IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】汎用PET検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20220527BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
G01T1/161 C
G01T1/20 G
G01T1/20 E
G01T1/20 B
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020545762
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055230
(87)【国際公開番号】W WO2019170560
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】62/638,336
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ソルフ トーステン
(72)【発明者】
【氏名】ミューレンス オリバー
【審査官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-029493(JP,A)
【文献】特開2002-311150(JP,A)
【文献】特開2005-283441(JP,A)
【文献】特開2008-107326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0240864(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0361181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/40
A61B 1/00-1/14
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用イメージングシステム内のスケーラブル検出器用の検出器ブロックであって、
少なくとも1つの交換可能なセンサタイルと、
汎用機械的インターフェースと、
を含み、
前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルは、複数の交換可能なセンサタイルタイプの1つであり、各交換可能なセンサタイルタイプは、汎用外寸を有し、各交換可能なセンサタイルタイプは、異なるフィルファクターを有し、フィルファクターの低下は、タイミング分解能の低下及び製造コストの削減と相関し、
前記汎用機械的インターフェースは、前記交換可能なセンサタイルタイプに関係なく、前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルを前記スケーラブル検出器に結合し、前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルは、前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルに結合されたセンサダイのアレイを含み、各センサダイは、各センサダイに結合された複数のシンチレータ結晶を有する、
検出器ブロック。
【請求項2】
前記センサダイのアレイは、4×4アレイ、4×5アレイ、5×5アレイ、5×6アレイ及び6×6アレイのうちの1つを含む、請求項1に記載の検出器ブロック。
【請求項3】
前記複数のシンチレータ結晶のそれぞれは、2×2アレイ及び3×3アレイの一方で配置される、請求項1に記載の検出器ブロック。
【請求項4】
前記汎用機械的インターフェースは、1つ又は複数の機械的留め具によって、前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルに結合された冷却プレート又はヒートシンクを含む、請求項1に記載の検出器ブロック。
【請求項5】
前記1つ又は複数の機械的留め具は、はんだ付けされたねじナット及びスナップフィットの少なくとも一方である、請求項4に記載の検出器ブロック。
【請求項6】
前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルは更に、前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルのセンサ側に誘電体反射体マスクを含み、前記誘電体反射体マスクは、シンチレーション結晶が装着されていない前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルの領域を覆う、請求項1に記載の検出器ブロック。
【請求項7】
前記異なるフィルファクターは、前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイルのすべてよりも少ない数の交換可能なセンサタイルが前記センサダイとともに装着されることをもたらす、請求項1に記載の検出器ブロック。
【請求項8】
前記複数のシンチレータ結晶は、それぞれが少なくとも4つのそれぞれのセンサダイの上に配置される複数のモノリス結晶を含む、請求項7に記載の検出器ブロック。
【請求項9】
前記複数のシンチレータ結晶は、それぞれが2つ以上のセンサダイに広がる複数のスラブシンチレータ結晶を含む、請求項7に記載の検出器ブロック。
【請求項10】
前記複数のスラブシンチレータ結晶は、前記少なくとも1つの交換可能なセンサタイル上の前記センサダイのピッチ未満の幅を有する、請求項9に記載の検出器ブロック。
【請求項11】
前記複数のシンチレータ結晶は、ビスマスゲルマニウムオキサイド(BGO)、ルテチウム-イットリウムオキシオルソシリケート(LYSO)結晶、ルテチウムオキシオルソシリケート(LSO)、ガドリニウムオキシオルソシリケート(GSO)のうちの1つである、請求項1に記載の検出器ブロック。
【請求項12】
前記医用イメージングシステムは、陽電子放出断層撮影(PET)イメージングシステム、PET-コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステム、PET-磁気共鳴(MR)イメージングシステム及び単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)イメージングシステムのうちの1つである、請求項1に記載の検出器ブロック。
【請求項13】
前記汎用機械的インターフェースは、熱的インターフェースを含む、請求項1に記載の検出器ブロック。
【請求項14】
医用イメージングシステム内の検出器ブロック内で使用するための交換可能なセンサタイルであって、
前記交換可能なセンサタイルに結合されたセンサダイのアレイを含み、各センサダイは、各センサダイに結合された複数のシンチレータ結晶を有し、
前記交換可能なセンサタイルは、複数の交換可能なセンサタイルタイプの1つであり、各交換可能なセンサタイルタイプは、汎用機械的インターフェースと一致する外寸を有し、
各交換可能なセンサタイルタイプは、タイミング分解能の低下及び製造コストの削減と相関する異なるフィルファクターを有する、
交換可能なセンサタイル。
【請求項15】
センサダイの前記アレイは、4×4アレイ、4×5アレイ、5×5アレイ、5×6アレイ及び6×6アレイのうちの1つを含む、請求項14に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項16】
前記複数のシンチレータ結晶のそれぞれが、2×2アレイ及び3×3アレイの一方で配置される、請求項14に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項17】
前記交換可能なセンサタイルのセンサ側に誘電体反射体マスクを更に含み、前記誘電体反射体マスクは、シンチレーション結晶が装着されていない前記交換可能なセンサタイルの領域を覆う、請求項14に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項18】
前記交換可能なセンサタイルは更に、前記交換可能なセンサタイルのすべてより少ない数の交換可能なセンサタイルが前記センサダイとともに装着されるように、低減されたフィルファクターを含む、請求項14に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項19】
前記複数のシンチレータ結晶は、それぞれが少なくとも4つのそれぞれのセンサダイの上に配置される複数のモノリス結晶を含む、請求項18に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項20】
前記複数のシンチレータ結晶は、それぞれが2つ以上のセンサダイに広がる複数のスラブシンチレータ結晶を含む、請求項18に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項21】
前記複数のスラブシンチレータ結晶は、前記交換可能なセンサタイル上の前記センサダイのピッチよりも小さい幅を有する、請求項20に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項22】
前記複数のシンチレータ結晶は、ビスマスゲルマニウムオキサイド(BGO)、ルテチウム-イットリウムオキシオルソシリケート(LYSO)結晶、ルテチウムオキシオルソシリケート(LSO)及びガドリニウムオキシオルソシリケート(GSO)のうちの1つである、請求項14に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項23】
前記医用イメージングシステムは、陽電子放出断層撮影(PET)イメージングシステム、PET-コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステム、PET-磁気共鳴(MR)イメージングシステム及び単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)イメージングシステムのうちの1つである、請求項14に記載の交換可能なセンサタイル。
【請求項24】
それぞれが汎用機械的インターフェースを含む複数の検出器ブロックと、
各それぞれの汎用機械的インターフェースに結合された交換可能なセンサタイルと、
を含む、核イメージングシステムであって、
各交換可能なセンサタイルは、
前記交換可能なセンサタイルに結合されたセンサダイのアレイを含み、各センサダイは、各センサダイに結合された複数のシンチレータ結晶を有し、
前記交換可能なセンサタイルは、複数の交換可能なセンサタイルタイプの1つであり、各交換可能なセンサタイルタイプは、汎用機械的インターフェースと一致する外寸を有し、
各交換可能なセンサタイルタイプは、タイミング分解能の減少及び製造コストの削減と相関する異なるフィルファクターを有する、
核イメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 以下は、一般に核イメージングシステムに関し、より具体的には、陽電子放出断層撮影(PET)検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] エネルギー、タイミング及び空間分解能の要件が異なるPET検出器は、通常、異なる読み出しボード、制御ユニット、ガントリー及び冷却システムを含む異なるPET検出器を必要とするため、単一のPET検出器プラットフォームで異なる市場ニーズに対応することはほぼ不可能である。
【0003】
[0003] ルテチウム-イットリウムオキシオルソシリケート(LYSO)ベースのタイムオブフライト(ToF)PETイメージャのようなハイエンドの医用イメージングシステムは、ToF-PETの最適な同時計数タイミング分解能を得るために、シンチレータ面に対して最大フィルファクターのシリコン光電子増倍管(SiPM)センサが必要である。
【0004】
[0004] ローエンドの医用イメージングシステムは、通常、ビスマスゲルマニウムオキサイド(BGO)シンチレータのような非ToFシンチレータに基づいており、タイミング分解能はそれほど重要ではなく、光共有の概念を使用してセンサのフィルファクターを下げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] どちらの概念も、センサや電子機器の構成が異なることがよくあり、新しい開発には非常にコストがかかる。
【0006】
[0006] 以下に、幾つかの改良点を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 1つの開示される態様では、医用イメージングシステム内のスケーラブル検出器用の検出器ブロックが、少なくとも1つの交換可能なセンサタイルを含み、少なくとも1つの交換可能なセンサタイルは、複数の交換可能なセンサタイルタイプの1つであり、各交換可能なセンサタイルタイプは、汎用外寸を有する。検出器ブロックは更に、交換可能なセンサタイルタイプに関係なく、交換可能なセンサタイルをスケーラブル検出器に結合する汎用機械的インターフェースを含む。少なくとも1つの交換可能なセンサタイルは、そこに結合されたセンサダイのアレイを含み、各センサダイは、そこに結合された複数のシンチレータ結晶を有する。
【0008】
[0008] 別の開示される態様では、医用イメージングシステム内の検出器ブロック内で使用するための交換可能なセンサタイルが、交換可能なセンサタイルに結合されたセンサダイのアレイを含み、各センサダイは、そこに結合された複数のシンチレータ結晶を有する。交換可能なセンサタイルは、複数の交換可能なセンサタイルタイプの1つであり、各交換可能なセンサタイルタイプは、汎用機械的インターフェースと一致する外寸を有し、各交換可能なセンサタイルタイプは、タイミング分解能の低下及び製造コストの削減と相関する異なるフィルファクターを有する。
【0009】
[0009] 別の開示される態様では、核イメージングシステムが、それぞれが汎用機械的インターフェースを含む複数の検出器ブロックと、各それぞれの機械的インターフェースに結合された交換可能なセンサタイルとを含む。各交換可能なセンサタイルは、交換可能なセンサタイルに結合されたセンサダイのアレイを含み、各センサダイは、そこに結合された複数のシンチレータ結晶を有する。交換可能なセンサタイルは、複数の交換可能なセンサタイルタイプの1つであり、各交換可能なセンサタイルタイプは、汎用機械的インターフェースと一致する外寸を有する。各交換可能なセンサタイルタイプは、タイミング分解能の低下及び製造コストの削減と相関する異なるフィルファクターを有する。
【0010】
[0010] 1つの利点は、製造コストが削減される点にある。
【0011】
[0011] 別の利点は、デバイスのスケーラビリティが向上される点にある。
【0012】
[0012] 本開示を読み、理解すれば当業者には明らかとなるように、所与の実施形態は、前述の利点のいずれも提供しない若しくは1つ、2つ以上若しくはすべての利点を提供するか、及び/又は、他の利点を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0013] 本発明は、様々なコンポーネント及びコンポーネントの構成、また、様々なステップ及びステップの構成の形を取ってよい。図面は、好適な実施形態を例示するに過ぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0014】
図1】[0014]図1は、最適なエネルギー、タイミング及び空間分解能のための最大センサフィルファクターを有するセンサタイル配置を示す。
図2】[0015]図2は、中程度の性能(エネルギー、タイミング及び空間分解能)のための中レベルのセンサフィルファクターを有するセンサタイル配置を示す。
図3】[0016]図3は、図示する3つの例のうち最も低い単価を有するより低いレベルの値のPET性能のセンサタイル配置を示す。
図4】[0017]図4は、6×6センサレイで使用するための12×12アレイのシンチレータ結晶を含むシンチレータ構成を示す。
図5】[0018]図5は、5×5センサレイで使用するための10×10アレイのシンチレータ結晶を含むシンチレータ構成を示す。
図6】[0019]図6は、4×4センサレイで使用するための8×8アレイのシンチレータ結晶を含むシンチレータ構成を示す。
図7】[0020]図7は、センサタイルが図1図6におけるのと同じ外寸を有するように、4.0×4.8mmの結晶ピッチを有する5×6センサダイアレイを使用する構成を示す。
図8】[0021]図8は、センサタイルが図1図7におけるのと同じ外寸を有するように、6.0×4.8mmの結晶ピッチを有する4×5センサダイアレイを使用する構成を示す。
図9】[0022]図9は、高反射性マスクの一例を詳細に示す。
図10】[0023]図10は、異なるサイズのLYSOシンチレータについて、様々なシンチレータ結晶パラメータ(ピッチ、読み出しタイプ等)の相互関係を示す表を示す。
図11】[0024]図11は、1つのセンサダイで9つのシンチレータを読み出すために各センサダイにローカルライトガイドを使用するLYSOシンチレータのVersaTile概念を示す。
図12】[0025]図12は、すべてのシンチレータの明確な分離を示す対応するフラッドマップを示す。
図13】[0026]図13は、(基本構成要素としてローカルライトガイドを有する)9つのシンチレータを有する高分解能スキャナーを示す。
図14】[0027]図14は、シンチレータアレイとして組み立てられた後の9シンチレータダイのアレイを示す。
図15】[0028]図15は、2.6mm×2.6mm×22mmの寸法を有するダイピッチの1/3であるシンチレータピッチを有する、ダイ毎の9つのシンチレータを有するフラッドマップを示す。
図16】[0029]図16は、4つのモノリシックLYSOシンチレータブロックを有するセンサスタックの一例を示す。
図17】[0030]図17は、最大フィルファクターとセンサダイの3×3ブロックを覆うモノリシックシンチレータとを有するVersaTile構成を示す。
図18】[0031]図18は、最大フィルファクターとセンサダイの2×2ブロックを覆うモノリシックシンチレータとを有するVersaTile構成を示す。
図19】[0032]図19は、フィルファクターが55%に低減されたVersaTile構成を示す。
図20】[0033]図20は、フィルファクターが44%に低減されたVersaTile構成を示す。
図21】[0034]図21は、LYSOスラブ検出器アレイの一例を示す。
図22】[0035]図22は、(例えば検出器のエッジ長に延在する)長いスラブを有するスラブ検出器アレイのVersaTile構成を示す。
図23】[0036]図23は、より短いスラブを有するスラブ検出器アレイのVersaTile構成を示す。
図24】[0037]図24は、低コストデザインのためにセンサフィルファクターが67%に低減された上記スラブ検出器のVersaTile構成を示す。
図25】[0038]図25は、センサフィルファクターが67%に低減された上記スラブ検出器の第2のVersaTile構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0039] 前述の課題を克服するために、SiPMベースのソリッドステートPET検出器の基本構成要素を本明細書で説明するVersaTile SiPM検出器を用いて実現し、これにより、PETシステムのインフラストラクチャの残りの部分は更に変更することなく再利用することができる。センサの基本構成要素は、エネルギー及びタイミングの個別測定用の2×2又は4×4SiPMを含む集積シリコンダイに基づいている。VersaTile検出器は、PET、PET-コンピュータ断層撮影(CT)、PET-磁気共鳴イメージング(MRI)及び他の組み合わせだけでなく、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)イメージングにも使用することができる。
【0016】
[0040] 本明細書では、VersaTileセンサタイルは、同じ読み出しプラットフォーム並びに電気機械及び熱的インターフェースを使用するために、センサタイルに固定の外寸を有するスケーラブルPET検出器の基本構成要素として説明する。例えば2次シンチレータ面の6×6、5×5及び4×4センサダイや、固定形状の2次センサタイルの長方形シンチレータ面の6×5又は5×4センサダイといった他の組み合わせといったように、幾つかのグレードのセンサフィルファクターが採用される。一実施形態では、VersaTileセンサタイルは、例えば48mm~54mmの2次サイズを有する。
【0017】
[0041] 機械的インターフェース(冷却プレートやヒートシンク等の熱的インターフェースを含んでよい)を読み出しに使用することができ、はんだ付けされたねじナット、スナップフィット又はその他の適切な留め具で取り付けられる。シンチレータをセンサタイル、ローカルライトガイド又は反射体マスクに取り付けるために液体接着剤を使用する必要はない。一実施形態では、感光性ではない誘電体反射体マスクがセンサ領域上に付けられる。反射体マスクを光学的に透明な接着剤(OCA、非液体接着剤)を用いてシンチレータに取り付けることができ、センサの非感応部分の上方にエアギャップが維持される。センサ間及びセンサの下方のギャップは、シンチレータアレイを取り付けた後にアンダーフィルで埋めることができる。
【0018】
[0042] 別の実施形態では、ヒートシンク又は冷却プレートを含んでよいセンサPCB側面及び機械的インターフェースは、1つ又は幾つかの誘電体反射体で覆われ、これらはまた、機械的剛性及び集光効率の向上のために、センサタイルの周りのシンチレータ側面も覆う。シンチレータは、上部結晶面及び下部結晶面のみに取り付ければよい。シンチレータアレイの上面を2つ以上の誘電体反射体で覆って、集光効率を高めることができる。更に、シンチレータは、誘電体反射体(例えばVikuiti[3M社からの強化鏡面反射体])を用いてセンサダイ間で離されて、光を通さないポケットが形成される。
【0019】
[0043] センサダイ上の2×2シンチレータの1対1の結合を、2×2SiPMセンサだけでなく、より多くのピクセルを有するセンサダイ(例えば2×3、3×3又は4×4等)の光共有の概念とも使用することができる。センサピッチの2/3、センサピクセルピッチの4/3又は3/2のシンチレータも使用することができる。
【0020】
[0044] ローカルガラスライトガイドを、9つのシンチレータが、達成可能な最大センサ充填率によって与えられるダイピッチ(例えば8mmダイピッチ等)を有する1つのセンサダイによって読み出される高分解能デザイン用のシンチレータアレイと併用することができる。ローカルガラスライトガイドはまた、緩和された充填率(例えば12mmダイピッチ)を有する1つのセンサダイで9つのシンチレータを読み出す場合にも使用することができる。
【0021】
[0045] 別の実施形態では、複数のモノリシックシンチレータを、最大センサフィルファクター(例えば2×2又は3×3ブロック)か、又は、センサがセンサシンチレーターのコーナーに配置された状態(例えば1つのモノリスあたりに4又は5つのセンサ)での低減されたセンサフィルファクター(例えば2×2又は3×3ブロック)で読み出すことができる。更に又は或いは、4mm、2.6mm又は2.0mmの間隔を実現するためにセンサのピクセルピッチ、即ち、センサダイピッチの1/2、1/3又は1/4にフィットするシンチレータスラブを読み出すことができる。シンチレータスラブは、センサタイルの完全な垂直又は水平の延長部分又はセンサタイルの1/2全体に使用することができる。別の実施形態では、1つのセンサタイル内で垂直及び水平の混合スラブが使用される。ここで、スラブの幅はセンサタイル幅の1/2である。センサダイがシンチレータスラブの端に配置された状態で、低減されたセンサフィルファクターもまたシンチレータスラブの読み出しに使用することができる。
【0022】
[0046] 説明されるVersaTile概念によって、外寸だけでなく、電気機械及び熱的インターフェースを一定に保ちながら、可変のPET性能及びコスト構造を有するセンサタイルのデザインが可能になる。VersaTile概念は、可変数のシリコンダイを有するセンサユニット(「タイル」)に基づき、異なる性能グレード、即ち、最高のToF性能のための最大センサ充填率、中程度のToF性能のための中間の充填率、ローエンド又は非ToF応用のための低センサ充填率等を実現する。1対1の結合を用いたピクセル化された読み出しだけでなく、各センサダイのローカルライトガイドを用いた光共有の概念も開示される。
【0023】
[0047] 以下の例では、各センサダイが、1対1の直接結合で同じサイズの4つのシンチレータピクセルを読み出すことができると仮定している。しかし、当業者には理解されるように、本明細書で説明される例は、この仮定によって限定されない。
【0024】
[0048] 図1図3は、3つの性能グレードを有するVersaTile概念の例を示す。図1では、最大センサフィルファクターを有するセンサタイル配置10が、最適なエネルギー、タイミング及び空間分解能のために使用されている。図2は、中程度の性能(エネルギー、タイミング及び空間分解能)のための中レベルのセンサフィルファクターを有するセンサタイル配置12を示す。図3は、図示する3つの例のうちの最も低い部品表(BOM)又は単価を有するより低いレベルの値のPET性能のセンサタイル配置14を示す。タイル形状は、それぞれがセンサタイル16上のシンチレータ結晶アレイを構成するセンサダイ15によって示される。センサタイル16の可視領域にはシリコンがない。光を通さない封入のために、この領域は誘電体反射フィルム(図示せず)で覆われる。図1図3の各図は、幾つかのシンチレータマトリックス構成、例えば左上隅に示す1対1の結合の結晶アレイ構成20、右上隅に示すセンサダイピッチ毎に2×3の長方形シンチレータを有する構成22、及び、右下に示す3×3シンチレータを有する高分解能構成24を示す。図1図3の各センサタイル内に複数のシンチレータ結晶アレイ構成が例示目的で示されているが、一実施形態では、センサタイル内の各センサダイに共通の単一の結晶アレイ構成を使用することができることが理解されよう。シンチレータ結晶26も示されている。
【0025】
[0049] 図4図6は、3つの性能グレードの例を有する上で提案したVersaTile概念の側面図を示し、アレイ状のシンチレータ結晶26、センサダイ15及びセンサタイル16を示す。この例では4つのシンチレータを封入する反射体は図4図6には示されていない。図4は、6×6センサレイで使用するための12×12アレイのシンチレータ結晶26を含むシンチレータ構成40を示し、各センサダイは外寸を保ちつつ、4.0mmのピッチを有する。
【0026】
[0050] 図5は、5×5センサレイで使用するための10×10アレイのシンチレータ結晶26を含むシンチレータ構成50を示し、各センサダイは4.8mmのピッチを有し、外寸を保つセンサレイが得られる。
【0027】
[0051] 図6は、4×4センサレイで使用するための8×8アレイのシンチレータ結晶26を含むシンチレータ構成60を示し、各センサダイは6.0mmのピッチを有し、外寸を保つセンサレイが得られる。
【0028】
[0052] 一実施形態では、シンチレータの充填率がすべての場合で最大化される。BOMにおける利点は、異なるシンチレータ(例えばLYSO、LuGAGG、ルテチウムオキシオルソシリケート(LSO)、ガドリニウムオキシオルソシリケート(GSO)及びBGO、これらのいずれも本明細書に説明される様々な実施形態に従って使用することができる)を、異なるシンチレータピッチ(例えば4.0mm、4.8mm、6.0mm)とともに、センサタイル及び読み出しインフラストラクチャを変えることなく使用する点である。一例によれば、シリコンフィルファクターは、タイプ1では100%、タイプ2では70%及びタイプ3では44%に対応する。これは主要な原価要素である。例えばPCBの取り付け、テストに関連するセンサタイルあたりの固定コストや、歩留まりの考慮等により、低減は、シリコンフィルファクターに過度に比例する。
【0029】
[0053] センサタイルの不感域は、高反射性の誘電体ミラーで覆われ、シンチレータの光を通さない封入を作成する。これにより、セットアップの光損失を効率的に低減することができる。一般に、VersaTile概念はまた、図7及び図8に示すように、x方向及びy方向に異なる数のダイを有するデザインも可能にする。
【0030】
[0054] 図7及び図8は、x方向及びy方向に異なるピッチを有して、長方形ピクセルのピクセル化された読み出しを可能にするVersaTile概念の例を示す。この概念は、軸方向視野の分解能がPETスキャナーのx-y平面におけるのとは異なるコスト効率のよいデザインを可能にする。図7は、センサタイル16の側面の寸法が約48mmであるように、4.0×4.8mmの結晶ピッチを有する5×6センサダイアレイ15を使用する構成70を示す。図8は、外寸を保ちつつ、6.0×4.8mmの結晶ピッチを有する4×5センサダイアレイ15を使用する構成80を示す。センサダイ15は、センサタイル16上に配置される。
【0031】
[0055] BGOシンチレータに関して、請求項に係る革新の1つの態様は、より低いシリコンフィルファクターについて、エネルギー分解能の低下を低減するためのマッチング反射体マスクの使用を伴う。センサタイルの不感域は、高反射性の誘電体ミラーで覆われ、低いシリコンフィルファクターによる光の損失を効率的に最小限に抑える。
【0032】
[0056] 図9は、より小さいシリコンフィルファクターについて光損失を調べるための高反射性マスク94の一例を詳細に示す。
【0033】
[0057] LYSOシンチレータもまた、本明細書で説明される概念と併用することができる。シリコンフィルファクターの低減は、達成可能なタイムオブフライト(ToF)の精度に大きな影響を与える。測定及びシミュレーションでは、シンチレータの長さが等しい場合、タイミングがl/sqrt(fill_factor)で悪化することが示されている。VersaTile概念は、異なるデザインを可能にして、コストとタイミング性能との最適な妥協点を見つけることができる。より大きなシンチレータでは、正味の画像分解能が低下する。この低下に対処するために、非ピクセル化読み出しを使用して、空間分解能を高く保つことができる。
【0034】
[0058] 図10は、異なるサイズのLYSOシンチレータについて、様々なシンチレータ結晶パラメータ(ピッチ、読み出しタイプ等)の相互関係を示す表110を示す。固有の基本構成要素は、誘電体反射グリッド内に封入されてシンチレータアレイが形成される。
【0035】
[0059] 図11及び図12に、LYSOシンチレータ及びBGOシンチレータのVersaTile光共有概念を示す。図11は、1つのセンサダイで9つのシンチレータを読み出すために各センサダイにローカルライトガイド(図示せず)を使用するLYSOシンチレータ120のVersaTile概念を示す。図12は、すべてのシンチレータの明確な分離を示す対応するフラッドマップ130を示す。同じ概念はまた、(光収率が低いことによって)フラッドマップ分解能が低いBGOシンチレータでも機能する。
【0036】
[0060] 一実施形態では、上面が研削されたシンチレータが使用される。LYSO結晶では、このアプローチは、光収率を35%~40%増加し、BGO結晶では、約60%~70%増加する。このアプローチはまた、50%未満のセンサ領域を使用しながら、10.5%よりも良い有効エネルギー分解能を有するLYSOの光共有の概念を可能にする。
【0037】
[0061] シンチレータの基本構成要素の取り付け及び製作に関して、一実施形態では、光学的に透明な接着剤を使用して、接着剤をこぼさずにシンチレータをガラス板に取り付けて、シンチレータのすべての側面にエアポケットを維持することができる。Vikuiti誘電体ミラーフィルムをダイ間に使用することができる。
【0038】
[0062] 高分解能のLYSOシンチレータを使用する場合、局部的な光共有を使用して、センサピクセルよりも小さいピッチのシンチレータを読み出すこともできる。図11の例は、8mmピッチを有するダイ毎のローカルライトガイドを使用して、2.6mmのシンチレータサイズを有するダイ毎の9つのシンチレータを示す。9つのシンチレータのパッケージは、誘電体反射体によって次のダイから分離されている。
【0039】
[0063] 図13は、基本構成要素としてローカルライトガイド142を有する、9つのシンチレータ(例えば2.6mm×2.6mm×22mm又は他の適切なサイズ)を有する高分解能スキャナー140を示す。図14は、シンチレータアレイとして組み立てられた後の9シンチレータダイ152のアレイ150を示す。
【0040】
[0064] 図15は、2.6mm×2.6mm×22mmの寸法を有するダイのピッチの1/3であるシンチレータピッチを有する、ダイ毎の9つのシンチレータを有するフラッドマップ160を示す。
【0041】
[0065] 図16は、4つのモノリシックLYSOシンチレータブロック212を有するセンサスタック210の一例を示す。
【0042】
[0066] 図17及び図18は、最大フィルファクターを有するVersaTile構成を示す(つまり、2つの異なるモノリシックシンチレーターサイズ:3×3ブロック220(図17)又は2×2ブロック230(図18)を読み出すために、ダイ15間の間隔が最小又はゼロである)。16mm×16mm×19mmのLYSOの小さなブロック230は、同等のシンチレータ価格で優れたエネルギー及びタイミング性能を示す。
【0043】
[0067] 右の例は、10.0%のエネルギー分解能を有するl6×l6×l9mmのLYSOキューブで、Trig1で230psのLYSOブロックの優れたタイムオブフライト性能を示す。前述の高性能検出器デザインに加えて、センサダイ配置の自由度を活用することにより、VersaTile概念に基づいて低コストバージョンを作成することができる。モノリシックの読み出しでは、エッジ及びコーナーは優れたイベント位置決めに使用されるが、他の領域は除外することができる。これにより、2~3mm未満の優れた空間分解能を保ちつつ、55%又は44%のセンサフィルファクターを有するセンサデザインが可能になる。
【0044】
[0068] 図19は、フィルファクターが55%に低減されたVersaTile構成260を示す。ダイ15は、各モノリシックシンチレータ262がその中心及び各コーナーの下にセンサダイを有するように、チェッカー盤配置で示されている。センサダイ間の空間は占有されていない。
【0045】
[0069] 図20は、フィルファクターが44%に低減されたVersaTile構成270を示す。ダイ15は、各モノリシックシンチレータ272が、各コーナーの下にセンサダイを有するように、コーナーのみの配置で示されている。センサダイ間の空間は占有されていない。これらの(及び他の)フィルファクターが低減されているVersaTile構成は、モノリシックシンチレータの読み出し、例えば高分解能の非ToF応用用の低コストのBGO検出器に使用することができる。
【0046】
[0070] VersaTile構成は、シンチレータスラブ用に最適化することもできる。つまり、センサの概念により、PETイメージング用に検出器スラブを有するスタックが可能になる。図21は、光収率を増加させるために研磨されるか又は上面が研削された各スラブ284間に誘電体ミラー282を有するLYSOスラブ検出器アレイ280の一例を示す。この特徴は、ピクセル化シンチレータ読み出しとモノリシックシンチレータ読み出しとの妥協点を提供する。ここでは、同時計数イベントを垂直スラブ及び水平スラブによって自動的にコリメートすることができるため、較正手順をシステムレベルで簡略化して実現することができる。スラブを使用した測定では、Triglで230psのタイミング分解能と、11.5%のエネルギー分解能とが示されている(32mm長のスラブについて)。
【0047】
[0071] 図22は、長いスラブ292(例えば検出器のエッジ長に延在する)を有するスラブ検出器アレイのVersaTile構成290を示す。ダイ15も示されている。図23は、より短いスラブ302(例えば検出器の幅未満に広がる)を有するスラブ検出器アレイのVersaTile構成を示す。一実施形態では、スラブは、センサピクセルピッチと一致する幅(例えば4mm又は他の何らかの幅)を有する。別の実施形態では、スラブは、センサダイピッチの1/3(例えば2.6mm)又はセンサダイピッチの1/4(例えば2mm)であってよい。垂直スラブと水平スラブとの組み合わせは、同時計数イベントが垂直方向のスラブによって検出されるならばイベントは常に1つの次元において既にコリメートされるため、システムレベルでの自動較正ルーチンを簡略化することができる。
【0048】
[0072] 図22及び図23の例は、最適性能のための2つの異なるVersaTileデザインを示す。シンチレータの製造プロセスに応じて、スラブ検出器は、等しい感度のピクセル化又はモノリシックアプローチよりも安価であることが可能であるが、PET性能は向上される。空間分解能は、一方向のスラブ幅(例えば2.0mm、2.6mm、4.0mm)によって支配される。
【0049】
[0073] 図24は、低コストデザインのためにセンサフィルファクターが67%に低減された上記スラブ検出器のVersaTile構成310を示す。ダイ15も示されている。
【0050】
[0074] 図25は、低コストデザインのためにセンサフィルファクターが67%に低減され、図24に示すものとは異なるセンサダイ配向を有する上記スラブ検出器のVersaTile構成320を示す。ダイ15も示されている。
【0051】
[0075] 上記スパースVersaTileセンサ構成は、ToF分解能を妥協することにより、高空間分解能に重点を置いた低コストのPETシステムの提供を容易にする。
【0052】
[0076] 本発明は、好適な実施形態を参照して説明した。前述の詳細な説明を読んで理解すると、他の人が修正態様及び変更態様を想到することができるであろう。例示的な実施形態は、このようなすべての修正態様及び変更態様を、それらが添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内にある限り含んでいると解釈されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25