(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】トンネル清掃車
(51)【国際特許分類】
E01H 1/00 20060101AFI20220530BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20220530BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
E01H1/00 B
B08B1/04
B08B3/02 F
(21)【出願番号】P 2020202842
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520312692
【氏名又は名称】日本特殊車輌サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲明
(72)【発明者】
【氏名】奥村 靖
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121460(JP,A)
【文献】特開2002-002319(JP,A)
【文献】特開2002-146737(JP,A)
【文献】特開2012-102515(JP,A)
【文献】特開平05-017918(JP,A)
【文献】実開昭62-139817(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0179123(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00
B08B 1/04
B08B 3/02
B60K 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって自走する車両と、
該車両に搭載され油圧によって駆動される清掃装置システムとからなるトンネル清掃車であって、
前記車両には、トランスファーPTOが設けられ、
前記トランスファーPTOは、前記エンジンに隣接して設けられているトランスミッションによって駆動される第1のドライブシャフトと、前記車両の後輪を駆動する第2のドライブシャフトとの間に介装されており、
前記トランスファーPTOを第1の位置に操作すると前記第1のドライブシャフトと前記第2のドライブシャフトが連結されて前記エンジンの動力によって前記車両が走行するようになっており、第2の位置に操作すると前記第1のドライブシャフトと前記第2のドライブシャフトとが切断され
ると共に前記第1のドライブシャフトが前記トランスファーPTOに設けられている油圧ポンプに連結され前記エンジンの動力によって前記油圧ポンプが駆動されて圧油が供給されるようになっており、
前記車両には油圧モータを備えた走行機構が設けられ、前記トランスファーPTOが前記第2の位置に操作されているとき前記走行機構が前記第2のドライブシャフトに連結され、前記油圧モータによって
前記車両が走行するようになっていることを特徴とする、トンネル清掃車。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル清掃車であって、前記車両の運転席のボックスには後方側に窓が設けられていると共に前記清掃装置システムを操作する操作盤が設けられ、作業者が前記ボックス内で前記清掃装置システムを操作するようになっていることを特徴とする、トンネル清掃車。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトンネル清掃車であって、前記清掃装置システムは操作可能なブームと、該ブームの先端に設けられている回転ブラシと、該回転ブラシの近傍に設けられている複数個の噴射ノズルとからなる清掃装置を備え、前記噴射ノズルから洗浄水を噴射させると共に前記回転ブラシを回転させてトンネル壁面や天井を清掃するようになっていることを特徴とする、トンネル清掃車。
【請求項4】
請求項3に記載のトンネル清掃車は、
前記噴射ノズルに洗浄水を供給する洗浄水噴射用ポンプには第1の油圧モータと該第1の油圧モータに圧油を供給する第1の電磁弁が設けられ、前記回転ブラシには第2の油圧モータと該第2の油圧モータに圧油を供給する第2の電磁弁が設けられ、前記第1、2の電磁弁を操作して前記回転ブラシを停止させた状態で、前記噴射ノズルから洗浄水を噴射させることが可能になっていることを特徴とする、トンネル清掃車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの壁面を洗浄するトンネル清掃車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの壁面はトンネル内を走行する車両からの排気ガス、車両が巻き上げる粉塵等によって汚れが付着する。このような汚れがトンネル内に設けられている照明に付着すると明るさが低下して危険もある。したがって定期的に汚れを除去する必要がある。
【0003】
トンネル内の清掃は、作業員を載せるボックスを駆動することができる汎用的な作業車両を使用して清掃することもできる。つまりこのボックスに作業員を乗せてトンネルの壁面に近づける。作業者は洗浄水を噴射しながらブラシ等によって壁面を洗浄する。しかしながら、トンネル内を清掃する専用の作業車両、つまりトンネル清掃車が色々提案されており、トンネル清掃車によりトンネル内を清掃すると、作業員の安全が確保されるし効率的でもある。
【0004】
トンネル清掃車の多くは、自走する車両とこの車両に設けられた清掃装置とから構成されている。清掃装置は、所望の方向に駆動できるブームと、このブームに設けられている噴射ノズルと、同様にこのブームに設けられている清掃用ブラシとを備えている。噴射ノズルから洗浄水を噴射し、そして清掃用ブラシを回転させると、汚れた壁面を洗浄することができる。
【0005】
このような清掃装置は油圧によって駆動するようになっており、一般的なトンネル清掃車は車両を走行させるためのエンジンとは別に、清掃装置を駆動するための発動機を備えている。この発動機により油圧ポンプを駆動し清掃装置を駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
特許文献1にはトンネル清掃車が記載されている。この文献に記載のトンネル清掃車にはPTOが設けられており、車両のエンジンから動力を取り出して油圧ポンプを駆動して清掃装置を駆動できるようになっている。PTOには、トランスミッションの側方に設けられて動力を取り出すトランスミッションPTO、エンジンのクランクシャフトから動力を取り出すフライホイールPTO、あるいはクラッチとトランスミッションの間に設けられてエンジンからの動力を100%取り出すフルパワーPTO等、いろいろな種類がある。この特許文献1に記載のトンネル清掃車は、車両を走行させながら清掃装置を駆動するようになっているので、エンジンの動力は車両走行用とPTOとに分散させる必要がある。そうすると、エンジンの動力の一部を取り出すことができるトランスミッションPTOやフライホイールPTOが採用されていると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のトンネル清掃車についても、特許文献1に記載のトンネル清掃車についても優れた点は多々あるが、解決すべき課題も見受けられる。従来のトンネル清掃車の場合には、清掃装置を駆動するために車両のエンジンとは別に発動機を設ける必要がある。そうするとコストが高いという問題がある。また発動機や、この発動機を駆動するための燃料タンク分だけトンネル清掃車の重量が大きくなる。そうすると積載できる洗浄水タンクの容量が必然的に小さくなってしまう。特許文献1に記載のトンネル清掃車の場合には、PTOによってエンジン動力の一部を取り出して清掃装置を駆動できるようになっているので、発動機を設ける必要がなくコストを小さくできる。しかしながら、エンジンの動力の一部を取り出すトランスミッションPTOやフライホイールPTOは比較的小型なので、大型の油圧ポンプを駆動することができない。そうすると清掃装置は小型なものしか採用できず、清掃効率が低下してしまう。
【0009】
従来のトンネル清掃車にも、特許文献1に記載のトンネル清掃車にも共通の課題がある。いずれのトンネル清掃車もトンネルの清掃時には車両を低速で、例えば時速1~2km程度の速度で走行させる必要がある。そうすると頻繁にクラッチ操作をしなければならず、運転手が疲弊してしまう。さらには、清掃装置を駆動する作業者が入る作業用ボックスにも問題がある。特許文献1に記載のトンネル清掃車も、他の一般的なトンネル清掃車も、作業者は運転席から離間した位置に設けられた作業用ボックス内で作業するようになっている。そうすると、作業者と運転手との連携が困難になる。作業者による清掃作業と車両の走行速度とを調整しなければ適切な清掃はできないが、作業者と運転手の間のコミュニケーションをとるために無線電話あるいは有線電話を設けなければならなくなる。また作業用ボックス内には空調が設けられていないので、作業者の環境が過酷になるという問題もある。
【0010】
清掃装置についての問題もある。近年のトンネルの壁面はホウロウ、あるいは特殊な塗料が塗布された金属板等、比較的汚れが付着しにくい部材から形成されている場合がある。このような部材は、ブラシ等によって擦ると細かい傷が付き易い。そうすると、汚れが付着しにくいという本来の性能が失われてしまう、という問題がある。
【0011】
そこで本発明は、上記した問題を解決することを目的とし、具体的には車両のエンジンとは別に発動機を設ける必要がなく、したがって大型の洗浄水タンクを搭載することができ、そしてハイパワーを要するが清掃効率の高い大型の清掃装置を設けることができ、車両の走行が煩雑にならないトンネル清掃車を提供することを目的としている。さらには、運転手と作業者の連携が容易で、作業者の作業環境を改善するようなトンネル清掃車を提供すること、またトンネル壁面が比較的傷つきやすい部材から構成されている場合には、これを傷つけるおそれのない清掃方法が可能な、トンネル清掃車を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、エンジンによって自走する車両と、この車両に搭載され油圧によって駆動される清掃装置システムとからなるトンネル清掃車を対象とする。車両にトランスファーPTOを設ける。このトランスファーPTOは、エンジンに隣接して設けられているトランスミッションによって駆動される第1のドライブシャフトと、車両の後輪を駆動する第2のドライブシャフトとの間に介装する。トランスファーPTOを第1の位置に操作すると第1のドライブシャフトと第2のドライブシャフトが連結されてエンジンの動力によって車両が走行することになるが、第2の位置に操作すると第1のドライブシャフトと第2のドライブシャフトとが切断されて第1のドライブシャフトがトランスファーPTOに設けられている油圧ポンプに連結されエンジンの動力によって油圧ポンプが駆動されて圧油が供給されるようにする。さらに車両には油圧モータを備えた走行機構を設け、トランスファーPTOを第2の位置に操作するとき、この走行機構が第2のドライブシャフトに連結されるようにし、油圧モータによって車両が走行するように構成する。他の発明は、車両の運転席のボックスにおいて後方側に窓を設け清掃装置システムを操作する操作盤を設ける。これによって作業者がこのボックス内で清掃装置システムを操作するように構成する。さらに他の発明は、清掃装置システムが、操作可能なブームと、該ブームの先端に設けられている回転ブラシと、該回転ブラシの近傍に設けられている複数個の噴射ノズルとからなる清掃装置を備えるようにし、噴射ノズルから洗浄水を噴射させると共に回転ブラシを回転させてトンネル壁面を清掃するようにする。また、他の発明は、回転ブラシを停止させた状態で、噴射ノズルから洗浄水を噴射させることができるように構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、トランスファーPTOを第1の位置、第2の位置に切り替えることによって、車両のエンジンの出力を100%車両の走行用に利用し、あるいは100%油圧ポンプの駆動に使用するようになっている。圧油を供給するために車両のエンジン以外に他の発動機を設ける必要がないし、エンジンの出力を100%利用できるので大量の圧油を供給することができる。したがって清掃効率は高いが、大量の圧油を必要とする大型の清掃装置システムであっても駆動することができる、という効果が得られる。そして、第2の位置に切り替えている時、第1、2のドライブシャフトは切断された状態になるので車両はエンジンの出力によって走行することはできなくなるが、第2のドライブシャフトは油圧モータを備えた走行装置によって駆動されるので、これによって車両は走行できる。一般的にトンネル清掃時には時速1~2km程度の低速で走行させて清掃作業をするので、油圧モータを備えた走行装置は、低速走行ができれば十分であり比較的シンプルに構成することができる。そして油圧モータを備えた走行装置によって車両を走行させるので、運転手はクラッチ操作、ギア操作が不要であり、労力を削減できる。他の発明によると、車両の運転席のボックスにおいて後方側に窓を設け清掃装置システムを操作する操作盤を設けているので、作業者はこのボックス内で清掃装置システムを操作することができる。したがって、運転手と作業者は同じボックス内において容易にコミュニケーションでき、連携することができる。さらには運転席のボックス内は空調設備が設けられているので、作業者は快適な環境で作業ができる。さらに他の発明によると、清掃装置システムを操作可能なブームと、該ブームの先端に設けられている回転ブラシと、該回転ブラシの近傍に設けられている複数個の噴射ノズルとからなる清掃装置を備えるようにし、回転ブラシを停止させた状態で、噴射ノズルから洗浄水を噴射させることができるようになっている。そうすると、洗浄水だけを噴射してトンネル壁面を清掃することができるので、ブラシで擦ることによって壁面を傷つけることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係るトンネル清掃車を示す側面図である。
【
図2】本実施の形態に係るトンネル清掃車を示す上面図である。
【
図3】本実施の形態に係るトンネル清掃車の動力系統を示す模式図である。
【
図4】本実施の形態に係るトンネル清掃車の回転ブラシと噴射ノズルについての油圧回路図である。
【
図5】本実施の形態に係るトンネル清掃車の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態について説明する。本実施の形態に係るトンネル清掃車1は、
図1、
図2に示されているように、自走する車両2と、この車両2の上に設けられている清掃装置システム3とから構成されている。車両2は、後で詳しく説明するが1個のエンジンが設けられ、このエンジンの出力によって車両2が走行し、あるいは清掃装置システム3等を駆動するための圧油を供給するようになっている。
【0016】
車両2には、従来の車両と同様に運転手のための部屋、つまり運転席ボックス5が設けられている。しかしながら従来の運転席ボックス5にはない本発明に特有の構成も備えている。すなわち、運転席ボックス5には、清掃装置システム3を操作する作業者用のスペースが設けられている。具体的には、運転席ボックス5内には清掃装置システム3を操作する操作盤が設けられている。運転席ボックス5の後方側には、
図5に示されているように後方窓6が設けられており、
図1に示されているように作業者7は、運転手8と背中合わせになるように後方を向き、清掃装置システム3を見ながらこれを操作することができるようになっている。運転席ボックス5は空調装置により快適な環境が提供されており、また運転手8と作業者7は格別に通信手段を使わなくてもコミュニケーションがとれるようになっている。
【0017】
清掃装置システム3は、第1、2の清掃装置10、11と、これらの清掃装置10、11に洗浄水を供給する洗浄水タンク18と、洗浄水タンク18からの洗浄水を第1、2の清掃装置10、11に送る送水ポンプ19とから構成されている。ただし、洗浄水を送水するホース等は、煩雑になるので図には示されていない。清掃装置システム3は、複数個の装置、部材から構成されているが、いずれも油圧によって駆動されるようになっている。これらは後で説明するトランスファーPTOの油圧ポンプから圧油が供給されるようになっている。なお、圧油を供給する油圧管については煩雑になるので図には示されていない。
【0018】
車両の前方寄りに設けられている第1の清掃装置10と後方寄りに設けられている第2の清掃装置11は、同様に構成されている。すなわち、第1、2の清掃装置10、11は、回動自在で上下に駆動自在そして伸縮自在なブーム13、14と、これらブーム13、14の先端に設けられている回転ブラシ16、17と、回転ブラシ16、17の近傍に設けられている複数個の噴射ノズル20、20、…とから構成されている。回転ブラシ16、17は、図には示されていないが円柱状の芯材と、この芯材に固定された多数の帯状の洗浄紐からなる。洗浄紐は所定長さで柔らかい素材、例えば発泡成形されたポリプロピレンから形成されており、回転ブラシ16、17を回転すると多数の洗浄紐が遠心力で広がり、回転ブラシ16、17は全体として円柱状に広がるようになっている。噴射ノズル20、20、…は、このような回転ブラシ16、17の両側に設けられ、洗浄水を円柱面近傍に噴射するようになっている。トンネル壁面を清掃する場合、ブーム13、14を駆動して回転ブラシ16、17をトンネル壁面に近づける。噴射ノズル20、20、…から洗浄水を壁面に噴射して、回転ブラシ16、17を回転して洗浄する。
【0019】
本実施の形態に係るトンネル清掃車1の圧油の供給の仕組みを
図3によって説明する。本実施の形態に係るトンネル清掃車1の車両2にも従来の車両と同様にエンジン21が設けられ、このエンジン21にはトランスミッション22が設けられ、このエンジン21の動力によって車両2が走行するようになっている。本実施の形態に係るトンネル清掃車1も、このエンジン21の出力をTPOにより取り出して圧油を供給するようになっているが、従来この種のトンネル清掃車に採用されているフライホイールPTO、トランスミッションPTOのようなPTOとは異なる種類のPTOが採用されている。すなわちトランスファーPTO24が採用されている。具体的には次のようにトランスファーPTO24が設けられている。まず、トランスミッション22からは第1のドライブシャフト25が接続され、これが後方に延びている。後輪26、26にはこれらを駆動する第2のドライブシャフト27が設けられ、後方から前方に延びている。トランスファーPTO24はこれら第1、2のドライブシャフト25、27の間に介装されている。トランスファーPTO24には、内部に連結機構29が設けられており、第1、2のドライブシャフト25、27の連結、分離が操作できるようになっている。トランスファーPTO24内には複数のギアからなる減速機31が設けられ、この減速機31には2台の油圧ポンプ32、33が設けられている。運転席ボックス5内には、トランスファーPTO24を操作する操作レバー35が設けられている。この操作レバー35を駆動すると連結機構29が第1の位置に駆動され、第1、2のドライブシャフト25、27が連結される。これによってエンジン21の出力が後輪26、26に伝達され車両2が走行できる。また操作レバー35を操作して連結機構29を第2の位置に駆動すると、第1、2のドライブシャフト25、27が分離される。これによってエンジン21の出力は後輪26、26に伝達されなくなる。この第2の位置において、減速機31は第1のドライブシャフト25に接続される。そうするとエンジン21の出力によって油圧ポンプ32、33が駆動されることになる。トランスファーPTO24はこのように構成されているので、第2の位置に操作されているとき、エンジン21の出力の実質的に全てを油圧ポンプ32、33の駆動に利用できる。これによって大量の圧油を供給できることになる。
【0020】
本実施の形態に係るトンネル清掃車1は、トランスファーPTO24を第2の位置に操作して、エンジン21の出力を油圧ポンプ32、33の駆動に利用しているときにも低速で走行するようになっている。これは、
図3に示されているように、走行用の油圧モータ36とこの油圧モータ36の動力を第2のドライブシャフト27に伝達する走行機構37とによって実現される。走行機構37は詳しくは説明しないが、トランスファーPTO24を第2の位置に操作しているときに、第2のドライブシャフト27と連結するようになっている。車両2は、トンネル清掃中には時速1~2km程度の低速で走行させればいいので、油圧モータ36には大出力は要求されない。したがって、この油圧モータ36を駆動するのに要する圧油は比較的少ない。
【0021】
本実施の形態に係るトンネル清掃車1は、トランスファーPTO24によって大量の圧油を供給するようになっているので、清掃装置システム3は大型のものが採用され、効率よくトンネル壁面を清掃することができる。このような大量の圧油を大出力で供給・利用していると圧油が加熱してしまう。そこで、
図1、2に示されているように、本実施の形態に係るトンネル清掃車1には、2台の空冷式オイルクーラ39、39が設けられ、圧油が冷却されている。
【0022】
本実施の形態に係るトンネル清掃車1は、トンネル壁面が傷つきやすい素材からなる場合には、洗浄水の噴射のみによって清掃することができるようになっている。これは
図4に示されているような油圧回路を設けることによって実現されている。第1の清掃装置10にも第2の清掃装置11にも、それぞれ
図4に示されている油圧回路が設けられている。したがって第1の清掃装置10を例にして説明する。油圧源41からは逆止弁42、43を介してそれぞれ第1、2の電磁弁45、46が接続されている。第1の電磁弁45からは第1の油圧モータ47が接続され、この油圧モータ47によって洗浄水噴射用ポンプを駆動するようになっている。一方第2の電磁弁46からは第2の油圧モータ48が接続され、この油圧モータ48を回転すると回転ブラシ16が回転するようになっている。したがって、トンネル壁面が傷つきやすい素材からなる場合には、第2の電磁弁46を操作して圧油が第2の油圧モータ48に供給されないようにし、第1の電磁弁45を操作して圧油が第1の油圧モータ47のみに供給されるようにする。そうすると回転ブラシ16を回転させないで、洗浄水をトンネル壁面に噴射することができる。なお、第2の電磁弁46、圧油を正方向だけでなく逆方向にも流すことができるようになっている。したがって、回転ブラシ16は正回転だけでなく逆回転させて洗浄できるようになっている。
【0023】
本実施の形態に係るトンネル清掃車1は、
図5に示されているように、第1、2の清掃装置10、11においてブーム13、14を任意の方向に回動することができる。したがってトンネル壁面の清掃時にトンネル清掃車1の左側と右側とに回転ブラシ16、17を広げて左右の壁面を同時に清掃することができる。しかしながら、トンネル壁面の清掃時においてはトンネルを利用する他の車両の通行のために左側または右側の車線を空けておく必要がある。したがって、第1、2の清掃装置10、11はいずれも、右側または左側の一方の側だけに向けるようにし、トンネルの右側壁面または左側壁面のみを清掃することが一般的である。車両2は、すでに説明したように清掃時において低速で走行する。本実施の形態に係るトンネル清掃車1は、同時に第1、2の清掃装置10、11を使って清掃できるので、効率よくトンネル壁面を清掃できる。
【符号の説明】
【0024】
1 トンネル清掃車 2 車両
3 清掃装置システム 5 運転席ボックス
6 後方窓 7 作業者
8 運転手 10 第1の清掃装置
11 第2の清掃装置 13 ブーム
14 ブーム 16 回転ブラシ
17 回転ブラシ 18 洗浄水タンク
19 送水ポンプ 20 噴射ノズル
21 エンジン 22 トランスミッション
24 トランスファーPTO 25 第1のドライブシャフト
26 後輪 27 第2のドライブシャフト
29 連結機構 31 減速機
32 油圧ポンプ 33 油圧ポンプ
35 操作レバー 36 油圧モータ
37 走行機構 39 空冷式オイルクーラ
42 逆止弁 45 第1の電磁弁
46 第2の電磁弁 47 第1の油圧モータ
48 第2の油圧モータ
【要約】 (修正有)
【課題】効率よくトンネル壁面を清掃できるトンネル清掃車を提供する。
【解決手段】トンネル清掃車の車両2にトランスファーPTO24を設け、エンジン21によって駆動される第1のドライブシャフト25と、後輪26を駆動する第2のドライブシャフト27の間に介装する。トランスファーPTO24を第1の位置に操作すると第1、2のドライブシャフト25、27が連結されてエンジン21によって車両2が走行する。第2の位置に操作すると第1、2のドライブシャフト25、27が分離して油圧ポンプ32、33が駆動されて圧油が供給される。このとき車両2は油圧モータ36で低速に走行させる。油圧で駆動される清掃装置はブームに設けられた回転ブラシと噴射ノズルとを備え、トンネル壁面を清掃する。低速で走行しながらトンネルを清掃する。
【選択図】
図3