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特許7080235プラスチックボトルを含む加圧式ディスペンスシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】プラスチックボトルを含む加圧式ディスペンスシステム
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/70 20060101AFI20220527BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B65D83/70
B65D1/02 210
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019528804
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2017063826
(87)【国際公開番号】W WO2018102481
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】15/367,651
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500106743
【氏名又は名称】エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100140327
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 千秋
(72)【発明者】
【氏名】ウォラック、 クリストファー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレア、 カサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】マクグラス、 ダニエル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ステンマーク、 ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、 キンバリー ジェイ.
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02205614(GB,A)
【文献】国際公開第2011/090457(WO,A1)
【文献】特開2009-227286(JP,A)
【文献】特開2013-249073(JP,A)
【文献】特開2013-249074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/70
B65D 1/02
B65D 83/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プラスチックボトルと、
(B)圧着リングに圧着されたバルブと、
(C)前記プラスチックボトルと前記バルブとの間に封止が形成されるように上面と前記バルブとの間に位置するガスケットと、
を含み、
前記プラスチックボトルは、
(a)前記プラスチックボトルの底端部にある基底部と、
(b)前記プラスチックボトルの頂端部に向かって前記基底部から前記プラスチックボトルの軸を中心に延びる本体部と、
(c)前記本体部から前記プラスチックボトルの頂端部に前記プラスチックボトルの軸を中心に延びる縁部と、
を含み、
前記縁部は、
(i)前記縁部の隣接した表面から外側に延びる圧着リングと、
(ii)前記上面から延びる第1封止突起と、
(iii)前記上面から延びる第2封止突起と、
を含み、
前記圧着リングは、前記プラスチックボトルの上面及び前記プラスチックボトルの外面を形成し、
前記第2封止突起は、前記第1封止突起の前記プラスチックボトルの軸からの位置よりも、前記プラスチックボトルの軸からさらに離れた位置にあり、
少なくとも1つのスロットは、前記外面から内側に延び、前記少なくとも1つのスロットは、前記第2封止突起の前記プラスチックボトルの軸からの位置よりも、前記プラスチックボトルの軸からさらに離れた位置にある前記上面に隣接した第1部分を含み、前記少なくとも1つのスロットは、前記縁部の隣接した表面と軸から同一の距離にある第2部分を含む、加圧式ディスペンスシステム。
【請求項2】
前記ガスケットは、前記上面と前記バルブとの間の空間を実質的に満たすように圧縮される、請求項1に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項3】
前記圧縮されたガスケットは、前記第1封止突起と、前記第2封止突起と、前記バルブの第1表面と、前記バルブの前記第1表面に対向するように位置する前記バルブの第2表面と、前記第1表面と第2表面との間に広がる前記バルブの表面の全長とに接触する、請求項2に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項4】
前記ガスケットは、ブチルガスケットである、請求項1に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項5】
前記第1部分は前記圧着リングの軸方向の長さの半分より短く延び、前記第2部分は前記圧着リングの軸方向の長さの半分より長く延びる、請求項1に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項6】
前記圧着リング内に2~4つのスロットが設けられる、請求項1に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項7】
(A)プラスチックボトルと、
(B)圧着リングを中心に延びるバルブと、
(C)上面と前記バルブとの間に位置して前記プラスチックボトルを封止するガスケットと、
を含み、
前記プラスチックボトルは、
(a)前記プラスチックボトルの底端部にある基底部と、
(b)前記プラスチックボトルの頂端部に向かって前記基底部から前記プラスチックボトルの軸を中心に延びる本体部と、
(c)前記本体部から前記プラスチックボトルの頂端部に前記プラスチックボトルの軸を中心に延びる縁部と、
を含み、
前記縁部は、
(i)前記縁部の隣接した表面から外側に延びる圧着リングと、
(ii)前記上面から延びる第1封止突起と、
(iii)前記上面から延びる第2封止突起と、
を含み、
前記圧着リングは、前記プラスチックボトルの上面及び前記プラスチックボトルの外面を形成し、
前記第2封止突起は、前記第1封止突起の前記プラスチックボトルの軸からの位置よりも、前記プラスチックボトルの軸からさらに離れた位置にあり、
少なくとも1つのスロットは、前記外面から内側に延び、前記少なくとも1つのスロットは、前記上面から延びる第1部分と、前記第1部分の下の第2部分とを含み、前記第2部分は、前記第1部分が前記プラスチックボトルの軸から離れた距離よりも前記プラスチックボトルの軸からさらに短い距離にある、加圧式ディスペンスシステム。
【請求項8】
前記ガスケットは、前記上面と前記バルブとの間の空間を実質的に満たすように圧縮される、請求項に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項9】
前記圧縮されたガスケットは、前記第1封止突起と、前記第2封止突起と、前記バルブの第1表面と、前記バルブの前記第1表面に対向するように位置する前記バルブの第2表面と、前記第1表面と第2表面との間に広がる前記バルブの表面の全長とに接触する、請求項に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項10】
前記ガスケットは、ブチルガスケットである、請求項に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項11】
前記第1部分は前記圧着リングの軸方向に長さの半分より短く延び、前記第2部分は前記圧着リングの軸方向の長さの半分より長く延びる、請求項に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項12】
前記圧着リング内に2~4つのスロットが設けられる、請求項に記載の加圧式ディスペンスシステム。
【請求項13】
(a)ボトルの底端部にある基底部と、
(b)前記ボトルの頂端部に向かって前記基底部から前記ボトルの軸を中心に延びる本体部と、
(c)前記本体部から前記ボトルの頂端部に前記ボトルの軸を中心に延びる縁部と、
を含み、
前記縁部は、
(i)前記縁部の隣接した表面から外側に延びる圧着リングと、
(ii)上面から延びる第1封止突起と、
(iii)前記上面から延びる第2封止突起と、
を含み、
前記圧着リングは、前記ボトルの上面及び前記ボトルの外面を形成し、
前記第2封止突起は、前記第1封止突起の前記ボトルの軸からの位置よりも、前記ボトルの軸からさらに離れた位置にあり、
少なくとも1つのスロットは、前記外面から内側に延び、前記少なくとも1つのスロットは、前記第2封止突起の前記ボトルの軸からの位置よりも、前記ボトルの軸からさらに離れた位置にある前記上面に隣接した第1部分を含み、前記少なくとも1つのスロットは、前記縁部の隣接した表面と軸から同一の距離にある第2部分を含む、プラスチックボトル。
【請求項14】
(a)ボトルの底端部にある基底部と、
(b)前記ボトルの頂端部に向かって前記基底部から前記ボトルの軸を中心に延びる本体部と、
(c)前記本体部から前記ボトルの頂端部に前記ボトルの軸を中心に延びる縁部と、
を含み、
前記縁部は、
(i)前記縁部の隣接した表面から外側に延びる圧着リングと、
(ii)上面から延びる第1封止突起と、
(iii)前記上面から延びる第2封止突起と、
を含み、
前記圧着リングは、前記ボトルの上面及び前記ボトルの外面を形成し、
前記第2封止突起は、前記第1封止突起の前記ボトルの軸からの位置よりも、前記ボトルの軸からさらに離れた位置にあり、
少なくとも1つのスロットは、前記外面から内側に延び、前記少なくとも1つのスロットは、前記上面から延びる第1部分と、前記第1部分の下の第2部分とを含み、前記第2部分は、前記第1部分が前記ボトルの軸から離れた距離よりも前記ボトルの軸からさらに短い距離にある、プラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にプラスチックボトルを含む加圧式ディスペンスシステム(pressurized dispensing system)に関する。このようなシステムは、例えばエアゾールスプレーを放出するために使用することができる。より具体的には、本発明は、加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルを含むディスペンスシステムに関し、ボトルが高温(elevated temperature)にさらされたときに制御された方式でガスが抜け出すようにするスロットを含むボトル縁部(bottle finish)を有し、ボトルは非高温(non-elevated temperatures)(例えば、室温)で効果的に封止される。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品を放出するために使用されるシステムのような加圧式ディスペンスシステムは、一般にシステムから放出される前に加圧下で製品を収容するための金属(例えば、スチール又はアルミニウム)容器を含む。このようなシステムで放出される製品の例には、空気清浄剤、布地清涼剤、昆虫忌避剤、塗料、ボディスプレー、ヘアスプレー、靴又は履物スプレー製品、ホイップクリーム及びプロセスチーズが含まれる。最近、プラスチックボトルは、いくつかの潜在的利点を有するため、加圧式ディスペンスシステムにおける金属容器の代替物としてプラスチックボトルを使用することへの関心が高まっている。例えば、プラスチックボトルは、金属容器よりも製造が容易で安価であり、プラスチックボトルは、金属容器よりも多様な興味深い形状に製造することができる。
【0003】
加圧式ディスペンスシステムが加熱されると、システムの容器内の圧力が上昇及び/又は容器の体積が増加する。製品を収容するためのプラスチックボトルを使用するシステムでは、システムが高温(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)で作られたプラスチックボトルの場合、70°C)にさらされると、ボトルの体積が増加する可能性がある。増加した体積は、ボトル全体にわたって対称的かつ均等に分散しない可能性がある。例えば、プラスチックボトルは、ある領域では外側に膨らむが、他の領域では膨らまないことがある。このプラスチックボトルの膨らみは、バルブのボトルへの取り付けが緩むほどのゆがみをボトルにもたらすことがあり、潜在的に危険な状態となり得る。最終的に、ボトルがますます大きくゆがむにつれて、バルブがボトルの頂部から外れて発射体となり、ボトルの近くにいる人を傷つける可能性がある。
【0004】
米国特許第5,199,615号は、ディスペンサが高温にさらされたときにバルブがボトルから外れる問題を軽減するのを助けるように設計された圧力緩和機構を有するプラスチックボトルを含むエアゾールディスペンサを開示している。特に、バルブが取り付けられたボトルの縁部(finish)は、複数のスロットを備えている。ボトル及びバルブは、ボトルが加熱されたときに、ディスペンサの外側にスロットを介して通路が生成されるように構成される。通路は、ボトル内のガスが急速に放出されるのを可能にし、それにより圧力が緩和されてボトルの頂部からバルブが外れない。
【0005】
米国特許第5,199,615号の圧力緩和スロットは、システムが加熱されたときにバルブがボトルの頂部から外れる可能性を低減することができるが、その特許に示されたスロットの構成は、ボトルとバルブとの間に形成される封止が効果的でないことを見出した。そのため、縁部に任意の軽度な欠陥があると、ボトル内のガスがシステムから漏れる可能性がある。特に、ほんの数分の間に大幅な圧力低下をもたらす可能性がある。加圧式ディスペンスシステムは、数年の有効保存期間を有する製品にしばしば使用されるため、これは非常に望ましくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、本発明は、ボトルの底端部にある基底部(base)と、ボトルの頂端部に向かって基底部からボトルの軸を中心に延びる本体部と、本体部からボトルの頂端部にボトルの軸を中心に延びる縁部と、を含むプラスチックボトルを有するエアゾールシステムを提供する。縁部は、縁部の隣接した表面から外側に延びる圧着リング(crimp ring)を含み、圧着リングは、ボトルの上面及びボトルの外面を形成する。縁部はまた、上面から延びる第1封止突起と、上面から延びる第2封止突起とを含み、第2封止突起は、第1封止突起のボトルの軸からの位置よりも、ボトルの軸からさらに離れた位置にある。少なくとも1つのスロットは、外面から内側に延び、少なくとも1つのスロットは、第2封止突起のボトルの軸からの位置よりも、ボトルの軸からさらに離れた位置にあり上面に隣接した第1部分を含み、少なくとも1つのスロットは、縁部の隣接した表面と軸から同一の距離にある第2部分を含む。バルブは圧着リングに圧着され(crimped)、ガスケットはボトルとバルブとの間に封止が形成されるように上面とバルブとの間に配置される。
【0007】
また別の態様によれば、本発明は、ボトルの底端部にある基底部と、ボトルの頂端部に向かって基底部からボトルの軸を中心に延びる本体部と、本体部からボトルの頂端部にボトルの軸を中心に延びる縁部と、を含むプラスチックボトルを有するエアゾールシステムを提供する。縁部は、縁部の隣接した表面から外側に延びる圧着リングを含み、圧着リングは、ボトルの上面及びボトルの外面を形成する。縁部はまた、上面から延びる第1封止突起と、上面から延びる第2封止突起とを含み、第2封止突起は、第1封止突起のボトルの軸からの位置よりも、ボトルの軸からさらに離れた位置にある。少なくとも1つのスロットは、外面から内側に延び、少なくとも1つのスロットは、上面から延びる第1部分と、第1部分の下の第2部分とを含み、第2部分は、第1部分がボトルの軸から離れた距離よりもボトルの軸からさらに短い距離にある。バルブは、圧着リングを中心に延び、ガスケットは、上面とバルブとの間に配置されてボトルを封止する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態によるボトルの側面図である。
図2図1に示したボトルの平面図である。
図3図2に示す線3-3に沿って見た図1及び図2に示したボトルの縁部の一部の断面図である。
図4図1に示したボトルの縁部に圧着されたバルブの断面図であり、断面は、図1に示す線4-4に沿って見たものである。
図5】圧力緩和スロットを含む縁部の部分を介して見た図4に示す縁部に圧着されたバルブの詳細図である。
図6A】ボトルが高温にさらされたときの図4及び図5に示す圧着されたバルブ及び縁部の一部の断面図である。
図6B】ボトルが高温にさらされたときの図4及び図5に示す圧着されたバルブ及び縁部の一部の断面図である。
図7】本発明の実施形態によるボトルに関する試験結果を示す。
図8】本発明の一実施形態によるボトル及び比較ボトルに関する試験結果を示す。
図9】本発明の実施形態による加圧式ディスペンスシステムの側面図である。
図10】線10-10線に沿って見た図9に示す加圧式ディスペンスシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、一般にプラスチックボトルを含む加圧式ディスペンスシステムに関する。より具体的には、本発明は、加圧下で製品を収容するためのプラスチックボトルを含むディスペンスシステムに関し、ボトルが高温にさらされたときに制御された方式でガスが抜け出すようにするスロットを含むボトル縁部を有し、ボトルは、非高温(例えば、室温)で効果的に封止される。
【0010】
以下の説明では、エアゾールディスペンスシステムの特定の状況において本発明の特徴を説明する。しかしながら、当業者は、本発明がエアゾール製品との使用に限定されないことを容易に理解できるはずである。むしろ、本明細書に記載された加圧式ディスペンスシステムは、エアゾール以外の製品と共に代替的に使用することができる。例えば、本明細書に記載のディスペンスシステムは、シェービングクリーム又は石けんなどの泡製品を放出するために使用されてもよく、又はソーダ、ホイップクリーム、又はプロセスチーズなどの食品を放出するのに使用されてもよい。
【0011】
図1は、本発明の実施形態によるエアゾール製品を放出するためのボトル100を示す。明確にするために、この図は、ボトル100を含む完全なディスペンスシステムの部分になり得る構成要素の一部を含まない。例えば、スプレー機構は、図1のボトル100の頂部に示されておらず、ボトル100は、その底部にボトル100の直立を可能にする構造(例えば、ベースカップ)を含まない。ボトル100を使用するディスペンスシステムのより完全な説明は、以下に記載される。
【0012】
この実施形態におけるボトル100は、プラスチック材料から作られる。従って、ボトル100は、例えば、当技術分野において周知の射出成形、圧縮成形、及び/又はブロー成形技術を用いて形成されてもよい。射出成形及びブロー成形の工程では、プラスチックプリフォーム(preform)は、まず射出成形を使用して形成される。その後、プラスチックプリフォームは加熱されてボトル100の最終形状に延伸ブロー成形される。このようなプラスチックのいくつかの例には、分岐型(branched)又は線状PET、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)及び他のポリエステルなどのポリオレフィン(PO)、及びそれらの混合物(ブレンド)を含む。図1に示されるボトル100の形状、サイズ、及び割合は、単なる例示であることに留意されたい。実際に、ボトル100を形成するためにプラスチックを使用する利点の1つは、プラスチックが多種多様な形状及びサイズに成形され得る点である。
【0013】
ボトル100は、上端部102、下端部106、及び上端部102と下端部106との間の本体部104を含む。この実施形態では、ボトル100の本体部104は、円形であり、軸A1を中心に延びる。上端部102は、ボトル100の開口部112を囲む圧着リング110を有する縁部108を含む。以下に詳細に説明されるように、圧力緩和スロット116は圧着リング110に設けられ、バルブ(図示せず)はバルブをボトル100にしっかり取り付けるために圧着リング110に圧着されてもよい。図1に示した特定のボトル100では、本体部104は、軸A1からボトル100の下端部106に向かってわずかに外側に曲がっている。しかし、他の実施形態では、ボトル100の本体部104は、他の形状に形成される。例えば、ボトル100は、本体部104の全長にわたって円筒形であってもよい。丸みを帯びた底部114が、ボトル100の下端部106に形成される。ボトル100の直立を可能にするために、追加の構造(例えば、ベースカップ)を、丸みを帯びた底部114として設けてもよい。しかし、他の実施形態では、ボトル100の底部114は、底部114に取り付けられる追加の構造を設けることなく、ボトルが直立できるように他の形状に形成されてもよい。
【0014】
図2は、ボトル100の平面図である。この図では、圧着リング110の上面111の詳細を見ることができる。上面111から延びるのは、第1封止リング118及び第2封止リング120である。以下でより十分に説明されるように、バルブがボトル100に圧着されるとき、封止リング118,120はガスケットと結合し、それによって内容物がボトル100の外に漏れ出るのを防ぐ封止を作り出す。2つの封止リング118,120を有することは、封止リング118,120のうちの1つに任意の欠陥があっても適切な封止が形成されることを確実にする。図2にも見られるように、圧着リング110には2つの圧力緩和スロット116が形成され、2つの圧力緩和スロット116は、ボトル100の両側に配置されている。特に、圧力緩和スロット116は、圧着リング110の外面121からボトル100の軸A1に向かって内側に延びているが、圧力緩和スロット116は、第2封止リング120の軸A1からの位置よりも軸A1にさらに近い位置まで延びない。従って、第2封止リング120は、上面111を完全に囲むように延在し、圧力緩和スロット116によって遮断されない。
【0015】
図2に示すボトル100の実施形態は、2つの圧力緩和スロット116を含む。圧力緩和スロット116の数は、他の実施形態では、例えば2つから4つまで変化してもよい。本発明のまた他の実施形態は、圧着リング110に形成された圧力緩和スロット116を1つだけ含んでいてもよく、本明細書で説明した圧力緩和の効果を依然として達成することができる。同時に、他の実施形態として、ボトル100は他の実施形態では6つの圧力緩和スロット116を有するボトルなど、4つより多い圧力緩和スロット116を有することもできる。また、2つ以上の圧力緩和スロット116が使用される場合、圧力緩和スロット116は、圧着リング110上の異なる位置に設けることができ、圧力緩和スロット116は、必ずしも互いに等距離にある必要はない。
【0016】
図3は、図1及び図2に示す圧力緩和スロット116のうちの1つを介して示した断面図である。圧力緩和スロット116の第1部分122は、ボトル100の軸A1に向かって外面121から距離x1だけ延びる。第1部分122の下で、第2部分124は、軸A1に向かって外面121から距離x2だけ延びる。圧力緩和スロット116は、距離x2が距離x1よりも大きくなるように構成されているので、スロット116内に明確な段差が形成される。また、圧力緩和スロット116の第1部分122は、スロット116の高さzの半分より短く延び、第2部分124は、スロットの高さzの半分より長く延びる。以下でさらに説明するように、第1部分122及び第2部分124を有する圧力緩和スロット116のこのような構成は、システムが高温に加熱されたときに、ボトル100を用いて加圧システムからガスが効果的に放出できるように通路の開放を可能にすることを見出した。また、図2及び図3の両方に示されるように、圧力緩和スロット116の第1部分122内のボトル100の表面119は、第2封止突起120よりもボトル100の軸A1からさらに遠くに位置している。即ち、圧力緩和スロット116の第1部分122は、圧着リング110内に形成されていないので、第2封止突起120の任意の部分が除去される。第2封止突起120は、ボトル100と圧着リング110に圧着されたバルブとの間に良好な封止を形成するのに重要であるので、これは本発明の重要な特徴である。従って、図3に示した圧力緩和スロット116の構成を用いて、システムが過度に加熱されたときにボトル100内圧を軽減するための機構を有すると共に、十分に封止されたシステムを作り出すことができる。
【0017】
圧力緩和スロット116の他の態様は、図3に示されている。例えば、第2部分124内のボトル100の表面123が、ボトル100の隣接する表面126と軸A1から同じ距離になるように、第2部分124は形成される。しかしながら、他の実施形態では、第2の明確な段差が圧力緩和スロット116内に形成されるように、第2部分124は軸A1から隣接する表面126とは異なる距離に形成されることに留意されたい。そして、当業者であれば、図3に示されている2部分の圧力緩和スロット116は、本明細書で説明されている封止機能及び圧力緩和を依然として達成しながら、他の方式に変更可能であることを理解するであろう。
【0018】
図4は、圧着リング110に圧着されたバルブ200と共にボトル100の縁部を示す。バルブ200は、ボトル100内で下へ延びる浸漬管201(dip tube)に接続されたトリガ機構202(trigger mechanism)を含む。ボトル100及びバルブ200を有するシステムでは、ボトル100内の製品は、システムから放出されるにつれて浸漬管201及びトリガ機構202を介して移動する。トリガ機構202及び浸漬管201は、当技術分野において良く知られており、そのため図4には詳細に示されていない。
【0019】
バルブ200は、ボトル100の頂端部102の開口部に設定されたカップ203を含む。カップ203の外側部分204は、ボトル100の上面111を覆って、圧着リング110の周りに延びる。これにより、バルブ200は、ボトル100にしっかり取り付けられる。より具体的には、このようなバルブ200の圧着リング110への圧着により、バルブ200はボトル100にしっかり取り付けられ、バルブ200はボトルが製品と共に加圧されたときに定位置を保持する。ボトル100とバルブ200との間に密封を形成するために、ガスケット300がバルブ200と圧着リング110の上面111との間に位置し、ガスケット300は、バルブ200が圧着リング110に圧着されるときに圧縮される。この密封は、ボトル内の圧力を長時間にわたって保持するのに十分である。
【0020】
図5は、圧着されたバルブ200及び圧力緩和スロット116を有するボトル100の縁部108の一部の断面図である。圧力緩和スロット116の段差のある2部分構成により、第2封止突起120はスロット116に隣接した位置に存在してガスケット300に結合される。また、ガスケット300は、第1封止突起118、バルブ200の第1(内側)表面302、バルブ200の第2(外側)表面304、及び第1表面302と第2表面304との間に延びるバルブ200の表面306の全長に接触するように構成される。即ち、ガスケット300は、圧着リング110の上面111とバルブ200との間の空間のほとんど全てを満たす。ボトル100内圧を長期間(例えば、数ヶ月)にわたって維持するためには、ガスケット300が圧着リング110とバルブ200との間の空間を実質的に満たすようにすると共に、ガスケット300が圧着リング110の上面111の周辺全体で第1封止突起118及び第2封止突起120の両方に結合される必要があることを見出した。そして、上述したように、本発明による圧力緩和スロット116の構成は、第2封止突起120のいかなる部分も圧力緩和スロット116によって除去されないようにする。従って、本発明によるボトル100には、ボトル100とバルブ200との間の封止を妨げることなく圧力緩和スロット116が設けられる。
【0021】
本発明の特定の例示的な実施形態では、ガスケット300はブチルガスケットであり、このようなガスケットの圧縮可能な性質によってうまく機能することを見出した。しかしながら、当業者は、他のタイプのガスケットも使用され得ることを認識するであろう。例えば、ガスケット300は、ゴム、ブナ(buna)、ネオプレン、EPDMゴム、フルオロカーボン、ニトリル、ポリプロピレン、又はポリエチレンで製造することができる。
【0022】
図6A及び図6Bは、ボトル100が高温にさらされている状態を示す縁部108及び圧着されたバルブ200の一部の図である。本明細書で「高温」を指すとき、ボトルの熱変形温度又はそれよりわずかに低い温度を意味する。当業者には理解されるように、プラスチック材料の熱変形温度は、プラスチックが特定荷重下で変形する温度である。熱変形温度は、例えば、ASTM D648又はISO 75規格によって決定することができる。当業者に理解されるように、プラスチック材料は、実際には熱変形温度よりわずかに低い温度で移動し始め、熱変形温度は、プラスチックの特定類型及びプラスチックがどのように加工されるかによって変わる。従って、本明細書におけるボトルの「高温」は、ボトルのプラスチック材料が移動し始める熱変形温度よりわずかに低い温度であろう。そして、本明細書で使用されるように、「非高温」は、プラスチックの移動が始まる高温より下の温度を意味する。一般的には、ボトル100がPETのようなプラスチック材料で作られ、約140PSIGで加圧されるとき、本発明の実施形態では、ボトルは約70°Cの高温又は2時間以上さらされると、このような位置でゆがみが生じ得る。上述したように、ボトル100の縁部108におけるこのゆがみは、プラスチックボトル100が加熱されると、下のプラスチックボトル100の部分が外側に膨らむために発生する。膨張は、多くの場合縁部108の真下のボトル100の部分において特に激しい。従って、縁部108は、図6A及び図6Bに一般的に示されるようにゆがむ。ガスをボトル100の内側から放出させる何らかの圧力緩和機構がない場合、ボトル100が外側に膨らみ続けるにつれて、バルブ200が圧着リング110から離れるほど縁部108がゆがんだ状態となるであろう。ボトル100内の高圧により、バルブ200がボトル100の頂部から外れる可能性があり、これは潜在的に危険な状態である。しかし、本発明によって、図6Bに示すように圧着リング110の圧力緩和スロット116は、ボトル100の内部から抜け出すガスのための経路が(矢印で示すように)生成されるように構成されているため、多くの場合において潜在的な危険状態を回避することができる。それにより、ガスはバルブ200が依然として取り付けられた状態で経路を介してシステムから放出される。即ち、ボトル100内の圧力は制御された方式で放出され、バルブ200は非常に高温であってもボトル100に取り付けた状態を保持する。
【0023】
図7は、本発明の実施形態によるプラスチックボトルを使用して行った圧力緩和試験の結果を示す。試験ボトルは、PET製であり、上述したように2つの圧力緩和スロット及びボトルの頂部に圧着されたバルブで構成された。試験ボトルは、296.4mLの体積を有し、140PSIGの内圧に到達した地点まで脱イオン水及び窒素で満たされた。試験中、ボトルを75°Cの温度まで加熱した。図7のグラフは、ボトルが加熱されている間のボトル内の圧力を示す。試験の最初の数分の間に、ボトルの内側でわずかに初期圧力の上昇があり、続いて約30分かけて徐々に圧力が低下した。理論に縛られることはなく、発明者らは、初期圧力の上昇は、ボトル内のガスが加熱されたことによるものと考えた。試験が続くにつれて、ボトルの温度は上昇した。ボトル内の増大した熱エネルギーは、ボトルを構成するPETポリマーの移動を引き起こし、これはポリマー鎖間により多くの自由体積を生成した。追加的な自由体積により、ボトル内の圧力はポリマー鎖の移動を引き起こし、ボトルを膨張させた。そしてボトルの膨張により、試験が続くにつれて圧力は減少した。圧力が約80PSIGに到達した時、圧力が急激に低下した。この圧力低下が約80PSIGを下回ったのは、圧力緩和スロットによって形成された通路が開放されて、ボトルの内側からのガスが通路を介して放出される地点までボトルがゆがんだためである。重要なことに、試験全体を通して、バルブはボトルの頂部に取り付けた状態を保持した。従って、約80PSIGからゼロへの圧力緩和は、比較的素早く生じたが、バルブがボトルの頂部から外れた場合のようにゼロへのこの圧力降下が瞬間的となることはなかった。
【0024】
図8は、いかなる圧力緩和スロットも備えていないプラスチックボトルと本明細書で説明したような圧力緩和スロットを備えるプラスチックボトルを比較した試験結果を示す。これらの試験では、ボトルはそれぞれ296.4mLの体積を有し、最初に窒素で140PSIGに加圧された。ボトルは、次に75°Cの温度に加熱された。図8に示すように、圧力解放スロットがないボトルの内圧は、最初はわずかに減少した。しかし、圧力が83PSIGに達すると、バルブはボトルの頂部から吹き飛ばされ、圧力は突然ゼロまで減少した。一方、本発明によるボトルでは、圧力は90PSIGから約81PSIGに適当に低下した。この地点で、ボトルは圧力緩和通路が開放される地点までゆがんでボトルからのガスが放出された。しかし、圧力緩和通路が開放されても、圧力が完全にゼロに下がるまでには50秒以上かかった。その間はずっと、バルブはボトルに取り付けられた状態を保持した。
【0025】
プラスチックボトル100を使用した高圧ディスペンスシステム400の一例が図9及び図10に示される。システム400では、ボトル100の丸みを帯びた底部114がベースカップ600に取り付けられている。ベースカップ600の詳細、及びベースカップ600をボトル100に取り付ける方法は、米国特許出願第15/166,337号に見出すことができ、その全体が本明細書に参考として引用されている。ベースカップ600は、ボトル100が丸みを帯びた底部114を有するにもかかわらず、システム400が平坦な表面上で直立することを可能にする。システム400の頂部には、スプレー機構502があり、これは上述したようにバルブ200を含む。ボトル100内に収容されている加圧製品は、スプレー機構502を介して放出される。図示されてはいないが、キャップがスプレー機構502を覆って設けられてもよい。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、システム400は、空気清浄組成物を放出するのに使用される。空気清浄組成物の配合物の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/094,542に見出すことができる。
【0027】
本発明は、特定の具体的な実施形態として説明されているが、本開示に照らして、多くの追加の改変及び変形が当業者には明らかであろう。従って、本発明は、具体的に記載した以外の方法で実施することができることを理解されたい。従って、本発明の例示的な実施形態は、全ての点で例示的であって制限的でないとみなされるべきであり、本発明の範囲は、上記の説明ではなく、本出願及びその均等物によって支持される任意の請求項によって決定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本明細書に記載される本発明は、加圧式ディスペンスシステムの商業的生産において使用され得る。そのような加圧式ディスペンスシステムは、例えば、エアゾール製品の市場において、広範な用途を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10