(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220527BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20220527BHJP
C08J 11/24 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08G63/183
C08J11/24
(21)【出願番号】P 2021031316
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】楊 春成
(72)【発明者】
【氏名】蕭 嘉▲彦▼
(72)【発明者】
【氏名】謝 育淇
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080593(JP,A)
【文献】特開2002-200723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08G 63/183
C08J 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ポリエステル材をリサイクルするための艶消しポリエステルフィルムの製造方法であって、
前記艶消しポリエステルフィルムの製造方法は、
前記再生ポリエステル材の一部分を物理的再生し、造粒を行うことにより、複数のメカニカルリサイクルポリエステルペレットを得るステップと、
前記再生ポリエステル材の他部分を化学的再生し、造粒を行うことにより、複数のケミカルリサイクルポリエステルペレットを得るステップであって、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットに、金属塩である少なくとも一種の静電接着添加剤(pinning additives)を含むケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップがさらに含まれるステップと、
複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットと複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットとを互いに混合して、溶融押出し、ポリエステルフィルムとして形成させるステップと、
前記再生ポリエステル材の一部分を物理的再生するステップ及び/または前記再生ポリエステル材の他部分を化学的再生するステップにおいて、前記再生ポリエステル材にさらに艶消し用添加剤を加えることにより、最終的に形成された前記ポリエステルフィルムに前記艶消し用添加剤が含まれるようにするステップと、
を含み、
前記ポリエステルペレットの全使用量100重量部に基づいて、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットにおいて、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップの使用量は、5重量部~35重量部である、ことを特徴とする艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記艶消し用添加剤は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、及びタルク粒子からなる材料群から選択される少なくとも1種であり、
前記艶消し用添加剤の平均粒子サイズは、0.1μm~10μmであり、かつ、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記艶消し用添加剤の含有量は、0.5wt%~10wt%であり、それにより、前記ポリエステルフィルムのヘイズが5%~95%となる、請求項1に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムにおいて、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットは、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂として形成され、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットは、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂と混合したケミカルリサイクルポリエステル樹脂として形成され、
前記ポリエステルペレットの全使用量100重量部に基づいて、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットの使用量は、50重量部~95重量部であり、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットの使用量は、1重量部~40重量部であると共に、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットと複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットとの使用量の和は、55重量部~100重量部である、請求項1に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記再生ポリエステル材の他部分を化学的再生するステップにおいて、前記再生ポリエステル材を解重合して、原料混合物を得るステップと、前記原料混合物を再重合して、造粒を行うことにより、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットを得るステップと、を含む、請求項1に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記原料混合物を再重合するステップは、前記静電接着添加剤(pinning additives)を一部の前記原料混合物に添加して、さらに、前記静電接着添加剤が添加した前記原料混合物を再重合して、造粒を行うことにより、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップを得るステップをさらに含む、請求項4に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップにおいて、前記静電接着添加剤の含有量は、0.01wt%~0.3wt%であり、それにより、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記静電接着添加剤の含有量は、0.005wt%~0.1wt%となる、請求項5に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記原料混合物を再重合するステップにおいて、前記原料混合物の一部にスリップ剤(slipping agent)を添加するステップと、前記スリップ剤を添加した前記原料混合物を再重合して、造粒を行うことにより、ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップを得るステップと、をさらに含み、
前記スリップ剤がシリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、アクリル粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記ポリエステルペレットの全使用量100重量部に基づいて、前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップの使用量は、5重量部~10重量部である、請求項4に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記スリップ剤の粒子サイズは、5μm未満であり、前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップにおいて、前記スリップ剤の含有量は、0.1wt%~20wt%であり、それにより、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記スリップ剤の含有量は、0.5wt%~5wt%となり、それにより、前記ポリエステルフィルムでは、透明度が50%以上となる、請求項7に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記原料混合物を再重合するステップは、前記原料混合物の一部分に前記艶消し用添加剤を添加して、さらに、前記艶消し用添加剤を添加した前記原料混合物を再重合して造粒し、それにより、ケミカルリサイクル艶消しポリエステルチップを得るステップをさらに含む、請求項4に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記再生ポリエステル材の一部分を物理的再生する前記ステップにおいて、前記再生ポリエステル材を物理的に・機械的に粉砕して溶融し、さらに、前記艶消し用添加剤を、溶融された前記再生ポリエステル材に添加して、造粒を行うことにより、メカニカルリサイクル艶消しポリエステルチップを得るステップをさらに含む、請求項1に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】
複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレット、及び複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットのいずれも、前記再生ポリエステル材をリサイクルし、さらに、前記再生ポリエステル材に対し造粒を行うことにより得られるものであり、
前記再生ポリエステル材は、リサイクルペットボトルチップ(r-PET)である、請求項1に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記リサイクルペットボトルチップのポリエステル成分に、二酸単位としてイソフタル酸(IPA)が含まれ、それにより、最終的に形成した前記ポリエステルフィルムにも前記イソフタル酸が含まれ、
前記ポリエステルフィルムの総重量100mol%に基づいて、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記イソフタル酸の含有量は、0.5mol%~5mol%である、請求項11に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記リサイクルペットボトルチップのポリエステル成分に、グリコール単位としてエチレングリコールバイオマス由来のエチレングリコールが含まれ、それにより、最終的に形成した前記ポリエステルフィルムにも前記エチレングリコールバイオマス由来のエチレングリコールが含まれ、
前記ポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記エチレングリコールバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、1wt%~25wt%であり、かつ、前記ポリエステルフィルム中の全炭素量を基に、放射能(C14)で測定したバイオマス由来の炭素量は5%以下である、請求項11に記載の艶消しポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法に関し、特にメカニカルリサイクルポリエステル樹脂及びケミカルリサイクルポリエステル樹脂を共に使用される艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの使用量が飛躍的に増加し、その結果、大量のプラスチック廃棄物が発生している。プラスチックは簡単に分解されないので、プラスチックのリサイクル方法やリサイクルした後の処分方法が重要になっている。
【0003】
再生プラスチックの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)が最も多く、PET再生プラスチックは再生プラスチック全体の52.4%を占めている。そこで、以下では、PET再生プラスチックについて説明する。このようなPET再生プラスチックが大量に回収されているため、この領域に関わる当業者は再生PETプラスチックの処理方法の開発に力を注いできた。
【0004】
既存技術の中では、PETの物理的(機械的)再生が最も一般的である。まず、クリーンされた再生PETプラスチックをチップ状に細断し、高温で溶融させた後、押出機で押し出してPET再生ペレット(r-PETとも呼ばれる)を製造する。
【0005】
環境保護要求の下で、PET製品にPET再生ペレットを高い比率で使用するためには、品質の高いPET再生ペレットを大量に使用する必要があるので、現在、業界のほとんどがPETの再生にメカニカルリサイクルを利用している。しかし、その方法では、PET再生ペレットの製造プロセスにおいて、スリップ剤や静電接着剤などの機能性成分を添加することはできない。そのため、これらの機能性成分を添加した新規な非再生PETペレットを追加しなければならなかった。
【0006】
しかし、このような場合には、PET製品に使用されるPET再生ペレットの割合が減少することになる。すなわち、再生PETペレットを既存技術で十分に活用して新たなPET製品を作ることはできない。PET再生ペレットの使用率が低すぎると、環境規制で定められた基準を満たしていないため、環境ラベルを取得できない場合がある。さらに、PET製品の製造に使用される新しいPET顆粒でも、使用された後廃棄されて回収対象となり、最終的にはリサイクルが必要になっている。
【0007】
そこで、本発明者は、上記の欠陥を改善すべく、徹底的な研究を重ね、理論を応用して、合理的に設計された効果的に上記欠陥を改善するための発明を想到した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、既存技術の不足に対し、艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するために、本発明が採用する技術的手段の1つは、再生ポリエステル材をリサイクルするための艶消しポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。前記艶消しポリエステルフィルムの製造方法は、前記再生ポリエステル材の一部分を物理的再生し、造粒を行うことにより、複数のメカニカルリサイクルポリエステルペレットを得るステップと、前記再生ポリエステル材の他の部分を化学的再生し、造粒を行うことにより、複数のケミカルリサイクルポリエステルペレットを得るステップと、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレット及び複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットを互いに混合して、ポリエステルフィルムとして形成されるように溶融して押し出すステップとを含む。なかでも、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットはさらに、ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップを含む。なかでも、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップは、少なくとも一種の静電接着添加剤(pinning additives)を含み、かつ、前記静電接着添加剤は金属塩である。なかでも、総量とした前記ポリエステルペレット100重量部を基にして、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットにおける前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップの含有量は5重量部~35重量部である。なかでも、前記艶消しポリエステルフィルムの製造方法では、前記物理的再生プロセス及び/または化学的再生プロセスにおいて、前記再生ポリエステル材にさらに艶消し用添加剤を加えることにより、最終的に形成したポリエステルフィルムに前記艶消し用添加剤が含まれるようにする。
【0010】
好ましくは、前記艶消し用添加剤は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、及びタルク粒子からなる材料群から選択される少なくとも1種である。なかでも、前記艶消し用添加剤の粒子サイズは、0.1μm~10μmであり、かつ、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記艶消し用添加剤の含有量は、0.5wt%~10wt%であり、それにより、前記ポリエステルフィルムのヘイズが5%~95%となる。
【0011】
好ましくは、前記ポリエステルフィルムにおいて、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットがメカニカルリサイクルポリエステル樹脂として形成され、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットは、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂と混合してケミカルリサイクルポリエステル樹脂として形成される。なかでも、総量とした前記ポリエステルペレット100重量部を基にして、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットの含有量が50重量部~95重量部であり、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットの含有量が1重量部~40重量部であり、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットと複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットとの含有量の和は、55重量部~100重量部である。
【0012】
好ましくは、前記再生ポリエステル材を化学的再生するステップに、前記再生ポリエステル材を解重合して、原料混合物を得るステップと、前記原料混合物を再重合して造粒を行うことにより、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットを得るステップをさらに含む。
【0013】
好ましくは、前記原料混合物を再重合するステップにおいて、前記原料混合物の一部分に前記静電接着添加剤(pinning additives)を添加し、さらに前記静電接着添加剤を添加した前記原料混合物を造粒し、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップを得るステップをさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップにおいて、静電接着添加剤の含有量は、0.01wt%~0.3wt%であり、それにより、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記静電接着添加剤の含有量は、0.005wt%~0.1wt%となる。
【0015】
好ましくは、前記原料混合物を再重合するステップは、前記原料混合物の一部分にスリップ剤(slipping agent)を添加して、さらに、前記スリップ剤を添加した前記原料混合物を再重合して造粒し、それにより、ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップを得るステップをさらに含む。なかでも、前記スリップ剤は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、アクリル粒子からなる材料群から選ばれる少なくとも1種である。なかでも、総量とした前記ポリエステルペレット100重量部を基にして、前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップの使用量は、5重量部~10重量部である。
【0016】
好ましくは、前記スリップ剤の粒子サイズは、5μm未満であり、かつ、前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップにおいて、前記スリップ剤の含有量は、0.1wt%~20wt%であり、それにより、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記スリップ剤の含有量が0.5wt%~5wt%となる。かつ、前記ポリエステルフィルムの透明度は50%以上となる。
【0017】
好ましくは、前記原料混合物を再重合するステップは、前記原料混合物の一部分に艶消し用添加剤を添加して、さらに、前記艶消し用添加剤を添加した前記原料混合物を再重合して造粒し、それにより、ケミカルリサイクル艶消しポリエステルチップを得るステップをさらに含む。
【0018】
好ましくは、前記再生ポリエステル材の一部分を物理的再生する前記ステップにおいて、前記再生ポリエステル材を物理的に・機械的に粉砕して溶融し、さらに、前記艶消し用添加剤を溶融された前記再生ポリエステル材に添加して、造粒を行うことにより、メカニカルリサイクル艶消しポリエステルチップを得るステップをさらに含む。
【0019】
好ましくは、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレット、及び複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットは、いずれも前記再生ポリエステル材をリサイクルして、前記再生ポリエステル材に対し造粒を行うことにより得られるものである。なかでも、前記再生ポリエステル材は、リサイクルペットボトル(r-PET)のボトルチップである。
【0020】
好ましくは、前記リサイクルペットボトルチップのポリエステル成分に二酸単位としてイソフタル酸(IPA)が含まれており、それにより、最終的に形成された前記ポリエステルフィルムにも前記イソフタル酸が含まれる。なかでも、前記ポリエステルフィルムの総重量100mol%を基にして、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記イソフタル酸の含有量は、0.5mol%~5mol%である。
【0021】
好ましくは、前記リサイクルペットボトルチップポリエステル成分は、グリコール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールが含まれることにより、最終的に形成された前記ポリエステルフィルムにも前記バイオマス由来のエチレングリコールが含まれる。なかでも、前記ポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、前記ポリエステルフィルムにおいて前記バイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、1wt%~25wt%である。かつ、前記ポリエステルフィルム中の全炭素を基に、放射能(C14)で測定したバイオマス由来の炭素量は5%以下であった。
【0022】
上記技術的課題を解決するために、本発明が採用する別の技術的手段としては、複数のメカニカルリサイクルポリエステルペレットで形成されたメカニカルリサイクルポリエステル樹脂と、複数のケミカルリサイクルポリエステルペレットで形成され、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂と混合して形成されたケミカルリサイクルポリエステル樹脂と、を含む艶消しポリエステルフィルムを提供することである。なかでも、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットはさらにケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップを含む。なかでも、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップは、少なくとも1種の静電接着添加剤(pinning additives)を含んで、かつ、前記静電接着添加剤は金属塩である。なかでも、前記ポリエステルフィルムの総重量100wt%を基にして、前記ポリエステルフィルムにおいて前記静電接着添加剤の含有量は、0.005wt%~0.1wt%である。なかでも、前記ポリエステルフィルムはさらに艶消し用添加剤を含み、かつ、前記艶消し用添加剤はメカニカルリサイクルポリエステル樹脂及び/またはケミカルリサイクルポリエステル樹脂に分散されている。
【0023】
好ましくは、前記艶消し用添加剤は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、及びタルク粒子からなる材料群から選択される少なくとも1種である。なかでも、前記艶消し用添加剤の粒子サイズは、0.1μm~10μmであり、かつ、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記艶消し用添加剤の含有量は、0.5wt%~10wt%であり、それにより、前記ポリエステルフィルムのヘイズが5%~95%となる。
【0024】
好ましくは、前記ポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂の含有量は、50wt%~95wt%であり、前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の含有量は、1wt%~40wt%であり、かつ、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂と前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂との含有量の和は、55wt%~100wt%である。
【0025】
好ましくは、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットはさらに、ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップを含む。なかでも、前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップは、スリップ剤(slipping agent)を含み、前記スリップ剤シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、アクリル粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種である。なかでも、前記ポリエステルペレットの全使用量100重量部に基づいて、前記ポリエステルペレットに対し、前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップの使用量は、5wt%~10wt%である。
【0026】
好ましくは、前記スリップ剤の粒子サイズは、5μm未満であり、かつ、前記ポリエステルフィルムの総重量100wt%を基にして、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記スリップ剤の含有量は0.5wt%~5wt%である。それにより、前記ポリエステルフィルムの透明度が50%以上である。
【発明の効果】
【0027】
本発明による有益な効果の1つとしては、本発明が提供する艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法では、「複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルチップにさらに、ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップが含まれ、なかでも、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップに静電接着添加剤(pinning additives)が含まれ、かつ、前記静電接着添加剤が金属塩である」、及び「前記ポリエステルペレットの全使用量100重量部に基づいて、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットにおける前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップの使用量は、5重量部~35重量部である」という技術的手段により、前記艶消しポリエステルフィルムは、リサイクルポリエステル素材の割合が高いものを使用して製造することを可能にする。バージンポリエステルチップを追加で添加する必要がなく、少量のバージンポリエステルチップのみで済むため、バージンポリエステルチップの使用量を大幅に削減することができ、環境にも優しいといえる。
【0028】
さらに、本発明による艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法は、「前記物理的再生プロセス及び/または化学的再生プロセスにおいて、前記再生ポリエステル材にさらに艶消し用添加剤を加える」という技術的手段により、前記艶消しポリエステルフィルムにある程度のヘイズを持たせて、それにより、特定の製品(例えば、包装用フィルム、バリアフィルム、光学フィルム、テープ、ラベルなど)に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る実施形態のポリエステルフィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0031】
下記より、具体的な実施例で本発明に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行または応用できる。本明細書における各細節も様々な観点または応用に基づいて、本発明の精神を逸脱しない限りにおいて、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
【0032】
本明細書に用いられる「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つまたは複数の組合せを含み得る。
【0033】
再生プラスチック(recycled polyester material)、特に再生ポリエステル材料を大量に処理するため、本発明に係る実施形態は、再生ポリエステル材で作られる艶消しポリエステルフィルム、及びその製造方法を提供する。
図1に示すように、本発明のポリエステルフィルムの製造方法の一般的な流れ(例えば、ステップS110~ステップS120)を示す。以下に、その流れの詳細を開示する。
【0034】
本実施形態に係るポリエステルフィルム及びその製造方法は、物理的再生で得られたメカニカルリサイクルポリエステル樹脂と、化学的再生で得られたケミカルリサイクルポリエステル樹脂とを共に使用することにより、ポリエステルフィルムにおける再生ポリエステル材の使用量を高めることを可能にする。
【0035】
さらに、本実施形態のポリエステルフィルムは、再生ポリエステル材を高い割合で使用することにより製造することができ、バージンポリエステルチップ(virgin polyester resin)を追加で添加する必要はないか、或いはバージンポリエステルチップを少量だけ添加すれば済む。
【0036】
[再生ポリエステル材]
まず、回収できる再生ポリエステル材を得るために、ポリエステル樹脂のリサイクル方法は、各種類の廃棄ポリエステル樹脂材を集める。それらの廃棄ポリエステル樹脂材の種類、色及び用途に応じて、分類を行う。さらに、それらの廃棄ポリエステル樹脂材を圧縮してパッキングし、廃棄物処理場へ運搬する。本実施形態において、それらの廃棄ポリエステル樹脂材は、ペットボトル回収品(recycled PET bottles)であるが、本発明はこの例に制限されない。
【0037】
次に、それらの廃棄ポリエステル樹脂材から他の物品(キャップ、ラベル、接着剤など)を除去する。それらの廃棄ポリエステル樹脂材における他の物品が分離された後、それらの廃棄ポリエステル樹脂を破砕し、浮選法で、ボトルの口、ペタロイド、ボトル本体の異種材料を選別する。そして、破砕されたポリエステル樹脂材を乾燥してから、加工後の再生ポリエステル材、例えば、ペットボトル回収品(r-PET)ボトルチップを得ることができる。それにより、その後のポリエステルフィルムの製造プロセスを容易にすることができる。
【0038】
ところで、その後のポリエステルフィルムの製造プロセスを容易にするために、本発明に係る別の実施形態において、前記再生ポリエステル材としては、例えば、直接に購入された既に加工された再生ポリエステル材を使用してもよい。
【0039】
さらに、本発明に係る実施形態のポリエステルフィルムの製造方法は、再生ポリエステル材(例えば、ペットボトルチップ)の一部分を物理的再生して、造粒を行うことにより、複数のメカニカルリサイクルポリエステルペレットを得るステップと、再生ポリエステル材の他部分を化学的再生し、造粒を行うことにより、複数のケミカルリサイクルポリエステルペレットを得るステップを含む。
【0040】
なお、本明細書で使用された技術的用語「ポリエステル」、「ポリエステル材」「ポリエステル樹脂」とは、任意のタイプのポリエステル、特に芳香族ポリエステルを指し、ここでは、特にテレフタル酸およびエチレングリコールに由来するポリエステル、すなわちポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate,PET)を指す。
【0041】
さらに、また、前記ポリエステルは、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリエチレンナフタレート等であってもよい。本実施形態において、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートから選択されるのが好ましい。また、共重合体、特に2種以上のジカルボン酸成分および/または2種以上のグリコール成分を用いて得られる共重合体を用いてもよい。
【0042】
[物理的再生]
物理的再生の方法は、回収された再生ポリエステル材の溶融に必要な時間またはエネルギーの消費量を減らすために、それらのポリエステル材(例えば、ペットボトルチップ)を裁断しており、次に、一軸押出機または二軸押出機を使用して、裁断された再生ポリエステル材を溶融混合し造粒を行うことにより、複数のメカニカルリサイクルポリエステルペレット(physical recycled polyester chips)を得る。即ち、再生ポリエステル材は、裁断、溶融、及び押出等のプロセスを順番に経て、それを再整形して、元の再生ポリエステル材のポリエステル分子を再配列することにより、ポリエステル分子複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットを製造する。
【0043】
また、本実施形態において、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットはさらに、メカニカルリサイクルレギュラーポリエステルチップ(regular polyester chips)またはメカニカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップ(slipping polyester master batches)に区別される。
【0044】
なかでも、前記メカニカルリサイクルレギュラーポリエステルチップとは、物理的再生のプロセスにおいて、追加する添加剤(例えば、静電接着添加剤、スリップ剤、顔料)等が添加されないメカニカルリサイクルポリエステルペレットをいう。
【0045】
また、前記メカニカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップとは、物理的再生のプロセス(特にポリエステル溶融のプロセス)において、スリップ剤(slipping agent)がさらに添加されたメカニカルリサイクルポリエステルチップをいう。
【0046】
即ち、前記メカニカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップはスリップ剤が含まれる。かつ、前記スリップ剤は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、アクリル粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0047】
なお、本実施形態において、スリップ剤は、メカニカルリサイクルポリエステルチップ以外、選択的にケミカルリサイクルポリエステルチップに添加してもよい。
【0048】
また、特筆すべきは、ポリエステル分子は再配列されるが、再編成されないため、再生ポリエステル材に存在する成分(例えば、金属触媒、スリップ剤、共重合モノマー、または添加剤)は、メカニカルリサイクルポリエステル材にまだ存在しており、最終的に形成されたポリエステルフィルムもそれらの成分を含んでいるということである。ポリエステル分子同時に、環状オリゴマーの低濃度化など、ペットボトル用ポリエステル樹脂の特性は、メカニカルリサイクルポリエステルペレットにも保持されている。
【0049】
[化学的再生]
化学的再生のプロセスは、回収された再生ポリエステル材の溶融に必要な時間またはエネルギーの消費量を減らすために、それらのポリエステル材(例えば、ペットボトルチップ)を裁断しており、次に、裁断された再生ポリエステル材を化学解重合剤に投入することにより、再生ポリエステル材におけるポリエステル分子を破壊し、再生ポリエステル材を解重合して、さらに、分子鎖の短いポリエステル組成物が得られるとともに、二酸単位と2個のグリコール単位からなるエステルモノマー(例えば、BHET)が得られる。
【0050】
本実施形態において、前記化学解重合剤としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールまたはそれらの混合溶媒が挙げられるが、本発明はこの例に制限されない。例えば、加水分解には水が用いられ、一方、アルコール分解にはメタノール、エタノール、エチレングリコールまたはジエチレングリコールが用いられてもよい。
【0051】
さらに、前記原料混合物を濾過することにより、前記原料混合物における非ポリエステル不純物の濃度を下げる。かつ、所定の反応条件で、前記原料混合物におけるモノマーおよび/またはオリゴマーを再重合して、造粒を行うことにより、複数のケミカルリサイクルポリエステルペレット(chemical recycled polyester chips)を得る。
【0052】
即ち、物理的再生のプロセスとは異なり、化学的再生のプロセスでは、「再生ポリエステル材におけるポリエステル分子の解重合及び再重合」に関わるため、ポリエステル分子を分子量が更に小さい分子に解重合して、さらに、新たなポリエステル樹脂を形成するように再重合することになる。
【0053】
本発明に係る別の実施形態において、ケミカルリサイクルポリエステルペレットの調製方法は、上記実施形態の例に制限されない。例えば、加水分解法や超臨界流体法により製造することもできる。加水分解法は、再生ポリエステル材をアルカリ性溶液中で、温度と圧力を制御しながらマイクロ波で照射し、ポリエステル分子を完全にモノマーに分解するプロセスであり、超臨界流体法では、再生ポリエステル材を超臨界流体となったメタノールの中で少量のモノマーとオリゴマーに分解させるプロセスである。なかでも、モノマーとオリゴマーの収率は、反応温度と反応時間の影響を受けている。
【0054】
さらに言えば、本実施形態において、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットはさらに、ケミカルレギュラーポリエステルペレット(regular polyester chips)、ケミカルスリップ剤ポリエステルチップ(slipping polyester master batches)、及びケミカル静電付着ポリエステルチップ(pinning polyester master batches)に区別される。
【0055】
なかでも、前記ケミカルレギュラーポリエステルペレットは、化学的再生のプロセスにおいて、例えば、静電接着添加剤、スリップ剤または顔料等の追加添加剤が添加されない、ケミカルリサイクルポリエステルペレットをいう。
【0056】
さらに、上記ケミカルスリップ剤ポリエステルチップ及びケミカル静電付着ポリエステルチップの調製方法は、例えば、ポリエステル分子の再重合の過程において、例えば、スリップ剤、静電接着添加剤等の添加剤を、例えば、2つのグリコール単位及び1つの二酸単位を反応して生成したエステルモノマー等のモノマー(例えば、BHET)及び/またはオリゴマーを含む原料混合物に添加することにより、それらの添加物を均一に原料混合物に混合させ、それにより、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の、例えば、スリップ性または静電接着性等の特性を調整する。
【0057】
本実施形態において、原料混合物を再重合するステップはさらに、スリップ剤(slipping agent)を、原料混合物の一部分に添加して混合し、次に、前記スリップ剤が添加された原料混合物を再重合して、造粒を行うことにより、前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップを得るステップを含む。なかでも、前記スリップ剤は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、アクリル粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0058】
さらに、上記に示すように、前記スリップ剤は、メカニカルリサイクルポリエステルチップ及び/またはケミカルリサイクルポリエステルチップに選択的に添加されることができる。
【0059】
さらに、本実施形態において、原料混合物を再重合するステップはさらに、静電接着添加剤(pinning additives)を原料混合物の一部に添加し、次に、前記静電接着添加剤が添加した原料混合物を再重合して、造粒を行うことにより、ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップを得るステップを含む。
【0060】
本明細書では、「静電接着」という用語は、導電性を増加させ、または抵抗を減少させるために使用され、また、「静電接着添加剤」という用語は、導電性を増加させ、または抵抗を減少させるために使用される物質を指すことに留意すべきである。
【0061】
また、以下、本発明の実施形態に従った静電接着効果を有する好ましい化合物について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。先行技術で知られている他の物質の使用もまた任意であり、すなわち、ポリエステルの導電性を増加させ、または抵抗を減少させる化合物または成分を使用することができる。
【0062】
さらに具体的に言えば、本実施形態に使用される静電接着添加剤は、金属塩である。前記金属塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む金属塩、及び脂肪族カルボン酸を含む金属塩が好ましい。
【0063】
なかでも、前記脂肪族カルボン酸を含む金属塩において、前記脂肪族カルボン酸は、2個~30個炭素原子を持つ分子構造を有する。例えば、前記脂肪族カルボン酸(金属塩の形態で)は、カルボン酸とジカルボン酸を含み、例えば、酢酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、セバシン酸等であってもよい。本実施形態において、前記脂肪族カルボン酸としては、酢酸が好ましい。
【0064】
さらに、前記金属塩の金属成分は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり得る。別の観点から、前記金属塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、またはマグネシウム塩であってもよい。
【0065】
本実施形態において、前記金属塩としては、リチウム塩またはマグネシウム塩が好ましい。なかでも、マグネシウム塩は、例えば酢酸マグネシウム(Mg(CH3COO)2)であってもよく、リチウム塩は、例えば酢酸リチウム(CH3COOLi)であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
既存のポリエステルフィルムの製造方法では、ポリエステルフィルムの製造速度を向上させるために、ポリエステル溶融体を静電接着する方法がよく用いられていることは特筆に値する。この方法では、高品質の製品を得るために、ポリエステル溶融物は10e8に近い溶融比抵抗を有することが必要であり、これでは、ポリエステル溶融体に静電接着添加剤を添加することで実現されるのが一般的である。
【0067】
しかし、既存の技術では、バージンポリエステルチップ(virgin polyester master batches)に静電接着添加剤を添加するのが一般的である。そのため、ポリエステルフィルムに再生ポリエステル材を使用しても、ポリエステルフィルムを完成させるためには、大量のバージンポリエステルチップが必要となる。その結果、再生ポリエステル材の使用比率を効果的に高めることができない。
【0068】
上記既存の技術に対して、本実施形態に係るポリエステルフィルムの製造方法では、ポリエステル分子を再重合する過程において、静電接着添加剤をモノマー(例えば、BHET)および/またはオリゴマーを有する原料混合物に添加し、それにより、前記静電接着添加剤がモノマー及び/またはオリゴマーと均一に混合することができる。そして、前記原料混合物におけるモノマー及び/またはオリゴマーが再重合されることにより、前記静電接着添加剤はより均一にポリエステル樹脂に混合されることができる。
【0069】
そのように、本実施形態に係るケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップによれば、バージンポリエステルチップに静電接着添加剤を添加する必要がある既存の技術を置き換えることができるので、バージンポリエステルチップの使用量を効果的に削減し、再生ポリエステル材の使用率を大幅に向上させることができる。
【0070】
なお、本実施形態では、静電接着添加剤は化学的再生する方法を採用しないと、静電接着添加剤が均一にポリエステル成分に混合できない恐れがあることを留意すべきである。
【0071】
一方、物理的再生のプロセスにおいて、物理的再生の方法では、ポリエステル分子を大量にモノマー及び/またはオリゴマーに分解させられないため、静電接着添加剤は均一にポリエステル樹脂に混合できなくなるため、それなりの効果(例えば、静電接着の効果)を発揮し得ない。
【0072】
さらに、本実施形態に係るケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップにより、ポリエステル樹脂の導電率を効果的に高めることができ、それで、ポリエステルフィルムの生産速度を高めることができる。
【0073】
ポリエステルフィルムの調製において、実施形態のケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップを使用すれば、ポリエステルフィルム生産設備における第1のローラ(射出ローラ/冷却ローラ)の速度を大幅に向上させつつも、ポリエステルフィルムを良好に製造することができる。この場合、例えば、120m/minまで向上させることができる。この速度であっても、ポリエステルフィルムは依然としてローラ面に密着できる。さらに、このような高速で製造すると、薄さがさらに向上するフィルムを製造できる。例えば、厚さが9μmまでのフィルムも製造できる。特に、本実施形態に係るケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップでは、必要な導電率または抵抗率を効果的に調整し得る。
【0074】
そのように、上記各種の添加剤により、特性の異なる各種のケミカルリサイクルポリエステルチップを製造でき、さらに、物理的再生及び化学的再生となる二種類のプロセスにより、特性の違うメカニカルリサイクルポリエステルペレット及びケミカルリサイクルポリエステルペレットを得ることができる。それで、所定種類のケミカルリサイクルポリエステルペレットをもって、メカニカルリサイクルポリエステルペレット及びケミカルリサイクルポリエステルペレットの使用量比を調整すれば、例えば、ポリエステルフィルム等、様々なポリエステル製品を製造できる。
【0075】
どころで、本実施形態ポリエステルフィルムに係る製造方法では、物理的再生プロセスまたは化学的再生プロセスのいずれにも、環状オリゴマー(cyclic oligomers)が生じる可能性はある。なかでも、物理的再生プロセスで形成した環状オリゴマーの濃度は、化学的再生プロセスで形成した環状オリゴマー濃度よりも、大幅に小さくなっている。
【0076】
さらに、本発明に係る特定の実施形態において、前記再生ポリエステル材の他部分を化学的再生する前記ステップにおいては、エチレングリコール(ethylene glycol)解重合剤により、前記再生ポリエステル材を解重合して、前記原料混合物を得た後、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットを、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットに混合することにより、ポリエステルフィルム製品に含有するジエチレングリコールの濃度を下げるステップをさらに含む。具体的に、前記再生ポリエステル材を解重合する場合、大量のエチレングリコール解重合剤を加えなければならないため、それに続いた重合プロセスによる生成物となるケミカルリサイクルポリエステル樹脂に、ジエチレングリコール(diethylene glycol)成分の比率がかなり高くなる。さらに、ジエチレングリコールにエーテル基(ether group)を有するため、ポリエステル素材の耐熱性を低下させることがある。そのため、上記耐熱性が下がる問題を解決するために、本発明では、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットを複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットに混合することにより、ポリエステルフィルム全体的におけるジエチレングリコールの濃度を低減させる。
【0077】
[ポリエステルフィルムの調製]
物理的再生及び化学的再生プロセスの後、本実施形態ポリエステルフィルムに係る製造方法は、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレット及び複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットを互いに混合し、溶融押出し、ポリエステルフィルムとして形成させるステップをさらに含む。
【0078】
前記ポリエステルフィルムにおいて、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットは、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂に形成され、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットは、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂に形成され、かつ、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂とケミカルリサイクルポリエステル樹脂とは互いに均一に混合される。
【0079】
再生ポリエステル材の使用比率を高めるために、上記再生ポリエステルペレットの各々は、好適な使用量が使用されている。
【0080】
具体的に、ポリエステルペレットの使用量100重量部に基づいて、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットの使用量は、好ましくは50重量部~95重量部であり、さらに好ましくは60重量部~80重量部である。複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットの使用量は、好ましくは1重量部~40重量部であり、さらに好ましくは20重量部~30重量部である。また、複数の前記メカニカルリサイクルポリエステルペレットと複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットと使用量の和は、好ましくは55重量部~100重量部であり、さらに好ましくは70重量部~100重量部である。
【0081】
即ち、前記ポリエステルフィルムの総重量100wt%を基にして、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは50wt%~95wt%であり、さらに好ましくは60wt%~80wt%である。前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは1wt%~40wt%であり、さらに好ましくは20wt%~30wt%である。また、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂と前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂との含有量の和は、好ましくは55wt%~100wt%であり、さらに好ましくは70wt%~100wt%である。
【0082】
なお、本明細書に使用された用語「wt%」は、重量パーセントの略称である。
【0083】
上記の配合により、本実施形態に係るポリエステルフィルムの製造方法は再生ポリエステル材を高い比率で使用して製造し得、バージンポリエステルチップ(virgin polyester resin)を追加添加する必要はないか、または少量のバージンポリエステルチップを添加すれば済むとなっている。例えば、本発明に係る特定の実施形態において、前記バージンポリエステルチップの使用量は50重量部以下、好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下となる。
【0084】
さらに、スリップ剤について、前記ポリエステルペレットの全使用量100重量部に対して、前記メカニカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップおよび/または前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップの使用量は、5重量部~10重量部となる。
【0085】
また、前記スリップ剤の粒子サイズは、5μm未満であり、前記メカニカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップおよび/または前記ケミカルリサイクルスリップ剤ポリエステルチップにおいて、前記再生スリップ剤ポリエステルチップに対し前記スリップ剤の含有量は、0.1wt%~20wt%となり、それにより、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記スリップ剤の含有量は、0.5wt%~5wt%となる。
【0086】
また、静電接着添加剤について、前記ポリエステルペレット全使用量100重量部に基づいて、複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットにおける前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップの使用量は、5重量部~35重量部である。
【0087】
また、ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップにおいて、前記静電接着添加剤の含有量は、0.01wt%~0.3wt%であり、それにより、ポリエステルフィルムにおいて前記静電接着添加剤の含有量は、0.005wt%~0.1wt%となる。
【0088】
ところで、前記ポリエステルフィルムに艶消しの効果を持たせるために、本実施形態において、前記艶消しポリエステルフィルムの製造方法では、前記物理的再生プロセス及び/または化学的再生プロセスにおいて、前記再生ポリエステル材にさらに艶消し用添加剤を加えることにより、最終的に形成された前記ポリエステルフィルムに艶消し用添加剤が含まれるようにする。
【0089】
例えば、前記艶消し用添加剤は化学的再生プロセスにて添加されてもよい。具体的に、前記原料混合物を再重合するステップは、前記原料混合物の一部分に艶消し用添加剤を添加して、さらに、前記艶消し用添加剤を添加した前記原料混合物を再重合して造粒し、それにより、ケミカルリサイクル艶消しポリエステルチップを得るステップをさらに含んでもよい。
【0090】
さらに、前記艶消し用添加剤は物理的再生プロセスにて添加されてもよい。即ち、前記再生ポリエステル材の一部分を物理的再生する前記ステップにおいて、前記再生ポリエステル材を物理的に・機械的に粉砕して溶融し、さらに、前記艶消し用添加剤を溶融された前記再生ポリエステル材に添加して、造粒を行うことにより、メカニカルリサイクル艶消しポリエステルチップを得るステップをさらに含んでもよい。
【0091】
それにより、最終的に形成されたポリエステルフィルムに艶消し用添加剤がさらに含まれ、かつ、前記艶消し用添加剤はメカニカルリサイクルポリエステル樹脂及び/またはケミカルリサイクルポリエステル樹脂に均一に分散されている。
【0092】
なかでも、艶消し用添加剤が、シリカ(SiO2)粒子、炭酸カルシウム(CaCO3)粒子、アルミナ(Al2O3)粒子、およびタルカム粉末粒子(またはケイ酸マグネシウム粒子)からなる材料群から選択される少なくとも1種である。
【0093】
前記艶消し用添加剤の粒子サイズは、0.1μm~10μmであり、かつ、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記艶消し用添加剤の含有量は、0.5wt%~10wt%であり、それにより、前記ポリエステルフィルムのヘイズが5%~95%となる。
【0094】
なお、前記艶消し用添加剤の粒子サイズは、0.1μm~10μmが一般的であるが、好ましくは0.1μm~5μmであり、特に好ましくは1μm~5μmである。
【0095】
また、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記艶消し用添加剤の含有量は、0.5wt%~10wt%が一般的であるが、好ましくは0.5wt%~7wt%であり、特に好ましくは0.5wt%~5wt%である。
【0096】
また、前記ポリエステルフィルムのヘイズは、5%~95%が一般的であるが、好ましくは10%~95%であり、特に好ましくは30%~95%である。
【0097】
そのように、本実施形態による艶消しポリエステルフィルムにある程度のヘイズを持たせることができ、さらに、特定の製品(例えば、包装用フィルム、バリアフィルム、光学フィルム、テープ、ラベルなど)に適用することができる。
【0098】
また、上記複数のメカニカルリサイクルポリエステルペレット及び複数のケミカルリサイクルポリエステルペレットは、リサイクルされた前記再生ポリエステル材を利用して、前記再生ポリエステル材に対し造粒を行うことにより得られたものであることは、特筆に値する。なかでも、前記再生ポリエステル材は、リサイクルペットボトル(r-PET)のボトルチップである。
【0099】
本発明に係る特定の実施形態において、前記リサイクルペットボトルチップのポリエステル成分に二酸単位としてイソフタル酸(IPA)が含まれる。それにより、最終的に形成した前記ポリエステルフィルムにも前記イソフタル酸が含まれている。なかでも、前記ポリエステルフィルムの総重量100mol%に基づいて、前記ポリエステルフィルムにおいて前記イソフタル酸の含有量は、0.5mol%~5mol%となる。
【0100】
本発明に係る特定の実施形態において、前記リサイクルペットボトルチップのポリエステル成分に、グリコール単位としてエチレングリコールバイオマス由来のエチレングリコールが含まれる。それにより、最終的に形成した前記ポリエステルフィルムには、前記エチレングリコールバイオマス由来のエチレングリコールが含まれている。なかでも、前記ポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、前記ポリエステルフィルムにおいて、前記エチレングリコールバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、1wt%~25wt%である。かつ、前記ポリエステルフィルム中の全炭素量を基に、放射能(C14)で測定したバイオマス由来の炭素量は5%以下であった。
【0101】
本発明に係る特定の実施形態において、前記リサイクルペットボトルチップのポリエステル成分に金属触媒が含まれている。それにより、最終的に形成した前記ポリエステルフィルムにも前記金属触媒が含まれる。なかでも、前記金属触媒は、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1種である。前記ポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、前記ポリエステルフィルム前記金属触媒の含有量は、0.0003wt%~0.04wt%である。
【0102】
[実施形態による有益な効果]
本発明による有益な効果の1つとしては、本発明が提供する艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法は、「複数の前記ケミカルリサイクルポリエステルチップに、ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップ含み、なかでも、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップは、少なくとも一種の静電接着添加剤(pinning additives)を含み、かつ、前記静電接着添加剤が金属塩である」及び「前記ポリエステルペレットの全使用量100重量部に基づいて、前記ケミカルリサイクルポリエステルペレットにおいて、前記ケミカルリサイクル静電付着ポリエステルチップの使用量は、5重量部~35重量部である」という技術的手段により、前記艶消しポリエステルフィルムは、リサイクルポリエステル素材の割合が高いものを使用して製造することを可能にする。バージンポリエステルチップを追加で添加する必要がなく、少量のバージンポリエステルチップのみで済むため、バージンポリエステルチップの使用量を大幅に削減することができ、環境にも優しい。
【0103】
さらに、本発明による艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法は、「前記物理的再生プロセス及び/または化学的再生プロセスにおいて、前記再生ポリエステル材にさらに艶消し用添加剤を加える」という技術的手段により、前記艶消しポリエステルフィルムにある程度のヘイズを持たせて、それにより、特定の製品(例えば、包装用フィルム、バリアフィルム、光学フィルム、テープ、ラベルなど)に適用することができる。
【0104】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づきなされた等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0105】
S110~S120 ステップ