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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】車両用緩衝部材
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20220527BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B60J5/00
B60R13/02 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021518808
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019040021
(87)【国際公開番号】W WO2021070327
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】見尾谷 信介
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-090011(JP,A)
【文献】特開2017-170967(JP,A)
【文献】特開2011-225164(JP,A)
【文献】特開2007-055173(JP,A)
【文献】特開平10-278709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記複数の側壁にわたって周状に形成される前記第1折れ部及び前記第2凸折れ部とは、前記天板と略平行に形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の車両用緩衝部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用緩衝部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体パネルを覆って装着されるトリム材の裏面に配置されると共に、衝突荷重を受けた場合に衝突エネルギーを吸収する車両用緩衝部材が提案されている。車両用緩衝部材は、衝突荷重を受け止める面を構成する天板と、天板の周端部から延びて形成されると共に天板に対して周状に配置された複数の側壁とを備えている(例えば特許文献1,2参照)。さらに、このような車両用緩衝部材には、側壁に外向きの折れ線と内向きの折れ線とが形成されたものがある。このため、天板が衝突荷重を受けると、車両用緩衝部材は外向きの折れ線で外側に凸折れを起こし易く、且つ、内向きの折れ線で内側に凹折れを起こし易くなっている。特に、外向き及び内向きの折れ線を設けることで、どのような荷重に対しても変形後の形状が同じとなり易く、衝突エネルギーの吸収効果について安定化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-121887号公報
【文献】特開2017-136965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両用緩衝部材については、所定のF-S(荷重-ストローク量)特性が得られることが望まれるものである。図14は、比較例に係る車両用緩衝部材のF-S特性を示す図である。比較例に係る車両用緩衝部材は、側突時に安定した破壊モードを提供することができるが、図14に示すように、衝突初期(すなわちストローク小)において吸収荷重のピークPがあり、その後、荷重は底つき波形に向かって低下していく傾向にある。
【0005】
ここで、F-S特性には荷重の上限値が設定されており、車両用緩衝部材は、この上限値を超えない範囲内で任意のエネルギーを吸収するF-S特性が望まれている。一方で、車両用緩衝部材は、衝撃エネルギー吸収量が高い(F-S特性の積分値が大きい)ことが求められている。特に小型自動車等においては、十分なストローク量の確保が困難であることから、これを補う為に上限値に近似したF-S特性の要求が高まっている。
【0006】
しかし、比較例に係る車両用緩衝部材については、ピークPよりもストローク(S)が進むと、荷重(F)が低下していく傾向があることから、F-S特性の要求を満たすことができない。これらの対策としてはPADを大型化するしかなく、結果として車両室内空間を狭めることになっていた。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より小さいストローク量でより大きい衝撃吸収量を確保することができる車両用緩衝部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明に係る車両用緩衝部材は、車体パネルを覆って装着されるトリム材の裏面に配置されると共に、衝突荷重を受け止める天面を構成する天板と、前記天板の周端部から延びて形成されると共に前記天板に対して周状に配置された複数の側壁と、前記複数の側壁それぞれの前記天板とは反対側の端部から外側に向かって張り出された板状のフランジ部と、を備え、前記天面において衝突荷重を受けた場合に衝突エネルギーを吸収する略角筒状の車両用緩衝部材であって、前記複数の側壁は、前記天板に略平行となる断面において隣り合うもの同士の中央部が略直角に交わると共に、前記天板が衝突荷重を受けたときに側壁の外側への凸折れを促す第1凸折れ部と、前記天板が衝突荷重を受けたときに側壁の内側への凹折れを促す第1凹折れ部とが、隣接する側壁同士で交互に且つ周状に形成された第1折れ部と、前記天板が衝突荷重を受けたときに側壁の外側への凸折れを促す第2凸折れ部と、前記天板が衝突荷重を受けたときに側壁の内側への凹折れを促す第2凹折れ部とが、隣接する側壁同士で交互に且つ周状に形成された第2折れ部と、を有し、前記第1凸折れ部と前記第2凹折れ部、及び、前記第1凹折れ部と前記第2凸折れ部とが同一側壁に形成され、略角筒の軸に沿った高さ方向において、前記天板の天面から前記フランジ部の前記天板側の面までの長さを100%とした場合、前記天面から前記第1折れ部までの長さが24%以上47%以下であり、前記第1折れ部から前記第2折れ部までの長さが34%以上49%以下であり、前記第2折れ部から前記フランジ部の前記天板側の面までの長さが13%以上33%以下とされている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、天板の天面からフランジ部の天板側の面までの長さを100%とした場合、天面から第1折れ部までの長さが24%以上47%以下であり、第1折れ部から第2折れ部までの長さが34%以上49%以下であり、第2折れ部からフランジ部の天板側の面までの長さが13%以上33%以下とされている。このように構成することで、天板が衝突荷重を受けた場合に、まず天板に近い側の第1折れ部が折れ、その後、天板から遠い側の第2折れ部が折れることとなり、理想的なF-S特性を得易くすることができる。従って、より小さいストローク量でより大きい衝撃吸収量を確保することができる車両用緩衝部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る車両用緩衝部材をサイドドアに適用した例におけるドアトリムを模式的に示す側面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、図2に示した車両用緩衝部材を示す斜視図である。
図4図4は、図3のB-B断面図である。
図5図5は、図3のC-C断面図である。
図6図6は、図3に示した車両用緩衝部材の断面図であって、天板に対して略平行となる断面を示すものである。
図7図7は、車両用緩衝部材による衝突エネルギーの吸収の様子の一例を示す断面図であって、第1方向の断面における衝突初期を示している。
図8図8は、車両用緩衝部材10による衝突エネルギーの吸収の様子の一例を示す断面図であって、第2方向の断面における衝突初期を示している。
図9図9は、車両用緩衝部材10による衝突エネルギーの吸収の様子の一例を示す断面図であって、第1方向の断面における衝突終期を示している。
図10図10は、車両用緩衝部材10による衝突エネルギーの吸収の様子の一例を示す断面図であって、第2方向の断面における衝突終期の第1の例を示している。
図11図11は、車両用緩衝部材10による衝突エネルギーの吸収の様子の一例を示す断面図であって、第2方向の断面における衝突終期の第2の例を示している。
図12図12は、本実施形態に係る車両用緩衝部材の変形例を示す断面図である。
図13図13は、3段構成における理想的なF-S特性を示す図である。
図14図14は、比較例に係る車両用緩衝部材のF-S特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る車両用緩衝部材をサイドドアに適用した例におけるドアトリムを模式的に示す側面図であり、図2は、図1のA-A断面図である。
【0013】
サイドドア1は、車体パネルであるドアアウタパネル2とドアインナパネル3とで構成されている。ドアインナパネル3は、車室の壁面パネルの一部を構成し、車室側の側面にはドアトリム(トリム材)4が装着されている。
【0014】
ドアトリム4は、適宜の合成樹脂材をもって型成形によって形成され、車室側の側面(表面)にクッションと表装を兼ねた表皮が貼合されたものである。このドアトリム4は、その上下方向中間部分にドアアームレスト5を備えている。さらに、ドアトリム4は、ドアアームレスト5よりも下方位置にドアポケット6を備えている。
【0015】
ドアトリム4の所要位置、例えばシートクッション(図示せず)に着座した乗員の腰部と対応する位置には、高衝撃吸収性能を持つ車両用緩衝部材10が設置されている。
【0016】
図3は、図2に示した車両用緩衝部材10を示す斜視図である。車両用緩衝部材10は、一方の開口が閉塞された角筒状に形成されており、車両の側面衝突時に、サイドドア1に入力される衝突荷重F(図2参照)を受けて筒軸方向に変形することで衝突エネルギーを吸収するものである。このような車両用緩衝部材10は、天板11と、複数の側壁12と、フランジ部13とを備え、これらが適宜の合成樹脂材(エラストマー樹脂等)によって一体的に形成されている。
【0017】
天板11は、衝突荷重Fを受け止める天面11aを構成するものである。この天板11(天面11a)は、例えばドアインナパネル3(図2参照)と略平行となる平坦面で構成されており、衝突荷重Fが入力された際にドアインナパネル3を面的に受け止めるものとなる。
【0018】
複数の側壁12は、天板11の周端部から延びて形成されると共に天板11に対して周状に配置される壁部材である。具体的に本実施形態において天板11は四角形状となっているため、複数の側壁12は、四角形状の天板11のそれぞれの辺と同数となる4枚で構成され、天板11の各辺からドアトリム4(図2参照)側へ延びて形成されている。隣り合う側壁12同士は接続されており、この結果、車両用緩衝部材10は、一端側が閉塞され、他端側が開放された角筒状となっている。
【0019】
フランジ部13は、複数の側壁12のうち天板11とは反対側の辺(端部)から筒外側に向かって張り出された板状の部材である。フランジ部13は、例えば全周にわたって筒外側に一定の幅で形成されており、ドアトリム4との当接面を構成する。このフランジ部13は、衝突荷重Fによる車両用緩衝部材10の変形時にドアトリム4の裏面に面接触することにより、ドアトリム4への荷重を面的に分散することとなる。
【0020】
このような車両用緩衝部材10の複数の側壁12は、図3に示すように、第1折れ部14と、第1折れ部14よりもフランジ部13側の第2折れ部15とを備えている。図4は、図3のB-B断面図であり、図5は、図3のC-C断面図である。
【0021】
図3から図5に示すように、第1折れ部14は、天板11が衝突荷重Fを受けたときに側壁12の外側への凸折れを促す第1凸折れ部14aと、天板11が衝突荷重Fを受けたときに側壁12の内側への凹折れを促す第1凹折れ部14bとが、隣接する側壁12同士で交互に且つ周状(1周)に形成されたものである。
【0022】
第2折れ部15は、天板11が衝突荷重Fを受けたときに側壁12の外側への凸折れを促す第2凸折れ部15aと、天板11が衝突荷重Fを受けたときに側壁12の内側への凹折れを促す第2凹折れ部15bとが、隣接する側壁12同士で交互に且つ周状(1周)に形成されたものである。
【0023】
さらに、第1凸折れ部14aと第2凹折れ部15b、及び、第1凹折れ部14bと第2凸折れ部15aは、それぞれ同一側壁12に形成されている。
【0024】
ここで、側壁12のうち、第1折れ部14よりも天板11側の部位を第1壁12aとし、第1折れ部14と第2折れ部15との間の部位を第2壁12bとし、第2折れ部15よりもフランジ部13側の部位を第3壁12cとした場合、これらの角度は以下のようになっている。
【0025】
すなわち、第1凸折れ部14aを有する側壁12について、第1壁12aは、例えば天板11の法線方向(本実施形態においては角筒の軸に沿った高さ方向)に対して5°以上30°以下で傾いた傾斜面となっている。第2壁12bについては例えば天板11の法線方向に対して0°以上15°以下で傾いた垂直面又は傾斜面となっている。同様に、第2凸折れ部15aを有する側壁12について、第2壁12bは、例えば天板11の法線方向に対して5°以上30°以下で傾いた傾斜面となっている。第3壁12cについては例えば天板11の法線方向に対して0°以上15°以下で傾いた垂直面又は傾斜面となっている。
【0026】
また、第1凹折れ部14bを有する側壁12について、第1壁12aは、例えば天板11の法線方向に対して0°以上15°以下で傾いた垂直面又は傾斜面となっている。第2壁12bについては例えば天板11の法線方向に対して5°以上30°以下で傾いた傾斜面となっている。同様に、第2凹折れ部15bを有する側壁12について、第2壁12bは、例えば天板11の法線方向に対して0°以上15°以下で傾いた垂直面又は傾斜面となっている。第3壁12cについては例えば天板11の法線方向に対して5°以上30°以下で傾いた傾斜面となっている。
【0027】
さらに、図4及び図5に示すように、複数の側壁12は、第1折れ部14及び第2折れ部15が形成される箇所の内壁部分が肉抜きされて薄肉部16とされていることが好ましい。なお、薄肉部16は、第1折れ部14及び第2折れ部15のいずれか一方のみに形成されていてもよい。また、第1折れ部14及び第2折れ部15は、複数の側壁12にわたって天板11と略平行(例えば±10°範囲内)に周状に形成されていることが好ましい。
【0028】
ここで、第1折れ部14及び第2折れ部15を有する車両用緩衝部材10については、図13に示すようなF-S特性が得られることが好ましい。図13は、3段構成における理想的なF-S特性を示す図である。3段構成の車両用緩衝部材は、第1折れ部14及び第2折れ部15での折れ時に高い衝撃吸収効果を発揮することができることから、F-S特性において2つのピークP1,P2を形成することができる。このため、上限値により近似させたF-S特性を達成させて積分値の増大を図ることができる。なお、図13に示すF-S特性は、衝突時において、まず天板に近い側の第1の折れ部14が折れ、次いで、天板から遠い側の第2の折れ部15が折れた場合のものである。
【0029】
しかし、単に側壁12に第1折れ部14及び第2折れ部15を形成しただけでは、衝撃吸収時において予期せぬ変形を起こしてしまい、図13に示すようなF-S特性が得られなくなってしまう。
【0030】
そこで、図13に示すようなF-S特性を得るべく、本実施形態に係る車両用緩衝部材10は、以下の2つの特徴を有する構成となっている。
【0031】
図6は、図3に示した車両用緩衝部材10の断面図であって、天板11に対して略平行となる断面を示すものである。なお、図6においては、第2折れ部15を通過する平面での断面を示している。まず、第1に、図6の破線に示すように、当該平面において隣り合う側壁12同士は略直角(例えば±10°範囲内)に接続されている。
【0032】
第2に、本実施形態に係る車両用緩衝部材10は、第1~第3壁12a~12cについて表1に示す高さ方向の寸法関係となっている。表1は、第1~第3壁12a~12cの高さ方向の寸法関係を示す表である。
【表1】
【0033】
角筒の軸に沿った高さ方向にみて、天板11の天面11aからフランジ部13の天板11側の面までの長さを100%とする。この場合において、第1壁12a(天面11aから第1折れ部14まで)の長さが24%以上47%以下とされている。また、第2壁12b(第1折れ部14から第2折れ部15まで)の長さが34%以上49%以下とされている。また、第3壁12c(第2折れ部15からフランジ部13の天板11側の面まで)の長さが13%以上33%以下とされている。
【0034】
以上のような高さ関係により、衝突初期において第1折れ部14での折れを発生させた後に、第2折れ部15での折れを発生させ、結果として図13に示すF-S特性を得ることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る車両用緩衝部材10による衝突エネルギーの吸収の様子を説明する。図7から図10は、車両用緩衝部材10による衝突エネルギーの吸収の様子の一例を示す断面図であって、図7及び図8は衝突初期を示し、図9及び図10は衝突終期を示している。
【0036】
まず、図7及び図8に示すように、衝突荷重Fが天板11に加わったとする。この場合において、車両用緩衝部材10は、まず第1折れ部14において折れが発生する。このとき、第2折れ部15については折れが略発生していない状態となっている。
【0037】
次に、衝突中期において第2折れ部15に折れが発生し始める。よって、衝突中期においては第1折れ部14及び第2折れ部15の双方において折れの動作が生じているといえる。
【0038】
その後、図9及び図10に示すように、衝突終期において第1折れ部14については完全に折れ変形してしまう。なお、この時点において第2折れ部15は未だ折れ動作中である。
【0039】
このように、本実施形態に係る車両用緩衝部材10は、第1折れ部14での折れを発生させた後に第2折れ部15での折れを発生させることができ、衝突時に意図した変形を起こさせて、所望のF-S特性を得易くすることができる。
【0040】
なお、衝突終期において車両用緩衝部材10は、第2方向の断面において図11に示すようなっていてもよい。図11は、車両用緩衝部材10による衝突エネルギーの吸収の様子を示す断面図であって、衝突終期の第2の例を示している。
【0041】
図11に示すように、衝突終期においては、第2方向の断面において第2折れ部15(第2凸折れ部15a)は凸折れを起こすことがない場合もあり得る。このような場合であっても図9に示したように、第1方向の断面において第2折れ部15(第2凹折れ部15b)が凹折れしていることから、衝撃吸収量については大きく減少することはない。よって、本実施形態に係る車両用緩衝部材10は、このような変形であっても比較的図13に示したF-S特性に近いものを得ることができる。
【0042】
このようにして、本実施形態に係る車両用緩衝部材10によれば、天板11の天面11aからフランジ部13の天板11側の面までの長さを100%とした場合、天面11aから第1折れ部14までの長さが24%以上47%以下であり、第1折れ部14から第2折れ部15までの長さが34%以上49%以下であり、第2折れ部15からフランジ部13の天板11側の面までの長さが13%以上33%以下とされている。このように構成することで、天板11が衝突荷重Fを受けた場合に、まず天板11に近い側の第1折れ部14が折れ、その後、天板11から遠い側の第2折れ部15が折れることとなり、理想的なF-S特性を得易くすることができる。従って、より小さいストローク量でより大きい衝撃吸収量を確保することができる車両用緩衝部材10を提供することができる。
【0043】
また、複数の側壁12は、第1折れ部14及び第2折れ部15が形成される箇所の内壁部分が肉抜きされた薄肉部16とされているため、第1折れ部14及び第2折れ部15において適切に折れを発生させ易くして意図しない箇所が変形してしまう可能性を低減することができる。
【0044】
また、第1折れ部14及び第2折れ部15は天板11と略平行に形成されているため、天板11に加わった衝突荷重Fによって適切に第1折れ部14及び第2折れ部15に折れを発生させ易くして、より安定的に衝突エネルギーの吸収効果を発揮することができる。
【0045】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能であれば公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。特に、形状や寸法については上記した内容又は図示した内容に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
また、上記実施形態において、天板11は、その法線方向から見て四角形状であるが、隣り合う側壁12が略直角に接続可能であれば、特に四角形状に限られるものではない。例えば、天板11は、その法線方向から見て凸形状であってもよいし、X、H、及びL字等の形状であってもよい。
【0047】
また、本実施形態に係る車両用緩衝部材10は、天板11に略平行となる断面において隣り合う側壁12同士が略直角に接続されているが、これに限らず、天板11に略平行となる断面において隣り合う側壁12同士の中央部が略直角に交わる関係であってもよい。図12は、本実施形態に係る車両用緩衝部材10の変形例を示す断面図である。図12に示すように、隣り合う側壁12同士は互いの接続部分において多少丸みを有していてもよい。すなわち、側壁12同士の中央部が略直角に交わる関係であれば、隣り合う側壁12同士の接続部分は丸みを有していてもよい。
【符号の説明】
【0048】
4 :ドアトリム(トリム材)
10 :車両用緩衝部材
11 :天板
11a :天面
12 :側壁
13 :フランジ部
14 :第1折れ部
14a :第1凸折れ部
14b :第1凹折れ部
15 :第2折れ部
15a :第2凸折れ部
15b :第2凹折れ部
16 :薄肉部
F :衝突荷重
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14