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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式温水ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/375 20220101AFI20220527BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20220527BHJP
【FI】
F24H4/02 N
F24H1/18 503Q
F24H4/02 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020057341
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156500
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】松坂 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晋司
(72)【発明者】
【氏名】永田 秀典
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023920(JP,A)
【文献】特開2011-094922(JP,A)
【文献】特開2009-281665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 4/02
F24H 15/375
F24H 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(1)、水熱交換器(2)、膨張機構(EV)、及び空気熱交換器(3)を有する冷媒回路と、
上記水熱交換器(2)を介して水を循環させる循環ポンプ(P)を有する水回路と、
上記冷媒回路と上記循環ポンプ(P)とを制御する制御部(10)と
を備え、
上記水回路に水を循環させた状態で上記水熱交換器(2)の凍結を防止する第1凍結防止運転と、上記水回路を循環する水の量が上記第1凍結防止運転よりも少ない状態で上記圧縮機(1)を運転して上記水熱交換器(2)の凍結を防止する第2凍結防止運転とを実行可能に構成されており、
上記制御部(10)は、上記第1凍結防止運転において上記水熱交換器(2)の入口温度又は出口温度が所定の第1温度よりも低いときに上記圧縮機(1)を起動させた場合において、上記圧縮機(1)の起動後の上記冷媒回路内を循環する冷媒の圧力が所定の圧力よりも高いときに、上記第2凍結防止運転を実行することを特徴とする、ヒートポンプ式温水ユニット。
【請求項2】
圧縮機(1)、水熱交換器(2)、膨張機構(EV)、及び空気熱交換器(3)を有する冷媒回路と、
上記水熱交換器(2)を介して水を循環させる循環ポンプ(P)を有する水回路と、
上記冷媒回路と上記循環ポンプ(P)とを制御する制御部(10)と
を備え、
上記水回路に水を循環させた状態で上記水熱交換器(2)の凍結を防止する第1凍結防止運転と、上記水回路を循環する水の量が上記第1凍結防止運転よりも少ない状態で上記圧縮機(1)を運転して上記水熱交換器(2)の凍結を防止する第2凍結防止運転とを実行可能に構成されており、
上記制御部(10)は、上記水熱交換器(2)での凝縮温度が所定の第2温度よりも高いときに上記第2凍結防止運転を終了するように上記冷媒回路を制御することを特徴とする、ヒートポンプ式温水ユニット。
【請求項3】
圧縮機(1)、水熱交換器(2)、膨張機構(EV)、及び空気熱交換器(3)を有する冷媒回路と、
上記水熱交換器(2)を介して水を循環させる循環ポンプ(P)を有する水回路と、
上記冷媒回路と上記循環ポンプ(P)とを制御する制御部(10)と
を備え、
上記水回路に水を循環させた状態で上記水熱交換器(2)の凍結を防止する第1凍結防止運転と、上記水回路を循環する水の量が上記第1凍結防止運転よりも少ない状態で上記圧縮機(1)を運転して上記水熱交換器(2)の凍結を防止する第2凍結防止運転とを実行可能に構成されており、
上記制御部(10)は、上記圧縮機(1)の吐出管温度が所定の第3温度よりも低いときに上記第2凍結防止運転を開始するように上記冷媒回路を制御することを特徴とする、ヒートポンプ式温水ユニット。
【請求項4】
圧縮機(1)、水熱交換器(2)、膨張機構(EV)、及び空気熱交換器(3)を有する冷媒回路と、
上記水熱交換器(2)を介して水を循環させる循環ポンプ(P)を有する水回路と、
上記冷媒回路と上記循環ポンプ(P)とを制御する制御部(10)と
を備え、
上記水回路に水を循環させた状態で上記水熱交換器(2)の凍結を防止する第1凍結防止運転と、上記水回路を循環する水の量が上記第1凍結防止運転よりも少ない状態で上記圧縮機(1)を運転して上記水熱交換器(2)の凍結を防止する第2凍結防止運転とを実行可能に構成されており、
上記第2凍結防止運転の終了から所定時間が経過したときに上記第2凍結防止運転を再度実行可能に構成されていることを特徴とする、ヒートポンプ式温水ユニット。
【請求項5】
上記第2凍結防止運転における上記圧縮機(1)の運転周波数は、上記水回路内の水を沸き上げる沸き上げ運転における上記圧縮機(1)の運転周波数よりも低いことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のヒートポンプ式温水ユニット。
【請求項6】
上記空気熱交換器(3)に空気を供給するファン(6)を備え、
上記制御部(10)は、上記ファン(6)が上記第2凍結防止運転において駆動するように上記ファン(6)を制御することを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のヒートポンプ式温水ユニット。
【請求項7】
上記膨張機構(EV)は、電動弁であり、
上記第2凍結防止運転における上記膨張機構(EV)の開度は、上記水回路内の水を沸き上げる沸き上げ運転における上記膨張機構(EV)の開度よりも大きいことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のヒートポンプ式温水ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートポンプ式温水ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートポンプ式温水ユニットとしては、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧手段、蒸発器を接続して形成した冷媒回路及び循環ポンプを内蔵するヒートポンプユニットと、貯湯タンクと、制御装置とを備えるものがある(特許文献1参照)。このヒートポンプ式温水ユニットでは、制御装置は、循環ポンプを駆動させ、貯湯タンクの下部の水を、水冷媒熱交換器を介して貯湯タンクの上部に搬送することにより、各配管内の水の凍結を抑制する凍結防止運転モードを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-196849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のヒートポンプ式温水ユニットでは、循環ポンプの故障などにより水の循環量が十分に確保できない場合に、水冷媒熱交換器の凍結を抑制できないという問題がある。
【0005】
本開示は、水熱交換器の凍結を抑制するヒートポンプ式温水ユニットを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のヒートポンプ式温水ユニットは、
圧縮機、水熱交換器、膨張機構、及び空気熱交換器を有する冷媒回路と、
上記水熱交換器を介して水を循環させる循環ポンプを有する水回路と、
上記冷媒回路と上記循環ポンプとを制御する制御部と
を備え、
上記水回路に水を循環させた状態で上記水熱交換器の凍結を防止する第1凍結防止運転と、上記水回路を循環する水の量が上記第1凍結防止運転よりも少ない状態で上記圧縮機を運転して上記水熱交換器の凍結を防止する第2凍結防止運転とを実行可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本開示によれば、制御部が、水回路を循環する水の量が第1凍結防止運転よりも少ない状態で圧縮機を運転して水熱交換器の凍結を防止する第2凍結防止運転を実行可能に構成されているので、循環ポンプの故障などにより水回路を循環する水の量を十分に確保できない状態であっても、第2凍結防止運転を実行することで水熱交換器の凍結を抑制できる。
【0008】
本開示の1つの態様に係るヒートポンプ式温水ユニットでは、
上記制御部は、上記水回路において上記水熱交換器を介した水の循環不良が発生しているとき、上記第2凍結防止運転を実行する。
【0009】
本開示によれば、水回路において水熱交換器を介した水の循環不良が発生しているときに、第2凍結防止運転が実行されるので、循環ポンプが故障などにより運転できない状態のときに第2凍結防止運転を適切に実行できる。
【0010】
本開示の1つの態様に係るヒートポンプ式温水ユニットでは、
上記制御部は、上記第1凍結防止運転において上記水熱交換器の入口温度又は出口温度が所定の第1温度よりも低いときに上記圧縮機を起動させた場合において、上記圧縮機の起動後の上記冷媒回路内を循環する冷媒の圧力が所定の圧力よりも高いときに、上記第2凍結防止運転を実行する。
【0011】
水回路において水熱交換器を介した循環不良が発生している場合、第1凍結防止運転において圧縮機を起動すると、水熱交換器における冷媒と水との間の熱交換が不十分になり、冷媒回路内の圧力が上昇する。本開示によれば、制御部は、第1凍結防止運転において圧縮機を起動した後の冷媒回路内の冷媒の圧力が所定の圧力よりも高いときに第2凍結防止運転を実行するので、循環ポンプが故障などにより運転できない状態のときに第2凍結防止運転を適切に実行できる。
【0012】
本開示の1つの態様に係るヒートポンプ式温水ユニットは、
上記第2凍結防止運転における上記圧縮機の運転周波数は、上記水回路内の水を沸き上げる沸き上げ運転における上記圧縮機の運転周波数よりも低い。
【0013】
本開示によれば、第2凍結防止運転における圧縮機の運転周波数が、沸き上げ運転における圧縮機の運転周波数よりも低いので、第2凍結防止運転において冷媒の圧力が過度に上昇することを抑制できる。
【0014】
本開示の1つの態様に係るヒートポンプ式温水ユニットは、
上記空気熱交換器に空気を供給するファンを備え、
上記制御部は、上記ファンが上記第2凍結防止運転において駆動するように上記ファンを制御する。
【0015】
本開示によれば、第2凍結防止運転において、空気熱交換器に空気を供給するファンを駆動するので、冷媒の圧力が過度に上昇することを抑制できる。
【0016】
本開示の1つの態様に係るヒートポンプ式温水ユニットでは、
上記制御部は、上記水熱交換器での凝縮温度が所定の第2温度よりも高いときに上記第2凍結防止運転を終了するように上記冷媒回路を制御する。
【0017】
本開示によれば、第2凍結防止運転が水熱交換器での凝縮温度が第2温度よりも高くなると終了するので、例えば、第2温度を沸き上げ温度よりも低く設定することで、第2凍結防止運転において冷媒の圧力が過度に上昇することを抑制できる。
【0018】
本開示の1つの態様に係るヒートポンプ式温水ユニットでは、上記制御部は、上記圧縮機の吐出管温度が所定の第3温度よりも低いときに上記第2凍結防止運転を開始するように上記冷媒回路を制御する。
【0019】
本開示によれば、一度第2凍結防止運転を実行した後に、第2凍結防止運転によって上昇した吐出管温度が所定の第3温度よりも低くなってから、次の第2凍結防止運転は実行可能になる。これにより、例えば、第3温度を圧縮機が十分に冷却された温度に設定することで、一度第2凍結防止運転を実行してから次に第2凍結防止運転を実行するまでの時間が確保されるので、第2凍結防止運転が頻繁に実行されることを抑制できる。
【0020】
本開示の1つの態様に係るヒートポンプ式温水ユニットでは、上記膨張機構は、電動弁であり、上記第2凍結防止運転における上記膨張機構の開度は、上記水回路内の水を沸き上げる沸き上げ運転における上記膨張機構の開度よりも大きい。
【0021】
本開示によれば、第2凍結防止運転における電動弁の開度は、水回路内の水を沸き上げる沸き上げ運転における上記膨張機構の開度よりも大きいので、第2凍結防止運転において冷媒の圧力が過度に上昇することを抑制できる。
【0022】
本開示の1つの態様に係るヒートポンプ式温水ユニットは、上記第2凍結防止運転の終了から所定時間が経過したときに上記第2凍結防止運転を再度実行可能に構成されている。
【0023】
本開示によれば、一度第2凍結防止運転を実行してから次に第2凍結防止運転を実行するまでの時間が確保されるので、第2凍結防止運転が頻繁に実行されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の実施形態に係るヒートポンプ式温水ユニットの構成図である。
図2】本開示の実施形態に係るヒートポンプ式温水ユニットの制御ブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係る凍結防止運転の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施形態に係るヒートポンプ式温水ユニットを説明する。
【0026】
図1は、本開示に係るヒートポンプ式温水ユニットが適用される給湯装置の構成図である。
【0027】
この給湯装置は、図1に示すように、ヒートポンプユニット100と、貯湯ユニット200とを備えている。
【0028】
ヒートポンプユニット100は、圧縮機1と、圧縮機1の吐出側に一端が接続された水熱交換器2と、水熱交換器2の他端に一端が接続された電動膨張弁EVと、電動膨張弁EVの他端に一端が接続された室外熱交換器3と、室外熱交換器3の他端に一端が接続され、他端が圧縮機1の吸入側に接続されたアキュムレータ4とを備える。上記室外熱交換器3近傍に室外ファン6を配置している。水熱交換器2は、外管2aとその外管2a内に挿入された内管2bからなる2重管熱交換器である。なお、水熱交換器は、2重管熱交換器に限らず、プレート式の熱交換器などでもよい。本実施形態に係る室外熱交換器3は、本開示に係る空気熱交換器の一例である。本実施形態に係る電動膨張弁EVは、本開示に係る膨張機構の一例である。
【0029】
本実施形態に係る電動膨張弁EVは、ステッピングモータ(図示せず)により駆動されるパルス駆動方式の電動膨張弁である。電動膨張弁EVの開度は、0%~100%(例えば、0pls~470plsに相当)の間で調整される。
【0030】
上記圧縮機1と水熱交換器2と室外熱交換器3と電動膨張弁EVおよびアキュムレータ4で、本開示に係る冷媒回路を構成している。
【0031】
上記圧縮機1の吐出側に吐出管温度センサ11を設けている。また、室外熱交換器3の近傍に室外温度を検出する室外温度センサ12を設けている。
【0032】
また、上記ヒートポンプユニット100では、水熱交換器2の入水口に入水配管L1の一端が接続され、水熱交換器2の出湯口に出湯配管L2の一端が接続されている。入水配管L1に入水温度センサ13を設け、出湯配管L2に出湯温度センサ14を設けている。入水配管L1に循環ポンプPを配設している。この循環ポンプPには、循環ポンプPの回転数を検出する回転数センサ(図示せず)と、循環ポンプPが吐出する流量を検出する流量センサ(図示せず)とが設けられている。
【0033】
また、上記ヒートポンプユニット100では、上記圧縮機1の吐出側に圧縮機1の吐出圧力を測定する圧力センサ15を設けている。
【0034】
上記ヒートポンプユニット100は、本開示に係る制御部の一例としての制御装置10を備えている。なお、この制御装置10は、貯湯ユニット200側に備えてもよいし、ヒートポンプユニット100と貯湯ユニット200の夫々に、協調動作する制御装置を備えてもよい。
【0035】
また、貯湯ユニット200は、貯湯タンク20を備えている。貯湯タンク20の下部に入水配管L1の他端が接続され、貯湯タンク20の上部に出湯配管L2の他端が接続されている。貯湯タンク20には、下側から上側に向かって間隔をあけて3つの温度センサT1~T3を設けている。
【0036】
水熱交換器2と、貯湯タンク20と、循環ポンプPとで本開示に係る水回路を構成している。
【0037】
また、貯湯タンク20の下部に、減圧弁21が配設された給水配管L11が接続されている。貯湯タンク20の上部に配管L12の一端が接続され、配管L12の他端が給湯混合弁22の第1入水ポートに接続されている。給湯混合弁22の第2入水ポートに、給水配管L11から分岐した配管L13が接続されている。
【0038】
上記給湯混合弁22の出水ポートに給湯配管L14の一端を接続し、給湯配管L14の他端に給湯部30(例えば蛇口や風呂のカラン,シャワー)を接続している。給湯配管L14に給湯温度センサ23を設けている。
【0039】
図2は、第1実施形態の給湯装置の制御ブロック図である。この制御装置10は、マイクロコンピュータおよび入出力回路などからなり、図2に示すように、吐出管温度センサ11,室外温度センサ12,温度センサT1~T3,入水温度センサ13,出湯温度センサ14,圧力センサ15,給湯温度センサ23,並びに循環ポンプPに設けられた回転数センサ及び流量センサ(図示せず)からの信号に基づいて、圧縮機1,室外ファン用モータ6a,電動膨張弁EV,循環ポンプP,給湯混合弁22などを制御する。
【0040】
本実施形態のヒートポンプ式温水ユニットは、ヒートポンプユニット100により貯湯タンク20内の湯を沸き上げる沸き上げ運転と、水熱交換器2内の水の凍結を防止するための凍結防止運転と、室外熱交換器3に付着した霜を融解する除霜運転とを実行可能である。以下、沸き上げ運転と、凍結防止運転とについて説明する。また、本実施形態に係る除霜運転は、所謂正サイクル除霜運転であり、その詳細な説明を省略する。
【0041】
(沸き上げ運転)
上記構成の給湯装置において、ヒートポンプユニット100により貯湯タンク20内の湯を沸き上げる「沸き上げ運転」では、循環ポンプPを運転して、貯湯タンク20内の湯を、入水配管L1,ヒートポンプユニット100の水熱交換器2,出湯配管L2を介して循環させる。
【0042】
このとき、ヒートポンプユニット100では、電動膨張弁EVが所定の開度に開かれた状態で、圧縮機1が運転される。循環ポンプPによって水熱交換器2に供給された水は、水熱交換器2において、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒との熱交換によって温められる。
【0043】
(凍結防止運転)
本開示に係る制御装置10は、水回路に水を循環させた状態で水熱交換器2の凍結を防止する第1凍結防止運転と、水回路を循環する水の量が第1凍結防止運転よりも少ない状態で圧縮機1を運転して水熱交換器2の凍結を防止する第2凍結防止運転とを実行可能なように構成されている。
【0044】
第1凍結防止運転では、制御装置10は、循環ポンプPを運転して、貯湯タンク20内の水を、入水配管L1,ヒートポンプユニット100の水熱交換器2,出湯配管L2を介して循環させる。
【0045】
第1凍結防止運転では、循環ポンプPによって、ヒートポンプユニット100の水熱交換器2に供給された水の熱によって、水熱交換器2が温められ、水熱交換器2の凍結が抑制される。
【0046】
第2凍結防止運転では、制御装置10は、水回路を循環する水の量が第1凍結防止運転よりも少ない状態でヒートポンプユニット100を運転して、水熱交換器2を温める。具体的には、第2凍結防止運転では、制御装置10は、圧縮機1を運転して、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒によって、水熱交換器2が温められる。
【0047】
本実施形態の沸き上げ運転では、圧縮機1は、運転周波数が約60Hzで固定されるように制御される。本実施形態では、第2凍結防止運転における圧縮機1の運転周波数は、沸き上げ運転における圧縮機1の運転周波数よりも低い。例えば、本実施形態では、第2凍結防止運転では、圧縮機1は、運転周波数が約32Hzとなるように制御される。また、除霜運転では、圧縮機1は、運転周波数が約80Hzとなるように制御される。
【0048】
本実施形態の沸き上げ運転では、電動膨張弁EVは、駆動パルスが60pls相当の開度から470pls相当の開度の間となるように制御される。一方で、本実施形態の第2凍結防止運転では、電動膨張弁EVは、駆動パルスが470pls相当の開度(すなわち、全開)となるように制御される。また、除霜運転では、電動膨張弁EVは、駆動パルスが470pls相当の開度(全開)となるように制御される。
【0049】
本実施形態の沸き上げ運転では、室外ファン6は、回転数が500rpmから800rpmの間となるように制御される。第2凍結防止運転では、室外ファン6は、回転数が500rpmとなるように制御される。除霜運転では、室外ファン6は、駆動しないように制御される。
【0050】
(制御装置による凍結防止運転の制御)
図3は、本実施形態に係る制御装置10が実行する凍結防止運転の制御フローチャートである。以下、図3を参照して、本実施形態の制御装置10による凍結防止運転の制御を説明する。
【0051】
本実施形態では、所定の条件が満たされた場合に、制御装置10は、凍結防止運転を開始する(ステップS1)。具体的には、制御装置10は、室外温度センサ12によって検出された室外温度が、所定の温度(例えば、-10℃)よりも低い状態で、所定の時間(例えば、20分)経過したときに、凍結防止運転を開始する。または、制御装置10は、入水温度センサ13によって検出された入水温度と、出湯温度センサ14によって検出された出湯温度とのうちの少なくとも一方が、所定の温度(例えば、3℃)よりも低くなったときに、凍結防止運転を開始する。
【0052】
凍結防止運転が開始されると、制御装置10は、循環ポンプPが停止している状態で、第1凍結防止運転を実行可能か否かを判定する(ステップS2)。制御装置10は、水回路での水の循環量が十分に確保できないことが予想される場合に、第1凍結防止運転を実行できないと判定し、それ以外の場合には、第1凍結防止運転を実行可能であると判定する。
【0053】
ステップS2において、制御装置10は、例えば、循環ポンプPの故障、循環ポンプPにおけるエア噛みの発生、又は水配管の凍結等によって、水の循環量が十分に確保できないことが判明しているときに、第1凍結防止運転を実行できないと判定して、ステップS8に進む。ステップS8については後述する。
【0054】
循環ポンプPの故障によって水の循環量が十分に確保できないことが判明しているときとは、例えば、循環ポンプPの故障により本実施形態の給湯装置が異常停止しているときである。
【0055】
本実施形態の給湯装置は、例えば、回転数センサ(図示せず)によって検出された循環ポンプPの回転数の検出値が、制御装置10から循環ポンプPへの回転数に関する指示値の1/2以下のときに、循環ポンプPが故障しているとして異常停止する。具体的には、例えば、制御装置10から循環ポンプPへの回転数に関する指示値が5000rpmであるときに、循環ポンプPの回転数センサによって検出された回転数の検出値が2000rpmであるときに、制御装置10は、循環ポンプPが故障しているとして、給湯装置を異常停止する。
【0056】
循環ポンプPにおけるエア噛みの発生によって水の循環量が十分に確保できないことが判明しているときとは、例えば、循環ポンプPにおけるエア噛みの発生により、給湯装置が異常停止しているときである。
【0057】
本実施形態の給湯装置は、例えば、循環ポンプPの回転数が所定の値(例えば、1000rpm)以上である場合に、流量センサ(図示せず)が検出した流量が所定の値(例えば0.2l/min)以下であるときに、循環ポンプPにおいてエア噛みが発生しているとして異常停止する。
【0058】
本実施形態の給湯装置は、例えば、循環ポンプPの回転数が所定の値(例えば、1000rpm)以上の場合に、圧縮機1の起動後所定時間(例えば、1分)経過後の圧力センサ15によって検出された圧力が所定の圧力(例えば、4.2MPa)よりも高いときに、循環ポンプPにおいてエア噛みが発生しているとして異常停止する。水の循環量が十分に確保できない場合、圧縮機1を起動すると、水熱交換器2における冷媒と水との間の熱交換が不十分になり、冷媒回路内の圧力が上昇する。
【0059】
一方で、制御装置10は、第1凍結防止運転を実行可能であると判定したときは、第1凍結防止運転を開始する(ステップS3)。
【0060】
次に、ステップS3において第1凍結防止運転が開始された後、制御装置10は、第1凍結防止運転が正常に終了される正常終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS4)。
【0061】
制御装置10は、第1凍結防止運転が開始された後、所定の時間(例えば、20分)経過する前に、入水温度センサ13によって検出された入水温度と、出湯温度センサ14によって検出された出湯温度とが所定の温度(例えば6℃)以上になったとき、正常終了条件が満たされたと判定して、第1凍結防止運転を終了する(ステップS4-1)。その後、制御装置10は、凍結防止運転を終了する(ステップS12)。
【0062】
一方で、第1凍結防止運転が開始されてから所定の時間(例えば、20分)経過したときの入水温度と出湯温度とが所定の第1温度(例えば6℃)に満たないときは、制御装置10は、正常終了条件を満たしていないと判定して、圧縮機1の運転を開始する(ステップS5)。このときの圧縮機1の運転周波数、電動膨張弁EVの開度、及び室外ファン6の回転数は、沸き上げ運転のときと同様であってもよい。
【0063】
次に、圧縮機1が起動された後、制御装置10は、上記水回路における水の循環不良が発生しているか否かを判定する(ステップS6)。
【0064】
水回路において水熱交換器2を介した循環不良が発生している場合、圧縮機1を起動すると、水熱交換器2における冷媒と水との間の熱交換が不十分になり、冷媒回路内の圧力が上昇する。制御装置10は、圧縮機1の起動後所定時間(例えば、2分)経過後の圧力センサ15によって検出された圧力が所定の圧力よりも高いときに、上記水回路における水の循環不良が発生しているとし、第1凍結防止運転を終了する(ステップS7)。
【0065】
一方で、ステップS6において、水の循環不良が発生していないと判定されると、制御装置10は、第1凍結防止運転を異常停止させて(ステップS6-1)、凍結防止運転を終了する(ステップS12)。
【0066】
ステップS7において、第1凍結防止運転を終了させた後、制御装置10は、第2凍結防止運転が可能か否かを判定する(ステップS8)。制御装置10は、以下の(1-1)~(1-5)の5つの条件を全て満たした場合に、第2凍結防止運転が可能であると判定して、第2凍結防止運転を開始する(ステップS9)。第2凍結防止運転では、制御装置10は、圧縮機1の運転周波数が約32Hzになるように圧縮機1を制御し、電動膨張弁EVの開度が470pls(全開)になるように電動膨張弁EVを制御し、室外ファン6の回転数が500rpmとなるように室外ファン6を制御する。
【0067】
(1-1)室外温度センサ12によって検出された室外温度が所定の温度(例えば、4℃)未満である。
【0068】
(1-2)入水温度センサ13によって検出された入水温度と、出湯温度センサ14によって検出された出湯温度とのうちの少なくとも一方が所定の温度(例えば、3℃)未満である。
【0069】
(1-3)吐出管温度センサ11によって検出された吐出管温度が所定の温度(例えば、15℃)未満である。
【0070】
(1-4)水回路における水熱交換器2を介した水の循環不良が発生している。水回路における水熱交換器2を介した水の循環不良の有無は、前述したように、第1凍結防止運転において圧縮機1を運転したときの冷媒回路内の冷媒の圧力に基づく。
【0071】
(1-5)冷媒回路に異常が発生していない。制御装置10は、例えば、圧縮機1に異常が発生している場合、又は室外ファン6に異常が発生している場合などに、冷媒回路に異常が発生しているとする。
【0072】
なお、一度第2凍結防止運転を実行している場合においては、前回の第2凍結防止運転の終了から所定の時間経過していることを第2凍結防止運転が可能であると判定する条件に追加してもよい。上記所定の時間は、外気温度に応じて変更されてもよい。例えば、外気温度が低い場合には、上記所定の時間を短くすることが好ましい。
【0073】
ステップS9において、第2凍結防止運転が開始した後に、制御装置10は、第2凍結防止運転が正常に終了される正常終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS10)。制御装置10は、第2凍結防止運転を開始した後に、以下の(2-1)~(2-3)の3つの条件のうちいずれか1つを満たした場合に、正常終了条件を満たしたと判定して、第2凍結防止運転を終了する(ステップS11)。その後、制御装置10は、凍結防止運転を終了する(ステップS12)
【0074】
(2-1)第2凍結防止運転を開始して所定の時間(例えば、2分)以上経過し、かつ、水熱交換器2における凝縮温度が所定の第2温度(例えば、40℃)を超えている。本実施形態では、水熱交換器2における凝縮温度は、圧力センサ15によって検出された冷媒回路の圧力から推定される。
【0075】
(2-2)第2凍結防止運転を開始して所定の時間(例えば、30分)以上経過している。上記所定の時間は、外気温度に応じて変更されてもよい。
【0076】
(2-3)室外温度センサ12によって検出された室外温度が所定の温度(例えば、4℃)以上である。
【0077】
一方で、制御装置10は、冷媒回路に異常が発生していると判定したときに、正常終了条件を満たさないと判定して、第2凍結防止運転を異常停止し(ステップS10-1)、凍結防止運転を終了する(ステップS12)。制御装置10は、例えば、圧縮機1に異常が発生している場合、又は室外ファン6に異常が発生している場合などに、冷媒回路に異常が発生していると判断する。
【0078】
上記実施形態によれば、制御装置10が、循環ポンプPが動作しない状態で圧縮機1を運転して水熱交換器2を温める第2凍結防止運転を実行可能に構成されているので、循環ポンプPが故障などにより運転できない状態であっても、第2凍結防止運転を実行することで水熱交換器2の凍結を抑制できる。
【0079】
上記実施形態によれば、水回路において水熱交換器2を介した水の循環不良が発生しているときに、第2凍結防止運転が実行されるので、循環ポンプPが故障などにより運転できない状態のときに第2凍結防止運転を適切に実行できる。
【0080】
水回路において水熱交換器2を介した循環不良が発生している場合、第1凍結防止運転において圧縮機1を起動すると、水熱交換器2における冷媒と水との間の熱交換が不十分になり、冷媒回路内の圧力が上昇する。本開示によれば、制御装置10は、第1凍結防止運転において圧縮機1を起動した後の冷媒回路内の冷媒の圧力が所定の圧力よりも高いときに第2凍結防止運転を実行するので、循環ポンプPが故障などにより運転できない状態のときに第2凍結防止運転を適切に実行できる。
【0081】
上記実施形態によれば、第2凍結防止運転における圧縮機1の運転周波数が、沸き上げ運転における圧縮機1の運転周波数よりも低いので、第2凍結防止運転において冷媒の圧力が過度に上昇することを抑制できる。
【0082】
上記実施形態によれば、第2凍結防止運転において、室外熱交換器3に空気を供給する室外ファン6を駆動するので、室外熱交換器3における冷媒と空気との間の熱交換が促進される。その結果、冷媒回路内の低圧の上昇が抑制されるので、冷媒の圧力が過度に上昇することを抑制できる。
【0083】
上記実施形態によれば、第2凍結防止運転が水熱交換器2での凝縮温度が第2温度よりも高くなると終了するので、例えば、第2温度を、沸き上げ温度(本実施形態では40℃)よりも低く設定することで、第2凍結防止運転において冷媒の圧力が過度に上昇することを抑制できる。
【0084】
上記実施形態によれば、一度第2凍結防止運転を実行した後に、第2凍結防止運転によって上昇した吐出管温度が所定の第3温度よりも低くなってから、次の第2凍結防止運転は実行可能になる。これにより、例えば、第3温度を圧縮機1が十分に冷却された温度(本実施形態では、15℃)に設定することで、一度第2凍結防止運転を実行してから次に第2凍結防止運転を実行するまでの時間が確保されるので、第2凍結防止運転が頻繁に実行されることを抑制できる。
【0085】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0086】
例えば、上記実施形態では、本開示に係るヒートポンプ式温水ユニットは、給湯装置に適用されていたが、これに限定されず、床暖房装置のような他の装置に適用されてもよい。
【0087】
例えば、第2凍結防止運転の終了条件の1つである(2-1)の条件において、水熱交換器2における凝縮温度を使用したが、これに限定されず、水熱交換器2の温度、又は水熱交換器2の周辺温度を測定して使用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…圧縮機
2…水熱交換器
3…室外熱交換器
4…アキュムレータ
6…室外ファン
6a…室外ファン用モータ
10…制御装置(制御部)
11…吐出管温度センサ
12…室外温度センサ
13…入水温度センサ
14…出湯温度センサ
15…圧力センサ
20…貯湯タンク
21…減圧弁
22…給湯混合弁
23…給湯温度センサ
30…給湯部
100…ヒートポンプユニット(加熱部)
200…貯湯ユニット
EV…電動膨張弁(膨張機構)
P…循環ポンプ
T1~T3…温度センサ
図1
図2
図3