(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】溶接され、次いでプレス硬化されるアルミニウムめっき鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/322 20140101AFI20220527BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220527BHJP
B23K 26/36 20140101ALI20220527BHJP
B23P 11/00 20060101ALI20220527BHJP
C22C 21/02 20060101ALI20220527BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20220527BHJP
C22C 38/38 20060101ALN20220527BHJP
C22C 21/00 20060101ALN20220527BHJP
C21D 9/00 20060101ALN20220527BHJP
C21D 9/50 20060101ALN20220527BHJP
C21D 1/18 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
B23K26/322
B23K26/21 F
B23K26/36
B23P11/00
C22C21/02
C22C38/00 301T
C22C38/38
C22C21/00 M
C21D9/00 A
C21D9/50 101Z
C21D1/18 C
(21)【出願番号】P 2021080850
(22)【出願日】2021-05-12
(62)【分割の表示】P 2018150009の分割
【原出願日】2015-04-17
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2014/000612
(32)【優先日】2014-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・シュミ
(72)【発明者】
【氏名】ルネ・ビエストラット
(72)【発明者】
【氏名】チンドン・イン
(72)【発明者】
【氏名】ボルフラム・エーリング
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/014512(WO,A1)
【文献】特開2004-249305(JP,A)
【文献】特開平06-344165(JP,A)
【文献】特開2005-169444(JP,A)
【文献】国際公開第2014/005041(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/322
B23K 26/21
B23K 26/36
B23P 11/00
C22C 21/02
C22C 38/00
C22C 38/38
C22C 21/00
C21D 9/00
C21D 9/50
C21D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
- アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウム系合金でプレコートされた少なくとも1つの第1の鋼板(11)および少なくとも1つの第2の鋼板(12)
であって、前記第1の板(11)が、主面(111)、反対側の主面(112)および少なくとも1つの副面(71)を含み、前記第2の板(12)が、主面(121)、反対側の主面(122)および少なくとも1つの副面(72)を含むもの、を供給する装置(91)、
- 前記板(11)と前記板(12)との間で正中面(51)を得るための板用位置決め装置(92)、
-
前記板用クランプ装置(98)、
-
前記少なくとも1つの第1の板(11)および
前記少なくとも1つの第2の板(12)の周囲領域(61、62)における同時の溶融および気化によって
前記アルミニウム金属、アルミニウム合金またはアルミニウム系合金の層
(19、20)を除去するために、レーザービーム(80)を発生させることができる少なくとも1つの供給源、
-
前記正中面(51)に対してレーザービーム(80)を位置決めすることができる少なくとも1つの案内装置(94)
であって、互いに対向する前記副面(71、72)の間に、0.04mmよりも大きく、2mmとの間のギャップ(31)を残し、その結果、主面(111、121)上で同時に溶融および気化し、アルミニウム金属またはアルミニウム合金またはアルミニウム系合金の層(19)が、前記第1の板(11)の周辺領域(61)において除去され、アルミニウム金属またはアルミニウム合金またはアルミニウム系合金の層(20)が、前記第2の板(12)の周辺領域(62)で除去される、ものである装置、
ならびに
- 溶接継手を得るために、アルミニウム金
属またはアルミニウム合
金またはアルミニウム系合金層(19、20)が除去された領域における
前記板(11)および
前記板(12)の溶接のための装置
を含む、溶接ブランクを製造するための装置。
【請求項2】
前記板(11)
および前記板(12)の溶接が、前記アルミニウム金属
、または前記アルミニウム合
金またはアルミニウム系合金の
層(19、20)の溶融および気化による除去後1分未満で起こる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記溶接装置が、レーザービーム溶接装置である、請求項
1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記溶接装置が、溶接棒と組み合わせたレーザービーム溶接装置である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記溶接棒が、前記板(11)及び板(12)の組成とは異なる組成を有する請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記溶接装置が、ハイブリッドレーザTIG装置である、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記溶接装置が、ハイブリッドレーザMIG装置である、請求項4または5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接されることを意図されるアルミニウムめっき鋼板の製造方法に主に関する。
【0002】
本発明はさらに、上述したアルミニウムめっき鋼板からの溶接ブランクの製造方法に関する。
【0003】
本発明はさらに、自動車車両の構造または安全部品として使用される、上記の溶接ブランクからのプレス硬化部品の製造方法に主に関する。
【背景技術】
【0004】
溶接鋼部品は、異なる組成および/または厚さを有し、連続的に突き合わせ溶接される鋼ブランクから製造することができることが知られている。製作の1つの既知の方法では、これらの溶接ブランクは、例えば、コールドスタンピングによって冷間加工される。第2の既知の製造方法によれば、これらの溶接ブランクは、鋼のオーステナイト化が可能になる温度に加熱され、続いて成形型で熱成形され、急速冷却される。本発明は、製造のこの第2のモードに関する。
【0005】
鋼の組成は、加熱および熱間成形工程を実施し、最終的な溶接部品に高い機械的強度、高い衝撃強度ならびに腐食に対し良好な耐性を付与することを可能にするように選択される。衝撃を吸収するそれらの能力のおかげで、この種の鋼部品は、特に自動車産業における、より具体的には侵入防止部品、構造部品または自動車車両の安全性に貢献する部品の製造のための用途を有する。
【0006】
上記の用途に必要な特性を示す鋼のうち、刊行物EP971044号に記載されている被覆鋼板は、特にアルミニウム合金またはアルミニウム系合金のプレコーティングを含む。板は、アルミニウムの他に、制御された量のケイ素および鉄を有する浴中で、例えば、溶融鍍金によって、被覆される。熱間成形および冷却後に、主にマルテンサイト微細構造を得ることができ、その機械的引張強度は1500MPaを超えることができる。
【0007】
溶接された鋼部品の製造のための既知の方法は、刊行物EP971044号に記載されているような少なくとも2つの鋼板を調達することを含み、溶接ブランクを得るためにこれらを突き合わせ溶接し、この溶接ブランクを場合により切断し、次いで加熱成形操作を実施するまえに、例えば、ホットスタンピングによって溶接ブランクを加熱し、鋼部品にその用途に必要な形態を付与する。
【0008】
1つの既知の溶接技術はレーザービーム溶接である。この技術は、シーム溶接またはアーク溶接等の他の溶接技術と比べて、柔軟性、品質および生産性の点で利点を有する。しかし、溶融工程を含む組立方法において、金属合金層によって覆われた鋼基材と接触する金属間合金の層から構成されるアルミニウム系プレコーティングが、溶接操作中に液化し、この溶接操作後に固化する領域である溶融領域内で鋼基材によって溶接操作中に希釈され、2つの板の間に結合を形成する。
【0009】
次に2つの現象が発生する可能性がある。
- 第1の現象は、この領域内のプレコーティングの部分の希釈に起因する溶融金属中のアルミニウム含有率の増加によって、金属間化合物の形成がもたらされることである。機械的応力が加えられたとき、これらの化合物はクラックの開始のための部位となり得る。
- 第2の現象は、溶融領域の固溶体中のアルファ生成元素であるアルミニウムによって、ホットスタンピングの前の加熱工程の間にこの領域のオーステナイトへの転換が遅れることである。従って、加熱成形に続く冷却の後の溶融領域に完全な焼き戻し構造を得ることができなくなり、溶接継手はフェライトを含む。その結果、溶融領域は、2つの隣接する板よりも低い硬さおよび機械的引張強度を有する。
【0010】
上述した第1の現象を防止するために、刊行物EP2007545号は、溶接操作を受ける板の周囲上の金属合金の表面層を除去し、金属間合金層を残すことを含む方法を記載する。この除去は、ブラッシング、機械加工またはレーザービームの照射により行うことができる。後者の場合には、除去領域の幅は、基準点として板のエッジを使用して、特定の幅のレーザービームの長手方向の移動によって、またはこの幅よりも小さいレーザービームの発振によっても画定される。金属間合金層は、充分な耐腐食性を保証するために、および成形操作に先立つ熱処理時の脱炭および酸化の現象を防止するために保持される。
【0011】
上記の第2の現象を防止するために、刊行物WO2013014512号は、上述の金属層の除去に加えて、溶接前の板の切断エッジ上に存在するアルミニウム(その存在は切断操作に起因し得る)を除去し、特定の割合で溶融領域の炭素含有率を増加させるために充填剤金属線で溶接継手を作成することを含む。
【0012】
上記参照刊行物に記載された方法では、金属合金の層の除去が、レーザービームによる除去のような溶融をはじめとする現象の結果である場合、板の切断エッジ(副面とも呼ばれる)上を流れたアルミニウムの多かれ少なかれかなりの量が存在する。後続の溶接によって溶融領域での希釈によるこのアルミニウムの取り込みがもたらされ、溶接継手の機械的強度および/または靭性が母材金属のものよりも小さい溶接継手がもたらされる。
【0013】
加工、スレーピング(sraping)またはパルスレーザーによるアブレーションによって切断エッジ上を流れたアルミニウムを除去するための異なる方法は、ダイまたはビームに対してブランクを配置する難しさ、除去が機械的手段によって行われる場合工具の急速な摩耗、または切断エッジに対するレーザーブレーションの場合準備された面上でのアルミニウムの潜在的な飛散のために、実施するのが難しい。
【0014】
また、板の周囲のアルミニウム金属層を除去した後、下層の材料はより光沢のない、より暗い外観を有する。レーザー溶接は、組み立てられる板によって形成される継手の平面に対してビームを非常に正確に位置決めすることを必要とすることが知られている。ビームのこの位置決めおよび案内、または「シームトラッキング」は、反射光ビームの、溶接継手に直角方向の変化を検出することができるセンサによって慣習的に制御され、それにより継手平面はかなりより暗く見える。しかし、金属層が周囲から除去された2つの板の溶接前の左右交互の配置は嵌合面のレベルでのコントラストのわずかな変化のみをもたらし、これは検出することが困難であり、その結果、レーザービームの案内は著しく劣った精度で制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】欧州特許第971044号明細書
【文献】欧州特許第2007545号明細書
【文献】国際公開第2013/014512号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、上述の欠点を有さないアルミニウムでプレコートされた板の周囲領域を製造するための方法を開発することが望ましい。
【0017】
溶融および気化により除去した後、副面を流れたアルミニウムまたはアルミニウム合金を洗浄する高価で時間のかかる複雑な操作を排除することができる経済的な製造方法を有することが望ましい。
【0018】
アルミニウムまたはアルミニウム合金でプレコートされた板から製造された溶接継手において0.3%未満のアルミニウム含有率を保証する製造方法を有することも望ましい。
【0019】
金属層が周囲上で除去された、アルミニウムまたはアルミニウム合金でプレコートされた板の溶接時にシームトラッキングビームの精度を向上させる方法を有することも望ましい。
【0020】
本発明の目的は上記課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的のために、本発明の目的は、連続して、以下の工程:
- 鋼基材25、26と、鋼基材と接触する金属間合金層17、18から構成され、アルミニウム金属またはアルミニウム合金またはアルミニウム系合金の層19、20で覆われたプレコーティング15、16とから構成される、少なくとも1つのプレコートされた第1の鋼板11および少なくとも1つのプレコートされた第2の鋼板12を調達する工程であって、第1の板11は主面111、反対側の主面112および少なくとも1つの副面71を含み、第2の板12は主面121、反対側の主面122および少なくとも1つの副面72を含む、工程、次いで
- 第1の板11および第2の板12が位置決めされ、互いに対向する副面71および72の間に0.02から2mmの間のギャップ31を残し、第1の板11および第2の板12の位置決めにより、第1の板11の主面および第2の板12の主面に垂直な正中面51を画定する工程、次いで
- 主面111および121に対し同時に、溶融および気化により、金属合金の層19が板11の周囲領域61において除去され、金属合金の層20が板12の周囲領域62において除去される工程であって、周囲領域61および62は、正中面の両側に配置された、正中面51に対して最も近い主面111および121の領域である工程
を含む、溶接鋼ブランクを製造するための板を製造するための方法である。
【0022】
好ましくは、溶融および気化による同時除去はこの正中面51を亘るレーザービームによって行われる。
【0023】
周囲領域61の幅と、周囲領域62の幅とは、0.25から2.5mmの間であることが好ましい。
【0024】
1つの特定のモードでは、周囲領域61の幅と、周囲領域62の幅とは等しい。
【0025】
別のモードでは、周囲領域61の幅と、周囲領域62の幅とは異なる。
【0026】
好ましくは、溶融および気化による除去は主面111、121と、112、122との上で同時に起こる。
【0027】
1つの特定のモードでは、金属合金層19、20は、第1の鋼板11および第2の鋼板12のそれぞれの周囲領域61、62から除去されて、所定の位置にそれぞれの金属間合金層17、18を残す。
【0028】
本発明の1つのモードでは、基材25、26は異なる鋼組成を有する。
【0029】
1つの特定のモードでは、プレコーティング15、16は異なる厚さを有する。
【0030】
有利には、プレコーティング15、16の金属合金層19、20は、重量で表される濃度で、8から11%の間のケイ素、2から4%の間の鉄を含み、組成の残部はアルミニウムおよび不可避的不純物である。
【0031】
副面71および72の間のギャップ31は、有利には、0.04mmより大きく、非常に有利には0.06mmより大きい。
【0032】
本発明のさらなる目的は、請求項1から10のいずれか一項に従った方法によって調製された、少なくとも第1の板11および第2の板12が調達され、第1の板11および第2の板12の溶接操作は、第1の板11および第2の板12上の溶融および気化による除去操作後の1分未満に、前記正中面によって画定された面に沿って、溶融および気化による除去領域内で行われることを特徴とする溶接ブランクの製造方法である。
【0033】
好ましくは、溶接操作は、少なくとも1つのレーザービーム95によって行われる。
【0034】
好ましくは、溶接操作は、1方が主面111および121の側面の溶接を行い、他方が反対側の主面112および122の側面の溶接を行う、2つのレーザービームにより同時に行われる。
【0035】
溶融および気化による除去は、有利には、レーザービーム80によって同時に行われ、除去および溶接操作を実施することを可能にする装置は、機器の単一の要素として組み合わされ、第1の板11および第2の板12に関するその変位の相対速度は同じである。
【0036】
好ましくは、溶接操作は、少なくとも1つのレーザービーム95および溶接棒82を同時に用いて行われる。
【0037】
1つの特定のモードでは、除去工程は正中面51を探知する装置によって案内され、時点tにおける面51の位置を画定する座標(x-y)はコンピュータ手段によって記録され、および続いて行われる溶接操作を案内するために使用される。
【0038】
本発明の1つのモードでは、除去工程は正中面51を探知する第1の装置によって案内され、溶接は、正中面を探知し、且つ第1の装置から分離された第2の装置によって案内される。
【0039】
本発明のさらなるモードでは、板11および12は、溶融および気化による除去操作中にクランプ装置98によってクランプされ、クランプは、溶接操作までおよび少なくとも溶接操作中、装置98により一定に維持される。
【0040】
本発明のさらなる目的は、連続して、以下の工程:
- 上述の方法のいずれかに従って製造された少なくとも1つの溶接ブランクを調達する工程、次いで
- 溶接ブランクが加熱され、基材25、26上に部分的にまたは完全にオーステナイト組織を与えるような様式で、鋼基材25、26とプレコーティング15、16との間で合金化することによって金属間合金化合物を形成する工程、次いで
- 溶接ブランクは熱間成形され、部品を得る工程、次いで
- 部品は、基材25、26内に少なくとも部分的にマルテンサイトまたはベイナイトを形成するのに十分な速度で冷却され、これによりプレス硬化を達成する工程
を含む、溶接ブランクからプレス硬化された部品を製造するための方法である。
【0041】
好ましくは、溶接ブランクの熱間成形はホットスタンピング操作によって行われる。
【0042】
本発明のさらなる目的は、鋼基材25、26と、鋼基材と接触する金属間合金層17、18から構成され、アルミニウム金属、アルミニウム合金またはアルミニウム系合金の層19、20で覆われたプレコーティング15、16とから構成された少なくとも1つの第1のプレコートされた鋼板11および少なくとも1つの第2のプレコートされた鋼板12を組み立てることによって構成された溶接ブランクであって、第1の板11は主面111および反対側の主面112を有し、第2の板12は主面121および反対側の主面122を有し、金属合金層19は板11の周囲領域において溶融および気化によって除去され、金属合金層20は板12の周囲領域62において除去され、溶接ブランクは、第1の板11および第2の板12の主面に垂直な正中面51および正中面51に垂直な断面52a、52b...52nを画定する少なくとも1つの溶接継手52を有し、周囲領域61および62におけるプレコーティングの溶融および気化後の固化によって生じる層17および18の形態学的特性は、正中面51の両側の断面52a、52b...52nにおいて同一であることを特徴とする溶接ブランクである。
【0043】
周囲領域61および62の幅の合計は、好ましくは、溶接継手に沿って10%未満変化する。
【0044】
好ましくは、プレコーティング15、16の金属合金の層19、20は、重量で表された濃度で、8から11%の間のケイ素および2から4%の鉄を含み、組成の残部はアルミニウムおよび不可避的不純物で構成される。
【0045】
本発明のさらなる目的は以下:
- アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウム系合金でプレコートされた、少なくとも1つの第1の鋼板11および少なくとも1つの第2の鋼板12を供給する装置91、
- 板11と12との間で正中面51を得るための板用位置決め装置92、
- 板用クランプ装置98、
- 第1の板11および第2の板12の周囲領域61、62において同時に、溶融および気化によってアルミニウム金属、アルミニウム合金またはアルミニウム系合金の層を除去するための、レーザービーム80を発生させることができる少なくとも1つの供給源、
- 正中面51に対してレーザービーム80を位置決めすることができる少なくとも1つの案内装置94、
- 溶接継手を得るために、アルミニウム金属層61、62が除去された領域における板11および12の溶接のためのレーザービーム95を発生させることができる少なくとも1つの供給源、
- レーザービーム80および95に対して板11および12の相対変位を得ることができる少なくとも1つの装置を含み、
- レーザービーム80および95は、正中面51を基準とした単一の線上に互いに一定の距離64で配置される
溶接ブランクを製造するための装置である。
【0046】
好ましくは、レーザービーム80および95の間の距離64は、0.5mmから2mの間である。距離64は、有利には600mm未満である。1つの特定のモードでは、距離64は5mm未満である。
【0047】
1つの有利なモードでは、レーザービーム80はアブレーションヘッドから放射され、ビーム95は溶接ヘッドから放射され、これらのヘッドはレーザービーム80および95に共通の焦点調節装置を有する小型の要素を形成する。
【0048】
有利には、案内装置94は正中面51を基準としてレーザービーム95を位置決めすることもできる。
【0049】
1つの特定のモードでは、装置はさらに、上記の溶接継手の構築のための溶接棒装置82を含む。
【0050】
装置は、有利には、ビーム95が作動する面とは反対側の面上で溶接を行うことができるレーザービームをさらに含む。
【0051】
本発明のさらなる目的は、車両、特に自動車において構造部品、侵入防止または衝撃吸収部品を製造するための上記の特徴に係るプレス硬化部品の使用である。
【0052】
本発明の他の特徴および利点は、例として提示され、添付の下記の図面を参照する以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】周囲が従来の方法に従って調製された、溶接される、アルミニウムでプレコートされた板の顕微鏡写真の断面を示す。
【
図2】周囲から金属層を同時に除去するための本発明による処理後の端から端まで配置された2つの金属板を示す模式図である。
【
図3】金属プレコーティング層が同時の周囲アブレーションによって除去された、端から端まで配置された2つの金属板の間の位置決めギャップの、これらの板の副面に沿ったプレコーティングの流れに対する影響を示す。
【
図4】本発明の1つの優先的な実施形態の概略図である。
【
図6a】
図6aは、本発明に従って構成されたレーザー溶接継手の立面図である。
【
図6b】顕微鏡写真6bは溶接継手の両側に対称的に配置された、アブレーションが行われた2つの領域の表面を詳しく示す。
【
図6c】顕微鏡写真6cは溶接継手の両側に対称的に配置された、アブレーションが行われた2つの領域の表面を詳しく示す。
【
図7a】
図7aは金属コーティングでプレコートされた溶接ブランクの製造のための従来の方法の工程の概略図である。
【
図7b】比較のため、
図7bは金属コーティングでプレコートされた溶接ブランクの製造のための本発明による方法を示す。
【0054】
図はお互いの間で異なる要素の相対的な寸法を再現することを意図するものではなく、本発明の異なる構成部分の説明を容易にすることのみを意図していることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0055】
従来技術の方法では、金属合金層の除去が溶融の結果である場合、副面上を流れるアルミニウムの多かれ少なかれかなりの量が存在する。この状況は
図1に示され、
図1は表面の金属合金層がレーザービームを用いる溶融および気化により除去されたアルミニウム合金でプレコートされた厚さ1mmの鋼板の顕微鏡写真の断面を示す。
図1は従って、25μm厚さのアルミニウムのプレコーティング2を有する鋼基材1を示す。板の2つの主面の一方のみが原寸図に示される。板の1つの主面の周囲上で、金属アルミニウム層を除去し、金属間層を所定の位置に残し、それによりアブレーション領域3を作成するためにパルスレーザービームが使用された。レーザービームによって生成された蒸気圧またはプラズマのために、液体アルミニウムが領域3の周囲まで駆逐され、それによってアルミニウム蓄積領域5が作り出される。このアブレーション操作は副面上のアルミニウム層の一部の流れ4も作り出し、その長さは約0.4mmに達し得る。完全に気化される、有機コーティングに対するレーザービームの影響の場合に起こることとは逆に、金属コーティングへのレーザービームの影響は、気化によるその完全な消失をもたらすのではなく、部分的な気化および溶融をもたらす。
【0056】
本発明者らは、副面に沿う流れのこの現象は以下の方法で防止することができることを示した。
図2に示すように、同じ厚さまたは異なる厚さとすることができる、プレコート鋼の少なくとも2つの板11および12が調達される。
図2は第1の代替案を示す。この段階では、板11および12は必ずしも矩形ではなく、その輪郭の形状は、その後の成形操作によって達成される、作製されるべき最終部品の形状に関連する。ここでは用語「板」は広い意味で使用され、ストリップ、コイルまたは板から切断して得られる任意の物体を意味する。
【0057】
これらの板は、所望の厚さに応じて、特に熱間延板または冷間圧延板の形とすることができる鋼基材25および26から構成される。基材の組成は、最終部品に対する機械的特性の所望の分布に依存して、同一でも異なってもよい。これらの鋼は、オーステナイト化処理後にマルテンサイトまたはベイナイト焼入れを受けることができる熱処理可能な鋼である。板の厚さは好ましくは約0.5から4mmの間であり、これは自動車産業用の構造または補強部品の製造に特に使用される厚さの範囲である。
【0058】
板11および12は、それぞれ、主面111、112および121、122を含む。これらの面の各々の表面にはプレコーティング15および16があり、その厚さおよび組成は板1および2において同じまたは異なることができる。これらのプレコーティング15および16は両方ともアルミニウムめっき浴に浸漬することによって得られる。
【0059】
プレコーティング15自体は以下から構成される。
- 基材25と接触する金属間合金の層17。これは、アルミニウムめっき浴に板を連続的に通す間に基板25とアルミニウムめっき浴の溶融金属との反応によって形成されるタイプFexAlyの合金層である。この層は、典型的には3から10μmの厚さを有する。アルミニウムめっき浴は、アルミニウム、またはアルミニウムが50%よりも大きい重量パーセントで存在するアルミニウム合金、またはアルミニウム系合金の浴である。この後者の場合には、アルミニウムは合金の主成分である。
- その組成は、実質的にアルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウム系合金の浴の組成と同じである金属合金層19。
【0060】
同様に、板12において、プレコーティング16は、基材26と接触する金属間合金層および表面の金属層によって構成される。
【0061】
好ましくは、プレコーティングの金属合金19、20は、8から11重量%のケイ素および2から4%の鉄を含有することができ、組成の残部はアルミニウムおよび不可避的不純物から構成される。ケイ素の添加により、特に、金属間層17の厚さを低減することできる。
【0062】
2つの板11および12はそれらの主面111および112が同一面ないにあるように位置決めすることができる。この方式では、これらの2つの板上に同時に配置されたレーザービームはそれらと同一に相互作用する。しかし、2つの板11および12は必ずしも同一平面内に位置決めされないこともでき、即ち、レーザービームの焦点は、同一のプレコーティングを有する2つの板の表面に関して同じレベルに正確に位置決めされない。この状況は、例えば、2つの板11および12の間に厚さの違いがある場合に、遭遇することができる。この場合であっても、本発明者は、本発明に従った方法が使用される場合、望ましい結果、特に副面に沿ったプレコーティングの流れがないこと、が得られることを確認した。
【0063】
2つの板11および12は、端から端までのその副面71および72によって配置するように位置決めされる。従って、この位置決めは、その主面に垂直な、板11および12の間の正中面51、ならびに板間のギャップ31を画定する。
【0064】
本発明によれば、次に、それぞれの金属合金層19および29は、板11の周囲部61および板12の周囲部62上において、溶融および気化を含む方法によって、同時に除去される。一般に、この除去の大部分は溶融現象によるものである。これは、層19および20が純粋に気化によって除去される方法を除外する。この除去はアブレーションとも呼ばれ、好ましくは、パルスレーザービームによって行われる。プレコーティングに対する高出力、高エネルギー密度のレーザーの影響は、プレコーティングの表面の液化および気化を引き起こす。プラズマ圧のために、液化されたプレコーティングは、アブレーションが行われている領域の周囲に向けて駆逐される。適切なパラメータを有する短いレーザーパルスの連続により、金属層19および20のアブレーションがもたらされ、金属間合金層17および18を所定の位置に残す。しかし、完成した部品に所望される耐腐食性の程度に応じて、金属間層17および18の多かれ少なかれ大部分、例えば、この層の50%超過を除去することも可能である。従って、これらの板を基準とした相対的な移動において、プレコートされた板の周囲61および62に向けられたプルスレーザービームの相互作用によって、金属層19および20の除去がもたらされる。
【0065】
アブレーションは、板11および12上で同時に行われ、即ち、溶融および気化の手段が互いに対向する周囲領域61および62に同時に適用される。特に、アブレーションがレーザービームを使用して行われる場合は、レーザービームが正中面51に亘る領域61および62に影響を与える。1つの好適なモードでは、矩形形状を有するパルスレーザービームが用いられる。より小さなレーザービームを使用することもでき、これは、それが処理される幅を覆うように振動するように行われる。この方法はまた、それぞれが正中面51に亘る2つの矩形の副ビームに分割された主ビームを使用することによって行うこともできる。これら2つの副ビームは面51を基準に対称的に位置決めすることができ、または溶接方向において互いに対し長手方向にオフセットさせることもできる。これら2つの副ビームは同一または異なるサイズとすることができる。
【0066】
これらの異なる同時アブレーションモードでは、レーザービームの影響による溶融から生じるアルミニウムは、重力およびビームによって発生したプラズマ圧力の影響下で副面71および72上を流れることが予期されるであろう。
【0067】
驚くべきことに、本発明者らは、ギャップ31が0.02から2mmの間である場合、副面71および72はアルミニウムの流れを受けないことを示した。理論によって拘束されるものではないが、副面71、72は板11および12の切断から生じる鉄および/またはアルミニウム酸化物の非常に薄い層によって覆われていると考えられる。酸化物のこの薄層と一方の液体アルミニウムとの間の界面張力および他方の特定のギャップ31を考慮すると、液体が空間31に流入することなく、板11および12の間の液体アルミニウムのない表面はたわんで濡れ角を形成する。0.02mmの最小のギャップによってビームが板11および12の間を通過して、副面上にあったかもしれないアルミニウムの潜在的な痕跡を除去することが可能になる。また、以下に説明するように、この方法の一変形例において、溶接はこのアブレーション操作の直後に行われる。距離31が0.02mm未満であると、板11および22の2つの対向部分が、アブレーションおよび溶接操作によるその熱膨張のために、互いに接触し、望ましくない塑性変形をもたらす可能性がある。
【0068】
ギャップ31は、有利には、0.04mmを超え、これはその公差が極端な精度で制御する必要がない機械的切断法を使用することを可能にし、ひいては、生産コストを削減することができる。
【0069】
また、上述したように、溶接用レーザービームの案内は、そのより暗い外観のために、コーティングが周囲上で除去された板の場合より困難である。本発明者らは、0.06mmより大きいギャップの幅によって、周囲のアブレーション領域に対して異なって見える、接合面の光学的コントラストを大幅に増大させることができ、このため溶接が正中面51に対して適切に位置決めされることが保証されることを示した。
【0070】
また、本発明者らは、ギャップ31が2mmを超える場合、
図3に示す実験結果が示すように、上で説明した機構は、もはや液体アルミニウムの流れを防止するように動作可能ではないことを見出した。
【0071】
ギャップは有利に0.02から0.2mmの間であることができる。
【0072】
アブレーション方法について、1から20メガワットの最大出力を有するナノ秒の1/50のオーダーの持続時間のパルスを供給する数百ワットの公称出力を有するQスイッチ型レーザーを有利に使用することができる。このタイプのレーザーは、例えば、2mm(正中面51に垂直な方向において)、1mm、またはこの正中面の長さの方向において1mm未満(例えば、0.5mm)の矩形ビームの影響領域を得ることを可能にする。その結果、ビームの変位によって、面71および72に沿った流れが発生することなく、面51の両側にアブレーション領域61および62を作り出することができる。
【0073】
アブレーション領域61および62の形態は、当然、以下の溶接条件、特に溶接領域の幅に適合されるであろう。従って、以下の溶接工程の性質および出力に応じて、アブレーション領域61および62の各々の幅は0.25から2.5mmの間または、例えば、ハイブリッドレーザーアークまたはプラズマ溶接の場合には、0.25から3mmの間であることができる。アブレーション条件はアブレーション領域61および62の幅の合計が溶接領域の幅よりも大きくなるように選択されるであろう。
【0074】
板11および12が同一である場合には、アブレーション領域61および62の幅も同じであることを特定することが可能である。しかし、例えば、正中面51を基準にして横方向におけるレーザービームの水平方向のシフトを使用して、これらのアブレーション領域の幅が異なることを特定することも可能である。
【0075】
本発明によれば、アブレーションは、主面の片側のみで行うことができる。従って、
図2はこの場合を示し、そこでは同時周囲アブレーションが主面111および121の片側でのみ行われている。
【0076】
しかし、板に実行される溶接時のアルミニウムの導入を可能な限り最小化するために、面の全て、即ち、111、121、112、122についてこの同時周囲アブレーションを好ましく実施することもできる。この目的のため、レーザー溶接によるアブレーションの場合には、「電源スイッチ」タイプの装置を有利に使用することができ、これはビームの出力を分割し、1つの部分は相111および121の同時アブレーションに使用され、残りの部分は面112および122の同時アブレーションに使用される。第1のものから分離された第2のレーザーを使用することもできる。
【0077】
この同時アブレーション操作の後、金属合金層がその周囲から除去された、溶接に適している2つの板が得られる。この溶接は後に行うことができ、板を互いに対面してまたは分離してのいずれかに保持することができる。本発明による方法は、固化流が望ましくない機械的な結合を作成しないように、板の間の液体アルミニウムの流れを制限することができるので、それらは容易に分離することができる。
【0078】
しかし、本発明者らはまた、インライン溶接操作を上記のように調製した板に有利に行うことができることを見出した。副面上にアルミニウムの流れがないために、調製した板は、ラインから板を取り除き、次いで洗浄後にそれらを再配置する必要なく、すぐに溶接することができる。同時アブレーション操作および溶接操作の間に経過する時間の間隔は1分未満であり、これにより面71および72上の酸化が最小限になり、高い生産性が実現される。また、この時間間隔が短い場合、溶接は、溶接に適用されるエネルギー量を低減できるように、アブレーション操作によって予熱された板に対して行われる。
【0079】
溶接継手に必要な厚さおよび生産性および品質条件に適した任意の連続的な溶接方法、特に
- レーザービーム溶接
- 電気アーク溶接、特にTIG(「タングステン不活性ガス」)法、プラズマ法、MIG(「金属不活性ガス」)法またはMAG(「金属活性ガス」)法
- 電子ビーム溶接
を使用することもできる。
【0080】
レーザー溶接は、少ない割合で変化する狭い溶融領域を得ることができるこの方法に固有の高エネルギー密度のために有利に使用することができる1つの方法である。
図5に示すように、この方法は、単独でまたは溶接棒82と組み合わせて使用することができる。この場合、板25および26の組成物の組成とは異なる溶接棒の組成のために溶融領域の組成を変更することが可能である。そのため、レーザービームと溶接棒を組み合わせる溶接方法は、溶接棒がレーザービームによってのみ溶融される方法、またはハイブリッドレーザTIG溶接法、即ち、非溶融電極を備えたTIG溶接トーチによって供給された電気アークと組み合わされるレーザービーム、または溶接トーチが溶融電極棒を備えたハイブリッドレーザMIG溶接法のいずれかを含むことができる。
【0081】
本発明の1つの変形例によれば、同時のアブレーションおよび溶接操作を行う装置は、装置の単一の要素に組み合わされる。この装置は、板を基準とした相対変位の単一の速度で駆動される。この装置では、同時アブレーションの速度は溶接速度と同じであり、それにより生産性および効率の最適な条件の下で製造を実施することが可能になる。
【0082】
図4は、本発明の1つの優先的な変形例を示す。図は、アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウム系合金のプレコーティングを有する板11および12を示す。第1のレーザービーム80は、板11の周囲領域61および板12の周囲領域62の同時のアブレーションを行い、それによりレーザービームは板11および12の正中面に亘る。第2のレーザービーム81は板の底面に同一の操作を同時に行う。1つの変形例(
図4に示されない)では、1つのレーザービーム80のみがアブレーションを行い、アブレーションは反対側の面上では行われない。続いて作り出される溶接領域において非常に低いアルミニウム含有率を達成することが必要ではない場合、この変形例が使用される。
【0083】
この最初のアブレーション領域から一定の距離64において、レーザービーム95は、板11および12の溶接を行い溶接領域63を作り出す。アブレーション装置および溶接装置の距離は、それ自身知られた96として模式的に表される装置を使用して一定に維持される。板11および12は、97で示す経路に沿ってこのアセンブリ96を基準にして変位する。
【0084】
板11および12は、有利には、クランピング装置(
図4に示されない)によってクランプされる。板はビーム80および81によるアブレーション操作の間クランプされる。このクランプは、それ自体がビーム95によって行われる溶接工程の間維持される。この方法では、相対的な変位は板11および12の間では起きず、レーザービーム95による溶接はより高い精度で行うことができる。
【0085】
一方でビーム80、81および他方でビーム95の影響点の間の最大距離は、特に溶接速度に依存する。上述したように、特にビーム(80、81)および95の影響の間に経過する時間が1分未満となるように、溶接速度が決定される。装置は特に小型であるように、この最大距離は、好ましくは2m未満であることができる。
【0086】
影響のこれらの点の間の最小距離64は0.5mmに低減することができる。0.5mm未満の距離では、一方でアブレーションビーム80、81と他方でビーム95による溶接時に本質的に存在する「キーホル」との間の望ましくない相互作用がもたらされる。
【0087】
短い距離64は、2つのアブレーションおよび溶接ヘッド(ヘッドは、レーザービームが放射される装置として定義される)を単一のより小型のヘッドに組み合わせることによって得ることもでき、それにより後者は、例えば、アブレーションおよび溶接操作のために同じ焦点調節素子を用いることができる。
【0088】
非常に小さな距離64によって、特に小型の装置を用いる方法を実施し、レーザー80、81によって供給される熱エネルギーの特定の量が、ビーム95によって供給される線形溶接エネルギーに追加され、それにより方法の総エネルギー効率を増加させるように進行することが可能になる。非常に小さな距離により、溶接ブランクの単位生産に必要なサイクル時間を短縮し、それにより生産性を向上させることができる。特に距離64が600mm未満またはさらに5mm未満である場合、これらの効果が得られる。
【0089】
図5は本発明による好ましい装置の概略図である。この装置は以下の要素を含む。
- それ自身知られており、アルミニウムまたはアルミニウム合金またはアルミニウム系合金でプレコートされた少なくとも1つの第1の鋼板11および少なくとも1つの第2の鋼板12を供給することができる供給装置91を有するステーションA。
- それ自身も知られている、これらの板11および12のため位置決め装置92を有するステーションB。板の位置決め後、それにより仮想正中面51が画定される。
- それ自身知られており、例えば、磁気式、機械式または油圧式のクランプ装置であることができる、これらの板11および12のためのクランプ装置98を有するステーションC。
- それ自身知られており、正中面51を検出し、この正中面を基準にしてレーザービーム80を位置決めすることができる、少なくとも1つの案内装置94を有するステーションD。この装置は、例えば、光ビームによる正中面の領域の照明、および瞬間的に正中面の位置(x,y)を決めることができる、反射ビーム用感光CCDまたはCMOSセンサを含むことができる。これにより、相対的な溶接方向の下流にあるアブレーション用レーザービーム80の位置を、その位置がアブレーション領域の所望の位置と一致するように、制御することができる。
- 正中面51の両側の周囲領域上で溶融および気化により金属アルミニウム層を同時に除去するためのレーザービーム80を得ることができる少なくとも1つの供給源。上で述べたように、第2のレーザービーム81(
図5では示されない)は反対側の面に同様の操作を行うこともできる。
- 溶接継手を得るために、金属アルミニウム層61、62が除去される領域において板11および12のレーザービーム95の溶接を得ることができる少なくとも1つの供給源。使用されるレーザー光源は、10μmの波長を有するCO
2ガスレーザータイプのレーザー光源または1μmの固体レーザー光源の中から選択することができる。典型的には3mm未満である板の厚さを考慮すると、CO
2ガスレーザーの出力は3kW以上または7kW以上ですらあり、固体レーザーの場合、出力は2kW以上または4kW以上ですらある。
【0090】
場合により、95と同様のタイプの第2のレーザービームは、下部、即ち、反対側の面に適用することができる。この配置により、溶接速度を増加させおよび/または光源95の単位出力を低減することができる。
【0091】
このビーム95は、94(
図5に示されない場合)から分離されたそれ自身の案内装置または装置94のいずれかによって案内することができる。本発明者らは、この後者の解決策が、それは溶接がアブレーションが行われた領域に正確に位置決めされること、即ち、アブレーションおよび溶接の2つの工程が完全に調整されることを可能にするため、特に有利であることを見出した。
【0092】
- 場合により、アセンブリは、板25および26の組成とは異なる溶接棒の組成によって溶融領域の組成を変更するために溶接棒装置82を含むことができる。
【0093】
板11および12は、レーザービーム80および95を基準にして板の相対的変位を得るために、ステーションAからステーションDに向けて移動され、レーザービーム80および95は正中面51を基準とした同一線上に互いから一定の距離64で位置決めされる。
【0094】
上述したように、この距離64は0.5mmから2mの間、好ましくは0.5mmから600mmの間または0.5mmから5mmの間であることが好ましい。
【0095】
本発明による方法によって得られる溶接ブランクは、次の特定の特徴を有する。
-
図5に示すように、ブランクの溶接は、ビーム95による同時アブレーションを受けたブランク11および12上で正中面51に沿って一列に行われる。アブレーションはコーティングの溶融および気化をもたらし、その後の固化が起きて特定の波紋を形成し、その間隔はパルス持続時間およびアブレーション用ビームの進行速度の関数である。
図5に示す方法では、アブレーションは、この接合面に亘るビームを用いて行われるので、この固化形態は、面51の両側で同じである。
図6はまた、
図5に示される方法を使用して作成された溶接継手の立面の原寸図を示す。同時アブレーションを受けた領域13および14は溶接23の両側に配置される。我々が断面52aに沿って互いに対向して配置される領域21および22を検討する場合、我々は固化形態が同一であることを見出す。同じことが他の断面52b...52dでも当てはまる。また、溶接用レーザービーム95が組み立てられる2つの板に影響を与える場合、この影響は領域にわたっておき、その反射率は面51の両側で同じであり、それにより絶対体的に同一の深さの貫通がこの面の両側で得られる。従って、本発明は、問題の断面52a、52b...52nにかかわらず、最終的な溶接継手の非常に規則的な形状および溶接におけるアルミニウムの非常に均一な希釈を得ることを可能にする。
- 他方で、従来技術では、アブレーションは、基準点として板のエッジを使用する長手方向変位のレーザービームを用いて、一度に1つの板のみに行われたことが見られた。しかし、板の切断操作において取られた予防措置にもかかわらず、準備されたエッジの直線性は、理想的な直線を基準としていくらかの変動を必然的に含み、この変動は標準偏差σ
1によって定量化することができる。また、レーザービームの長手方向の変位はそれ自身横方向におけるその位置の変動を受け、この変動はσ
2によって定量化することができる。従って、この方法は、そのアブレーション領域の幅がアブレーション操作の長手方向の標準偏差の変動(σ
1+σ
2)を有する板を生じる。この操作の後、これらの2つの板は互いに隣接するように配置され、次いで溶接される。その結果は、そのアブレーション領域の幅が特定の変動を含み、この変動は2つの板の各々に関連付けられた変動の合計、即ち、2(σ
1+σ
2)である。
- 比較の目的のために、本発明による方法では、アブレーションは、単一基準面、即ち、正中面51を用いて行われ、アブレーション操作は、長手方向のアブレーションによる領域の全体の幅の変動が(σ
1+σ
2)、即ち、従来技術に比べて2分の1の減少、に等しくなるように単一の工程で実施される。溶接継手に沿った異なる位置で行われた総アブレーション領域の幅の測定は、幅が10%未満しか変化しないことを示す。
【0096】
要約すると、
図7aおよびbは、金属コーティングでプレコートされた溶接ブランクの製造のための従来の方法の工程と本発明による方法との比較を示す。
【0097】
従来の方法(
図7a)の場合には、金属プレコーティングのアブレーションは各板の周囲で行われ、この操作は各板に対し個別に実施される(工程A1)。次に(工程A2)、工程A1から生じた切断エッジ上を流れるプレコーティングが除去される。板の中間貯蔵(工程A3)後、板は溶接によるそれらの組み立てのために位置決めされる(工程A4)。この位置決めの後、周囲のアブレーション領域における固化構造の間には対称性がなく、これによりこれらの構造は板の正中合わせ面を基準としてランダムに位置決めされる。次いで、板が溶接される(工程A5)。
【0098】
本発明による方法の場合(
図7b)、端から端まで配置された板の周囲上の金属プレコーティングは板の間の特定のギャップを維持して同時に除去される(工程B1)。この操作は、固化構造が中央位置決め面の両側で同じであり、対称的である状況を作り出す。次いで、中間工程なしに、このようにして調製された板が直ちに組み立てられる(工程B2)。
【0099】
従って、従来の方法に従っておよび本発明に従って構成された溶接継手は、溶接によって作り出された溶融金属の直近における固化領域の形態学的特性の点で異なることが明らかである。
【0100】
非限定的な実施例により、以下の実施形態は本発明によって得られる利点を説明する。
【実施例】
【0101】
以下の重量組成、0.23%のC、1.19%のMn、0.014%のP、0.001%のS、0.27%のSi、0.028%のAl、0.034%のTi、0.003%のBおよび0.18%のCr、鉄と処理から生じる不純物で構成された残部を有する、厚さ1.2mmの鋼板を調達する。これらのブランクは、それぞれの面に厚さ30μmのプレコーティングを含む。このプレコーティングは50重量%のアルミニウム、40重量%の鉄および10重量%のケイ素を含有する、鋼基材と接触する厚さ5μmの金属間層から構成される。この金属間合金層は、鋼基材とアルミニウム合金浴との間の反応から生じる。
【0102】
金属間層は、重量で、9%のケイ素、3%の鉄、ならびにアルミニウムおよび不可避的不純物からなる残部を含有する厚さ25μmの金属層で覆われる。
【0103】
これらの板の寸法は400mm×800mmである。溶接は、エッジ上400mmの長さで行われる。
【0104】
それらの対向するエッジの間のギャップが0.1mmであるように、これらの板の2つが位置決めされる。次いで、これらの板の周囲の金属層を、800Wの平均出力を有するパルスレーザーを用いて除去する。
【0105】
このアブレーションは、板の反対側の面のそれぞれに2つのビームによって同時に行われる。板は、一定の速度V=6m/分でビームを基準として動いて配置される。各ビームは、2mm×0.5mmの矩形の焦点を得るために焦点調節され、2mmの距離が2つの板の正中面を基準として横方向に延びる。この方法では、2つの板を同時に作成し、その周囲から板の各々上において実質的に1mmの幅にわたって金属層を除去する。このアブレーション操作は、x0として特定される位置における、2つのパルスアブレーション用レーザービームを基準として直ぐ上流に位置する、2つの板の間の正中面の位置を検出するセンサによって案内される。アブレーション用ビームから約100mmの距離d1にセンサを配置する。センサのレベルでは、正中面の位置の座標(x0,y0)を、コンピュータ手段によって時点t0で記録する。板は速度vで移動しているので、この平面の位置は、以下の時点
【0106】
【数1】
では、パルスアブレーション用ビームのレベルに達する。レーザービームの案内装置の為に、時点t
1で起こる板上のレーザービームの影響の正確な位置を、それが正中面の位置に基づいて画定されたアブレーション領域に正確に対応するように適合させる。
【0107】
アブレーション後、パルスレーザービームから200mmの一定距離d2に位置するレーザービームにより、これらの板の間に溶接継手を作り出すことができる。溶接は、脱炭、酸化および水素吸収現象を防止するために、ヘリウムの保護の下で、0.6kJ/cmの線形出力を用いて行われる。アブレーション操作と溶接の間に経過する時間の長さは2秒である。
【0108】
溶接用レーザービームを再びアブレーション操作の上流に位置するセンサを使用してここに案内する。時点t0で記録された正中面の位置は、以下の時点
【0109】
【数2】
には溶接用レーザービームのレベルに到達する。次いで、溶接用レーザービームの影響の正確な位置をレーザービームの光学案内装置を使用して調整し、それによりそれは以前に画定された正中面の位置で中心に置かれる。
【0110】
図6aは得られたレーザー溶接継手の立面図を示す原寸図であり、そこでは溶接23はアブレーションが同時に行われた2つの領域13および14によって囲まれている。総アブレーション幅24は1.92mmの平均であり、溶接ブランクの長さにわたって10%未満だけ変化する。
【0111】
図6bおよび6cは、溶接継手に対して横方向の断面52aの両側に対称的に配置された領域21および22の表面の拡大図である。これらの領域21および22の固化シワは溶接継手の両側で同じであり、連続的な性質を有することが見出された。
【0112】
また、このように作成された溶接領域のアルミニウム含有率を分析するために、キャスタンマイクロプローブを使用した。アルミニウム含有率は0.3%未満のままであり、これは副面上のアルミニウムの量が、アブレーション工程後、溶接前に、実質的にゼロであることを明らかに示す。
【0113】
次いで、本発明の条件で組み立てられた溶接ブランクを900℃の温度に炉内で加熱し、この温度で維持し、それによる炉内の総保持時間は6分であった。加熱されたブランクをその後ホットスタンピングし、部品を形成し、鋼の臨界的なマルテンサイトの焼戻し速度よりも速い速度で部品を冷却するためにスタンピングプレス工具で部品を保持した。
【0114】
その結果、ホットスタンピングされた要素上の溶接領域は、いかなる脆性のFe-Al系金属間化合物も含有せず、溶融領域の硬さが母材金属の硬さと実質的に同一であることが見出された。
【0115】
従って、本発明は、溶接継手を有するアルミニウムめっき板から自動車産業用の構造および安全部品を経済的に製造することができる。