(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】硫黄-炭素複合体、この製造方法、これを含むリチウム-硫黄電池用正極及びリチウム-硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20220527BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220527BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220527BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20220527BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220527BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220527BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20220527BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20220527BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 B
H01M4/36 C
H01M4/136
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/0569
C01B32/168
(21)【出願番号】P 2020560319
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 KR2019006705
(87)【国際公開番号】W WO2020009333
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0076514
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-071566(JP,A)
【文献】特表2016-528692(JP,A)
【文献】特表2019-509613(JP,A)
【文献】特開2016-119165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13- 4/1399
H01M 4/36- 4/62
H01M 10/05-10/0587
C01B 32/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性炭素材;電解液含浸性を有する化合物;及び硫黄を含む硫黄-炭素複合体であって、
前記多孔性炭素材の表面は、電解液含浸性を有する化合物を含むコーティング層を含
み、
前記多孔性炭素材は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であり、
前記電解液含浸性を有する化合物は、エーテル系化合物またはカーボネート系化合物を溶媒で含む電解液に対して、200%以上、600%以下の電解液含浸性を有する高分子である、硫黄-炭素複合体。
【請求項2】
前記硫黄-炭素複合体は、前記コーティング層が形成された多孔性炭素材と硫黄が混合された状態であることを特徴とする請求項1に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項3】
前記高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキル、フルオロエチレンプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項
1又は2に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項4】
前記高分子は、ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項5】
前記化合物の電解液含浸性は
260%以上、600%以下であることを特徴とする請求項1から
4の何れか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項6】
前記電解液含浸性を有する化合物は、硫黄-炭素複合体の総重量に対して0.5ないし5重量%で含まれることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項7】
(a)電解液含浸性を有する化合物で多孔性炭素材をコーティングする段階;及び
(b)前記(a)段階で製造された電解液含浸性を有する化合物でコーティングされた多孔性炭素材と硫黄を混合及び成形する段階;を含
み、
前記多孔性炭素材は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であり、
前記電解液含浸性を有する化合物は、エーテル系化合物またはカーボネート系化合物を溶媒で含む電解液に対して、200%以上、600%以下の電解液含浸性を有する高分子である、硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項8】
正極集電体;及び
前記正極集電体上に正極活物質層;を含むリチウム-硫黄電池用正極であって、
前記正極活物質層は、請求項1から
6のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体、導電材及びバインダーを含むリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項9】
前記正極の気孔度は68%以下であることを特徴とする請求項
8に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項10】
前記正極集電体に対する正極活物質層の接着力は2gf/cm以上であることを特徴とする請求項
8または
9に記載のリチウム-硫黄電池用正極。
【請求項11】
正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム-硫黄電池であって、
前記正極は、請求項
8から
10のいずれか一項に記載の正極であることを特徴とするリチウム-硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年7月2日付韓国特許出願第10-2018-0076514号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、硫黄-炭素複合体、これを含むリチウム-硫黄電池用正極及びリチウム-硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子機器、通信機器の小型化、軽量化及び高性能化が急速に進行されていて、環境問題と係わって電気自動車の必要性が大きく台頭されることにより、これらの製品のエネルギー源で使用する二次電池の性能及び寿命改善に対する要求が高まっている。このような要求を充たせる二次電池として正極活物質で硫黄系化合物を使用するリチウム-硫黄電池が注目されている。
【0004】
リチウム-硫黄電池は、硫黄-硫黄結合を含む硫黄系化合物を正極活物質で使用し、リチウム金属またはリチウムイオンの挿入/脱挿入が生じる炭素系物質またはリチウムと合金を形成するシリコンやスズなどを負極活物質で使用する二次電池である。
【0005】
リチウム-硫黄電池は、放電時に正極(positive electrode)では硫黄が電子を受け入れて還元反応が行われ、負極(negative electrode)ではリチウムがイオン化されながら酸化反応が発生する。具体的に、放電前の硫黄は環状のS8で還元反応(放電)する時、硫黄-硫黄結合が切れて硫黄の酸化数が減少し、酸化反応(充電)する時、硫黄-硫黄結合が再び形成されて硫黄の酸化数が増加する酸化-還元反応を利用して電気エネルギーを保存し、生成する。
【0006】
特に、リチウム-硫黄電池の理論放電容量は1,675mAh/gで、理論エネルギー密度が2,600Wh/kgであって、現在研究されているリチウムイオン電池(約570Wh/kg)に比べて約5倍ほど高い理論エネルギー密度を有するので、高容量、高エネルギー密度及び長い寿命を具現できる電池である。また、正極活物質の主材料である硫黄は、原子当たり低い重量を有し、資源が豊かで、需給が容易であり、安価で、毒性がなく、環境にやさしい物質という利点があるため、リチウム-硫黄電池は携帯用電子機器のみならず、電気自動車のような中大型装置のエネルギー源で使用できるという利点で多く研究されている。
【0007】
リチウム-硫黄電池で正極活物質として使われる硫黄は、電気伝導度が5×10-30S/cmで電気伝導性がない不導体であるため、電気化学反応で生成された電子が移動し難い問題がある。ここで、電気化学的反応サイトを提供することができる炭素のような導電材とともに硫黄-炭素複合体に複合化して使用されている。
【0008】
一方、リチウム-硫黄電池を実際駆動する時、サイクルが進められるにつれ、初期容量及びサイクル寿命が急減して性能が充分に確保されないため、商用化されていない実情である。これは正極活物質である硫黄が還元反応によって体積が膨張したり、還元反応時に中間生成物であるリチウムポリスルフィドが電解液に溶出されて硫黄が損失されるので、それ以上電池の充・放電反応に参加できないためである。ここで、硫黄-炭素複合体の安定性及び電気化学的反応性を改善するための様々な技術が提案された。
【0009】
しかし、前記硫黄-炭素複合体を正極活物質で含むリチウム-硫黄電池の正極の気孔度を低く維持するためには、正極を圧延し、圧延する時に正極活物質と集電体との間の接着力が低くなる問題が発生し、リチウムポリスルフィドの溶解及び電解液の濡れ性(wetting)問題が発生して初期及び高率充・放電時に反応性がかなり低くなって電池の性能が低下する問題が発生し、前記問題点を依然として解決できていない状況である。
【0010】
よって、低気孔度の電極でも集電体に対する正極活物質の接着力に優れ、電解液含浸性が高くて電解液の移動経路を形成することができる硫黄-炭素複合体の開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0015644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、低気孔度の正極を含むリチウム-硫黄電池の寿命特性を向上させることができる硫黄-炭素複合体を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、低気孔度の正極を製造する時、集電体に対する正極活物質の接着力に優れる前記硫黄-炭素複合体を含むリチウム-硫黄電池用正極を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記リチウム-硫黄電池用正極を含むリチウム-硫黄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、
本発明は、多孔性炭素材;電解液含浸性を有する化合物;及び硫黄を含む硫黄-炭素複合体であって、
前記多孔性炭素材の表面は、電解液含浸性を有する化合物を含むコーティング層を含む硫黄-炭素複合体を提供する。
【0016】
また、本発明は、(a)電解液含浸性を有する化合物で多孔性炭素材をコーティングする段階;及び
(b)前記(a)段階で製造された電解液含浸性を有する化合物でコーティングされた多孔性炭素材と硫黄を混合及び成形する段階;を含む硫黄-炭素複合体の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、正極集電体;及び
前記正極集電体上に正極活物質層;を含むリチウム-硫黄電池用正極であって、
前記正極活物質層は、前記本発明の硫黄-炭素複合体、導電材及びバインダーを含むリチウム-硫黄電池用正極を提供する。
【0018】
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム-硫黄電池であって、
前記正極は前記本発明の正極であることを特徴とするリチウム-硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の硫黄-炭素複合体は、多孔性炭素材の表面に電解液含浸性を有する化合物を含むコーティング層を備えて電解液の移動経路を形成してリチウムイオンの移動を容易にすることで、低気孔度の正極を含むリチウム-硫黄電池の性能及び寿命特性を向上させることができ、正極集電体に対する接着力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】60%の気孔度を有する電極において、集電体に対する正極活物質層の接着力結果を示すグラフである。
【
図2】65%の気孔度を有する電極において、集電体に対する正極活物質層の接着力結果を示すグラフである。
【
図3】72%の気孔度を有する電極において、集電体に対する正極活物質層の接着力結果を示すグラフである。
【
図4】電極気孔度による集電体に対する正極活物質層の接着力結果を示すグラフである。
【
図5】本発明の実験例2によるコインセルの放電容量を示すグラフである。
【
図6】本発明の実験例2によるコインセルの寿命特性を示すグラフである。
【
図7】本発明の実験例2によるコインセルの寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0022】
本明細書で使われている用語「複合体(composite)」とは、2つ以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に異なる相(phase)を形成しながら、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0023】
本明細書で使われている用語「電解液含浸性」または「電解液の含浸力」は、電解液を入れて維持できる能力を意味し、電解液を長期間均質に含浸するという点で、該当物質または成分が一時的に接触したり取られることとは区別される。
【0024】
リチウム-硫黄電池は、幾つかの二次電池の中で、高い放電容量及び理論エネルギー密度を有し、正極活物質で使われる硫黄は埋蔵量が豊かで低価であり、環境にやさしいという長所によって次世代電池として脚光を浴びている。
【0025】
しかし、リチウム-硫黄電池で硫黄は、環状のS8で還元反応によって線状構造のリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide、Li2Sx、x=8、6、4、2)に変換され、このようなリチウムポリスルフィドが完全に還元されると最終的にリチウムスルフィド(lithium sulfide、Li2S)が生成される。このような硫黄の還元反応の中間生成物であるリチウムポリスルフィドの中で、硫黄の酸化数が高いリチウムポリスルフィド(Li2Sx、通常x>4)は、極性が強い物質であって、親水性有機溶媒を含む電解液に容易に溶けて正極の反応領域の外に溶出され、それ以上電気化学反応に参加できなくなる。また、硫黄が放電生成物であるリチウムスルフィド(Li2S)に変わって約80%の体積膨張が起きるようになるが、これによって正極内部の空隙の体積が減少し、電解液との接触が難しくなる問題がある。これに加え、電池駆動時、不動態層(固体電解質界面(Solid Electrolyte Interphase);SEI)の形成または不純物との反応によって電解液が分解されて消耗される問題が発生する。
【0026】
このような硫黄と電解液の損失及び正極の大きい体積変化とともに電気化学的反応に参加する硫黄の量が低くて、リチウム-硫黄電池は前述した長所にもかかわらず実際の駆動においては理論容量及びエネルギー密度の全てを具現できないだけでなく、一定サイクルの後は初期容量及びサイクル特性の低下が加速化する問題がある。
【0027】
硫黄の電気伝導度を改善するために、炭素、高分子など伝導性素材との複合体形成、コーティングなどの方法が利用されている。幾つかの方法のうち、硫黄-炭素複合体が正極の電気伝導性を改善するために効果的であるため、正極活物質として最も多く使われているが、充・放電容量及び効率の側面ではまだ充分ではない。
【0028】
また、圧延して製造された低気孔度の電極を含むリチウム-硫黄電池は、リチウムイオンの移動が容易ではないため、初期及び高率充・放電時に反応性が大きく低下する問題点がある。同時に、前記圧延して製造された低気孔度の電極は、集電体と正極活物質層との間の接着力が弱くて正極活物質層が電極から脱離される現象が発生して電極を製造し難い問題点がある。
【0029】
ここで、本発明では多孔性炭素材の表面に電解液含浸性を有する化合物を含むコーティング層を含んで硫黄と炭素材の間に電解液を含浸させることができる機能を与え、硫黄-炭素複合体内に電解液の移動経路を形成してリチウムイオンの移動を容易にすることによって、低気孔度の正極を含むリチウム-硫黄電池の寿命特性を向上させることができ、低気孔度の正極でも集電体に対する接着力に優れる硫黄-炭素複合体を提供しようとした。
【0030】
すなわち、本発明は、多孔性炭素材;電解液含浸性を有する化合物;及び硫黄を含む硫黄-炭素複合体であって、
前記多孔性炭素材の表面は、電解液含浸性を有する化合物を含むコーティング層を含む硫黄-炭素複合体に関する。
【0031】
本発明の多孔性炭素材は、表面に電解液含浸性を有する化合物を含むコーティング層を含む。前記電解液含浸性を有する化合物を通じて含浸された電解液が硫黄-炭素複合体の内部、すなわち、硫黄と炭素材の間に安定的に界面を維持することで活物質内部への電解液接近性を向上させ、電解液の助けによる硫黄の電気化学的反応性を高めることができる。特に、低気孔度を有する正極を含むリチウム-硫黄電池でも前記電解液含浸性を有する高分子によって硫黄-炭素複合体内に電解液の移動経路を形成してリチウムイオンの移動を容易にすることでリチウム-硫黄電池の反応性維持及び寿命特性を向上させることができる。また、前記コーティング層によって低気孔度の正極でも集電体に対する正極活物質の接着力を向上させることができて、低気孔度の電極を製造するための圧延過程で正極活物質の脱離のような問題点を解決することができるので、低気孔度正極の製造を容易にすることができる。
【0032】
本発明において、低気孔度は気孔度が68%以下であることを意味する。
【0033】
前記硫黄-炭素複合体は、前記コーティング層が形成された多孔性炭素材と硫黄が混合された状態であることを意味する。
【0034】
本発明において、前記電解液含浸性を有する化合物は、電解液または正極スラリーの製造時に使われる溶媒と互いに混用されないもので、前記化合物は高分子、オリゴマー及び単分子の形態からなる群から選択される1種以上の形態を有することができる。
【0035】
前記電解液含浸性を有する化合物が高分子の形態である場合、前記高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキル、フルオロエチレンプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0036】
また、前記電解液はリチウム塩及び溶媒を含み、本発明で前記高分子が含浸能力を持つ電解液の溶媒は、エーテル系化合物及びカーボネート系化合物からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0037】
前記エーテル系化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランからなる群からで選択される1種以上が使われることができるが、これに限定されることではない。
【0038】
前記カーボネート系化合物は、環状カーボネート化合物または線状カーボネート化合物であってもよい。
【0039】
前記環状カーボネート化合物は、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート及びこれらのハロゲン化物からなる群から選択される1種以上が使われることができ、これらのハロゲン化物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)などがあり、これに限定されることではない。
【0040】
また、前記線状カーボネート化合物は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される1種以上が使われることができるが、これに限定されない。
【0041】
前記リチウム塩は、リチウム-硫黄電池用電解液に通常使われるものであれば制限されずに使われることができる。例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiPF6、LiBF4、LiB10Cl10、LiSO3CF3、LiCl、LiClO4、LiSO3CH3、LiB(Ph)4、LiC(SO2CF3)3、LiN(SO2CF3)2、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiFSI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウムなどからなる群から1種以上が含まれることができる。
【0042】
また、前記電解液でリチウム塩の濃度は0.2ないし2M、具体的に0.6ないし2M、より具体的に0.7ないし1.7Mであってもよい。前記リチウム塩の濃度が0.2M未満で使用すれば電解液の伝導度が低くなって電解液の性能が低下することがあるし、2Mを超過して使用すれば電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少することがある。
【0043】
前記エーテル系化合物またはカーボネート系化合物を溶媒で含む電解液に対する前記電解液含浸性を有する高分子の電解液含浸能力は200%以上、好ましくは260ないし600%であってもよい。この時、電解液の含浸能力は、前記電解液含浸性を有する化合物を膜で製造した後、前記電解液に浸漬前後の重量差を計算して測定することができる。具体的に、前記電解液含浸性を有する化合物を適当な溶媒、好ましくはエタノール及びアセトンの混合溶媒に溶かしてキャスティングした後、乾燥して化合物膜を製造する。製造された化合物膜を25℃で48時間浸漬させてコーティングされた化合物に電解液が飽和含浸されるようにし、この時の重量を浸漬後の重量にした。
【0044】
前記電解液含浸性を有する化合物は、硫黄-炭素複合体の総重量に対して0.5ないし5重量%で含まれることができ、好ましくは1ないし3重量%で含まれることができる。前記化合物が0.5重量%未満で含まれると多孔性炭素材上にコーティング層の形成が不十分であるため、低気孔度の正極を含むリチウム-硫黄電池の寿命特性を向上させることができないし、低気孔度の正極で集電体に対する正極活物質の接着力が増大されず、5重量%を超過して含まれると正極活物質としての機能及び電池性能に悪影響を及ぼすことがある。
【0045】
前記多孔性炭素材は、正極活物質である硫黄が均一で安定的に固定されることができる骨格を提供し、硫黄の電気伝導度を補完して電気化学反応が円滑に行われるようにする。
【0046】
前記多孔性炭素材は、一般的に様々な炭素材質の前駆体を炭化させて製造される。前記多孔性炭素材は内部に一定しない気孔を含み、前記気孔の平均直径は1ないし200nm範囲であり、気孔度または孔隙率は多孔性全体積の10ないし90%範囲であってもよい。もし、前記気孔の平均直径が前記範囲未満の場合、気孔の大きさが分子水準に過ぎないため硫黄の含浸が不可能であり、これと逆に前記範囲を超過する場合、多孔性炭素の機械的強度が弱体化されて電極の製造工程に適用するに好ましくない。
【0047】
前記多孔性炭素材の形態は、球形、棒型、針状、板状、チューブ型またはバルク型で、リチウム-硫黄電池に通常使われるものであれば、制限されずに使われることができる。
【0048】
前記多孔性炭素材は、多孔性構造であるか比表面積が高いもので、当業界で通常使われるものであれば、いずれも構わない。例えば、前記多孔性炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに制限されない。好ましくは、前記多孔性炭素材はカーボンナノチューブであってもよい。
【0049】
前記硫黄は、無機硫黄(S8)、Li2Sn(n≧1)、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(2,5-dimercapto-1,3,4-thiadiazole)、1,3,5-トリチオシアヌル酸(1,3,5-trithiocyanuic acid)などのようなジスルフィド化合物、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n、x=2.5ないし50、n≧2)からなる群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは、無機硫黄(S8)を使用することができる。
【0050】
本発明による硫黄-炭素複合体で前述したコーティング層を含む多孔性炭素材と硫黄の重量比は1:9ないし5:5、好ましくは2:8ないし3:7であってもよい。もし、硫黄が前記重量比範囲の未満である場合、多孔性炭素材の含量が増加することによって正極スラリーを製造する時に必要なバインダー添加量が増える。このようなバインダー添加量の増加は、結局電極の面抵抗を増加させ、電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役目をするようになってセルの性能を低下させることがある。逆に、前記硫黄が重量比範囲を超過する場合、硫黄どうしが一塊となり、電子を受けにくくなって、電極反応に直接参加しにくくなる。
【0051】
また、本発明において、前記硫黄-炭素複合体の総重量に対して硫黄50ないし90重量%、多孔性炭素材6ないし45重量%及び電解液含浸性を有する化合物0.5ないし5重量%で含むことができる。前記硫黄-炭素複合体内の前記含量が前記範囲内に該当する場合、前述した低気孔度の正極を含むリチウム-硫黄電池の寿命特性を向上させることができ、集電体に対する正極活物質の接着力を増大させることができる。
【0052】
本発明による硫黄-炭素複合体において、前記硫黄は前記多孔性炭素材の気孔の内部及び外部表面の少なくとも一表面に位置し、この時、前記多孔性炭素材の内部及び外部全体表面の100%未満、好ましくは1ないし95%、より好ましくは60ないし90%領域に存在してもよい。前記硫黄が多孔性炭素材の表面に前記範囲内にある時、電子伝達面積及び電解液濡れ性の面で最大効果を示すことができる。具体的に、前記範囲領域で硫黄が多孔性炭素材の表面に薄くて均一に含浸されるので、充・放電の過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、前記硫黄が多孔性炭素材の全体表面の100%領域に位置する場合、前記多孔性炭素材が完全に硫黄で覆われて電解液の濡れ性が落ちるし、電極内に含まれる導電材との接触性が落ちて電子が伝達されず、反応に参加できなくなる。
【0053】
また、本発明は、前記硫黄-炭素複合体の製造方法に関する。
【0054】
本発明による硫黄-炭素複合体の製造方法は、
(a)電解液含浸性を有する化合物で多孔性炭素材をコーティングする段階;及び
(b)前記(a)段階で製造された電解液含浸性を有する化合物でコーティングされた多孔性炭素材と硫黄を混合及び成形する段階;を含むことができる。
【0055】
前記(a)段階は、多孔性炭素材の表面に電解液含浸性を有する化合物でコーティング層を形成する段階であって、前記電解液含浸性を有する化合物が溶解された溶液に多孔性導電材を投入して撹拌した後、フィルタリング、乾燥する工程を通じて行われることができるが、該当技術分野に知られた方法であれば、いずれの方法であっても構わない。
【0056】
前記電解液含浸性を有する化合物が溶解された溶液の溶媒は、前記高分子を溶解させることができるものであれば、その種類を特に限定しないが、好ましくは、エタノール及びアセトンの混合溶媒であってもよい。
【0057】
前記(b)段階は、電解液含浸性を有する化合物でコーティングされた多孔性炭素材と硫黄を混合及び加熱して成形する工程を通じて行われることができるが、該当技術分野に知られた方法であれば、いずれの方法であっても構わない。
【0058】
前記混合は前述した材料の間の混合度合いを高めるためであって、当業界で通常使われる撹拌装置を利用して行うことができる。この時、混合時間及び速度も原料の含量及び条件によって選択的に調節されることができる。
【0059】
前記加熱温度は硫黄が溶融される温度であれば構わないし、具体的に120ないし180℃、好ましくは150ないし180℃であってもよい。前記加熱温度が120℃未満の場合、硫黄が充分に溶融されなくて硫黄-炭素複合体の構造がまともに形成されないこともあり、180℃を超過する場合、コーティングされた化合物が残留しないため、目的とした効果を得にくい。これに加え、前記加熱時間は硫黄の含量によって調節されることができる。
【0060】
前記(b)段階を通じて前記多孔性炭素材の表面は電解液含浸性を有する化合物を含むコーティング層を含む硫黄-炭素複合体を製造することができる。
【0061】
前記本発明の硫黄-炭素複合体は、前記電解液含浸性を有する化合物が多孔性炭素材の表面にコーティング層を形成していて、前記コーティング層を含む多孔性炭素材と硫黄を混合して製造したものである。そのため、本発明の硫黄-炭素複合体は、硫黄-炭素複合体を製造した後、前記電解液含浸性を有する化合物をコーティングする場合よりもっと高い濃度の電解液含浸性を有する高分子をコーティングすることができて、これを含むリチウム-硫黄電池は過電圧が発生しない効果を表すことができる。また、硫黄-炭素複合体の製造後、前記電解液含浸性を有する化合物をコーティングする場合は、内部に含浸された硫黄が電解液含浸性を有する化合物が溶解された溶液によって外部に溶出されることがあるが、本発明の硫黄-炭素複合体は前記問題が発生しないため、安定性を有している。
【0062】
また、本発明は、正極集電体;及び
前記正極集電体上に正極活物質層;を含むリチウム-硫黄電池用正極であって、
前記正極活物質層は上述した本発明の硫黄-炭素複合体、導電材及びバインダーを含むリチウム-硫黄電池用正極に関する。
【0063】
前記正極は低気孔度を有するものであって、前記正極の気孔度は68%以下、好ましくは50ないし68%であってもよい。前記気孔度を有することによって、体積あたりエネルギー密度を高めることができ、電解液の最小含浸量が減少するので質量当たりエネルギー密度を高めることができる。
【0064】
上述した本発明の硫黄-炭素複合体を使うことで正極集電体に対する正極活物質層の接着力は2gf/cm以上であってもよく、好ましくは2gf/cmないし15gf/cmであってもよい。
【0065】
一般に、低気孔度の正極を製造する時、正極集電体と正極活物質層の間の接着力が不良で、電極の製造が容易ではなく、正極活性が優秀ではない。しかし、本発明では多孔性炭素材の表面は電解液含浸性を有する化合物を含むコーティング層を含む硫黄-炭素複合体を使うことで、低気孔度の正極でも正極集電体と正極活物質層の間の接着力を増大させることができ、これによってリチウム-硫黄電池の特性を向上させることができる。もし、前記電解液含浸性を有する化合物を含まない硫黄-炭素複合体を使用すると、低気孔度の正極で正極集電体に対する正極活物質層の接着力が非常に不良で、前記効果を達成することができない。
【0066】
前記正極集電体は、一般的に3ないし500μmの厚さであり、電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限しない。具体的に、ステンレススチール、アルミニウム、銅、チタンなどの導電性物質を使用することができる。また、前記集電体は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体など様々な形態が可能である。
【0067】
前記導電材としては、電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に限定しないが、スーパーP(Super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、カーボンブラックなどのカーボンブラック;カーボンナノチューブやフラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して使用することができる。
【0068】
前記導電材の含量は前記正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして0.01ないし30重量%で添加されることができる。
【0069】
前記バインダーは、正極活物質を正極集電体で維持させ、正極活物質の間を有機的に連結してくれる機能を有するものであって、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(ethylene propylene diene rubber;EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などを挙げることができる。
【0070】
前記バインダーの含量は、前記正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして0.5ないし30重量%で添加されることができる。バインダーの含量が0.5重量%未満であれば、正極の物理的性質が低下して正極内の活物質と導電材が脱落することがあるし、30重量%を超過すれば正極で活物質と導電材の割合が相対的に減少して電池容量が減少することがある。
【0071】
前記正極活物質層は正極活物質がスラリー形態で製造されて形成されたものであり、スラリーを製造するための溶媒に前記バインダーを溶解させた後、導電材を分散させる。スラリーを製造するための溶媒は、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発されるものを使用することが好ましく、代表的にアセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどを使うことができる。次に、正極活物質である前記硫黄-炭素複合体を、または選択的に添加剤と一緒に前記導電材が分散された溶媒に再び均一に分散させて正極スラリーを製造する。スラリーに含まれる溶媒、硫黄-炭素複合体、または選択的に添加剤の量は本出願において特に重要な意味を持たず、単にスラリーをコーティングしやすいように適切な粘度を持てば充分である。
【0072】
以後、前記正極集電体に前記スラリーを塗布した後、圧延してリチウム-硫黄電池用正極を製造することができ、前記スラリーはスラリーの粘度及び形成しようとする正極の厚さに応じて適切な厚さで集電体にコーティングすることができる。
【0073】
前記スラリーを塗布した後、圧延する前にスラリーを乾燥する段階をさらに含むことができ、前記乾燥は約80℃の温度で行われることができる。
【0074】
前記乾燥後、圧延して正極を製造し、前記圧延は当業界で公知された方法で行われることができ、例えばロールプレッシング方法を通じて行われることができる。
【0075】
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム-硫黄電池に係り、前記正極は上述した本発明の正極であってもよい。
【0076】
前記負極は、集電体とその一面または両面に形成された負極活物質層で構成されることができる。または、前記負極はリチウム板金であってもよい。
【0077】
前記集電体は負極活物質を支持するためのものであって、優れる導電性を有してリチウム二次電池の電圧領域で電気化学的に安定したものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチール表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使われることができる。
【0078】
前記負極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を使用することができる。
【0079】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション(Intercalation)またはデインターカレーション(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使うことができる。
【0080】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーションまたはデインターカレーションすることができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。
【0081】
前記リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタン、またはシリコンであってもよい。
【0082】
前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0083】
前述した正極と負極の間には、さらに分離膜が含まれることができる。前記分離膜は前記正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極の間にリチウムイオンの輸送ができるようにすることで多孔性非伝導性または絶縁性物質からなることができる。このような分離膜は、フィルムのような独立的な部材であってもよく、正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0084】
前記分離膜を成す物質は、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ガラス繊維ろ過紙及びセラミック物質が含まれるが、これに限定されず、その厚さは約5ないし約50μm、好ましくは約5ないし約25μmであってもよい。
【0085】
前記電解液は正極と負極の間に位置し、本発明のリチウム-硫黄電池は上述した電解液を使用する。
【0086】
本発明によるリチウム-硫黄電池は、一般的な工程である捲取(winding)以外も分離膜と電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0087】
前記リチウム-硫黄電池の形状は特に制限されないし、円筒状、積層型、コイン型など様々な形状にすることができる。
【0088】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0089】
<リチウム-硫黄電池用正極製造>
実施例1。
電解液含浸性を有する高分子であるポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(シグマアルドリッチ)をアセトン及びエタノールの混合溶媒に硫黄-炭素複合体の総重量に対して1.25%で溶解させた溶液にカーボンナノチューブ0.5gを投入した後、25℃で撹拌して12時間乾燥して多孔性炭素材の表面にポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコーティング層を形成した。この時、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン:多孔性炭素材の重量比は1:20であった。この時、多孔性炭素材はカーボンナノチューブの全体重量を意味する。
【0090】
前記で製造されたポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンがコーティングされた多孔性炭素材0.5g、硫黄2gを均一に混合した後、155℃で30分間熱処理して硫黄:多孔性炭素材:高分子=75:23.75:1.25の重量比で含まれた硫黄-炭素複合体を製造した。
【0091】
このように製造された硫黄-炭素複合体を利用して硫黄-炭素複合体:導電材:バインダー=90:5:5の重量比で正極活物質層形成用スラリーを製造した後、20μm厚さのアルミニウムホイルの集電体にコーティングした後、80℃の温度で乾燥してリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0092】
この時、導電材はカーボンブラックを、バインダーではスチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースを使用した。
【0093】
実施例2。
電解液含浸性を有する高分子でポリフッ化ビニリデン(シグマアルドリッチ)を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0094】
比較例1。
コーティング層を形成していないカーボンナノチューブを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0095】
比較例2。
カーボンナノチューブ1g及び硫黄3gを均一に混合した後、155℃で30分間熱処理して硫黄-炭素複合体を製造した。
【0096】
以後、電解液含浸性を有する高分子のポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(シグマアルドリッチ)をアセトン及びエタノールの混合溶媒に前記硫黄-炭素複合体に対して1.25%で溶解させた溶液にカーボンナノチューブ0.5gを投入した後、25℃で撹拌して12時間乾燥して硫黄-炭素複合体の表面に高分子コーティング層を形成した。
【0097】
このように製造された硫黄-炭素複合体を利用して硫黄-炭素複合体:導電材:バインダー=90:5:5の重量比で正極活物質層形成用スラリーを製造した後、20μm厚さのアルミニウムホイルの集電体にコーティングした後、80℃の温度で乾燥してリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0098】
この時、導電材はカーボンブラックを、バインダーではスチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースを使用した。
【0099】
実験例1。リチウム-硫黄電池用正極の接着力測定
前記実施例1ないし2及び比較例1で製造したリチウム-硫黄電池用正極をそれぞれロールプレッシングギャップ(gap)を異にして圧延し、60%、65%及び72%の気孔度を有するリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0100】
前記60%、65%及び72%の気孔度を有する実施例1、実施例2及び比較例1のリチウム-硫黄電池用正極の接着力を測定し、前記接着力の測定は剥離試験(Peel test)設備を使用して電極を90度方向に引っ張って正極活物質層が落ちる時の力を計算して電極接着力を測定した。
【0101】
前記接着力は、正極集電体に対する正極活物質層の接着力を意味する。
【0102】
【0103】
【0104】
その結果、気孔度が68%以下の低気孔度である60%及び65%で、本発明の硫黄-炭素複合体を含む実施例1及び2の正極集電体に対する正極活物質層の接着力は比較例1より優秀な結果を示し、気孔度65%では比較例1より約2倍ぐらい優秀な結果を示した。
【0105】
一方、気孔度が68%以上である72%では比較例1と実施例1が類似な値を示し、実施例2は比較例1より優秀ではない結果を示した。
【0106】
前記結果から、本発明の硫黄-炭素複合体は、低気孔度の正極で正極集電体と正極活物質層の間の接着力を増大させることができることを確認することができた。
【0107】
実験例2。リチウム-硫黄電池の充・放電特性評価
前記気孔度が68%である実施例1、2及び比較例1、2の正極を使用し、分離膜でポリエチレンを使用し、負極で150μm厚さのリチウムホイルを使用してリチウム-硫黄電池コインセルを製造した。この時、前記コインセルは、ジエチレングリコールジメチルエーテル有機溶媒に1M LiFSI、1%LiNO3を溶解させて製造された電解液を使用してコインセルを製造した。
【0108】
製造されたコインセルを充放電測定装置(LAND CT-2001A、武漢(Wuhan)、中国)を利用して1.8から2.5Vまでの容量を測定した。具体的に、0.1C/0.1Cで初期充電/放電をし、以後0.3C/0.5Cで充電/放電するサイクルを120回繰り返して放電容量を測定した。
【0109】
その結果、比較例1より実施例1のコインセルの容量が優秀であった(
図5)。
【0110】
また、本発明の硫黄-炭素複合体を含む実施例1及び2のコインセルは、サイクルが進められても一定の放電容量を維持したが、比較例1及び2のコインセルは、サイクルが進められることによって放電容量が徐々に減少することを確認することができた(
図6及び7)。
【0111】
よって、本発明の硫黄-炭素複合体を含むリチウム-硫黄電池は性能が優秀であり、特に寿命特性に優れることを確認することができた。