(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】カラーテーブル圧縮
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20220527BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20220527BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20220527BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220527BHJP
H03M 7/30 20060101ALI20220527BHJP
H04N 19/61 20140101ALI20220527BHJP
【FI】
H04N1/60
B41J2/525
G03G15/01 S
G06T1/00 510
H03M7/30 A
H04N19/61
(21)【出願番号】P 2020065671
(22)【出願日】2020-04-01
(62)【分割の表示】P 2018561527の分割
【原出願日】2016-11-07
【審査請求日】2020-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】PCT/US2016/041633
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(73)【特許権者】
【識別番号】507407157
【氏名又は名称】パーデュ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】タン,チョウハオ
(72)【発明者】
【氏名】コリソン,シーン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リーブマン,エイミー,ルース
(72)【発明者】
【氏名】ショー,マーク,キュー
(72)【発明者】
【氏名】アレバック,ジャン,ピー
(72)【発明者】
【氏名】ゴンデク,ジェイ,エス
【合議体】
【審判長】五十嵐 努
【審判官】千葉 輝久
【審判官】川崎 優
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/112606(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/195342(US,A1)
【文献】国際公開第2016/028272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N1/46-1/64
H04N1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを有する印刷装置に動作可能に結合されるプリントカートリッジであって、
前記印刷装置のためのカラーテーブルを復元するためのデータを含むメモリデバイスを含み、前記データが、
前記メモリデバイスに記憶された圧縮ビットストリームを含み、前記圧縮ビットストリームが、
差分カラーテーブルの複数の差分ノードの不可逆圧縮から得られた複数の量子化された係数であって、前記量子化された係数が、選択されたステップサイズを使用して量子化されており、復元されたカラーテーブルを得るために、前記差分カラーテーブルの前記量子化された係数が、前記印刷装置上の基準テーブルと共に使用可能であり、前記量子化された係数から復元された前記差分カラーテーブル上の各ノードの値が、前記印刷装置に記憶された前記基準テーブルの対応するノードの値に加算されるべきものである、複数の量子化された係数と、
前記基準テーブルのノードに対応する、残余値を用いて修正されるべき一組のノードについての補正情報であって、前記補正情報が、残余値と、前記残余値を用いて修正されるべき前記一組のノードの位置についてのノード位置情報とを含む、補正情報と
を含み、
前記圧縮ビットストリームに含まれる前記量子化された係数及び前記補正情報が、圧縮されており、
前記メモリデバイスが、さらなる情報として前記選択されたステップサイズを含み、
前記圧縮ビットストリームが、前記プロセッサによって前記メモリデバイスから読み出され、
前記復元されたカラーテーブルを得るために、前記量子化された係数及び前記補正情報が、前記基準テーブルと共に、前記プロセッサによって使用され、
印刷時に色空間の間の色変換を実施するために、前記復元されたカラーテーブルが、前記プロセッサによって使用されるものである、プリントカートリッジ。
【請求項2】
前記プロセッサによって、
前記圧縮ビットストリームが圧縮解除されることにより、前記量子化された係数及び前記補正情報が得られ、
前記量子化された係数に係数ビット割当てテーブルが適用されることにより、DCT係数が復元され、
前記復元されたDCT係数が、逆DCT変換を使用して、もとの係数に変換され、
前記もとの係数に前記選択されたステップサイズが乗算され、最小の整数に丸められることにより、最初に復元された差分カラーテーブルが得られ、
前記補正情報が前記最初に復元された差分カラーテーブルに適用されることにより、圧縮解除された差分カラーテーブルが得られ、
前記基準テーブルが前記圧縮解除された差分カラーテーブルに加算されることにより、前記復元されたカラーテーブルが得られるものである、請求項1に記載のプリントカートリッジ。
【請求項3】
前記圧縮ビットストリームは、可逆圧縮を用いて圧縮されており、前記選択されたステップサイズでの離散コサイン変換(DCT)から得られた量子化された係数のデータストリームを含む、請求項1または請求項2に記載のプリントカートリッジ。
【請求項4】
トナーまたはインクのリザーバを含む、請求項1~3の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項5】
前記差分カラーテーブルの前記量子化された係数のデータストリームは、量子化された係数の一次元データストリームである、請求項3、または、請求項3を引用する請求項4に記載のプリントカートリッジ。
【請求項6】
前記差分カラーテーブルの前記量子化された係数は、前記不可逆圧縮の反転に基づいて復元された差分カラーテーブルを生成することに使用可能である、請求項1~5の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項7】
前記基準テーブルは、複数のカラールックアップテーブルに基づく、請求項1~6の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項8】
前記係数ビット割当てテーブルは、前記差分カラーテーブルの前記量子化された係数の各々に割り当てられたビットの数に関連する情報を含む、
請求項2、及び請求項2を直接的または間接的に引用する請求項3~7の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項9】
前記係数ビット割当てテーブルは、前記メモリデバイスまたは前記印刷装置に含まれる、請求項2及び請求項2を直接的または間接的に引用する請求項3~8の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項10】
前記トナーまたはインクのリザーバは、前記差分カラーテーブルに対応する色を有する、請求項4、及び請求項4を直接的または間接的に引用する請求項5~9の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項11】
前記プリントカートリッジは、黒のインクまたはトナーを貯蔵するためのリザーバを含み、前記差分カラーテーブルは、前記黒のインクまたはトナーに対応し、または
前記プリントカートリッジは、カラーのインクまたはトナーを貯蔵するためのリザーバを含み、前記差分カラーテーブルは、前記カラーのインクまたはトナーに対応する、請求項10に記載のプリントカートリッジ。
【請求項12】
前記差分カラーテーブルの前記複数の量子化された係数、前記複数の差分ノード、及び前記補正情報は、パッケージに含まれ、前記メモリデバイスは、複数の別個のパッケージを含み、各パッケージが、前記差分カラーテーブルの別個の複数の量子化された係数、別個の複数の差分ノード、及び別個の補正情報を含む、請求項1~11の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項13】
各差分ノードは、カラーテーブルのノードの値と前記基準テーブルの対応するノードの値との差である値を表している、請求項1~12の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項14】
前記複数の差分ノードは、選択された圧縮率において誤差閾値外の色差を有する一組のノードを含む、請求項1~13の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【請求項15】
前記圧縮ビットストリームに含まれる前記量子化された係数及び前記補正情報は、可逆圧縮を用いて圧縮されている、請求項1~14の何れか一項に記載のプリントカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カラーマネージメントシステムは、イメージスキャナ、デジタルカメラ、コンピュータモニタ、プリンタ、及び対応する媒体のような様々なデバイスのカラー表現の間に制御された変換を提供する。デバイスプロファイルは、カラーマネジメントシステムに対し、デバイス本来の色空間とデバイス非依存の色空間との間、デバイス非依存の色空間とデバイス本来の色空間との間、及びソースデバイスの色空間と直接的にターゲットデバイスの色空間との間といった種々の色空間の間で、色データを変換するための情報を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】圧縮カラーテーブルを有する例示的メモリデバイスを示すブロック図である。
【
図2】
図1のメモリデバイス上の圧縮カラーテーブルを実施する例示的システムを示すブロック図である。
【
図3】
図1の圧縮カラーテーブルを生成する例示的方法を示すブロック図である。
【
図4】
図3の例示的方法の特徴を組み込んだ、カラーテーブルを圧縮する例示的方法を示すブロック図である。
【
図5】
図3の例示的方法の追加的特徴を有する例示的方法を示すブロック図である。
【
図6】例示的印刷装置に動作可能に結合された
図1のメモリデバイスの圧縮カラーテーブルを含む例示的メモリデバイスを示すブロック図である。
【
図7】
図6のメモリデバイスを復号する例示的方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下の詳細な説明では、添付の図面が参照される。添付の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示を実施することができる種々の具体例を例として示している。本開示の範囲から逸脱することなく、他の例が使用されてもよく、構造的又は論理的変更がなされてもよいものと理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。特に明記しない限り、本明細書に記載された様々な例の特徴は、部分的または全体的に互いに組み合わせてもよいものと理解すべきである。
【0004】
色空間は、種々の軸を有し、色を数値で表す系である。印刷装置のような一部の出力デバイスは、シアン-マゼンタ-イエロー-キー(黒)(CMYK)型の色空間を使用する場合があるのに対し、一部のソフトウェアアプリケーションや表示装置は、赤-緑-青(RGB)型の色空間を使用する場合がある。例えば、CMYK色空間で表された色は、シアン値、マゼンタ値、イエロー値、及びキー値を有し、それらの組み合わせによって、その色を数値的に表現する。
【0005】
カラープロファイルは、色空間を特徴付ける一組のデータである。一例では、カラープロファイルは、ソース又はターゲット色空間のようなデバイス依存の色空間とプロファイル接続空間(PCS:Profile Connection Space)のようなデバイス非依存の色空間との間におけるマッピング、あるいはその逆のマッピングを用いて、特定のデバイスのカラー属性または表示仕様を表すことができる。マッピングは、ルックアップテーブルのようなテーブルを使用して指定され、テーブルに補間が適用される場合もあれば、変換のための一連のパラメータによって指定される場合もある。色をキャプチャ又は表示する種々のデバイス及びソフトウェアプログラム(例えば、印刷装置、モニタ、テレビ、オペレーティングシステム、ブラウザ、及び他のデバイス及びソフトウェアなど)は、ハードウェアとプログラムの様々な組み合わせを含むプロファイルを有することがある。ICCプロファイルは、国際色協会(ICC:International Color Consortium)によって公布された種々の規格に従って色空間を特徴付ける一組のデータであるカラープロファイルの一例である。ただし、ICCプロファイルを使用した本開示の例は、単なる例示のためのものであり、その説明は、他のタイプのカラープロファイルや色空間にも適用可能である。
【0006】
ICCプロファイルフレームワークは、様々な色空間の間で伝達または交換するための規格として使用されている。ICC出力プロファイルは、いわゆるA2Bカラールックアップテーブル及びB2Aカラールックアップテーブルと呼ばれる、カラーテーブル対を含む。ここで、AとBは、デバイス依存の色空間及びデバイス非依存の色空間をそれぞれ示している。異なるデバイスについて、異なるルックアップテーブルレンダリングインテント対が存在する。例えば、ICCプロファイルでは、0~2の3つのカラーテーブル対について、ユーザは、3つの可能なレンダリングインテント:知覚、比色、彩度の中から1つを選ぶことができる。様々なデバイス間で色の忠実度を実現するために、ICCプロファイルは、多くの場合、ハードウェアとプログラムの様々な組み合わせとしてカラー文書に埋め込まれ、その結果、これらの文書の総サイズは、増加する。また、空間のサンプリングの精細化やビット深度の拡大によっても、カラーテーブルのサイズは、増加することになる。
【0007】
様々な色空間の間に変換を提供するカラーテーブルは、カラーマネージメントに広く使用されており、一般的例は、デバイス非依存の色空間(CIELAB、すなわち、L*a*b*等)からデバイス依存の色空間(RGBやCMYK等)への変換であり、その逆もあり得る。マッピングは、1以上の一次元又は多次元のルックアップテーブルのようなテーブルを使用して指定され、そこに補間が適用される場合もあれば、変換のための一連のパラメータによって指定される場合もある。カラーテーブルは、ランタイム計算をカラールックアップテーブルのようなもっと単純な配列インデックス操作に置き換える、メモリデバイス上のアレイまたは他のデータ構造を含む場合がある。また、本開示の目的上、カラーテーブルには、単色のカラーテーブルやグレースケールのカラーテーブルも含まれ得る。
【0008】
印刷装置(プリンタ;複写機;ファクシミリ;スキャン機能、コピー機能及び仕上げ機能を有する多機能デバイス;オールインワンデバイス;又は、3次元物体上に画像を印刷するためのパッドプリンタや3次元プリンター(積層造形デバイス)のような他のデバイスを含む)は、カラーマネージメントシステムを使用して、イメージスキャナ、デジタルカメラ、コンピュータモニタ、プリンタ、及びソフトウェアアプリケーションといった様々なデバイスのカラー表現の間に制御された変換を提供する。一例では、印刷装置は、多くの場合、多次元カラールックアップテーブルを含むカラーテーブルを使用して、入力デバイス非依存の色から媒体上への印刷のためのCMYKインク量への変換のような、様々な色空間の間における変換を提供する。カラープリンタや他の印刷装置のような装置の場合、カラーテーブルは、多くの場合、プリンタファームウェアを記憶しているメモリデバイス、又は他のハードウェアに埋め込まれ、カラーテーブルは、記憶装置内のコンピュータメモリを消費する。空間のサンプリングを精細化したり、ビット深度を拡大したりする風潮は、テーブルサイズを増加させる結果をもたらし、さらに、コンピュータメモリのコストやコンピュータメモリ上の空き空間に関する心配を悪化させる。さらに、効率的メモリ使用及び記憶空間消費の心配は、ICCソースプロファイルのような、カラー文書に埋め込まれたカラーテーブルにも言える。埋め込みプロファイルが使用されるアプリケーションでは、埋め込みプロファイルは、負荷に相当する。
【0009】
図1は、圧縮差分カラーテーブル102と補正情報104とを含む例示的メモリデバイス100を示している。圧縮されることになる差分カラーテーブルは、複数の差分ノードを含み、各差分ノードは、元のカラーテーブルのノードの値と基準テーブルの対応するノードの値との差の値を表している。差分カラーテーブルは、圧縮率のような選択された圧縮量で圧縮される。複数の差分ノードは、選択された圧縮率において誤差閾値外の色差を有する一組のノードを含む。補正情報は、カラーテーブルのこの一組のノードに対応する。
【0010】
一例では、メモリデバイスは、消耗品構成要素のためのものであってもよい。例えば、メモリデバイスは、印刷装置のプリントカートリッジのためのものであってもよい。一部の例では、メモリデバイスは、印刷装置のための消耗品構成要素に含まれる場合がある。一部の例では、差分カラーテーブルに対応するカラーテーブルの復元に使用される基準テーブルが、印刷装置上に配置された独立したメモリデバイス上に含まれる場合がある。入力デバイス非依存の色からCMYKインク量への変換のような、異なる色空間の間における変換を提供するために、カラーテーブルは、多次元のカラールックアップテーブルを含む場合がある。この色変換は、インクを含むプリントカートリッジの消耗品構成要素に含まれるインクの特定の配合に依存するといったように、インクに依存することがあるため、圧縮差分テーブルは、基準テーブルを有する印刷装置と共に使用されるプリントカートリッジ上に配置されたメモリデバイスに記憶される場合がある。
【0011】
本明細書において、印刷装置消耗品構成要素は、消費可能な印刷材料を印刷装置における使用のために当該構成要素から印刷装置に供給することができる構成要素に対応する場合がある。印刷装置消耗品構成要素の一部の例は、プリントカートリッジと呼ばれる場合がある。プリントカートリッジは交換可能である場合があり、2次元プリントカートリッジであってもよいし、3次元プリントカートリッジであってもよい。印刷装置消耗品構成要素及びプリントカートリッジの例は、印刷装置/システムに交換可能に結合されたときに印刷動作に使用される予備の印刷材料を格納する印刷材料リザーバを備える場合がある。本明細書で使用されるように、印刷材料の例としては、消耗流体、及び/又は消耗粉体のような消耗材料が挙げられる。印刷材料の例としては、インク、トナー、光沢剤、ワニス、粉体、シーラント、着色剤、及び/又は、印刷のための他のそのような材料が挙げられる。例えば、プリントカートリッジは、印刷装置が印刷することができる少なくとも1つの色(又は2以上の色)に対応する流体インクを含む場合がある。他の例では、プリントカートリッジは、印刷装置が印刷することができる少なくとも1つの色(又は2以上の色)に対応するトナーを含む場合がある。一部の例において、そのような消耗品構成要素及びそのプリントカートリッジは、「交換式消耗品」と呼ばれることがある。
【0012】
例示的メモリデバイス100は、1以上の揮発性又は不揮発性のコンピュータ記憶媒体の組み合わせを含むように実施されることがある。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータのような情報の記憶のための任意の適当な方法又は技術として実施されてよい。伝播する信号自体は、記憶媒体又はメモリデバイスとしての適格をもたない。メモリデバイスは、プロセッサと、色変換を実施するようにプロセッサを制御する一組のコンピュータ命令を記憶するためのメモリとを含む、システムの一部として含まれることがある。
【0013】
図2は、メモリデバイス100を使用する例示的システム200を示している。システム200は、印刷装置206と共に使用することができる消耗品構成要素204のためのメモリデバイス202を含み、メモリデバイス202は、メモリデバイス100に対応する場合がある。印刷装置消耗品構成要素204の一例は、インクカートリッジ、定着器、感光体、トナーカートリッジ、又は他の要素のような、印刷装置206上の消耗品、または交換式要素である。メモリデバイス200は、印刷装置206のための基準テーブル210の種々のノードに対応する補正データ208を含む。一例において、基準テーブル210は、メモリデバイス202とは別個のハードウェアコンポーネントである印刷装置206上のメモリデバイスに記憶される。基準テーブル210は、印刷装置206のファームウェアと一緒に記憶されてもよい。入力デバイス非依存の色から入力デバイス依存の色への変換のような異なる色空間の間の変換を提供すべく、基準テーブル210のノードを復元されたカラーテーブル212に変換するために、補正データ208は、メモリデバイス100の圧縮差分カラーテーブル102及び補正情報104を含む。一例では、圧縮差分カラーテーブルを復元し、基準テーブル210と結合することにより、最初の復元されたカラーテーブルが生成される。その後、最初の復元されたカラーテーブルに補正情報を適用することにより、復元されたカラーテーブルが生成される。
【0014】
図3は、メモリデバイス202上の補正データ208を生成する例示的方法300を示している。メモリデバイス202は、メモリデバイス100の圧縮差分テーブル102及び補正情報104を含むことができる。方法300によれば、プリンタカートリッジ上のフラッシュメモリのようなメモリデバイスが、比較的高価で限られている環境において、1以上のカラールックアップテーブル(CLUT)を記憶することが可能となる。方法300は、記憶空間制限に合致する比較的高い圧縮率の不可逆圧縮をサポートし、比較的小さな色差を実現する。
【0015】
一例では、印刷装置のようなカラーテーブル環境は、様々な媒体、及びカラープロファイルに含まれる色域の中立軸に対応する、複数の多次元カラーテーブルを含む場合がある。一般に、プロファイルは、CLUT1、CLUT2、...、CLUTNのような処理されるべきN個のカラーテーブルを含む場合があり、入力色空間は、Jin個のチャネルを含む。一例では、様々なレンダリングインテントを表す複数のカラーテーブルが、1つのICCプロファイルに含まれる場合がある。さらに、出力色空間は、Jout個のチャネルを含み、ICCプロファイルの多くの例では、Jin及びJoutは、3チャネルまたは4チャネルである場合がある。各出力チャネルにつき、対応するルックアップテーブルは、MJin個のノードを含む。例えば、印刷装置で使用される各インク色に対応するC、M、Y、及びKの4つの着色剤の各々について、各カラーテーブルは、M3個のノードを含む場合がある。さらに、印刷装置で使用される各タイプの媒体は、一組のカラーテーブルを含む場合がある。
【0016】
例示的方法において、302では、基準テーブルCLUTrefを生成する。基準テーブルは、予め選択された値または所定の値を有するノードを含む。一例では、基準テーブルは、プロファイルのN個のカラーテーブルを平均化することによって生成される。304では、基準テーブルからN個の元のカラーテーブルの各々を減算し、対応する差分カラーテーブルdifCLUTiを得る。例えば、difCLUTi=CLUTi-CLUTref(i=1,2、...、N)である。306では、不可逆圧縮のような圧縮を用いて、N個の差分カラーテーブルを圧縮する。308では、圧縮差分テーブルを復元し、対応する元の差分カラーテーブルに適用することにより、補正情報を生成する。310では、圧縮差分テーブル及び補正情報を、消耗品構成要素204上のメモリデバイス202のようなメモリデバイス310に記憶する。メモリ空間が豊富にあり、消耗品構成要素204上の負荷の原因にあまりならない場合、基準テーブルは、印刷装置206に記憶されてもよい。一部の例では、圧縮差分テーブル、補正情報、及び基準テーブルのうちの1つ以上が、可逆圧縮を用いてさらに圧縮される場合がある。
【0017】
一例において、302では、プロファイルから得られたN個の元のカラーテーブル、またはN個のカラーテーブルのサブセット(関連するカラーテーブルや論理的にグループ化されたカラーテーブル等)を平均化することにより、基準テーブルCLUT
refを生成する場合がある。例えば、
【数1】
である。
【0018】
元のカラーテーブルの各々は、複数のノードを含み、各ノードが、ある位置にあり、ある値を含む。一例では、基準テーブルを作成するために使用される元の多次元カラーテーブルの各々は、M3個のノードを含む場合がある。元のカラーテーブルの各々のノード位置jにある各ノードの値を一つに加算した後、それらの値の数で除算することにより、基準テーブル上の対応するノードの値が得られる。例えば、元のカラーテーブルの各々のノード位置jにある値を一つに加算した後、カラーテーブルの数Nで除算することにより、基準カラーテーブルのノード位置jの値が得られる。ここで、jは、1からM3までのノード位置である。
【0019】
304で生成される差分カラーテーブルは、複数の差分ノードを含むことができ、各差分ノードは、元のカラーテーブルのノードの値と基準テーブルのノードの値との差を表す値を含む場合がある。一例では、元のカラーテーブルと基準テーブルはそれぞれ、M3個のノードを含む。元のカラーテーブルの各ノードの値を、基準テーブル上の対応するノードの値から減算することにより、差分テーブル上の対応するノードの値が得られる。例えば、元のカラーテーブルのノード位置jの値を、基準テーブルのノード位置jの値から減算することにより、差分カラーテーブルのノード位置jの値が得られる。ここで、jは、1からM3までのノード位置である。
【0020】
306で差分カラーテーブルを圧縮する一例では、量子化された係数を得るために、差分カラーテーブルのノードを変形し、処理する。具体的な変形及び処理は、所望の圧縮率のような選択された圧縮量によって決定される場合があり、選択されたステップサイズΔを含むことがある。量子化された係数は、3次元ジグザグ並べ替えのような多次元並べ替えを使用して、1次元ビットストリームに並べ替えることができる。量子化された係数のビットストリームは、バイナリファイルとして得られる場合があり、可逆圧縮を用いてさらに圧縮される場合がある。310では、得られた圧縮ビットストリームをファイルとして圧縮差分カラーテーブル102に含まれるメモリデバイス100に記憶することができる。
【0021】
306で差分テーブルを圧縮する例では、量子化された係数から、係数ビット割当てテーブルが計算される。係数ビット割当てテーブルを量子化された係数に適用することにより、圧縮解除された係数を復元することができる。3次元ジグザグ並べ替えによれば、係数ビット割当てテーブルに多量の冗長性を導入することができ、係数ビット割当てテーブルは、可逆圧縮を用いてさらに圧縮されてもよい。圧縮された係数ビット割当てテーブルは、310で、圧縮差分カラーテーブル102の一部として含められてもよいし、あるいは、ファームウェアとは別個に印刷装置206上に記憶されてもよい。
【0022】
多くのカラー装置は、複数の係数ビット割当てテーブルを採用することができる。例えば、各着色剤について係数ビット割当てテーブルを作成することができる。C、M、Y、Kの着色剤を使用する印刷装置の場合、4つの別個の係数ビット割当てテーブルを使用することができる。さらに別のパラメタは、各計数ビット割り当てテーブルが圧縮された元のカラーテーブルの異なる一組の量子化された係数に対応する8個の計数ビット割り当てテーブルを印刷装置で使用してもよいことを、規定する場合がある。
【0023】
可逆圧縮及び不可逆圧縮は、元の表現よりも少ないビットを使用して情報を符号化することを含むデータ圧縮の形態である。可逆圧縮では、元のデータと復元された圧縮データとの間に、デジタル差は存在しない。不可逆圧縮では、圧縮データの復元時に、元のデータの一部が失われる。
【0024】
方法300では、様々な不可逆及び可逆圧縮システムを使用することができる。一例では、306で適用される不可逆圧縮は、離散コサイン変換、すなわち、DCTを使用して実施される場合があるが、他のシステムを使用してもよい。DCTは、データ点の有限のシーケンスを様々な周波数で振動するコサイン関数の和として表現する。DCT圧縮は、カラーテーブルが複数次元で表現されることがある例に、特に適している。例えば、ICCプロファイルは、3次元又は4次元のカラーテーブルを含む場合があり、それに従って、3次元又は4次元のDCTプロセスを使用して、不可逆圧縮を実施することができる。別の不可逆圧縮システムは、SPIHT(Set Partitioning In Hierarchical Trees)やSPECK(Set Partitioned Embedded blocK)のように、ウェーブレットに基づく場合がある。可逆圧縮は、LZMA(Lempel-Ziv-Markov chain Algorithm)プロセス、GZIP(GNU-zip)プロセス、または他の適当な可逆システムを含む様々な可逆システムを使用して実施することができる。
【0025】
308では、補正情報を決定するために、圧縮差分カラーテーブルを復元することにより、最初に復元された差分カラーテーブルを生成する。一例では、復元された差分テーブル及び基準テーブルはそれぞれ、M3個のノードを含み、復元された差分テーブルの各ノードの値を基準テーブル上の対応するノードの値に加算することにより、最初に復元されたテーブル上の対応するノードの値が得られる。最初に復元されたテーブルのノードの値は、対応する元の差分カラーテーブル上の対応するノードと比較される。選択された圧縮量での不可逆圧縮に起因して、最初に復元された差分カラーテーブルのノードの値は、元の差分カラーテーブル上の対応するノードの値とは異なる場合がある。最初に復元された差分カラーテーブルの値と元の差分カラーテーブルの値との差の大きさは、誤差と呼ばれ、圧縮量が異なれば、誤差は変わる場合がある。
【0026】
最初に復元された差分カラーテーブルのノードの値と元の差分カラーテーブルの対応するノードの値との間の差について、選択された値のような誤差閾値が定義される。定義された誤差閾値外の値を有する最初に復元された差分カラーテーブルの一組のノードについて、補正情報が生成される。
【0027】
例えば、308で生成される補正情報は、定義された誤差閾値の範囲外の値を有する最初に復元された差分テーブルの各ノードに加算されることによって、当該ノードの値を元の差分カラーテーブル上の対応するノードの値と等しいような誤差閾値内、または、より厳しい誤差閾値内に移動させる残余値、ならびに、その残余値に対応するノード位置jを含む場合がある。一例において、残余値は一般に、中立軸上のノードまたは中立軸近傍のノードについては、すべての誤差を訂正する。他の例では、残余値は、赤色又は濃青色の空間のノードについては、誤差を誤差閾値に、または概ね誤差閾値に訂正する。
【0028】
差分テーブルのノードは、圧縮され、復元されたときに、選択された圧縮量において選択された誤差閾値の外の色差を有する一組のノードを含む場合がある。この一組のノードについての補正情報は、復元された差分カラーテーブルのノードを誤差閾値以内、または、より厳しい誤差閾値内に移動させる一組の残余値を含む場合がある。補正情報は、残余値に対応するノード位置をさらに含む場合がある。一部の例では、補正情報は、可逆圧縮を用いて圧縮される。印刷装置206におけるように、復元された差分カラーテーブルと基準カラーテーブルとを結合させる場合、各位置のノードに残余値を加算すること等によって補正情報を適用することにより、全てのノードが誤差閾値内にある復元されたカラーテーブルを得ることができる。
【0029】
別の例では、最初に復元された差分テーブルを基準テーブルと結合し、それを元のカラーテーブルから減算することにより、どのノードが選択された誤差閾値の外にあるかが決定される。
【0030】
例示的方法300は、当該方法300を実施することによりカラーテーブルをファイルまたはビットストリームに圧縮すべく、プロセッサ及びメモリを有するコンピューティングデバイスのようなシステムを制御するための1以上のハードウェアデバイス及びプログラムの組み合わせを含むように実施されてもよい。例えば、方法300は、当該方法300を実行するようにプロセッサ300を制御する、コンピュータメモリデバイスに記憶された一組の実行可能命令として実施されてもよい。本開示の他の方法は、システムを制御するハードウェアとプログラムの組み合わせとして実施されてもよい。カラーテーブルは、ランタイム計算をカラールックアップテーブルのようなもっと単純な配列インデックス操作に置き換える、メモリデバイス上のアレイまたは他のデータ構造を含む場合がある。
【0031】
図4は、圧縮差分テーブル102のような圧縮差分テーブルを生成する例示的方法400を示している。方法400は、402で、多次元DCTプロセスのようなDCTプロセスを差分カラーテーブルに適用することを含む。具体的には、402では、J
in次元DCTプロセスを差分カラーテーブルに適用することができる。一般に、プロファイルは、difCLUT
1、difCLUT
2、...、difCLUT
Nのような処理されるべきN個の差分カラーテーブルを含むことができ、入力色空間は、J
in個のチャネルを含む。また、出力色空間は、J
out個のチャネルを含み、ICCプロファイルの多くの例では、J
outは、3チャネルまたは4チャネルである場合がある。各出力チャネルについて、対応するルックアップテーブルは、M
Jin個のノードを含む。402でJ
in次元のDCT変換を差分カラーテーブルdifCLUT
iに適用することによって、DCT係数が得られる。この例では、DCT係数は、差分カラーテーブル上に(したがって、対応する元のカラーテーブル上に)あるノードと同数の係数を含む。
【0032】
402におけるDCT処理は、AC係数及びDC係数を生成し、404で、それらが量子化され、処理される。非公式には、定数に基づく関数をスケーリングする係数は、DC係数と呼ばれ、それ以外の係数は、AC係数と呼ばれる。一例において、404では、固定ステップサイズΔを使用してAC係数が量子化され、最も近い整数に丸められる。さらに、404では、DC係数も、最も近い整数に丸められ、したがって、それらは事実上、ステップサイズΔ=1に量子化される。量子化によって、Jin次元の量子化された係数が生成される。
【0033】
404におけるさらなる処理では、Jin次元の量子化された係数が、選択された順序の1次元データストリームに並べ替えられる。選択された順序は、3次元ジグザグ順序付けのような多次元ジグザグ順序付けに基づく場合がある。DCT変換後のエネルギーは低周波数領域に集中するため、3次元ジグザグ順序付けを使用して、量子化された係数を並べ替えることができる。3次元順序付けを実施する際に、プレーンi+j+k=cがcの昇順で訪問され、各プレーン内で2次元ジグザグが実施されるように、走査を構成することができる。低周波数から高周波数への量子化された係数のそのような走査によれば、係数ビット割当てテーブルに大量の冗長性を導入することができ、係数ビット割当てテーブルは、圧縮の際にデータの効率的パッキングを提供することができる。得られた量子化された係数の1次元データストリームは、バイナリファイルに書き込むことができる。
【0034】
406では、バイナリファイル内の量子化された係数の1次元データストリームを上記LZMAのような可逆圧縮または別の可逆圧縮を用いて圧縮することにより、圧縮された量子化された係数を生成することができる。
【0035】
408では、量子化された係数を使用して、係数ビット割当てテーブルを計算する。係数ビット割当てテーブルは、圧縮差分カラーテーブルの復号に使用される場合がある。係数ビット割当てテーブルには、何個のビットが各係数に割り当てられたかに関する情報が記憶される。例えば、
【数2】
は、-0.5からL-0.5までの範囲の実数を整数値に量子化するために使用される。ここで、
【数3】
は、log
2(L)の天井関数を表しており、天井関数は、実数を最小の次の整数に変換する。係数は負の数であることもあるため、さらに別のビットが符号に提供される。各出力チャネルは、別個の係数ビット割当てテーブルに対応する場合がある。したがって、J
out個の出力チャネルを有するプロファイルは、J
out個の係数ビット割当てテーブルを含む。各係数ビット割当てテーブル内のノードは、差分カラーテーブルのノードに対応している。
【0036】
408では、例示的プロセスを使用することにより、J
out個の出力チャネルの各々について、係数ビット割当てテーブルを計算することができる。所与の出力チャネルについて、その出力チャネルの量子化されたDCT係数は、Q
i,jで表される。ここで、i(1からN)は、カラーテーブル番号であり、j(1からM
Jin)は、ノード番号である。Q
i,jに必要なビットの数B
i,jは、Q
i,jが0であれば、B
i,j=0であり、Q
i,jが0でなければ、
【数4】
である。
【0037】
一例では、係数ビット割当てテーブルのあらゆるノードに、固定ビット数aを割り当てることができ、固定ビット数aを使用して、各係数ビット割当てテーブルのサイズを決定することができる。係数ビット割当てテーブルのノード位置j、すなわちL
jにある値は、各i(1からNまで)差分カラーテーブルに必要な最大ビット数B
i,jから決定することができる。固定ビット数aは、各j(1からM
Jin)について決定された
【数5】
の最大数から決定することができる。この例では、従って、ある出力チャネルについての1つの係数ビット割当てテーブルの総サイズは、aM
Jinビットになる。上記プロセスを繰り返すことにより、各出力チャネルについてサイズを決定することができ、総サイズは、J
out個の係数ビット割当てテーブルのサイズの和となる。
【0038】
Jout個の係数ビット割当てテーブルは、406における可逆圧縮の使用等によって圧縮され、圧縮された係数ビット割当てテーブルが生成される。可逆圧縮によって、係数ビット割当てテーブルの総サイズを大幅に低減することができる。
【0039】
404で選択されるステップサイズΔは、圧縮に影響し、ステップサイズΔを大きくするほど、達成される圧縮量は大きくなる。ただし、ステップ404で選択されるステップサイズΔは、差分カラーテーブル上のノードの値と復元された圧縮差分カラーテーブル上のノードの値との間の誤差の大きさにも影響を与え、ステップサイズΔを大きくするほど、生成される誤差の大きさは大きくなる。復元された圧縮値によっては、誤差の大きさは、アプリケーションにとって、一般に認識不能である場合のように、許容される場合がある。そのような場合、色差、すなわち誤差の大きさは、選択された誤差閾値内にある。他の場合として、例えば中立軸付近の色については、誤差の大きさは、アプリケーションにとって、認識可能であり過ぎる場合がある。そのような場合、誤差の大きさは、選択された誤差閾値の範囲外にある。一例では、選択された誤差閾値の範囲外の誤差の大きさは、選択された誤差閾値よりも大きい誤差の大きさである。
【0040】
不可逆圧縮の利点が得られるほど十分に大きいステップサイズを達成するために、1以上のノードは、選択された誤差閾値の範囲外の大きさの誤差を有する場合がある。410では、選択された誤差閾値の範囲外の大きさの誤差を有するノードを決定する。412では、そのようなノードについて、ノードを修正するための補正情報を生成する。
【0041】
図5は、補正情報を用いて修正されるべき元のカラーテーブルのノードを決定する際に実施されることがある方法500を示している。一例では、方法500は、選択されたステップサイズ及び選択された誤差閾値を使用して実施される。502では、方法400の402、404、408におけるDCTのような不可逆圧縮技術を使用して、元の差分カラーテーブルを圧縮する。504では、圧縮を反転させる復号によって、圧縮された差分カラーテーブルを復元し、復元されたカラーテーブルを生成する。506では、復元された差分カラーテーブルのノードを元の差分カラーテーブルと比較し、誤差の大きさを決定する。一例では、あるノードについての誤差の大きさは、元の差分カラーテーブル上のそのノードに関連する値と、復元された差分カラーテーブルのそのノードに関連する値との間の差である。506の一例では、復元された差分カラーテーブルの各ノードを元の差分カラーテーブル上のそれに対応するノードと比較することによって、そのノードについての誤差の大きさが決定される。
【0042】
一例では、より多くのノードを選択された誤差閾値内に含めるために、402,404及び408のプロセスを、修正されたステップサイズで元のカラーテーブルに再適用してもよい。例えば、選択された閾値外の大きさの誤差を有する復元された差分カラーテーブルのノードの量が、所与のアプリケーションにとって大き過ぎる場合、もっと小さいステップサイズΔを使用して、プロセス402,404,408を元の差分カラーテーブルに対して繰り返してもよい。
【0043】
508では、選択された誤差閾値の範囲外の大きさの誤差を有するノード(複数可)を識別し、508で識別されたノードについて、修正情報が含められる。412の一例では、508で識別された元の差分カラーテーブルのノードについての補正情報は、復元されたノードに加算(または減算)されることによって、復元されたノードをそのノードについて選択された誤差閾値内に移動させることができる残余値を含む。補正情報は、残余値を含み、残余値は、可逆圧縮される場合がある。一部の例では、復元されたノードに適用される残余値は、復元されたノードの最終値を、第1の一組のノードに関連する誤差閾値よりも厳しい第2の誤差閾値内に移動させることができる。別の例では、復元されたノードに適用される残余値は、復元されたノードの最終値を、元のノードと概ね同じになるように移動させることができる。方法500の使用によれば、中立軸付近にあるノードのような、不可逆圧縮後に知覚可能な誤差を含み得る大きな視覚的重要性を有するノードを、損失なしに記憶する選択肢が得られる。その結果、復号された圧縮カラーテーブルの性能が向上される。
【0044】
410で色差の選択された誤差閾値を超えるノードが不可逆圧縮を使用することなく記憶される場合、メモリデバイス100上のデータの圧縮率(元の差分カラーテーブルと比較したときのもの)と、選択されたステップサイズΔとの間には、関係がある。具体的には、選択されたステップサイズΔが増加すると、圧縮率は、まず増加し、圧縮率のピーク値に達した後、減少する。特定の理論に縛られるものではないが、選択されたステップサイズΔが増加すると、圧縮はより積極的になり、誤差の大きさはより大きくなる。選択された誤差閾値の範囲外のノードの数が増加すると、より多くのノードが、不可逆圧縮を使用することなく記憶され、すなわち、より低い圧縮率で記憶され、カラーテーブル圧縮の効率は、低下することになる。選択された誤差閾値のときの圧縮率のピーク値が、色差の選択された誤差閾値のときの最適な圧縮率を提供する。さらに、誤差閾値が増加すると、圧縮率のピーク値は増加する。
【0045】
一例では、まず、許容閾値を超えるノードが不可逆圧縮を使用することなく記憶される許容閾値を決定し、次に、関係のピーク圧縮率に対応する選択されたステップサイズΔを決定するプロセスを使用して、不可逆圧縮の最適な圧縮率を選択することができる。
【0046】
図6は、メモリデバイス100の圧縮差分カラーテーブル102及び補正情報104に対応する場合がある、圧縮差分カラーテーブル602及び補正情報604を含む、例示的メモリデバイス600を示している。一例では、圧縮差分カラーテーブル602及び補正情報604は、方法300を使用して生成され、310でメモリデバイス600に記憶される場合がある。別の例では、圧縮差分カラーテーブル602及び補正情報604は、310で記憶された情報を有する場合がある別のメモリデバイスから再現される。
【0047】
メモリデバイス600に記憶された圧縮差分カラーテーブル602は、差分カラーテーブルの不可逆圧縮から得られる量子化された係数606を表すビットを含む。圧縮差分カラーテーブル602の量子化された係数606は、306で生成されることができる。一例では、量子化された係数606は、バイナリファイルとして記憶される。別の例では、量子化された係数606は、可逆圧縮を用いてさらに圧縮される。メモリデバイス600は、ステップサイズΔまたは他の情報のような、量子化された係数の復号に関連する情報をさらに含む場合がある。
【0048】
補正情報604は、最初の復元差分テーブルの一組のノードに加算されることによって、そのノードの値を、誤差閾値内に移動させる残余値608を含む。残余値608は、308で生成されることができる。補正情報604は、残余値によって修正されるべき一組のノードの位置に関するノード位置情報610をさらに含む場合があり、残余値608に対応するノードの位置に関して308で生成されるノード位置情報のようなノード位置情報610をさらに含む場合がある。一例では、残余値608及びノード位置情報610は、バイナリファイルとして記憶される。別の例では、残余値608及びノード位置情報610は、可逆圧縮を用いてさらに圧縮される。
【0049】
一例では、メモリデバイス600は、インクカートリッジやトナーカートリッジ等のような消耗品構成要素612に含まれる。消耗品構成要素は、印刷装置614に動作可能に結合されることができる。印刷装置は、メモリデバイス600に動作可能に結合された独立したメモリデバイス616を含む場合がある。一例では、独立したメモリデバイス616は、306で生成された係数ビット割当てテーブルのような係数ビット割当てテーブル(CBAT:Coefficient Bit Assignment Table)618を含む。係数ビット割当てテーブル(CBAT)618を使用することにより、量子化された係数606を復号することができる。独立したメモリデバイス616は、302で生成された基準テーブルのような基準テーブル620をさらに含む場合がある。他の例では、CBAT618及び基準テーブル620のうちの一方又は両方は、代わりにメモリデバイス600に含まれる場合がある。
【0050】
圧縮差分テーブル602及び補正情報604は、複数の差分カラーテーブル622a、622b、...、622nのうちの1つの差分カラーテーブル622aに対応する場合がある。一例では、カートリッジのインク色に関連するカラーテーブル情報が、差分カラーテーブル622aとして含まれる。他の色差カラーテーブル622b~622nは、例えば、各媒体タイプ/色分解方法(K-Only及びCMYK Blackのような色分離方法等)についてのカラーテーブルを含む。複数の差分カラーテーブル622a~622nは、N個の差分カラーテーブルに関連する場合があり、N個の差分カラーテーブルはそれぞれ、固有の一組の量子化された係数、残余値、及びノード位置情報を含む場合がある。また、独立したメモリデバイス616は、着色剤の各々についての複数の差分カラーテーブル622a~622bの各々内の量子化された係数に対応する複数のCBATを含む場合がある。
【0051】
図7は、メモリデバイス600の圧縮された色差テーブル622aを復号する方法700を示している。702では、可逆圧縮された差分カラーテーブル602及び補正情報604に逆LZMAまたは逆GZIP(すなわち、406で使用された可逆圧縮の逆)のような標準的可逆圧縮解除技術を適用することによって、量子化されたDCT係数606と、残余値608及びノード位置610のような修正情報604とを含むバイナリストリームを得る。係数ビット割当てテーブル(CBAT)618を使用して、バイナリストリームの何個のビットが各ノード位置に属しているかを決定することができる。704では、係数ビット割当てテーブル618を量子化されたDCT係数606に適用することにより、DCT係数を復元する。706では、逆DCT変換をDCT係数に適用する。708では、DCT係数に量子化ステップサイズΔを乗算し、最も近い整数に丸めることによって、最初に復元された差分カラーテーブルを得る。
【0052】
710では、最初に復元された差分カラーテーブルに補正情報604を適用することにより、圧縮解除された差分カラーテーブルを得る。一例では、補正情報604は、残余値608を含み、残余値608を最初の復元カラーテーブルの一組のノードに適用することにより、復元された差分カラーテーブルを得ることができる。例えば、ある識別されたノード位置についての残余値は、最初に復元された差分テーブル上の対応するノード位置の値に加算される。このプロセスは、補正情報604内の各残余値について繰り返される。
【0053】
712では、710から得られた圧縮解除された差分テーブルに基準テーブル620を加算することにより、最終的な復元されたカラーテーブルを得る。一例では、圧縮解除された差分テーブル及び基準テーブル620はそれぞれ、M3個のノードを含み、圧縮解除された差分テーブルの各ノードの値を基準テーブル620上の対応するノードの値に加算することにより、最終的な復元されたカラーテーブル上の対応するノードの値が得られる。例えば、圧縮解除された差分テーブルのノード位置jの値を基準テーブル620のノード位置jの値に加算することにより、最終的な復元されたカラーテーブルのノード位置jの値が得られる。ここで、jは、1からM3までのノード位置である。最終的に復元されたJin次元からJout次元のカラーテーブルは、カラーマネージメントシステムに適用することができる。
【0054】
この例、すなわち方法700は、当該方法700を実施することによりメモリデバイス600の圧縮された色差テーブルを復号すべく、プロセッサ及びメモリを有する印刷装置のようなシステムを制御するための1以上のハードウェアデバイス及びプログラムの組み合わせを含むように実施されてもよい。例えば、方法700は、プロセッサを制御することにより、圧縮された色差テーブル及び基準テーブルを受信し、方法700を実行するための、コンピュータメモリに記憶された一組の実行可能命令として実施されてもよい。
【0055】
本明細書には、特定の例が図示説明されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、図示説明された特定の例の代わりに、様々な代替及び/又は均等の実施形態が用いられてもよい。この出願は、本明細書で説明した特定の例の任意の改変または変形を包含することを意図している。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等によってのみ制限されることが意図されている。
【0056】
原出願の出願当初の特許請求の範囲に記載されていた請求項1~15に係る発明を、例示的実施形態として以下に列挙する。
1.圧縮差分カラーテーブルであって、前記差分カラーテーブルが、複数の差分ノードを含み、各差分ノードが、元のカラーテーブルのノードの値と基準テーブルの対応するノードの値との差である値を表しており、前記圧縮差分カラーテーブルが、選択された圧縮量で圧縮されており、前記複数の差分ノードが、前記選択された圧縮率において誤差閾値外の色差を有する一組のノードを有する、圧縮差分カラーテーブルと、
前記一組のノードについての補正情報と
を含む、メモリデバイス。
2.前記圧縮差分カラーテーブルは、量子化された係数を含み、前記補正情報は、前記一組のノードについてのノード位置情報を含む、1に記載のメモリデバイス。
3.前記量子化された係数は、前記選択された圧縮率に関連するステップサイズを含む、2に記載のメモリデバイス。
4.前記圧縮差分カラーテーブル及び前記補正情報は、可逆圧縮を用いてさらに圧縮されている、1に記載のメモリデバイス。
5.前記一組のノードは、前記複数の差分ノードをすべて含む、1に記載のメモリデバイス。
6.前記メモリデバイスは、印刷装置のための消耗品構成要素に含まれ、
前記基準テーブルは、前記印刷装置に含まれる独立したメモリデバイスに含まれる、1に記載のメモリデバイス。
7.前記消耗品構成要素は、前記印刷装置のためのプリントカートリッジである、6に記載のメモリデバイス。
8.係数ビット割当てテーブルが、前記印刷装置に含まれる前記独立したメモリデバイスに含まれる、6に記載のメモリデバイス。
9.前記補正情報は、復元された圧縮カラーテーブルに適用されるべき残余値を含む、1に記載のメモリデバイス。
10.メモリデバイスと、
前記メモリデバイスに記憶された圧縮カラーテーブルであって、前記圧縮カラーテーブルが、差分カラーテーブルの複数の差分ノードの変換から得られた複数の量子化された係数を有するビットストリームを含み、各差分ノードが、元のカラーテーブルのノードの値と基準テーブルの対応するノードの値との差である値を表しており、前記複数の差分ノードが、前記選択された圧縮率において誤差閾値外の色差を有する一組のノードを有する、圧縮カラーテーブルと、
前記カラーテーブルの前記一組のノードについての補正情報であって、前記第2の一組のノードが、前記誤差閾値外の色差を有する、補正情報と
を含む、プリントカートリッジ。
11.前記圧縮カラーテーブルに対応する色を有するトナーまたはインクのリザーバを含む、10に記載のプリントカートリッジ。
12.前記圧縮カラーテーブルは、印刷装置上の前記基準テーブルと結合し、復元されたカラーテーブルを提供する、10に記載のプリントカートリッジ。
13.前記印刷装置は、前記量子化された係数のビットの数に関連する値を有する係数ビット割当てテーブルを含む、12に記載のプリントカートリッジ。
14.印刷装置消耗品構成要素のためのメモリデバイスであって、
変換された差分カラーテーブルを表す複数の量子化された係数に対応するビットであって、前記差分カラーテーブルが、複数の差分ノードを含み、各差分ノードが、元のカラーテーブルのノードの値と基準テーブルの対応するノードの値との差である値を含み、前記複数の差分ノードが、選択された量子化の大きさにおいて誤差閾値外の差分値を有する一組のノードを有する、ビットと、
前記一組のノードについての補正情報であって、前記補正情報が、残余値と、前記差分ノードの対応する位置を表す各残余値に対応するノード位置とを含む、補正情報と
を含む、メモリデバイス。
15.前記複数の量子化された係数、前記複数の差分ノード、及び前記補正情報は、パッケージに含まれ、前記メモリデバイスは、複数の別個のパッケージを含み、各パッケージが、別個の複数の量子化された係数、別個の複数の差分ノード、及び別個の補正情報を含む、14に記載のメモリデバイス。