(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】色及び/又は効果を付与する多層被覆、及びベースコート層を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20220527BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220527BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220527BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220527BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20220527BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220527BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220527BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B05D7/24 303A
B05D3/00 F
B05D3/00 D
C09D5/00 D
C09D7/40
C09D201/00
C09D7/65
(21)【出願番号】P 2020564678
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2019058820
(87)【国際公開番号】W WO2019219297
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】102018207815.7
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520443365
【氏名又は名称】カール ウォルワグ ラック- ウント ファルベンファブリック ゲーエムベーハー アンド シーオー. ケージー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルタ, ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】フェト, ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】フェルバー, ペーター
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-019064(JP,A)
【文献】特開2003-213214(JP,A)
【文献】特開2002-155247(JP,A)
【文献】特開2004-195687(JP,A)
【文献】特開2004-299220(JP,A)
【文献】特開2002-201429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/20
B05D 7/24
B05D 3/00
C09D 5/00
C09D 7/40
C09D 201/00
C09D 7/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に対して色及び/又は効果を付与する多層被覆であって、
(a)被覆が、10μm~50μmの範囲の乾燥フィルム厚さを有するクリアコート層を含み、
(b)被覆が、6μm~35μmの範囲の乾燥フィルム厚さを有するベースコート層を含み、ベースコート層が、色及び/又は効果顔料を含み、ベースコート層内での色及び/又は効果顔料の配向が、被覆の光学特性に影響し、
(c)ベースコート層が、色及び/又は効果顔料の配向を制御するための制御粒子を含み、
さらに制御粒子が、
(d)ベースコート層の乾燥フィルム厚さの少なくとも50%のd10、
(e)ベースコート層の乾燥フィルム厚さの80%~120%の範囲のd50、及び
(f)ベースコート層の乾燥フィルム厚さの200%以下のd100
によって特徴づけられ
、基体が、フィルムであり、フィルムが、ポリマーフィルムである、被覆。
【請求項2】
以下の特徴の少なくとも一つを有する、請求項
1に記載の被覆:
(a)制御粒子が、球形態である、
(b)制御粒子が、エチル及びメチルアルコール、キシレン、ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテートのような有機溶媒に対して安定であるプラスチックからなる、
(c)プラスチックが、140℃までの熱安定性を有する。
【請求項3】
以下の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1
又は2に記載の被覆:
(a)ベースコート層が、2重量%~15重量%の割合で制御粒子を含む、
(b)ベースコート層が、0.15重量%~15重量%の割合で色及び/又は効果顔料を含む。
【請求項4】
以下の特徴を有する、請求項1~
3のいずれかに記載の被覆:
(a)色及び/又は効果顔料の平均粒子サイズ(d50)が、制御粒子の平均粒子サイズ(d50)の5倍以下である。
【請求項5】
ベースコート層を形成する方法であって、
(a)色及び/又は効果顔料と、製造されるベースコート層において色及び/又は効果顔料の配向を制御するための制御粒子とを含むベースコート材料を与え、但しベースコート層内での色及び/又は効果顔料の配向がベースコート層の光学特性に影響する、
(b)ベースコート材料を基体に付与してベースコートフィルムを形成し、
(c)ベースコートフィルムを乾燥及び/又は硬化してベースコート層を形成する
工程を有し、
(d)ベースコート材料の固形分及び/又はベースコートフィルムの厚さが、ベースコート層が6μm~35μmの範囲の乾燥フィルム厚さで得られるように調整され、
(e)使用される制御粒子が、
ベースコート層の乾燥フィルム厚さの少なくとも50%のd10;
ベースコート層の乾燥フィルム厚さの80%~120%の範囲のd50;
ベースコート層の乾燥フィルム厚さの200%以下のd100
によって特徴づけられる粒子を含
み、基体が、フィルムであり、フィルムが、ポリマーフィルムである、方法。
【請求項6】
ベースコート材料が、配向付与法を使用して付与される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
制御粒子が、特にベースコート層の視覚的外観に対する視野角の影響を最小にする目的で、ベースコート層中の色及び/又は効果顔料の等方性配置をもたらすために添加される、請求項
5又は
6に記載の方法。
【請求項8】
ベースコート層の視覚的外観に対する視野角の影響が最小になるように色及び/又は効果顔料をベースコート層に等方性配置で含む、請求項1~
4のいずれかに記載の被覆。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載される発明は、クリアコート層及びベースコート層を含む色及び/又は効果を付与する多層被覆、及びベースコート層を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
色及び/又は効果を付与する被覆は、一般に多数の被覆フィルムを包含し、それらは、互いの上に付与され、異なる特性を有する。自動車の車体の仕上げには、例えばプライマーコート及び/又は表面層、ベースコート層、及びクリアコート層が連続して付与されることが多い。
【0003】
プライマーコートは、例えば電気的に、特に電着塗装によって付着されることができる。しばしば、それは、基体の上への被覆の接着性を改良するために役立つ。前述の自動車の車体のような金属基体の場合には、それはまた、同様に耐腐食機能を持つ。
【0004】
表面層は、被覆される基体表面上の不均一をマスクするために役立ち、被覆のストーンチップ抵抗性を改良することができる弾性を持つ。適切な場合には、表面層はまた、隠ぺい力を増大し、被覆の色合いを深めるために役立つことができる。
【0005】
ベースコート層は、被覆の色及び/又は角度に依存する光学効果を持つ。この文脈において、反射光の明度だけでなく色も視野角の関数として変化することができる。それは、明度のフロップ及び/又はカラーフロップとしても言及される現象である。
【0006】
クリアコート層は、光学効果を強化し、被覆を機械的損傷及び化学的損傷から保護するのに役立つ。
【0007】
実際には、ベースコート層の色及びフロップ挙動が、ベースコート層が基体に付与される条件に極めて強く依存していることが判明した。これは、ベースコート層が薄片状の色及び/又は効果顔料を受け入れるときに特に関係する。ベースコート層内のこれらの顔料の配向は、被覆の光学特性に大きく影響しうる。もしベースコート層が、例えばローリング又はナイフコーティングのような付与法によって形成されるなら、薄片状の顔料は、ベースコート層内で、大多数が一つの優先方向に、即ち付与方向に配向される。基本的には、被覆技術のうち、顔料がさらなる手段なしで一つの優先方向に配置される全ての付与法は、顔料が一つの優先方向に配置されない配向性のない付与法(undirected application methods)とは対照的に、配向付与法(directed application methods)として言及される。
【0008】
配向付与から生じるベースコート層は、異方性配置で顔料を含む。これは、ベースコート層、従って被覆の光学特性が視野角に依存することを意味する。実際には、これは、例えば自動車の車体の部品として互いに直接接する塗装部品の色合いを合わせるためにコストのかかる不便な手段を必要としうる。
【0009】
噴出又はスプレー付与のような配向性のない付与法によるベースコート層の付与は、この問題に対して簡単な解決策を代表するように見える。しかしながら、かかる付与法も欠点がある。噴射又はスプレー付与を用いると、均一な厚さの被覆フィルムを形成することが原理的に難しい。さらに、生成された被覆フィルムは、不均一な表面を持つことが多い。
【0010】
EP1423299B1は、薄片状の色及び/又は効果顔料を含むベースコート層を有する被覆の製造を可能にする方法を開示するが、これらの顔料の光学特性は、視野角から独立している。この方法によれば、比較的厚い第一ベースコート層が最初に配向付与法によって基体に付与される。続く工程では、この第一ベースコート層が比較的薄い第二ベースコート層でカバーされ、第二ベースコート層は、配向性のない付与法によって、例えばスプレーによって形成される。驚くべきことに、このようにして製造された多層ベースコート層の全体の視覚効果は、もっぱら第二ベースコート層によって支配されることが確認された。異方性配置の顔料を有する比較的薄い部分的なベースコート層の上の等方性配置の顔料を有する比較的薄い部分的なベースコート層は、もっぱら等方性配置の顔料を有する単一層のベースコート層と同じ視覚的印象をもたらす。
【0011】
この方法の欠点は、複数の工程でベースコート層を付与することが被覆操作をより高価にすることであり、配向性のない付与法の使用がベースコート層の不均一な表面をもたらしうることである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、色及び/又は効果顔料を含むベースコート層、及びかかるベースコート層を含む被覆を、従来技術の問題に直面させずに提供することである。
【0013】
この目的を達成するため、本発明は、請求項1の特徴を有する被覆、及び請求項6の特徴を有する方法を提案する。本発明の発展例は、従属請求項の主題である。
【0014】
本発明の被覆は、基体の上に色及び/又は効果を付与する多層被覆である。それは、常に以下の特徴の組み合わせによって特徴づけられる。
被覆が、10μm~50μm、特に25μm~40μmの範囲の乾燥フィルム厚さを有するクリアコート層を含み、
被覆が、6μm~35μm、特に10μm~20μmの範囲の乾燥フィルム厚さを有するベースコート層を含み、ベースコート層が、色及び/又は効果顔料を含み、ベースコート層内での色及び/又は効果顔料の配向が、被覆の光学特性に影響する。
【0015】
被覆は、ベースコート層が色及び/又は効果顔料の配向を制御するためのいわゆる制御粒子を含むことによって特徴づけられ、これらの制御粒子は、以下によって特徴づけられる:
- ベースコート層の乾燥フィルム厚さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%のd10、
- ベースコート層の乾燥フィルム厚さの80%~120%、特に80%~100%の範囲のd50、及び
- ベースコート層の乾燥フィルム厚さの200%以下、好ましくは150%以下、より好ましくは120%以下のd100。
【0016】
述べられた数値は、全体としてベースコート層に含まれる全ての制御粒子に基づく。それゆえ、これは、制御粒子のd50(それは、ベースコート層に存在する制御粒子を等しいサイズの二つの部分画分に分割する)が乾燥フィルム厚さの少なくとも80%でありかつ120%以下であり、被覆中に全体に含まれる制御粒子の10%以下がベースコート層の乾燥フィルム厚さの0.5倍未満、好ましくは0.6倍未満、より好ましくは0.7倍未満の直径を有し、ベースコート層がベースコート層の乾燥フィルム厚さを100%より多く、好ましくは50%より多く、より好ましくは20%より多く越える直径を持つ制御粒子を含まないことを意味する。
【0017】
制御粒子の直径は、一般に二桁のμm範囲内にある。この範囲内では、特にDIN ISO 9276-1_2004(Representation of results of particle size analysis-Part 1:Graphical representation)及びISO 9276-2_2014(Representation of results of particle size analysis-Part 2:Calculation of average particle sizes/diameters and moments from particle size distributions)と組み合わせてISO 13320_2009に従ってd10,d50及びd100を極めて信頼性高く決定することが可能である。本明細書における制御粒子の直径に関する数値の文章は、これらの標準規格を使用して確認される値である。
【0018】
驚くべきことに、規定された制御粒子の添加は、ベースコート層が配向付与法によって付与されるときであっても、色及び/又は効果顔料の等方性配置を達成することが可能であることを意味することが見出された。制御粒子の大多数は、ベースコート層の乾燥フィルム厚さにほぼ対応する直径を有する。これは、一定の割合の色及び/又は効果顔料が制御粒子の表面に対して接線方向の配置、従って例えば付与の方向に垂直な角度の配置を採用することを強制する。一つの優先方向(即ち、付与方向)でのベースコート層内の配向を受ける色及び/又は効果顔料が少ないほど、ベースコート層、従って被覆の光学特性が視野角に依存する範囲が小さくなる。それゆえ、使用された制御粒子によって、ベースコート層の視覚的外観を制御することが可能である。理想的なシナリオでは、制御粒子は、もっぱら色合いの角度依存を制御し、例えば被覆の光沢のような光学効果を制御しない。
【0019】
クリアコート層及びベースコート層の乾燥フィルム厚さは、各場合において乾燥後(即ち、被覆中にいかなる溶媒ももはや存在しないとき)のこれらの被覆の厚さを意味する。乾燥フィルム厚さは、特にDIN EN ISO 2808に従って決定されることができる。乾燥フィルム厚さについての数値文章は、本ケースではこの標準規格によって確認される値に関する。
【0020】
特に好ましくは、クリアコート層及びベースコート層は、各々実質的に均一な乾燥フィルム厚さを持つ。これは、特に乾燥フィルム厚さにおける平均偏差が例えばDIN EN ISO 2808に従って決定された値の10%未満であることが好ましいことを意味する。
【0021】
本発明の被覆のクリアコート層及びベースコート層は、乾燥形態で規定されているが、必ずしも既に硬化されている必要はないことが強調されるべきである。多くの場合において、乾燥工程に続いて例えば放射線硬化の形の別個の硬化工程が行なわれるクリアコート及び/又はベースコート材料を使用することが有用でありうる。
【0022】
基体は、原則としていかなる希望の物品であってもよく、例えば上述の自動車の車体又は一つの家具であってもよい。しかしながら、特に好ましくは、基体は、フィルムであり、特にポリマーフィルムである。
【0023】
近年において、溶媒含有液を使用する被覆材料の従来の被覆技術は、物品の被覆において、被覆フィルムがキャリアフィルムから加工品へ転写される転写被覆技術によって増々置き換えられている。この目的にために与えられているものは、一般にキャリアフィルムと、転写される被覆フィルム(単数又は複数)の積層体であり、この積層体は、例えば600mmのウェブ幅及び700mのウェブ長さを有するウェブ材料の形の転写被覆フィルムとして言及される。付与のために、被覆フィルム(単数又は複数)を有する積層体は、まず被覆される加工品の上に押圧される。前もって、任意選択的に、接着促進層は、被覆される加工品及び/又は積層体の被覆側に付与されることができる。続いて、キャリアフィルムは、除去され、加工品の上に被覆フィルム(単数又は複数)が残る。この種の手順は、例えばDE102007040376A1から知られている。
【0024】
特に好ましくは、本発明の被覆は、この種の転写被覆フィルムの構成要素であり、この目的のために基体として作用する対応するキャリアフィルムに付与される。もしこれが当てはまるなら、転写被覆フィルムの順序は、キャリアフィルム/クリアコート層/ベースコート層であることが好ましい。
【0025】
特に転写被覆フィルムの場合において、ベースコート層及び/又はクリアコート層を乾燥するがまだ硬化していないことが有利でありうる。従って、例えば被覆は、まだ硬化が行なわれていないので高い機械的可撓性を保持しながら、クリアコート層を粘着しない状態に乾燥することによって変えることができる。
【0026】
基体として役立ちうる好適なフィルムは、例えばDE102007040376A1から知られている。特に好適なフィルムは、フルオロポリマー(例えばエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE))、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリル-スチレン-アクリロニトリル(ASA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、アクリル-スチレン-アクリロニトリル/ポリカーボネート(ASA/PC)、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)、及び/又はポリメチルメタクリレートのようなポリマーからなる。
【0027】
原則として、本発明の被覆は、クリアコート層及びベースコート層に加えてさらなる層を含んでもよく、例えば前述した表面層を含んでもよい。従って、本発明の被覆を有する転写被覆フィルムは、例えばキャリアフィルム/クリアコート層/ベースコート層/表面層の順序を持つことができる。
【0028】
クリアコート層を製造するために考えられるクリアコート材料は、あらゆる通常の既知の一構成成分(1K)、二構成成分(2K)、又は多構成成分(3K,4K)のクリアコート材料だけでなく、粉末クリアコート材料も含む。
【0029】
好適な1K,2K,3K又は4Kのクリアコート材料は、例えば特許出願DE4204518A1,EP0594068A1,又はEP0596460A1から知られている。
【0030】
知られているように、1Kのクリアコート材料は、ヒドロキシル含有結合剤及び架橋剤、例えばブロックドポリイソシアネート、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン及び/又はアミノプラスト樹脂を含む。別の変形例では、それらは、ペンダントカルバメート及び/又はアロファネート基を有するポリマーの形の結合剤、及び架橋剤としてのカルバメート変性及び/又はアロファネート変性アミノプラスト樹脂を含む(米国特許US5474811AもしくはUS5605965A,又はヨーロッパ特許出願EP0594068A1もしくはEP0594142A1参照)。
【0031】
2K,3K又は4Kのクリアコートの本質的な構成成分は、ヒドロキシル含有結合剤及び架橋剤としてのポリイソシアネートを含むことが知られ、それらは、それらが使用されるまで別個に貯蔵される。
【0032】
好適な粉末クリアコート材料は、例えばドイツ特許出願DE4222194A1から知られている。
【0033】
特に好適なものは、二重結合を含むOH-官能成分A、二重結合を含むNCO-官能成分B、及び任意選択的に二重結合を含む成分Cを含む、WO2009/024310A2に記載された被覆材料である。成分Aは、ポリオールが好ましく、成分B及びCは、ウレタンアクリレートが好ましい。
【0034】
1K,2K,3K又は4Kのクリアコート材料を使用するとき、クリアコート材料の固形分は、クリアコート材料が付与される未乾燥フィルム厚さに対してと、クリアコート材料の乾燥後に生じる乾燥フィルム厚さに対しての両方に影響を及ぼすように調整される。
【0035】
ベースコート層を製造するために好適なベースコート材料は、基本的に全て知られた溶媒含有及び水性のベースコート材料である。好適な例は、US5114789A(第7欄第41行~第8欄第33行、第11欄第24~50行、及び第13欄第30~40行)、EP0352298B1(第9頁第19行~第12頁第38行)、EP0089497A1,EP0256540A1,EP0260447A1,EP0297576A1,WO96/12747,EP0523610A1,EP0228003A1,EP0397806A1,EP0574417A1,EP0531510A1,EP0581211A1,EP0708788A1,EP0593454A1,DE4328092A1,EP0299148A1,EP0394737A1,EP0590484A1,EP0234362A1,EP0234361A1,EP0543817A1,WO95/14721,EP0521928A1,EP0522420A1,EP0522419A1,EP0649865A1,EP0536712A1,EP0596460A1,EP0596461A1,EP0584818A1,EP0669356A1,EP0634431A1,EP0678536A1,EP0354261A1,EP0424705A1,WO97/49745,WO97/49747,EP0401565A1,EP0496205A1,EP0358979A1,DE2446442A1,DE3409080A1,DE19547944A1,又はDE19741554A1に見出される。
【0036】
もし必要なら、クリアコート材料及び/又はベースコート材料は、それらの付与後、また適切な場合にはいずれかの乾燥工程の後、熱的に及び/又は放射線によって硬化される。クリアコート材料及びベースコート材料は、任意選択的に一つの工程で、換言すれば同時に硬化されることができる。
【0037】
用語「色及び/又は効果顔料(color and/or effect pigments)」は、本明細書では、角度依存の色合い及び/又は角度依存の光学効果を、それらが埋め込まれる被覆フィルムに、従来の配向付与法によって適用されて付与することができる全ての顔料を包含することを意図される。
【0038】
特に好ましくは、色及び/又は効果顔料は、薄片状である。主要寸法における薄片状の色及び/又は効果顔料の長さと薄片状の色及び/又は効果顔料の厚さの間の比は、3より大きいことが好ましく、5より大きいことがより好ましい。
【0039】
色及び/又は効果顔料は、有機及び無機、カラー、光学効果、電気伝導性、磁気遮蔽、又は蛍光の顔料及び金属粉末からなる群から選択されることが好ましい。
【0040】
特に好ましくは、色及び/又は効果顔料は、アスペクト比(薄片状の顔料の平均厚さに対する平均直径の比率)が1より大きく、より好ましくは2~2000の範囲であり、特に3~1000の範囲であり、より好ましくは3~100の範囲であり、さらに好ましくは3~50の範囲である。
【0041】
本発明に使用されることができる効果顔料の一つの特に好ましい例は、3~10の範囲のアスペクト比を有する薄片状のアルミニウムフレークである。
【0042】
好適な効果顔料の例は、市販のアルミニウム青銅、DE3636183A1のようにクロメート処理されたアルミニウム青銅、市販のステンレス鋼青銅のような金属薄片状顔料、例えば真珠光沢及び/又は干渉顔料のような非金属効果顔料、酸化鉄に基づく薄片状効果顔料、又は液晶効果顔料である。詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998の第176頁“Effect pigments”及び第380頁及び第381頁の“Metal oxide-mica pigments”から“Metal pigments”まで及び特許出願及び特許のDE3636156A1,DE3718446A1,DE3719804A1,DE3930601A1,EP0068311A1,EP0264843A1,EP0265820A1,EP0283852A1,EP0293746A1,EP0417567A1,US4828826A,又はUS5244649Aを参照されたい。
【0043】
好適な無機カラー顔料の例は、二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛、リトポンのような白色顔料;カーボンブラック、鉄-マンガンブラック又はスピネルブラックのような黒色顔料;酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン又はウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー又はマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット又はコバルトバイオレット及びマンガンバイオレット、赤酸化鉄、カドミウムスルホセレナイド、モリブデートレッド又はウルトラマリンレッドのような有彩顔料;ブラウン酸化鉄、混合ブラウン、スピネル相及びα-アルミナ相又はクロムオレンジ;又はイエロー酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、カドミウム硫化物、カドミウム亜鉛硫化物、クロムイエロー、又はビスマスバナデートである。
【0044】
好適な有機カラー顔料の例は、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインディゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリーレン顔料、フタロシアニン顔料又はアニリンブラックである。
【0045】
さらなる詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998の第180頁及び第181頁“Iron blue pigments”から“Black iron oxide”から“Pigment volume concentration”まで,第563頁“Thioindigo pigments”,第567頁“Titanium dioxide pigments”,第400頁及び第467頁“Naturally occurring pigments”,第459頁“Polycyclic pigments”,第52頁“Azomethine pigments”,“Azo pigments”,及び第379頁“Metal complex pigments”を参照されたい。
【0046】
好適な蛍光顔料(昼光蛍光顔料)は、ビス(アゾメチン)顔料である。
【0047】
好適な電気伝導性顔料の例は、カーボンブラック及びカーボンナノチューブである。
【0048】
好適な磁気遮蔽顔料の例は、酸化鉄又は二酸化クロムに基づく顔料である。
【0049】
好適な金属粉末の例は、アルミニウム、亜鉛、銅、青銅、又は真ちゅうの粉末である。
【0050】
本発明の文脈に使用されることができる制御粒子は、好ましくは以下の特性の少なくとも一つ、より好ましくは以下の特性の三つ全てによって特徴づけられる:
- 制御粒子は、球形又は少なくとも略球形である;ここで略球形は、それらが角及び縁を全く持たず、最大及び最小直径を持ち、最小直径に対する最大直径の比率は、1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下であることを意味することを意図される。逆に、球形は、それらが一つの直径のみを持つことを意味する。
- 制御粒子は、プラスチック、特にエチル及びメチルアルコール、キシレン、ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテートのような有機溶媒に対して安定であるプラスチックからなる。
- 制御粒子は、140℃までの熱安定性を持つプラスチックからなる。
【0051】
制御粒子の物理的性質は、基本的に本発明にとって重要でない。対照的に、重要であるものは、ベースコート層の乾燥フィルム厚さに対する制御粒子の上記相対サイズである。
【0052】
例えば、制御粒子は、ポリメチルメタクリレートのようなアクリレートからなることができる。
【0053】
制御粒子はそれ自体、角度依存の色合い又は角度依存の光学効果を、それらが埋め込まれるベースコート層に付与することができないことがさらに好ましい。それらの存在の唯一の結果は、色及び/又は効果顔料によってもたらされる色合い又は光学効果が制御されることであることが好ましい。
【0054】
既に述べたように、制御粒子の平均直径は、一般的に二桁のμm範囲にある。
【0055】
使用される色及び/又は効果顔料は、制御粒子のd50及びd100値の最大5倍、好ましくは3倍、より好ましくは2倍のd50及びd100値によって特徴付けられる。ある特に好ましい実施形態では、使用される制御粒子のd50及びd100値の0.1~5倍、特に0.1~3倍である。
【0056】
好ましくは、本発明の被覆は、以下の特徴の少なくとも一つ、より好ましくは以下の二つの特徴の組み合わせによって特徴づけられる:
- ベースコート層が、(乾燥状態のベースコート層に基づいて、即ちベースコート層が形成されるベースコート材料の固形分に基づいて)2重量%~15重量%の割合で制御粒子を含む、
- ベースコート層が、(乾燥状態のベースコート層に基づいて、即ちベースコート層が形成されるベースコート材料の固形分に基づいて)0.15重量%~15重量%の割合で色及び/又は効果顔料を含む。
【0057】
本発明の方法は、ベースコート層を製造するために、より好ましくは上記の多層被覆のベースコート層を製造するために役立つ。従って、ベースコート層(ベースコート材料、色及び/又は効果顔料、制御粒子)を製造するために必要な構成成分はまた、上で記載されたものから選択される。この方法は、以下の三つの工程を常に含む:
- ベースコート材料を与え、
- ベースコート材料を基体に付与してベースコートフィルムを形成し、
- ベースコートフィルムを乾燥及び/又は硬化してベースコート層を形成する。
【0058】
ベースコート材料は、一般に以下のものを常に含む:
- ベースコート層内での配向がその光学特性に影響する色及び/又は効果顔料、及び
- 製造されるベースコート層における色及び/又は効果顔料の配向を制御するための制御粒子。
【0059】
多くの場合において、特に記載された1K,2K,3K又は4Kのクリアコート材料を使用するとき、ベースコート材料は、述べられた構成成分プラス溶媒を含む。
【0060】
本発明によれば、ベースコート材料の固形分及び/又はベースコートフィルムの厚さは、ベースコート層が6μm~35μmの範囲の乾燥フィルム厚さで得られるように調整される。
【0061】
さらに、本発明の被覆に関する上記の観察と一致して、使用される制御粒子は、以下によって特徴づけられる粒子を含む:
- ベースコート層の乾燥フィルム厚さの少なくとも50%のd10、
- ベースコート層の乾燥フィルム厚さの80%~120%の範囲、特にベースコート層の乾燥フィルム厚さ80%~100%の範囲のd50、及び
- ベースコート層の乾燥フィルム厚さの200%以下、好ましくは150%以下、より好ましくは120%以下のd100。
【0062】
使用される制御粒子は、単峰性分布を必ずしも持つ必要はないことが強調されるべきである。代わりに、実際、各々が異なるd50、及びおそらく異なるd10及び/又はd100を有する二つ以上の制御粒子画分を使用することが有利でありうる。例えばベースコート層の乾燥フィルム厚さの80%のd50を有する第一制御粒子画分、及びベースコート層の乾燥フィルム厚さの100%のd50を有する第二の同じサイズの制御粒子画分を使用することが可能であるだろう。その場合において、ベースコート層中の制御粒子の全体のd50は、ベースコート層の乾燥フィルム厚さの90%であるだろう。
【0063】
基体は、上で述べた基体のうちの一つであることが好ましい。一つの好ましい実施形態では、基体は、クリアコート層が既に付与されているフィルムである。しかし、一般的には、ベースコート層がまずフィルムに付与され、次いでクリアコート層が付与されることが好ましい。
【0064】
ベースコート材料は、特に好ましくは配向付与法を使用して付与される。好適なかかる方法としては、特にキャスティング、ナイフコーティング、ローリングオン、又は押出コーティングによる付与が挙げられる。これらの方法は、キャスティング装置、コーティングナイフ、ロール、特に反転軸流ロール、又は押出機、特にフィルム押出機のような従来公知の装置で実施されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】
図1は、従来技術の基体に付与されたベースコート層の断面を概略的に表わす。
【
図2】
図2は、従来技術の基体に付与されたベースコート層の断面を概略的に表わす。
【
図3】
図3は、本発明の基体に付与されたベースコート層の断面を概略的に表わす。
【
図4】
図4は、本発明に従って形成されたベースコート層の断面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明の概念は、
図1~3を参照して示されるだろう。
図1(従来技術)に断面で概略的に表わされているものは、基体100に付与されたベースコート層101である。ベースコート層101は、ナイフ付与によって、換言すれば配向付与法によって形成されている。色及び/又は効果顔料としてベースコート層101に埋め込まれているのは、薄片状金属フレーク102である。配向付与法の結果として、これらのフレークは、全て一つの優先方向に、即ち付与の方向(矢印)に配置されている。入射光は、全ての金属フレーク102によって同じ方向に反射される。ベースコート層101の色及び視覚による外観は、それゆえ強い角度依存である。
【0067】
図2(従来技術)に断面で概略的に表わされているものは、基体200に付与されたベースコート層201である。ベースコート層201は、スプレー付与によって、換言すれば配向性のない付与法によって形成されている。色及び/又は効果顔料としてベースコート層201に埋め込まれているのは、薄片状金属フレーク202である。配向性のない付与法の結果として、これらのフレークは、
図1の金属フレークほど秩序だって配置されていない。入射光は、全ての金属フレーク202によって同じ方向に反射されない。ベースコート層201の色及び視覚による外観は、それゆえ
図1の場合ほど強い角度依存ではない。
【0068】
図3に断面で概略的に表わされているものは、基体300に付与されたベースコート層301である。ベースコート層301は、ナイフ付与によって、換言すれば配向付与法によって形成されている。色及び/又は効果顔料としてベースコート層301に埋め込まれているのは、薄片状金属フレーク302である。配向付与法にかかわらず、これらのフレークは、全て一つの優先方向に、即ち付与の方向に配置されているわけではない。かかる配置は、球形の制御粒子303によって妨げられ、それは、金属フレーク302のようにベースコート層301に埋め込まれている。制御粒子303は、ベースコート層301の厚さにほぼ相当する直径を有する。これは、金属フレーク302の一部が制御粒子303の表面に平行な配置、それゆえ付与方向(矢印)に対して斜め又は垂直の配置を採用することを強制する。ベースコート層301の色及び視覚による外観は、それゆえ
図1の場合ほど角度依存ではない。
【0069】
図4は、配向付与法によって基体400の上に本発明に従って形成され、かつクリアコート層404でカバーされたベースコート層401の断面の顕微鏡写真の詳細である。色及び/又は効果顔料としてベースコート層401に埋め込まれているのは、金属フレーク402、及び制御粒子403である。制御粒子403は、ベースコート層401の厚さにほぼ相当する直径を有する。金属フレーク402は、制御粒子によって斜めの配向に強制されることは容易に明らかである。
【実施例】
【0070】
(A)プライマー処理された金属基体の上に、25%の固形分を有するベースコート材料を60μmの湿潤フィルム厚さでコーティングナイフによって付与した。ベースコート材料は、ポリウレタンベースの結合剤、添加剤混合物、及び分散媒体としての水を含んでいた。これらの他に、それは、2重量%の有機カラー顔料、及び効果顔料として2重量%のアルミニウムフレークを含んでいた(この場合の重量の数字は、各場合において全体としてベースコート材料(分散媒体及び/又は存在する溶媒を含む)に基づく)。アルミニウムフレークの平均直径(d50)は、10μmであった。有機カラー顔料の粒子は、全て1μm以下のサイズを有していた。乾燥は、15μmの乾燥フィルム厚さを有するベースコート層を与えた。
(B)プライマー処理された金属基体の上に、35%の固形分を有するベースコート材料を60μmの湿潤フィルム厚さでコーティングナイフによって付与した。ベースコート材料は、次の例外を除いて(A)の下で使用されたベースコート材料と同一の組成を有していた:アルミニウムフレークに加えて、それは、1重量%の割合で15μmの平均直径(d50)を有するポリメチルメタクリレートの球状体を含有していた(この重量の数字は、同様に全体としてベースコート材料(分散媒体及び/又は存在する溶媒を含む)に基づく)。これらの球状体は、本明細書の意味では、制御粒子として作用する。
【0071】
(A)及び(B)に対して得られたベースコート層の光学的比較は、(A)に従って製造されたベースコート層が予期したように強い角度依存の色合いを示したことを表わした。(B)に従って製造されたベースコート層は、逆に有意に低下した角度依存を示した。