(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】インライン表面エンジニアリングソースを使用するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20220527BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20220527BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20220527BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
H01J37/317 B
H01L21/265 603C
H01L21/265 602Z
H01L21/265 Z
H01J37/305 A
H01J37/317 E
H05H1/46 L
(21)【出願番号】P 2020570913
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 US2019036667
(87)【国際公開番号】W WO2019245812
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-02-18
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハテム, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】クルンチ, ピーター エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ローランド, クリストファー エー.
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, ジョセフ シー.
(72)【発明者】
【氏名】レナウ, アンソニー
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0084757(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01L 21/265
H01J 37/305
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に衝突するイオンビームを生成するために使用されるイオンを生成するためのイオン源であって、前記イオン源はビームライン注入システムの構成要素であり、前記ビームライン注入システムはさらに、抽出光学素子、質量分析器、質量分解デバイス、コリメータ及び加速/減速段を備えているイオン源と、
前記加工対象物に近接して配置された補助プラズマ源であって、前記補助プラズマ源は、前記加工対象物に向けてイオン及びラジカルを放出するように方向付けられた出口開孔を有する、補助プラズマ源と、
前記イオンビームによって走査されるように、前記イオンビームとは垂直な方向へ線形移動することが可能なプラテンと、
前記イオン源と前記補助プラズマ源とを同時に使用して前記加工対象物を加工するように、前記イオン源と前記補助プラズマ源とを制御するコントローラと、
を備える半導体処理システム。
【請求項2】
前記補助プラズマ源は、外側ハウジング、アンテナ、及び前記アンテナに通じているRF電源を備える、請求項1に記載の半導体処理システム。
【請求項3】
前記イオンビームが前記加工対象物に衝突する箇所において、前記ラジカル及び前記イオンが前記加工対象物に向けられるように、前記出口開孔が方向付けられている、請求項1に記載の半導体処理システム。
【請求項4】
前記イオンビームと平行な方向において、前記ラジカル及び前記イオンが前記加工対象物に向けられるように、前記出口開孔が方向付けられている、請求項1に記載の半導体処理システム。
【請求項5】
前記補助プラズマ源は、前記イオンが前記加工対象物に引き付けられるようにバイアスされている、請求項1に記載の半導体処理システム。
【請求項6】
前記加工対象物が内部に配置されたエンドステーションを備え、前記補助プラズマ源が、前記エンドステーション内に配置されている、請求項1に記載の半導体処理システム。
【請求項7】
前記エンドステーション内に配置されたヒータを備える、請求項6に記載の半導体処理システム。
【請求項8】
前記補助プラズマ源から分離して、前記エンドステーション内に配置されたプラズマフラッドガンを備える、請求項6に記載の半導体処理システム。
【請求項9】
所望の種のイオンを加工対象物の中に注入する方法であって、
前記所望の種を含むガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することを含み、前記補助プラズマ源は前記加工対象物に近接して位置付けられ、前記プラズマからのイオン及びラジカルが、前記補助プラズマ源を出て、前記加工対象物に向けて移動し、
前記方法は更に、
前記補助プラズマ源とは異なるイオン源を使用して生成されたイオンビームを用いて、前記補助プラズマ源からの前記イオン及び前記ラジカルを加工対象物の中に叩き込むことと、を含み、
前記イオン源と前記補助プラズマ源とが同時に動作させられる、方法。
【請求項10】
前記イオンビームは不活性種を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記イオンビームが前記加工対象物に衝突する箇所において、前記プラズマからの前記イオン及び前記ラジカルが前記加工対象物に向けられる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記イオンビームが前記加工対象物に衝突する箇所において、前記イオン及び前記ラジカルが前記加工対象物の表面上に膜を形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記所望の種は、第III族、第IV族、又は第V族の元素を含有する分子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
加工対象物をエッチングする方法であって、
エッチング種を含むガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することを含み、前記補助プラズマ源は前記加工対象物に近接して位置付けられ、前記プラズマからのイオン及びラジカルが、前記補助プラズマ源を出て、前記加工対象物の一部分に向けて移動し、前記加工対象物の前記一部分上に膜を形成し、
前記方法は更に、
前記補助プラズマ源とは異なるイオン源を使用して生成されたイオンビームを用いて、エネルギーを供給し、前記加工対象物をエッチングすることを含み、
前記イオン源と前記補助プラズマ源とが同時に動作させられる、方法。
【請求項15】
前記エッチング種はハロゲンを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記エッチング種はCF
4及び酸素を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記エッチング種は水素を含み、自然酸化物層がエッチングされる、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
前記イオンビームは不活性ガスを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項19】
前記イオンビームは、前記膜が生成されている間に、前記加工対象物の前記一部分に向けられる、請求項
14に記載の方法。
【請求項20】
前記イオンビームは、前記膜が生成された後で、前記加工対象物の前記一部分に向けられる、請求項
14に記載の方法。
【請求項21】
加工対象物上に材料を堆積させる方法であって、
プロセスガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することを含み、前記補助プラズマ源は前記加工対象物に近接して位置付けられ、前記プラズマからのイオン及びラジカルが、前記補助プラズマ源を出て、前記加工対象物の一部分に向けて移動し、前記加工対象物の前記一部分上に膜を形成し、
前記方法は更に、
前記補助プラズマ源とは異なるイオン源を使用して生成されたイオンビームを用いて、エネルギーを供給し、前記加工対象物上に前記材料を堆積させることを含み、
前記イオン源と前記補助プラズマ源とが同時に動作させられる、方法。
【請求項22】
前記プロセスガスはCH
4を含み、前記イオンビームは第IV族の元素を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記イオンビームのみを用いて生成され得るよりもボックス状のプロファイルが生成される、請求項
21に記載の方法。
【請求項24】
加工対象物を処理する方法であって、
イオンビームを用いて加工対象物に向けてイオンを導くことと、
プロセスガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することとを含み、前記補助プラズマ源は、エンドステーション内で前記加工対象物に近接して位置付けられ、前記プラズマからのイオン及びラジカルが、前記補助プラズマ源を出て、前記加工対象物の表面と反応し、
前記方法は更に、
前記反応の後で前記加工対象物を加熱することを含み、熱が、前記加工対象物の前記表面上で前記イオンビームによって引き起こされた損傷を修復し、
前記加工対象物の一部分が前記イオンビームによって処理され、同時に、第2の部分が前記プラズマと反応する、方法。
【請求項25】
前記イオンビームを使用して、イオンを前記加工対象物の中に注入する、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
前記加工対象物が、摂氏100度と摂氏500度の間の温度まで加熱される、請求項
24に記載の方法。
【請求項27】
前記プロセスガスは、水素/窒素の混合物を含む、請求項
24に記載の方法。
【請求項28】
前記生成すること及び前記加熱することの前に、前記加工対象物の全体が前記イオンビームによって処理される、請求項
24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年6月22日に出願された米国特許出願第16/015,323号の優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、インライン表面エンジニアリングソース(inline surface engineering source)を使用する半導体処理システム及び方法に関し、特に、イオンビームと併せて使用される加工対象物(workpiece)に近接したイオン及びラジカルのソースの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの製造は、複数の離散的で複雑なプロセスを含む。1つのそのようなプロセスは、ドーパント材料が加工対象物の中に注入される注入プロセスであってよい。別の1つのプロセスは、材料が加工対象物上に堆積される堆積プロセスであってよい。更に別の1つのプロセスは、材料が加工対象物から除去されるエッチングプロセスであってよい。
【0004】
所望の経路に沿ってイオンを導くために、電極、質量分析器、四重極レンズ(quadrupole lens)、及び加速/減速段などの、複数の構成要素を有するビームラインシステムが使用される。光学システムのように、ビームラインシステムは、イオンの経路を曲げ、そのイオンを集束させることによって、イオンを操作する。
【0005】
幾つかの実施形態では、リボンイオンビームが生成される。リボンイオンビームは、縦長というよりはかなり幅広いイオンビームである。別の言い方をすると、加工対象物において測定されるその幅をその高さで割ったものとして定義されるリボンイオンビームのアスペクト比は、20より上などの非常に高いものであり得る。幾つかの実施形態では、リボンビームの幅が、処理されている加工対象物の直径よりも広い。
【0006】
長い年月を経て、イオン注入装置は、エネルギーフィルタ、コリメータ、スキャニングシステム、並びにより最近では分子イオン源、極低温及び高温注入機能の使用を組み込んだ高度に洗練されたツールになってきた。メモリ及びロジックのアーキテクチャが拡大し続け、ゲート・オール・アラウンド(Gate-all-around)のような複雑な構造が実現可能になるにつれて、イオン注入に則した表面近傍のプロセスを制御し修正することがますます求められている。これらの表面近傍のプロセスには、自然酸化物洗浄、表面安定化処理、欠陥率を低減させるための新しい損傷工学技法、表面からビームラインにありきたりな典型的逆行プロファイル(retrograde profile)への段階的なプロファイル、及びイオンビームそのものが表面上の反応に対する触媒である選択的処理が含まれ得る。
【0007】
したがって、イオンビームと併せて加工対象物の表面近傍でプロセスを実行するように、加工対象物に近接してインライン表面エンジニアリングソースを生成するための半導体処理システム及び方法が存在すれば、有益であろう。
【発明の概要】
【0008】
イオンビームと共に使用される、加工対象物に近接して配置された補助プラズマ源を有するシステムが開示される。補助プラズマ源を使用して、加工対象物に向けてドリフトし膜を形成し得るイオン及びラジカルを生成する。次いで、イオン及びラジカルが加工対象物を処理できるように、イオンビームを用いてエネルギーを供給する。更に、システムの様々な用途も開示される。例えば、該システムは、堆積、注入、エッチング、前処理、及び後処理を含む様々なプロセス向けに使用され得る。補助プラズマ源を加工対象物に近接して位置付けることによって、以前には不可能であったプロセスが行える場合がある。また、エンドステーションから加工対象物を取り外すことなしに、洗浄と注入又は注入と安定化処理などの、2つの異種プロセスを実行することができる。
【0009】
別の一実施形態によれば、半導体処理システムが開示される。半導体処理システムは、イオンビームを生成するイオン源と、加工対象物に近接して配置された補助プラズマ源とを備え、補助プラズマ源は、加工対象物に向けてイオン及びラジカルを放出するように方向付けられた出口開孔を有する。幾つかの実施形態では、イオン源が、ビームライン注入システムの構成要素である。特定の実施形態では、補助プラズマ源が、外側ハウジング、外側ハウジング内に配置されたアンテナ、及びアンテナと通じているRF電源を備える。他の実施形態では、補助プラズマ源が、外側ハウジング、外側ハウジングの外側に配置され且つ外側ハウジングの壁に近接するアンテナ、及びアンテナと通じているRF電源を備える。特定の実施形態では、イオンビームが加工対象物に衝突する箇所において、ラジカル及びイオンが加工対象物に向けられるように、出口開孔が方向付けられる。他の実施形態では、イオンビームに平行な方向において、ラジカル及びイオンが加工対象物に向けられるように、出口開孔が方向付けられる。特定の実施形態では、イオンが加工対象物に引き付けられるように、補助プラズマ源がバイアスされる。幾つかの実施形態では、システムが、加工対象物が配置されるエンドステーションを備え、補助プラズマ源が、エンドステーション内に配置される。幾つかの実施形態では、ヒータが、エンドステーション内に配置される。特定の実施形態では、補助プラズマ源から分離したプラズマフラッドガン(plasma flood gun)が、エンドステーション内に配置される。
【0010】
別の一実施形態によれば、所望の種のイオンを加工対象物の中に注入する方法が開示される。該方法は、所望の種を含むガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することを含み、補助プラズマ源は加工対象物に近接して位置付けられ、プラズマからのイオン及びラジカルが、補助プラズマ源を出て、加工対象物に向けて移動し、該方法は更に、補助プラズマ源とは異なるイオン源を使用して生成されたイオンビームを用いて、補助プラズマ源からのイオン及びラジカルを加工対象物の中に叩き込む(knock into)ことを含む。幾つかの実施形態では、イオンビームが不活性種を含む。特定の実施形態では、イオンビームが加工対象物に衝突する箇所において、プラズマからのイオン及びラジカルが加工対象物に向けられる。幾つかの実施形態では、イオンビームが加工対象物に衝突する箇所において、イオン及びラジカルが加工対象物の表面上に膜を形成する。特定の実施形態では、所望の種が、第III族、第IV族、又は第V族の元素を含有する分子を含む。
【0011】
別の一実施形態によれば、加工対象物を処理する方法が開示される。該方法は、エッチング種を含むガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することを含み、補助プラズマ源は、エンドステーション内で加工対象物に近接して位置付けられ、プラズマからのイオン及びラジカルが、補助プラズマ源を出て、加工対象物の表面上の自然酸化物層と反応し、該方法は更に、反応の後で加工対象物を加熱することを含み、熱が、加工対象物上の自然酸化物層の昇華をもたらし、該方法は更に、補助プラズマ源とは異なるイオン源を使用して生成されたイオンビームを用いて、加工対象物上で更なるプロセスを実行することを含み、加工対象物はエンドステーション内に留まる。特定の実施形態では、エッチング種が、アンモニアとNF3とから成る群から選択される。幾つかの実施形態では、加工対象物の一部分がプラズマに曝露され、次いで、熱に曝露されるように、加工対象物が走査(scan)される。幾つかの実施形態では、生成すること及び加熱することが、加工対象物の表面が洗浄されるまで繰り返される。
【0012】
別の一実施形態によれば、加工対象物をエッチングする方法が開示される。該方法は、エッチング種を含むガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することを含み、補助プラズマ源は加工対象物に近接して位置付けられ、プラズマからのイオン及びラジカルが、補助プラズマ源を出て、加工対象物の一部分に向けて移動し、加工対象物の一部分上に膜を形成し、該方法は更に、補助プラズマ源とは異なるイオン源を使用して生成されたイオンビームを用いて、エネルギーを供給し、加工対象物をエッチングすることを含む。特定の実施形態では、エッチング種がハロゲンを含む。幾つかの実施形態では、エッチング種がCF4及び酸素を含む。特定の実施形態では、エッチング種が水素を含み、自然酸化物層がエッチングされる。幾つかの実施形態では、イオンビームが不活性ガスを含む。特定の実施形態では、膜が生成されている間に、イオンビームが加工対象物のその一部分に向けられる。特定の実施形態では、膜が生成された後で、イオンビームが加工対象物のその一部分に向けられる。
【0013】
別の一実施形態によれば、加工対象物上に材料を堆積させる方法が開示される。該方法は、プロセスガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することを含み、補助プラズマ源は加工対象物に近接して位置付けられ、プラズマからのイオン及びラジカルが、補助プラズマ源を出て、加工対象物の一部分に向けて移動し、加工対象物の一部分上に膜を形成し、該方法は更に、補助プラズマ源とは異なるイオン源を使用して生成されたイオンビームを用いて、エネルギーを供給し、加工対象物上に材料を堆積させることを含む。特定の実施形態では、プロセスガスがCH4を含み、イオンビームは第IV族の元素を含む。幾つかの実施形態では、イオンビームのみを使用して生成され得るよりもボックス状のプロファイル(box-like profile)が生成される。
【0014】
別の一実施形態によれば、加工対象物を処理する方法が開示される。該方法は、イオンビームを用いて加工対象物に向けてイオンを導くことと、プロセスガスを用いて補助プラズマ源内にプラズマを生成することとを含み、補助プラズマ源は、エンドステーション内で加工対象物に近接して位置付けられ、プラズマからのイオン及びラジカルが、補助プラズマ源を出て、加工対象物の表面と反応し、該方法は更に、反応の後で加工対象物を加熱することを含み、熱が、加工対象物の表面上でイオンビームによって引き起こされた損傷を修復する。特定の実施形態では、イオンビームを用いて、イオンを加工対象物の中に注入する。幾つかの実施形態では、加工対象物の一部分がプラズマに曝露され、次いで、熱に曝露されるように、加工対象物が走査される。幾つかの実施形態では、加工対象物が、摂氏100度と摂氏500度の間の温度まで加熱される。特定の実施形態では、プロセスガスが、水素/窒素の混合物を含む。幾つかの実施形態では、生成すること及び加熱することの前に、加工対象物の全体が、イオンビームによって処理される。特定の実施形態では、加工対象物の一部分が、イオンビームによって処理され、同時に、第2の部分が、プラズマと反応する。
【0015】
本開示をより良く理解するために、参照により本明細書に組み込まれる添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態による、インライン表面エンジニアリングソースと共に使用され得る、リボンイオンビームを生成するためのビームライン注入システムの典型的な図である。
【
図2】一実施形態による、
図1のエンドステーションを示す。
【
図3A】一実施形態による、
図2の補助プラズマ源を示す。
【
図3B】別の一実施形態による、
図2の補助プラズマ源を示す。
【
図4A】一実施形態による、
図2のエンドステーションの構成を示す。
【
図4B】別の一実施形態による、
図2のエンドステーションの構成を示す。
【
図5】
図4Aのエンドステーションを使用するイオン注入を示す。
【
図6】1つの前処理プロセスの典型的なフローチャートを示す。
【
図7】1つの後処理プロセスの典型的なフローチャートを示す。
【
図8】別の一実施形態による、インライン表面エンジニアリングソースを使用する半導体処理システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施形態による、インライン表面エンジニアリングソースと共に使用され得る、ビームラインイオン注入システムを示している。ビームラインイオン注入システムは、リボンイオンビームを用いて加工対象物を処理するために使用され得る。
【0018】
ビームラインイオン注入システムは、イオン源チャンバを画定する複数のチャンバ壁を備えるイオン源100を含む。特定の実施形態では、イオン源100が、RFイオン源であってよい。この実施形態では、RFアンテナが、誘電体窓(dielectric window)に対して配置されてよい。この誘電体窓は、チャンバ壁のうちの1つの一部又は全部を備えてよい。RFアンテナは、銅などの導電性材料を含んでよい。RF電源は、RFアンテナと電気的に通じている。RF電源は、RFアンテナにRF電圧を供給することができる。RF電源によって供給される電力は、0.1と10kWの間であってよく、1と100MHzの間などの任意の適切な周波数であってよい。更に、RF電源によって供給される電力をパルス化してもよい。
【0019】
別の一実施形態では、カソードが、イオン源チャンバ内に配置される。フィラメントが、カソードの後方に配置され、電子を放出するようにエネルギー供給される。これらの電子は、カソードに引きつけられ、今度は、カソードが、イオン源チャンバの中に電子を放出する。このカソードは、フィラメントから放出される電子によって間接的に加熱されるため、間接加熱カソード(IHC)と称され得る。
【0020】
他の実施形態も可能である。例えば、バーナス(Bernas)イオン源、容量結合プラズマ(CCP)源、マイクロ波又はECR(electron-cyclotron-resonance)イオン源などによって、プラズマを異なるやり方で生成することができる。プラズマが生成されるやり方は、本開示によって限定されない。
【0021】
抽出プレートと称される1つのチャンバ壁は、抽出開孔を含む。抽出開孔は、そこを通してイオン源チャンバ内で生成されたイオン1が抽出され、加工対象物10に向けられるところの開口部であってよい。加工対象物10は、シリコンウエハであってよく、或いは、GaAs、GaN、若しくはGaPなどの半導体製造向けに適した別のウエハであってもよい。抽出開孔は、任意の適切な形状であってよい。特定の実施形態では、抽出開孔が、幅(x‐寸法)と称される1つの寸法を有する卵型又は矩形状であってよく、これは、高さ(y‐寸法)と称される第2の寸法よりもはるかに大きくてよい。
【0022】
イオン源100の抽出開孔の外側且つ近傍には、抽出光学素子110が配置されている。特定の実施形態では、抽出光学素子110が、1以上の電極を備える。各電極は、内部に開孔が配置された単一の導電性構成要素であってよい。代替的には、各電極が、2つの導電性構成要素の間に開孔を生成するように離間した当該2つの導電性構成要素を含んでよい。電極は、タングステン、モリブデン、又はチタンなどの金属であってよい。電極のうちの1以上は、接地(ground)に電気接続されていてよい。特定の実施形態では、電極のうちの1以上が、電極電源を使用してバイアスされてよい。電極電源を使用して、抽出開孔を通してイオンを引き付けるように、イオン源に対して電極のうちの1以上をバイアスすることができる。抽出開孔と抽出光学素子内の開孔とは、イオン1が両方の開孔を通過するように整列している。
【0023】
抽出光学素子110の下流に位置するのは、第1の四重極レンズ120であってよい。第1の四重極レンズ120は、システム内の他の四重極レンズと協働して、イオン1をイオンビームに集束させる。
【0024】
第1の四重極レンズ120の下流に位置するは、質量分析器130である。質量分析器130は、磁場を使用して、抽出されたイオン1の経路を導く。磁場は、それらのイオンの質量と電荷に従ってイオンの飛行経路に影響を与える。分解開孔(resolving aperture)151を有する質量分解デバイス(mass resolving device)150は、質量分析器130の出力部(すなわち、遠位端)に配置される。磁場を適切に選択することによって、選択された質量及び電荷を有するイオン1のみが、分解開孔151を通るように導かれることとなる。他のイオンは、質量分解デバイス150又は質量分析器130の壁に衝突し、システム内でそれ以上移動することができないことになる。
【0025】
第2の四重極レンズ140が、質量分析器130の出力部と質量分解デバイス150との間に配置されてよい。
【0026】
コリメータ180が、質量分解デバイス150から下流に配置される。コリメータ180は、分解開孔151を通過したイオン1を受け入れ、複数の平行な又は略平行なビームレットから生成されるリボンイオンビームを生成する。質量分析器130の出力部(すなわち、遠位端)と、コリメータ180の入力部(近位端)とは、一定の距離だけ離間し得る。質量分解デバイス150は、これら2つの構成要素間のスペースに配置される。
【0027】
第3の四重極レンズ160が、質量分解デバイス150とコリメータ180の入力部との間に配置されてよい。また、第4の四重極レンズ170も、質量分解デバイス150とコリメータ180の入力部との間に配置されてよい。
【0028】
特定の実施形態では、四重極レンズが、他の位置に配置されてもよい。例えば、第3の四重極レンズ160は、第2の四重極レンズ140と質量分解デバイス150との間に配置されてもよい。更に、特定の実施形態では、四重極レンズのうちの1以上を省略することができる。
【0029】
コリメータ180の下流に位置するのは、加速/減速段190であってよい。加速/減速段190は、エネルギー純度モジュールと称され得る。エネルギー純度モジュールは、イオンビームの偏向、減速、及び集束を独立して制御するように構成されたビームラインレンズ構成要素である。例えば、エネルギー純度モジュールは、垂直静電エネルギーフィルタ(VEEF)又は静電フィルタ(EF)であってよい。
【0030】
イオン1は、イオンビーム191として加速/減速段190を出て、エンドステーション200に入る。イオンビーム191は、リボンイオンビームであってよい。加工対象物10は、エンドステーション200内に配置される。
【0031】
したがって、ビームラインイオン注入システムは、エンドステーション200内で終端する複数の構成要素を備える。上述したように、これらの構成要素は、イオン源100、抽出光学素子110、四重極レンズ120、140、160、170、質量分析器130、質量分解デバイス150、コリメータ180、及び加速/減速段190を含む。なお、これらの構成要素のうちの1以上は、ビームラインイオン注入システム内に含まれなくてもよい。
【0032】
更に、上述した開示は、その高さよりもはるかに大きい幅を有するリボンイオンビームを説明しているが、他の実施形態も可能である。例えば、走査されるスポットビームが、エンドステーション200に入ってよい。走査されるスポットビームは、典型的には円形のイオンビームであり、これを側方に走査して、リボンイオンビームと同じ効果を生成する。
【0033】
コントローラ195を使用して、システムを制御することができる。コントローラ195は、処理ユニット及び関連するメモリデバイスを有する。このメモリデバイスは、指示命令であって、処理ユニットによって実行されると、システムが本明細書で説明される機能を実行することを可能にする指示命令を含む。このメモリデバイスは、フラッシュROM、電気的に消去可能なROM、又は他の適切なデバイスなどの不揮発性メモリを含む、任意の非一過性の記憶媒体であってよい。他の実施形態では、メモリデバイスが、RAMやDRAMのような揮発性メモリであってもよい。特定の実施形態では、コントローラ195が、汎用コンピュータ、埋め込み型プロセッサ、又は特別に設計されたマイクロコントローラであってもよい。コントローラ195の実際の実装は、本開示によって限定されるものではない。
【0034】
図2は、一実施形態によるエンドステーション200を示している。上述したように、加工対象物10は、エンドステーション200内に配置される。イオンビーム191は、エンドステーション200に入り、加工対象物10に向けられる。加工対象物10は、プラテン210によって保持されてよい。プラテン210は、プラテン210の前面に垂直な軸の周りで回転することができる。また、プラテン210は、プラテン210の前面に平行な軸211の周りで回転することもできる。加えて、プラテン210は、方向212に沿った線形移動が可能であってよい。無論、プラテン210は、これらの機能の全部よりも少ない機能を有してもよい。
【0035】
プラズマフラッドガン220を、エンドステーション200内でイオンビーム191の近傍に配置してよい。プラズマフラッドガン220を使用して、低エネルギー電子を放出し、空間電荷の吹き上げを減少させ、加工対象物10を中性化する。特に注目すべきは、プラズマフラッドガン220が、希ガス又は非反応性ガスから生成されたプラズマから電子の形態を採る正味の負に帯電したフラックスを放出するためにのみ使用され、分子解離からの原子又は分子ラジカルなどの他のプラズマ種は放出しないことである。言い換えると、プラズマフラッドガン220は、キセノンなどの不活性ガスを用いて電子を放出する。プラズマフラッドガン220は、加工対象物10の特性を変化させるものではない。
【0036】
一実施形態では、プラズマフラッドガン220が、実質的に金属のない内面を有するプラズマチャンバ221を備え得る。無線周波数コイル222が、チャンバ内に封入されたガスを直接的に励起するために、プラズマチャンバ221内に配置され、したがって、所望のプラズマを生成し維持することができる。プラズマチャンバ221は、片側に、そこを通ってプラズマがプラズマチャンバ221から流れ出て、イオンビーム191のイオンと係合(engagement)することができるところの細長い出口開孔223を有してよい。一連の磁石224が、プラズマチャンバ221の周りに配置されて、内部で生成されたプラズマを包含及び制御することができる。特に、磁石224は、プラズマチャンバ221の壁の外側に配置されてもよく、それらのそれぞれの磁場は、プラズマチャンバ221の壁を通って延びている。
【0037】
より具体的には、プラズマチャンバ221の内装部分は、グラファイトや炭化ケイ素(SiC)のような非金属導電性材料から作製されてよい。プラズマチャンバ221の側壁内にはフィードスルーガスパイプが設けられ、これを介して1以上のガス状物質がプラズマチャンバ221に供給されてよい。ガス状物質には、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)、又はクリプトン(Kr)などの不活性ガスが含まれ得る。ガス圧は、典型的には、1から50mTorrの範囲内に維持される。
【0038】
無線周波数コイル222は、プラズマチャンバ221の中央を概して貫通して延在する細長い形状を有してよい。無線周波数コイル222の一端は、RF電源に接続されてよく、RF電源は、プラズマチャンバ221内でRF電力を誘導結合することができる。RF電力は、例えば、2MHz、13.56MHz、及び27.12MHzなどの、典型的な周波数で機能することができる。無線周波数コイル222は、プラズマチャンバ221内に完全に封入されてもよい。プラズマチャンバの側壁において、出口開孔223が、生成されたプラズマがイオンビーム191と接触するように流れることを可能にするように配置される。リボン形状のイオンビームについては、出口開孔223が、リボンの幅を実質的にカバーしてよい。
【0039】
一実施形態によれば、プラズマフラッドガン220からのプラズマが、プラズマチャンバ221のすぐ外側を通過するイオンビーム191と共にプラズマブリッジを生成することが望ましいだろう。前述したように、プラズマチャンバ221は、プラズマチャンバ221内に生成されたプラズマを包含及び制御するように配置された永久磁石又は電磁石のうちの何れかなどの一連の磁石224を含んでよい。また、これらの磁石224の特性が、出口開孔223を介してプラズマチャンバ221を出る際のプラズマの特性を制御するように、それらの磁石を配置することもできる。
【0040】
他の実施形態では、プラズマフラッドガン220が、熱イオン放射(thermoionic emission)を生成するためにフィラメントが使用される、バーナス(Bernas)型イオン源であってもよい。アルゴンなどのガスが、プラズマチャンバの中に導入される。放出された電子を使用して、プラズマチャンバ内のプラズマを励起する。次いで、プラズマからの電子が、出口開孔を通してプラズマチャンバから抽出される。
【0041】
言い換えれば、プラズマフラッドガン220は、様々な様態で構築されてよく、その実装は本開示によって限定されるものではない。
【0042】
したがって、プラズマフラッドガン220からの電子は、磁場によって閉じ込められて、それらの経路をイオンビーム191に向けることができる。特定の実施形態では、プラズマフラッドガン220が、使用されなくてもよい。
【0043】
補助プラズマ源270が、エンドステーション200内に配置される。プラズマフラッドガン220とは異なり、補助プラズマ源270は、イオン及び/又はラジカルを、1以上の出口開孔275を通して加工対象物10に近接するエリアの中に放出するために使用される。周知のように、ラジカルは、不対原子価電子(unpaired valence electron)を有する分子又は原子種である。その結果、ラジカルは、典型的には著しく反応性である。ラジカルは、典型的には、補助プラズマ源270内のより大きな分子の解離によって生成される。特定の実施形態では、補助プラズマ源270が、加工対象物10の30cm以内に配置されるが、他の実施形態も可能である。補助プラズマ源270は、円筒形として図示されているが、これは単なる例示であり、補助プラズマ源270は、任意の形状であってもよいことが理解される。
【0044】
特定の実施形態では、ヒータ240も、エンドステーション200内に配置されてよい。ヒータ240は、ヒータ240と補助プラズマ源270との両方がイオンビーム191の同じ側に配置されるように、補助プラズマ源270の近くに位置付けられてよい。ヒータ240は、ヒートランプ、LED、又は抵抗加熱器を含む、任意の適切なデバイスであってよい。
図2は、イオンビーム191とヒータ240との間に配置された補助プラズマ源270を示しているが、他の構成も可能である。例えば、ヒータ240は、イオンビーム191と補助プラズマ源270との間に配置されてもよい。別の一実施形態では、ヒータ240と補助プラズマ源270とが、イオンビーム191の両側に配置されてもよい。
【0045】
図3Aで示されている一実施形態では、補助プラズマ源270が、円筒形であってよい外側ハウジング231を備えているが、他の形状も可能である。外側ハウジング231は、アルミニウム又は何らかの他の適切な材料から構築されてよい。外側ハウジング231内には、アンテナ232があり、これは、保護用カバー233によって囲まれ得る。アンテナ232は、金属などの導電性材料から構築されてよく、U字型であってよい。アンテナ232は、保護用カバー233を用いて被覆され、又は保護用カバー233内で同軸になっている。保護用カバー233は、補助プラズマ源270内で生成されたプラズマ274からアンテナ232を保護するために、セラミック材料であってよい。外側ハウジング231は、1以上の出口開孔275を含む。1以上の出口開孔275を通って、プラズマ274が、補助プラズマ源270を出て、エンドステーション200に入る。作動時には、外側ハウジング231によって画定される空間の中にプロセスガスが導入される。アンテナ232は、RF電源235を使用してエネルギー供給される。このエネルギーは、補助プラズマ源270内にプラズマ274を生成する。次いで、プラズマ274は、1以上の出口開孔275を介して補助プラズマ源270を出る。
【0046】
図3Bは、別の一実施形態による補助プラズマ源270を示している。この実施形態では、補助プラズマ源270が、外側ハウジング251の外側に配置されたアンテナ252を有する。アンテナ252は、RF電源255を使用してエネルギー供給される。例えば、アンテナ252に近接する壁は、誘電体材料であってよく、その結果、アンテナ252からのエネルギーは、壁を通過して、外側ハウジング251によって画定される空間の中に入る。プロセスガスが、この空間の中に導入され、エネルギー供給されると、プラズマ274を生成する。次いで、プラズマ274は、1以上の出口開孔275を介して補助プラズマ源270を出る。
【0047】
補助プラズマ源270向けに、他の種類のデバイスが使用されてもよい。例えば、間接加熱カソード(IHC)イオン源が使用されてよい。代替的に、バーナス源が使用されてよい。別の一実施形態では、誘導結合プラズマ(ICP)又は容量結合プラズマ(CCP)源を使用することができる。したがって、補助プラズマ源270は、
図3A~
図3Bで示されているものに限定されない。
【0048】
図4Aで示されているような特定の実施形態では、イオンビーム191が加工対象物10と衝突する箇所において、1以上の出口開孔275が加工対象物10に向けてプラズマ274を放出するように、補助プラズマ源270が方向付けられてよい。このやり方では、イオンビーム191が、プラズマ274と協働して、加工対象物10を処理する。例えば、プラズマ274内のイオン及びラジカルは、イオンビーム191に曝露されているエリア内の加工対象物10上に堆積し得る。
図2に関して説明されたように、エンドステーション200は、必要に応じて、プラズマフラッドガン220及び/又はヒータ240を含んでよい。
【0049】
図4Bは、別の一実施形態による、エンドステーション200を示している。この実施形態では、1以上の出口開孔275が加工対象物10と直接的に対向するように、補助プラズマ源270が方向付けられる。このやり方では、プラズマ274の流れが、イオンビーム191と平行である。
図2に関して説明されたように、エンドステーション200は、必要に応じて、プラズマフラッドガン220及び/又はヒータ240を含んでよい。
【0050】
図4A~
図4Bで示されている実施形態では、プロセスガスが、補助プラズマ源270の中に導入され得る。アンテナは、RF電源の使用を介するなどしてエネルギー供給される。アンテナ内のエネルギーは、補助プラズマ源270内のプロセスガスをイオン化し、プラズマ274を生成させる。次いで、このプラズマ274は、1以上の出口開孔275を通って出て、加工対象物10に向かう。特定の実施形態では、補助プラズマ源270と加工対象物10との間に電圧差が存在してよい。例えば、補助プラズマ源270は、加工対象物10よりも正にバイアスされてよい。幾つかの実施形態では、補助プラズマ源270が、加工対象物10よりも0~5000Vだけ正にバイアスされてよい。特定の実施形態では、補助プラズマ源270が、加工対象物10よりも0~500Vの間だけ正にバイアスされてよい。この実施形態では、補助プラズマ源270内の正のイオンが、加工対象物10に向けて加速される。代替的に、補助プラズマ源270は、加工対象物10よりも負にバイアスされてよい。この実施形態では、補助プラズマ源270内の正のイオンが、加工対象物10によって幾らか反発される。他の実施形態では、補助プラズマ源270が、加工対象物10と同じ電位にあってよい。それによって、補助プラズマ源270からのイオン及びラジカルのフラックスが、1以上の出口開孔275を通って単にドリフトする。
【0051】
図4Aで示されている実施形態では、プラテン210が、方向212に沿って上方に移動するにつれて、加工対象物10の一部分が、イオンビーム191と補助プラズマ源270からのプラズマ274とに曝露される。この曝露の後で、加工対象物10のその一部分は、次に、ヒータ240によって加熱されてよい。
【0052】
図4Bで示されている実施形態では、加工対象物10が、先ず、イオンビーム191によって処理され、次いで、上方に移動したときにプラズマ274によって処理される。イオンビーム191とプラズマ274とに曝露された後で、加工対象物10は、次いで、ヒータ240によって熱プロセスを受けてよい。
【0053】
イオンビーム191及び/又はプラズマ274による処理に続いて熱を使用することによって、有益な用途がもたらされる。
【0054】
図4A~
図4Bで示されている構成では、任意の種類の補助プラズマ源が採用され得ることに留意されたい。したがって、補助プラズマ源270の種類及びその方向の選択は、実行されているプロセス及び他の考慮事項に基づく設計の判断に委ねられる。
【0055】
補助プラズマ源270の中へのプロセスガスの流量、ならびにアンテナによって印加されるエネルギーは、補助プラズマ源270から抽出されるラジカルとイオンの数を決定することにおける要因である。特定の実施形態では、プロセスガスが、不活性ガスで希釈されて、プラズマを維持し、又はプロセス制御のための所望の種のラジカルとイオンの数を低減させる。
【0056】
図1は、イオン注入に関連して記載されているが、エンドステーション200は、任意の半導体処理システムと共に利用され得ることが理解される。以上、ソースエンジニアリングソースを用いた半導体処理システムについて説明したが、この半導体処理システムの様々な用途について説明することにする。
【0057】
一実施形態では、
図1の半導体処理システムが、
図4Aで示されている構成を使用して、イオン注入プロセスを実行するために使用されてよい。上述したように、
図4Aのエンドステーションは、イオンビーム191が加工対象物10に衝突する箇所において、補助プラズマ源270からのプラズマ274を加工対象物10に向ける。このやり方では、加工対象物10の表面と同時に、イオンビーム191とプラズマ274との間に相互作用が存在する。
【0058】
この実施形態では、ターゲット種を、加工対象物10の中に注入することが望ましい。例えば、ターゲット種は、第III族の元素、第IV族の元素、又は第V族の元素であってよい。例えば、一実施形態では、ヒ素が所望の種であってよい。所望の種は、補助プラズマ源270の中に導入される。所望の種は、ターゲット種を含む分子の形態で導入されてよい。この所望の種は、プラズマ274を生成するために励起される。
図5で示されているように、イオンビーム191が加工対象物10に衝突する箇所の近くで、プラズマ274が加工対象物10に向けて拡散する。プラズマ274からのイオンとラジカルは、膜277などの形態で、加工対象物10の表面上に配置され得る。アルゴン、キセノン、又はクリプトンなどのガスが、イオン源100(
図1参照)に導入され、イオンビーム191を生成するために使用される。特定の実施形態では、ガスが、ネオン、アルゴン、キセノン、又はクリプトンなどの第VIII族の元素として規定される不活性種であってよい。イオンビーム191は、加工対象物10上の膜277の近傍の又は膜277として堆積された、プラズマ274からのイオンとラジカルに衝突する。これらの衝突は、イオンビーム191内のイオンからのエネルギーの大部分を、プラズマ274からのイオンとラジカルに伝達する。これにより、プラズマ274からのイオンとラジカルは、加工対象物10の表面を貫通するのに必要な速度を得る。したがって、イオンビーム191内のイオンのエネルギーは、プラズマ274からのイオンとラジカルに与えられる。これにより、膜277内のイオンとラジカルを、加工対象物10の中に打ち込むことができる。この実施形態では、イオンビーム191を使用して、プラズマ274からのイオンとラジカルを叩き込む。したがって、従来のイオン注入装置とは異なり、イオン源100内のイオンは、エンドステーション200内の補助プラズマ源270内で生成されるイオンとラジカルを打ち込むためのエネルギーを供給するために使用される。
【0059】
したがって、この実施形態では、イオンビーム191が、エネルギーを供給するために使用され、一方で、補助プラズマ源270は、所望の種を供給するために使用される。上記の説明は、不活性ガス及びヒ素を使用するが、これらは純粋に例示的なものであり、本開示はこの実施形態に限定されない。イオンビーム191は、任意のイオン種から生成されてよい。幾つかの実施形態では、イオンビームがシリコンウエハの導電性に影響を及ぼさないように、不活性元素又は第IV族の元素などの特定の種が使用されてよい。ターゲット種は、ホウ素及びガリウムなどの第III族の元素、並びにリン及びヒ素などのV族の元素を含む、任意の所望の種であってよい。特定の実施形態では、第III族の元素及び第V族の元素が、BF3、AsH3、PH3などの分子を形成するために他の元素と結合されてよい。
【0060】
別の一実施形態では、本明細書で説明される半導体処理システムを、エッチングプロセス向けに使用することができる。具体的には、補助プラズマ源270を使用することにより、加工対象物に近接してより化学的に活性なラジカルを生成することができる。この場合、補助プラズマ源270は、第VII族の元素やこれらの元素を含有する分子のようなエッチング化学のイオン、ラジカル、及び準安定中性物質を生成するために使用される。これらのイオン及び準安定中性物質は、補助プラズマ源270から出て、加工対象物10に向けてドリフトする。補助プラズマ源270からのイオンは、低エネルギーを有するので、これらのイオンは、加工対象物10の表面又は表面の近くに堆積する。
【0061】
特定の一実施形態では、ハロゲン含有ガスが、補助プラズマ源270の中に導入されて、イオンを生成する。補助プラズマ源270を出る低エネルギーのイオン及びラジカルは、加工対象物10の表面上に薄膜を形成することができる。この薄膜は、加工対象物10と反応して、イオンビーム191によって与えられるエネルギーを用いて加工対象物10をエッチングする。特定の実施形態では、イオンビーム191が、アルゴンなどの不活性ガスを含んでよい。一実施形態では、
図4Aの実施形態を使用して、膜が形成されている間に、イオンビーム191を加工対象物10の一部分に向ける。別の一実施形態では、
図4Bの実施形態を使用して、膜が形成された後に、イオンビーム191を加工対象物10の一部分に向ける。
【0062】
別の特定の一実施形態では、CF4と酸素が、補助プラズマ源270内でイオン化及び解離される。アルゴンのような不活性ガスから構成されるイオンビーム191を用いて、加工対象物10の表面をエッチングする。
【0063】
更に別の特定の一実施形態では、加工対象物10の表面上に自然酸化物層が形成される。この自然酸化物層は、補助プラズマ源270内の水素をイオン化することによってエッチングされ得る。アルゴンのような不活性ガスから構成されるイオンビームを用いて、加工対象物10の表面から自然酸化物をエッチングする。
【0064】
別の一実施形態では、
図1~
図4の半導体処理システムが、堆積のために使用されてよい。堆積される材料は、補助プラズマ源270内でイオン化されてよい。材料は、ドーパントであってよく、又は加工対象物10向けの被覆として使用される材料であってもよい。その材料からのイオンとラジカルは、補助プラズマ源270を出て、加工対象物10に向けてドリフトし、そこで加工対象物10の表面上に堆積される。
【0065】
特定の一実施形態では、プロセスガスがCH4であってよく、一方で、イオンビーム191は、炭素などの第IV族の元素を含む。これにより、加工対象物10内でよりボックス状のプロファイルが可能になる。対照的に、イオンビーム191を単独で使用すると、逆行プロファイルが生じる。
【0066】
したがって、イオンビーム191及び補助プラズマ源270が同時に使用される用途では、イオンビーム191を使用して、2つの機能のうちの少なくとも1つを実行することができる。
【0067】
先ず、イオンビーム191は、補助プラズマ源270からのイオン又はラジカルを、加工対象物10に向けて加工対象物10の中へ打ち込むために必要とされるエネルギーを供給することができる。この一例は、
図5で示されているように、イオンビーム191を用いて、プラズマ274からのイオンを加工対象物10の中に叩き込む。
【0068】
次に、イオンビーム191は、加工対象物10の表面での化学反応を促進し又は引き起こすために、追加の種を供給することができる。これは、多くのやり方で実現することができる。先ず、イオンビーム191は、下にある加工対象物10の結合を弱めて、加工対象物10の表面が堆積層と反応できるようにする。次に、イオンビーム191は、より多くの反応のために、堆積層を下にある加工対象物10の中に相互混合させることができる。第3に、イオンビーム191は、堆積層と加工対象物10とから作製された新しい成形化合物を遊離又は揮発させることができる。この新たに形成された化合物のスパッタリング歩留まりは、加工対象物10上のイオンビーム191だけのスパッタリング歩留まりよりもはるかに高くなり得る。例えば、エッチングプロセスでは、CF4と酸素ラジカルが、加工対象物10の表面上に窒化ケイ素を有するCFxポリマー型の材料を生成する。結果として得られたSiFxCy化合物は、イオンビーム191のエネルギーによって揮発する。
【0069】
更に別の一実施形態では、補助プラズマ源270とイオンビーム191の使用は、同時に行われなくてもよい。例えば、加工対象物10は、これらのソースのうちの一方によって処理され、次いで、これらのソースのうちの他方によって後で処理されてよい。
【0070】
例えば、一実施形態では、補助プラズマ源を使用して、加工対象物10の前処理を提供することができる。このプロセスのフローチャートを
図6で示している。この実施形態では、
図4A又は
図4Bの実施形態を使用してよい。というのも、イオンビーム191は、前処理中に有効ではないからである。先ず、プロセス500で示されているように、イオンビーム191は無効である。プロセス510で示されているように、アンモニア(NH
3)及びNF
3などの1以上のエッチング種が、補助プラズマ源270の中に導入される。補助プラズマ源270は、イオン及び他のラジカルを生成する。これらのイオン及びラジカルは、補助プラズマ源270を出て、加工対象物10に向けてドリフトし、プロセス520で示されているように、加工対象物10の酸化ケイ素層と反応する。プロセス530で示されているように、イオン及びラジカルに曝露された加工対象物10の一部分が、次いで、ヒータ240によって加熱されるように、加工対象物10が走査される。プロセス540で示されているように、熱が、加工対象物10の表面上で生成された反応酸化ケイ素を昇華させるのに役立つ。このプロセスは、加工対象物10の表面が洗浄されるまで繰り返される。この後、プロセス550で示されているように、イオンビーム191によって加工対象物10に別のプロセスを施すことができる。有利なことに、加工対象物10は、前処理プロセスと、プロセス550で示されている第2のプロセスとの全体を通して、エンドステーション200内に留まる。言い換えると、加工対象物10は、前処理と第2のプロセスとの間にエンドステーションを離れない。
【0071】
別の一実施形態では、上述のプロセスが、加工対象物10がプラテン210上に配置されていないときに実行されてよい。この実施形態では、このプロセスが、プラテン210を洗浄する役割を果たす。
【0072】
別の一実施形態では、補助プラズマ源270が、加工対象物10の後処理に使用される。例えば、後処理を使用して、加工対象物10の表面を安定化処理するか、又はイオン注入プロセスによって引き起こされた損傷を修復するかの何れかであってよい。このフローチャートを
図7に示している。先ず、上述したように、イオンビーム191を用いて加工対象物10を処理する。次いで、プロセス610で示されているように、プロセスガスが、補助プラズマ源270の中に導入される。プロセスガスは、水素/窒素の混合物を含んでよい。プロセス620で示されているように、補助プラズマ源270からのイオンとラジカルは、加工対象物10の表面に向けられる。プロセス630で示されているように、加工対象物10は、例えば摂氏100度と摂氏500度との間の温度で、ヒータ240を通過して走査される。損傷修復は、低温のフォーミングガス(forming gas)を用いて機能することが示されており、プラズマアニールと称される。プロセス640で示されているように、安定化処理は、水素や窒素のラジカルを表面のダングリングボンドと反応させることによって生じる。
【0073】
一実施形態では、
図7で示されている後処理が、イオンビーム191が無効にされている間に実行される。別の一実施形態では、後処理が、
図4Bで示されている実施形態を使用して実行されてよい。具体的には、加工対象物10が、イオンビーム191によって注入される。加工対象物10が方向212において上方に移動すると、注入された部分が、次いで、補助プラズマ源270からのプロセスガスに曝露される。その後、その注入部分は、次いで加熱される。したがって、この実施形態では、加工対象物10が、加工対象物10の単一の走査中に、イオンビーム191によって注入され、後処理される。言い換えれば、加工対象物の一部分は、その第1の部分とは異なる加工対象物の第2の部分がプラズマに曝露されている間に、イオンビームに曝露される。
【0074】
したがって、本開示は、イオン及びラジカルのソースがエンドステーション200内に組み込まれている半導体処理システムを説明する。従来、エンドステーション200内にイオン又はラジカルが導入されないことを保証するために、多大な努力が払われてきた。具体的には、プラズマフラッドガン220が、主として電子がエンドステーション200の中に放出されることを保証するように設計されている。本半導体処理システムは、故意にイオンとラジカルをエンドステーション200の中に導入する。特定の実施形態では、これらのイオンとラジカルが、イオンビーム191の使用と同時に導入されて、他の方法では不可能な用途を実行する。
【0075】
上述の開示は、補助プラズマ源270をビームラインイオン注入システムと共に使用すると説明しているが、他の実施形態も可能である。たとえば、
図8はそのような一例を示している。この図面では、半導体処理システムが、複数のチャンバ壁701から構成されるイオン源チャンバ700を含む。特定の実施形態では、これらのチャンバ壁701のうちの1以上が、石英などの誘電体材料から構築されてよい。RFアンテナ710が、第1の誘電体壁702の外側表面上に配置されてよい。RFアンテナ710は、RF電源720によって電力供給されてよい。RFアンテナ710に供給されたエネルギーは、イオン源チャンバ700内に放射されて、ガス入口730を介して導入される供給ガスをイオン化する。他の実施形態では、ガスが、例えば、間接加熱カソード(IHC)、容量結合プラズマ源、誘導結合プラズマ源、バーナス源、又は任意の他のプラズマ生成器の使用を介するなどして、異なったやり方でイオン化される。
【0076】
抽出プレート740と称される1つのチャンバ壁は、そこを通ってイオンがイオン源チャンバ700から出ることができるところの抽出開孔745を含む。抽出プレート740は、チタン、タンタル、又は別の金属などの導電性材料から構築されてよい。抽出プレート740は、幅が300ミリメートルを超えることがある。更に、抽出開孔745は、加工対象物10の直径より広くてよい。特定の実施形態では、電極などの抽出光学素子750を抽出開孔745の外側に配置して、イオン源チャンバ700内で生成されたイオンを、加工対象物10に向けて加速させることができる。
【0077】
プラテン760は、抽出開孔745に近接してイオン源チャンバ700の外側に配置される。加工対象物10は、プラテン760上に配置される。
【0078】
特定の実施形態では、補助プラズマ源270が、
図3Aに関して説明されたようになっていてよい。他の実施形態では、補助プラズマ源270が、
図3Bに関して説明されたようになっていてよい。更に、補助プラズマ源270の出口開孔275は、
図4A又は
図4Bで示されているように方向付けられてよい。
【0079】
特定の実施形態では、プラズマフラッドガン220が使用されなくてよい。プラズマフラッドガン220は、上述のように機能する。
【0080】
本明細書で説明されるプロセスの全ては、
図8で示されている構成を使用して実行されてもよい。
【0081】
本明細書で説明される半導体処理システム及び方法は、多くの利点を有する。
【0082】
叩き込みを用いた注入の場合、注入の深さは、より厳密に制御され得る。更に、AsH3のような分子が注入される場合、水素イオンの深さは、叩きこみを用いてより良好に制御され得る。叩き込みの利用に関連する更なる利益が存在する。先ず、注入されたイオンからのストラグル(straggle)が、堆積された膜のエネルギー吸収によって低減され得る。これは、側方ストラグルがゲートの下で短チャネル効果を引き起こす可能性がある、ソース/ドレイン延長(extension)のような用途にとって有益である。次に、結果として得られるドーパントプロファイルは表面ピーク(surface peaked)になり、表面ピークキャリア集中を生成し得る。これは、近面がケイ素化合物プロセスによって消費される接点のような用途に有利であり、この領域内の低接触抵抗が望ましい。第3に、差し迫ったイオン(impending ion)が、堆積した膜を隣接するフィン構造にスパッタリングして、フィンの側壁ドーピングを改善し得る。
【0083】
エッチングの場合では、補助プラズマ源270を使用することにより、後続のプロセスが行われるのと同じエンドステーション内の自然酸化物層を取り除くことができる。エッチング及び堆積の用途におけるこの構成の更なる利点は、連続したプロセスによって低エネルギーを維持しながら、より厚い膜を処理又は生成することができることである。不要なスパッタリングや下層の損傷を防ぐために、低エネルギーが役立つことがある。
【0084】
連続した動作の場合では、エンドステーション内で補助プラズマ源270を使用することにより、前処理洗浄プロセス後に加工対象物を移送する必要がなくなる。これはまた、洗浄とプロセス(すなわち、堆積、注入、エッチング)との間の時間を短縮する。例えば、用途が自然酸化物層に敏感である場合、加工対象物の表面を洗浄してから加工対象物を所望のプロセスに晒すまでの時間を短縮することにより、自然酸化物層の再成長が最小限に抑えられる。
【0085】
本開示の範囲は、本明細書で説明された具体的な実施形態に限定されるものではない。上述したもの以外の本開示の様々な実施形態及び本開示の変形例は、本明細書に説明したものと同様に、上述の説明及び添付図面から、当業者には明らかである。このため、そのような上記以外の実施形態及び変形例は、本開示の範囲に含まれるものである。更に、本明細書では、本開示を、特定の目的のための特定の環境における特定の実装の文脈で説明したが、当業者は、その有用性がそれに限定されず、本開示が、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実装され得ることを認識するであろう。したがって、本願の特許請求の範囲は、本明細書に記載した本開示の範囲及び精神を最大限広く鑑みた上で、解釈されたい。