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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】光ベースの皮膚処置装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20220527BHJP
   A61B 18/20 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
A61N5/067
A61B18/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019534793
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017084655
(87)【国際公開番号】W WO2018122270
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】16207164.1
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】バルゲーセ バブ
(72)【発明者】
【氏名】フェルハーフェン リエコ
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521147(JP,A)
【文献】特開昭62-14868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0197357(US,A1)
【文献】特表2016-516516(JP,A)
【文献】特開2016-188224(JP,A)
【文献】特表2011-519281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0080863(US,A1)
【文献】特表2007-501047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067
A61B 18/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の組織のレーザ誘起光学破壊によって前記組織を処置するための装置であって、前記装置は、
パルス光ビームを供給するための光源と、
前記パルス光ビームを、前記組織内に位置決めすることができる焦点に集束させるための集束システムと、
前記焦点に達する前に、前記パルス光ビームが前記装置から出射することを可能にする光出射窓であって、前記組織に接触するための接触面を有する、光出射窓と、
フィードバックシステムとを備え、
前記フィードバックシステムは、
前記装置、前記光出射窓、及び/又は前記接触面に加えられる接触力又は接触圧力を含む、フィードバック信号を前記組織から検出することと、
前記接触力又は前記接触圧力に基づいて、前記焦点が前記パルス光ビームのパルス期間の間に前記組織内にあったか否かを決定することと
を行う、装置。
【請求項2】
前記フィードバックシステムはさらに、
前記パルス光ビームの所定のパルス数についての有効パルスの数をカウントすることであって、前記有効パルスは、
前記焦点が前記組織内にあると決定されたパルス、
前記組織のレーザ誘起光学破壊を引き起こしたと決定されたパルス、及び/又は
前記パルス期間の間に前記接触力又は前記接触圧力が閾値を上回ったパルス
を含む、カウントすることと、
前記有効パルスの数を、前記所定のパルス数と比較することと
を行う、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記有効パルスの数を比較することは、前記有効パルスの数と前記所定のパルス数との比を決定することを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
有効性及び/又は処置効率を表す指標を前記装置のユーザに与えるためのユーザインターフェースをさらに備える、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
対象の組織のレーザ誘起光学破壊によって前記組織を処置するための装置であって、前記装置は、
パルス光ビームを供給するための光源と、
前記パルス光ビームを、前記組織内に位置決めすることができる焦点に集束させるための集束システムと、
フィードバックシステムとを備え、
前記フィードバックシステムは、
前記パルス光ビームによって生成される光及び/又は音声を含む、前記組織からのフィードバック信号を検出することと、
前記光及び/又は音声に基づいて、前記焦点が前記パルス光ビームのパルス期間の間に前記組織内にあったか否かを決定することと
前記パルス光ビームの所定のパルス数についての有効パルスの数をカウントすることであって、前記有効パルスは、
前記焦点が前記組織内にあると決定されたパルス、及び/又は
前記組織のレーザ誘起光学破壊を引き起こしたと決定されたパルス、
を含む、カウントすることと、
前記有効パルスの数を、前記所定のパルス数と比較することと、
を行う、装置。
【請求項6】
前記組織からフィードバック信号を検出することは、前記焦点からフィードバック信号を検出することを含む、又は、前記焦点からフィードバック信号を検出することから成る、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記フィードバックシステムはさらに、前記フィードバック信号に基づいて、レーザ誘起光学破壊が前記パルス光ビームのパルスにわたって発生したか否かを決定する、請求項又はに記載の装置。
【請求項8】
前記有効パルスの数を比較することは、前記有効パルスの数と前記所定のパルス数との比を決定することを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
有効性及び/又は処置効率を表す指標を前記装置のユーザに与えるためのユーザインターフェースをさらに備える、請求項5から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記音声を決定するためのハイドロフォンを備え、前記フィードバックシステムはさらに、レーザ誘起光学破壊が行われた物質の指標を与える前記ハイドロフォンの出力内のスペクトルピークを識別する、請求項からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記光を検出するためのセンサと、前記フィードバック信号を処理するためのプロセッサとを備える、請求項から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
画像センサ及び画像プロセッサを備え、前記画像プロセッサは、レーザ誘起光学破壊が行われた物質の指標を与える前記光の中のスペクトルピークを識別する、請求項から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記画像プロセッサは、前記組織の彩色のレベルを決定するために、前記画像センサによって検出される光又はキャプチャされる画像を分析する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
接触力又は接触圧力を決定するためのフィードバックシステムをさらに備える、請求項から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
基準圧力を超える前記接触力又は接触圧力が加えられているか否かに関する指標をユーザに与えるための出力システムをさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記焦点が前記組織内にないとき、又は、前記基準圧力が加えられていないときに、前記パルス光ビームの供給を終了するステップをさらに有する、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ誘起光学破壊(LIOB)によって対象の組織を処置するための装置及び方法に関する。本装置及び方法は、装置が使用されているときに組織に接触するためのものであり得るが、必ずしもそうである必要はない光出射窓を通じた光ビームの集束を利用する。
【背景技術】
【0002】
そのような光ベースの皮膚処置装置は、例えば、肌の若返り術、しわ治療及び散髪に使用することができる。光ベースのしわ治療では、装置は、処置されるべき皮膚の真皮層内に焦点を生成する。レーザのパワー及びパルス持続時間並びに焦点の寸法は、皮膚組織の再成長を刺激し、それとともに、しわを低減するために、レーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が皮膚に影響を与えるように、選択される。光ベースの散髪では、光ビームが毛髪の内部に集束され、LIOB現象によって毛髪が断ち切られる。
【0003】
例えば、国際公開第2005/011510号パンフレットとして公開されている国際特許出願は、所定のパルス時間中にレーザビームを生成するためのレーザ源と、レーザビームを焦点スポットに集束するための光学システムと、焦点スポットを標的位置に位置決めするためのレーザビームマニピュレータとを備える、毛髪を短くするための装置を記載している。焦点スポットの寸法及び生成されるレーザビームのパワーは、焦点スポットにおいて、レーザビームが毛髪組織の特性閾値を上回るパワー密度を有するようなものであり、この特性閾値を上回れば、所定のパルス時間について、レーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が毛髪組織内で発生する。
【0004】
一般に、レーザ誘起光学破壊(LIOB)は、焦点スポット内のレーザビームのパワー密度(W/cm)が、特定の媒質の特性である閾値を超えるときに、レーザビームの波長について透明又は半透明である媒質において発生する。閾値未満では、この特定の媒質は、レーザビームの特定の波長について相対的に低い線形的な吸収特性を有する。閾値を上回るとき、媒質は、レーザビームの特定の波長について非常に非線形的な吸収特性を有し、これは、媒質のイオン化及びプラズマの形成の結果である。このLIOB現象は、キャビテーション及び衝撃波の生成のような、複数の機械的効果をもたらし、これによって、LIOB現象の位置の周囲の位置において媒質が損傷する。
【0005】
LIOB現象を使用して、皮膚から成長する毛髪を破壊し、短くすることができることが分かっている。毛髪組織は、約500nmと2000nmとの間の波長に対して透明又は半透明である。この範囲内の波長の各値について、LIOB現象は、焦点スポット内のレーザビームのパワー密度(W/cm)が、毛髪組織の特性である閾値を超えるときに、焦点スポットの位置において毛髪組織内で発生する。上記閾値は、水性媒質及び組織の特性である閾値にかなり近く、レーザビームのパルス時間に依存する。特に、必要なパワー密度の閾値は、パルス時間が増大すると低減する。
【0006】
大きな損傷を引き起こすのに十分に効果的であるLIOB現象の結果としての機械的効果、すなわち、少なくとも毛髪の初期破壊を達成するためには、例えば、10ns程度のパルス時間で十分である。このパルス時間値について、焦点スポット内のレーザビームのパワー密度の閾値は2*1010W/cm程度である。説明したパルス時間について、且つ、例えば、十分に大きい開口数を有するレンズを用いることによって得られる焦点スポットの十分に小さい寸法によって、この閾値は、わずか10分の数ミリジュールの合計パルスエネルギーによって達成することができる。
【0007】
肌の若返り術に対する光学破壊の有効性は、皮膚の光学的及び構造的特性、焦点内のレーザ強度、光結合などのようないくつかの要因に依存する。多くの場合、処置深さは、角質層及び表皮の厚さに応じて異なり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発生し得る問題は、LIOB処置が表皮の下にある真皮内で行われるように意図されているために、パルスが有効であったか否かを確認することが困難である可能性があり、それとともに、処置効率を推定することが困難であることである。また、LIOBの産物(衝撃波、プラズマ、高パワー密度)によって出射窓が損傷する可能性もある。損傷した出射窓には、装置が所望の位置において十分に密な集束を与える能力に対する有害な効果があり、これによって、処置プロセスの効率が低減する可能性がある。特に、真皮の上方に表層病変が生成される場合、毛細血管の微細断裂に起因して点状出血(微小出血)が発生することになり、結果として、効率が低減し、副作用及び社会的休止時間が増大する。
【0009】
それゆえ、パルスの有効性又は処置の効率の指標を与えることが可能なシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0011】
本発明の第1の態様による例は、独立請求項において規定されているような光ベースの組織処置装置を提供する。原則として、すべての装置は光出射窓を有するが、一部の装置の使用中、光出射窓は処置されることになる組織と接触する必要はない。本発明は、同発明の原理に基づくフィードバックソリューションを提供し、当該ソリューションは、各タイプの装置について、パルス有効性、及び、それとともに処置効率の推定を可能にする。
【0012】
出射窓は、パルス光が組織に入るようにするために、装置からパルス光が出射することを可能にする限り、任意の形状をとることができる。出射窓は、レンズ面又は他の光学面からなることができる。光出射窓は、接触面を有することができる。
【0013】
組織は好ましくは、例えば、動物又は人類の毛髪、皮膚若しくは臓器表面又は境界組織のような、哺乳類の組織である。
【0014】
フィードバック信号は、焦点が組織内にあるか否かを決定するために使用することができる。したがって、このフィードバックシステムは、光学破壊によって、病変が組織内でのみ生成されることを保証することによって、その効果(例えば、肌の若返り術など)を有するのに十分な病変が生成されることを保証することが可能である。これによって、副作用、及び、皮膚組織の場合には、可能な社会的休止時間を最小にして、処置の効率が増強される。フィードバックは、組織との接触の改善及び光結合の均一化、並びに、接触窓/出射レンズの損傷及び組織損傷の防止を可能にするために使用することができる。これによって、処置の安全性及び効率が向上する。処置されることになる好ましい組織は、皮膚である。
【0015】
実施形態において、特に、フィードバック光又は音声が焦点から検出される場合、実際のLIOBが行われたか否かを決定することができる。これは、パルス有効性の決定をさらに確実にすることができる。
【0016】
処置中又はある時間期間中に与えられる、1つ又は複数の供給パルスのセットのうち1つ又は複数の有効パルスをカウントし、これらのカウントを供給パルスの数と比較することによって、処置の有効性又は効率の指標が与えられる。これは、1つの供給パルスあたり1つのパルスについて行われ、又は、複数の供給パルスについて行われる。有効パルスと供給パルスとの比は、有効性又は効率を指標するのに好都合であり、これは、比又は百分率などによって指標される。複数のパルスセットが連続し、又は、それらのパルスセットが重ね合わされて、移動平均が与えられる。
【0017】
装置は、音響信号を測定するためのハイドロフォンを備える。焦点内で組織上に蓄積されている高いエネルギーが、熱的現象(熱弾性膨張)、光学的現象(プラズマスパーク)、及び音響現象を生成する。音響信号は、生成される衝撃波の超音速膨張及びそれと関連付けられるプラズマ波の膨張からもたらされる特性広帯域可聴音響波から構成される。レーザ生成プラズマからの音響放出は、例えば、プラズマから数cmの近接した距離に配置されたダイナミックマイクロフォンを使用して検出される。好ましい特性音響周波数は、3~16kHzの範囲内である。これは皮膚組織に対して良好に作用する。
【0018】
したがって、フィードバックシステムは好ましくは、LIOBが行われた物質の指標を提供するハイドロフォン出力におけるスペクトルピークを識別するためのコントローラを備える。
【0019】
装置は、画像センサと、画像プロセッサとを備える。焦点は、LIOBと関連付けられる特性光学フラッシュ(プラズマスパーク)に基づいて検出することができる。典型的には、特性フラッシュの広域スペクトル範囲は、400~1100nmの波長範囲内である。プラズマからの発光スペクトルは、分光計と、増強電荷結合素子(ICCD)との組み合わせを使用して測定することができる。
【0020】
焦点位置に応じて、フラッシュスペクトルは、焦点内の物質(ガラス界面、液浸媒質、例えば皮膚のような組織など)の特性であるスペクトルピークを呈し、焦点の特徴として、また、LIOBが行われたか否かの指標として使用することができる。
【0021】
したがって、画像プロセッサは、好ましくは、LIOBが行われた物質の指標を提供する、組織から受け取られる光のスペクトルピークを識別するためのものである。
【0022】
画像プロセッサは、加えて、集束システムと組織との間の接触の質を決定するために、画像センサによってキャプチャされる画像を分析するように適合される。
【0023】
このように、集束の深さと、システムと組織との光学的接触の質の両方を決定するために、光学分析を使用することができる。
【0024】
接触の質は、単純なモノクロ又はRGBカメラを使用してキャプチャされる画像の鏡面反射の均一性に基づいて測定することができる。結合が最適で均一である場合、強度分布は均質なガウス分布に従う。画像特徴及び不均一性は、光学的接触の質が低減していることを表す。
【0025】
したがって、画像プロセッサは、接触の質を表す、キャプチャされている画像の不均一性を識別するためのものである。
【0026】
画像プロセッサは、例えば、皮膚の赤みのような組織の色変化のレベルを決定するために、画像センサによってキャプチャされる画像を分析するように適合される。このように、許容閾値を超えるレベルの炎症が検出される場合、処置を停止することができる。したがって、フィードバックシステムは、過剰な炎症を防止するために両方の予防対策を実施するが、処置が許容不可能なレベルの炎症をもたらした場合を検出する安全策をも有する。
【0027】
装置は、組織に対して装置に加えられる圧力又は力を監視するための別のフィードバックシステムを備える。好ましくは、圧力又は力が加えられているという指標をユーザに与えるための出力システムも提供される。加えられている圧力又は力が適切な圧力又は力であるか否かを指標するために、監視される圧力又は力と基準圧力又は力との比較が実施される。加えられている圧力又は力が基準値を下回ると、パルス提供は自動的に中断される。
【0028】
このように、ユーザは、組織との必要な接触を維持するのに適した圧力又は力を加えるように案内される。
【0029】
すべての例において、焦点が組織の外部にあると決定される場合(これによって、安全カットオフが可能になる)、又は、処置領域について特定の所定の効率に達した場合(これによって、時間に関して効率的な処置が可能になる)、集束パルス光ビームのパワー密度を、空気、組織又は他の媒質中で相当のLIOBを生成するための閾値を下回る値まで低減するためのものであるフィードバックシステム又はコントローラが提供される。そのような場合、所定の効率に達したという指標がユーザに与えられる。
【0030】
パワー密度を低減することは、ビームのパワー又は焦点における集束の質若しくは程度を低減することによって行うことができる。多くの方式を使用することができる。
【0031】
すべての例において、焦点が組織内にないと決定されるため、組織の過剰な色変化(例えば、皮膚の赤み)があるため、又は、検出される接触が不十分であるために、処置を停止すべきであると決定された場合に、光源を機能停止するか、又は、光源若しくは光源によって与えられるビームを減光するためのフィードバックシステム又はコントローラが提供される。これによって、安全カットオフが可能になる。
【0032】
本発明の別の態様は、光ベースの組織処置装置を提供し、装置は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するための光源と、
光ビームを組織内の焦点に集束させるための集束システムと、
組織に対して装置に加えられる圧力又は力を決定するためのフィードバックシステムと
を備える。
【0033】
装置は、決定された圧力又は力をユーザに提供するための出力システムを備えることができる。好ましくは、決定された圧力又は力は基準値と比較され、出力システムは、適切な圧力又は力が加えられているか否かに関する指標をユーザに提供する。
【0034】
本発明の別の態様は、光ベースの組織処置装置を提供し、装置は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するための光源と、
光ビームを組織内の焦点に集束させるための集束システムと、
画像センサ、及び、画像センサによってキャプチャされる画像を分析するための画像プロセッサを備え、組織から受け取られる光を検出し、それによって、集束システムと組織との間の接触の質を決定するためのフィードバックシステムであって、画像プロセッサは、接触の質を表す、キャプチャされた画像内の不均一性を識別するように適合されている、フィードバックシステムと
を備える。
【0035】
好ましくは、装置はまた、接触の質が閾値を下回って降下するとき、すなわち、圧力又は力が閾値を下回って降下するとき、光源を機能停止し、又は、入射光が皮膚に達するのを防止するためのコントローラをも含む。コントローラは、後者の目的のために、例えば、シャッタ又は光ビーム偏向装置を動作させる。
【0036】
本発明の別の態様は、光ベースの皮膚処置装置を提供し、装置は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するための光源と、
光ビームを組織内の焦点に集束させるための集束システムと、
画像センサと画像プロセッサとを備える、皮膚から受け取られる光を検出するためのフィードバックシステムであって、画像プロセッサは、組織の彩色のレベルを決定するために画像センサによってキャプチャされる画像を分析するように適合される、フィードバックシステムと
を備える。
【0037】
好ましくは、彩色のレベルは、皮膚の赤みのレベルである。これは、例えば、上記で説明したような、皮膚の赤みを分析する態様に関係する。
【0038】
この場合、光源を機能停止し、又は、皮膚の赤みのレベルが閾値を超えたときに入射光が皮膚に達するのを防止するためのコントローラが提供される。ここでも、コントローラは、防止を実施するために、例えば、シャッタ又は光ビーム偏向装置を動作させる。
【0039】
集束システムと組織との間の接触の質を決定するために画像センサによってキャプチャされる画像を分析し、その後、接触の質が閾値レベルを下回ると決定される場合に光源を機能停止することなど、上記で概説した方策を利用することもできる。
【0040】
光源パルスによって生成される音声を検出し、それによって、焦点が組織内にあるか否かを決定するためにフィードバックシステムを使用することもできる。この場合、焦点が組織内にないと決定される場合、光源が機能停止される。
【0041】
組織に対する、装置に加えられる圧力を監視するための上述したフィードバックシステムを利用することもでき、ここでは、適切な圧力が加えられているか否かに関する指標をユーザに提供するために出力システムが使用される。この場合、圧力が適切でないと決定される場合、光源が機能停止される。
【0042】
本発明はまた、光ベースの皮膚処置方法をも提供し、方法は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するステップと、
光ビームを組織内の焦点に集束させるステップと、
組織から受け取られる光を検出し、光源パルスによって生成される音声を検出し、それによって、焦点が組織内にあるか否かを決定するステップと
を有する。
【0043】
本発明はまた、光ベースの組織処置方法をも提供し、方法は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するステップと、
光ビームを組織内の焦点に集束させるステップと、
組織に対する、装置に加えられる圧力を検知し、適切な圧力が加えられているか否かに関する指標をユーザに提供するステップと
を有する。
【0044】
本発明はまた、光ベースの組織処置方法をも提供し、方法は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するステップと、
光ビームを組織内の焦点に集束させるステップと、
組織から受け取られる光の画像を検出し、画像を分析して、例えば、皮膚の赤みのような組織彩色のレベルを決定するステップと
を有する。
【0045】
これらの方法は非治療的方法であり、特に、例えば、肌の若返り術、しわ低減、又は毛髪除去のための美容方法である。
ここで、添付の図面を参照して本発明の例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】知られているLIOB皮膚処置装置の概略図である。
図2】焦点深さ制御を実施するための知られている方式を示す図である。
図3】フィードバックシステムの第1の実施例を有する装置を示す図である。
図4】フィードバックシステムの第2の実施例を有する装置を示す図である。
図5】フィードバックシステムの第3の実施例を有する装置を示す図である。
図6】光学フィードバックシステムを説明するために使用される図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、特に皮膚組織のような哺乳類の組織のレーザ誘起光学破壊のためのパルスレーザ皮膚処置装置を提供する。組織内のLIOB現象によって引き起こされる皮膚からのフィードバック信号を検出するために、フィードバックシステムが使用される。フィードバック信号は、組織から受け取られる光を含む可能性があり、フィードバックシステムは、光センサ又は画像センサと、画像プロセッサとを備えることができる。1つの例において、画像プロセッサは、例えば、組織彩色(例えば、皮膚の赤み)のレベルを決定するために、画像センサによってキャプチャされる画像を分析するように適合される。別の例において、画像センサによってキャプチャされる画像は、集束システムと組織との間の接触の質を決定するために使用される。別の例において、フィードバックシステムはまた、光源パルスによって生成される音声を検出し、それによって、焦点が組織内にあるか否かを決定するためのものでもある。画像検知に依拠しない別の変形形態において、フィードバックシステムは、組織に対する、装置に加えられる圧力を監視するために使用され、適切な圧力が加えられているか否かに関する指標をユーザに提供するために出力システムが使用される。
【0048】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が関係するタイプの装置の1つの例を概説する。
【0049】
図1は、表面5を有する組織3を処置するためのシステム1を示す。この場合、組織は、皮膚3によって例示されるが、他の組織が処置されてもよい。
【0050】
システム1は、少なくとも所定のパルス時間の間にレーザビーム11を生成するための光源9を備え、レーザビーム11を焦点15へと集束し、光源9からの光に対して少なくとも部分的に透明である、皮膚3内の標的位置に焦点15を位置決めするための光学システム13を備える。
【0051】
図1に概略的に指標されている光学システム13の例は、ビーム偏向・ダイクロイックビーム分割システム17と、収差補正システム19と、ビーム走査システム21と、集束システム23とを備え、これらのシステムは、1つ又は複数のミラー、プリズム、ビームスプリッタ、偏光子、光学フィルタ、レンズ、開口、シャッタなどを含む。例えば、走査システムは、走査プリズムを含む。
【0052】
集束システムは、集束深さ選択、ビーム成形及び集束並びに接触/出力窓を有する。接触/出力窓の接触を維持するための輪郭追従サスペンションが存在する。
【0053】
光学システム13及び/又はレーザビーム11のビーム経路の少なくとも一部は、例えば、目の安全のために封止され、例えば、不透明チューブ及び/又は1つ若しくは複数の光ファイバを含む。
【0054】
光源9は、所定の波長にあり、所定のパルス持続時間及び繰り返し率を有する所定数のレーザパルスを放出するように構成される。システム1は、焦点15の標的位置が皮膚の表面の下にあるように構成可能である。焦点15の寸法及び生成されるレーザビームのパワーは、焦点15において、レーザビーム11が毛髪組織の特性閾値を上回るパワー密度を有するようなものであり、この特性閾値を上回れば、所定のパルス時間にわたって、レーザ誘起光学破壊事象が発生する。
【0055】
レーザ光源9とビーム偏向・ダイクロイックビーム分割システム17との間には関節アームがある。ビーム偏向システム17及び後続の構成要素は、ハンドピースの一部を形成する。関節アームのミラーにおける位置整合誤差のために、ビームは、関節アームに入射する前に拡大し、その後、ビームステアリング及び収差補正の前に縮小される場合がある。
【0056】
皮膚3は、光学特性が異なる複数の層を含む。表皮は、最外層から構成され、防水防護壁を形成する。表皮の最外層は、その粗さが微視的に変動していることに起因して、装置1と皮膚3との間の光の結合を妨げる角質層である。この理由から、組織及び/又は集束システムの出射レンズ/窓の屈折率に一致することを目標とする屈折率を有する結合流体が、集束システムと組織との間に与えられることが好ましい。
【0057】
表皮の下には、真皮がある。真皮は、皮膚処置が目標とするコラーゲン繊維を含む。
【0058】
皮膚処置の目的は、新たなコラーゲン形成をもたらす微視的病変を生成するために、真皮のコラーゲン内にパルスレーザビームの焦点15を生成することである。
【0059】
光源9は、ユーザインターフェースを提供する任意選択のコントローラ25によって制御可能である。また、光学システム13の1つ又は複数の部分は、任意選択のコントローラ(図示せず)によっても制御可能であり、コントローラは、標的位置及び/又は焦点の1つ又は複数の特性を制御するために、光源コントローラ25と一体化される。
【0060】
レーザビーム集束パラメータは、例えば、集束システムの開口数の調整など、ビーム成形及び/又は集束システムの適切な設定によって決定することができる。集束システムの開口数NAの適切な値は、範囲0.05<NA<nmから選択され、nmは、動作中の、レーザ波長に対する媒質の屈折率である。
【0061】
適切な光源は、約5~10nsのパルス持続時間で約1064nmの波長にあるレーザパルスを放出するQスイッチNd:YAGレーザを含むが、例えば、Nd:Cr:Yag3レベルレーザ及び/又はダイオードレーザなどの他のレーザも同様に使用されてもよい。皮膚内での吸収及び散乱が相対的に低く、それによって、貫通深さを大きくすることが可能であるため、1064nmレーザが処置のために使用されることが好ましい。
【0062】
ビーム偏向・ダイクロイックビーム分割システム17は、レーザ光を反射し、ただし、可視波長光を通過させるダイクロイックビームスプリッタを含む。したがって、皮膚3から受け取られる可視波長光は、光学システムによってキャプチャされ、手動又は自動のいずれかでシステムを制御するために使用することができるフィードバック信号11’として提供される。
【0063】
集束システム23によって与えられる集束深さは、調整可能であることが好ましい。
【0064】
図2は、そのような調整を実施するための知られている方式を示す。集束システム23は、各々が異なる焦点深さを有する出力窓26のセットを備え、走査システム21を回転させる走査モータ27によって、出力窓の1つに光路が与えられる。出力窓26は、輪郭追従サスペンション28によって保持される。したがって、出力窓は、円形経路の周りに配置され、ノッチシステムが、走査システム21に対する位置決めを可能にする。4つの出力窓が存在し、したがって、輪郭追従を可能にするように各々別個にばね荷重されている4つのレンズセットが存在する。
【0065】
走査システム21は、皮膚のある領域にわたって焦点を走査するために使用される。
【0066】
図1のシステムに使用されるレーザの一例は、1000Hzの最大繰り返し周波数を有し、典型的な処置計画は、200μmの病変ピッチを使用し、結果として、200mm/sの典型的な最大走査速度がもたらされる。この走査速度は、これらの走査速度を手作業で適用するときは制御ができないため、いかなる手動走査のみの選択肢も排除する。
【0067】
加えて、任意のスタートストップ走査システムにとって、短い加速距離でこの走査速度に達するのは非常に困難であり、機械的振動がもたらされ、レーザの容量の使用が非効率になる。より容易に制御されるより遅い走査速度は、表面積が大きい場合に処置時間を大幅に増大させる。
【0068】
この課題を克服するために、回転運動に基づく連続運動走査が使用され、この走査は、これらの走査速度を容易に達成することができ、強い振動及びレーザ容量の非効率な使用の問題がない。
【0069】
この目的のために、回転プリズムが使用される。
【0070】
第1の可能なプリズム設計は、菱形を含む。2つの対向する平行な端面が、内部全反射面として機能する。それらの面は、入射光方向に対して45度の角度にある。プリズム内での2回の内部反射が、入射ビームの横方向シフトをもたらし、それによって、出射ビームが平行になるが、入力ビームに対して横方向にシフトされている。横方向シフトの方向に垂直であり、それゆえ、入射ビーム方向に平行な軸を中心としてプリズムを回転させることによって、円形経路が出力ビームによって掃引される。回転は、入力ビームの軸を中心とする。掃引される円の半径は、菱形の長さである。
【0071】
菱形プリズムは、必要に応じて反射防止コーティングを面に施して製造することができる。
【0072】
第2の可能なプリズム設計は、ダブプリズムである。2つの端面が反射界面として機能し、底面が内部全反射面として機能する。端面は、入射光に対して45度の角度にある。プリズム内での2回の反射及び単回の内部全反射が、ここでも入射ビームの横方向シフトをもたらし、それによって、出射ビームが平行になるが、入力ビームに対して横方向にシフトされている。横方向シフトの方向に垂直であり、それゆえ、入射ビーム方向に平行な軸を中心としてプリズムを回転させることによって、円形経路が出力ビームによって掃引される。回転は、入力ビームの軸を中心とする。ビーム並進の量は、ダブプリズムの入射面に対する入射ビームの位置、及び、プリズムのサイズに依存する。プリズムは、主入射光線を中心として回転される。ここでも、反射による損失を低減するために、反射防止コーティングが斜面に加えられる。
【0073】
回転プリズムは、振動を回避するために機械的に平衡される。集束光の有効開口数に対する収差補正設定の影響を最小限に抑えるように、プリズム台が、ボールベアリングの上に浮かされられ、モータロータに直に接続する。
【0074】
本発明は、集束システム23の出射窓に対する損傷を防止し、及び/又は、皮膚炎を阻止若しくは防止するようにシステムを制御するためのフィードバックシステムに関する。
【0075】
第1の態様は、LIOBが発生している焦点深さを検出するために、光学的分析と音響的分析とを組み合わせるフィードバックシステムに関する。このとき、フィードバックシステムは、焦点が皮膚内にない場合にレーザがオフにされることを可能にする。これは、LIOB中に生成される可視フラッシュ(プラズマスパーク)の波長スペクトル及び信号の音響周波数の差に基づき、この差は、空気、レンズ、結合媒質及び皮膚のような、LIOBが発生する媒質に応じて大幅な差異を示す。
【0076】
発光スペクトルは、分光計と、増強電荷結合素子(ICCD)との組み合わせを使用して測定することができる。焦点位置に応じて、フラッシュスペクトルは、焦点内の物質(ガラス界面、液浸媒質、皮膚など)の特性であるスペクトルピークを呈し、焦点の特徴として、また、LIOBが行われたか否かの指標として使用することができる。
【0077】
例えば、LIOBが発生していない場合、検出器は、スペクトル的特徴が一切ない平坦な背景スペクトルを記録する。一例として、212.4nm(Si)及び589nm(Na)あたりで発生する特性ピークは、それぞれガラス界面及び皮膚内でLIOBが発生していることを確認するために使用することができる。他のスペクトルピークを、その物質の指標として使用することもできる。光学的破壊を下回る放射照度閾値について、LIOBのないフラッシュを測定することもでき、光学的破壊のある場合とない場合の光学フラッシュのスペクトル特性の差を特徴として使用することもできる。
【0078】
図3は、焦点深さを検出するための共焦点システムに基づく第1の実施例を示す。
【0079】
同じ構成要素には、図1と同じ参照番号が与えられる。収差補正システム19は、非球面レンズ19を含み、集束システム23は、顕微鏡対物レンズとして機能するレンズを含む。ダイクロイックビームスプリッタ17を通じて送信される可視光光学フィードバック信号25は、平凸レンズ30によって、例えば、CCDチップなどの画像センサ32に集束される。
【0080】
この構成は、皮膚の外部でのLIOBを防止し、皮膚の内部での集束深さを決定するために、集束深さの共焦点検出を可能にする。
【0081】
レンズ30及び23(照明及び検出)によって形成される共焦点顕微鏡の光路と、LIOB処置ビームの光路とが、ダイクロイックビームスプリッタ17によってともに結合される。共焦点顕微鏡は、焦点位置の深さ分解画像を作成し、したがって、処置深さの検証を可能にする。この検証は、画像センサによってキャプチャされる画像の画像処理を使用して実行され、検証は、レーザ9を起動又は機能停止するために、コントローラ25によって使用される。
【0082】
図4は、光と音声の両方に基づくフィードバックシステムを提供することに基づく第2の実施例を示す。
【0083】
同じ構成要素には、図3と同じ参照番号が与えられる。画像センサはもはや必要とされず、代わりに、フォトダイオード又はフォトダイオードアレイ40、及び、任意選択的に、形成される画像ではなく可視光25のスペクトルを分析するための関連付けられる回折格子が存在する。ニードルハイドロフォン42が、音波のスペクトルの分析を可能にする。
【0084】
LIOB中に生成される可視光フラッシュ及び音響信号は、空気中、結合媒質中、及び、皮膚中では異なるスペクトル特性及び音響特性を呈する。LIOBの発生中、可視フラッシュはフォトダイオード40によって(又は格子によって)記録することができ、音響信号は、ハイドロフォンを用いることによって記録される。フラッシュと音響信号とを組み合わせて検出することによって、集束深さを決定することが可能になる。
【0085】
皮膚から受け取られる可視光は、レーザ誘起光学破壊において発生するフォトメカニカルモードの相互作用の結果である。これは、自由電子の大量生成を伴う。このプロセスは、「電子雪崩成長」又は「逆制動放射効果」と称される。プラズマの形成は、波長の関数としての強度変動がほとんどない連続白色光をもたらす。この光は、自由電子及びイオンが冷却プラズマ内で再結合されるときに、プラズマからの制動放射及び再結合放射によって引き起こされる。
【0086】
焦点深さを決定する代わりに、又は、決定するとともに、図3のシステムは、皮膚と集束システム23の出力レンズとの間の光結合の質を分析するために使用されてもよい。光結合が有効でない場合、空気及びレンズの出射面内で光学的破壊が発生し、レンズ及び皮膚の損傷をもたらす可能性がある。
【0087】
光結合の分析は、画像センサ32によってキャプチャされる画像の画像処理に基づいて達成される。
【0088】
接触の質は、単純なモノクロ又はRGBカメラを使用してキャプチャされる画像の鏡面反射の均一性に基づいて測定することができる。結合が最適で均一である場合、強度分布は均質なガウス分布に従う。強度スポットのサイズ、スポットの数、最大スポットのサイズなどのようなより多量の画像特徴を、閾値化後にこれらの画像から導出することができ、これらの特徴は、非最適な結合の指標として使用することができる。
【0089】
図3のシステムはまた、画像センサ32及びレンズ30を取り除き、代わりに、システムのユーザによる視覚的検査を可能にするための出力窓を設けることによって修正されてもよい。このとき、ユーザは、各レーザフラッシュにおける皮膚の接触の見た目を視覚的に検査することができる。ここでも、これは、画像スポットのような欠陥として可視化される。
【0090】
皮膚接触の質を検出するためのさらなる選択肢は、測定される荷重のフィードバックによって、輪郭追従を可能にするためにばね荷重集束レンズシステムを使用することである。光学システム全体がばね荷重され、それによって、光学構成要素間の光路が保持される。
【0091】
図5は、装置が皮膚3の輪郭に追従することを可能にするために、少なくとも最後の対物レンズがばね52によってばね荷重される光学システム50を示す。これによって、湾曲した皮膚面を、走査しながらシームレスに追跡することが可能になる。
【0092】
システム内の荷重に基づくフィードバックが、レーザ起動を制御するために使用される。最適な接触を保証し、それによって、ばねシステムの基準として作用するために、基準荷重値のセットが使用される。
【0093】
その後、ユーザが荷重を所望の荷重レベル範囲内に維持することを可能にするために、フィードバックが与えられる。この荷重レベル範囲は、完全なばね伸張(ゼロ荷重)と最大ばね圧縮(最大荷重)との間である(それゆえ、これら2つを除外する)ことが好ましい。これは、これらの両方が、良好な接触を維持するには不適切であるためである。
【0094】
ユーザの出力は、システムの画面上に与えられてもよく、又は、ワイヤレス接続によって、スマートフォン、スマートウォッチ、又は他の近傍の装置に、ワイヤレス信号として送信されてもよい。加えられている圧力が低すぎる若しくは高すぎるときに、例えば、警告音によって、ユーザに対する命令が可聴とされてもよく、且つ/又は、視覚的出力が与えられてもよい。
【0095】
小さい局所的な皮膚特徴と、より大きい大域的な皮膚輪郭及び特徴の両方の適切な輪郭追従を保証するために、少なくとも2つの接触点が近接近して規定される。
【0096】
上述したように、表層病変が真皮の上に生成される場合、点状出血(微小出血)が発生する場合がある。これは、集束システムと皮膚との間の光学的接触の不良の結果として生じる可能性があり、又は、集束システムに対する損傷からもたらされる可能性がある。上記のフィードバック手法は、光学的接触の不良がある場合に、そのような損傷を防止し、又は、レーザ動作を妨げることを目標とする。
【0097】
代替的な(又は追加の)手法は、結果生じる皮膚の赤みを検出し、それによって、皮膚損傷の初期兆候が明白になったときに直ちに処置を終了することである。
【0098】
このとき、フィードバックシステムは、紅斑(皮膚の赤み)の測定に基づく。したがって、このフィードバックは、処置前に測定されているベースラインの赤みと比較しての紅斑の増大を記録した後に装置を機能停止することによって、肌の若返り術のためにLIOBベースの処置の効率を最適化することができる。これによって、副作用及び社会的不活動時間が低減する。
【0099】
紅斑の増大に対する閾値は、LIOB処置に関係する必要なカバレッジ、並びに、副作用の重症度及び対象の疼痛知覚に応じて微調整することができる。適切な閾値は、種々の対象の間で、さらには、同じ対象であっても異なる時間において変化する。
【0100】
ベースライン値に対する紅斑の定量的決定は、LIOBベースの皮膚処置の有効性の指標であり、処置が有効であったこと、及び、肌の若返り効果をもたらす必要な皮膚治癒応答が行われると予測されることを確認するために使用される。
【0101】
したがって、焦点深さの決定及び/又は皮膚接触の質の分析の代わりに、又は、それとともに、皮膚の赤みのレベルを分析するために、図3のシステムが使用される。
【0102】
図3のシステムは、画像センサ32及びレンズ30を取り除き、代わりに、システムのユーザによる視覚的検査を可能にするための出力窓を設けることによって修正されてもよい。このとき、ユーザは、各レーザフラッシュにおける皮膚の赤みを視覚的に検査することができる。
【0103】
しかしながら、好ましい選択肢は、画像センサ32によってキャプチャされる画像の画像処理を使用して、キャプチャされる画像のスペクトル内容を自動的に分析するために画像センサ32を使用することである。特に、赤色成分の増大によるスペクトル内容の変化が、処置の開始時における初期色と比較されるときに検出される。画像センサは代わりに、分光光度計を含んでもよい。
【0104】
一般的に、LIOB処置は、処置の直後は穏やかな紅斑をもたらし、重症度は約10分にわたって増大する。その後、紅斑は薄くなり、処置の30分後にはもはや見えなくなる。紅斑が見た目に穏やかであることは、処置が有効であり、皮膚治癒応答が行われると予測されたことの指標である。しかしながら、重症度閾値を超えるべきではない。
【0105】
画像検知は、高解像度写真を使用することができるが、低コストのセンサを使用した低解像度写真でも、画像内の赤色内容を十分に検出することができる。分光光度法が実施されてもよく、又は、CCD画像の画像処理が使用されてもよい。
【0106】
図6は、定量的細胞分析のための画像処理アルゴリズムを内蔵した高解像度カメラ60を備える画像分析システムを示す。
【0107】
カメラ60は、着脱可能マウント62から構成される追加のモジュールと一体化される。カメラユニットは、LED照明リング64を含み、後方散乱光の空間分解検出を実施する。
【0108】
紅斑の増大が、処置カバレッジエリアに対応し、対象の許容可能な赤みの限界を指定する値を示す参照ルックアップテーブルと比較される。初期ベースライン測定値が、較正基準として使用される。
【0109】
上述したような接触圧フィードバックシステムも利用される。
【0110】
このシステムを使用するために、何らかの機械的な赤みの誘発(テープ剥離など)が加えられる前に、初期ベースライン皮膚色がシステムによって記録される。この皮膚色は、処置されることになる皮膚領域から記録される。
【0111】
処置の前に、炎症を起こした皮膚又は紅斑(赤みの増大)と、ベースラインの皮膚との比較を行うこともでき、それによって、特定の対象が処置にどう反応するかを記録することができる。
【0112】
LIOB処置は、その後実行される。
【0113】
最初の処置の後、皮膚の赤みが記録される。その後、所望の紅斑閾値に対して比較が行われ、紅斑閾値は、必要なカバレッジエリア及び許容可能な対象の疼痛知覚に依存する。対象は、処置中に疼痛知覚情報を提供することによって、また、その後の炎症を起こした皮膚の視覚的評価によって、自身の不快感閾値を指標する。
【0114】
処置領域内の皮膚の赤みがベースライン皮膚色よりも大きく、且つ、処置が終了される閾値に達している場合、他の様態でLIOB処置が継続される。
【0115】
上述したように、1064nmにおいて放出するNd:YAGレーザが使用されてもよいが、これに加えて又はこれに代えて、1645nmにおいて放出するEr:YAGレーザが、レーザ誘起光学破壊(LIOB)に使用されてもよい。
【0116】
皮膚処置は、剃毛除去プロセスを含む。使用中、集束システム23が、剃毛される皮膚表面の上で動かされる。集束システムは、光ビームが装置を出ることを可能にするための出射窓を形成する。集束システムはこのとき、光学ブレードを形成する。
【0117】
皮膚処置は、普通に年をとる過程の結果として人間の皮膚に見られる場合があるしわを低減するための肌若返り装置を含む。使用中、集束要素が、処置されることになる皮膚に押しつけられ、又は、その近くに保持される。集束システムによって形成される出射窓は、皮膚に平行に保持され、光ビームが出射窓を出て、皮膚面にほぼ垂直な方向において皮膚に入射する。
【0118】
両方の例において、集束システムと皮膚表面との間に浸漬液が与えられる。好ましくは、集束システム23の皮膚接触レンズ及びLIOBが発生することになる皮膚又は毛髪の屈折率に近い屈折率を有する浸漬液が使用される。この目的のために、約1.4~約1.5の屈折率を有する流体が適切である。また、水も、1.33と屈折率はいくらか低いが、一部の装置及び用途にとっては適切な浸漬液であり得る。
【0119】
図1のシステムは、レーザと集束システムとの間に光学素子の1つの特定のセットを有する。しかしながら、この構成は、限定であるようには意図されていない。本発明のフィードバックシステムは、より少数又はより多数の構成要素を有する異なるシステム構成において使用されてもよい。
【0120】
要約すると、パルスレーザ皮膚処置装置は、毛髪又は皮膚組織のレーザ誘起光学破壊のためのものである。光、音声、及び/又は接触力若しくは圧力に基づくフィードバック信号を検出するために、フィードバックシステムが使用される。フィードバック信号は、パルスが組織内にあったか、又は、組織の外部にあったかを決定するために使用される。これらのデータによって、ユーザに提供することができる、処置の有効性を決定することができる。
【0121】
上述した実施形態は、本発明を限定しているのではなく例示していること、及び、当業者は、添付の特許請求項の範囲から逸脱することなく、多くの代替的な実施形態を設計することが可能であることが留意されるべきである。特許請求の範囲において、括弧内に配置されている任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「備える(comprise)」及びその活用形が使用されている場合、これは、特許請求の範囲内に記述されているもの以外の要素又はステップが存在することを除外するものではない。要素に冠詞「a」又は「an」が先行している場合、これは、そのような要素が複数存在することを除外するものではない。本発明は、いくつかの個別の要素を備えるハードウェアによって、及び、適切にプログラムされているコンピュータによって実施することができる。いくつかの手段を列挙している装置請求項において、これらの手段のうちのいくつかは、まったく同一のハードウェア物品によって具現化されてもよい。特定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されているというだけのことは、これらの方策の組み合わせを好都合に使用することができないということを示すものではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6