(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】熱可塑性の繊維複合材料をリサイクルするための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
(21)【出願番号】P 2019515278
(86)(22)【出願日】2017-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2017073670
(87)【国際公開番号】W WO2018050926
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】102016117559.5
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,へニング
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/085000(WO,A1)
【文献】特開2009-132028(JP,A)
【文献】特開2003-315561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023450(US,A1)
【文献】特開2011-122032(JP,A)
【文献】特開2003-236838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00
C08J 11/00
B32B 38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部材
内に配置されている熱可塑性の繊維複合材料をリサイクルするための方法であって、
前記繊維複合材料は、少なくとも繊維及びマトリクス材料を含み、前記構成部材は、前記繊維複合材料からなる少なくとも1つの剥離層を含み、
前記少なくとも1つの剥離層
を前記構成部材のうちの残りの
部分から主繊維方向に剥離し、
前記主繊維方向は、前記繊維の延在方向であって、前記繊維複合材料の全長にわたって繊維構造を保持する方向であり、
前記構成部材の製造時に、
前記前記繊維複合材料の繊維配向及び/又は
前記前記繊維複合材料の敷設方向に関する構成部材データを
前記構成部材の内部又は表面又は構成部材から離隔された別個のデータ担体に保存し、前記リサイクルするための方法を支援するために、剥離プロセスのための剥離方向及び/又は
剥離プロセスの開始地点を決定するために使用する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの剥離層を、前記繊維複合材料の
うちの別の層から、又は
前記構成部材のうちの別の材料から剥離する
ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記繊維複合材料を、少なくとも除去領域において加熱する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記繊維複合材料を、テープ形状で剥離する
ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
除去された前記
剥離層を、貯蔵要素上に
収集すること
であって、
除去された前記剥離層はテープ形状であり、前記貯蔵要素はテープ形状の前記除去された繊維複合材料を巻き取る貯蔵ローラである、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記構成部材から前記少なくとも1つの剥離層を分離するために、分離工具を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記分離工具を加熱する
ことを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの剥離層を、前記分離工具の反対側に配置された案内ローラによって案内する
ことを特徴とする、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記構成部材データを、前記構成部材の内部又は表面に読取可能な方法で保存することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記繊維複合材料を、前記残りの
部分からの剥離前、剥離中、及び/又は剥離後に少なくとも1回の非破壊での材料試験方法によって検査し、
前記検査の結果を、剥離プロセスの開ループ制御又は閉ループ制御のために使用するか、又はドキュメント化する目的で保存する
ことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記構成部材に、位置特定のためのマーカーを取り付ける
ことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記剥離層の形状を、
少なくとも1つのカレンダ機を用いたプレスによって、又は少なくとも1つの引抜成形工具を用いて
、変化させる
ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記構成部材からの剥離後に、繊維とマトリクス材料とを互いに分離する
ことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
構成部材
に配置されている熱可塑性の繊維複合材料をリサイクルするための装置であって、
前記繊維複合材料は、少なくとも繊維及びマトリクス材料を含み、前記構成部材は、前記繊維複合材料からなる少なくとも1つの剥離層を含み、
前記
少なくとも1つの剥離層を、
前記構成部材のうちの残りの
部分から
主繊維方向に剥離するための手段
であって、前記主繊維方向は、前記繊維の延在方向であって前記繊維複合材料の全長にわたって繊維構造を保持する方向である手段と、
前記構成部材の内部又は表面
又は構成部材から離隔された別個のデータ担体に保存されたデータを検出、評価、及び提供するための手段
であって、前記保存されたデータは、前記構成部材の製造時に保存された、繊維配向及び/又は敷設方向に関する構成部材データであり、剥離プロセスのための剥離方向及び/又は剥離プロセスの開始地点を決定するために使用される、手段と、
を特徴とする、装置。
【請求項15】
前記剥離するための手段は、分離工具を含む
ことを特徴とする、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記繊維複合材料を少なくとも除去領域において加熱するための手段
を特徴とする、請求項14又は15記載の装置。
【請求項17】
前記分離工具が加熱されている
ことを特徴とする、請求項15記載の装置。
【請求項18】
前記剥離するための手段は、前記分離工具の反対側に配置された、前記剥離層を案内する少なくとも1つの案内ローラを含む
ことを特徴とする、請求項15記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの案内ローラ、又は前記案内ローラのうちの少なくとも1つが加熱されている
ことを特徴とする、請求項18記載の装置。
【請求項20】
貯蔵要素
と、
除去された前記繊維複合材料を前記貯蔵要素上に収集するための手段
であって、前記除去された繊維複合材料はテープ形状であり、前記貯蔵要素はテープ形状の前記除去された繊維複合材料を巻き取る貯蔵ローラである、手段と
を特徴とする、請求項14から19までのいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
前記剥離するための手段は、少なくとも1つの
把持ユニットを含む
ことを特徴とする、請求項14から20までのいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
前記装置は同時に、リサイクルされた前記繊維複合材料から新しい構成部材を製造するように構成されている
ことを特徴とする、請求項14から21までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部材における少なくとも1つの被着層(Ablage-Schicht)に配置されている熱可塑性の繊維複合材料をリサイクルするための方法及び装置に関する。
【0002】
熱可塑性の繊維複合材料からなる構成部材、又は熱可塑性の繊維複合材料を有する構成部材は、とりわけパイプライン又は圧力タンク用の管路のような高強度の構成部材として多岐にわたって使用され得る。多くの場合、繊維複合材料は、エンドレスの繊維材料、すなわち中断されていない繊維材料を有する。この場合、繊維材料は、例えばプラスチックマトリクスによってプリプレグされた(vorimpraegniertes)半製品として存在することができる。これは例えば、繊維が一方向又は多方向に存在する単層の繊維半製品、いわゆるテープ半製品とすることができる。そのような半製品は、種々の方法によって、とりわけテープ被着プロセス又は巻回プロセスによって構成部材へと加工され、とりわけ複数の層の形態でも被着される。
【0003】
炭素繊維強化プラスチックのリサイクルについては既に議論がなされている。(“Kohlenstofffaserverstaerkte
Kunststoffe im Fahrzeugbau - Ressourceneffizienz und Technologien[車両製造における炭素繊維強化プラスチック-資源効率及び技術]”;VDI ZRE Publikationen:Kurzanalyse Nr. 3,VDI
Zentrum fuer Ressourceneffizienz,2013年,2014年3月改訂版)。これにより、再利用に供される材料を切断することが公知であるが、これに伴って炭素繊維が相応に短縮されてしまう。これによって、いわゆるダウンサイクル(Downcycling)がもたらされ、すなわち、回収された材料は、劣化した品質を有しており、したがって限定的にしか使用することができなくなっている。さらには、繊維とマトリクス材料との効率的な分離が重要であることが教示されている。
【0004】
欧州特許出願公開第1892072号明細書(EP 1892072 A1)からは、複合材料をまず始めに細断し、続いて射出成形プロセスに供するという、熱可塑性の炭素繊維強化材料をリサイクルするための方法が公知である。ここでもリサイクルによって獲得される材料は、短い炭素繊維しか伴わない。
【0005】
独国特許発明第102011115966号明細書(DE 102011115966 B4)からは、マトリクス材料中に炭素繊維束を有するCFRP材料が細砕されるという、CFRP構成部材のための炭素繊維リサイクル物を製造するための方法が公知である。その目的は、マトリクス材料によって取り囲まれた炭素繊維束部分が中に存在しているリサイクル物出発材料を獲得することである。リサイクル物出発材料は、マトリクス材料の熱分解又は炭化の形態の分解処理を受ける。ここでも炭素繊維は、自身の元々の長さを保持することが不可能となっている。
【0006】
欧州特許第1160068号明細書(EP 1160068 B1)からは、マトリクス材料中に含まれている炭素繊維がほぼ損傷を受けることなく分離されることができる程度までこのマトリクス材料が分解されるように、複合材料をマイクロ波放射に曝すことが公知である。この場合には、続いて繊維が溶剤中に浮遊するように、マトリクス材料のための溶剤を使用することも企図することができる。しかしながら、マイクロ波処理のために複合材料の適切な切片を準備する必要があり、それ故、ここでも繊維は、基本的に当初の構成部材の状態に比べて細砕される。
【0007】
欧州特許第22822879号明細書(EP 22822879 B1)からは、リサイクルのために、例えば熱分解プロセスによって炭素繊維をマトリクス材料から分離することが公知である。この際に生じる遊離繊維には、結合剤が付与される。結合剤を使用して繊維のパッケージ(Pakete)が生成され、この繊維のパッケージの構造は、元々の材料における配置に対応している。繊維ループの形成が回避され、新しい半製品を製造するためにこのパッケージを使用することができる。いずれにせよ、この方法もまた、大きい構成部材の場合には元々の複合材料の断片化を必要とする。
【0008】
国際公開第2010/075952号明細書(WO 2010075952 A1)からは、少なくとも1つのマイクロ波放射源及び/又は少なくとも1つの高温ガス注入口及び/又は少なくとも1つの電気抵抗加熱器を有するプロセスチャンバが設けられているという、炭素繊維強化プラスチック物から炭素繊維を回収するための方法及び装置が公知である。またしても、繊維からマトリクス材料を分離することが目的である。再利用されるべき複合材料は、区分ごとにエンドレスのコンベアベルトを介してそれぞれの処理段階を通過するように案内されるので、リサイクル製品としてエンドレスの炭素繊維を獲得することは不可能である。
【0009】
独国特許出願公開第102010031602号明細書(DE 102010031602 A1)からは、リサイクルプロセスのために、同様にしてマトリクスを分離するための熱分解プロセスが企図される方法が公知である。出発物質は、必要に応じて断片化される。熱分解ガスを、エネルギ獲得のために使用することができる。
【0010】
本発明の基礎となる技術的課題は、従来技術に代わるものであって、とりわけ比較的長さの長い繊維材料を獲得しつつ、改善されたリサイクル結果を提供することを可能にする、冒頭に述べた形式の方法及び装置を提供することである。
【0011】
上記の技術的課題は、請求項1記載の特徴を有する方法と、請求項15記載の特徴を有する装置とにおいて解決される。
【0012】
本発明による方法及び本発明による装置の好ましい実施例は、従属請求項に示されている。
【0013】
したがって、再利用に供されるべき繊維複合材料は、繊維とマトリクス材料との複合体の形態で層状に残りの構成部分から剥離される(abgezogen)。この際に、熱可塑性のマトリクスの可逆的な溶融特性が利用される。本方法は、総じて全ての種類の強化繊維、とりわけ炭素繊維に適しているが、例えばガラス繊維又はバサルト繊維(Basaltfasern)にも適している。
【0014】
繊維複合材料は、基本的に構成部材において複数の層の形態で存在するので、剥離層は、同一の繊維複合材料のうちの当該剥離層の下にある別の層から剥離される。しかしながら剥離層を、ベース材料から、例えば他の繊維複合材料から除去し又は剥がす(abgeloest)ことも可能であり、又は、繊維複合材料の元々の最下層又は単一の層が載置されていた、構成部材のベース材料から除去することも可能である。剥離層とは、好ましくは完全なラミネート層であり、このようなラミネート層は、以前に構成部材に設けられていたものである。
【0015】
本発明による方法を使用することにより、繊維からのマトリクス材料の分離と、繊維長を短縮する切断とを省略することが可能となる。マトリクス材料及び繊維が、リサイクル物の複合体の形態で残される場合には、新しい使用可能な材料を製造するための莫大なエネルギコスト、とりわけ繊維製造及び/又は含浸のためのエネルギコストを節約することが可能となる。本記載によるリサイクルプロセスは、繊維複合材料を有する構成部材を製造するための多数のプロセスに対して、製造工程を逆にしたもの、すなわち、繊維複合材料を層状にコーティングする工程(dem schichtweisen Auftragen)と、層同士を結合する工程(dem Verbinden)とを逆にしたもの(Umkehrung)として見なすことができる。繊維複合材料の剥離を、単一の一貫したリサイクル片が形成されるように実施することができる。同じ1つの構成部材において、剥離層の剥離を複数回、開始することも可能であり、これによって1つの構成部材から多数のリサイクル片を形成することが可能である。1つのリサイクル片は、数センチメートルから数キロメートル、例えば10kmの長さを有することができる。
【0016】
剥離層を剥離するために、繊維複合材料を加熱することができる。この場合、繊維複合材料全体を大域的に加熱することができるか、又は局所的に限定して除去領域において繊維複合材料を加熱することができる。加熱することによって剥離プロセスが容易になり、剥離層の損傷を阻止することが可能となる。考えられる熱源は、例えば、赤外線放射器、レーザ、電気抵抗器、熱風もしくは熱気、マイクロ波、超音波、又はオーブン、例えば対流式オーブンである。処理温度は、繊維複合材料のマトリクス材料の溶融温度より低くても、又は高くてもよい。
【0017】
本発明による方法を、繊維複合材料がテープ形状に剥離されるように実施することもできる。テープ形状の剥離層は、除去された繊維複合材料を貯蔵要素上、とりわけ貯蔵ローラ上に容易に収集することが可能となるという利点を有する。元々の繊維複合材料が既にテープ形状で供給され、構成部材を製造するために装着(aufgetragen)されている場合には、剥離された材料は、元々のテープ材料に少なくともほぼ対応する(entspricht)ことができる。理想的には、収集されたテープ形状の材料を、新しい構成部材を製造するためにすぐに再び使用することが可能である。
【0018】
一般に、剥離層の形状は、元々被着された材料にほぼ対応することができる。元々の材料が、テープ被着プロセス(Baendchenablageprozess)又は巻回プロセスにおいて複数の層の形態で製造された場合には、剥離層は、元々のテープに対応することができる。テープ被着プロセス又は巻回プロセス以外の方法で、例えばレーザを使用することなく、例えば他の手法による加熱及びそれに続くプレスによって製造された出発材料の場合にも、本発明による方法を実施することが可能である。剥離層を、回転対称、プレート形状、又はその他のように成形することができる。
【0019】
本発明による方法を、構成部材から剥離層を分離するために分離工具が使用されるように実施することもできる。このような分離工具は、例えば剪断刃(ein Schermesser)又は楔形の分離要素(ein keilfoermiges Trennelement)とすることができ、これらは、襠状領域(Zwickelbereich)において、すなわち剥離層と、依然として構成部材に残されている材料との間の接触箇所において使用される。
【0020】
分離工具を、例えば熱伝導、電気抵抗、照射、又は他の手段によって加熱することができる。剥離層を、分離工具の反対側に配置された案内ローラによって案内することができる。これによって剥離層、ひいては剥離層中に存在する繊維の屈曲を阻止することができる。案内ローラを加熱することもできる。
【0021】
本発明による方法を、有利には、構成部材の製造時に、とりわけ繊維配向及び/又は敷設方向に関する構成部材データが保存され、当該リサイクル方法を支援するために、とりわけ剥離プロセスのための剥離方向及び/又は開始地点を決定するために使用されるように実施することもできる。
【0022】
剥離層の除去は(Das Abloesen der
Abzieh-Schicht)、繊維又は繊維の一部の破壊をできるだけ阻止するために、理想的には繊維方向において(in Faserrichtung)実施される。構成部材の製造時に使用された敷設方向が既知である場合には、剥離層を逆方向に除去することができ、これによって繊維の延在方向に除去される。理想的には、剥離されるべき繊維材料の全長にわたって繊維構造を保持することが可能である。さらには、繊維の他にマトリクス材料も、ほぼ損傷のないままに維持することが可能となり、これによって理想的なケースでは、剥離層をさらに処理することなく再利用することが可能となる。
【0023】
構成部材データを、構成部材の内部又は表面に読取可能な方法で、例えばRFID(radio frequency
Identification)又はQRコード(登録商標)又はバーコードによって保存することができる。もちろん、データを、構成部材から離隔された別個のデータ担体に設けることも可能である。
【0024】
構成部材は、マーキングを有することもでき、このマーキングによって、空間内における構成部材の幾何学的な方向性を自動的に検出することが可能となり、これによって、リサイクルのための構成部材の自動的な処理を支援することができる。
【0025】
本発明による方法を、繊維複合材料が、残りの構成部材からの剥離前、剥離中、及び/又は剥離後に少なくとも1回の非破壊での材料試験方法によって検査され、検査の結果が、剥離プロセスの開ループ制御又は閉ループ制御のために使用されるように実施することもできる。
【0026】
さらには、剥離層の形状を、とりわけ、例えば少なくとも1つのカレンダ機を用いたプレスによって、及び/又は材料被着によって、例えば押出成形によって変化させることが可能である。材料被着によって、劣化又は損失したマトリクス材料を補うことができる。引抜成形工具による成形も考えられる。
【0027】
剥離層の一部を、構成部材からの除去後に、例えば切断プロセスによって分離することも考えられる。このことは、過度に損傷を受けた材料を除去するため、又は剥離層の寸法を所定の所要量まで縮小するために必要となり得る。
【0028】
さらに、本発明の方法は、例えばマイクロ波又は熱分解のような従来技術から公知の分離方法によって、剥離層中の繊維とマトリクス材料とを分離することも企図することができる。この場合には繊維材料を、新しい繊維複合材料を製造するために使用することが可能となる。
【0029】
本発明による装置を同時に、リサイクルされた繊維複合材料から新しい構成部材を製造するように構成することができる。すなわち、獲得されたリサイクル物から、リサイクル物と、新しい構成部材との両方を製造することができる組み合わせ型の装置である。そのような組み合わせ型の装置は、例えば新しい構成部材を製造するための既存の設備、例えば巻回設備に、例えばリサイクルモジュールを組み込むことによって実現可能である。
【0030】
本発明による方法及び本発明による装置の例示的な実施形態を、2つの図面に基づいて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】円周状の表面を有する構成部材からの繊維複合材料のリサイクルを示す図である。
【
図2】プレート形状の構成部材からの繊維複合材料のリサイクルを示す図である。
【0032】
図1は、円筒形の構成部材1を示し、この構成部材1の表面は、繊維複合材料からなるテープ2から製造されている。通常、このような構成部材1にテープ2の複数の層が被着されており(abgelegt)、この場合にはテープ2は、-ここでは図示されていないが-それぞれ異なる層においてそれぞれ異なる方向性を有することができる。説明を容易にし、かつ認識し易くするためだけに、ここではテープ2が単一の層で、かつ一巻きと一巻きの間に間隔をあけた状態で図示されている。
【0033】
繊維複合材料を除去するために、ここでは図示されていない把持部によって構成部材1から剥離層10が取り上げられ、貯蔵ローラ3に供給される。剥離層10の形状は、構成部材1上に配置されているテープ2に対応しているか、又は理想的なケースではテープ2と同一である。剥離層10の除去を容易にするために楔形の分離工具4が設けられており、この分離工具4は、剥離層10のうちの既に除去された部分と、構成部材1との間に係合する。案内ローラ5によって剥離層10が案内され、これによって、剥離層10の屈曲と、剥離層10中に含まれている別個には図示されていない繊維の屈曲とが発生する可能性が防止される。剥離層10は、貯蔵ローラ3上に巻き取られる前にさらにローラ対6を通過する。このローラ対6は、例えば、剥離層10のためのカレンダ機として成形のために使用することができ、及び/又は、空間内における剥離層10の方向性を安定させるために使用することができる。図示されるように、構成部材1上に配置されているテープ2全体を剥離層10として貯蔵ローラ3上に巻き付け、続いて再利用プロセスに供することができる。この場合には剥離層10は、破壊されていないエンドレス繊維(Endlosfaser)を含むことができる。
【0034】
図2は、プレート形状の構成部材8に配置されている繊維複合材料、ただしここではストリップ形状である繊維複合材料の、別の剥離層7の除去を示し、このプレート形状の構成部材8の平面上の広がりによって、繊維複合材料のストリップ11の長さが制限されている。鉗子形状の把持ユニット9によって剥離層7が把持されて構成部材8から取り上げられており、なお、
図2では、把持ユニット9のうち2つの鉗子要素のみを概略的に見て取ることができる。この際、除去プロセスを支援するために楔形の分離工具4が使用される。このようにして剥離層10を、その全長にわたって、この剥離層10中に含まれている繊維を破壊することなく構成部材1から取り上げることができる。このストリップ形状の剥離層7は、理想的なケースでは、構成部材上に元々配置されていたストリップ11に対応しており、このような剥離層7を収集して、再利用に供することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 構成部材(Bauteil)
2 テープ(Band)
3 貯蔵ローラ(Vorratsrolle)
4 分離工具(Trennwerkzeug)
5 案内ローラ(Fuehrungsrolle)
6 ローラ対(Rollenpaar)
7 ストリップ(Streifen)
8 構成部材(Bauteil)
9 把持ユニット(Greifeinheit)
10 剥離層(Abzieh-Schicht)
11 ストリップ(Streifen)