IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モルフォシス・アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図1
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図2
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図3
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図4
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図5
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図6
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図7
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図8
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図9
  • 特許-糖タンパク質VIを標的とする抗体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】糖タンパク質VIを標的とする抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220527BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220527BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220527BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220527BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220527BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20220527BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P9/10
A61P7/02
C12P21/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020563942
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019062522
(87)【国際公開番号】W WO2019219765
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】18172736.3
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウーラント ケルスティン
(72)【発明者】
【氏名】ノイゲバウアー ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ランツ ステファン
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/021539(WO,A2)
【文献】特表2013-514077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 1/00 - 19/00
A61K 39/395
A61P 43/00
A61P 9/10
A61P 7/02
C12P 21/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、
e)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
f)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
g)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
h)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む、抗体又は抗体フラグメント。
【請求項2】
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、
を含む、請求項1に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項3】
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む、請求項1又は2に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項4】
ヒト、ヒト化、キメラ又は合成抗体又は抗体フラグメントである、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項5】
単離抗体又は抗体フラグメントである、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項6】
組み換え抗体又は抗体フラグメントである、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項7】
モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項8】
一価抗体又は抗体フラグメントである、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項9】
前記一価抗体フラグメントがFabである、請求項8に記載の抗体フラグメント。
【請求項10】
前記Fabが修飾重鎖定常領域を含み、該修飾重鎖定常領域が被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による該Fabの認識を防止又は阻害する、請求項9に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項11】
前記修飾重鎖定常領域がアミノ酸配列ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKEVERRQGGIGHKC(配列番号113)からなる、請求項10に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項12】
ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項13】
医薬に使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項14】
治療を必要とする被験体の治療に使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列を含む核酸組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸配列又は複数の核酸配列を含むベクター又は複数のベクターを含むベクター組成物。
【請求項17】
請求項16に記載のベクター組成物を含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載の単離抗体又は抗体フラグメントと、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、糖タンパク質VI(GPVI)に結合する抗体又は抗体フラグメント(Fab等)に関する。本開示は、上記抗体又は抗体フラグメントを発現することが可能な核酸、ベクター及び宿主細胞、上記抗体又は抗体フラグメントを含む医薬組成物、並びに特定の障害の治療のための上記抗体又は抗体フラグメントの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
血小板活性化は、動脈血栓症及び心血管障害の発症において根本的に重要である。かかる障害を患う患者は一般に、血栓形成プロセスの後期事象を標的とすることにより血栓形成を妨げる抗血小板薬で治療される。これらの薬物の深刻な副作用は長引く出血であり、これによりその使用が制限される。
【0003】
GPVIは、血小板及び巨核球のみで発現される主要なコラーゲン受容体である。コラーゲン(内皮下基質の最も重要な血栓形成成分の1つである(非特許文献1))へのGPVIの結合は、受容体クラスタリング及びその後の血小板活性化を誘導する。そのため、GPVIは、血小板活性化の初期事象において最も重要であり、したがって、この機構を妨げるための主要標的となる(非特許文献2)。
【0004】
GPVIの抗血小板効果及び抗血栓効果が、マウス及びヒトに由来する血小板を使用するin vitro研究及びin vivo研究において記載されている。例えば、GPVI欠損血小板は、コラーゲンに応答しない。さらに、GPVI欠損マウスは、特発性出血に対する感受性を高めることなく、損傷血管壁での動脈血栓形成の効果的な阻害を示した。これら全てのデータから、GPVIがヒトにおける血栓性障害及び血管障害の治療の効果的かつ安全な標的であることが示される。
【0005】
GPVI-コラーゲン相互作用を妨げることが可能なGPVIに対する抑制又は中和モノクローナル抗体が従来技術において記載されている。例えば、特許文献1(特許文献2)(Nieswandt, Bernhard)、特許文献3(MILLENNIUM PHARMACEUTICALS)、特許文献4(CAMBRIDGE UNIVERSITY TECHNICAL SERVICES LTD、英国)、特許文献5(Procorde GmbH/GSF-Forschungszentrum fuer Umwelt und Gesundheit GmbH)、特許文献6(大塚製薬株式会社)、特許文献7(持田製薬株式会社、日本)、特許文献8(INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)、フランス)、特許文献9(SANOFI)を参照されたい。
【0006】
しかしながら、報告されているGPVI特異抗体の大部分は、特にそれらの動物起源(抗体をヒト患者において免疫原性とする)、関連動物種に対する交差反応性の欠如、大幅に弱い親和性、短い半減期、又は血小板の表面からのGPVI枯渇の誘導等の好ましくない機能特性のために、ヒトにおける臨床開発及び治療的使用に適さないようである。GPVI枯渇は、受容体活性化を示し得るが、制御することができず、不可逆的であることから回避する必要がある。
【0007】
現在、唯一のGPVI特異モノクローナルFab抗体ACT-017(特許文献10を参照されたい)が虚血性脳卒中の治療のために臨床開発中であるようである。しかしながら、この抗体は、以前に開示された抗体9012.2(特許文献3を参照されたい)のヒト化型であるため、in vivo研究に一般に使用される関連モデルである齧歯類GPVIに対する交差反応性を欠いている。加えて、ACT-017は、そのFab重鎖のC末端での構造のために患者の血清中に存在する抗Fab抗体によって認識される危険性がある。かかる免疫応答は、血小板における二価GPVI結合及びGPVI活性化の望ましくない回復をもたらし得る。
【0008】
このため、臨床開発及び治療的使用に適し、従来技術の中和抗体と比較してより良好な親和性、有効性及び安全性プロファイルをヒトにおいて示す、GPVIに特異的な、更に改善された抗体又は抗体フラグメントが必要とされる。
【0009】
したがって、本開示は、従来技術で既知のGPVI特異抗体よりも優れた新規の抗体及び抗体フラグメント(特にFabフラグメント)を提供する。特に、本開示の抗体は、非ヒト霊長類(カニクイザル等)及び齧歯類(ラット及び/又はマウス等)GPVIにも結合し、高い親和性を示し、これまで観察されなかった有利な機能特性及び安全性特性を併せ持つヒト抗体又は抗体フラグメントである。
【0010】
この点で、本開示のGPVI特異抗体フラグメントは、Fab重鎖のC末端での修飾(例えば、修飾重鎖定常領域)も含み得る。本願の発明者らは、かかる修飾が、血小板の表面上のGPVIの架橋により血小板活性化を誘導するFabの能力を、患者の血清中に存在する(既存の)抗Fab抗体によるFabの認識を防止することにより更に低下させ得ることを実証した。上記に概説されるように、かかる認識は、二価又は多価GPVI結合の回復をもたらし、コラーゲン等のその天然アゴニストリガンドの活性と同様に血小板の表面でのGPVIクラスタリングを引き起こす可能性がある。
【0011】
したがって、本開示のGPVI特異抗体は、虚血性イベントの特定の安全な治療を提供する。
【0012】
これらの特徴により、本開示の抗体及び抗体フラグメントは、例えば血栓性障害及び血管障害を予防及び/又は治療する治療的使用にとって非常に望ましいものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第1224942号
【文献】欧州特許出願公開第1228768号
【文献】国際公開第2001/000810号
【文献】国際公開第2003/054020号
【文献】欧州特許出願公開第1538165号
【文献】国際公開第2005/111083号(欧州特許第1745076号)
【文献】国際公開第2006/118350号(欧州特許第1876240号)
【文献】国際公開第2008/049928号
【文献】国際公開第2011/073954号
【文献】国際公開第2017/021539号
【非特許文献】
【0014】
【文献】Lockyer S. et al, Thromb Res. 2006; 118(3):371-80
【文献】Nieswandt B and Watson SP, Blood. 2003 Jul 15; 102(2):449-61
【発明の概要】
【0015】
本開示は、新規の抗体又は抗体フラグメントを提供する。具体的に、本発明は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを提供し、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む。
【0016】
本発明は、本発明のGPVI特異抗体又は抗体フラグメントの新規の配列中の修飾定常重鎖が、低下した免疫原性を有するヒト抗体又は抗体フラグメントをもたらすという認識に基づく。さらに、本明細書で開示される抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVIに結合し、カニクイザル、マウス及びラットに由来するGPVIにも結合する。
【0017】
本開示の抗体又は抗体フラグメントは、GPVIの活性を中和する。
【0018】
加えて、開示の抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒト、マウス及びカニクイザルGPVIの結合を27nM以下のIC50濃度で阻害する。好ましい実施の形態では、開示の抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒト、マウス及びカニクイザルGPVIの結合を9nM以下のIC50濃度で阻害する。加えて、開示の抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンにより誘導される血小板凝集を阻害する。
【0019】
本明細書で開示及び例示されるように、これらの抗体又は抗体フラグメントは、血栓症のin vivoマウスモデルにおいて効果的であることが証明された。
【0020】
したがって、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、有効性の点で優れ、例えば血栓性障害又は血管障害を患うヒトの治療によく適した有望な化合物をもたらす。
【0021】
本開示は、本明細書で開示される表1~表4によるCDR領域を有する、ヒトGPVIに結合する抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0022】
本開示は、本明細書で開示される表1~表4による可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を有する抗体又は抗体フラグメントも提供する。
【0023】
本開示は、本明細書で開示される表1~表4による重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を有する抗体又は抗体フラグメントも提供する。
【0024】
本開示は、Fabである、本開示による抗体又は抗体フラグメントも提供する。
【0025】
本開示は、本明細書で開示される修飾重鎖定常領域を含み、修飾重鎖定常領域が被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による上記抗体又は抗体フラグメントの認識を防止又は阻害する、Fabも提供する。
【0026】
本開示は、本明細書で開示されるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントと競合する抗体又は抗体フラグメントも提供する。
【0027】
本開示は、本明細書で開示されるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合する抗体又は抗体フラグメントも提供する。
【0028】
本開示は、医薬に使用される、本開示によるGPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントも提供する。
【0029】
本開示は、被験体に有効量の本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを投与することにより血栓性障害又は血管障害等の障害を患う被験体を治療する方法も提供する。上記被験体又は患者は、ヒトであるのが好ましい。
【0030】
本開示は、本開示のGPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントと、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む医薬組成物も提供する。
【0031】
本開示は、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸組成物も提供する。
【0032】
本開示は、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメント抗体をコードする核酸組成物を含むベクター組成物も提供する。
【0033】
本開示は、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードするベクター又は核酸組成物を含む宿主細胞も提供する。
【0034】
特許請求される抗体又は抗体フラグメントには有用性がある。さらに、かかる抗体又はフラグメントを特定する、特許請求される方法には有用性がある。特許請求される抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVIの生物活性を変化させるために利用される。
【0035】
特に、特許請求される抗体又は抗体フラグメントは、血栓性障害又は血管障害の治療等の治療的使用のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】A-D)最大3例のドナーに由来する多血小板血漿(PRP)から得られたヒト、カニクイザル及びマウス血小板の細胞表面上で発現されたGPVIへのFab#1、Fab#2、Fab#3、Fab#4(修飾重鎖定常領域を含む)の結合を示す図である。1例の例示ドナーについての結果(図1A図1B及び図1C)又は3例のドナーの平均±標準偏差(SD)(図1D)を示す。
図2】組み換えヒトコラーゲンVitroCol(A)及びカニクイザル(cyno)大動脈コラーゲン(B)により誘導されるヒト血小板凝集の静止条件下でのFab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4(修飾重鎖定常領域を含む)によるin vitro阻害を示す図である。血小板凝集は、Multiplate(商標)装置において6分間の時間経過にわたるインピーダンスの上昇として測定した。4例~7例のドナーに由来する血液サンプルの平均値±SDを示す。
図3】ヒト動脈硬化性プラークにより誘導されるヒト血小板凝集の静止条件下でのFab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4(修飾重鎖定常領域を含む)によるin vitro阻害を示す図である。血小板凝集は、Multiplate(商標)装置において6分間の時間経過にわたるインピーダンスの上昇として測定した。6例のドナーに由来する血液サンプルの平均値±SDを示す。
図4】A-D)ヒト動脈硬化性プラークにより誘導されるヒト血小板接着/凝集の流動条件下でのFab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4(修飾重鎖定常領域を含む)によるin vitro阻害;E)アセチルサリチル酸(ASA)及びチカグレロルの組合せによる阻害;F)陰性対照Fabによる阻害を示す図である。データ点を1フレーム/秒として記録した。14例のドナーに由来する血液サンプルを用いた実験による各データ点についての平均値(黒色)+SD(灰色)を示す。
図5】3mg/kg IVボーラス投与後の動脈血栓症のマウスモデル(結紮誘導血栓症モデル)におけるin vivo血栓形成に対する抗GPVI Fab Fab#3(修飾重鎖定常領域を含む)(図5A)及び陰性対照Fab(図5B)の効果を示す図である。血栓形成を、蛍光血小板を検出する生体内ビデオ顕微鏡法によって可視化し、1血管当たり20分間記録した。異なる時点での1群当たり6匹のマウスについての結果を示す。
図6】3mg/kg IVボーラス投与後の動脈血栓症のマウスモデル(結紮誘導血栓症モデル)におけるin vivo血栓形成に対する抗GPVI Fab Fab#3(修飾ヒト重鎖定常領域を含む)(図6A)及び陰性対照Fab(図6B)の効果を示す図である。y軸は、蛍光血小板の蛍光強度の関数としての血栓面積/血管面積(%)を示す。異なる時点での1群当たり6匹のマウスについての結果を示す。
図7】ヒト血漿サンプル中に存在する既存の抗Fab抗体によるGPVI受容体活性化を誘導する能力についてのFab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4のFACSベースの特性評価を示す図である。野生型ヒト重鎖定常領域(Fab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4)又は配列番号113を含む本開示による修飾ヒト重鎖定常領域(Fab#1 mod.HC、Fab#2 mod.HC、Fab#3 mod.HC及びFab#4 mod.HC)のいずれかを有するFabを試験した。血小板活性化は、PBS対照のCD62P発現に対して正規化したヒト血小板上での相対CD62P表面発現によって表される。55例のドナーに由来するPRPサンプルの平均値±SDを示す。
図8】出血時間に対する抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む)(Fab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4)により媒介されるGPVI遮断の効果を示す図である。尾部出血を、C57BL/6Jマウスにおいて尾部の先端2mmを外科用メスの刃で切断し、尾部を温かいPBSに浸すことによって誘導した。出血時間を尾部の先端からの出血が止まり、30秒以内に再開しない時点まで記録した。左パネルは、ASAを同時投与しない場合の出血時間を示す。右パネルは、ASAを同時投与した場合の出血時間を示す。1処理群当たり3匹~6匹のマウスの平均出血時間±SDを示す。
図9】A-D)C57BL/6Jマウスへの10mg/kg抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む)(Fab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4)のi.v.ボーラス投与後の血小板数に対する抗GPVI Fabの効果を示す図である。1処理群当たり1匹~6匹のマウスによる異なる時点での平均血小板数±SDを示す。
図10】A-D)CD-1マウスへの10mg/kg抗GPVI Fab(修飾ヒト重鎖定常領域を含む)(Fab#1、Fab#2、Fab#3又はFab#4)のi.v.ボーラス投与後のマウス血小板上でのGPVI表面発現の評価を示す図である。1処理群当たり4匹~6匹のマウスの異なる時点での平均GPVIコピー数±SDを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、ヒトGPVIを認識する多数の抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0038】
定義
「GPVI」という用語は、糖タンパク質VIとして知られるタンパク質を指す。
【0039】
ヒトGPVI-1A(1~339)は、(Uniprot:Q9HCN6-1、ハプロタイプ「a」)のアミノ酸配列を有する:
【0040】
カニクイザルGPVI(1~318)は、(UniProt B0I1T7)のアミノ酸配列を有する:
【0041】
マウスGPVI(1~313)は、(UniProt P0C191)のアミノ酸配列を有する:
【0042】
ヒトGPVI-1Aの細胞外ドメイン(位置21~269)は、(Uniprot:Q9HCN6-1、ハプロタイプ「a」)のアミノ酸配列を有する:
【0043】
ヒトGPVI-1Bの細胞外ドメイン(位置21~269)は、(Uniprot:Q9HCN6-1、ハプロタイプ「b」)のアミノ酸配列を有する:
【0044】
ヒトGPVI-2Aの細胞外ドメイン(位置21~251)は、(Uniprot:Q9HCN6-2、ハプロタイプ「a」)のアミノ酸配列を有する:
【0045】
「GPVI-1」及び「GPVI-2」という用語は、公開されているGPVIのアイソタイプを指す。添え字「A」及び「B」は、それぞれ記載の高頻度対立遺伝子「a」(アミノ酸S219、K237、T249を含む)及び低頻度対立遺伝子「b」(アミノ酸Pro219、Glu237、Ala249を含む)を指す(Joutsi-Korhonen et al., 2003)。
【0046】
ヒトGPVIの細胞外ドメインは、ドメイン間ヒンジ(hinge-interdomain)によって連結された2つのIg様C2型ドメイン、すなわちD1ドメイン及びD2ドメインから構成される。D1ドメインは、配列番号1のアミノ酸残基21~109を含む。D2ドメインは、配列番号1のアミノ酸残基114~207を含む。
【0047】
カニクイザルGPVIの細胞外ドメイン(位置21~249)は、(Uniprot:B0I1T7)のアミノ酸配列を有する:
【0048】
マウスGPVIの細胞外ドメイン(位置21~266)は、(Uniprot:P0C191)のアミノ酸配列を有する:
【0049】
ラットGPVIの細胞外ドメイン(位置21~269)は、(Uniprot:XP_008757241.2)のアミノ酸配列を有する:
【0050】
GPVI-ECD-Fc融合タンパク質の生成に使用されるヒトIgG1-Fcドメイン(K105~K330)は、以下のアミノ酸配列を有する:
【0051】
数字に先行する「約」という用語は、該数字の値の±(plus or less)10%を意味する。
【0052】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原と相互作用する、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖(HC)は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略される)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3の3つのドメインで構成される。各軽鎖(LC)は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略される)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が組み入れられた相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域に更に細分され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。「抗体」という用語は、例えばモノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化(camelised)抗体及びキメラ抗体を含む。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであってもよい。軽鎖及び重鎖の両方が構造的相同性及び機能的相同性の領域に分けられる。
【0053】
「抗体フラグメント」という表現は、本明細書で使用される場合、(例えば、結合、立体障害、安定化、空間分布により)抗原と特異的に相互作用する能力を保持する抗体の1つ以上の部分を指す。結合フラグメントの例としては、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;VL、VH、CL及びCH1ドメインと免疫グロブリンのヒンジ領域のN末端部分とからなる一価フラグメントであるFab’フラグメント;ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab)フラグメント;VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);並びに単離相補性決定領域(CDR)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、組み換え法を用いて、これらをVL及びVH領域が対合して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426及びHuston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883を参照されたい)を形成する単一タンパク質鎖とすることができる合成リンカーにより接合することができる。かかる一本鎖抗体も「抗体フラグメント」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の従来の技法を用いて得られ、フラグメントを無傷抗体と同様に有用性についてスクリーニングする。抗体フラグメントをシングルドメイン抗体、マキシボディ(maxibodies)、ミニボディ(minibodies)、細胞内抗体、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)、v-NAR及びbis-scFvに組み込むこともできる(例えば、Hollinger and Hudson, (2005) Nature Biotechnology 23:1126-1136を参照されたい)。抗体フラグメントは、フィブロネクチンIII型(Fn3)等のポリペプチドをベースとする骨格にグラフトすることができる(フィブロネクチンポリペプチドモノボディ(monobodies)を記載している米国特許第6,703,199号を参照されたい)。抗体フラグメントは、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合部位を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む一本鎖分子に組み込むことができる(Zapata et al., (1995) Protein Eng. 8:1057-1062及び米国特許第5,641,870号)。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに接合する抗体重鎖の領域を含む。ヒンジ領域は、上部、中央及び下部ヒンジドメインの3つの異なるドメインに細分することができる(Roux et al., J. Immunol. 1998 161 :4083)。
【0055】
「CH1ドメイン」という用語は、可変ドメインをヒンジ領域に連結する抗体の重鎖定常ドメインを指す。「CH1ドメイン」という用語は、野生型CH1ドメイン及びその自然発生アロタイプの1つ、並びにその変異体を含む。
【0056】
「ヒト抗体」又は「ヒト抗体フラグメント」は、本明細書で使用される場合、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体及び抗体フラグメントを含む。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もかかる配列に由来する。ヒト起源には、例えばヒト生殖系列配列、又はヒト生殖系列配列の突然変異型、又は例えばKnappik et al., (2000) J. Mol. Biol. 296:57-86に記載されるようなヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含有する抗体が含まれる。免疫グロブリン可変ドメイン、例えばCDRの構造及び位置は、既知のナンバリングスキーム、例えばKabatナンバリングスキーム、Chothiaナンバリングスキーム、又はKabat及びChothiaの組合せを用いて定義することができる(例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services (1991), eds. Kabat et al.、Lazikani et al., (1997) J. Mol. Bio. 273:927-948)、Kabat et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th edit., NIH Publication no. 91-3242 U.S. Department of Health and Human Services、Chothia et al., (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917、Chothia et al., (1989) Nature 342:877-883、及びAl-Lazikani et al., (1997) J. Mol. Biol. 273:927-948を参照されたい)。ヒト抗体は、それぞれの系がフレームワーク及びCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体をもたらす限りにおいて、合成ライブラリー又はトランスジェニックマウス(例えば、ゼノマウス(xenomouse))から単離することもできる。
【0057】
「キメラ抗体」又は「キメラ抗体フラグメント」という用語は、或る種に見られる配列に由来するか又はそれに相当する定常抗体領域と、別の種に由来する可変抗体領域とを有する抗体分子として本明細書で定義される。定常抗体領域がヒトに見られる配列に由来するか又はそれに相当し、可変抗体領域(例えば、VH、VL、CDR又はFR領域)が非ヒト動物、例えばマウス、ラット、ウサギ又はハムスターに見られる配列に由来するのが好ましい。
【0058】
「ヒト化抗体」又は「ヒト化抗体フラグメント」は、ヒト起源の配列に由来する定常抗体領域を有する抗体分子として本明細書で定義され、可変抗体領域又はその一部又はCDRのみが別の種に由来する。例えば、ヒト化抗体は、CDRグラフト化されていてもよく、可変ドメインのCDRが非ヒト起源に由来するが、可変ドメインの1つ以上のフレームワークがヒト起源であり、定常ドメイン(もしあれば)がヒト起源である。
【0059】
「単離された」という用語は、例えば異なる抗原特異性を有する他の抗体又は抗体フラグメントを実質的に含まない抗体又は抗体フラグメントであり得る化合物を指す。さらに、単離抗体又は抗体フラグメントは、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。このため、幾つかの実施形態では、提供される抗体又は抗体フラグメントは、異なる特異性を有する抗体から分離された単離抗体又は抗体フラグメントである。単離抗体は、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントであり得る。単離抗体又は抗体フラグメントは、組み換えモノクローナル抗体又は抗体フラグメントであり得る。しかしながら、標的のエピトープ、アイソフォーム又は変異体に特異的に結合する単離抗体又は抗体フラグメントは、例えば他の種(例えば、種ホモログ)に由来する他の関連抗原に対して交差反応性を有し得る。
【0060】
「組み換え抗体」又は「組み換え抗体フラグメント」という用語は、本明細書で使用される場合、天然に存在しない手段によって調製、発現、作製又は分離された全ての抗体又は抗体フラグメント、例えば抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから選択され、単離された抗体、及びヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全て又は一部の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製若しくは単離された抗体、又はヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック若しくはトランスクロモソーマル(transchromosomal)である動物(例えば、マウス)、若しくはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体を含む。かかる組み換え抗体は、フレームワーク及びCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有するのが好ましい。しかしながら、或る特定の実施形態では、かかる組み換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(又はヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を使用する場合、in vivo体細胞突然変異誘発)に供することができ、組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列を、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、それに関連するが、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然で存在し得ない配列とする。組み換え抗体は、モノクローナル抗体であり得る。一実施形態では、本明細書で開示される抗体及び抗体フラグメントは、米国特許出願公開第13/321,564号又は米国特許出願公開第13/299,367号(どちらも引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されるYlanthia(商標)抗体ライブラリーから単離される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体フラグメント」という用語は、それを作製する方法ではなく、任意の真核生物クローン、原核生物クローン又はファージクローンを含む単一のクローンに由来する抗体又は抗体フラグメントを指す。本明細書で開示されるモノクローナル抗体又は抗体フラグメントは、Kohler et al.; Nature, 256:495 (1975)に記載されるハイブリドーマ法によって作製するか、又は例えば本明細書に記載される技法を用いてファージライブラリーから単離することができる。それにより発現されたクローン細胞株及びモノクローナル抗体を調製する他の方法は、当該技術分野で既知である(例えば、Chapter 11 in: Short Protocols in Molecular Biology, (2002) 5th Ed., Ausubel et al., eds., John Wiley and Sons, New Yorkを参照されたい)。
【0062】
本明細書で使用される場合、「に特異的に結合する」("binds specifically to", "specifically binds to")、「に特異的な」(is "specific to/for")又は「を特異的に認識する」等の用語は、生体分子を含む分子の不均一集団の存在下で標的の存在を決定するような標的と抗体又は抗体フラグメントとの間の結合等の測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(抗原又は抗原のエピトープであり得る)に特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントは、他の標的に結合する場合よりも大きな親和性、アビディティで、より容易に及び/又はより長い持続時間で、この標的に結合する抗体又は抗体フラグメントである。或る特定の実施形態では、抗体又は抗体フラグメントは、異なる種に由来するタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、これを必要とする訳ではない。本明細書で開示される抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVIに特異的に結合する。ヒトGPVIに特異的な開示の抗体又は抗体フラグメントは、マウス、ラット及び/又はカニクイザルに由来するGPVI等の別の種のGPVIに特異的に結合するのが好ましい。更により好ましくは、本明細書で開示される抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的である。2つの分子が特異的に結合するかを決定する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば標準ELISAアッセイが挙げられる。スコア化は、標準的な発色(例えば、西洋ワサビペルオキシド(horseradish peroxide)を有する二次抗体及びテトラメチルベンジジンと過酸化水素)によって行うことができる。或る特定のウェルにおける反応は、例えば450nmでの光学密度によってスコア化される。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は、0.1ODであり得る。典型的な陽性反応は、1ODであり得る。これは、陽性/陰性差が5倍超であり得ることを意味する。通例、結合特異性の決定は、単一の参照抗原ではなく、3つ~5つの非関連抗原、例えば粉乳、BSA、トランスフェリン等のセットを用いて行われる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、単一部位でのポリペプチドとその標的との間の相互作用の強度を指す。各部位において、ポリペプチドの結合領域は、その標的と多数の部位で弱い非共有結合力によって相互作用する。相互作用が大きいほど親和性が強くなる。
【0064】
「K」という用語は、本明細書で使用される場合、KdとKaとの比率(すなわち、Kd/Ka)から得られる解離定数を指し、モル濃度(M)として表される。例えばモノクローナル抗体のような抗原結合部分についてのKD値は、当該技術分野で十分に確立されている方法を用いて決定することができる。例えばモノクローナル抗体のような抗原結合部分のKDを決定する方法は、SET(可溶性平衡滴定(soluble equilibrium titration))、又はBiacore(商標)システム等のバイオセンサーシステムを用いる表面プラズモン共鳴である。本開示では、GPVIに特異的な抗体は通例、5×10-2M未満、1×10-2M未満、5×10-3M未満、1×10-3M未満、5×10-4M未満、1×10-4M未満、5×10-5M未満、1×10-5M未満、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、1×10-12M未満、5×10-13M未満、1×10-13M未満、5×10-14M未満、1×10-14M未満、5×10-15M未満若しくは1×10-15M未満、又はそれ以下の解離速度定数(KD)(koff/kon)を有する。
【0065】
本開示の組成物は、治療用途又は予防用途に使用することができる。したがって、本開示は、本明細書で開示される抗体又は抗体フラグメントと、その薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含有する医薬組成物を含む。関連の実施形態では、本開示は、血栓性障害又は血管障害を治療する方法を提供する。かかる方法は、それを必要とする被験体に、本明細書に記載されるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを含有する有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。
【0066】
本開示は、かかる治療を必要とする被験体への治療有効量の本明細書で開示されるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントの投与を含む治療方法を提供する。「治療有効量」又は「有効量」は、本明細書で使用される場合、所望の生物学的応答を引き起こすのに必要とされる、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントの量を指す。本開示によると、治療有効量は、障害を治療及び/又は予防するのに必要とされる(例えば、予防的)、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントの量である。
【0067】
「投与」及び「処置(treatment)」は、動物、ヒト、実験被験体、細胞、組織、器官又は体液に適用される場合、外因性の医薬品、治療剤、診断剤又は組成物の動物、ヒト、被験体、細胞、組織、器官又は体液への接触を指す。「投与」及び「処置」は、例えば治療方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法及び実験方法を指す場合もある。細胞の処置は、細胞への試薬の接触、及び細胞と接触している流体への試薬の接触を包含する。「投与」及び「処置」は、例えば試薬、診断組成物、結合組成物又は別の細胞による細胞のin vitro及びex vivoでの処置も意味する。「処置」は、ヒト、家畜(veterinary)又は研究被験体に適用される場合、治療処置、予防(prophylactic or preventative)措置、研究及び診断的適用を指す。「処置」は、ヒト、家畜若しくは研究被験体、又は細胞、組織若しくは器官に適用される場合、作用物質と動物被験体、細胞、組織、生理学的コンパートメント又は生理液との接触を包含する。「細胞の処置」は、作用物質が、例えば流体相又はコロイド相中のPILRと接触する状況だけでなく、アゴニスト又はアンタゴニストが細胞又は受容体と接触しない状況も包含する。
【0068】
「被験体」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類及び爬虫類を含む。指定のない限り、「患者」又は「被験体」という用語は、本明細書で区別なく使用される。
【0069】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で区別なく使用される。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する自然発生アミノ酸の人工の化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに自然発生アミノ酸ポリマー及び非自然発生アミノ酸ポリマーに適用される。他に指示がない限り、特定のポリペプチド配列は、保存的に修飾された変異体も暗に包含する。
【0070】
「EC50」という用語は、本明細書で使用される場合、アッセイにおいてベースラインと最大との間の中間の応答を誘導する抗体又は抗体フラグメントの濃度を指す。したがって、これは最大効果の50%が観察される抗体濃度を表す。
【0071】
「IC50」という用語は、本明細書で使用される場合、アッセイにおいて最大応答とベースラインとの間の中間の応答を阻害する抗体又は抗体フラグメントの濃度を指す。これは所与の応答を50%低減する抗体濃度を表す。
【0072】
「阻害」又は「阻害する」又は「低減」又は「低減する」又は「中和」又は「中和する」という用語は、任意の表現型特性(結合、生物活性又は機能等)の減少若しくは停止、又はその特性の出現、程度若しくは可能性の減少若しくは停止を指す。「阻害」、「低減」又は「中和」は、適切なアッセイを用いて検出可能である限り、完全である必要はない。幾つかの実施形態では、「低減する」又は「阻害する」は、20%以上の減少を引き起こす能力を意味する。別の実施形態では、「低減する」又は「阻害する」は、50%以上の減少を引き起こす能力を意味する。また別の実施形態では、「低減する」又は「阻害する」は、75%、85%、90%、95%以上の全体的減少を引き起こす能力を意味する。
【0073】
「アンタゴニスト」抗体又は抗体フラグメントという用語は、本明細書で使用される場合、GPVIと相互作用し、GPVIの生物活性若しくは機能、又は任意の他の表現型特性を部分的又は完全に阻害又は中和する抗体又は抗体フラグメントを指す。
【0074】
「交差競合する(Cross competes)」は、標準的な競合的結合アッセイにおいて特異抗原への他の抗体、抗体フラグメント又は抗原結合部分の結合を妨げる抗体若しくは抗体フラグメント、又は他の抗原結合部分の能力を意味する。抗体、抗体フラグメント又は他の抗原結合部分が特異抗原への別の抗体、抗体フラグメント又は抗原結合部分の結合を妨げることが可能な能力又は程度、したがって本発明により交差競合すると言えるかは、標準的な競合結合アッセイを用いて決定することができる。好適なアッセイの1つは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定することができるBiacore技術(例えば、BIAcore 3000機器(Biacore,Uppsala,Sweden)の使用による)の使用を伴う。交差競合を測定する別のアッセイは、ELISAベースのアプローチを用いる。交差競合に基づく抗体の「エピトープビニング」のためのハイスループットプロセスは、国際公開第2003/48731号に記載されている。交差競合は、調査対象の抗体又は抗体フラグメントが表1~表4に開示される抗体又は抗体フラグメントの1つのGPVIへの結合を60%以上、具体的には70%以上、より具体的には80%以上低減する場合、また表1~表4に記載される抗体の1つが上記抗体又は抗体フラグメントのGPVIへの結合を60%以上、具体的には70%以上、より具体的には80%以上低減する場合に存在する。
【0075】
「エピトープ」という用語は、抗体若しくはそのフラグメント、若しくはT細胞受容体によって特異的に認識されるか、又は他の形で分子と相互作用する任意のタンパク性領域を含む。概して、エピトープは、アミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面基群(surface groupings)のものであり、概して特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有し得る。当業者に理解されるように、抗体が特異的に結合することができる実質的に全てのものがエピトープであり得る。
【0076】
「と同じエピトープに結合する」は、抗体を比較する同じエピトープマッピング法を用いた場合に特異抗原に結合し、例示の抗体と同じエピトープに結合する抗体又は抗体フラグメントの能力を意味する。例示の抗体及び他の抗体のエピトープは、エピトープマッピング法を用いて決定することができる。エピトープマッピング法は、当該技術分野で既知である。例えば、立体構造エピトープは、例えば水素/重水素交換、x線結晶構造解析及び二次元核磁気共鳴等によってアミノ酸の空間立体配座を決定することによって容易に特定される。
【0077】
「改変された」又は「修飾された」という用語は、本明細書で使用される場合、合成手段(例えば、組み換え法、in vitroペプチド合成、ペプチドの酵素若しくは化学カップリング、又はこれらの技法の幾つかの組合せ)による核酸又はポリペプチド分子の操作を含む。本開示の抗体又は抗体フラグメントは、例えばヒト化及び/又はキメラ抗体、並びに抗原結合、安定性/半減期、エフェクター機能、免疫原性、安全性等の1つ以上の特性を改善するように改変された抗体を含む、改変又は修飾された抗体又は抗体フラグメントであるのが好ましい。
【0078】
「野生型」タンパク質又はその部分は、天然に見られるタンパク質の型である。野生型タンパク質のアミノ酸配列、例えば重鎖定常領域は、天然に生じるタンパク質のアミノ酸配列である。アロタイプの差のために、野生型タンパク質について2つ以上のアミノ酸配列が存在し得る。例えば、自然発生ヒトIgG1重鎖定常領域の幾つかのアロタイプが存在する(例えば、Jeffries et al. (2009) mAbs 1:1を参照されたい)。
【0079】
「アロタイプ」は、数個のアミノ酸が異なる、特定のアイソタイプ群内の自然発生変異体を指す(例えば、Jefferies et al. (2009) mAbs 1:1を参照されたい)。本明細書に記載される抗体は、任意のアロタイプであり得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「既存の」抗体という用語は、被験体又は生物に通常存在する抗体を指すことを意図する。
【0081】
実施形態
配列
一実施形態では、本開示は、糖タンパク質VI(GPVI)に特異的な抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、糖タンパク質VI(GPVI)に特異的な単離抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される抗体のいずれか1つの可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)を含む、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される抗体のいずれか1つの重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含む、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0082】
一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される抗体のいずれか1つのKabatによって規定される6つのCDRを含む、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される抗体のいずれか1つの6つのCDRを含む、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0083】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、
a)配列番号11のアミノ酸配列を含む可変重鎖CDR1(HCDR1)領域、配列番号12のアミノ酸配列を含む可変重鎖CDR2(HCDR2)領域、配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖CDR3(HCDR3)領域、配列番号14のアミノ酸配列を含む可変軽鎖CDR1(LCDR1)領域、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変軽鎖CDR2(LCDR2)領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖CDR3(LCDR3)領域、又は、
b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1領域、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2領域、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3領域、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1領域、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2領域及び配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のアミノ酸配列を含むHCDR1領域、配列番号34のアミノ酸配列を含むHCDR2領域、配列番号35のアミノ酸配列を含むHCDR3領域、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR1領域、配列番号37のアミノ酸配列を含むLCDR2領域及び配列番号38のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のアミノ酸配列を含むHCDR1領域、配列番号45のアミノ酸配列を含むHCDR2領域、配列番号46のアミノ酸配列を含むHCDR3領域、配列番号47のアミノ酸配列を含むLCDR1領域、配列番号48のアミノ酸配列を含むLCDR2領域及び配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、
を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0084】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナルヒト抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFab、Fab’、Fv、scFvからなる群から選択される。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFabである。
【0085】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、
を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0086】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナルヒト抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFab、Fab’、Fv、scFvからなる群から選択される。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFabである。
【0087】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、 a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域を含み、配列番号17のVH及び配列番号18のVLを更に含むか、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域を含み、配列番号28のVH及び配列番号29のVLを更に含むか、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域を含み、配列番号39のVH及び配列番号40のVLを更に含むか、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR3領域を含み、配列番号50のVH及び配列番号51のVLを更に含む、
抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0088】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナルヒト抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFab、Fab’、Fv、scFvからなる群から選択される。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFabである。
【0089】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0090】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0091】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0092】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0093】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0094】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、
を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0095】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号17のVH及び配列番号18のVLを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0096】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号28のVH及び配列番号29のVLを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0097】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号39のVH及び配列番号40のVLを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0098】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号50のVH及び配列番号51のVLを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0099】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0100】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号20のHC及び配列番号19のLCを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号20のHC及び配列番号19のLCからなる、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号21のHC及び配列番号19のLCを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号21のHC及び配列番号19のLCからなる、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0101】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号31のHC及び配列番号30のLCを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号31のHC及び配列番号30のLCからなる、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号32のHC及び配列番号30のLCを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号32のHC及び配列番号30のLCからなる、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0102】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号42のHC及び配列番号41の軽鎖(LC)、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号42のHC及び配列番号41の軽鎖(LC)を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号42のHC及び配列番号41の軽鎖(LC)からなる、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号43のHC及び配列番号41のLCを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号43のHC及び配列番号41のLCからなる、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0103】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号53のHC及び配列番号52のLCを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号53のHC及び配列番号52のLCからなる、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号54のHC及び配列番号52のLC、又はこれらの配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するが、該抗体若しくは抗体フラグメントと同じ活性を保持する配列を含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号54のHC及び配列番号52のLCを含む、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号54のHC及び配列番号52のLCからなる、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0104】
更なる実施形態では、抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0105】
一実施形態では、上述のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナルヒト抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFab、Fab’、Fv、scFvからなる群から選択される。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFabである。
【0106】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒト重鎖定常領域及びヒト軽鎖定常領域を含む。
【0107】
フォーマット
或る特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。
【0108】
本開示の一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントはヒト、ヒト化、キメラ又は合成抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、ヒト又はヒト化抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、ヒト抗体又は抗体フラグメントである。別の実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、キメラ抗体又は抗体フラグメントである。
【0109】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、組み換え抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。更なる実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、単離組み換え抗体又は抗体フラグメントである。更なる実施形態では、上記単離組み換えヒト抗体又は抗体フラグメントは、単離組み換えヒト抗体又は抗体フラグメントである。
【0110】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。
【0111】
一実施形態では、上記GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントはIgGである。別の実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、IgG1アイソタイプである。
【0112】
一実施形態では、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントは完全長抗体、scFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体フラグメントはFabである。
【0113】
核酸-ベクター-細胞
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列を含む核酸組成物であって、上記抗体又は抗体フラグメントが、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む、核酸組成物に関する。
【0114】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントの重鎖配列及び/又は軽鎖配列をコードし、
a)配列番号55のHCDR1領域、配列番号56のHCDR2領域、配列番号57のHCDR3領域、配列番号58のLCDR1領域、配列番号59のLCDR2領域及び配列番号60のLCDR3領域、又は、
b)配列番号66のHCDR1領域、配列番号67のHCDR2領域、配列番号68のHCDR3領域、配列番号69のLCDR1領域、配列番号70のLCDR2領域及び配列番号71のLCDR3領域、又は、
c)配列番号77のHCDR1領域、配列番号78のHCDR2領域、配列番号79のHCDR3領域、配列番号80のLCDR1領域、配列番号81のLCDR2領域及び配列番号82のLCDR3領域、又は、
d)配列番号88のHCDR1領域、配列番号89のHCDR2領域、配列番号90のHCDR3領域、配列番号91のLCDR1領域、配列番号92のLCDR2領域及び配列番号93のLCDR3領域、
を含む、単離核酸又は複数の核酸配列に関する。
【0115】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントの重鎖配列及び/又は軽鎖配列をコードし、
a)配列番号55の核酸配列を含むHCDR1領域、配列番号56の核酸配列を含むHCDR2領域、配列番号57の核酸配列を含むHCDR3領域、配列番号58の核酸配列を含むLCDR1領域、配列番号59の核酸配列を含むLCDR2領域及び配列番号60の核酸配列を含むLCDR3領域、又は、
b)配列番号66の核酸配列を含むHCDR1領域、配列番号67の核酸配列を含むHCDR2領域、配列番号68の核酸配列を含むHCDR3領域、配列番号69の核酸配列を含むLCDR1領域、配列番号70の核酸配列を含むLCDR2領域及び配列番号71の核酸配列を含むLCDR3領域、又は、
c)配列番号77の核酸配列を含むHCDR1領域、配列番号78の核酸配列を含むHCDR2領域、配列番号79の核酸配列を含むHCDR3領域、配列番号80の核酸配列を含むLCDR1領域、配列番号81の核酸配列を含むLCDR2領域及び配列番号82の核酸配列を含むLCDR3領域、又は、
d)配列番号88の核酸配列を含むHCDR1領域、配列番号89の核酸配列を含むHCDR2領域、配列番号90の核酸配列を含むHCDR3領域、配列番号91の核酸配列を含むLCDR1領域、配列番号92の核酸配列を含むLCDR2領域及び配列番号93の核酸配列を含むLCDR3領域、
を含む、単離核酸又は複数の核酸配列に関する。
【0116】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号61のVH及び/又は配列番号62のVL、又は配列番号61のVH及び配列番号62のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及び/又はVLを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0117】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号72のVH及び/又は配列番号73のVL、又は配列番号72のVH及び配列番号73のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及び/又はVLを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0118】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号83のVH及び/又は配列番号84のVL、又は配列番号83のVH領域及び配列番号84のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及び/又はVLを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0119】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号94のVH及び/又は配列番号95のVL、又は配列番号94のVH領域及び配列番号95のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及び/又はVLを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0120】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号64のHC及び/又は配列番号63のLCを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号65のHC及び/又は配列番号63のLCを含む、核酸又は複数の核酸配列に関する。
【0121】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号75のHC及び/又は配列番号74のLCを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号76のHC及び/又は配列番号74のLCを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0122】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号86のHC及び/又は配列番号85のLCを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号87のHC及び/又は配列番号85のLCを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0123】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号97のHC及び/又は配列番号96のLCを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、配列番号98のHC及び/又は配列番号96のLCを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0124】
別の実施形態では、本開示は、単離モノクローナル抗体又はフラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、表1~表4に開示される抗体のいずれか1つのVH及び/又はVLを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0125】
別の実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される核酸配列又は複数の核酸配列のいずれか1つによってコードされる、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0126】
或る特定の実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される抗体又は抗体フラグメントのいずれか1つをコードする核酸配列又は複数の核酸配列を提供する。
【0127】
別の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的に結合する本開示による抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列を提供する。
【0128】
別の実施形態では、本開示は、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列であって、表1~表4に開示される抗体又は抗体フラグメントのいずれか1つのHC及び/又はLCを含む、核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0129】
ベクター
一実施形態では、本開示は、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列を含むベクター又は複数のベクターを含むベクター組成物に関する。
【0130】
一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示されるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列を含むベクター又は複数のベクターを含むベクター組成物に関する。
【0131】
一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される核酸配列又は複数の核酸配列を含むベクター又は複数のベクターを含むベクター組成物に関する。
【0132】
一実施形態では、本開示は、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸を含むベクターを提供する。
【0133】
一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される核酸を含むベクターを提供する。
【0134】
一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸を含むベクターを提供する。
【0135】
宿主細胞
一実施形態では、本開示は、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列を含むベクター又は複数のベクターを含むベクター組成物を含む宿主細胞に関する。
【0136】
一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示されるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列又は複数の核酸配列を含むベクター又は複数のベクターを含むベクター組成物を含む宿主細胞に関する。
【0137】
一実施形態では、本開示は、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸を含むベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0138】
一実施形態では、本開示は、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0139】
別の実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される核酸を含むベクターを含む単離宿主細胞を提供する。
【0140】
一実施形態では、上記宿主細胞は、ベクターによってコードされるポリペプチドを発現することが可能である。更なる実施形態では、上記宿主細胞は単離細胞である。更なる実施形態では、上記単離宿主細胞は哺乳動物細胞である。一実施形態では、上記哺乳動物細胞はヒト細胞である。別の実施形態では、上記哺乳動物細胞はCHO細胞である。
【0141】
本開示の或る特定の実施形態では、例えば本開示のFabの発現若しくは精製を助けるため、又は本開示のFabの安定性を高めるために付加的なアミノ酸残基、ポリペプチド又は部分を本開示の抗体又は抗体フラグメントに付加する。
【0142】
本開示の抗体又は抗体フラグメントの重鎖及び軽鎖のコード配列は、遺伝子発現に必要とされる必須の発現制御領域(例えば、調節領域)にDNAを操作可能に連結することによって発現ベクターに導入される組み換えDNA分子であり得る。重鎖又は軽鎖をコードするポリヌクレオチドを異なるベクター又は同じベクターにクローニングすることができることが当業者には認識される。好ましい実施形態では、上記ポリヌクレオチドを同じベクターにクローニングする。ベクターは、当該技術分野で既知の方法によって原核(例えば、細菌)又は真核(例えば、酵母又は哺乳動物)細胞等の適切な宿主細胞に導入することができる(例えば、"Current Protocol in Molecular Biology", Ausubel et al. (eds.), Greene Publishing Assoc. and John Wiley Interscience, New York, 1989 and 1992を参照されたい)。多数のクローニングベクターが当業者に既知であり、適切なクローニングベクターの選択には選択の余地がある。遺伝子は、プロモーター、リボソーム結合部位(細菌発現のため)及び任意にオペレーター(本明細書で「制御」要素として総称される)の制御下に置き、この発現構成を有するベクターによって形質転換される宿主細胞において所望のタンパク質をコードするDNA配列がRNAに転写されるようにすることができる。コード配列は、シグナルペプチド又はリーダー配列を含有しても又は含有しなくてもよい。宿主細胞における発現により、本開示の抗体又は抗体フラグメントが得られる。これらの工程は、当業者に既知の種々の方法で達成することができる。概して、かかる工程は通例、好適な宿主細胞を、抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸又はベクター又は感染粒子で形質転換又はトランスフェクトすることを含む。さらに、かかる工程は通例、上記宿主細胞を該宿主細胞の増殖(繁殖、成長)に適した条件下で培養すること、及びコードされる抗体又は抗体フラグメントの産生(発現、合成)に適した条件下での培養工程を含む。増殖又は発現に適した条件下での宿主細胞の培養は通例、細胞の成長又は発現の誘導に適した成分を含む培地の存在下で達成される。特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントを作製する方法は、産生された抗体又は抗体フラグメントを宿主細胞又は培地から単離する工程を更に含む。選択される発現系及び宿主に応じて、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、上記の発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を対象のタンパク質が発現される条件下で成長させることによって産生される。次いで、タンパク質を宿主細胞から単離し、精製する。発現系によりタンパク質が成長培地中に分泌される場合、タンパク質を培地から直接精製することができる。タンパク質が分泌されない場合、細胞溶解物から単離するか又は細胞膜画分から回収する。適切な成長条件及び回収方法の選択は、当業者の技能の範囲内である。次いで、本開示の抗体又は抗体フラグメントを当業者に既知の多数の技法によって精製することができる。
【0143】
結合
一実施形態では、本開示は、ヒトGPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0144】
一実施形態では、本開示は、配列番号1、配列番号4、配列番号5及び/又は配列番号6のアミノ酸配列を含むヒトGPVIのアイソフォーム及びハプロタイプに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列によってコードされるヒトGPVIに特異的である。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、配列番号4、配列番号5及び/又は配列番号6のアミノ酸配列によってコードされるヒトGPVIの細胞外ドメインに特異的である。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的である。一実施形態では、本開示は、配列番号1によってコードされるポリペプチドに特異的な抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、配列番号1、配列番号4、配列番号5及び/又は配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体である。更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。
【0145】
一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、GPVIの細胞外ドメインに結合する。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVIの細胞外ドメインのD1ドメインに結合する。別の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVIの細胞外ドメインのD2ドメインに結合する。
【0146】
本開示の抗体又は抗体フラグメントは、カニクイザル及び齧歯類GPVI、例えばマウス又はラットGPVIに対して交差反応性である。一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、マウス、ラット及び/又はカニクイザルに由来するGPVI等の別の種のGPVIと交差反応性である。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPIV及びラットGPVIに特異的である。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、カニクイザルGPVIに特異的である。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、マウスGPVIに特異的である。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、ラットGPVIに特異的である。
【0147】
一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI及びマウスGPVIに特異的である。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIに特異的である。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、ヒトGPVI及びカニクイザルGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、ヒトGPVI及び齧歯類GPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、上記齧歯類GPVIは、マウス及びラットGPVIである。
【0148】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPIV及びラットGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0149】
別の実施形態では、本開示は、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPIV及びラットGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、
を含む、抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0150】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0151】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0152】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。
【0153】
親和性
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、5×10-2M未満、1×10-2M未満、5×10-3M未満、1×10-3M未満、5×10-4M未満、1×10-4M未満、5×10-5M未満、1×10-5M未満、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、1×10-12M未満、5×10-13M未満、1×10-13M未満、5×10-14M未満、1×10-14M未満、5×10-15M未満又は1×10-15M未満の解離速度定数(K)でGPVIに対して一価親和性を有する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0154】
或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12M又は1×10-13M未満の解離速度定数(K)でGPVIに対して一価親和性を有する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0155】
或る特定の実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、10nM以下、より好ましくは1nM以下、更により好ましくは0.5nM以下の一価親和性でGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0156】
更なる実施形態では、本開示は、70pM以下の一価親和性でヒトGPVIに結合する単離抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、90pM以下の一価親和性でカニクイザルGPVIに結合する。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、100pM以下の一価親和性でヒトGPVI及びカニクイザルGPVIに結合する。
【0157】
また更なる実施形態では、本開示は、30nM以下、好ましくは9nM以下、好ましくは1nM以下の一価親和性でマウスGPVIに結合する単離抗体又は抗体フラグメントに関する。また更なる実施形態では、本開示は、100pM以下の一価親和性でヒト及びカニクイザルGPVIに結合し、9000pM以下、好ましくは1000pM以下の一価親和性でマウスGPVIに結合する単離抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0158】
更なる実施形態では、本開示は、100pM以下の一価親和性でヒトGPVIに結合し、1000pM以下の一価親和性でマウスGPVIに結合する、本開示による単離抗体又は抗体フラグメントに関する。実施形態では、上記一価親和性は、Fabフォーマットで決定される。
【0159】
一実施形態では、上記単離抗体又は抗体フラグメントの一価親和性は、本明細書で実施例5に記載される溶液平衡滴定(Solution Equilibrium Titration;SET)によって、可溶性GPVIを用いて決定される。
【0160】
一実施形態では、上記GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む。
【0161】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0162】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0163】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。
【0164】
或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、ELISAアッセイにおいて決定される60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下、0.6nM以下、0.5nM以下、0.4nM以下、0.4nM以下、0.2nM以下、0.1nM以下のEC50濃度でGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0165】
或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、ELISAアッセイにおいて決定される10nM以下のEC50濃度でヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、ELISAアッセイにおいて決定される、1nMのEC50濃度でヒトGPVI及びカニクイザルGPVIに結合し、10nM以下のEC50濃度でマウスGPVIに結合し、60nM以下のEC50濃度でラットGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。好ましい実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、ELISAアッセイにおいて決定される、1nMのEC50濃度でヒトGPVI及びカニクイザルGPVIに結合し、5nM以下のEC50でマウスGPVIに結合し、20nM以下のEC50濃度でラットGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、ELISAアッセイにおいて決定される16nM以下のEC50濃度でヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。或る特定の実施形態では、本開示は、ELISAアッセイにおいて決定される2nM以下のEC50でヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIに特異的に結合する、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0166】
更なる実施形態では、上記GPVIをプレートの表面にコーティングする。
【0167】
一実施形態では、上記EC50濃度は、本明細書で実施例3に記載されるELISAアッセイによって、可溶性GPVI/Fcを用いて決定される。
【0168】
一実施形態では、上記GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む。
【0169】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0170】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0171】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。
【0172】
或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、Cell-ELISAアッセイにおいて決定される15nM以下、14nM以下、13nM以下、12nM以下、11nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下、0.6nM以下、0.5nM以下、0.4nM以下、0.4nM以下、0.2nM以下又は0.1nM以下のEC50濃度でGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0173】
一実施形態では、上記EC50濃度は、本明細書で実施例4に記載されるCell-ELISAアッセイにおいて決定される。
【0174】
或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、Cell-ELISAアッセイにおいて決定される15nM以下、好ましくは6nM以下のEC50濃度でヒトGPVI、カニクイザルGVPI及びマウスGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0175】
或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、Cell-ELISAアッセイにおいて決定される、1nM以下のEC50濃度でヒトGPVIに結合し、2nM以下のEC50濃度でカニクイザルGPVIに結合し、6nM以下のEC50濃度でマウスGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。或る特定の実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な単離抗体又は抗体フラグメントであって、Cell-ELISAアッセイにおいて決定される15nM以下、好ましくは6nM以下のEC50濃度でマウスGPVIに結合する、抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0176】
更なる実施形態では、上記GPVIは、細胞の表面上に存在する。更なる実施形態では、上記GPVIは、組み換え細胞の表面上に存在する。更なる実施形態では、上記GPVIは、血小板の表面上に存在する。更なる実施形態では、上記GPVIはヒト、カニクイザル又はマウス血小板の表面上に存在する。
【0177】
一実施形態では、上記GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のアミノ酸配列を有するLCDR3領域、
を含む。
【0178】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0179】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0180】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。一実施形態では、上記FabはヒトFabである。
【0181】
機能的実施形態
概して、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、GPVIとコラーゲンとの間の相互作用を防止又は阻害し、GPVIにより媒介されるシグナル伝達経路を防止、阻害又は低減し、及び/又はGPVIが関与する生物学的経路及び機構を変調するために使用することができる。
【0182】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントであって、GPVI媒介シグナル伝達を特異的に妨げることが可能である、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0183】
機能活性をアッセイする方法には、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)及び当該技術分野で既知の他の方法等の結合アッセイを用いることができる(Hampton, R. et al. (1990; Serological Methods a Laboratory Manual, APS Press, St Paul, MN)及びMaddox, D.E. et al. (1983; J. Exp. Med. 158:1211-1216を参照されたい)。代替的には、アッセイにより、in vivo又はin vitroのいずれかでGPVIへの結合の結果として生物学的応答を引き起こす本開示の抗体又は抗体フラグメントの能力を試験することができる。かかるアッセイは、本明細書に記載される。他の好適なアッセイが当業者に既知である。コラーゲンへのGPVIの結合を測定する方法は、特定の方法に限定されず、他の従来の方法によって行うこともできる。
【0184】
一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、GPVI活性に拮抗する。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、GPVI活性を中和する。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、GPVIシグナル伝達を阻害する。
【0185】
GPVI-コラーゲン結合の阻害
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVI結合を阻害することが可能である。一実施形態では、GPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVIの結合を阻害する。実施形態では、上記GPVIは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIからなる群から選択される。
【0186】
或る特定の実施形態では、GPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI又はマウスGPVIの結合を阻害する。
【0187】
一実施形態では、GPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を阻害する。更なる実施形態では、GPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVIの結合を阻害し、該GPVIはマウスGPVIである。或る特定の実施形態では、GPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVIの結合を阻害し、該コラーゲンはヒトコラーゲン、ラット大動脈コラーゲン、ウサギ大動脈コラーゲン又はカニクイザル大動脈コラーゲンである。
【0188】
或る特定の実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を30nM未満、20nM未満、10nM未満、9nM未満、8nM未満、7nM未満、6nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、100pM未満、90pM未満、80pM未満、70pM未満、60pM未満、50pM未満、40pM未満、30pM未満、20pM未満、10pM未満、9pM未満、8pM未満、7pM未満、6pM未満、5pM未満、4pM未満、3pM未満、2pM未満又は1pM未満のIC50濃度で阻害する。
【0189】
実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を15nM以下、更により好ましくは10nM以下のIC50濃度で阻害する。或る特定の実施形態では、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を10nM以下のIC50濃度で阻害する。
【0190】
或る特定の実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのマウスGPVIの結合を30nM以下のIC50濃度、好ましくは15nM以下のIC50濃度、好ましくは10nM以下のIC50濃度で阻害する。
【0191】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を30nM未満、20nM未満、10nM未満、9nM未満、8nM未満、7nM未満、6nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、100pM未満、90pM未満、80pM未満、70pM未満、60pM未満、50pM未満、40pM未満、30pM未満、20pM未満、10pM未満、9pM未満、8pM未満、7pM未満、6pM未満、5pM未満、4pM未満、3pM未満、2pM未満又は1pM未満のIC50濃度で阻害する。
【0192】
更なる実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を15nM以下のIC50濃度、より好ましくは10nM以下のIC50濃度で阻害する。別の実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンへのマウスGPVIの結合を15nM以下のIC50濃度、より好ましくは10nM以下のIC50濃度で阻害する。
【0193】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVIの結合を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、100%阻害する。
【0194】
一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVIの結合を200nMの濃度で少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、100%阻害する。
【0195】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVIの結合を200nMの濃度で少なくとも98%阻害する。
【0196】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を200nMの濃度で少なくとも98%阻害する。
【0197】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに結合し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を少なくとも98%阻害する。
【0198】
また別の実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を200nMの濃度で少なくとも98%阻害する。
【0199】
更なる実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を15nM以下のIC50濃度、好ましくは10nM以下のIC50濃度で阻害し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を少なくとも98%阻害する。
【0200】
更なる実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を15nM以下のIC50濃度、好ましくは10nM以下のIC50濃度で阻害し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を200nMの濃度で少なくとも98%阻害する。
【0201】
また別の実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンへのヒトGPVI、カニクイザルGPVI及びマウスGPVIの結合を15nM未満のIC50濃度、好ましくは10nM以下のIC50濃度で少なくとも98%阻害し、10nM以下、好ましくは1nM以下の解離速度定数(K)でGPVIに対して一価親和性を有する。
【0202】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、
を含む。
【0203】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0204】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0205】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。一実施形態では、上記FabはヒトFabである。
【0206】
IC50濃度及び/又は最大達成阻害効果は、ELISA、SET、FACS又はMSD(Meso Scale Discovery)によって決定することができる。一実施形態では、IC50濃度及び/又は最大達成阻害効果は、本明細書で実施例6に記載される受容体阻害アッセイにおいて決定される。一実施形態では、IC50濃度及び/又は最大達成阻害効果は、本明細書で実施例6に記載される方法によって決定することができる。
【0207】
細胞接着
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲン等のGPVIのリガンドへのヒトGPVI発現細胞の接着を阻害する。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVI発現細胞の接着を阻害する。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのヒトGPVI発現細胞の接着を阻害する。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンコーティング表面に対するヒトGPVI発現細胞の接着を阻害する。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンコーティング表面に対するヒトGPVI発現細胞の接着を阻害する。
【0208】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンへのGPVI発現細胞の接着を3nM以下、2nM以下、1nM以下、100pM以下、90pM以下、80pM以下、70pM以下、60pM以下、50pM以下、40pM以下、30pM以下、20pM以下、10pM以下、9pM以下、8pM以下、7pM以下、6pM以下、5pM以下、4pM以下、3pM以下、2pM以下又は1pM以下のIC50濃度で阻害する。
【0209】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンに対するヒトGPVI発現細胞の接着を3nM以下、好ましくは2nM以下のIC50濃度で阻害する。
【0210】
また別の実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンに対するヒトGPVI発現細胞の接着を3nM以下、好ましくは2nM以下のIC50濃度で阻害する。
【0211】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンに対するGPVI発現細胞の接着を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、実質的に100%阻害する。
【0212】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンに対するGPVI発現細胞の接着を200nMの濃度で少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、100%阻害する。
【0213】
一実施形態では、本開示の上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンに対するヒトGPVI発現細胞の接着を200nMの濃度で少なくとも85%阻害する。
【0214】
また別の実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンに対するヒトGPVI発現細胞の接着を200nMの濃度で少なくとも85%阻害する。
【0215】
また別の実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒトGPVI、カニクイザルGPVI、マウスGPVI及びラットGPVIに特異的に結合し、コラーゲンに対するヒトGPVI発現細胞の接着を3nM以下、好ましくは2nM以下のIC50濃度で阻害し、コラーゲンに対するヒトGPVI発現細胞の接着を200nMの濃度で少なくとも85%阻害する。
【0216】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む。
【0217】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0218】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0219】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。一実施形態では、上記FabはヒトFabである。
【0220】
IC50濃度及び/又は最大達成阻害効果は、ELISA、SET、FACS又はMSD(Meso Scale Discovery)によって決定することができる。一実施形態では、IC50濃度及び/又は最大達成阻害効果は、本明細書で実施例7に記載される細胞接着アッセイにおいて決定される。一実施形態では、IC50濃度及び/又は最大達成阻害効果は、本明細書で実施例7に記載される方法によって決定することができる。
【0221】
凝集
本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒト多血小板血漿及びヒト全血の両方においてコラーゲン等のGPVIリガンドによって誘導される血小板凝集を阻害することが可能である。
【0222】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲン等のGPVIのリガンドに応答した血小板凝集を阻害する。一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンにより誘導される血小板凝集を阻害する。一実施形態では、上記コラーゲンはヒト、ウサギ又はカニクイザルコラーゲンである。
【0223】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、0.25μg/mL以上、0.5μg/mL以上、1μg/mL以上、2μg/mL以上、3.3μg/mL以上、5μg/mL以上、10μg/mL以上の濃度で使用した場合にコラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を阻害する。
【0224】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、100%阻害する。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、少なくとも3.3μg/mlの濃度で使用した場合にコラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、100%阻害する。
【0225】
一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を100%阻害する。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、10μg/mL以上の濃度で使用した場合にコラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を実質的に100%阻害する。
【0226】
一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、3.3μg/mLの濃度で使用した場合にコラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を少なくとも70%阻害する。
【0227】
一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、カニクイザル大動脈コラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を阻害する。更なる実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、少なくとも3.3μg/mL以上の濃度で使用した場合、好ましくは10μg/mLの濃度で使用した場合にカニクイザル大動脈コラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を阻害する。一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、10μg/mLの濃度で使用した場合にカニクイザル大動脈コラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集を少なくとも50%阻害する。
【0228】
一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンにより誘導される血小板凝集を阻害するが、他の血小板凝集誘導物質(例えば、GPVIの他のアゴニスト)、例えばADP、TRAP又はPAR1によって誘導される血小板凝集には影響しない。
【0229】
さらに、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒト動脈硬化性プラーク物質により誘導される血小板凝集を阻害することもできる。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、ヒト動脈硬化性プラークにより誘導されるヒト血小板凝集を実質的に100%阻害する。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、2μg/mL以上の濃度で使用した場合にヒト動脈硬化性プラークにより誘導されるヒト血小板凝集を100%阻害する。
【0230】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む。
【0231】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0232】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0233】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。一実施形態では、上記FabはヒトFabである。
【0234】
凝集に対して達成される阻害効果は、本明細書で実施例9又は実施例10に記載されるインピーダンス凝集測定法によって決定することができる。
【0235】
本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、コラーゲンコーティング表面上で流動下の血小板凝集を阻害することもできる。さらに、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、ヒト動脈硬化性プラークをコーティングした表面上で流動下のヒト血小板凝集を阻害することもできる。本開示の抗体又は抗体フラグメントは、ヒト動脈硬化性プラークをコーティングした表面上で流動下の血小板凝集を阻害することもできる。本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、ヒト動脈硬化性プラークによって誘導される流動下の血小板凝集を阻害することもできる。
【0236】
或る特定の実施形態では、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、流動下のヒト動脈硬化性プラークにより誘導される血小板凝集を少なくとも95%阻害する。或る特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、2.0μg/mL以上の濃度で使用した場合に流動下のヒト動脈硬化性プラークにより誘導される血小板凝集を少なくとも95%阻害する。或る特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、2.0μg/mL以上の抗体濃度で使用した場合に流動下のヒト動脈硬化性プラークにより誘導されるヒト血小板凝集を少なくとも95%阻害する。或る特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、2.0μg/mL以上の抗体濃度で使用した場合に流動下の経時的なヒト動脈硬化性プラークにより誘導される血小板凝集を少なくとも95%阻害する。
【0237】
或る特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、アセチルサリチル酸とチカグレロルとの組合せと比較して、流動下の経時的な動脈硬化性プラークにより誘導される血小板凝集の阻害により効果的である。或る特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、2.0μg/mLの抗体濃度で使用した場合に、アセチルサリチル酸とチカグレロルとの組合せと比較して、流動下の経時的な動脈硬化性(arteriosclerotic)プラークにより誘導される血小板凝集の阻害により効果的である。
【0238】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む。
【0239】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0240】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0241】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。一実施形態では、上記FabはヒトFabである。
【0242】
流動条件下での凝集に対して達成される阻害効果は、本明細書で実施例11に記載されるように決定することができる。
【0243】
in vivo活性
本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで血栓形成(例えば、血小板凝集及び接着)を阻害又は防止することもできる。
【0244】
一実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、in vivoでコラーゲン結合に応答して血栓を形成する血小板の能力を阻害する。
【0245】
本明細書で実施例12に記載される方法において、本開示による抗体フラグメントは、3mg/kg以下、1mg/kg以下、0.3mg/kg以下又は0.1mg/kg以下の抗体濃度でコラーゲンにより誘導される血小板の血栓形成を投与前の値又は対照値と比較して20%、40%以上、60%以上、80%以上、90%以上又は95%以上減少させる活性を有する。
【0246】
本明細書で実施例12に記載される方法において、抗体フラグメントは、約3.3mg/kgの抗体濃度で血小板の血栓形成を投与前の値又は対照値と比較して20%相当、40%以上、より好ましくは60%以上、80%以上、90%以上又は95%以上減少させるin vivo活性を有する。
【0247】
本明細書で実施例12に記載される方法において、抗体フラグメントは、約3.3mg/kgの抗体濃度でin vivoでの血栓形成を実質的に完全に防ぐin vivo活性を有する。
【0248】
安全性
出血
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、被験体における出血時間の増加を誘導しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、被験体における出血時間を実質的又は顕著に延長しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、被験体における出血時間を延長しない。一実施形態では、被験体において出血時間を延長する本開示の抗体又は抗体フラグメントの能力は弱い。
【0249】
出血時間は、公に知られている方法によってアッセイすることができ、具体的には実施例14に記載の方法が適用可能であり得る。
【0250】
一実施形態では、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、治療有効量、例えば0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kgで被験体における出血時間を実質的に延長しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、10mg/kgの濃度で出血時間を実質的に延長しない。
【0251】
具体的には、出血時間は5倍以下、好ましくは3倍以下、2倍以下、1.5倍以下であるか、又は投与前の値、正常値若しくは対照と実質的に等しい。
【0252】
本開示の抗体又は抗体フラグメントは、アセチルサリチル酸単独での投与と比較して、アセチルサリチル酸と同時投与した場合に治療有効量で出血時間を実質的に延長しない。
【0253】
本開示の抗体又は抗体フラグメントは、アセチルサリチル酸単独での投与と比較して、アセチルサリチル酸(ASA)と同時投与した場合に治療有効量、例えば0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kgで出血時間を延長しない。
【0254】
血小板数
本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで血小板数の減少を実質的に誘導しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、被験体に投与した場合にin vivoで血小板数の減少を実質的に誘導しない。本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで血小板数に対して活性を有しないのが好ましい。
【0255】
したがって、一実施形態では、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、被験体に投与した場合に血小板減少症を実質的に誘導しない。更なる実施形態では、本開示の上記抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで血小板減少症を実質的に誘導しない。
【0256】
in vivoでの血小板減少症は、本開示の抗体又は抗体フラグメントのin vivo投与後に経時的に血液を採取し、血小板の数を従来の方法で算出し、その数を投与前の値又は対照としての個体の血小板の数と比較することによって決定することができる。in vivoでの血小板減少症は、本開示の実施例15に記載されるように決定することができる。
【0257】
一実施形態では、本開示のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで投与した場合、例えば治療有効量で投与した場合に血小板数の減少、すなわち血小板減少症を誘導しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで投与した場合、例えば0.01mg/kg~100mg/kgの範囲の量で投与した場合に血小板数の減少、すなわち血小板減少症を誘導しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで投与し、10mg/kgの濃度で投与した場合に血小板数の減少、すなわち血小板減少症を誘導しない。
【0258】
本開示の抗体又は抗体フラグメントによって低下した後の血小板数は、投与前の値又は対照値を100%として設定した場合に、好ましくは50%以上、70%以上、90%以上、又は上記抗体の投与前の血小板数若しくは対照と実質的に同じである。
【0259】
本開示の抗体又は抗体フラグメントによって低下した後の血小板数は、投与前の値又は対照値を100%として設定し、抗体を例えば0.3mg/kg、好ましくは1mg/kg、より好ましくは3mg/kg、更に好ましくは10mg/kgの濃度で投与した場合に50%以上、70%以上、90%以上、又は好ましくは上記抗体の投与前の血小板数若しくは対照とほぼ同じである。
【0260】
細胞表面発現/脱落/内在化
GPVIは下方制御するか、又は血小板膜若しくは表面から枯渇させることができる。このGPVIタンパク質レベルの変調は、リガンド(コラーゲン等)結合及びその後の受容体活性化によって誘発することができ、例えばGPVIの細胞外ドメインの切断(例えば、脱落)又はリガンドにより誘導されるGPVI受容体内在化をもたらす。血小板活性化は、リガンドの機能を模倣するGPVIに特異的な抗体の関与によっても生じ得る。GPVIに特異的な抗体がGPVIのアゴニストリガンドの機能を模倣する場合、その抗体をGPVIのアゴニストとみなすことができる。
【0261】
一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、血小板を実質的に活性化しない、好ましくは活性を有しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで血小板を実質的に活性化しない、好ましくは活性を有しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、血小板の表面上のGPVIに結合し、血小板上でのGPVI経路の活性化を防ぐ。
【0262】
一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで血小板の表面からのGPVIの枯渇を誘導しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、被験体に投与した場合に血小板表面からのGPVIの枯渇を誘導しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで血小板表面からGPVIを実質的に枯渇させない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで該抗体又は抗体フラグメントと血小板とを接触させた場合に血小板表面からGPVIを実質的に枯渇させない。
【0263】
一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで投与した場合、例えば0.01mg~500mgの範囲の治療有効量で投与した場合に血小板表面からのGPVIの枯渇を誘導しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、in vivoで10mg/kgの濃度で投与した場合に血小板表面からのGPVIの枯渇を誘導しない。
【0264】
一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、該抗体又は抗体フラグメントと血小板とを接触させた場合に、血小板GPVIの脱落、特に血小板活性化に伴うメタロプロテアーゼ媒介切断による血小板GPVIの脱落によって血小板表面からGPVIを実質的に枯渇させない。
【0265】
本開示の抗体又は抗体フラグメントは、血小板表面からのGPVIの脱落、特に血小板活性化に伴うメタロプロテアーゼ媒介切断による血小板からのGPVIの脱落を実質的に誘導しない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを血小板と接触させること、特に該抗体又は抗体フラグメントを血小板とin vivoで接触させることによって血小板表面からのGPVIの枯渇を誘導しない。
【0266】
かかる活性は、本開示の抗体又は抗体フラグメントを血小板と所与の時間にわたって接触させ、続いて血小板を単離し、表面上でのGPVIの発現レベルをアッセイすることによって確認することができる。GPVIの発現レベルは、FACS等を用いる従来の方法によって測定することができ、具体的な方法を実施例16で説明する。
【0267】
本開示の抗体又は抗体フラグメントは、0.1mg/kg以上、0.3mg/kg以上、1mg/kg以上、3mg/kg又は10mg/kg以上の濃度で、血小板表面からのGPVIの枯渇を被験体への投与前の値又は対照値と比較して20%以上、40%以上、60%以上、80%以上、90%以上誘導しない。
【0268】
本開示の抗体又は抗体フラグメントは、血小板と本開示の抗体又は抗体フラグメントとを接触させることによって、血小板からのGPVIの内在化により血小板表面上のGPVIを実質的に枯渇させない。
【0269】
血小板活性化
抗体は、完全免疫グロブリンとして存在する場合、二価分子であるため、コラーゲン等のその天然のアゴニストリガンドと同様に、血小板の表面上でのGPVI受容体クラスタリング、ひいては血小板活性化を誘導する可能性がある。これを回避するために、本開示の発明者らは、GPVIに特異的な一価抗体又は抗体フラグメント、特にFabフラグメントを開発した。
【0270】
しかしながら、本来は免疫グロブリンの分解産物としてのみ存在するFabは、依然として患者に特異的に血小板活性化を誘導する能力を示す。これは、被験体の血清中に存在する既存の抗体によって認識され、特異的に結合され得るエピトープを形成するFabのC末端(C-terminal end (C-terminus))に起因すると考えられる。次いで、これらの既存の抗体は、二価又は多価抗体分子の回復のために免疫応答を引き起こし、望ましくない血小板活性化をもたらす可能性がある。かかる抗Fab抗体のエピトープを形成するアミノ酸配列は、自己抗原配列と称され得る(Kormeier et al. (1968) J. Immunol. 100(3); 612-21、Persselin and Stevens (1985) J. Clin. Invest. 76; 723-30)。したがって、「非自己抗原配列」という用語は、本明細書で使用される場合、被験体に存在する既存の抗体によって認識されるエピトープではない又はそれを形成しないアミノ酸配列を指す。
【0271】
アミノ酸配列が自己抗原配列として作用するかを決定するために、試験対象の特定の配列を含むペプチド構築物をヒト血清に曝露して、ペプチド構築物を認識し、それに特異的に結合する抗体が血清中に存在するかを決定することができる。より具体的には、免疫グロブリンの特定のアミノ酸配列が自己抗原配列であるかを特定するために、IgG分子を、例えばプロテアーゼのパネルで切断し、C末端領域に種々の配列を有するIgGフラグメントを得ることができる。代替的には、ペプチド及びポリペプチドは、IgG C末端領域の配列に対してモデル化されるペプチド合成又は組み換えDNA技術によって作製することができる。いずれの場合にも、ヒト血清をスクリーニングして、それぞれ特定の露出C末端アミノ酸配列又は合成ペプチドに結合する既存の抗体が存在するかを決定することができる。
【0272】
虚血性イベントの治療のための安全な治療法を提供するために、Fab等の開発された抗体フラグメントのこの活性化能が存在しないか又は非常に弱いことを確実にする必要がある。したがって、一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的なFabは血小板を実質的に活性化せず、好ましくは活性を有しない。血小板の活性化は、既知の方法によって測定することができ、血小板表面抗原、好ましくはCD62Pの発現レベルを指標として用いることができる。
【0273】
例えば、一価抗体又は抗体フラグメントを投与した被験体から所与の期間の後に血小板を単離し、CD62Pの発現レベルを従来の方法によって測定する方法、本開示によるGPVIに特異的な一価抗体又は抗体フラグメントを被験体から単離された血小板と接触させ、所与の期間の後にCD62Pの発現レベルを従来の方法によってアッセイする方法等が含まれる。具体的な方法を実施例13に示す。
【0274】
したがって、一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的なFabは、被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による該Fabの認識のために血小板を実質的に活性化することがない。更なる実施形態では、本開示のGPVIに特異的なFabは、CD62P等の血小板上の細胞表面活性化マーカーの発現を実質的に誘導しない。
【0275】
本願の発明者らは、Fab重鎖のC末端での修飾が、血小板活性化を誘導するかかるFabの能力を、例えば被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による上記GPVIに特異的なFabの認識を防止することによって更に低減、防止又は阻害し得ることを実証した。
【0276】
本明細書で「による認識の防止」又は「の結合の防止」は、本開示によるGPVIに特異的なFabが、被験体の血清中に存在する抗Fab抗体の存在のために血小板表面上のGPVIを架橋し、GPVIシグナル伝達を活性化することがないことを意味する。かかる架橋は、天然のリガンド(コラーゲン等)の活性を模倣し、GPVI受容体活性化をもたらすことができる。言い換えると、本開示のFabは、アンタゴニストとして作用する代わりにアゴニストとして作用することができる。GPVI受容体機能を中和するアンタゴニストGPVI特異抗体若しくは抗体フラグメント、又はGPVIの機能を活性化するアゴニストGPVI特異抗体若しくは抗体フラグメントは、GPVIの機能を反映するin vivoマーカーをアッセイすることによって評定することができる。
【0277】
したがって、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的な抗体フラグメントを提供する。一実施形態では、上記抗体フラグメントはFabである。かかる重鎖定常領域の修飾は、Fab重鎖のC末端での又はC末端への1つ以上のアミノ酸残基の付加又は置換を含む。
【0278】
したがって、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、修飾重鎖定常領域が被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による該Fabの認識を防止又は阻害する、Fabを提供する。
【0279】
本開示の一実施形態では、GPVIに特異的なFabの重鎖定常領域は、1つ以上のアミノ酸の付加又は置換、好ましくは2つ以上のアミノ酸、例えばアミノ酸配列(例えば、ポリペプチド)の付加又は置換によって修飾することができる。かかる付加又は置換されるポリペプチドは、本開示のFab中に導入された場合に非自己抗原配列を構成することができ、GPVIへの該Fabの結合を妨げない限りにおいて任意のアミノ酸配列であり得る。
【0280】
本明細書で使用される場合、「改変された」又は「修飾された」は、Fab重鎖のC末端にアミノ酸伸長(例えば、付加)又は置換を含有するように遺伝的に改変されたFabを指す。
【0281】
一実施形態では、ポリペプチドをFab重鎖のC末端に付加する。一実施形態では、ポリペプチドをFabのCH1ドメインのC末端に付加する。代替的には、存在する場合にFab重鎖のC末端のヒンジ部分をポリペプチドで置換する。一実施形態では、上記Fabのヒンジ部分は、アミノ酸配列EPKSC(配列番号101)を含むか又はそれからなる。
【0282】
そのため、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、本開示によるGPVIに特異的なFabであって、修飾重鎖定常領域がN末端からC末端に向かって順にCH1ドメインと非自己抗原配列を構成することが可能なポリペプチドとを含み、該修飾重鎖定常領域が被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による該Fabの認識を防止又は阻害する、Fabを提供する。
【0283】
一実施形態では、上記被験体はヒトである。一実施形態では、上記CH1ドメインはヒトCH1ドメインである。
【0284】
一実施形態では、上記ポリペプチドは、非自己抗原配列を構成する。一実施形態では、上記ポリペプチドは、1個~100個のアミノ酸、1個~50個のアミノ酸、1個~20個のアミノ酸、1個~15個のアミノ酸、又は1個~10個のアミノ酸、又は1個~5個のアミノ酸、又は1個のアミノ酸を含む。
【0285】
一実施形態では、上記ポリペプチドは、Fabの重鎖と軽鎖との間のジスルフィド結合の形成を可能にし、分子を安定化するシステインを1つのみ含む。特定の実施形態では、上記システインは、本開示のFabの修飾重鎖定常領域の最後のアミノ酸残基である。本開示の更なる実施形態では、システインは、第1のFab分子の重鎖定常領域と第2のFab分子の重鎖定常領域との間のジスルフィド結合の形成を可能にしない。本開示の更なる実施形態では、非自己抗原配列は、(Fab)分子の形成を防ぐ。本開示の更なる実施形態では、上記ポリペプチドは、1つ以下のシステインを含有する。
【0286】
一実施形態では、非自己抗原配列を構成することが可能なポリペプチドは、アミノ酸配列ERRX2X3GIGHKC(配列番号102)を含み、ここで、X2及びX3は、システイン以外の任意の自然発生アミノ酸残基であり得る。一実施形態では、上記ポリペプチドは、ERRNGGIGHKC(配列番号103)、EERNGGIGHKC(配列番号104)、ERRQGGIGHKC(配列番号105)及びVPREC(配列番号106)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一実施形態では、上記ポリペプチドは、アミノ酸配列ERRQGGIGHKC(配列番号105)からなる。非自己抗原配列を構成することが可能な上記ポリペプチドが、例えば作製される本開示のFab中に存在する潜在的翻訳後修飾部位又は潜在的T細胞エピトープを除去するために付加的なアミノ酸置換を含み得ることが本開示の範囲内である。
【0287】
そのため、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、本開示によるGPVIに特異的なFabであって、修飾重鎖定常領域がN末端からC末端に向かって順にCH1ドメインと該FabのC末端に付加する場合に非自己抗原配列を構成することが可能なポリペプチドとを含み、該ポリペプチドがアミノ酸配列ERRQGGIGHKC(配列番号105)からなり、上記修飾重鎖定常領域が被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による上記Fabの認識を防止又は阻害する、Fabを提供する。
【0288】
一実施形態では、上記CH1ドメインは、ヒトIgG1 CH1ドメイン、ヒトIgG2 CH1ドメイン、ヒトIgG3 CH1ドメイン及びヒトIgG4 CH1ドメインからなる群から選択される。一実施形態では、上記CH1ドメインは、ヒトIgG1 CH1ドメインである。実施形態では、上記CH1ドメインは、野生型ヒトIgG1 CH1ドメイン、野生型ヒトIgG1 CH1ドメインの任意のアロタイプであるか、又は野生型ヒトIgG1 CH1ドメインのアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。
【0289】
或る特定の実施形態では、上記修飾重鎖定常領域は、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKIVPREC(配列番号107)、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVERRNGGIGHKC(配列番号108)、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVEKKVERRNGGIGHKC(配列番号109)、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKGVERRNGGIGHKC(配列番号110)、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKEVERRNGGIGHKC(配列番号111)、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEERNGGIGHKC(配列番号112)、及び、
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKEVERRQGGIGHKC(配列番号113)、
又は配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112若しくは配列番号113と多くとも10個のアミノ酸が異なるか、又はこれらの配列のいずれかと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0290】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、本明細書で開示されるGPVIに特異的なFabであって、該修飾重鎖定常領域がアミノ酸配列:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKEVERRQGGIGHKC(配列番号113)からなる、Fabを提供する。
【0291】
或る特定の実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域と、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、並びに、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、
からなる群から選択されるVH及びVLの組合せとを含む、GPVIに特異的なFabであって、上記修飾重鎖定常領域が配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112及び配列番号113からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、Fabを提供する。一実施形態では、上記修飾重鎖定常領域は、配列番号113からなる。
【0292】
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的なFabであって、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、並びに、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、
からなる群から選択されるVH及びVLの組合せを含み、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112及び配列番号113からなる群から選択される修飾重鎖定常領域を更に含む、Fabを提供する。好ましい実施形態では、上記修飾重鎖定常領域は、配列番号113からなる。
【0293】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、配列番号21の重鎖及び配列番号19の軽鎖を含む、Fabに関する。
【0294】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、配列番号32の重鎖及び配列番号30の軽鎖を含む、Fabに関する。
【0295】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、配列番号43の重鎖及び配列番号41の軽鎖を含む、Fabに関する。
【0296】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、配列番号54の重鎖及び配列番号52の軽鎖を含む、Fabに関する。
【0297】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、配列番号21の重鎖及び配列番号19の軽鎖からなる、Fabに関する。
【0298】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、配列番号32の重鎖及び配列番号30の軽鎖からなる、Fabに関する。
【0299】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、配列番号43の重鎖及び配列番号41の軽鎖からなる、Fabに関する。
【0300】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabであって、配列番号54の重鎖及び配列番号52の軽鎖からなる、Fabに関する。
【0301】
更なる実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabに関し、該Fabは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0302】
一実施形態では、本開示は、修飾重鎖定常領域を含む、本開示によるGPVIに特異的なFabであって、修飾重鎖定常領域がN末端からC末端に向かって順にCH1ドメインと非自己抗原配列を構成することが可能なポリペプチドとを含み、該修飾重鎖定常領域が被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による該Fabの認識を防止又は阻害し、該Fabが配列番号43の重鎖及び配列番号41の軽鎖からなる、Fabを提供する。
【0303】
したがって、本開示は、GPVIに特異的なFabを使用する場合に被験体の血清中に存在する抗Fab抗体による血小板活性化を防ぐ方法であって、
(a)重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む、GPVIに特異的なFabを準備することと、
(b)非自己抗原を構成することが可能なポリペプチドを上記Fabの重鎖定常領域のC末端に付加又は置換することと、
を含む、方法も提供する。
【0304】
交差競合/エピトープ
実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される抗体又は抗体フラグメントと交差競合する抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、表1~表4に開示される抗体の1つのKabatによって規定される6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0305】
別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合し、HCDR1が配列番号11のアミノ酸配列であり、HCDR2が配列番号12のアミノ酸配列であり、HCDR3が配列番号13のアミノ酸配列であり、LCDR1が配列番号14のアミノ酸配列であり、LCDR2が配列番号15のアミノ酸配列であり、LCDR3が配列番号16のアミノ酸配列である、抗体又は抗体フラグメントに関する。別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号17によるVH及び配列番号18によるVLを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0306】
別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合し、HCDR1が配列番号22のアミノ酸配列であり、HCDR2が配列番号23のアミノ酸配列であり、HCDR3が配列番号24のアミノ酸配列であり、LCDR1が配列番号25のアミノ酸配列であり、LCDR2が配列番号26のアミノ酸配列であり、LCDR3が配列番号27のアミノ酸配列である、抗体又は抗体フラグメントに関する。別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号28によるVH及び配列番号29によるVLを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0307】
別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合し、HCDR1が配列番号34のアミノ酸配列であり、HCDR2が配列番号34のアミノ酸配列であり、HCDR3が配列番号35のアミノ酸配列であり、LCDR1が配列番号36のアミノ酸配列であり、LCDR2が配列番号37のアミノ酸配列であり、LCDR3が配列番号38のアミノ酸配列である、抗体又は抗体フラグメントに関する。別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号39によるVH及び配列番号40によるVLを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0308】
別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合し、HCDR1が配列番号44のアミノ酸配列であり、HCDR2が配列番号45のアミノ酸配列であり、HCDR3が配列番号46のアミノ酸配列であり、LCDR1が配列番号47のアミノ酸配列であり、LCDR2が配列番号48のアミノ酸配列であり、LCDR3が配列番号49のアミノ酸配列である、抗体又は抗体フラグメントに関する。別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号50によるVH及び配列番号51によるVLを含む抗体又は抗体フラグメントと交差競合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0309】
別の実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される抗体又は抗体フラグメントと交差競合し、ELISAベースの交差競合アッセイにおいてGPVIへの表1~表4に開示される抗体のいずれか1つの結合を少なくとも60%、70%、80%又は90%低減する抗体又は抗体フラグメントに関する。或る特定の実施形態では、表1~表4に開示される抗体又は抗体フラグメントと交差競合する抗体又は抗体フラグメントは、実施例17によるELISAベースの交差競合アッセイにおいてGPVIへの表1~表4に記載される抗体の1つの結合を少なくとも60%、70%、80%又は90%低減する。
【0310】
別の実施形態では、本開示は、(例えば、結合、安定化、空間分布により)表1~表4に開示される抗体の1つと同じエピトープに結合する抗体又は抗体フラグメントに関する。更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、(例えば、結合、安定化、空間分布により)表1~表4に開示される抗体の1つのKabatによって規定される6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合する。また別の実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、(例えば、結合、安定化、空間分布により)表1~表4に開示される抗体の1つのKabatによって規定される6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと同じGPVIのエピトープに結合する。また別の実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、(例えば、結合、安定化、空間分布により)表1~表4に開示される抗体の1つのKabatによって規定される6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと同じ、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドのエピトープに結合する。
【0311】
別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合し、HCDR1が配列番号11のアミノ酸配列であり、HCDR2が配列番号12のアミノ酸配列であり、HCDR3が配列番号13のアミノ酸配列であり、LCDR1が配列番号14のアミノ酸配列であり、LCDR2が配列番号15のアミノ酸配列であり、LCDR3が配列番号16のアミノ酸配列である、抗体又は抗体フラグメントに関する。別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号17によるVH及び配列番号18によるVLを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0312】
別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合し、HCDR1が配列番号22のアミノ酸配列であり、HCDR2が配列番号23のアミノ酸配列であり、HCDR3が配列番号24のアミノ酸配列であり、LCDR1が配列番号25のアミノ酸配列であり、LCDR2が配列番号26のアミノ酸配列であり、LCDR3が配列番号27のアミノ酸配列である、抗体又は抗体フラグメントに関する。別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号28によるVH及び配列番号29によるVLを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0313】
別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合し、HCDR1が配列番号34のアミノ酸配列であり、HCDR2が配列番号34のアミノ酸配列であり、HCDR3が配列番号35のアミノ酸配列であり、LCDR1が配列番号36のアミノ酸配列であり、LCDR2が配列番号37のアミノ酸配列であり、LCDR3が配列番号38のアミノ酸配列である、抗体又は抗体フラグメントに関する。別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号39によるVH及び配列番号40によるVLを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0314】
別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、6つのCDRを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合し、HCDR1が配列番号44のアミノ酸配列であり、HCDR2が配列番号45のアミノ酸配列であり、HCDR3が配列番号46のアミノ酸配列であり、LCDR1が配列番号47のアミノ酸配列であり、LCDR2が配列番号48のアミノ酸配列であり、LCDR3が配列番号49のアミノ酸配列である、抗体又は抗体フラグメントに関する。別の実施形態では、本開示は、抗体又は抗体フラグメントであって、配列番号50によるVH及び配列番号51によるVLを含む抗体又は抗体フラグメントと同じエピトープに結合する、抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0315】
エピトープを含む所与のポリペプチドの領域は、当該技術分野で既知の様々なエピトープマッピング法を用いて特定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E.Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, New Jerseyを参照されたい。例えば、エピトープは、例えばタンパク質分子の部分に対応する多数のペプチドを固体支持体上で同時に合成し、ペプチドを支持体に付着させたままでペプチドと抗体とを反応させることによって決定することができる。かかる技法は、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第4,708,871号、Geysen et al., (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8:3998-4002、Geysen et al., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:78-182、Geysen et al., (1986) Mol. Immunol. 23:709-715に記載されている。同様に、エピトープは、例えば水素/重水素交換、x線結晶構造解析及び二次元核磁気共鳴等によってアミノ酸の空間立体配座を決定することによって容易に特定される。例えば、Epitope Mapping Protocols(上掲)を参照されたい。タンパク質の抗原性領域は、例えばOxford Molecular Groupから入手可能なOmigaバージョン1.0ソフトウェアプログラムを用いて算出されるもの等の標準的な抗原性及び疎水性プロットを用いて特定することもできる。このコンピュータプログラムには、抗原性プロファイルを決定するHopp/Woods法(Hopp et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci USA 78:3824-3828)及び疎水性プロットのためのKyte-Doolittle法(Kyte et al., (1982) J. Mol. Biol. 157:105-132)が用いられる。
【0316】
或る特定の実施形態では、本開示の抗体と同じGPVI上のエピトープに結合する抗体又は抗体フラグメントは、ヒトモノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。或る特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントと同じGPVI上の直線状エピトープに結合する抗体又は抗体フラグメントは、ヒトモノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。或る特定の実施形態では、本開示の抗体と同じGPVI上の立体構造エピトープに結合する抗体又は抗体フラグメントは、ヒトモノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。かかるヒトモノクローナル抗体又は抗体フラグメントは、本明細書に記載されるように調製し、単離することができる。
【0317】
治療方法
本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、GPVIの望ましくない存在と関連する血栓性障害又は血管障害又は病態の予防法又は治療に用いることができる。
【0318】
一実施形態では、本開示は、医薬に使用される本開示による抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、治療を必要とする被験体の治療に使用される、本開示による抗体又は抗体フラグメントに関する。一実施形態では、本開示は、薬剤の調製に使用される、本開示による抗体又は抗体フラグメントに関する。実施形態では、本明細書で開示される方法は、それを必要とする被験体に本開示による抗体又は抗体フラグメントを投与することを含む。本開示は、GPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態の治療及び/又は予防法のための薬剤の調製に使用される、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントの使用にも関する。一実施形態では、本開示は、GPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態の予防法又は治療のための方法を提供する。
【0319】
或る特定の実施形態では、本開示は、被験体における血栓性障害又は血管障害の予防法又は治療のための方法を提供する。
【0320】
GPVIに関連する血栓性又は血管(例えば、心血管)障害又は病態としては、例えばアテローム血栓症を含む動脈血栓症、虚血性イベント、急性冠動脈症候群、心筋梗塞(心臓発作)、急性脳血管虚血(脳卒中)、経皮冠動脈インターベンション、ステント留置血栓症(stenting thrombosis)、虚血性再狭窄、虚血(急性及び慢性)、大動脈及びその分岐の障害(大動脈瘤、血栓症等)、末梢動脈障害、静脈血栓症、急性静脈炎及び肺塞栓症、癌関連血栓症(トルソー症候群)、炎症性血栓症、並びに感染に関連する血栓症を挙げることができるが、これらに限定されない。GPVIの望ましくない存在と関連する更なる障害又は病態は、出血性障害又は病態(例えば、出血傾向及び/又は出血時間延長等)、例えば血小板減少症、例えば特発性血小板減少性紫斑病(ITP)又は免疫性血小板減少症であり得るが、これらに限定されない。また別の実施形態では、GPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態は、炎症及び/又は癌を含み得る。
【0321】
一実施形態では、本明細書で開示される方法は、被験体に治療有効量の本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを投与する工程を含む。一実施形態では、上記被験体はヒトである。代替的な実施形態では、上記被験体は、ラット又はマウス等の齧歯類である。一実施形態では、本開示は、GPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態の治療に使用される、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントに関する。
【0322】
本開示は、GPVI受容体機能及び下流のシグナル伝達を阻害し、それによりGPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態を予防又は治療する方法であって、本開示による抗体又は抗体フラグメントを被験体に投与することを含む、方法に更に関する。
【0323】
本開示は、血小板数、血小板表面のGPVIの存在又は出血時間に影響を及ぼすことなくGPVI受容体機能及び下流のシグナル伝達を阻害する方法に関する。
【0324】
本開示は、コラーゲンへのGPVIの結合を防止又は阻害し、それによりGPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態を治療又は予防する方法であって、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを被験体に投与することを含む、方法に更に関する。一実施形態では、コラーゲンへのGPVIの結合を防止又は阻害する方法は、被験体における血小板数、血小板表面のGPVIの存在又は出血時間に影響を及ぼさない。
【0325】
本開示は、コラーゲンへの血小板接着を阻害又は防止し、それによりGPVI関連病態を治療する方法であって、本開示による抗体又は抗体フラグメントを被験体に投与することを含む、方法に更に関する。一実施形態では、コラーゲンへのGPVIの接着を防止又は阻害する方法は、被験体における血小板数、血小板表面のGPVIの存在又は出血時間に影響を及ぼさない。
【0326】
別の実施形態では、本開示による抗体又は抗体フラグメントは、血小板凝集の阻害に使用される。このため、本開示は、コラーゲンにより誘導される血小板凝集を阻害又は防止し、それによりGPVI関連病態を治療する方法であって、本開示による抗体又は抗体フラグメントを被験体に投与することを含む、方法に更に関する。一実施形態では、コラーゲンにより誘導される血小板凝集を防止又は阻害する方法は、被験体における血小板数、血小板表面のGPVIの存在又は出血時間に影響を及ぼさない。
【0327】
本開示は、血小板活性化を阻害又は防止し、それによりGPVI関連病態を治療する方法であって、本開示による抗体又は抗体フラグメントを被験体に投与することを含む、方法に更に関する。一実施形態では、血小板活性化を防止又は阻害する方法は、被験体における血小板数、血小板表面のGPVIの存在又は出血時間に影響を及ぼさない。
【0328】
本開示は、被験体におけるコラーゲン結合に応答した血栓形成を防止又は阻害する方法であって、本開示による抗体又は抗体フラグメントを被験体に投与することを含む、方法に更に関する。一実施形態では、被験体におけるコラーゲン結合に応答した血栓形成を防止又は阻害する方法は、被験体における血小板数、血小板表面のGPVIの存在又は出血時間に影響を及ぼさない。
【0329】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示される方法は、血小板と本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントとを接触させることを含む。
【0330】
一実施形態では、被験体は、GPVIと関連する障害又は病態、好ましくは血栓性又は血管障害及び/又はイベントの影響を受ける、好ましくはそれと診断される。一実施形態では、被験体は、GPVIと関連する障害又は病態、好ましくは血栓性又は血管障害及び/又はイベントを発症するリスクがある。リスクの例としては、家族歴(例えば、遺伝性素因等)、民族性、年齢、たばこ曝露、高血圧(high blood pressure (hypertension))、高コレステロール、肥満、身体的機能低下、糖尿病(特に2型糖尿病)、不健康な食事及び有害なアルコール使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0331】
一実施形態では、本明細書に開示される方法で投与される、GPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号11のHCDR1領域、配列番号12のHCDR2領域、配列番号13のHCDR3領域、配列番号14のLCDR1領域、配列番号15のLCDR2領域及び配列番号16のLCDR3領域、又は、
b)配列番号22のHCDR1領域、配列番号23のHCDR2領域、配列番号24のHCDR3領域、配列番号25のLCDR1領域、配列番号26のLCDR2領域及び配列番号27のLCDR3領域、又は、
c)配列番号33のHCDR1領域、配列番号34のHCDR2領域、配列番号35のHCDR3領域、配列番号36のLCDR1領域、配列番号37のLCDR2領域及び配列番号38のLCDR3領域、又は、
d)配列番号44のHCDR1領域、配列番号45のHCDR2領域、配列番号46のHCDR3領域、配列番号47のLCDR1領域、配列番号48のLCDR2領域及び配列番号49のLCDR3領域、
を含む。
【0332】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号17のVH及び配列番号18のVL、又は、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は、
c)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、又は、
d)配列番号50のVH及び配列番号51のVL、又は、
配列番号17、28、39若しくは50のVH及び配列番号18、29、40若しくは51のVLに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%の同一性を有するVH及びVL、
を含む。
【0333】
更なる実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、
a)配列番号20のHC及び配列番号19のLC、又は、
b)配列番号21のHC及び配列番号19のLC、又は、
c)配列番号31のHC及び配列番号30のLC、又は、
d)配列番号32のHC及び配列番号30のLC、又は、
e)配列番号42のHC及び配列番号41のLC、又は、
f)配列番号43のHC及び配列番号41のLC、又は、
g)配列番号53のHC及び配列番号52のLC、又は、
h)配列番号54のHC及び配列番号52のLC、
を含む。
【0334】
一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、単離モノクローナル抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記抗体又は抗体フラグメントは、一価抗体又は抗体フラグメントである。一実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはscFv、Fv、Fab及びFab’からなる群から選択される。好ましい実施形態では、上記一価抗体又は抗体フラグメントはFabである。
【0335】
組成物
本開示の組成物は、血栓性障害又は血管障害の予防法又は治療のための本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントと薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物であるのが好ましい。かかる担体、希釈剤及び賦形剤は、当該技術分野で既知であり、当業者であれば、本開示のGPVI抗体又は抗体フラグメントによる被験体の治療に最適な配合物及び投与経路が分かる。
【0336】
一実施形態では、本開示は、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントと薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0337】
これらの組成物に使用することができる薬学的に許容可能な賦形剤としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、ホスフェート等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0338】
一実施形態では、GPVIに特異的な上記抗体又は抗体フラグメントは、薬学的又は治療的に有効な量で存在する。
【0339】
一実施形態では、本開示は、GPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態の治療に使用される、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを含む医薬組成物に関する。別の実施形態では、GPVIの望ましくない存在と関連する上記病態は、血栓性障害又は血管障害である。一実施形態では、本開示は、GPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態の治療のための薬剤の調製における、本明細書で開示されるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを含む上記医薬組成物の使用に関する。別の実施形態では、GPVIの望ましくない存在と関連する上記障害又は病態は、血栓性障害又は血管障害である。一実施形態では、本開示は、GPVIの望ましくない存在と関連する障害又は病態の治療への上記医薬組成物の使用に関する。別の実施形態では、GPVIの望ましくない存在と関連する上記障害又は病態は、血栓性障害又は血管障害である。
【0340】
別の実施形態では、被験体における血栓性障害又は血管障害を治療する方法であって、治療有効量の本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを含む医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。別の実施形態では、被験体は、治療を必要とする被験体である。好ましい実施形態では、上記被験体はヒトである。代替的な実施形態では、上記被験体は、ラット又はマウス等の齧歯類である。一実施形態では、本開示は、表1~表4に開示される、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントと薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。一実施形態では、上記医薬組成物は、血栓性障害又は血管障害の治療又は予防法のためのものである。
【0341】
別の実施形態では、本開示は、被験体における血栓性障害又は血管障害の予防法のための方法であって、血栓性障害又は血管障害の治療のための本開示の抗体若しくは抗体フラグメント、又はかかる抗体若しくは抗体フラグメントと薬学的に許容可能な担体若しくは賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0342】
「予防法」は、これに関連して使用される場合、障害の発症を防ぐことを目的とするか又は障害の発症を遅らせる方法を指す。幾つかの実施形態では、上記被験体はヒトである。代替的な実施形態では、上記被験体は、ラット又はマウス等の齧歯類である。
【0343】
本明細書で使用される「投与」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、髄腔内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技法を含む。
【0344】
一実施形態では、本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを含む本開示の組成物は、静脈内投与される。治療有効量の本開示の抗体又は抗体フラグメントを、それを必要とする被験体に投与するのが好ましい。
【0345】
本開示の抗体若しくは抗体フラグメント、本開示の組成物、医薬組成物又は薬剤の一日総使用量が、主治医によって正しい医学的判断の範囲内で決定されることが理解される。任意の特定の患者についての具体的な治療上効果的な用量レベルは、治療される障害及び障害の重症度;用いられる特定のタンパク質の活性;用いられる特定の組成物、被験体の年齢、体重、全身状態、性別及び食生活;投与時期、投与経路及び用いられる特定のタンパク質の排出率;治療期間;用いられる特定のタンパク質と組み合わせて又は同時に使用される薬物を含む様々な要因、並びに医学分野において既知の同様の要因によって決まる。例えば、化合物の用量を、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで開始し、投与量を所望の効果が達成されるまで徐々に増大することが十分に当業者の技能の範囲内である。しかしながら、抗体又は抗体フラグメントの一日投与量は、1被験体当たり1日0.01mg~500mgの広い範囲にわたって変化し得る。組成物は、治療対象の患者に対する投与量の対症調整(symptomatic adjustment)のために1.0mg、2.5mg、5.0mg、10.0mg、15.0mg、25.0mg、50.0mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg又は500mgの活性成分を含有するのが好ましい。薬剤は通例、0.01mg~1000mgの活性成分、好ましくは1mg~500mgの活性成分を含有する。
【0346】
一実施形態では、本開示は、GPVIの望ましくない存在と関連する障害若しくは病態、又はGPVI関連病態の治療及び/又は予防及び/又は予防法及び/又は療法において同時、別々又は順次に使用される医薬品の製造への本開示によるGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを含む組成物の使用に関する。好ましい実施形態では、本開示の組成物は、GPVIに特異的なFabを含む医薬組成物であるのが好ましい。
【0347】
特定方法
一実施形態では、本開示は、GPVIに特異的なアンタゴニスト抗体又は抗体フラグメントを特定する方法であって、
a)哺乳動物の多血小板血漿とGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントとを接触させる工程と、
b)コラーゲンの添加によって血小板の凝集を開始させる工程と、
c)工程(b)において決定される凝集と、工程(a)のGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントを添加せずに多血小板血漿にコラーゲンを添加した場合に得られる凝集とを比較する工程と、
を含み、工程(a)において記載される抗体又は抗体フラグメントの存在下での血小板の凝集の減少が、該抗体又は抗体フラグメントが本開示によるGPVIの阻害剤又はアンタゴニストであることを示す、方法を提供する。
【0348】
一実施形態では、血小板の凝集の減少は、工程(a)に記載の抗体又は抗体フラグメントの存在下で少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%減少する。
【0349】
診断
本開示は、生体サンプル中のGPVIの検出への本開示によるヒトGPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントの使用に更に関する。本開示の抗体又は抗体フラグメントを用いることができるアッセイの例としては、ELISA、サンドイッチELISA、RIA、FRCS、組織の免疫組織化学、ウエスタンブロット及び免疫沈降が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本開示の抗体又は抗体フラグメントは、診断又は検出目的で標識することができる。本明細書で標識されたとは、化合物が化合物の検出を可能にするために付着した少なくとも1つの要素、同位体又は化学化合物を有することを意味する。
【0350】
本開示の一実施形態では、GPVIに特異的な抗体又は抗体フラグメントは、GPVI発現の変化の診断に使用することができる。血小板表面上のGPVIの発現の変化、並びに血漿中の可溶性GPVI(GPVIの切断型細胞外ドメイン)の発限度及び濃度が急性冠動脈症候群、一過性虚血発作又は脳卒中等の病態生理学的状態と関連し得ることが記載されている(Bigalke B, et al., Eur J Neurol., 2009 Jul 21、Bigalke B. et al., Semin Thromb Hemost. 2007 Mar;33(2): 179-84))。
【0351】
このため、これらのパラメーターの測定は、抗血栓治療を必要とし、おそらくは特に抗GPVI治療に感受性がある、上述の病態のリスクがある被験体を特定するために用いられ得る。したがって、本明細書に記載される抗体及び抗体フラグメントは、診断ツールとして使用することができ、血小板表面上及び血漿サンプル中のGPVIの存在及び定量的変化を決定する診断キットの一部とすることができる。
【0352】
被験体におけるGPVI変化を診断するかかる方法は、
a)上記患者の血小板又は血漿サンプルと本開示による抗体又は抗体フラグメントとを接触させることと、
b)上記サンプル中に存在する細胞への上記抗体又は抗体フラグメントの結合を測定することと、
c)工程(ii)において測定される結合と正常参照被験体又は標準の結合とを比較することと、
を含み得る。
【0353】
本開示の別の目的は、本開示の少なくとも1つの抗体又は抗体フラグメントを含むキットである。「キット」は、GPVIの発現を特異的に検出するための少なくとも1つの試薬、すなわち、例えば抗体又は抗体フラグメントを含む任意の製品(例えば、パッケージ又は容器)を意図する。キットは、本発明の方法を行うユニットとして販売促進、分配又は販売することができる。さらに、キットの試薬のいずれか又は全てを、それらを外的環境から保護する容器、例えば密閉容器内で提供することができる。キットは、キット及びその使用方法を説明する添付文書を含んでいてもよい。
【0354】
抗体配列
【0355】
【表1】
【0356】
【表2】
【0357】
【表3】
【0358】
【表4】
【0359】
【表5】
【実施例
【0360】
実施例1:抗原生成及び品質管理
ヒト、カニクイザル、マウス及びラットに由来するGPVIのアミノ酸配列を公開ソース(例えば、Uniprot)から検索し、社内で作製した。
【0361】
組み換え可溶性細胞外ドメイン
可溶性GPVIは、そのC末端でヒトFc配列に融合したGPVIの細胞外ドメインに相当する。この可溶性GPVIは、GPVI-Fcと称される場合もある。
【0362】
ヒトGPVI-1A(配列番号4)、ヒトGPVI-1B(配列番号5)、ヒトGPVI-2A(配列番号6)、カニクイザルGPVI(配列番号7)、マウスGPVI(配列番号8)及びラットGPVI(配列番号9)の細胞外ドメイン(ECD)を、KpnI及びEcoRVを用いて発現ベクターpMAX_vk_Fc2(K105~K330)にクローニングし、C末端Fc2(K105~K330)融合構築物を得た。Fc2(K105~K330)は、配列番号10に開示されるアミノ酸配列を有する。
【0363】
ヒト、カニクイザル、マウス又はラットGPVIの細胞外ドメインのコード化DNAを、N末端Vκリーダー配列及びC末端ヒトIgG Fcタグとインフレームで、pcDNA3.1(Thermo Fisher)をベースとする修飾発現ベクターであるpMAX発現ベクターにクローニングした。HKB11 #52(親クローン:米国特許第6,136,599号。J. Biomed. Sci. 2002;9:631-638)細胞を、37℃及び6%COの加湿COインキュベーターにおいて2.0mM L-アラニル-L-グルタミン、0.1%PF-68を含有するMAC1.0培地中で維持した。HKB11 #52細胞を、播種の翌日にFectoPro(商標)及びFectoPro(商標) Booster(Polyplus)を用い、製造業者の説明書に従って一過性にトランスフェクトした。細胞を3日間培養し、馴化細胞培養上清を遠心分離によって採取し、続いて滅菌濾過した。抗原を、HiTrap MabSelect SuReカラム(GE Healthcare)を用いるプロテインAクロマトグラフィーによって精製した。結合及び洗浄の後、タンパク質を100mMグリシン(Glycin)(pH3.0)で溶出させた。全てのアフィニティークロマトグラフィー工程を、AKTA Express(GE Healthcare)クロマトグラフィーシステムを用いて行った。サンプルを続いて中和し(3M Tris(pH8)を用いる)、PD10カラム(GE Healthcare)を用いてPBSにバッファー交換した。サンプルの品質を変性、還元又は非還元SDS-PAGE、HP-SEC及びDLSによって分析した。
【0364】
GPVIを過剰発現する組み換え細胞
CHO細胞にヒトGPVI(配列番号1)、カニクイザルGPVI(配列番号2)又はマウスGPVI(配列番号3)のいずれかを安定にトランスフェクトした。
【0365】
Flp-In CHO細胞(Invitrogen)に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)をトランスフェクション試薬として用いてヒト、カニクイザル又はマウスGPVIの完全長タンパク質をコードするpcDNA5/FRT/TOベクターを安定にトランスフェクトした。細胞を、下記のフルオロサイトメトリーによってGPVIを一様に発現する細胞集団が観察されるまでハイグロマイシンB(Roth)を含有する選択培地中で培養した。細胞バンクを生成し、その後の実験に使用した。
【0366】
ラット好塩基性RBL-2H3細胞(ACC 312、DSMZ)に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)をトランスフェクション試薬として用いて完全長ヒトGPVIをコードするpcDNA3.1ベクターを安定にトランスフェクトした。細胞を、Geneticin(Gibco)を含有する選択培地中で4週間培養した。高いGPVI発現を有する細胞の単一クローン選択を、FACS Ariaセルソーター(BD Biosciences)を用いて行った。単一クローンを選択培地中で増殖させ、フルオロサイトメトリーによってGPVI発現レベルを確認した。最も強いGPVI発現を有する細胞クローンを細胞バンク生成のために選択し、更なる実験で使用した。
【0367】
トランスフェクト細胞のGPVI発現レベルのフルオロサイトメトリー評価のために、細胞をSuperblock(Thermo Scientific)中でブロッキングし、続いてSuperblockで5μg/mlの最終濃度まで希釈したGPVI特異Fabと共に氷上で60分間インキュベートした。3%ウシ胎児血清(FCS)及び0.02%アジ化ナトリウムを添加したPBSで洗浄した後、細胞をSuperblockで希釈したPEコンジュゲート抗F(ab’)2検出抗体(Jackson Immuno Research)と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞を再び洗浄し、細胞をFACS Array(BD Biosciences)において評価した。
【0368】
実施例2:MorphoSysのYlanthia(商標)ライブラリーからのGPVI特異抗体の選択
抗体生成のために、MorphoSysのYlanthia(商標)ライブラリーを用いてGPVIに対するFabフラグメントを選択した。MorphoSysのYlanthia(商標)ライブラリー(Tiller et al. mAbs 5:3, 1-26; May/June (2013)及び米国特許第8,728,981号)は、市販のファージミドライブラリーであり、Fabをファージ表面上に提示させるCysDisplay(商標)技術を用いる(Lohning et al.、国際公開第2001/05950号)。
【0369】
GPVI特異抗体を特定するために、種々のパニング戦略を用いた。各パニング戦略は、実施例1に記載の異なる種に由来する様々なGPVI抗原(可溶性ECD-Fc融合体として又はCHO細胞上で過剰発現される)に対する少なくとも3回の個々のパニングを含むものであった。単離及び特定されたクローンを成熟させ、親和性、機能性及び安全性が増大するように改変した。したがって、数百個のクローンをスクリーニングし、機能性を、例えば、
ELISA、Cell-ELISA及び/又は溶液平衡滴定(SET)によって決定されるヒト、カニクイザル、マウス及びラットGPVIへの結合、
種々のGPVIコラーゲン基質へのGPVIの結合の阻害、
を含むin vitroアッセイにおいて厳密に試験した。
【0370】
最後に、4つのリード分子(Fab#1、Fab#2、Fab#3、Fab#4)を選択した。これらを下記で概説される実施例において更に説明する。
【0371】
4つのリードFab分子の各々を、野生型ヒトFab重鎖定常領域又は配列番号113による修飾ヒト重鎖定常領域のいずれかを有することにより2つの変異体で生成し、産生させた。
【0372】
哺乳動物産生のために、ヒトFabフラグメントをサブクローニング手順によって細菌から哺乳動物のFabフォーマットに変換した。抗体をコードするベクターを酵素的に消化し、得られるベクター骨格をYlanthia(商標)哺乳動物発現カセットとライゲートし、それぞれの哺乳動物ヒトFabベクターに更にサブクローニングした。
【0373】
本開示による修飾重鎖定常領域の生成のために、設計した重鎖定常領域全体をコードするDNAを二本鎖DNAフラグメントとして合成した。相同重複配列を有する修飾重鎖定常領域を含む、得られる合成線状DNAフラグメントを、続いて親Fab重鎖定常領域を置き換えることによって対応する哺乳動物ヒトFabベクターにシームレスにクローニングした。
【0374】
発現及び精製のために、真核生物HKB11細胞にFabの重鎖及び軽鎖の両方をコードするpYMex10真核生物発現ベクターDNAをトランスフェクトした。細胞培養上清をトランスフェクションの3日後に採取し、抗体精製のためにCapture select IgG-CH1アフィニティークロマトグラフィー(MabSelect SURE、GE Healthcare)に供した。全サンプルを滅菌濾過した(0.2μmの細孔径)。Fabの純度を、Labchipシステム(Caliper GXII、Perkin Elmer)を用いて又はSDS-PAGEにて変性、還元及び非還元条件下で分析した。タンパク質濃度をUV分光光度法によって決定し、IgG調製物を未変性状態で分析するためにHP-SECを行った。
【0375】
参照対照抗体RefFab#1:
特許文献9(SANOFI)に開示されるヒト化GPVI抗体のVH(配列番号99)及びVL(配列番号100)をコードするヌクレオチド配列を、社内で又は外部供給者により適切な隣接領域(例えば、好適な制限酵素認識部位、リンカー配列)を有する線状DNAフラグメントとして遺伝子合成した。合成した全てのDNAフラグメントを、標準的な分子生物学方法を用い、グリシン-セリン(glycin-serin)リンカー(GS)をFab重鎖のC末端に更に付加して、適切な哺乳動物Fab発現ベクター(上記)にクローニングした。
【0376】
実施例3:ELISAによって決定されるヒト、カニクイザル、マウス及びラットGPVIへの一価Fabの結合
材料及び方法
0.5nM~2nMの組み換えGPVI-Fc融合タンパク質(実施例1に記載)を、Maxisorpマイクロタイタープレートに4℃で一晩コーティングした。プレートを、0.05%Tween-20を添加したPBS(PBST)で洗浄し、続いてPBSで希釈した5%スキムミルク粉末(MPBS)により室温(RT)で1時間ブロッキングした。PBSTで洗浄した後、5%スキムミルク粉末を含むPBST(MPBST)で600nM~1pMの範囲の濃度に段階希釈したFab(修飾重鎖定常領域を含む)をRTで1時間添加した。プレートをPBSTで洗浄した。結合したFabを、MPBSTで希釈した、ヒトF(ab’)2フラグメントに対するアルカリホスファターゼコンジュゲート検出抗体(Jackson Immuno Research)を用いて検出した。0.05%Tween-20を添加したTBS(TBST)で洗浄した後、ddHOで希釈したAttoPhos基質(Roche)を添加し、蛍光強度をTecan Infinite 200Proリーダーで測定した。EC50値を、Prism 5ソフトウェア(GraphPad)を用いて算出した。
【0377】
ヒト、カニクイザル、マウス及びラットGPVIの細胞外ドメインに用いられる配列を配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9に記載する。
【0378】
結果及び結論
表5に示されるように、全てのFab(修飾重鎖定常領域を含む)がヒトGPVIアイソフォーム及びハプロタイプに結合し、カニクイザルGPVIと交差反応性であった。本開示によるFab#1~Fab#4とは対照的に、RefFab#1は、組み換えマウス及びラットGPVIに結合しなかった。
【0379】
【表6】
【0380】
実施例4:Cell-ELISAによって決定される組み換え細胞の細胞表面上で発現されるヒト、カニクイザル又はマウスGPVIへの一価Fabの結合
材料及び方法
ヒト、カニクイザル又はマウスGPVI(それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3;実施例1に記載される)を安定にトランスフェクトしたCHO細胞を、96ウェル高結合プレート(Meso Scale Discovery)にて5000細胞/ウェルの密度で成長培地に播種し、37℃及び5%COで一晩培養した。細胞を、5%BSAを添加した(supplied)PBSでブロッキングした後、0.5%BSAを添加したPBSで300nM~5pMの濃度に段階希釈したFab(修飾重鎖定常領域を含む)と共にインキュベートした。洗浄後に、結合したFabをヒトF(ab’)2フラグメントに対するECLコンジュゲート検出抗体(Jackson Immuno Research)を用いて検出した。MSDリードバッファー(Meso Scale Discovery)を細胞に添加した後、Sector Imager6000(Meso Scale Discovery)で読み取った。EC50値を、Prism 5ソフトウェア(GraphPad)を用いて算出した。
【0381】
結果及び結論
表6に示されるように、Fab#1~Fab#4(修飾重鎖定常領域を含む)は、細胞上で発現されたヒト及びカニクイザルGPVIを認識し、細胞表面で発現されたマウスGPVIへの結合を示した。ELISAにおいて観察されるように、RefFab#1は、マウスGPVIを発現する細胞に結合しなかった。
【0382】
【表7】
【0383】
実施例5:溶液平衡滴定(SET)によって決定されるGPVIに対する一価Fabの親和性決定
材料及び方法
KD決定のために、分析SECによって分析される少なくとも90%のモノマー含量を有するFabタンパク質のモノマー画分を用いた。溶液中での親和性決定は、基本的に文献(Friguet et al. 1985)に記載されるように行った。SET法の感度及び精度を改善するために、古典的ELISAからECLベースの技術(Haenel et al. 2005)に移行した。
【0384】
1mg/mLヤギ抗ヒト(Fab)2フラグメント特異抗体(Dianova)を、MSD Sulfo TAG(商標) NHS-Ester(Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MD,USA)で製造業者の説明書に従って標識した。実験を、ポリプロピレンマイクロタイタープレートにおいて0.5%BSA及び0.02%Tween20を含有するPBS(GIBCO 14190、pH7.0~7.2)をアッセイバッファーとして行った。非標識ヒトGPVI-Fc(配列番号4)、カニクイザルGPVI-Fc(配列番号7)及びマウスGPVI-Fc(配列番号8)(実施例1において調製される)の段階希釈物を、予想KDより少なくとも10倍高い濃度から始めて調製した。抗原を含まないウェルをBmax値の決定に用い、アッセイバッファーのみを含有するウェルをバックグラウンドの決定に用いた。適切な量の結合剤(予想KDと同様又はそれを下回る抗体濃度、最終容量60μL)を添加した後、混合物をRTで一晩インキュベートした。MSDプレートを、それぞれ標準及びストレプトアビジンプレートにて抗原又はビオチン化抗原でコーティングした(30μL/ウェル)。0.05%Tween 20を含むPBSでプレートを洗浄した後、平衡化したサンプルをプレートに移し、20分間インキュベートした。インキュベーション後に、30μL/ウェルのMSD-Sulfo-tag標識検出抗体(抗ヒト(Fab)2、通例2000倍の最終希釈率)を洗浄したMSDプレートに添加し、エッペンドルフシェーカー(700rpm)にてRTで30分間インキュベートした。MSDプレートを洗浄し、界面活性剤を含む30μL/ウェルのMSDリードバッファーTを添加した後、電気化学発光シグナルをSector Imager 6000(Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MD,USA)を用いて検出した。データを、専用適合モデルを適用するXLfit(IDBS)ソフトウェアを用いて評価した。FabのKD決定のために、Abraham et al.に従って修正したHaenel et al. 2005による適合モデルを用いた。
【0385】
結果及び結論
結果を表7にまとめる。本開示の試験した全てFab(修飾重鎖定常領域を含む)が2桁のピコモル範囲でヒト及びカニクイザルGPVIに対して親和性を示した。Fab#1及びFab#2は、それぞれ28nM及び7nMの適度なより弱い親和性でマウスGPVIに結合したが、Fab#4及びFab#3は、マウスGPVIに対してナノモル以下の親和性を示した。RefFab#1について、マウスGPVIに対する親和性は、ELISA及びcell ELISAにおいて確認される結合の欠如のために決定されなかった。
【0386】
【表8】
【0387】
実施例6:FACSによって決定されるヒト、カニクイザル又はマウス血小板の細胞表面上で発現されたGPVIへの一価Fabの結合
材料及び方法
最大4例のドナーに由来する多血小板血漿(PRP)を、連続的な(without brake)150×gで15分間のクエン酸全血の遠心分離によって調製した。得られる上清を、下層の白血球に富んだ中間相を乱すことなくPRPとして新たなサンプル管に移した。プロスタサイクリンI(PGI;Epoprostenol-Rotexmedica)を添加したタイロードバッファー(Tyrode's buffer)で慎重に洗浄した後、血小板をタイロード/PGIに再懸濁し、96ウェルV字底マイクロタイタープレートに移した。血小板に、タイロード/PGIで0.015μg/ml~30μg/mlの最終濃度に希釈したFab(修飾重鎖定常領域を含む)を加え、RTで30分間インキュベートした。血小板を慎重に洗浄して結合していないFabを除去した後、フィコエリトリン(PE)コンジュゲート検出抗体(Jackson Immuno Research)と共にRTで30分間インキュベートした。RTで30分間のインキュベーション後に、血小板をFACS Canto II(Becton Dickinson)でフローサイトメトリーによって分析した。PEが直接コンジュゲートしたFabの場合(図1D)、検出抗体とのインキュベーションを省いた。FACS Divaソフトウェア(Becton Dickinson)を用いてデータを評価した。EC50値を、Prism 5ソフトウェア(GraphPad)を用いて算出した。
【0388】
結果及び結論
例示的な1ドナーに由来する血小板上で本開示の4つ全てのFab(修飾重鎖定常領域を含む)について得られた結果を図1A図1Cに示す。3人のヒトドナーに由来する血小板に対して試験したPE直接コンジュゲートとしての抗GPVI FabであるFab#3及びFab#4(修飾重鎖定常領域を含む)についての付加的な結果を図1Dに示す。
【0389】
Fab#1~Fab#4は、ヒト、カニクイザル及びマウス血小板の細胞表面上で発現されたGPVIに対し、特異的であるが、ドナーに依存した結合を示した。Fab#1~Fab#4とは対照的に、RefFab#1についてマウス血小板上のGPVIへの結合は観察されなかった。これはELISA及びcell ELISAにおける先の結果と一致する。
【0390】
実施例7:一価Fabの競合的結合 - ELISAによって決定される種々のコラーゲン基質へのヒト、カニクイザル及びマウスGPVIの結合阻害
材料及び方法
1μg/ml又は10μg/mlの組み換えGPVIコラーゲン基質(架橋コラーゲン関連ペプチド(CRP-XL(Anaspec, Inc.)、ラット尾部コラーゲン(Enzo Life Sciences)又はVitroCol(Advanced BioMatrix, Inc.)をMSDプレートに4℃で一晩コーティングし、PBSTで洗浄し、0.05%Tween-20及び3%スキムミルク粉末を添加したPBSによりRTで1時間ブロッキングし、続いて再びPBSTで洗浄した。PBSで希釈した精製組み換えGPVI抗原(実施例1で調製されるヒト、カニクイザル又はマウスGPVI)及びPBSで希釈した様々な濃度(200μg/ml~0.3μg/mlの最終濃度範囲)のFab(修飾重鎖定常領域を含む)をポリプロピレンプレートにおいてRTで30分間インキュベートした。Fab/GPVI-Fc混合物を、コーティングしたコラーゲン基質にRTで1時間添加した。PBSTで洗浄した後、異なる種に由来する結合GPVIを、ヒトFcに対するECLコンジュゲート検出抗体(Jackson Immuno Research)を用いてRTで1時間検出した。MSDリードバッファー(Meso Scale Discovery)を添加した後、Sector Imager 6000(Meso Scale Discovery)で読み取った。FabによるGPVI/リガンド相互作用の阻害は、シグナルの減少を生じた。
【0391】
結果及び結論
結果を表8(ヒトGPVI)、表9(カニクイザルGPVI)及び表10(マウスGPVI)にまとめる。種々のGPVIコラーゲン基質に対する抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む)のIC50値及び最大達成阻害効果を示す。
【0392】
試験した全てのFabについて、マウスGPVIを除く各GPVI/基質の組合せに対して同等のIC50値が得られた。ここで、種々の基質への結合を、マウス交差反応性の欠如のためにRefFab#1によって遮断することができなかった。
【0393】
GPVI/基質結合の最大阻害に関して、Fab#2及びFab#3は、種々のコラーゲン基質へのGPVIの結合を200nMで完全に阻害し、Fab#1及びFab#4は、完全阻害に達しなかった。最も大きな差がCRP-XLを使用した場合に見られ、このGPVIへの基質の結合は、Fab#1及びFab#4によって47%~77%阻害された。
【0394】
【表9】
【0395】
【表10】
【0396】
【表11】
【0397】
実施例8:細胞接着アッセイ
材料及び方法
炭酸バッファー(15mM NaCO、35mM NaHCO、pH9.6)で希釈した組み換えGPVI基質(1μg/ml架橋コラーゲン関連ペプチド(CRP-XL(Anaspec, Inc.)又は10μg/ml VitroCol(Advanced BioMatrix, Inc.))を96ウェルマイクロタイターMaxisorpプレートに4℃で一晩コーティングした。PBSで洗浄した後、2%BSAを添加したPBSでウェルをブロッキングした。ヒトGPVIを安定にトランスフェクトしたラット好塩基性RBL-2H3細胞を培養フラスコから分離し、接着バッファー(0.5%BSA及び10mM HEPESを添加したOptiMEM)で洗浄し、2.5μg/ml Calcein-AM(Molecular Probes)を用いて37℃で30分間染色した。細胞を、接着バッファーで希釈した(100nM~10pMの最終濃度範囲)、抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む)と共に96ウェルポリプロピレンマイクロタイタープレートにおいて暗所にてRTで30分間振盪してインキュベートした。コーティング及びブロッキングしたMaxisorpプレートをPBSで洗浄し、細胞-抗体混合物と共にRTで30分間、続いて37℃で30分間インキュベートした。更に軽く洗浄した後、結合した細胞をTecan Infinite M1000 Proリーダーにおいて蛍光強度(485nmでの励起、530nmでの発光)を測定することによって評定した。細胞接着の阻害は、非処理対照細胞と比較してシグナルの低下をもたらす。
【0398】
結果及び結論
結果を、ヒトGPVIを発現するRBL-2H3細胞並びに組み換えコラーゲン基質CRP-XL及びVitroColについて表11にまとめる。IC50値及び200nMの抗体濃度での抗GPVI Fabフラグメントの最大達成阻害効果を示す。
【0399】
Fab#1~Fab#4(修飾重鎖定常領域を含む)は、コーティングしたVitroColへの細胞結合を0.57nM~1.17nMの範囲の同等の半最大濃度で強力に阻害した。CRP-XLについては、Fab#2及びFab#3で同様の結果が得られたが、Fab#1及びFab#4は、この基質への細胞結合に対して関連効果を有しなかった。
【0400】
有効性に関して、Fab#2及びFab#3は、CRP-XL及びVitroColへの細胞結合を、それぞれ完全に(100%)及びほぼ完全に(91%~93%)阻害した。VitroColに対するFab#1及びFab#4の最大阻害効果は、それぞれ55%及び59%であった。
【0401】
【表12】
【0402】
実施例9:コラーゲンにより誘導されるヒト血小板凝集の阻害 - Multiplate(商標)インピーダンス凝集測定法
材料及び方法
ヒルジン抗凝固処理血液を、Multiplate(商標)標準試験セル(Roche)において0.9%NaClで1:1希釈し、PBSで10μg/ml、3.3μg/ml、1.1μg/ml及び0.37μg/mlに予め希釈した抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む)を加え、撹拌しながら37℃で3分間プレインキュベートした。続いて、種々の血小板アゴニスト基質(CRP-XL(1μg/ml;Anaspec, Inc.)、VitroCol(100μg/ml;Advanced BioMatrix, Inc.)、ウサギ大動脈コラーゲン(4μg/ml;AdvanceCor)、カニクイザル大動脈コラーゲン(7.4μg/ml;AdvanceCor)、TRAP-6(8μM;TRAPtest、Roche)、ADP(6.5μM;ADPtest、Roche))の添加によって血小板凝集を誘導した。血小板自身に対する抗GPVI Fabの内因性アゴニスト能を評価するために、Fabの効果をアゴニストの非存在下でも調査した。次いで、血小板凝集を、Multiplate(商標)装置(Roche)において撹拌を続けながら37℃で6分間、血小板の凝集によって誘導される試験セルのセンサーワイヤ間のインピーダンスの上昇を経時的に測定することによって決定した。
【0403】
結果及び結論
表12に、GPVI依存性及びGPVI非依存性アゴニストによって誘導される血小板凝集に対する抗GPVI FabであるFab#1~Fab#4(修飾重鎖定常領域を含む)の阻害活性を示す。GPVIアゴニストであるVitroCol及びカニクイザル大動脈コラーゲンについての詳細な結果を図2A及び図2Bにそれぞれまとめる。
【0404】
要するに、結果から、本開示によるGPVI特異FabがGPVI依存性コラーゲンアゴニストによって誘導される血小板凝集を阻害したことが実証される。阻害の程度は、使用するFab及びアゴニストによって異なっていた。Fab#2及びFab#3は、ヒトコラーゲン基質CRP-XL及びVitroColによって誘導されるヒト血小板の凝集に対して最も強力な用量依存的阻害活性を示し、10μg/mlのFab濃度でヒト血小板の凝集を完全に阻害する能力を有していた。RefFab#1に対するこれら2つのFabの機能的優位性を、試験した全てのコラーゲン基質について示すことができた。GPVI非依存性アゴニストであるTRAP及びADPについては阻害効果を観察することができず、GPVI特異的な効果が示された。さらに、試験したFabのいずれもアゴニストの非存在下で血小板凝集を誘導しなかったため、Fabの内因性アゴニスト活性が除外された。
【0405】
【表13】
【0406】
実施例10:ヒト動脈硬化性プラークにより誘導されるヒト血小板凝集の阻害 - Multiplate(商標)インピーダンス凝集測定法
材料及び方法
関連疾患状況を反映するヒト血小板凝集に対する抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む)の阻害活性を評定するために、動脈硬化性プラークにより誘導される血小板凝集を、以前に記載されているように(Toth et al., Thromb Haemost, 2006)、近年修正されたプロトコル(Bampalis et al., J Thromb Haemost, 2012)に従い、Multiplate(商標)装置を用いた多重電極凝集測定法(MEA)によって静止系において測定した。ヒト動脈硬化性プラーク物質は、高度頸動脈狭窄のために動脈内膜切除術を受けた患者から得られた。
【0407】
抗体を、Multiplate(商標)キュベットにおいて0.3mlの生理食塩水で希釈した0.3mlの抗凝固処理血液中2μg/ml、1μg/ml、0.5μg/ml及び0.2μg/mlの濃度にて37℃で3分間インキュベートした後、ヒトのプールしたプラークホモジネート(333μg/ml)を加えることによって凝集を誘導した。電気インピーダンスの上昇を6分間続けて記録した。抗GPVI抗体の特異性を、GPVI非依存性アゴニストADP(0.5μM~2μM)及びPAR-1アゴニストTRAP(2μM~10μM)による凝集の誘導によって評定した。
【0408】
結果及び結論
図3に、ヒトのプールしたプラークホモジネートによって誘導される血小板凝集に対する本開示の抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む;表12による重鎖及び軽鎖配列を有する)の阻害活性を示す。結果から、試験した全てのFabについてヒトプラークにより誘導されるヒト血小板の凝集に対する強い用量依存的阻害活性が確認され、2μg/mlのFab濃度でほぼ完全な又は完全な凝集の阻害が見られる。
【0409】
実施例11:流動条件下でのヒト動脈硬化性プラークにより誘導されるヒト血小板凝集の阻害 - フローチャンバー
材料及び方法
ガラスカバースリップを、高度頸動脈狭窄のために動脈内膜切除術を受けた患者から得られたプールしたプラークホモジネート(PBS中20倍希釈)でコーティングした。カバースリップを、4%ヒト血清アルブミン(HSA)を添加したPBSでブロッキングした0.1 Luerスティッキースライド(ibidi(商標))を用いて平行板フローチャンバーに取り付けた。フローチャンバーを、インキュベーションチャンバー(37℃)を備えるTE2000-E蛍光顕微鏡(株式会社ニコン)のステージに載せた。プラークでコーティングしたフローチャンバーにPBSを灌流させ、続いて4%HSAを含有するPBSでブロッキングした。ヒルジン添加(hirudinzed)ヒト全血中の血小板を1μM DiOCで染色し、2μg/ml抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む)、P2Y12アンタゴニストであるチカグレロル又は対照と共に10分間インキュベートした。指定の場合には1mM ASAを採血中に血液に添加した。血液を600/秒のずり速度でフローチャンバーを通して灌流させた。標識した血小板の接着及び凝集を、10倍対物レンズ及びCoolSNAP HQ2 CCDカメラを用いてリアルタイムで6分間続けて記録した(1フレーム/秒)。血小板占有率(coverage)を、NIS-element 3.2ソフトウェアパッケージ(株式会社ニコン)を用いて2値蛍光面積率を定量化することによって分析した。
【0410】
結果及び結論
図4A図4Dに、生理的流動条件下でのヒトのプールしたプラークホモジネートによって誘導される血小板凝集に対する抗GPVI FabであるFab#1~Fab#4(修飾重鎖定常領域を含む;表12による重鎖及び軽鎖配列を有する)の阻害活性を示す。
【0411】
結果から、Fab#1~Fab#4が2μg/mlの濃度にてヒトプラーク物質の存在下で血小板活性化/凝集をほぼ完全に阻害することが可能であったことが強く示唆される。さらに、全てのFabが標準治療であるASAとチカグレロルとの組合せよりも明らかに優れていた(図4E)。
【0412】
実施例12:in vivo有効性 - 動脈血栓症のマウスモデルにおけるGPVI特異一価Fabの効果 - 結紮誘導血栓症モデル
材料及び方法
生体内蛍光顕微鏡検査を以前に記載されるように行った(Seizer et al., 2015)。簡潔に述べると、C57Bl/6Jバックグラウンドの遺伝子改変マウス(「ROSA」系統)を血栓形成の画像化に用いた。マウスは、緑色蛍光血小板を有する「野生型」マウスであった。マウスにミダゾラム(5mg/kg(体重))、メデトミジン(0.5mg/kg(体重))及びフェンタニル(0.05mg/kg(体重))の注射によって麻酔をかけた。総頸動脈を解離させ、続いて標準的な5分間の強い結紮によって損傷した(Seizer et al., 2015)。結紮の前に3.3mg/kgの抗GPVI又は対照Fabを尾静脈にi.v.投与した。損傷の前及び直後に血栓形成、すなわち損傷血管壁への蛍光血小板の接着及び凝集をin vivoビデオ顕微鏡法によって可視化した。1血管当たりの記録時間は20分間とした。分析を、AxioVisionソフトウェア(Carl Zeiss)を用いて指定の時点での全損傷面積に対する血栓被覆面積の割合を決定することによって行った。全ての動物実験が実験動物の管理及び使用に関するドイツの法律に従って行われ、地方自治体によって承認された。
【0413】
結果及び結論
図5及び図6に、陰性対照Fabと比較した、7つの異なる時点及び6匹の試験動物での血栓形成に対する抗GPVI FabであるFab#3(修飾重鎖定常領域を含む;配列番号43の重鎖配列及び配列番号41の軽鎖配列)の阻害活性を示す。血栓形成が陰性対照Fabで処理した全ての動物について観察されたが、3.3mg/kgの抗GPVI FabであるFab#3の静脈内ボーラス投与は、6匹の動物のうち5匹で血栓形成を顕著に阻害した。Fab#3で処理した6匹の動物のうち1匹で初期血栓形成が生じたが、長時間持続はしなかった。
【0414】
実施例13:血小板活性化 - ex vivo CD62P表面発現
材料及び方法
受容体活性化及びその後の下流のシグナル伝達を血小板活性化マーカーCD62Pの細胞表面発現の蛍光分析評定によって評価した。多血小板血漿(PRP)を、クエン酸全血を連続的な500×g、RTで15分間の遠心分離によって生成した。得られる上清を、下層の白血球に富んだ中間相を乱すことなくPRPとして新たなサンプル管に移した。PRP中の血小板を、96ウェルV字底プレートにおいて、PBSで希釈し、RTで30分間インキュベートした修飾又は野生型ヒト重鎖定常領域のいずれかを有する10μg/mlの抗GPVI Fabと共にインキュベートした。続いて、CD62Pに対するフィコエリトリンコンジュゲート抗体(BD Pharmingen)を添加した後、RTで20分間遮光してインキュベートした。細胞を1%ホルムアルデヒド溶液により4℃で少なくとも30分間固定し、BD FACS CANTO(商標) II(BD Biosciences)を用いて分析した。基礎CD62P発現を、Fabの代わりにPBSとインキュベートすることによって決定した。Fabにより誘導されるGPVI活性化を、PBSの存在下での基礎発現レベルに対して正規化したFabの存在下での活性化マーカー発現のレベルとして表す。
【0415】
結果及び結論
結果を図7に示す。修飾重鎖定常領域を含む抗GPVI Fab(Fab#1 mod.HC、Fab#2 mod.HC、Fab#3 mod.HC及びFab#4 mod.HC)は、一価結合の結果としてのGPVI架橋の欠如のために抗GPVI IgGと比較してはるかに弱い程度でCD62P発現を誘導した。残存血小板活性化が、潜在的にヒト血清中に存在する既存の抗Fab抗体によるGPVIに結合したFabの架橋によって生じた。修飾重鎖定常領域を含む抗GPVI Fab(Fab#1 mod.HC、Fab#2 mod.HC、Fab#3 mod.HC、Fab#4 mod.HC)を用いることで、非修飾ヒトFab重鎖定常領域を含むFab(Fab#1、Fab#2、Fab#3、Fab#4)と比較した場合に、血小板活性化マーカーCD62Pの発現が更に低減し、修飾がこれらのFabへのヒト血清中に存在する抗Fab抗体の結合を効率的に防止することが示唆された。この効果は、RefFab#1について記載したようにグリシン-セリンリンカーをFab重鎖C末端に付着させた場合には観察されなかった。
【0416】
【表14】
【0417】
【表15】
【0418】
実施例14:in vivo出血時間 - マウス尾部クリッピングモデル
材料及び方法
出血時間に対するFab媒介GPVI遮断の効果をマウス尾部クリッピングモデルにおいて評価した。尾部出血を、C57BL/6Jマウスにおいて尾部の先端2mmを外科用メスの刃で切断し、尾部を温かいPBSに浸すことによって誘導した。マウスを尾部切断のおよそ10分前にメデトミジン(Domitor(商標) 0.5mg/kg)、ミダゾラム(Dormicum(商標) 5mg/kg)及びフェンタニル(Fentanyl B.Braun 0.05mg/kg)で腹腔内麻酔した。抗GPVI Fab(修飾重鎖定常領域を含む)(PBS中10mg/kg)又は対照を尾部切断の30分前に尾静脈にi.v.適用した。指定の場合にはASAを尾部切断の60分前にi.v.注射した。出血時間を切断の直後に記録し、尾部の先端からの出血が止まり、30秒以内に再開しない時点まで続けた。研究の終了時に、麻酔をかけた動物を頸椎脱臼によって屠殺した。実験は、実験動物の管理及び使用に関するドイツの法律に従って行われ、地方自治体によって承認された。
【0419】
結果及び結論
図8に示されるように、修飾重鎖定常領域を含む抗GPVI Fab(Fab#1、Fab#2、Fab#3、Fab#4)(表12による重鎖及び軽鎖配列を有する)は単独で、マウス尾部クリッピングモデルにおいて出血時間の延長を引き起こさなかった。さらに、抗GPVI FabとASAとの組合せは、アスピリン単独と比較して出血時間を更に増加させなかった。これらの結果から、抗GPVI Fabによる処理が出血リスクの増加をもたらさないことが示唆される。
【0420】
実施例15:血小板数
材料及び方法
血小板数に対する影響を評定するために、修飾重鎖定常領域を含む10mg/kgの抗GPVI Fab(Fab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4)(表12による重鎖及び軽鎖配列を有する)又は対照をC57BL/6Jマウスの尾静脈にi.v.適用した。化合物の注射の直前及び30分後に、薬物適用に用いた静脈の反対側の尾静脈から血液サンプルを採取した。血液サンプルをエンドツーエンドキャピラリー25μl容K2E管(Sanguis Counting)に採取し、タイロードバッファー(pH7.3)で50倍希釈した。希釈血液サンプルを、APCコンジュゲート抗CD41抗体(Biolegend)を用いてRTで10分間、暗所で染色し、タイロードバッファー(pH7.3)で更に50倍希釈し、続いてBD FACS CANTO(商標) II(BD Biosciences)において分析した。25μlのCD41陽性イベントを記録した。血小板数を式:イベント×2500/25=イベント×100(血小板/μl)に従って決定した。
【0421】
結果及び結論
図9に示されるように、修飾重鎖定常領域を含む10mg/kgの抗GPVI Fab(Fab#1、Fab#2、Fab#3又はFab#4)の投与の48時間後又は72時間後に血小板減少症の兆候は観察されなかった。これにより、本開示の抗GPVI Fabによる処理が、恒常性に対して有害な影響を有さず、上記(実施例13)で観察された出血時間延長の欠如と一致することが示される。
【0422】
実施例16:血小板上でのGPVI表面発現
材料及び方法
抗GPVI抗体での血小板の処理は、化合物のアゴニスト活性、ひいては望ましくない血小板活性化を示唆し得るGPVIの内在化又は血小板表面からのその脱落を誘導する可能性がある。これを除外するために、10mg/kgの修飾重鎖定常領域を含む抗GPVI Fab(Fab#1、Fab#2、Fab#3及びFab#4)(表12による重鎖及び軽鎖配列を含む)及び対照をCD-1マウスの尾静脈にi.v.注射した。化合物の注射の直前及びその後の或る特定の時点で、薬物適用に用いた静脈の反対側の尾静脈から血液サンプルを採取した。血液サンプルをエンドツーエンドキャピラリー30μl容K2E管(Sanguis Counting)に採取した。血液を即座にキャピラリーから1μlの30倍凝固及び血小板阻害剤ミックス(54mg/ml K2-EDTA、10mg/mlアセチルサリチル酸(ASA)、167μg/mlチカグレロル及び3μg/ml PGI)を含む管に移した。血液を、APCコンジュゲート抗CD41抗体(Biolegend)及びPEコンジュゲート非競合抗GPVI Fab(社内)を含有するタイロードバッファー(pH7.3)で20倍希釈し、RTで10分間、暗所でインキュベートした。続いて、サンプルをPBSで更に25倍希釈し、BD FACS CANTO(商標) II(BD Biosciences)において分析した。CD41陽性集団のPEシグナルを、Quantibrite(商標) PE蛍光定量キット(BD Biosciences)を用いて1血小板当たりのGPVI分子の絶対数に変換した。
【0423】
結果及び結論
図10に示されるように、10mg/kgの修飾重鎖定常領域を含むGPVI Fab(Fab#1、Fab#2、Fab#3、Fab#4)の投与は、Fab#1、Fab#2及びFab#3の投与48時間又は72時間以内に血小板表面上のGPVIを減少させなかった。Fab#4で処理したマウスに由来する血小板は、24時間後及び48時間後に細胞表面での約20%のGPVIコピー数の僅かな減少を示した。これは、試験したFabがGPVIの脱落又は内在化を全く又は僅かにしか誘導しないことを示す。CD62P血小板活性化FACSにおいて観察された結果(実施例13)と一致して、これにより試験したFabが内因性アゴニスト血小板活性化能を有しないことが更に確認される。
【0424】
実施例17:ELISAベースの交差競合アッセイ
GPVIに特異的な抗体若しくは抗体フラグメント、又は別のGPVI結合剤の交差競合は、ELISAアッセイを用い、以下の標準手順に従って検出することができる。
【0425】
ELISAアッセイの一般的原理は、ELISAプレートのウェルへのGPVIP特異抗体又は抗体フラグメント(Fab#1、Fab#2、Fab#3、Fab#4等)のコーティングを含む。次いで、過剰量のGPVIに特異的な第2の潜在的に交差競合性の抗体を溶液中に添加する(すなわち、ELISAプレートに結合しない)。続いて限定量のGPVI-Fcをウェルに添加する。
【0426】
ウェルにコーティングした抗体及び溶液中の抗体は、限定数のGPVI分子の結合について競合する。次いで、プレートを洗浄して、コーティングした抗体に結合しなかったGPVI分子を除去し、第2の溶液相抗体及び第2の溶液相抗体とGPVIとの間で形成された任意の複合体も除去する。次いで、結合したGPVIの量を、適切なGPVI検出試薬を用いて測定する。したがって、GPVIを適切なタグ特異的な作用物質により検出することができるタグ、例えばFc、Flag等と融合してもよい。
【0427】
コーティングした抗体と交差競合性である溶液中の抗体は、コーティングした抗体が第2の溶液相抗体の非存在下で結合し得るGPVI分子の数に対して、コーティングした抗体が結合し得るGPVI分子の数を減少させることが可能である。
【0428】
このアッセイを、Ab-X及びAb-Yと称される2つの抗体について下記に更により詳細に説明する。Ab-Xが固定化抗体として選ばれる場合、Ab-XをELISAプレートのウェルにコーティングした後、続いて添加する試薬の非特異的結合を最小限に抑えるためにプレートを好適なブロッキング溶液でブロッキングする。次いで、1ウェル当たりのAb-Y GPVI結合部位のモル数が、ELISAプレートのコーティング中に使用される1ウェル当たりのAb-X GPVI結合部位のモル数よりも少なくとも10倍高くなるように、過剰量のAb-YをELISAプレートに添加する。1ウェル当たりの添加するGPVIのモル数が、各ウェルのコーティングに使用されるAb-X GPVI結合部位のモル数よりも少なくとも25倍低くなるようにGPVIを添加する。好適なインキュベーション期間の後、ELISAプレートを洗浄し、GPVI抗原に特異的な検出試薬を添加して、GPVIに特異的なコーティングした抗体(この場合、Ab-X)が特異的に結合したGPVI分子の量を測定する。アッセイのバックグラウンドシグナルは、コーティングした抗体(この場合、Ab-X)、第2の溶液相抗体(この場合、Ab-Y)、バッファーのみ(すなわち、GPVIなし)及び検出試薬を含むウェルにおいて得られたシグナルとして規定する。アッセイの陽性対照シグナルは、コーティングした抗体(この場合、Ab-X)、第2の溶液相抗体バッファーのみ(すなわち、第2の溶液相抗体なし)、GPVI検出試薬を含むウェルにおいて得られるシグナルとして規定する。ELISAアッセイは、陽性対照シグナルがバックグラウンドシグナルの少なくとも6倍となるように行う必要がある。
【0429】
コーティング抗体として使用する抗体及び第2の(競合)抗体として使用する抗体の選択によって生じる任意のアーチファクト(例えば、IL-17Cに対してAb-XとAb-Yとで顕著に異なる親和性)を回避するために、交差遮断アッセイを2つのフォーマットで行う必要がある:1)フォーマット1は、Ab-XがELISAプレートにコーティングする抗体であり、Ab-Yが溶液中の競合抗体である場合であり、2)フォーマット2は、Ab-YがELISAプレートにコーティングする抗体であり、Ab-Xが溶液中の競合抗体である場合である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
0007080352000001.app