(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】両極性電気外科的シーラおよびディバイダ
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020171696
(22)【出願日】2020-10-12
(62)【分割の表示】P 2017533891の分割
【原出願日】2015-12-17
【審査請求日】2020-11-09
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】リ リチャード
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-075899(JP,A)
【文献】特表2016-504153(JP,A)
【文献】特表2015-513433(JP,A)
【文献】米国特許第05337937(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0138102(US,A1)
【文献】国際公開第2013/041660(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科的器械であって、
近位端、遠位端及びハウジングを備えた下側ハンドルと、
前記下側ハンドルの前記遠位端に結合された上側ジョーであって、前記上側ジョーは、少なくとも1つの電
極を備える前記上側ジョーと、
近位端、遠位端及び空所を持つハウジングを備えた上側ハンドルと、
前記上側ハンドルの前記遠位端に結合された下側ジョーであって、前記下側ジョーは、前記上側ジョーに回動可能に連結され、前記上側ハンドル及び前記下側ハンドルは、前記上側ジョーと前記下側ジョーが開いている開き位置から前記上側ジョーと前記下側ジョーが閉じている閉じ位置となるように互いに配置された前記下側ジョーと、を有し、
前記上側ハンドルは、
ブレードトリガと、
ブレードスライダと、
前記ブレードトリガと前記ブレードスライダに結合されたブレードレバーアームであって、前記ブレードトリガが動くと、前記ブレードスライダを動かす前記ブレードレバーアームが動き、前記ブレードスライダは前記上側ジョーと前記下側ジョーのチャネルを通って長手方向に並進できる前記ブレードレバーアームと、
前記ブレードトリ
ガ、前記ブレードレバーアー
ム及び前記ブレードスライダの遠位側への動きを阻止するために前記ブレードトリガと係合可能なブレードロックフックであって、前記ブレードロックフックと、前記ブレードレバーアームと、前記ブレードスライダと、前記ブレード
トリガの一部が前記上側ハンドルのハウジングの空所内に配置されている前記ブレードロックフックと、
前記下側ハンドルのハウジングとの接触によって起動してRFエネルギーの供給源に結合するよう配置されたスイッチと、を有し、
前記下側ハンドルのハウジン
グは、前記下側ハンドルのハウジン
グの外表面から
前記上側ハンドルに向けて延びるブレードロック解除突出部を備え、前記ブレードロック解除突出部は、前記上側ハンドルのハウジング内に配置された前記ブレードトリガの一部から前記ブレードロックフックの係合を解除するために、前記上側ハンドルの前記ハウジングの空所内に配置された前記ブレードロックフックと係合可能に構成され、
前記上側ハンドルと前記下側ハンドルは、前記閉じ位置から溶融位置に互いに近接するように配置され、このとき、前記上側ハンドルと前記下側ハンドルは、前記閉じ位置から溶融位置に動くように構成され、前記下側ハンドルのハウジン
グは、溶融位置において、前記上側ジョーから結合解除され、前記下側ハンドルのハウジン
グの前記ブレードロック解除突出部は、前記ブレードロックフックの前記ブレードトリガとの係合を解除して前記ブレードトリガ
、前記ブレードレバーアーム及び前記ブレードスライダの遠位側への動きを許容するため
に前記ブレードロックフックと係合し
、前記下側ハンドルのハウジン
グの外表面は、前記上側ハンドルの前記スイッチと係合する、電気外科的器械。
【請求項2】
更に、前記上側ハンドルのハウジングの空所内に配置され且つ前記ブレードトリガに結合されたブレードばねを有し、前記ブレードばねは、前記ブレードトリガを近位側に付勢し、近位側に動く前記ブレードトリガが前記ブレードロックフックを動かして前記ブレードロックフックが前記ブレードトリガに再び係合する、請求項1に記載の電気外科的器械。
【請求項3】
前記ブレードスライダは、前記電気外科的
器械の長手方向軸線に平行であり、前記ブレードレバーアームは、前記長手方向軸線に対して傾いている、請求項2に記載の電気外科的
器械。
【請求項4】
前記ブレードトリガは、回転可能であり、前記ブレードレバーアームと前記ブレードスライダは、並進可能である、請求項3に記載の電気外科的
器械。
【請求項5】
前記上側ジョーの前記少なくとも1つの電極は、前記下側ジョーに向いた平坦な平面状の密封面を有し、前記下側ジョーは、前記上側ジョーに向いた平坦な平面状の密封面を備えた下側電極を有し、前記下側電極は、前記少なくとも1つの電極と前記下側電極との間でRFエネルギーを伝送するよう作動的に配置されている、請求項1乃至4の何れか1
項に記載の電気外科的
器械。
【請求項6】
更に、前記上側ジョー又は前記下側ジョーのチャネルに隣接して位置し且つチャネルを強化し、切断されるべき組織を支持し、チャネルに隣接して切断させる組織が溶融されるように構成された導電性ポストを有する、請求項1乃至5の何れか1項に記載の電気外科的
器械。
【請求項7】
前記下側ハンドルは、前記上側ジョーと前記下側ハンドルのハウジン
グとの間に設けられたジョー支持継手を有する、請求項1乃至6の何れか1項に記載の電気外科的
器械。
【請求項8】
前記ジョー支持継手は、空所を有し、支持アームの遠位部分は、前記ジョー支持継手に結合され且つ前記ジョー支持継手の前記空所内に収納されている、請求項7に記載の電気外科的器械。
【請求項9】
更に、前記支持アームの近位部分に結合され
、前記ブレードトリガが前記ブレードロックフックから係合解除された状態で前記上側ジョーと前記下側ジョー
とに所定の力を加える支持ばねを有する、請求項8に記載の電気外科的
器械。
【請求項10】
前記ジョー支持継手は、前記上側ハンドルが前記下側ハンドルから離隔すると前記上側ジョーおよび前記下側ハンドルのハウジングと整列し、前記下側ハンドルのハウジングは、前記上側ハンドルと前記下側ハンドルが溶融位置において互いに近接して位置すると前記ジョー支持継手に対して回動する、請求項7乃至
9の何れか1項に記載の電気外科的器械。
【請求項11】
更に、前記上側ハンドルを前記下側ハンドルに結合し且つ前記上側ジョーを前記下側ジョーに結合する中央ピボットを有し、前記中央ピボットは、開口部を有し、この開口部を通って前記ブレードスライダが伸長したり引っ込んだりすることができるように構成されている、請求項1乃至
10の何れか1項に記載の電気外科的
器械。
【請求項12】
前記中央ピボットは、上側ジョー支持体の円形開口部に挿入されてこれに連結される円形の端と、下側ジョー支持体の非円形開口部に挿入されてこれに連結される非円形の端を有し、前記円形の端は、前記上側ジョー支持体が中央ピボットを中心として回動することを許容するように構成され、前記非円形の端は、前記下側ジョー支持体が中央ピボットを中心として回動することに抵抗するように構成され、前記上側ジョー支持体に連結された前記上側ジョーは、近接位置から離間位置に回動したり離間位置から近接位置に回動したりでき、前記下側ジョーは、前記下側ジョー支持体及び前記中央ピボットの非円形の端と連結して静止している、請求項
11に記載の電気外科的
器械。
【請求項13】
前記下側ジョー支持体は、前記ブレードスライダを受け入れてこれを支持するように寸法決めされた案内チャネルを有し、前記案内チャネルは、前記ブレードスライダの長手方向並進を位置合わせするとともに支援する、請求項
12に記載の電気外科的
器械。
【請求項14】
前記下側ジョー支持体は、更に、前記下側ジョー支持体の近位端に設けられた近位ピンチャネルを有し、前記近位ピンチャネルは、前記ブレードスライダを前記ブレードレバーアームに連結するピンを受け入れて支持するように寸法決めされ、前記近位ピンチャネルは、前記ブレードスライダの長手方向並進を位置合わせするとともに支援する、請求項
13に記載の電気外科的
器械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に、電気外科的システムおよび方法に関し、特に、両極性電気外科的シーラ・ディバイダ器械、システムおよび方法に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2014年12月23日に出願された米国特許出願第62/096,255号の権益主張出願であり、この米国特許出願を参照により引用し、これらの記載内容全体が本明細書に記載されているものとする。
【背景技術】
【0003】
ある特定の外科的な仕事を行うのに電気エネルギーを使用する電気外科的器械が利用可能になった。典型的には、電気外科的ツールは、電源を含む電気外科的ユニットから電気エネルギーが供給されるように構成された1つまたは2つ以上の電極を含む手持ち型ツール、例えば把持器(グラスパ)、はさみ、ピンセット、ブレード、針、および他の手持ち型ツールである。電気エネルギーは、電気エネルギーが加えられた組織を凝固させ、溶融させ、または切断するよう使用可能である。
【0004】
電気外科的器械は、代表的には、2つの分類、即ち、単極性(モノポーラ)と両極性(バイポーラ)に属する。単極性器械では、電気エネルギーが大電流密度で器械の1つまたは2つ以上の電極に供給される。これとは別個の戻し電極が患者に電気的に結合される。
単極性電気外科的器械は、ある特定の手技では有用である場合があるが、戻し電極の機能を少なくとも部分的に原因とする場合の多いある特定の種類の患者に対する外傷、例えば電気熱火傷熱傷の恐れが生じる場合がある。両極性電気外科的器械では、1つまたは2つ以上の電極が第1の極性の電気エネルギー源に電気的に結合され、1つまたは2つ以上の他の電極が第1の極性とは逆の第2の極性の電気エネルギー源に電気的に結合される。かくして、別個の戻し電極なしで動作する両極性電気外科的器械は、リスクを少なくした状態で電気信号を集中した組織領域に送り出すことができる。
【0005】
しかしながら、両極性電気外科的ツールの外科的効果が比較的集中する場合であっても、外科的結果は、外科医の腕前に大きく依存する場合が多い。例えば、電気エネルギーを比較的長時間にわたって送り出した場合または短時間であっても比較的高い電力の電気信号を送り出した場合、熱による組織の損傷および壊死が生じる場合がある。電気エネルギーを加えたときに組織が所望の凝固効果または切断効果を達成する速度は、組織の種類によって異なり、更にまた、電気外科的器械によって組織に加えられる圧力に基づいて様々な場合がある。しかしながら、熟練外科医でも、電気外科的器械で把持された組み合わせ状態の種類の組織の塊を所望の量どれほど迅速に溶融させるかを評価することは困難な場合がある。
【0006】
電気外科的処置中の組織損傷の恐れを減少させる試みがなされた。例えば、先の電気外科的システムは、電気外科的処置中のオーム抵抗または組織温度をモニタする発生器を有していて、所定の点にいったん達すると、電気エネルギーを止めていた。しかしながら、これらシステムは、これらが様々な種類の組織または組み合わせ状態の組織の塊について組織凝固、溶解、または切断端点を定める際に一貫した結果をもたらしていなかったという欠点を呈していた。これらシステムはまた、様々なツールおよび電極について様々な幾何学的形状を有する互いに異なる種々のツールの使用間で一貫した電気外科的結果をもたらしていない場合がある。典型的には、製品の寿命中、変化がツールの幾何学的形状に対して比較的僅かな改良であっても、電気外科的発生器は、使用されるべき各ツール形式について再校正されなければならず、これらは、望ましくないことに電気外科的発生器を使用状態から取り出す場合のあるコスト高で時間のかかる手順である。
【発明の概要】
【0007】
種々の実施形態では、電気外科的器械は、上側および下側ハンドルならびに下側および上側ジョーを有する。下側ハンドルは、近位端および遠位端を備え、上側ジョーは、下側ハンドルの遠位端に結合されている。上側ジョーは、少なくとも1つの電極を有する。上側ハンドルは、近位端および遠位端を備えた上側ハンドルを有し、下側ジョーは、下側ハンドルの遠位端に結合されている。上側ジョーは、下側ジョーに回動可能に連結され、下側ハンドルの一部分は、上側ジョーと下側ジョーが閉じ位置において互いに近接して位置してとき、種々の実施形態では、上側および下側ハンドルが溶融位置に動かされた場合にのみ、上側ジョーから外れる。種々の実施形態では、電気外科的器械は、ジョー相互間の制御された力が提供され、種々の実施形態では、1つまたは複数のハンドルが溶融位置に動かされた場合にのみ提供されるよう構成された力・過剰圧縮調整機構体を有する。
【0008】
種々の実施形態では、電気外科的器械は、上側および下側ハンドルならびに下側および上側ジョーを有する。下側ハンドルは、ジョー支持継手に連結されている下側ハンドルハウジングを備え、上側ジョーは、ジョー支持継手に連結されている。上側ジョーは、少なくとも1つの電極を有する。下側ハンドルおよび上側ハンドルと上側ジョーは、上側ハンドルと下側ジョーに対して動くことができる。下側ジョーは、上側ハンドルの遠位端に結合されている。ジョー支持継手は、上側ハンドルが下側ハンドルから離隔すると上側ジョーおよび下側ハンドルハウジングと整列し、下側ハンドルハウジングは、上側ハンドルと下側ハンドルが溶融位置において互いに近接して位置するとジョー支持継手に対して回動しまたは揺動する。
【0009】
種々の実施形態では、電気外科的器械が提供され、この電気外科的器械は、支持アームおよび支持アームに連結されている支持ばねを備えた下側ハンドルと、下側ハンドルに連結された状態でこの下側ハンドルから延びる上側ジョーを有し、上側ジョーは、少なくとも1つの電極を有する。電気外科的器械は、上側ハンドルと、上側ハンドルに連結された状態でこの上側ハンドルから延びる下側ジョーとを更に有する。下側ハンドルおよび上側ハンドルは、離隔位置から近接位置に動くことができ、支持ばねは、上側ハンドルおよび下側ハンドルが近接位置にあるときには非圧縮状態にある。種々の実施形態では、支持ばねは、RFエネルギーが少なくとも1つの電極に供給されると、圧縮されて所定の力を上側および下側ジョーに供給する。
【0010】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、関連図面を参照して行われる実施形態についての説明によって明らかになろう。
【0011】
本発明は、添付の図面と関連して行われる以下の説明を参照すると理解でき、図面の図全体を通じて同一の参照符号は、同一の部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の種々の実施形態としての電気外科的発生器の斜視図である。
【
図2】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の斜視図である。
【
図3】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図4】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の分解組立て図である。
【
図5】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の斜視図である。
【
図6】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図7】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図8】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図9】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図10】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図11】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図12】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図13】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図14A】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の遠位端の側面図である。
【
図14B】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の側面図である。
【
図15】本発明の種々の実施形態としての電気外科的溶融/シーラ・切開用器器械の断面図である。
【
図16】本発明の種々の実施形態としての電気外科的器械の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般に、組織を最適に溶融させるよう構成された電気外科的発生器と電気外科的器械を含む電気外科的システムが提供される。電気外科的器械は、種々の実施形態によれば、組織を動かし、組織を把持し、組織を圧迫し、そしてRFエネルギーを送り出して組織を溶融させる能力を持った状態で開放手術で用いられるよう提供される。種々の実施形態によれば、電気外科的器械は、5mm~12mm腹腔鏡的カニューレに通して挿入可能ではなく、代表的には開放手術で用いられまたは電気外科的ツールの非円筒形の12mmを超える遠位端を受け入れる器具を通して用いられる両極性電気外科的シーラ・ディバイダツールである。RFエネルギーは、電気外科的発生器によって供給され、この電気外科的発生器は、適当なRFエネルギーをもたらして組織を溶融させるよう構成されている。発生器は、種々の実施形態によれば、適当なRFエネルギーおよび適当なやり方を決定して特定の接続状態の電気外科的ツール、このツールと接触状態にある特定の組織および特定の外科的処置のためのRFエネルギーを送り出す。種々の実施形態によれば、適当なRFエネルギーおよびRFエネルギーの送り出し方の決定を助けるための情報またはデータが発生器から提供されまたは外部で得られる。外部源は、種々の実施形態では、電気外科的ツール内にこれとの接続部(ワイヤードまたはワイヤレス)を介してまたは別個のツール、アクセサリおよび/またはアダプタおよび/またはこれらとの接続部を介してかつ/あるいは別個のポートまたは発生器の接続部を介して組み込まれるのが良い1つまたは2つ以上のメモリモジュールである。発生器は、データを検索するとともに/あるいは受け取り、そしてこのデータを利用して発生器に指令を出しまたは作動させて適当なRFエネルギーを決定してこれを適当なやり方で供給する。
【0014】
図1および
図2を参照すると、電気外科的システムの例示の実施形態が示されており、この電気外科的システムは、電気外科的発生器100および取り外し可能に接続可能な電気外科的ツールまたは器械3を含む。電気外科的器械3は、発生器に設けられたツールまたは器具ポート102へのケーブル付き接続部5およびツールプラグまたはコネクタ7を介して発生器に電気的に結合されるのが良い。電気外科的器械3は、このツールの特定の所定の状態、例えば溶融作業の開始および/または終了をユーザに知らせるための聴覚、触覚および/または視覚指標を有するのが良い。他の実施形態では、電気外科的器械は、再使用可能であるとともに/あるいは別の外科的処置のために別の電気外科的発生器に接続可能であるのが良い。幾つかの実施形態では、手動制御装置、例えばハンドまたはフットスイッチが例えば溶融作業を開始するためにツールの所定の選択的制御を可能にするよう発生器および/またはツールに連結可能であるのが良い。
【0015】
種々の実施形態によれば、電気外科的発生器100は、高周波(RF)電気外科的エネルギーを発生させ、そして発生器に電気的に結合された電気外科的器械からデータまたは情報を受け取るよう構成されている。発生器100は、一実施形態では、RFエネルギー(375VA、350kHzにおいて150Vおよび5A)を出力し、一実施形態では、作動中またはRFエネルギーの供給中、RF出力電圧とRF出力電流との位相角または差を計算するよう構成されている。発生器は、電圧、電流および/または電力を調整するとともにRFエネルギー出力(例えば、電圧、電流、電力および/または位相)をモニタする。一実施形態では、発生器100は、既定の条件下、例えば器具スイッチがデアサートされたとき(例えば、フューズボタンが解除されたとき)、時間値が満たされたときおよび/またはアクティブな位相角および/または位相の変化がある位相および/または例えばジョー相互間の組織の溶融のような作業の終わりを指示する位相停止値の変化以上になったとき、RFエネルギー出力を停止させる。
【0016】
電気外科的発生器100は、2つの新型両極性ツールポート102、標準型両極性ツールポート106、および電力ポート104を有する。他の実施形態では、電気外科的ユニットは、これらとは異なる数のポートを有しても良い。例えば、幾つかの実施形態では、電気外科的発生器は、3個以上または1個以下の新型両極性ツールポート、2個以上または0個の標準型両極性ツールポート、および2個以上または0個の電力ポートを有することができる。一実施形態では、電気外科的発生器は、2個の新型両極性ツールポートだけを有する。
【0017】
各新型両極性ツールポート102は、取り付け状態のまたは一体形メモリモジュールを備えた電気外科的器械に結合されるよう構成されている。標準型両極性ツールポート106は、新型両極性ツールポート102に接続可能な新型両極性電気外科的器械とは異なる非特殊型の両極性電気外科的ツールを受け入れるよう構成されている。一実施形態では、非特殊型両極性電気外科的ツールは、ツールの動作のための動作またはパラメータデータを有することができるメモリモジュールを搭載しておらずまたはこれに接続可能ではない。電力ポート104は、非特殊型両極性電気外科的ツールおよび新型電気外科的ツールとは異なる直流(DC)アクセサリ装置を受け入れまたはこれに接続されるよう構成されている。電力ポート104は、直流電圧を供給するよう構成されている。例えば、幾つかの実施形態では、電力ポート104は、約12ボルトDCを提供することができる。電力ポート104は、外科的アクセサリ、例えば人工呼吸器、ポンプ、ライト(灯)、または別の外科的アクセサリに電力供給するよう構成されているのが良い。かくして、標準型または非特殊型両極性ツールのための電気外科的発生器と置き換えることに加えて、電気外科的発生器は、外科的アクセサリ用電源に置き換わることができる。幾つかの実施形態では、既存の発生器および電源を電気外科的発生器で置き換えることにより、外科的または手術作業空間内で必要な多くの幹線コードにおいて貯蔵ラック、カードまたは棚上に必要な貯蔵空間の量を減少させることができる。
【0018】
一実施形態では、標準型両極性ポート中への非特殊型両極性ツールの結合によっては、発生器がツールをアクティブにチェックすることはない。しかしながら、発生器は、非特殊型両極性ツールの情報を表示することができるよう接続を認識する。種々の実施形態によれば、発生器は、新型ツールポート102の各々に関する器具接続状態を認識し、そして接続状態の器具を認証し、その後、RFエネルギー起動要求(例えば、ツールスイッチ、例えばフューズボタンの起動)を受け取る。発生器は、一実施形態では、接続状態の器具からの認証済みデータを読み取るとともに認証されかつ接続された器具からの電気制御値(例えば、電圧レベル設定値、電流レベル設定値、電力レベル設定値、アクティブ位相角レベル設定値、RFエネルギー出力起動タイミング限度、ツール短絡限度、ツール開路限度、ツールモデル/識別、RFエネルギー出力ラインコンフィグレーション、スイッチ状態指令コンフィグレーションおよび/またはこれらの組み合わせ)を読み取る。
【0019】
種々の実施形態によれば、電気外科的発生器100は、ディスプレイ105を有するのが良い。ディスプレイは、電気外科的システムの状態を指示するよう構成されるのが良く、かかる状態としては、情報のうちでとりわけ、1つまたは2つ以上の電気外科的ツールおよび/またはアクセサリ、コネクタまたはこれらへの接続の状態が挙げられる。幾つかの実施形態では、ディスプレイは、テキストおよび図形情報を提供することができるマルチラインディスプレイ、例えばLCDパネルディスプレイから成るのが良く、かかるLCDパネルディスプレイは、幾つかの実施形態では、バックライトまたはサイドライトを介して照明可能である。幾つかの実施形態では、ディスプレイは、マルチカラーディスプレイから成るのが良く、このマルチカラーディスプレイは、電気外科的発生器に電気的に結合された特定のツールに関する情報および特定の外科的処置(例えば、黄色のテキストおよび図形で表示される切断作業、紫色で表示される溶融または溶接作業、および青色で表示される凝固作業、黄色および青色で表示可能な無血離断作業)に対応した色を表示するよう構成されるのが良い。幾つかの実施形態では、ディスプレイは、電気外科的発生器に電気的に結合されるとともに/あるいはツールポートに対応関係をなして接続された各ツールに関する状態情報を表示するよう分割されている複数のツールに関する状態データを同時に表示するよう構成されているのが良い。視覚指標、例えば状態棒グラフを用いると、作動時に両極性電気外科的ツールに及ぼされるべき全有効電気エネルギーの割合を図示することができる。種々の実施形態では、組織を切断し、凝固させ、または溶融させるよう動作可能な電気外科的ツールは、3つの着色ディスプレイまたは棒グラフを有する場合がある。幾つかの実施形態では、ユーザは、多数の電気的に接続された器械の状態の提供と単一の電気的に接続された機械の状態の提供との間でディスプレイを切り換えることができる。種々の実施形態によれば、ツールおよび/またはアクセサリをいったん接続するとともに/あるいは検出すると、ユーザインターフェースディスプレイの窓が開き、ツールの接続形式および状態を示す。
【0020】
電気外科的発生器は、種々の実施形態によれば、ユーザインターフェース、例えば複数のボタン107を有するのが良い。これらボタンにより、電気外科的発生器とのユーザ対話が可能になり、例えば、電気外科的発生器に結合された1つまたは2つ以上のツールに供給される電気エネルギーの増減の要求が可能である。他の実施形態では、ディスプレイ105は、タッチスクリーンディスプレイであるのが良く、かくして、データディスプレイおよびユーザインターフェースの機能を組み込むことができる。種々の実施形態によれば、外科医は、ユーザインターフェースを介して1~3つのレベルの選択によって電圧設定値を設定することができる。例えば、レベル1では、電圧が110Vに設定され、レベル2では、電圧が100Vに設定され、レベル3では、電圧が90Vに設定される。3つ全てのレベルに関して電圧が5アンペアに設定され、電力が300VAに設定される。他の実施形態では、電圧は、特定のレベル、例えばレベル2にあらかじめ設定されまたはこれをデフォルトとする。他の実施形態では、電流および電力設定値と同様、電圧設定値は、発生器の作動を単純化するためにユーザによる調節可能ではなく、従って、所定のデフォルト電圧設定値が利用され、例えば、電圧が100Vに設定されている。
【0021】
一実施形態では、電気外科的器械は、1つまたは2つ以上のメモリモジュールを更に有するのが良い。幾つかの実施形態では、メモリは、このツールおよび/または他のツールに関する動作データを含む。例えば、幾つかの実施形態では、動作データは、電極構成/再構成、ツールの使用法、動作時間、電圧、電力、位相および/または電流設定値、および/または特定の動作状態、条件、スクリプト、プロセスまたは手順に関する情報を含むのが良い。一実施形態では、発生器は、メモリモジュールからの読み取りおよび/またはメモリモジュールへの書き込みを開始する。
【0022】
一実施形態では、各新型両極性電気外科的ツールには、機器の認証、コンフィグレーション、期限満了、およびロギングを提供するメモリモジュールおよび/または一体型回路が付属している。レセプタクルまたはポート中へのかかるツールの結合により、ツール検証および認証プロセスが開始する。ツール認証は、一実施形態では、チャレンジレスポンス方式および/または発生器によっても共有される記憶シークレットキーを介して提供される。他のパラメータは、完全性チェックのためのハッシュキーを有する。使用率が発生器および/またはツール一体形回路および/またはメモリにログ記録される。一実施形態では、エラーの結果として、非ログ記録使用が生じる場合がある。一実施形態では、ログ記録は、2進数で設定され、オフラインツールでまたは発生器を介して解釈される。
【0023】
一実施形態では、発生器は、時間測定コンポーネントを用いてツールの満了をモニタする。かかるコンポーネントは、ブート時間でコンフィグされるポーリングオシレータまたはタイマまたは実時間カレンダークロックを利用する。タイマ割込みが発生器によって取り扱われ、かかるタイマ割込みをタイムアウトイベントについてスクリプトによって使用できる。ロギングはまた、タイマまたはカウンタを利用してログ記録されたイベントを時刻表示する。
【0024】
種々の実施形態によれば、発生器は、RFエネルギーがアクティブである間、接続状態の電気外科的ツールに送られたRFエネルギーの電圧と電流の位相差を読み取る能力を提供する。組織が溶融されている間、位相の読みを用いて溶融プロセス中、互いに異なる状態を検出する。
【0025】
一実施形態では、発生器は、ダウンロード可能な内部ログ中の使用率に関する詳細をログ記録する。発生器は、コードおよび機器性能の記憶のためのメモリを有する。発生器は、特定のツール性能に関する命令を含む際プログラム可能なメモリを有する。メモリは、例えば、シリアル番号およびツール使用パラメータを保持する。発生器は、接続されているツールの形式に関する情報を記憶する。かかる情報としては、タイムスタンプ、接続状態のツールの使用回数または使用持続時間、各ツールの電力設定値およびデフォルト設定値に対してなされた変更とともにツールの識別子、例えば接続状態のツールのシリアル番号が挙げられるが、これには限定されない。メモリは、一実施形態では、約2ヶ月間、約10,000回のツール使用数に関するデータを保持し、必要に応じてそれ自体上書きするよう構成されている。
【0026】
発生器は、種々の実施形態によれば、電流、電力またはインピーダンスをモニタしまたは制御することはない。発生器は、電圧を調整し、また電圧を合わせることができる。送り出された電気外科的電力は、印加された電圧、電流および組織インピーダンスの関数である。発生器は、電圧の調整を通じて、送り出されている電気外科的電力に影響を及ぼすことができる。しかしながら、電圧を増減することによって、送り出される電気外科的電力は、必ずしも増減することはない。電力リアクションは、電力を供給する発生器ではなく、発生器による制御が全くない状態で、組織と相互作用する電力または組織の状態によって引き起こされる。
【0027】
発生器は、これがいったん電気外科的エネルギーを送り出すと、故障が起こるまでまたは特定の位相パラメータに達するまで、連続的にかかる送り出しを行う。一実施例では、電気外科的器械のジョーを開くのが良く、かくして電気外科的エネルギーを加える前、加えている間、および加えた後の任意の時点で圧迫を弛めることができる。発生器はまた、一実施形態では、電気外科的エネルギーの停止を開始するよう特定の持続時間または所定の時間遅延を中断することはなく、または待機することはない。
【0028】
また
図3~
図15を参照すると、種々の実施形態によれば、電気外科的器械が提供される。図示の実施形態では、この器械は、ジョー202に結合されまたはジョー202が延びる起点としてのアクチュエータ201を有する。一実施形態では、アクチュエータ201は、2つのフィンガループまたは指かけ55,56を有し、各フィンガループは、異なるハンドル57,58から延び、両方のハンドルは、互いに対して動くことができる。両方のハンドルは、中央または主ピボット50を介して互いに回動可能に結合されている。
作用を説明すると、ユーザ、例えば外科医がハンドルを操作してジョーを動かし、すなわちジョーを選択的に開閉する。
【0029】
溶融/密封スイッチまたはボタン33が少なくとも
図13に示されかつ矢印Dで示されているようにハンドルが完全に閉じられると作動される。溶融ボタン33は、外科医によって押されることができるが、作動的に押されるわけではない。作用を説明すると、ジョーは、完全に閉じられるよう構成され、密封ボタン33が不作動状態のままでいる間、それにより組織をジョー相互間で把持して圧迫する。ハンドルをそれ以上閉じ、その時点で、力調整・過剰圧縮またはばねアーム機構体は、以下に詳細に説明するように、所定の圧縮力またはある範囲の圧縮力がジョー相互間の組織に加えられまたはほとんどの場合に加えられる。ハンドルをいったん完全に閉じると、第1または下側のハンドル57またはハンドル57の一部分の外面が溶融ボタン33に係合する。したがって、ジョーが依然として完全に閉じられたままの状態でいる間、ハンドル57が他方の向かい合ったハンドル、すなわち第2または上側のハンドル58の近くに動くにつれて、ハンドル相互間の密封ボタン33が押し下げられる。上側ハンドル58は、一実施形態では、空所を形成する上側ハンドルハウジング53,54を有し、溶融ボタンの幾つかの部分がこの空所内に捕捉される。一実施形態では、溶融ボタンは、接触を指示しまたはボタンへの接触が行われたという触覚指標(例えば、摩擦、力または抵抗の増大)、画像および/または音声指標を外科医に提供する第1の状態およびボタンが完全に押し下げられ、かくしてジョー相互間の組織の溶融が起動されまたは開始され、かくしてRFエネルギーが組織に加えられているということを指示する類似の指標を備えた第2の状態を有する。溶融ボタンいったん起動すると、関連の回路または接点は、ジョーの適当な電極を発生器の関連の接続部に接続してRFエネルギーを供給し、それによりジョー相互間に把持された組織を溶融させるよう接続される。
【0030】
種々の実施形態では、器械は、アクチュエータ201のブレードアクチュエータ、例えばブレードトリガまたはレバー21に連結された並進可能な機械式切断ブレードを有する。機械式切断ブレードは、ジョー相互間の組織を分割するようブレードレバー21によって作動される。ハンドルのうちの一方の中に設けられたブレードロックフック25がブレードレバー21の運動を阻止するが、ハンドル/ジョーの閉鎖時、ブレードロックフックは、ブレードレバー21を解除する。ブレードフックは、他方のハンドル内に設けられたブレードロック解除突出部22との係合時、ブレードレバーを解除し、それによりブレードレバーを動かすことができ、かくしてブレードを作動させてこれをブレードレバーがジョーおよびジョー相互間に把持された組織に通す。
【0031】
ハンドルおよびジョーの回動の中心である主または中央ピボット50は、開口部を有し、ブレードスライダ24がこの開口部を通って伸長したり引っ込んだりすることができ、かくしてピボット50は、ピボットの位置とは関係なくブレードスライダを妨げまたは制限しない。一実施形態では、主ピボット50は、上側または第2のジョー支持体12に設けられた円形開口部中に挿入されてこれに連結される円形の端および下側または第1のジョー支持体17に設けられた正方形、長方形または非円形の開口部19に挿入されてこれに連結される正方形、長方形または非円形の端を有する。中央ピボット50と上側ジョー支持体12との円形連結部により、上側ジョー支持体は、中央ピボットを中心として回動することができる。これとは逆に、中央ピボット50と下側ジョー支持体17との正方形または非弧状連結部は、中央ピボット50周りの下側ジョー支持体の回転または回動に抵抗する。したがって、一実施形態では、上側または第2のジョーは、下側ハンドルが中央ピボット50を中心として回転している上側ハンドルに向かって動かされているとき、動くことができずまたは比較的静止した下側ジョーに対して近接位置から離隔位置に動いたり離隔位置から近接位置に動いたりする。
【0032】
ブレードスライダ24は、ブレードレバーアーム23に連結されている。ブレードレバーアーム23は、ブレードトリガ21に連結されている。一実施形態では、突出部、例えばピンがブレードレバーアーム23の遠位部分からブレードスライダ24の近位端に設けられた開口部中に延びてこれらのコンポーネントを互いに連結している。一実施形態では、突出部がブレードレバーアーム23の近位部分からブレードトリガ21の一端に設けられた開口部中に延びてこれらのコンポーネントを互いに連結している。ブレードトリガ21の他端は、露出されていてユーザによって接近可能であり、ブレードレバーは、ブレードトリガの中点のところまたはその近くでトリガピボットを中心として回動可能である。
したがって、ブレードトリガがユーザによって近位側に引かれまたは反時計回りの方向に回されると、ブレードレバーアーム23に連結されているブレードトリガ21の端は、遠位側に動き、それによりそれと同時にブレードレバーアームを遠位側に動かす。ブレードスライダ24に連結されているブレードレバーアーム23は、ブレードスライダを遠位側に摺動させまたは動かす。ブレードスライダの遠位端と一体にまたはこれに取り付けられた状態で切断ブレード、ナイフまたは切れ刃または切断面が設けられている。したがって、ブレードスライダ24がジョーに設けられたチャネルを通って長手方向に並進しているとき、ジョー相互間に把持された組織が切断される。一実施形態では、切れ刃または切断面は、ジョー相互間の組織の切断を容易にするよう傾けられている。種々の実施形態では、切断ブレードは、湾曲ブレード、フック、ナイフ、またはジョー相互間の組織を切断するよう寸法決めされるとともに形作られた他の切断要素である。
【0033】
ブレードトリガ21に連結されているばね26がブレードトリガを近位側に付勢して近位側に戻し、かくして、ブレードトリガが外科医によって解除されると、ブレードトリガは、回転しまたは回動してその初期位置に戻る。一実施形態では、ばね27がブレードレバーアームに連結されており、このばねは、ブレードレバーアームおよびこれに連結されているブレードスライダを付勢してこれらを初期または引っ込み位置に戻す。それゆえ、ブレードトリガがいったん解除されると、ブレードスライダは、長手方向に並進してジョーのチャネルを通ってその初期位置に戻る。戻ると、ブレードトリガは、ブレードロックフック25に係合し、トリガが引き続きその初期または開始位置に戻るよう進み続けているときにフックを動かしまたは持ち上げる。初期位置にいったん戻ると、ブレードフックは、ロック解除突出部22によって妨げられない場合、自由に戻ってトリガに係合し、これを定位置に保持することができる。
【0034】
一実施形態では、下側ジョー支持体17は、ブレードスライダ24を受け入れてこれを支持するよう寸法決めされた案内チャネルを有し、それにより、遠位側および/または近位側へのスライダの位置合わせを保証するとともにかかるスライダの長手方向並進を支援する。一実施形態では、下側ジョー支持体は、器械の下側ジョーまたは遠位端から離れた下側ジョー支持体の近位端のところに設けられているピンチャネルを有する。近位ピンチャネルは、ピン、ブレードスライダまたはブレードレバーアームが遠位側に並進したり近位側に並進したりしているときにブレードスライダ24とブレードレバーアーム23とのピンまたは連結部を受け入れてこれを支持し、そして遠位側および/または近位側へのスライダおよびピンの長手方向並進を位置合わせするとともに支援するよう寸法決めされている。
【0035】
ジョーは、2つのハンドルまたはそれぞれのジョーに連結されている1つのハンドルの対応の運動によって開閉される。ジョーおよびハンドルは、少なくとも3つの状態、条件または位置を通って動くことができる。第1または初期の(または開き)位置では、ジョーは、上側ジョーと下側ジョーが互いに離隔した状態で開かれ、ハンドルは、上側ハンドルと下側ハンドルが互いに離隔した状態で開かれる。第2の(またはクランプ)位置では、ジョーは、上側ジョーと下側ジョーが互いに近接した状態で閉じられ、ハンドルは、上側ハンドルと下側ハンドルが互いに近接した状態で閉じられる。第3の(または溶融)位置では、ジョーは、第2の位置では閉じられたままであるが、ハンドルは、上側ハンドルと下側ハンドルが互いに接触しまたは相互作用する部分(例えば、接触しまたは起動される溶融ボタン)を有している状態で完全に閉じられる。ハンドルおよびジョーは、3つの位置の各々相互間で動くことができる。ジョーは、組織に当たって閉じられると、圧力または圧迫力をジョー相互間の組織に加える。圧迫は、外科医によって加えられている閉鎖力に対応している。種々の実施形態によれば、器械は、作動上の使用の差および/または組織のサイズのばらつきに起因して、過剰に締め付けずまたは大きすぎる圧縮力を及ぼさない状態で適正な圧縮力を加える力調整・過剰圧縮またはばねアーム機構体を有する。種々の実施形態では、力調整・過剰調整圧縮機構体は、ジョーおよび/またはハンドルが第2の位置から第3の位置に動かされたときに起動されまたは起動されるに過ぎずまたは作動するに過ぎない。
【0036】
種々の実施形態によれば、器械は、装置ハンドルのうちの一方が内部支持ばね41を介してクランプ圧力を制御することができるようにすることによって所定の圧力またはある範囲の圧力を加える。2つのハンドルが互いに閉じて底を打つ(一杯まで閉じられて互いに当たる)と、一方のハンドルは、ジョーから回転的に外れまたは結合解除することができ、揺動運動が生じる。揺動運動は、一実施形態では、ハンドル57、ジョー支持継手40および互いに合致する輪郭44,45が互いに相互作用した結果である。ハンドルおよび特にハンドルハウジングがジョーおよび特に支持継手から外れまたは結合解除すると、内部ばね41は、縮み、それによりジョーが完全に閉じられると、ジョー支持アーム42にコントローラのモーメントが加えられる。支持ばねが例えば固定された剛性レバーではなくクランプ圧力を制御した状態で、器械は、特定のクランプ圧力範囲を維持してこれを保証することができる。加うるに、外科医によって加えられるハンドルによる任意のそれ以上の圧力または運動は、ジョーから除かれまたは結合解除される。したがって、ハンドルは、ジョーから回転的に外されまたは結合解除され、それにより、ハンドルは、組織/血管に対する追加の表面圧力または圧迫力を生じさせないで完全閉じまたは溶融位置に動くことができる。
【0037】
支持ばね41は、決定された圧力または力を供給し、それにより、器械は、
図14Aおよび
図14Bに示されているように所定の最適密封圧力を標的としまたは設定することができる。具体的に説明すると、ハンドルが底を打ったときに(矢印151)2ポンド(0.908kg)の力を支持アームに加えるばねは、ジョーのところに6ポンド(2.724kg)(矢印152)から10.5ポンド(4.767kg)(矢印154)までの圧力範囲をジョーに加え、約7.5ポンド(3.370kg)がジョーの中点のところに加えられる(矢印153)。同様に、ハンドルが一杯まで閉じたときに(矢印151)3.25ポンド(1.4755kg)の力を支持アームに加えるばねがジョーのところに9.25ポンド(4.1995kg)(矢印152)から16ポンド(7.264kg)(矢印154)までの圧力範囲を加え、約12ポンド(5.448kg)(矢印153)がジョーの中点ところに加えられる。ばねとピボット50との間の距離(例えば、3.68インチ(9.35cm))およびピボット50とジョーの端または密封面との間の距離(例えば、1.31インチ(3.33cm))一定のままである。したがって、器械によって加えられる制御された力は、ジョーの長さに沿って、種々の実施形態では遠位先端または遠位部分の近くのところの約5.5ポンド(2.497kg)の力から種々の実施形態ではジョーの近位部分の近くのところの約16ポンド(7.264kg)の力まで様々である。種々の実施形態によれば、ジョーアームとジョー先端部の力の比は、2.81:1の比である。また、ばね41は、露出されずまたは外科医によって接近可能ではなく、かくして外科医の操作の潜在的な邪魔、外科医の手袋への引っかかり、位置合わせ不良、機構体に対する妨害および/または危害を阻止して組み立ておよび製造の容易さを増す。
【0038】
種々の実施形態によれば、外科医は、電気外科的器械のジョー(上側および下側ジョー10,20)を開閉して組織を動かしてこれをこれらジョー相互間に把持することができる。外科医が密封されるとともに/あるいは切断されるべき組織をいったん掴むと、外科医は、引き続きハンドルを回してこれを閉じてブレードレバーをロック解除して溶融ボタン33に係合する(
図7)。加うるに、矢印Bによって指示された回転方向における下側または底部ハンドル57のそれ以上の運動により、底部ハンドル57のハウジングは、ジョー支持継手40から離脱しまたはちぎれる。対応した合致状態の湾曲面または輪郭44,45は、ジョー支持継手40からの底部ハンドルのハウジングの結合解除を助けるとともにジョー支持継手40と下側ハンドル57との揺動運動を容易にしまたは生じさせるよう外部支持体となる。種々の実施形態では、ジョー支持継手は、下側ジョー支持体の湾曲面72と合致する湾曲切欠き46を有し、それによりハンドルの互いに対する揺動運動および/または回動が一層容易になる。
【0039】
ピボットまたはジョー支持アーム42は、下側または底部ハンドル57に連結されている。底部ハンドル57は、包囲状態の空所を定め、一実施形態では、底部ハンドル57は、左下のハンドルハウジング51および右下のハンドルハウジング52を有し、これらハンドルハウジングは、これらの間に包囲状態の空所を定める。ジョー支持アーム42の近位端の近くには、支持ばねまたは付勢部材41が設けられている。スロット47もまた、ジョー支持アーム42の近位端の近くに形成され、支持ばね41は、このスロットの近くでジョー支持アーム42の近位端に連結されている。ばねおよびスロットは、底部ハンドル57の空所内に納められている。ばねおよびスロットは、互いに平行な軸線に沿って延びるとともに器械の長手方向軸線(例えば、ブレードの伸長および引っ込み軸線)および/またはジョー支持アーム42に垂直でありまたはこれに対して横方向である。底部ハンドル57内から延びるピン59がジョー支持アームに設けられたスロットまたはチャネル47を貫通している。一実施形態では、ジョーがそれぞれ開閉される初期または開き位置から閉じ位置まで、ピンは、スロットの底端または閉鎖端の近くに位置し、ばね41は、非圧縮状態のままである。ハンドルが完全に閉じられて底を打ち、そして第3の溶融位置に動かされると、ハンドルピン59は、スロットの底端からスロットの上端に向かって動き、ばね41が縮む。ジョー支持アーム42の遠位端のところでジョー支持アームが突出部、例えばピンまたはポスト74を介して上側ジョー支持体12に連結されている。
【0040】
種々の実施形態によれば、ジョー支持継手40は、ジョー支持アーム42の遠位部分を受け入れる空所を有し、かかる遠位部分は、この空所内でジョー支持継手40に連結される。一実施形態では、1本または2本以上のピン74がジョー支持アームの遠位端のところに設けられた孔78を貫通してジョー支持継手に設けられた受け口または開口部中に延び、それによりジョー支持アーム42をジョー支持継手40に固定する。一実施形態では、1本または2本以上のピン74もまた、上側ジョー支持体12の近位端のところに設けられた孔76を貫通して上側ジョー支持体12をジョー支持継手40および支持アーム42に固定している。
【0041】
一実施形態では、近位端または近位部分のところに位置するジョー支持継手40は、ジョー支持アーム42に設けられた開口部49中に延びる突出部またはポスト48であり、それにより、ジョー支持継手をジョー支持アームに更に連結している。ジョー支持アームの開口部は、支持アームの近位端と遠位端との間に位置している。ジョー支持継手の近位端の一部分もまた、ハンドルハウジング51,52中に延び、それによりジョー支持継手を捕捉してこれをハンドル57に固定している。ジョー支持継手40に連結されたジョー支持アーム42は、固定状態のままであり、かくしてジョー支持アーム42のそれ以上の回動または回転運動は、底部ハンドルがユーザの圧力を受けて引き続き回転し、ハンドルが互いに更に閉じる場合であっても、阻止される。ジョーを閉じた後に底部ハンドル57が引き続き回転しているとき、支持ばね41は、固定されているジョー支持アーム42と回転しまたは動いている(矢印114)底部ハンドル57の相互作用によって圧縮される(矢印112)。
【0042】
ハンドルが底を打つと、下側ハンドル内の支持ばね41は、特定の力をジョー支持アーム42に加え、この力は、ジョーのところの特定のまたは制御されたクランプ力に変わる。ジョー支持アーム42からちぎれた下側ハンドルハウジングは、ハンドルを互いに絞ることによってユーザによって加えられた追加の圧縮力を切り離しまたはずらす(矢印116)。ずらしまたは結合解除動作点では、種々の実施形態に従って、内部支持ばね41が働きまたは作動する。したがって、そのずらし動作位置の前においては、ばねは、働かず、かくして、外科医は、ジョーを開閉することができ、そして異なる組織を把持しまたは切開し、それにより各運動によりばね力に打ち勝つ必要なく、密封し、再位置決めしまたは邪魔にならないところに動かす。これにより、手の疲労が軽減しまたは阻止される。また、溶融するのが意図されていない組織に対する潜在的な外傷が、組織を把持しまたは動かすだけのために器械による力の意図しない印加によって回避される。一実施形態では、支持ばね41は、外科医がハンドルを縛ることによって供給される力がジョーから切り離されまたは結合解除された状態でジョーのところにクランプ力だけを提供しまたは供給する。
【0043】
ジョーは、上側および下側ジョーを含み、両方のジョーは、電極または導電性パッドを有する。上側ジョーの導電性パッド14および下側ジョーの導電性パッド15は、電線またはコネクタ37によって電気外科的発生器に電気的に結合されており、それによりRFエネルギーが導電性パッド相互間に配置された組織に供給される。導電性パッドは、互いに反対側の極性を有するよう配置されている。上側ジョー支持体12を有し、組み立てスペーサ13が上側ジョー支持体12と導電性パッド14との間に位置決めされている。上側ジョーは、オーバーモールド11を更に有しまたはオーバーモールドされている。下側ジョーは、下側ジョー支持体17を有し、組み立てスペーサ16がジョー支持体17と導電性パッド15との間に位置決めされている。
【0044】
種々の実施形態では、上側ジョー、下側ジョーまたはこれら両方のジョーの長さに沿って長手方向に延び、ブレードは、このブレードチャネルを通って作動的に横切る。下側ジョーもまた、オーバーモールド18を有しまたはオーバーモールドされている。ブレードチャネルの一部分を包囲して1つまたは2つ以上の導電性ポスト35が設けられている。
導電性ポストは、ブレードチャネルを強化するのを助けるとともに切断されるべき組織を支持する。導電性ポストはまた、ジョー相互間に把持された組織へのRFエネルギーの伝送に参与するので、切断のブレードチャネルに隣接しまたはこれに近接して切断されている組織が溶融されるようにするのを助ける。
【0045】
一実施形態では、電線および関連の接続部37が溶融スイッチボタン33から上側ハウジング、上側および下側ジョー支持体を通ってそれぞれの上側および下側ジョーおよび上側および下側電極へのそれぞれの接続部まで延びている。アクチュエータは、一実施形態では、ワイヤハーネスを有し、このワイヤハーネスは、単一のシース内に収容された絶縁状態の個々の電線またはリードを有する。ワイヤハーネスは、ボタンを備えたハンドルから出てケーブル付き接続部5の一部をなす。ハーネス内の電線は、器械とその電気外科的発生器および/またはそのアクセサリとの電気通信をもたらすことができる。一観点では、いったん起動されると、溶融ボタンは、少なくとも2本のリードを互いに電気的に結合することによって回路を閉じる。したがって、電路が次に、電気外科的発生器からアクチュエータまで作られてRFエネルギーを器械に供給する。
【0046】
幾つかの実施形態では、ジョー組立体の導電性パッドの電極の幾何学的形状により、密封領域が切断経路の遠位部分を完全に包囲するようになる。種々の実施形態によれば、ジョー表面の寸法は、力機構体が生じさせることができる潜在的な力に関してジョー相互間の組織に加えられる最適圧力に関してかかる寸法が適当に比例するようなものである。その表面領域はまた、組織に接触する表面領域に関して電気的に重要である。組織の表面積と厚さのこの比例関係は、組織の電気的な相対的特性に対するその関係に関して最適化されている。したがって、種々の実施形態では、導電性パッドは、平坦でありかつ平面状でありしかもパッド相互間にかつパッド相互間の組織を通ってRFエネルギーを伝達するよう作動的に配置されており、RFエネルギーは、パッド相互間の組織の溶融を最適化するよう電気外科的発生器によって供給される。また、種々の実施形態では、上側ジョーの導電性パッドの総表面積は、下側ジョーの導電性パッドの総表面積よりも大きく、それによりパッド相互間の組織の溶融および切開が最適化される。
【0047】
種々の実施形態によれば、電気外科的システムは、電気外科的発生器および電気外科的ツールを含むのが良い。電気外科的ツールは、血管および組織の束の結紮および分割が望まれる開放手技において用いられる。電気外科的ツールは、高周波(RF)エネルギーを器具のジョー相互間に捕捉された組織に送り出すことによって血管を溶解させ、その後またはそれと同時に密封状態の組織をユーザ作動式ブレードの使用により切断する。発生器は、処置されるべき組織の相端点を求めることによって電気外科的端点を提供することができる。電気外科的システムは、種々の電気外科的作動のために2つ以上の電気外科的ツールを含むのが良く、また、電気外科的システムは、様々なユーザインターフェース特徴および音響/視覚的性能インジケータを含むのが良い。電気外科的システムはまた、従来型両極性電気外科的ツールおよび直流外科用具に電力を供給することができる。
【0048】
つぎに、種々の実施形態に従って本明細書において説明した電気外科的ツールまたは器械の動作上の観点のうちの幾つかを参照すると、血管または組織束が溶解のためにいったん識別されると、第1のジョーおよび第2のジョーを組織の周りに配置する。ハンドルを互いに絞り、それにより第1のジョーを第2のジョーに向かって回動させて組織を効果的にクランプする。アクチュエータ201は、ジョー202が開き位置にある第1または初期の位置を有し、一実施形態では、第1および第2のジョーの開きにより、約30°の角度が定められる。
【0049】
ジョーによって組織に加えられた力は、作動ハンドルのうちの一方に設けられた支持アームを通って伝えられる。あらかじめ加えられている力にいったん打ち勝つと、支持アームは、反対側のハンドルに近づき始める。係合溶融位置に達し、僅かな、例えば最小限の量の組織がジョー相互間に存在すると、支持ばねは、ジョーの電極に加えられた力が最適血管密封に必要な力範囲の下端の近くに在る。多量の、例えば、最大量の組織がジョー内に配置されると、ロックアームばねは、加えられる力の最大量が最適血管密封に用いられる力範囲の最大の上端を越えないようにする。
【0050】
したがって、力・過剰圧縮調整機構体は、上側ジョーと下側ジョーとの間に収容されている物質の量とは無関係に維持される血管および組織の封止に最適な最小力を提供する。
この機構体はまた、極めて大きな力が組織に加えられる恐れを減少させる。大きすぎる力が血管または組織束に加えられた場合、潜在的な損傷が起こる可能性がある。かくして、極めて細い血管または薄い組織の束がジョー内にクランプされる場合、器械は、良好な組織溶接を得るのに必要な最小限の力を加える。同じことは、極めて太い血管または組織束に当てはまる。ジョーの動程は、組織の厚さに応じて大幅に変化する場合があるので、ジョーによって加えられる力は、調節可能である。器械は、自己調整式でありかつ自動的である(ユーザからのアクションなし)。力・過剰圧縮調整機構体は、自己調整を提供し、電極の長さに沿って特定の範囲の力を加える。
【0051】
ハンドルの操作の続行により、ハンドルが回動して可動ハンドルにより溶融ボタンの押し下げが生じる場所に至る。溶融ボタンの押し下げにより、高周波エネルギーがジョー相互間の組織に加えられる。組織をいったん溶解させるとともに/切断すると、ハンドルを互いに離すことによってアクチュエータを再び開く。ジョー相互間の組織を切断するため、ユーザは、ブレードトリガ21を作動させるのが良い。ブレードトリガを近位側に動かすと、ブレードレバーが回動し、それにより切断ブレードが遠位側に押しやられる。かくして、切断ブレードは、前方に前進して組織を分割する。外科医がブレードトリガを放すと、ブレードばねは、切断ブレードをその元の位置に再設定する。
【0052】
種々の実施形態によれば、アクチュエータ201は、ジョー202が閉じ位置にありかつブレードトリガが押し下げられて切断ブレードをその最も遠位側の位置に前進させた切断または溶融位置を有する。種々の実施形態では、ブレードトリガは、ジョー相互間の組織を切断するよう作動可能であるとともに/あるいは溶融ボタンまたはスイッチは、ジョー相互間の組織を溶解させるよう作動可能である。
【0053】
上述したように、種々の実施形態によれば、器械3は、ジョー201が互いに離隔しかくしてハンドル202もまた、互いに離隔した第1の状態を有する。かくして、器械は、組織をジョー相互間に把持するよう位置決めされる。この器械の第2の状態では、ジョーは、ジョー相互間に組織を把持するよう互いに近接して位置し、同様に、ハンドルは、互いに近接して位置する。組織にはRFエネルギーが加えられない。外科医は、ジョーを開き、かくしてこの組織または他の組織を把持するようジョーを再び位置決めすることによって第1の状態に戻るのが良い。器械のこの第3の状態では、ハンドルは、更にかつ互いに近づけられる。しかしながら、ジョーは、第2の状態と同一の位置に位置したままであり、かくして、組織の過剰圧迫が回避される。第3の状態への運動は、スイッチまたはボタンを作動させ、それによりRFエネルギーをジョー相互間に把持された組織に加えるために必要である。また、第3の状態の運動により、ブレードロックフックが解除され、それによりジョー相互間に把持された組織をブレードレバーの作動により切断することができる。第3の状態への運動によっても、組織を不用意に解除する恐れが減少する。また、組織の偶発的な切断または誤った組織線に沿う切断が回避される。加うるに、この状態により、RFエネルギーの作動前、作動中および作動後におけるジョー相互間の組織への一定のかつ連続した既定の圧迫またはある範囲の圧迫の適用が可能であり、それによりジョー相互間の組織の密封または溶融が促進される。
【0054】
種々の実施形態では、下側ハンドルが回動して開き位置または第1の状態において上側ハンドルから離隔されると、下側ハンドルと上側ハンドルとの間の開き距離が定められ、上側ハンドルおよび下側ハンドルが閉じ位置または第2の状態において上側ハンドルに近接して位置することにより、下側ハンドルと上側ハンドルとの間の閉じ距離が定められ、閉じ距離(D)は、開き距離よりも短い。種々の実施形態では、下側ハンドルが溶融位置において上側ハンドルに近接して位置することにより、下側ハンドルと上側ハンドルとの間の溶融距離が定められ、溶融距離は、閉じ距離よりも短い。種々の実施形態によれば、溶融距離は、非圧縮状態の支持ばねの高さまたは支持アームの近位端と下側ハンドルハウジングとの間の距離に一致しまたはこれよりも長い。
【0055】
図16を参照すると、一実施形態では、下側ジョー20に連結された上側ハンドル58は、上側リングハンドルまたはフィンガループ56を有し、上側ジョー10に連結された下側ハンドル57は、下側リングハンドルまたはフィンガループ55を有する。一実施形態では、上側リングハンドルは、ばね162によって付勢される内部ループ161を有する。内部ループは、上側リングハンドルにばね押しされ、この内部ループは、長手方向軸線に垂直にまたは直角に動く。このばねは、特定の力を上側ハンドルに加えてジョーのところのクランプ力を制御する。したがって、組織の過剰圧迫およびかくして意図しない組織の外傷が阻止される。一実施形態では、ばねは、ジョーが閉じられたときだけ作用し始める。しかしながら、理解されるように、内部ループは、例えばリングハンドルの外側部分またはハンドルを把持する外科医とは作動的には係合することができない。したがって、内部ループには係合せず、かくして、クランプ力は、ループに連結されたばねによっては調節されない。種々の実施形態では、溶融ボタンが内部ループとリングハンドルとの間に設けられ、かくして、ジョー相互間に把持された組織を溶融させるためには、内部ループを働かせ、それによりばねを働かせる。種々の他のコンポーネントおよび/またはこれらの組み合わせは、
図16に示されている実施形態にも利用でき、またこの逆の関係が成り立つ。
【0056】
種々の実施形態によれば、ジョー相互間で生じる把持力は、ジョーの長さに沿って近位端近くの相対的最大値から遠位端近くの相対的最小値まで変化することができる。電気外科的器械は、ジョーの電極部分の長さに沿って力が最適化されて血管密封のための所定の力範囲が維持されるようにするよう構成されている。適正な血管密封状態を得るのに利用される力の所定の最大量をアクティブな電極の近位端(ピボットの最も近くに位置する)のところでは超えない。加うるに、電極の最も遠位側の端のところの把持力は、最適な血管密封のための力の所定の最小量よりも大きい。ジョーに沿って位置するあらゆる箇所で生じる把持力は、最適密封を達成するために所定の最大力と所定の最小力によって定められた範囲内にある。
【0057】
また、理解されるべきこととして、説明を容易にするために本明細書全体を通じてばねについて説明している。しかしながら、他の付勢機構体、例えば弾性バンド、流体力学的手段等を用いることができる。理解されるべきこととして、力・過剰圧縮機構体は、ハンドルの近位端寄りのまたはこの近くに位置し、かつ両方のハンドル相互間で露出されまたは付勢されるばね構成例、例えばばねまたはばね付勢機構体が、外科医がハンドルおよびかくしてジョーを閉じるために打ち勝つ必要がある戻し力を生じさせるのを回避させる。
かくして、単一の外科的処置において外科医が多数回の密封、例えば20回から50回の密封を行う状態で、手の疲労が起こる場合があり、と言うのは付勢機構体がジョーのところの組織の圧迫を保証するとともに外科医が組織を過剰圧迫するのを阻止するのに十分強力だからである。加うるに、所定の力または所定範囲の力もまた、様々な時間フレームにわたって互いに異なる外科的処置について外科医または種々の外科医によって加えることができる互いに異なる作動力および漸変する力が所与の場合、制御して予測するのが困難な場合がある。さらに、外科医の手または操作の妨害も、付勢機構体が器械の近位端のところで露出されている場合にも起こることがある。器械のジョーの近くにまたはジョー内に設けられたばねまたは付勢機構体は、ジョーによって把持されるよう設けられまたは把持されるように試みられる組織の妨害を生じさせる場合がありしかも位置合わせ不良のまたは平行ではないジョー閉鎖を生じさせる場合があり、それにより、不適当な組織の密封または切断が生じる場合がある。加うるに、ジョーに生じる焼痂または他形式のこびりつきがかかる付勢機構体を妨害する場合がある。さらに、かかる付勢機構体の配置により、ジョーサイズの増大が生じ、かくして溶融部位の外科医の視界を潜在的に妨げまたはブレード機構体を潜在的に妨害する場合がある。
【0058】
一観点では、溶融プロセスの端点の決定は、溶融プロセス中、電圧および電流の移相をモニタすることによって与えられる。種々の実施形態によれば、移相の測定またはモニタリングと関連して電気外科的発生器による関連した電気外科的発生器によるRFエネルギーの印加は、電気外科的システムの種々の実施形態に従って血管および組織を溶解させるために行われる。したがって、組織の密封、溶解または結合を生じさせる器械は、結合中の組織に対して無傷性の接触をもたらすとともに組織内に十分な破裂圧力、引張り強度、または破断強度を提供する。
【0059】
一実施形態では、発生器は、当初、初期器械インピーダンスおよび/またはキャパシタンス(例えば、電気外科的発生器の器械コネクタのプラグイン中)を求め、この場合、器械特性の公差/変化を組織測定および端点決定プロセスにおいて考慮に入れる。これは、特定の電気外科的器械のオームおよび容量値および/または公差とは別個独立の組織測定値を考慮に入れることができる。
【0060】
本発明に従って組織を溶解させまたは密封する電気外科的発生器および関連の電気外科的器械のための例示のRFエネルギー制御プロセスが提供され、この制御プロセスでは、RFエネルギーを発生器によって接続状態の電気外科的器械またはツールを通って供給される。発生器は、少なくとも、供給されたRFエネルギーの位相および/または位相の変化をモニタする。種々の実施形態では、正から負または負から正への位相交差または極性変化に遭遇した場合、位相停止が決定される。位相停止は、種々の実施形態では、最適組織密封または溶融端点を指示するとともに/あるいは求められた組織特性、例えばサイズ、誘電率、導電性および/または印加電圧、電流および/または電力に基づく既定の位相角および/または位相角の変化を含む。発生器は、少なくとも、供給されるRFエネルギーの位相および/または位相変化をモニタし続ける。位相停止に達しまたはこれを超えた場合、プロセスが行われまたは終了手順が開始されるとともに/あるいは発生器によって供給されるRFエネルギーが停止される。
【0061】
種々の実施形態によれば、検出された位相交差または極性変化時に、発生器は、供給RFエネルギーの電圧レベルを識別し、求めた電圧レベルに応じて、特定の一連の行為を選択する。例えば、識別した電圧が50ボルト未満である場合、電圧レベルは、25ボルトの一定値に設定され、RFエネルギーは、モニタされた位相角が-7°の位相角端点値に達するまで供給され続ける。識別された電圧が50ボルト以上であるが60ボルト以下である場合、電圧レベルは、識別された電圧の状態で一定に保たれ、RFエネルギーは、モニタされた位相角が-14°の位相角端点値に達するまで供給され続ける。識別された電圧が60ボルトを超える場合、電圧レベルは、識別された電圧で一定に保たれ、RFエネルギーは、検出された位相角が-14.5°の位相角設定点値に達するまで供給され続ける。
【0062】
ある特定の実施形態では、電気外科的溶融/シーラ・ディバイダツールは、ハンドル組立体、ジョー組立体、および力・過剰圧縮調整機構体を有する。ハンドル組立体は、2つの回動可能に動くことができるハンドルを含む。ジョー組立体は、第1のジョーおよび第2のジョーを含む。第1のジョーは、内面、外面、および内面に設けられた少なくとも1つの電極を有する。第2のジョーは、内面、外面、および内面に設けられた少なくとも1つの電極を有する。ジョー組立体は、ハンドル組立体を第1のジョーの内面が第2のジョーの内面から離隔された開き形態から第1のジョーの内面が第2のジョーの内面に近接して位置する閉じ形態へのハンドル組立体の運動によって作動可能である。力・過剰圧縮調整機構体は、閉じ形態では、ジョー組立体が所定の最小力と所定の最大力との間の把持力を第1のジョーと第2のジョーとの間に送り出すよう構成されている。
【0063】
他の実施形態では、ジョー組立体は、ブレードを含む。ブレードは、近位端に隣接して位置する引っ込み位置と近位端と遠位端との間の前進位置との間に定められる切断経路沿いに第1のジョーの内面に沿って長手方向に前進可能である。ブレードは、ハンドル組立体に設けられたブレードトリガの運動によって前進可能である。第1のジョーに設けられた少なくとも1つの電極と第2のジョーに設けられた少なくとも1つの電極は、互いに反対側の極性を有し、切断または分割経路を包囲する溶融および/または切開領域を定める。種々の実施形態では、ジョー組立体は、RFエネルギーが供給されると溶融させまたは密封し、次に、機械的切断ブレードを用いてジョー部材相互間の組織を切断するために設けられている。
【0064】
幾つかの実施形態では、電気外科的ツールは、種々の動作パラメータをモニタして位相角および/または位相角の変化に基づいて高周波端点を求めるシステムで使用できる。電気外科的ツールは、高周波(RF)エネルギーを器械のジョー相互間に把持された組織に送り出すことによって血管を溶融させる。
【0065】
電気外科的発生器、ユニット、器械およびこれら相互間の接続部ならびにこれらの動作および/または機能の別の実施例が2009年4月1日に出願された米国特許出願第12/416,668号明細書(発明の名称:Electrosurgical System)、2009年4月1日に出願された同第12/416,751号明細書(発明の名称:Electrosurgical System)、2009年4月1日に出願された同第12/416,695号明細書(発明の名称:Electrosurgical System)、2009年4月1日に出願された同第12/416,765号明細書(発明の名称:Electrosurgical System)および2009年3月31日に出願された米国特許出願第12/416,128号明細書(発明の名称:Electrosurgical System)に記載されており、これらの特許文献を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。これら電気外科的発生器、ツールおよびシステムのある特定の観点を本明細書において説明し、そして種々の実施形態に関する追加の細部および実施例が2014年5月16日に出願された米国特許仮出願第61/994,215号明細書(発明の名称:Electrosurgical Fusion Device )、2014年5月16日に出願された同第61/944,185号明細書(発明の名称:Electrosurgical Generator with Synchronous Detector )、2014年5月16日に出願された同第61/944,192号明細書(発明の名称:Electrosurgical Generator )、2014年5月16日に出願された同第61/994,415号明細書(発明の名称:Electrosurgical System)、2014年5月30日に出願された同第62/005,009号明細書(発明の名称:Electrosurgical Laparoscopic Sealer and Director)、および2015年9月8日に出願された米国特許出願第14/848,116号明細書(発明の名称:Electrosurgical System)に記載されており、これら米国特許仮出願および米国特許出願を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0066】
上述の説明は、当業者が手術用器械を製作して用い、そして本明細書において説明した方法を実施することができるようにするために提供されており、かかる説明は、発明を実施する本発明者によって想定される最適態様を記載している。しかしながら、種々の改造が当業者には明らかなままである。これら改造例は、本発明の範囲に含まれることが想定されている。種々の実施形態またはかかる実施形態の観点は、種々の図に示されるとともに明細書全体にわたって説明されていると言える。しかしながら、注目されるべきこととして、図示されまたは別々に説明されているが、各実施形態およびその観点を別段の指定がなければ、他の実施形態のうちの1つまたは2つ以上およびその観点と組み合わせることができる。単に本明細書の読みやすさを高めるために各組み合わせを明示的には記載していない。
【0067】
本発明をある特定の観点で説明したが、多くの追加の改造および変形が当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、具体的に説明した形態以外の形態で実施できることが理解されるべきであり、かかる形態としては、寸法、形状および材料における種々の偏向が挙げられ、これは本発明の精神および範囲から逸脱しない。かくして、本発明の実施形態は、あらゆる点で例示であって本発明を限定しないと考えられるべきである。