-N297Aを使用する処置の結果が示された)。
【0297】
【表10】
【0298】
2.ヒト化抗体のIP注射を用いるMC38/hPD-L1 KI腫瘍成長の阻害
この研究は、1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのいずれかで腹腔内に送達された場合に、腫瘍成長の阻害におけるヒト化抗PD-L1抗体の効果を評価するために設計されている。手短に述べると、2×10^6個のMC38/hPD-L1腫瘍細胞を、C57/BL6マウスにおいてこれまでに行ったように接種し、6日間成長させた。その時点で、80~100mm^3の平均腫瘍体積を有するマウスを選択し、各群に8匹のマウスを有する群に無作為化した。各試験抗体を、個々のマウスに、1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kg(BM-GTについて)で、または等体積の23F11-H4L4(1mg/kg)で腹腔内に、6日目に出発して、週に3回投薬した。動物を、CO吸入を用いて研究の最後(25日目)に犠死させた。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週に2回測定し、体積を、式:V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで表した。腫瘍体積が、測定可能な大きさ未満に低下することなく、処置の開始時の腫瘍体積の<50%に低減した場合には、部分(PR)として、腫瘍量が、触知できなくなった場合には完全(CR)として腫瘍退縮を記録する(表11を参照のこと)。結果を、Prism GraphPadを使用して解析し、平均±S.E.M.として表した。T検定によって2群間の比較を行い、Pが<0.05である場合に差違は有意であると考えられる。図26Eは、種々の抗体(BM-GT、BM-ME、23A11-H3L5および23F11-H4L4)を用いて投薬された個々のマウスにおいて測定された腫瘍体積を示す。RTVは、同一マウスにおける1日目に測定された腫瘍体積と比較された相対腫瘍体積を表し、TVは、研究の最後の日(すなわち、25日目)に測定された腫瘍体積を表す。
【0299】
【表11】
【0300】
3.ヒト化PD-L1抗体の静脈内注射を用いるMC38/HPD-L1 KI腫瘍成長の阻害
この研究は、患者にヒト化抗体を使用するために期待する方法として静脈内に送達された場合に、腫瘍成長の阻害におけるヒト化抗体の効果を評価するために設計されている。手短に述べると、MC38/hPD-L1腫瘍細胞を、C57/BL6マウスにおいてこれまでに行ったように接種し、10日間成長させた。その時点で、180~220mmの平均腫瘍体積を有するマウスを選択し、各群に12匹のマウスを有する群に無作為化した。各試験抗体を、個々のマウスに、等体積の1mg/kgでIVで、0日目および15日目に投薬した。動物を、CO吸入によって研究の最後に犠死させた。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週に2回測定し、体積を、式:V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで表した。腫瘍体積が、測定可能な大きさ未満に低下することなく、処置の開始時の腫瘍体積の<50%に低減した場合には、部分(PR)として、腫瘍量が、触知できなくなった場合には完全(CR)として腫瘍退縮を記録する(表12を参照のこと)。結果を、Prism GraphPadを使用して解析し、平均±S.E.M.として表した。T検定によって2群間の比較を行い、Pが<0.05である場合に差違は有意であると考えられる。
【0301】
図29中のデータは、23A11-H3L5および23F11-H4L4が、1mg/kg用量で、腫瘍成長の阻害において、同一条件下で、その他の用量でよりも有意により有効であるということを示した。図27Aは、1mg/kgの23F11-H4L4または23A11-H3L5が、それぞれ、91%および82%の腫瘍成長阻害をもたらし、一方で、1mg/kgのベンチマーク抗体が、媒体対照に対して41.6%の腫瘍成長阻害をもたらしたことを示す。図29Aは、1mg/kgの23F11-H4L4または23A11-H3L5が、MC38/hPD-L1ノックイン腫瘍成長を、10mg/kgのBM-GTと同様のレベルに阻害し、それらが同一条件下での腫瘍阻害活性においては統計的に有意な差違を示さなかったことを示す。したがって、23F11-H4L4および23A11-H3L5によって例示される抗体は、pH依存性に抗原と結合しないベンチマーク抗体BM-GTよりも(MPDL-3280Aとも名付けられる)、約10倍高いin vivo活性を有する(図29Aおよび29Bを参照のこと)。
【0302】
【表12】
【0303】
研究エンドポイントでの各マウスにおける腫瘍の大きさの変化を、滝グラフに示し、出発点からの変化として表した(図28A~28Dを参照のこと)。腫瘍の大きさが、100%超増大したマウスは、100%と表し、腫瘍の大きさが100%未満増大した、または出発点から低減したものは、パーセンテージでの正確な変化として表した。
【0304】
上記の結果は、23F11-H4L4および23A11-H3L5は、腫瘍成長の阻害において1mg/kgのベンチマーク抗体BM-GTよりも有意により強力であることを示した(図27および図28)。さらに、腫瘍成長の阻害における、1mg/kgでの23A11-H3L5および23F11-H4L4の能力は、10mg/kgでのBM-GTのものと同等である(図29Aおよび29Bを参照のこと)。さらに、10mg/kgで投薬された場合に、1mg/kgで投薬されたものと比較して、23A11-H3L5または23H11-H4L4について腫瘍成長阻害活性のさらなる増大はなく、一方で、BM-GTについては活性の有意な増大がある。したがって、pH依存性抗原結合を有する抗体は、極めて低用量で腫瘍成長を阻害可能な新規クラスの抗体のものであり得る。
【0305】
4.腫瘍再負荷研究
PD-L1抗体を用いるIV処置で完全腫瘍クリアランスを達成したマウスが、持続的免疫応答を開始し、新規腫瘍が現れることを管理できるか否かを理解するために、本発明者らは、1mg/kgの23A11-H3L5または23F11-H4L4のいずれかを用いて10~35日目まで投薬した場合に完全奏功を達成したマウスのサブセットにおいて、マウスに新鮮な腫瘍細胞を再負荷した。手短に述べると、これらのマウスの各々に、接種後35日に2×10^6個の新鮮な腫瘍細胞を注射した。新たに注入された腫瘍細胞は、注入の際に最初の5~10日間は成長できたが、次いで、腫瘍は、大きさが減少し始め、50日目(再負荷の15日後)まで、任意の測定可能な腫瘍を有するマウスはなかった。これは、これらのマウスが、同一腫瘍細胞に対するメモリーを発達させ、抗体がそれらによって提示されなかったとしても、腫瘍阻害応答は、耐久性があることを実証する(図30を参照のこと)。
【0306】
[実施例21]選択依存性中和抗体の腫瘍浸透の評価
抗体は、その効果を発揮するために腫瘍中に浸透する必要がある。pH依存性抗体が、腫瘍中への浸透において利点を有するか否かおよび腫瘍におけるその残留時間の間に任意の差違があるか否かを評価するために、本発明者らは、in vivo画像処理研究を使用した。
【0307】
手短に述べると、試験抗体BM-GTおよび23F11-H4L4を、近赤外〔near-inferred〕蛍光標識色素(CF750、カタログ:99952、Lot:12M0413、BIOTIUM)を使用し、以下の方法を用いて標識した:抗体をPBSで0.1mg/mlに希釈し、次いで、0.8mlの各抗体溶液を、1:9の割合で予温した10×反応バッファーバイアル中にピペットで入れ、その結果、抗体溶液は、1×反応バッファーの最終濃度を含有していた。ピペットによって数回上下することによって溶液を混合した後、全溶液を、各バイアルから、CF色素を含有するバイアルに移し、バイアルを数秒間ボルテックス処理し、バイアルを暗所で30分間インキュベートする。その後、およそ0.2mlの抗体-色素溶液を、各マウスに静脈内注射した。
【0308】
MC38/hPD-L1同系腫瘍モデル
2×10^6個MC38/hPD-L1細胞を、8週齢のC57BL/6マウスに皮下移植し、12匹のマウスを選択し、4群に無作為化した。腫瘍がおよそ220mm^3に成長した時点で、動物に0.2mlの抗体-色素溶液を静脈内に注射した。
【0309】
投薬後1時間、4時間、24時間、48時間、96時間、7日、11日、15日、18日および21日の時点で麻酔後に、各マウスの腫瘍の部位を、IVIS Lumina IIを用いて画像化した。手短に述べると、各時点でのIVIS画像処理の前に、各マウスに、50mg/kgのペントバルビタールナトリウムを用いて麻酔した。動物が移動を停止した時点で、動物を観察ボックス中に入れ(腫瘍側を上にして)、ドアを閉じ、次いで、Livingイメージソフトウェアを使用して、各マウスを画像処理した。
【0310】
放射シグナルの例を示したBM-GTおよびヒト化23F11(すなわち、23F11-H4L4)(図31Aを参照のこと)。各時点について各マウスから得た平均放射シグナルを定量化し、GraphPad prismを用いて解析し、図31Bに示した。結果は、抗体23F11-H4L4は、ベンチマーク抗体よりも有意に高い放射シグナルを有しており、従って、かなり多くの抗体が、ベンチマーク抗体よりも腫瘍中に保持されていることを示した。経時的な腫瘍中のより多くの抗体に対応して、23F11-H4L4を用いて処置された3匹のマウスのうち2匹の腫瘍が有意に低減したが、BM-GTを用いて処置されたマウスのうち腫瘍が有意に低減したものはなかった(図31Cを参照のこと)。したがって、23F11-H4L4、pH依存性特性を有する抗体は、特有の利点を有し得、腫瘍成長の阻害においてより効果的である。図31Bの説明文中の2-1、2-2、2-3、4-1、4-2および4-3は、それぞれ、群2および群4中の個々のマウス1、2または3を示す。
【0311】
[実施例22]その他の腫瘍調節剤を用いる選択ヒト化抗PD-L1抗体の併用療法
チェックポイント阻害剤抗PD-L1抗体および抗VEGFR2抗体(抗血管新生)の組合せが、腫瘍成長をより良好に制御し得るか否かを評価するために、hPD-L1/MC38腫瘍を、DC101、マウスVEGFR2の中和活性を有する抗体を20mg/kgで、またはPD-L1抗体-23A11-キメラを最適下用量0.3mg/kgで、または両方を用いて処置した。手短に述べると、2×10^6個MC38/hPD-L1腫瘍細胞を、C57/BL6マウスにおいてこれまでに行ったように接種し、3日間成長させた。その時点で、各群に8匹のマウスを有する群に無作為化した。各試験抗体を、個々のマウスに、0.3mg/kgの23A11-キメラまたは20mg/kgのDC101または両方で腹腔内に、3日目に開始して、週に3回で3週間投薬した。動物を、CO吸入を用いて研究の最後に犠死させた。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週に2回測定し、体積を、式:V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで表した。結果を、Prism GraphPadを使用して解析し、平均±S.E.M.として表した。T検定によって2群間の比較を行い、Pが<0.05である場合に差違は有意であると考えられる。データは、組合せ処置は、腫瘍細胞の成長の阻害において、かなりより有効であることを示した(図32A図32Cを参照のこと)。
【0312】
併用療法が、単剤療法より有効であることをさらに実証するために、本発明者らは、腫瘍体積がおよそ180mmであるときに処置を開始した。本発明者らは、2種の抗体を、ヒト化PD-L1またはVEGFR2抗体DC101に対して極めて感受性が高くはないマウス株において、1mg/kgまたは3mg/kgのいずれかの対で投薬した。処置は、IVで、週に1回、2~3週間行った。データは、組み合わせた両処置が、腫瘍成長の阻害において単一抗体よりも有意により有効であることを示した(図32Dおよび図32Eを参照のこと)。
【0313】
したがって、本発明者らは、ヒト化PD-L1抗体の、VEGFR2抗体などの血管新生阻害剤との組合せが、定着腫瘍成長または新規に形成された腫瘍の進行の処置のための有効なアプローチであり得ることを実証した。
【0314】
[実施例23]PD-L1抗体の熱安定性
キャピラリーセル示差走査熱量測定(DSC)を利用して、温度増大の際のサンプルおよび参照間の熱分化を検出することによって、タンパク質の熱安定性を評価する。具体的には、液体中のタンパク質の相対的安定性の指標である熱転移中点(Tm)を測定するために使用される。抗体23F11-H4L4または23A11-H3L5(CHO細胞において産生される)を、バッファー(20mM His-His-HCl、5%スクロース、pH=6.0)を用いて1mg/mlに希釈し、DSC96ウェルトレイに添加した。10~110°Cの温度範囲および200℃/時間のスキャン速度を用いるMicroCal VP-DSCキャピラリーセルマイクロカロリメーター(GE)を用いてサンプルを流し、結果をMicroCal VPキャピラリーDSC自動解析ソフトウェアを用いて解析した。キャピラリーセルDSC試験結果を、以下の表13に、ならびに図33Aおよび33Bに示した。
【0315】
表13に示されるように、23F11-H4L4抗体は、有意な上昇したTm値を示した(すなわち、Fab断片のTmに相当するTm2、一方、Tm1は、CH2断片のTmに相当する)。
【0316】
【表13】
【0317】
[実施例24]抗PD-L1抗体についてE58のエピトープマッピング
本明細書において記載される抗PD-L1抗体の結合にとってのE58の残基の重要性を、実施例18に記載したようにELISAベースの結合アッセイを使用して抗体について解析した。野生型抗PD-L1タンパク質またはE58Aを有する変異体のいずれかを産生し、同一プレート上で抗体の2種のタンパク質との相対結合を実施し、結果を、以下の表14に示す。
【0318】
【表14】
【0319】
データは、残基E58が、23F11および23F11-H4L4にとって重大であり、ヒトPD-L1において、この残基がアラニンに変異される場合には、その結合が、90%超低減されることを示した。同様に、23A11-H3L5、22C9の結合も、WT PD-L1タンパク質との結合シグナルの8.3%、17.2%に低減した。他方、BM-GTまたはBM-MEの結合は、E58がAlaに変異された場合に、野生型PD-L1との抗体の結合の51%または69.8%に低減した。同様に、23A11、26F5および4B6の結合も、野生型PD-L1タンパク質の51.7%、60.6%および69.6%に低減された。最も異なることに、18G4のPD-L1との結合は、E58がAlaに変異された場合に、全く低減しなかった。したがって、E58は、種々の抗体のPD-L1タンパク質との結合にとって異なって必要とされ、23F11、23F11-H4L4および22C9の重大な残基であった。
【0320】
また、18G4は、アラニンスキャンによって解析された39個の異なるアミノ酸の中でS80の結合のみを必要とする、本明細書において開示されるその他の抗PD-L1抗体に対して極めて異なるエピトープ結合プロフィールを有する抗体である。この抗体も、in vivoでの腫瘍成長の阻害において極めて強力であるということが注記された。
【0321】
[実施例25]ヒト化PD-L1抗体の内部移行
23F11-H4L4(CHO細胞由来)が、内部移行され得るか否かを評価するために、本発明者らは、以下の実験を実施した。二次抗体ヤギ抗ヒトFcを、pHAbアミン反応性色素(Sigma、G9845)、pH感受性色素を用いてまず標識した。この色素は、中性pHで蛍光ではないが、酸性pHで高度に蛍光になる。この色素で標識された抗体が、細胞内エンドソーム(pH6.0~6.5)およびリソソーム(4.5~5.5)中に内部移行されると、高度の蛍光シグナルが検出され得る。具体的には、MC38-hPD-L1細胞(MabSpace)を、10% ウシ胎児血清(Hyclone)を含有するRPMI-1640中で培養した。遠心分離することによって対数期成長細胞を集め、細胞を、96-ウェルプレート中、2×10^4個/ウェル(50μl/ウェル)の密度で播種し、細胞を一晩接着させた。次いで、2μg/mlの、pHAbアミン反応性色素を用いて標識したヤギ抗ヒトFc(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-005-098)(25μl/ウェル)を、各ウェルに添加し、続いて、段階希釈した23F11-H4L4またはhIgG1(25μl/ウェル)を各ウェル中に添加した。抗体を細胞とともに37℃で6時間または24時間インキュベートさせた。インキュベーションの最後に培養培地を除去した後に、100μlのPBSを各ウェルに添加した。プレートの各ウェルにおける抗体のシグナルを、Varioskan Flash(Thermo Scientific)を使用して、Ex 532nm/Em 560nmのスペクトルで読み取ることによって決定した。グラフ中のデータは、6または24時間後に細胞において濃度依存的に、蛍光シグナルの有意な増大があることを示した。これらの結果は、23F11-H4L4は、MC38/hPD-L1細胞の表面上のhPD-L1との結合の際に効率的に内部移行され得るということを実証した(図35を参照のこと)。
【0322】
[実施例26]in vitroでのヒト化PD-L1抗体の、活性化T細胞との結合
Ficoll-Paque密度勾配遠心分離を使用して白血球搬出パックから末梢血単球を単離し、2% FBSを含むPBS中に再懸濁した。細胞を、培養培地で0.5×10^7個細胞/mlの密度に希釈し、次いで、抗ヒトCD3抗体(OKT3、ebioscience、カタログ番号16-0037)でコーティングされたプレートに添加した(1μg/ml、1ml/ウェル)。抗ヒトCD28(BD、カタログ番号555725)を各ウェルに添加し、次いで、細胞を、RPMI1640および10%FBSを有する6-ウェルプレート中で、37℃で3日間培養した。その後、細胞を集め、96ウェル丸底プレート中、FACSバッファー(PBS+5%BSA)に入れた。遠心分離後、上清を廃棄し、段階希釈した23F11-H4L4抗体またはN297A変異を有するhIgG1を陰性対照として添加した。プレートを4℃で1時間インキュベートし、次いで、細胞を、PBSを使用して3回洗浄した。その後、2.5μ次いで細胞を、PBSを使用して3回洗浄した。その後、2.5Chuman IgG-APC(Biolegend、カタログ番号409306)を各ウェルに添加し、プレートを4℃で1時間インキュベートし、3回洗浄し、その後、フローサイトメーター(Beckman Cytoflex)によって解析した。
【0323】
図36Aおよび36Bにおけるデータは、23F11-H4L4が、活性化T細胞上で発現されたPD-L1と用量依存性に結合し得る一方、非活性化T細胞とは極めてわずかな結合しか示さないことを示した。
【0324】
[実施例27]MC38/hPD-L1細胞を用いるhPD-1ノックインマウスモデルにおけるPD-L1抗体のin vivo有効性研究
これまでの実験(例えば、実施例14および20)では、同系マウスにおけるPD-1タンパク質は、マウス起源であり、免疫抑制は、hPD-L1のマウスPD-1との結合によって媒介されている。マウスPD-1がhPD-1に変更される場合に、ヒト患者において存在する状況に、MC38/hPD-L1同系モデルにおける抗体処置に何らかの差違があるか否かをさらに評価するために、本発明者らは、MC38/hPD-L1腫瘍細胞をPD-1ノックインマウスに移植した。具体的には、MC38/hPD-L1腫瘍細胞を、大気中、5% COの雰囲気下、37℃で、10%熱不活化ウシ胎児血清(ExCell Biology)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Hyclone)を補給したRPMI1640培地(Thermo Fisher)で単層培養としてin vitroで維持した。腫瘍細胞を、トリプシン-EDTA処置(Hyclone)によって週に2回ルーチンで継代培養した。対数増殖相で成長している細胞を回収し、hPD-L1 発現確認のFACS解析および腫瘍接種のためにカウントした。5~6週齢の各PD-1ノックイン雌マウス(C57BL/6-Pdcd/tm1 (hPDCD1)、Beijing Biocytogen Co.、Ltd)を、腫瘍発生のために、0.1mlのPBS中のPD-L1発現(2×10)が確認されたMC38/hPD-L1腫瘍細胞を用いて右側腹部で皮下に接種した。処置は、腫瘍の大きさがおよそ100mmに到達した、接種のおよそ7日後に開始した。各群は、10匹の腫瘍を有するマウスからなっていた(図37Aを参照のこと)。試験品(すなわち、23F11-H4L4)は、3mg/ml濃度の200μlの保存溶液を吸引し、1.8mlの調剤バッファー〔formulation buffer〕(ヒスチジン20mM、スクロース250mM、ポリソルベート80 0.02%、pH6.0±0.2)に希釈して、0.3 mg/mlの作業溶液を得ることによって調製し、静脈内注射によってマウスに投与した。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週に2回測定し、体積を、式:V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで表した。腫瘍体積が、測定可能な大きさ未満に低下することなく、処置の開始時の腫瘍体積の<50%に低減した場合には、部分(PR)として、腫瘍量が、触知できなくなった場合には完全(CR)として腫瘍退縮を記録する。各処置群における腫瘍の大きさを、表15および図37Bおよび37Cに示す。これらのデータは、抗体23F11-H4L4を用いる処置は、有意な腫瘍成長阻害につながることを実証し、処置された10匹のマウスのうち5匹において腫瘍根絶〔eradiation〕または完全奏功し、一方で、生理食塩水を用いて処置したものは、すべて成長し、マウスのいずれにおいても腫瘍退縮を有さなかった。
【0325】
【表15】
【0326】
in vivo腫瘍成長阻害有効性に対してさらに比較するために、本発明者らは、別の実験を実施した。同様に、5~6週齢のPD-1ノックイン雌マウス各々(C57BL/6-Pdcd/tm1 (hPDCD1)、Beijing Biocytogen Co.、Ltd)を、腫瘍発生のために、0.1mlのPBS中のPD-L1発現(2×10)が確認されたMC38/hPD-L1腫瘍細胞を用いて右側腹部で皮下に接種した。処置は、腫瘍の大きさがおよそ100mmに到達した、接種のおよそ7日後に開始した。各群は、8匹の腫瘍を有するマウスからなっていた。試験品は、3mg/ml濃度の0.128ml、0.384mlおよび1.28mlの保存溶液を吸引し、3.712、3.456および2.58mlの滅菌PBS(Hyclone、カタログ番号 SH30256.01)に希釈して、0.1mg/ml、0.3mg/mlまたは1mg/mlの作業溶液を得ることによって調製し、各マウスに200μlを週に2回の腹膜内注射によって投与して、投薬1、3、10mg/kgを達成した。同様に、BM-GT(MABSPACE、CHO細胞において産生された)およびN297A変異体を有する対照IgG(CrownBio、CHO細胞由来のAB160160)を、1.280mLの3mg/mlのCHO細胞由来BM-GTを吸引して、2.560mLのPBSに入れること、または0.662mlの5.8mg/mlのストックを吸引して3.178mlの滅菌PBSに入れることによって調製し、200μlの最終希釈溶液を各マウスに、週に2回の腹膜内注射によって投与して、週に2回の10mg/kg IPで投薬を達成した。腫瘍の大きさを、ノギス(INSIZE)を使用して2次元で週に2回測定し、体積を、式:V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長い直径および短い直径である)を使用してmmで表した。腫瘍体積が、測定可能な大きさ未満に低下することなく、処置の開始時の腫瘍体積の<50%に低減した場合には、部分(PR)として、腫瘍量が、触知できなくなった場合には完全(CR)として腫瘍退縮を記録する(表16および図38A~38Cを参照のこと)。
【0327】
【表16】
【0328】
上記の実験から得たデータは、ヒトPD-L1を発現するMC38を移植されたPD-1ノックインマウスにおいて、1)23F11-H4L4は、強力な用量依存性腫瘍成長阻害活性を示し、それぞれ、1、3および10mg/kgで12.5%、62.5%および100%の全奏功(PR+CR)率を有し(図38Aを参照のこと)、2)3mg/kgの23F11-H4L4は、少なくとも10mg/kgのBM-GTと同程度に強力であり(図38Bおよび38Cを参照のこと)、4)IPまたはIVによって投薬された3mg/kgの23F11-H4L4は、同様の活性を示し、完全腫瘍退縮(50%)を達成し(図37A~37Bおよび38A~38Cを参照のこと)、3)10mg/kg用量の23F11-H4L4は、全体的な腫瘍の大きさの低減だけでなく、完全腫瘍退縮を達成したマウスの数においても(6/8対3/8)、10mg/kgのBM-GTよりも有意により強力であり(図38Cを参照のこと)、したがって、pH依存性抗原結合および関連する再利用特性および従って、より長い腫瘍における薬物滞留時間が、特に、BM-GTの最大に有効な用量で、より良好な腫瘍管理および腫瘍退縮に変わり得ることを示した。
【0329】
[実施例28]受容体占有およびマウス薬物動態/薬動力学
抗体の単回静脈内注射の際のMC38/hPD-L1腫瘍における標的タンパク質ヒトPD-L1との抗体結合の期間を測定するために、本発明者らは、FACSを使用して、抗体注射後種々の時点で腫瘍から調製された単細胞における利用可能な標的タンパク質結合部位の量を測定した。具体的には、MC38/hPD-L1腫瘍細胞を、大気中、5% COの雰囲気下、37℃で、10%熱不活化ウシ胎児血清(ExCell Biology)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Hyclone)を補給したRPMI1640培地(Thermo Fisher)で単層培養としてin vitroで維持した。腫瘍細胞を、トリプシン-EDTA処置(Hyclone)によって週に2回ルーチンで継代培養した。対数増殖相で成長している細胞を回収し、hPD-L1発現確認のFACS解析および腫瘍接種のためにカウントした。5~6週齢の雌のC57B/L6マウス各々を、腫瘍発生のために、0.1mlのPBS中のPD-L1発現(2×10)が確認されたMC38/hPD-L1腫瘍細胞を用いて右側腹部で皮下に接種した。処置は、腫瘍の大きさがおよそ200~300mmに到達した、接種のおよそ12日後に開始し、3mpkで23F11-H4L4を用いて投薬した(表17を参照のこと)。受容体占有評価のために、投与後2日目、7日目および14日目に腫瘍を採取した。腫瘍を回収し、小断片に刻み、次いで、ACCUMAX(商標)細胞剥離溶液(STEMCELLカタログ番号07921)を、10ml/0.5gの組織の濃度で添加した。次いで、腫瘍塊懸濁液を室温で1~2時間穏やかに振盪し、インキュベーションの間、ピペットで反復的に上下させて、細胞をさらに解離させた。インキュベーションの最後に、細胞懸濁液を、40μmのナイロンメッシュに通した。次いで、細胞を、冷PBSを用いて3回洗浄し、1500rpmで5分間遠心分離した。次いで、集められた細胞を1~2mlのPBSに再懸濁し、総細胞数をカウントした。この後、50μlの細胞懸濁液(約1000000個細胞)を、各96ウェルプレートに添加した。細胞を、FACSバッファー(PBS中、1% BSA)を用いて2回洗浄した。次いで、細胞を、2μg/mlの23F11-H4L4抗体またはPBSまたはアイソタイプ対照とともにインキュベートした。混合物を、2~8℃で、または氷上で少なくとも30分間インキュベートし、光から保護した。細胞を、FACSバッファーを用いて3回洗浄し、その後、1500rpmで5分間遠心分離した。抗ヒトIgG FC-FITC二次抗体を添加し、2~8℃、暗所で30分間インキュベートし、続いて、細胞を、FACSバッファーを用いて3回洗浄した。最後に、細胞を、0.5mlのFACSバッファーに再懸濁し、フローサイトメーターを使用して解析した。フローサイトメーターデータ解析ソフトウェア(Cytoflex)およびGraphPad Prismを使用し、アイソタイプ対応対照抗体染色細胞との比較で、PD-L1陽性細胞のパーセンテージおよび平均蛍光強度(MFI)を算出した。23F11-H4L4のPD-L1との)または23F11-H4L4またはBM-GT(利用可能なPD-L1結合部位を検出するため)のin vivo結合を検出するための、アイソタイプ対照hIgG1-N197A(CrownBio、AB160160)の飽和量とともに in vitroでプレインキュベートされた細胞間の相対平均蛍光強度(RMFI)の変化の割合を使用して、受容体占有(RO)を推定した。値は、適当なアイソタイプ対照hIgG1-N297Aに対して正規化した。データ(表18を参照のこと)は、3mg/kgの23F11-H4L4の単回注射は、少なくとも7日間の持続した腫瘍PD-L1占有につながり得ることを示した。他方、3mg/kgのBM-GTは、2日超の腫瘍PD-L1占有を示したが、最初のより高い占有率にもかかわらず7日未満であり、これは、23F11-H4L4のpH依存性PD-L1結合特性が、抗体が、腫瘍中に長期間留まることおよび腫瘍細胞上のPD-L1と結合することを可能にすることを実証する。
【0330】
【表17】
【0331】
【表18】
【0332】
[実施例29]腫瘍浸透結果
正常同系C57B/L6マウスにおいて成長したMC38/hPD-L1腫瘍を有する3匹のマウスを、腫瘍が200~300mm3に到達した時点で、10mg/kgの23F11-H4L4単回静脈内注射を用いて処置した。腫瘍浸透および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)解析のために、抗体投与後7日目に腫瘍を採取した。具体的には、Optimal Cutting Temperature(O.C.T.)(Tissue Tek)を、製造業者の説明書に従って使用して、腫瘍塊を調製した。6μm厚の組織切片を調製し、組織スライドをメタノールで固定化し、続いて、PBSを用いて洗浄し、次いで、0.2% TritonX-100を用いて5分間透過処理した。次いで、スライドをPBSを用いて洗浄し、ブロッキングバッファー(1×PBS中、3.0% BSA)を用いて、30~60分間、室温でブロッキングし、続いて、スライドをPBS-Tを用いて3回、各5分間洗浄した。次いで、PBSで希釈した、Alexa Fluor 488ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Thermo、カタログ番号A11013、23F11-H4L4を検出するため)、Alexa Fluor(登録商標)594抗マウスCD31抗体(Biolegend、カタログ番号102520、脈管構造を検出するため)およびAlexa Fluor(登録商標)594抗マウスCD8a抗体(Biolegend、カタログ番号100758、CD8T細胞を検出するため)を切片に適用し、暗所、4℃で一晩インキュベートさせた。二次抗体を排水し、PBS-Tを用いてスライドを3回(各5分)洗浄した後、スライドをDAPIを用いて対比染色し、ガラスカバースリップで覆い、暗所、4℃で保存した。蛍光顕微鏡(Nikon Ni-U)を使用して、対照凍結組織切片との比較で、23F11-H4L4およびTILの遺伝子座および分布を解析した。
【0333】
10mpkでの投薬後7日目の、凍結MC38/hPD-L1 CDx腫瘍切片での23F11-H4L4浸透およびTILの代表的な画像が、図40に示されている。
【0334】
本開示を、特定の実施形態(そのうちいくつかは、好ましい実施形態である)に関連して特に示し、説明してきたが、当業者には、形態および詳細における種々の変更が、本明細書において開示される本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、そこで行われ得るということは理解されなければならない。
図1
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図6-1】
図6-2】
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【配列表】
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