(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】水系電解質及びこれを含む擬似キャパシター
(51)【国際特許分類】
H01G 11/64 20130101AFI20220527BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20220527BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20220527BHJP
【FI】
H01G11/64
H01G11/60
H01G11/62
(21)【出願番号】P 2020530375
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2019010188
(87)【国際公開番号】W WO2020045853
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0101953
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0097202
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ドンフン・ス
(72)【発明者】
【氏名】ソクヒョン・ユン
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/020649(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/64
H01G 11/60
H01G 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系溶媒、リチウム塩及び双性イオン化合物を含
み、
前記双性イオン化合物は、下記化学式1で表される4級アンモニウムアルキルカルボキシレート化合物である、擬似キャパシター用水系電解質。
【化1】
(ただし、R
1
ないしR
3
はそれぞれ独立的に同一であるか、または異なる直鎖または分枝鎖のアルキル基である)
【請求項2】
前記水系溶媒は超純水(DI water)、2‐ブトキシエタノール(2‐butoxy ethanol)及びイソプロピルアルコール(iso‐propyl alcohol)からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【請求項3】
前記双性イオン化合物は、下記化学式2で表されるベタイン(betaine)である請求項1
または2に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【化2】
【請求項4】
前記リチウム塩及び双性イオン化合物は、それぞれ1ないし10モラル(m)濃度で含まれることを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【請求項5】
前記リチウム塩及び双性イオン化合物は、それぞれ3ないし10モラル(m)濃度で含まれることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【請求項6】
前記リチウム塩及び双性イオン化合物は、9:1ないし1:9のモラル(m)濃度の割合で含まれることを特徴とする請求項
5に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【請求項7】
前記リチウム塩及び双性イオン化合物は、2:1ないし1:2のモラル(m)濃度の割合で含まれることを特徴とする請求項
5に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【請求項8】
前記リチウム塩は6モラル(m)濃度で含まれ、前記双性イオン化合物は3ないし10モラル(m)濃度で含まれることを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【請求項9】
前記リチウム塩は、Li(OH)、Li
2O、Li
2CO
3、Li
2SO
4、LiNO
3及びCH
3COOLiのいずれか一つからなることを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【請求項10】
前記電解質は融点が‐30℃以下のものである請求項1から
9のいずれか一項に記載の擬似キャパシター用水系電解質。
【請求項11】
正極;負極;及び
請求項1
から10のいずれか一項に記載の電解質を含む擬似キャパシター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年8月29日付韓国特許出願第10‐2018‐0101953号及び2019年8月9日付韓国特許出願第10‐2019‐0097202号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、電解質の低温安定性を改善するために、特定濃度以上のリチウム塩及び双性イオン化合物を含む擬似キャパシター用水系電解質及び前記水系電解質を含む擬似キャパシターに関する。
【背景技術】
【0003】
最近開発されている次世代エネルギー貯蔵システムは、いずれも電気化学的原理を利用し、リチウム(Li)系二次電池と電気化学的キャパシター(electrochemical capacitor)が代表的である。二次電池は単位重量あるいは体積当たり蓄積できるエネルギー量(エネルギー密度)の側面では優れているが、使用期間、充電時間、単位時間当り利用できるエネルギー量(出力密度)の側面ではまだ改善の余地が多い。
【0004】
しかし、電気化学的キャパシター(electrochemical capacitor)は、エネルギー密度面で二次電池に比べて小さいが、使用時間、充電時間、出力密度が大きい面では二次電池に比べてとても優れた特性を示している。したがって、電気化学的キャパシター(electrochemical capacitor)の場合、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に行われている。
【0005】
特に、スーパーキャパシター(supercapacitor)は、従来式電解コンデンサーと新型2次電池が持たない領域で固有の性能特性を有するエネルギー貯蔵動力源(power source)機器である。このようなスーパーキャパシターは、電気化学的蓄電メカニズムによって電気二重層(electrical double layer)の原理を利用した電気二重層キャパシター(electrical double layer capacitor:EDLC)と電気化学的ファラデー反応(faradaic reation)原理を利用した擬似キャパシター(pseudocapacitor)に分類される。
【0006】
電気二重層キャパシターは、電解質溶液のイオンが電極表面で電気二重層(Electric Double Layer)を形成しながら物理的に吸脱着されることを利用し、電極で使われる炭素表面に細工が施されていて優れた動力密度を示す。しかし、表面の電気二重層のみに電荷が蓄積されるので、ファラデー反応を利用する金属酸化物系または電気伝導性高分子系スーパーキャパシターより蓄電容量が低く、エネルギー密度が低い短所がある。
【0007】
擬似キャパシターを使用する金属酸化物系スーパーキャパシターは、酸化、還元可能な幾つかの原子価(valence)を有する金属酸化物を使用するキャパシターである。擬似キャパシターと称する理由は、キャパシターの特性が電気二重層キャパシターのように、電気二重層の形成によるものが一般的で、電気化学反応によってはキャパシター的な特性が出にくいにもかかわらず、一部の金属酸化物では電池特性の代わりにキャパシターの特性が見られるためである。このような擬似キャパシターを使用する金属酸化物電極のスーパーキャパシターは、金属酸化物の酸化、還元反応によって陽子が移動する蓄積メカニズムを示すので、電気二重層キャパシターより高い比蓄電容量を有する。また、金属酸化物系スーパーキャパシターの電極活物質は、充放電の際に酸化、還元に必要なイオンと電子が電解質と電極で速い速度で移動しなければならないので、電極界面が高い比表面積を有することが好ましく、電極活物質は高い電気伝導度が求められる。
【0008】
一方、一般的にキャパシターに使われる電解質は、水系電解質、非水系電解質及び固体電解質に分類される。非水系電解質は一般的に水系電解質より粘度が高く、1/10~1/100倍程度低い伝導度を有する。よって、水系電解質を使用する場合、電解質の内部抵抗が低下し、キャパシターの出力特性が向上される長所がある。しかし、水系電解質は非水系電解質に比べて電解質の融点(melting point)が相対的に高いため、低温の環境に露出される場合に電解質が凍結することがあって、その活用範囲がかなり狭くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第2014‐0081276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した問題点を解決するために、本発明の発明者らは擬似キャパシターの低温安定性を改善するために多角的に研究した結果、キャパシターの水系電解質に特定濃度以上のリチウム塩及び双性イオン化合物を添加すれば、極低温環境でも電解質が凍結せずにキャパシターの安定的な駆動が可能であることを確認して本発明を完成した。
【0011】
よって、本発明は、低温安定性が改善された擬似キャパシター用水系電解質を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記水系電解質を含む極低温安定性が改善されて充放電効率、エネルギー密度及び出力密度に優れた擬似キャパシターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、
水系溶媒、リチウム塩及び双性イオン化合物を含む擬似キャパシター用水系電解質を提供する。
【0014】
本発明の一具体例は、前記水系溶媒が超純水(DI water)、2‐ブトキシエタノール(2‐butoxy ethanol)及びイソプロピルアルコール(iso‐propyl alcohol)からなる群から選択された1種以上のものである。
【0015】
本発明の一具体例は、前記双性イオン化合物が下記化学式1で表される4級アンモニウムアルキルカルボキシレート化合物である。
【0016】
【0017】
(ただし、R1ないしR3はそれぞれ独立的に同一であるか、または異なる直鎖または分枝鎖のアルキル基である)
【0018】
本発明の一具体例は、前記双性イオン化合物が下記化学式2で表されるベタイン(betaine)である。
【0019】
【0020】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩及び双性イオン化合物がそれぞれ1ないし10モラル(m)濃度で含まれることである。
【0021】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩及び双性イオン化合物がそれぞれ3ないし10モラル(m)濃度で含まれることである。
【0022】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩及び双性イオン化合物が9:1ないし1:9の割合で含まれることである。
【0023】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩及び双性イオン化合物が2:1ないし1:2の割合で含まれることである。
【0024】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩がLi(OH)、Li2O、Li
2
CO3
、Li2SO4、LiNO3及びCH3COOLiのいずれか一つからなるものである。
【0025】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩がLi(OH)、Li2O、LiCO3、LiNO3、Li2SO4、LiNO3及びCH3COOLiのいずれか一つからなるものである。
【0026】
本発明の一具体例は、前記電解質の融点が‐30℃以下のものである。
【0027】
また、本発明は、
正極;負極;及び
上述した電解質を含む擬似キャパシターを提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、水系電解質に特定濃度以上のリチウム塩及び双性イオン化合物を含むことで、極低温環境で電解質の凍結問題を改善することができ、これを含む擬似キャパシターの比静電容量、充放電効率、エネルギー密度及び出力密度を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施例2による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定したRagone Plotを示すものである。
【
図2】本発明の実施例2による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定した放電容量を示すものである。
【
図3】本発明の実施例2による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定した比静電容量、エネルギー密度及び循環電圧電流曲線(CV曲線)を示すものである。
【
図4】本発明の実施例2による電解質、LiMn
2O
4(正極)及びLiTi
2(PO
4)
3(負極)で構成されたfull-cellキャパシター(on glassy carbon電極)に対して2電極測定した寿命特性を示すものである。
【
図5】本発明の比較例1による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定したRagone Plotを示すものである。
【
図6】本発明の比較例1による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定した放電容量を示すものである。
【
図7】本発明の比較例1による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定した比静電容量、エネルギー密度及びサイクリックボルタモグラム(CV曲線)を示すものである。
【
図8】本発明の比較例2による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定したRagone Plotを示すものである。
【
図9】本発明の比較例2による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定した放電容量を示すものである。
【
図10】本発明の比較例2による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して3電極測定した比静電容量、エネルギー密度及びサイクリックボルタモグラム(CV曲線)を示すものである。
【
図11】本発明の比較例2による電解質の極低温凍結実験結果に対するイメージを示すものである。
【
図12】本発明の実施例1ないし4による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して、10mV/secの条件下で3電極測定したサイクリックボルタモグラム(CV曲線)を示すものである。
【
図13】本発明の比較例3ないし5による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して、10mV/secの条件下で3電極測定したサイクリックボルタモグラム(CV曲線)を示すものである。
【
図14】本発明の実施例1ないし4及び比較例3ないし5による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して、1mV/secの条件下で3電極測定したサイクリックボルタモグラム(CV曲線)を示すものである。
【
図15】本発明の比較例3ないし5による電解質をLiMn
2O
4(正極)に対して、1mV/secの条件下で3電極測定したサイクリックボルタモグラム(CV曲線)を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように添付の図面を参照して詳しく説明する。しかし、本発明は幾つか異なる形態で具現されてもよく、本明細書に限定されない。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができる原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0032】
本発明は、擬似キャパシター用水系電解質として、水系溶媒、リチウム塩及び双性イオン化合物を含む水系電解質を提供する。
【0033】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明による水系電解質は、電解液として水系溶媒を含み、ここでリチウム塩及び双性イオン化合物をさらに含んで極低温環境で電解液の凍結を防いで、前記電解質を含む擬似キャパシターを安定的に駆動できるようにする。よって、前記水系溶媒、リチウム塩及び双性イオン化合物を含む電解質を含むキャパシターは低温安定性が改善され、優れた充放電効率、エネルギー密度及び出力密度を示すことができる。
【0034】
前記リチウム塩では特に限定されないが、擬似キャパシターに適用することができるリチウム塩であれば制限されずに使用することができ、Li(OH)、Li2O、Li
2
CO3
、Li2SO4、LiNO3及びCH3COOLiのいずれか一つであってもよく、好ましくはLiNO3であってもよい。
【0035】
前記リチウム塩では特に限定されないが、擬似キャパシターに適用することができるリチウム塩であれば制限されずに使用することができ、Li(OH)、Li2O、LiCO3、LiNO3、Li2SO4、LiNO3及びCH3COOLiのいずれか一つであってもよく、好ましくはLiNO3であってもよい。
【0036】
前記双性イオン化合物は、化合物内で電気的に陽性と陰性を同時に有して中性の化合物を示すものであって、通常「双性イオン」(zwitterion)と呼ばれる。
【0037】
本発明による双性イオン化合物は、下記化学式1で表される4級アンモニウムアルキルカルボキシレート化合物であってもよい。
【0038】
【0039】
(ただし、R1ないしR3はそれぞれ独立的に同一であるか、または異なる直鎖または分枝鎖のアルキル基である)
【0040】
前記化学式1で表される化合物は、一側が4級アンモニウムを成して陽イオン性を示し、他側がカルボキシレートの陰イオン性を同時に有することによって、全体的に中性の化合物であってもよい。
【0041】
本発明による前記双性イオン化合物は、好ましくはR1ないしR3がいずれもメチル(‐CH3)である化学式2で表されるベタイン(betaine)であってもよい。
【0042】
【0043】
前記ベタインの場合、4級アンモニウムを含む部分が陽イオン性を示し、カルボキシレート基を含む部分が陰イオン性を同時に示し、ベタイン全体分子を基準にして中性を示す「双性イオン」に該当する。
【0044】
本発明による水系電解質の極低温安定性を向上させるために、前記リチウム塩及び双性イオン化合物は、水系電解質を基準にして1ないし10モラル(m)濃度で含まれてもよく、好ましくは3ないし10モラル(m)濃度で含まれてもよく、より好ましくは3ないし6モラル(m)濃度で含まれてもよい。また、本発明の一具現例は、前記リチウム塩が水系電解質を基準にして6モラル(m)濃度で含まれ、双性イオン化合物が水系電解質を基準にして3モラル(m)濃度で含まれるものである。前記リチウム塩及び双性イオン化合物の濃度が前記範囲未満の場合、低温安定性を充分に確保することができず、前記範囲を超えると前記リチウム塩及び双性イオン化合物が電解質に充分に溶解されない問題点が発生することがあるので、前記リチウム塩及び双性イオン化合物の濃度が前記範囲を充たすことが好ましい。
【0045】
本発明の一具現例による双性イオン化合物のベタインの場合、双性イオンの構造を有するベタインの構造的特性上、電荷を帯びた一側が水分子クラスター(cluster)を取り囲んで、このようにベタインによって取り囲まれた水分子クラスターは互いの結合力が低下し、いわゆる「water cluster in salt」の構造を有するようにすることで、極低温環境でも水系電解質の凍結を防ぐことができる効果を奏する。ここで「water in salt」の構造とは、電解質に過量の塩(salt)が添加されることで水分子間の結合を防いで水が凍結されない原理を言い、これによって水の活性度が低下して水の分解が抑制されることにより、キャパシターの駆動電圧範囲を増加させる効果を示すことができる。
【0046】
リチウム塩の量が固定されている場合、双性イオン化合物の濃度が1モラル(m)濃度以下の場合、水分子クラスターを充分に取り囲むことができなくなって低温安定性が減少することがあり、10モラル(m)濃度を超える場合、水系電解質に充分に溶解されないこともあり、また、水系電解質のイオン伝導度が減少することがあるので前記範囲内で適切に調節する。
【0047】
前記リチウム塩及び双性イオン化合物は9:1ないし1:9のモラル(m)濃度の割合で含まれてもよく、好ましくは2:1ないし1:2のモラル(m)濃度の割合で含まれてもよく、より好ましくは2:1ないし3:5のモラル(m)濃度の割合で含まれてもよい。本発明の一具現例は、前記リチウム塩及び双性イオン化合物は2:1のモラル(m)濃度の割合で含まれてもよい。
【0048】
前記リチウム塩及び双性イオン化合物のモラル(m)濃度の割合が前記範囲を超える場合は、キャパシターの電気化学的性能が大きく減少する問題点があり、リチウム塩及び双性イオン化合物のモラル(m)濃度の割合が前記範囲未満の場合は、極低温環境で電解質が凍結する問題点があるので、リチウム塩及び双性イオン化合物のモラル(m)濃度の割合は前記範囲を充たすことが好ましい。
【0049】
本発明による水系電解質は、前記のような濃度と割合のリチウム塩及び双性イオン化合物を含んで極低温環境で水系電解質の凍結を防ぐことができるので、電解質の融点は‐30℃以下であってもよく、前記電解質を含む擬似キャパシターも‐30℃以下の極低温環境で安定的に駆動可能な長所がある。
【0050】
本発明による擬似キャパシターは、第1集電体、第1電極、電解質、分離膜、第2電極、第2集電体及びケースで構成されてもよく、第1集電体、電解質、分離膜、第2集電体及びケースは従来公知された技術を利用することができるので、それに対する詳しい説明は省略する。
【0051】
以下、実施例などを通じて本発明をより詳しく説明するが、以下の実施例などによって本発明の範囲と内容が縮小されたり制限されて解釈されることはできない。また、以下の実施例を含んだ本発明の開示内容に基づくと、具体的に実験結果が提示されていない本発明を通常の技術者が容易に実施できることは明白なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0052】
[実施例1]水系電解質の製造
超純水(DI Water)50mlを基準にしてリチウム塩であるLiNO3(Junsei社)を6モラル(m)濃度、双性イオン化合物であるベタイン(betaine、(CH3)3N+CH2CO2
‐、Sigma‐Aldrich社)を3モラル(m)濃度で溶解し、30分間撹拌して擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0053】
[実施例2]水系電解質の製造
超純水(DI Water)50mlを基準にしてリチウム塩であるLiNO3(Junsei社)、双性イオン化合物であるベタイン(betaine、(CH3)3N+CH2CO2
‐、Sigma‐Aldrich社)をそれぞれ6モラル(m)濃度で溶解し、30分間撹拌して擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0054】
[実施例3]水系電解質の製造
超純水(DI Water)50mlを基準にしてリチウム塩であるLiNO3(Junsei社)を6モラル(m)濃度、双性イオン化合物であるベタイン(betaine、(CH3)3N+CH2CO2
‐、Sigma‐Aldrich社)を10モラル(m)濃度で溶解し、30分間撹拌して擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0055】
[実施例4]水系電解質の製造
超純水(DI Water)50mlを基準にしてリチウム塩であるLiNO3(Junsei社)を3モラル(m)濃度、双性イオン化合物であるベタイン(betaine、(CH3)3N+CH2CO2
‐、Sigma‐Aldrich社)を6モラル(m)濃度で溶解し、30分間撹拌して擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0056】
[比較例1]水系電解質の製造
超純水(DI Water)50mlを基準にしてリチウム塩であるLiNO3を2モラル(m)濃度にしたことを除いては、実施例2と同様にして擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0057】
[比較例2]水系電解質の製造
双性イオン化合物を含まずに、超純水(DI Water)50mlを基準にして2モラル(m)濃度のリチウム塩LiNO3のみを含む擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0058】
[比較例3]水系電解質の製造
双性イオン化合物であるベタイン(betaine、(CH3)3N+CH2CO2
‐、Sigma‐Aldrich社)の代わりに下記コリンビカーボネート(Choline bicarbonate)を使用したことを除いては、実施例1と同様にして擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0059】
【0060】
[比較例4]水系電解質の製造
双性イオン化合物であるベタイン(betaine、(CH3)3N+CH2CO2
‐、Sigma‐Aldrich社)の代わりに下記L‐アラニン(L‐Alanine)を使用したことを除いては、実施例1と同様にして擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0061】
【0062】
[比較例5]水系電解質の製造
双性イオン化合物であるベタイン(betaine、(CH3)3N+CH2CO2
‐、Sigma‐Aldrich社)の代わりに下記L‐ヒスチジン(L‐Histidine)を1モラル(m)濃度で溶解したことを除いては、実施例1と同様にして擬似キャパシター用水系電解質を製造した。
【0063】
【0064】
表1は前記擬似キャパシター用水系電解質の添加物及び含量を要約したものである。
【0065】
【0066】
[実験例1]擬似キャパシターの電気化学的特性評価
前記実施例1ないし4及び比較例1ないし5の水系電解質に対して3電極方式の擬似キャパシターを製作した後、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry、Bio‐Logics社VSP/VMP3)を利用して以下の方法で物性を測定し、
図1ないし3、5ないし10、12ないし15及び表2に示す。測定方法はLiMn
2O
4を含む正極作用電極(Working electrode)、白金板を対極(Counter Electrode)、Ag/AgCl基準電極(Reference Electrode)を利用して前記実施例1ないし4及び比較例1ないし5の水系電解質で互いに異なる走査速度(Scan rate)によって測定した。
【0067】
(1)3電極測定
サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)を利用して、正極の場合電圧‐0.2ないし1.1V、10mV/sec及び1mV/secの条件下で測定した。
【0068】
(2)2電極測定
‐LiMn2O4を作用電極(working electrode)として、LiTi2(PO4)3を対極及び基準電極(counterとreference electrode)として使用した。
‐サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)を利用して、電圧0.3~2.1V、10mV/secで測定した。
‐定電流放電(constant‐current discharge)方法を利用して、充/放電条件(定電流1.398mA、電圧0.3~2.1V)下で測定した。
【0069】
前記実施例1ないし4及び比較例3ないし5の水系電解質に対して、前記のように、10mV/sec及び1mV/secの条件下で測定した3電極測定の結果を下記表2に示す。
【0070】
【0071】
実施例1ないし4による電解質は、全般的に優れた放電容量及びエネルギー密度を有することが分かった。また、実施例2による電解質を使用した場合、リチウム塩の濃度(2モラル(m)濃度)が低く、リチウム塩と双性イオン化合物のモラル(m)濃度の割合(1:3)が高い比較例1に比べて全般的に優れた出力密度、放電容量、比静電容量及びエネルギー密度を有することが分かった。また、比較例2の場合、出力密度、放電容量、比静電容量及びエネルギー密度の面で実施例2による電解質を含む場合と類似の結果を示してはいるが、後述するように、‐30℃で凍結実験を行った結果、極低温環境(‐30℃)で水系電解質が凍結し、極低温での駆動特性がとても悪かった。従って、比較例1及び2の水系電解質は擬似キャパシターの水系電解質として適しないことが分かった。
【0072】
これにより、リチウム塩及び双性イオン化合物のモラル(m)濃度の割合が2:1ないし1:2のモラル(m)濃度の割合を脱する場合、擬似キャパシターの水系電解質として適しないことが分かった。
【0073】
一方、本発明による化学式1及び2で表される化合物と類似であるが、異なる構造を有するコリンビカーボネート(Choline bicarbonate、比較例3)、L‐アラニン(L‐Alanine、比較例4)及びL‐ヒスチジン(L‐Histidine、比較例5)を使用した比較例3ないし5の水系電解質も擬似キャパシターの水系電解質として適しないことが分かった。
【0074】
具体的に、比較例3の場合、副反応によって発生するRedox peakによって放電容量は高いように見えるが、実質的にエネルギー密度が相対的にとても低くて電気化学的特性が劣悪であり、測定中にリチウム塩とコリンビカーボネートが析出される問題が発生して擬似キャパシターの水系電解質として適しないことが分かった。また、比較例4も放電容量は高いように見えるが、エネルギー密度が相対的にとても低くて電気化学的特性が劣悪であり、擬似キャパシターの水系電解質として適しないことが分かった。また、比較例5の場合、本発明による実施例に比べて放電容量及びエネルギー密度がいずれも低く、特に、L‐ヒスチジンは水系溶媒に対する溶解度が低くて1モラル(m)濃度以上溶解されず、擬似キャパシターの水系電解質として適しないことが分かった。
【0075】
[実験例2]擬似キャパシターの極低温駆動特性評価
ガラス炭素質電極(glassy carbon electrode)を利用し、LiMn2O4を含む正極、LiTi2(PO4)3を含む負極及び前記実施例2及び比較例1ないし2の水系電解質を含む擬似キャパシターを製作し、極低温(‐30℃)の環境でキャパシターのサイクルによる駆動特性を評価した。
【0076】
図4を見ると、実施例2による水系電解質を含む擬似キャパシターの場合、極低温環境でも長期寿命安定性が維持されることを確認することができたことに対し、比較例1の場合、前記極低温環境で水系電解質が凍結されてはいないものの、ベタインに比べて少ない割合のリチウム塩(LiNO
3)を含んで
図5及び6のように定電流測定結果が明らかによくないことが分かった。
【0077】
比較例2の場合には、水系電解質にベタインを含まず、リチウム塩(LiNO
3)のみを含んで、‐30℃で凍結実験を進行(JEIO TECH社TH‐KE Temperature & Humidity Chamber)した結果、前記極低温環境で水系電解質が凍結したことを確認することができた。(
図11)
【0078】
[実験例3]水系電解質のイオン伝導度測定及び評価
前記実施例1ないし4及び比較例1ないし5で製造された水系電解質のイオン伝導度をイオン伝導度メーター機(Mettler Toledo社)で測定し、その結果を下記表3に示す。
【0079】
【0080】
前記表3を参考すれば、実施例1ないし4で製造された水系電解質の場合、高い含量のリチウム塩と双性イオン化合物を含んでいるにもかかわらず、優れたイオン伝導度を示すことが分かった。
【0081】
前記実施例及び実験例を通じて、本発明の水系電解質を利用した擬似キャパシターを提供することで、極低温環境でも優れた出力密度、放電容量、比静電容量、イオン伝導度、エネルギー密度及び長期寿命安定性が大きく向上された擬似キャパシターを製造できることを確認することができた。