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特許7080379義歯から義歯接着剤を除去するように適合された道具を備えた口腔清掃器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】義歯から義歯接着剤を除去するように適合された道具を備えた口腔清掃器具
(51)【国際特許分類】
   A46B 15/00 20060101AFI20220527BHJP
   A61C 17/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
A46B15/00 K
A61C17/00 U
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021088064
(22)【出願日】2021-05-26
(62)【分割の表示】P 2017563551の分割
【原出願日】2016-06-07
(65)【公開番号】P2021151493
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】1509862.7
(32)【優先日】2015-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】315010950
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン コンシューマー ヘルスケア(ユーケー) アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラックフォード,マーカス ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン,アレクサンダー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】クラフ,リチャード ブライアン
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-38253(JP,A)
【文献】特開2000-79624(JP,A)
【文献】特開2000-296024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0191599(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0263397(US,A1)
【文献】米国特許第5564148(US,A)
【文献】英国特許出願公告第555380(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第426997(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B15/00
A61C17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔清掃要素を支持するヘッドと、ヘッドに隣接する基端とヘッドから離れた遠位端との間で長手方向に延びる一体型ハンドルとを含む口腔清掃器具であって、
義歯から義歯接着剤を除去するように適合された道具がハンドルの遠位端に隣接しており、
ハンドルは、硬質プラスチック材料の第1の成分及びより軟質のエラストマー材料の第2の成分である2つの成分でできており、
道具は、より軟質のエラストマー材料成分の材料で一体的にできており、且つ道具は、硬質プラスチック材料の第1の成分の骨格の下にある部分の上にあるより軟質のエラストマー材料の第2の成分の層に形成されており、且つ道具はより軟質のエラストマー材料成分内にハンドルの遠位端に隣接して凹面を含み、凹面の少なくとも1つの横方向側には、ハンドルのより軟質のエラストマー材料成分で一体的にできている隆起部が接しており、
道具が、義歯から義歯接着剤を除去するように適合されたひしゃくを含むことを特徴とする、口腔清掃器具。
【請求項2】
厚さ方向を見た平面図において、隆起部が、その凸面側がハンドルの横方向外側に向いて円弧状に湾曲しており、隆起部がハンドルの長手方向にその主方向の成分を有していることを特徴とする、請求項1に記載の口腔清掃器具。
【請求項3】
隆起部が、遠位端に隣接するハンドルの横方向側に隣接して配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の口腔清掃器具。
【請求項4】
こうした2つの隆起部が、遠位端に隣接するハンドルの横方向両側に隣接して設けられていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の口腔清掃器具。
【請求項5】
ハンドルの遠位端の周りに単一の隆起部があり、その範囲の一部がハンドルの遠位端の横方向両側に沿っていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の口腔清掃器具。
【請求項6】
隆起部又は複数の隆起部が、遠位端に隣接するハンドルの表面によって設けられており、その材料内に凹面が組み込まれており、凹面はその周囲の少なくとも一部に沿って隆起部に接していることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
【請求項7】
凹面が、平面図で丸みのある形状であり、その横方向両側それぞれに隆起部があることを特徴とする、請求項6に記載の口腔清掃器具。
【請求項8】
丸みのある形状が、ハンドルの遠位端に向かって先細りになっていることを特徴とする、請求項7に記載の口腔清掃器具。
【請求項9】
道具が、ハンドルの遠位端からハンドルの基端に向かって約1~3cm延びていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
【請求項10】
道具が、厚さ方向に向いているハンドルの表面上に配置されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
【請求項11】
道具が、口腔清掃要素が延びる方向に向いているハンドルの表面上に配置されていることを特徴とする、請求項10に記載の口腔清掃器具。
【請求項12】
口腔清掃要素が、先端が丸い及び先細り状のブラシ毛の混合物を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
【請求項13】
口腔清掃要素が延びているヘッドの表面と反対側の表面が凹形であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の器具を製造するための方法であって、ヘッド及びハンドルの材料を、それらの形状を規定する1種以上の金型キャビティに注入する射出成形プロセスを含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
硬質プラスチック材料の骨格を射出成形によって最初に製造し、次にこの骨格を第2の材料部分の形状を規定するさらなる射出成形用金型内に封入し、第2の成分を注入して道具を含めた歯ブラシの第2の成分部分を形成することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の器具の道具を用いて、義歯から義歯接着剤を除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔清掃器具、特に義歯清掃器具に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯を使用するとき、口中の義歯の保持を改善するために義歯接着剤を使用することは一般的である。義歯接着剤の例は、GlaxoSmithKline社によって製造された製品POLIGRIP(商標)である。義歯接着剤に関する問題は、使用後に残留した義歯接着剤を義歯から除去することが望ましく、且つ推奨されているにもかかわらず、例えば1日の終わりに義歯を取り外したときにそのような残留した義歯接着剤は除去するのが困難な場合があることである。現在、多くの義歯使用者は、例えば彼らの義歯の他の部分を清掃するために彼らが使用する歯ブラシなどの従来の歯ブラシを用いてそのような残留物を除去しようと試みる。これが成功しない場合、又はそれらの通常の方法として、義歯使用者には例えば研磨パッド、台所用品、又はさらには指の爪などを利用するものもいる。US-A-2005/191599は、義歯接着剤を除去する方法を開示している。US-A-2007/037717は、義歯接着剤を除去するためのティッシュと共に使用するための溶媒系を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、とりわけ既知の方法よりも簡便で衛生的な、義歯から義歯接着剤を除去するための改善された手段のニーズを満たすことである。本発明の他の目的及び利点は、以下の開示から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、口腔清掃要素を支持するヘッドと、ヘッドに隣接する基端とヘッドから離れた遠位端との間で長手方向に延びる一体型ハンドルとを含む、口腔、すなわち歯及び/又は義歯の清掃器具であって、義歯から義歯接着剤を除去するように適合された道具がハンドルの遠位端に隣接していることを特徴とする、口腔清掃器具が提供される。
【0005】
ヘッドは、当技術分野でよく知られているような本質的に従来の歯ブラシヘッドを含んでいてもよい。通常、そのようなヘッドは、長さが約2.5~4cm、幅が約1~1.5cm及び厚さが0.3~0.6cmである。
【0006】
口腔清掃要素は好ましくは、義歯が使用者の口腔内にあるとき又は義歯が清掃のために取り出されたときのいずれか、或いは両方において、義歯及び/又は自然歯を清掃するためのそれらの使用を可能にするタイプのものであり、かかる使用を可能にする配置である。適当な要素には、当技術分野でよく知られているような従来のポリアミドブラシ毛(bristles)が含まれ、ヘッドの表面から延びている毛束(tufts)に配置されている。こうしたブラシ毛は従来、例えば、先端が丸いか、先細り状か、又は先端が丸いブラシ毛及び先細り状のブラシ毛の混合物、例えば先細りしていない先端が丸いブラシ毛の毛束の外側リングに囲まれた先細り状のブラシ毛の毛束の内側のクラスターであってよい。追加的又は代替的に、口腔清掃要素は、他の既知のタイプの口腔清掃要素を含んでいてもよい。こうした要素は、横方向若しくは縦方向の列に配置されたブラシ毛の毛束、又はヘッドの表面上の1種以上の多角形のクラスターに配置されたブラシ毛の毛束など、従来の配置でヘッド上に位置していてよい。このようなヘッドはまた、自然歯を清掃するのに使用してもよい。
【0007】
義歯を清掃するために、使用者によっては、義歯に加えられ得る口腔清掃要素の圧力を増加させるために、口腔清掃要素が延びている面と反対側のヘッドの表面に対して親指又は指先を押し付けることを容易にするようにハンドルを握ることに伴う技術を使用することもある。これを容易にするために、ある実施形態では、口腔清掃要素が延びている面と反対側のヘッドの表面は、凹形であってよい。このような凹形反対表面は、使用者の親指又は指にとってより安定した位置を提供して、使用中に使用者の親指又は指がヘッドから滑り落ちる可能性を低減することができる。このようにしてヘッドの使用をさらに向上させるために、口腔清掃要素が延びている面と反対側のヘッドの表面は、熱可塑性エラストマー(TPE)材料などのエラストマー材料などのグリップ強化材料でコーティングしてもよい。使用者のグリップを向上させるための歯ブラシのハンドル上へのこうしたTPE材料の使用は、歯ブラシ技術分野において既に知られている。
【0008】
ハンドルも実質的に従来の歯ブラシハンドルと同じサイズ、形状及び構造であってよく、厚さ方向は、ブラシ毛などの口腔清掃要素が延びている方向と平行しており、横方向は、長手及び厚さ方向と垂直である。通常、こうしたハンドルは、長さが約18~20cm、幅が約1~1.5cm及び厚さが1~1.5cmである。
【0009】
歯ブラシ技術分野では、歯ブラシハンドルを2つの材料成分から作製することはよく知られており、通常、一成分は、ポリプロピレン又は他のポリマーなどの硬質プラスチック材料であり、他の成分は、例えばグリップ又は美的外観を向上させるためにTPE材料などのより軟質のエラストマー材料である。本発明の器具のハンドルは、類似の構造でできていてよい。
【0010】
このようにして歯ブラシハンドルに使用されてきたTPE材料の例には、典型的な硬度ShoreAが10~60であるスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(「SEBS」)コポリマーが含まれるが、この範囲外の硬度が適切なこともあり、例えばSantoprene(商標)、Megol(商標)などがある。こうした2成分の歯ブラシは、例えば数ある中でUS-A-5,054,154、US-A-6,292,973、US-A-5,735,012及びEP-A-0 336 641に開示されている。通常、こうした2成分の歯ブラシハンドルは、通常射出成形によって、第2の成分材料が配置されるべき位置(複数可)に1つ以上の空洞を有する硬質プラスチック材料の骨格を最初に作製することによって作られている。次いでこの骨格は、第2の材料部分(複数可)の形状を規定するさらなる射出成形用金型内に封入され、熱可塑性エラストマーである第2の成分が1つ以上の空洞内に流れ込んで占有するように注入されて、それによって歯ブラシの第2の成分部分(複数可)が形成される。本発明の器具は、まさに類似の方法で作製することができる。
【0011】
道具は、好ましくは口腔清掃器具のハンドルの材料で一体的にできている。
【0012】
ある実施形態では、ハンドルは、硬質プラスチック材料成分及びより軟質のエラストマー材料成分、好ましくはTPE材料を含む、上記のような2成分のハンドルであってよく、道具又は少なくともその外表面部分は、より軟質のエラストマー材料成分の材料で一体的にできていてよい。例えば道具は、第1の成分の硬質プラスチック材料の骨格の下にある部分(underlying part)の上にあるより軟質のエラストマー材料の第2の成分の層に形成されていてよい。
【0013】
ある実施形態では、道具には、義歯から義歯接着剤を除去するように適合されたひしゃく(scoop)が含まれていてよい。
【0014】
例えば、道具は、隆起部を含んでいてよく、隆起部は、例えばハンドルの表面上のひしゃくとして使用するのに適しており、好ましくはハンドルの材料で一体的にできており、好ましくはその高さ方向が実質的にハンドルの厚さ方向である。
【0015】
通常、このような隆起部は、隆起部を通って高さ方向に切断された断面においてV字形、U字形、半円形又は弓形の輪郭を有していてよい。
【0016】
厚さ方向を見た平面図では、このような隆起部は、直線であっても湾曲していてもよく、例えばその凸面側がハンドルの横方向外側に向いて円弧状に湾曲しており、隆起部がハンドルの長手方向に整列している又はその主方向の成分を有している。
【0017】
ある実施形態では、このような隆起部は、遠位端に隣接するハンドルの横方向側に隣接して配置されていてよい。
【0018】
ある実施形態では、こうした2つの隆起部は、遠位端に隣接するハンドルの横方向両側に隣接して設けられ得る。
【0019】
別の実施形態では、ハンドルの遠位端の周りに単一の隆起部があってよく、その範囲の一部はハンドルの遠位端の横方向両側に沿っている。例えば、平面図では、このような単一の隆起部は、U字形、半円形、弓形又はV字形であってよい。
【0020】
このような隆起部又は複数の隆起部は、遠位端に隣接するハンドルの表面によって設けられており、その材料内、例えば2成分のハンドルのより軟質のエラストマー材料内に凹面が組み込まれており、凹面はその周囲の少なくとも一部に沿って、好ましくはその横方向両側の少なくとも一部に沿って隆起部に接している。このような凹面は、横方向及び/又は縦断面が浅い受け皿形であってよい。このような隆起部の内側は、凹面の輪郭に移行することができ、このような隆起部の外側は、ハンドルの側面に移行することができる。
【0021】
このような凹面はその基端側で、より厚いハンドル材料の厚さまで厚さ方向に滑らかな連続勾配又はステップに接していてよい。このような凹面は、例えば平面図において丸みのある形状、例えば円形、楕円形、D字形又は弓形(すなわち丸みのあるポイントに向かって先細りになっている丸みのある形状)であってよく、その横方向両側それぞれに隆起部がある。他の形状も包含される。
【0022】
このような隆起部を含む道具は、ハンドルの遠位端からハンドルの基端に向かって約1~3cm延びることができ、例えば従来の歯ブラシハンドルと同じ一般的な形状、サイズ及び比率のハンドルである。こうした寸法は、義歯から残留した義歯接着剤を除去するのに便利で効果的であることが判明している。
【0023】
したがって好ましい実施形態では、ハンドルは、硬質プラスチック材料成分及びより軟質のエラストマー材料成分である2つの成分でできており、道具は、より軟質のエラストマー材料成分の材料で一体的にできており、ハンドルの遠位端に隣接するより軟質のエラストマー材料成分中に凹面を含み、ハンドルのより軟質のエラストマー材料成分で一体的にできている隆起部に横方向の対向する両側が接している。
【0024】
道具は、器具のハンドルの任意の表面、例えば厚さ方向に向いている又は横方向に向いている表面上に配置することができる。好ましくは、道具は、厚さ方向に向いているハンドルの表面上、より好ましくは口腔清掃要素が延びる厚さ方向に向いている表面上に配置されている。
【0025】
口腔清掃要素と、厚さ方向に向いているハンドルの表面上、例えば口腔清掃要素が延びる方向に向いている表面上に配置されている道具の両方の使用を容易にするために、ハンドルは、好ましくは使用者が人間工学的に便利に握ることを容易にするように形作られ、口腔清掃要素は長手方向の周りを180°回転した方向に向いており、厚さ方向に向いているその表面の一方又は他方、好ましくは両方に配置されたグリップ強化機構が備えられている。こうしたグリップ強化機構は、例えば表面(複数可)内の凹面、及び/又はTPE材料などのグリップ強化材料の表面積を含むことができる。
【0026】
器具を、その口腔清掃要素、及び/又は道具が浴室カウンターなどの表面から安全に離れた向きを向いている状態で、その表面上に安定に置くことを容易にするために、口腔方向から離れた横方向に向いているハンドルの表面は、平面領域を含むことができる。例えば、このような領域は、上記のように、表面にグリップ強化凹面の平面状の縁を含むことができる。
【0027】
本発明の口腔清掃器具は、ヘッド及びハンドルの材料(複数可)をそれらの形状を規定する1種以上の金型キャビティに注入する射出成形プロセスによって製造することができる。ブラシ毛の毛束などの口腔清掃要素は、その後ヘッドのソケット孔に挿入することができる。或いは、口腔清掃要素は、射出成形プロセス中にヘッド材料をそれらの周りに注入することによってヘッドに取り付けることができる。こうしたプロセスは、歯ブラシ製造の技術分野でよく知られている。
【0028】
例えば器具を製造するためのこのようなプロセスでは、ハンドル及び/又はヘッドは、上記のような硬質プラスチック材料及びより軟質のエラストマー材料である2つの材料成分を含んでいてよく、硬質プラスチック材料の骨格を最初に製造することができ、次にこの骨格を第2の材料部分(複数可)の形状を規定するさらなる射出成形用金型内に封入することができ、第2の成分を注入して道具を含めた歯ブラシの第2の成分部分を形成することができる。
【0029】
使用時に、口腔清掃要素は、従来の歯ブラシが使用され得る方法と類似の方法で、義歯の一部、例えば歯の部分を清掃するのに使用することができる。この前又は後に、例えば隆起部をかき取り作用に適用して、残留した義歯接着剤を除去又は少なくとも緩めて(loosen)から、引き離した又は緩めた義歯接着剤を水などの洗浄液で洗い流すことによって、道具を使用して残留した義歯接着剤を義歯から除去又は緩めることができる。
【0030】
本発明の器具の口腔清掃要素はまた、従来の歯ブラシが使用され得る方法と類似の方法で、使用者が彼/彼女の歯をきれいにするために使用することもできる。
【0031】
したがって本発明は、本明細書に記載されている器具の道具を用いて、義歯から義歯接着剤を除去する方法をさらに提供する。特に、上述の隆起部は、義歯上の残留した義歯接着剤と接触させ、残留した接着剤に力を加えてそれを義歯から除去するために使用することができる。
【0032】
次に、添付図を参照しながらほんの一例として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の口腔清掃器具の平面図を示す。
図2図1の口腔清掃器具の長手方向断面図を示す。
図3図1及び2の器具の道具を線A-Aで切断して矢印の方向に見た断面図を示す。
図4図1及び2の器具のハンドルを線B-Bで切断して矢印の方向に見た断面を示す。
図5】隆起部の代替形状の平面図を示す。
図6】隆起部の代替形状の平面図を示す。
図7図5又は6の器具の道具を線C-Cで切断した断面を示す。
図8図5の器具の道具を線D-Dで切断した長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1、2及び3を参照すると、口腔清掃器具10全体が示されている。これは、従来の歯ブラシヘッドの形態のヘッド11を含み、図2に見られる従来のソケット孔13に取り付けられた、従来のパターンで配置された毛束の従来のブラシ毛である口腔清掃要素12を支持している。
【0035】
器具10は、ヘッド11に隣接する基端14Aとヘッド11から離れた遠位端14Bとの間で長手方向L-Lに延びる一体型ハンドル14も含む。ハンドル14は、実質的に従来の歯ブラシハンドルと同じサイズ、形状及び構造であり、厚さ方向T-Tは、ブラシ毛12が延びている方向と平行しており、横方向W-Wは、長手L-L及び厚さT-T方向と垂直である。ヘッド11及びハンドル14は従来、2つの材料成分でできており、第1の成分は、図2の縦断面に見られる硬質プラスチック材料「骨格」15であり、第2の成分は、骨格15の空洞を占め、遠位端14Bの周りを含めたハンドル14の一部の外層を形成する、より軟質の熱可塑性エラストマー(TPE)材料16である。
【0036】
ハンドル14は、空洞がある骨格15をまず形成し、次に骨格15を射出成形用金型内に封入し、次いでTPE材料16を射出成形用金型に注入し、それによりTPEが空洞内に流れ込み、ハンドル14のTPE部分16が形成される従来のプロセスによって作製される。
【0037】
口腔清掃要素(ブラシ毛の毛束)12と同じ方向の、厚さ方向T-Tに向いているハンドル14の表面上にあるハンドル14の遠位端14Bに隣接するのが、義歯から義歯接着剤を除去するように適合された道具20である。
【0038】
道具20は第2の成分の軟質TPE材料16中に浅い受け皿形の凹面21を含み、凹面21の周囲の横方向部分はハンドル14の表面上のエラストマー材料16の2つの隆起部22によって囲まれている。図1の平面図に見られるように、隆起部22は、ハンドル14の遠位端14Bの横方向の両側に隣接して配置されており、遠位端14Bの湾曲した形状に沿って、実質的にハンドル14の長手方向L-Lに整列している。ハンドル14の遠位端14Bにおいて、隆起部22は、ハンドル14の遠位端14Bで表面形状に滑らかに移行している。
【0039】
図3に見られるように、各隆起部22は、横方向W-Wに切断された断面においてV字形の輪郭を有しており、その高さはハンドルの厚さ方向T-Tである。各隆起部22の内側の輪郭は、凹面21の受け皿形の湾曲した輪郭に滑らかに移行しており、各隆起部22の外側の輪郭は、ハンドル14の横方向外表面に移行している。各隆起部22は、硬質プラスチック材料骨格15上に、厚さ約0.5~2.5mm、適切には厚さ約1mm下のTPE材料16の層と一体的に形成される。
【0040】
凹面21はその基端側で、より厚いハンドル材料16の厚さまで、厚さ方向T-Tにおいて第2の成分TPE材料のステップ23に接している。図3において「d」で表されている、凹面21の最大深度、すなわち隆起部22の上端からそれらの下端までの高さは、1~2mmである。下方のTPEのそのような下にある厚みを超えるこの高さ「d」の隆起部22は、最小限の義歯損傷のリスクで義歯から義歯接着剤を除去するためのひしゃく(scoop)としての使用に適していることが見い出された。
【0041】
図1の平面図で見られるように、凹面21は、丸みのある弓形状、すなわちハンドルの遠位端14Bに向かって先細りになっている丸みのある楕円形であり、遠位端14Bの全体的な弓形状に対応し、その横方向両側のそれぞれに隆起部21がある。
【0042】
凹面21は、長手方向L-Lに遠位端14Bからハンドル14の基端14Aに向かって約2.5cm延び、ステップ23が始まるポイントの最大幅は約1.3cmである。
【0043】
側面隆起部22を有する凹面21は、義歯から義歯接着剤を除去するためのひしゃくとして機能することができる。
【0044】
図2に最も明瞭に見られるように、口腔清掃要素12が延びているヘッド11の面と反対側の表面17は、厚さ方向の平面図でヘッド11の楕円形状に対応する浅い受け皿形の凹形であり、使用者にとって固定された親指又は指先の支えを提供するために最大深度が0.5~1.0mmである。この表面17はまた、ヘッドの下にあるプラスチック材料の上にハンドル14の一部を形成する同じTPE材料16の層でコーティングされている。
【0045】
図5、6、7及び8を参照すると、これらは、器具のハンドル14の遠位端14B及び道具20の代替構造を示す。図5及び6は、器具10のハンドル14の遠位端14Bの平面図を示し、この端部14Bは、概ね半円形状に丸みがある。図5では、2つの隆起部22が、ハンドル14の横方向両側に隣接して設けられており、2つの隆起部22の端部は円弧状に湾曲した遠位端に最も近く、それらの凸面側がハンドル14の横方向外側に向いており(facing widthways outwardly of the handle 14)、それらの主方向成分はハンドルの長手方向L-Lに整列している。図6では、ハンドル14の遠位端14Bの周りに丸みのある形状で伸びる、すなわち平面内に見られるような概ね「U」型である単一の隆起部22が設けられており、その凸面側はハンドル14の横方向外側に向いておいり、その脚部(limbs)はハンドルの長手方向L-Lに整列している。図7は、図1の長手方向L-Lを横切る遠位端14Bを通って図5又は図6のいずれかのC-Cにおける断面であり、隆起部22が断面においてどのように「V」字形であるかを示している。
【0046】
図8は、図5の長手方向L-Lで切断した断面図を示しており、図1から4の凹面を含まずに隆起部22がハンドル14に沿って短い長さだけ延びており、図6の器具のハンドル14の上面が図1の凹面を含まずに同様に形成されていることを示す。ハンドル14の遠位端14Bに最も近いそれらの端部において、隆起部22の輪郭は、ハンドル14の遠位端14Bの湾曲した輪郭に滑らかに移行している。
【0047】
ハンドル14は、例えば口の中にある間及び清掃するためにそれらが口から取り出された後に歯又は義歯を清掃するために要素12を使用するために、口腔清掃要素12が長手方向の周りを180°回転した方向に向いた状態で使用者が握ることができる。図1及び2に見られるように、これを容易にするために、ハンドル14には、厚さ方向に向いているその表面の両方に配置されたTPE材料16の領域であるグリップ強化機構が備えられている。さらに図4に見られるように、ハンドル14は、口腔清掃要素12が延びる方向と反対側の厚さ方向に面している凹面41、及び凹面41と反対方向に面している凹面42であるグリップ強化機構が備えられており、両方の凹面41及び42は、TPE材料16中に形成されている。これらの凹面41、42は、使用者にとって便利な指及び/又は親指の支えである。
【0048】
道具20が配置されている表面と反対側のハンドル14の表面上には、凹面41の縁である平面領域がある。この領域は、その口腔清掃要素12及び道具20が浴室カウンターなどの表面から安全に離れた向きを向いている状態で、その表面上に安定に器具10を置くことを容易にする。
【0049】
使用時に、ブラシ毛12は、従来の歯ブラシが使用され得る方法と類似の方法で、義歯の一部(図示せず)を清掃するのに使用することができる。この前又は後に、例えば隆起部21をかき取り作用に適用して、残留した義歯接着剤を除去又は少なくとも緩めてから、引き離した又は緩めた義歯接着剤を水などの洗浄液で洗い流すことによって、道具20の隆起部21を使用して残留した義歯接着剤を義歯から摘み取る又はかき取ることができる。

本発明は例えば以下の態様を含む。
[項1]
口腔清掃要素を支持するヘッドと、ヘッドに隣接する基端とヘッドから離れた遠位端との間で長手方向に延びる一体型ハンドルとを含む口腔清掃器具であって、義歯から義歯接着剤を除去するように適合された道具がハンドルの遠位端に隣接していることを特徴とする、口腔清掃器具。
[項2]
ハンドルが、硬質プラスチック材料及びより軟質のエラストマー材料である2つの成分を含むことを特徴とする、項1に記載の口腔清掃器具。
[項3]
道具が、口腔清掃器具のハンドルの材料で一体的にできていることを特徴とする、項1又は2に記載の口腔清掃器具。
[項4]
道具、又は少なくともその外表面部分が、より軟質のエラストマー材料成分の材料で一体的にできていることを特徴とする、項2又は3に記載の口腔清掃器具。
[項5]
道具が、義歯から義歯接着剤を除去するように適合されたひしゃくを含むことを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
[項6]
道具が、ハンドルの表面上にハンドルの材料で一体的にできている隆起部を含み、その高さ方向が実質的にハンドルの厚さ方向であることを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
[項7]
厚さ方向を見た平面図において、隆起部が、その凸面側がハンドルの横方向外側に向いて円弧状に湾曲しており、隆起部がハンドルの長手方向にその主方向の成分を有していることを特徴とする、項6に記載の口腔清掃器具。
[項8]
隆起部が、遠位端に隣接するハンドルの横方向側に隣接して配置されていることを特徴とする、項7に記載の口腔清掃器具。
[項9]
こうした2つの隆起部が、遠位端に隣接するハンドルの横方向両側に隣接して提供されていることを特徴とする、項6、7又は8に記載の口腔清掃器具。
[項10]
ハンドルの遠位端の周りに単一の隆起部があり、その範囲の一部がハンドルの遠位端の横方向両側に沿っていることを特徴とする、項6、7又は8に記載の口腔清掃器具。
[項11]
隆起部又は複数の隆起部が、遠位端に隣接するハンドルの表面によって設けられており、その材料内に凹面が組み込まれており、凹面はその周囲の少なくとも一部に沿って隆起部に接していることを特徴とする、項6から10のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
[項12]
凹面が、平面図で丸みのある形状であり、それぞれのその横方向両側に隆起部があることを特徴とする、項11に記載の口腔清掃器具。
[項13]
丸みのある形状が、ハンドルの遠位端に向かって先細りになっていることを特徴とする、項12に記載の口腔清掃器具。
[項14]
道具が、ハンドルの遠位端からハンドルの基端に向かって約1~3cm延びていることを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
[項15]
ハンドルが、硬質プラスチック材料成分及びより軟質のエラストマー材料成分である2つの成分でできており、道具が、より軟質のエラストマー材料成分の材料で一体的にできており、ハンドルの遠位端に隣接するより軟質のエラストマー材料成分中に凹面を含み、その凹面の少なくとも1つの横方向側面はハンドルのより軟質のエラストマー材料成分で一体的にできている隆起部に接していることを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
[項16]
道具が、厚さ方向に向いているハンドルの表面上に配置されていることを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
[項17]
道具が、口腔清掃要素が延びる方向に向いているハンドルの表面上に配置されていることを特徴とする、項16に記載の口腔清掃器具。
[項18]
口腔清掃要素が、先端が丸い及び先細り状のブラシ毛の混合物を含むことを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
[項19]
口腔清掃要素が延びているヘッドの表面と反対側の表面が凹形であることを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の口腔清掃器具。
[項20]
項1から19のいずれか一項に記載の器具を製造するための方法であって、ヘッド及びハンドルの材料を、それらの形状を規定する1種以上の金型キャビティに注入する射出成形プロセスを含むことを特徴とする、方法。
[項21]
硬質プラスチック材料の骨格を射出成形によって最初に製造し、次にこの骨格を第2の材料部分の形状を規定するさらなる射出成形用金型内に封入し、第2の成分を注入して道具を含めた歯ブラシの第2の成分部分を形成することを特徴とする、項20に記載の方法。[項22]
項1から19のいずれか一項に記載の器具の道具を用いて、義歯から義歯接着剤を除去する方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8