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特許7080346老化細胞によって引き起こされるかまたは媒介される状態の臨床管理における使用のためおよびがんを治療するための、Bclファミリーアンタゴニストであるホスホノアミダート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】老化細胞によって引き起こされるかまたは媒介される状態の臨床管理における使用のためおよびがんを治療するための、Bclファミリーアンタゴニストであるホスホノアミダート
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6558 20060101AFI20220527BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C07F9/6558 CSP
A61K31/675
A61P19/02
A61P27/02
A61P11/00
A61P35/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020560258
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019030023
(87)【国際公開番号】W WO2019213151
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】62/664,850
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/664,860
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/664,863
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/664,891
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517274752
【氏名又は名称】ユニティ バイオテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ビューソレイユ アン-マリー
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン ライアン
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508569(JP,A)
【文献】Ina WILKENING et al.,Synthesis of phosphonamidate peptides by Staudinger reactions of silylated phosphinic acids and esters,CHEM. COMMUN.,2011年,vol.47, no.1,p.349-351
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6558
A61K 31/675
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VIa)の化合物またはその塩形態
式中、
X 1 が、OまたはSであり;
R 1 が、SR 21 、OR 21 、およびNR 21 R 22 より選択され;
R 3 が、水素、およびC 1~6 アルキルより選択され;
R4が、NO2、SO2CH3、SO2CF3およびCOR51より選択され;
Z4が、CHおよびNより選択され;
Z6が、O、CHC(O)R18a、およびCH(CH2)pR18aより選択され、ここで、pは0~6であり、各R18aは独立して、-OR、-N(R)2、-OP(=O)(OH)2、および-OP(=O)(OR)2であり、ここで、各Rは独立して、H、またはアルキルあり;
R14およびR16が独立して、水素およびハロゲンより選択され;
R17が、SO2R52、COR52、CO2R52、CONR51R52、CONR52SO2R51およびSO2NR51R52より選択され;
R18 R19 、R 21 、R 22 およびR 52 が独立して、水素、およびC 1~6 アルキルより選択され;
R51が、C1~6アルキルである
【請求項2】
下の表:
り選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(VIb)の化合物またはその塩形態
式中、
X 1 が、OまたはSであり;
R 1 が、SR 21 、OR 21 、およびNR 21 R 22 より選択され;
R 3 が、水素、およびC 1~6 アルキルより選択され;
Y2が、-OR52、-N(R52)2、および-OP(=O)(OR52)2より選択され;
R4が、NO2、SO2CH3、SO2CF3およびCOR51より選択され;
Z4が、CHおよびNより選択され;
R14およびR16が独立して水素およびハロゲンより選択され
R17が、SO2R52、COR52、CO2R52、CONR51R52、CONR52SO2R51およびSO2NR51R52より選択され;
R18 R19 、R 21 、R 22 およびR 52 が独立して、水素、およびC 1~6 アルキルより選択され;
R51が、C1~6アルキルである
【請求項4】
下の表:
り選択される、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
式(VIIa)に示される構造を有する、請求項1記載の化合物またはその塩形態
中、
R4が、NO2、SO2CH3、SO2CF3およびCOR51より選択され;
Z6が、OおよびCH(CH2)pR18aより選択され、ここで、pは0~6であり、R18aは、-OR、-N(R)2、-OP(=O)(OH)2、および-OP(=O)(OR)2 より選択され、ここで、各Rは独立して、H、またはC 1~6 アルキルあり;
R3およびR21が独立して、水素、およびC 1~6 アルキルり選択され;
R 14 が、HおよびFより選択され;かつ
R51が、C1~6アルキルである
【請求項6】
式(VIIb)に示される構造を有する、請求項3記載の化合物またはその塩形態
中、
Y2が、-OR52、-N(R52)2、および-OP(=O)(OR52)2より選択され;
R4が、NO2、SO2CH3、SO2CF3およびCOR51より選択され;
R3およびR21が独立して、水素、およびC 1~6 アルキルり選択され;
R 14 が、HおよびFより選択され;
R51が、C1~6アルキルであり;かつ
R52が、水素、およびC1~6アルキルり選択される。
【請求項7】
以下の構造:
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート;
メチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート;
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)ホスホノアミダート;
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(3-(メチルスルホニル)-4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)フェニル)ホスホノアミダート;
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-N-メチル-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート;
リン酸二水素(1-((3R)-3-((4-(((4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)(エトキシ)ホスホリル)-2-ニトロフェニル)アミノ)-4-(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン-4-イル)メチル
のうちの1つより選択される、化合物またはその塩形態
【請求項8】
R 1 が、OR 21 である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
R 3 が、水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
R 4 が、NO 2 である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
R 14 が、ハロゲンである、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
R 16 が、ハロゲンである、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
R 17 が、SO 2 R 52 である、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
R 18 が、C 1~6 アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
R 19 が、C 1~6 アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
Z 4 が、Nである、請求項1記載の化合物。
【請求項17】
Z 6 が、O、およびCH(CH 2 ) p R 18a より選択され、R 18a が、-OH、および-OP(=O)(OH) 2 より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項18】
R 1 が、OR 21 である、請求項3記載の化合物。
【請求項19】
R 3 が、水素である、請求項3記載の化合物。
【請求項20】
R 4 が、NO 2 、SO 2 CH 3 、およびSO 2 CF 3 より選択される、請求項3記載の化合物。
【請求項21】
R 14 が、ハロゲンである、請求項3記載の化合物。
【請求項22】
R 16 が、ハロゲンである、請求項3記載の化合物。
【請求項23】
R 17 が、SO 2 R 52 である、請求項3記載の化合物。
【請求項24】
R 18 が、C 1~6 アルキルである、請求項3記載の化合物。
【請求項25】
R 19 が、C 1~6 アルキルである、請求項3記載の化合物。
【請求項26】
Z 4 が、Nである、請求項3記載の化合物。
【請求項27】
Y 2 が、-OH、および-N(C 1~6 アルキル) 2 より選択される、請求項3記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、すべて2018年4月30日に出願の米国仮特許出願第62/664,850号(アシルベンジルアミン)、米国仮特許出願第62/664,891号(ホスホノアミダート)、米国仮特許出願第62/664,860号(ホスホリジン)、および米国仮特許出願第62/664,863号(アシルホスホノアミダート)の優先権を主張する。上に列挙した優先出願はすべて、あらゆる目的でそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
下に開示されかつ権利請求される技術は概して、老化細胞、および加齢関連状態におけるそれらの役割、の分野に関する。特に、本開示は、Bclタンパク質活性を阻害する化学構造のための新規なスキャフォールドを提供する。
【発明の概要】
【0003】
概要
ここで提供される発明は、老化関連状態の治療のための新規なパラダイムを創出する。以下の開示は、老化細胞を選択的に排除するための戦略を概説し、有効な化合物、薬学的組成物、開発戦略、および治療プロトコルを提供し、それに続く多くの利点を記載している。
【0004】
新規な化学的スキャフォールドに基づいてBcl阻害剤の新規なファミリーが開発された。このファミリーにおけるBcl阻害剤のいくつかは特に効果的な老化細胞死滅剤である。本開示の化合物および組成物と老化細胞をインビトロまたはインビボで接触させることは、そのような細胞を選択的に調節するかまたは排除する。該阻害剤は加齢関連状態を有する対象における標的組織への投与のために用いることができ、これにより組織内またはその周囲の老化細胞を選択的に排除し、状態の1つまたは複数の症状または徴候を緩和する。該ファミリーからの選択された化合物は化学療法剤として製剤化し販売することができる。
【0005】
発明は以下の説明において、図面において、および添付の特許請求の範囲において記載されている。
[本発明1001]
式(I)の化合物:
であって、式中、
X 1 が、OまたはSであり;
R 1 が、SR 21 、OR 21 、およびNR 21 R 22 より選択され;
R 3 が、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R 4 が、水素、アルキル、置換アルキル、ニトロ、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、置換アルキルスルフィニル、シアノ、アルキルカルボニル、置換アルキルカルボニル、C(O)OH、C(O)NH 2 、ハロゲン、SO 2 NH 2 、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノおよび置換アルキルスルホニルアミノ、アルカノイル、置換アルカノイル、アルキルアミノカルボニル、置換アルキルアミノカルボニル、アルキルオキシカルボニルおよび置換アルキルオキシカルボニルより選択され;
R 21 およびR 22 が独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択されるか;
またはR 21 およびR 22 がそれらが結合するN原子を通じて一緒になって、1つまたは複数のR 23 で置換されていてもよい、5または6員のヘテロ環式環を形成し;
Z 2 が、-NR 5 R 6 、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルキルスルファニル、置換アルキルスルファニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環、置換炭素環、ヘテロ環、置換ヘテロ環、アリールアルコキシ、置換アリールアルコキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールオキシアルコキシ、置換アリールオキシアルコキシ、アリールスルファニル、置換アリールスルファニル、アリールスルファニルアルコキシ、置換アリールスルファニルアルコキシ、シクロアルキルアルコキシ、置換シクロアルキルアルコキシ、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、ハロゲン、カルボニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシおよびニトロより選択され;
Z 3 が、ヘテロ環、置換ヘテロ環、-NR 5 R 6 、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環および置換炭素環より選択され;
R 5 およびR 6 が独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R 11 およびR 12 がそれぞれ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C(O)NH 2 、SO 2 NH 2 、スルホネート、ヒドロキシル、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、置換アルキルスルホニルアミノ、アルキルオキシカルボニル、置換アルキルオキシカルボニルおよび-NR 5 R 6 よりそれぞれ独立して選択される1つまたは複数の任意の置換基であり;かつ
R 31 が、H、R 12 およびL 3 -Y 3 より選択され、ここで、L 3 はリンカーであり、Y 3 は、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより選択される、
化合物。
[本発明1002]
式(II)の化合物:
である、本発明1001の化合物であって、式中、
R 21 が、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;かつ
R 3 が、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択される、化合物。
[本発明1003]
立体異性体の式(IIa)または式(IIb):
が濃縮されている、本発明1001または1002の化合物。
[本発明1004]
Z 2 が-NR 5 R 6 であり、ここで、R 5 およびR 6 は独立して、
水素、
アルキル、および
アリールスルファニルアルキル、ヘテロアリールスルファニルアルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルスルホニルアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールスルホニルアルキル、アリールオキシアルキル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールスルホニルアルキル、ヘテロアリールオキシアルキル、ヘテロアリールスルフィニルアルキル、ヘテロアリールスルホニルアルキル、カルボキシアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、シクロアルキルカルボニル、(ヘテロ環)スルファニルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノおよびヘテロ環より選択される1つまたは複数の基で置換されたアルキル
より選択され、ここで、該1つまたは複数の基はさらに置換されていてもよく;かつ
Z 3 が、トリアリーレン、トリヘテロアリーレン、アリール-ヘテロアリール-アリール、ヘテロアリール-ヘテロアリール-アリール、アリール-ヘテロアリール-ヘテロアリールおよびアリール-ヘテロ環-アリールより選択される基で置換されたヘテロ環であり、ここで、該基の各環はさらに置換されていてもよい、
本発明1001~1003のいずれかの化合物。
[本発明1005]
式(IIIa)または式(IIIb)の化合物:
である、本発明1001~1004のいずれかの化合物であって、式中、
Z 4 が、CH、CR 13 およびNより選択され;
L 2 、L 3 、L 4 およびL 5 が、それぞれ独立してリンカーであり;
Y 2 が、アルキル、置換アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、-NR 7 R 8 、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環、置換炭素環、ヘテロ環および置換ヘテロ環より選択され;
Y 3 が、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより選択され;
Y 4 、Y 5 およびY 6 が独立して、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環、置換炭素環、ヘテロ環、および置換ヘテロ環より選択され;
R 7 およびR 8 が独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択されるか、またはR 7 およびR 8 がそれらが結合する窒素と一緒になって、5、6もしくは7員のヘテロ環式環または置換5、6もしくは7員のヘテロ環式環を形成し;かつ
R 13 が、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C(O)NH 2 、SO 2 NH 2 、スルホネート、ヒドロキシル、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、置換アルキルスルホニルアミノ、アルキルオキシカルボニル、置換アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換アルキルアミノおよび置換ジアルキルアミノより選択される1つまたは複数の任意の置換基である、化合物。
[本発明1006]
(i) Y 3 が置換または非置換縮合二環式ヘテロアリールである、式(IIIa)の化合物;および
(ii) Y 3 が置換または非置換フェニルである、式(IIIb)の化合物、
より選択される、本発明1005の化合物。
[本発明1007]
Y 2 が、OR、OP(=O)(OR) 2 およびNR 7 R 8 より選択され、ここで、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルであり;
Y 4 およびY 6 が独立して、フェニルおよび置換フェニルより選択され;
Y 5 が、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより選択され;
L 4 およびL 5 が、任意のリンカーであり;
R 7 およびR 8 が独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択されるか、またはR 7 およびR 8 がそれらが結合する窒素と一緒になって、5または6員のヘテロ環式環を形成し、ここで
(i)該5または6員のヘテロ環式環は、炭素上で1つまたは複数のR 40 で置換されていてもよく;かつ
(ii)該5または6員のヘテロ環式環が第2の窒素を含む場合、その第2の窒素はR 40* で置換されて第三級アミンを形成してもよく、
R 40* が、アルキル、置換アルキル、-(CH 2 ) m1 ORおよび-(CH 2 ) m2 OP(=O)(OR) 2 より選択され、ここで、m1およびm2は独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルであり;かつ
各R 40 が独立して、-OR、-N(R) 2 、-(CH 2 ) m1 OR、-(CH 2 ) m3 N(R) 2 、-(CH 2 ) m2 OP(=O)(OR) 2 、-OP(=O)(OH) 2 、および-OP(=O)(OR) 2 より選択され、ここで、m1、m2およびm3はそれぞれ独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルである、
本発明1005または1006の化合物。
[本発明1008]
式(IV)の化合物:
である、本発明1005~1007のいずれかの化合物であって、式中、
Y 2 が、OR''、OP(=O)(OR'') 2 およびNR 7 R 8 より選択され;
Z 5 が、NR 19 、NH、OおよびSより選択され;
Z 7 が、SおよびOより選択され;
L 6 およびL 7 が独立して、共有結合、C 1~6 アルキルリンカーまたは置換C 1~6 アルキルリンカーであり;
R 13 およびR 14 および各R 15 が独立して、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C(O)NH 2 、SO 2 NH 2 、スルホネート、ヒドロキシル、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、置換アルキルスルホニルアミノ、アルキルオキシカルボニル、置換アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換アルキルアミノおよび置換ジアルキルアミノより選択される1つまたは複数の任意の置換基であり;
R 16 が、水素、ハロゲンおよびR 15 より選択され;
R 17 およびR 18 が独立して、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環、置換ヘテロ環、OR、SR、NRR'、COR、OCOR、CO 2 R、CONRR'、CONRSO 2 R'、-C 1~3 アルキレンCH(OH)CH 2 OH、SO 2 RおよびSO 2 NRR'より選択され;
R 19 が、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環、置換ヘテロ環、OR、SR、NRR'、COR、OCOR、CO 2 R、CONRR'、CONRSO 2 R'、NRCOR、NRCONRR'、NRC(=S)NRR'、NRSO 2 RおよびSO 2 NRR'より選択され;
各R''が独立して、H、アルキルまたは置換アルキルであり;かつ
RおよびR'が独立して、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環、置換ヘテロ環、ヘテロ環-アルキル-および置換ヘテロ環-アルキル-より選択される、化合物。
[本発明1009]
式(Va)の化合物:
である、本発明1005~1008のいずれかの化合物であって、式中、
Z 6 が、O、NR 40* 、CHR 40 、C(R 40 ) 2 およびCH 2 より選択され;
R 40* が、アルキル、置換アルキル、-(CH 2 ) m1 ORおよび-(CH 2 ) m2 OP(=O)(OR) 2 より選択され、ここで、m1およびm2は独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルであり;
各R 40 が独立して、-OR、-N(R) 2 、-C(O)OR、-(CH 2 ) m1 OR、-(CH 2 ) m3 N(R) 2 、-(CH 2 ) m2 OP(=O)(OR) 2 、-OP(=O)(OH) 2 、および-OP(=O)(OR) 2 より選択され、ここで、m1、m2およびm3はそれぞれ独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルであり;かつ
q 1 およびq 2 は独立して1~6の整数である、化合物。
[本発明1010]
式(Vb)の化合物:
である、本発明1005~1008のいずれかの化合物であって、式中、
Y 2 が、OH、OR、NH 2 、NHR、NR 2 、-OP(=O)(OR) 2 および-OP(=O)(OH) 2 より選択され、ここで、各Rは独立して、C 1~6 アルキルまたは置換C 1~6 アルキルであり;かつ
q 1 およびq 2 は独立して1~6の整数である、化合物。
[本発明1011]
式(VIa)の化合物:
である、本発明1009の化合物であって、式中、
R 4 が、NO 2 、SO 2 CH 3 、SO 2 CF 3 およびCOR 51 より選択され;
Z 4 が、CHおよびNより選択され;
Z 6 が、O、CHC(O)R 18 、およびCH(CH 2 ) p R 18 より選択され、ここで、pは0~6であり、各R 18 は独立して、-OR、-N(R) 2 、-OP(=O)(OH) 2 、および-OP(=O)(OR) 2 であり、ここで、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルであり;
R 14 およびR 16 が独立して、水素およびハロゲンより選択され;
R 17 が、SO 2 R 52 、COR 52 、CO 2 R 52 、CONR 51 R 52 、CONR 52 SO 2 R 51 およびSO 2 NR 51 R 52 より選択され;
R 18 およびR 19 が独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R 51 が、C 1~6 アルキルおよび置換C 1~6 アルキルより選択され;かつ
R 52 が、水素、C 1~6 アルキルおよび置換C 1~6 アルキルより選択される、化合物。
[本発明1012]
式(VIa)の化合物であり、以下の表:
の化合物1~11のうちの1つより選択される、本発明1011の化合物。
[本発明1013]
式(VIb)の化合物:
である、本発明1010の化合物であって、式中、
Y 2 が、-OR 52 、-N(R 52 ) 2 、および-OP(=O)(OR 52 ) 2 より選択され;
R 4 が、NO 2 、SO 2 CH 3 、SO 2 CF 3 およびCOR 51 より選択され;
Z 4 が、CHおよびNより選択され;
R 14 およびR 16 が独立して水素であり;
R 17 が、SO 2 R 52 、COR 52 、CO 2 R 52 、CONR 51 R 52 、CONR 52 SO 2 R 51 およびSO 2 NR 51 R 52 より選択され;
R 18 およびR 19 が独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R 51 が、C 1~6 アルキルおよび置換C 1~6 アルキルより選択され;かつ
R 52 が、水素、C 1~6 アルキルおよび置換C 1~6 アルキルより選択される、化合物。
[本発明1014]
式(VIb)の化合物であり、以下の表:
の化合物12~29のうちの1つより選択される、本発明1013の化合物。
[本発明1015]
X 1 がOである、本発明1001~1014のいずれかの化合物。
[本発明1016]
X 1 がSである、本発明1001~1014のいずれかの化合物。
[本発明1017]
R 1 が、OHまたはOR 21 である、本発明1001~1011および1013のいずれかの化合物。
[本発明1018]
R 1 が、SHまたはSR 21 である、本発明1001~1011および1013のいずれかの化合物。
[本発明1019]
R 1 が、NH 2 またはNR 21 R 22 である、本発明1001~1011および1013のいずれかの化合物。
[本発明1020]
式(VIIa)の化合物:
である、本発明1011の化合物であって、式中、
R 4 が、NO 2 、SO 2 CH 3 、SO 2 CF 3 およびCOR 51 より選択され;
Z 6 が、OおよびCH(CH 2 ) p R 18 より選択され、ここで、pは0~6であり、R 18 は、-OR、-N(R) 2 、-OP(=O)(OH) 2 、および-OP(=O)(OR) 2 であり、ここで、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキル(例えば、エチルまたはtert-ブチルなどのC 1~4 アルキル)であり;
R 3 およびR 21 が独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;かつ
R 51 が、C 1~6 アルキルおよび置換C 1~6 アルキルより選択される、化合物。
[本発明1021]
式(VIIb)の化合物:
である、本発明1013の化合物であって、式中、
Y 2 が、-OR 52 、-N(R 52 ) 2 、および-OP(=O)(OR 52 ) 2 より選択され;
R 4 が、NO 2 、SO 2 CH 3 、SO 2 CF 3 およびCOR 51 より選択され;
R 3 およびR 21 が独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R 51 が、C 1~6 アルキルおよび置換C 1~6 アルキルより選択され;かつ
R 52 が、水素、C 1~6 アルキルおよび置換C 1~6 アルキルより選択される、化合物。
[本発明1022]
以下の構造:
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート;
メチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート;
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)ホスホノアミダート;
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(3-(メチルスルホニル)-4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)フェニル)ホスホノアミダート;
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-N-メチル-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート;
リン酸二水素(1-((3R)-3-((4-(((4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)(エトキシ)ホスホリル)-2-ニトロフェニル)アミノ)-4-(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン-4-イル)メチル
のうちの1つを有する、本発明1001~1021のいずれかの化合物。
[本発明1023]
アポトーシス促進活性を有する、本発明1001~1022のいずれかの化合物。
[本発明1024]
p16を発現する非がん性細胞として規定される老化細胞を、非老化細胞と比較して特異的に死滅させる、本発明1001~1022のいずれかの化合物。
[本発明1025]
同じ組織型の非がん細胞と比較して、がん細胞を特異的に死滅させる、本発明1001~1022のいずれかの化合物。
[本発明1026]
放射線照射されたIMR90細胞に対するEC 50 が0.1μM未満である、本発明1001~1022のいずれかの化合物。
[本発明1027]
放射線照射されたIMR90細胞に対するEC 50 が、コンフルエントなIMR90細胞に対するEC 50 または増殖性IRM90細胞に対するEC 50 の、3分の1以下である、本発明1001~1022のいずれかの化合物。
[本発明1028]
FL5.12細胞に対するEC 50 が0.1μM未満である、本発明1001~1022のいずれかの化合物。
[本発明1029]
薬学的に適合性のある賦形剤中に本発明1001~1028のいずれかの化合物を含む、薬学的組成物。
[本発明1030]
細胞、細胞集団または組織を、本発明1001~1029のいずれかの化合物または組成物と接触させる工程
を含む、混合細胞集団または組織から老化細胞および/またはがん細胞を選択的に除去する方法。
[本発明1031]
対象における組織中の老化関連状態(ここで、老化関連状態は、老化細胞によって少なくとも部分的に引き起こされるかもしくは媒介されることを特徴とするか、または影響を受けていない組織と比較して組織内もしくはその周囲に老化細胞を過剰に有することを特徴とする)を治療する方法であって、以下の工程を含む、方法:
それを必要とする対象の組織に、組織から老化細胞を選択的に除去するのに有効な量の本発明1001~1029のいずれかの化合物または組成物を投与する工程であって、これにより対象における老化関連状態の徴候または症状を少なくとも寛解させる、工程。
[本発明1032]
老化細胞によって少なくとも部分的に引き起こされるかまたは媒介される老化関連状態の治療における使用向けに構成された、Bcl機能を阻害する量の化合物
を含む、単位用量の薬学的組成物であって、
化合物は、本発明1001~1028のいずれかの化合物であり、
組成物は、老化関連状態を呈する対象における標的組織への投与向けに構成された化合物の製剤を含み、
単位用量中の化合物の製剤および量は、対象における組織内またはその周囲の老化細胞を選択的に除去するのに効果的になるよう単位用量を構成し、これにより単回用量として組織に投与された場合に、対象において有害作用を引き起こすことなく状態の1つまたは複数の徴候または症状の重篤さを低減する、
薬学的組成物。
[本発明1033]
組織または混合細胞集団から老化細胞を選択的に排除する際の使用のためまたは老化関連状態を治療する際の使用のための、本発明1001~1028のいずれかの化合物または本発明1029の薬学的組成物。
[本発明1034]
老化関連状態を治療するための薬の製造における、本発明1001~1028のいずれかの化合物の使用。
[本発明1035]
状態が、変形性関節症である、本発明1031~1034のいずれかの方法、製品、または使用。
[本発明1036]
状態が、眼の状態である、本発明1031~1034のいずれかの方法、製品、または使用。
[本発明1037]
状態が、肺の状態である、本発明1031~1034のいずれかの方法、製品、または使用。
[本発明1038]
がんを治療する方法であって、以下の工程を含む、方法:
それを必要とする対象の組織に、組織からがん細胞を選択的に除去するのに有効な量の本発明1001~1029のいずれかの化合物または組成物を投与する工程。
[本発明1039]
組織または混合細胞集団からがん細胞を選択的に排除する際の使用のためまたはがんを治療する際の使用のための、本発明1001~1028のいずれかの化合物または本発明1029の薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】ホスホノアミダート化合物を調製するために一般的に有用な合成スキームを示す。
図1B】ホスホノアミダート化合物を調製するために一般的に有用な合成スキームを示す。
図1C】ホスホノアミダート化合物を調製するために一般的に有用な合成スキームを示す。
図2A】本開示に係る例示的化合物の合成を示す。
図2B】本開示に係る例示的化合物の合成を示す。
図2C】本開示に係る例示的化合物の合成を示す。
図3A】Bcl活性を阻害し老化細胞を除去する例示的ホスホノアミダート化合物の能力を示すデータの表である。
図3B】Bcl活性を阻害し老化細胞を除去する例示的ホスホノアミダート化合物の能力を示すデータの表である。
図3C】Bcl活性を阻害し老化細胞を除去する例示的ホスホノアミダート化合物の能力を示すデータの表である。
図4】本開示に記載のBcl阻害剤がBclファミリータンパク質の結晶構造に適合した3次元モデルから取得される。注釈は、Bcl阻害活性および老化細胞死滅活性を保持するであろう上に示した式に包含されるさらなる化合物を開発するための読者への指針として用いることができる。
図5図5A、5B、および5Cは、変形性関節症モデルにおける老化細胞マーカーp16、IL-6、およびMMP13の発現をそれぞれ示す。老化の表現型は老化細胞死滅剤によって寛解することができる。
図6図6Aは、効果的な老化細胞死滅剤が変形性関節症モデルにおいて治療マウスと同等な体重負荷を回復させることを示す。図6B、6C、および6Dは、これらのマウスにおける関節の組織病理を示す画像である。該薬剤による治療は、プロテオグリカン層の破壊を防止するかまたは反転させるのに役立つ。
図7図7Aおよび7Bは、老化細胞死滅剤を硝子体内投与した場合の、マウス酸素誘導性網膜症(OIR)モデルにおける血管新生および血管閉塞の両方の反転を示す。図7Cおよび7Dは、糖尿病性網膜症のストレプトゾトシン(STZ)モデルから得られる。STZ誘導血管漏出は、老化細胞死滅剤の硝子体内投与によって軽減される。
図8】老化細胞を除去することが、紙巻きタバコの煙(CS)によって誘導されるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のマウスモデルにおいて、酸素飽和度(SPO2)を回復させるのに役立つことを示す。
図9】LDL受容体が欠損した近交系マウスに高脂肪食を与えたアテローム性動脈硬化症のマウスモデルから取得したデータを示す。右のパネルは、大動脈におけるプラークの染色を示す。中央のパネルは、プラークで覆われた大動脈の表面積が、老化細胞死滅剤での処理によって減少したことを定量的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
老化細胞は、もはや複製能力を有さないが、起源の組織に残存しており、細胞老化関連分泌現象(SASP)を誘発する細胞として特徴付けられる。本開示は、多くの加齢関連状態が老化細胞によって媒介されること、および、該状態にあるかまたはその状態に近い場合に、組織からの該細胞の選択的除去をそのような状態の治療のために臨床的に用いることができること、を前提としている。
【0008】
下に記載されかつ権利請求される技術は、加齢関連状態の治療の目的で、標的組織から老化細胞を選択的に排除するために用いることができる新規なクラスのBcl阻害剤の初めての説明を示している。
【0009】
Bclタンパク質活性の阻害
Bclタンパク質ファミリー(TC# 1.A.21)は、Bcl-2相同(BH)ドメインを共有する、進化の過程で保存されたタンパク質を含む。Bclタンパク質は、ミトコンドリアでの、プログラム細胞死の一形態であるアポトーシスを、上方または下方制御するそれらの能力が最もよく知られている。以下の説明は、本開示の化合物の科学的根拠のいくつかをユーザーが理解するのを助けるために提供される。これらの概念は発明を実施するためには必要ではないし、明示的に記載されているかまたは要求されていることを超えて本明細書において記載の化合物および方法の使用を何ら限定するものではない。
【0010】
本開示の文脈において、特に関心のあるBclタンパク質は、アポトーシスを下方制御するものである。抗アポトーシスBclタンパク質はBH1およびBH2ドメインを含み、それらのいくつかは追加のN末端BH4ドメインを含み(Bcl-2、Bcl-x(L)およびBcl-w(Bcl-2L2))、これらのタンパク質を阻害することは、アポトーシスに対する細胞の速度または感受性を増加させる。よって、そのようなタンパク質の阻害剤を、該タンパク質が発現される細胞を排除するのに役立つように用いることができる。
【0011】
2000年代半ば、アボットラボラトリーズ社(Abbott Laboratories)はABT-737(Navitoclax)として公知であるBcl-2、Bcl-xLおよびBcl-wの新規阻害剤を開発した。この化合物は、これらのBcl-2ファミリータンパク質を標的とするがA1またはMcl-1は標的としない、BH3模倣小分子阻害剤(SMI)群の一部である。ABT-737は、Bcl-2、Bcl-xLおよびBcl-wに対する親和性がより高いため、それまでのBCL-2阻害剤よりも優れている。インビトロ研究は、B細胞悪性腫瘍の患者からの初代細胞がABT-737に感受性があることを示した。ヒト患者では、ABT-737はいくつかのタイプのがん細胞に対して効果があるものの、用量を制限する血小板減少症がおこりやすい。
【0012】
US 2016/0339019 A1(Laberge et al.)は、MDM2阻害剤、Bcl阻害剤、およびAkt阻害剤を用いた特定の加齢関連状態の治療を記載している。US 20170266211 A1(David et al.)は、加齢関連状態の治療のための具体的なBcl阻害剤の使用を記載している。U.S. Patents Nos. 8,691,184、9,096,625、および9,403,856(Wang et al.)は、小分子ライブラリーにおけるBcl阻害剤を記載している。
【0013】
ここに記載する新規なスキャフォールドに基づく化合物は、Bclタンパク質の活性部位に適合して、強力なBcl阻害を提供しかつ/または標的細胞のアポトーシスを促進することが、今回発見された。これらの化合物は、次のセクションで説明するように、老化細胞およびがん細胞を標的とする非常に強力かつ特異的な薬物として開発することができる。
【0014】
ホスホノアミダート阻害剤化合物
本開示は、Bclタンパク質の活性部位における好ましい結合コンホメーションを提供することができ、強力な阻害活性を有しかつ/または標的細胞のアポトーシスを促進する化合物を与える、コアN-置換ホスホノアミダート結合部分に基づくスキャフォールドを有するBcl阻害剤ホスホノアミダート化合物を含む。
【0015】
ホスホノアミダート化合物は、N-アリールまたはN-ヘテロアリール基で置換されたP-フェニルホスホノアミダート部分を含む。P-フェニルホスホノアミダート部分は、リンにおいてオキソ(=O)の代わりにチオ(=S)で、および/またはオキシ基の代わりにチオキシ基または第2のアミノ基で置換されていてもよい。したがって、ホスホノアミダート化合物は、P-フェニルチオホスホノアミダート基またはP-フェニルホスホノジアミダート基を含んでもよい。コアN-置換ホスホノアミダート結合部分のリン原子は四面体であり、キラルであってもよい。したがって、本開示のホスホノアミダート化合物は立体異性体として存在してもよい。
【0016】
リンに結合したヘテロ原子のうちの1つは、リンに結合したN-置換窒素原子に環状に結合してもよく、それらが結合するリン原子を通じて一緒になって、ヘテロ環を提供する。コア結合部分の2つのリン置換基間にそのような環状の制約を組み込むことによって、好ましい結合コンホメーションを化合物中で促進することができる。
【0017】
P-フェニルホスホノアミダート部分のフェニル環はさらに置換されて、Bclタンパク質の活性部位の特定の位置に適合し得る置換基の望ましい配置を提供する。P-フェニルホスホノアミダート部分の窒素は、それ自体がさらに置換されたN-アリールまたはN-ヘテロアリール基で置換されて、Bclタンパク質の活性部位の特定の位置に適合する置換基の望ましい配置を提供する。N-アリールまたはN-ヘテロアリール基は、フェニル環がさらに置換されたN-フェニルであってもよい。
【0018】
したがって、本開示は式(I):
によって記載されるホスホノアミダート化合物を含み、式中、
X1は、OまたはSであり;
R1は、SH、SR21、OH、OR21およびNR21R22より選択され;
R3は、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択されるか;または、R1およびR3はそれらが結合するNおよびP原子を通じて一緒になって、1つまたは複数のR23で置換されていてもよい、5、6または7員のヘテロ環式環を形成し;
R4は、水素、アルキル、置換アルキル、ニトロ、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、置換アルキルスルフィニル、シアノ、アルキルカルボニル、置換アルキルカルボニル、C(O)OH、C(O)NH2、ハロゲン、SO2NH2、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノおよび置換アルキルスルホニルアミノ、アルカノイル、置換アルカノイル、アルキルアミノカルボニル、置換アルキルアミノカルボニル、アルキルオキシカルボニルおよび置換アルキルオキシカルボニルより選択され;
R21およびR22は独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択されるか;
またはR21およびR22はそれらが結合するN原子を通じて一緒になって、1つまたは複数のR23で置換されていてもよい、5または6員のヘテロ環式環を形成し;
各R23は独立して、アルキル、置換アルキル、-CONH2、COOH、CONHR21、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシおよび置換アルコキシより選択され;
Z2は、-NR5R6、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルキルスルファニル、置換アルキルスルファニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環、置換炭素環、ヘテロ環、置換ヘテロ環、アリールアルコキシ、置換アリールアルコキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールオキシアルコキシ、置換アリールオキシアルコキシ、アリールスルファニル、置換アリールスルファニル、アリールスルファニルアルコキシ、置換アリールスルファニルアルコキシ、シクロアルキルアルコキシ、置換シクロアルキルアルコキシ、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、ハロゲン、カルボニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシおよびニトロより選択され;
Z3は、ヘテロ環、置換ヘテロ環、-NR5R6、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環および置換炭素環より選択され;
R5およびR6は独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R11およびR12はそれぞれ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C(O)NH2、SO2NH2、スルホネート、ヒドロキシル、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、置換アルキルスルホニルアミノ、アルキルオキシカルボニル、置換アルキルオキシカルボニルおよび-NR5R6よりそれぞれ独立して選択される1つまたは複数の任意の置換基であり;かつ
R31は、H、R12およびL3-Y3より選択され、ここで、L3はリンカーであり、Y3はアリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより選択される。
【0019】
本開示は、R1およびR3が環状に結合していない式(I)の化合物を含む。本開示は、式(I)のホスホノアミダート化合物を含み、式中、X1はOであり、R1はOR21であり、ホスホノアミダート基のリン原子は、ヒドロキシ、アルコキシまたは置換アルコキシで置換される。したがって、式(I)のホスホノアミダート化合物は、式(II):
によってさらに記載することができ、式中、R21は、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;R3は水素、アルキルおよび置換アルキルより選択される。
【0020】
本開示は、キラルのリン立体中心を含む、ホスホノアミダート化合物の立体異性体を提供する。本開示の式または構造のいずれも、ホスホノアミダート部分の四面体リン立体中心での立体異性体を含んでもよい。したがって、式(I)または(II)のホスホノアミダート化合物は、立体異性体の式(IIa)または(IIb):
が濃縮されていてもよい。
【0021】
本開示は、式(IIa)の光学的に純粋な化合物を含む。本開示は、式(IIb)の光学的に純粋な化合物を含む。
【0022】
本開示のどの式(例えば、式(I)~(VII))のN-置換ホスホノアミダートコア結合部分においても、R3は水素であってもよい。本開示は、アルキルまたは置換アルキルであるR3も含む。任意で、R3は、メチルまたはエチルなどのC1~6アルキルであってもよい。さらに、本開示の式は、OHまたはOR21であるR1を含む。あるいは、R1は、NH2、NHR21またはNR21R22であってもよい。これらのR1基について、各R21およびR22は、C1~6アルキルであってもよい。任意で、R1およびR3は環状に結合してもよく、それらが結合するNおよびP原子を通じて一緒になって、リン含有ヘテロ環式環を提供してもよい。この環は、5または6員であってもよく、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C(O)NH2、SO2NH2、スルホネート、ヒドロキシル、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノおよび置換アルキルスルホニルアミノ、アルコキシカルボニル、置換アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換アルキルアミノおよび置換ジアルキルアミノより独立して選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。例えば、R1およびR3は環状に結合して(-R1*R3-)、リン原子と、隣接する窒素原子との間に、-W(CH2)x-リンカーを提供してもよく、ここで、xは2または3であり、WはO、SまたはNHである。
【0023】
式(I)のホスホノアミダート化合物は、X1がOであり、R1がそれぞれ、SR21、NHR21、SH、NH2またはOHである、式(IIc)~(IIg)のうちの1つでさらに記載できる。
【0024】
本開示は、R21がアルキルまたは置換アルキルである、式(IIc)および(IId)の化合物を含む。あるいは、R21およびR3はそれらが結合する原子を通じて一緒になって、1つまたは複数のR23で置換されていてもよい、5または6員のヘテロ環式環を形成してもよい。本開示は、HであるR3を含む。
【0025】
本開示のどの式(例えば、式(I)~(VII))のコアホスホノアミダート結合部分においても、R4は、ニトロ、アルキルスルホニルまたは置換アルキルスルホニルであってもよい。場合によっては、R4はニトロである。あるいは、R4はアルキルスルホニルであってもよい。任意で、R4はCH3SO2-である。本開示は、R4が置換アルキルスルホニルであってもよい化合物および式を含む。任意で、R4はCF3SO2-である。R4はまたシアノであってもよい。任意で、R4はアルキルカルボニル、置換アルキルカルボニル、-C(O)OHまたは-C(O)NH2であってもよい。本開示は、アルキルアミノスルホニルまたは置換アルキルアミノスルホニルであるR4を含む。アルコキシカルボニルまたは置換アルコキシカルボニルであるR4も含まれる。アルキルスルホニルアミノまたは置換アルキルスルホニルアミノであるR4も含まれる。あるいは、R4は、アルキルまたは置換アルキルであってもよい。
【0026】
本開示の式のいずれにおいても、Z2は-NR5R6であってもよく、ここでR5およびR6は独立して、水素と、アルキルと、アリールスルファニルアルキル、ヘテロアリールスルファニルアルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルスルホニルアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールスルホニルアルキル、アリールオキシアルキル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールスルホニルアルキル、ヘテロアリールオキシアルキル、ヘテロアリールスルフィニルアルキル、ヘテロアリールスルホニルアルキル、カルボキシアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、シクロアルキルカルボニル、(ヘテロ環)スルファニルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノおよびヘテロ環(例えば、ピペリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニル)より選択される1つまたは複数の基で置換されたアルキルと、より選択され、ここで、該1つまたは複数の基はさらに置換されていてもよい。本開示は、-NR5R6であるZ2を含み、ここで、R5は水素である。R6は、アリールスルファニルアルキル、ヘテロアリールスルファニルアルキル、アリールオキシアルキルまたはヘテロアリールオキシアルキルであってもよく、このR6はさらに置換されていてもよく、例えば、ヘテロ環または置換ヘテロ環で置換されていてもよい。ヘテロ環または置換ヘテロ環は、R6のアルキル部分の置換基であってもよく、場合によっては、ピペリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニルである。
【0027】
本開示の式において、Z3は置換ヘテロ環であってもよい。本開示は、置換ピペリジニルであるZ3を含む。任意で、Z3は置換ピペラジニルであってもよい。Z3は、さらに置換された単環式6員飽和ヘテロ環であってもよい。Z3ヘテロ環基は、任意のリンカーを介して互いにかつ直鎖状にZ3に結合している3つの結合した環状基(例えば、3つのアリール、ヘテロアリール、炭素環および/またはヘテロ環)を含む基で置換されていてもよい。Z3は、トリ(アリーレンおよび/またはヘテロアリーレン)基で置換されたピペリジニルまたはピペラジニルであってもよい。任意で、Z3は、トリアリーレン、トリヘテロアリーレン、アリール-ヘテロアリール-アリール、ヘテロアリール-ヘテロアリール-アリール、アリール-ヘテロアリール-ヘテロアリール、アリール-シクロアルキル-アリールまたはアリール-ヘテロ環-アリールで置換されたピペリジニルまたはピペラジニルであってもよく、ここで、該基の各環は、さらに置換されていてもよい。
【0028】
あるいは、本開示の式では、Z3は置換炭素環であってもよい。Z3は、さらに置換された単環式6員飽和炭素環であってもよい。Z3炭素環式基は、任意のリンカーを介して互いにかつ直鎖状にZ3に結合している3つの結合した環状基(例えば、3つのアリール、ヘテロアリール、炭素環および/またはヘテロ環)を含む基で置換されていてもよい。Z3は、トリアリーレン、トリヘテロアリーレン、アリール-ヘテロアリール-アリール、ヘテロアリール-ヘテロアリール-アリール、アリール-ヘテロアリール-ヘテロアリール、アリール-シクロアルキル-アリールまたはアリール-ヘテロ環-アリールで置換されたシクロへキシルであってもよく、ここで、該基の各環は、さらに置換されていてもよい。
【0029】
本開示は、コア構造におけるP-フェニルホスホノアミダート部分のフェニルとのパイスタッキング相互作用が可能な、Y3アリールまたはヘテロアリール基を有する化合物を含む。パイスタッキング(またはπ-πスタッキング)相互作用は、芳香環間の誘引性非共有相互作用を指す。本開示は、R31がL3-Y3である式(I)の化合物を含み、ここで、L3はリンカーであり、Y3は、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールである。あるいは、同様のパイスタッキング相互作用が可能なY3基が、Z2置換基に結合(L3を介して)してもよい。リンカーL3は、2つの芳香族基が分子内パイスタッキング相互作用できるように、P-フェニルホスホノアミダート部分のフェニル環に隣接するY3基の配置を提供してもよい。
【0030】
したがって、式(I)のホスホノアミダート化合物は、式(IIIa)または式(IIIb):
によってさらに記載することができ、式中、
Z4は、CH、CR13およびNより選択され;
L2、L3、L4およびL5は、それぞれ独立してリンカーであり;
Y2は、アルキル、置換アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、-NR7R8、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環、置換炭素環、ヘテロ環および置換ヘテロ環より選択され;
Y3は、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールより選択され;
Y4、Y5およびY6は独立して、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環、置換炭素環、ヘテロ環、および置換ヘテロ環より選択され;
R7およびR8は独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択されるか、またはR7およびR8はそれらが結合する窒素と一緒になって、5、6もしくは7員のヘテロ環式環または置換5、6もしくは7員のヘテロ環式環を形成し;かつ
R13は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C(O)NH2、SO2NH2、スルホネート、ヒドロキシル、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、置換アルキルスルホニルアミノ、アルキルオキシカルボニル、置換アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換アルキルアミノおよび置換ジアルキルアミノより選択される1つまたは複数の任意の置換基である。
【0031】
本開示は、Y3が置換または非置換縮合二環式ヘテロアリールである、式(IIIa)の化合物を含む。式(IIIa)では、Y3は、さらに置換されていてもよいピロロピリジンであってもよい。本開示は、L2が、Y2およびY3を窒素Nに結合させる3価のリンカーであり、Y3が置換または非置換フェニルである、式(IIIb)の化合物を含む。
【0032】
式(IIIa)および(IIIb)の化合物は、ORおよびOP(=O)(OR)2より選択されるY2基を含んでもよく、ここで、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルである。各Rは、エチルまたはtert-ブチルなどのC1~6アルキルであってもよい。任意で、Y2はNR7R8であってもよく、ここで、R7およびR8はそれらが結合する窒素と一緒になって、さらに置換されていてもよい、5または6員のヘテロ環を形成してもよい。Y2がNR7R8である場合、5または6員のヘテロ環は、炭素上で1つまたは複数のR40で置換されていてもよく、5または6員のヘテロ環が第2の窒素を含むのであれば、その第2の窒素は、R40*で置換されて第三級アミンを形成してもよい。各R40*は、存在する場合、アルキル、置換アルキル、-(CH2)m1ORおよび-(CH2)m2OP(=O)(OR)2より選択されてもよく、ここで、m1およびm2は独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルである。Rはエチルまたはtert-ブチルなどのC1~4アルキルであってもよい。各R40は、存在する場合、独立して-OR、-N(R)2、-(CH2)m1OR、-(CH2)m3N(R)2、-(CH2)m2OP(=O)(OR)2、-OP(=O)(OH)2、および-OP(=O)(OR)2より選択され、ここで、m1、m2およびm3はそれぞれ独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキル、または置換アルキルである。Rはエチルまたはtert-ブチルなどのC1~4アルキルであってもよい。
【0033】
上に記載のように、Z3は、置換ピペリジニルまたは置換ピペラジニルなどの置換ヘテロ環であってもよい。Z3ヘテロ環基は、任意のリンカーを介して互いにかつ直鎖状にZ3に結合している3つの結合した環状基(例えば、3つのアリール、ヘテロアリール、炭素環および/またはヘテロ環)を含む基で置換されていてもよい。本開示は、Z3置換基がトリヘテロアリール、アリール-ヘテロ環-アリール、アリール-ヘテロアリール-アリール、ヘテロアリール-ヘテロアリール-アリールまたはアリール-ヘテロアリール-ヘテロアリールである化合物を含み、ここで、Z3置換基の各環はさらに置換されていてもよい。したがって、そのようなZ3置換ヘテロ環の1つの置換基は、式Y6-L5-Y5-L4-Y4-で記載することができ、式中、Y4およびY5はそれぞれ独立して、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、炭素環、置換炭素環、ヘテロ環または置換ヘテロ環であり、L4およびL5は任意のリンカーである。本開示は、単一の共有結合であるL4およびL5を含む。
【0034】
Y4およびY5基は、Z3の第1のヘテロ環式基に順に結合した単環式芳香族または非芳香族5、6または7員環であってもよい。本開示は、フェニルまたは置換フェニルである末端Y6基を含む。Y4基は、1,2-または1,3-配置を介して結合してもよい。本開示は、フェニレンまたは置換フェニレンであるY4も含む。任意で、Y4は、1,3-フェニレンまたは置換1,3-フェニレンである。Y5は、ヘテロ環または置換ヘテロ環であってもよい。任意で、Y5は、ヘテロ環または置換ヘテロ環である。Y5は、さらに置換されていてもよい5員の単環式ヘテロアリーレンであってもよい。本開示は、ピロール、置換ピロール、フラン、置換フラン、チオフェンまたは置換チオフェンであるY5を含む。Y5が5員の単環式ヘテロアリーレンである場合、1,2-または2,3-配置などのシス配置で隣接する基(例えば、Y6-L5-および-L4-Y4)に結合してもよい。したがって、本開示は、置換されていてもよい2,3-結合ピロールであるY5を含む。
【0035】
式(IIIa)または式(IIIb)の化合物は、C1~6アルキレンまたは置換C1~6アルキレンであるL3リンカーを含んでもよい。式(IIIb)において、L2は3価のリンカーであってもよい。L2は、Y2を窒素Nに結合させかつ、Y3-L3を窒素Nに結合させる分岐原子も含む、C1~6アルキルリンカーまたは置換C1~6アルキルリンカーであってもよい。分岐原子は、炭素または窒素原子であってもよい。本開示は、L3およびL2が一緒になってY2およびY3を窒素Nに結合させる分岐リンカーを提供する化合物を含み、ここで、分岐リンカーは、1つまたは複数の骨格炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、SまたはN)で置換されていてもよい、置換C1~12アルキレン(例えばC1~6アルキルリンカー)である。
【0036】
式(IIIa)または式(IIIb)の化合物は、独立してフェニルまたは置換フェニルであるY6基と、フェニレンまたは置換フェニレン、例えば、置換されていてもよい1,3-結合フェニレンより選択されるY4とを含んでもよい。L4リンカーは共有結合であってもよい。場合によっては、L4リンカーは骨格原子を1つ有する。本開示は、共有結合、C1~3アルキルリンカー、置換C1~3アルキルリンカー、O、NR、NH、S、S(=O)、SO2またはC(=O)であるL5リンカーも含む。任意で、L5は単一の共有結合であってもよい。
【0037】
よって、式(IIIb)の化合物は、式(IV):
によってさらに記載することができ、式中、
Y2は、OR''、OP(=O)(OR'')2およびNR7R8より選択され;
Z5は、NR19、NH、OおよびSより選択され;
Z7は、SおよびOより選択され;
L6およびL7は独立して、共有結合、C1~6アルキルリンカーまたは置換C1~6アルキルリンカーであり;
R13およびR14および各R15は独立して、アルキル、置換アルキル(例えば、CF3)、アルコキシ、置換アルコキシ(例えば、-OCF3)、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C(O)NH2、SO2NH2、スルホネート、ヒドロキシル、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、置換アルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、置換アルキルスルホニルアミノ、アルキルオキシカルボニル、置換アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換アルキルアミノおよび置換ジアルキルアミノより選択される1つまたは複数の任意の置換基であり;
R16は、水素、ハロゲンおよびR15より選択され;
R17およびR18は独立して、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環、置換ヘテロ環、OR、SR、NRR'、COR、OCOR、CO2R、CONRR'、CONRSO2R'、-C1~3アルキレンCH(OH)CH2OH、SO2RおよびSO2NRR'より選択され;かつ
R19は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環、置換ヘテロ環、OR、SR、NRR'、COR、OCOR、CO2R、CONRR'、CONRSO2R'、NRCOR、NRCONRR'、NRC(=S)NRR'、NRSO2RおよびSO2NRR'より選択され;
各R''は独立して、H、アルキルまたは置換アルキル(例えば、エチルまたはtert-ブチルなどのC1~6アルキル)であり;かつ
RおよびR'は独立して、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環、置換ヘテロ環、ヘテロ環-アルキル-および置換ヘテロ環-アルキル-より選択される。
【0038】
Z4は、共有結合を介して、隣接するY4基に結合してもよい。本開示は、Z4がCHまたはCR13であってもよい式(IV)の化合物を含む。本開示は、Z4がNであってもよい式(IV)の化合物を含む。
【0039】
本開示は、ピロールまたは置換ピロールであるY5基も含む。ピロールは2,3-結合ピロールであってもよい。したがって、式(IV)において、Z5は、NHまたはNR19であってもよい。本開示は、Y5(例えば、2,3-結合ピロール)が末端フェニル環に直接結合するように、単一の共有結合であるL5を含む。
【0040】
式(IV)の化合物は、独立してキラル中心を介して繋がったC1~6アルキレンまたは置換C1~6アルキレンであるL6およびL7リンカーを含んでもよい。本開示は、L6が共有結合であるか、または1つもしくは複数の骨格炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、SまたはN)で置換されていてもよいC1~6アルキルリンカー(例えば、C1~3アルキレン)である化合物を含む。L7が共有結合であるか、または1つもしくは複数の骨格炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、SまたはN)で置換されていてもよいC1~6アルキルリンカー(例えば、C1~3アルキレン)である化合物も含まれる。
【0041】
本開示は、
Y2がNR7R8であり、
R7およびR8がそれらが結合する窒素と一緒になって、1つまたは複数の-OR、-N(R)2、-(CH2)m1OR、-(CH2)m3N(R)2、-(CH2)m2OP(=O)(OR)2、-OP(=O)(OH)2、および-OP(=O)(OR)2でさらに置換されていてもよい、5または6員のヘテロ環式環を形成してもよい、式(IV)の化合物
を含み、ここで、m1、m2およびm3はそれぞれ独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキルである。Rは、メチル、エチルまたはtert-ブチルなどのC1~4アルキルであってもよい。R7およびR8によって形成される5または6員のヘテロ環式環は、さらに置換されていてもよい、モルホリニル、ピペリジニルまたはピペラジニルなどの6員環であってもよい。
【0042】
式(IV)の化合物は式(Va):
またはその立体異性体でさらに記載することができ、式中、
Z6は、O、NR40*、CHR40、C(R40)2およびCH2より選択され;
R40*は、アルキル、置換アルキル、-(CH2)m1ORおよび-(CH2)m2OP(=O)(OR)2より選択され、ここで、m1およびm2は独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキル(例えば、エチルまたはtert-ブチルなどのC1~4アルキル)であり;
各R40は独立して、-OR、-N(R)2、-C(O)R、-(CH2)m1OR、-(CH2)m3N(R)2、-(CH2)m2OP(=O)(OR)2、-OP(=O)(OH)2、および-OP(=O)(OR)2より選択され、ここで、m1、m2およびm3はそれぞれ独立して1~6の整数であり、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキル(例えば、エチルまたはtert-ブチルなどのC1~4アルキル)であり;
q1およびq2は独立して1~6の整数である。
【0043】
式(IV)の化合物は式(Vb):
でさらに記載することができ、式中、Y2は、OH、OR、NH2、NHR、NR2、-OP(=O)(OR)2および-OP(=O)(OH)2より選択され、ここで、各Rは独立してC1~6アルキルまたは置換C1~6アルキルであり;q1およびq2は独立して1~6の整数である。
【0044】
式(IV)および(Va)の化合物は、リンカーL2の分岐点にキラル中心を有する化合物の立体異性体を含んでもよい。したがって、式(IV)および(Va)の化合物は式(VIa):
でさらに記載することができ、式中、
R4は、NO2、SO2CH3、SO2CF3およびCOR51より選択され;
Z4は、CHおよびNより選択され;
Z6は、O、CHC(O)R18、およびCH(CH2)pR18より選択され、ここで、pは0~6であり、各R18は独立して、-OR、-N(R)2、-OP(=O)(OH)2、および-OP(=O)(OR)2より選択され、ここで各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキル(例えば、エチルまたはtert-ブチルなどのC1~4アルキル)であり;
R14およびR16は独立して、水素およびハロゲンより選択され;かつ
R17は、SO2R52、COR52、CO2R52、CONR51R52、CONR52SO2R51、およびSO2NR51R52より選択され;
R18およびR19は独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R51は、C1~6アルキルおよび置換C1~6アルキルより選択され;かつ
R52は、水素、C1~6アルキルおよび置換C1~6アルキルより選択される。
【0045】
本開示は、表1の以下の化合物1~11によって規定される、式(VIa)の化合物を含む。表1の化合物のいずれについても、X1はOであってもよい。あるいは、X1はSであってもよい。
【0046】
(表1)式(VIa)の化合物
【0047】
式(IV)および(Vb)の化合物は、リンカーL2の分岐点にキラル中心を有する化合物の立体異性体を含んでもよい。したがって、式(IV)および(Vb)の化合物は式(VIb):
でさらに記載することができ、式中、
Y2は、-OR52、-N(R52)2、および-OP(=O)(OR52)2より選択され;
R4は、NO2、SO2CH3、SO2CF3およびCOR51より選択され;
Z4は、CHおよびNより選択され;
R14およびR16は独立して、水素およびハロゲンより選択され;かつ
R17は、SO2R52、COR52、CO2R52、CONR51R52、CONR52SO2R51およびSO2NR51R52より選択され;
R18およびR19は独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R51は、C1~6アルキルおよび置換C1~6アルキルより選択され;かつ
R52は、水素、C1~6アルキルおよび置換C1~6アルキルより選択される。
【0048】
本開示は、表2の以下の化合物12~29によって規定される式(VIb)の化合物を含む。表2の化合物のいずれについても、X1はOであってもよい。あるいは、X1はSであってもよい。
【0049】
(表2)式(VIb)の化合物
【0050】
式(VIa)の化合物は式(VIIa):
でさらに記載することができ、式中、
R4は、NO2、SO2CH3、SO2CF3およびCOR51より選択され;
Z6は、OおよびCH(CH2)pR18より選択され、ここで、pは0~6であり、R18は、-OR、-N(R)2、-OP(=O)(OH)2、および-OP(=O)(OR)2であり、ここで、各Rは独立して、H、アルキルまたは置換アルキル(例えば、エチルまたはtert-ブチルなどのC1~4アルキル)であり;
R3およびR21は独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;かつ
R51は、C1~6アルキルおよび置換C1~6アルキルより選択される。
【0051】
本開示は、表3の以下の化合物によって規定される式(VIIa)の化合物を含む。
【0052】
(表3)式(VIIa)の化合物
【0053】
式(VIb)の化合物は式(VIIb):
でさらに記載することができ、式中、
Y2は-、OR52、-N(R52)2、および-OP(=O)(OR52)2より選択され;
R4は、NO2、SO2CH3、SO2CF3およびCOR51より選択され;
R3およびR21は独立して、水素、アルキルおよび置換アルキルより選択され;
R51は、C1~6アルキルおよび置換C1~6アルキルより選択され;かつ
R52は、水素、C1~6アルキルおよび置換C1~6アルキルより選択される。
【0054】
本開示は、表4の以下の化合物によって規定される式(VIIb)の化合物を含む。
【0055】
(表4)式(VIIb)の化合物
【0056】
本開示は、R16が水素、ハロゲン、C1~6アルキル、置換C1~6アルキル(例えば、CF3)またはCNである化合物を含む。式(IV)、(Va)、(Vb)、(VIa)または(VIb)において、R16はハロゲンであってもよい。任意で、R16はクロロであってもよい。本開示は、R16が水素ではない化合物を含む。本開示は、R14が存在しない化合物を含む。あるいは、式(IV)、(Va)、(Vb)、(VIa)または(VIb)において、R14は1つのハロゲン置換基であってもよい。任意で、R14はフルオロであってもよい。
【0057】
本開示は、R17がSO2R52、COR52またはCO2R52である化合物を含む。あるいは、R17は、CONR51R52、CONR52SO2R51またはSO2NR51R52であってもよい。R51は、C1~6アルキルまたは置換C1~6アルキルであり、R52は、水素、C1~6アルキルまたは置換C1~6アルキルである。さらに、R18は水素であってもよい。場合によって、R18はアルキルである。任意で、R18は置換アルキルであってもよい。さらに、R19は水素であってもよい。場合によって、R19はアルキルであってもよい。任意で、R19は置換アルキルであってもよい。
【0058】
ホスホリジン化合物は以下のように特徴付けることもできる。
【0059】
(表5)式(VIII)の化合物
【0060】
特に記載のない限り、本開示のどの化合物または式(例えば、式(I)~(VIIb))のコアホスホノアミダート結合部分でも(例えば、式(I)~(VIIb))、X1はOであってもよい。任意で、X1はSであってもよい。コア結合部分では、R3はHであってもよい。本開示は、アルキルまたは置換アルキルであるR3も含む。任意で、R3はC1~6アルキルであってもよい。さらに、本開示の式はOHまたはOR21であるR1を含む。本開示は、SHまたはSR21であるR1も含む。あるいは、R1は、NH2、NHR21またはNR21R22であってもよい。これらのR1基については、各R21およびR22はC1~6アルキルであってもよい。
【0061】
コアホスホノアミダート部分を含む、本明細書に示す式および構造のいずれについても、そのような式および構造は塩形態も含み得る。例えば、ホスホノアミダート基は、酸形態(例えば、-NHP(=O)(OH)-)または塩形態(例えば、-NHP(=O)(O-)-)で存在し得る。該当する場合、基の酸形態は概して単純化を目的として示されているが、様々な塩形態が含まれることも意図している。化合物の塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩などの一価のカチオン塩を含むことがある。当業者であれば、これらの式および構造において示される基の他の互変異性配置が可能で、本開示に含まれることが意味されていることも認識するであろう。
【0062】
老化細胞分解活性について化合物を評価
これらおよび他の化合物は、それらが本開示に係る使用のための候補薬剤であることを示す様式でそれらが作用する能力について分子レベルで評価することができる。
【0063】
例えば、療法が、Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、または他のBclファミリータンパク質を介して老化細胞のアポトーシスを誘発する工程を含む場合、化合物は、1つまたは複数のBclタンパク質と、それらの個々の同族リガンドとの間の結合を阻害する能力について、試験することができる。実施例1は、Bclアイソフォームへの結合を決定する目的のための均一アッセイ(分離工程を必要としないアッセイ)の説明を提供する。化合物は、標的アイソフォームと相互作用して、これにより老化細胞の死滅を引き起こすそれらの能力について分子レベルでスクリーニングすることができる。実施例2および3は、この目的のために設計されたアッセイの説明を提供する。
【0064】
あるいはまたはさらに、化合物は、特異的に老化細胞を死滅させる能力について評価することができる。培養細胞を化合物と接触させ、細胞毒性または細胞の阻害の程度を決定する。化合物が老化細胞を死滅させるかまたは阻害する能力は、低密度で自由に分裂する正常細胞、および高密度で静止状態にある正常細胞に対する化合物の効果と比較することができる。実施例2および3は、ヒト標的組織線維芽細胞IMR90細胞株およびHUVEC細胞を用いた、老化細胞死滅化の説明を提供する。同様のプロトコルが公知であり、また他の老化細胞および他の細胞種、例えばがん細胞を死滅させるかまたは阻害する細胞の能力を試験するために、開発するかまたは最適化することができる。
【0065】
インビトロで老化細胞を選択的に死滅させるのに有効な候補Bcl阻害剤は、特定の疾患について動物モデルにおいてさらにスクリーニングすることができる。以下の実施例部分の実施例4、5、6、および7はそれぞれ、変形性関節症、眼疾患、肺疾患、およびアテローム性動脈硬化症についての説明を提供する。
【0066】
薬の製剤化
本開示に係る使用のための医薬品の調製および製剤化は、例えば、現行版のRemington: The Science and Practice of Pharmacyに記載されているような標準的な技術を組み込むことができる。製剤化は、典型的には、標的老化細胞への活性剤のアクセスを向上し、かつ、治療されている状態に関与していない組織に対する副作用または曝露を最小限に抑えながら効果の至適期間を提供する様式で、例えば局所投与による、標的組織への投与向けに、最適化される。
【0067】
老化関連状態および他の疾患を治療する際の使用のための薬学的製剤は、Bcl阻害剤を薬学的に許容される塩基または担体、および必要に応じて1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と混合することによって調製することができる。標的組織に応じて、持続性または持効性の放出のための薬学的組成物を製剤化することが適切な場合がある。経口持効性製剤は、異性体バリアント、結合剤、またはコーティング剤の混合物を含み得る。注射可能な持効性製剤は、結合剤、カプセル化剤、または微粒子と組み合わせた活性剤を含み得る。変形性関節症などの関節疾患の治療のためには、薬学的組成物は、典型的には関節内投与向けに製剤化される。緑内障、糖尿病性網膜症または加齢性黄斑変性症(AMD)などの眼疾患の治療のためには、組成物は硝子体内または前房内投与向けに製剤化され得る。肺疾患の治療のためには、組成物はエアロゾルとして、または気管内投与向けに製剤化され得る。
【0068】
本開示は、本開示において記載の1つまたは複数の薬剤または組成物の単位用量を同梱したキットである市販品を提供する。そのようなキットは、典型的には1つまたは複数の容器に薬学的製剤を含む。製剤は、1つまたは複数の単位用量(組み合わせまたは別々のいずれか)として提供し得る。キットは、その必要がある対象の標的組織内またはその周囲への薬剤または組成物の投与のための注射器などの装置を含み得る。製品はまた、老化細胞関連状態を治療する際の薬剤の使用および付随する利点を記載した情報の添付文書と、任意で組成物の治療的送達のための器具または装置とを含むかまたは伴い得る。
【0069】
治療設計
老化細胞は年齢とともに蓄積され、これが、老化細胞によって媒介される状態が、高齢者でより頻繁に起こる理由である。さらに、肺組織に対する様々な種類のストレスが老化細胞の出現およびそれらが現れる表現型を促進し得る。細胞ストレッサーは、酸化ストレス、代謝ストレス、DNA損傷(例えば、環境紫外光曝露または遺伝的障害の結果として)、がん遺伝子の活性化、およびテロメア短縮(例えば、過剰増殖から生じる)を含む。そのようなストレッサーに晒される組織は、老化細胞の保有率がより高い可能性があり、これは翻って、より若い年齢でまたはより重症の形態で、特定の状態の発症につながり得る。特定の状態に対する遺伝的感受性は、疾患を媒介する老化細胞の蓄積が、直接的または間接的に遺伝的要素によって影響され得、これがより早期の発症につながる場合があることを示唆している。
【0070】
老化細胞パラダイムの利点のうちの1つは、老化細胞がうまく除去されると対象に長期的な治療効果を提供し得ることである。老化細胞は本質的には非増殖性であり、これは、単なる増殖よりも遥かに時間がかかるプロセスである、組織内の非老化細胞の老化細胞への変換によってのみ、組織がより多くの老化細胞で満たされ得ることを意味する。一般的原理として、標的組織から老化細胞を除去するのに十分な老化細胞死滅剤による治療期間(単回用量または、例えば、数日間、1週間、もしくは数ヶ月間の期間にわたって毎日、週2回、もしくは週1回与えられる複数回用量)は、老化細胞死滅剤が投与されない有効期間(例えば、2週間、1ヶ月間、2ヶ月間、またはそれ以上)を対象に提供し得、対象は、治療されている状態の1つまたは複数の有害な徴候または症状の緩和、軽減、または回復を経験する。
【0071】
本開示に係る老化細胞死滅剤で特定の老化関連状態を治療するためには、治療レジメンは、老化細胞の場所および疾患の病態生理に応じて異なるであろう。
【0072】
治療に適する老化関連状態
本開示のBcl阻害剤は、様々な老化関連状態の予防または治療のために用いることができる。そのような状態は、典型的には(必ずというわけではないが)、状態の部位内またはその周辺の老化細胞(p16および他の老化マーカーを発現する細胞など)またはp16および他の老化マーカーの発現が、そのような細胞の頻度または影響を受けていない組織におけるそのような発現のレベルと比較して過剰であることによって特徴付けられる。現状で着目する非限定例は、以下のセクションで説明するように変形性関節症、眼疾患、および肺疾患の治療を含む。
【0073】
変形性関節症の治療
本開示に列挙するBcl阻害剤のいずれも、本開示に従って変形性関節症を治療するために開発することができる。同様に、本開示に列挙するBcl阻害剤は、変形性関節症に侵された関節を非限定的に含む、それを必要とする対象における関節内またはその周辺の老化細胞を選択的に排除するために開発することができる。
【0074】
変形性関節症の変形性関節疾患は、高い機械的ストレス、骨硬化症、ならびに滑膜および関節包の肥厚の部位での軟骨の細線維化を特徴とする。細線維化は、軟骨の表層の分離を伴う、局所的な表面の崩壊である。初期の分離は、多くあるコラーゲン束の軸線に沿って軟骨表面と接線方向に起きる。軟骨内のコラーゲンが崩壊し、軟骨表面からプロテオグリカンが失われる。関節にプロテオグリカンの保護および潤滑効果がない場合、コラーゲン繊維は分解を受けやすくなり、機械的破壊が起こる。変形性関節症を発症する要因となる危険因子は、加齢、肥満、過去の関節損傷、関節の使いすぎ、大腿筋の弱さ、および遺伝を含む。変形性関節症の症状は、無活動状態または過度の使用後の、関節、特に股関節、膝、腰の痛みまたはこわばり;運動すると解消する、休止後のこわばり;および活動後または一日の終わりに向けて悪化する痛み、を含む。
【0075】
本開示に係る化合物は、関節におけるプロテオグリカン層の喪失または侵食を、減少するかまたは阻害するために用いることができ、影響を受けた関節における炎症を減少させ、かつコラーゲン、例えば、2型コラーゲンの産生を促進するか、刺激するか、向上するか、または誘導する。化合物は、関節で産生されるIL-6などの炎症性サイトカインの量つまりレベルの減少を引き起こし得、炎症が減少する。化合物は、変形性関節症を治療するためおよび/または対象の関節におけるコラーゲン、例えば、2型コラーゲンの産生を誘導するために用いることができる。化合物はまた、関節におけるコラーゲンを分解するメタロプロテイナーゼ13(MMP-13)の産生を低下させるか、阻害するか、または減少させるために、およびプロテオグリカン層を修復するかまたはプロテオグリカン層の喪失および/もしくは分解を阻害するために用いることができる。これにより、化合物による治療はまた、骨の侵食の可能性を減少させるか、侵食を阻害するか、または侵食を低下させるか、または侵食を遅延し得る。化合物は、変形性関節症の関節に直接、例えば、関節内、局所、経皮、皮内、または皮下的に投与し得る。化合物はまた、関節の強度の低下を回復させるか、改善するか、または阻害し、関節痛を軽減し得る。
【0076】
眼の状態の治療
本開示に列挙されているBcl阻害剤のいずれも、対象の眼内またはその周囲の老化細胞を除去することによって、それを必要とする対象における眼の状態を予防するかまたは治療するために用いることができ、これにより疾患の少なくとも1つの兆候または症状の重症度が低下する。そのような状態は眼底疾患および前眼疾患の両方を含む。同様に、本開示に列挙するBcl阻害剤は、それを必要とする対象における眼組織内またはその周辺の老化細胞を選択的に排除するために開発することができる。
【0077】
本開示に従って治療することができる眼の疾患は、老眼、黄斑変性症(滲出型または萎縮型AMDを含む)、糖尿病性網膜症、および緑内障を含む。
【0078】
黄斑変性症は、眼底疾患として特徴付けることができる神経変性状態であり、黄斑と呼ばれる網膜中央部における視細胞の喪失を引き起こす。黄斑変性症は、萎縮型または滲出型であってもよい。萎縮型は滲出型よりも一般的であり、加齢性黄斑変性症(AMD)患者の約90%が萎縮型と診断される。萎縮型AMDは網膜色素上皮(RPE)層の萎縮に伴い、これは視細胞の喪失を引き起こす。滲出型AMDでは、新しい血管が網膜の下に成長して血液および体液が漏出し得る。異常に漏出性の脈絡膜血管新生は、網膜細胞が死滅する原因となることがあり、中心視に盲点を作り出す。黄斑のブルッフ膜下の滲出液つまり「ドルーゼン」の形成が、黄斑変性症が現れていることの身体的な兆候となることがある。黄斑変性症の症状は、例えば、知覚される直線の歪み、暗くぼやけた領域、および色覚異常を含む。
【0079】
別の眼底疾患は、糖尿病性網膜症(DR)である。ウィキペディアによると、DRの最初の段階は非増殖性であり、典型的には、実質的な症状または兆候はない。NPDRは眼底撮影によって検出可能であり、眼底撮影では、微小動脈瘤(動脈壁における微細な血液の充満した膨らみ)を見ることができる。視力の低下がある場合、フルオレセイン血管造影を行って眼底を見ることができる。網膜血管の狭窄または閉塞をはっきりと見ることができ、これは網膜虚血(血流の不足)と呼ばれる。血管の内容物が黄斑領域に漏出する黄斑浮腫は、NPDRのどの段階でも起きることがある。黄斑浮腫の症状は、目のかすみおよび両眼で異なる暗く歪んだ像である。光コヒーレンストモグラフィーは、黄斑浮腫の網膜肥厚(体液の蓄積による)の領域を示すことができる。DRの第2段階では、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)の一部として異常な新しい血管が眼底に形成され(血管新生)、これは破裂して出血(硝子体出血)して視界がぼやけることがある。眼底検査では、臨床医は、綿花状白斑、火炎状出血(同様の病変は、クロストリジウム・ノービイ(Clostridium novyi)のアルファ毒素によっても引き起こされる)、およびドットブロット出血を調べるであろう。
【0080】
本開示の老化細胞死滅剤による眼底疾患の治療の利点は、異常な血管新生、病原性血管新生、血管閉塞、眼内出血、網膜損傷、および視力喪失などの状態の有害な特徴の阻害または遅延を含み得る。老化細胞死滅剤は、例えば、眼内、硝子体内、または球後注射によって、眼内またはその周囲に投与し得る。至適には、視力の部分的な改善を伴う、機能的脈管構造の回復、機能的血管新生、網膜の再成長または回復などの病態生理のいくつかの反転があるであろう。
【0081】
老眼は加齢関連状態であり、年齢とともに正常な眼の順応の速度および振幅が低下するにつれて、眼が、近くの物体に焦点を合わせる能力の漸進的な低下を示す。水晶体の弾力性の喪失および毛様体筋の収縮性の喪失が老眼を引き起こすことがある。前部水晶体嚢および後部水晶体嚢の機械的特性の加齢に関連する変化は、組織の組成変化の結果として、後部水晶体嚢の機械的強度が年齢とともに著しく低下することを示唆している。水晶体嚢の主要な構造要素は、三次元分子ネットワーク状に組織化された基底膜IV型コラーゲンである。IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミナを眼内レンズに付着させることで細胞の移動を阻害することができ、PCOのリスクを低減することができる。
【0082】
本開示によって提供される老化細胞死滅剤は、IV型コラーゲンネットワークの崩壊を遅らせ、上皮細胞の移動を減少させるかまたは阻害し得、また老眼の発症を遅延させるまたは状態の重症度の進行を減少させるかもしくは遅らせることができる。それらはPCOの発生の可能性を低減するための白内障後の手術にも有用となることがある。
【0083】
緑内障および他の前眼疾患も本開示において提供される老化細胞死滅剤による治療に適し得る。通常、透明な液体が前房として公知である目の前部に出入りする。広角緑内障の人では、透明な液体の排出が遅すぎ、眼内の圧力上昇につながる。治療せずにいた場合、眼内の高い圧力が視神経を損傷することがあり、完全な失明につながることがある。周辺視野の喪失は、網膜における神経節細胞の死滅によって引き起こされる。
【0084】
治療の考えられる利点は、眼圧の低下、線維柱帯網を介した眼液の排出の改善、および結果として生じる視力喪失の阻害または遅延を含む。老化細胞死滅剤は、例えば、眼内もしくは前房内注射によって、または局所製剤において、眼内またはその周囲に投与し得る。治療の効果は、角膜中央部の厚さを測定する自動視野検査、角膜鏡検査、画像技術、走査型レーザー断層撮影、HRT3、レーザー偏光測定、GDX、眼球コヒーレンストモグラフィー、検眼鏡検査、およびパキメータ測定によってモニタリングできる。
【0085】
肺の状態の治療
本開示に列挙するBcl阻害剤のいずれも、本開示に従って肺疾患を治療するために開発することができる。同様に、本開示に列挙するBcl阻害剤は、それを必要とする対象の肺内またはその周辺の老化細胞を選択的に排除するために開発することができる。治療できる肺の状態は、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、および肺気腫を含む。
【0086】
COPDは、肺組織の破壊、気腫、および小気道の機能不全である閉塞性細気管支炎に起因する持続的な気流の悪化によって規定される肺疾患である。COPDの主な症状は、息切れ、喘鳴、胸部圧迫感、慢性の咳、および過剰な痰の生成を含む。紙巻きタバコの煙で活性化された好中球およびマクロファージからのエラスターゼは、肺胞構造の細胞外マトリクスを崩壊させ得、気腔の拡大および肺活量の喪失を招く。COPDは、例えば、タバコの煙、紙巻きタバコの煙、葉巻の煙、受動喫煙、パイプの煙、職業曝露、ほこり、煙、煙霧、および汚染への曝露を原因とし得、何十年もかかって起き、これによって加齢がCOPDを発症する危険因子であると関連付けられる。
【0087】
肺の損傷を引き起こすプロセスは、例えば、タバコの煙における高濃度のフリーラジカルによって生成される酸化ストレス、気道内の刺激物に対する炎症反応によるサイトカイン放出、ならびにプロテアーゼに肺を損傷させるタバコの煙およびフリーラジカルによる抗プロテアーゼ酵素の機能障害を含む。遺伝的感受性も疾患に寄与し得る。COPD患者の約1%では、疾患は、肝臓におけるアルファ-1-抗トリプシンの産生が低レベルになる遺伝的障害に起因する。アルファ-1-抗トリプシンは、通常、血流に分泌されて肺の防護を助ける。
【0088】
肺線維症は、呼吸不全、肺がん、および心不全につながることがある肺の硬化および瘢痕化を特徴とする慢性進行性肺疾患である。線維症は上皮の修復に関連する。線維芽細胞が活性化され、細胞外マトリクスタンパク質の産生が増加し、収縮性筋線維芽細胞への分化転換が創傷収縮に寄与する。予備的なマトリクスが、損傷した上皮を塞ぎ、上皮間葉移行(EMT)を伴う上皮細胞移動のためのスキャフォールドを提供する。上皮傷害と関連する血液損失は、血小板活性化、成長因子の産生、および急性炎症応答を誘導する。通常、上皮バリアが治癒し、炎症応答が解消される。しかしながら、線維性疾患では線維芽細胞応答が継続し、創傷治癒が未解決になる。線維芽細胞巣の形成は疾患の特徴であり、進行中の線維形成の位置を反映する。
【0089】
肺線維症を発症するリスクのある対象は、例えば、石綿肺および珪肺症などの、環境的または職業的汚染物質に曝露されたもの;紙巻きタバコを吸うもの;RA、SLE、強皮症、サルコイドーシス、またはウェゲナー肉芽腫症などの結合組織疾患を有するもの;感染症を有するもの;例えば、アミオダロン、ブレオマイシン、ブスルファン、メトトレキサート、およびニトロフラントインを含む特定の薬を服用するもの;胸部への放射線療法を受けているもの;ならびに家族が肺線維症を有するものを含む。
【0090】
この状態に係る化合物を用いることによって治療し得る他の肺状態は、肺気腫、喘息、気管支拡張症、および嚢胞性線維症を含む。肺疾患は、タバコの煙;粉塵、煙、もしくは噴煙に対する職業的曝露;感染症;または炎症に寄与する汚染物質によって悪化し得る。
【0091】
肺疾患の症状は、息切れ、喘鳴、胸の圧迫感、肺の過剰な粘液のために朝一番に咳払いをしなければならないこと、透明、白色、黄色または緑がかった色である場合がある痰が産生される慢性咳嗽、チアノーゼ、頻繁な呼吸器感染症、活力の欠如、意図しない体重減少を含むことがある。肺線維症の症状は、特に運動中の、息切れ;空咳;速く浅い呼吸;漸進的で意図しない体重減少;疲れ;関節痛および筋肉痛;ならびに指またはつま先のばち指を含み得る。
【0092】
治療前、治療中、治療後の肺機能は、例えば、予備呼気量(ERV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気量(FEV)、総肺気量(TLC)、肺活量(VC)、残気量(RV)、および機能的残気量(FRC)を測定することによって決定することができる。肺胞毛細管膜を通じたガス交換は、一酸化炭素の拡散能力(DLCO)を用いて測定することができる。運動能力を代用として測定することができる。末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)も測定することができ、通常の酸素レベルは、典型的には95%~100%である。90%未満のSpO2レベルは、対象が低酸素血症を有することを示唆する。80%未満の値は危険であると考えられ、脳および心臓の機能を維持し、心臓または呼吸の停止を回避するための介入を必要とする。
【0093】
治療の利点は、これらのうちの任意の影響の、進行を阻害することまたは反転させることも含み得る。老化細胞死滅剤の投与は、全身的、または肺の内部またはその周囲の部位で局所的であってもよく、例えば、エアロゾルもしくは粉末としての吸入によるか、または挿管による。至適には、薬剤はSpO2レベルおよび運動能力を改善するであろう。
【0094】
アテローム性動脈硬化症の治療
老化細胞死滅化合物は、アテローム性動脈硬化症の治療に用いることができ、例えば、対象におけるアテローム性動脈硬化プラークの形成、拡大、または進行を阻害することによる。老化細胞死滅化合物はまた、対象の1つまたは複数の血管に存在するアテローム性動脈硬化プラークの安定性を向上するために用いることができ、これにより、それらが血管を破裂させることおよび閉塞させることを阻害する。
【0095】
アテローム性動脈硬化症は、中型および大きい動脈の内腔を侵す斑状の内膜プラークであるアテロームを特徴とし、プラークは、脂質、炎症細胞、平滑筋細胞、および結合組織を含む。アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈、頸動脈、および大脳動脈を含む大型および中型の動脈、大動脈およびその分岐血管、ならびに手足の主幹動脈に影響を及ぼすことがある。
【0096】
アテローム性動脈硬化症は、動脈壁の肥厚の増加につながり得る。プラークの成長または破裂が血流を減少させるかまたは妨げる場合に症状が現れ、症状は、どの動脈が影響されるかで異なることがある。アテローム性動脈硬化プラークは安定または不安定なことがある。安定したプラークは退行するか、静止したままであるか、あるいは狭窄または閉塞の原因となり得るまで、場合によっては数十年にわたって、ゆっくりと成長する。不安定なプラークは、自発的な侵食、亀裂、または破裂を起こしやすく、血行力学的に有意な狭窄の原因となるはるか前に、急性血栓症、閉塞、および梗塞の原因となる。臨床的事象は、血管造影では重篤には見えない不安定なプラークに起因することがあるので、プラークの安定化は、罹患率および死亡率を減少する手法となることがある。プラークの破裂または侵食は、急性冠動脈症候群および卒中などの重大な心血管事象につながることがある。破壊されたプラークはより多くの脂質、マクロファージ含有量を有し、無傷のプラークよりも薄い線維性被膜を有することがある。
【0097】
アテローム性動脈硬化症および他の心血管疾患の診断は、患者の症状、例えば、狭心症、胸部圧迫、腕または脚のしびれ感または脱力感、声の出にくさまたは不明瞭な発語、顔面の筋肉の垂れ、下肢痛、高血圧、腎不全および/または勃起不全、病歴、および/または身体検査を根拠とすることができる。診断は、血管造影、超音波検査、または他の画像化試験によって確認することができる。心血管疾患を発症するリスクのある対象は、心血管疾患の家族歴などの素因のいずれか1つまたは複数を有するもの、他の危険因子、例えば、高血圧、異常脂質血症、高コレステロール、糖尿病、肥満および喫煙、座ってばかりの生活習慣、ならびに高血圧症を含む素因を有するものを含む。状態は、例えば、血管造影、心電図検査、またはストレステストによって評価することができる。
【0098】
老化細胞死滅剤による治療の潜在的な利点は、プラークの形成頻度、プラークで覆われた血管の表面積、狭心症、および運動耐容能の低下などの、状態の1つまたは複数の兆候または症状の進行を緩和するかまたは停止させることを含む。
【0099】
例示的ホスホノアミダート
以下の例示的化合物が上に示す式に含まれ、これらは本開示の一部として記載される様々な用途向けにスクリーニングおよび開発することができる。
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-ヒドロキシ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-(ジメチルアミノ)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)ホスホノアミダート
メチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(3-(メチルスルホニル)-4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)フェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-ヒドロキシ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-(メチルスルホニル)フェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-N-メチル-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-(ジメチルアミノ)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-(メチルスルホニル)フェニル)ホスホノアミダート
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-(メチルスルホニル)フェニル)ホスホノアミダート
N-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミジン酸
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-(4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダート
リン酸二水素(1-((3R)-3-((4-(((4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)(エトキシ)ホスホリル)-2-ニトロフェニル)アミノ)-4-(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン-4-イル)メチル
リン酸二水素1-((3R)-3-((4-(((4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)(エトキシ)ホスホリル)-2-ニトロフェニル)アミノ)-4-(フェニルチオ)ブチル)ピペリジン-4-イル
エチル(R)-N-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)ホスホノアミダート
エチル(S)-N-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)ホスホノアミダート
【0100】
定義
「老化細胞」は、典型的には複製する細胞型に由来すると一般的に考えられているが、老化または細胞状態に変化を引き起こす他の事象の結果としてもはや複製することができない。文脈に応じて、老化細胞は、p16、またはp16、老化関連β-ガラクトシダーゼ、およびリポフスチンより選択される少なくとも1つのマーカー;場合によってはこれらのマーカーのうちの2つ以上、ならびに非限定的にはインターロイキン6ならびに炎症性、血管新生および細胞外マトリクス修飾タンパク質などの細胞老化関連分泌現象(SASP)の他のマーカーを発現しているとして特定することができる。特に明記しない限り、特許請求の範囲で言及される老化細胞は、がん細胞を含まない。
【0101】
「老化関連(senescence associated)」、「老化関連(senescence related)」または「加齢関連(age related)」疾患、障害、または状態は、対象に有害な1つまたは複数の症状または徴候を呈する生理学的状態である。状態は、それが「老化細胞によって少なくとも部分的に引き起こされるかまたは媒介される」場合には「老化関連」である。これは、影響を受けた組織における少なくともいくつかの老化細胞の排除が、有害な症状または徴候の実質的な軽減または低減をもたらして患者の利益になるように、影響を受けた組織内またはその周辺のSASPの少なくとも1つのコンポーネントが状態の病態生理において役割を果たすことを意味する。本開示に係る方法および生成物を用いて治療するかまたは管理することができる可能性のある老化関連障害は、本開示において言及されかつ、考察において言及された過去の開示における障害を含む。特に明記されていない限り、該用語はがんを含まない。
【0102】
タンパク質機能またはBcl機能の阻害剤は、標的細胞において既に発現されている標的タンパク質が、該タンパク質またはBclファミリーメンバーが標的細胞において通常は行う酵素的、結合的、または調節的機能を行うことを、実質的に防止する化合物である。これは、標的細胞の排除、または、該細胞が別の化合物または事象の毒性に対してさらに感受性になることをもたらす。化合物は、以下の実施例1に係るアッセイで試験した場合に1,000nM(1.0μM)未満のIC50を有するのであれば、本開示において「Bcl阻害剤」または「Bcl活性を阻害する」化合物として適格である。状況に応じて100nMまたは10nM未満、または100nMと1nMの間の活性が好ましいことが多い。
【0103】
「Bcl」または「Bclタンパク質」という用語は、Bcl-2、Bcl-xL、およびBcl-wによって例示されるBclタンパク質のファミリーを指す。本開示のBcl阻害剤は、Bcl-2、Bcl-xL、およびBcl-wのうちの少なくとも1つを阻害することができるであろう。必ずしもそうではないが典型的には、これらのBclタンパク質のうちの1つの阻害剤は、他の2つをある程度阻害する。本開示において提供される化合物は、阻害活性を有し、かつBcl-2、Bcl-xL、またはBcl-wに特異的である可能性がある化合物を同定するために、任意のBclファミリーメンバーの活性について試験することができる。そのような阻害剤は、このリストからの標的BclについてのIC50が、リストの他の2つのBclファミリーメンバーについてのIC50よりも、少なくとも10倍優れている。
【0104】
化合物、組成物または薬剤は、老化細胞、優先的には同じ組織タイプの複製細胞、またはSASPマーカーが欠損した静止細胞を排除する場合には、典型的には「老化細胞死滅的」と呼ばれる。あるいはまたはさらに、化合物または組み合わせは、状態の初期症状または進行中の病状において役割を果たすかまたはその消散を阻害する老化関連分泌表現型の一部として病的可溶性因子またはメディエーターの放出を減少させる場合、効果的に用い得る。この点で、「老化細胞死滅的」という用語は、老化細胞を排除するのではなくむしろ阻害することによって主に作用する化合物(老化細胞阻害剤)を、結果として生じる利点を有する同様の様式で用いることができるような、機能的阻害を指す。本開示におけるモデル老化細胞死滅組成物および薬剤は、下の実施例2に係るアッセイで試験した場合、1μM未満のEC50を有する。0.1μM未満、または1μMと0.1μMの間の活性が好ましい場合がある。選択指数(SI)(同じ組織タイプの非老化細胞と比較した老化細胞のEC50)は、状況に応じて1、2、5、または10よりも優れている場合がある。
【0105】
混合細胞集団または組織からの老化細胞の選択的除去または「排除」は、老化表現型を有するすべての細胞が除去されることを必要とせず、単に組織中に当初あった治療後に残る老化細胞の割合が、組織中に当初あった治療後に残る非老化細胞の割合よりも実質的に高いということである。
【0106】
本開示に係る状態の成功した「治療」とは、治療されている対象に有益な任意の効果を有することであり得る。これは、状態の重症度、期間、もしくは進行、またはそれに起因するあらゆる有害な兆候もしくは症状を減少させることを含む。治療が成功せず、その結果、状態の典型的な兆候および症状の改善がない場合もある。療法に伴う目的は、治療される対象における標的組織または他の箇所への悪影響を最小限に抑えることである。場合によっては、例えば、遺伝的感受性によるかまたは病歴によって、対象が感受性になる状態の症状を予防するかまたは阻害するために老化細胞死滅剤を用いることもできる。
【0107】
「治療有効量」とは、(i)特定の疾患、状態、または障害を治療する、(ii)特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状を軽減するか、寛解するか、または排除する、(iii)本明細書において記載の特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状の発症を予防するかまたは遅延する、(iv)特定の疾患、状態または障害の進行を予防するかまたは遅延する、または(v)治療前の状態によって引き起こされる損傷を少なくとも部分的に反転させる、本開示の化合物の量である。
【0108】
化合物の「リン酸化」形態は、これは必ずしもそうではないが典型的にはリン酸化前に分子上に存在した酸素原子を介してコア構造に共有結合した1つまたは複数のリン酸基を有する化合物である。例えば、1つまたは複数の-OHまたは-COOH基が、水素の代わりに-OPO3H2または-CnPO3H2(ここでnは1~4)のいずれかであるリン酸基で置換されてもよい。いくつかのリン酸化形態では、リン酸基はインビボで(例えば、酵素分解によって)除去されてもよく、この場合リン酸化形態は、非リン酸化形態のプロドラッグであってもよい。非リン酸化形態は、そのようなリン酸基を有していない。脱リン酸化形態は、少なくとも1つのリン酸基が除去された後のリン酸化分子の誘導体である。
【0109】
本開示に係る「小分子」Bcl阻害剤は20,000ダルトン未満の分子量を有し、10,000、5,000、または2,000ダルトン未満であることが多い。小分子阻害剤は、抗体分子またはオリゴヌクレオチドではなく、典型的には、5個より多くの水素結合ドナー(窒素-水素および酸素-水素結合の総数)、および10個より多くの水素結合アクセプター(すべての窒素または酸素原子)を有さない。
【0110】
「プロドラッグ」とは、活性剤を放出するために体内で変換を必要とする活性剤の誘導体を指す。変換は、酵素的変換であってもよい。場合によっては、変換は、環化変換、または酵素変換と環化変換との組み合わせである。プロドラッグは、必ずしもそうではないが、活性剤に変換されるまで薬理学的に不活性であることが多い。
【0111】
「プロ部分」とは、活性剤内の官能基をマスクするために用いられた場合に、活性剤をプロドラッグに変換する保護基の形態を指す。通常は、プロ部分は、インビボにおいて酵素的または非酵素的手段によって切断される結合を介して、薬物に結合されるであろう。例示的プロ部分基は、化合物のヒドロキシルまたはチオール官能基と、エステルまたはチオエステル基を形成することができるアシル基、および化合物のヒドロキシルまたはチオール官能基と、エーテルまたはチオエーテル基を形成することができる置換アルキル基を含み、これらの基は、上に記載のようにインビボで切断することができる。
【0112】
特に記載されるかまたは必要がない限り、本開示において言及される化合物構造のそれぞれは、同じ構造を有する共役酸および塩基、それら化合物の結晶およびアモルファス形態、薬学的に許容される塩、ならびにプロドラッグを含む。これは、例えば、互変異性体、多形体、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形体(無水物を含む)を含む。
【0113】
特に記載されるかまたは暗示されていない限り、特定の基(group)または基(radical)を修飾するために用いられる場合の「置換された」という用語は、特定の基(group)または基(radical)の1つまたは複数の水素原子がそれぞれ独立して、水素ではない同一または異なる置換基で置換されていることを意味する。特に示されていない限り、置換基の命名法は、官能基の末端部分を命名し、続いて結合点に向かって隣接する官能基を命名することによって達成される。例えば、置換基「アリールアルキルオキシカルボニル」は、基(アリール)-(アルキル)-O-C(O)-を指す。
【0114】
「リンカー」は、2つ以上の化学構造を共有結合的に繋ぐ部分であり、2つの構造間に長さが原子100個以下からなる骨格を有する。リンカーは、切断可能でも切断不可能であってもよい。リンカーは、典型的には、長さが原子1~20個または1~100個の骨格を、直鎖または分岐形態で有する。骨格原子間の結合は、飽和または不飽和であってもよい。リンカー骨格は、環式基、例えば、置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環またはシクロアルキル基を含み得る。
【0115】
1つ以上のキラル中心を有する本開示のどのBcl阻害化合物についても、絶対立体化学が明示的に示されていない場合、各キラル中心は独立して、R配置またはS配置、あるいはそれらのラセミ混合物であってもよい。化合物は、特定の立体異性体が明示的に言及されていない限り、代替形態としてまたは混合物としてのいずれかで、示された構造の任意の立体異性体であってもよい。
【0116】
特に記載されているかまたは必要とされる場合を除き、明細書において用いられる他の用語はそれらの通常の意味を有する。
【0117】
参照による組み入れ
米国においておよび有効である他の法域におけるすべての目的で、本開示で引用されるあらゆる刊行物および特許文書は、そのような各刊行物または文書が参照により本明細書に組み入れられることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0118】
US 2016/0339019 A1 (Laberge et al.)およびUS 20170266211 A1 (David et al.)は、老化細胞の活性を排除するかまたは低減しかつ、本開示において言及されるものを非限定的に含む特定の老化関連状態を治療することができる化合物の同定、製剤化、および使用を非限定的に含むあらゆる目的で本明細書に組み入れられる。付与前の特許公開US 2018/0000816 A1 (David et al.)およびEP 3441069 A1 (Hopkins et al.)は、老化細胞の活性を排除するかまたは低減しかつ様々な眼の状態を治療することができる化合物の同定、製剤化、および使用を非限定的に含むあらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0119】
実施例1:Bcl阻害を測定
候補化合物がBcl-2およびBcl-xL活性を阻害する能力は、直接結合によって分子レベルで測定できる。このアッセイは、PerkinElmer Inc., Waltham, Massachusettsによって市販されている酸素チャネリングに基づく均質アッセイ技術を用いる;Eglin et al., Current Chemical Genomics, 2008, 1, 2-10を参照されたい。試験化合物は、標的Bclタンパク質、および、ビオチンで標識された対応する同族リガンドであるペプチドと組み合わされる。混合物を次いでストレプトアビジン含有発光ドナービーズおよび発光アクセプタービーズと組み合わせ、これは、化合物がペプチドのBclタンパク質への結合を阻害した場合に発光を比例的に減少させる。
【0120】
Bcl-2、Bcl-xL、およびBcl-wは、Sigma-Aldrich Co., St. Louis, Missouriから入手可能である。ビオチン化BIMペプチド(Bcl-2のためのリガンド)およびBADペプチド(Bcl-xLのためのリガンド)は、US2016/0038503 A1に記載されている。AlphaScreen(登録商標)ストレプトアビジンドナービーズおよびAnti-6XHis AlphaLISA(登録商標)アクセプタービーズは、PerkinElmerから入手可能である。
【0121】
アッセイを実施するために、化合物の1:4希釈系列をDMSOで調製し、次いでアッセイ緩衝液で1:100に希釈する。96ウェルPCRプレートにおいて、次のものを順に組み合わせる:10μLのペプチド(120nM BIMまたは60nM BIM)、10μLの試験化合物、および10μLのBclタンパク質(0.8nM Bcl-2/Wまたは0.4nM Bcl-XL)。アッセイプレートを暗所にて24時間室温でインキュベートする。翌日ドナービーズおよびアクセプタービーズを合わせ、各ウェルに5μL加える。暗所で30分間インキュベートした後、プレートリーダーを用いて発光を測定し、各試験化合物による親和性または阻害の程度を決定する。
【0122】
実施例2:線維芽細胞における老化細胞死滅活性を測定
ヒト線維芽細胞IMR90細胞は、American Type Culture Collection (ATCC(登録商標))からCCL-186という名称で入手可能である。細胞は、3%O2、10%CO2、および約95%湿度の雰囲気中で、FBSおよびPen/Strepを含むDMEM中で、75%未満のコンフルエンシーに維持される。細胞を、放射線照射細胞(使用前に、放射線照射後14日間培養)、および静止細胞(使用前に、4日間高密度で培養)に群分けする。
【0123】
0日目に以下のようにして放射線照射細胞を調製する。IMR90細胞を洗浄し、1mLあたり細胞50,000個の密度でT175フラスコに入れ、10~15Gyで放射線照射する。放射線照射後、細胞を96ウェルプレートに100μL播種する。1、3、6、10、および13日目に各ウェル内の培地を吸引し、新鮮な培地と交換する。
【0124】
10日目に、静止状態の正常細胞を以下のように調製する。IMR90細胞を洗浄し、3mLのTrypLEトリプシン含有試薬(Thermofisher Scientific, Waltham, Massachusetts)と組み合わせ、細胞が丸まりプレートから離れ始めるまで5分間培養する。細胞を分散させ、カウントし、1mLあたり細胞50,000個の濃度で、培地中で調製する。100μLの細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種する。培地を13日目に交換する。
【0125】
14日目に、試験阻害剤化合物を以下のように細胞と組み合わせる。各試験化合物のDMSO希釈系列を、96ウェルPCRプレートにおいて、最終目的濃度の200倍で調製する。使用直前に、予熱した完全培地で、DMSO溶液を1:200に希釈する。各ウェルにおける細胞から培地を吸引し、化合物含有培地を100μL/ウェル加える。
【0126】
試験用の候補老化細胞死滅剤を細胞と6日間培養し、17日目に同じ化合物濃度で培地を新鮮培地と交換する。Bcl2阻害剤を細胞と3日間培養する。アッセイシステムは、熱安定性ルシフェラーゼの特性を利用して、細胞溶解液中に放出される内因性ATPaseを阻害しつつ安定した発光シグナルを生成する反応条件を可能にする。培養期間の終わりに、100μLのCellTiter-Glo(登録商標)試薬(Promega Corp., Madison, Wisconsin)を各ウェルに加える。細胞プレートをオービタルシェーカーに30秒間置き、発光を測定する。
【0127】
実施例3:HUVEC細胞および他の老化細胞における老化細胞死滅活性を測定
単一ロットからのヒト臍帯静脈(HUVEC)細胞を、ATCCからの内皮細胞増殖キット(商標)-VEGFを補充した血管細胞基本培地で約8倍まで集団を倍加させ、次いで凍結保存した。アッセイ開始の9日前に老化集団用の細胞を解凍し、約27,000個/cm2で播種した。すべての細胞を5%CO2および3%O2の加湿インキュベータで培養し、培地を48時間毎に交換した。播種の2日後、細胞にX線源から12Gyの放射線を送り放射線照射した。アッセイ開始の3日前に非老化集団用の細胞を解凍し、老化集団と同様に播種する。アッセイの1日前に、すべての細胞をトリプシン処理し、55μL/ウェルの最終容量で、5,000個/ウェルの老化細胞と10,000個/ウェルの非老化細胞とを、別々の384ウェルプレートに播種した。各プレートでは、中央の308ウェルが細胞を含み、外周のウェルを70μL/ウェルの脱イオン水で満たした。
【0128】
アッセイの日に、化合物を10mM溶液から培地に希釈して最高濃度の作業溶液を提供し、次いでその一定分量を培地でさらに希釈して残りの2つの作業溶液を提供した。アッセイを開始するために、5μLの作業溶液を細胞プレートに加えた。最終試験濃度は、20、2、および0.2μMであった。各プレートにおいて、100種の試験化合物について、3ウェルの陽性対照および5つの未処理(DMSO)対照とともに、単一の濃度でアッセイを3回繰り返した。化合物の添加後、プレートを3日間インキュベータに戻す。
【0129】
CellTiter-Glo(商標)試薬(Promega)を用いて総ATP濃度を測定することによって、細胞生存を間接的に評価した。得られた発光をEnSpire(商標)プレートリーダー(PerkinElmer)で定量した。各濃度の化合物についての相対的細胞生存率は、同じプレートの未処理対照に対するパーセンテージとして計算した。
【0130】
潜在的なリード化合物の追跡用量反応のために、384ウェルプレートの老化細胞および非老化細胞を、上に記載のように調製した。化合物は、DMSO中で10ポイントの1:3希釈系列として調製し、次いで培地中で12倍まで希釈した。次いで、5マイクロリットルのこの作業溶液を細胞プレートに加えた。3日間の培養後、DMSO対照と比較した細胞生存を、上に記載のように計算した。すべての測定は4回実施した。
【0131】
インビボで意図する標的組織と合致する、IMR90線維芽細胞またはHUVEC細胞の代替として、他の細胞株および初代細胞培養物を用いてもよい。一例としては、眼疾患の治療を意図とした化合物をスクリーニングするための、培養ヒト網膜微小血管内皮細胞(HRMEC)の使用である。細胞は、選択した細胞株のための公知のプロトコルに従って培養され、同様の様式で放射線照射されて老化させる。
【0132】
実施例4:変形性関節症モデルにおける老化細胞死滅剤の有効性
この実施例は、変形性関節症の治療のためのマウスモデルにおける、MDM2阻害剤の試験を説明する。臨床治療における使用のためのBcl阻害剤を試験しかつ開発するために必要な変更を加えて適合させることができる。
【0133】
モデルは以下のように作製した。C57BL/6Jマウスは、片方の後肢の前十字靭帯を切断して、当該肢の関節に変形性関節症を誘発する手術を受けた。術後3週および4週中に、2週間、一日おきに関節内注射により、手術した膝毎に5.8μgのヌトリン-3A(n=7)でマウスを処理した。手術後4週間の終わりに、マウスの関節を老化細胞の存在についてモニタリングし、機能について評価し、炎症のマーカーについてモニタリングし、組織学的評価を行った。
【0134】
実施した研究は、2つの対照群のマウスを含んでいた:偽手術(すなわち、ACLの切断を除いて行われた外科的処置)およびGCV(ガンシクロビル)治療群と並行したビヒクルの関節内注射を受けたC57BL/6Jまたは3MRマウスを含む一群(n=3);ならびにACL手術を受け、GCV処理群と並行してビヒクルの関節内注射を受けたC57BL/6Jまたは3MRマウスを含む一群(n=5)。ヌトリン-3A処理マウスからのマウスの手術関節からのRNAを、SASP因子(mmp3、IL-6)および老化マーカー(p16)の発現について分析した。qRT-PCRを実施してmRNAレベルを検出した。
【0135】
図5A、5B、および5Cは、組織におけるp16、IL-6、およびMMP13の発現をそれぞれ示す。OA誘導手術は、これらのマーカーの発現の増加と関連していた。ヌトリン-3Aによる処理は、対照のレベル未満まで発現を減少させた。ヌトリン-3Aによる処理は、関節から老化細胞を取り除いた。
【0136】
マウスがどちらの脚を好むかを決定する体重負荷試験によって、手術の4週間後に四肢の機能を評価した。測定を行う前に、マウスを少なくとも3回、部屋に順応させた。マウスを部屋内で動かして、各体重計に1本の後足を載せて立たせた。各後肢にかけられた体重を、3秒間にわたって測定した。各時点で、各動物について少なくとも3回の別々の測定を行った。結果は、反対側の手術していない肢に対する、手術した肢にかけられた体重のパーセンテージとして表した。
【0137】
図6Aは、機能試験の結果を示す。変形性関節症誘導手術を受けた未処理マウスは、手術した後肢よりも手術していない後肢を好んだ(Δ)。しかしながら、ヌトリン-3Aで老化細胞を除去すると、手術を受けたマウスではこの影響が無くなった(▽)。
【0138】
図6B、6C、および6Dは、これらの実験からの関節組織の組織病理を示す。ACL手術によって誘導された変形性関節症は、プロテオグリカン層の破壊を引き起こした。ヌトリン-3Aを用いた老化細胞の除去は、この影響を完全に無効にした。
【0139】
実施例5:糖尿病性網膜症モデルにおける老化細胞死滅剤の有効性
この実施例は、眼底疾患、特に糖尿病性網膜症の治療のためのマウスモデルにおけるBcl阻害剤の試験を説明する。臨床治療における使用のために老化細胞死滅剤を試験すべく必要な変更を加えて適合させることができる。
【0140】
モデル化合物UBX1967(Bcl-xL阻害剤)の有効性は、マウス酸素誘発性網膜症(OIR)モデルで試験した(Scott and Fruttiger, Eye (2010) 24, 416-421, Oubaha et al, 2016)。C57Bl/6子マウスおよびそれらのCD1養母を、生後7日目(P7)からP12まで高酸素環境(75%O2)に曝露した。P12では、1%DMSO、10%Tween-80、20%PEG-400中で調製した1μlの試験化合物(200、20、または2uM)を動物に硝子体内注射し、P17まで室内空気に戻した。P17で眼球を取り出し、網膜を血管染色またはqRT-PCRのいずれかのために解剖した。無血管領域または新生血管領域を決定するために、網膜を平たく置き、1mM CaCl2で1:100に希釈したイソレクチンB4(IB4)で染色した。老化マーカー(例えば、Cdkn2a、Cdkn1a、Il6、Vegfa)の定量的測定のためにqPCRを実施した。RNAを単離し、逆転写によってcDNAを生成し、これを、選択した転写産物のqRT-PCRに用いた。
【0141】
図7Aおよび7Bは、硝子体内ITT)投与UBX1967が、すべての用量レベルで、血管新生および血管閉塞の程度に統計的に有意な改善をもたらしたことを示す。
【0142】
UBX1967の有効性は、ストレプトゾトシン(STZ)モデルでも試験した。6~7週のC57BL/6Jマウスの重さを計り、それらのベースライン血糖値を測定した(Accu-Chek(商標)、Roche)。マウスにSTZ(Sigma-Alderich, St. Louis, MO)を55mg/kgで5日間連続して腹腔内注射した。週齢を一致させた対照には、緩衝液のみを注射した。最後のSTZ注射の1週間後に血糖値を再度測定し、空腹時以外の血糖値が17mM(300mg/L)より高い場合に、マウスを糖尿病と見なした。STZで処理した糖尿病C57BL/6Jマウスに、1μlのUBX1967(2μMまたは20μM、0.015%ポリソルベート-80、0.2%リン酸ナトリウム、0.75%塩化ナトリウム、pH7.2の懸濁液として調製)を、STZ投与後8および9週で硝子体内注射した。網膜エバンスブルー透過アッセイは、STZ処理の10週間後に実施した。
【0143】
図7Cおよび7Dは、このプロトコルの結果を示す。硝子体内(IVT)投与UBX1967後の網膜および脈絡膜の血管漏出は、両方の用量レベルで血管透過性が改善した。
【0144】
眼圧(IOP)の上昇が網膜神経節細胞の喪失および視神経の損傷を引き起こすと考えられている緑内障に関連する、網膜神経節細胞損傷の他のモデルを試験に用いることができる。前臨床種においては、磁気マイクロビーズ閉塞(Ito et al., Vis Exp. 2016 (109): 53731)および他の緑内障モデル(Almasieh and Levin, Annu Rev Vis Sci. 2017)を含むいくつかの確立されたモデルで報告されているように、前房圧の上昇は網膜神経の喪失をもたらすことがある。さらに、虚血再灌流は細胞老化をもたらし得る網膜損傷を引き起こすことが実証されている。そのようなモデルにおける網膜老化の存在は、試験化合物の硝子体内注射後の老化細胞死滅の影響をモニタリングするために用いることができる。
【0145】
実施例6:肺疾患モデルにおける老化細胞死滅剤の有効性
この実施例は、肺疾患の治療のためのマウスモデル、具体的には特発性肺線維症(IPF)向けのモデルにおける阻害剤の試験を説明する。臨床治療における使用のためのBcl阻害剤を試験しかつ開発するために必要な変更を加えて適合させることができる。慢性閉塞性肺疾患(COPD)のモデルとして、マウスを紙巻きタバコの煙に曝露した。
【0146】
煙に曝露されたマウスに対する老化細胞死滅剤の効果は、老化細胞のクリアランス、肺機能、および組織病理によって評価される。
【0147】
この試験で用いたマウスは、US 2017/0027139 A1およびDemaria et al., Dev Cell. 2014 December 22; 31(6): 722-733に記載の3MR系統を含む。3MRマウスは、プロドラッグであるガンシクロビル(GCV)を細胞にとって致命的な化合物に変換する、チミジンキナーゼをコードする導入遺伝子を有する。導入遺伝子における酵素は、それを老化細胞において特異的に発現させるp16プロモーターの制御下に置かれる。GCVによるマウスの処理により老化細胞が排除される。
【0148】
この研究で用いる他のマウスは、US 2015/0296755 A1およびBaker et al., Nature 2011 Nov 2;479(7372):232-236に記載の、INK-ATTAC系統を含む。INK-ATTACマウスは、p16プロモーターの制御下にあるスイッチ可能なカスパーゼ8をコードする導入遺伝子を有する。カスパーゼ8は、マウスをスイッチ化合物AP20187で処理することによって活性化でき、そうするとカスパーゼ8は、老化細胞にアポトーシスを直接的に誘導して、マウスからそれらを排除する。
【0149】
実験を行うために、6週齢の3MR(n=35)またはINK-ATTAC(n=35)マウスを、Teague TE-10システムから発生させた紙巻きタバコの煙に長期的に曝露させた。このシステムは、チャンバー内で紙巻きタバコの副流煙と主流煙とを合わせたもの生成し、採取および混合チャンバーに移されて、そこで様々な量の空気が煙の混合物と混合される、自動制御紙巻きタバコ煙発生器である。COPDプロトコルは、Johns Hopkins UniversityのCOPDコア施設から採用した(Rangasamy et al., 2004, J. Clin. Invest. 114:1248-1259; Yao et al., 2012, J. Clin. Invest. 122:2032-2045)。
【0150】
マウスは、1日に合計6時間、1週間に5日、6ヶ月間、紙巻きタバコの煙に曝露された。火を付けた紙巻きタバコ(紙巻きタバコ1本あたり、10.9mgの総粒子状物質(TPM)、9.4mgのタール、0.726mgのニコチン、および11.9mgの一酸化炭素を含む、3R4F研究用紙巻きタバコ[University of Kentucky, Lexington, KY])は、それぞれ2秒間、毎分1回、合計で8回、1.05L/分の流速で吹かして、標準的な一吹かしを35cm3にした。紙巻きタバコ煙発生器は、一度に2本の紙巻きタバコを燻ることによって、副流煙(89%)と主流煙(11%)の混合物を生成するように調節した。煙チャンバーの雰囲気を、総浮遊粒子(80~120mg/m3)および一酸化炭素(350ppm)についてモニタリングした。
【0151】
7日目から開始して、(10)INK-ATTACおよび(10)3MRマウスを、AP20187(週3回)またはガンシクロビル(5日間の連続した処理に続いて16日間の休薬を実験の終了まで繰り返す)で、それぞれ処理した。対応するビヒクルを同数のマウスに与えた。残りの30匹のマウス(15匹のINK-ATTACおよび15匹の3MR)を均等に分割し、各遺伝子組み換え系統の5匹を、3つの異なる処理群に分けた。1つの群(n=10)は、ヌトリン-3A(10%DMSO/3%Tween-20(商標)を含むPBSに25mg/kgで溶解し、14日間連続して処理し、その後14日間休薬し、実験が終了するまで繰り返した)を与えた。1つのグループ(n=10)は、ABT-263(ナビトクラックス)(15%DMSO/5%Tween-20に100mg/kgで溶解し、7日間連続して処理し、その後14日間休薬し、実験が終了するまで繰り返した)を与えた。最後のグループ(n=10)は、ABT-263と同じ治療レジメンに従ってABT-263の代わりに用いたビヒクル(15%DMSO/5%Tween-20)のみ与えた。紙巻きタバコの煙に曝露されなかった追加の70匹の動物を、実験の対照として用いた。
【0152】
2ヶ月間の紙巻きタバコの煙(CS)への曝露後、MouseSTAT PhysioSuite(商標)パルスオキシメータ(Kent Scientific)を用いて酸素飽和度をモニタリングすることによって、肺機能を評価した。動物をイソフルラン(1.5%)で麻酔し、トウクリップを付けた。マウスを30秒間モニタリングし、この期間にわたる平均末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)測定値を算出した。
【0153】
図8に結果を示す。AP2018、ガンシクロビル、ABT-263(ナビトクラックス)、またはヌトリン-3Aを介した老化細胞のクリアランスは、未処理対照と比較して、2か月間の紙巻きタバコの煙への曝露後のマウスにおけるSpO2レベルの統計的に有意な増加をもたらした。
【0154】
実施例7:全身投与した場合のアテローム性動脈硬化症における老化細胞死滅剤の有効性
この実施例は、アテローム性動脈硬化症の治療のためのマウスモデルにおけるMDM2阻害剤の試験を説明する。試験化合物は、局所的よりもむしろ全身的に投与される。モデルは、低密度リポタンパク質の受容体が不足したLDLR-/-系統のマウスにおいて行われる。ここに記載の実験は、臨床治療における使用のための他のタイプの阻害剤を試験しかつ開発するために必要な変更を加えて適合させることができる。
【0155】
LDLR-/-マウス(10週)の2つの群に、0週目から開始して研究全体を通して、脂肪からの42%カロリーを有する高脂肪食(HFD)(Harlan Teklad TD.88137)を与える。LDLR-/-マウス(10週)の2つの群に通常の餌(-HFD)を与える。0~2週目から、HFDマウスおよび-HFDマウスの1つの群を、ヌトリン-3A(25mg/kg、腹腔内)で処理する。1つの治療サイクルは、14日間の処理、14日間の休薬である。ビヒクルは、1つの群のHFDマウスおよび1つの群の-HFDマウスに投与される。4週目(時点1)で、1つの群のマウスを屠殺し、プラーク内の老化細胞の存在を評価する。残りのマウスのいくつかについては、ヌトリン-3Aおよびビヒクルの投与を4~6週目から繰り返す。8週目(時点2)で、マウスを屠殺し、プラーク内の老化細胞の存在を評価する。残りのマウスは、8~10週目からヌトリン-3Aまたはビヒクルで処理される。12週目(時点3)で、マウスを屠殺し、プラークのレベルおよびプラーク内の老化細胞の数を評価する。
【0156】
血漿脂質レベルは、-HFDを与えたマウスと比較して、HFDを与えヌトリン-3Aまたはビヒクルで処理したLDLR-/-マウスにおいて、時点1で測定した(1群あたりn=3)。午後の中頃に血漿を採取し、循環する脂質およびリポタンパク質を分析した。
【0157】
時点1の終わりに、HFDを与えヌトリン-3Aまたはビヒクルで処理したLDLR-/-マウスを屠殺し(n=3、すべての群)、SASP因子および老化細胞マーカーのRT-PCR分析のために大動脈弓を解剖した。値はGAPDHに対して正規化され、週齢を一致させビヒクル処理した通常の餌のLDLR-/-マウスに対する、何倍の変化であるかで表した。データは、HFDを与えられたLDLR-/-マウスにおける、ヌトリン-3Aによる老化細胞のクリアランスは、1回の処理サイクル後に、いくつかのSASP因子および老化細胞マーカーであるMMP3、MMP13、PAI1、p21、IGFBP2、IL-1A、およびIL-1Bの発現を減少させた。
【0158】
時点2の終わりに、HFDを与えヌトリン-3Aまたはビヒクルで処理したLDLR-/-マウス(すべての群でn=3)を屠殺し、SASP因子および老化細胞マーカーのRT-PCR分析のために大動脈弓を解剖した。値はGAPDHに対して正規化され、週齢を一致させビヒクル処理した通常の餌のLDLR-/-マウスに対する、何倍の変化であるかで表した。データは、HFDマウス内の大動脈弓におけるいくつかのSASP因子および老化細胞マーカーの発現を示す。HFDを与えられたLDLR-/-マウスにおけるヌトリン-3Aの複数の処理サイクルによる老化細胞のクリアランスは、ほとんどのマーカーの発現を減少させた。
【0159】
時点3の終わりに、HFDを与えヌトリン-3Aまたはビヒクルで処理されたLDLR-/-マウス(すべての群でn=3)で処理されたマウスを屠殺し、大動脈を解剖してSudan IVで染色し脂質の存在を検出した。マウスの体組成をMRIで分析し、循環する血球をHemavet(商標)によってカウントした。
【0160】
図9に結果を示す。ヌトリン-3Aによる治療は、下行大動脈におけるプラークで覆われた表面積を約45%減少させた。血小板およびリンパ球の数はヌトリン-3Aおよびビヒクルで処理したマウス間では同等であった。ヌトリン-3Aによる治療は、高脂肪食を与えたマウスの体重および体脂肪組成も減少させた。
【0161】
実施例8:インビトロおよびインビボでのがん細胞に対する細胞毒性を測定
化合物の細胞活性は、インターロイキン-3(IL-3)依存性前リンパ球性FL5.12マウス細胞株において評価できる。IL-3がなくなると、アポトーシス促進因子BimおよびPumaの上方制御により、FL5.12アポトーシスを誘導する。Bcl-2(FL5.12-Bcl-2)またはBcl-xL(FL5.12-Bcl-xL)の過剰発現は、BimおよびPumaを隔離することによって、IL-3がない影響から保護する。化合物は、Bcl-2またはBcl-xLの過剰発現によってもたらされる防護を反転させる。化合物は、FL5.12細胞がアポトーシス促進刺激を受けないIL-3の存在下では、細胞死の誘発に効果がない。IL-3がない場合にFL5.12-Bcl-2またはFL5.12-Bcl-xL細胞を死滅させる化合物の能力は、カスパーゼ阻害剤ZVADの存在下で弱めることができ、細胞死滅がカスパーゼ依存性であることを示す
【0162】
免疫共沈降試験を行って、BH3模倣物によって誘導される細胞毒性が、細胞内Bcl-2ファミリータンパク質間相互作用の破壊に起因し得るかどうかを判断することができる。化合物は、FL5.12-Bcl-xL細胞におけるBim:Bcl-xL相互作用の用量依存的な減少を誘導する。FL5.12-Bcl-2細胞におけるBim:Bcl-2複合体の破壊についても同様の結果が観察され、Bimなどのアポトーシス促進因子を隔離するBcl-xLおよびBcl-2の能力を弱めることによって、化合物がIL-3依存性細胞死を回復させることを示す。
【0163】
本開示に列挙した化合物が、がん細胞を特異的に死滅させる能力の試験は、他の樹立細胞株を用いた同様のアッセイで試験することができる。これらは、HeLa細胞、OVCAR-3、LNCaP、およびMillipore Sigma, Burlington MA, U.S.A.から入手可能な任意のAuthenticated Cancer Cell Linesを含む。化合物は、同じ組織タイプの非がん細胞よりも、少なくとも5分の1、好ましくは25分の1または100分の1の濃度で細胞に致死的であれば、がん細胞を特異的に死滅させる。対照細胞は、試験するがん細胞株と同様の形態学的特徴および細胞表面マーカーを有するが、がんの兆候を有さない。
【0164】
インビボでは、化合物は、ユーザーにとって特に関心のあるがんの種類に応じて、感受性SCLC(H889)および血液(RS4;11)細胞株からまたは他の腫瘍形成がん細胞株を用いて樹立された側腹部異種移植モデルにおいて評価される。経口または静脈内投与されると、化合物は、H889(SCLC)またはRS4;11(ALL)腫瘍を有するすべての動物において、治療終了後数週間持続する迅速かつ完全な腫瘍反応(CR)を誘導する。H146 SCLC腫瘍を有するマウスの同様の処理は動物に急速な退縮を誘導することができる。
【0165】
実施例9:ホスホノアミダート化合物の合成
図1A、1B、および1Cは、ホスホノアミダートを調製するために用いることができる一般的な合成スキームを示す。
【0166】
図2A、2B、および2Cは3-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-2-(4-(((R)-4-(ジメチルアミノ)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)-1,3,2-オキサアザホスホリジン2-オキシドを合成するために用いた方法を示す。工程は次のとおりである。
【0167】
(R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-アミン二塩酸塩の合成
ジオキサン(4M、5mL)中の塩酸の溶液に(R)-(4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)カルバミン酸tert-ブチル(615mg)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、得られた粗残渣(2R)-4-(モルホリン-4-イル)-1-(フェニルスルファニル)ブタン-2-アミン二塩酸塩を精製せずに用いた。
LCMS (ESI) M+H = 267.2(遊離塩基)
【0168】
1-フルオロ-4-ヨード-2-ニトロベンゼンの合成
0℃で冷却した濃硫酸(180mL)にN-ヨードスクシンイミド(15.9g、70.8mmol)を少しずつ加えた。均一になるまで混合物を15分間撹拌した。シリンジを介して1-フルオロ-2-ニトロベンゼン(5g、35.4mmol)を3分間かけて滴下し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。砕いた氷(800mL)に混合物を注ぎ、色が薄黄色まで薄くなるまで10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(200mL)で処理した。水相をDCM(3×200mL)で抽出し、合わせた有機抽出物をブライン(100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(0~10%酢酸エチル、ヘキサン)によって精製して、1-フルオロ-4-ヨード-2-ニトロベンゼンを薄黄色の油状物として得た(8.85g、収率94%)。
【0169】
4-ヨード-N-[(2R)-4-(モルホリン-4-イル)-1-(フェニルスルファニル)ブタン-2-イル]-2-ニトロアニリンの合成
DMF(15mL)中の(2R)-4-(モルホリン-4-イル)-1-(フェニルスルファニル)ブタン-2-アミン二塩酸塩(517mg、1.5mmol)の溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.3mL、7.5mmol)を加えた。次いでDMF(5mL)中の1-フルオロ-4-ヨード-2-ニトロベンゼン(502mg、1.88mmol)の溶液を加え、混合物を80℃まで3時間加熱した。混合物を水(150mL)で希釈し、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた抽出物をブライン(20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(Reveleris、20gシリカカートリッジ、20~60%酢酸エチル、ヘキサン)で精製して、4-ヨード-N-[(2R)-4-(モルホリン-4-イル)-1-(フェニルスルファニル)ブタン-2-イル]-2-ニトロアニリンを赤色の油状物として得た(580mg、収率66%)。
LCMS (ESI) M+H = 514.0, M-H = 512.0
【0170】
(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスフィン酸エチルの合成
ドライアセトニトリル(5mL)中の次亜リン酸アニリニウム(270mg、1.70mmol)の溶液に窒素雰囲気下でトリエトキシ(オクチル)シラン(470mg、1.7mmol)を加えた。混合物を2時間加熱還流させた。室温まで冷却した後、次いで4-ヨード-N-[(2R)-4-(モルホリン-4-イル)-1-(フェニルスルファニル)ブタン-2-イル]-2-ニトロアニリン(290mg、0.56mmol)、Pd2(dba)3(55mg、0.06mmol)、キサントホス(69mg、0.12mmol)およびトリエチルアミン(78mL、0.56mmol)を加え、混合物を1時間加熱還流させた。混合物をアセトニトリル(20mL)で希釈し、ヘキサン(2×20mL)で洗浄した。アセトニトリル相をブライン(50mL)および水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(フラッシュマスターII、24gシリカカートリッジ、0~5%メタノール、DCM)によって精製して、(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスフィン酸エチルをオレンジ色の樹脂(189mg、収率70%)として得、これを精製せずに用いた。
LCMS (ESI) M+H = 480.1, M-H = 478.2
【0171】
エチル-2-(3-ブロモ-5-フルオロベンジリデン)-3-オキソブタノエート(EとZとの混合物)の合成
トルエン(80mL)および氷酢酸(4mL)中の3-ブロモ-5-フルオロベンズアルデヒド(40.8g、201mmol)の溶液にアセト酢酸エチル(28.5mL、225mmol)およびピペリジン(1.2mL)を加えた。混合物を2.5時間加熱還流させ、遊離した水をディーン・スターク装置で集めた。混合物をトルエン(100mL)、EtOAc(200mL)およびヘキサン(100mL)の混合物で希釈した。得られた溶液を1M HCl水溶液(100mL)、水(100mL)、飽和NaHCO3水溶液(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣を熱ヘキサン(100mL)で処理し、室温まで冷却し、さらに氷/アセトン浴で冷却した。固形物をろ過により集め、氷冷ヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させて、エチル-2-(3-ブロモ-5-フルオロベンジリデン)-3-オキソブタノエートを黄色の固形物(38.18g、収率60.3%)として得た。ろ液を80mLまで濃縮し、分離した物質をろ過により集め、シリカフラッシュクロマトグラフィー(Reveleris、40gカートリッジ、ヘキサン中0~100%DCM)により精製して、追加の所望の生成物を黄色の固形物(8.8g、収率13.9%)として得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 315.0/317.0 [M+Na]+ = 337.0/339.0
【0172】
2-アセチル-3-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-4-(4-クロロフェニル)-4-オキソブタン酸エチルの合成
エタノール(240mL)中のエチル-2-(3-ブロモ-5-フルオロベンジリデン)-3-オキソブタノエート(46.8g、148.5mmol)および4-クロロベンズアルデヒド(21.4g、152.2mmol)の溶液にトリエチルアミン(31mL、222mmol)を加えた。混合物に5分間窒素ガスを吹き込み、次いで3-ベンジル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムクロリド(6.0g、22mmol)を加えた。混合物を70℃まで2時間窒素雰囲気下で加熱した。溶媒を真空下で除去し、残渣の粗生成物をEtOAc(700mL)に溶解し、1M HCl水溶液(130mL)、水(2×150mL)およびブライン(2×20mL)で洗浄した。有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して、2-アセチル-3-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-4-(4-クロロフェニル)-4-オキソブタン酸エチルをオレンジ色のガム状物(73.1g)として得、これを精製せずに用いた。
LCMS (ESI) [M+Na]+ = 477.0/479.0
【0173】
4-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-5-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-2-メチル-ピロール-3-カルボン酸エチル
窒素ガスを混合物に吹き込みながら氷酢酸(140mL)中の2-アセチル-3-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-4-(4-クロロフェニル)-4-オキソブタン酸エチル(73.1g)の溶液にイソプロピルアミン(85mL)を15分間かけて滴下した。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで窒素雰囲気下130℃で2時間加熱した。混合物をEtOAc(600mL)で希釈し、水(500mL)およびブライン(50mL)で処理した。pHが約1に達するまで1M HCl水溶液を加えた。有機層を分離し、水(4×500mL)、飽和NaHCO3水溶液(100mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣を熱メタノール(250mL)で処理し、得られた溶液を室温まで冷却し、次いでアイス-アセトン浴でさらに冷却した。析出した固形物をろ過により集め、冷メタノールで洗浄し、真空下で乾燥させて、4-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-5-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-2-メチル-ピロール-3-カルボン酸エチルを薄黄色の固形物として得た(44.4g、2工程で収率62%)。
LCMS(ESI)単一の主ピーク、イオン化不良。
【0174】
3-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-2-(4-クロロフェニル)-5-メチル-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピロールの合成
トリフルオロ酢酸(190mL)に4-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-5-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-2-メチル-ピロール-3-カルボン酸エチル(44.3g、92.5mmol)を加えた。混合物を2時間加熱還流させた。混合物を氷水(800mL)に注ぎ、EtOAc(800mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をpH>9に達するまで水(4×500mL)および飽和Na2CO3水溶液で洗浄した。次いで有機層をブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して3-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-2-(4-クロロフェニル)-5-メチル-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピロールを薄黄色の固形物として得(36.1g、収率96%)、これを精製せずに用いた。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 406.1/408.1
【0175】
1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジンの合成
無水DMSO(200mL)中の3-(3-ブロモ-5-フルオロフェニル)-2-(4-クロロフェニル)-5-メチル-1-(プロパン-2-イル)-1H-ピロール(24.0g、59.0mmol)の溶液に窒素雰囲気下で4-ニトロフェニルピペラジン(33.0g、159mmol)およびDMPAO(11.6g、60.0mmol)を加えた。混合物を温め、超音波処理して可溶化を促進し、窒素ガスを溶液に数分間吹き込んだ。次いで炭酸カリウム(32.44g、234.7mmol)およびヨウ化銅(I)(2.88g、15.1mmol)を加え、窒素の吹き込みをさらに5分間続けた。混合物を窒素下で6時間120℃まで加熱した。混合物をDCM(800mL)、水(1.5L)および飽和NH4Cl水溶液(400mL)で処理した。有機層を分離し、水層をDCM(2×200mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(5×500mL)、飽和NaHCO3水溶液(200mL)、水(200mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣をDCM(最小量)に溶解し、MeOH(過剰)で処理した。体積がほぼ半分に減少するまで混合物を70℃まで加熱した。懸濁液を0℃で冷却し、固形物をろ過により集め、冷MeOHで洗浄し、真空下で乾燥させて1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジンを黄色の固形物(19.2g、収率61%)として得た。追加の固形物がろ液中に析出するのが観察され、ろ過によって集め、冷MeOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、追加の所望の生成物を黄色の固形物(1.28g、収率4%)として得た。
LCMS(ESI)単一の主ピーク、イオン化不良。
【0176】
1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-4-ヨード-1-イソプロピル-5-メチル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジンの合成
DMF(250mL)中の1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン(20.4g、38.3mmol)の溶液にDMF(50mL)中のN-ヨードスクシンイミド(10.45g、46.4mmoL)の溶液を0℃で加えた。混合物を室温で2.5時間撹拌した。混合物を氷/水(1.3L)で希釈した。析出した固形物をろ過により集め、水で洗浄し、次いでDCMに溶解した。得られた溶液をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣をMeOHでトリチュレーションし、固形物をろ過により集め、真空下で乾燥させて1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-4-ヨード-1-イソプロピル-5-メチル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジンを黄色の固形物(23.0g、収率91%)として得、これを精製せずに用いた。
LCMS(ESI)単一の主ピーク、イオン化不良。
【0177】
1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-メチルスルホニル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジンの合成
無水DMSO(120mL)中の1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-4-ヨード-1-イソプロピル-5-メチル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン(13.35g、18.23mmol)の溶液に窒素雰囲気下でプロリンナトリウム塩(3.05g、22.3mmol)およびメタンスルフィン酸ナトリウム塩(20.2g、198mmol)を加えた。次いでヨウ化銅(I)(3.52g、18.5mmol)を加え、混合物を105℃まで19時間加熱した。混合物をEtOAc(1.5L)、水(500mL)および飽和NH4Cl水溶液(300mL)で希釈した。有機層を分離し、水層をEtOAc(500mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(2×500mL)、飽和NaHCO3水溶液(200mL)、水(200mL)およびブライン(200mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中0~60%EtOAc)で精製した。所望の生成物含有画分を合わせ濃縮し、EtOAc/ヘキサンからの再結晶化によってさらに精製して1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-メチルスルホニル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジンをオレンジ色の固形物(9.18g、41%)として得た。シリカクロマトグラフィーおよびEtOAc/ヘキサンからの再結晶化のプロセスを繰り返すことを経て追加の所望の生成物(2.7g、12%)を得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 611.2
【0178】
4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)アニリンの合成
エタノール(50mL)中の1-[3-[2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-メチルスルホニル-ピロール-3-イル]-5-フルオロ-フェニル]-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン(2.34g、3.82mmol)の溶液に窒素雰囲気下で濃塩酸(4mL)および二塩化スズ(II)二水和物(4.32g、19.1mmol)を加えた。混合物を5時間加熱還流させた。混合物を1/3の容量まで濃縮し、酢酸エチル(200mL)と飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)とに分割した。層を分離し水層を酢酸エチル(2×100mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物を水(3×80mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮して4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)アニリンを黄褐色の泡状固形物(2.30g、>100%)として得、これを精製せずに用いた。
LCMS (ESI) M+H = 581.2
【0179】
エチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダートの合成
ドライTHF(2mL)中の4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)アニリン(158mg、0.271mmol)の溶液に窒素雰囲気下0℃で(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスフィン酸エチル(130mg、0.27mmol)、四臭化炭素(270mg、0.81mmol)およびトリエチルアミン(113μL、0.813mmol)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。粗残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:DCM(8:2)中の0%MeOHを酢酸エチル:DCM(8:2)中の5%MeOHまで増加)により精製しエチルN-(4-(4-(3-(2-(4-クロロフェニル)-1-イソプロピル-5-メチル-4-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-イル)-5-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-P-(4-(((R)-4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニル)ホスホノアミダートをジアステレオ異性体の混合物(21mg、収率7%)として得た。
LCMS (ESI) M+2H/2 = 529.8.
【0180】
実施例10:ホスホノアミダート化合物の生化学的活性および細胞活性
選択した化合物を実施例1に記載の方法に従って、インビトロアッセイにおいてBcl-2へのリガンド結合の阻害について評価した。化合物を実施例3に記載の方法に従って、HRMEC細胞株における老化細胞死滅活性についても評価した。
【0181】
図3A、3B、および3Cは、ホスホノアミダート化合物の機能パラメータを示す。
【0182】
図4は、本開示に記載のBcl阻害剤が、Bclファミリータンパク質の結晶構造に適合した3次元モデルを示す図面である。図面における注釈は、Bcl阻害活性および老化細胞死滅活性を保持するであろう、上に示した式に包含されるさらなる化合物を開発するための読者への指針として用いることができる。Bclまたはその結合パートナーと密接に相互作用する領域は、バリエーションに対する耐性がより低い。溶媒と相互作用する領域は、Bcl阻害の点ではバリエーションに対してより耐性があり、溶解性および検出などの分子の他の特性を調整するために修飾することができる。
【0183】
本開示において提示されたいくつかの仮説は読者が本発明の様々な局面を理解するための前提を提供している。この前提は読者の知識を深めるために提供されている。発明の実施は仮説の詳細な理解または応用を必要としない。特に記載しない限り、本開示で提示される仮説の特徴は権利請求した発明の適用または実施を限定しない。
【0184】
例えば、老化細胞の排除が明示的に必要とされる場合を除いて、化合物は、老化細胞に対するそれらの効果に関わらず記載の状態を治療するために用い得る。本開示で言及される老化関連状態の多くは主に高齢の患者で発生するが、老化細胞の発生およびそれらが媒介する病態生理は、放射線、他の種類の組織損傷、他の種類の疾患、遺伝的異常などの他の事象から生じることがある。本発明は、特に明示的に示されるかまたは必要とされない限り、示された状態を有するあらゆる年齢の患者に対して実施し得る。
【0185】
開示の化合物の作用機序についての考察も読者の知識を深めるために提供されており、いかなる限定も暗示していない。特に記載しない限り、化合物は、それらが標的細胞内部または治療対象においてどのように作用するかに関係なく、以下に権利請求するように老化もしくはがん細胞を除去するためまたは病状の治療のために用い得る。
【0186】
本開示において言及される化合物および組成物は老化細胞を排除し、老化関連状態およびがんを治療するという文脈で説明されているが、本明細書において記載の新規な化合物およびそれらの誘導体は、実験室での使用、老化関連状態の治療、毒物取扱を非限定的に含む任意の目的のため、および診断目的のために調製することができる。
【0187】
特定の実施例および図面を参照して本発明を記載したが、通常の開発および最適化の事柄としておよび当業者の範囲内で、特定の状況または意図する使用に適合させるために変更を加えることができかつ均等物で置き換えることができ、これにより、権利請求したものおよびそれらの均等物の範囲から逸脱することなく発明の利益が達成される。
【0188】
明細書に記載の発明の他の技術的局面を特許請求の範囲に組み込んでさらなる顕著な特徴を提供することができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9