(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】ベンズアミドおよび活性化合物組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4184 20060101AFI20220527BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220527BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220527BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P37/04
(21)【出願番号】P 2019527847
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(86)【国際出願番号】 US2017063195
(87)【国際公開番号】W WO2018098401
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517405149
【氏名又は名称】トランスレイショナル・ドラッグ・ディベロップメント・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ワン,トン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイトリー,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス,ポール
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-531416(JP,A)
【文献】特表2007-532095(JP,A)
【文献】特表2008-533993(JP,A)
【文献】Medical Epigenetics,2014年,Vol.2,pp.80-85
【文献】Cancer Immunol Immunother,2012年,Vol.61,pp.1721-1733
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-1BBに対する抗体およびGITRに対する抗体からなる群から選択される、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーと結合する薬剤と、
4-(1-(シクロヘキシルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物ID#24)、4-(1-シクロヘキシル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物ID#25)、および4-(1-シクロヘプチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物ID#26)からなる群から選択される化合物
と
を含む
、
がんを処置する、がん免疫療法を提供する、または少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼを阻害し、自然および適応免疫を増強する使用のための組成物。
【請求項2】
前記TNFRSFのメンバーと結合する薬剤が、抗4-1BB(CD137)抗体からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗4-1BB(CD137)抗体が、抗m4-1BB抗体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記TNFRSFのメンバーと結合する薬剤が、抗GITR抗体からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗GITR抗体が、抗mGITR抗体である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物であって、ここで前記組成物の量が、がんの進行を遅延させるのに十分な治療有効量である、組成物。
【請求項7】
前記がんが、結腸直腸がん、黒色腫、非小細胞がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、血液系悪性腫瘍、および腎細胞癌腫からなる群から選択される、請求項6に記載のがんを処置する使用のための組成物。
【請求項8】
細胞における少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を阻害することにおける使用のための組成物であって、
4-(1-(シクロヘキシルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物ID#24)、4-(1-シクロヘキシル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物ID#25)、および4-(1-シクロヘプチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物ID#26)からなる群から選択される化合物を含む、組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのHDACが、HDAC3および/またはHDAC6である、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月23日に出願した米国特許仮出願第62/426,031号の優先権を主張するものであり、前記仮出願の内容は、それら全体が参照により本明細書に組み入れられる。
電子的に提出する配列表への言及
配列表の正式な写しを、2016年5月23日に作成した、68キロバイトのサイズを有する、「11144_023_Seq_Listing_ST25.txt」という名のファイルで、ASCII形式の配列表として、EFS-Web経由で電子的に提出し、本明細書と同時に出願する。このASCII形式の書類に収載されている配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
技術分野
本開示は、治療剤とベンズアミド化合物の組合せを含む組成物、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、米国において2番目に多い死因である。新たな進展により死亡率は低下したが、それにもかかわらず、多くのがんは難治性のままである。加えて、化学療法、放射線療法および外科手術などの典型的な処置は、広範囲の望ましくない副作用を引き起こす。加えて、多くのがんは、時が経つにつれて現行の化学療法に対する耐性を発現することが多い。明らかに、当分野では、がん細胞の拡大を緩徐化し、がんの処置に有用である、新規化合物および方法が著しく必要とされている。
【0003】
現在認められるがんが多種多様であることから、体内のがんを破壊するために非常に多くの抗がん剤が開発されてきた。これらの化合物は、正常な健常細胞をそのままにしたまま、悪性細胞を破壊することまたは別様に悪性細胞の成長を阻害することを目的として、がん患者に投与される。抗がん剤は、それらの作用メカニズムに基づいて分類されている。
【0004】
1つのタイプの化学療法薬は、金属配位錯体と呼ばれる。このタイプの化学療法薬は、細胞核内で主として鎖間DNA架橋を形成することによって細胞の複製を防止すると考えられている。結果として、腫瘍成長は、最初は抑止されるが、その後、元に戻る。別のタイプの化学療法薬は、アルキル化剤と呼ばれる。これらの化合物は、外来組成物または分子を分裂中のがん細胞のDNAに挿入することによって機能する。これらの外来部分構造の結果として、がん細胞の正常機能が損なわれ、増殖が防止される。別のタイプの化学療法薬は、抗新生物剤である。このタイプの薬剤は、がん細胞の成長および拡大を防止するか、がん細胞を殺滅するか、またはがん細胞の成長および拡大を阻止する。さらに他のタイプの抗がん剤には、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、二機能性アルキル化剤などが含まれる。
【0005】
化学療法剤と免疫療法剤の組合せである化学免疫療法は、腫瘍細胞を直接攻撃して腫瘍細胞壊死またはアポトーシスを生じさせる薬剤の効果と、腫瘍に対する宿主免疫応答を調節する薬剤とを併用する、がん処置の新規アプローチである。化学療法剤は、腫瘍抗原を発生させて抗原提示細胞により提示させて「多価」腫瘍細胞ワクチンを作り出すことにより、および腫瘍構造を破壊し、かくて免疫療法剤はもちろん免疫療法剤の浸透も助長することにより、免疫療法の効果を高めることができるだろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ベンズアミド化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と4-1BB(CD137)アゴニストとを含む、医薬組成物を含む、組成物、および該組成物を使用してがんを処置する方法を提供する。ベンズアミド化合物は、次の式を有する:
【0007】
【0008】
(式中、Xは、H、ハロ、-OH、-CN、-NR’R”、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、および3~10員複素環からなる群から選択され、ここで、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、または3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、またはハロ、-OH、-CN、-NR’R”、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキルのうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく;Yは、H、-C1~C6アルキル、-C3-シクロアルキル、アリール、3~10員複素環からなる群から選択され、ここで、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、アリール、3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または-ハロ、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、3~10員複素環、アリール、OH、-CN、-OR’、-SR’、-OC(O)、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソのうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく;R’またはR”は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよく;Zは、NHOHであり;そして、Qは、H、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される)。一部の実施形態では、Yは、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルからなる群から選択される。他の実施形態では、Yは、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルまたはシクロヘプチルメチルからなる群から選択される。
【0009】
一部の実施形態では、4-1BB(CD137)アゴニストは、4-1BB(CD137)に対する抗体、4-1BB(CD137)に対する抗体の抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、およびオリゴペプチドからなる群から選択される。
【0010】
がんなどの増殖性疾患を処置する方法も提供する。この方法は、そのような処置を必要とする対象に、4-1BB(CD137)アゴニストの治療有効量およびベンズアミド化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の治療有効量を投与するステップを含む。
【0011】
一部の実施形態では、ベンズアミド化合物の治療有効量および4-1BB(CD137)アゴニストの治療有効量は、対象のがんの進行を遅延させるのに十分な量である。一部の実施形態では、治療有効量は、がん転移を阻害するのに十分な量である。本発明の方法に従って処置可能ながんの具体的なタイプは、結腸直腸がん、黒色腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、血液系悪性腫瘍、および腎細胞癌腫からなる群から選択することができる。
【0012】
4-1BB(CD137)アゴニストは、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、埋め込みにより投与、吸入により投与、くも膜下腔内(intrathecally)投与、脳室内投与、または鼻腔内投与することができる。ベンズアミド化合物は、連続投与してもよく、または間欠投与してもよい。一部の実施では、ベンズアミド化合物は、4-1BB(CD137)アゴニストの投与前に投与される。他の実施では、ベンズアミド化合物は、4-1BB(CD137)アゴニストの投与後に投与される。一部の実施では、ベンズアミド化合物は、4-1BB(CD137)アゴニストと同時投与される。
【0013】
ベンズアミド化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物とGITRアゴニストとを含む、医薬組成物を含む、組成物、および該組成物を使用してがんを処置する方法を提供する。ベンズアミド化合物は、次の式を有する:
【0014】
【0015】
(式中、Xは、H、ハロ、-OH、-CN、-NR’R”、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、および3~10員複素環からなる群から選択され、ここで、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、または3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、またはハロ、-OH、-CN、-NR’R”、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキルのうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく;Yは、H、-C1~C6アルキル、-C3-シクロアルキル、アリール、3~10員複素環からなる群から選択され、ここで、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、アリール、3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または-ハロ、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、3~10員複素環、アリール、OH、-CN、-OR’、-SR’、-OC(O)、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソのうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく;R’またはR”は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよく;Zは、NHOHであり;そして、Qは、H、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される)。一部の実施形態では、Yは、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルからなる群から選択される。他の実施形態では、Yは、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルまたはシクロヘプチルメチルからなる群から選択される。
【0016】
GITRアゴニストは、GITRに対する抗体、GITRに対する抗体の抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、およびオリゴペプチドからなる群から選択される。
【0017】
がんを処置する方法は、そのような処置を必要とする対象に、ベンズアミド化合物の治療有効量を投与するステップ、およびそのような処置を必要とする対象にGITRアゴニストの治療有効量を投与するステップを含む。一部の実施形態では、がんを処置する方法は、固形腫瘍および/または難治性腫瘍を処置する。一部の実施では、ベンズアミド化合物は、GITRアゴニストの投与前に投与される。他の実施では、ベンズアミド化合物は、GITRアゴニストと同時投与される。一部の態様では、ベンズアミド化合物は、静脈内投与される。一部の実施では、GITRアゴニストは、静脈内投与される。一部の態様では、GITRアゴニストは、週2回投与される。
【0018】
医薬組成物を含む組成物、および組成物を使用してがんを処置する方法を提供し、前記組成物は、ベンズアミド化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、TNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーと結合する薬剤とを含む。ベンズアミド化合物は、次の式を有する:
【0019】
【0020】
(式中、Xは、H、ハロ、-OH、-CN、-NR’R”、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、および3~10員複素環からなる群から選択され、ここで、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、または3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または
ハロ、-OH、-CN、-NR’R”、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキルのうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく;Yは、H、-C1~C6アルキル、-C3-シクロアルキル、アリール、3~10員複素環からなる群から選択され、ここで、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、アリール、3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または-ハロ、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、3~10員複素環、アリール、OH、-CN、-OR’、-SR’、-OC(O)、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)R’、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソのうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく;R’またはR”は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよく;Zは、NHOHであり;そして、Qは、H、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される)。一部の実施形態では、Yは、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルからなる群から選択される。他の実施形態では、Yは、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルまたはシクロヘプチルメチルからなる群から選択される。
【0021】
TNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーと結合する薬剤は、TNFRSFのアゴニスト、TNFRSFのメンバーに対する抗体、TNFRSFのメンバーに対する抗体の抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであってもよい。TNFRSFのメンバーと結合する薬剤が、TNFRSFのメンバーに対する抗体または該抗体の抗原結合断片である、一部の態様では、TNFRSFのメンバーと結合する薬剤は、Fc受容体と結合しない。
【0022】
TNFRSFのメンバーと結合する薬剤は、ポリペプチドであってもよい。一部の態様では、ポリペプチドは、腫瘍壊死因子受容体リガンドスーパーファミリー(TNFSF)タンパク質の受容体に結合することができるTNFSFタンパク質またはその断片の細胞外ドメインの第一、第二および第三のコピーを含む。一部の実施形態では、TNFSFタンパク質またはその断片の細胞外ドメインの第一、第二および第三のコピーのうちの少なくとも1つは、TNFSFタンパク質のストーク領域を含む。一部の態様では、TNFSFタンパク質は、GITRLである。
【0023】
がんを処置する方法は、そのような処置を必要とする対象に、ベンズアミド化合物の有効量を投与するステップ、およびそのような処置を必要とする対象に、TNFRSFのメンバーと結合する薬剤の治療有効量を投与するステップを含む。一部の実施形態では、がんを処置する方法は、固形腫瘍および/または難治性腫瘍を処置する。一部の実施では、ベンズアミド化合物は、TNFRSFのメンバーと結合する薬剤の投与前に投与される。他の実施では、ベンズアミド化合物は、TNFRSFのメンバーと結合する薬剤と同時投与される。一部の態様では、ベンズアミド化合物は、静脈内投与される。一部の実施では、TNFRSFのメンバーと結合する薬剤は、静脈内投与される。
【0024】
本発明は、細胞における少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を阻害する方法であって、次の式を有する化合物:
【0025】
【0026】
(式中、Xは、H、ハロ、-OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)NR’R”、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、および3~10員複素環からなる群から選択され、ここで、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、または3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、またはハロ、-OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)NR’R”、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキルのうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく;Yは、H、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、アリール、3~10員複素環からなる群から選択され、ここで、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、アリール、3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または-ハロ、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキルシクロアルキル、3~10員複素環、アリール、OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)NR’R”、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソのうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく;R’またはR”は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよく;Zは、-NHOHであり;そして、Qは、Hおよびハロからなる群から選択される)
を含む組成物を用意するステップと、前記組成物の有効量を投与して前記細胞における少なくとも1つのHDACを阻害するステップとを含む方法も提供する。
【0027】
一態様では、組成物は、in vivoで投与される医薬組成物を含む。一態様では、少なくとも1つのHDACは、HDAC3および/またはHDAC6である。別の態様では、Yは、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルからなる群から選択される。さらに別の態様では、Yは、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルまたはシクロヘプチルメチルからなる群から選択される。
【0028】
他の実施形態では、本発明は、がん免疫療法を提供する方法であって、がん免疫療法を必要とする対象に、本明細書において開示の次の式の化合物:
【0029】
【0030】
の治療有効量を投与するステップと、がん免疫療法を必要とする前記対象に、TNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーと結合する薬剤、GITRアゴニストGITRアゴニスト、および/または4-1BB(CD137)アゴニストの治療有効量を投与するステップとを含む方法に関する。
【0031】
さらに他の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼを阻害し、自然および適応免疫を増強する方法であって、そのような処置を必要とする、がんを有する対象に、本明細書において開示の次の式の化合物:
【0032】
【0033】
の治療有効量を投与するステップと、そのような処置を必要とする、がんを有する前記対象に、TNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーと結合する薬剤、GITRアゴニストGITRアゴニスト、および/または4-1BB(CD137)アゴニストの治療有効量を投与するステップとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】化合物ID#24単独、PD-1軸結合アンタゴニスト単独、および前記2つの治療剤の組合せの、4T1マウス乳腺腫瘍体積増加に対する効果を示す図である。
【
図2】化合物ID#24単独、CTLA4アンタゴニスト単独、および前記2つの治療剤の組合せの、4T1マウス乳腺腫瘍体積増加に対する効果を示す図である。
【
図3】化合物ID#24単独、PD-1軸結合アンタゴニストとCTLA4アンタゴニストの組合せ、および3つすべての治療剤の組合せの、4T1マウス乳腺腫瘍体積増加に対する効果を示す図である。
【
図4】化合物ID#24単独、PD-1軸結合アンタゴニスト単独、および前記2つの治療剤の組合せの、4T1マウス乳腺腫瘍細胞の移植からの自然肺転移の形成に対する効果を示す図である。
【
図5】化合物ID#24単独、CTLA4アンタゴニスト単独、および前記2つの治療剤の組合せの、4T1マウス乳腺腫瘍細胞の移植からの自然肺転移の形成に対する効果を示す図である。
【
図6】化合物ID#24単独、PD-1軸結合アンタゴニストとCTLA4アンタゴニストの組合せ、および3つすべての治療剤の組合せの、4T1マウス乳腺腫瘍細胞の移植からの自然肺転移の形成に対する効果を示す図である。
【
図7】化合物ID#24単独、4-1BB(CD137)のアゴニスト単独、および前記2つの治療剤の組合せの、CT-26マウス結腸腫瘍体積増加に対する効果を示す図である。
【
図8】化合物ID#24単独、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)のアゴニスト単独、および前記2つの治療剤の組合せの、MC-38マウス結腸腫瘍体積増加に対する効果を示す図である。
【
図9】化合物ID#24単独、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤単独、および前記2つの治療剤の組合せの、MV411ヒトAML腫瘍異種移植片体積増加に対する効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書でおよび本特許請求の範囲で使用されるような、本願で使用される場合の動詞「含む(comprise)」およびその活用形は、その非限定的な意味で使用され、この語に続く事柄が含まれ、しかし具体的に述べられていない事柄が除外されないことを意味する。加えて、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、文脈が要素のうちの1つおよび1つだけがあることを明らかに求めていない限り、要素のうちの1つより多くが存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常は「少なくとも1つ」を意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、ヒトおよび他の霊長類(例えば、チンパンジーならびに他の類人猿およびサル種)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ)、飼育動物(例えば、イヌおよびネコ)、実験動物(例えば、マウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯類)、および鳥類(例えば、飼い慣らされた鳥、野鳥および狩猟鳥、例えば、ニワトリ、シチメンチョウおよび他のキジ目の鳥、アヒル、ガチョウなど)を限定ではないが含む、あらゆる脊椎動物を指す。一部の実施では、対象は、哺乳動物でありうる。他の実施では、対象は、ヒトでありうる。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「処置すること」は、障害(disorder)もしくは疾患(disease)(例えば、がんまたは腫瘍症候群)に関連する症状の全体的もしくは部分的緩和する、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化の緩徐化もしくは停止を指す。処置は、哺乳動物(特に、ヒト)および経済的または社会的に重要な他の哺乳動物(絶滅の危機に瀕している状態のものを含む)を含むがこれらに限定されない、生き物に関して企図される。さらなる例としては、ヒトが消費するために一般に飼育される家畜または他の動物、および飼い慣らされた伴侶動物が挙げられる。状態の処置は、罹患した実体を疾患発現前のその状態に戻すことを含めて戻すまでの、疾患、障害もしくは状態の進行の停止、阻害、緩徐化もしくは逆行、疾患、障害もしくは状態の臨床症状の実質的改善、または疾患、障害もしくは状態の臨床症状出現の実質的予防を目的とした、任意の方法、プロセスまたは手順の実行である。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「予防すること」は、疾患もしくは障害(例えば、がん)またはその症状の発症、再発または拡大の全体的もしくは部分的予防を指す。
本明細書で使用される場合、用語「腫瘍」は、悪性または良性を問わずすべての新生物細胞成長および増殖、ならびにすべての前がん性およびがん性細胞および組織を指す。本明細書で使用される場合、用語「新生物(の)」、異常組織成長をもたらす、異常調節または無調節細胞成長の、悪性または良性を問わず、あらゆる形態を指す。したがって、「新生物細胞」は、異常調節または無調節細胞成長を有する悪性および良性細胞を含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「がん」は、固形腫瘍および血液由来の(blood born)腫瘍を含むが、これらに限定されない。したがって、用語「がん」は、膀胱、骨または血液、脳、乳房、子宮頸、胸部、結腸、子宮内膜、食道、眼、頭部、腎臓、肝臓、リンパ節、肺、口、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、精巣、のどおよび子宮のものを含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「増殖性」障害または疾患は、多細胞生物に害(すなわち、不快感または平均余命短縮)をもたらす、多細胞生物の1つまたは複数の細胞サブセットの望ましくない細胞増殖を指す。例えば、本明細書で使用される場合、増殖性障害または疾患は、新生物性障害および他の増殖性障害を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「がん細胞」は、最終的には無制限に拡大および成長しうる可能性がある、腫瘍、新生物、がん、前がん状態、細胞株または任意の他の細胞源に由来する、あらゆる細胞を指す。がん細胞は、天然に存在する源に由来することもあり、または人工的に作られることもある。がん細胞は、動物宿主に入れられたとき、他の組織への浸潤および転移が可能であることもある。がん細胞は、他の組織に浸潤したおよび/または転移したあらゆる悪性細胞をさらに包含する。生物に関しての1つまたは複数のがん細胞は、がん、腫瘍(tumor)、新生物、成長、悪性腫瘍(malignancy))と呼ばれることもあり、またはがん性状態の細胞を記述するために当技術分野において使用される任意の他の用語と呼ばれることもある。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「再燃した」は、治療後にがんが寛解した対象にがん細胞の再発がある状態を指す。
本明細書で使用される場合、用語「難治性」または「抵抗性」は、集中処置後でも対象の体内にがん細胞が残留している状況を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「化学療法抵抗性のがん」は、化学療法に応答していたがんが、がん細胞が化学療法の効果に応答しないため突然成長しはじめる場合のがんのタイプを指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「活性成分」および「活性物質」は、状態、障害または疾患の1つまたは複数の症状を処置、予防または改善するために、単独でまたは1つもしくは複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて対象に投与される化合物を指す。本明細書で使用される場合の「活性成分」および「活性物質」は、本明細書で説明される化合物の光学活性異性体または同位体バリアント体であってもよい。
【0045】
用語「薬物」、「治療剤」および「化学療法剤」は、状態、障害または疾患の1つまたは複数の症状を処置、予防または改善するために対象に投与される化合物またはその医薬組成物を指す。
【0046】
ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよび/またはDNA脱メチル化剤に関連して本明細書で使用される場合の用語「有効量」は、障害のリスクがある対象において、障害に関連する症状を全体的にもしくは部分的に緩和することができる、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化を緩徐化もしくは停止することができる、または障害を予防するまたは障害の発病予防をもたらすことができる量を指す。ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよび/またはDNA脱メチル化剤の例えば医薬組成物における有効量は、所望の効果を果たすことになるレベルでありうる。例えば、がんの場合、有効量は、がんのリスクがある対象において、がん、例えばがん、に関連する症状を全体的にもしくは部分的に緩和することができる、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化を緩徐化もしくは停止することができる、または障害を予防するまたはがんの発病予防をもたらすことができる量を指す。当業者には明らかであろうが、本明細書でのベンズアミド化合物の有効量ならびにPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよび/またはDNA脱メチル化剤の有効量は、処置される適応症の重症度に応じて変りうると予想することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、生理学的に許容され、対象に投与されたときにアレルギー反応または同様の望ましくない反応、例えば、急性胃蠕動、めまいなどを通常は生じさせない、分子実体および組成物を指す。
【0048】
したがって、用語「薬学的に許容される担体」は、ある臓器もしくは身体部分の投与部位から別の臓器もしくは身体部分への対象化合物の運搬もしくは輸送に関与する、またはin vitroアッセイ系に関係する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体もしくは固体フィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を指す。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、それが投与される対象に有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。許容される担体は、対象化合物の特異的活性を変化させてはならない。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、この用語が指す化合物の非毒性酸および塩基付加塩を包含する。許容される非毒性酸付加塩には、有機および無機酸または塩基から誘導されるものが含まれる。そのような塩の例としては、これらに限定されるものではないが、臭化水素酸、塩酸、硝酸、リン酸および硫酸の塩が挙げられる。有機酸付加塩には、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、2-(4-クロロフェノキシ)-2-メチルプロピオン酸、1,2-エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、N-グリコリルアルサニル酸、4-ヘキシルレゾルシノール、馬尿酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ラクトビオン酸、n-ドデシル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸、粘液酸、2-ナフタレンスルホン酸、パモ酸、パントテン酸、ホスファニル酸((4-アミノフェニル)ホスホン酸)、ピクリン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、テレフタル酸、p-トルエンスルホン酸、10-ウンデセン酸、または現在公知のもしくはまだ開示されていない任意の他のそのような酸の塩が含まれる。そのような薬学的に許容される塩を薬理学的組成物の製剤化に使用することができることは、当業者には理解されるであろう。そのような塩は、当業者には公知の手法でベンズアミド化合物またはPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよび/またはDNA脱メチル化剤を適する酸と反応させることによって調製することができる。
【0050】
本来酸性である化合物は、様々な薬学的に許容される塩基と塩を形成することができる。そのような酸性化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を調製するために使用することができる塩基は、非毒性塩基付加塩、すなわち、これらに限定されるものではないが特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩およびカルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはカリウム塩などの、薬学的に許容される金属カチオンを含有する塩を形成するものである。適する有機塩基には、N,N-ベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(meglumaine)(N-メチルグルカミン)、リシン、およびプロカインが含まれる。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、化合物の誘導体であって、生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)で加水分解、酸化または別様に反応してその化合物をもたらすことができる誘導体を指す。プロドラッグの例としては、生体内加水分解性部分構造、例えば、生体内加水分解性アミド、生体内加水分解性エステル、生体内加水分解性カルバミン酸塩、生体内加水分解性炭酸塩、生体内加水分解性ウレイドおよび生体内加水分解性リン酸塩類似体を含む、本発明の免疫調節化合物の誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグの他の例としては、-NO、-NO2、-ONO、または-ONO2部分構造を含む、本発明の免疫調節化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery(Manfred E.Wolff編、第5版、1995)およびDesign of Prodrugs(H.Bundgaard編、Elselvier、New York 1985)に記載されているものなどの、周知の方法を使用して通常は調製することができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、治療用組成物に関連して使用されるときの用語「単位用量」は、各々の単位が、必要希釈剤、すなわち担体またはビヒクル、と共同して望ましい治療効果を生じさせるように計算された活性物質の所定量を含有する、ヒトへの単位投薬量として適する物理的に個別の単位を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「単位剤形」は、ヒトおよび動物対象への投与に適する物理的に個別の単位であって、当技術分野において公知であるような個別包装された単位を指す。各単位用量は、必要な医薬担体または賦形剤と共同して所望の治療効果を生じさせるのに十分な活性成分の所定量を含有する。単位剤形を分割して投与してもよく、またはその倍数単位で投与してもよい。単位剤形の例としては、アンプル、注射器、および個別包装された錠剤またはカプセルが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「複数回投与用剤形」は、分離した単位剤形で投与される、単一容器に包装された複数の同一単位剤形である。複数回投与用剤形の例としては、バイアル、錠剤もしくはカプセルの瓶、または0.473リットル(パイント)もしくは3.785リットル(ガロン)の瓶が挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、用語「組成物」、「製剤」および「剤形」は、指定された成分を(示されている場合には、指定された量で)含む生成物はもちろん、指定された量の指定された成分を併せた結果として直接または間接的に得られるあらゆる生成物も包含することを意図したものである。
【0056】
本明細書で使用される場合、免疫機能不全に関しての用語「機能不全」は、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態を指す。この用語は、抗原認識が起こっていても結果として生じる免疫応答が感染または腫瘍成長を制御するには不十分である、疲弊および/またはアネルギー両方の共通要素を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「機能不全」は、抗原認識に対する不応または無応答、特に、増殖、サイトカイン(例えば、IL-2)産生および/または標的細胞殺滅などの、下流T細胞エフェクター機能への抗原認識の翻訳能力低下も含む。
【0058】
用語「アネルギー」は、T細胞受容体を介して送達される不完全なまたは不十分なシグナルの結果として生じる抗原刺激に対する無応答性状態(例えば、ras活性化の非存在下での細胞内Ca+2の増加)を指す。T細胞アネルギーは、共刺激の非存在下で抗原刺激によって起こることもあり、その結果、細胞は、共刺激という状況下にあっても抗原によるその後の活性化に対して不応になる。無応答性状態は、多くの場合、インターロイキン-2の存在によって覆すことができる。アネルギー性T細胞は、クローン増殖を受けない、および/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0059】
用語「疲弊」は、多くの慢性感染症およびがんの過程で起こる持続性TCRシグナル伝達から生じるT細胞機能不全状態のようなT細胞疲弊を指す。疲弊は、不完全なまたは不十分なシグナル伝達を介してではなく持続性シグナル伝達から生じる点で、アネルギーとは区別される。疲弊は、エフェクター機能不良、阻害性受容体の発現持続、および機能性エフェクターまたはメモリーT細胞のものとは異なる転写状態によって定義される。疲弊は、感染症および腫瘍の最適な制御を妨げる。疲弊は、外因性の負の調節経路(例えば、免疫調節サイトカイン)と細胞内因性の負の調節(共刺激)経路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方の結果として生じうる。
【0060】
「T細胞機能を増強すること」は、本明細書で使用される場合、持続性のもしくは増幅された生物学的機能を有するように、または疲弊したもしくは不活性のT細胞を再生もしくは再活性化するように、T細胞を誘導すること、T細胞にさせること、またはT細胞を刺激することを指す。T細胞の機能を増強することの例としては、介入前のそのようなレベルと比較して、CD8+T細胞からのγ-インターフェロンの分泌増加、増殖増加、抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体または腫瘍排除)増加が挙げられる。一実施形態では、増強レベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この増強を測定する手法は、当業者に公知である。
【0061】
「T細胞機能不全障害」は、抗原刺激に対する応答性低下を特徴とするT細胞の障害または状態である。特定の実施形態では、T細胞機能不全障害は、PD-1を介したシグナル伝達の不適切な増加に特に関連する障害である。別の実施形態では、T細胞機能不全障害は、T細胞がアネルギー性であるもの、またはサイトカインを分泌する、増殖する、もしくは細胞溶解活性を達成するT細胞の能力が低下したものである。特定の態様では、応答性低下の結果、免疫原を発現する病原体または腫瘍を抑制する効果がなくなる。T細胞機能不全を特徴とするT細胞機能不全障害の例としては、未解明の急性感染症、慢性感染症および腫瘍免疫が挙げられる。
【0062】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識および免疫クリアランスを回避するプロセスを指す。したがって、治療概念としては、腫瘍免疫は、そのような回避が弱められ、腫瘍が認識され、免疫系により抗原されると、「処置」される。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮および腫瘍排除が挙げられる。
【0063】
「免疫原性」は、免疫応答を誘発する特定の物質の能力を指す。腫瘍は免疫原性であり、腫瘍免疫原性を増強することは、免疫応答による腫瘍細胞の排除を助ける。腫瘍免疫原性を増強することの例としては、抗PDL抗体およびここで開示されるベンズアミド化合物での処置が挙げられる。
【0064】
「持続性応答」は、処置中止後に腫瘍成長を低減させることに対する持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与相開始時のサイズと比較して同じまたはそれより小さいままでありうる。一部の実施形態では、持続性応答は、処置継続期間と少なくとも同じ、処置継続期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の長さの継続期間を有する。
【0065】
用語「抗体」は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、多エピトープ特異性(polyepitopic specificy)を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ)、および一本鎖分子、ならびに抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では「抗体」と同義語として使用される。
【0066】
基本4鎖抗体単位は、2本の同一の軽(L)鎖および2本の同一の重(L)鎖で構成されているヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドとともに5個の基本ヘテロ四量体単位からなり、10個の抗原結合部位を含有し、その一方でIgA抗体は、J鎖との組合せで多価集合体を形成するように重合することができる2~5個の基本4鎖単位を含む。IgGの場合、4鎖単位は、一般に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によりH鎖と連結されており、さらに2本のH鎖が、H鎖アイソタイプに依存して1つまたは複数のジスルフィド結合により互いに連結されている。各HおよびL鎖は、規則的な間隔で配置された鎖間ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変領域(VH)を有し、続いてアルファおよびガンマ鎖の各々に3つの定常ドメイン(CH)、ならびに1.1およびEアイソタイプについては4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、続いてそのもう一方の末端に定常ドメインを有する。VLは、VHと整列しており、CLは、重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)と整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメイン間の接合部分を形成すると考えられる。VHとVLが対合して一緒に単一抗原結合部位を形成する。抗体の様々なクラスの構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P.Sties、Abba I.TerrおよびTristram G.Parsolw(編)、Appleton & Lange、Norwalk、Conn.、1994、71頁および第6章を参照されたい。いずれの脊椎動物種からのL鎖も、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に異なるタイプの一方に割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを様々なクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンには、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびptと呼ばれる重鎖をそれぞれ有する、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという5つのクラスがある。ガンマおよびアルファクラスは、CH配列および機能の比較的小さい差に基づいてさらに分けられ、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。
【0067】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」および「VL」と呼ばれることがある。これらのドメインは、一般に、抗体の(同じクラスの他の抗体と比較して)最も可変的な部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0068】
用語「可変的」は、可変ドメインのある特定のセグメントの配列が抗体間で甚だしく異なることを指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を規定する。しかし、可変性は、可変ドメインの全スパンにわたって均等に分布していない。それよりむしろ、可変性は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメイン両方の中の超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインの、より高度に保存される部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブ重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、主としてベータシート配置をとる4つのFR領域を含み、これらのFR領域は3つのHVRによって接続されており、前記HVRは、ベータシート構造を接続するループを形成し、場合によってはベータシート構造の一部を形成する。各鎖内のHVRは、FRによって互いに極近接して保持されており、他の鎖からのHVRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Squences of Immunological Interest、第5版、National Institute of Health、Bethesda、Md.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原との結合に直接関係しないが、様々なエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害への抗体の関与を示す。
【0069】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、前記集団を構成する個々の抗体は、少量で存在することがある、自然に起こる可能性のある変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高特異的であり、単一抗原部位に対して作られる。異なる決定基(エピトープ)に対して作られる異なる抗体を概して含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して作られる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されないハイブリドーマ培養によって合成される点で有利である。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる場合の抗体の特徴を示し、この修飾語句を、いずれかの特定の方法による抗体の産生を求めるものとみなすべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な技術によって作製することができ、そのような技術としては、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495~97(1975);Hongoら、Hybridoma、14(3):253~260(1995)、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563~681(Elsevier、N.Y.、1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature、352:624~628(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581~597(1992);Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299~310(2004);Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073~1093(2004);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467~12472(2004);およびLeeら、J.Immunol.Methods 284(1-2):119~132(2004)を参照されたい)、およびヒト免疫グロブリン座位の部分もしくはすべてを有する動物またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物においてヒト抗体またはヒト様抗体を産生する技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741;Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature 362:255~258(1993);Bruggemannら、Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号および同第5,661,016号;Marksら、Bio/Technology 10:779~783(1992);Lonbergら、Nature 368:856~859(1994);Morrison、Nature 368:812~813(1994);Fishwildら、Nature Biotechnol.14:845~851(1996);Neuberger、Nature Biotechnol.14:826(1996);ならびにLonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.13:65~93(1995)を参照されたい)が挙げられる。
【0070】
用語「裸の抗体」は、細胞傷害性部分構造または放射標識に結合されていない抗体を指す。
用語「完全長抗体」、「インタクト抗体」または「全抗体」は、同義語として使用され、抗体断片の対語として、その実質的にインタクトな形態での抗体を指す。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、ネイティブ配列定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列定常ドメイン)であってもよく、またはそのアミノ酸配列バリアントであってもよい。場合によっては、インタクト抗体は、1つまたは複数のエフェクター機能を有することがある。
【0071】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分、好ましくは、インタクト抗体の抗原結合および/または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、Protein Eng.8(10):1057~1062[1995]を参照されたい);抗体断片から形成される一本鎖抗体分子および多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片と、残りの「Fc」断片(容易に結晶化できることを表す呼称)を生じさせた。Fab断片は、全L鎖とともに、H鎖の可変領域ドメイン(VH)および1本の重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大きいF(ab’)2断片を生じさせ、このF(ab’)2断片は、ジスルフィドによって連結されている異なる抗原結合活性を有する2つのFab断片に概して相当し、依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシル末端に抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む少数の残基の付加を有することが、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書での呼称である。F(ab’)2抗体断片は、Fab’断片のペアであって、それらの間にヒンジシステインを有するペアとして、当初産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0072】
Fc断片は、ジスルフィド結合によって一緒に保持されている両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域内の配列によって決まり、この領域はまた、ある特定の細胞型に見られるFc受容体(FcR)によって認識される。
【0073】
「Fv」は、完全抗原認識および抗原結合部位を含有する最小抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが密接に非共有結合的に会合している二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みから6つの超可変ループ(HおよびL鎖から各々3ループ)が生じ、これらのループが抗原結合にアミノ酸残基を提供し、抗体への抗原結合特異性を付与する。しかし、たとえ単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)であっても、全結合部位より低い親和性でだが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0074】
「sFv」または「scFv」と略記されもする「一本鎖Fv」は、接続されて1本のポリペプチド鎖になっているVH抗体ドメインとVL抗体ドメインとを含む、抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成すことを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメイン間にさらに含む。sFvの概説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer-Verlag、New York、269~315頁(1994)を参照されたい。
【0075】
本発明の抗体の「機能性断片」は、インタクト抗体の抗原結合もしくは可変領域、または変更されたFcR結合能力を保持するもしくは有する抗体のFc領域を一般に含む、インタクト抗体の一部分を含む。抗体断片の例としては、抗体断片から形成される、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子および多重特異性抗体が挙げられる。
【0076】
「ダイアボディ」は、短いリンカー(約5~10残基)を伴うsFv断片(前記段落を参照されたい)を、VHドメインとVLドメインの間に、Vドメインの鎖内対合ではなく鎖間対合が達成され、その結果、二価断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように構築することによって調製される、小さい抗体断片を指す。二重特異性抗体は、2つの抗体のVHおよびVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP 404,097、WO93/11161、Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448(1993)においてより詳細に説明されている。
【0077】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残部が、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびに所望の生物活性を示すのであればそのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81、6851~6855(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば目的の抗原でのマカクザルの免疫処置によって産生された抗体に由来する、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0078】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントの(下文において定義される)HVRからの残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有する、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRからの残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてもドナー抗体においても見出されない残基を含むことがある。これらの修飾を行って、結合親和性などの抗体の性能をさらに洗練することができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つおよび典型的には2つの可変ドメインであって、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものに対応するが、FR領域が、結合親和性、異性化、免疫原性などのような抗体の性能を向上させる1つまたは複数の個別のFR残基置換を含むことがある、可変ドメインの実質的にすべてを含むことになる。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的には、H鎖において6以下、L鎖において3以下である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分も場合により含むことになる。さらなる詳細については、例えば、Jonesら、Nature 321:522~525(1986);Riechmannら、Nature 332:323~329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596(1992)を参照されたい。例えば、VaswaniおよびHamilton、Ann.Allergy、Asthma & Immunol.1:105~115(1998);Harris、Biochem.Soc.Transactions 23:1035~1038(1995);HurleおよびGross、Curr.Op.Biotech.5:428~433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照されたい。
【0079】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のものに対応するアミノ酸配列を有する、および/または本明細書において開示のヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して製造された、抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外しない。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む当技術分野において公知の様々な技術を使用して産生することができる。HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.、222:581(1991)。ヒトモノクローナル抗体の調製には、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);Boernerら、J.Immunol.、147(1):86~95(1991)に記載されている方法も利用可能である。van Dijkおよびvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.、5:368~74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されたが、その内在性座位が無効化されたトランスジェニック動物、例えば免疫処置したキセノマウスに抗原を投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照されたい)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されたヒト抗体に関するLiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557~3562(2006)も参照されたい。
【0080】
用語「超可変領域」、「HVR」、または「HV」は、本明細書で使用されるとき、配列内の超可変性である、および/または構造的に明確なループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVR、VHに3つ(H1、H2、H3)およびVLに3つ(L1、L2、L3)、を含む。ネイティブ抗体の場合、H3およびL3は、6つのHVRのうち最も高い多様性を提示し、特にH3は、抗体への微細特異性の付与に独自の役割を果たすと考えられている。例えば、Xuら、Immunity 13:37~45(2000);JohnsonおよびWu、Methods in Molecular Biology 248:1~25(Lo編、Human Press、Totowa、N.J.、2003)を参照されたい。実際、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科動物抗体は、軽鎖の非存在下で機能性であり、安定している。例えば、Hamers-Castermanら、Nature 363:446~448(1993);Sheriffら、Nature Struct.Biol.3:733~736(1996)を参照されたい。
【0081】
多数のHVR描写が本明細書で使用されており、本明細書に包含される。カバット相補性決定領域(CDR)は、配列多様性に基づくものであり、最もよく使用されるものである(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。コチアは、その代わりに構造ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.196、901~917(1987))。AbM HVRは、カバットHVRとコチア構造ループの折衷案であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、入手可能な複合結晶構造の分析に基づく。
【0082】
HVRは、次のような「伸長したHVR」を含むこともある:VLでは24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)および89~97または89~96(L3)ならびにVHでは26~35(H1)、50~65または49~65(H2)および93~102、94~102、または95~102(H3)。可変ドメイン残基には、これらの定義の各々について、Kabatら、上掲に従って番号が付けられる。
【0083】
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにおけるようなアミノ酸位番号付け」という表現およびその変形表現は、Kabatら、上掲における抗体編纂の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用された番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくHVRの短縮または可変ドメインのFRもしくHVRへの挿入に相当する、より少ないまたは追加のアミノ酸を含有することがある。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一アミノ酸挿入物(Kabatによれば残基52a)、および重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによれば残基82a、82bおよび82cなど)を含むことがある。残基のKabat番号付けは、所与の抗体について、該抗体の配列と「基準」Kabat番号付け配列の相同領域でのアラインメントによって決定されうる。
【0084】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義のHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」または「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択の際に最もよく存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)におけるようなサブグループである。VLについての例としては、Kabatら、上掲におけるようなサブグループカッパI、カッパII、カッパIIIまたはカッパIVでありうるサブグループが挙げられる。加えて、VHについてのサブグループは、Kabatら、上掲におけるようなサブグループI、サブグループIIまたはサブグループIIIでありうる。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、ヒトフレームワーク残基が、ドナーフレームワーク配列と様々なヒトフレームワーク配列とのアラインメントによりドナーフレームワークとのその相同性に基づいて選択されるときなどの、特定の残基がドナーフレームワークとのその相同性に基づいて選択される場合、上記から導き出すことができる。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「から導き出される」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含むこともあり、または既存アミノ酸配列の変化を有することもある。一部の実施形態では、既存アミノ酸の変化は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。
【0085】
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」は、Kabatら、上掲の可変重鎖サブグループIIIにおけるアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施形態では、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、次の各配列の少なくとも一部分またはすべてを含む:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(HC-FR1、配列番号4)、WVRQAPGKGLEWV(HC-FR2、配列番号5)、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(HC-FR3、配列番号6)、WGQGTLVTVSA(HC-FR4、配列番号7)。
【0086】
「VLカッパIコンセンサスフレームワーク」は、Kabatら、上掲の可変軽鎖カッパサブグループIにおけるアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施形態では、VHサブグループIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、次の各配列の少なくとも一部分またはすべてを含む:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(LC-FR1、配列番号11)、WYQQKPGKAPKLLIY(LC-FR2、配列番号12)、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(LC-FR3、配列番号13)、FGQGTKVEIKR(LC-FR4、配列番号14)。
【0087】
指定位置、例えばFc領域の指定位置の「アミノ酸修飾」は、指定残基の置換もしくは欠失、または指定残基に隣接した少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を指す。指定残基に「隣接した」挿入は、その指定残基の1~2残基以内への挿入を意味する。挿入は、指定残基のN末端であってもよく、またはC末端であってもよい。ここでの好ましいアミノ酸修飾は、置換である。
【0088】
「親和性成熟した」抗体は、その1つまたは複数のHVRにおける1つまたは複数の変更であって、それらの変更を有さない親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和性を向上させる結果となる変更を有する抗体である。一実施形態では、親和性成熟した抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟した抗体は、当技術分野において公知の手順によって産生される。例えば、Marksら、Bio/Technology 10:779~783(1992)には、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和性成熟が記載されている。HVRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発は、例えば、Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809~3813(1994);Schierら、Gene 169:147~155(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994~2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.154(7):3310~9(1995);およびHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889~896(1992)により記載されている。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「と特異的に結合する」または「に対して特異的」であるは、生体分子を含む分子の不均一集団の存在下で標的の存在を決定する、標的と抗体間の結合などの、測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(これはエピトープであってもよい)と特異的に結合する抗体は、他の標的と結合するより、大きい親和性で、結合力で、簡単に、および/または長い継続期間で、この標的に結合する抗体である。一実施形態では、抗体の無関係標的との結合度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定して、抗体の標的との結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的と特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種からのタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープと特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を、必要としないが、含むことができる。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「イムノアドヘシン」は、異種タンパク質の結合特異性(付着性)と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを併せ持つ抗体様分子を示す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識および結合部位以外である(すなわち、「異種」である)、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合体を含む。免疫グロブリン分子中のアドヘシン部分は、通常は、受容体またはリガンドの結合部位を少なくとも含む連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2(IgG2AおよびIgG2Bを含む)、IgG-3またはIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1およびIgA-2を含む)、IgE、IgDまたはIgMなどの、任意の免疫グロブリンから得ることができる。Ig融合体は、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の位置での、本明細書で説明されるポリペプチドまたは抗体のドメインの置換を含む。特定の好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH2およびCH3またはヒンジ、CH1、CH2およびCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の産生については、1995年6月27日に発行された米国特許第5,428,130号も参照されたい。例えば、本明細書における併用療法に有用な第二の薬物として有用なイムノアドヘシンには、免疫グロブリン配列の定常ドメインに融合した、PD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分、あるいはPD-1の細胞外またはPD-L1もしくはPD-L2結合部分、例えば、PD-L1 ECD Fc、PD-L2 ECD Fc、およびPD-1 ECD-Fcをそれぞれ含む、ポリペプチドが含まれる。
【0091】
細胞表面受容体のIg Fcおよび細胞外ドメインのイムノアドヘシン組合せは、可溶性受容体と称されることもある。
「融合タンパク質」および「融合ペプチド」は、互いに共有結合的に連結されている2つの部分を有するポリペプチドであって、前記部分の各々が、異なる特性を有するポリペプチドである、ポリペプチドを指す。特性は、in vitroまたはin vivoでの活性のような、生物学的特性であってもよい。特定はまた、標的分子との結合、反応の触媒などのような、単純な化学的または物理的特性であってもよい。2つの部分は、単一のペプチド結合により直接結合されていてもよく、またはペプチドリンカーを介して連結されていてもよいが、互いに読み枠内にある。
【0092】
「PD-1オリゴペプチド」、「PD-L1オリゴペプチド」または「PD-L2オリゴペプチド」は、本明細書に記載の受容体、リガンドまたはシグナル伝達成分をそれぞれ含む負のPD-1、PD-L1またはPD-L2共刺激ポリペプチドとそれぞれ結合する、好ましくは特異的に結合する、オリゴペプチドである。そのようなオリゴペプチドは、公知のオリゴペプチド合成方法論を使用して化学的に合成することができ、または組換え技術を使用して調製および精製することができる。そのようなオリゴペプチドは、通常、長さが少なくとも約5アミノ酸であり、あるいは長さが少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100アミノ酸であるか、それより長い。そのようなオリゴペプチドは、周知の技術を使用して同定することができる。これに関連して、ポリペプチド標的と特異的に結合することができるオリゴペプチドについてオリゴペプチドライブラリーをスクリーニングする技術は当技術分野において周知であることに留意されたい(例えば、米国特許第5,556,762号、同第5,750,373号、同第4,708,871号、同第4,833,092号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,571,689号、同第5,663,143号;PCT公開番号WO84/03506およびWO84/03564;Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、81:3998~4002(1984);Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、82:178~182(1985);Geysenら、Synthetic Peptides as Antigensにおける130~149(1986);Geysenら、J Immunol.Meth.、102:259~274(1987);Schoofsら、J.Immunol.、140:611~616(1988);Cwirla,S.E.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6378(1990);Lowman,H.B.ら、Biochemistry、30:10832(1991);Clackson,T.ら、Nature、352:624(1991);Marks,J.D.ら、J.Mol.Biol.、222:581(1991);Kang,A.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:8363(1991);およびSmith,G.P.、Current Opin.Biotechnol.、2:668(1991)を参照されたい)。
【0093】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害するまたは低減させる抗体である。一部の実施形態では、遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。本発明の抗PD-L1抗体は、PD-1を介したシグナル伝達を遮断して、抗原刺激に対するT細胞による機能的応答(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞殺滅)を機能不全状態から回復させる。
【0094】
「アゴニスト」または活性化抗体は、それが結合する抗原によるシグナル伝達を増進するまたは開始させる抗体である。一部の実施形態では、アゴニスト抗体は、天然リガンドの存在なしにシグナル伝達を生じさせるまたは活性化する。
【0095】
本明細書での用語「Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々でありうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基からまたはPro230からそのカルボキシル末端に及ぶように定義される。Fc領域のC末端リシン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製中に除去されることがあり、または抗体の重鎖をコードする核酸の組換え操作により除去されることもある。したがって、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体集団、いずれのK447残基も除去されていない抗体集団、およびK447残基がある抗体とない抗体の混合物を有する抗体集団を含むことがある。本発明の抗体における使用に適するネイティブ配列Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3およびIgG4を含む。
【0096】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域と結合する受容体を表す。好ましいFcRは、ネイティブ配列ヒトFcRである。加えて、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(γ受容体)であり、FCγRI、FcγRIIおよびFCγRIIIサブクラスの受容体を、これらの受容体のアレルバリアントおよび選択的スプライシングを受けた形態を含めて、含み、FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「抑制性受容体」)を含み、これらは、主としてそれらの細胞質ドメインが異なる、類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン抑制モチーフ(ITIM)含有する。(M.Daeron、Annu.Rev.Immunol.15、203~234(1997)を参照されたい)。FcRは、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol.9:457~92(1991);Capelら、Immunomethods 4:25~34(1994);およびde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126:330~41(1995)において総説されている。他のFcRは、今後同定されるものを含めて、本明細書での用語「FcR」に包含される。
【0097】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、母性IgGの胎児への移入に関与する新生児型受容体、FcRnも含む。Guyerら、J.Immunol.117:587(1976)およびKimら、J.Immunol.24:249(1994)。FcRnとの結合を測定する方法は公知である(例えば、GhetieおよびWard、Immunol.Today 18:(12):592~8(1997);Ghetieら、Nature Biotechnology 15(7):637~40(1997);Hintonら、J.Biol.Chem.279(8):6213~6(2004);WO2004/92219(Hintonら)を参照されたい)。ヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドのin vivoでのFcRnとの結合および血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトされたヒト細胞株において、またはバリアントFc領域を有するポリペプチドが投与される霊長類において、アッセイすることができる。WO2004/42072(Presta)には、FcRとの結合を向上させるまたは減少させる抗体バリアントが記載されている。例えば、Shieldsら、J.Biol.Chem.9(2):6591~6604(2001)も参照されたい。
【0098】
「実質的に低減される」または「実質的に異なる」という句は、本明細書で使用される場合、2数値(一般に、一方は分子に関連し、他方は参照/コンパレータ分子に関連する)間の十分に高い相違度であって、2値間の差が、前記値(例えば、Kd値)によって測られる生物学的特徴という枠組みの中で統計的に有意であると当業者によってみなされるような相違度を示す。前記2値間の差は、例えば、参照/コンパレータ分子についての値の関数として、約10%より大きい、約20%より大きい、約30%より大きい、約40%より大きい、および/または約50%より大きい。
【0099】
用語「実質的に同様の」または「実質的に同じ」は、本明細書で使用される場合、2数値(一般に、一方は本発明の抗体に関連し、他方は参照/コンパレータ抗体に関連する)間の十分に高い類似度であって、2値間の差が、前記値(例えば、Kd値)によって測られる生物学的特徴という枠組みの中で生物学的におよび/または統計的にほとんどまたはまったく有意でないと当業者によってみなされるような類似度を示す。前記2値間の差は、例えば、参照/コンパレータ値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、および/または約10%未満である。
【0100】
用語「相乗作用」または「相乗効果」は、相加的なものより大きい効果と定義することができる(Chou、2006、Pharmacolog Reviews、58:621~681)。薬物の組合せ間の相乗的相互作用は、臨床使用時に結果として効力を増加させること、投薬量を減少させること、副作用を低減させること、および抵抗性の発現を最小化することができるので、非常に望ましいことであり、探究される(Chou、2006)。併用療法における薬の相互作用を評価するための2つの最も普及している方法は、アイソボログラムおよび併用指数(CI)である(Zhaoら、2004、Clinical Cancer Res 10:7994~8004)。薬物抵抗性の発現に対抗するためにおよび薬物用量を最小化するために薬物の組合せが評価されるがん治療分野には、相乗作用を評価するためにCI指数を使用する非常に多くの研究がある。CIは、ChouおよびTalalay 1984(Adv.Enzyme Regul.22:27~55)のアプローチに基づくものであり、半有効原理(median effect principle)および多剤効果方程式(multiple-drug effect equation)に依存する。CIは、プログラムCompuSyn(CompuSyn、Paramus、N.J.)を使用して容易に算出することができる。相互作用は、CI値が0.85~0.9である場合、軽度に相乗的であり、CI値が0.7~0.85である場合、中等度に相乗的であり、CI値が0.3~0.7である場合、相乗的であり、CI値が0.1~0.3である場合、強く相乗的であり、CI値が<0.1である場合、非常に強く相乗的である(表1)(Chou 2006)。しかし、がん治療文献では、相乗性を定義するCI値は様々でありうる。例えば、Linら、2007、Carcinogenesis 28:2521~2529では、薬物間の相乗性は、CI<1と定義されたが、Fischelら、2006、Preclinical Report 17:807~813では、相乗性は、CI<0.8と定義された。しかし、これらの参考文献は、相乗性をCI<0.8と定義することができることについて一致している。
【0101】
【0102】
本発明は、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーと、ベンズアミド化合物の組合せが、相乗治療効果を生じさせるという発見に関係する。
【0103】
がんなどの増殖性疾患を処置する1つの手段は、がん免疫療法である。免疫療法の基礎は、自然免疫応答と適応免疫応答の両方を含む免疫系の操作および/または調節である。免疫療法の一般的目的は、「外来作用物質」、例えば病原体または腫瘍細胞、に対する免疫応答を制御することにより疾患を処置することである。しかし、一部の事例では、免疫療法は、体内に普通に存在するタンパク質、分子および/または組織に対する異常な免疫応答から生じうる自己免疫疾患を処置するために使用される。免疫療法は、特異的免疫応答を誘導もしくは増強するための方法を含むこともあり、または特異的免疫応答を阻害するもしくは低下させるための方法を含むこともある。
【0104】
免疫系は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、抗原提示細胞、樹状細胞、単球およびマクロファージを含むがこれらに限定されない多数の細胞型で構成される、非常に複雑な系である。これらの細胞は、それらの相互作用および応答を制御するための複雑で緻密なシステムを有する。細胞は、応答を抑止し、無制御免疫応答の負の結果(例えば、自己免疫疾患またはサイトカイン急増)を可能にしないために、活性化および阻害性両方のメカニズムおよびフィードバックループを利用する。
【0105】
がん免疫監視の概念は、免疫系が、腫瘍細胞を認識し、免疫応答を開始し、腫瘍の発生および/または進行を抑制することができるという理論に基づく。しかし、多くのがん性細胞が、腫瘍の無抑制の成長を可能にしうる、免疫系を回避するためのメカニズムを発達させてきたことは、明らかである。がん/腫瘍免疫療法(免疫腫瘍学)は、免疫系を活性化および/または後押して腫瘍細胞に対するより有効な攻撃を果たすことができる新しい新規の薬剤の開発に、重点を置いている。
【0106】
がんにおける免疫療法は、対象における非健常細胞に対する免疫系の認識を向上させることを目的とする。したがって、強い細胞傷害性T細胞応答の誘導が必要である。最適なT細胞活性化には2つのシグナルが必要である(Lafferty 1975):1)T細胞受容体と特異的抗原間の相互作用(Bretscher 1970)および2)T細胞表面の共刺激受容体と抗原提示細胞(APC)によって発現される共刺激リガンドとの会合。このモデルは、自己免疫寛容と非自己免疫寛容の区別をさらにもたらす(Bretscher 1970、Bretscher 1999、Jenkins 1987)。一次シグナル、または抗原特異的シグナルは、主要組織適合複合体(MHC)との関連で提示される外来抗原ペプチドの認識後にT細胞受容体(TCR)を介して伝達される。二次または共刺激シグナルは、抗原提示細胞(APC)上で発現される共刺激分子によってT細胞に送達され、クローン増殖、サイトカイン分泌およびエフェクター機能を促進するようにT細胞を誘導する。(Lenschow 1996)。共刺激の非存在下では、T細胞は、抗原刺激に対して不応になりえ、有効な免疫応答を開始せず、さらに、結果的に疲弊することになることもあり、または外来抗原に対して耐性になることもある。
【0107】
前記2つのシグナルモデルでは、T細胞は、正および負両方の二次共刺激シグナルを受信する。そのような正および負のシグナルの調節は、免疫寛容を維持し、自己免疫を防止すると同時に、宿主の保護免疫応答を最大にするために重要である。負の二次シグナルは、T細胞寛容の誘導に必要であるように思われ、その一方で正のシグナルは、T細胞活性化を促進する。単純な2シグナルモデルにより、ナイーブリンパ球についてはまだもっともな説明が得られるが、宿主の免疫応答は動的プロセスであり、共刺激シグナルは、抗原に曝露されたT細胞にも提供されうる。共刺激シグナルの操作が、細胞に基づく免疫応答を増強する手段または終了させる手段のいずれかをもたらすことは証明されているので、共刺激のメカニズムは治療上興味深い。最近、T細胞機能不全またはアネルギーは、抑制性受容体、プログラム死1ポリペプチド(PD-1)、の誘導および持続発現と同時に起こることが発見された。結果として、PD-1治療標的化、ならびにPD-1との相互作用を介してシグナルを伝達する他の分子、例えばプログラム死リガンド1(PD-L1)およびプログラム死リガンド2(PD-L2)の治療標的化は、強い関心を引いている分野である。
【0108】
PD-L1は、多くのがんで過剰発現され、多くの場合、予後不良に関連する(Okazaki 2007、Thompson 2006)。興味深いことに、腫瘍浸潤Tリンパ球の大多数は、正常組織のTリンパ球および末梢血Tリンパ球とは対照的に、圧倒的にPD-1を発現し、これは、腫瘍反応性T細胞上のPD-1のアップレギュレーションが抗腫瘍免疫応答不全の一因になりうることを示す(Ahmadzadeh 2009)。これは、PD-1発現T細胞と相互作用してT細胞活性化の減弱および免疫監視の回避をもたらす、PD-L1発現腫瘍細胞によって媒介されるPD-L1シグナル伝達の活用に起因する可能性がある(Sharpe 2002、Keir 2008)。したがって、PD-L1/PD-1相互作用の阻害により、CD8+T細胞によって媒介される腫瘍殺滅が増強される可能性がある。
【0109】
その直接的リガンド(例えば、PD-L1、PD-L2)を介したPD-1軸シグナル伝達の阻害は、がんの処置のためのT細胞免疫(例えば、腫瘍免疫)強化手段として提案されている。さらに、同様のT細胞免疫増強が、PD-L1の結合パートナーB7-1との結合を阻害することにより観察されている。さらに、PD-1シグナル伝達の阻害と腫瘍細胞内の調節解除される他のシグナル経路とを併用することにより、処置効力がさらに増強される可能性がある。しかし、最適な治療的処置は、PD-1受容体/リガンド相互作用の遮断と腫瘍成長を直接阻害する薬剤とを併用することになり、その結果、場合によっては、PD-1遮断だけでは得られない特有の免疫増強特性をさらに含んだ。
【0110】
CTLA4は、T細胞活性化を左右しないように見えるので、がん免疫療法のマウスモデルにおいてCTLA4活性を遮断することが試みられてきた。免疫原性腫瘍が埋め込まれたマウスにおいて、抗CTLA4抗体の投与は腫瘍拒絶を増強した(Leach 1996)が、SMI乳癌腫またはB16黒色腫などの免疫原性の低い腫瘍では効果がほとんど見られなかった。抗CTLA4抗体を顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)形質導入B16細胞ワクチンとともに与えたときに抗腫瘍免疫増強が見られ、色素脱失を伴った。これは、抗腫瘍応答の少なくとも一部が「自己」メラニン細胞分化抗原に対して抗原特異的であったことを示唆する(van Elsas 1999、van Elsas 2001)。原発性前立腺がんのトランスジェニックマウスモデルにおいて、抗CTLA4抗体とGM-CSF発現前立腺がん細胞の投与は、前立腺がんの発生率および組織学的重症度を低下させ、正常マウスでは前立腺炎をもたらした。これは、この場合もやはり、腫瘍拒絶における自己抗原に対する抗原特異的免疫応答を示唆する(Hurwitz 2000)。さらに、多くのヒト腫瘍抗原は正常自己抗原であるため、自己に対する耐性の破壊は、がん免疫療法の成功にとって重要でありうる。マウスモデルにおける腫瘍ワクチンとともにCTLA4遮断からの好適な腫瘍応答は、ヒトがん免疫療法におけるCTLA4遮断の使用への関心につながった。
【0111】
TNFRSFに属するタンパク質およびそれらのリガンド(TNFSF)は、免疫系の細胞の活性化、分化および生存に密接に関与する。TNFファミリーリガンドの受容体は、複数の細胞外システインリッチドメインを含有する、オリゴマーI型またはIII型膜貫通タンパク質である。これらの受容体のいくつかは、リガンド結合後にカスパーゼ相互作用性タンパク質を動員して外因性カスパーゼ活性化経路を開始させる、細胞内デスドメイン(DD)も含有する。デスドメインを欠く他のTNFスーパーファミリー受容体は、TNF受容体関連因子と結合し、増殖または分化をもたらすことができる細胞内シグナル伝達経路を活性化する。これらの受容体は、アポトーシスを開始させることもできるが、間接的メカニズムによってアポトーシスを開始させる。アポトーシスを調節することに加えて、いくつかのTNFスーパーファミリー受容体は、B細胞恒常性および活性化、ナチュラルキラー細胞活性化、ならびにT細胞共刺激などの、免疫細胞機能を調節することに関与する。いくつかの他のものは、毛包発生するおよび破骨細胞発生などの、細胞型特異的応答を調節する。
【0112】
TNFRSFメンバーは、これらに限定されることはないが、4-1BB(CD137)、BAFF、BCMA、CD27、CD30、CD40、DcR3、DcTRAIL R1、DcTRAIL R2、DR3、DR6、EDA2R、EDAR、Fas(CD95)、GITR、HVEM、リンホトキシンベータR、NGFR、オステオプロテゲリン、OX40、RANK、RELT、TACI、TNFRH3、TNF R1、TNF R2、TRAIL R1、TRAIL R2、TRAIL R3、TRAIL R4、TROY、およびTWEAK Rを含む。
【0113】
TNFSFメンバーは、これらに限定されることはないが、4-1BBリガンド(CD137L)、APRIL、BAFF、CD27リガンド、CD30リガンド、CD40リガンド(CD40L)、EDA、EDA-A1、EDA-A2、Fasリガンド(CD95L)、GITRリガンド(GITRL)、LIGHT、リンホトキシン、リンホトキシンベータ、リンホトキシン-アルファ、OX40リガンド(OX40L)、TL1A、TNF-アルファ、TRAIL、TRANCE、およびTWEAKを含む。大部分のTNFリガンドは、細胞外ドメインが特異的メタロプロテイナーゼにより切断されて可溶性サイトカインを生成しうる、II型膜貫通タンパク質である。切断されたリガンドおよび切断されていないリガンドは、リンホトキシンベータ(TNF-ベータとヘテロ三量体を形成する)およびBAFF(APRILとヘテロ三量体を形成する)を除き、非共有結合性ホモ三量体として活性である。TNFファミリーリガンドは、TNFファミリーリガンドの特徴構造、TNF相同ドメイン(THD)またはTNFドメイン、を含有するコア領域に膜貫通ドメインを接続する、様々な長さのストークを特徴とする。TNFドメインは、「ゼリーロール」トポロジーを有する、逆平行ベータプリーツシートサンドイッチである。ベータ鎖内の保存残基は、三量体構造を安定させる、特異的サブユニット間接点を提供する。隣接するベータ鎖を接続するループ内の配列は、ファミリーメンバー特異的であり、受容体特異性の付与に重要である。興味深いことに、GITRL(グルココルチコイド誘導性TNF関連リガンド;TNFSF18)は、他のTNFファミリーメンバーと比較して三量体として比較的ゆるく会合しているようであり、二量体状態で存在することも証明されている。さらに、GITRL三量体は、それら自体が会合して「スーパークラスター」を形成するという証拠がある(Zhouら、2008)。三量体形成を安定させるためのGITRLの架橋は、活性増強をもたらした(Wyzgolら、2009)。これらの結果は、GITRLが、二量体から三量体、そして三量体のスーパークラスターまで多岐にわたる様々なオリゴマー状態で存在しうるという、およびこれらの状態が、それぞれ、弱いものから強固なものまで様々なGITR活性をもたらしうるという、示唆につながってきた。
【0114】
化学療法剤と免疫療法剤の組合せである化学免疫療法は、腫瘍細胞を直接攻撃して腫瘍細胞壊死またはアポトーシスを生じさせる薬剤の効果と、腫瘍に対する宿主免疫応答を調節する薬剤とを併用する、がん処置の新規アプローチである。化学療法剤は、腫瘍抗原を発生させて抗原提示細胞により提示させて「多価」腫瘍細胞ワクチンを作り出すことにより、および腫瘍構造を破壊し、かくて免疫療法剤の浸透はもちろん免疫集団の拡大も助長することにより、免疫療法の効果を高めることができるだろう。
【0115】
本発明は、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤とベンズアミド化合物の組合せが、がんを含む増殖性疾患の処置において相乗治療効果を生じさせるという発見に関係する。この組合せは、増殖性疾患の進行を緩徐化する点でも相乗治療効果を生じさせる。本発明は、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよび/またはDNA脱メチル化剤およびベンズアミド化合物を含む、医薬組成物を含む、組合せ組成物を提供する。この組合せは、優れた細胞傷害性/抗腫瘍活性、例えば抗転移活性を明示する。したがって、組成物および医薬組成物は、がんを含む増殖性疾患を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物および医薬組成物の投与は、免疫原性を増強し、例えば、がんの処置のために腫瘍免疫原性を増加させる。一態様では、組成物および医薬組成物の対象への投与は、対象の免疫機能を増強する。
【0116】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の治療方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤(例えば、4-1BB(CD137)アゴニストもしくはグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト)のうちの1つまたは複数の治療有効量と組合せでのベンズアミド化合物またはその類似体の治療有効量の投与を含む。一部の実施では、方法は、それを必要とする対象、好ましくは、増殖性疾患と診断された対象への、ベンズアミド化合物および/またはその薬学的に許容される塩とPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤とを含む医薬組成物の治療量の投与を含む。
【0117】
一部の実施形態では、対象は、上昇したT細胞浸潤レベルを有するがんと診断される。対象はまた、その個体におけるCD8 T細胞に関して、PD-1軸結合アンタゴニストおよびベンズアミド化合物の投与前と比較して増強されたプライミング、活性化、増殖および/または細胞溶解活性も有することができる。CD8 T細胞プライミングは、CD8 T細胞におけるCD44発現上昇および/または細胞溶解活性増強を特徴としうる。一部の実施形態では、CD8 T細胞活性化は、γIFN+CD8 T細胞の出現頻度上昇を特徴とする。一部の実施形態では、CD8 T細胞は、抗原特異的T細胞である。一部の実施形態では、PD-L1表面発現を介したシグナル伝達による免疫回避が阻害される。
【0118】
一部の実施形態では、対象のがん細胞は、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤および本開示ベンズアミド化合物の投与前と比較して上昇したMHCクラスI抗原発現レベルを有することができる。
【0119】
一部の実施形態では、個体の抗原提示細胞は、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤および/またはおよび本開示ベンズアミド化合物の投与前と比較して増進された成熟および増強された活性化を有する。一部の実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞である。一部の実施形態では、抗原提示細胞の成熟は、CD83+樹状細胞の出現頻度増加を特徴とする。一部の実施形態では、抗原提示細胞の活性化は、樹状細胞上でのCD80およびCD86の発現上昇を特徴とする。
【0120】
一部の実施形態では、個体におけるサイトカインIL-10および/またはケモカインIL-8、マウスKCのヒトホモログ、の血清レベルは、抗PD-L1抗体などのPD-1軸結合アンタゴニスト、およびベンズアミド化合物の投与前と比較して低下される。
【0121】
抗プログラム死1(PD-1)または抗CTLA-4などの、チェックポイント調節物質での免疫療法は、がん細胞の腫瘍浸潤CD8 T細胞媒介殺滅(適応免疫応答)をもたらす。ナチュラルキラー細胞は、腫瘍を直接攻撃することに加えて、がんのT細胞殺滅の有効性を増幅することができる、身体の天然の免疫系(すなわち、自然免疫系)の一部である。担腫瘍マウスにおける例示的化合物ID#24の投与は、腫瘍内CD8 T細胞およびナチュラルキラー細胞の数を増加させる結果となる。ある特定の態様では、本発明の化合物は、適応および/または自然免疫を増強し、それによって免疫チェックポイント調節物質との相乗的抗がん活性を生じさせる。
【0122】
治療量は、増殖性疾患の新生物性、悪性または転移性状態への進行の予防、例えば、過形成、化生もしくは異形成の発生を低減させることをさらに含む、または対象の細胞の新生物の、悪性のもしくは転移の進行を阻害する、増殖性疾患の処置に十分な量である。そのような予防的使用は、新生物またはがんへのそれまでの進行が分かっているか、またはそのような進行が疑われる状態、特に、過形成、化生または最も特に異形成からなる非新生物細胞成長が起こった状態の際に指示される(そのような異常成長状態の概説については、RobbinsおよびAngell 1976、68~79頁を参照されたい)。過形成は、組織または臓器における細胞数の増加を伴うが構造または活性の有意な変化がない、制御された細胞増殖の1形態である。例えば、子宮内膜過形成は、子宮内膜がんに先行することが多く、前がん性結腸ポリープは、がん性病変に転換することが多い。化生は、1つの成人または完全分化細胞型が別の成人細胞型に置き換わる、制御された細胞成長の1形態である。化生は、上皮または結合組織細胞において起こりうる。典型的な化生は、多少無秩序な化生上皮を伴う。異形成は、がんの前兆であることが多く、主として上皮に見られる。異形成は、個々の細胞均一性の喪失および細胞の構築上の方向性の喪失を伴う、非新生物細胞成長の最も無秩序な形態である。異形成細胞は、異常に大きい、濃く染色された核を有することが多く、多形性を示す。異形成は、特徴としては、慢性的な刺激または炎症が存在する場合に起こり、子宮頸、気道、口腔および胆嚢において見られることが多い。
【0123】
あるいは、または過形成、化生もしくは異形成として特徴付けられる異常細胞成長の存在に加えて、in vivoで提示される、または患者から採取された細胞試料によってin vitroで提示される、形質転換表現型のまたは悪性表現型の1つまたは複数の特徴の存在は、化合物を含む医薬組成物の予防的/治療的投与が望ましいことを示しうる。形質転換表現型のそのような特徴には、形態変化、より緩い基質接着、接触阻害の喪失、足場依存性の喪失、プロテアーゼ放出、糖輸送増加、血清要求性の喪失、胎児抗原の発現、250,000ダルトン細胞表面タンパク質の消失などが含まれる。(形質転換表現型または悪性表現型に関連する特徴についてはRobbinsおよびAngell、1976、84~90頁を参照されたい)。さらなる例としては、白斑症(上皮の良性様過形成または異形成病変)およびボーエン病(上皮内癌腫)が挙げられ、これらは、予防的介入が望ましいことを示す前新生物性病変である。別の例では、嚢胞性過形成を含む線維嚢胞性疾患、乳腺異形成、腺疾患、または良性上皮過形成は、予防的介入が望ましいことを示す。
【0124】
がん細胞は、最終的には無制限に拡大および成長しうる可能性がある、腫瘍、新生物、がん、前がん状態、細胞株または任意の他の細胞源に由来する、あらゆる細胞を含む。がん細胞は、天然に存在する源に由来することもあり、または人工的に作られることもある。がん細胞は、動物宿主に入れられたとき、他の組織への浸潤および転移が可能であることもある。がん細胞は、他の組織に浸潤したおよび/または転移したあらゆる悪性細胞をさらに包含する。生物に関しての1つまたは複数のがん細胞は、がん、腫瘍、新生物、成長、悪性腫瘍と呼ばれることもあり、またはがん性状態の細胞を記述するために当技術分野において使用される任意の他の用語と呼ばれることもある。
【0125】
がん細胞の拡大は、がん細胞に由来する個々の細胞の数を増加させる結果となるあらゆるプロセスを含む。がん細胞の拡大は、有糸分裂、増殖、またはin vitroもしくはin vivoを問わず他のあらゆる形態のがん細胞拡大の結果として生じうる。がん細胞の拡大は、浸潤および転移をさらに包含する。がん細胞は、同じクローンからのがん細胞に物理的に近接していることもあり、またはそれと遺伝的に同一であってもなくてもよい、異なるクローンからのがん細胞に物理的に近接していることもある。そのような集合は、コロニー、腫瘍または転移の形態をとることがあり、これらのいずれの形態も、in vivoで存在してもよく、またはin vitroで存在してもよい。がん細胞の拡大の緩徐化は、拡大を促進する細胞プロセスを阻害することによってもたらすことができ、または拡大を阻害する細胞プロセスをもたらすことによってもたらすこともできる。拡大を阻害するプロセスには、有糸分裂を緩徐化するプロセス、および細胞老化もしくは細胞死を促進するプロセスが含まれる。拡大を阻害する具体的なプロセスの例には、カスパーゼ依存性および非依存性経路、オートファジー、壊死、アポトーシス、ならびにミトコンドリア依存性および非依存性プロセスが含まれ、まだ開示されていない任意のそのような経路がさらに含まれる。
【0126】
がん細胞への医薬組成物の添加は、がん細胞に対する医薬組成物の効果が実現されるすべての行為を含む。選ばれる添加のタイプは、がん細胞がin vivoであるのか、ex vivoであるのか、またはin vitroであるのか、医薬組成物の物理的または化学的特性、および組成物ががん細胞に及ぼすべき効果に依存することになる。添加の非限定的な例には、in vitroでがん細胞が成長している組織培養培地への、医薬組成物を含む溶液の添加;静脈内投与方法、経口投与方法、非経口投与方法、または任意の他の投与方法を含む、医薬組成物を動物に投与することができる任意の方法;あるいは免疫細胞(例えば、マクロファージおよびCD8+T細胞)などの、同様にがん細胞に対して効果を及ぼす細胞、または血管新生もしくは脈管形成過程で血管構造に分化することができる上皮細胞の、活性化または阻害が含まれる。
【0127】
本発明の別の態様では、悪性腫瘍の1つまたは複数の素因を示す対象または疾病、それを、化合物を含む医薬組成物の投与によって処置することができる。そのような素因には、悪性腫瘍に関連する染色体転座、例えば、慢性骨髄性白血病についてのフィラデルフィア染色体、および濾胞性リンパ腫についてのt(14;18);結腸がんを示すポリープ症もしくはガードナー症候群の発生;多発性骨髄腫を示す良性単クローン性免疫グロブリン血症;がんまたは前がん性疾患を有していたもしくは現在有する人物との血縁関係;発癌性物質への曝露;または現在公知のもしくはまだ開示されていないがん発生率増加を示すあらゆる他の素因が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
本開示組成物の有効量の決定は、特に、本明細書において提供される詳細な開示にかんがみて、当業者の能力の範囲内である。特定の目的を果たすために使用される医薬組成物の有効量、ならびにその毒性、排泄および総合的な忍容性は、細胞培養物または実験動物において、当業者描写に現在公知の薬学的および毒性学的手順によって、またはまだ開示されていない任意の同様の方法によって決定することができる。一例は、in vitroでの細胞株または標的分子における医薬組成物のIC50(半最大阻害濃度)の決定である。別の例は、実験動物における医薬組成物のLD50(被験動物の50%において死亡を引き起こす致死用量)の決定である。有効量の決定に使用される厳密な方法は、医薬組成物のタイプおよび物理的/化学的特性、試験される特性、ならびに試験がin vitroで行われることになるのか、またはin vivoで行われることになるのかなどの、因子に依存することになる。医薬組成物の有効量の決定は、その決定を行う際の任意の試験から得られるデータを使用する当業者には周知であろう。がん細胞に添加するためのベンズアミド化合物またはPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の有効量の決定には、ヒトでの使用を含むin vivoでの使用のための有効用量範囲の公式化を含む、有効治療量の決定も含まれる。
【0129】
医薬組成物の毒性および治療効力は、細胞培養物または動物において標準的薬学的手順によって決定することができる。例としては、対象化合物についてのIC50(半最大阻害濃度)およびLD50(被験動物の50%において死亡を引き起こす致死用量)の決定が挙げられる。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおいて使用するための投薬量範囲の公式化に使用することができる。投薬量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて変りうる。
【0130】
がん細胞拡大の緩徐化をもたらすためのベンズアミド化合物またはPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の有効量は、好ましくは、結果的に標的組織においてまたはその付近で新生物細胞における細胞拡大の緩徐化に有効である濃度になるが、放射線または認知されている化学療法用化学薬品に曝露された非新生物細胞を含む、非新生物細胞に対してほとんど効果を及ぼさないであろう。これらの効果を生じさせる濃度は、例えば、in vitroまたはin vivoのいずれかでのアポトーシス指数および/またはカスパーゼ活性などのアポトーシスマーカーを使用して、決定することができる。
【0131】
組成物の治療有効量の添加は、化合物のあらゆる投与方法を包含する。ベンズアミド化合物またはPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の投与は、活性成分として本開示組成物を含む多数の医薬組成物のいずれかについての単回または複数回投与を含みうる。例としては、持続放出組成物の単回投与;定期的もしくは不定期の数回の処置を含む処置コース;病状減少が達成されるまでの期間の複数回投与;症状が引き起こされる前に適用される予防的処置;または当技術分野において公知の、もしくは当業者が有効である可能性のあるレジメンとして認識することになるまだ開示されていない、任意の他の投与レジメンが挙げられる。投与の規則性および方法を含む最終投与レジメンは、多数の因子のいずれかに依存することになり、そのような因子には、これらに限定されるものではないが、処置される対象;苦痛の重症度;投与の様式;疾患発症の段階;妊娠、乳児期などの1つもしくは複数の他の条件の存在;または1つもしくは複数のさらなる疾患の存在;あるいは投与方法の選択、投与すべき用量およびその用量が投与される期間に影響を与える、現在公知のまたはまだ開示されていない任意の他の因子が含まれる。
【0132】
本開示組成物を含む医薬組成物を、本化合物を含むこともあり、または含まないこともある第二の医薬組成物の投与の前に投与してもよく、それと同時に投与(例えば、同時投与)してもよく、またはその後に投与してもよい。組成物のベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤もまた同時に投与してもよく、または組成物の要素の1つを他の要素の前に投与してもよい。組成物または組成物の要素が同時に投与される場合、それらは、互いに1分以内に投与される。同時に投与されない場合、第二の医薬組成物は、化合物を含む医薬組成物の1分もしくはそれ超、1時間もしくはそれ超、1日もしくはそれ超、1週間もしくはそれ超、または1カ月もしくはそれ超の期間前または後に投与されうる。あるいは、医薬組成物の組合せをサイクルで投与してもよい。サイクリング療法は、1つもしくは複数の組成物に対する耐性の発生を低減するために、1つもしくは複数の組成物の副作用を回避もしくは低減するためも、および/または処置の効力を向上させるために、ある期間の1つまたは複数の医薬組成物の投与、続いてある期間の1つまたは複数の異なる医薬組成物の投与、そしてこの逐次投与の反復を含む。例えば、一実施では、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤は、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤での3~14日の毎日の処置で始めて、その後、サイクルの残りの期間は休薬する、28日サイクルで投与される。別の実施では、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤は、3~14日間毎日投与され、その後、21~25日休薬される。
【0133】
本発明は、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の罹患した実体への投与を助長するキットをさらに包含する。そのようなキットの例は、ベンズアミド化合物のならびにPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の1つまたは複数の単位投薬量を含む。単位投薬量は、好適滅菌容器に封入されることになり、ベンズアミド化合物またはPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤および薬学的に許容される担体からなることになる。別の態様では、単位投薬量は、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の1つまたは複数の凍結乾燥物(liophilate)を含むことになる。本発明のこの態様では、キットは、凍結乾燥物を溶解することができる溶液を封入する別の好適滅菌容器を含むこともある。しかし、そのような溶液をキットに含める必要はなく、凍結乾燥物とは別に得てもよい。別の態様では、キットは、化合物と併用されることになる単位投薬量または医薬組成物を投与する際に使用される1つまたは複数のデバイスを含むこともある。そのようなデバイスの例としては、注射器、点滴袋、パッチまたは浣腸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一部の態様では、デバイスは、単位投薬量を封入する容器を含む。
【0134】
本発明の組成物は、多数の因子に応じて必要ないずれの物理的形態をとってもよく、そのような因子には、所望の投与方法、ならびにベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/もしくはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤またはこれらの薬学的に許容される塩がとる物理化学的および立体化学的形態が含まれる。そのような物理的形態は、固体、液体、気体、ゾル、ゲル、エアロゾル、または現在公知のもしくはまだ開示されていない任意の他の物理的形態を含む。一部の態様では、組成物は、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の、ならびにベンズアミド化合物の、薬学的に許容される塩を含む。組成物は、薬学的に許容される添加剤を伴うこともあり、または伴わないこともある。
【0135】
一部の態様では、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含むことがある。担体は、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤とともに投与することができる物質であって、その本来の目的が前記化合物の投与または他の送達を助長、支援または助けることである、あらゆる物質を含む。担体は、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤と併用してそれらの投与に役立つことができる、あらゆる液体、固体、半固体、ゲル、エアロゾルまたは他の何かを含む。例としては、希釈剤、アジュバント、賦形剤、水、油(石油、動物油、植物油または合成油を含む)が挙げられる。そのような担体としては、微子状物質、例えばタブレットまたは粉末、液体、例えば経口シロップまたは注射液、および吸入用エアロゾルが挙げられる。さらなる例としては、食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンのり、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、および尿素が挙げられる。そのような担体としては、結合剤、例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロースもしくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトースもしくはデキストリン;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲルおよびコーンスターチ;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステロテックス;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースもしくはサッカリン;着香剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ着香料;または着色剤をさらに挙げることができる。担体のさらなる例としては、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、油、またはカプセルに配合することができる任意の他の類似の液体担体が挙げられる。担体のなおさらなる例としては、滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、生理食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム;固定油、例えば、合成モノまたはジグリセリド(digylcerides)、ポリエチレングリコール、グリセリン、シクロデキストリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;および等張性を調整するための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストリン;増粘剤;滑沢剤;ならびに着色剤が挙げられる。
【0136】
本発明の組成物は、該組成物の物理化学的形態、および投与のタイプに応じて、多数の剤形のいずれをとってもよい。そのような形態には、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、ペレット、カプセル、液体を含むカプセル、粉末、徐放性製剤、指向性放出(directed release)製剤、凍結乾燥物(lyophylates)、坐剤、エマルジョン、エアロゾル、スプレー、顆粒、粉末、シロップ、エリキシル、または現在公知のもしくはまだ開示されていない任意の他の剤形が含まれる。適する医薬担体のさらなる例は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。一部の実施形態では、本発明の組成物は、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤とは異なる化学式または生物学的構造のさらなる有効化合物を含むことがある。一部の態様では、さらなる有効化合物は、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよび/もしくはDNA脱メチル化剤の標的と同じもしくは同様の分子標的を有することができ、または1つもしく複数の生化学的経路に関してベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/もしくはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の分子標的の上流もしくは下流で作用することができる。
【0137】
さらなる有効化合物の例としては、核酸結合組成物、制吐組成物、造血コロニー刺激因子、抗不安剤、および鎮痛剤が挙げられる。
核酸結合組成物の例としては、cis-ジアンミンジクロロ白金(II)(シスプラチン)、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、タキソール、ならびにトポイソメラーゼ阻害剤、例えばエトポシド、テニポシド、イリノテカンおよびトポテカンが挙げられるが、これらに限定されない。制吐組成物の例としては、メトクロプラミド(metoclopromide)、ドンペリドン、プロクロルペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンズアミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシン モノエタノールアミン、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ビエタナウチン、ブロモプリド、ブクリジン、クレボプリド、シクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェニドール、ドラセトロン、メクリジン、メタラタール、メトピマジン、ナビロン、オキシペルンジル(oxyperndyl)、ピパマジン、スコポラミン、スリピリド、テトラヒドロカンナビノール、チエチルペラジン、チオプロペラジンおよびトロピセトロンが挙げられるが、これらに限定されない。造血コロニー刺激因子の例としては、フィルグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチムおよびエポエチンアルファが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、ベンズアミド化合物およびDNA脱メチル化剤を含む医薬組成物を抗不安剤と併用してもよい。抗不安剤の例としては、ブスピロン、ならびにベンゾジアゼピン系化合物、例えばジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム(oxazapam)、クロラゼブ酸(chlorazepate)、クロナゼパム、クロルジアゼポキシドおよびアルプラゾラムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
鎮痛剤は、オピオイド鎮痛薬であってもよく、または非オピオイド鎮痛薬であってもよい。オピオイド鎮痛薬の非限定的な例としては、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシモルホン、オキシコドン、メトポン、アポモルヒネ、ノルモルヒネ、エトルフィン、ブプレノルフィン、メペリジン、ロペラミド(lopermide)、アニレリジン、エトヘプタジン、ピミニジン(piminidine)、ベータプロジン、ジフェノキシラート、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、レボルファノール、デキストロメトルファン、フェナゾシン、ペンタゾシン、シクラゾシン、メサドン、イソメサドンおよびプロポキシフェンが挙げられる。適する非オピオイド鎮痛剤には、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル(diflusinal)、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、メクロフェナム酸塩、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、スリンダク、または現在公知のもしくはまだ開示されていない任意の鎮痛薬が含まれるが、これらに限定されない
さらなる有効化合物は、がんの処置に有用な化学物質である化学療法剤であってもよい。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパおよびウレドーパ;エチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamines)(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine);アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、および9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;ペメトレキセド;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;TLK-286;CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosureas)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特に、カリチアマイシンガンマlIおよびカリチアマイシンオメガ11(例えば、Nicolaouら、Angew.Chem.国際版Engl.、33:183~186(1994)を参照されたい);ダイネマイシン(ダイネマイシンAを含む);エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチンクロモフォアおよび関連色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アントアマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメテレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、およびイマチニブ(2-フェニルアミノピリミジン誘導体)、ならびにc-Kit阻害剤;抗副腎物質、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);マイタンシノイド、例えば、メイタンシンおよびアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベルカリンA(verracurin A)、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、およびドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロラムブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン(leucovovin);ビノレルビン((NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;上記のもののいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに上記のもの2つ以上の組合せ、例えば、CHOP(シクロホスファミドとドキソルビシンとビンクリスチンとプレドニゾロンの併用療法の略語)およびFOLFOX(オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を5-FUおよびロイコボリンと併用する処置レジメンの略語)が挙げられる。
【0139】
化学療法剤のさらなる例としては、がんの成長を促進することができるホルモンの作用を調節、低減、遮断または阻害するように作用し、多くの場合、全身性または全身治療薬の形態である、抗ホルモン剤が挙げられる。それらは、ホルモン自体であってもよい。例としては、抗エストロゲン剤および選択的エステロゲン受容体調節物質(SERM)[例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(FARESTON(登録商標))を含む];抗プロゲステロン剤;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD);エストロゲン受容体アンタゴニスト、例えばフルベストラント(FASLODEX(登録商標));卵巣を抑制または活動停止させるように機能する薬剤、例えば、黄体ホルモン(leutinizing hormone)放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば、リュープロリド酢酸塩(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、ゴセレリン酢酸塩、ブセレリン酢酸塩およびトリプトレリン(tripterelin);抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;ならびに副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、メゲストロール酢酸エステル(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、ホルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))などが挙げられる。加えて、化学療法剤のそのような定義は、ビスホスホネート、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL8)、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常(abherant)細胞増殖に関係づけられるシグナル伝達経路における例えばPKC-アルファ、Raf、H-Rasなどの遺伝子および上皮増殖因子受容体(EGF-R)の発現を阻害するもの;ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチンならびに遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));抗エストロゲン剤、例えばフルベストラント;Kit阻害剤、例えば、イマチニブまたはEXEL-0862(チロシンキナーゼ阻害剤);EGFR阻害剤、例えば、エルロチニブまたはセツキシマブ;抗VEGF阻害剤、例えばベバシズマブ;アリノテカン(arinotecan);rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));ラパチニブおよびラパチニブトシル酸塩(GW572016としても公知の、ErbB-2およびEGFRに対する二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);17AAG(熱ショックタンパク質(Hsp)90毒であるゲルダナマイシン誘導体)、ならびに上記のもののいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体を含む。
【0140】
さらなる有効化合物は、抗増殖性細胞傷害性薬剤などの抗増殖性化合物であってもよい。抗増殖性細胞傷害性薬剤として使用することができる化合物のクラスは、以下のものを含む:
・アルキル化剤(限定ではないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレアおよびトリアゼンを含む):ウラシルマスタード、クロロメチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、イホスファミド、メルファラン(Meiphalan)、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン-メラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミド;
・代謝拮抗薬(限定ではないが、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含む):メトトレキサート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンリン酸エステル、ペントスタチン、およびゲムシタビン;
・天然産物およびそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンホカイン(Iymphokines)およびエピポドフィロトキシン):ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、Ara-C、パクリタキセル(パクリタキセルはTAXOL(登録商標)として市販されている)、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、インターフェロン(特に、IFN-a)、エトポシド、およびテニポシド;
・ナベルビン(navelbene);
・CPT-11;
・アナストラゾール;
・レトラゾール;
・カペシタビン;
・レロキサフィン;
・シクロホスファミド;
・イホスアミド;および
・ドロロキシフェン(droloxafine)。
【0141】
抗増殖性化合物はまた、微小管作用剤であってもよい。微小管作用剤は、細胞の有糸分裂に干渉し、当技術分野ではそれらの抗増殖性細胞傷害活性について周知である。本発明において有用な微小管作用剤には、アロコルヒチン(NSC 406042)、ハリコンドリンB(NSC 609395)、コルヒチン(NSC 757)、コルヒチン誘導体(例えば、NSC 33410)、ドラスタチン10(NSC 376128)、メイタンシン(NSC 153858)、リゾキシン(NSC 332598)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、NSC 125973)、TAXOL(登録商標)誘導体(例えば、誘導体(例えば、NSC 608832)、チオコルヒチンNSC 361792)、トリチルシステイン(NSC 83265)、ビンブラスチン硫酸塩(NSC 49842)、ビンクリスチン硫酸塩(NSC 67574)、天然および合成エポチロン[これらに限定されるものではないが、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、デスオキシエポチロンA、デスオキシエポチロンB、[1S-[1R*,3R*(E),7R*,10S*,11R*,12R*,16S*]]-7-11-ジヒドロキシ-8,8,10,12,16-ペンタメチル-3-[1-メチル-2-(2-メチル-4-チアゾリル)エテニル]-4-アザ-17オキサビシクロ[14.1.0]ヘプタデカン-5,9-ジオン、[1S-[1R*,3R*(E),7R*,10S*,11R*,12R*,16S*]]-3-[2-[2-(アミノメチル)-4-チアゾリル]-1-メチルエテニル]-7,11-ジヒドロキシ-8,8,10,12,16-ペンタメチル-4-17-ジオキサビシクロ[14.1.0]-ヘプタデカン-5,9-ジオン(2000年2月17日に発行された米国特許出願第09/506,481号において開示されている)を含む]、ならびにこれらの誘導体;ならびに他の微小管破壊剤が含まれるが、それらに限定されない。さらなる抗増殖性化合物には、ディスコデルモリド、エストラムスチン、ノコダゾール、MAP4などが含まれる。そのような薬剤の例は、科学および特許文献においても開示されている。例えば、Bulinski 1997、Panda 1997、Muhlradt 1997、Nicolaou 1997、Vasquez 1997、およびPanda 1996を参照されたい。
【0142】
また、抗増殖性化合物の適する候補は、抗血管新生剤および抗脈管剤(antivascular agent)であり、固形腫瘍への血中を中断することにより、がん細胞から栄養を奪うことによってがん細胞を休止させる。去勢術もまたアンドロゲン依存性癌腫を非増殖性にさせるものであり、それを利用してもよい。血流の途絶以外の手段による飢餓は、細胞分裂阻害剤のもう1つの例である。抗脈管性細胞分裂阻害剤の特に好ましいクラスは、コンブレタスタチンである。他の例示的な細胞分裂阻害剤としては、METキナーゼ阻害剤、MAPキナーゼ阻害剤、非受容体および受容体チロシンキナーゼの阻害剤、インテグリンシグナル伝達の阻害剤、ならびにインスリン様増殖因子受容体の阻害剤が挙げられる。他の抗血管新生剤としては、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられる。他のVEGF阻害剤、例えば、抗VEGF抗体ならびに小分子、例えばZD6474およびSU6668もまた、本発明の併用化学療法での使用に適している。Genentechからの抗Her2抗体も利用することができる。適するEGFR阻害剤は、EKB-569(不可逆的阻害剤)である。EGFRに対して免疫特異的なImclone抗体C225、およびsrc阻害剤も含まれる。
【0143】
さらなる有効化合物は、CTLA4アンタゴニスト以外の共刺激経路アゴニスト(例えば、免疫賦活薬)、チューブリン安定剤(例えば、パシタキソール(pacitaxol)、エポチロン、タキサンなど)、IXEMPRA(商標)、ダカルバジン、パラプラチン、ドセタキセル、1種または複数のペプチドワクチン、MDX-1379黒色腫ペプチドワクチン、1種または複数のgp100ペプチドワクチン、鶏痘-PSA-TRICOM(商標)ワクチン、ワクシニア-PSA-TRICOM(商標)ワクチン、MART-1抗原、サルグラモスチム、チシリムマブ、アンドロゲン切除併用療法薬からなる群から選択することもできる。共刺激経路調節物質の例としては、アガトリモド、ブリナツモマブ、CD40リガンド、AG4263、エリトラン、抗OX40抗体、ISF-154、およびSGN-70が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
ペプチド抗原の非限定的な例は、IMDQVPFSV(配列番号15)およびYLEPGPVTV(配列番号16)からなる群から選択される配列を含む配列番号か、あるいはそのような配列からなる、gp100ペプチドであろう。そのようなペプチドを経口投与してもよく、または好ましくは、1つの体肢に皮下注射されるフロント不完全アジュバント(IFA)に乳化させた1mgでの皮下注射により投与してもよく、そしてIFAに乳化させた同じまたは別のペプチドのいずれかを別の体肢に注射してもよい。
【0145】
PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤とベンズアミド誘導体を含む組合せは、単独での、または放射線療法としても公知の放射線治療と併用での、抗増殖性細胞傷害性薬剤の追加を含むことがある。用語「放射線治療」は、ビームなどの外部から適用される源から送達される、または小型放射線源の埋め込みにより送達される、X線またはガンマ線を含むが、これらに限定されない。
【0146】
本発明の化学療法での処置とともにまたは処置の前に異常増殖細胞を休止させることが望ましい場合、ホルモンおよびステロイド(合成類似体を含む)も患者に投与することができる。したがって、さらなる有効化合物は、17a-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メゲストロール酢酸エステル、メチルプレドニゾロン、メチル-テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェンおよびゾラデックスからなる群から選択される、ホルモン、ステロイドまたはこれらの合成類似体であってもよい。
【0147】
アンドロゲン依存性癌腫を非増殖性にさせるCASODEX(登録商標)も、抗増殖性細胞分裂阻害剤としての使用に適している。細胞分裂阻害剤のさらに別の例は、エストロゲン依存性乳がんの増殖または成長を阻害する抗エストロゲン剤タモキシフェンである。細胞増殖シグナル伝達の阻害剤は、細胞分裂阻害剤である。例は、上皮増殖因子阻害剤、Her-2阻害剤、MEK-1キナーゼ阻害剤、MAPKキナーゼ阻害剤、PI3阻害剤、Srcキナーゼ阻害剤、およびPDGF阻害剤である。
【0148】
医薬組成物は、投薬単位の物理的形態を変更することができる材料を含む。1つの非限定的な例では、組成物は、化合物を保持するコーティングを形成する材料を含む。そのようなコーティングに使用することができる材料としては、例えば、糖、セラック、ゼラチン、または任意の他の不活性コーティング剤が挙げられる。
【0149】
医薬組成物をガスまたはエアロゾルとして調製することもできる。エアロゾルは、コロイドおよび加圧パッケージを含む様々な系を包含する。この形態の組成物の送達は、液化ガスもしくは他の圧縮ガスの使用を通しての、または適するポンプシステムによる、医薬組成物の推進を含みうる。エアロゾルを単相、二相または三相系で送達することができる。
【0150】
本発明の特定の態様では、医薬組成物は、溶媒和物の形態である。そのような溶媒和物は、薬学的に許容される溶媒へのベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の溶解によって生成される。薬学的に許容される溶媒は、1種より多くの溶媒の任意の混合物を含む。そのような溶媒は、ピリジン、クロロホルム、プロパン-1-オール、オレイン酸エチル、乳酸エチル、エチレンオキシド、水、エタノール、ならびに患者の大多数においてその溶媒の使用に起因する重篤な合併症なく苦痛を処置するのに十分な量のベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤を送達する任意の他の溶媒を含みうる。
【0151】
ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤を含む医薬組成物を、局所または経皮投与を助長する形態で調製してもよい。そのような調製物は、溶液、エマルジョン、軟膏、ゲル基剤、経皮パッチまたはイオントフォレーシスデバイスの形態でありうる。そのような組成物に使用される基剤の例としては、ワセリン(opetrolatum)、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤、例えば水およびアルコール、ならびに乳化剤および安定剤、増粘剤、または現在公知のもしくはまだ開示されていない任意の他の適する基剤が挙げられる。
【0152】
本発明は、がんを含む増殖性疾患を処置する方法であって、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の治療有効量を対象に投与するステップ、およびベンズアミド化合物の治療有効量を対象に投与するステップを含む方法も提供する。本発明の好ましい実施形態では、がん性腫瘍の相乗的処置のための方法を提供する。有利なこととして、本発明の相乗的方法は、哺乳動物宿主において、腫瘍の発生を低減させるか、腫瘍量を低減させるか、または腫瘍退縮を生じさせる。
【0153】
医薬組成物により処置することができるがんとしては、膀胱(急速進行型および転移性膀胱がんを含む)、乳房、結腸(結腸直腸がんを含む)、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺がんおよび肺腺癌腫を含む)、卵巣、前立腺、精巣、泌尿生殖器、リンパ系、直腸、喉頭、膵臓(膵外分泌癌腫を含む)、食道、胃、胆嚢、子宮頸、甲状腺、および皮膚(扁平上皮癌腫を含む)の各癌腫を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、およびバーキットリンパ腫(Burketts lymphoma)を含むリンパ系統の造血性腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄球性白血病および前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血性腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経芽腫およびシュワン腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;黒色腫、色素性乾皮症(xenoderma pigmentosum)、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がんおよび奇形腫を含む他の腫瘍;黒色腫、切除不能mまたはIV期悪性黒色腫、扁平上皮癌腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、胃腸がん、腎がん、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、多形神経膠芽腫、子宮頸がん、胃がん(stomach cancer)、膀胱がん、肝細胞癌腫、乳がん、結腸がん、および頭頸部がん、胃がん(gastric cancer)、生殖細胞腫瘍、骨がん、骨腫瘍、成人骨悪性線維性組織球腫、小児骨悪性線維性組織球腫、肉腫、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、新生物、形質細胞腫瘍;骨髄異形成症候群;神経芽細胞腫;精巣胚細胞腫瘍、眼球内黒色腫、骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、滑膜肉腫、慢性骨髄球性白血病、球性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽急性白血病(Ph+ALL)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、肥満細胞症および肥満細胞症に関連するあらゆる症状、ならびにこれらのいずれかの転移が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、障害には、色素性じんま疹、肥満細胞症、例えば、びまん性皮膚肥満細胞症、ヒトの孤立性肥満細胞症、ならびにイヌ肥満細胞症およびいくつかの珍しいサブタイプ(水疱性、紅皮症性および毛細血管拡張性肥満細胞症のようなもの)、関連血液障害(例えば、骨髄増殖性もしくは骨髄異形成症候群または急性白血病)を伴う肥満細胞症、肥満細胞症に随伴する骨髄増殖性障害、肥満細胞白血病が、他のがんに加えて含まれる。障害の範囲内には、膀胱、尿路上皮癌腫、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸、甲状腺、精巣、特に精巣精上皮腫、および皮膚(扁平上皮癌腫を含む)の各癌腫を含む癌腫;消化管間質腫瘍(「GIST」);白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、およびバーキットリンパ腫(Burketts lymphoma)を含むリンパ系統の造血性腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血性腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形腫、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経芽腫およびシュワン腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む間葉系起源の腫瘍、ならびに黒色腫、色素性乾皮症(xenoderma pigmentosum)、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がん、奇形腫、化学療法難治性非精上皮腫性胚細胞腫瘍およびカポジ肉腫を含む他の腫瘍、ならびにそれらの任意の転移を含むがこれらに限定されない他のがんも含まれる。最も好ましくは、本発明は、急速進行型または転移性膀胱がん、膵がん、前立腺がん、黒色腫、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、および乳がんを処置するために使用される。
【0154】
本発明の医薬組成物を使用して処置することができるがんのタイプの他の例としては、骨髄がん、例えば、急性リンパ芽球性白血病(「ALL」)、急性リンパ芽球性B細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性骨髄芽球性白血病(「AML」)、急性前骨髄球性白血病(「APL」)、急性単芽球性白血病、急性赤白血病性白血病(acute erythroleukemic leukemia)、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ性白血病、急性未分化型白血病、慢性骨髄球性白血病(「CML」)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性リンパ性白血病(「CLL」)、ヘアリー細胞白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、リンパ芽球性白血病、骨髄性白血病、リンパ性白血病、骨髄球性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、および真正赤血球増加症が挙げられる。
【0155】
ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の治療有効量は、相乗的に有効な量でありうる。ベンズアミド化合物の相乗的に有効な量は、ベンズアミド化合物がPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤なしで投与された場合に増殖性疾患を処置するのに必要とされる量より少ない。同様に、PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の相乗的に有効な量は、がんを処置するために、またはPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/もしくはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤がベンズアミド化合物なしで投与された場合に、必要とされる量より少ない。
【0156】
ベンズアミド化合物の、ならびにPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の、相乗的な有効な量は、CI値によって表されるような相乗因子によって定義することができる。CIが約0.8未満、あるいは約0.75未満、あるいは約0.7未満、あるいは約0.65未満、あるいは約0.6未満、あるいは約0.55未満、あるいは約0.5未満、あるいは約0.45未満、あるいは約0.4未満、あるいは約0.35未満、あるいは約0.3未満、あるいは約0.25未満、あるいは約0.2未満、あるいは約0.15未満、あるいは約0.1未満であるとき、化合物間に相乗性がある。
【0157】
PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤およびベンズアミド化合物を投与する方法は、経口投与および非経口投与を含むが、これらに限定されるものではない。非経口投与には、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、舌下投与、鼻腔内(intramsal)投与、脳内投与、脳室内投与、くも膜下腔内投与、膣内投与、経皮投与、直腸投与、吸入による投与、または耳、鼻、眼もしくは皮膚への局所投与が含まれるが、これらに限定されない。他の投与方法には、上皮または皮膚粘膜内層、例えば口腔粘膜、直腸および腸管粘膜、を通した吸収による、注入またはボーラス注射を含む注入法が含まれるが、これらに限定されない。非経口投与用の組成物を、ガラス製、プラスチック製または他の材料製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入してもよい。注射により投与することができるように製剤化される医薬組成物は、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤を水で溶解して溶液を形成することによって調製することができる。加えて、均質な溶液または懸濁液の形成を助長するために界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤には、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤と非共有結合的に相互作用して前記化合物の溶解または均質な懸濁を助長することができる、あらゆる複合体が含まれる。
【0158】
PD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤およびベンズアミド化合物の投与は、全身的であってもよく、または局所的であってもよい。局所投与は、処置を必要とする領域へのベンズアミド化合物またはPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤の投与である。例としては、外科手術中の局所注入;局所注射による、カテーテルによる、坐剤によるまたはインプラントによる局所適用が挙げられる。投与は、がん、腫瘍もしくは前がん組織の部位(もしくは既往部位)での直接注射による投与であってもよく、または脳室内およびくも膜下腔内注射を含む任意の適する経路による中枢神経系への投与であってもよい。脳室内注射は、脳室内カテーテル、例えば、オンマヤリザーバーなどのリザーバーに取り付けた脳室内カテーテルによって助長することができる。肺投与は、当技術分野において公知の多数の方法のいずれによって達成してもよい。例としては、吸入器もしくはネブライザーの使用、エアロゾル化剤を用いる製剤化、またはフルオロカーボンもしくは合成肺サーファクタントでの灌流によるものが挙げられる。ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤を、リポソームまたは他の任意の天然もしくは合成小胞などの、小胞に関連して送達してもよい。
【0159】
増殖性疾患を処置する方法の一部の実施では、方法は、さらなる処置様式を施すステップを含むことがある。そのような処置様式には、放射線療法(放射線治療)、外科手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、ウイルス治療、RNA治療、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体治療、または前述のものの組合せが含まれるが、これらに限定されない。併用療法は、相乗的に作用しうる。すなわち、治療の併用は、単独で投与されるいずれかの治療より有効である。この結果として、両方の処置様式のより少ない投薬量を有効に使用することができる状況になる。そしてまたこの状況により、たとえいずれかの投与様式に関連する毒性および副作用があったとしても、効力の低下なしにそのような毒性および副作用が低減される。
【0160】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、治療有効量の放射線療法と組み合わせて投与される。一部の態様では、さらなる治療は、ガンマ線照射である。放射線療法を、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤を含む医薬組成物の投与と同時に投与してもよく、その前に投与してもよく、またはその後に投与してもよい。放射線療法は、前記化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤を含む医薬組成物と相加的に作用することもあり、または相乗的に作用することもある。本発明のこの特定の態様は、放射線療法に応答性であることが公知のがんに関して最も有効であろう。放射線療法に応答性であることが公知のがんには、これらに限定されるものではないが、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、ユーイング肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、喉頭がん、子宮頸がん、鼻咽頭がん、乳がん、結腸がん、膵がん、頭頸部がん、食道がん、直腸がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、脳腫瘍、他のCNS新生物、または現在公知のもしくはまだ開示されていないあらゆるそのような腫瘍が含まれる。
【0161】
他の実施形態では、本発明の組成物は、外科手術であるさらなる治療と組み合わせて投与される。一部の態様では、さらなる治療は、放射線治療と外科手術の組合せである。一部の実施形態では、さらなる治療は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的にする治療、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、および/または化学予防剤である。さらなる治療は、上文にて説明した化学療法剤の1つまたは複数であってもよい。
【0162】
増殖性疾患を処置する方法の一部の実施では、本発明の組成物をex vivoでのがんの処置と併用することができる。そのような処置の一例は、自家幹細胞移植である。この方法では、対象または罹患した実体の自家造血幹細胞を採取し、すべてのがん細胞を一掃する。その後、ベンズアミド化合物およびPD-1軸結合アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、DNA脱メチル化剤、および/またはTNFRSFのメンバーに結合する薬剤を含む医薬組成物の治療量を対象または罹患した実体に投与した後、患者自身の幹細胞またはドナー幹細胞のいずれかを加えることにより実体の骨髄を回復させることができる。
PD-1軸結合アンタゴニスト
PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1シグナル伝達軸でのシグナル伝達の結果として生じるT細胞機能不全を取り除き、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞殺滅)を回復させるまたは増強する結果となるように、PD-1軸結合パートナーとその結合パートナーの1つまたは複数のいずれかとの相互作用を阻害する分子である。PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、およびPD-L2結合アンタゴニストが含まれるが、これらに限定されない。「PD-1」の別名としては、CD279およびSLEB2が挙げられる。「PD-L1」の別名としては、B7-H1、B7-4、CD274およびB7-Hが挙げられる。「PD-L2」の別名としては、B7-DC、BtdcおよびCD273が挙げられる。一部の実施形態では、PD-1、PD-L1およびPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1およびPD-L2である。
【0163】
PD-1結合アンタゴニストは、PD-1と、PD-L1、PD-L2などの、その結合パートナーの1つまたは複数との相互作用の結果として生じるシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、またはそのようなシグナル伝達に干渉する分子である。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2との結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストには、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用の結果として生じるシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、またはそのようなシグナル伝達に干渉する、抗PD-1抗体、それらの抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を介したシグナル伝達を媒介するTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させて、機能不全性T細胞の機能不全をより少なくさせる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。
【0164】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(CAS登録番号946414-94-4;別名MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558またはニボルマブ)、Merck 3745(別名MK-3475またはSCH-900475)およびCT-01(別名hBATまたはhBAT-1)からなる群から選択される抗PD-1抗体であってもよい。
【0165】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン、例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)と融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシンである。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。AMP-224は、B7-DCIgとしても公知であり、PD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0166】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、配列番号22からの重鎖可変領域アミノ酸可変領域を含む重鎖可変領域、および/または
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号19)
の軽鎖アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離された抗Pd-1抗体である。
【0167】
なおさらなる実施形態では、重鎖および/軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体であって、前記重鎖配列が、重鎖配列配列番号22と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、前記軽鎖配列が、軽鎖配列配列番号19と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する、単離された抗PD-1抗体を提供する。
【0168】
PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1と、PD-1、B7-1などの、その結合パートナーの1つまたは複数のいずれかとの相互作用の結果として生じるシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、またはそのようなシグナル伝達に干渉する分子である。一部の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1および/またはB7-1との結合を阻害する。一部の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストには、PD-L1と、PD-L1、B7-1などの、その結合パートナーの1つまたは複数との相互作用の結果として生じるシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、またはそのようなシグナル伝達に干渉する、抗PD-L1抗体、それらの抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を介したシグナル伝達を媒介するTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させて、機能不全性T細胞の機能不全をより少なくさせる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。
【0169】
一部の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFvおよび(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。
【0170】
一部の態様では、抗PD-L1抗体の重鎖は、GFTFS-X1-SWIH(配列番号1)、AWI-X2-PYGGS-X3-YYADSVKG(配列番号2)、およびRHWPGGFDY(配列番号3)(配列中、X1は、DまたはGであり、X2は、SまたはLであり、X3は、TまたはSである)からなる群から選択される少なくとも1つの配列との配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%である少なくとも1つの配列を有する重鎖可変領域を含みうる。好ましい実施形態において、X1は、Dであり、X2は、Sであり、X3は、Tである。
【0171】
あるいは、抗PD-L1抗体の重鎖は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号4)、WVRQAPGKGLEWV(配列番号5)、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号6)、WGQGTLVTVSA(配列番号7)、およびWGQGTLVTVSS(配列番号17)からなる群から選択される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する少なくとも1つの配列を有する重鎖可変領域を含みうる。
【0172】
一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号21、配列番号22、配列番号23および配列番号24からなる群に記載の配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。配列番号23を下に記載する:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS
配列番号24を下に記載する:
【0173】
【0174】
一部の態様では、抗PD-L1抗体の軽鎖は、RASQ-X4-X5-X6-T-X7-X8-A(配列番号8)、SAS-X9-L-X10-S(配列番号9)、およびQQ-X11-X12-X13-X14-P-X15-T(配列番号10)(配列中、X4は、DまたはVであり;X5は、VまたはIであり;X6は、SまたはNであり;X7は、AまたはFであり;X8は、VまたはLであり;X9は、FまたはTであり;X10は、YまたはAであり;X11は、Y、G、FまたはSであり;X12は、L、Y、FまたはWであり;X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり;X14は、H、V、P、TまたはIであり;X15は、A、W、R、PまたはTである)からなる群から選択される配列との配列同一性が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%である少なくとも1つの配列を有する軽鎖可変領域を含みうる。好ましい実施形態では、X4は、Dであり、X5は、Vであり、X6は、Sであり、X7は、Aであり、X8は、Vであり、X9は、Fであり、X10は、Yであり、X11は、Yであり、X12は、Lであり、X13は、Yであり、X14は、Hであり、X15は、Aである。
【0175】
あるいは、抗PD-L1抗体の軽鎖は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号11)、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号12)、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号13)、およびFGQGTKVEIKR(配列番号14)からなる群から選択される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する少なくとも1つの配列を有する軽鎖可変領域を含みうる。好ましい実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号18、配列番号19および配列番号20からなる群に記載の配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0176】
配列番号20を下に記載する:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号21)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号18)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。抗PD-L1結合アンタゴニストを、YW243.55.S70(配列番号20および21でそれぞれ示される重鎖および軽鎖可変領域配列)、MPDL3280AおよびMDX-1105(BMS-936559としても公知)からなる群から選択することもできる。
【0177】
PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2と、PD-1などのその結合パートナーの1つまたは複数のいずれかとの相互作用の結果として生じるシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、またはそのようなシグナル伝達に干渉する分子である。一部の実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーとの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のPD-1との結合を阻害する。一部の実施形態では、PD-L2アンタゴニストには、PD-L2と、PD-1などのその結合パートナーの1つまたは複数のいずれかとの相互作用の結果として生じるシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、またはそのようなシグナル伝達に干渉する、抗PD-L2抗体、それらの抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2を介したシグナル伝達を媒介するTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させて、機能不全性T細胞の機能不全をより少なくさせる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)。一部の実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0178】
一部の態様では、本明細書で説明される抗体(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-L2抗体)は、ヒトまたはマウス定常領域を含むことがある。なおさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる特異的態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる特異的態様では、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる特異的態様では、最小のエフェクター機能は、原核細胞での産生の結果として生じる。なおさらなる特異的態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」または非グリコシル化の結果として生じる。なおさらなる実施形態では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域におけるN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0179】
なおさらなる実施形態では、本発明は、本明細書において提供されるような抗PD-L1、抗PD-1もしくは抗PD-L2抗体またはそれらの抗原結合断片と少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、個体に投与される抗PD-L1、抗PD-1もしくは抗PD-L2抗体またはそれらの抗原結合断片は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む組成物である。本明細書で説明される、または当技術分野において公知の、いずれの薬学的に許容される担体を使用してもよい。
CTLA4アンタゴニスト
本発明の方法での使用に適する抗CTLA4アンタゴニストには、限定ではないが、抗CTLA4抗体、ヒト抗CTLA4抗体、マウス抗CTLA4抗体、哺乳動物抗CTLA4抗体、ヒト化抗CTLA4抗体、モノクローナル抗CTLA4抗体、ポリクローナル抗CTLA4抗体、キメラ抗CTLA4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ、ベラタセプト、抗CD28抗体、抗CTLA4アドネクチン、抗CTLA4ドメイン抗体、一本鎖抗CTLA4断片、重鎖抗CTLA4断片、軽鎖抗CTLA4断片、共刺激経路をアゴナイズするCTLA4の阻害剤、PCT公開番号WO2001/014424において開示されている抗体、PCT公開番号WO2004/035607において開示されている抗体、米国特許出願公開第2005/0201994号に開示されている抗体、および欧州特許番号EP1212422B1において開示されている抗体が含まれる。さらなるCTLA4抗体は、米国特許第5,811,097号、同第5,855,887号、同第6,051,227号および同第6,984,720に、PCT公開番号WO01/14424およびWO00/37504に、ならびに米国特許出願公開第2002/0039581号および同第2002/086014号に記載されている。本発明の方法において使用することができる他の抗CTLA4抗体には、例えば、WO98/42752;米国特許第5,977,318号、同第6,207,156号、同第6,682,736号、同第7,109,003号および同第7,132,281号;Hurwitz 1998;Camacho 2004(抗体CP-675206);ならびにMokyr 1998において開示されているものが含まれる。一部の好ましい実施形態では、抗CTLA4抗体は、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される。
【0180】
さらなるCTLA4アンタゴニストには、CD28抗原のその同種リガンドと結合する能力を損なわせることができる、CTLA4のその同種リガンドと結合する能力を阻害するための、共刺激経路経由でのT細胞応答を増大させるための、B7のCD28および/またはCTLA4と結合する能力を損なわせるための、B7の共刺激経路を活性化する能力を損なわせるための、CD80のCD28および/またはCTLA4と結合する能力を損なわせるための、CD80の共刺激経路を活性化する能力を損なわせるための、CD86のCD28および/またはCTLA4と結合する能力を損なわせるための、CD86の共刺激経路を活性化する能力を損なわせるための、ならびに共刺激経路を破壊医するための、一般に、活性化されることに対する、任意の阻害剤が含まれるがこれらに限定されない。これは、数ある共刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4の小分子阻害剤;数ある共刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対する抗体;数ある共刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアンチセンス分子;数ある共刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアドネクチン;数ある共刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4のRNAi阻害剤(一本鎖のものおよび二本鎖のもの両方)を、必然的に含む。一部の実施では、CTLA4アンタゴニストは、抗B7-1抗体、抗B7-2抗体、抗B7-H4抗体であってもよい。
【0181】
抗CTLA4抗体は、好ましくは、約0.3~10mg/kg、または最大耐用量で投与することができる。本発明の、ある実施形態では、CTLA-4抗体の投薬量は、約3週間ごとに投与される。あるいは、約3mg/kgでのCTLA-4抗体の第一の投薬量、約5mg/kgでのCTLA-4抗体の第二の投薬量、および約9mg/kgでのCTLA-4抗体の第三の投薬量を含む、投薬量を上昇させるレジメンによって、CTLA-4抗体を投与してもよい。別の特定の実施形態では、投薬量を上昇させるレジメンは、約5mg/kgでのCTLA-4抗体の第一の投薬量および約9mg/kgでのCTLA-4抗体の第二の投薬量を投与することを含む。
【0182】
本発明は、CTLA-4抗体の漸増投薬量を約6週間ごとに投与することを含む、投薬量を上昇させるレジメンも提供する。本発明の一態様では、約3mg/kgの第一のCTLA-4抗体投薬量、約3mg/kgの第二のCTLA-4抗体投薬量、約5mg/kgの第三のCTLA-4抗体投薬量、約5mg/kgの第四のCTLA-4抗体投薬量、および約9mg/kgの第五のCTLA-4抗体投薬量を投与することを含む、投薬量を段階的に上昇させるレジメンを提供する。本発明の別の態様では、5mg/kgの第一の投薬量、5mg/kgの第二の投薬量、および9mg/kgの第三の投薬量を投与することを含む、投薬量を段階的に上昇させるレジメンを提供する。
【0183】
用いられる実際の投薬量は、患者の要件および処置される状態の重症度に応じて変りうる。特定の状況に適した投薬量の決定は、当技術分野の技能の範囲内である。一般に、処置は、化合物の最適用量未満である、より少ない投薬量で開始される。その後、投薬量は、その環境下で最適な効果が達成されるまで少量ずつ増加される。便宜上、必要に応じて全日用量を分割し、その日のうちに少しずつ投与してもよい。間欠的治療(例えば、3週間のうち1週間、または4週間のうち3週間)を使用してもよい。
DNA脱メチル化剤
組成物に使用してもよいDNA脱メチル化剤の例には、DNAへのメチル基の転移を阻害する、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が含まれる。1つの特異的実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、シトシンの類似体である。これらのシトシン類似体は、複製中、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)との共有結合的連結前にDNAに組み込まれ、かくて遺伝子メチル化の全般的喪失をもたらす(Christman J.K.、Oncogene 21:5483~95、2002)。
【0184】
別の実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、シチジンの類似体である。特異的態様では、シチジン類似体は、シチジンまたはデオキシシチジンと構造的関連性がある化合物であって、シチジンもしくはデオキシシチジンの作用を構造的に模倣および/またはアンタゴナイズする、任意の化合物である。シチジン類似体は、5-アザシチジン(azacytidine))(アザシチジン(azacitidine))、5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)、1-β-D-アラビノフラノシルシチジン(シタラビンもしくはara-C)、プソイドイソシチジン(プサイICR)、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン(FCdR)、2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン(ゲムシタビン)、5-アザ-2’-デオキ-2’,2’-ジフルオロシチジン、5-アザ-2’-デオキ-2’-フルオロシチジン、1-β-D-リボフラノシル-2(1H)-ピリミドン(ゼブラリン)、2’,3’-ジオキシ-5-フルオロ-3’-チアシチジン(エムトリバ)、2’シクロシチジン(アンシタビン)、1-β-D-アラビノフラノシル-5-アザシトシン(ファザラビンもしくはara-AC)、6-アザシチジン(azacytidine)(6-aza-CR)、5,6-ジヒドロ-5-アザシチジン(azacytidine)(dH-aza-CR)、N4-ペンチルオキシ-カルボニル-5’-デオキシ-5-フルオロシチジン(カペシタビン)、N4-オクタデシル-シタラビン、またはエライジン酸シタラビンであってもよい。
【0185】
アザシチジン(azacitidine)は、4-アミノ-1-β-D-リボフラノシル-s-トリアジン-2(1H)-オンであり、VIDAZA(登録商標)としても公知である。その実験式は、C8H12N4O5であり、分子量は、244である。アザシチジン(azacitidine)は、アセトン、エタノールおよびメチルケトンに不溶性であり、エタノール/水(50/50)、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールに難溶性であり、水、水で飽和されたオクタノール、5%デキストロース水溶液、N-メチル-2-ピロリドン、生理食塩水、および5%Tween80水溶液にやや難溶性であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶性である、白色~オフホワイトの固体である。VIDAZA(登録商標)は、MDSになるリスクがより高い患者に関する処置に認可されている。これは、皮下注射のために懸濁剤として再構成するための、または静脈内注入のためにさらに希釈して溶液として再構成するための、滅菌形態で供給される。VIDAZA(登録商標)のバイアルには、100mgのアザシチジン(azacitidine)および100mgのマンニトールが滅菌凍結乾燥粉末として入っている。
【0186】
デシタビンは、4-アミノ-1-(2-デオキシ-β-D-erythro-ペントフラノシル)-1,3,5-トリアジン-2(1H)オンであり、DACOGEN(登録商標)としても公知である。その実験式は、C8H12N4O4であり、分子量は、228.21である。デシタビンは、エタノール/水(50/50)、メタノール/水(50/50)およびメタノールに難溶性であり、水にやや難溶性であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶性である、白色~ほぼ白色の微粉末である。デシタビンでのがん細胞モデルの処置は、発現停止遺伝子の再発現を介して(Benderら、Cancer Res 58:95~101、1998;Hermanら、N Engl J Med 349:2042~54、2003)、ならびにp53およびp21Waf1/Cip1の活性化を介して(Zhuら、J Biol Chem 279:15161~6、2004)、増殖およびアポトーシスの抑制をもたらす。最近の研究により、デシタビンが、G2停止を引き起こし、クローン原性生存率を低下させ、細胞の成長を阻害する一方で、DNA断片化を引き起こし、ATMおよびATR DNA修復経路を活性化することが明らかにされた(Paliiら、Mol Cell Biol 28:752~71、2008)。DACOGEN(登録商標)は、骨髄異形成症候群の患者に関する処置に認可されている。これは、注射用の白色滅菌凍結乾燥粉末として透明無色のガラスバイアルで供給される。各20mL(1回量)ガラスバイアルには、50mgのデシタビン、68mgの一塩基性リン酸カリウム(リン酸二水素カリウム)および11.6mgの塩酸ナトリウムが入っている。
【0187】
本明細書で開示される組成物および方法において使用されうるさらなるDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、グアデシタビン(SG-110)、CC-486(経口アザシチジン(azacitidine))、MG98、および5-フルオロ-2’-デオキシシチジン(FdCyd)を含む。MG98は、そのmRNAを標的にすることにより酵素DNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)の産生を阻害する第二世代アンチセンスオリゴヌクレオチドである。DNMT1は、過剰発現されると、腫瘍抑制遺伝子を過剰メチル化することおよび発現停止させることがあり、これは、がんにつながるまたはがんを進行させる可能性がある。DNMT1産生の防止は、腫瘍抑制遺伝子を発現停止させて不活性化することを可能にしうる。
【0188】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、本明細書で説明されるDNA脱メチル化剤である化合物は、特定の立体化学が指定されていない限り、すべての可能な立体異性体を包含することを意図したものである。化合物の構造異性体が、低いエネルギー障壁により相互変換可能である場合、化合物は、単一の互変異性体、または互変異性体の混合物として存在しうる。これは、プロトン互変異性の形態をとることがあり、または化合物、例えば芳香族部分構造を含有する化合物では、いわゆる原子価互変異性の形態をとることもある。
【0189】
本明細書で説明されるDNA脱メチル化剤である化合物は、同位体濃縮類似体を包含しうる。例えば、化合物中の1つまたは複数の水素位置が、重水素および/または三重水素を多く含むことがある。化合物の特定の位置に多く含まれることがある他の適する同位体としては、C-13、C-14、N-15、O-17、および/またはO-18が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本明細書で説明される化合物は、同じまたは異なる1カ所より多くの位置に、同位体を多く含むことがある。本明細書で使用される場合、用語「シトシン類似体」および「シチジン(cytdine)類似体」は、シトシン類似体もしくはシチジン類似体の遊離塩基、またはその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、水和物、共結晶、複合体、プロドラッグ、前駆体、代謝物および/もしくは誘導体を包含する。用語「シトシン類似体」および「シチジン(cytdine)類似体」は、シトシン類似体もしくはシチジン(cytdine)類似体の遊離塩基、またはその塩、溶媒和物、水和物、共結晶もしくは複合体も指すことができる。ある特定の実施形態では、本明細書で言及されるシチジン類似体は、シチジン類似体の遊離塩基、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物を包含する。一実施形態では、遊離塩基または薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は固体である。別の実施形態では、遊離塩基または薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、非晶形態の固体である。さらに別の実施形態では、遊離塩基または薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、結晶形態の固体である。
【0190】
一部の態様では、シトシン類似体またはシチジン類似体の薬学的に許容される塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩(エジシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(エシル酸塩)、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、2-ナフタレンスルホン酸塩(ナプシル酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、またはウンデカン酸塩であってもよい。
【0191】
一実施形態では、アザシチジン(azacitidine)は、滅菌凍結乾燥粉末として製剤化され、100mgのアザシチジン(azacitidine)および100mgのマンニトールが入っている使い捨てバイアルで供給される。注射用のアザシチジン(azacitidine)は、さらに希釈して溶液として再構成した後の静脈内注射を意図したものである。注射用のアザシチジン(azacitidine)は、懸濁剤として再構成した後の皮下注射を意図したものである。
【0192】
一実施形態では、デシタビンは、白色~ほぼ白色滅菌凍結乾燥粉末として注射用に製剤化され、それが透明無色ガラスバイアルで供給される。各バイアル(20mLの1回量)は、50mgのデシタビン、68mgの一塩基性リン酸カリウム(リン酸二水素カリウム)および11.6mgの水酸化ナトリウムを含有する。
TNFRSFのメンバーに結合する薬剤
TNFRSFメンバーは、4-1BB、BAFF、BCMA、CD27、CD30、CD40、DcR3、DcTRAIL R1、DcTRAIL R2、DR3、DR6、EDA2R、EDAR、Fas(CD95)、GITR、HVEM、リンホトキシンベータR、NGFR、オステオプロテゲリン、OX40、RANK、RELT、TACI、TNFRH3、TNF R1、TNF R2、TRAIL R1、TRAIL R2、TRAIL R3、TRAIL R4、TROY、およびTWEAK Rを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、TNFRSFのメンバーに結合する薬剤は、ポリペプチドである。
【0193】
一部の態様では、ポリペプチドは、腫瘍壊死因子受容体リガンドスーパーファミリー(TNFSF)タンパク質に結合することができるTNFSFタンパク質またはその断片の細胞外ドメインの第一、第二および第三のコピーを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、TNFSFタンパク質のストーク領域を含む。TNFSFタンパク質は、GITRL、OX40L、4-1BBリガンド、APRIL、BAFF、CD27リガンド、CD30リガンド、CD40リガンド(CD40L)、EDA、EDA-A1、EDA-A2、Fasリガンド(CD95L)、LIGHT、リンホトキシン、リンホトキシン-ベータ、リンホトキシン-アルファ、TL1A、TNF-アルファ、TRAIL、TRANCE、およびTWEAKからなる群から選択することができる。好ましい実施では、薬剤またはポリペプチドは、ヒトTNFSFタンパク質の受容体に結合することができるヒトTNFSFタンパク質またはその断片の細胞外ドメインの第一、第二および第三のコピーを含む。
【0194】
他の態様では、TNFRSFのメンバーに結合する薬剤は、TNFRSFのメンバーのアゴニストである。TNFRSFのメンバーのアゴニストは、TNFRSFのメンバーのシグナル伝達を誘導する、活性化する、増進させる、増加させる、および/または延長する。一部の実施形態では、TNFRSFのメンバーに結合する薬剤は、4-1BB(CD137)のアゴニスト、またはグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体関連タンパク質(GITR)のアゴニストである。4-1BB(CD137)のアゴニストまたはGITRのアゴニストは、4-1BB(CD137)またはGITRに対する抗体、例えばモノクローナル抗体であってもよい。他の実施形態では、TNFRSFのメンバーに結合する薬剤は、OX40に結合する。これらのポリペプチドまたは薬剤は、本明細書では「OX40結合剤」と呼ばれることもある。ある特定の実施形態では、ポリペプチドまたは薬剤は、OX40アゴニストである。ある特定の実施形態では、ポリペプチドまたは薬剤は、OX40シグナル伝達を誘導する、活性化する、増進させる、増加させる、および/または延長する。さらに他の実施形態では、TNFRSFのメンバーに結合する薬剤は、CD40に結合する。これらのポリペプチドまたは薬剤は、本明細書では「CD40結合剤」と呼ばれることもある。ある特定の実施形態では、ポリペプチドまたは薬剤は、CD40アゴニストである。ある特定の実施形態では、ポリペプチドまたは薬剤は、CD40シグナル伝達を誘導する、活性化する、増進させる、増加させる、および/または延長する。
1.4-1BB(CD137)およびそのアゴニスト
4-1BB(CD137)は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーである。その代替名は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)、4-1BBであり、リンパ球活性化(ILA)により誘導される。CD137は、活性化T細胞によって発現されうるが、CD4 T細胞上でよりCD8 T細胞上でのほうが発現される程度が大きい。加えて、CD137発現は、樹状細胞、濾胞性樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、顆粒球、および血管壁の炎症部位の細胞上で見出される。CD137の特徴とされている1つの活性は、活性化T細胞についてのその共刺激活性である。CD137の架橋は、T細胞増殖、IL-2分泌生存および細胞溶解活性を増強する。さらに、それは、マウスにおいて腫瘍を除去するように免疫活性を増強することができる。
【0195】
CD137は、TCR活性化時に誘導されるT細胞共刺激受容体である(Namら、2005);Wattsら、2005)。活性化CD4+およびCD8+T細胞上でのその発現に加えて、CD137は、CD4+CD25+調節性T細胞、ナチュラルキラー(NK)およびNK-T細胞、単球、好中球、ならびに樹状細胞上でも発現される。その天然リガンドであるCD137Lは、B細胞、単球/マクロファージ、および樹状細胞を含む、抗原提示細胞に関して記載されている(Wattsら、2005)。そのリガンドとの相互作用時、CD137は、TCR誘導T細胞増殖、サイトカイン産生および機能的成熟の増加、ならびにCD8+T細胞生存の延長をもたらす(Namら、2005)、Wattsら、2005)。
【0196】
CD137LまたはCD137に対するアゴニストモノクローナル抗体(mAb)のいずれかによるCD137を介したシグナル伝達は、TCRにより誘導されるT細胞増殖、サイトカイン産生および機能的成熟の増加、ならびにCD8+T細胞生存の延長をもたらす。これらの効果は、(1)NF-κB、c-Jun NH2末端キナーゼ/ストレス活性化プロテインキナーゼ(JNK/SAPK)、およびp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路の活性化、ならびに(2)抗アポトーシスおよび細胞周期関連遺伝子発現の制御の結果として生じる。CD137欠損マウスとCD137L欠損マウスの両方で行われた実験は、完全コンピテントT細胞応答を生じさせる際のCD137共刺激の重要性をさらに実証した。
【0197】
IL-2およびIL-15活性化NK細胞は、CD137を発現し、アゴニストmAbによるCD137のライゲーションは、NK細胞増殖およびIFN-γの分泌を、それらの細胞溶解活性を刺激するのではなく、刺激する。さらに、CD137刺激NK細胞は、in vitroで活性化T細胞の拡大を促進する。それらの共刺激機能に従って、CD137に対するアゴニストmAbは、心臓および皮膚同種移植の拒絶反応を促進すること、定着腫瘍を消し去ること、一次CD8+T細胞応答を拡大すること、およびT細胞の細胞溶解能を増大させることが証明されている。これらの研究は、CD137シグナル伝達が、腫瘍および感染に対する免疫を増強しうるT細胞機能を促進するという見解を支持する。
【0198】
他の抗CD137抗体は、米国特許第7,288,638号として発行された米国特許出願公開第2005/0095244号(例えば、20H4.9-IgG4[10C7もしくはBMS-663513]または20H4.9-IgG1[BMS-663031]);米国特許第6,887,673号[∝E9またはBMS-554271];米国特許第7,214,493号、同第6,303,121号、同第6,569,997号、同第6,905,685号、同第6,355,476号、同第6,362,325号[1D8もしくはBMS-469492;3H3もしくはBMS-469497;または3E1];米国特許第6,974,863号(例えば、53A2);あるいは米国特許第6,210,669号(例えば、1D8、3B8、または3E1)に開示されている。さらなるCD137アゴニスト抗体は、米国特許第5,928,893号、同第6,303,121号および同第6,569,997号に開示されている。
2.GITRおよびそのアゴニスト
TNFRSF18、AITR、CD357およびGITR-Dとしても公知の共刺激分子であるGITRは、デキサメタゾンで処置されたマウスT細胞株においてそもそも同定された、TNF受容体ファミリーのメンバーである(Nocentiniら、1997)。TNF受容体ファミリーの他の関連メンバーは、CD40、CD27、4-1BB、およびOX40を含む。GITR発現は、ナイーブCD4+およびCD8+T細胞では低いが、調節性T細胞では構成的に発現される(Toneら、2003)。しかし、その発現がエフェクターT細胞上で誘導されると、GITR会合が、それらの活性化、増殖およびサイトカイン生産を促進する(Watts 2005)。CD4+およびCD8+調節性cT細胞(Treg)に関して、Shimizuは、混合培養抑制アッセイを詞移用して、GITR会合がそれらの機能を抑制すると報告した(Shimizuら、2002)。しかし、Stephansら(2004)のその後の研究は、Tエフェクター(Teff)細胞上のGITR会合がTreg抑制に対するそれらの感受性を低くさせると断定して、Treg-Teff細胞共培養において観察された抑制低下を説明した。DTA-1(ラット抗マウスGITR)抗体媒介GITR刺激は、複数の腫瘍モデルにおいて抗腫瘍免疫を促進する。
【0199】
GITRのリガンドであるGITR-Lは、抗原提示細胞(例えば、B細胞、樹状細胞)では低レベルで発現されるが、例えばウイルス感染により、活性化されると、これらの細胞において一時的にアップレギュレートされる(Suvasら、2005)。
【0200】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗GITR抗体またはそれらの抗原結合部分は、抗腫瘍免疫応答、例えば、抗原特異的T細胞応答を刺激する。ある特定の実施形態では、抗GITR抗体またはそれらの抗原結合部分は、GITR発現T細胞におけるサイトカイン(例えば、IL-2および/またはIFN-γ)産生を増加させ、および/またはT細胞増殖を増加させる。
【0201】
ある特定の実施形態では、抗GITR抗体またはそれらの抗原結合部分は、Fc受容体と結合しない。ある特定の実施形態では、抗GITR抗体またはそれらの抗原結合部分は、1つもしくは複数のFcγR(例えば、活性化型もしくは抑制性)またはFcγRと結合する。
【0202】
ある特定の実施形態では、抗GITR抗体またはそれらの抗原結合部分は、Biacoreにより測定されたとき10nM以下のKDで可溶性ヒトGITRと結合し、Scatchardにより測定されたとき1nM以下のKDで膜結合ヒトGITRと結合し、FACSにより測定されたとき1nM以下のEC50で膜結合ヒトGITRと結合し、FACSにより測定されたとき10nM以下のEC50で膜結合カニクイザルGITRと結合し、多価架橋を必要とせずにT細胞、例えばTeff細胞、活性化を誘導または増進し、FACSにより測定されたとき1μg/mL以下のEC50でGITRリガンドのGITRとの結合を阻害する。
【0203】
ある特定の実施形態では、GITRアゴニストである薬剤は、ポリペプチドである。ある特定の実施形態では、GITRアゴニストである薬剤は、可溶性タンパク質である。一部の実施形態では、GITRアゴニストである薬剤は、融合ポリペプチドである。一部の実施形態では、GITRアゴニストである薬剤は、可溶性リガンドまたは可溶性「共受容体」である。一部の実施形態では、GITRアゴニストであるポリペプチドまたは薬剤は、GITRL、好ましくはヒトGITRL、の断片を含む。一部の態様では、GITRL(好ましくはヒトGITRL)の細胞外ドメインの断片は、全細胞外ドメインを含む可溶性薬剤と比較して生物学的活性の変化(例えば、タンパク質半減期の延長)を有する。
ベンズアミド化合物
本発明の組成物において使用されるベンズアミド化合物は、好ましくは、下記の式を有する化合物である:
【0204】
【0205】
Xによって示される基は、H、ハロ、-OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)NR’R”、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、および3~10員複素環のいずれであってもよく、ここで、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、または3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または次のうちの1つもしくは複数で置換されていてもよい:ハロ、-OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)NR’R”、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル。
【0206】
Yによって示される基は、H、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、アリール、3~10員複素環のいずれであってもよく、ここで、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、アリール、3~10員複素環は、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または次のうちの1つもしくは複数で置換されていてもよい:-ハロ、-C1~C6アルキル、-C3~C12シクロアルキル、3~10員複素環、アリール、OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NHC(O)NR’R”、-C(O)NR’R”、-NS(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-S(O)2R’、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ。一部の態様では、Yによって示される基は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、またはシクロヘプチルメチルであってもよい。
【0207】
Zによって示される基は、-NHOHであってもよい。
Qによって示される基は、Hまたはハロのいずれであってもよい。ハロ基は、あらゆるハロゲンを含む。例としては、-F、-Cl、-Br、または-Iが挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
R、R’またはR”と示される基は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよい。一部の実施形態では、R’および/またはR”は、NまたはO原子に結合していてもよい。一部の態様では、R’およびR”は、それらが結合している原子と一緒になって、3~8員または3~10員環式構造を形成する。
【0209】
-C1~C6アルキル基は、1~6個の炭素原子からなる、あらゆる直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換炭化水素を含む。-C1~C6アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、アセチレニル、ペンチニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニルおよび3-ヘキシニル基が挙げられるが、これらに限定されない。置換-C1~C6アルキル基は、いずれの適用可能な化学部分構造を含んでいてもよい。上に列挙したいずれかの-C1~C6アルキル基上に置換されて存在することがある基の例としては、次の例が挙げられるが、これらに限定されない:ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、C3~C7シクロアルキル、3~10員複素環、アリール、-OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-C(O)NHR’、-NS(O)2R’、-S(O)2N(R’)2、または-S(O)2R’基。
【0210】
アリール基は、あらゆる非置換または置換フェニルまたはナフチル基を含む。いずれかの(ay)アリール基上に置換されて存在することがある基の例としては、-ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、-C3~C7シクロアルキル、3~10員複素環、アリール、-OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-C(O)NHR’、-C(O)NEtR’、-NS(O)2R’、R’、-S(O)2N(R’)2、または-S(O)2R’基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0211】
-C3~C7シクロアルキル基は、あらゆる3員、4員、5員、6員または7員置換または非置換非芳香族環状炭素を含む一方で、-C3~C12シクロアルキル基は、あらゆる3員、4員、5員、6員、7員、8員、9員、10員、11員または12員置換または非置換非芳香族環状炭素を含む。-C3~C7シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプタニル、1,3-シクロヘキサジエニル、-1,4-シクロヘキサジエニル、-1,3-シクロヘプタジエニル、および-1,3,5-シクロヘプタトリエニル基が挙げられるが、これらに限定されない。-C3~C12シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプタニル、1,3-シクロヘキサジエニル、-1,4-シクロヘキサジエニル、-1,3-シクロヘプタジエニル、-1,3,5-シクロヘプタトリエニル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシル基が挙げられるが、これらに限定されない。C3~C7シクロアルキル基およびC3~C12シクロアルキル基は、置換または非置換非芳香族二環式炭素環も含む。二環式の環の例としては、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.0]ヘキシル、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチルおよびビシクロ[3.1.1]ヘプチルが挙げられるが、これらに限定されない。-C3~C7シクロアルキル基およびC3~C12シクロアルキル基上に置換されて存在することがある基の例としては、-ハロ、-C1~C6アルキル、-C3~C7シクロアルキル、3~10員複素環、アリール、-OH、-CN、-COOR’、-OR’、-SR’、-OC(O)R’、-NHR’、-NR’R”、-NHC(O)R’、-NRC(O)NR’R”、-C(O)NR’R”、-NRS(O)1~2R’、-S(O)1~2NR’R”、または-S(O)1~2R’基が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、R’およびR”は、独立して、H、C1~C6アルキル、アリール、もしくは3~10員複素環であってもよく、またはR’およびR”は、それらが結合している原子と一緒になって3~10員環式構造を形成する。
【0212】
複素環は、O、SまたはNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子が割り込んでいる、場合により置換されているいずれの飽和、不飽和または芳香族環式部分構造であってもよい。複素環は、単環式の環であってもよく、または多環式の環であってもよい。例えば、適する置換基としては、ハロゲン、ハロゲン化C1~6アルキル、ハロゲン化C1~6アルコキシ、アミノ、アミジノ、アミド、アジド、シアノ、グアニジノ、ヒドロキシル、ニトロ、ニトロソ、尿素、-OR、-NR’R”、-OS(O)2R’;-OS(O)2OR’、-S(O)2OR’、-S(O)0~2R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R”、-OP(O)OR、-P(O)OR、-SO2NR’R”、-NRS(O)2R’または-NRC(O)NR’R”が挙げられ、ここで、R’およびR”は、独立して、H、C1~C6アルキル、アリールもしくは3~10員複素環であってもよく、またはR’およびR”は、それらが結合している原子と一緒になって3~10員環式構造を形成する。
【0213】
複素環基に対する可能な置換基としては、ハロゲン(Br、Cl、IまたはF)、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、C1~4アルキル(例えば、CH3、C2H5、イソプロピル)、C1~4アルコキシ(例えば、OCH3、OC2H5)、ハロゲン化C1~4アルキル(例えば、CF3、CHF2)、ハロゲン化C1~4アルコキシ(例えば、OCF3、OC2F5)、COOH、COO4C1~4アルキル、CO4C1~4アルキル、C1~4アルキル-S-(例えば、CH3S、C2H5S)、ハロゲン化C1~4アルキル-S-(例えば、CF3S、C2F5S)、ベンジルオキシ、およびピラゾリルが挙げられる。
【0214】
複素環の例としては、アゼピニル、アジリジニル、アゼチル、アゼチジニル、ジアゼピニル、ジチアジアジニル、ジオキサゼピニル、ジオキソラニル、ジチアゾリル、フラニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、モルホリニル、モルホリノ、オキセタニル、オキサジアゾリル、オキシラニル、オキサジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピペリジル、ピペリジノ、ピリジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピロリジニル、チアトリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、チエニル、テトラジニル、チアジアジニル、トリアジニル、チアジニル、チオピラニル フロイソオキサゾリル、イミダゾチアゾリル、チエノイソチアゾリル、チエノチアゾリル、イミダゾピラゾリル、シクロペンタピラゾリル、ピロロピロリル、チエノチエニル、チアジアゾロピリミジニル、チアゾロチアジニル、チアゾロピリミジニル、チアゾロピリジニル、オキサゾロピリミジニル、オキサゾロピリジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピラジニル、プリニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジニル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾオキサチオリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジチオリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、フロピリミジニル、フロピリジル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、チエノピリミジニル、チエナピリジル、ベンゾチエニル、シクロペンタオキサジニル、シクロペンタフラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾチアジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾピラニル、ピリドピリダジニルおよびピリドピリミジニル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
ベンズアミド化合物およびその中間体は、異なる互変異性型で存在することがある。互変異性体には、エネルギーが異なる構造異性体であって、相互変換に対するエネルギー障壁が低い、あらゆる構造異性体が含まれる。一例は、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体)である。この例では、相互変換は、プロトンの移動によって起こる。プロトトロピー互変異性体の例としては、ケト-エノールおよびイミン-エナミン異性化が挙げられるが、これらに限定されない。下にグラフィックで図示する別の例では、2-アミノベンゾイミダゾール環の1位、2位アミノおよび3位窒素原子間のプロトン移動が起こる。結果として、式Ia、IbおよびIcは、互いに互変異性型である:
【0216】
【0217】
ベンズアミド化合物は、本開示ベンズアミド化合物が、呈する可能性がある、あらゆる他の物理化学的または立体化学的形態をさらに包含する。そのような形態には、ジアステレオマー、ラセミ体、単離されたエナンチオマー、水和形態、溶媒和形態、任意の他の公知のまたはまだ公開されていない結晶、多形結晶または非晶形態が含まれる。非晶形態には、区別可能な結晶格子がなく、したがって、構造単位の規則正しい配列がない。多くの医薬化合物が非晶形態を有する。そのような化学的形態を生じさせる方法は、当業者には周知である。
【0218】
一部の態様では、ベンズアミド化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。薬学的に許容される塩には、有機または無機酸から誘導されるあらゆる塩が含まれる。そのような塩の例としては、これらに限定されるものではないが、臭化水素酸、塩酸、硝酸、リン酸および硫酸の塩。有機酸付加塩には、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、2-(4-クロロフェノキシ)-2-メチルプロピオン酸、1,2-エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、N-グリコリルアルサニル酸、4-ヘキシルレゾルシノール、馬尿酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ラクトビオン酸、n-ドデシル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸(methyl sulpuric acid)、粘液酸、2-ナフタレンスルホン酸、パモ酸、パントテン酸、ホスファニル酸((4-アミノフェニル)ホスホン酸)、ピクリン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、テレフタル酸、p-トルエンスルホン酸、10-ウンデセン酸、または現在公知のもしくはまだ開示されていない任意の他のそのような酸の塩が挙げられる。そのような薬学的に許容される塩を、薬理学的組成物の製剤化に使用することができることは、当業者には理解されるであろう。そのような塩は、当業者に公知の手法で化合物を適する酸と反応させることによって調製することができる。
【0219】
本発明は、保護基が化合物に付加される態様をさらに包含する。複雑な分子の合成中に、ベンズアミド化合物上の1つの基が、該化合物上の第二の基を含む所期の反応にたまたま干渉することがあることは、当業者には理解されるであろう。第一の基の一時的隠蔽または保護は、所望の反応を助長する。保護は、保護すべき基への保護基の導入、所望の反応の実行、および保護基の除去を含む。保護基の除去は、脱保護と呼ばれることもある。一部の合成の際に保護すべき化合物の例としては、ヒドロキシ基、アミン基、カルボニル基、カルボキシル基およびチオールが挙げられる。
【0220】
合成プロセスに導入することができる多くの保護基および試薬が開発されており、今も開発され続けている。保護基は、特定の試薬に耐性である基が、その分子中の他のいずれの化学基にも有意に作用することなく、保護すべき化学基に選択的に結合される、あらゆる化学合成の結果として得ることができ、合成を通して安定したままであり、そして保護された基ともその分子中のいずれの他の化学基とも有害に反応しない条件下で除去することができる。合成を通して複数の保護基を付加させることができ、当業者は、保護すべき基に保護基を特異的に付加させ、その基からその保護基を特異的に除去する戦略を開発することができるであろう。
【0221】
保護基、それらの基を付加させる試薬、それらの試薬の調製、様々な条件下での保護および脱保護戦略(相互補完的保護基を用いる複雑な合成を含む)は、すべて、当技術分野において周知である。これらのすべてについての非限定的な例は、Greenら、Protective Groups in Organic Chemistry第2版(Wiley 1991)、およびHarrisonら、Compendium of Synthetic Organic Methods、1~8巻(Wiley、1971~1996)において見つけることができ、これら両方の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0222】
ベンズアミド化合物のラセミ体、個々のエナンチオマー、またはジアステレオマーを、現在公知のまたはまだ開示されていないいずれの方法による特異的に合成また分割によって調製してもよい。例えば、光学的に活性な酸を使用する塩の形成によるジアステレオマー対の形成によって、ベンズアミド化合物をそのエナンチオマー(it enanthiomers)に分割してもよい。エナンチオマーは分別結晶化され、有機塩基が再生される。別の例では、エナンチオマーをクロマトグラフィーによって分離してもよい。そのようなクロマトグラフィーは、キラルカラムを用いるHPLCなどの、エナンチオマーを分離するに適している現在公知のまたはまだ開示されていないいずれの適切な方法であってもよい。
【0223】
ベンズアミド化合物の非限定的な例は、以下のものである:
N-ヒドロキシ-4-(1-イソプロピル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#1:
【0224】
【0225】
N-ヒドロキシ-4-(1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#2:
【0226】
【0227】
4-(1-シクロブチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#3:
【0228】
【0229】
N-ヒドロキシ-4-(1-(2-メトキシエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#4:
【0230】
【0231】
4-(1-シクロペンチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#5:
【0232】
【0233】
4-(5-ブロモ-1-イソプロピル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#6:
【0234】
【0235】
4-(6-ブロモ-1-イソプロピル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#7:
【0236】
【0237】
N-ヒドロキシ-4-(1-(2-メトキシエチル)-5-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#8:
【0238】
【0239】
N-ヒドロキシ-4-(1-(3-メトキシプロピル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#9:
【0240】
【0241】
4-(5-ブロモ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#10:
【0242】
【0243】
N-ヒドロキシ-4-(1-(2-ヒドロキシエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#11:
【0244】
【0245】
4-(5-フルオロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#12:
【0246】
【0247】
N-ヒドロキシ-4-(1-(2-イソプロピルエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#13:
【0248】
【0249】
4-(5-(3-フルオロフェニル)-1-(2-メトキシエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#14:
【0250】
【0251】
N-ヒドロキシ-4-(1-(2-メトキシエチル)-5-(ピリミジン-5-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#15:
【0252】
【0253】
4-(5-シクロプロピル-1-(2-メトキシエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#16:
【0254】
【0255】
4-(5-ブロモ-1-(2-ジメチルアミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#17:
【0256】
【0257】
N-ヒドロキシ-4-(1-イソプロピル-5-(ピリミジン-5-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#18:
【0258】
【0259】
N-ヒドロキシ-4-(1-イソプロピル-5-(ピリミジン-3-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#19:
【0260】
【0261】
N-ヒドロキシ-4-(1-(ペンタン-3-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#20:
【0262】
【0263】
4-(6-フルオロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#21:
【0264】
【0265】
4-(4-フルオロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#22:
【0266】
【0267】
N-ヒドロキシ-4-(1-イソプロピル-5-(メトキシメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)ベンズアミド ID#23:
【0268】
【0269】
4-(1-(シクロヘキシルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#24:
【0270】
【0271】
4-(1-シクロヘキシル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#25:
【0272】
【0273】
4-(1-シクロヘプチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イルアミノ)-N-ヒドロキシベンズアミド ID#26:
【0274】
【0275】
さらなる例としては、次のものが挙げられる:
【0276】
【0277】
ある特定の態様では、本発明は、式(I)の化合物:
【0278】
【0279】
および/または式(II)の化合物:
【0280】
【0281】
を含む組成物に関する。
Xによって示される基は、H、-C1~C6アルキル、アリール、-C3~C7シクロアルキル、または3~10員複素環のいずれであってもよく、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または-ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、-OH、-CN、-COOR’、-OC(O)R’、NHR’、N(R’)2、-NHC(O)R’もしくは-C(O)NHR’基のうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく、ここで、R’は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよい。
【0282】
Aによって示される基は、結合、-C1~C6アルキルまたは-C3~C7シクロアルキルのいずれであってもよく、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または-ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、-OH、-CN、-COOR’、-OC(O)R’、NHR’、N(R’)2、-NHC(O)R’もしくは-C(O)NHR’基のうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく、ここで、R’は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよい。
【0283】
Yによって示される基は、H、-C1~C6アルキル、-C3~C7シクロアルキル、アリールまたは3~10員複素環のいずれであってもよく、これらのいずれもが、非置換であってもよく、または-ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、-OH、-CN、-COOR’、-OC(O)R’、NHR’、N(R’)2、-NHC(O)R’もしくは-C(O)NHR’基のうちの1つもしくは複数で置換されていてもよく、ここで、R’は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよい。
【0284】
Qによって示される基は、H、-ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、-OH、-CN、-COOR’、-OC(O)R’、NHR’、N(R’)2、-NHC(O)R’または-C(O)NHR’基であってもよく、ここで、R’は、-Hであってもよく、または-C1~C6アルキルであってもよい。
【0285】
-C1~C6アルキル基は、1~6個の炭素原子からなるあらゆる直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換炭化水素を含む。-C1~C6アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、アセチレニル、ペンチニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニルおよび3-ヘキシニル基が挙げられるが、これらに限定されない。置換-C1~C6アルキル基は、いずれの適用可能な化学部分構造を含んでいてもよい。上に列挙したいずれかの-C1~C6アルキル基上に置換されて存在することがある基の例としては、次の例が挙げられるがこれらに限定されない:ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、-OH、-CN、-COOR’、-OC(O)R’、-NHR’、N(R’)2、-NHC(O)R’または-C(O)NHR’基。上でR’と示した基は、-Hであってもよく、またはいずれの-C1~C6アルキルであってもよい。
【0286】
アリール基は、あらゆる非置換または置換フェニルまたはナフチル基を含む。いずれかの(ay)アリール基上に置換されて存在することがある基の例としては、ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、-OH、-CN、-COOR’、-OC(O)R’、NHR’、N(R’)2、-NHC(O)、R’、または-C(O)NEtR’が挙げられるが、これらに限定されない。R’と示した基は、-Hであってもよく、またはいずれの-C1~C6アルキルであってもよい。
【0287】
C3~C7シクロアルキル基は、あらゆる3員、4員、5員、6員または7員置換または非置換非芳香族環状炭素を含む。C3~C7シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプタニル、1,3-シクロヘキサジエニル、-1,4-シクロヘキサジエニル、-1,3-シクロヘプタジエニル、および-1,3,5-シクロヘプタトリエニル基が挙げられるが、これらに限定されない。C3~C7シクロアルキル基上に置換されて存在することがある基の例としては、-ハロ、-C1~C6アルキル、-O-(C1~C6アルキル)、-OH、-CN、-COOR’、-OC(O)R’、NHR’、N(R’)2、-NHC(O)R’または-C(O)NHR’基が挙げられるが、これらに限定されない。上でR’と示した基は、-Hまたはあらゆる非置換-C1~C6アルキルを含み、その例は上に列挙されている。
【0288】
ハロ基は、あらゆるハロゲンを含む。例としては、-F、-Cl、-Br、または-Iが挙げられるが、これらに限定されない。
複素環は、酸素(O)、硫黄(S)または窒素(N)から選択される少なくとも1つのヘテロ原子が割り込んでいる、場合により置換されているいずれの飽和、不飽和または芳香族環式部分構造であってもよい。複素環は、単環式の環であってもよく、または多環式の環であってもよい。例えば、適する置換基としては、ハロゲン、ハロゲン化-C1~C6アルキル、ハロゲン化-C1~C6アルコキシ、アミノ、アミジノ、アミド、アジド、シアノ、グアニジノ、ヒドロキシル、ニトロ、ニトロソ、尿素、OS(O)2R、OS(O)2OR、S(O)2OR S(O)0~2R、C(O)OR(ここで、Rは、H、C1~C6アルキル、アリールまたは3~10員複素環であってもよい)、OP(O)OR1OR2、P(O)OR1OR2、SO2NR1R2、NR1SO2R2 C(R1)NR2 C(R1)NOR2(R1およびR2は、独立して、H、C1~C6アルキル、アリールまたは3員~10員複素であってもよい)、NR1C(O)R2、NR1C(O)OR2、NR3C(O)NR2R1、C(O)NR1R2、OC(O)NR1R2が挙げられる。これらの基について、R1、R2およびR3は、各々独立して、H、C1~C6アルキル、アリールまたは3~10員複素環から選択されるか、またはR1およびR2は、それらが結合している原子と一緒になって、3~10員複素環を形成する。
【0289】
複素環基に対する可能な置換基には、ハロゲン(Br、Cl、IまたはF)、シアノ、ニトロ、オキソ、アミノ、C1~4アルキル(例えば、CH3、C2H5、イソプロピル)、C1~4アルコキシ(例えば、OCH3、OC2H5)、ハロゲン化C1~4アルキル(例えば、CF3、CHF2)、ハロゲン化C1~4アルコキシ(例えば、OCF3、OC2F5)、COOH、COO-C1~4アルキル、CO-C1~4アルキル、C1~4アルキル-S-(例えば、CH3S、C2H5S)、ハロゲン化C1~4アルキル-S-(例えば、CF3S、C2F5S)、ベンジルオキシ、およびピラゾリルが含まれる。
【0290】
複素環の例としては、アゼピニル、アジリジニル、アゼチル、アゼチジニル、ジアゼピニル、ジチアジアジニル、ジオキサゼピニル、ジオキソラニル、ジチアゾリル、フラニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、モルホリニル、モルホリノ、オキセタニル、オキサジアゾリル、オキシラニル、オキサジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピペリジル、ピペリジノ、ピリジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピロリジニル、チアトリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、チエニル、テトラジニル、チアジアジニル、トリアジニル、チアジニル、チオピラニル フロイソオキサゾリル、イミダゾチアゾリル、チエノイソチアゾリル、チエノチアゾリル、イミダゾピラゾリル、シクロペンタピラゾリル、ピロロピロリル、チエノチエニル、チアジアゾロピリミジニル、チアゾロチアジニル、チアゾロピリミジニル、チアゾロピリジニル、オキサゾロピリミジニル、オキサゾロピリジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピラジニル、プリニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジニル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾオキサチオリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジチオリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、フロピリミジニル、フロピリジル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、チエノピリミジニル、チエノピリジル、ベンゾチエニル、シクロペンタオキサジニル、シクロペンタフラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾチアジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾピラニル、ピリドピリダジニル、およびピリドピリミジニル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0291】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるベンズアミド化合物は、ヒストンデアセチラーゼ、特に、HDAC3およびHDAC6を標的にする。HDAC3は、免疫系応答の調節に関与する。がん細胞上でのUL16結合タンパク質(ULBP)のようなNKG2Dリガンドの発現は、ナチュラルキラーおよびT細胞によるそれらの認識および除去をもたらす(Lopez-Soto 2009)。HDAC3は、自然および適応免疫応答を回避するためにがん細胞が利用しうるエピジェネティックメカニズムをもたらす、上皮がん細胞におけるULBP発現の阻害剤であり、これは、がんに対する免疫細胞応答を増強するための新規戦略としてのHDAC3の阻害を示唆する。つい最近、HDAC3は、化学療法抵抗性卵巣がん細胞におけるOX-40Lおよび4-1BBLの発現低減ならびに免疫抑制分子プログラム死リガンド-1(PD-L1/CD274)の発現増加に関与することが判明した(Cacan、2017)。
【0292】
HDAC6阻害は、MHCクラスIを含む腫瘍特異的免疫原性シグナルを増加させること、および公知メラノソーム腫瘍抗原の発現増加が証明された(Woan、2015)。HDAC6は、共抑制性分子プログラム死受容体リガンド1(PD-L1)の調節にも関与する。このタンパク質は、T細胞活性化および増殖を抑制する、T細胞上に存在するPD-1受容体の天然リガンドの1つである。PD-L1が、がん細胞上に存在し、その過剰発現が、いくつかの悪性腫瘍において予後不良に関連することを、多数の研究が実証している。HDAC6の阻害は、腫瘍PD-L1を減少させ、がんに対する免疫応答を増大させる治療を増強することができる。
【0293】
ベンズアミド化合物でのHDAC3およびHDAC6の選択的かつ標的化された阻害は、有意な直接的抗がん活性をもちろん、自然および適応免疫を増強する強力なエピジェネティック免疫調節活性も有しうる。これらの特性は、がん患者に単一の薬剤とチェックポイント阻害剤の組合せの臨床的恩恵の可能性をもたらす。
【0294】
以下の実施例によって本発明をさらに例証するが、以下の実施例を限定とみなすべきではない。図はもちろん、本出願の至る所で引用するすべての参考文献、特許および公開特許出願の内容も、あらゆる目的でそれら全体が参照により本明細書に組み入れる。
【実施例】
【0295】
実施例における要素および行為は、単純化に配慮して本発明を例証することを目的としたものであり、そのような要素および行為を、必ずしもいずれか特定の順序または実施形態に従って行っていない。実施例は、本発明者が本発明の所有権を確立することを意図したものでもある。
【0296】
実施例1
ID#24と抗PD-1抗体とを含む組成物の抗転移活性
方法
6週齢メスbalb/cマウスの右側腹部に、4T1-luc2マウス乳腺腫瘍(細胞おおよそ1×106個/マウス)の懸濁液を含有する、0.1mLの50%RPMI/50%Matrigel(商標)(BD Biosciences;Bedford,、MA)混合物を皮下接種した。4T1-luc2乳腺腫瘍は、強化光を生じさせるためにホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc2ベクター)を安定的にトランスフェクトした、マウス乳腺由来の腺癌腫細胞株を発現するルシフェラーゼ株である。したがって、ルシフェラーゼ誘起発光が、これらの細胞の検出方法でありうる。
【0297】
接種の8日後、デジタルノギスを使用して腫瘍を測定した。このノギスを使用して、腫瘍径の幅および長さを測定した。測定値を、動物研究管理ソフトウェア、Study Director V.2.1.1(Study Log)を使用してデジタル記録した。次の式を用いて腫瘍体積を算出した:
【0298】
【0299】
(式中、「b」は最小径であり、「a」は最大径である)。306~519mm3の腫瘍体積を有するマウスを、8匹ずつのマウス群に、各群がおおよそ450mm3の1日目平均腫瘍体積(Study Directorを使用して算出)を有するように無作為に釣り合わせることにより、無作為に割り当てた。腫瘍体積を、マウスを無作為化したときに記録し、週3回記録を取った。
【0300】
処置は、実験の1日目に開始した。化合物ID#24での処置を研究終了まで強制経口投与により施した。抗マウスPD-1(CD279、クローンJ43)(PD-1阻害剤)抗体および抗マウスCTLA4(CD152、クローン9H10)(CTLA4阻害剤)抗体を1日おきに8日間、腹腔内投与した。この実験における処置群は、以下のものであった:
・第1群:化合物ID#24ビヒクル対照(PO)+アイソタイプ対照 0.25mg/用量(IP)
・第3群:PD-1阻害剤 0.25mg/用量(IP)
・第4群:化合物ID#24 50mg/kg(PO)+アイソタイプ対照 0.25mg/用量(IP)
・第6群:化合物ID#24 50mg/kg(PO)+PD-1阻害剤 0.25mg/用量(IP)
・第7群:CTLA4阻害剤 0.25mg/用量(IP)+PD-1阻害剤 0.25mg/用量(IP)
・第8群:化合物ID#24 50mg/kg(PO)+CTLA4阻害剤 0.25mg/用量(IP)+PD-1阻害剤 0.25mg/用量(IP)。
【0301】
対照腫瘍が≧2300mm
3の平均値に達したら、マウスを安楽死させ、肺組織を採取し、自然肺転移を(発光強度によって検出して)評価した。安楽死の30分前に、マウスに150mg/kgのルシフェリンを腹腔内注射した。肺をルミノメーターに入れ、発光強度を読み取った。
結果
図1および3に示されているように、ベンズアミド化合物、化合物ID#24、とPD-1阻害剤抗体の組合せは、個々の処置より高レベルの腫瘍細胞成長阻害を生じさせた。したがって、PD-1阻害剤と化合物#24の併用処置には、4T1腫瘍細胞に対して相乗的抗がん効果がある。
【0302】
興味深いことに、
図3に示されているように、CTLA4阻害剤の追加は、さらにいっそう大きい相乗的結果を生じさせた。PD-1阻害剤とCTLA4阻害剤の併用処置は、各阻害剤の腫瘍成長阻害を減じさせたが、化合物#24の追加は、腫瘍細胞成長阻害の有効性を回復させ、増強した。
【0303】
同様の相乗作用結果が、自然肺転移の存在に対する様々な処置の効果を評価した際に観察された(
図4および6を参照されたい)。このように、ベンズアミド化合物、化合物ID#24、とPD-1阻害剤の組合せは、腫瘍細胞転移の阻害に関して相乗的特性を有する(
図4)。
【0304】
化合物ID#24とPD-1阻害剤とCTLA4阻害剤の組合せもまた腫瘍細胞転移の相乗的阻害を生じさせる(
図6)。
実施例2
ID#24とCTLA4阻害剤とを含む組成物の抗腫瘍細胞成長および抗転移活性
方法
6週齢メスbalb/cマウスの右側腹部に、4T1-luc2マウス乳腺腫瘍(細胞おおよそ1×10
6個/マウス)の懸濁液を含有する、0.1mLの50%RPMI/50%Matrigel(商標)(BD Biosciences;Bedford,、MA)混合物を皮下接種した。4T1-luc2乳腺腫瘍は、強化光を生じさせるためにホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc2ベクター)を安定的にトランスフェクトした、マウス乳腺由来の腺癌腫細胞株を発現するルシフェラーゼ株である。したがって、ルシフェラーゼ誘起発光が、これらの細胞の検出方法でありうる。
【0305】
接種の8日後、デジタルノギスを使用して腫瘍を測定した。このノギスを使用して、腫瘍径の幅および長さを測定した。測定値を、動物研究管理ソフトウェア、Study Director V.2.1.1(Study Log)を使用してデジタル記録した。次の式を用いて腫瘍体積を算出した:
【0306】
【0307】
(式中、「b」は最小径であり、「a」は最大径である)。306~519mm3の腫瘍体積を有するマウスを、8匹ずつのマウス群に、各群がおおよそ450mm3の1日目平均腫瘍体積(Study Directorを使用して算出)を有するように無作為に釣り合わせることにより、無作為に割り当てた。腫瘍体積を、マウスを無作為化したときに記録し、週3回記録を取った。
【0308】
処置は、実験の1日目に開始した。化合物ID#24での処置を研究終了まで強制経口投与により施した。抗マウスCTLA4(CD152、クローン9H10)(CTLA4阻害剤)抗体および抗マウスPD1(CD279、クローンJ43)(PD1阻害剤)抗体を1日おきに8日間、腹腔内投与した。この実験における処置群は、以下のものであった:
・第1群:化合物ID#24ビヒクル対照(PO)+アイソタイプ対照 0.25mg/用量(IP)
・第2群:CTLA阻害剤 0.25mg/用量(IP)
・第4群:化合物ID#24 50mg/kg(PO)+アイソタイプ対照 0.25mg/用量(IP)
・第5群:化合物ID#24 50mg/kg(PO)+CTLA4阻害剤 0.25mg/用量(IP)
・第7群:CTLA阻害剤 0.25mg/用量(IP)+PD1阻害剤 0.25mg/用量(IP)
・第8群:化合物ID#24 50mg/kg(PO)+CTLA4阻害剤 0.25mg/用量(IP)+PD1阻害剤 0.25mg/用量(IP)。
【0309】
対照腫瘍が≧2300mm
3の平均値に達したら、マウスを安楽死させ、肺組織を採取し、自然肺転移を(発光強度によって検出して)評価した。安楽死の前に、マウスに150mg/kgのルシフェリンを腹腔内注射した。肺をルミノメーターに入れ、発光強度を読み取った。
結果
図2に示されているように、ベンズアミド化合物、化合物ID#24、とCTLA4阻害剤抗体の組合せは、個々の処置より高レベルの腫瘍細胞成長阻害を生じさせた。したがって、CTLA4阻害剤と化合物#24の組合せには、4T1腫瘍細胞に対する相乗的抗がん効果がある。興味深いことに、
図3に示されているように、PD1阻害剤の追加は、さらにいっそう大きい相乗的結果を生じさせた。CTLA4阻害剤とPD1阻害剤の併用処置は、各阻害剤の腫瘍成長阻害を減じさせたが、化合物ID#24の追加は、腫瘍細胞成長阻害の有効性を回復させ、増強した(
図3)。
【0310】
同様の相乗作用結果が、自然肺転移の存在に対する様々な処置の効果を評価した際に観察された(
図5~6を参照されたい)。このように、ベンズアミド化合物、化合物ID#24、とCTLA4阻害剤の組合せは、腫瘍細胞転移の阻害に関して相乗的特性を有する(
図5)。
【0311】
化合物ID#24とCTLA4阻害剤とPD1阻害剤の組合せもまた腫瘍細胞転移の相乗的阻害を生じさせる。
実施例3
細胞生存率に対するベンズアミド化合物の効果
様々な濃度のベンズアミド化合物の存在下の異なる時点での細胞生存率を使用して、化合物の細胞傷害性および細胞増殖に対する効果を評価した。ヒト急性白血病細胞株(HL-60)におけるベンズアミド化合物についてのIC50(またはパーセント活性)データを表2に要約する。
【0312】
【0313】
細胞生存率アッセイ-細胞生存率を、CellTiter-Glo(登録商標)細胞生存率アッセイPromega(Madison、Wis.)によって測定した。CellTiter-Glo(登録商標)Luminescenct Cell Viability Assayは、代謝活性細胞の存在を示す、存在するATPの定量に基づいて培養中の生細胞の数を決定するホモジニアス法である。処置後、CellTiter-Glo(登録商標)を処置ウェルに添加し、37℃でインキュベートする。Molecular Devices Spectramaxマイクロプレートリーダーを使用して発光値を測定した。
【0314】
単剤研究-細胞を集密度70%に増殖させ、トリプシン処理し、計数し、96ウェル平底プレートに細胞2.5×103~5×103個/ウェルの最終濃度で播種した(0日目)。最大接着を可能にするために細胞を増殖培地中で24時間インキュベートしておいた。試験薬剤または基準薬剤での処置は、1日目に開始して72時間継続した。72時間の時点で、処置剤含有培地を除去した。上で説明したようにCellTiter-Glo(登録商標)細胞生存率アッセイにより生細胞数を定量した。同じ濃度を3回ずつ用いて実験を行って成長阻害活性を判定した。これらの研究からの結果を使用して、各化合物についてのIC50値(対照の細胞増殖を50パーセント阻害する薬物の濃度)を算出した。
【0315】
データ収集-単剤および組合せ研究のために、各実験からデータを収集し、次の計算:
細胞増殖率(%)=(f試験/fビヒクル)×100
を使用して細胞増殖率(%)として表した。この式中のf試験は、被験試料の発光であり、fビヒクルは、薬物を溶解した溶媒の発光である。Prism 6ソフトウェア(GraphPad)を使用して、用量反応グラフおよびIC50値を生成した。
【0316】
実施例4
ID#24と抗4-1BBとを含む組成物の抗腫瘍細胞成長活性
【0317】
【0318】
【0319】
【0320】
【0321】
この研究の過程にわたっての腫瘍体積の変化を
図7に示す。
実施例5
ID#24と抗GITRとを含む組成物の抗腫瘍細胞成長活性
【0322】
【0323】
【0324】
【0325】
【0326】
この研究の過程にわたっての腫瘍体積の変化を
図8に示す。
実施例6
相乗性
ベンズアミド化合物とDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤間の相乗作用を試験するために、5-アザシチジン(azacytidine)と組み合わせた本発明の異なるベンズアミド化合物のHL-60細胞に対するIC
50を評価した。
【0327】
実験ごとに、薬物の組合せについてのED50、ED75、ED90およびED95(効果、例えば、細胞増殖の50%、75%、90%および95%低減を生じさせる薬物の組合せの用量)でのCI値を算出した。様々な組合せについての相乗因子(CI値)を下の表3に要約する。CI値は、プログラムCompuSyn(CompuSyn、Paramus、N.J.)を使用して算出した。CI値は、<0.90であった。これは、ベンズアミド化合物とDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤間の相乗作用を示す。
【0328】
【0329】
実施例7
ID#24とDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤とを含む組成物の抗腫瘍細胞成長活性
化合物ID#24を、FDA認可抗がん薬VIDAZA(登録商標)(5-アザシチジン(azacytidine))と組み合わせて試験した。簡単に言うと、メス胸腺欠損ヌードマウスに、100μLの全体積での50%マトリゲルと50%組織培養培地の混合物に懸濁させたMV-4-11ヒト急性骨髄性白血病細胞5×106個を接種した。接種の18日後、マウスをペアマッチングして、1群当り257mm3の平均腫瘍重量で1群当り5匹の6群にした。
【0330】
第1群(G1)は、数日間、毎日、ビヒクルのみで処置した。第2群(G2)は、13日目まで毎日、50mg/kgの例#24(すなわち、化合物ID#24)で経口的に処置した。第3群(G3)は、13日間、毎日、100mg/kgの例#24で処置した。第4群(G4)は、毎日の4.0mg/kgのアザシチジン(azacitidine)×4、休薬1日で、3サイクルにわたって処置した。第5群(G5)は、13日間、毎日、50mg/kgの例#24、加えて4.0mg/kgの5-アザシチジン(azacytidine)で処置した。第6群(G6)は、13日間、毎日、100mg/kgの例#24、加えて4.0mg/kgの5-アザシチジン(azacytidine)で処置した。ビヒクルおよび例#24を強制経口投与によって経口投与した。
【0331】
体重および腫瘍の測定値を週2回収集した。腫瘍の幅および長さをミリメートルで測定し、式(幅
2×長さ/2)=腫瘍体積(mm
3)を使用して腫瘍体積(平方ミリメートルで)に変換した。化合物ID#24は、5-アザシチジン(azacytidine)と組み合わせたとき有意に優れた抗がん活性を明示した(
図9を参照されたい)。これらの結果は、in vitroで観察されたベンズアミド化合物とDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の組合せでの相乗作用をさらに確証する(実施例6を参照されたい)。
【0332】
【0333】
【配列表】